2018年4月30日

2018年4月30日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イミフィンジ、抗CTLA4抗体併用試験がまたフェール 
  • アッヴィ、抗IL-23p19抗体を承認申請 
  • FDA諮問委員会、オルミエントの用量依存的血栓リスクに懸念 
  • CHMPがギリアドの抗HIV薬などの承認を支持 
  • マイロターグがEUで初承認 
  • BMS、オプジーボの固定用量がEUでも承認 
  • FDA、ラミクタールの稀な血液疾患副作用を警告 


【新薬開発】


イミフィンジ、抗CTLA4抗体併用試験がまたフェール
(2018年4月24日発表)

アストラゼネカは、Imfinzi(durvalumab、和名イミフィンジ)の第三相非小細胞性肺癌三次治療試験、ARCTICがフェールしたと発表した。PD-L1低・無発現癌(SP263アッセイで閾値25%)に対する、ファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体、tremelimumabとの併用療法の効果を化学療法と比較したが、PFS(無進行生存期間)も全生存期間も有意に上回らなかった。

この試験は他にも様々な群が設定されていて、PD-L1陽性にImfinziのモノセラピーと化学療法を比較した群は臨床的に意味のある差があった由だが、統計学的に意味のある解析ではない模様だ。データは学会発表する計画。

Imfinziとtremelizumabの併用療法は、一次治療のMYSTIC試験でもPFS解析がフェールしており、芳しくない。Imfinziは抗PD-L1抗体だが、BMSの抗PD-1抗体であるOpdivo(nivolumab)と抗CTLA4抗体のYervoy(ipilimumab)の併用療法もPD-L1陰性癌の試験がフェールした。悪性黒色腫の試験では、PD-L1陰性癌に対するOpdivoの効果をYervoy併用で増強することができたのだが、肺癌は勝手が違うようだ。

Imfinziは米国で尿路上皮細胞腫の二次治療や非小細胞性肺癌の化学放射線療法後維持療法に承認されている。日本でも後者で承認申請され、先日、第二部会を通過した。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


【承認申請】


アッヴィ、抗IL-23p19抗体を承認申請
(2018年4月25日発表)

アッヴィは、ABBV-066(risankizumab)を中重度尋常性乾癬の治療薬としてFDAに承認申請した。IL-23のp19サブユニットを標的とするヒト化抗体で、ベーリンガー・インゲルハイムのBI 655066を共同開発しているもの。

抗IL23p19抗体は続々と登場しており、ジョンソン・エンド・ジョンソンのTremfya(guselkumab)は17年に欧米で、今年3月には日本でも、中重度乾癬に承認された。Sun PharmaがMSDからライセンスしたIlumya(tildrakizumab)も先月、米国で承認。

何れも皮注。維持期の投与頻度が異なっており、Tremfyaは8週毎だが、他の二剤は12週毎。

リンク: アッヴィのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、オルミエントの用量依存的血栓リスクに懸念
(2018年4月23日発表)

FDAの関節炎諮問委員会は、イーライリリーが中重度リウマチ性関節炎の治療薬として承認申請したOlumiant(baricitinib、和名オルミエント)を検討、欧州や日本で標準的開始用量とされている4mg/日の安全性に多数の委員が懸念を示した。

Olumiantは、ファイザーのXeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)と同様に、インターロイキン受容体の細胞内シグナル伝達に係るJAK(Janus kinase)を阻害する経口剤。XeljanzはJAK3に選択的でJAK3とJAK1のヘテロダイマーも阻害できるが、OlumiantはIL-6受容体などに係るJAK1やEPO受容体などに係るJAK2に選択的という違いがある。

09年にインサイト(Nasdaq:INCY)から炎症性疾患領域での開発販売権を取得した。欧州や日本では17年に承認されたが、米国は審査完了となり、今回は二巡目の審査。

欧州や日本では4mg/日で開始して応答したら2mg/日に減量可、というのが標準用法だが、諮問委員会では、薬効に関しては両用量とも概ね支持されたが、安全性は4mgは支持5人、反対10人とダブルスコアで反対が上回った。2mgは9対6で支持が上回ったが決定的な差ではない。便益が危険を上回るか(米国における承認判定基準)、という質問に関しては、4mgは賛成5人、反対10人、2mgは賛成10人、反対5人という結果になった。

主因は、日欧のレーベルにも記載されている、血栓リスクだ。JAK阻害剤は複数承認されているが、Olumiantは他剤と異なり臨床試験で深静脈血栓や肺塞栓のリスクが見られた。頻度は100人年当り0.46と極稀だが、致死例もあり、敢えてこの薬を選ぶことを正当化ためには、明確なアドバンテージが欲しいところだ。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

CHMPがギリアドの抗HIV薬などの承認を支持
(2018年4月27日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、4月の会合で、ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のBiktarvyなどの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

Biktarvyはインテグラーゼ・ストランド・トランスファー阻害剤のbictegravirと核酸系逆転写阻害剤のemtricitabine及びtenofovir alafenamide fumarateを配合した錠剤で、一日一回の服用で足りる。米国では2月に承認された。

リンク: ギリアドのプレスリリース

適応拡大では、まず、ロシュのPerjeta(pertuzumab、和名パージェタ)を早期her2陽性乳癌の術後アジュバント療法に用いることが支持された。化学療法及びHerceptin(trastuzumab)と併用する。エビデンスはAPHINITY試験だが、一部のサブグループでは効果が確認されなかったため、CHMPは適応を高リスク患者に限定した。昨年承認された米国でも同様。日本でも適応拡大審査中。

リンク: ロシュのプレスリリース

次に、アストラゼネカのTagrisso(osimertinib、和名タグリッソ)をEGFR活性化変異型非小細胞性肺癌の一次治療に用いること。現在は他のEGFR阻害剤の次に使う薬として日米欧で承認されている。

また、ファイザーのXeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)による中重度尋常性乾癬治療。疾病装飾的抗リウマチ薬に十分に反応しない患者に用いる。現在は関節リウマチなどに承認されている。

そしてアムジェンのProlia(denosumab)をステロイド誘導性骨減少の治療に用いること。骨折リスクの抑制を目指す。

リンク: アムジェンのプレスリリース

最後に、UCBの抗TNFアルファPEG化抗体フラグメント、Cimzia(certolizumab pegol)の中重度尋常性乾癬適応拡大。Dermira(Nasdaq:DERM)がこの用途での権利を持っている。


【承認】


マイロターグがEUで初承認
(2018年4月23日発表)

ファイザーは、Mylotarg(gemtuzumab ozogamicin)がEUで急性骨髄性白血病用薬として承認されたと発表した。15歳以上で、初めて治療を受ける、原発性の、CD33陽性癌が適応になる。肝毒性があり、致死的な肝静脈閉塞症を発症することがある。

Mylotargは抗体薬物複合体のハシリで、2000年に米国で承認されたが、深刻な肝毒性が表面化する一方で薬効確認試験がフェールしたため、FDAの要請に基づきメーカーが自主的に販売を中止した。その後、研究者主導試験が成功、昨年、改めて承認された。日本は05年にモノセラピーが承認され、米国販売中止後も販売が継続されており、用量が多すぎるままである。

日米と異なりEUは最初は承認しなかったので、今回が名実ともに初承認になる。

リンク: ファイザーのプレスリリース

BMS、オプジーボの固定用量がEUでも承認
(2018年4月25日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の新用量がEUに承認されたと発表した。従来は患者の体重に合わせて決定していたが、6種類の癌にモノセラピーを施行する時は240mgを2週間おきに30分点滴静注することができる。悪性黒色腫と腎細胞腫のモノセラピーは480mgを4週間おきに60分点滴静注することも可能。

MSDのKeytruda(pembrolizumab)も固定用量が承認されており、高価な薬を使い残す無駄の解消に役立とう。Keytrudaの投与頻度は3週毎なので、一部の適応ではOpdivoの利便性が上回ることになる。

リンク: BMSのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、ラミクタールの稀な血液疾患副作用を警告
(2018年4月25日発表)

FDAは、Lamictal(lamotrigine、和名ラミクタール)のHLH(血液貪食リンパ組織球増数症)リスクに関する警告を発出した。94年の初承認以来、8例がFDAに報告されている。年一件足らずの極稀な有害事象ということになるが、広く認知されていない有害事象は報告されないことが多いので、油断はできない。早く治療すれば死亡リスクを削減できるので、その意味でも、内容を理解しておくことが重要だ。

HLHの判定は、診断基準に記載されている複数の症状のうち幾つ当てはまるかで決する。Lamictalの症例報告で比較的多いのは、発熱、血小板減少症、高フェリチン血症、低フィブリノーゲン血症など。

リンク: FDAの安全性情報





今週は以上です。

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2018年4月22日

2018年4月22日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • AACR:キイトルーダは非小細胞性肺癌一次治療の標準療法に 
  • AACR:オプジーボとヤーボイの併用も有効だったが... 
  • Alkermes、FDAが申請拒否したのは間違いだった? 
  • BMS、オプジーボを小細胞性肺癌に適応拡大申請 
  • FDA諮問委員会、大麻由来の抗癲癇薬を支持 
  • 協和発酵創製の希少疾患用抗体医薬が米国で承認 
  • RigelのSyk阻害剤が米国で承認 
  • BMS、腎癌でもオプジーボ・ヤーボイ併用が承認


【新薬開発】


AACR:キイトルーダは非小細胞性肺癌一次治療の標準療法に
(2018年4月16日発表)

MSDの抗PD-1抗体、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)のKEYNOTE-189試験の結果がAACR(米国癌研究会議)で発表された。転移性非扁平上皮性NSCLC(非小細胞性肺癌)の標準的一次治療である白金薬とpemetrexedの併用レジメンに更にKeytrudaを追加する効用を検証したところ、PD-L1発現状況を問わず、全生存期間もPFS(無進行生存期間)も偽薬を追加した群を有意に上回った。

この用法は米国では昨年5月に承認済みだが、第1/2相試験に基づく加速承認で、一次治療薬に求められる延命効果は確立していなかった。また、KeytrudaはモノセラピーでNSCLCの一次治療に用いることも承認されているが、対象はPD-L1高発現(TPS≧50%)のみである。また、ライバルのBMSのOpdivo(nivolumab)はNSCLCの試験ではなかなか結果を出せていない。189試験の成功は、様々な意味で、Kyetrudaの評価を高めた。

尚、この試験は幾つかの除外条件がある。まず、扁平上皮腫。pemetrexedが適応にならないため、407試験で別のレジメンとの併用を検討している。次に、EGFRやALKの活性化変異。白金レジメンではなくEGFR阻害剤やALK阻害剤が第一選択になるからだろう。今回初めて知ったのは、この試験だけでなくKeytrudaの複数の試験で、一定以上の放射線照射歴が除外条件になっていること。肺炎リスクが高まる由だが、この情報は広く共有されているのだろうか?

さて、主評価項目は元々はPFSだけだったが、昨秋、全生存期間も追加することが発表された。結果は、PFSはメジアン8.8ヶ月と偽薬併用群の4.9ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.52(95%信頼区間0.43-0.64)。全生存期間はメジアン未達、偽薬併用群は11.3ヶ月、ハザードレシオは0.49(同0.38-0.64)。

全生存ハザードレシオは、TPS≧50%の高発現サブグループでは0.42、1-49%は0.55、陰性でも0.59で、何れも95%上限が1を下回っており、この三剤併用はPD-L1発現状況を問わず有効であることが示された。

偽薬併用群は癌の進行が認定された後にKeytrudaなどの抗PD-1/PD-L1薬を用いた患者が多かったが、それでも延命効果に大きな差が出た。忍容性に配慮して一次治療は二剤併用で留めKeytrudaは二次治療に取って置く、という治療方針が否定されたことになる。

一方で、一次治療をKeytrudaだけに留める手法は必ずしも否定されていない。TPS≧50%に対するモノセラピーの効用を白金ベース二剤併用と比較した024試験では、PFSのハザードレシオが0.50、全生存期間は0.60と、今回とそんなに差のない数値が出ている。これらの点推定値が真実であったとしても、この程度の差で統計的に有意という答えを出すためには相当な症例数が必要なのではないか。また、モノセラピーは現状ではTPS≧50%だけが適応だが、将来的に50%未満に広がる可能性もありそうだ。

これらのことから、特にTPS≧50%に関しては、Keytrudaモノセラピーを第一選択にするケースも多そうだ。

抗PD-1/PD-L1は副作用の出方が化学療法と異なるので特別な配慮が必要だ。抗癌剤なので命に係わる副作用も少なくない。本試験では三剤併用群で治療関連死が3例発生した。何れも肺炎によるもの。上記のように、放射線治療歴を持つ患者に用いる場合は特に注意が必要かもしれない。

AACRでは黒色腫アジュバント試験の結果も発表されたので、簡単に記しておこう。ステージIII(AからCまで)の黒色腫を完全切除したが再発リスクの高い患者にKeytrudaまたは偽薬を投与したもので、無再発生存のハザードレシオが0.57(98.4%信頼区間0.43-0.74)、1年無再発生存率は各75.4%と61.0%だった。もうひとつの主評価項目であるPD-L1陽性サブグループの分析でもハザードレシオ0.54で統計的に有意な差があった。PD-L1発現状況やBRAF変異の有無を問わず、有効だった。

Opdivoも黒色腫アジュバントに承認されているが、臨床試験の組入れ基準はKeytrudaのほうが広い。

リンク: MSDのプレスリリース
リンク: 同(黒色腫試験について、4/15付)

AACR:オプジーボとヤーボイの併用も有効だったが...
(2018年4月16日発表)

AACRでは、BMSの免疫強化療法薬二剤をNSCLC一次治療に併用したCheckMate-227試験の結果も発表された。TMBという新しい遺伝子分析手法を用いてスクリーニングしたサブグループにおける有効性が明らかになったが、上記のKeytrudaのデータと比べて見劣りするだけでなく、このスクリーニング手法の有益性が曖昧であることや、解析計画が途中で複雑で分かり難いものに変更されたことによる不透明感も重なり、これで答えが出たという印象を持つことが困難である。

BMS/小野薬品とMSDの抗PD-1開発競争は、前者のほうが先行していたはずだが、米国承認はMSDが先んじた。非小細胞性肺癌の臨床試験では、MSDがモノセラピーや白金ベース併用試験を次々と成功させているのに対して、BMSはYervoy(ipilimumab)併用に重点を置いたことが黒色腫などと異なり肺癌では裏目に出ているような印象を受ける。

何れにせよ、MSDが10年以上前から臨床開発をスピードアップすべく取り組んできた成果が、抗PD-L1という開発すべき用途や併用法が滅茶苦茶多そうなテーマの出現で、顕在化したといえるだろう。

さて、227試験に話を戻すと、末期NSCLCの一次治療を受ける患者を組入れて、白金ベースの標準療法(扁平上皮腫はgemcitabine、それ以外はpemetrexedを併用;以下、標準療法)と、Opdivo(nivolumab;以下、モノセラピー)、Opdivo・Yervoy併用(以下、OY)、そしてOpdivo・標準療法併用(以下、OCT)の全生存期間やPFSを比較したもの。

3部に分かれており、パート1aはPD-L1発現癌を組入れてモノセラピーやOYを標準療法と比較、パート1bは陰性を組入れてOYやOCTを標準療法と比較、パート2では組入れ除外条件を緩和して様々なタイプの患者に対してOCTと標準療法を比較した。

今回発表されたのは、まず、パート1aと1bに組入れられた約1740人のうちTMBが10 mut/Mb以上と判定された299人のOY群と標準療法群のPFS解析だ(主評価項目)。ハザードレシオ0.58(97.5%信頼区間0.41-0.81)となり、PD-L1発現が1%以上のサブグループでも、1%未満でも、効果があった。

主評価項目ではないが、TMB≧10 mut/Mbグループの全生存期間の解析はハザードレシオ0.79(95%信頼区間0.56-1.10)で、上記のKeytrudaの数値と比べて点推定値が見劣りするだけでなく、信頼区間が1を跨いでいる(統計的に有意ではない)。

ここでTMBを説明しておくと、Tumor Mutation Burdenの略。腫瘍に関連する遺伝子変異の中には、EGFRやALKの活性化変異のように癌化に決定的な影響を持つ変異もある一方で、個々の変異の影響は小さくても多数重なると癌化するものがあっても不思議ではない。特定の遺伝子一つではなく、多数の遺伝子における変異の数に基づいて癌を分類するのがTMBで、メガバイト当りの変異数(mutation/Megabite)で表す。

閾値を10に設定したのは過去の試験のデータに基づくもので、通常は40~45%が該当するとのことだ。TMB検査はPD-L1検査より費用も必要な検体の量も数倍とのこと。

もう一つの主評価項目であるPD-L1≧1%のユニバースの全生存期間は今年遅くまたは来年初めに結果が出る見込み。BMSは、これを待たずに承認申請する考え。今後の解析で全生存期間で有意差が出ると良いのだが...

モノセラピーの効果に関しては、二次的評価項目として、TMB≧13 mut/MbかつPD-L1≧1%のサブグループのPFS解析が行われた。結果はハザードレシオ0.95(97.5%信頼区間0.61-1.48)とフェールした。

KeytrudaとOpdivoが異なる薬だと思っている人は少ないだろう。今回の試験を決定版と受け止めるのは早計のように感じられるが、同じことを何度も書くことはできず、どこかの段階で結論を出さざるを得ない。BMS/小野薬品に残された時間は少なくなってきた。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認申請】


Alkermes、FDAが申請拒否したのは間違いだった?
(2018年4月16日発表)

Alkermes(Nasdaq:ALKS)は、FDAがALKS 5461の承認申請を受理したと発表した。先週、受理せずと発表したばかりだが、薬効の立証が不十分なのでよくデザインされた試験を別途行うよう求めたのは、今回の承認申請とは直接関係ない事項に関するものであったらしい。おそらく、受理を拒否する理由としては不適切という話で、正式な承認審査が始まった段階で改めて取り上げられるのではないか。

ALKS 5461は、ミュー・オピオイド受容体に対してはアゴニスト、カッパ・オピオイド受容体にはアンタゴニストとして作用するbuprenorphineに、ミュー・オピオイド受容体アンタゴニストのsamidorphanを追加することで、カッパ・アンタゴニズムだけを生かすアイディア。第三相の最初の二本は主評価項目のMADRSがフェール、三本目は評価項目を10から6に減らしたMADRS-6の期中平均値に切り替えたところ、高用量二群が成功した。

抗鬱剤は試験で一敗、二敗しても二勝すれば合格といわれるが、ALKS 5461の場合は第三相だけでは足りないので第二相試験も含めた総合的な評価に望みを託することになる。承認申請は申請書類が概ね完全なら受理されるので、受理されたからと言って承認されるとは限らない。

buprenorphineはオピオイド依存治療薬として承認されている活性成分なので、申請書類の中には様々な文献データが引用されているだろう。合剤の場合、しばしば、単剤との比較試験が求められるが、単剤では抗鬱剤としての効果は不十分、という文献があったとしても、上記の理由で、一本や二本フェールしても、薬のせいなのか、治験がフェールしたのか、分からない。このため、改めて比較試験を行うべきとFDAは考えているのかもしれない。何れにせよ、単剤との比較よりも、合剤と偽薬の比較のほうが重要な論点になりそうだ。

リンク: Alkermesのプレスリリース

BMS、オプジーボを小細胞性肺癌に適応拡大申請
(2018年4月18日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)を小細胞性肺癌の三次治療に用いる適応拡大をFDAに申請し受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は8月16日。エビデンスとなる第1/2相CheckMate-032試験では、BICR(盲検独立中央評価)によるORR(客観的反応率)が11%で、TMB(Tumor Mutation Burden)高位のサブグループでは21%、中位と下位は各7%と5%だった。今回はモノセラピーだけのようだが、Yervoy併用群のBICR-ORRは22%だった。

リンク: BMSのプレスリリース
リンク: 同(032試験の学会発表について、17年10月16日付)

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、大麻由来の抗癲癇薬を支持
(2018年4月18日発表)

FDAの末梢中枢神経系薬諮問委員会は、英国のGW Pharmaceuticals(Nasdaq:GWPH)がレノックス・ガストー症候群やドラベ症候群のアジャンクト(補助的追加)療法として承認申請したEpidiolex(cannabidiol)について検討し、投票権を持つ13人の委員全員が便益が危険を上回る(承認に値する)と判定した。審査期限は6月27日。承認されたら、大麻由来の医薬品もドラベ症候群の薬としても米国初。

GWは大麻の成分を医薬品として開発している会社で、合成テトラヒドロカンナビノールなどに加えて、大麻抽出物のnabiximols(USAN)をSativex名で欧州カナダなどで販売している。今回のカンナビジオール液は、幼小児期に発症する深刻な癲癇であるレノックス・ガストー症候群のアジャンクト試験で失立発作回数が治験前と比べて44%減少した(偽薬群は22%減少)。ドラベ症候群試験では痙攣発作頻度が39%減少した(偽薬群は13%)。

至適用量の検討が不十分と指摘されたので、承認後に追加試験を行うことになりそうだ。肝毒性が見られるためモニタリングが必要。大麻の成分には依存性のあるものもあるが、カンナビジオールはWHOもFDAも薬物依存のリスクは小さいと判断している模様。最終的には米国薬物管理庁(DEA)がFDAなどの評価に基づきスケジュール指定する。

欧州でも昨年、承認申請された。

リンク: GW社のプレスリリース


【承認】


協和発酵創製の希少疾患用抗体医薬が米国で承認
(2018年4月17日発表)

FDAは、Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)のCrysvita(burosumab-twza)をX染色体遺伝性低リン血症(XLH)治療薬として承認した。1歳以上が適応になる。

XLHはくる病の一種でX染色体上の遺伝子変異によりFGF(線維芽細胞増殖因子)23が過剰生産され、尿細管におけるリンの再吸収が減少、リン不足により骨の成長障害を合併する。CrysvitaはFDF23を標的とする完全ヒト化抗体で、臨床試験では9割以上の患者で血清リン濃度が正常化した。米国の患者は小児が3000人、成人12000人と推測されている。

Ultragenyxは正味価格で年20万ドル(小児は16万ドル)程度を計画している模様。また、今回の承認で希少小児疾患優先審査バウチャーを取得することができる。同社はチッカーシンボルが示すように希少疾患に特化しているためこのようなバウチャーは不要なはずであり転売するのではないか。昨年、ムコ多糖症7の治療薬としてMepsevii(vestronidase alfa-vjbk)が承認された時の同様なバウチャーは1.3億ドルでノバルティスに売却した模様。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 二社のプレスリリース

RigelのSyk阻害剤が米国で承認
(2018年4月17日発表)

Rigel Pharmaceuticals(Nasdaq:RIGL)は、Tavalisse(fostamatinib disodium hexahydrate)が慢性免疫性血小板減少症の二次治療薬としてFDAに承認されたと発表した。第三相試験の成績が一本はp=0.03とボーダーライン上、もう一本はフェールしたので結果が危惧されたが、無事ゴールした。

マクロファージやB細胞のIgG受容体の細胞内シグナル伝達に係るSyk(spleen tyrosine kinase)を阻害する経口剤で、100mgを一日二回服用する。アストラゼネカと抗リウマチ薬として共同開発したことがあるが、副作用リスクなどが浮上し、提携解消となった。

主な有害事象は血圧上昇、肝機能検査値異常、下痢、好中球減少症など。

リンク: Rigelのプレスリリース

BMS、腎癌でもオプジーボ・ヤーボイ併用が承認
(2018年4月16日発表)

BMSは、中高リスク腎細胞腫の一次治療にOpdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を併用する適応拡大がFDAに承認されたと発表した。前者は3mg/kg、後者は1mg/kgを三週間毎に4回投与し、その後は前者だけを二週間に一回、維持投与する。維持投与期の用量・頻度は3mg/kgまたは240mg固定用量を2週毎、または480mg4週毎、の三種類の選択肢がある。

Sutent(sunitinib)と直接比較したCheckMate-214試験では、共同主評価項目のうちORRは41.6%対26.5%で有意に上回ったが、PFSはメジアン11.6ヶ月対8.4ヶ月、ハザードレシオ0.82でフェールした。しかし、第三の主評価項目である全生存期間のハザードレシオは0.63となり、統計的に有意。低リスク患者も含めた全ユニバースの解析でも有意差があった。

リンク: BMSのプレスリリース






今週は以上です。

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2018年4月16日

2018年4月15日


【ニュース・ヘッドライン】

  • キイトルーダ、肺癌一次治療で化学療法に勝つ 
  • poziotinibがエクソン20変異肺癌に良績 
  • ファイザー、インライタの腎癌アジュバントはフェール 
  • RAGEアンタゴニストのアルツハイマー第三相がフェール 
  • PI3キナーゼ阻害剤の承認申請受理 


【新薬開発】


キイトルーダ、肺癌一次治療で化学療法に勝つ
(2018年4月9日発表)

MSDは、KEYNOTE-042試験が中間解析で成功認定されたと発表した。Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を非小細胞性肺癌の一次治療にモノセラピーで用いたところ、白金ベースの化学療法を施行した群より全生存期間が有意に長かった。データは未発表。

抗PD-1/PD-L1抗体の有効性はPD-L1発現状況により左右されるか、否か?臨床試験の結果は区々で、Keytrudaの場合、非小細胞性肺癌の二次治療に用いる時はTPS(PD-L1発現スコア)が1%以上なら適応になるが、一次治療は50%以上の癌しか承認されていない。一方、非扁平上皮非小細胞性肺癌にPD-L1不問でpemetrexed及びcarboplatinと三剤併用する用法は、米国では承認されたがEUは申請撤回となった。検査アッセイや手法が複数存在することもあり、今後の検討課題が数多く残っている。

042試験では最初に50%以上のサブグループ、次に20%以上、そしてさらにIntent-to-treat(この試験は1%以上のみ組入れた)と、シーケンシャルに解析を行ったところ、すべて延命効果が確認された。非小細胞性肺癌のうち、TPS≧50%は25%のみだが≧1%は60-65%を占めるとのことなので、適応患者が倍増以上することになる。尚、この試験は扁平上皮性も非扁平上皮性も組入れている。

独立データ監視委員会は二次的評価項目であるPFS(無進行性損期間)の解析を行うため治験継続を勧告した由。PFSのほうが先に成功しそうなものだが、抗PD-1/PD-L1抗体は全生存期間の解析が成功してもPFSは有意差に達しないこと時々ある。似たような現象はIL-2やアルファインターフェロンでも見られるので、免疫強化療法の特性なのだろう。

キイトルーダの肺癌は化学療法併用第三相試験なども実施されており、今週末に始まったAACR(米国癌研究学会)で結果発表が期待されている。モノセラピーと併用のどちらも有効ならば、忍容性も吟味した上で、一次治療から三剤併用するのか、モノで初めて白金レジメンは二次治療に取っておくのか、標準療法を決めることになりそうだ。

リンク: MSDのプレスリリース

poziotinibがエクソン20変異肺癌に良績
(2018年4月10日発表)

Spectrum Pharmaceuticals(Nasdaq:SPPI)は、MD Andersonで実施されたpoziotinibの第二相試験が良好な結果になったことを明らかにした。EGFRのエクソン20変異を持つ非小細胞性肺癌に投与したところ、最初の11人の解析でcORR(確認客観的反応率)が64%となった。主な有害事象はラッシュと下痢。

15年に韓国の韓美薬品(Kosdaq:128940)からHM781-36Bの中韓以外における独占開発販売権を取得したもの。エクソン20変異は非小細胞性肺癌の2~3%が該当する由。Spectrumは自社でもEGFRやher2のエクソン20変異を持つ非小細胞性肺癌や、her2陽性転移性乳癌の、第二相試験を実施中。

リンク: Spectrumのプレスリリース

ファイザー、インライタの腎癌アジュバントはフェール
(2018年4月10日発表)

ファイザーは、Inlyta(axitinib、和名インライタ)の第三相腎細胞腫アジュバント試験がフェールしたと発表した。このATLAS試験は、切除術を受けたが再発リスクの高い患者をInlyta群と偽薬群に無作為化割付して無病生存期間を比較したもので、独立データ監視委員会が中間解析で無益性を認定した。

Inlytaと同じVEGF受容体阻害剤の同様な試験では、バイエルのNexavar(soratinib)とファイザーのSutent(sunitinib)を偽薬と比較したASSURE試験がフェール。Sutentは高リスクの患者だけを組入れたS-TRAC試験が成功し、FDAは適応拡大を承認したがEUは今年2月にCHMPが否定的意見と、評価が分かれている。ATLAS試験はサンプル数はS-TRACと同程度だが、リスクがやや小さい患者も組入れ対象だったので、これが影響したのかもしれない。

同じような薬を雁行的に開発するのは奇妙に見えるが、過去の戦略の名残なのだろう。ファイザーは企業買収・合併を活発に行ってきたが、数年前までは、パイプラインの整理統合を行わず研究所同士で競わせる戦略を取っていた。三井住友銀行新宿支店のライバルは新宿西口支店、と日本でも人気のあった戦略だ。

Sutentの開発コードはSU-011,248で、02年に買収したファルマシアがそれ以前に買収したSugenのプリフィックスがついている。InlytaはAG-013,736で、2000年に買収したワーナー・ランバートがその前年に買収したAgouron Pharmaceuticalsの開発品と推測される。

リンク: ファイザーのプレスリリース

RAGEアンタゴニストのアルツハイマー第三相がフェール
(2018年4月9日発表)

vTv Therapeutics(Nasdaq:VTVT)は、TTP488(azeliragon)の第三相軽度アルツハイマー病試験がフェールしたと発表した。他の試験も打ち切る考え。

TTP488はAGE(終末糖化産物)の受容体のアンタゴニスト。ファイザーがライセンスしてPOC試験を行ったが、高用量群で認知機能悪化が見られたためデータ監視委員会が中止を勧告した。糖尿病性腎症試験も思わしい結果が出ず、2011年にライセンス返還した。

vTv社は、上記POC試験のポストホック分析で低用量群の軽度アルツハイマー病患者に対する治療効果のp値が0.008だったことに注目して、軽度患者800人を組入れて第三相に踏み切ったのだが、今回もまた、「事後的サブグループ分析でよい数値が出ても楽観できない」という経験則通りの結果になった。

尚、vTvは15年にTransTech Pharmaから社名変更した。

リンク: vTvのプレスリリース


【承認申請】


PI3キナーゼ阻害剤の承認申請受理
(2018年4月9日発表)

Verastem(Nasdaq:VSTM)は、duvelisib)の承認申請がFDAに受理され、優先審査指定されたことを発表した。審査期限は10月5日。

16年にInfinity Pharmaceuticals(Nasdaq:INFI)から世界開発販売権を取得したホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)デルタ/ガンマ阻害剤で、適応は、再発性難治性の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の本承認と、再発性難治性濾胞性リンパ腫の加速承認を求めた。

前者はDUO試験でPFS(無進行生存期間)がメジアン13.3ヶ月とArzerra(ofatumumab、抗CD20完全ヒト化抗体)群の9.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.52だった。後者は第二相でORR(客観的反応率)が46%、完全反応はなく、期待外れだったのか、14年に開発販売権を取得したアッヴィがライセンスを返還した経緯がある。

リンク: Verastemのプレスリリース






今週は以上です。

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2018年4月8日

2018年4月8日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • サイラムザ、バイオマーカーでスクリーニングした肝細胞腫試験成功 
  • インサイト、IDO1阻害剤のキイトルーダ併用試験がフェール 
  • Paratek社、テトラサイクリン系抗生剤を承認申請 
  • ファイザー、汎erbB阻害剤を欧米で承認申請 
  • アストラゼネカ、新規ADCを米国で承認申請 
  • アストラゼネカ、リムパーザをEUでも乳癌に適応拡大申請 
  • リジェネロン、抗PD-1抗体を有棘細胞癌に承認申請 
  • リジェネロン、デュピクセントを喘息に適応拡大申請 
  • Alkermes、難治性鬱病用薬は審査完了に 
  • クロビス、Rubracaの適応拡大が承認 


【新薬開発】


サイラムザ、バイオマーカーでスクリーニングした肝細胞腫試験成功
(2018年4月4日発表)

イーライリリーは、Cyramza(ramucirumab、和名サイラムザ)の第三相肝細胞腫二次治療試験が成功したと発表した。4年前に開票した試験では全生存期間が偽薬を有意に上回らなかった。今回はAFP(alpha fetoprotein)が高値の患者に絞り込んだことが奏功したのかもしれない。

この試験は、sorafenib歴を持つ、または不耐で、AFPが400 ng/mL以上の肝細胞腫を組入れて、延命効果を偽薬と比較したもの。AFPは肝細胞腫のバイオマーカーでもあり、5割程度がAFP≧400 ng/mLに該当する模様。データは今後、学会で発表される見込み。

CyramzaはVEGFR-2/KDRに結合する完全ヒト化抗体で、これまでに胃癌や肺癌、結腸直腸癌に承認されている。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

インサイト、IDO1阻害剤のキイトルーダ併用試験がフェール
(2018年4月6日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)は、INCB024360(epacadostat)の第三相試験がフェールしたと発表した。悪性黒色腫にMSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)と併用する効果をKeytrudaだけの群と比較したが、主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)は大差なかった。共同主評価項目の全生存期間はまだ成熟していないが、外部データ監視委員会が期待薄と判定し、治験打ち切りとなった。インサイトは、バイオマーカー分析などを進める考え。

INCB024360は、様々な腫瘍細胞で高度発現しているindoleamine 2,3-dioxygenase(IDO)1を阻害して、制御的T細胞やイフェクターT細胞の活性が低下するのを妨げる。癌が免疫を免れるメカニズムに作用する点で、Keytrudaのような抗PD-1抗体と似ており、相乗効果も期待されたが、結実しなかった。BMSのOpdivo(nivolumab)併用など他の第三相の結果が注目される。

他社のIDO1阻害剤の開発も今のところ難航していて、二匹目のドジョウはなかなか見つからない。

リンク: インサイトのプレスリリース


【承認申請】


Paratek社、テトラサイクリン系抗生剤を承認申請
(2018年4月4日発表)

Paratek Pharmaceuticals(Nasdaq:PRTK)は、PTK 0796(omadacycline)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。欧州でも承認申請する予定。

承認されたらほぼ20年ぶりとなるテトラサイクリン系の新薬で、ABSSSI(急性細菌性皮膚皮膚構造感染症)やCABP(地域感染細菌性肺炎)の治療に用いる。経口剤と静注用があり、一日一回投与。臨床試験では何れも実薬に非劣性だった。悪心嘔吐や肝機能検査値異常がやや多いように感じられ、CABP試験では死亡率が2.1%とmoxifloxacin群の1.0%より高かった。

華やかな協業歴を持ち、99年にグラクソ、03年にバイエル、05年にMSD、そして09年にノバルティスがライセンスしたが何れも解消となった。

リンク: Paratekのプレスリリース

ファイザー、汎erbB阻害剤を欧米で承認申請
(2018年4月4日発表)

ファイザーは、PF-00299804(dacomitinib)をEGFR活性化変異を持つ局所進行性・転移性非小細胞性肺癌の一次治療薬として欧米で承認申請し、受理された。米国は優先審査を受ける。

EGFRやher2など、erbB成長因子受容体を阻害する汎erbBチロシンキナーゼ阻害剤。第三相試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が14.7ヶ月とIressa(gefitinib)群の9.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.59だった。忍容性はやや劣り、66%の患者が減量した(Iressa群は8%)。

リンク: ファイザーのプレスリリース

アストラゼネカ、新規ADCを米国で承認申請
(2018年4月3日発表)

アストラゼネカは、moxetumomab pasudotoxを難治性再発性有毛細胞白血病の三次治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。

CD22を標的とする抗体のフラグメントに細胞毒を結合した抗体薬物複合体。アストラゼネカが06年に買収したCambridge Antibody Technologyがその前年にGenencorから取得したもの。米NCIがスポンサーになって実施された第三相試験で主目的(持続的完全反応)を達成した。データは今後、学会発表される予定。

有毛細胞白血病は米国で年1000人が診断される希少疾患で、一次治療の寛解率は高いが、やがて再燃すると予後はあまりよくないとのことなので、市場が小さくても価値がありそうだ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

アストラゼネカ、リムパーザをEUでも乳癌に適応拡大申請
(2018年4月3日発表)

アストラゼネカのLynparza(olaparib、和名リムパーザ)はBRCA変異を持つ卵巣癌の薬として14年に欧米で承認された。適応拡大ではBRCAの生殖細胞性有害変異を持つher2陰性転移性乳癌の二次治療試験が成功。17年に日米で承認申請され、米国では今年1月に承認されたところだが、EUでもこの度、承認申請受理されたことが発表された。

臨床試験ではPFS(無進行生存期間)が7.0ヶ月と、capecitabineやeribulinなどを用いた群の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.58だった。

アストラゼネカはMSDとLynparza及びselumetinib(MEK阻害剤)の共同開発共同販売提携を結んでいる。目標達成報奨金を含めると最大で60億ドルの収入も見込める大型提携だ。MSDは、その後、エーザイともlenvatinibの共同開発販売で提携しており、大型協業が相次いでいる。

リンク: 両社のプレスリリース

リジェネロン、抗PD-1抗体を有棘細胞癌に承認申請
(2018年4月3日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィは、REGN2810(cemiplimab)を転移性または切除不能局所進行性の有棘細胞癌用薬としてEUで承認申請し受理されたと発表した。米国も3月までにローリング承認申請を完了する計画だったので、早晩、受理が発表されるのではないか。

有棘細胞癌は米国で年4000~8000人が死亡する。手術と放射線療法が中心で承認された薬はない。cemiplimabはOpdivo(nivolumab)などと同様な抗PD-1抗体。第二相試験で客観的反応率が46.3%だった。

リンク: 両社のプレスリリース(pdfファイル)

リジェネロン、デュピクセントを喘息に適応拡大申請
(2018年4月3日発表)

リジェネロンがサノフィと共同開発販売しているIL-4受容体アルファサブユニットを標的とする抗体医薬、Dupixent(dupilumab、和名デュピクセント)は、軽中度アトピー性皮膚炎の治療薬として昨年欧米で承認され、日本でも年明けに承認されたところだが、次の用途として管理不良喘息症治療薬として適応拡大申請中。米国は3月に申請受理、日本は3月に承認申請、そして、今回、EUでも申請受理されたことが発表された。

臨床試験では重度喘息発作が偽薬比46%減少。FEV1の改善は偽薬比130mL程度なのでそれほど大きくはなさそうだ。

リンク: サノフィのプレスリリース(pdfファイル)


【承認審査・委員会】


Alkermes、難治性鬱病用薬は審査完了に
(2018年4月2日発表)

Alkermes(Nasdaq:ALKS)はALKS 5461(samidorphanとbuprenorphineの合剤)を難治性鬱病治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。薬効の立証が不十分で、よくデザインされた試験を改めて実施すべしとされた。第三相試験は一勝二敗、第二相を含めても二勝二敗だったので、意外な結果とはいえないだろう。

ALKS 5461は、ミュー・オピオイド受容体のアゴニストでカッパ・オピオイド受容体にはアンタゴニストとして作用するbuprenorphineに、ミュー・オピオイド受容体アンタゴニストのsamidorphanを併用することで、カッパ・アンタゴニズムだけを生かすアイディア。第三相の最初の二本は主評価項目のMADRSがフェール、三本目は評価項目を10から6に減らしたMADRS-6の期中平均値に切り替えたところ、高用量二群が成功した。

抗鬱剤の第三相は承認されている薬でもフェールが珍しくなく、「何本フェールしても二本成功すれば承認を取れる」とも言われている。Alkermesは異議申立てする考え。

リンク: Alkermesのプレスリリース


【承認】


クロビス、Rubracaの適応拡大が承認
(2018年4月6日発表)

クロビス・オンコロジー(Nasdaq:CLVS)は、Rubraca(rucaparib)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤で、16年に米国でBRCA有害変異を持つ末期卵巣癌の三次治療薬として承認された。今回の用途は、白金感受性卵巣癌で白金薬による二次以降の治療に反応した患者の維持療法。600mgを一日二回、経口投与する。

PARPは遺伝子複製ミスの修正に係る酵素。BRCAはPARPとは異なるミス修正メカニズムに係る酵素で、生殖細胞系または体細胞系遺伝子変異により機能喪失すると、体内でしばしば発生する複製ミスが上手く修正されず、癌のきっかけになりかねない。そのような人にPARP阻害剤を投与すると、活発に分裂する癌細胞は複製ミスも起きやすいので、毒を以て毒を制すような格好になる。

面白いのは、今回の用途はBRCA正常な患者にも適応になること。第三相のARIEL3試験では、最初にBRCA有害変異サブグループに対するPFS(無進行生存期間)延長効果を検討し、次に別のバイオマーカーに基づくサブグループ、そして全被験者の解析をシーケンシャルに行ったが、全てでハザードレシオが0.35を下回った。BRCA有害変異のない患者だけの探索的解析も良好な結果になった。

主な有害事象は貧血。警告注意事項は骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病のリスクと催奇性。

Rubracaは2011年にファイザーからライセンスしたもの。欧州は3月にBRCA有害変異陽性卵巣癌の三次治療でCHMPの肯定的意見を得たところで、維持療法は承認後の6月に申請する予定。

リンク: クロビスのプレスリリース(pdfファイル)






今週は以上です。

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2018年4月1日

2018年4月1日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ファイザー、ATTR心筋症の第三相が成功 
  • テセントリクの4剤併用肺癌試験はOS解析も成功 
  • BiohavenのCGRP受容体アンタゴニストも第三相成功 
  • Lexicon社、SGLT阻害剤を一型糖尿病に承認申請 
  • オプジーボとヤーボイをMSI-H癌に適応拡大申請 
  • 武田が買収する企業の細胞療法がEUで承認 
  • FDA、Blincytoの適応拡大を承認 
  • ヘムライブラ治療患者の死亡が5例に


【新薬開発】


ファイザー、TTR心筋症の第三相が成功
(2018年3月29日発表)

ファイザーは、Vyndaqel(tafamidis meglumine、和名ビンダケル)の第三相トランスサイレチン心筋症試験が成功したと発表した。データは未公表。Vyndaqelは欧州や日本では神経機能改善効果が評価され承認されたが、米国では臨床的転帰改善作用を確認するよう求められた。本試験の成功で米国承認の道が開けたことになる。

トランスサイレチン心筋症は、神経症と並ぶ、トランスサイレチン・アミロイドーシスの典型的な合併症で、発症すると余命3~5年と言われる。今回の第三相は家族性及び後天性の患者441人を偽薬、20mg(欧日の承認用量)、80mgの何れかに無作為化割り付けして30ヶ月間の心血管イベント(心血管関連入院や全死亡)を観察したところ、偽薬比有意な差があった。どの用量の話なのかプレスリリースには明記されていないが、治験登録によると、主評価項目は20mgと80mgのプール分析とのことだ。

リンク: ファイザーのプレスリリース

テセントリクの4剤併用肺癌試験はOS解析も成功
(2018年3月26日発表)

ロシュの抗PD-L1完全ヒト化抗体であるTecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)のIMpower150試験は、共同主評価項目の一つが昨年1月に成功認定されたが、今回、もう一つも成功した。複雑な試験である上に数値が未公表なので何とも言えないが、抗PD-L1/PD-1抗体は臨床開発競争が激しく、結果の取りこぼしも少なくないので、成功したことは取り敢えずポジティブだ。適応拡大済みかどうかは不明。プレスリリースには、今回のデータを承認審査機関に提出する考えであることだけが記されている。

この第三相は扁平上皮以外の末期・転移性非小細胞性肺癌の一次治療試験で、carboplatin、paclitaxel、bevacizumabの三剤併用療法を対照群に、更にTecentriqを追加する効用を検討したもの。主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)の解析は、メジアン6.8ヶ月が8.3ヶ月に延長、ハザードレシオ0.617で統計的に有意だったことが昨年12月に発表された。。

その時点では共同主評価項目であるOS(全生存期間)の解析はハザードレシオ0.775、p=0.0262と好ましい数値だったが閾値を上回り非有意だった。今回、やり残した宿題を終えたことになる。

この試験はcarboplatin、paclitaxel、Tecentriqの三剤併用群もテストされた。昨年12月のPFS解析は対照群と大差なく、今回のOS中間解析も有意差がなかったが、今後も解析が予定されているようだ。

抗PD-L1/PD-1抗体を開発している会社は多いが、抗VEGF抗体の開発はロシュが、抗CTLA4抗体ではBMSが圧倒的に先行しているので、自社品同士の併用を積極的に開発することが他社品との差別化の点でも、収益最大化の面でも、至適戦略だ。だが、高価な新薬の併用は患者や社会の費用負担が大きい。副作用の増加も見逃せないコストだ。

それだけに、4剤併用だけでなく3剤併用のデータを見たいな、そこその効果があったら良いな、と思う。Avastinは一次治療薬だがYervoyなどは再発治療に取っておくこともできるのだろうから。

リンク: ロシュのプレスリリース

BiohavenのCGRP受容体アンタゴニストも第三相成功
(2018年3月26日発表)

片頭痛の治療や予防では、CGRP( calcitonin-gene-related peptide)やその受容体を標的とする抗体医薬や小分子薬の開発が活発化している。代表的な治療薬であるトリプタン系はCGRPの放出を抑制する一方で血管収縮促進作用もあるため、心血管リスクに気を付ける必要がある。CGRPや受容体を阻害すると血管拡張が抑制されるが収縮促進より悪影響が小さいかもしれない。

抗体医薬は三社が発作予防薬として承認申請中だ。受容体を阻害する経口剤もBiohaven Pharmaceuticals(NYSE:BHVN)がBMSからライセンスしたBHV-3000/BMS-927711(rimegepant)を、アラガン(NYSE:AGN)はMSDからライセンスしたMK-1602(ubrogepant)を、2019年に急性片頭痛治療薬として承認申請する計画。

このうち、BHV-3000の第三相試験が二本とも成功したことが発表された。75mgを経口投与したところ、2時間後に無痛だった患者の比率が一本は19.2%で偽薬群を5ポイント上回り、もう一本は19.6%で7.6ポイント上回った。共同主評価項目である、最も煩わしい片頭痛症状が解消した患者の比率は36.6%と37.6%で、偽薬群を各9ポイントと12ポイント上回った。何れも統計的に有意。

アラガンの第三相のデータと見比べると、治療効果(偽薬群との差)がやや小さい。直接比較試験の結果が出るまでハッキリしたことは言えないのだが、直接比較試験が行われるとは限らないのだから、今、目の前にあるデータを素直に受け止めるしか方法はない。

MSDがCGRP受容体アンタゴニストの開発を止めたのは、リードコンパウンドであったMK-0974(telcagepant)とバックアップのMK-3207の臨床試験で肝毒性懸念が浮上したことが原因だろう。ubrogepantは化学構造が異なるので一緒くたにはできないが、臨床試験で少数ながら肝機能検査値異常(正常値上限の3倍超)が発生した。BHV-3000も一例あったとのことなので、油断はできないだろう。

リンク: Biohaven社のプレスリリース


【承認申請】


Lexicon社、SGLT阻害剤を一型糖尿病に承認申請
(2018年3月29日発表)

Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)は、開発販売パートナーのサノフィがLX4211(sotagliflozin)を欧米で承認申請したと発表した。糖の輸送体であるSGLTを阻害して尿中のグルコースが血中に戻るのを妨げる。特徴は、既存薬が主として腎臓尿細管に分布するSGLT2を選択的に阻害するのに対して、小腸にも分布するSGLT1も阻害することと、二型糖尿病ではなく一型糖尿病で最初に承認申請されたこと。

第三相試験では一日一回の経口投与でHbA1cが0.5%程度低下した。体重や血圧も低下した。

先行企業がSGLT2選択性を重視したのは、初期に臨床入りした非選択的なコンパウンドが下痢の副作用で開発中止になったためだ。LX4211も忍容性が疑われたが、下痢はあまり増えなかった。

SGLT2阻害剤は稀にケトアシドーシスという重要な副作用が発生する。高血糖を伴わない症例も少なくなく、インスリン欠乏以外のメカニズムも関わっているようだ。一型糖尿病に経口剤を追加投与する場合は、インスリンを減量しないと低血糖のリスクが高まり、減らしすぎると糖尿病性ケトアシドーシスのリスクが生じるが、SLGT2阻害剤は後者のリスクがさらに高まる懸念がある。

メカニズム的には一型糖尿病にも有効なはずで現にオフレーベル使用されている模様だが、メーカーが正式に開発しないのは、これが理由だろう。

ケトアシドーシス・リスクの点ではSGLT2選択的でないコンパウンドのほうが良いという説もあるようだが、LX4211の第三相の一つではアシドーシス関連有害事象の発生率が8.6%と偽薬群の2.4%を上回った。

先行品と差別化するために一型糖尿病をリードインディケーションに据えたLexiconの戦略が奏功するかどうかは、ケトアシドーシス・リスクの評価次第だろう。尚、二型糖尿病の第三相試験も進行中ではある。

リンク: Lexiconのプレスリリース

Loxo社、TRK阻害剤のローリング申請を完了
(2018年3月26日発表)

Loxo Oncology(Nasdaq:LOXO)と開発販売パートナーのバイエルは、LOXO-101(larotrectinib)のローリング承認申請を完了したと発表した。NTKR変異陽性腫瘍に用いる。NTKRはニューロンの制御に関与するTRK(tropomyosin receptor kinases)の遺伝子で、他の遺伝子と融合してレガンド結合ドメインを喪失すると、レガンドの刺激なしで活性化してしまう。

該当するのは癌患者の1%以下と推定されており少ない。唾液腺癌や分泌乳癌で比較的多いと言われ、このほかに、承認申請のエビデンスとなった単群試験では、乳児線維肉腫、甲状腺癌、結腸癌、肺癌、黒色腫、紡錘細胞肉腫、胆管癌、筋周皮腫などの成人小児が組入れられた。55例の中央評価確認客観的反応率は75%だった。有害事象は神経認知性有害事象が中心だった。

13年に開始したArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)との研究開発提携の成果。バイエルは17年11月に共同開発・商業化で提携、米国は共同販促し、海外はバイエルが販売する。欧州でも年内に承認申請する予定。

リンク: Loxo社のプレスリリース

オプジーボとヤーボイをMSI-H癌に適応拡大申請
(2018年3月27日発表)

ブリストル・マイヤーズスクイブは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)とYervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)をMSI-H/dMMR転移性結腸直腸癌の再発治療に用いる適応拡大を米国で申請し受理されたと発表した。標準的な一次治療/二次治療薬であるfluoropyrimidine、oxaliplatin、そしてirinotecan歴を持つ患者が対象になる。審査期限は7月10日。

MSI-H(マイクロサテライト不安定性-高)は塩基配列の繰返し箇所の繰返し回数が腫瘍と正常細胞で異なる。同様に、dMMRは塩基配列ミスマッチの修復が異なる。この二つはオーバーラップすることもある。 転移性結腸直腸癌の5%程度が該当する。142試験では、併用群の客観的反応率は55%、1年生存率は85%だった。対照群ではないが、Opdivoだけを投与した群の1年生存率は73%だった。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認】


武田が買収する企業の細胞療法がEUで承認
(2018年3月26日発表)

ベルギーのTiGenix社と武田薬品は、Alofisel(darvadstrocel)がEUで承認されたと発表した。同種異系脂肪由来の幹細胞療法で、非/軽度活動性クローン病の肛囲複雑瘻孔の治療に用いる。 臨床試験では24週寛解率が50%と偽薬群の34%を有意に上回った。米国は別途、第三相試験が進行中。

武田薬品は16年に米国外の開発販売権を取得、今年1月に友好的買収で合意した。総額5.2億ユーロ規模。条件であるEU承認が実現したのでTOBに向けて一歩前進した。

リンク: 武田のプレスリリース(和文)

FDA、Blincytoの適応拡大を承認
(2018年3月29日発表)

FDAは、アムジェンのBlincyto(blinatumomab)を前駆B急性リンパ芽球性白血病(前駆B-ALL)の地固め的療法に用いる適応拡大を承認した。

Blincytoは白血病細胞の表面分子であるCD19とT細胞などの表面分子のCD3を架橋する二重特異性抗体で、再発性難治性前駆B-ALLの治療薬として14年に米国で、15年には欧州でも、承認された。

今回の承認用途は、他の薬を用いて寛解に成功したが癌細胞がごく少量残っている(minimal residual disease:MRD)患者に投与して再発を防ぐというもの。第二相試験では81%の患者が癌細胞探知不能になった。MRDのある患者は再発リスクが高いと言われるが、この試験ではメジアン無再発生存期間が22ヶ月だった。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アムジェンのプレスリリース


【医薬品の安全性】


ヘムライブラ治療患者の死亡が5例に
(2018年3月27日発表)

HFA(米国血友病財団)は、中外製薬が創製し米国ではジェネンテック、欧州などではロシュが販売するHemlibra(emicizumab-kxwh、和名ヘムライブラ)に関して、治療を受けた患者の死亡例が5例に増えたことを明らかにした。ジェネンテックから連絡を受けたもの。2016年に一名、2017年に二名、2018年に入って更に二名が物故した。うち三例の死因は頭蓋内や結腸の出血、一例は血管手術後に死亡、残りの一例は腹部偽腫瘍の合併症であった模様。

一人は第三相試験、他はCUPやトリートメントINDなどの未承認薬例外的使用制度を通じて投与を受けた。何れのケースも担当医は薬剤との関連性なしと判定した。HFAは、心配な向きはジェネンテックの問い合わせ窓口に電話するようアドバイスした。

何とも中途半端な情報であり、なぜわざわざ公表したのか、訝ってしまう。おそらく、噂を聞いた医療関係者や患者から問い合わせがあり、HFAがジェネンテックに照会したのだろう。新薬は発売後に重要な新情報が出ることがあり、また、競合品メーカー経由で得た情報は念のためということもあるので、財団が窓口になってメーカーに情報を求めるのは有益だ。今回も、現時点で分かっている範囲内で事実を正確に伝えることを重視したのだろう。

リンク: HFA(米国血友病財団)のプレスリリース
リンク: 同(3/28付けアップデート)







今週は以上です。

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