2026年5月2日

第1257回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • FDAがアバコバンの承認取消手続きを開始 
  • ファイザー、BCMA-CD3二重特異性抗体の2次治療試験が成功 
  • ベーリンガー、抗肥満薬の最初の第3相が成功 
  • インサイト、新規JAK1阻害剤の白斑試験が成功 
  • 経口ミノキシジルの第3相脱毛症試験が成功 
  • エキノカンジンの造血幹細胞移植後予防試験が成功 
  • 遺伝性血管浮腫の遺伝子療法試験が成功 
  • こっちのコンパス、第3相は今一つ 
  • Newron Pharmaceuticals、統合失調症第3相が米国だけ部分停止 
  • Immunome、デスモイド腫瘍用薬を承認申請 
  • ギリアド、HIVの2剤合剤を承認申請 
  • リンヴォックを米国でも脱毛症に申請 
  • 大鵬薬品ら、EGFRtk阻害剤を承認申請
  • FDA諮問委員会、アストラゼネカの2品を検討 
  • 新規乳癌用薬が承認も、自社販売はしない考え
  • Axsome社、NMDA受容体拮抗剤がアルツハイマー性アジテーションに適応拡大
  • ビレーズトリが喘息症に適応拡大 
  • JNJ、統合失調症治療薬が7年を経て再燃予防に適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


FDAがアバコバンの承認取消手続きを開始
(2026年4月27日発表)

FDAで小分子薬の承認審査を担うCDER(Center for Drug Evaluation and Research)は、アムジェンに、Tavneos(avacopan)の承認を返上するよう提案した。21年にANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎の治療薬として承認したが、アムジェンの株主代表訴訟の中で、申請内容に不実があったことが発覚した。市販後に深刻な薬物誘導肝障害が数十例、日本などで報告されていることもあり、1月にアムジェンに承認を自主返上するよう要請したが、拒否されたため、時間も手間もかかる承認取消手続きに踏み切ったもの。薬効不十分と結論付けられたわけではなさそうだが、エビデンスがあるとは言えなくなったことや、それ以上に、規制機関を欺くと報いを受けることを広く知らしめる狙いがありそうだ。

EUのCHMPも1月に不正問題の検討を開始している。日本はどうするのだろう?アムジェンのTavneosの25年売上高は4.5億ドル、前年比62%だった。

22年に子会社化したChemoCentryxのC5a受容体拮抗剤で、日本(キッセイ薬品がライセンス)で21年9月に世界初承認され、EU(Vifor Fresenius Medical Care Renal Pharmaがライセンス)でも22年1月に承認された。第3相Adovocate試験はステロイドなどで治療を受けている患者に追加投与したが、同時使用状況が複雑であることなどから、21年5月の諮問委員会でも9人が薬効を支持、9人は不支持、安全性は10人支持、8人不支持と評価が分かれた。それだけに三極承認となったのは意外だった。

FDAがアムジェンに送付した下記書簡によると、Adovocate試験の主解析はフェールしたが、ChemoCentryxが偽薬群で3例、試験薬群で6例の不自然例を発見し、改めて査読させたところ、試験薬群の5例の評価が持続的寛解に変更された。この結果、52週持続的寛解率が偽薬群は164人中90人(54.9%)、試験薬群は166人中109人(65.7%)、奏効率の群間差のp=0.013、試験成功となった。このような変更/修正は時々見かけるが、同社は治験計画に基づく解析がフェールしたことも事後的に変更したこともFDAに報告していなかった。

アムジェンは提案に応じることも、広聴機会を請求することもできる。26年第1四半期決算発表に合わせて、上記肝毒性報告などに関してレーベル変更申請したことを明らかにしており、FDAの提案の応じる考えはなさそうだ。製薬会社の権利は保護されているが、医師や患者の、少なくとも事実関係を知った上で使用の適否を判断する権利は置き去りにされている。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: アムジェンあての書簡

【新薬開発】


ファイザー、BCMA-CD3二重特異性抗体の2次治療試験が成功
(2026年4月29日発表)

ファイザーはElrexfio(elranatamab-bcmm)が第3相MagnetisMM-5試験の中間解析で主目的を達成したと発表した。データは学会等で発表する考え。世界の規制機関に報告する。

23~24年に米欧日で難治/再発多発骨髄腫用薬として承認された、形質細胞のBCMAとT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。3種類の代表的な多発骨髄腫用薬全てを含む米国では4次以上、EUでは3次以上の治療歴を持つ患者に単剤投与する。今回の試験はもっと早い段階の、lenalidomide及びプロテアソム阻害剤を含む1次以上の治療歴を持つ497人を組入れて、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を標準療法であるDPdレジメン(daratumumab、pomalidomide及びdexamethasoneを併用)と比較した。用量用法は承認用途と同じ。単剤投与群が標準療法群に統計的に有意且つ臨床的に意味のある差を付けた。

治験登録によるとこの試験にはElrexfioとdaratumumabを併用する群も設定されているが、下記プレス・リリースでは言及されていない。継続追跡ならそう書くだろうから、途中で無益認定されたのだろうか?

リンク: プレス・リリース


ベーリンガー、抗肥満薬の最初の第3相が成功
(2026年4月28日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムは、BI 456906(survodutide)が第3相SYNCHRONIZE-1試験で主目的を達成したと発表した。詳細はADA(米国糖尿病学会)で発表する考え。

グルカゴンとGLP-1の受容体を作動する週一回皮下注用薬。肥満症やMASH(代謝異常関連脂肪肝炎)の治療薬として第3相段階。今回の日本も参加した試験は、二型糖尿病を伴わない肥満症の患者725人を偽薬、3.6mg、6.0mgの3群に無作為化割付けして76週間治療し、体重低下率と5%減量奏効率を比較した。試験薬群(どちらの用量なのか、それとも2群平均値なのか、記されていない)は16.6%低下、偽薬群の3.2%を有意に上回った。試験薬群の奏効率は85.1%と38.8%で有意差があった。尚、イーライリリーやノボ ノルディスクのプレス・リリースとは異なり、同社はintent-to-treatに近く医師や患者にとって重要なefficacy estimandベースの数値だけを公表した。

体重低下作用の面ではGIP・GLP-1アゴニスト程ではなさそうに見えるが、今回の試験では除脂肪体重の低下が小さかったとのことなので、他の試験でも再現されれば筋肉減少副作用が小さい点で差別化できるかもしれない。

肥満症では、二型糖尿病を伴う患者のSYNCHRONIZE-2試験やSYNCHRONIZE-CVOT心血管アウトカム試験、そして日本だけ、中国だけの試験も進行中。

リンク: プレス・リリース


インサイト、新規JAK1阻害剤の白斑試験が成功
(2026年4月28日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)は、2026年第1四半期決算発表に合わせて、INCB-54707(povorcitinib)が第3相非分節型白斑試験2本で主目的を達成し27年上期に承認申請する考えであることを明らかにした。

既存薬より選択性が高いJAK1阻害剤。成人の活性期中重度化膿性汗腺炎向けの開発が先行しており、25年10月にEUで、今年第1四半期には米国でも、承認申請が受理された。第3相では45mg群と75mg群をテストしたが、主評価項目のHiSCRベース奏効率もG3以上の治療時発現有害事象発生率も大差なかった。

非分節型白斑のSTOP-V1試験と同V2試験は30mg群と偽薬群の第52週F-VASI75(Facial Vitiligo Area Scoring Indexが75%以上低下)達成率を比較した。一本は各群18.9%と6.8%、もう一本は18.9%と3.1%だった。5人に一人が奏効というのは見栄えがしないが、今年2~3月に欧米日で適応拡大申請されたRinvoq(upadacitinib)も一本は25%(偽薬群は6%)、もう一本は23%(同7%)だった。

リンク: プレス・リリース


経口ミノキシジルの第3相脱毛症試験が成功
(2026年4月27日発表)

Veradermics(NYSE:MANE)はVDPHL01延長放出錠(minoxidil)が第2/3相302試験で主目的と全副次的評価項目を達成したと発表した。26年下期に第3相304試験の結果が判明する見込みなので、再現されれば承認申請に向かうのではないか。

頭皮に塗布する毛生え薬の経口投与用新製剤で、活性代謝物である製剤minoxidil sulfateに徐々に変換されるため、一日1回又は2回の投与で足りる。CMaxが低くなるため心安全性の向上も期待されている。特許失効は一番早いものでも2043年とのこと。

今回の試験は軽中度アンドロゲン型脱毛症519人を偽薬群、8.5mg一日一回群、同一日二回群に無作為化割付けして6ヶ月治療し効果を比較した。共同主評価項目の一つである標的領域MAHC(非産毛毛髪数、cm2当たり)は各群7.2、30.3、33.0、もう一つの改善/大幅改善奏効率(Androgenetic Alopecia Impact Rating Scaleに基づき患者が評価)は13.4%、48.4%、62.9%となった。治療関連深刻有害事象は発生せず、特別関心有害事象である心原性イベントは発生しなかったとのこと。

この疾患は男性型脱毛症と呼ばれることが多いが、当社は女性のアンドロゲン型脱毛症の試験も行っているため、このような表記にした。

リンク: プレス・リリース


エキノカンジンの造血幹細胞移植後予防試験が成功
(2026年4月27日発表)

CorMedix Therapeutics(Nasdaq:CRMD)はRezzayo(rezafungin)が第3相ReSPECT試験で主目的を達成したと発表した。今年下期に適応拡大申請する考え。

エキノカンジン系点滴静注用薬。23年に米欧でカンジダ血症などのサルベージ用薬として承認された。米国は抗生剤の開発に様々な支援を行っているが展望が明るいとは言い難く、米国における開発/販売者はCidra、Melinta Therapeuticsと変遷し、CorMedixは25年にMelintaの事業を3億ドルで入手した。米国と日本以外はMundipharmaが権利を持っており、今回の試験もMundipharmaがスポンサーだ。

リンク: プレス・リリース


遺伝性血管浮腫の遺伝子療法試験が成功
(2026年4月27日発表)

遺伝子編集技術を持つIntellia Therapeutics(Nasdaq:NTLA)はNTLA-2002(lonvoguran ziclumeran、通称lonvo-z)が第3相HAELO試験で主目的と全副次的評価項目を達成した発表した。ローリング承認申請に着手しており、年内に完了する予定。

in vivo遺伝子療法で、Kallikreinの前駆蛋白の遺伝子であるKLKB1に特定的なgRNAとCas9 mRNAをリピッド・ナノパーティクルに封入したもの。肝臓のLDL-C受容体を通じて細胞内に入り、遺伝子転座を誘導、前駆蛋白をノックアウトする。16歳以上の遺伝性血管浮腫(HAE)患者80人を組入れて50mg群と偽薬群に2対1割付けしたところ、第5~28週におけるHAE発作回数が偽薬比87%少なかった。深刻有害事象は発生しなかった。

HAEは近年、高い発作予防効果を持つ新薬が続々登場しており、本剤は治療抵抗性患者向けになるのではないか。

リンク: プレス・リリース(第3相結果)
リンク: 同(ローリング申請開始)


こっちのコンパス、第3相は今一つ
(2026年4月27日発表)

Compass Therapeutics(Nasdaq:CMPX)はCTX-009(tovecimig)の第2/3相胆管癌試験における副次的評価項目の解析結果を公表した。一番重要な延命効果はクロスオーバーの影響もあり確認されていない。同社は承認申請に向けFDAと相談する考え。

DLL4(Delta-like ligand 4)とVEGF-Aに結合する二重特異性抗体。今回のCOMPANION-002試験は、成人の切除不能進行/転移難治胆管癌の二次治療を受ける168人を試験薬とpaclitaxelの併用群とpaclitaxelだけの群に2対1割付けしてORR(最良客観的反応率、独立委員会による放射線学的評価)を比較した。25年4月に、各群17.1%と5.3%、両側p=0.031と成功したことが公表されている。今回、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が各群4.7ヶ月と2.6ヶ月、ハザードレシオは0.44、p<0.0001であることが明らかにされた。

ORRのp値は一本の試験で承認を取るには十分に低いとはいえない。反応が持続しない症例も含まれていたのではないかと推測され、ORRで承認を取る時の重要な指標である反応持続期間は公表されていない。このため、PFSの解析が成功したのは朗報だ。但し、全生存期間はメジアン8.9ヶ月と対照群の9.4ヶ月と大差なく、ハザード・レシオも1.05だった。対照群57人中31人が進行後に試験薬にクロス・オーバーしたが、それを調整しても1.13とのことだ。

Compass Pathways(Nasdaq:CMPS)はサイケデリックの承認申請に向け順調だが、こっちのコンパスは針が揺れ動いているように見える。

リンク: プレス・リリース


Newron Pharmaceuticals、統合失調症第3相が米国だけ部分停止
(2026年4月29日発表)

イタリアのNewron Pharmaceuticals(SIX:NWRN)はNW-3509(evenamide)の第3相治療抵抗性統合失調症試験を二本、実施しているが、米国施設が参加しているENIGMA-TRS 2試験に関してFDAが新規組入れ停止を命じたと発表した。米国外の施設で突然死が発生したため。但し、担当研究員は薬物関連ではないと評価しており、独立安全性監視委員会も検討の上で治験継続を推奨したとのこと。他の国の施設は停止命令の対象外。欧州アジアなどで実施している第3相ENIGMA-TRS 1試験も対象外。

自社創製の電位依存性ナトリウムチャネル阻害剤。ナトリウムチャネルの異常活性化によるグルタミン放出を抑制するとされる。30mgを一日二回投与した第2/3相難治統合失調症試験で第4週PANSS総スコアが偽薬比有意に改善した。第3相はENIGMA-TRS 1試験では30mgと半量の15mgをテストしているが、ENIGMA-TRS 2試験は15mgだけ。尚、日本市場は24年にEAファーマがライセンスしている。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


Immunome、デスモイド腫瘍用薬を承認申請
(2026年4月29日発表)

米国ワシントン州の新興医薬品企業、Immunome(Nasdaq:IMNM)は、AL102(varegacestat)を成人のデスモイド腫瘍用薬としてFDAに承認申請したと発表した。Ayala Oharmaceuticalsから取得したガンマ・セクレターゼ阻害剤で、未治療患者や手術や放射線療法、化学療法後に進行した難治再発性デスモイド腫瘍156人を組入れた第3相で、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)の偽薬比ハザード・レシオが0.16(95%信頼区間0.071-0.375)、cORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)は56%(偽薬群は9%)だった。有害事象は下痢や疲労、ラッシュ、悪心などで多くはG2以下だった。

デスモイド腫瘍の米国患者数は1万人程度、年1000~1650人が診断される。癌ではないが疼痛などの症状を伴い、命に係わる臓器障害を合併する場合もあるようだ。類薬は23年にSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)のOgsiveo(nirogacestat)が承認されている。

リンク: プレス・リリース


ギリアド、HIVの2剤合剤を承認申請
(2026年4月29日発表)

ギリアド・サイエンシズはbictegravir(インテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビター)とlenacapavir(カプシド阻害剤)の合剤を米国で承認申請し受理されたと発表した。成人のHIV患者で抗ウイルス療法によりウイルス量を抑制できている患者がスイッチするもので、標準的治療レジメンに十分応答せずたくさんの薬を併用している患者に特に適している。一日に2~11剤を服用してウイルスを抑え込むのに成功した患者を組入れた第3相Artistry-1試験や、同社のBiktarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide fumarate)で抑え込めている患者を組入れたArtistry-2試験でフェール率(48週HIV-1 RNAが50コピー/mL以上)がスイッチしなかった群と非劣性だった。

bictegravirは米国で18年に承認されたBiktarvyに配合、lenacapavirは22~23年に欧米日で承認されたSunlencaなどの活性成分。

リンク: プレス・リリース


リンヴォックを米国でも脱毛症に申請
(2026年4月28日発表)

アッヴィは米国でJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)を成人と青少年の重度円形脱毛症に適応拡大申請したと発表した。日本でも昨年12月に円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)に一変申請している。12~64歳の患者を組入れた第3相UP-AA試験で15mgと30mgの第24週SALT20達成率(脱毛面積が全体の20%以下)が一本では各45%と55%と偽薬群の3%を有意に上回り、もう一本も各45%、54%、3%で有意だった。治療時発現有害事象の発生率は、夫々、1.4%、2.8%、0と1.9%、1.8%、0.7%だった。

リンク: プレス・リリース


大鵬薬品ら、EGFRtk阻害剤を承認申請
(2026年4月28日発表)

Cullinan Oncologyと大鵬薬品は、CLN-081/TAS6417(zipalertinib)を米国で白金薬歴のあるEGFRエクソン20欠損型局所進行/転移非小細胞性肺癌用薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は28年2月28日。

上記変異を持つEGFRのチロシン・キナーゼを不可逆的に阻害する経口剤。臨床試験でメジアン2前治療歴を持つ176人にcORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が35%、メジアン反応持続期間8.8ヶ月、白金歴のみの125人では同じく40%、8.8ヶ月だった。脳転移にも有効。治療関連有害事象は爪囲炎やラッシュなど。

リンク: プレス・リリース(和文)

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、アストラゼネカの2品を検討議
(2026年4月30日発表)

現行のFDA首脳陣はコンセンサスに拘らず少数意見を積極的に取り入れている。一例が、新薬や適応拡大に関する諮問委員会が激減していること。代わりに、FDA委員長が自分の意見に賛同するであろう委員を多く集めた会議でお墨付きを得る事例が散見される。

そのような中、FDAは9ヶ月ぶりに新薬や適応拡大に関わる諮問委員会を開催した。軌道に戻ったかと思われたが、これ以降の開催予定は発表されていないので、再び闇の時代に戻るのかもしれない。今回のアジェンダが他の案件と何が違うのか、良く分からないが、おそらく、camizestrantの第3相試験のデザインに関して、FDAや諮問委員の見解を他の製薬会社にも伝えるべきと考えたのだろう。

本題に入ると、午前の部で検討されたのはアストラゼネカの次世代選択的エストロゲン受容体零落剤、AZD9833(camizestrant)。日本も参加した第3相SERENA-6試験に基づき、成人のホルモン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移性乳癌で、内分泌療法薬による一次治療中にctDNA検査でESR1変異が検出された、未だ癌が進行していない段階の患者向けに承認申請され、25年7月に受理された。上記試験で、内分泌療法薬をcamizestrantにスイッチした群のメジアンPFS(無進行生存期間、治験医評価)は16.0ヶ月と、スイッチしなかった群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.44、統計的に有意だった。

しかし、この試験におけるPFSの意義は曖昧だ。camizestrantにスイッチしなかった患者は進行後にスイッチできるかもしれないが、camizestrant群はできないので、もし効かなくなるまでの期間が同じだった場合、治療オプションを早く使い果たすことになりかねない。懸念を払しょくするには副次的評価項目である全生存期間のデータが重要だが、未だ成熟しておらず最終解析は28年頃の見込みだ。そもそも検出力不足で答えが出るかどうか分からないようだ。有害事象も増加することなどから、FDAは懐疑的な意見を示し、諮問委員も9人中6人が、便益が棄権を上回るとは示されていないと判定した。

ERS1変異は内分泌療法による一次治療を受けている患者の3割程度で発生する、内分泌療法抵抗性のシグナルと考えられている。延命効果が確立されれば重要なバイオマーカーになりうるので、今回の諮問委員会は、製薬業界や臨床研究者に対する重要なメッセージだ。

camizestrantは欧州や日本でも承認申請中。

午後のアジェンダは同社が25年8月18日に承認申請した、AKT阻害剤Truqap(capivasertib)の適応拡大。23~24年に米日欧で承認された用途は特定の遺伝子変異を持つ局所進行/転移乳癌の再発治療だが、今回は成人のPTEN欠乏転移性ホルモン感受性前立腺癌。第3相CAPItello-281試験でアンドロゲン枯渇療法、abiraterone、及びprednisoneのレジメンに追加したところ、PFS(無進行生存期間、放射線学的評価)がメジアン33.2ヶ月と偽薬追加群の25.7ヶ月を上回った。ハザード・レシオは0.81、p=0.034だったが、抗癌剤のハザード・レシオの要求水準は0.8以下と言われ、臨床試験一本で承認を取る場合に必要なp値は0.0025未満と言われているので、微妙な成績だ。全生存期間の中間解析もハザード・レシオ0.90、p=0.401と、見静寂なのでp値は無視してもよいがハザード・レシオは今一つ。G3以上の有害事象発生率は67%対40%でかなり増加した。FDAはこれらの点に懸念を持っている様子だ。

しかし、諮問委員会は支持が7人、反対が1人、棄権1人と圧倒的多数が承認を支持した。メジアンPFSの群間差が7ヶ月超と比較的大きかったことが後押しした模様だ。

この適応拡大はEUでも承認申請中。

FDAの諮問委員会は特定の側面に関して意見を聞くもので、委員の多数が便益が棄権を上回る(承認に値する)と評価したとしても、拘束力はない。

リンク: アストラゼネカのプレス・リリース(camizestrant)
リンク: 同(Truqap)

【承認】


新規乳癌用薬が承認も、自社販売はしない考え
(2026年5月1日発表)

FDAは、米国コネチカット州のArvinas(Nasdaq:ARVN)のVeppanu(vepdegestrant)を成人の内分泌療法後に進行したESR1変異型、エストロゲン受容体陽性、そしてher2陰性の進行/転移乳癌向けに承認した。Guardant360 CDxをコンパニオン診断薬として承認した。日本も参加した第3相VERITAC-2試験で200mgを一日一回経口投与する群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)をfulvestrant筋注と非盲検下で比較したところ、PFSが5.0ヶ月対2.1ヶ月と上回り、ハザード・レシオは」0.57、p=0.0001だった。全生存期間の解析は未成熟。警告注意事項はQTc間隔延長と胚胎毒性。

同社は標的蛋白に結合する分子とセレブロン(CRBN)に結合分子をリンカーで繋げたPROTAC(PROteolysis TArgeting Chimera)技術を持っており、Veppanuは実用化第1号。この作用機序は添付文書でヘテロ二機能性蛋白分解誘導剤と表現されている。ファイザーと共同開発してきたが、両社は、商業化権を導出することで合意した。上記試験はESR1変異型以外も含む全被験者のPFSも共同主評価項目だったが、両群大差なかった。ESR1変異型は2次治療患者の4割程度が該当と言われているのでベッパンに任せるほどでもないはずだが、一次治療併用などもっと長期間投与できるTPOでの展望などを考慮したのかもしれない。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: Arvinasのプレス・リリース

Axsome社、NMDA受容体拮抗剤がアルツハイマー性アジテーションに適応拡大
(2026年4月30日発表)

米国ニュー・ヨーク州のAxsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、Auvelity(dextromethorphan Hbr、bupropion HCl)をアルツハイマー病患者のアジテーションの治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。この疾患で向精神薬以外が承認されたのは初めて。鎮咳去痰薬として使われてきたNMDA(N-methyl D-aspartate)受容体アンタゴニストの半減期を、鬱病や薬物依存の治療薬として使われてきた薬のCYP2D6阻害作用の利用して長期化し一日二回経口投与で足りるようにした、温故知新型合剤で、22年に米国で鬱病用薬として承認された。

アルツハイマー病の代表的な症状の一つであるアジテーションを抑制する作用は、第3相急性期治療試験2本と、急性期治療に応答した患者を継続投与群と偽薬スイッチ群に無作為化割付けした第3相離脱試験2本で検討され、前者は一勝一敗、後者は二勝だったが、添付文書には各1本ずつしか記されていない。

鬱病の用法は各剤45mgと105mgを配合する錠剤を最初は一日一回、4日目に一日二回と漸増する。アルツハイマー病ではもう少し緩徐で、30/105mg錠一日一回で開始、一週間後から同一日二回、第15日から45/105mg錠を一日二回、と漸増していく。枠付き警告は、抗鬱剤治療を受けている青年とヤング・アダルトにおける自殺思慮・行動。

リンク: プレス・リリース


ビレーズトリが喘息症に適応拡大
(2026年4月28日発表)

アストラゼネカは、Breztri(budesonide、glycopyrrolate、formoterol fumarate)を12歳以上の喘息症の維持療法に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。第3相のLOGOS試験や日本も参加したKALOS試験でbudesonideとformoterol fumarateの二剤合剤と比較したところ、24週の1秒量(0~3時間後の曲線下面積)が有意に上回った。欧州や日本でも適応拡大申請中。

19~20年に日米欧でCOPDの維持療法薬として承認された、ステロイドと長期作用性ムスカリン拮抗剤、長期作用性ベータ2作用剤の吸入用3剤合剤。COPDでは各活性成分を160mcg、9mcg、4.8mg配合した製品を一度に二回、一日二回吸入するが、喘息症は各剤160mcg、18mcg、4.8mcgとムスカリン拮抗剤が増量されている。尚、gycopyrrolate 9mcgは欧日の添付文書ではglycopyrronium bromide 7.2mcgと表現されている。

リンク: プレス・リリース


JNJ、統合失調症治療薬が7年を経て再燃予防に適応拡大
(2026年4月27日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは、Caplyta(lumateperone)を統合失調症の維持療法に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。Caplytaによる急性期治療が奏功した228人を組入れて継続投与の便益を検討した第3相試験で、偽薬にスイッチした群と比べた症状再燃ハザード・レシオが0.37、再燃率は各群38.6%と16.4%だった。

Intra-Cellular Therapiesを買収して入手した、5-HT2A受容体とドパミンD2受容体の拮抗薬。オリジンはブリストル マイヤーズ スクイブのようだ、米国で19年に統合失調症の急性期用薬として承認され、双極性障害の鬱症状や大鬱病のアジャンクティブ用途(追加投与)に適応拡大してきた。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
26/5推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
26/6/18アストラゼネカのTruqap(capivasertib、PTEN欠乏HSPC)
26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)


今週は以上です。