2015年1月25日

海外医薬ニュース2015年1月25日号




【ニュース・ヘッドライン】




  • アストラゼネカ、EUが痛風治療薬の承認申請を受理
  • FDA諮問委員会がバシリア/アステラスの抗真菌薬を支持
  • CHMPが体重管理薬などに肯定的意見
  • FDAがPTH製剤を甲状腺機能低下症に承認
  • ノバルティスのB群髄膜炎菌ワクチンも米で承認
  • コセンティクスが欧米でも承認
  • ゴーシェ病の経口剤がEUでも承認
  • IPF治療薬がEUでも承認


【承認申請】


アストラゼネカ、EUが痛風治療薬の承認申請を受理

(2015年1月22日発表)

アストラゼネカは、EUがRDEA594(lesinurad)の承認申請を受理したと発表した。新作用機序の痛風治療薬で、allopurinolやfebuxostatのようなキサンチン酸化酵素阻害剤が尿酸の合成を抑制するのに対して、URAT1トランスポータを阻害して腎臓で濾された尿酸が血液中に再吸収されるのを防ぐ。

第三相では上記二剤を服用しても尿酸値が十分に下がらない患者を対象に、200mgまたは400mgを一日一回、経口で追加投与した。高用量は腎臓関連有害事象や腎石のリスクが見られ、効果は大差ないので、200mgに抑えた方が良さそうだ。

アストラゼネカは12年にArdea Biosciences社を12.6億ドルで買収して入手した。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がバシリア/アステラスの抗真菌薬を支持

(2015年1月22日発表)

スイスの抗菌剤開発会社であるバシリア(SIX:BSLN)とアステラス製薬は、侵襲性のアスペルギルス症やムーコル症の治療薬として米国で承認申請したCresemba(isavuconazole)が、抗感染症諮問委員会の支持を得たと発表した。アスペルギルス症は全員一致、ムーコル症は11人の委員のうち8人が支持した。

FDAは、命に係る細菌感染症の治療薬に関しては死亡率が既存薬と比べて非劣性であることを求めている。Cresembaの試験では、42日死亡率が18.6%と、対照薬のvoriconazoleの20.2%と非劣性だった。ムーコルは組入れ数が少なく、文献データなども踏まえた総合的な判断となった。

Cresembaはこの二つの適応症でQIDP(認定感染症用製品)指定を受けている。アステラス製薬はバシリアから世界開発販売権を取得した。

リンク:バシリアのプレスリリース

CHMPが体重管理薬などに肯定的意見

(2015年1月23日発表)

欧州薬品庁(EMA)の医薬品科学的評価委員会であるCHMPは1月の会議で7種類の新製品と5製品の適応拡大について肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内に承認されることになるだろう。

リンク:EMAのプレスリリース

新薬は、まず、ノボ ノルディスクのGLP-1作用剤、Saxenda(liraglutide)。肥満症やリスク因子を持つ太り過ぎの患者の体重管理に用いる。活性成分は二型糖尿病の治療薬として承認されているが、Saxendaは3mgとほぼ倍量。12週間治療して体重が5%以上低下しなかったら投与を止める(昨年12月に承認された米国のレーベルでは16週間4%なので、EUのほうが若干厳しい)。

リンク:ノボ ノルディスクのプレスリリース(1/22付)

MSDのSivextro(tedizolid)はABSSSI(急性細菌性皮膚皮膚構造感染症)の治療薬。Zyvox(linezolid、和名ザイボックス)と同じオキサゾリジノン系抗菌剤で細菌のリボソームの50Sサブユニットに結合して蛋白合成を妨げる。韓国の東亞製薬から権利を取得した会社を13年に買収したキュービストを、更にMSDが今月、買収した。米国では昨年6月に承認。北米欧州以外の権利はバイエルが保有。

メディスン・カンパニーズ(Nasdaq:MDCO)のOrbactiv(oritavancin)もABSSSI治療薬。バンコマイシン系だが細胞膜の二ヶ所に結合するためバンコマイシン耐性菌にも強いことが期待されている。元々はイーライリリーの開発品だったが、インターミューンなどを経て09年にメディスン社が入手、再び第三相試験を実施して再承認申請した。米国では昨年8月に承認。

メディスン社はKengrexal(cangrelor)とRaplixa(ヒト フィブリノーゲン、ヒト トロンビン)も肯定的意見を得た。前者はPCI(経皮的冠介入術)を受ける、Plavix(clopidogrel)のようなP2Y12受容体拮抗剤でプリトリートされていない患者に用いる。アストラゼネカからライセンスしたBrilinta(ticagrelor)の類薬だが経口ではなく静注用。作用のオンセットが早く持続時間が短いことが特徴。米国では諮問委員会が反対、承認されなかった。

Raplixaは手術中の止血に用いるドライパウダー製剤で、13年にProFibrix を買収して入手したもの。

リンク:メディスン社のプレスリリース

新製剤では、参天製薬のIkervis(ciclosporin)がドライアイ患者の重度角膜炎の治療薬として、MSDのMK-0518B(raltegravirとlamivudineの合剤)がHIV/AIDS治療薬として支持された。

適応拡大では、インサイト/ノバルティスのJakafi(ruxolitinib)をヒドロキシウリアによる治療に反応しない真性赤血球増加症の治療に用いることが支持された。骨髄線維症の治療薬として承認されている。 

リンク:ノバルティスのプレスリリース

また、セルジーンのAbraxane(paclitaxelmアルブミン結合)を末期非小細胞性肺癌の一次治療薬としてcarboplatinと併用することも支持された。これまでに転移性乳癌の二次治療や転移性膵癌の一次治療に承認されている。

【承認】


FDAがPTH製剤を副甲状腺機能低下症に承認

(2015年1月23日発表)

NPSファーマシューティカルズは、Natparaが副甲状腺機能低下症患者の低カルシウム血症治療薬として米国で承認されたと発表した。カルシウムやビタミンDと併用する。

Natparaは遺伝子組換え型ヒト副甲状腺ホルモン(rhPTH)。類薬であるイーライリリーの骨粗鬆症治療薬Forteo(teriparatide )はPTHのアミノ酸34個から成るが、Natparaは84個全てを用いている。元々は骨粗鬆症治療薬として開発されたが、クラスイフェクトである高カルシウム血症リスクや骨肉腫懸念などが原因で米国では承認されず、欧州で承認されただけだった。

NPS社は今月、英国のシャイアが52億ドルで買収を決めた。随分高い買い物のような印象だが、アッヴィがシャイアを買収しようとしたことがあるので、時価総額を膨らませて買収され難くする狙いなのだろう。

リンク:NPSのプレスリリース

ノバルティスのB群髄膜炎菌ワクチンも米で承認

(2015年1月23日発表)

ノバルティスは、Bexseroが米国で承認されたと発表した。B群髄膜炎菌ワクチンで10~25歳に用いる。A、C、Y群などはワクチンが普及し欧米では感染例が減少したが、種類が多くワクチンを作れなかったB群による感染が増加、英国やスペイン、豪州などではB群が中心になった模様。米国でも昨年、某大学が治験許可を取得し、入寮する学生にBexseroを提供し始めた。米国ではファイザーのTrumenbaも昨年10月に承認されている。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

コセンティクスが欧米でも承認

(2015年1月19日、21日発表)

ノバルティスは、抗IL-17Aモノクローナル抗体Cosentyx(secukinumab、和名コセンティクス)が欧米で乾癬治療薬として承認されたと発表した。DMARDなどに十分反応しない、あるいは不耐の中重度患者に対する二次治療薬だが、EUは一次治療に用いることも認めた。TNF阻害剤ですら二次治療でしか承認されていないので、驚き。日本でも昨年末に承認された。

リンク:ノバルティスのプレスリリース(EU承認、1/19付)

リンク:同(米承認、1/21付)

ゴーシェ病の経口剤がEUでも承認

(2015年1月22日発表)

サノフィ・グループのジェンザイムは、Cerdelga(eliglustat)がI型ゴーシェ病の治療薬としてEUで承認されたと発表した。グルコシルセラミド合成酵素阻害剤で、酵素補充療法と異なり経口投与できることが特徴。肝臓酵素2D6の機能や2D6/3A4相互作用に注意する必要がある。米国は昨年8月に承認。

リンク:ジェンザイムのプレスリリース

IPF治療薬がEUでも承認

(2015年1月19日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはOfev(nintedanib)が特発性肺線維症の治療薬としてEUで承認されたと発表した。VEGF受容体などを阻害する小分子薬。米国では昨年10月に承認された。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

今週は以上です。

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2015年1月18日

海外医薬ニュース2015年1月18日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • 旧薬は時に高し(Colcrys騒動について)
  • BMS、オプジーボの肺癌試験が成功
  • アストラゼネカ、Brilintaの適応拡大試験が成功
  • afatinibはL858R変異型には効果が弱い?
  • リジェネロンも抗PCSK9抗体を承認申請
  • セルジーンとアッヴィの新薬がEUで承認


【今週の話題】


旧薬は時に高し(Colcrys騒動について)

(2015年1月12日発表)

NTTグループが運営するネット型大学講座、gaccoで、京都大学iPS細胞研究所のスタッフによる『よくわかる!iPS細胞』が開講した。

山中教授のノーベル賞受賞談話で印象的だったのは、iPS細胞の開発が医療応用に向けた第一歩に過ぎないことを強調していたことだ。第一週は概要紹介だけだったが、サイエンスコミュニケーションとか寄付募集専門職(ファンドレイザー)とか、様々な機能・役割を果たしている人たちが講師として登壇し、iPS研究所の活動の広さを印象付けた。臨床応用に向けた課題に関しても、作成方法だけでなく作成されたiPS細胞・移植用細胞の評価方法を標準化する必要性に言及。ラボの研究だけでなく、プロジェクトの全体像に目が行き届いている。

私のレポートではしばしば新薬の副作用に言及しているが、発売されたばかりの新薬は分からないことが多いので怖いという印象を与えないか心配だ。確かにそうなのだが、一方で、欠点が見つかるのはキチンと調査したからである。科学が進歩して新しい作用機序の薬が続々登場する一方で、薬を評価する技術も年々進歩する。ところが、新しい評価技術で評価されるのは多くの場合、新薬なので、それが良い作用でも悪い作用でも、研究対象になった新薬だけの問題であるように誤解されやすい。

現在の承認審査手続きが確立される前から使われている薬は本当に効果があるのか、安全なのか?用量は適切か?小児や高齢者にも有効・安全なのか?現代の尺度で再評価するのが望ましいが、全部調べるのは費用も時間が掛かり、現在治療を受けている患者に支障が生じかねない。行政はどう対処すべきか?

米国の場合、FDAが06年にUnapproved Drugs Initiativeを発表。昔から使われているため販売承認取得を免除されている薬のうち薬効・安全性懸念のあるものを選び出し、販売継続を望むメーカーにキチンとした試験を行って承認を取得するよう促した。インセンティブとして承認取得時に3年間の排他権を与え、通常より高い値段で販売して投資を回収できるようにした。

良い制度のように思われたが、11年に承認されたKVファーマシューティカルの早産予防薬Makena(hydroxyprogesterone caproate)や09年承認のURL Pharmaの痛風治療薬Colcrys(colchicine)は医師から強烈な反発を受けた。Makenaは価格が調剤薬局品の100倍、Colcrysは他の未承認製品の500倍だったからだ。Makenaは政治家が介入し、FDAが調剤薬局品の摘発を見送ったため、KV社は経営が破たんした。

Colcrysはリウマチ学会などが問題提起した。試験・承認申請に掛かった費用と比べて高すぎる、そもそも、URLの臨床試験で新たに得た知見は限定的、と主張したのである。だが、2010年にFDAが他社のコルヒチン製剤の販売を禁じたため、年商7億ドルの準大型薬に育った。

12年には武田薬品がURL社を8億ドルで買収した。武田は北米で痛風治療薬Uloric(febuxostat、和名フェブリク)を販売しているが、Colcrysの一日薬価はUloricの3倍近く、年商を上回る価格で買収してもペイすると考えたのだろう。

Colcrysは3年の排他権期間が終了した後もGE品が販売されなかったが、FDAが錠剤ではなくカプセル製剤を承認。武田は司法に承認・販売差止命令を請求したが却下され、Hikma(LSE:HIK)社が対抗品とそのオーソライズド・ジェネリックの発売を発表した。武田もPrasco社にオーソライズド・ジェネリックの販売を許諾、こちらは薬局における自動代替の対象になるので高いシェアを取りそうだ。

薬が高いのは正しい使い方に関する情報に価値があるからだ、と私は考えている。従って、Makenaの結末には不満がある。一方で、知識や情報はやがて陳腐化するのだから、知的所有権には期限があるべきだ。Colcrysは特許がまだ14年残っているが、バランスを考えれば、対抗品が発売されても良い頃だろう。

リンク:武田のプレスリリース(不利判決について)

リンク:同(AG提携について)

リンク:Hikmaのプレスリリース

リンク:KesselheimらのColcrysに関する論考(NEJM、オープンアクセス)

リンク:大学講座gaccoのウェブサイト

【新薬開発】


BMS、オプジーボの肺癌試験が成功

(2015年1月11日発表)

BMSは、小野薬品と共同開発している抗PD-1抗体、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の第三相扁平上皮非小細胞性肺癌二次治療試験が成功し、繰上完了することを発表した。延命効果をdocetaxelと比較した試験で、もう一本、扁平上皮以外を組入れた同様な第三相も進行中。

Opdivoは昨年7月に日本で、12月には米国でも末期黒色腫用薬として承認されたが、この用途ではMSDのKeytruda(pembrolizumab)に3ヶ月遅れた。非小細胞性肺癌は12月に米国で適応拡大申請を行ったはずだが、MSDが6月までに適応拡大申請する計画を発表したため開発競争の先行きが不透明になっていた。BMSの申請は扁平上皮型だけの三次治療、MSDはそれ以外も含む二次治療と見做されているからである。

だが、注目されている抗癌剤は正式に適応拡大が承認される前でも、ASCOのような学会で結果発表されるだけでも保険還元の対象になり広く使われることがある。この時期に終了なら6月のASCOでデータ発表できるだろう。MSDのデータは大規模とは言え後期第一相試験のもの、BMSは第三相なのでエビデンスとしても優れる。扁平上皮の第三相も成功するならば、三次治療であっても先に適応拡大が承認される優位をフルに生かすことができるだろう。

リンク:BMSのプレスリリース

アストラゼネカ、Brilintaの適応拡大試験が成功

(2015年1月14日発表)

アストラゼネカは、抗血小板薬Brilinta(ticagrelor、欧州名Brilique)のPEGASUS-TIMI 54試験の成功を発表した。Plavix(clopidogrel)やEfient(prasugrel)と異なった構造を持つP2Y12阻害剤で、作用のオン、オフが早いことが特徴だが、一日二回服用であることや承認申請用試験の米国施設におけるデータが見劣りしたこと、そしてPlavixのGE品が発売されたことから売上は伸び悩んでいる。カンフル剤になるかどうか、データ発表が注目される。

Brilintaの適応が急性冠症候群であるのに対して、PEGASUS試験は心筋梗塞発症後1~3年経った患者を組入れ、アスピリンだけの群とEfient併用群の再発リスクを比較した。類似した内容のPlavixのCHARISMA試験はフェールしたが、心血管疾患既往患者だけのデータは良さそうに見えたので、本当に有効なのか確認することが望まれていた。また、昨年のAHAで結果発表されたDAPT試験と同様に、抗血小板薬の至適投与期間を明らかにする上でも重要だ。

PEGASUS試験は再発リスクを20%削減する効果を検出する力を持っているが、近年の試験は大規模でもう少し小さくても有意差が出る可能性がある。しかし、差があまり小さいと、抗血小板薬は出血リスクを伴うので、普及し難いだろう。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

リンク:Bonacaらのデザインペーパー(American Heart Journal)

afatinibはL858R変異型には効果が弱い?

(2015年1月12日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムのGilotrif(afatinib、欧州名Gilotrif)はEGFRに特定の変異を持つ腺腫非小細胞性肺癌の一次治療薬だ。米国のレーベルによると適応はエクソン19欠損(del19)またはエクソン21のL858R置換(L858R)型だが、Lancet Oncologyに先行公開された治験論文によると、L858R型に対する効果は既存の併用レジメンと大差ないようだ。del19型には優れた効果が示されたので意外である。

既存レジメンと大差ないならOKと言えなくもないが、欧米の審査機関が対応するかどうか、様子を見たい。

afatinibはIressa(gefitinib)やTarceva(erlotini)と同じEGFRチロシンキナーゼ阻害剤だが、her2も阻害する。先行二品に反応し難いT790M変異型等に対する活性が期待されたが三次治療試験がフェールし、EGFR活性化変異型腺腫非小細胞性肺癌の一次治療試験でも全生存期間がAlimta(pemetrexed)・cisplatin併用レジメンより長いという仮説を立証できなかった。

しかし、後者の試験でdel19型やL858R型に対するPFS延長効果を示したため、13年に欧米で承認された。今回の論文は、承認の根拠となったLUX-Lung 3試験と、アジアで別途実施されたLung 6試験(対照群はgemcitabineとcisplatinを併用)の結果報告だ。

del19型のハザードレシオは前者の試験が0.54、後者は0.64で統計的に有意だった。サブグループ分析で症例数が少ないせいか後者のp値は0.023とそれほど良くないが、二本の試験で有意だったのだからこのタイプに対する有効性が確認されたと言って良いだろう。

ところが、L858R型はハザードレシオが各1.30と1.22で、有意ではないが数値上は悪い。95%上限は各2.1と1.8となっており、大きく劣っている可能性が否定されていない。メジアン値は前者が27.6ヶ月対40.3ヶ月、もう一本は19.6ヶ月対24.3ヶ月で差が大きい。

相手は活性薬なので微妙なところだが、L858R型に対しては既存薬より優れるとは言えなさそうだ。そもそも、afatinibはIressaやTarcevaより良いのか、という疑問も未解決である。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

リンク:Yangらの治験論文の要約(Lancet Oncology)

【承認申請】


リジェネロンも抗PCSK9抗体を承認申請

(2015年1月12日発表)

リジェネロンと開発パートナーであるサノフィは、Praluent(alirocumab)を高脂血症の治療薬としてEUに承認申請し、受理されたことを発表した。米国でも昨年第4四半期に申請したことが明らかにされた。

抗PCSK9完全ヒト化抗体ではアムジェンもAMG145(evolocumab)を米国では昨年8月、EUは昨年9月に承認申請している。リジェネロンはバイオマリンから6750万ドルで購入した優先審査バウチャーを用いたはずなので、米国では先に承認される可能性がある。

リンク:両社のプレスリリース

【承認】


セルジーンとアッヴィの新薬がEUで承認

(2015年1月16日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)はOtezla(apremilast)がEUで承認されたと発表した。適応は中重度乾癬と乾癬性関節炎で、DMARD(疾病修飾性抗リウマチ薬)などに十分反応しない、または不耐の患者。効果はTNF阻害剤より弱そうだが、経口投与できる点が長所(一日二回服用)。米国では昨年3月に承認。

リンク:セルジーンのプレスリリース

同日、アッヴィはViekirax(NS5A複製複合体阻害剤ombitasvir、NS3/4プロテアーゼ阻害剤paritaprevirと3A4阻害剤ritonavirの合剤)とExviera(非核酸系NS5Bポリメラーゼ阻害剤dasabuvir)がEUで承認されたことを発表した。遺伝子型1型のC型肝炎ウイルスだけでなく、中東やサブサハラ・アフリカに多く南欧でも感染者が増加している4型にribavirin併用で用いることも承認された。

この二つの錠剤は米国ではViekiraパック名で昨年12月に承認された。ギリアド(Nasdaq:GILD)の抗HCV新薬との販売競争が注目され、Express Scriptsがアッヴィ品だけを保険還元の対象にしたためアッヴィが優位に立ったと思われたが、その後、CVS Healthなど多くの薬剤給付管理会社がSovaldi/Harvoniを優先使用薬に指定、ギリアド優勢に推移しているようだ。欧州では英独仏などが薬価抑制に注力しており、大幅値引きの見返りにシェアを獲得する競争がまだまだ続きそうだ。

リンク:アッヴィのプレスリリース

今週は以上です。

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2014年12月28日

海外医薬ニュース2014年12月28日号



☆☆☆ 来週はお休みします。皆様、良いお年を! ☆☆☆

【ニュース・ヘッドライン】

  • バイオクリストの抗エボラウイルス薬の霊長類試験
  • LAL欠乏症治療薬の承認申請が受理
  • 第二のDMD治療薬のローリング承認申請
  • バクスター、VW病治療薬を承認申請
  • オプジーボが米国でも承認
  • ノボの体重管理薬が米国で承認
  • ラピアクタが米国でも承認


【今週の話題】


バイオクリストの抗エボラウイルス薬の霊長類試験

(2014年12月23日発表)

バイオクリスト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:BCRX)は、エボラウイルス疾患の治療薬候補として期待されているBCX4430の非ヒト霊長類試験の結果を公表した。最初の試験としては良好だ。

この試験は、ウイルスに感染させてから30~120分後に偽薬、16mg/kg、25mg/kgの何れかを一日二回、14日間筋注し、41日間生存率を比較したもの。偽薬群の生存はゼロだったが、16mg/kg群は6頭中4頭、25mg/kg群は6頭全てが生存し、抗ウイルス作用が確認された。

現実の医療では感染したばかりの患者を治療する機会は少ない。感染者の体液に暴露した人をケアすることはあるが、これは治療ではなく暴露後予防と呼ばれる。従って、次のステップとしては、感染の数日後に投与を開始する試験を行うことが望ましい(そんな時間は無いという反論が出るかもしれないが)。因みに、ZMappの試験では感染後5日経って発症した後に投与しても十分な効果があった。

今回の発表で朗報は、Marburgウイルスの試験(15mg/kg)と大差ない16mg/kgでも効果が見られたこと。in vitroの力価は半分で、必要量の安全性マージンは10~50倍と言われていたが、もし16mg/kgで足りるなら副作用が大きく増加する心配は小さいだろう。尤も、15mg/kgがヒトに安全というエビデンスは無いので、今後に持ち越された探求課題であることに変わりはないのだが。

エボラでキチンとした薬効確認臨床試験を行うのは難しく、それだけに、非ヒト霊長類の試験は重要な代替的エビデンスだ。安全性についてはワクチンを含めて臨床試験が進行中なので、ある程度のアイディアを掴めるだろう。重病人よりも健常者の方が副作用を発見しやすいので、治療薬候補に関しては暴露後予防の臨床試験も実施した方が良いだろう。

リンク:バイオクリストのプレスリリース

【承認申請】


LAL欠乏症治療薬の承認申請が受理

(2014年12月23日発表)

Synageva BioPharma(Nasdaq:GEVA、米国マサチューセッツ州)は、リソソーム酸リパーゼ(LAL)欠乏症治療薬SBC-102(sebelipase alfa)の承認申請がEUに受理されたと発表した。加速審査を受ける。米国でも今月、ローリング承認申請が完了しており、来年夏にも承認されることになるだろう。

LAL欠乏症は常染色体性劣性リソソーム貯蔵疾患で、脂肪が肝臓や血管壁などに蓄積、吸収不良や成長不全、肝臓障害、アテローム硬化などを発症する。新生児の100万人に二人が発症、6ヶ月以内に死亡することが多い。

SBC-102は遺伝子組換え型LALで、日米欧で希少疾患用薬指定を受けている。小児と成人患者66人を組入れて1mg/kgを二週間に一回点滴投与した試験では、20週後に肝機能検査値が正常化した患者が偽薬群比有意に多かった。肝脂肪やLDL-Cも有意に減少した。また、急速進行型幼児を組み入れた試験では、9人中6人が12ヶ月時点で生存していた。

リンク:Synagevaのプレスリリース(PR Newswire)

第二のDMD治療薬のローリング承認申請

(2014年12月23日発表)

PTCセラピューティクス(Nasdaq:PTCT)は、Translarna(ataluren、開発コードPTC124)のローリング承認申請を米国で開始したと発表した。進行中の第三相試験の結果を来年第4四半期に提出して完了する考え。ライバルのProsenta(バイオマリンが買収する予定)も10月にdrisapersenのローリング承認申請を開始しており、開発競争が最終段階に入ることになる。

両剤はナンセンス変異型DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)の治療薬として開発されている。DMDは男子の劣性遺伝性疾患で筋細胞膜の維持に必要なジストロフィンを十分に作れない。ナンセンス変異型は遺伝子の一部に翻訳中止箇所を示す塩基配列(ストップコドン)を持っているため、不完全なジストロフィンが作られる。

両剤はmRNAが翻訳される過程を攪乱しストップコドンが見過ごされるように仕向ける。その結果、不完全だがある程度機能するジストロフィンが産生されるようになる。DMDのうちナンセンス変異型は欧州では13%、米国は20%、イスラエルは50%を占め、欧米合計で4000人が治療対象と推定されている。

両剤ともジストロフィンを増やす効果が確認されているが、検査方法の妥当性に議論の余地があるようだ。臨床的な効用も不明確で、dripersenの第三相も、Translarnaの後期第二相も、6分歩行試験の成績を偽薬比有意に改善することができなかった。前者はGSK、後者はジェンザイムが開発提携していたが、何れも解消した。

希望が消えかけたが、今年8月にEUがTranslarnaを条件付き承認。FDAも両社が承認申請することを認めた模様だ。承認されても効果が不確かなら患者をぬか喜びさせるだけだが、まずはTranslarnaの第三相試験の結果を待つとしよう。

リンク:PTC社のプレスリリース

バクスター、VW病治療薬を承認申請

(2014年12月22日発表)

バクスター・インターナショナル(NYSE:BAX)は、米国でBAX111をフォン・ヴィレブランド(VW)病の治療薬として承認申請したと発表した。VW病は常染色体性遺伝子疾患で、罹患率は1~2%と高いが多くは症状が軽い。BAX111は初めての高純度遺伝子組換え型VW因子で、臨床試験では22人の患者の出血治療に成功。インヒビターや塞栓性疾患は見られなかったが、重篤な治療関連有害事象が1例あった(心拍数上昇と胸部不快感)。

リンク:バクスターのプレスリリース

【承認】


オプジーボが米国でも承認

(2014年12月22日発表)

FDAは、小野薬品/BMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を切除不能・転移性の黒色腫のサルベージ療法として承認したと発表した。BMSのYervoy(ipilimumab)と、BRAF-V600変異を持つ腫瘍の場合はBRAF阻害剤による治療を既に受けた患者が対象になる。第三相試験の中間客観的反応率(ORR)データに基づく加速承認で、審査期限より3ヶ月早いクリスマスプレゼントとなった。

活性化したTセルが発現する抑制刺激受容体、PD-1に結合するIgG4型完全ヒト化抗体で、癌細胞がPD-L1を結合させてTセルを抑制するのを妨げる。免疫強化療法はこれまでにIL-1やアルファ・インターフェロンが実用化されており、ORRは低いものの、反応した患者は効果が長期間持続する特徴がある。抗PD-1抗体はORRが上記の解析で32%と比較的高く、また、悪性黒色腫や腎細胞腫以外にも様々な癌に効果がありそうなことが長所だ。

一方で、免疫関連の有害事象も見られ、過去の様々な癌の試験では致死的な肺炎が574人中5人で発生した。結腸、肝臓、腎臓などの免疫関連有害事象も見られた。

Opdivoは小野がトランスジェニック・マウス抗体技術を持つメダレックスと共同で創製、BMSがメダレックスを買収したため両社の共同開発プロジェクトとなった。日本韓国台湾以外はBMSが販売する。報道によると、米国では月12500ドルで販売される模様。9月に同じ適応症で承認された抗PD-1完全ヒト化抗体、Keytruda(pembrolizumab)とほぼ同じだ。用法は3mg/kgを二週間に一回投与で、日本の用法である2mg/kg、三週間に一回より多い。

リンク:FDAのリリース

リンク:BMSのプレスリリース

ノボの体重管理薬が米国で承認

(2014年12月23日発表)

FDAは、ノボ ノルディスクのSaxenda(liraglutide)を肥満症、及び、高血圧や二型糖尿病、高脂血症などの疾病因子を持つオーバーウエートの患者の治療薬として承認したと発表した。二型糖尿病薬として承認されているGLP-1作用剤、Victoza(和名ビクトーザ)の高用量版で、1.2mg/1.8mgではなく3mg。

臨床試験では1年間の体重減少が偽薬群比4.5%大きかった。また、5%以上の減量に成功した患者の比率が62%と偽薬群の34%を上回った。16週間治療して4%以上減らなかったら成功する見込みが小さいので打ち切る。低カロリーダイエットと運動療法を併用する。

主な有害事象は悪心嘔吐。深刻な有害事象は膵炎、胆嚢疾患、腎障害、自殺思慮。心拍数が上昇することがあり、持続する場合は中止する。また、他のGLP-1作用剤と同様に、癌原性試験で甲状腺C細胞腫瘍が見られたがヒトに対するリスクは確立していないことが枠付警告された。FDAは、進行中の試験で乳癌や心血管疾患のリスクを評価するよう求めた。

リンク:FDAのリリース

リンク:ノボ ノルディスクのプレスリリース

ラピアクタが米国でも承認

(2014年12月22日発表)

FDAは、バイオクリストのRapivab(peramivir、和名ラピアクタ)を非複雑インフルエンザの治療薬として承認したと発表した。発症48時間以内の患者に600mgを15~30分で点滴投与する。上部気道症状などが原因で経口剤や吸入用薬を使えない患者に用いることが想定されている。

Tamiflu(oseltamivir)と同様なノイラミニダーゼ阻害剤。日本では2010年に承認されたが、米国の開発は難航、臨床試験フェールが続いた。直近では重症入院患者の第三相試験を行ったが中間解析で無益性が認定され、一転して、非複雑インフルエンザの治療薬として承認申請されることとなった。

FDAによると、臨床試験では体温が12時間早く正常化し、症状軽快も21時間早まった。主な有害事象は下痢。稀だが深刻な有害事象としてはスティーブンス・ジョンソン症候群のような深刻な皮膚反応が見られた。他のノイラミニダーゼ阻害剤と同様に幻覚や錯乱、異常行動が見られたが、薬のせいなのか病気のせいなのかは明らかではない。

重篤患者に対する効能が明確ではないので、出番は少ないだろう。需要の中心は国家備蓄用途と推測されているようだ。

リンク:FDAのリリース

リンク:バイオクリストのプレスリリース

今週は以上です。

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2014年12月21日

海外医薬ニュース2014年12月21日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • GSK、帯状疱疹ワクチンの第三相が成功
  • ロシュ、二剤の第三相がフェール
  • ルンドベック、脳梗塞用薬の開発を中止
  • バイエル、A型血友病薬を米国でも承認申請
  • ジェネンテック、MEK阻害剤を承認申請
  • CHMPが幹細胞療法や体重管理薬などを支持
  • FDAがアッヴィの4剤併用抗HCV薬を承認
  • アストラゼネカ、PARP阻害剤が欧米で承認
  • MSDが買収する企業の抗生剤が米国で承認
  • アルコンの外耳炎用薬が米国で承認


【新薬開発】


GSK、帯状疱疹ワクチンの第三相が成功

(2014年12月18日発表)

グラクソ・スミスクラインは、帯状疱疹ワクチンHZ/suの第三相試験が良好な結果になったことを発表した。50歳以上の患者を組入れた試験で、帯状疱疹リスクを97.2%削減した。まだ進行中である模様であり、ヘルペス感染後疼痛を防ぐ効果があったのかは明らかではない。70歳以上を組入れた試験や免疫低下患者を組入れた試験も進行中。

帯状疱疹は潜伏している水痘ウイルスの再活動化が原因。加齢に伴い免疫力が低下すると発生しやすくなる。MSDの弱毒化生ワクチン、Zostavaxが06年に米国で発売されたが、生産が難しい模様で、数年前に供給不足になったことがある。

HZ/suはウイルスのgE抗原にAS01-Bアジュバントを添加したもの。AS01はAgenus(Nasdaq:AGEN)の植物由来の免疫刺激成分やMPL、リポゾームを含んでいる。

リンク:GSKのプレスリリース

ロシュ、二剤の第三相がフェール

(2014年12月19日発表)

ロシュは、抗癌剤とアルツハイマー病薬の第三相がフェールしたことを明らかにした。

まず、Kadcyla(ado-trastuzumab emtansine、和名カドサイラ)のher2陽性転移性乳癌一次治療試験がフェール。KadcylaはHerceptin(trastuzumab)の抗her2モノクローナル抗体に細胞毒を結合した抗体薬物複合体(ADC)で、二次治療試験でXeloda(capecitabine)とTykerb(lapatinib)の併用より優れた延命効果を示し、13年に日米欧で承認された。

今回の一次治療試験では、Kadcyla単剤群や抗2C4モノクローナル抗体Perjeta(pertuzumab、和名パージェタ)併用群のPFS(無進行生存期間)をHerceptinとタクサン系を併用する標準療法群と比較したが、どちらも有意な差は無かった。非劣性解析は成功したのでKadcylaの有用性が示されたことになるが、値段の違いを考えれば敢えて使う理由が無い。

不思議なのはPerjeta併用群だ。Perjetaは今回と同じ用途に承認されている。臨床試験ではHerceptinとTaxotere(docetaxel)の標準療法と比べてPerjetaも用いる三剤併用法は死亡リスクが34%小さかった。Kadcylaの効果がHerceptin・タクサン系併用と同じならば、Kadcyla・Perjeta併用レジメンの方が優れている筈だが、A+B+C>A+B、D=A+B、∴C+D>A+Bとはならなかった。

今回はTaxotere以外のタクサンも使用できたが、それが原因とも思えない。薬の相性の問題かもしれないし、治験のプロトコルや投薬実態に違いがあるのかもしれない。

リンク:ロシュのプレスリリース

もう一つは、抗アミロイド・ベータHuCAL完全ヒト化抗体、R1450(gantenerumab)の前駆アルツハイマー病試験。中間無益性解析で独立データ監視委員会が無益性を認定、中止が決まった。今年開始された、中度アルツハイマー病の大規模な第三相試験は続行される。

アミロイド仮説は若年性アルツハイマー病で見られる遺伝子変異が起源のようだが、どういう訳か、第三相試験は加齢性患者が対象になっている。多くの小分子薬や抗体医薬の第三相がフェールしたのだから、原点に回帰して、若年性患者の試験を行うべきだろう。それで駄目だったら研究資源を他のメカニズムに振り向けることができる。

リンク:ロシュのプレスリリース

ルンドベック、脳梗塞用薬の開発を中止

(2014年12月17日発表)

ルンドベックはドイツのPAION社からdesmoteplaseをライセンス、急性虚血性脳卒中の治療薬として第三相試験を二本実施したが、どちらもフェールし、この用途での開発を中止することを発表した。

ナミチスイコウモリが吸血時に分泌して血液が固まるのを防ぐプラスミノーゲン・アクティベータを元に創製した遺伝子組換え薬で、開発歴は長く、2000年にシエーリングがPAIONにライセンス、04年にフォレストが北米の権利を取得したがP2b試験がフェールしたため返還、05年にルンドベックがライセンスしたもの。

tPAより脳細胞毒性が小さい可能性があることと、新しい画像分析手法を用いれば治療対象を発症後9時間経った患者まで広げられそうなことが注目点だったが、駄目だった。

リンク:ルンドベックのプレスリリース

【承認申請】


バイエル、A型血友病薬を米国でも承認申請

(2014年12月17日発表)

バイエルは、BAY 81-8973をA型血友病薬として米国で承認申請したと発表した。遺伝子組換え型の第VIII因子で、培養過程などでヒトや動物由来の蛋白を用いていないため、感染症のリスクが小さいことが期待される。Kogenateの後継薬という位置付けだ。欧州でも今月、承認申請済み。

リンク:バイエルのプレスリリース

ジェネンテック、MEK阻害剤を承認申請

(2014年12月14日発表)

ジェネンテックはエグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)からライセンスしたGDC-0973/XL518(cobimetinib)をBRAF-V600変異型悪性黒色腫用薬として米国で承認申請したと発表した。EUでも承認審査中。同社のZelboraf(vemurafenib、和名ゼルボラフ)と併用する。

ZelborafはBRAF阻害剤、cobimetinibはMEK阻害剤で、成長因子受容体の細胞内シグナル伝達に関わる同じパスウェイを阻害する。同様な併用療法としては、GSKのbraf阻害剤Tafinlar(dabrafenib)とMEK阻害剤Mekinist(trametinib)の併用が米国で承認されている。

癌細胞の細胞内シグナル伝達因子は変異しやすいが、二つの標的を同時に狙えば片方が変異して効かなくなるリスクを削減できるかもしれない。MEK阻害剤はそれ自体にも穏やかな効果がある。また、braf阻害剤の副作用である皮膚扁平上皮細胞腫(多くは良性)のリスクも抑制できる可能性がある。

ジェネンテック/ロシュの一次治療併用試験では、PFSがメジアン11.3ヶ月とZelborof単剤群の6.0ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.6だった。グレード3以上の有害事象の発生率は65%対59%と高まり、肝臓酵素やCPKの上昇が併用群の方が多かった。

リンク:ジェネンテックのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが幹細胞療法や体重管理薬などを支持

(2014年12月19日発表)

EUの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは12月の会議で幹細胞療法やオレキシジェンの体重管理薬などに肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

Chiesi FarmaceuticiのHoloclarは、中重度の角膜輪部幹細胞欠乏症(LSCD)の治療法。患者自身から採取した角膜上皮細胞(幹細胞を含む)を培養したもの。幹細胞療法がEUで承認されれば初。

LSCDは火傷や化学物質による外傷によって幹細胞が損傷、痛みや症状が続き、視力が悪化する。EUの有病率は10万人に3.3人で希少疾患用薬指定を受けている。Holoclarは幹細胞による再生を促す。角膜移植と異なり拒絶反応や手術を回避できる。前向き試験のエビデンスが無いことから、条件付き承認となる予定。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:同(最初の幹細胞製品の承認推奨)

オレキシジェン(Nasdaq:OREX)のMysimba(naltrexoneとbupropionの合剤、米国名Contrave)は体重管理薬。活性成分はどちらも別の適応で承認されている。食欲を抑制し、エネルギー消費を促し、飽食感を増強する。肥満症(BMI30kg/m2以上)や、疾病リスク因子を持つ太り過ぎ(27~30kg/m2)の患者が、低カロリーダイエット及び運動療法と併せて服用する。16週間服用して体重が5%以上減少しなかったら打ち切る。

9月に承認された米国の用法は、12週間服用して5%以上減らなかったら止める。若干異なるのは、おそらく両地域の体重管理ガイドライン自体が異なっているのだろう。薬物療法は副作用もあるので週何キロという減量目標を達成できなかったら他の方法にスイッチすることが推奨されている。

体重管理薬は米国では12年にヴィーヴァス(Nasdaq:VVUS)のQsymia(phentermineとtopiramateの合剤)とアリーナ(Nasdaq:ARNA)/エーザイのBelviq(lorcaserin)が承認。オレキシジェン/武田薬品のContraveも今年9月に承認され、ニッチな市場で販売競争が行われている。EUはQsymiaもBelviqも承認しなかったため、オレキシジェンが先陣を切る。販売パートナーは決まっていないが、米国での反響が良ければ武田が権利を取得する可能性もありそうだ。

リンク:EMAのプレスリリース

イタリアのニューロン(SIX:NWRN)が開発し同じくイタリアのZambon社が承認申請したXadago(safinamide)も肯定的意見を獲得した。パーキンソン病の治療薬。05年に承認されたテバ/ルンドベックのAzilect(rasagiline)と同じMAO-B阻害剤で、ドパミンの再取込やグルタミン酸の放出を阻害する。Azilectは早期患者に単剤投与することが認められているが、Xadagoはレボドパを服用している中期・後期患者に追加投与する用法だけだ。

パーキンソン病にはレボドパが有効だが、長期間使ううちに有効時間(オン・タイム)が短くなる。Xadagoを追加投与した試験ではオン・タイムが30~50分長期化した。主な有害事象はジスキネジア、傾眠/不眠、眩暈、頭痛、悪心、起立性低血圧など。

早期患者向けが支持されなかったのは治療効果が穏やかであることや、新薬のニーズがそれほど切実ではないことが理由である模様。

米国でも5月に承認申請されたが、書類の目次の不備や添付文書がガイドラインに従っていないことから、受理されなかった。日本はMeiji Seikaファルマが開発販売権を保有。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:両社のプレスリリース

アクタヴィス(NYSE:ACT)が11月に6.75億ドルで買収したDurata社のXydalba(dalbavancin、米国名Dalvance)も肯定的意見を得た。グラム陽性菌による急性細菌性皮膚皮膚構造感染症に用いる。バンコマイシン系でMRSAにも活性を持ち、一週間置いて二回の点滴で足りることが特徴。今年5月に米国でも承認されている。

米国は04年、欧州は07年に承認申請されたが、試験の内容が良くなかった模様で再試験を実施。バンコマイシン(必要に応じてlinexolidも)と比べて効果が非劣性だった。

リンク:EMAのプレスリリース

リンク:Actavisのプレスリリース

適応拡大では、セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide、和名レブラミド)を多発骨髄腫で造血幹細胞移植が不適な患者の一次治療及び維持療法に用いることが支持された。MM-015試験では、MPという二剤併用レジメンよりもRevlimidも併用しコース完了後もRevlimidだけ続けるMPR-Rレジメンの方が効果が高かった。

リンク:セルジーンのプレスリリース



Revlimidのライバルである武田薬品/ジョンソン・エンド・ジョンソンのVelcade(bortezomib)は08年に一次治療の承認を受けている(維持療法は無い)が、今回、マントルセルリンパ腫の一次治療適応拡大が支持された。造血幹細胞移植不適患者が適応になる。VcR-CAPという5剤併用レジメンで、臨床試験ではR-CHOP5剤併用レジメンよりPFSがメジアン11ヶ月長く、ハザードレシオ0.63だった。

Swedish Orphan BiovitriumのXiapex(collagenase clostridium histolyticum、米国名Xiaflex)はデュピュイトラン拘縮に承認されているが、ペロニー病に用いる適応拡大が肯定的意見を得た。コラーゲン分解酵素で、ペニスに良性のしこりができることによる痛みや弯曲を治療する。

Auxilium(Nasdaq:AUXL)の開発品。AuxiliumはEndo International(Nasdaq:ENDP)と合併する予定。

【承認】


FDAがアッヴィの4剤併用抗HCV薬を承認

(2014年12月19日発表)

FDAは、Viekiraパックを遺伝子型I型HCVによる慢性C型肝炎の治療薬として承認したと発表した。平行開発された三種類の新薬とritonavirの併用レジメンで、患者によっては12週間の治療で完了する。また、患者によってはribavirinを併用しなくてもよいので、かっての標準療法であるインターフェロンもribavirinも要らない、経口剤だけの治療法になる。

4剤のうち3剤は合剤で、NS5A阻害剤ombitasvir、NS3/4A阻害剤paritaprevir、3A4阻害剤ritonavirを配合。二錠を一日一回服用する。もう一剤は非核酸系NS5Bポリメラーゼ阻害剤dasabuvirで一日二回服用する。

この二錠を12週間服用するが、遺伝子型Ia型や肝硬変、肝移植患者はribavirinも併用。Ia型且つ肝硬変合併は24週間服用する。奏効率は95~100%と高い。

値段も高い。米国では12週間分が83319ドルで販売される模様で、これは、一日一回一錠服用するだけで足りるギリアド(Nasdaq:GILD)のHarvoni(NS5Bポリメラーゼ阻害剤sofosbuvirとNS5A複製複合体阻害剤ledipasvirの合剤)の63000~94500ドル(患者特性に応じて服用期間と薬剤費が異なる)と良い勝負である。

尤も、新薬が三剤もあり、paritaprevirはEnanta(Nasdaq:ENTA)からのライセンス品であることを考えれば、競争を意識して価格を抑えたと言っても良いだろう。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:アッヴィのプレスリリース

アストラゼネカ、PARP阻害剤が欧米で承認

(2014年12月18日、19日発表)

アストラゼネカは、Lynparza(olaparib)が欧州と米国で相次いで承認されたことを発表した。06年にKuDOSを2億ドルで買収して入手、一度は開発中止の危機に陥ったが蘇った。米国の承認もウルトラCを使ったという印象だ。

Lynparzaはpoly ADP-ribose polymerase(PARP)阻害剤で、BRCA変異患者の卵巣癌に用いる。PARPとBRCAはどちらも遺伝子の修復に関わる蛋白で、BRCAに機能喪失変異を持つ人は乳癌や卵巣癌のリスクが持たない人より高い。癌細胞は活発に分裂するため遺伝子変異が起きやすいが、BRCA変異患者のPARPを阻害すると修復メカニズムが機能しなくなるため、癌細胞を抑制できる可能性がある。

第二相試験に基づく承認なのでエビデンスは明確ではなく、そのためか、欧州と米国では適応が若干異なっている。欧州は白金薬レジメンに反応した患者の維持療法として単剤投与する。BRCA変異は生殖細胞変異でも体細胞変異でも良い。米国も同じ適応で申請されたが、諮問委員会で13人の委員のうち11人が承認に反対した後に、変更された。BRCA生殖細胞変異型卵巣癌の4次治療として単剤投与する。米国は加速承認なので、進行中の第三相試験で効能を確認する必要がある。

FDAはMyriad Genetic LaboratoriesのBRCA血液検査もPMA(販売前申請)を優先審査で承認した。同社のラボで検査する。

欧州承認の根拠となった第二相試験はフェールしたが、BRCA生殖細胞変異患者の事後的分析ではPFSがメジアン11.2ヶ月と偽薬の4.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.18だった。主評価項目がフェールした後の事後的解析なので意義は曖昧だが、p値は0.00001を下回った。全生存の解析はハザードレシオ0.74、有意ではなかった。

米国承認の根拠となった第二相単群試験では客観的反応率が34%、反応持続期間はメジアン7.9ヶ月だった。

主な有害事象は悪心、嘔吐、疲労、貧血など。深刻な有害事象では骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病が見られたようだ。



リンク:アストラゼネカのプレスリリース(欧州承認、18日付)

リンク:FDAのリリース(米国承認、19日付)

リンク:アストラゼネカのプレスリリース(同)

リンク:Myriadのプレスリリース(同)

MSDが買収する企業の抗生剤が米国で承認

(2014年12月19日発表)

FDAは、Cubist(Nasdaq:CBST)のZerbaxaをグラム陰性菌による複雑尿道感染症と複雑腹腔内感染症の治療薬として承認したと発表した。アステラス製薬が創製・アウトライセンスしたセフェム系抗生剤ceftolozaneと、大鵬薬品が創製したベータ・ラクタマーゼ阻害剤tazobactamの静注用合剤で、後者の適応症ではmetronidazoleと併用する。臨床試験では効果が既存の薬と非劣性だった。院内感染細菌性肺炎でも第三相試験中。

CubistはMSDが84億ドルで買収を決めたばかり。合意直後に主力製品であるCubicinの特許裁判でGE薬メーカーに有利な判決が出る不運に見舞われ、20~30億ドル分払い過ぎとも言われているが、Zerbaxaは順調に承認された。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:Cubistのプレスリリース

アルコンの外耳炎用薬が米国で承認

(2014年12月17日発表)

FDAは、Xtoro(finafloxacin)を急性外耳炎治療薬として承認した。キノロン系抗菌剤の懸濁液。主な有害事象は耳の痒みや悪心。ノバルティスの子会社であるアルコンの製品。

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

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2014年12月14日

海外医薬ニュース2014年12月14日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ASH:ノバルティス、CAR-Tのフォローアップデータ発表
  • ASH:アドセトリスの地固め療法が成功
  • 大塚・ルンドベック、OPC-34712のデータ発表
  • SABCS:アフィニトールの一次治療試験はフェール
  • SABCS:afatinibの乳癌試験がフェール
  • ガーダシル9が米国で承認
  • リリーの抗癌剤が適応拡大
  • アストラゼネカ、オピオイド誘導性便秘薬がEUで承認


【新薬開発】


ASH:ノバルティス、CAR-Tのフォローアップデータ発表

(2014年12月6日発表)

ノバルティスはASH(米国血液学会)でCTL019の小児急性リンパ芽球性白血病試験の追加データを発表した。再発性難治性の39例中36例、92%が完全寛解し、1年生存率は75%だった。

CTL019はペンシルバニア大学の研究者が開発したCAR-T(キメラ抗原受容体-Tセル)療法で、Bセル腫瘍の治療法として注目されている。Bセル特異的な抗原であるCD19とTセル受容体の細胞内シグナル伝達ドメインであるCD137及びCD3ゼータをリンカーで結んだ蛋白の遺伝子を、レンチウイルスを用いて患者から採取したTセルに導入、培養・活性化した上で患者に戻すと、Tセルが体内で増殖しBセルを攻撃する。ノバルティスはペン大とCAR-Tの研究開発商業化で提携しており、CTL019の権利を保有している。

副作用は、応答したすべての患者でサイトカイン放出症候群が発生、1/3は治療が必要だった。IL-6受容体拮抗剤(中外のアクテムラのことではないか)が有効である模様だ。

自家細胞療法ではデンドレオンのProvenge(sipuleucel-T)が2010年に米国で前立腺癌用薬として承認されたが、高価であることや、抗原提示細胞をex vivoで抗原に感作した後の培養が上手く行かないケースがあることなどから期待されたほど売れず、経営が破綻した。CTL019は培養しやすいのかどうか、何時頃商業化できるのか、気になるところだ。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

ASH:アドセトリスの地固め療法が成功

(2014年12月8日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)と武田薬品は、Adcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)のホジキンリンパ腫地固め療法試験が成功したと発表した。PFS(無進行生存期間)リスクを43%削減する良い内容で、標準療法になるのではないか。

Adcetrisは2011年に米国でホジキンリンパ腫の三次治療及び未分化大細胞性リンパ腫の二次治療向けに承認された抗体薬物複合体で、CD30に結合してリンパ球の内部に入り、タンパク質分解酵素によりリンカーが零落してMMAEが毒性を発揮する。今回の試験は自家造血幹細胞移植を受けたが再発リスクの高い患者を対象に、最長1年間投与した。結果は、試験薬群のメジアンPFSが43ヶ月、偽薬群は24ヶ月、ハザードレシオ0.57でp=0.001。2年無進行生存率は63%対51%でこちらもp=0.001だった。

偽薬群の患者は進行後にAdcetrisを用いることが可能であったせいか、全生存の中間解析は両群大差なかったようだ。最終解析は2016年の予定。主な有害事象は末梢神経症や好中球減少症など。尚、米国のレーベルでは致死的なPML(進行性多病巣性白質脳症)が枠付警告されている。1回100万円以上の薬なので費用も掛かる。

リンク:武田薬品のプレスリリース(pdfファイル、和文)

大塚・ルンドベック、OPC-34712のデータ発表

(2014年12月10日、11日発表)

大塚製薬と開発販売パートナーであるルンドベックは、OPC-34712(brexpiprazole)の第三相試験結果を学会発表した。鬱病アジャンクト治療試験(抗鬱剤に十分に反応しない患者に追加投与)は2mgを投与した試験が成功、1mgと3mgをテストした試験は後者が成功。統合失調症治療試験は0.25/2/4mgをテストした試験は2mgと4mgが成功、1/2/4mgの試験は4mgだけ成功。

承認を取得するためには二本の独立した試験で偽薬比有意な治療効果を確認する必要があるが、この二つの疾患は病状評価スコアの感受性があまりよくなく、治験がしばしばフェールする。今回の試験では二本成功したのは統合失調症の4mgだけであり、用量反応相関域も明確ではないが、成功しただけで立派だ。今年7月に米国で承認申請された。

OPC-34712は大塚/BMSのベストセラー非定型向精神薬Abilify(aripiprazole、和名エイビリファイ)の類縁体で、D2受容体に対する活性が低く、5-HT1A/2A受容体結合力が高い由。臨床的なプロファイルがどう異なるのかは不明だが、承認後に実際に使ってみて確かめることになるだろう。向精神薬は用量に関しても承認内容通りに使われるわけではなく、承認さえ取ってもらえればあとは自分たちで至適用量を調べる、というのが専門医の考え方だ。

リンク:両社のプレスリリース(鬱病試験、10日、pdfファイル、和文)

リンク:両社のプレスリリース(統合失調症試験、11日、pdfファイル、和文)

SABCS:アフィニトールの一次治療試験はフェール

(2014年12月12日発表)

ノバルティスはサン・アントニオ乳癌会議でAfinitor(everolimus)の第三相her2陽性末期乳癌一次治療試験の結果を発表した。第二相二次治療試験では良さそうな結果が出たのが、併用薬が異なるせいか、フェールした。

Afinitorは09年に腎細胞腫、12年には乳癌に承認されたが、乳癌の適応・用法はエストロゲン受容体陽性でher2陰性の再発癌にアロマターゼ阻害剤Aromasin(exemestane)と併用する。今回の試験は対象が異なるため、併用薬はpaclitaxelとHerceptin(trastuzumab、和名ハーセプチン)だった。

結果は、メジアンPFSが15.0ヶ月と偽薬を併用した群の14.5ヶ月と大差なく、ハザードレシオは0.89に留まった。事前に設定されたホルモン受容体陰性のサブグループ分析は各20.3ヶ月と13.1ヶ月となり、数値上は良さそうだが有意差は出なかった。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

SABCS:afatinibの乳癌試験がフェール

(2014年12月12日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはSABCSで、Gilotrif/Giotrif(afatinib)の乳癌適応拡大試験がフェールしたことを発表した。昨年4月に独立データ監視委員会が中止を勧告した。

GilotrifはEGFRとher2を不可逆的に阻害する小分子薬で、EGFR活性化変異型腺腫非小細胞性肺癌の一次治療薬として欧米で承認されている。今回の試験はher2阻害力に期待したもので、Herceptinレジメンを既に受けたher2陽性患者を組入れて、vinorelbineと併用する効果をHerceptin併用と比較した。中間解析で全生存期間が短く、忍容性も悪かったため中止となった。

ベーリンガーは乳癌におけるvinorelbine併用レジメンの開発を断念した。マルチキナーゼ阻害剤はデュアルアクション、トリプルアクションが期待されるが、副作用も多彩になるので良し悪しである。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

【承認】


ガーダシル9が米国で承認

(2014年12月10日発表)

FDAは、9種類のHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)型をカバーしたMSDのワクチン、Gardasil 9を承認したと発表した。06年に承認されたGardasilは4種類のHPV型(6、11、16、18)の抗原を含有しているが、新たに子宮頸癌の2割を占める5型(31、33、45、52、58)の抗原も入れることによって、子宮頸癌原因型の87%をカバーできるようになった。

接種対象となるのは9~26歳の女性と9~15歳の男性(性的感染するので根絶には男も接種した方が良い)。効能は、7種類のHPVによる子宮頸、外陰上皮、膣上皮、肛門の癌と6型、11型による

尖圭コンジローマ(性器いぼ)の予防。既にGardasilを接種した人はGardasil 9を接種すべきなのか?おそらく、ACIP(米国のワクチン勧奨委員会)が議論することになるだろう。

HPVワクチンは既にHPV感染している人に対する効果が明確ではないが、事前検査するわけではないので無駄打ちになっても表面化しない。ワクチンは治療薬より安価で忍容性も高く、個々人だけでなく社会全体を守るという意義もあるため、細かいことは気にしない傾向がある。接種後に稀に神経障害や失神が発生することはGardasilやCervarixが日本より先に発売された国でも騒ぎになったが、日本発売時には軽視された。

リンク:FDAのリリース

リリーの抗癌剤が適応拡大

(2014年12月12日発表)

FDAは、イーライリリーのCyramza(ramucirumab)を非小細胞性肺癌の二次治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。docetaxelと併用する。第三相試験では全生存期間がメジアン10.5ヶ月とdocetaxelと偽薬を併用した群の9.1ヶ月を1ヶ月強上回り、ハザードレシオは0.857、p=0.0235だった。グレード3以上の有害事象は好中球減少症(発熱性を含む)、疲労、白血球減少症、高血圧など。扁平上皮腫では肺出血が若干増加した。

CyramzaはVEGFR-2を標的とする完全ヒト化抗体で、抗VEGF抗体のAvastin(bevacizumab、和名アバスチン)に似ている。今回の試験の延命効果は決して大きくないが、扁平上皮腫はAvastinの効果が確認されておらず恐らく肺出血リスクが高いだろうから、このタイプに関しては意義がありそうだ。

Cyramzaは末期胃癌用薬として今年、欧米で承認された。

リンク:FDAのプレスリリース

アストラゼネカ、オピオイド誘導性便秘薬がEUで承認

(2014年12月9日発表)

アストラゼネカは、Moventig(naloxegol oxalate)がEUでオピオイド誘導性便秘の治療薬として承認されたと発表した。緩下剤に反応しない成人患者に、一日一回経口投与する。ネクター社(Nasdaq:NKTR)が開発したPEG化naloxoneで脳血管関門通過性が低いため末梢選択的にMuオピオイド受容体を阻害、オピオイド常用者の8割で発生する便秘副作用を中和する。米国でもMovantik名で9月に承認された。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

今週は以上です。

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2014年12月7日

海外医薬ニュース2014年12月7日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • バクスター、PEG化第VIII因子を承認申請
  • バイエルも第VIII因子新製剤を欧州で申請
  • アストラゼネカ、イレッサを米国で承認申請
  • FDA諮問委員会がアクタビスの抗菌剤を支持
  • ダクルインザは米国では審査完了
  • アムジェンの二重特異性抗体が米国で承認
  • ジャカビが真性赤血球増加症に承認
  • ベーリンガー、nintedanibが癌でも承認
  • イクスタンジ、EUでもプリキモ承認


【承認申請】


バクスター、PEG化第VIII因子を承認申請

(2014年12月1日発表)

バクスター・インターナショナル(NYSE:BAX)はBAX 855を米国でA型血友病治療薬として承認申請したと発表した。Advateの血液凝固第VIII因子をネクター(Nasdaq:NKTR)のポリエチレングリコール付与技術でPEG化し半減期を1.4~1.5倍に長期化したもので、12歳以上の第VIII因子補充療法経験者を組入れたルーチン予防試験では、週二回の投与で出血リスクを95%削減した。インヒビターの発生は見られなかった。

リンク:バクスターのプレスリリース

バイエルも第VIII因子新製剤を欧州で申請

(2014年12月4日発表)

Advateと並ぶ第VIII因子のベストセラー、Kogenateを販売するバイエルも複数の持効性製剤を開発しているが、まず、BAY 81-8973をEUでA型血友病の青少年・成人向けに承認申請した。Kogenateの後継品で、培養精製過程でヒトや動物由来の蛋白を用いていない。ルーチン予防試験では週3回の投与で出血リスクを96%削減、週2回投与群も93%削減、インヒビターの発生は見られなかった。

A型やB型の血友病で頻繁に出血する重度患者は、第VIII因子や第IX因子をルーチンに投与して予防するのが一般的になった。AdvateやKogenateのような既存の製剤は2~3日に一回、静注する必要があるが、バイオジェン・アイデックのEloctate(和名イロクテイト)を筆頭に、3~5日に一回で済む新薬が続々と申請・承認されている。

BAX 855やBAY 81-8973は既存勢力の反撃と言える。既存の製剤をベースにしているため、スイッチしやすいだろう。

中外製薬/ロシュも第IX因子と第X因子を架橋して後者を活性化するユニークな作用機序の二重特異性抗体、ACE910/RG6013を開発中。週一回皮注なので簡便だ。尤も、Eloctateも出血管理が良好な患者は週一回に減らせる可能性があるので、重要なのは、何割の患者が週一回で大丈夫なのかという直接比較試験のデータだろう。

リンク:バイエルのプレスリリース

アストラゼネカ、イレッサを米国で承認申請

(2014年12月2日発表)

EGFRチロシンキナーゼ阻害剤Iressa(gefitinib、和名イレッサ)は02年に日本で、03年には米国でも承認された。分子標的薬の第一号であり大きな注目を集めたが、その後の歩みは順調ではなかった。日本では間質性肺疾患が多発しメディアの攻撃を受けた。海外では薬効確認試験がフェールし、米国では05年に服用中の患者を除いて投与禁止となった。末期肺癌用薬なので事実上の承認取消である。その後、非小細胞性肺癌のうちEGFRが活性化変異しているタイプには有効であることが確立、09年にEUで初めて承認された。

アストラゼネカは、Iressaを米国でEGFR活性化変異型非小細胞性肺癌の一次治療薬として新薬承認申請し、受理されたと発表した。最初の承認申請から13年、長い回り道となったが、新薬開発に携わる全ての人々にとって重要な教訓だろう。その薬に最も応答するのはどのような患者なのか?腫瘍学では第二相試験に基づいて承認申請することが珍しくなくなったが、だからといって、大規模な試験を行ってファーマコジノミクスの臨床研究を疎かにしてはいけない。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がアクタビスの抗菌剤を支持

(2014年12月5日発表)

アクタビス(NYSE:ACT)は、FDA抗感染症薬諮問委員会がCAZ-104/CAZ-AVIを二つの適応症で承認することを支持したと発表した。院内感染肺炎も申請していた模様だが、支持されなかった。

CAZ-104/CAZ-AVIは米国では85年に承認された第三世代セフェム系抗生剤、ceftazidimeと、新開発のベータラクタマーゼ阻害剤avibactamの合剤で、前臨床でceftazidime耐性菌にも活性を示した。既に承認されている薬を使っているため、今回の承認申請はFDA法505(b)(2)に基づいて、ceftazidimeに関する過去のデータと合剤の第二相試験のデータを薬効・安全性のエビデンスとした。

第二相試験の対象はグラム陰性菌による複雑腹腔内感染症と複雑尿道感染症だが、ceftazidimeは下部気道感染症などにも承認されているため、アクタビスは院内細菌感染性肺炎の承認も求めたようだ。前者の二適応症については第三相試験が完了したところ。後者は第三相試験中。

これらの背景を考えると、今回の諮問委員会は、新薬開発・承認をスピードアップするためにどこまで譲歩できるかを問うたものと言えるだろう。

結果は、最初の二つの適応症については治療の選択肢が限られているあるいは代替手段がない場合に限定して、腹腔内感染症は12人の委員中11人が、尿道感染症は9人が、承認を支持した。一方、肺炎は、薬効確認試験が完了していないため、全員が反対した。腹腔内感染症試験で腎機能低下患者の死亡率が対照薬を投与した群より高かったことも影を落としたようだ。

avibactamはフォレスト社がアベンティスのスピンアウトであるNovexel社から北米の権利を取得したもの。フォレストは後にアクタビスと合併、Novexelはアストラゼネカに買収され、今日では北米ではアクタビスが、欧州などではアストラゼネカが開発している。この合剤はFDAから適合感染症製品指定を受けているため、様々な優遇策と、承認の暁には、優先審査バウチャーが供与されることになる。

リンク:アクタビスのプレスリリース

ダクルインザは米国では審査完了

(2014年11月26日発表)

BMSはDaklinza(daclatasvir、和名ダクルインザ)を慢性C型肝炎治療薬として承認申請し、日本やEUでは承認されたが、米国ではFDAから審査完了通知を受領した。

DaklinzaはNS5A複製複合体阻害剤で、NS3A/4プロテアーゼ阻害剤asunaprevir(和名スンベプラ)と一緒に平行開発・承認申請されたが、asunaprevirは米国では申請撤回となった。Ia型ウイルスに対する効果がやや弱いことが理由と推測される。FDAがDaklinzaを承認しなかったのは、asunaprevir以外の薬と併用した症例が少ないことが理由のようだ。そういえば、日本で承認された時も、この両剤の併用に限定されていた。

インターフェロンやribavirinを必要としないレジメンが続々と登場していることを考えれば、この二剤併用法の重要性は少なくともIa型に関しては低下した。日本のようにIb型が多い国以外では、他のプロテアーゼ阻害剤と併用試験を行って十分な有効性を示すことが肝要だろう。

リンク:BMSのプレスリリース

【承認】


アムジェンの二重特異性抗体が米国で承認

(2014年12月3日発表)

FDAは、アムジェンのBlincyto(blinatumomab)を前駆B急性リンパ性白血病用薬として承認した。承認申請の3ヶ月後、審査期限の5ヶ月前のスピード承認。再発性・難治性でフィラデルフィア染色体陰性の患者が適応になる。単群試験では32%の患者が完全寛解しメジアン6.7ヶ月持続した。致死的・命に係るサイトカイン放出症候群と脳症のリスクが枠付警告された。

12年にマイクロメット社を買収して入手した二重特異性抗体(BiTE抗体)で、BセルのCD19に結合する抗体可変領域と細胞傷害性Tセル(cTC)のCD3エプシロンに結合する抗体可変領域をプリペプチドで結合したもの。cTCは抗体受容体を持たないのでBiTE抗体で直接敵を教える。標的や、サイトカイン放出症候群のリスクがある点で、最近流行になりつつあるCAR-T(キメラ抗体受容体Tセル療法)と似ている。

Blincytoはアムジェンとアストラゼネカの日本における開発提携の対象。

リンク:FDAのリリース

リンク:アムジェンのプレスリリース

ジャカビが真性赤血球増加症に承認

(2014年12月4日発表)

FDAは、Jakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)を真性赤血球増加症(PV)に用いる適応拡大を承認したと発表した。PVは10万人に1~3人が罹患する希少疾患で、標準療法は瀉血、二次治療はヒドロキシウリア、Jakafiは三次療法で米国の対象患者は推定25000人。臨床試験では赤血球量管理成功・脾臓縮小奏効率が21%と、医師が選んだ治療法または支持療法のみを施行した群の1%を有意に上回った。日本でも適応拡大申請中。

JakafiはJAK1/2阻害剤で骨髄線維腫に承認されている。インサイト(Nasdaq:INCY)が開発、米国以外はノバルティスが開発販売。

リンク:FDAのリリース

リンク:インサイトのプレスリリース

ベーリンガー、nintedanibが癌でも承認

(2014年11月27日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはVEGFR阻害剤nintedaibを特発性肺線維症と癌の二領域で開発している。前者はOfevという名称で10月に米国で承認、11月にはEUのCHMPで承認支持を受けた。後者はEUだけで承認申請された模様だが、Vargatef名で承認されたことが発表された。適応は局所進行性、転移性、または局所再発性の腺腫非小細胞性肺癌の二次治療でdocetaxelを併用する。

第三相試験ではPFS(無増悪生存期間)がメジアン4.0ヶ月とdocetaxelだけの群の2.8ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.77、p=0.0193だった。全生存の解析もメジアン12.6ヶ月対10.3ヶ月、ハザードレシオ0.83、p=0.0359だった。サブグループ分析であるせいか、p値はあまり低くない。Alimtaを併用した第三相試験はフェールした。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

イクスタンジ、EUでもプリキモ承認

(2014年12月2日発表)

アステラス製薬はXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)の適応拡大がEUで承認されたと発表した。アンドロゲン枯渇療法に反応しなくなり化学療法もフェールした前立腺癌患者向けに承認されているが、新たに、化学療法が適応になる前の無症候性・軽度症候性患者に用いることが可能になった。米国でも9月に承認済み。

前立腺癌は進行が遅いことが多く、また、手術や放射線療法、抗アンドロゲン療法も有効だが、PSA値が再上昇し始めると次の治療手段を検討することが必要になり始める。高齢者が多いので副作用が比較的強い化学療法を施行するのは症状がある程度強くなってからになる。今回の承認で、状態がそれほど悪化していない患者に使うことができるようになったため、対象患者や治療期間が大きく増加する。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)が一足先に承認されているが、Xtandiはステロイド(prednisone)を併用しなくても良いので、出番が多そうだ。

リンク:アステラスのプレスリリース(和文)

今週は以上です。

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2014年11月23日

海外医薬ニュース2014年11月23日号



(!! 来週は都合により休刊とさせていただきます。 !!!

【ニュース・ヘッドライン】




  • 優先審査バウチャーの市場価格は100億円以上
  • 抗PD-1抗体の延命効果が明確に
  • AHA:ゼチーアが穏やかな心血管疾患予防効果
  • AHA:DATは1年でも3年でも同じ
  • AHA:アスピリンの初発予防試験は日本もフェール
  • CHMPが8新薬の承認を支持
  • HarvoniがEUでも承認


【今週の話題】


優先審査バウチャーの市場価格は100億円以上

(2014年11月19日発表)

米国は採算の取れにくい病気の新薬開発を促進するために様々な制度を導入しているが、その一つが優先審査バウチャーだ。顧みられない熱帯病や小児の希少疾患に用いる薬の承認を取得すると交付され、別の薬を承認申請する時に優先審査を求めることができる。通常の審査期間は承認申請受理から10ヶ月間だが6ヶ月に短縮できれば開発競争の激しい分野では価値がある。自分で使っても良いし、第三者に譲渡することもできる。

では、どれくらいの価値があるのか?最初に表面化したのはバイオマリンのディールだ。モルキオA症候群治療薬Vimizim(elosulfase alfa)で獲得した希少小児疾患優先審査バウチャーをリジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィに6750万ドルで売却した。

両社は共同開発している抗PCSK9完全ヒト化抗体、alirocumabの承認申請に用いる予定だ。アムジェンが類薬を先に承認申請しており、差を縮めるための切り札にする。一方のバイオマリンは希少疾患治療薬の開発に特化しており、バウチャーが無くても優先審査されるだろうから、売却したのは自然の成り行きである。

今回、二つ目のディールが表面化した。ナイト・セラピュティクス(TSX:GUD)がリーシュマニア症治療薬Impavido(miltefosine)の承認で獲得した熱帯病優先審査バウチャーをギリアド(Nasdaq:GILD)に1.25億ドルで売却したのだ。ギリアドは使途を明らかにしていない。

新薬の開発コストは数億ドルとも十数億ドルとも言われるが、熱帯病や希少疾患領域は様々な公的・民間支援が得られるのでもっと少ないだろう。1億ドルは大きく、難病対策として有効な手法だ。

リンク:ナイト社のプレスリリース

【新薬開発】


抗PD-1抗体の延命効果が明確に

(2014年11月16日発表)

BMSは、小野薬品と共同開発している抗PD-1ヒト化抗体、Opdivo(nivolumab)の治験論文がNew England Journal of Medicine誌のウェブサイトで先行公開されたと発表した。

BRAF変異型ではない末期黒色腫の一次治療薬としての延命効果をdacarbazineと比較した第三相試験で、今年6月に中間解析で主目的を達成したことが公表された。ハザードレシオ0.42、99.79%信頼区間0.25~0.73、p値は0.001を下回った。メジアン生存期間はOpdivoは未達、dacarbazine群は10.8ヶ月、1年生存率は各73%と42%だった。忍容性は対照薬より良好で、有害事象による治験離脱の発生率は6.8%対11.7%、G3/4有害事象は11.7%対17.6%だった。

米国ではBMSのYervoy(ipilimumab)が二次治療限定なしで承認されたため、別途、Yervoyと比較・併用する第三相試験が進行中。併用は忍容性が課題であるように感じられるので、単剤同士の比較が注目される。

抗PD-1療法は過去の免疫強化療法と異なり、反応率が比較的高く、多くの患者に延命効果をもたらす。今回のデータはこの期待を裏切らないものだった。応答性とPD-L1発現状況の関連性が注目されているが、今回の試験では陽性にも陰性にも有効であった模様だ。

電子刊行は学会発表に合わせたものだが、BMS/小野薬品と熾烈な開発競争を行っているMSDもKeytruda(pembrolizumab)の延命効果に関連する学会発表・プレスリリースを出した。Yervoyに反応しなかった患者を組入れた540人規模の大規模な第二相試験で、承認されている用量(2mg/kgを3週間に一回)と高用量(10mg/kg、3週間に一回)の延命効果とPFS(無進行生存期間)を医師の選んだ化学療法と比較したもの。

PFS(盲検による独立中央評価)のハザードレシオは承認用量が0.57、高用量0.50、何れもpは0.0001を下回り、用量間の差は有意ではなかった。もう一つの主評価項目である全生存期間のデータは未だのようだ。

抗PD-1療法は様々な癌に有効である可能性がある。化学療法を受けると免疫力が低下する可能性があるのでその前に一次治療で用いるほうが好ましいかもしれないが、そうなると、様々な一次治療薬との併用試験を行う必要があり、開発費が嵩む。先週もドイツのメルクとファイザーが抗PD-1/PD-L1療法領域で提携したが、このような提携戦略は活発に行われるだろう。、

リンク:
OpdivoのNEJM論文(オープンアクセス)


リンク:MSDのリリース(11/16付)

AHA:ゼチーアが穏やかな心血管疾患予防効果

(2014年11月17日発表)

MSDはezetimibeの心血管疾患予防効果を検討したIMPROVE-IT試験が成功したことを正式に発表した。AHA科学部会での発表に合わせたもの。LDL-C治療薬の心血管疾患抑制作用はLDL-C低下率と相関すると考えられているが、この試験でも概ね整合的な結果、即ち、穏やかなLDL-C低下作用に見合った穏やかな予防効果が示された。

この試験は急性冠症候群を発症して10日以内の患者を組入れて、同社のsimvastatin(40mg)とVytorin(simvastatinとezetimibeの合剤、前者は40mgを使用)の効果を比較した二重盲検試験。各群のLDL-C値は1年後に69.9mg/dLと53.2mg/dLに低下しており、70mg/dL以下に引き下げる強化治療の有効性を検討した試験の一つと考えることもできる。

当初の解析計画では1万人を2年間追跡してリスクを9.375%削減する効果を検出する予定だったが、途中で目標症例数と追跡期間が拡大され、結局、1.8万人をメジアン6年間追跡した。このため、開票が3~4年遅れることになった。ezetimibeと言えばENHANCE試験の結果が中々公表されずデータ隠しの疑いが浮上したことがあり、色々な意味で注目されていた。

結果は、ハザードレシオ0.936、p=0.016で高度ではないが有意な再発予防効果が示された。各群の発生率は7年時点のカプラン・マイヤー推定で34.7%と32.7%だった。死亡リスク削減効果は見られなかった。もう一つ重要な注目点であった癌の発生率は各群10%で大差なかった。

NNTは50となるが、年率だと350、つまり、350人に1年間投与すると一人を心筋梗塞・脳卒中・心血管死から救うことができる。Vytorinの価格を年2500ドルとすると一人を救うコストは87万ドル、約1億円。日本では承認されていないのでゼチーア(ezetimibe)の価格を使うと3000万円。医療予算は無限ではないので、この費用対効果を他の治療法や他の病気の治療コストと比べた上で適否を判断することになる。尤も、この試験では4割以上の患者が途中で服用を止めたので、実際の費用はもっと小さいかもしれないが。

ezetimibeは忍容性がスタチンより高く、スタチン不耐患者には重要な選択肢だ。しかし、この試験の対象であるスタチン耐用患者に関しては、simvastatinより効果の高いスタチンを使うという選択肢もありそうだ。尚、この試験は心筋梗塞リスクが高い既往患者が対象であり、未発患者にも強化療法が有益とは限らない。常識的に考えればNNTが更に低下するだろうから、否定的に考えた方が良さそうだ。

リンク:MSDのプレスリリース

AHA:DATは1年でも3年でも同じ

(2014年11月16日発表)

冠動脈介入術でDES(薬物溶出ステント)を留置した後のDual Antiplatelet Therapy(DAT:アスピリンとチエノピリジンの併用)は、12ヶ月間と30ヶ月間のどちらが至適か?FDAの問題提起に医学者とステントメーカー、製薬会社が呼応して実施したDAT試験の結果がAHAで発表され、New England Journal of Medicine誌に論文先行公開された。NEJMのウェブサイトによるとこの論文のアクセスは4万件以上、ランキング二位となっており、いかに注目されていたかが分かる。

結果は常識的なものであった。ステント血栓の発生率は30ヶ月群が0.4%、12ヶ月で止めた群が1.4%、ハザードレシオ0.29、pは0.001未満。もう一つの主評価項目である主要心血管脳血管有害イベントは各4.3%、5.9%、0.71、0.001未満。一方で、中重度出血の発生率は2.5%対1.6%、p=0.001。効果もあるがリスクもあることが確認された。心血管疾患死は各群大差なかった。

結局、心筋梗塞などのリスクが高くDATに耐容する患者はDATを長く続け、それほど高くない、あるいはDATに不耐/出血リスク因子を持つ患者は早めにアスピリンのみにする、と使い分けるのが至適ということになりそうだ。

この試験のデザイン上の制約は、第一に、12ヶ月間のDATを終えた患者を組入れたこと。DES留置後1年以内に血行再建術などを受けた患者は除外されたので、本当に高リスクな患者は対象外だったことになる。また、DESはCypherが47%、チエノピリジンはPlavix(clopidogrel)が65%、適応症は安定狭心症が37%を占めたが、他のDESやEfient(prasugrel)、心筋梗塞患者なども含まれているので、分かり難いところがある。

DAT試験は複数の試験を同一のデザインで実施し結果を統合したものだが、その一つであるTaxus LiberteとEfientの試験結果もAHAで発表された。効果はDAT試験全体と同様だったが出血リスクは高まらなかった。Efientなら効果も出血リスクも高まりそうなものだが、今後、他のサブスタディの結果が公表されれば、全体像が見えてくるだろう。

大規模アウトカム試験は重要なエビデンスだが、難しいのは、大規模長期試験を行っているうちに世の中が変わってしまうリスクがあることだ。NEJMのエディトリアルや医療メディア報道を読むと反応は結構冷淡。今日では3~6ヶ月で止めるのが一般的になりつつあるので、この手法と30ヶ月を比較すべきだったというのだ。また、DESも日進月歩なので、いつまで経ってもエビデンスが追い付けない状態になっている。

リンク:DAT試験論文(NEJM、オープンアクセス)

さて、この試験では大きな問題が浮上した。死亡率が2.0%対1.5%、ハザードレシオ1.36、p=0.05と高かったのだ。実数は98例対74例で24例の差。上記のように心血管疾患によるものは同程度だったが、癌による死亡が31例対14例、p=0.02、出血による死亡が11例対3例、p=0.06と増加し、この二つで差を説明できる。

癌死が多かったのは治験開始時点で既に癌だった患者の数に偏りがあったことが原因かもしれない。研究者らが行ったチエノピリジンの試験のメタアナリシスでは有意な差は無かった。しかし、Plavixの日本試験で癌の発生が、Efientの海外試験では癌の死亡が偽薬群より多かったことがあり、3年間追跡した大規模な試験は今回が初めてなので、軽々には結論を出せないだろう。FDAはこのデータを検討する旨、発表した。

リンク:FDAのリリース

AHA:アスピリンの初発予防試験は日本もフェール

(2014年11月17日発表)

JPPP試験の結果がAHAとJAMA誌で発表された。アスピリンの心筋梗塞初発予防効果を検討したもので、海外の試験と同様にフェールした。結果は残念だが、こういうキチンとした試験を行った経験は今後の臨床研究に役立つだろう。

JPPP試験は高血圧などのリスク因子を持つ60~85歳の患者14000人以上を組入れてアスピリン(100mg)の心血管疾患予防効果を検討したもの。急速に高齢化が進む日本にとって重要な試験だ。1007施設のプライマリーケア医が参加した。二重盲検ではないが、いわゆるソフトなエンドポイントは採用されず、担当医の評価を第三者が査読したので主観性・恣意性は高くない。この試験のもう一つの長所は、女性が過半を占めたこと。

結果は、中間解析で無益性が認定され、メジアン5年間の追跡で繰上完了した。心筋梗塞・卒中・心血管疾患死の発生率はアスピリン群が2.77%、対照群が2.96%、ハザードレシオは0.94で95%信頼区間は1を跨ぎ、p=0.54だった。非致死的な心筋梗塞のリスクは47%削減、有意だったが、輸血や入院を必要とする頭蓋外出血が1.8倍に増加、こちらも有意だった。結局、効果はあるがリスクも大きいことになる。

リンク:JAMA論文(オープンアクセス)

【承認審査・委員会】


CHMPが8新薬の承認を支持

(2014年11月21日発表)

EUの承認審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、11月の会議で以下の8新薬に関して肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク:EMAのプレスリリース

サノフィの子会社であるジェンザイムが開発したCerdelga(eliglustat tartrate)はI型ゴーシェ病の治療薬。グルコシルセラミド合成酵素阻害剤で、酵素補充療法とは異なり一日二回の経口投与で治療することができる。CYP2D6の機能が著しく高いultra-rapid metabolizersは適応外。EUのゴーシェ病患者は15000人と推測されている。米国では8月に承認された。

リンク:ジェンザイムのプレスリリース

アッヴィは二種類の慢性C型肝炎治療薬が支持された。一つはViekirax(paritaprevir、ritonavir、ombitasvir)で、NS5A複製複合体阻害剤と3A4阻害剤、そしてNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤の合剤。一日一回、経口投与する。ritonavir以外は新規活性成分。もう一つはNS5Bポリメラーゼ阻害剤Exviera(dasabuvir)で、一日二回経口投与。

遺伝子型1型と4型が適応になる模様だ。臨床試験はこの二剤だけあるいはribavirinと三剤併用で実施された。インターフェロンを必要としない経口剤だけの治療が可能。ギリアドのHarvoni(sofosbuvirとledipasvirの合剤)は一日一回一錠なので、利便性はやや見劣りする。

リンク:アッヴィのプレスリリース

ベーリンガー・インゲルハイムのOfev(nintedanib)は、9月に腺腫非小細胞性肺癌の二次治療薬として肯定的評価を受けたが、今度は特発性肺線維症用薬としての承認が支持された。VEGF受容体など、肺線維芽細胞の増殖に関わる受容体のキナーゼを阻害する。米国では10月に承認された。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

ノバルティスの抗IL-17A完全ヒト化抗体Cosentyx(secukinumab)は中重度乾癬の治療に用いる。既存薬不応だけでなく一次治療も可。300mg皮注。FDAの諮問委員会用資料によると、最初は週一回、5回目からは4週間に一回投与する用法のようだ。米国では10月の諮問委員会に上程され、全員の支持を得た。抗IL-17A抗体はTNF阻害剤と同様に様々な疾患に有効である模様で、Cosentyxは乾癬性関節炎や強直性脊椎炎の第三相試験も成功した。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

リンク:同(乾癬性関節炎試験の結果、11/16付)

リンク:同(強直性脊椎炎試験の結果、11/15付)

セルジーン(Nasdaq:CELG)のPDE-4阻害剤、Otezla(apremilast)は中重度の乾癬や乾癬性関節炎で紫外線療法や標準的な経口剤に十分に反応しない患者の二次治療に用いる。一日二回、経口投与する。米国では今年3月に乾癬性関節炎で、9月に乾癬でも、承認。

リンク:セルジーンのプレスリリース

塩野義製薬のSenshio(ospemifene、米国名Osphena)は閉経後の膣萎縮症でエストロゲンの局所性製剤が不適な患者に用いる、選択的エストロゲン受容体調節剤。QuatRx Pharmaceuticalsから北欧以外の権利をライセンスしたもの。

MSDのZontivity(vorapaxar)は心筋梗塞の再発予防に用いる。アスピリンと、適応になる場合はPlavixも併用する。米国では5月に承認された。PAR-1阻害剤で、トロンビンが血小板のPAR受容体に結合して活性を高めるのを阻害する。尚、Zontivityと前述のezetimibe、Keytrudaの三剤は何れもシェリング・プラウを買収して入手したものだ。

この他に、09年に承認されたLaboratoire HRA Pharmaの緊急避妊薬、ellaOne(ulipristal acetate)を処方箋の要らない店頭薬として販売することも支持された。レイプの被害者などが容易に入手できるようにする。既にlevonorgestrel配合剤が店頭薬として販売されているが、72時間以内の服用が必要。ellaOneは120時間以内。

リンク:EMAのプレスリリース

多くの新薬が承認された一方で、テバはEgranli(balugrastim)の承認申請を商業上の理由で撤回した。アムジェンのNeulasta(pegfilgrastim、和名ジーラスタ)とシミラーな持続性G-CSF製剤。CHMPは9月に承認を支持したが、米国は昨年、申請撤回された。テバはratiopharm買収で入手したLonquex(lipegfilgrastim)を13年にドイツなどで発売しており、拘る必要がなかったのだろう。

リンク:EMAのEgranilに関する質疑集

【承認】


HarvoniがEUでも承認

(2014年11月18日発表)

ギリアド(Nasdaq:GILD)は、HarvoniがEUで遺伝子型1型と4型の慢性C型肝炎の治療薬として承認されたと発表した。NS5A複製複合体阻害剤ledipasvirとNS5Bポリメラーゼ阻害剤sofosbuvirの合剤で、後者は1月にSovaldi名で承認されている。一日一回、一錠を服用するだけで治療できるので簡便。治療期間は遺伝子型や治療歴や肝硬変の合併状況などに応じて8週コース、12週コース、24週コースの中から選択する。

リンク:ギリアドのプレスリリース

Harvoniは米国で12週間分の価格が9.5万ドルと大変高価な薬だが、案の定、欧州ではもう少し安くなるようだ。報道によるとフランスはSovaldiを26%引きの4.1万ユーロ、5.1万ドルで調達することでギリアドと合意した。米国でも大口割引はあるのだろうが、フランスの患者は20万人なので超大口割引を獲得。患者負担ゼロで提供する由だ。Harvoniも4.8万ユーロ、6万ドルで調達することで暫定合意した模様。

今週は以上です。

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