2024年4月27日

第1052回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • リンヴォック、アトピー試験でデュピクセントに連勝 
  • サノフィ、BTK阻害剤の第3相ITP試験が成功 
  • GSK、抗PD-1抗体を遺伝子変異の少ない内膜腫にも承認申請 
  • 劣性栄養障害型表皮水疱症遺伝子治療用薬は承認遅延に 
  • CHMPが抗癌剤などの承認を支持 
  • ファイザーの血友病遺伝子治療も承認 
  • ピブメシリナムが米国でも半世紀遅れで承認 
  • 小児低グレード神経膠腫用薬が承認 
  • IL-15融合蛋白がBCG不応筋層非浸潤性膀胱癌に承認 
  • ビクタルビのレーベルに妊婦・新生児安全性試験のデータが収載 
  • COVID-19ワクチンの小児における安全性 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


リンヴォック、アトピー試験でデュピクセントに連勝
(2024年4月25日発表)

アッヴィはJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)がアトピー性皮膚炎の後期第3相/第4相LEVEL UP試験で奏効率がリジェネロン/サノフィのDupixent(dupilumab)を有意に上回ったことを明らかにした。4年前に開票した後期第3相試験でも有意に上回ったが、少なくとも今のところ、米国のレーベルにはデータが収載されていない。今度は収載されるのか、注目される。

今回の試験は12歳以上の中重度アトピー性皮膚炎で全身性治療に応答不十分または不適の患者を組入れて16週間治療し、全般的症状と掻痒が完治又はそれに近くまで改善した患者の比率を比較したところ、各群19.9%と8.9%となった。構成する尺度のうち、EASI90(症状兆候尺度が90%以上改善)は各群40.8%と22.5%、WP-NRS0/1(一番重い掻痒の尺度が解消/ほぼ解消)は30.2%と15.5%だった。

Rinvoqの米国のレーベルには、死に至る可能性のある感染症や心血管疾患に関する枠付き警告がある。Dupixentには無い。

リンク: アッヴィのプレスリリース


サノフィ、BTK阻害剤の第3相ITP試験が成功
(2024年4月23日発表)

サノフィはSAR444671(rilzabrutinib)の第3相慢性ITP(免疫性血小板減少症)試験で主目的を達成したと発表した。今年下期に欧米で承認申請する考え。データは学会で発表する。

20年にPrincipia Biopharmaを37億ドルで買収して入手したBTK阻害剤。選択性が高く、既存のBTK阻害剤より忍容性が優れる可能性がある。様々な疾病に開発され、最初に第3相に進んだ天疱瘡はフェール、アトピー性皮膚炎は第2相でフェールしたが、今回、やっと商業化の目途が立った。次は慢性特発性蕁麻疹と結節性痒疹の第3相を年内に開始する予定。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


GSK、抗PD-1抗体を遺伝子変異の少ない内膜腫にも承認申請
(2024年4月24日発表)

GSKは抗PD-1抗体Jemperli(dostarlimab-gxly)の成人の内膜腫(子宮体癌)における限定を解除すべく米国で承認申請し、受理された。優先審査を受け、審査期限は8月23日。

Jemperliは欧米で成人のdMMR(ミスマッチ修復欠損)またはMSI-H(高頻度マイクロサテライト不安定性)の原発性進行・再発内膜腫のフロントライン治療に化学療法と併用することが承認/加速承認されている。化学療法・偽薬併用と比較した第3相RUBY試験では共同主評価項目のうち先に結果が出たPFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザードレシオがdMMR/MSI-Hサブグループで0.28と大変良く、それ以外(MMRp/MSS)の患者を含むintent-to-treatベースでも0.64、MMRp/MSSだけの解析でも0.76(95%信頼区間0.592-0.981)と好ましい成績だったが、欧米とも、dMMR/MSI-Hに限定された。

その後、もう一つの主評価項目である全生存期間の解析が成功、昨年10月の発表によると、ハザードレシオはintent-to-treatで0.69、探索的なdMMR/MSI-Hサブグループの解析では0.32、同じくMMRp/MSSだけの解析は0.79(0.602-1.044)だった。

この内容で限定解除が認められるものなのか、よくわからない。最新の解析では95%上限が1を下回ったのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


劣性栄養障害型表皮水疱症の遺伝子治療用薬は承認遅延
(2024年4月22日発表)

Abeona Therapeutics(Nasdaq:ABEO)はEB-101(prademagene zamikeracel、通称 pz-cel)を劣性栄養障害型表皮水疱症(EB)用薬として米国で承認申請したが、PDUFA審査期限より1ヶ月早く審査完了通知を受領した。生産・試験方法に関するバリデーションが不十分と見なされた模様。

栄養障害型EBは真皮と表皮をつなぐ係留線維の構成成分である7型コラーゲンの遺伝子、COL7A1に劣性/優性遺伝による機能喪失変異があり、水疱やびらんが生じやすく、感染症や扁平上皮腫のリスクを伴う。米国の推定患者数は3000人。EB-101は患者のケラチノサイトやその前駆細胞にex vivoでCOL7A1遺伝子を導入、培養して表皮シート化したもの。インディアナ大学と同社が夫々生産したレトロウイルス・ベクターを用いて11人の患者に導入した第3相VIITAL試験で持続的治癒率が81%と、非貼付部位の16%を大きく上回り、共同主評価項目であるWong-Baker FACES疼痛評価尺度も3.07低下対0.90低下で有意な差があった。

栄養障害型EBの治療薬は23年に米国でKrystal Biotech(Nasdaq:KRYS)の局所性遺伝子治療薬Vyjuvek(beremagene geperpavec-svdt)とChiesi Farmaceuticiの白樺抽出物Filsuvez(birch triterpenes)が承認されている。

リンク: Abeonaのプレスリリース


CHMPが抗癌剤などの承認を支持
(2024年4月26日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

武田薬品がHutchmed(和黄医薬)からライセンスして承認申請したFruzaqla(fruquintinib)は汎VEGFR阻害剤。転移性結腸直腸癌で既に標準的な治療を受け終え、Lonsurf(trifluridine、tipiracil)またはStivarga(regorafenib)に不応または不耐の患者に用いる。臨床試験でメジアン生存期間が7.4ヶ月と偽薬群の4.9ヶ月を上回った。中国では18年、米国では昨年11月に承認され、日本でも申請中。

リンク: EMAのプレスリリース

SOBI(Swedish Orphan Biovitrum)がサノフィからライセンスして申請したAltuvoct(efanesoctocog alfa)は週一回静注用第VIII因子。A型血友病患者の出血の治療や予防に用いる。予防的投与を受けている重度患者を組入れた単群試験で年率出血率が治療前より77%低下した。23年に米国ではAltuviiio名で、日本ではオルツビーオとして、承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

イドルシアのJeraygo(aprocitentan)は成人の抵抗性高血圧用薬。肺動脈高血圧治療薬macitentanの代謝物で、エンドテリンAとBの受容体を阻害する。三剤併用しても最大血圧が140mmHg以上の患者を組入れて追加投与した試験で第4週の血圧(オフィスで自動測定器を使用)が15mmHg低下し、偽薬群の11.5mmHg低下を有意に上回った。 主な有害事象は浮腫やヘモグロビン低下など。米国では3月に承認されたところ。

リンク: EMAのプレスリリース

Pierre FabreのObgemsa(vibegron)は成人の過活動膀胱症候群の対症療法。ベータ3アドレナリン受容体を作動し、血管収縮の抑制などに資する。日本ではキョーリンがMSDから権利を取得して開発、18年にベオーバ名で承認を取得した。米国では住友ファーマの子会社のUrovant SciencesがMSDからライセンスして20年にGemtesa名で承認を取得。Pierre FabreはUrovantから欧州などの権利をサブライセンスした。

リンク: EMAのプレスリリース

アストラゼネカのTruqap(capivasertib)は、転移性乳癌の約5割で異常活性化しているPI3K/AKT/mTORカスケードを抑制する汎AKT阻害剤。成人の内分泌療法歴のあるPIK3CA/AKT1/PTEN変異陽性、エストロゲン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌にfluvestrantと併用する。臨床試験ではメジアンPFS(無進行生存期間)が7.3ヶ月と偽薬・fluvestrant併用群の3.1ヶ月を上回った。米国では昨年11月、日本では今年3月に承認。Astex社(現在は大塚製薬子会社)との創薬提携を通じて創製した。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大等が支持されたのは以下の通り。

  • ロシュのAlecensa(alectinib)・・・ALK陽性非小細胞性肺癌で完全切除を受けたが再発リスクの残る患者のアジュバント療法。米国は先日承認、日本でも申請中。

  • 同じく、Rozlytrek(entrectinib)・・・NTRK遺伝子融合を持ち他に適切な治療オプションの無い小児固形癌における適応年齢下限を12歳から1ヶ月児に引き下げ。米国では昨年10月に加速承認。

  • BMSのOpdivo(nivolumab)・・・切除不能/転移尿路上皮腫の一次治療にcisplatin及びgemcitabineと併用。米国では3月に承認、日本でも申請中。

  • ジョンソン・エンド・ジョンソンのRybrevant(amivantamab)・・・EGFRにex20挿入変異のある進行/転移非小細胞性肺癌の一次治療にcarboplatin及びpemetrexedと併用。米国では3月に承認。

  • 同じく、Sirturo(bedaquiline)・・・肺結核における適応範囲を微調整(市販後薬効確認試験の組入れ基準に合わせて、多剤耐性ではなく、rifampicin及びisoniazidに抵抗性を持つ結核菌によるものとした)

  • ヴィーヴヘルスケアのTriumeq(dolutegravir、abacavir、lamivudine)・・・小児用分散錠の適応体重下限を14kgから6kgに引き下げ

  • BMSのReyataz(atazanavir)・・・CYP3A4を阻害するプロテアーゼ阻害剤なので様々な併用禁忌があるが、新たにencorafenib、ivosidenib、carbamazepine、phenobarbital、phenytoinが追加される。

  • 【承認】


    ファイザーの血友病遺伝子治療も承認
    (2024年4月26日発表)

    ファイザーはFDAがBeqvez(fidanacogene elaparvovec-dzkt)を中重度B型血友病の治療薬として承認したと発表した。血液凝固第IX因子の欠乏を補うために、活性の高いPadua変異型第IX因子の遺伝子を、病原性を持たないアデノ随伴ウイルスRh74のカプシドと肝臓特異的プロモータを用いて、患者に導入する。臨床試験では投与後第12週からメジアン1.8年間の追跡期間における出血頻度年率が2.5回と、第IX因子などによる治療を受けていた頃の4.5回から大きく減少した。尚、22年12月のプレスリリースでは各1.3回と4.4回となっているが、観察期間が12ヶ月と今回のデータより短いことが関係しているのかもしれない。有害事象はトランスアミナーゼ上昇など。上記ウイルスに対する抗体を持つ患者は適応外。

    14年にSpark Therapeutics(現在はロシュ・グループ)からライセンスしたもの。欧州でも承認申請中。

    類薬はCSLがuniQure(Nasdaq:QURE)からライセンスして開発したHemgenix(etranacogene dezaparvovec-drlb)が22年に米国で、23年にはEUでも、承認されている。アデノ随伴ウイルスで肝臓特異的にPadua型遺伝子を導入する枠組みは共通。ファイザーは米国における価格をHemgenix並みの350万ドルとする模様。

    リンク: ファイザーのプレスリリース


    ピブメシリナムが米国でも半世紀遅れで承認
    (2024年4月24日発表)

    FDAは英国のUtility TherapeuticsのPivya(pivmecillinam)を成人女性の単純性尿路感染症治療薬として承認した。同薬に感受するEscherichia coli、Proteus mirabilis、そしてStaphylococcus saprophyticusによる感染が適応になる。臨床的・微生物学的複合反応率は偽薬対照試験で62%対10%、実薬対照試験では72%対76%だった。有害事象は悪心や下痢など。禁忌はベータ・ラクタム系抗菌剤に関する重度過敏反応歴、カルニチン欠乏症、ポルフィリン症。

    活性成分はデンマークでは1970年代から尿路感染症の標準治療薬として用いられ、米国でもIDSA学会が、もし承認されているならばという前提付きだが、ガイドラインに収載している。日本でも既にGE化している。

    同社はLEO Pharmaからライセンスしたpivmecillinamとその活性代謝物である皮下注用mecillinamを米国で開発販売すべく設立された会社。

    リンク: FDAのプレスリリース


    小児低グレード神経膠腫用薬が承認
    (2024年4月23日発表)

    FDAはDay One Pharmaceuticals(Nasdaq:DAWN)のOjemda(tovorafenib)を6ヶ月児以上の再発性小児低グレード神経膠腫(pLGG)向けに加速承認した。RAF阻害剤で、BRAFの遺伝子にV600E変異、遺伝子融合、または再編成のある患者が適応になる。pLGGはノバルティスのBRAF阻害剤Tafinlar(dabrafenib)とMEK阻害剤Mekinist(trametinib)の併用も承認されているが、適応は6歳以上のBRAFV600E変異に限られており、経口投与の頻度が週一回ではなく一日二回と多い。

    第2相FIREFLY-1試験で評価対象76人中28人が部分反応(腫瘍が50%以上減少)、11人が小反応(25~49%減少)した。メジアン反応持続期間は13.8ヶ月だった。有害事象はラッシュなど。治療期間中は身長の伸びが抑制されるリスクがある。優先審査バウチャを取得した。第3相FIREFLY-2試験は米欧韓でフロントラインの患者を組入れてモノセラピーのORR(完全反応と部分反応)を医師が選んだ化学療法と比較している。

    新薬開発は成人向けが先行することが多いが、Day Oneは小児向けを優先する開発方針を取っている。Ojemdaの過去の開発コードは DAY101、MLN2480、TAK-580、BIIB-024、AMG-2112819と多彩で、昔の経緯は把握できていないが、11年に武田薬品のミレニアム子会社がSunesis Pharmaceuticalsからライセンス、19年にDay Oneが武田やSunesisからライセンスした。

    リンク: FDAのプレスリリース


    IL-15融合蛋白がBCG不応筋層非浸潤性膀胱癌に承認
    (2024年4月22日発表)

    FDAはAltor BioscienceのAnktiva(nogapendekin alfa inbakicept-pmln)を成人のBCG不応筋層非浸潤性膀胱癌用薬として承認した。BCGと併用で尿路カテーテルを用いて膀胱内に投与する。週一回投与を6週間反復するインダクション(2回目可)を施行し、応答なら持続性を確かめながら最大37ヶ月間投与する。臨床試験ではCR(完全反応率)が62%、その48%が12ヶ月以上持続した。深刻有害事象発生率は16%で、血尿(3%)や心停止(1%)などが見られた。

    IL-15のN72D変異体を、IL-15受容体アルファのsushiドメインとIgG1固定領域の複合体と、2対1の比率で結合したもの。NK細胞やCD8陽性細胞、メモリーT細胞を活性化し、免疫抑制的なTreg細胞は刺激しない。

    Altor Bioscienceは17年にNantWorks傘下の企業に2.9億ドルで買収・合併され、更に21年に別の傘下企業に買収されたが、両社とも、ImmunityBio(Nasdaq:IBRX)に社名変更している。Altor社の名前を見たのは何年ぶりだろう?

    リンク: FDAのプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    ビクタルビのレーベルに妊婦・新生児安全性試験のデータが収載
    (2024年4月26日発表)

    ギリアド・サイエンシズは、HIV治療用配合剤、Biktarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide fumarate)の米国におけるレーベルに後期第1相妊婦・新生児安全性試験のデータが収載されたと発表した。抗HIV薬は胎盤を通過するものもあるので、薬剤選択の一助になる情報だ。

    適応範囲に即して、薬物療法でウイルス抑制に成功していて配合3成分に抵抗性を持たない妊婦33人をBiktarvyにスイッチさせて経過を見たもの。ウイルス抑制が維持され、評価対象となった新生児29人に関しても、出生時と4~8週後のPCR検査でHIV-1が検出されなかった。母子ともに新たな安全性上の懸念は浮上しなかった。

    リンク: 同社のプレスリリース


    COVID-19ワクチンの小児における安全性
    (2024年4月24日発表)

    FDAが費用を負担した、COVID-19ワクチンの小児における稀な有害事象に関するコフォート研究の結果が論文発表された。既知のリスクである心筋炎/心膜炎に加えて、2~5歳児において癲癇発作のシグナルが見られた。交絡因子の未調整などの弱点があるため、更なる検討が必要とのこと。

    この研究は、23年2~4月までの保険会社の還付請求データを元に、6ヶ月児から17歳までのワクチン接種者約410万人における21種類の有害事象発生状況をCOVID-19流行前と比較した。うち、統計学的シグナルが見られたのは、Comirnatyを接種した12~17歳における心筋炎/心膜炎と、Comirnatyを接種した2~4歳とSpikevaxを接種した2~5歳における癲癇発作だけだった。オッズは不明。

    疫学研究では相対リスクを分析するのが一般的だが、受け止める側としては、例えミスリードのリスクがあるとしても、発生率自体の情報も欲しいところだ。熱性癲癇発作の発生数はComirnatyで7,932,684例中76例(10万人当り0.1)、Spikevaxは315,520例中37例(同1.17)となっている。2~5歳ではもっと高いのだろうが、頻発しているわけではないだろう。また、今回の分析対象は安全性だけで、便益は考慮していない。

    リンク: Mao Huらの試験論文要旨(JAMA Network Open)

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年4月推ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Neurocrine BiosciencesのIngrezza(valbenazine顆粒製剤、ジスキネジアなど)
    24/5/9ファイザーのTivdak(tisotumab vedotin-tftv、難治/転移子宮頸癌に本承認切替)
    24/5/12モデルナのmRNA-1345(RSVワクチン)
    24/5/13Dynavax TechnologiesのHEPLISAV-B(血液透析中の成人のB型肝炎予防を追加)
    24/5/14アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症)
    24/5/16Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
    24/5/23BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治リンパ腫)
    24/5/31BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治マントル細胞腫)
    24/6/4Catalyst PharmaceuticalsのFirdapse(amifampridine phosphate、LEMSにおける最大1日量を100mgに引き上げ)
    24/6/7GSKのArexvy(重症RSVリスクを持つ50~59歳に拡大)
    24/6/10Genfit/イプセンのGFT505(elafibranor、原発性胆汁性胆管炎)
    24/6/12アムジェンのAMG 757(tarlatamab、小細胞性肺癌3次治療)
    24/6/15BMSのAugtyro(repotrectinib、NTRK融合型固形癌に適応拡大)



    今週は以上です。

    2024年4月20日

    第1051回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • 選択的D1/D5阻害剤のパーキンソン病試験が成功 
    • リンヴォックは巨細胞動脈炎にも有効 
    • PCSK9阻害剤の3本目の第3相が成功 
    • リリー、GLP-1作用剤を睡眠時無呼吸に承認申請へ 
    • GSK、淋病治療試験のデータを発表 
    • lumateperoneの第3相鬱病治療試験が成功 
    • ロシュ、抗CD20xCD3抗体の2次治療試験が成功 
    • Vertex、新規作用機序の疼痛治療薬のローリング申請に着手 
    • ロシュ、皮下注用Ocrevusを欧米で承認申請 
    • GSK、5価髄膜炎菌性髄膜炎ワクチンを承認申請 
    • ノバルティス、B因子阻害剤をIgA腎症に適応拡大申請 
    • 武田、エンタイビオ皮下注がクローン病にも承認 
    • FDA、アレセンサの術後アジュバントを承認 
    • 残存乳癌術中検査薬を承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    選択的D1/D5阻害剤のパーキンソン病試験が成功
    (2024年4月18日発表)

    米国ケンブリッジのCerevel Therapeutics(Nasdaq: CERE)はCVL-751(tavapadon)の第3相進行パーキンソン病試験、TEMPO-3が成功したと発表した。レボドパ治療を受けているが運動症状の日中変動を経験している成人患者507人を組入れて、5~15mgの間で滴定する群と偽薬群を比較したところ、ジスキネジアを伴わないオン時間が各群1.7時間と0.6時間増加し、有意な差があった。副次的評価項目のオフ時間も有意に減少した。早期パーキンソン病に単剤投与するTEMPO-1と-2の結果は24年下期に判明する見込み。

    ファイザーがPF-06649751として第2相まで進めたドーパミンD1/D5選択的部分作動剤。Cerevelは18年にファイザーからスピンアウトした。アッヴィが、専ら統合失調症パイプラインに注目して、企業価値ベース87億ドルで買収に合意している。

    リンク: Cerevelのプレスリリース


    リンヴォックは巨細胞動脈炎にも有効
    (2024年4月18日発表)

    アッヴィはJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)を巨細胞動脈炎の治療に充てるSELECT-GCA試験が成功したと発表した。コルチコステロイドで治療し改善したら用量を漸減する標準療法に加えて、偽薬、7.5mg、または15mgを一日一回経口投与して、第12週から52週までの持続的寛解率を比較したところ、偽薬群の29%に対して15mg群は46%と有意に上回った。有害事象による治験離脱率は各21%と15%、深刻有害事象発現率は21%と23%だった。尚、7.5mg群はフェールし、数値は公表されていない。

    Rinvoqはリウマチなど様々な自己免疫疾患に承認されているが、また一つ増えそうだ。

    リンク: 同社のプレスリリース


    PCSK9阻害剤の3本目の第3相が成功
    (2024年4月18日発表)

    米国のLIB TherapeuticsはLIB003(lerodalcibep)の第3相LIBerate-HR試験の成績をACC(米国心臓学会)で発表した。コレステロール治療を受けている心血管疾患または高リスク患者922人を組入れて偽薬または300mgを月一回皮下注する効果を比較したところ、LDL-Cが52週間で偽薬修正後56%低下した。共同主評価項目である第50週と52週の平均値も62%低下。HDL-Cは47%増加した。治療時発現有害事象発生率は両群同程度だった。ヘテロ接合型家族性高脂血症やホモ接合型家族性高脂血症を組入れた第3相も成功しており、24年内に欧米で承認申請する考え。

    人フィブロネクチンの第10番3型ドメイン(10Fn3)由来の抗PCSK9アドネクチンに人血清アルブミンを結合して半減期や安定性を向上したもの。同じPCSK9標的薬であるアムジェンのRepatha(evolocumab)は月一回投与する場合は420mg/3.5mLを5分かけて皮下注するが、LIB003は300mg/1.2mLを数秒で皮下注できる。

    同社はブリストル マイヤーズ スクイブから取得したパイプラインを開発している。

    リンク: 同社のプレスリリース


    GLP-1作用剤を睡眠時無呼吸に承認申請へ
    (2024年4月17日発表)

    イーライリリーはtirzepatideの第3相閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)試験が成功したと発表した。6月のADA(米国糖尿病学会)科学セッションで発表すると共に、年央に適応拡大申請する考え。

    このGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)/GIP-1(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体アゴニストは、二型糖尿病治療薬Mounjaroとして22年に米欧日で承認され、23年には欧州では同名で、米国ではZepbound名で、肥満症治療に適応拡大した。心不全やNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)にも有益性が示されており、今でさえ供給不足が生じているのに、需要がどれだけ膨らむのか想像がつかない。

    今回のSURMOUNT-OSA試験は米州、豪州、ドイツ、中国、日本などの施設で成人の中重度OSA患者を組入れて、15mgを目標とする漸増方式で週一回皮下注を52週間反復し、AHI(無呼吸低呼吸指数)の改善を偽薬群と比較した。結果は、OSAの標準的な治療法であるPAP(気道陽圧療法)を受けていない患者を組入れた試験では25.3回/時減少し、偽薬群の5.3回/時減少を有意に上回った。副次的評価項目のAHI減少率は各群50.7%と3.0%、体重減は17.7%と1.6%だった。PAPを受けている患者を組入れた試験でもAHIが各群29.3回/時減と5.5回/時減、率では58.7%減と2.5%減、体重は19.6%減と2.3%と、何れも有意に上回った。

    OSAの患者の過半は肥満なので既存の適応とオーバーラップするが、体重が減るだけの薬よりも、合併症も改善する薬のほうが患者や医療保険運営組織に対する訴求力が高い。

    尚、下記のプレスリリースの本文にはTreatment-Regimen Estimandベースの数値が紹介されているが、ここでは、表に併記されているEfficacy Estimandベースで示した。前者は試験薬自体の効果を知る上で有益だが、試験薬の投与を中止・中断した患者のその後の状況が反映されないなどの憾みがある。投与を止めた後に何もしなければリバウンドするだろうし、他の薬にスイッチすればまた改善するかもしれない。そこで、最後まで追跡して現実の医療において実現するであろう転帰を示すのがEfficacy Estimandベースの数値で、Mounjaroの米国のレーベルには、血糖治療試験などにおけるEfficacy Estimandベースの数値しか記されていない。

    リンク: 同社のプレスリリース


    GSK、淋病治療試験のデータを発表
    (2024年4月17日発表)

    GSKは米国政府の資金援助を受けてファースト・イン・クラスの抗菌剤GSK2140944(gepotidacin)を開発、単純性尿路感染症で2本の実薬対照非劣性試験を成功させた。今年2月には単純性泌尿器性器淋病におけるEAGLE-1試験の成功を発表したが、ESCMID(欧州臨床微生物感染症学会)でデータを公表した。約600人の患者を組入れて、750mg錠4錠を10~12時間おいて2回服用する便益をceftriaxone(500mg筋注)とazithromycin(1g経口)を併用する標準療法と比較したところ、3~7日後における微生物的奏効率が各群92.6%と91.2%となり、非劣性だった。

    FDAが非臨床データの追加を求めたことなどから、新薬承認申請は25年ごろになる見込み。新規抗菌剤はいざという時のための取って置きとして取って置くことになりがちなので、発売が遅れても財務的な影響は大きくないだろう。

    リンク: GSKのプレスリリース


    lumateperoneの第3相鬱病治療試験が成功
    (2024年4月16日発表)

    Intra-Cellular Therapies(Nasdaq:ITCI)はCaplyta(lumateperone)の一本目の第3相鬱病治療試験がポジティブな結果になった発表した。二本目は今四半期中に判明する見込み。

    ブリストル マイヤーズ スクイブからライセンスして開発した5-HT2A受容体・ドパミンD2受容拮抗剤。19年に米国で成人の統合失調症治療薬として、21年には双極障害I型やII型の鬱症状の治療にも、承認された。今回は、抗鬱剤治療に十分応答しない鬱病患者485人を偽薬群、または承認用途における用法と同じ42mg一日一回投与群に無作為化割付けして6週間追加投与し、MADRS総スコア(ベースライン値は約30点)の低下を比較したところ、各群9.8点と14.7点、治療効果-4.9点と、統計的に有意かつ臨床的に意味のある差があった。副次的評価項目のCGI-Sも統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を見た。有害事象はドライマウスなど。治療時発現有害事象により各群0.8%と5.8%の患者が離脱した。

    精神疾患や疼痛に対する臨床試験は偽薬効果が大きく出てフェールすることが珍しくなく、Caplytaも承認用途における後期第2相と第3相の成績は両用途とも2勝1敗だった。薬がフェールしたのか、試験がやり方や実施状況などのせいでフェールしたのか、判定するために承認されている薬を投与する参考群を設定し、もしこちらもフェールなら試験薬のせいではないと判定する工夫が普及したが、Caplytaのフェールした統合失調症試験は偽薬群の成績が通常より良かったもののrisperidone群はそれを上回っており、また、成功した試験でも用量反応相関が見られなかった。解釈が難しい薬だ。

    今回の第3相は2戦2勝となるか、新たな難題が生まれるか、注目される。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ロシュ、抗CD20xCD3抗体の2次治療試験が成功
    (2024年4月15日発表)

    ロシュはColumvi(glofitamab-gxbm)の第3相STARGLO試験で主目的を達成したと発表した。データは未公表。適応拡大申請に向かうことになろう。第3相一次治療多剤併用試験も進行中。

    ColumviはB細胞腫瘍のCD20と細胞毒性T細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。23年に欧米で3次以上の治療歴を持つ難治再発びまん性大細胞型リンパ腫などに条件付き承認/加速承認された。今回の2次治療試験は自家幹細胞移植に適さない患者を組入れて、まず抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab)を一回投与してプリトリートした後に、gemcitabine及びoxaliplatinと併用で3週毎に最大8サイクル投与し、その後はColumviだけを最大4サイクル投与する。サイトカイン放出症候群が発現したらActemra(tocilizumab)で治療可。対照群は、gemcitabine、oxaliplatin、及び抗CD20抗体rituximabを最大8サイクル投与した。主評価項目は全生存期間。市販後薬効確認試験を兼ねているので、本承認切替も見込まれる。

    第3相一次治療試験はPolivy(polatuzumab vedotin)、rituximab、cyclophosphamide、doxorubicin、そしてprednisoneを併用するPola-R-CHPレジメンに更にColumviを追加する便益を検討している。同社は抗CD20xCD3抗体Lunsumio(mosunetuzumab-axgb)も並行開発しており、Columviは、よりアグレッシブな治療向けと位置付けている。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認申請】


    Vertex、新規作用機序の疼痛治療薬のローリング申請に着手
    (2024年4月18日発表)

    Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)はVX-548(suzetrigine)のローリング承認申請に着手したと発表した。一刻も早く実用化するために承認申請に必要な3種類の資料を準備の整ったものから逐次提出し審査を始めてもらうもので、第2四半期中に申請完了を見込む。

    末梢神経系の疼痛シグナル伝達に重要な役割を果たす電位依存性ナトリウム・チャネル、NaV1.8を選択的に阻害する経口剤。リード・インディケーションは中重度急性疼痛で、臨床試験は腹壁形成術後疼痛と、バニオン切除術後疼痛の二本を実施。初回は100mg、2~4回目は50mgを12時間おきに投与してNPRS疼痛尺度を計測したところ、偽薬比有意に改善した。但し、副次的評価項目であるhydrocodone bitartrateとacetaminophenを併用した群との比較では有意な差はなかった。術後ではない患者など様々なタイプの疼痛を治療した最長14日間の単群試験では良好な安全性と薬効を示した。

    糖尿病性末梢神経痛でも今年下期に第3相を開始して70mg一日一回投与の効果をテストする考え。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ロシュ、皮下注用Ocrevusを欧米で承認申請
    (2024年4月17日発表)

    ロシュは点滴静注用多発性硬化症用薬Ocrevus(ocrelizumab)の皮下注用新製剤を開発、欧米で承認申請した。EUは24年央、米国は24年9月に審査結果が出る見込み。

    同社の同じ抗CD20抗体であるRituxan(rituximab)や抗her2抗体Herceptin(trastuzumab)の皮下注用製剤と同様に、Halozyme(Nasdaq:HALO)の遺伝子組換え人ヒアルロニダーゼを同時投与して皮下組織を部分的に弱体化することにより薬剤の吸収を高めている。点滴静注用製剤は初回と2回目の投与時は3.5時間、3回目以降は2時間、かかるが、皮下注用は10分で足りるので、患者の拘束時間が短く、点滴設備のない医療施設でも使用できるようになる。

    効果は血清濃度も、B細胞抑制力も、MRI疾病活動性評価も、今回発表された48週間の再燃リスクも、点滴静注用と非劣性だった。

    リンク: 同社のプレスリリース


    GSK、5価髄膜炎菌性髄膜炎ワクチンを承認申請
    (2024年4月16日発表)

    GSKは米国でMenABCWY(髄膜炎菌A/B/C/W-135/Yワクチン)を承認申請し受理された。審査期限は来年2月14日。髄膜炎菌A/C/W-135/Y群をカバーするMenveoとB群をカバーするBexseroを合体したワクチンで、現在は、CDC(米国疾病管理予防センター)が前者を11~12歳時と16歳時に、後者は医師と本人が相談した上で16~23歳時に1ヶ月おいて2回、接種するよう推奨しているが、一回目のMenveo接種を除き普及率は決して高くない。5価ワクチンは6ヶ月おいて2回で足りるので、ブースター接種とB株ワクチンの普及の一助になりそうだ。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ノバルティス、B因子阻害剤をIgA腎症に適応拡大申請
    (2024年4月15日発表)

    ノバルティスは、昨年10月、経口可逆的B因子阻害剤Fabhalta(iptacopan)の第3相原発性IgA腎症試験が中間解析で主目的達成と発表したが、今回、学会発表と合わせて、米国で適応拡大を申請し受理されていることを明らかにした。優先審査を受ける。中間解析主評価項目である9ヶ月時点のUPCR(尿蛋白クレアチニン比)は偽薬調整後で38.3%低下した。このデータで加速承認を取得し、最終解析の主評価項目である2年間のeGFR変化で疾病進行抑制効果を確認した上で本承認切替を狙う。

    Fabhaltaは補体系の暴走による様々な疾患に開発され、まず23年に米国で発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬として承認取得、EUでも今年3月にCHMPの肯定的意見を獲得した。C3糸球体症でも第3相段階。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認】


    武田、エンタイビオ皮下注がクローン病にも承認
    (2024年4月19日発表)

    武田薬品はアルファ4ベータ7インテグリンに結合する抗体医薬、Entyvio(vedolizumab)の皮下注用製剤が米国で中重度活性期クローン病の維持療法に適応拡大したと発表した。寛解導入期には静注用製剤300mgを30分かけて点滴し2週後に反復、その後の維持期は従来は同量を8週毎点滴静注していたが、患者本人が2週毎皮下注する選択肢が増えた。もう一つの適応である中重度潰瘍性大腸炎では昨年9月に承認済み。欧日では両用途とも既に承認されているが、米国はペンやそのレーベルにおける記載内容に関する指摘事項があり一旦、審査完了通知を受領したため、遅延した。

    リンク: 同社のプレスリリース


    FDA、アレセンサの術後アジュバントを承認
    (2024年4月18日発表)

    FDAはロシュ/ジェネンテックのAlecensa(alectinib)をALK陽性早期非小細胞性肺癌の摘出術後アジュバント療法に用いる適応拡大を承認した。600mgを一日二回、食中に経口投与する。最大2年間、反復する。第3相ALINA試験で効果を白金ベース化学療法と比較したところ、ステージIBからステージIIIAの全被験者におけるDFS(無病生存)ハザードレシオが0.24、各群のメジアン値は未達と44ヶ月、2年DFS率は93.6%と63.7%となり、統計的に有意且つ臨床的に意味のある便益が認められた。

    リンク: FDAのプレスリリース


    残存乳癌術中検査薬を承認
    (2024年4月17日発表)

    FDAは米国の未上場企業Lumicellの Lumisight(pegulicianine)を残存乳癌術中検査薬として承認した。乳腺腫瘍摘出術の前に投与して、摘出後の空洞に残存腫瘍がないか、同時にPMA(市販前承認)された Lumicell Direct Visualization Systemなどの蛍光造影機器を用いて、チェックする。後日、再手術するリスクを抑制することができる。

    臨床試験では357人中27人で一つ以上の残存腫瘍が検出された。感度は49%、特異度は86%、43%の症例で一つ以上の偽陽性があり、8%で偽陰性があった。

    有害事象は着色尿など。アナフィラキシーなどの過敏反応が枠付き警告された。他の臨床的に重要なリスクは上記の偽陽性など。

    リンク: FDAのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年4月推ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24年4月推ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)
    24/4/30Neurocrine BiosciencesのIngrezza(valbenazine顆粒製剤、ジスキネジアなど)
    24/5/9ファイザーのTivdak(tisotumab vedotin-tftv、難治/転移子宮頸癌に本承認切替)
    24/5/12モデルナのmRNA-1345(RSVワクチン)
    24/5/13Dynavax TechnologiesのHEPLISAV-B(血液透析中の成人のB型肝炎予防を追加)
    24/5/14アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症)
    24/5/16Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
    24/5/23BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治リンパ腫)
    24/5/25Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
    24/5/31BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治マントル細胞腫)
    24/6/4Catalyst PharmaceuticalsのFirdapse(amifampridine phosphate、LEMSにおける最大1日量を100mgに引き上げ)
    24/6/7GSKのArexvy(重症RSVリスクを持つ50~59歳に拡大)
    24/6/10Genfit/イプセンのGFT505(elafibranor、原発性胆汁性胆管炎)
    24/6/12アムジェンのAMG 757(tarlatamab、小細胞性肺癌3次治療)
    24/6/15BMSのAugtyro(repotrectinib、MTRK融合型固形癌に適応拡大)



    今週は以上です。

    2024年4月13日

    第1050回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • ニトロソアミン対策で治験組み入れを中断 
    • ACC:スタチンOTCスイッチの秘策 
    • 類似企業の売買もインサイダー取引になりうる 
    • アブリスボは60歳未満にも有効 
    • ACC:ApoC-IIIアンチセンス薬がTGを44%削減 
    • ACC:ウゴービの心不全試験、二本目も成功 
    • ACC:ジャディアンスの急性心筋梗塞試験はフェール 
    • バース症候群用薬の承認申請が今度は受理 
    • PCT社のパイプラインの動向 
    • ニーマン・ピックC型治療薬を承認申請 
    • Syndax社のパイプラインの動向 
    • パーキンソン病の持続点滴用新製剤がまたも審査完了に 
    • ODAC:微小残存病変に基づいて加速承認しても可 
    • カービクティが二次治療にも承認 
    • PRAC、GLP-1作用剤の自殺リスクを否定 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    ニトロソアミン対策で治験組み入れを中断
    (2024年4月9日発表)

    ノバルティスはCDK4/6阻害剤Kisqali(ribociclib)の早期乳癌臨床試験の新規組入れを中断すると発表した。nitrosamineの摂取規制に対応するため。Kisqaliの承認用途における使用や供給には影響なく、欧米で適応拡大を申請している早期乳癌の術後アジュバント療法の審査は予定通りに進捗と想定している由。

    nitrosamineは大気や水、食品などに広く分布しているが、癌原性の疑いがあるため、摂取上限が設けられている。医薬品に関しては、ACE阻害剤の一部に懸念が指摘されたり、FDAがカリウムイオン競合アシッドブロッカーのメーカーに対応を求めた事例がある。

    リンク: ノバルティスのプレスリリース


    ACC:スタチンOTCスイッチの秘策
    (2024年4月8日発表)

    コレステロール治療薬のOTCスイッチはなかなか進まず、日本では2012年にEPA製剤エパデール(イコサペント酸エチル)が中性脂肪値150~300mg/dLの人向けに承認されたが、スタチンは第1号のlovastatinを始めとして開発行き詰まりが相次ぎ、当方の知る範囲ではZocor 10mgが2004年に英国でZocor Heart-Proとして承認・発売されただけだ。ボトルネックの一つがFDAがレーベル理解度試験の実施を求めていること。適応になるかどうか、禁忌や薬物相互作用は問題ないかを自己判定させるものだが、あまり良い成績が出なかった模様だ。この難題を今風の方法で克服しようとした試験の成果がACC(米国心臓学会)とその機関誌であるJournal ofAmerican College of Cardiologyで発表された。

    判定用ウェブ・サイトにコレステロール値や血圧、服用薬、心筋梗塞などの既往の有無を入力すると、向こう10年間のアテローム性心血管疾患リスクなどに基づいてCrestor(rosuvastatin)5mgの適否を、使用可、不可、または(処方薬で治療すべきなどの理由で)医師に相談の何れかで判定するもの。アストラゼネカがスポンサーとなり、スタチンのアウトカム試験で数々の成果を挙げたSteve Nissen博士らが12000人以上の人を組入れて実施した。1200人弱が適応となり、薬を発注し6ヶ月間服用したが、発注段階における正解率(医師の判定と比較)は90%だった。

    この試験の弱い点は、対象の約4分の3が大卒で米国全体の5割強より高いこと。OTC薬が狙うべき、通院や処方薬を嫌がる人達とどの程度オーバーラップするか分からない。だが、危機管理の要諦は最初からゼロを目指すのではなく、先ず3割削減、達成したら更に3割削減を繰り返すことだ。治療の普及率を上昇させる一歩にはなるだろう。勿論、副作用対策に十分配慮する必要がある。

    リンク: Nissenらの治験論文アブストラクト(JACC)


    類似企業の売買もインサイダー取引になりうる
    (2024年4月5日発表)

    SEC(米国連邦証券取引委員会)がMedivation社の元社員をインサイダー取引で告訴した裁判で、連邦カリフォルニア北部地裁の陪審が違法性を認定した。16年にファイザーが同社の買収で合意した時に、公式発表の4日前に期近のアウト・オブ・ザ・マネー・コール・オプションを購入して10万ドル以上の利益を上げたというものだが、ユニークなのは、取引対象がMedivationではなくIncyte社であること。シャドウ・トレードと呼ばれているらしい。連想買いを先回りする手法自体はごくありふれたものだが、インサイダー情報が絡む場合は要注意となる。。

    白と黒の境界線は良く分からない。本件では、被告は投資銀行出身で事業開発のヘッドとして様々な投資銀行から各種提案を受けたり、ファイザーとの交渉に同席したりしていた。同社は内部取引ルールとして同社で得た未公開情報に基づき上場株などを取引することを、すべての企業に関して禁じていた。ファイザーのオファー価格は81.5ドルと、Medivationが拒否したサノフィのオファー、52.5ドルを上回り、株式市場における価格より大きく上回っていた。両社が注目したのはXtandi(enzalutamide)という伸び盛りの抗癌剤を開発販売していたことと、時価総額が100~200億ドルと投資対象として手頃であったことと推察されるが、この条件に当てはまり、次の買収ターゲットになりうるのは他にIncyteくらいしかなかった。

    まだ陪審段階なので、今後、判事が修正したり、控訴審で差し戻されたりする可能性があるが、SECはシャドウ・トレードの摘発に注力しているようなので、『李下に冠を正さず』。

    リンク: SECのプレスリリース
    リンク: SECの告訴時のプレスリリース(21年8月17日付)

    【新薬開発】


    アブリスボは60歳未満にも有効
    (2024年4月9日発表)

    ファイザーはAbrysvoが第3相MONeT試験で良績を上げたことを明らかにした。60歳以上の人や、胎児の出生後のRSV感染による下部気道疾患を予防するワクチンとして23~24年に米欧日で承認されているが、対象年齢拡大申請に向かうのではないか。

    18~59歳の、RSV感染時の重症化リスクが高くなりがちな基礎疾患を持つ863人を組入れて免疫原性を検討したもの。RSV-AとRSV-Bともに、免疫原性が高齢者試験のデータと比べて非劣性だった。高齢者は免疫原性と中重度下部気道疾患の予防効果に関する相関性が明らかになっているので、非高齢成人においても予防効果が期待できることになる。中和抗体価は接種前の4倍に上昇した。

    高リスク基礎疾患の内容はCOPDや喘息症、高血圧以外の心血管疾患、糖尿病などの代謝性疾患など。罹患率は18~49歳では人口の9.5%、50~64歳は24.3%とのこと。

    ライバルのGSKもAbrysvoと前後してArexvyが高齢者向けに承認され、日欧米で50~59歳の高リスク向けに承認申請中。

    リンク: ファイザーのプレスリリース


    ACC:ApoC-IIIアンチセンス薬がTGを44%削減
    (2024年4月7日発表)

    Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)はolezarsenの第3相家族性カイロミクロン血症候群(FCS)試験、Balanceの結果をACC(米国心臓学会)とNew England Journal of Medicine誌で発表した。18歳以上の患者66人を組入れて低脂肪食と標準療法に追加する便益を検討したもので、偽薬、50mg、または80mgを4週毎に皮下注して半年間のトリグリセライド値(ベースライン値は2630mg/dL)の変化を比較したところ、80mgは偽薬調整後で44%低下し、統計的に有意だった。50mgは22%に留まり有意ではなかった。

    被験者の7割は過去10年間に急性膵炎を経験しており、本試験でも53週の治療期間中に偽薬群は23人中11人が発症したが、80mg群は22人中1人、50mg群も21人中1人に留まった。深刻有害事象の発生率は、各群、39%、14%、19%だった。

    FCSは100万人に1~2人の超希少疾患。リポプロテイン・リパーゼの欠乏や機能低下によりカイロミクロンを分解できない。同社が創製したWaylivra(volanesorsen)が欧州などで承認されているが、米国は血小板減少症リスクなどから承認されなかった。olezarsenは類薬で、トリグリセライドの代謝を制御するApoC-IIIの発現を抑制する。低量で長期間作用するため安全性の向上が期待され、今回の試験でも臨床的に重要な血小板減少は見られなかった。

    24年に欧米で承認申請する考え。同社はアンチセンス技術をもとに脊髄性筋萎縮症用薬Spinraza(nusinersen)など数多くの医薬品の創製に成功した実績を持つが、自社開発・販売するのはolezarsenが初めてになる。

    リンク: 同社のプレスリリース
    リンク: Stroesらの治験論文アブストラクト(NEJM)


    ACC:ウゴービの心不全試験、二本目も成功
    (2024年4月6日発表)

    ノボ ノルディスクのGLP-1作用剤、semaglutideを駆出率保持心不全の治療に用いたSTEP-HFpEF-DM試験の結果がACCとNEJM誌で発表された。二型糖尿病を併発する患者にも有益であることが明らかになった。

    BMIが30kg/m2以上で二型糖尿病の成人616人を組入れて偽薬または2.4mgを週一回、52週間に亘り皮下注したところ、KCCQ-CSS(カンザスシティ心筋症質問票臨床要約スコア)が各群6.4点と13.7点上昇し、有意な差があった。共同主評価項目である体重も3.4%減と9.8%減で有意。副次的評価項目の6分歩行テストも群間差が14.3メートルと好ましい結果が出た。

    本試験と対をなす、二型糖尿病以外を組入れたSTEP-HFpEF試験も昨年8月に成功が発表されている。KCCQ-CSSの上昇は8.7点対16.6点、体重減は2.6%と13.3%、6分歩行テストは1.2メートル増と21.5メートル増で群間差20メートルと、まあまあ似たような成績になっている。

    同社はこの二本の試験に基づき適応拡大を申請中。承認された場合、製品名はWegovy(体重管理用途における名称)になるのだろうか、Ozempic(二型糖尿病における名称)になるのだろうか?(いずれにせよ、やがて経口投与できるRybelsusに置き換わるのだろうが)。

    リンク: Kosiborodらの治験論文アブストラクト(NEJM)


    ACC:ジャディアンスの急性心筋梗塞試験はフェール
    (2024年4月6日発表)

    ベーリンガー・インゲルハイムがイーライリリーと共同開発販売しているSGLT-2阻害剤、Jardiance(empagliflozin)の心筋梗塞急性期試験、EMPACT-MIの結果もACCとNEJMで発表された。入院後14日以内の、心不全や死亡リスクの高い約6500人を偽薬群と10mg一日一回群に無作為化割付けして心不全による入院や全死亡を観察したところ、メジアン追跡期間17.9ヶ月における発生率が各群9.1%と8.2%と若干改善したもののハザードレシオは0.90で有意水準に届かなかった。死亡は各群5.5%と5.2%、心不全入院は3.6%と4.7%だった。

    リンク: 両社のプレスリリース
    リンク: Butlerらの治験論文アブストラクト(NEJM)

    【承認申請】


    バース症候群用薬の承認申請が今度は受理
    (2024年4月8日発表)

    米国マサチューセッツ州の新興医薬品開発会社、Stealth BioTherapeutics(Nasdaq:MITO)は、MTP-131(elamipretide)をバース症候群の治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。フェールした第2/3相試験に基づくもので、FDA側は懐疑的だったが承認申請を断行。受理されなかったが、患者支援団体の支援を得て、セカンド・チャンスを掴んだ。但し、エビデンスが脆弱であることには変わりなく、優先審査指定されなかったところを見ても、承認の見通しが改善したとは考えにくいが、FDAの上層部が難病用薬の承認基準を引き下げる姿勢を見せているのが追い風だ。FDAは諮問委員会を招集する考え。

    バース症候群はX染色体上の遺伝子変異が原因でエネルギー生成が追い付かず、心不全や不整脈、白血球減少などを発現する。ほぼ全員が男性で、罹患率は男性100万人に一人と推定されている。ミトコンドリア標的ペプチド(MTP)のMTP-131はミトコンドリアのcardiolipinに結合しミトコンドリア膜の構造を正常化、機能を改善すると考えられている。

    第2/3相TAZPOWER試験で12人の患者を組入れて、偽薬または40mgを一日一回、12週に亘り皮下注射したところ、試験薬群(平均年齢23歳)の6分歩行テスト(6MWT)がベースライン値の400メートルから443メートルに改善したが、偽薬群(平均年齢16歳)も413メートルから444メートルに改善したため、フェールした。そこで、第3相SPIBA-001試験としてTAZPOWER試験(オープンレーベル延長試験も含む)のデータをジョンズ・ホプキンズの19人の自然歴データと比較したところ、6MWTの改善が80メートル超対1メートル足らずとなり、高度に有意な差が見られた。

    今回の申請はTAZPOWER試験の長期追跡データが追加されているが、決定的なエビデンスではないだろうから、前回と大きな違いはなさそうだ。

    治験成績の評価に難渋しているのはFDAだけではないようだ。上記数値はNIH(米国立衛生研究所)が管轄するClinicalTrials.govに基づくが、NIHの品質チェックを通過できず、3月に改めて提出されたようだ。通過しようがしまいが30日以内に公表されるので、まもなく、何か変更されたのか、それとも無修正か、明らかになるだろう。

    リンク: 同社のプレスリリース


    PCT社のパイプラインの動向
    (2024年3月28日発表)

    PTCセラピューティクス(Nasdaq:PTCT)の最近の承認申請の動きを遅ればせながら報告する。まず、PTC923(sepiapterin)を3月にEUでフェニルケトン尿症(PKU)治療薬として承認申請した。米国は7-9月期に、日本やブラジルでも24年内に、承認申請する予定。PKU患者が欠乏するBH4の前駆体であるセピアプテリンを化学合成した経口剤で、2020年にCensa Pharmaceuticalsを5100万ドルで買収して入手したもの。尚、BH4を化学合成した経口剤がバイオマリンのPKU治療薬Kuvan(sapropterin)/第一三共のビオプテンである。

    米国では3月にUpstaza(eladocagene exuparvovec)を常染色体性劣性遺伝性疾患であるAADC(芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)欠損症治療薬として承認申請した。ドーパミンなどの生成に必要なAADCの遺伝子であるDDCをアデノ随伴ウイルス2型をベクターとして脳の被殻に導入する。EUでは22年7月に台湾で実施された臨床試験に基づいて例外的環境条項による承認を取得したが、米国は臨床試験で用いた薬剤と量産品の同等性をさらに確認するよう求められたため、遅れた。

    Translarna(ataluren)は14年にEUでデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験がフェ-ルしたため、24年1月にCHMPが条件付き承認の年次更新をしないよう勧告した。米国では承認すらされなかったが、驚いたことに、FDAからのフィードバックに基づき24年央に再承認申請する考えを発表した。

    リンク: 同社のプレスリリース(PKU用薬申請、3/28付)
    リンク: 同(AADC欠乏症用薬申請など、3/19付)


    ニーマン・ピックC型治療薬を承認申請
    (2024年3月26日発表)

    米国テキサス州の未上場医薬品開発会社、IntraBioは、IB1001をニーマン・ピック病C型治療薬として1月に承認申請し、3月に受理された。優先審査を受け、審査期限は24年9月24日。欧州でも4-6月期に承認申請予定。

    リソソームの機能などに関わるN-アセチル-L-ロイシンの経口剤。欧米豪の施設で4歳以上の中重度症状を伴う患者80人を組入れた試験で、第12週の運動失調評価尺度(SARA)がベースラインの15.8から1.97低下し、偽薬群の0.60低下を有意に上回った。有害事象は両群同程度だった。

    ニーマン・ピック病のうちA型とB型は酸性スフィンゴミエリナーゼの欠乏が見られ、ジェンザイムのXenpozyme(olipudase alfa-rpcp)が適応になるが、C型はNPC1やNPC2の変異が影響していて、ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのZavesca(miglustat)がEUや日本で承認されているが米国は臨床試験がフェールしたことなどから未承認。

    リンク: 同社のプレスリリース


    Syndax社のパイプラインの動向
    (2024年3月26日発表)

    遅報第3弾はSyndax Pharmaceuticals(Nasdaq:SNDX)。SNDX-5613(revumenib)を成人小児の難治再発KMT2A再編成型急性白血病用薬として米国で承認申請し、3月に受理された。優先審査を受け、審査期限は24年9月26日。急性白血病の5~10%を占める、ヒストンメチル化酵素の遺伝子再編成のある患者にmenin阻害剤を投与して結合を妨げる。昨年10月の発表によると、第2相試験の二つのコフォートに94人を組入れ、評価可能57人における完全/部分的完全寛解率を調べたところ、23%でメジアン反応持続期間は6.4ヶ月だった。

    UCBからライセンスしてIncyte社と共同開発している抗CSF-1R抗体axatilimabも昨年12月に6歳以上の小児と成人の慢性移植片対宿主病の3次治療薬として承認申請した。ピボタル第2相試験で0.3mg/kgを2週毎に投与した群のORR(客観的反応率)が74%、1.0mg/kg2週毎の群は67%、3.0mg/kg4週毎群は50%だった。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    パーキンソン病の持続点滴用新製剤がまたも審査完了に
    (2024年4月8日発表)

    Supernus Pharmaceuticals(Nasdaq:SUPN)はSPN-830(apomorphine点滴ポンプ)をパーキンソン病のオフ・タイム症状を抑制する医薬品・医療機器として承認申請したが、二回目の審査完了通知を受領した。最初の申請は受理されず、一回目の審査完了通知の一因であった生産委託先の査察は2月に完了したが、先方が企業秘密事項としてFDAに提出したドラッグ・マスター・ファイル関連の事項と、当社が追加提出したがまだ審査されていない品質関連の指摘事項が、未解決のようだ。FDAと協議する考え。

    パーキンソン病はドーパミン製剤やドーパミン作用剤がよく効くが、次第に作用時間が短くなり、症状が現れるオフ・タイムが長期化していく。SPN-830は薬剤を皮下に持続点滴する機器で、US WorldMedsがBrittania Pharmaceuticalsと共同開発した。Supernusは20年にUS WorldMedsの中枢神経系製品・開発品群を買収して入手した。

    類似した製品では、アッヴィのfoslevodopa・foscarbidopa持続皮下注入用も欧州(Produodopa名)と日本(ヴィアレブ名)では22年に承認されたが、米国はポンプに関する追加情報が必要として審査完了通知を受領し、昨年12月に追加申請したところ。医薬品と医療機器を組み合わせたハイブリッド承認申請は業際分野でもあるためか、スムーズにいかないことがしばしばある。

    リンク: Supernusのプレスリリース


    ODAC:微小残存病変に基づいて加速承認しても可
    (2024年4月12日開催)

    FDAがODAC(腫瘍学薬諮問委員会)を招集しMRD(微小残存病変)に基づいて多発骨髄腫用薬を承認する妥当性について意見を求めたところ、12人全員が賛成した。新薬開発期間が著しく長期化したり、今より効果の高いレジメンが埋もれてしまったりするのを防ぐ効果がありそうだ。PFS(無進行生存期間)や全生存期間による評価がベストであることには変わりないが、一次治療などにおいては、MRDに基づいて加速承認しPFSで本承認に切替える事例が増えていくだろう。

    多発骨髄腫はthalidomideを皮切りに新薬が続々承認され、昔は再発した時のために取っておかざるを得なかった薬を最初から多剤併用することも可能になった。プロテアーゼ阻害剤と免疫調節剤と抗CD38抗体とdexamethasoneによる治療歴を持つ患者の4次治療薬として承認された薬がプロテアーゼ阻害剤と抗CD38抗体とdexamethasoneによる治療歴を持ち免疫調節剤抵抗性の患者の2次治療に適応拡大、などという事例も出てきた。多剤併用で効果も高まっていくが、標準療法の効果が高ければ高いほど、それを上回るべき新レジメンの臨床試験の必要組入れ数や追跡期間が増加していく。ORR(客観的反応率)が100%に達したら、それを上回るレジメンはもう出てこない。完治率100%ならそれでも良いが、血液学の反応は長期持続しないので、さらに向上する余地がある。

    対策がMRDだ。次世代シーケンサーを用いて、10万細胞中1個、あるいは100万細胞中1個という感度で腫瘍細胞の有無を判定する。過去の臨床試験のメタアナリシスで、9ヶ月前後の時点でMRD陰性だった患者は陽性の患者より無進行生存や全生存のオッズが数倍高かった。

    昨年12月のASH(米国血液学会)ではサノフィの抗CD38抗体Sarclisa(isatuximab-irfc)の第3相IsKia試験におけるMRD評価が発表された。新患造血幹細胞移植適格多発骨髄腫における標準的レジメンであるKRdレジメン(carfilzomib、lenalidomide、dexamethasone)に追加する便益を検討したところ、インダクション、自家造血幹細胞移植、地固め療法を経て77%がMRD陰性(感度は10万細胞に1個)となった。標準療法群は67%で、オッズ比は1.67、p=0.049だった。もし適応拡大申請しているとしたら、MRDに基づく加速承認第1号になるかもしれない。

    この方法の短所は、製薬会社がMRDばかり重視して、延命効果があるかもしれないがMRDにはあまり効かなそうなコンパウンドの開発を後回しにするかもしれない。対策として、FDAは、一本の試験でまずMRDを評価し、平凡ならそのまま、良好なら加速承認を申請して後にPFS解析が成功したら承認申請/本承認切替申請することを推奨している。

    重大な短所は有害事象の追跡期間が短くなること。ORR(客観的反応率)が良いのにPFSは悪い、という場合は副作用が原因だろうから、一本の試験でMRDとPFSを評価するやり方は長期安全性を検証する上でも有効なのではないか。

    リンク: FDAの諮問委員会に関する資料掲載頁

    【承認】


    カービクティが二次治療にも承認
    (2024年4月5日発表)

    ジョンソン・エンド・ジョンソンは、Carvykti(ciltacabtagene autoleucel)が米国で成人の再発難治多発骨髄腫の二次治療薬として承認されたと発表した。プロテアソーム阻害剤と免疫調停剤による治療歴とlenalidomideに抵抗性を示した患者が適応になる。BCMA標的型CAR-T療法で22年に米欧日で4次治療薬として承認されたが、2次治療や3次治療で使えるようになったため対象人口が12万人と6倍近くに増加する。

    既存の多剤併用療法であるPVdレジメンやDPdレジメンと比較したCARTITUDE-4試験でPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.41、全生存の解析は未成熟だが34%到達時点でハザードレシオが0.78と好ましい方向を指していた。当初10ヶ月の死亡率が14%対12%と上回ったのは残念だが、投与前の死亡が上回ったようなので、アフィレーシスから薬剤投与まで時間がかかることや、投与前の前処理に用いる抗癌剤の影響もあるのだろう。患者にとっては気休めにならないが。

    リンク: JNJのプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    PRAC、GLP-1作用剤の自殺リスクを否定
    (2024年4月12日発表)

    EMAのファーマコビジランス委員会、PRACは、GLP-1作用剤の自殺・自傷リスクを検討した結果、因果関係を示すエビデンスはないと結論した。昨年7月にアイスランドの動議により検討を開始したが、Nature Medicine誌で刊行されたTriNetX Analytics Networkの後顧的コフォート研究でも、EMAが行った分析でも、リスクの増加は見られなかった。

    FDAも1月にリスク上昇は見られないという予備的検討の結果を発表している。

    リンク: EMAのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24年4-6月ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)
    24/4/30Neurocrine BiosciencesのIngrezza(valbenazine顆粒製剤、ジスキネジアなど
    24/5/9ファイザーのTivdak(tisotumab vedotin-tftv、難治/転移子宮頸癌に本承認切替)
    24/5/12モデルナのmRNA-1345(RSVワクチン)
    24/5/13Dynavax TechnologiesのHEPLISAV-B(血液透析中の成人のB型肝炎予防を追加)
    24/5/14アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症)
    24/5/16 Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
    24/5/22ロシュのAlecensa(alectinib、ALK+NSCLC術後アジュバント)
    24/5/23BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治リンパ腫)
    24/5/25Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
    24/5/31BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治マントル細胞腫)



    今週は以上です。

    2024年4月6日

    第1149回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • ALS用薬の承認返上を決定 
    • 鬱病治療用アプリが承認 
    • イミフィンジ、限局型小細胞癌の維持療法試験が成功 
    • アセクレジン点眼液を老視用薬として承認申請へ 
    • Jazz、抗her2xher2抗体を承認申請 
    • レケンビの維持用法を承認申請 
    • アベクマの3次治療が米国でも適応に 
    • エンハーツ、各種her2陽性固形癌に適応拡大 
    • Basileaの新規セファロスポリンが米国でも承認 
    • アストラゼネカのPNH用新薬が米国でも承認 
    • 向精神薬が発売の15年後に適応拡大
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    ALS用薬の承認返上を決定
    (2024年4月4日発表)

    米国の新興製薬会社Amylyx(Nasdaq:AMLX)は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬Relyvrio(sodium phenylbutyrateとtaurursodiolの合剤)の米加における販売承認を自主的に廃止する手続きを開始した。市販後に第3相PHOENIX試験で主評価項目も副次的評価項目もフェールしたため。新規患者向けの販売は即日中止、現在治療を受けている患者は、本人が医師と相談の上で継続を望むなら、無料プログラムに移行することができる。同薬の23年売上高は2.1億ドル、このうち1億ドルは第4四半期と急伸していたが、今年3月に第3相フェールが発表されて以来、多くの医師が処方を止め、医療保険も還元対象から外した模様だ。

    Relyvrioは22年6月にカナダでAlbrioza名で条件付き承認され、米国でも同年9月に条件なしで承認されたが、共同CEOのJustin Kleesが、直前のFDA諮問委員会で、もし第3相がフェールしたら承認返上も含め患者にとって最善な対応を行うとコミットしていたため、承認返上は順当な成り行きだ。ALSのような難病に関しては米欧日など多くの国が新薬承認の要件を緩和する制度を設けている。今回は加速承認ではないが実質的に似たような格好になっており、加速承認案件も含めて、今後のモデルケースになりうるのではないか。Relyvrioの発売時の価格は年15.8万ドルと高価だったが、製薬会社が市販後薬効試験に真摯に取り組むように、加速承認段階では予定価格の半値で販売するなどの規制を導入するともっと良いだろう。

    第3相試験の成績は今月のANN(米国神経学会)で発表される予定。なぜ第2相の成績が再現されなかったのか、注目される。第2相と第3相のデザイン上の違いは、組入れ数(約140人と約660人)、主評価項目(第3相はALSFRSの改定後のものを採用)など。FDAの審査担当者が22年3月の諮問委員会で指摘したのは第2相は追跡不能例が両群17~18%と高い比率で発生していること、試験開始後にALS用薬二剤のどちらかを開始した患者の比率が試験薬群は15%、偽薬群は4%と大きく偏っていること。そもそも、第2相試験のp値は0.034と、決して胸を張れるものではなかった。EUが承認しなかったのも、FDAが当初は第3相をやってから申請するようアドバイスしたのも、無理はなかった。おそらく、医師も患者も、薬効が不確かであることを認識していただろう。

    リンク: 同社のプレスリリース


    鬱病治療用アプリが承認
    (2024年4月2日発表)

    FDAはClick Therapeuticsが大塚製薬と共同開発した鬱病治療用アプリ、Rejoynを、22歳以上の鬱病(MDD)の補助療法として510(k)認可を行った。iOS用とAndroid用がある。鬱病用アプリの認可は初めて。

    抗鬱剤による外来治療を受けている患者が、認知行動療法の一助として、6週間の治療セッションを受ける。400人弱を組入れた臨床試験で、主評価項目であるmITTベース(1回以上のセッションを受け、その後とベースライン時点のMADRS評価値がある354人)のMADRSが9.03低下した。シャム群は7.25低下で、差は1.78、p=0.0568だった。しかし、副次的評価項目であるITTベースの群間差は2.12、p=0.02、PHQ-9やCGI-Sのp値はどちらのベースでも0.01を下回った。

    リンク: FDA Roundup

    【新薬開発】


    イミフィンジ、限局型小細胞癌の維持療法試験が成功
    (2024年4月5日発表)

    アストラゼネカは、抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)が第3相ADRIATIC試験で共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間)と全生存期間の延長を達成したと発表した。限局型小細胞癌の同時化学放射線療法を受けて進行しなくなった患者に1500mgを4週毎投与した試験で、偽薬比統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。

    この試験はImfinziに加えて同社の抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab)も4回だけ投与する群も設定されているが、継続追跡中。

    Imfinziは進展型小細胞癌の一次治療に化学療法と併用することが米日欧で承認されている。エビデンスとなったCASPIAN試験ではImjudoも併用する群も設けられたが、フェールした。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アセクレジン点眼液を老視用薬として承認申請へ
    (2024年4月3日発表)

    米国カリフォルニア州のLENZ Therapeutics(Nasdaq:LENZ)はLNZ100(aceclidine 1.75%)の第3相老視治療試験が二本とも成功したと発表した。年央に米国で承認申請する考え。

    アセチルコリン受容体作動剤で欧州では緑内障の治療薬として半世紀の市販歴がある。第3相試験ではLNZ100またはbrimonidine配合剤LNZ101を一日一回点眼する効果を対照群(CLARITY Iはbrimonidine単剤、IIは偽薬)と比較した。主評価項目は点眼3時間後における奏効率で、奏効の定義は近見視力が3行以上改善し遠見視力は1行超悪化しないこと。CLARITY I試験では各群64%、49%、12%、IIでは71%、57%、8%となり、二試験薬群の何れも対照群比で統計的に有意な差があった。

    LNZ100の奏効率は10時間後には27~40%に低下する。brimonidine配合剤は持続性が高いと予想されたが、37~39%と大差なかったため、LNG100だけを承認申請する考え。

    老視治療薬は21年にアッヴィのVUITY(pilocarpine hydrochloride 1.25%)が、23年にはOrasis PharmaceuticalsのQlosi(同 0.4%)も、米国で承認された。視力検査方法や主評価項目の詳細が若干異なるが、治療効果(奏効率の偽薬群との差)はLNZ100のほうが高そうに見える。但し、こちらの数値は治療初日のもの、Qlosiは第8日、Vuityは第30日と評価時期が異なっている。反復投与するうちに効果が低下するようなこともあるだろうから、同時期のデータを見たいものだ。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認申請】


    Jazz、抗her2xher2抗体を承認申請
    (2024年4月2日発表)

    Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)は、米国でzanidatamabのローリング承認申請を完了したと発表した。適応は、治療歴のある切除不能、局所進行性、または転移性のher2陽性胆道癌。後期第2相のHERIZON-BTC-01試験でcORR(確認客観的反応率、独立中央評価)が41.3%、メジアン反応持続期間は12.9ヶ月だった。同社によると、標準療法の反応率は5~15%とのこと。有害事象による治験離脱率は2.3%、G4の有害事象や、G5治療関連有害事象はゼロだった。

    胆道癌は5~19%がher2陽性。zanidatamabはher2の二つの異なったエピトープに結合する抗体医薬で、Zymeworks(NYSE:ZYME)から米欧日などにおける開発商業化権を取得し、中国などの権利を持つBeiGene(Nasdaq:BGNE)と共同開発している。

    リンク: Jazzのプレスリリース


    レケンビの維持用法を承認申請
    (2024年4月1日発表)

    エーザイと開発販売パートナーのバイオジェンは、早期アルツハイマー病用薬Leqembi(lecanemab-irmb)の維持用法と皮下注用新製剤を米国で3月までに追加申請する計画だったが、後者は遅延が発表された。

    維持用法は追加申請された。現在は点滴静注用製剤を2週毎投与するが、維持期は月一回を予定。エビデンスは過去の臨床試験のデータに基づくモデリングとのことで、用量は公表されていない。また、維持用法にシフトするタイミング(アミロイド・ベータの除去が確認された後?)はFDAと協議中とのこと。

    皮下注用は720mg週一回で開始、維持用量は360mg週一回という用法と推定されるが、FDAから維持用量の3ヶ月免疫原性データも提出するよう求められた。このため、一部のデータを先に提出するローリング承認申請を打診したが、皮下注用製剤で改めてファースト・トラック指定を得るよう求められた。3月に指定を申請、60日以内に回答の見込み。

    Leqembiによる治療を受けるにはMRIなどの設備を持つ医療施設(多くの場合、遠くの病院)に通院する必要があり、健康に過ごせる残された期間の貴重さを考えると、月一回で済むならその方がよい。皮下注用新製剤も、何回か投与した後に自己注にシフトすることが認められるなら、利便性が向上する。

    リンク: 両社のプレスリリース

    【承認】


    アベクマの3次治療が米国でも適応に
    (2024年4月5日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブと2seventy bio(Nasdaq:TSVT)は、FDAがAbecma(idecabtagene vicleucel)を成人の難治再発多発骨髄腫の3次治療に用いることを承認したと発表した。主要な3種類の薬(免疫調停剤、プロテアソーム阻害剤、抗CD38抗体)を使い終わった患者が適応になる。KarMMa-3試験でPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)のメジアン値が13.3ヶ月と標準的多剤併用レジメンの4.4ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.49だった。全生存期間の解析は未成熟。

    FDAはCD19を標的とするCAR-T療法に関してT細胞腫瘍のリスクが高まるという枠付き警告を導入しているが、今回、AbecmaのようなBCMA標的CAR-Tも追加した。

    この適応拡大は日本では昨年12月、EUでも今年3月に承認されている。

    FDAは死亡リスク抑制作用が明確でないことなどから3月の腫瘍学諮問委員会でジョンソン・エンド・ジョンソンのBCMA標的CAR-TであるCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)と共に意見を聞いたが、諮問委員の過半が支持した。Carvyktiは二次治療なので承認されればAbecmaより早く使えることになる。PDUFAは4月5日だが、今のところ承認されたという発表はない。

    リンク: BMSのプレスリリース


    エンハーツ、各種her2陽性固形癌に適応拡大
    (2024年4月5日発表)

    FDAは、第一三共がアストラゼネカと共同開発販売している抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を成人の切除不能/転移her2陽性固形癌に用いることを加速承認した。前治療歴のある、他に妥当な治療オプションがない患者が適応になる。抗癌剤の適応は原発部位毎に決定されることが多いが、her2陽性という切り口で様々な癌種に承認されたのは今回が初めて。第2相のDESTINY-PanTumor02試験などに基づく。IHC2+以上の患者を組入れ、成績も良好だったが、承認は3+に限定されている。症例数の多い癌種に絞ってcORR(確認客観的反応率)を示したが、レーベルには症例数が少なすぎたせいかcORRがゼロだった癌種も表記されている。

    Enhertuは、IHC法で3+またはISH法で陽性という『her2陽性』の定義を乳癌に関しては変えたが、癌種によって異なるのが面倒くさい。今回、レーベルで適応毎に定義が明記された。

    部位別のcORR
    部位症例数cORR
    結腸直腸癌6446.9%
    膀胱癌2737.0%
    胆道癌2245.5%
    非小細胞性肺癌1752.9%
    内膜腫1656.3%
    卵巣癌1566.7%
    子宮頸癌1070.0%
    唾液腺癌 966.7%


    リンク: Enhertuのレーベル(FDAサイト、pdfファイル)

    Basileaの新規セファロスポリンが米国でも承認
    (2024年4月3日発表)

    FDAはスイスのBasilea Pharmaceutica(SWX:BSLN)のZevtera(ceftobiprole medocari)を承認した。適応は成人の黄色ブドウ球菌菌血症、成人の急性細菌性皮膚皮膚構造感染症、生後3ヶ月以上の地域感染細菌性肺炎。何れも実薬対照試験で治癒率又は応答率が非劣性だった。尚、院内感染肺炎・人工呼吸器関連肺炎の試験で後者のサブグループにおける死亡率が実薬を上回ったため、前者を含め適応外とされた。

    同社は承認までに販売提携先を見つける考えだったが、今回、年央までに決定と変更した。

    07年にライセンシーだったジョンソン・エンド・ジョンソンが複雑皮膚皮膚構造感染症治療薬として承認申請し、08年にカナダとスイスで承認取得、EUでもCHMPが肯定的意見をまとめたが、FDAは治験実施施設の査察で49施設中10施設におけるデータの信頼性や検証可能性に関する瑕疵を発見したことから承認を見送り、カナダとスイスは承認を取消し、CHMPも否定的意見に転じた。

    JNJがライセンスを返還した後、Basileaは13年に欧州の一部国で地域感染肺炎と院内感染肺炎(人工呼吸器関連肺炎は除く)で非中央手続きによる承認を取得、20年には中国とブラジルでも承認を取得したが、米国は初承認申請から17年近くを経て、やっと承認に漕ぎ着けた。抗菌剤の開発が、資金面など様々な理由で、なかなか進まない現実を表している。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: Zevteraの最小発育阻害濃度データ(FDA)


    アストラゼネカのPNH用新薬が米国でも承認
    (2024年4月1日発表)

    アストラゼネカは、FDAがVoydeya(danicopan)を発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の成人の血管外溶血の治療薬として承認したと発表した。同社の抗C5抗体、Soliris(eculizumab)またはUltomiris(ravulizumab-cwvz)で治療しても脾臓や肝臓などにおける血管外溶血が残存する、PNHの1~2割程度の患者に、追加投与する。経口剤。日本では1月に承認、EUでも2月に肯定的意見を得ている。

    抗C5抗体が古典的補体経路に介入するのに対してVoydeyaは副経路に関わる補体D因子を阻害する。臨床試験ではヘモグロビン値がベースライン時点の7.7g/dLから2.94g/dL増加、偽薬追加群の0.50g/dL増を有意に上回った。59.5%の患者で2g/dL以上増加した(偽薬追加群はゼロ)。

    競合品はノバルティスのFabhalta(iptacopan)が昨年12月に米国で承認された。D因子はC3と細胞膜の結合体に結合した補体B因子を開裂するが、FabhaltaはB因子を阻害するので、Voydeyaより川上に介入することになる。抗C5抗体に応答不十分な患者を組入れた臨床試験では、Fabhaltaにスイッチした患者の82%でヘモグロビン値(ベースラインは8.9g/dL)が2g/dL以上増加した。抗C5抗体による治療を継続した患者ではゼロだった。Fabhaltaは抗C5抗体歴のない患者にも承認されていて、抗C5抗体不十分応答にはスイッチなので追加のVoydeyaより安く済みそうだ。。

    リンク: アストラゼネカのプレスリリース


    向精神薬が発売の15年後に適応拡大
    (2024年4月2日発表)

    Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq:VNDA)はFDAがFanapt(iloperidone)を成人の双極障害I型の躁/混合症状の急性期治療薬として承認したと発表した。臨床試験でYMRS症状評価尺度がベースラインの29点から14点低下、偽薬群は10点低下で、有意な差があった。

    Fanaptは09年に米国で統合失調症治療薬として承認された。EUは否定的意見だった。効果が小さい、作用が発現するまで2~3週間かかり急性期の治療には適さない、QT延長リスク、肝機能低下や薬物相互作用リスクなどが理由。

    リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24年4-6月ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/5 JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療)
    24/4/5 Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)
    24/4/30Neurocrine BiosciencesのIngrezza(valbenazine顆粒製剤、ジスキネジアなど
    24/5/9ファイザーのTivdak(tisotumab vedotin-tftv、難治/転移子宮頸癌に本承認切替)
    24/5/12モデルナのmRNA-1345(RSVワクチン)
    24/5/13Dynavax TechnologiesのHEPLISAV-B(血液透析中の成人のB型肝炎予防を追加)
    24/5/14アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症)
    24/5/16 Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
    24/5/22ロシュのAlecensa(alectinib、ALK+NSCLC術後アジュバント)
    24/5/23BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治リンパ腫)
    24/5/25Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
    24/5/31BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、再発/難治マントル細胞腫)



    今週は以上です。