tag:blogger.com,1999:blog-84325527798804314522024-03-18T18:47:37.656+09:00欧米の新薬開発動向<ul>
<li>海外で開発・販売されている薬に関するニュースです。</li>
<li>ドラッグラグではなくインフォメーションラグの解消を目指します。</li>
<li>リンク先は殆どが英文です。改行で切れてしまう場合があります。リンク先の安全性や内容は保証できません。</li>
<li>
<b><big>2020年4月5日をもって、題名を海外医薬ニュースから変更しました。</big></b>
</li>
</ul>
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.comBlogger620125tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-49352030199220216502024-03-16T10:27:00.003+09:002024-03-16T10:27:31.852+09:00第1146回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>アドセトリス、B細胞リンパ腫でも試験成功 </li>
<li>抗IL-17A蛋白の乾癬性関節炎試験は結局、上手く行った? </li>
<li>Nuplazid、最後の適応拡大試験もフェール </li>
<li>トレムフィアを潰瘍性大腸炎にも申請 </li>
<li>FDA諮問委員会、BCMA標的CAR-Tの早期使用を支持 </li>
<li>FDA諮問委員会、テロメラーゼ阻害剤の承認を支持 </li>
<li>初のNASH用薬が承認 </li>
<li>ブレヤンジがCLLに適応拡大 </li>
<li>中華抗PD-1抗体が遂に米国で承認 </li>
<li>IBAT阻害剤が肝内胆汁鬱滞症に適応拡大 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>アドセトリス、B細胞リンパ腫でも試験成功</u>
<br />
(2024年3月12日発表)
<br />
<br />
ファイザーはAdcetris(brentuximab vedotin)の第3相ECHELON-3試験が良好な結果になったと発表した。成人の2次または3次治療歴を持ち幹細胞移植/CAR-T治療に適さないびまん性大細胞型B細胞リンパ腫をCD30発現の有無を問わずに組み入れて、lenalidomideとrituximabのレジメンに追加する便益を偽薬追加群と比較したところ、統計的に有意な、そして臨床的に意味のある延命効果が見られた。副次的評価項目であるPFS(無進行生存期間)やORR(客観的反応率)の解析も成功した。適応拡大を申請する考え。数値は未発表。
<br />
<br />
Adcetrisは武田薬品と共同開発販売している抗CD30抗体薬物複合体。古典的ホジキン型リンパ腫における様々な用法や、全身性未分化大細胞リンパ腫などCD30陽性T細胞系リンパ腫に承認されているが、遂にB細胞リンパ腫にも進出してきた。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-announces-positive-overall-survival-phase-3-trial" target="blank">
ファイザーのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>抗IL-17A蛋白の乾癬性関節炎試験は、結局、上手く行った?</u>
<br />
(2024年3月11日発表)
<br />
<br />
米国ロサンジェルスの新興医薬品開発会社、ACELYRIN(Nasdaq:SLRN)は、ABY-035(izokibep)の後期第2相/第3相乾癬性関節炎試験で主目的を達成したと発表した。試験薬配布ミスをどうカバーしたのかは明らかではない。
<br />
<br />
izokibepはIL-17Aに結合する、抗体医薬の10分の1と小さいドメインとアルブミン結合ドメインを持つ蛋白。今回の試験は一剤以上に十分応答しない乾癬性関節炎患者を偽薬群、80mg4週毎投与群、160mg隔週投与群、160mg毎週投与群に無作為化割付けして第16週のACR50奏効率を比較したもの。今回の発表によると、ACR50奏効率は160mg隔週群が43%、毎週群が40%となり、偽薬群の15%を有意に上回った。副次的評価項目のPASI90奏効率も各58%、64%、12%と良好な結果になった。忍容性はおおむね良好だった。治療関連深刻有害事象に大きな偏りは見られなかった。
<br />
<br />
二重盲検試験なので4週毎群や隔週群は試験薬と偽薬を交互に投与することになるが、CRO等のプログラミング・ミスにより順番の間違いがランダムに発生してしまったことが昨年11月に公表されている。どのようにしてこの瑕疵に対応したのかは明らかではない。もう一本第3相試験を行うだろうから、結果が出てから考えれば十分だろう。
<br />
<br />
同社は化膿性汗腺炎でも後期第2相/第3相試験を実施したがフェールした。偽薬群の奏効率が治験の前半と後半で大きく異なるなど奇妙な点があったため乾癬性関節炎試験の実施状況をチェックしたところ上記のミスが発覚したという経緯だが、化膿性汗腺炎試験に関しては、延長試験のデータが好調に推移している旨のアップデートを発表している。新興企業によくある、チェリーピックしがちなところがあるのだろうか?
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.acelyrin.com/news-releases/news-release-details/acelyrin-inc-announces-positive-top-line-results-its-global" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Nuplazid、最後の適応拡大試験もフェール</u>
<br />
(2024年3月11日発表)
<br />
<br />
Acadia Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)はNuplazid(pimavanserin)の三本目の統合失調症試験がフェールしたと発表した。オレンジ・ブック収載特許は既に失効しており、これ以上の開発は行わない考え。
<br />
<br />
2016年にパーキンソン病に伴う精神症状を治療する薬としてFDAに承認された選択的セロトニン・インバース・アゴニスト。アルツハイマー病などに伴う精神症状の治療にも開発・申請されたが承認されなかった。
<br />
<br />
統合失調症用途は19年に第3相ENHANCE試験で陽性症状改善効果が見られなかったが、PANSS陰性症状サブスケールは名目p値が0.0474と、効かないとは結論できないものだった。向精神薬治療で陽性症状は管理できているが陰性症状が改善しない患者403人を組入れた第2相ADVANCE試験では26週間の治療でNSA-16(陰性症状評価-16)の低下が10.4となり、偽薬群の8.5を上回った(p=0.043)。20mgで開始、最初の8週間中に34mgまたは10mgに滴定可能という用法だが、34mgでフィニッシュした患者(被験者の54%)では11.6対8.5とさらに大きな治療効果が示唆された。
<br />
<br />
今回の第3相ADVANCE-2も同様な患者454人を組入れて同様に26週間治療したが、NSA-16の低下は11.8対11.1で大差なかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://acadia.com/media/news-releases/acadia-pharmaceuticals-announces-top-line-results-from-phase-3-advance-2-trial-of-pimavanserin-in-negative-symptoms-of-schizophrenia/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>トレムフィアを潰瘍性大腸炎にも申請</u>
<br />
(2024年3月11日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソンは米国でTremfya(guselkumab) を成人の中重度活性期潰瘍性大腸炎の治療に適応拡大申請した。第3相のQUASAR試験でバイオ薬やJAK阻害剤にも十分応答しない患者に投与したところ、第12週時点の臨床的治癒率が22.6%と偽薬群の7.9%を上回った。深刻有害事象の発生率は各群2.9%と7.1%だった。下記プレスリリースによると第44週の臨床的寛解率も良好な結果になった様子だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/media-center/press-releases/johnson-johnson-submits-supplemental-biologics-license-application-to-u-s-fda-seeking-approval-of-tremfya-guselkumab-for-the-treatment-of-adults-with-moderately-to-severely-active-ulcerative-colitis" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>FDA諮問委員会、BCMA標的CAR-Tの早期使用を支持</u>
<br />
(2024年3月15日発表)
<br />
<br />
FDAはODAC(腫瘍学薬諮問委員会)を招集し、ジョンソン・エンド・ジョンソンとブリストル マイヤーズ スクイブ/bluebird bio社が夫々に承認申請したBCMA(B細胞成熟抗原)を標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)の、現在承認されているより早い段階の多発骨髄腫における便益と危険について意見を聞いた。前者のCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)は11人の委員全員が、後者のAbecma(idecabtagene vicleucel)は8人が、便益が危険を上回ると判定した。前者の審査期限は4月5日と近いので、FDA内の手続きが間に合わない可能性がありそうだ。後者は昨年12月16日で、既に期限超過状態。
<br />
<br />
CAR-Tは患者自身の免疫細胞に敵を教え込んで攻撃させる。理由は理解できていないが、反復投与の必要がないのが長所だ。新しい治療法にはありがちなことだが、市販後に様々なリスクが表面化してきた。例えば、23年12月にFDAが多くのCAR-T製品について二次性血液学的腫瘍のリスクを枠付き警告させた。
<br />
<br />
今回の主題は、両剤の実薬対照試験でPFS延長効果が見られたものの、全死亡のカプラン・マイヤー・カーブ分析で最初の9~10ヶ月間の死亡率が実薬群を数値上、上回ったこと。Carvyktiは10ヶ月死亡率が14%、対照群は12%、Abecmaは9ヶ月死亡率が18%対11%となっている。メジアン生存期間はCarvyktiが未達対26.7ヶ月でハザードレシオは0.78、Abecmaは未だ目標死亡数の34%しか到来していない段階の解析だが32.8ヶ月対未達でハザードレシオ1.093と、PFSほど大きな差は出ていない。後者は対照群の患者の過半が進行後にCAR-T治療を受けたことで治療効果が希薄化されてしまった面もあるようだ。
<br />
<br />
CAR-Tは投与前のプロセスに時間がかかり、製造が成功するとも限らないので、本試験でも薬が届けられる前に亡くなった患者がいたようだ。また、前措置に用いる化学療法薬も深刻な副作用を招くことがある。当初9~10ヶ月の死亡率上昇はこれらが原因と考えられているようだ。造血幹細胞移植と同様に、患者は、早死にする危険もあるが延命の便益のほうが超過する、という条件を受け入れざるを得ない。
<br />
<br />
今回の適応拡大申請は、両剤ともEUでCHMPが肯定的意見をまとめ、Abecmaは日本とスイスで既に承認されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/media-center/press-releases/u-s-fda-oncologic-drugs-advisory-committee-recommends-carvykti-ciltacabtagene-autoleucel-for-the-earlier-treatment-of-patients-with-relapsed-or-refractory-multiple-myeloma" target="blank">
JNJのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2024/FDA-Advisory-Committee-Votes-in-Favor-of-Bristol-Myers-Squibbs-and-2seventy-bios-Abecma-for-Triple-Class-Exposed-Multiple-Myeloma-in-Earlier-Lines-of-Therapy/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<u>FDA諮問委員会、テロメラーゼ阻害剤の承認を支持</u>
<br />
(2024年3月14日発表)
<br />
<br />
米国カリフォルニア州のGeron(Nasdaq:GERN)は、多発骨髄腫に伴う貧血症の治療薬として承認申請したGRN163L(imetelstat)をFDA腫瘍学諮問委員会が検討し、14人の委員のうち12人が便益が危険を上回ると判定、2人が上回らないと判定したと発表した。FDAが用意したブリーフィング資料のトーンは警戒的だったが、承認に向けて一歩前進したのではないか。審査期限は6月16日。EUでも承認申請中。
<br />
<br />
GRN163Lはテロメラーゼの活性部位を標的とするオリゴヌクレオチドにリピッドを結合したもの。第3相試験ではIPSS(国際予後予測スコアリングシステム)でlowまたはintermediate-1と判定された多発骨髄腫の成人で、赤血球生成因子による貧血治療に不応/不適であるため輸血に依存している178人を組入れて、8週間輸血不要奏効率を偽薬群と比較したところ、39.8%対15.0%と有意に上回った。24週輸血不要奏効率も28.0%対3.3%と有意差があった。安全性面ではG3/4の血小板減少症が61.9%対8.5%、同好中球減少症が67.8%対3.4%と上回り、輸血しなかったせいか貧血症も19.5%対6.8%で上回った。FDAは骨髄抑制副作用を特に懸念しているように見えるが、諮問委員は、多発骨髄腫に血球減少は付き物であり対処可能であること、多くは一時的・可逆的であることから、QOL改善の便益のほうが大きいと判断した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.geron.com/investors/press-releases/press-release-details/2024/Geron-Announces-FDA-Oncologic-Drugs-Advisory-Committee-Votes-in-Favor-of-the-Clinical-BenefitRisk-Profile-of-Imetelstat-for-the-Treatment-of-Transfusion-Dependent-Anemia-in-Patients-with-Lower-Risk-MDS/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>初のNASH用薬が承認</u>
<br />
(2024年3月14日発表)
<br />
<br />
FDAはMadrigal Pharmaceuticals(Nasdaq:MDGL)のRezdiffra(resmetirom)をNASH(非アルコール性脂肪肝炎;欧米の関連学会はMASHに呼称変更している)の治療薬として承認した。NASHの病状の解消や線維症の組織学的評価に基づく加速承認で、54ヶ月の試験で臨床的便益を確認する必要がある。NASHの治療薬が承認されたのは初めて。本剤はロシュからライセンスした甲状腺ホルモン受容体ベータのアゴニストだが、類薬や様々な作用機序の新薬が第3相段階にあり、今後、ライバルが増えるだろう。
<br />
<br />
中重度の肝線維症を伴うが肝硬変には至っていない成人患者に、食事・運動療法と併用で、体重100kg以上は100mg、未満は80mgを一日一回、経口投与する。体重に関わらず80mg群と100mg群が設定された第3相試験では、52週間の治療後にNASH解消且つ線維症が悪化しなかった患者の比率が各群26~27%と24%~36%になり、偽薬群の9~13%を有意に上回った。幅があるのは二人の病理学者の評価を併記しているため。今回初めて見たが、10%強の違いを受け入れるべきだとしたら治療効果の10~20%をどう評価したらよいのか、悩むのは私だけだろうか。
<br />
<br />
線維症が改善しNASHが悪化しなかった患者の比率も各群23%と24~28%で偽薬群の13~15%を有意に上回った。
<br />
<br />
警告・注意事項は薬物誘導性肝毒性と胆嚢関連副作用。様々な代謝酵素やトランスポーターに関わる相互作用があり、また、LDL-C低下作用があるため一部のスタチンは用量を減らす必要がある。
<br />
<br />
NASH/MASHの診断でネックとなるのが生検だが、FDAは生検による診断を要求しておらず、非侵襲的な検査で足りそうだ。
<br />
<br />
同社は年47400ドルで発売する考え。米国の潜在患者数は600~800万人とも言われるが、同社は現在治療を受けている31万人を当初のターゲットとする考え。全員に普及すれば年商150億ドルの巨大市場になる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-treatment-patients-liver-scarring-due-fatty-liver-disease" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ブレヤンジがCLLに適応拡大</u>
<br />
(2024年3月14日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはFDAがBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)を慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性白血病(SLL)の治療に用いることを加速承認したと発表した。BTK阻害剤とBCL-2阻害剤を含む2次以上の治療歴を持つ成人の難治/再発CLL/SLLが適応になる。第2相試験で完全反応率が20%、反応持続期間はメジアン値未達(95%下限15ヶ月)だった。CAR-Tに付き物のG3サイトカイン放出症候群の発生率は9%でG4以上はなく、G3神経学的イベントは20%、G4は一人(1%未満)だった。
<br />
<br />
BreyanziはCD19標的型のCAR-T。米欧日で難治/再発大細胞型B細胞リンパ腫に承認されており、米国で難治/再発性の濾胞性リンパ腫やマントル細胞腫に効能追加申請中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2024/U.S.-FDA-Approves-Bristol-Myers-Squibbs-Breyanzi--as-the-First-and-Only-CAR-T-Cell-Therapy-for-Adults-with-Relapsed-or-Refractory-Chronic-Lymphocytic-Leukemia-CLL-or-Small-Lymphocytic-Lymphoma-SLL/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>中華抗PD-1抗体が遂に米国で承認</u>
<br />
(2024年3月14日発表)
<br />
<br />
BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE)はFDAがTevimbra(tislelizumab-jsgr)を成人のPD-(L)1阻害剤以外の全身性化学療法歴のある局所進行切除不能/転移食道扁平上皮腫用薬として承認したと発表した。米国のPD-(L)1阻害剤としては10番目。
<br />
<br />
エビデンスは中国、米国、日本、欧州など11ヶ国で実施した第3相RATIONAL 302試験。200mgを3週毎点滴静注した群のメジアン生存期間が8.6ヶ月と、paclitaxelまたはdocetaxelなどを用いた対照群の6.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.70だった。中国では22年に、EUでも23年に承認されたが、米国はCOVID-19関連の渡航制限により現地査察ができなかったため遅れていた。
<br />
<br />
FDAは中国だけで実施される臨床試験に疑義を抱いており、EUのCHMPが2月に肯定的意見をまとめた非小細胞性肺癌用途は米国では申請断念となった。一方、食道扁平上皮腫一次治療と胃・胃食道接合部腺腫一次治療化学療法併用はグローバル試験に基づき米国で申請中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.beigene.com/news/beigene-receives-fda-approval-for-tevimbra-for-the-treatment-of-advanced-or-metastatic-esophageal-squamous/20eb032c-15ce-456a-a852-39c88a28d811/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>IBAT阻害剤が肝内胆汁鬱滞症に適応拡大</u>
<br />
(2024年3月13日発表)
<br />
<br />
Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)はFDAがLivmarli(maralixibat)を5歳以上のPFIC(進行性家族性肝内胆汁鬱滞症)における胆汁鬱滞性掻痒の治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。9.5mg/mLの経口液で、285mcg/kg一日一回で開始し、570mcg/kg一日二回を目標に漸増する(上限は一日38mg)。第3相MARCH試験でPFIC2型の31人における重度掻痒が偽薬比有意に改善、他の型も含む全64人の解析も成功した。深刻な治療時発現有害事象が10.6%の患者で発生した(偽薬群は6.5%)。
<br />
<br />
同社は2ヶ月児以上を対象に申請したが5歳以上に限定された。高濃度製剤を追加申請し年内の承認取得を目指す。
<br />
<br />
Livmarliは頂端側ナトリウム依存性回腸胆汁酸トランスポータ阻害剤。胆汁の排泄を促し、この薬自体も殆ど吸収されず排泄される。18年にシャイアからライセンス、21年に米国で1歳以上のアラジール症候群における胆汁鬱滞性掻痒の治療薬として承認され、22年にはEUでも承認された。日本はシャイアの親会社である武田薬品が21年にライセンスした。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.mirumpharma.com/news-events/News/news-details/2024/Mirum-Pharmaceuticals-LIVMARLI-Receives-FDA-Approval-for-Treatment-of-Cholestatic-Pruritus-in-Patients-with-Progressive-Familial-Intrahepatic-Cholestasis/default.aspx" target="blank">
Mirum社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年3-4月</td><td align="left">ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)</td></tr>
<tr><td>24/3/18 </td><td align="left">Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)</td></tr>
<tr><td>24/3/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>24/3/26</td><td align="left">MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)</td></tr>
<tr><td>24/3/27 </td><td align="left">AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)</td></tr>
<tr><td>24年4月</td><td align="left"> Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole(細菌感染症)</td></tr>
<tr><td>24年4-6月</td><td align="left">ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)</td></tr>
<tr><td>24年4月推</td><td align="left">JNJのBSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)</td></tr>
<tr><td>24年4月推</td><td align="left">JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)</td></tr>
<tr><td>24/4/3</td><td align="left">Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)</td></tr>
<tr><td>24/4/5 </td><td align="left">JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療) </td></tr>
<tr><td>24/4/5 </td><td align="left">Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)</td></tr>
<tr><td>24/4/23</td><td align="left">ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)</td></tr>
<tr><td>24/4/30</td><td align="left">X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)</td></tr>
<tr><td>24/4/30</td><td align="left">Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-74684855825039568682024-03-09T14:55:00.000+09:002024-03-09T14:55:00.331+09:00第1145回<h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
</ul>
<br />
<li>ALS治療薬の薬効確認試験がフェール </li>
<li>リリーの抗Abeta抗体は、急遽、諮問委員会上程へ </li>
<li>GSKのADC、復活に向けて二の矢も構え </li>
<li>テトラサイクリン系抗菌剤を肺炭疽に適応拡大申請へ </li>
<li>セマグルチド、糖尿病性腎症の悪化を24%抑制 </li>
<li>ウコービの心血管リスク抑制作用が承認 </li>
<li>オプジーボが膀胱癌一次治療に適応拡大 </li>
<li>BTK阻害剤が適応拡大 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>ALS治療薬の薬効確認試験がフェール</u>
<br />
(2024年3月8日発表)
<br />
<br />
Amylyx(Nasdaq:AMLX)は22年に米国とカナダで筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬として承認されたRelyvrio(sodium phenylbutyrateとtaurursodiolの合剤、カナダでの製品名Albrioza)の第3相試験がフェールしたと発表した。発症24ヶ月以内のALS患者664人を組入れて48週間投与し、ALSFRS-R(機能評価尺度)の悪化を偽薬群と比較したが、p=0.667と酷い結果になった。副次的評価項目も全て有意な差がなかった。同社は承認審査機関や患者コミュニティに対して治験結果や今後の方針(販売中止を含む)を説明する考え。
<br />
<br />
配合成分のうちフェニル酪酸ナトリウムは尿素サイクル異常症の治療に、タウロウルソデオキコール酸は原発性胆汁性肝硬変の治療に、用いられているが、ALSにおいては前者は小胞体、後者はミトコンドリアから始まる神経変性経路を阻害し、神経細胞死を抑制すると考えられている。第2相のCENTAUR試験ではALSFRS-Rがベースラインの36から24週後に29に低下したが偽薬群の26.7低下より少なかった(治療効果2.32、p=0.03)。審査担当者はプロトコルや追跡状況、edaravoneなどの承認薬の使用状況の偏りなどに疑問を呈し、22年に召集された諮問委員会では10人の委員中6人が薬効が確立したとは言えないと判定した。<div><br /></div><div>しかし、当時の神経科学部門のヘッドだったBilly Dunn氏が難病用薬の承認審査にはフレキシビリティが重要と主張、半年後に再び諮問委員会を招集する異例の事態になり、AmylyxのCEOが第3相フェールなら承認返上も含めて患者にとって最善な対応を行うと明言したことや患者支援団体等の後押しもあり、9人中7人が承認に賛成という「十二人の怒れる男」並みの逆転劇が具現、承認に至った。カナダでは第3相試験の成功を条件とする条件付き承認だったが、FDAは本承認という大盤振る舞いだった。
<br />
<br />
Billy Dunn氏が去った後のFDAが変わるか、変わらないか、注目されるところだが、FDAがどう判断したとしても、効果のない薬に年17万ドルも払う患者はいないだろう。
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<br />
リンク:
<a href="https://www.amylyx.com/news/amylyx-pharmaceuticals-announces-topline-results-from-global-phase-3-phoenix-trial-of-amx0035-in-als" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
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<br />
<br />
<u>リリーの抗Abeta抗体は、急遽、諮問委員会上程へ</u>
<br />
(2024年3月8日発表)
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<br />
イーライリリーはアミロイド・ベータ(3-42)を標的とするIgG1型抗体医薬LY3002813(donanemab)を早期アルツハイマー病の治療薬として米国や日本で承認申請している。米国は今四半期中に審査結果が出るはずだったが、今になってFDAから諮問委員会召集を計画している旨の連絡を受けた。日程調整に1ヶ月以上、諮問委員会後の手続きに1ヶ月以上かかるだろうから、承認されるとしても5月以降に遅れるのではないか。
<br />
<br />
同社は21年10月にローリング承認申請を開始、完了は22年第1四半期の予定だったが、一旦、年末に予定変更された後、同年8月に承認申請が受理された。優先審査指定されたが、12ヶ月曝露症例数の不足などから23年1月に審査完了通知を受領したため、同年第2四半期に第3相TRAILBLAZETR-ALZ2試験の継続追跡データを提出した。このような場合の審査期間は提出から半年だが3ヶ月延長され、今回、更に遅れることになった。
<br />
<br />
イーライリリーのプレスリリースによると、FDAは、安全性や、上記試験のユニークなプロトコルと薬効の関係に関して理解を高めることを目的としている。前者は先に承認されたエーザイ/バイオジェンのLeqembi(lecanemab-irmb)と比べてARIA(アミロイド関連造影異常)という抗アミロイド・ベータ抗体に特徴的な副作用の発現率が高いことに配慮しているのではないかと思われるが、異なった試験のデータを比較する時は真の差との誤差範囲を大きめに考える必要があり、承認を拒否するほど明確な差とは言えないように思われる。便益が不確かでも安全性が高ければ承認する余地があるので、リスクが偽薬並みではないことを併記しておく必要があっただけのことではないだろうか。
<br />
<br />
上記試験のユニークな試みは、第一に、アミロイド・プラクが消失したら投与を中止すること。アミロイド・プラクを除去する薬なのだからリーズナブルな治療方針であり、これまでアルツハイマー病薬製薬会社が目を瞑っていた、いつ止めたらいいのかというunmet medical needに応え得る。一方で、何年かしたらまたプラクが蓄積するだろうから、離脱試験(プラクが消失した患者を継続投与群と偽薬スイッチ群に無作為化割付けして転帰を比較する)を行って止めても大丈夫であることを確認すべきではないか、とも思われる。
<br />
<br />
第二は、タウの凝集体蓄積量と薬効の関連性を意識していること。今回初めて気づいたが、治験論文の付表によると、スクリーニング対象8240人のうち1631人が基準より少ないという理由で除外されている。これは、アミロイド・プラクが基準以下で除外された患者数と大差ない。主評価項目は蓄積が軽中度である約1100人における症状評価尺度と、高度の患者も含む約1600人の同尺度。どちらも偽薬比有意な差があったが高度の患者だけ見ると大差なかったようだ。となると、医療現場でも、アミロイド・プラクだけでなくタウも事前に検査して軽中度の患者だけに使うほうが良いのかもしれない。一方で、もしそうなら、他の抗アミロイド・ベータ抗体は微小/高度タウ患者にも効くのか、という疑問がわく。
<br />
<br />
FDAの側に注目すると、LeqembiやAduhelm(aducanumab-avwa)、そして上記Relyvrioの承認/加速承認を強力に後押ししたBilly Dunn氏がFDAを去ったのはネガティブな材料だ。
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<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/us-food-and-drug-administration-convene-advisory-committee" target="blank">
イーライリリーのプレスリリース</a>
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<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>GSKのADC、復活に向けて二の矢も構え</u>
<br />
(2024年3月7日発表)
<br />
<br />
GSKはBlenrep(belantamab mafodotin-blmf)の多発骨髄腫二次治療試験、DREAMM-8が中間解析で主目的のPFS(無進行生存期間)を達成し、独立データ監視委員会の勧告に即して盲検解除したと発表した。データは未公表。再発売に向けて二つ目の良いニュースだ。
<br />
<br />
多発骨髄腫の表面分子BCMAを標的とする抗体と細胞毒をリンカーで結合した抗体薬物複合体(ADC)。20年に米欧で主要4剤による治療歴を持つ再発/難治多発骨髄腫用薬として加速承認/条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験として位置付けられていたDREAMM-3試験がフェールしPFSがPdレジメン(pomalidomideと低量dexamethasoneの併用)に勝てなかったため、米国では23年2月に承認取消、EUでも承認が更新されない見込みだ。
<br />
<br />
意外なことに、その後は朗報が続いた。昨年11月、二次治療のDREAMM-7試験が成功、Vdレジメン(bortezomibと低量dexamethasoneの併用)に追加する効果をdaratumumab追加と比較したところ、メジアンPFSが36.6ヶ月と対照群の13.4ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.41。全生存の中間解析はハザードレシオ0.57、p=0.00049と数値上は大変良い成績が出ているが、割り当てられたアルファが小さいため有意ではなく、継続追跡する。
<br />
<br />
今回の試験も二次治療試験で、Pdレジメン(pomalidomideと低量dexamethasone)に追加する効果をbortezomibと比較した。比較するならBlenrep・bortezomib・低量dexamethasone vs. pomalidomide・bortezomib・低量dexamethasoneのほうが関心を呼ぶのではないかとも感じられるが、いずれにせよ、エビデンスは一本より二本のほうが良い。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.gsk.com/media/11025/s-ea-blenrep-dreamm-8_final-1.pdf" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>テトラサイクリン系抗菌剤を肺炭疽に適応拡大申請へ</u>
<br />
(2024年3月5日発表)
<br />
<br />
米国ボストンのParatek PharmaceuticalsはNuzyra(omadacycline)の炭疽試験が良好な結果になり適応拡大申請に向けてFDAと相談する考えであることを発表した。肺炭疽は極めて稀だが致死性が高いためテロに用いられるリスクがある。治療はキノロン系抗菌剤のciprofloxacinや抗体医薬などが米国で承認されているが、バイオテロリストがこれらの薬に耐性を持つ細菌を開発するかもしれないので、複数の選択肢が必要だ。
<br />
<br />
Nuzyraはテトラサイクリン系のaminomethylcyclineという新しいクラスに属し、テトラサイクリン抵抗菌にも活性を維持、グラム陽性、陰性、嫌気性菌など広いスペクトラムを持ち、経口剤と静注用がある。2018年に米国で本剤に感受する成人の地域感染細菌性肺炎と急性細菌性皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認された。
<br />
<br />
今回の試験は炭疽菌に曝露させた非ヒト霊長類に投与する、曝露後予防試験。偽薬群は全頭が10時間以内に死亡したが、試験薬群は全頭が30日以上生存し、60日生存率も90%超だった。
<br />
<br />
肺炭疽は十分な症例数の臨床試験を行うのが困難で、且つ、偽薬対照試験は非倫理的であるため、動物試験に基づく承認申請が認められている(『アニマル・ルール』)。欧州のように動物愛護の観点から非ヒト霊長類の試験を禁じている地域もあり、実薬が存在するのだから、今後は実薬対照試験にシフトして犠牲を減らすことを検討しても良いのではないか。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.paratekpharma.com/investor-relations/press-release?i=131794" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>セマグルチド、糖尿病性腎症の悪化を24%抑制</u>
<br />
(2024年3月5日発表)
<br />
<br />
ノボ ノルディスクは、昨年10月、GLP-1作用剤semaglutideの後期第3相FLOW試験の独立データ監視委員会が目標達成を認定し繰上げ完了を推奨したことを公表したが、半年経って、ヘッドラインが判明した。
<br />
<br />
この試験は慢性腎疾患を合併する二型糖尿病患者3533人を組入れて、標準療法にsemaglutide(1mgを週一回皮下注)を追加する便益を偽薬追加群と比較した。主評価項目は腎不全、eGFR半減、透析または腎移植、腎疾患死、心血管死の5項目の何れかが発生するリスク。同社のプレスリリースによると、リスクが24%小さかった。腎疾患関連の評価項目も心血管疾患関連もリスク抑制に貢献した。詳細は学会で発表する予定。
<br />
<br />
報道によると、透析サービス大手のDaVitaは、昨年10月時点では、本試験の組み入れ条件に該当する患者は糖尿病性慢性腎疾患の1割足らずに過ぎず、上記5項目のうち一つだけでも事前に設定された条件を満たせば繰上げ中止するプロトコルであるため、詳細が判明するまで過大評価すべきではないとコメントしていた模様だ。他の糖尿病薬と同様にeGFRの悪化を抑制する効果が中心ならSGLT2阻害剤との比較も必要とのことだった。
<br />
<br />
そこで、Farxiga(dapagliflozin)のDAPA-CKD試験のデータを見ると、主評価項目(eGFR半減、腎不全、心血管疾患死、または腎臓疾患死)のハザードレシオは0.61、eGFRだけでなく心血管疾患死でも0.81、腎臓疾患死は数が少なく解析不可能だが実数は2人対6人で1/3だった。こちらの試験は二型糖尿病以外の慢性腎疾患も組入れており、直接比較はできないが、結果が発表された当時、こんなに効くのかと驚いた覚えがある。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novonordisk.com/content/nncorp/global/en/news-and-media/news-and-ir-materials/news-details.html?id=167028" target="blank">
ノボのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>ウコービの心血管リスク抑制作用が承認</u>
<br />
(2024年3月8日発表)
<br />
<br />
FDAはノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide)の適応拡大を承認した。心血管疾患で肥満またはオーバーウェイトの成人の心血管死や心筋梗塞、脳卒中を抑制する。心血管アウトカム試験SELECTでは、2.4mgを週一回、皮下注した群が心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の何れかを罹患する偽薬比ハザードレシオは0.80だった。平均40ヶ月の追跡期間中における発生率は6.5%、偽薬群は8.0%なので、1000人に3年超投与すると15人程度を救う計算になる。標準的な治療を受けている患者が対象であるためか、偽薬群の発生率も治療効果もそんなに高くない印象だ。
<br />
<br />
ノボ ノルディスクのプレスリリースには心血管死のハザードレシオは0.85、全死亡のハザードレシオは0.81だったと記されているが、その後の長い記述をスクロールして末尾の脚注を見ると、前者の信頼区間は0.71-1.01で優越性は確認されていないこと、全死亡は0.71-0.93だが事前に設定された先行解析である心血管死が有意でなかったのでこちらも有意とは言えないことが明らかにされている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-treatment-reduce-risk-serious-heart-problems-specifically-adults-obesity-or" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.novonordisk.com/content/nncorp/global/en/news-and-media/news-and-ir-materials/news-details.html?id=167030" target="blank">
ノボのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>オプジーボが膀胱癌一次治療に適応拡大</u>
<br />
(2024年3月7日発表)
<br />
<br />
FDAはブリストル マイヤーズ スクイブのOpdivo(nivolumab)を切除不能/転移尿路上皮腫の一次治療に用いることを承認した。cisplatin及びgemcitabineと併用で、60mgを3週毎に最大6サイクル投与し、その後はOpdivoだけを240mg隔週または480mg4週毎のスケジュールで投与する。エビデンスとなるCheckMate-901試験のサブスタディでメジアン生存期間が21.7ヶ月とOpdivoを併用しなかった群の18.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.78だった。共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)も各7.9ヶ月、7.6ヶ月、0.72と有意に改善した。
<br />
<br />
ライバルのKeytruda(pembrolizumab)は化学療法併用では承認されていないが、ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv)との併用が23年12月に米国で承認、日欧で申請中。メジアン生存期間は31.5ヶ月とcisplatinまたはcarboplatinをgemcitabineと併用した群の16.1ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.47、PFSのハザードレシオも0.45で、こちらのレジメンのほうが目を惹く。但し、深刻有害反応の発生率が50%、致死的有害反応は4%となっている。テレビドラマとは異なり、治験薬で3人が死亡したとしても30人が延命するなら許容される。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-nivolumab-combination-cisplatin-and-gemcitabine-unresectable-or-metastatic-urothelial" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BTK阻害剤が適応拡大</u>
<br />
(2024年3月7日発表)
<br />
<br />
FDAはBeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE、HKEX:6160)のBrukinsa(zanubrutinib)を成人の二次以上の治療歴を持つ難治/再発濾胞性リンパ腫にobinutuzumabと併用することを加速承認した。ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、マントル細胞腫、辺縁帯リンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫に次ぐ五つ目の適応になる。第2相ROSEWOOD試験でORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が69%、18ヶ月反応持続率は69%だった。obinutuzumabだけを投与した群のORRは45.8%だった。深刻有害事象発生率は35%。欧州でも1月に適応拡大が認められている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-accelerated-approval-zanubrutinib-relapsed-or-refractory-follicular-lymphoma" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://ir.beigene.com/news/beigene-announces-fda-accelerated-approval-of-brukinsa-for-the-treatment-of-relapsed-or-refractory-follicular/0ae1ffae-3b3c-4df4-99f8-3507c95a352f/" target="blank">
BeiGeneのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<table border="1" cellpadding="4" cellspacing="1" frame="box">
<caption><b></b></caption>
<tbody><tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)</td></tr>
<tr><td>24年3-4月</td><td align="left">ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)</td></tr>
<tr><td>24/3/4</td><td align="left">Vanda PharmaceuticalsのHetlioz(tasimelteon、入眠障害追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/13</td><td align="left">Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/18 </td><td align="left">Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)</td></tr>
<tr><td>24/3/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>24/3/26</td><td align="left">MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)</td></tr>
<tr><td>24/3/27 </td><td align="left">AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)</td></tr>
<tr><td>24年4月</td><td align="left"> Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole(細菌感染症)</td></tr>
<tr><td>24年4-6月</td><td align="left">ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)</td></tr>
<tr><td>24年4月推</td><td align="left">JNJのBSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)</td></tr>
<tr><td>24年4月推</td><td align="left">JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)</td></tr>
<tr><td>24/4/3</td><td align="left">Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)</td></tr>
<tr><td>24/4/5 </td><td align="left">JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療) </td></tr>
<tr><td>24/4/5 </td><td align="left">Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)</td></tr>
<tr><td>24/4/23</td><td align="left">ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)</td></tr>
<tr><td>24/4/30</td><td align="left">X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)</td></tr>
<tr><td>24/4/30</td><td align="left">Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>24/3/5</td><td align="left">MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)</td></tr>
<tr><td>24/3/14</td><td align="left">ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)</td></tr>
<tr><td>24/3/15</td><td align="left">ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)</td></tr>
</tbody></table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
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</div>ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-80045579959983388132024-03-02T13:39:00.005+09:002024-03-03T10:02:53.595+09:00第1144回<h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>ACIP、RSVワクチンの有害事象報告を検討 </li>
<li>エボラ・ワクチンで濃厚接触者の死亡が半減 </li>
<li>Ironwood社、週一回投与型短腸症候群用薬の第3相が成功 </li>
<li>GSK、ナイセリア淋病治療試験が成功 </li>
<li>Palatinのドライアイ試験、今回も部分的には良績 </li>
<li>UCB、米国でもビンゼレックスを乾癬性関節炎などに適応拡大申請 </li>
<li>Minerva社のroluperidoneは案の定、承認されず </li>
<li>抗EGFRxMET抗体を一次治療に承認 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>ACIP、RSVワクチンの有害事象報告を検討</u>
<br />
(2024年月日発表)
<br />
<br />
CDC(米国疾病管理予防センター)のACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)で、23年に初承認されたRSVワクチン2製品の有害事象に関する市販後アップデートがあった。承認時の懸案事項であったギランバレー症候群(GBS)などの深刻有害事象が報告されているものの、RSV感染による入院や死亡を抑制する便益のほうが大きいと結論された。
<br />
<br />
VAERS(ワクチン有害事象報告システム)に届出された60歳以上における深刻有害事象はGSKのArexvyが169件(100万回接種当り25.6)、ファイザーのAbrysvoは91件(同29.7)だった。内容は呼吸困難、無力症、疲労、歩行障害など。GBSは30件あり、このうちCDCが確認した症例の100万回当り発生率は各製品1.2と4.6だった。バックグラウンド発生率は文献によると5.2で、ワクチン接種により大きく増加するようには見えなかった(何れも42日間の発生率)。
<br />
<br />
一方、メディケアのデータを用いた65歳以上の分析ではArexvyが10、Abrysvoが25で、95%信頼区間はバックグラウンド・データとオーバーラップしているものの、数値上はワクチン接種後が上回った。
<br />
<br />
便益は、RSV感染による入院が2年間にArexvyで2400件、Abrysvoも2700件減少すると推定された。入院後の死亡も各120人と140人、減少する見込み。感染後のリスクは年齢と共に上昇するので、便益もArexyの場合で60~64歳はRSV入院の減少が100万回当り1100件だが、65~69歳は1500件、70~74歳は1900人、75~79歳は3200人、80歳以上は6000人と増加していく。年齢以外にも慢性肺疾患や心不全、免疫低下、長期療養施設入居などに該当する人は便益が大きいと予想される。
<br />
<br />
60歳以上におけるRSVワクチンの接種率は22%に留まっている。ACIPは接種勧奨を合併症リスクの高い人に限定しているが、懸案であった炎症性神経学的事象に関する市販後監視データが集積され大きな問題が浮上しなければ、限定を緩和するかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.cdc.gov/vaccines/acip/meetings/slides-2024-02-28-29.html" target="blank">
ACIP2月28-29日会議のプレゼン・スライドのリンク頁</a>
<br />
<br />
<br />
<u>エボラ・ワクチンで濃厚接触者の死亡が半減</u>
<br />
(2024年2月7日発表)
<br />
<br />
MSDが開発した弱毒化ザイール種エボラ・ウイルス・ワクチン、Ervebo(rVSV∆G-ZEBOV-GP)の後顧的疫学研究論文がLancet Infectious Diseases誌に刊行された。コンゴ民主共和国(旧ザイール)で流行した18年7月から20年4月に治療を受けた2279人の転帰を調べたところ、未接種者は1015人中570人、56%が死亡したのに対して、接種者は423人中106人、25%に留まった。接種から発症までの期間が長いほどハザードレシオが低かったが、2日以内のケースでも0.56と良好な成績が出た。年齢や性別による偏りは見られなかった。
<br />
<br />
コンゴ民主共和国では、18年の再流行時にMSF(国境なき医師団)が上記ワクチンの接種を提案し、政府も反対しなかったことから、MSDが30万回分を備蓄する計画を立てた。しかし、その時点では未承認であったことから東部地域などで反対意見が広がり、政府が接種を終了した。これほど効果が高いのに上記のワクチン接種者数が驚くほど少ないのは、偏見や無理解だけが原因ではないにしても、残念なことだ。エボラの致死率の高さは周知であったのだから、そして、全国民ではなくリスクが特に高い、感染者の濃厚接触者に限定して接種する計画だったのだから、もう少し何とかならなかったのだろうか。
<br />
<br />
今回の研究により、発症予防効果だけでなく大きな救命効果もあることが明らかになったので、次回の流行時には広く普及することが期待される。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.thelancet.com/journals/lanxxx/article/PIIS1473-3099(23)00819-8/abstract" target="blank">
Luqueroらの疫学論文抄録(Lancet Infectious Diseases)</a>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>Ironwood社、週一回投与型短腸症候群用薬の第3相が成功</u>
<br />
(2024年2月29日発表)
<br />
<br />
Ironwood Pharmaceuticals(Nasdaq:IRWD)はapraglutideの第3相短腸症候群試験で主目的を達成したと発表した。しかし、結腸の機能が比較的悪化していないサブグループにおける便益が明確でなかったため、株価は下落した。
<br />
<br />
武田薬品のGattex(和名レベスティブ、teduglutide)と類似した皮下注用GLP-2類縁体。Gattexは投与頻度が一日一回、Zealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)が昨年12月に米国で承認申請したZP 1848(glepaglutide)は週二回であるのに対して週一回で足りる点が長所。
<br />
<br />
第3相のSTARS試験は腸管不全を伴う短腸症候群の成人164人を組入れて経静脈栄養依存の改善を図った。週間経静脈栄養量が24週間で25.5%減少、偽薬群の12.5%減比で有意な差があった。主要な副次的評価項目のうち、経静脈栄養サポートが必要な日数が1日以上減少した患者の比率は43.0%対27.5%、ストーマを有するサブグループにおける経静脈栄養量の減少率は25.6%対7.8%で有意差があったが、colon-in-continuityサブグループにおいて経静脈栄養サポートが必要な日数が1日以上減少した患者の比率は51.8%対44.4%、48週時点で腸自立を達成した患者の比率は12.5%(56人中7人)対7.4%(27人中2人)でどちらもトレンドに留まった。
<br />
<br />
評価項目が若干異なるので他の薬の成績と比較するのは難しいが、特に優れているようには見えない。
<br />
<br />
23年に買収したスイスのVectivBioの開発品で、元々は実質的な前身企業であるTherachonが18年にカナダのGLyPharma Therapeuticsを買収して入手したもの。日本は旭化成ファーマが開発販売権を取得した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.ironwoodpharma.com/press-releases/press-release-details/2024/Ironwood-Pharmaceuticals-Announces-Positive-Topline-Results-from-Global-Phase-III-Trial-of-Once-Weekly-Apraglutide-in-Adults-with-Short-Bowel-Syndrome-with-Intestinal-Failure-SBS-IF/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>GSK、ナイセリア淋病治療試験が成功</u>
<br />
(2024年2月26日発表)
<br />
<br />
GSKは新規作用機序の抗菌剤、GSK2140944(gepotidacin)の第3相非複雑性泌尿生殖器ナイセリア淋病試験で目的を達成した。600人の男女を組入れたEAGLE-1試験で750mg錠4錠を医療施設で一回、10~12時間後に自宅で一回、服用した群の微生物学的奏効率が標準療法群(ceftriaxone筋注とazithromycin経口投与)比で非劣性だった。
<br />
<br />
nitrofurantoinに感受しそうな単純性尿路感染症の女性を組入れた第3相二本も750mg錠2錠を一日二回、5日間投与した群の臨床的・微生物学的奏効率がnitrofurantoin群(一日二回、5日コース)と非劣性で、一本では優越性解析も成功したことが昨年、学会発表されている。同社は今年下期に米国で承認申請する考え。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/gsk-announces-positive-headline-results-from-eagle-1-phase-iii-trial-for-gepotidacin-in-uncomplicated-urogenital-gonorrhoea-gc/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Palatinのドライアイ試験、今回も部分的には良績</u>
<br />
(2024年2月28日発表)
<br />
<br />
Palatin Technologies(NYSE American:PTN)は、メラノコルチン受容体汎アゴニストPL9643の第3相MELODY-1試験のトップラインを発表した。第2相試験の時と同様に好成績であったかのような書きぶりだが、第2相試験の時と同様に共同主評価項目はどちらもフェールした。何れにせよ承認申請前にもう一本実施するだろうから、有効なのか一歩届かないのか、結論は持ち越しだ。
<br />
<br />
この試験は米国の施設でドライアイの患者575人を組入れて、一日3回点眼する効果を偽薬と比較した。主評価項目は12週間治療後の疼痛とリサミングリーン結膜染色。疼痛はp=0.03となったが閾値はクリアできなかった。年齢と性別の調整後では0.025を下回ったと記されているので、おそらく各主評価項目にアルファを0.025ずつ配分したのだろう。目の治療関連有害事象発生率は5.6%(偽薬群は6.3%)、治験中止率は7.0%(同11.1%)だった。
<br />
<br />
データを精査してFDAと次の第3相試験について相談する考え。パートナー探しも続ける予定。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.prnewswire.com/news-releases/palatin-announces-results-of-pl9643-melody-1-pivotal-phase-3-clinical-trial-in-patients-with-dry-eye-disease-ded-302073599.html" target="blank">
同社のプレスリリース(PR Newswire)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>UCB、米国でもビンゼレックスを乾癬性関節炎などに適応拡大申請</u>
<br />
(2024年2月28日発表)
<br />
<br />
UCBはBimzelx(bimekizumab-bkzx)を以下の4疾患に用いる適応拡大をFDAに申請した。この抗IL-17A・抗IL-17-F二重特異性抗体はEUでは21年に、日本でも22年にプラク乾癬など治療薬として承認されたが、米国はCOVID-19流行に伴う連邦政府の渡航制限の影響で工場査察などができなかったことなどから、23年10月に遅れた。そのせいか、適応拡大申請もEUと比べて遅れ気味だ。
<br />
<br />
・乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎・・・EUでは23年6月、日本でも同年12月に承認
<br />
・化膿性汗腺炎・・・EUでは23年7月に、日本でも同年11月に適応追加申請受理
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ucb.com/stories-media/Press-Releases/article/UCB-on-Growth-Path-for-a-Decade-Plus" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>Minerva社のroluperidoneは案の定、承認されず</u>
<br />
(2024年2月27日発表)
<br />
<br />
Minerva Neurosciences(Nasdaq:NERV)はroluperidoneを統合失調症の陰性症状治療薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。承認申請前のタイプCミーティングでエビデンス不足を指摘され、承認申請を強行したが受理されず、タイプAミーティングで説得したが受け入れられず、不服申立てしたところ、審査担当者の疑義は承認審査で検討すべきもので受理を拒否する理由にはならないと認められ、やっと受理された。このような経緯なので、門前払いは避けられたが玄関で追い返される結末になった。もしこの薬が本当に価値があるなら、再試験を実施せず3年間を徒に費やした罪は重い。
<br />
<br />
roluperidoneは田辺三菱製薬からライセンスしたアルファ-1a、5-HT2A、そしてシグマ-2のアンタゴニスト。米国外で実施された後期第2相試験でPositive and Negative Syndrome Scaleの陰性症状に関わる二つのドメインが偽薬比有意に改善したが、米国の第3相はフェールした。専ら前者の試験に基づき申請したが、FDAはこの薬の治療効果の臨床的な重要性に疑問を呈し、また、モノセラピーとしての申請だがオフレーベルで使用される可能性があるため併用試験で安全性等を確認するよう求めた。更に、申請用量である64mgを12ヶ月以上投与した安全性症例数の不足も指摘した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.minervaneurosciences.com/news-releases/news-release-details/minerva-neurosciences-receives-complete-response-letter-fda-new" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>抗EGFRxMET抗体を一次治療に承認</u>
<br />
(2024年3月1日発表)
<br />
<br />
FDAはJNJグループのJanssen BiotechのEGFRとMETを標的とする二重特異性抗体、Rybrevant(amivantamab-vmjw)の適応拡大を承認した。EGFR遺伝子にエクソン20欠損変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌の一次治療にcarboplatinおよびpemetrexedと併用するもの。第3相PAPILLON試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン11.4ヶ月とcarboplatin・pemetrexed群の6.7ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.395だった。全生存期間の解析は未成熟だがESMO(欧州臨床腫瘍学会)での発表によるとハザードレシオ0.67、p=0.106と、好ましい方向を指している。
<br />
<br />
21年にEGFR遺伝子にエクソン20欠損変異を持ち白金薬レジメンによる治療歴を持つ転移非小細胞性肺癌に単剤投与する薬として加速承認されたが、市販後薬効確認試験を兼ねるPAPILLON試験が成功したため、本承認に切替えられた。
<br />
<br />
ところで、carboplatinとpemetrexedの併用法は扁平上皮以外の非小細胞性肺癌に限定されているが、上記試験もRybrevantの適応も限定されていない。上記試験のデータは把握していないが、再発治療試験の患者背景を見ると95%が腺腫とのことなので、扁平上皮腫にはエクソン20欠損がほとんどなく改めて除外する必要がないのだろう。
<br />
<br />
エクソン20欠損は非小細胞性肺癌の2~3%を占める希少変異で、初期のEGFR阻害剤に抵抗性を持つ。PAPILLON試験の被験者の約半分は喫煙歴がなく、また、約半分はアジア人種と、かなり偏りがある。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-amivantamab-vmjw-egfr-exon-20-insertion-mutated-non-small-cell-lung-cancer-indications" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">アストラゼネカのFluMist(インフルエンザワクチン、自己噴霧解禁)</td></tr>
<tr><td>24年3-4月</td><td align="left">ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)</td></tr>
<tr><td>24/3/4</td><td align="left">Vanda PharmaceuticalsのHetlioz(tasimelteon、入眠障害追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/13</td><td align="left">Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/18 </td><td align="left">Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)</td></tr>
<tr><td>24/3/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>24/3/26</td><td align="left">MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)</td></tr>
<tr><td>24/3/27 </td><td align="left">AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)</td></tr>
<tr><td>24年4月</td><td align="left"> Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole(細菌感染症)</td></tr>
<tr><td>24年4-6月</td><td align="left">ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)</td></tr>
<tr><td>24年4月推</td><td align="left">JNJのBSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)</td></tr>
<tr><td>24年4月推</td><td align="left">JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)</td></tr>
<tr><td>24/4/3</td><td align="left">Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)</td></tr>
<tr><td>24/4/5 </td><td align="left">JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療) </td></tr>
<tr><td>24/4/5 </td><td align="left">Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)</td></tr>
<tr><td>24/4/5</td><td align="left">BMSのOpdivo(nivolumab、尿路上皮腫化学療法併用一次治療)</td></tr>
<tr><td>24/4/23</td><td align="left">ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)</td></tr>
<tr><td>24/4/30</td><td align="left">X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)</td></tr>
<tr><td>24/4/30</td><td align="left">Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>24/3/5</td><td align="left">MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)</td></tr>
<tr><td>24/3/14</td><td align="left">ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)</td></tr>
<tr><td>24/3/15</td><td align="left">ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-12386076728228722862024-02-25T10:50:00.002+09:002024-02-26T07:47:25.776+09:00第1143回<h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>HIV治療薬を飲みたがらない患者には持効性注射薬 </li>
<li>タグリッソ、肺癌CRT後維持療法試験が成功 </li>
<li>デュピクセントを好酸球性COPDにも申請 </li>
<li>セルヴィエ、IDH阻害剤を欧米申請 </li>
<li>BMS、KRAS阻害剤を大腸癌に適応拡大申請 </li>
<li>第一三共、第3の抗体医薬を承認申請 </li>
<li>遅報:ネモリズマブが欧米でも承認申請 </li>
<li>遅報:デニロイキンを米国で再申請 </li>
<li>複雑性尿路感染症の複合セフェム、承認がお預けに </li>
<li>FDA、Pepaxtoの承認取消しを遂に決定 </li>
<li>CHMP、ALS用薬などの承認に肯定的意見 </li>
<li>ESBL産生菌にも強い複合セフェムが承認 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>HIV治療薬を飲みたがらない患者には持効性注射薬</u>
<br />
(2024年2月21日発表)
<br />
<br />
NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)は、第3相LATITUDE試験の盲検を解除し、経口標準療法群の患者にViiVヘルスケアの持効性注射用薬、Cabenuva(cabotegravir、rilpivirine)にスイッチするよう提案することを決定した。中間解析で全ての評価項目における優越性が見られたため。アドヒアランス(指示通り服薬)に難のあるHIV/AIDS患者にはCabenuvaのほうが良いことが示唆された。但し、データは未公表なので不透明な点が多々ある。
<br />
<br />
この試験は、共同治験グループのACTGが米国の施設でアドヒアランスに難のあるHIV/AIDS患者を組入れて実施した。ロンチは2019年で、Cabenuvaの承認の2年前。最初にSOC(経口剤3剤による標準療法)を24週間施行してウイルスを抑制してから、継続投与する群とCabenuvaにスイッチする群に無作為化割付けして48週間投与し、治療フェール率(HIV-1 RNAが200c/mL以上に増加、または試験薬の永続的中止)を比較した。
<br />
<br />
良く分からないのは、アドヒアランスに難がある人がなぜ当初の24週間の治療でウイルス抑制できたのか?おそらく、200c/mLまたは50c/mLの閾値を下回った患者だけを無作為化割付けしたのだろうが、何れにせよ、アドヒアランスに難のある人の中で比較的悪くない人だけをスクリーニングすることにならなかっただろうか?治験登録によると、当初治療段階では目標を達成した被験者に経済的インセンティブを与えたとのことなので、無作為化割付け期間に入った途端、アドヒアランスが本来の姿に戻って急悪化したということなのだろうか?
<br />
<br />
もう一つの疑問は、前後して実施された承認申請用第3相試験で優越性が見られなかったこととの整合性。初めて治療を受ける患者と、治療歴のある患者の二本の試験とも、48週フェール率(HIV-1 RNAが5c/mL超に増加)が2%となり、SOC継続投与群の各2%と1%と比べて劣っていなかった。
<br />
投与中止・追跡不能率はCabenuva群は4%と6%、SOC群は二本とも4%だった。おそらく、LATITUDE試験はこの指標の群間差が大きかったのだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.niaid.nih.gov/news-events/statement-long-acting-hiv-treatment-demonstrates-efficacy-people-challenges-taking" target="blank">
NIAIDのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://classic.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03635788?intr=cabotegravir&titles=LATITUDE&phase=2&fund=0&draw=2&rank=1" target="blank">
治験登録(ClinicalTrials.gov)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://viivhealthcare.com/hiv-news-and-media/news/press-releases/2024/february/latitude-phase-three-interim-trial-data/" target="blank">
ViiVのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>タグリッソ、肺癌CRT後維持療法試験が成功</u>
<br />
(2024年2月19日発表)
<br />
<br />
アストラゼネカは、EGFR阻害剤Tagrisso(osimertinib)の第3相LAURA試験で主目的を達成したと発表した。データは学会発表する考え。適応拡大申請も計画している。
<br />
<br />
切除不能なステージIII非小細胞性肺癌でEGFRに変異を持つ患者216人を組入れて、治癒的化学放射線療法後の維持療法として80mgを一日一回投与したところ、PFS(無進行生存期間)が偽薬比統計的有意な、かつ臨床的に意味のある、改善を見た。副次的評価項目の全生存期間は未成熟で今後も継続するが、改善のトレンドが示された。
<br />
<br />
Tagrissoはある種のEGFR変異を持つ成人の非小細胞性肺癌のうち、以下のセッティングで使用することが米国などで承認されている:切除可能癌では摘出術後付随療法として単剤投与、局所進行癌では化学療法併用、転移癌では化学療法併用または単剤投与、そしてEGFRチロシン・キナーゼ阻害による治療歴を持つ癌に単剤投与だ。パズルの残ったマス目がまた一つ埋まりそうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2024/tagrisso-improved-pfs-in-stage-iii-lung-cancer.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>デュピクセントを好酸球性COPDにも申請</u>
<br />
(2024年2月23日発表)
<br />
<br />
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)と開発販売パートナーのサノフィは、Dupixent(dupilumab)を成人の二型炎症を伴うCOPD(慢性閉塞性肺疾患)に用いる適応拡大を米国で承認申請し受理された。既存薬で治療しても増悪を十分に防げない、管理不良患者に追加投与する。第3相試験では中重度急性増悪頻度が偽薬群より一本では30%、もう一本では34%、少なかった。優先審査を受け、審査期限は24年6月27日。承認されたら米国で30万人程度が適応になると推定されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.regeneron.com/news-releases/news-release-details/dupixentr-dupilumab-sbla-accepted-fda-priority-review-treatment" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>セルヴィエ、IDH阻害剤を欧米申請</u>
<br />
(2024年2月20日発表)
<br />
<br />
セルヴィエは欧米でvorasidenibをIDH変異のあるびまん性グリオーマ用薬として承認申請し受理された。米国は優先審査を受け審査期限は8月20日。EUでも加速審査を受け、年後半に結果が出る見込み。
<br />
<br />
成人型びまん性グリオーマの2割、ステージ2や3では100%で見られるIDH1/2変異を標的とする経口剤。20年にAgios Pharmaceuticalsから腫瘍学事業を買収して入手した。IDH変異陽性グレード2グリオーマで切除術後に病変が残存または再発し初めて薬物治療を受ける患者を組入れた第3相試験で、PFS(無進行生存期間、盲検独立評価委員会による放射線学的評価)の偽薬比ハザードレシオが0.39、メジアン値は27.7ヶ月と11.1ヶ月だった。G3以上の有害事象発生率は22.8%(偽薬群は13.5%)、G3以上のALT上昇が9.6%(同0%)で発生した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://servier.us/blog/vorasidenib-ema-fda-release/" target="blank">
セルヴィエのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BMS、KRAS阻害剤を大腸癌に適応拡大申請</u>
<br />
(2024年2月20日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはKrazati(adagrasib)をKRASにG12C変異を持つ局所進行/転移結腸直腸癌に適応拡大申請し受理された。cetuximabと併用する。優先審査を受け、審査期限は6月21日。
<br />
<br />
エビデンスは、様々な腫瘍に様々な薬と併用または単剤投与する便益を検討しているKRYSTAL-1試験におけるORR(客観的反応率)とのこと。
<br />
<br />
1月に48億ドルで買収したMirati TherapeuticsのKRAS-G12C阻害剤で、22年に米国でKRAS-G12C変異陽性の局所進行/転移非小細胞性肺癌の2次治療薬として加速承認、先月にはEUでも条件付き承認された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2024/U.S.-Food-and-Drug-Administration-FDA-Accepts-Supplemental-New-Drug-Application-for-KRAZATI-adagrasib-in-Combination-with-Cetuximab-as-a-Targeted-Treatment-Option-for-Patients-with-Previously-Treated-KRAS-G12C-Mutated-Locally-Advanced-or/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>第一三共、第3のADCを承認申請</u>
<br />
(2024年2月19日発表)
<br />
<br />
第一三共は、アストラゼネカと共同開発している抗体薬物複合体(ADC)、DS-1062(datopotamab deruxtecan、通称Dato-DXd)を米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は12月20日。
<br />
<br />
非小細胞性肺癌などで発現するTROP2(別名EGP-1)を標的とする抗体とトポイソメラーゼ阻害剤を1対4の比率で結合したもの。非扁平上皮非小細胞性肺癌の2/3次治療に用いることを想定している。
<br />
<br />
第3相TROPION-Lung01試験で、白金薬、及び、分子標的薬が適応になる場合は当該薬、それ以外は抗PD-1/L1抗体による治療歴を持つ進行/転移非小細胞性肺癌約600人を組入れて6mgを3週毎点滴静注する効果を実薬であるdocetaxelと比較したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.75と統計的に有意な改善を見た。メジアン値は4.4ヶ月対3.7ヶ月とあまり大きな差がない一方で、12ヶ月無進行生存率は30%対18%と比較的大きな差が出ている。共同主評価項目である全生存期間は未だ成熟していないが、昨年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)での発表によると、ハザードレシオ0.90、メジアン値は12.4ヶ月対11.0ヶ月と、あまり大きな差は出ていない。有害事象面ではG3以上の間質性肺疾患(査読後)の発生率が3.4%対1.4%と上回り、過半は死亡した。その過半は病気の進行が原因と見なされているが、気になるところではある。実薬対照試験なので満足すべき、副作用で一人死んでも50人の寿命が1ヶ月延びるなら受け入れるべき、と考えることもできるが、shouldではないだろうから、難しい所だ。
<br />
<br />
会社側も悩んだのだろう、数値が良好な非扁平上皮サブグループに限定して申請した。PFSのハザードレシオは0.63、メジアン5.6ヶ月対3.7ヶ月、全生存でもハザードレシオ0.77と、臨床的に意味のある差が示唆されている。一方で、扁平上皮肺癌サブグループの全生存期間はdocetaxelより数値上短いことになり、その原因分析も並行して行う必要があるだろう。
<br />
<br />
悩ましさを一層高めるのは、ギリアド・サイエンシズの抗EGP-1抗体Trodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)の類似した内容・規模の第3相、EVOKE-01試験がフェールしたことだ。全生存期間がdocetaxelを有意に上回らず、扁平上皮腫でも、それ以外でも、数値上上回るだけだった。完全に同じ薬の完全に同じ試験ではないので比較検討できない可能性もあるし、この種の食い違いは特に珍しくもないが、検討課題にはなりうる。
<br />
<br />
非扁平上皮腫限定でも優先審査指定されなかったところを見ると、FDA側も念入りな検討が必要と考えているのではないか。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202402/20240219_J.pdf" target="blank">
同社ののプレスリリース(和文、pdfファイル)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>遅報:ネモリズマブが欧米でも承認申請</u>
<br />
(2024年2月14日発表)
<br />
<br />
スイスのガルデルマは欧米でnemolizumabを結節性掻痒と青年成人の中度アトピー性皮膚炎の治療薬として承認申請し受理されたと発表した。米国は優先審査を受ける。
<br />
<br />
中外製薬から日本と台湾以外の市場でライセンスした皮下注用抗IL-31受容体A抗体。日本はマルホが皮膚科領域における開発販売権を取得、22年にアトピー性皮膚炎用薬ミチーガとして承認取得した。
<br />
<br />
ガルデルマが実施した第3相では、奏効率(IGAが0または1に改善)が結節性掻痒試験では一本が26%(偽薬群は7%)、もう一本は36%(同11%)、アトピー試験では36%(同25%)と38%(同26%)だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.galderma.com/news/galderma-announces-regulatory-filing-acceptance-nemolizumab-prurigo-nodularis-and-atopic" target="blank">
ガルデルマのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>遅報:デニロイキンを米国で再申請</u>
<br />
(2024年2月13日発表)
<br />
<br />
米国ニュージャージー州のCitius Pharmaceuticals(Nasdaq:CTXR)は、Lymphir(denileukin diftitox)を米国で再承認申請したと発表した。全身性治療歴を持つ成人の難治/再発皮膚T細胞リンパ腫用薬として承認申請したが、23年に審査完了通知を受領したため、製造過程における検査や管理に関する指摘事項に対応・回答したもの。
<br />
<br />
99年に米国で承認されたONTAK(denileukin diftitox)の高純度新製剤。16年にエーザイから日亜以外での開発販売権を取得したDr. Reddy'sから21年に権利を取得したもの。臨床試験ではステージI~IIIサブグループにおけるORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が36.2%で、95%信頼区間の下限は成否判定閾値である25%と同じだった。メジアン反応持続期間は6.5ヶ月。
<br />
<br />
Citiusは承認取得後に事業をスピンアウトする考えである模様。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://citiuspharma.com/investors/news-media/news/release-details/2024/Citius-Pharmaceuticals-Resubmits-the-Biologics-License-Application-of-LYMPHIR-Denileukin-Diftitox-for-the-Treatment-of-Adults-with-Relapsed-or-Refractory-Cutaneous-T-Cell-Lymphoma/default.aspx" target="blank">
Citiusのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>複雑性尿路感染症の複合セフェム、承認がお預けに</u>
<br />
(2024年2月23日発表)
<br />
<br />
米国ペンシルバニア州の未上場新興製薬会社、Venatorx Pharmaceuticalsは、cefepimeと新開発のベータ・ラクタマーゼ阻害剤taniborbactamを感受する微生物による複雑性尿路感染症の治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。CMC(化学、製造、管理)に関わる指摘事項があった模様。薬効や安全性に関する問題は指摘されていない由。
<br />
<br />
第3相試験では、meropenemを投与した群と比べて奏効率の非劣性検定が成功し、シーケンシャルに実施された優越性検定も成功した。米国ニュージャージー州の未上場製薬会社、Melinta Therapeuticsが米国の開発商業化権を保有している。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://venatorx.com/press-releases/venatorx-and-melinta-provide-update-on-status-of-u-s-new-drug-application-for-cefepime-taniborbactam/" target="blank">
Venatorxのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>FDA、Pepaxtoの承認取消しを遂に決定</u>
<br />
(2024年2月23日発表)
<br />
<br />
FDAは3年前に多発骨髄腫のサルベージ療法として加速承認したOncopeptides(Nasdaq Stockholm:ONCO)のPepaxto(melphalan flufenamide)に関して、承認取消しを決定した。市販後薬効確認pomalidomide対照試験がフェールし、PFS(無進行生存期間、治験医評価)が有意に伸びなかっただけでなく、全生存期間のハザードレシオが1.10、メジアン値は19.7ヶ月対25ヶ月と、死亡リスクが高まる可能性が浮上。2023年の法改正を生かして、迅速承認取消に動いた。
<br />
<br />
欧州では昨年12月に3次治療薬として承認された。同社は承認撤回を示唆したことがあるが、決定ではないようだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/drug-safety-and-availability/fda-issues-final-decision-withdraw-approval-pepaxto-melphalan-flufenamide" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://oncopeptides.com/en/media/press-releases/oncopeptides-receives-decision-from-the-u-s-food-and-drug-administration-confirming-withdrawal-of-pepaxto-from-the-u-s-market/" target="blank">
Oncopeptidesのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>CHMP、ALS用薬などの承認に肯定的意見</u>
<br />
(2024年2月23日発表)
<br />
<br />
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-committee-medicinal-products-human-use-chmp-19-22-february-2024" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
バイオジェンのQalsody(tofersen)は成人のSOD1(スーパーオキシドディスムターゼ1) 変異型ALS(筋委縮性側索硬化症)のアンチセンス薬。ALSの2%程度、家族性ALSの10%程度が該当する。米国で昨年4月に加速承認、CHMPは例外的環境条項に基づく承認を是認した。臨床試験で脳脊髄液中のSOD1や血漿中のニューロフィラメント軽鎖(神経損傷のマーカー)が減少した。ALSFRS-R機能評価尺度の改善は有意ではなかったが好ましい影響があった。ALSの平均生存期間は2~5年とされるので延命効果が望まれるが、確認されてはいない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/new-treatment-rare-motor-neurone-disease-recommended-approval" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
Filspari(sparsentan)はアンジオテンシンIIタイプ1受容体とエンドテリンA受容体のアンタゴニスト。成人の原発性IgA腎症の治療に用いる。昨年2月に米国で加速承認、CHMPも条件付き承認に肯定的意見をまとめた。蛋白尿減少や、腎疾患の進行遅延の便益を持つ。深刻副作用は急性腎障害など。催奇性がある。CSLグループのVifor PharmaがTravere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)から欧州などにおける権利を取得したもの。オリジンはブリストル マイヤーズ スクイブのようだ(BMS-346567)。
<br />
<br />
腎症治療薬の開発は第3相の中間解析で尿蛋白クレアチニン比の改善作用を確認して加速/条件付き承認を申請し、最終解析でeGFR改善作用を確認して本承認に切替えるのが一般的な手順のようだが、Filspariは最終解析でFDAが推奨する解析方法による主評価項目がフェールした。EU推奨方法による副次的評価は高度ではないものの有意だったので、両機関の評価が注目されたが、CHMPは腎疾患の進行遅延と明記しており、試験成功と受け止めたのだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/filspari" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
アストラゼネカ・グループのAlexionのVoydeya(danicopan)は補体D因子を阻害する経口剤。成人のPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)で、同社の補体C5因子阻害剤Soliris(eculizumab)やUltomiris(ravulizumab)による治療を受けても残余溶血性貧血症のある患者に追加投与する。肝機能検査値異常やブレークスリー溶血が生じることがある。他の補体阻害剤と同様に、癌や血液異常の潜在的リスクを否定することができないため監視が必要。1月に日本で承認された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/first-oral-treatment-against-residual-haemolytic-anaemia-patients-paroxysmal-nocturnal-haemoglobinuria" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE、HKEX:6160)のTizveni(tislelizumab)は抗PD-1抗体。成人の局所進行切除不能/転移NSCLC(非小細胞性肺癌)に関する3適応・用法が支持された(腫瘍細胞の50%以上でPD-L1陽性かつEGFR/ALK変異の無い非扁平上皮NSCLCの一次治療にpemetrexed及び白金薬と併用、扁平上皮NSCLCの一次治療にcarboplatin及び(nab-)paclitaxelと併用、そして、白金薬と、もし適応になるならEGFRやALKの分子標的薬による治療歴のあるNSCLCにモノセラピー)。
<br />
<br />
この活性成分は食道扁平上皮腫の二次治療薬Tevimbraとして昨年9月にEUで承認されているが、NSCLC用途は別製品という扱いのようだ。
<br />
<br />
21年にノバルティスが欧米日本などの権利をライセンスしたが、FDAが中国だけで実施された試験に疑問を呈したためか、23年9月に返還した。今回の適応のうち、一次治療は中国試験に基づくものと推測される。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/tizveni" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
インサイトのZynyz(retifanlimab)も抗PD-1抗体。成人の治癒的手術や放射線療法の対象にならない転移/難治局所進行メルケル細胞腫に単剤投与する。条件付き承認ではない。米国では昨年3月に加速承認された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/zynyz-0" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
CSL SeqirusのA(H5N1)インフルエンザ・ワクチン二品も肯定的意見を得た。一つはzoonotic(人獣共通感染症)ワクチンCelldemic。動物由来の感染症が流行した時に用いる。もう一つはパンデミック・ワクチンIncellipan。条件付き承認で、A(H5N1)型インフルエンザの流行時にパンデミック・ワクチンとして最終承認を申請する。どちらも弱毒化A/turkey/Turkey/1/2005 (H5N1)株 (NIBRG 23)から精製したヘマグルチニンとノイラミニダーゼ表面抗原を配合、MDCK細胞で培養、M59C.1アジュバントを添加、7.5mcg/0.5mL懸濁液。中身は同じようなもので薬事法上の取り扱いが異なるだけなのではないかと感じられる。米国でも20年に同社のAudenzaというパンデミック・ワクチンが承認されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/celldemic" target="blank">
EMAのプレスリリース(Celldemic)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/incellipan" target="blank">
EMAのプレスリリース(Incellipan)</a>
<br />
<br />
以下の適応拡大も肯定的意見を得た。
<br />
<br />
<li>JNJグループのJanssen-Cilag InternationalのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel):成人の難治/再発多発骨髄腫における適応範囲が拡大(各種限定のうち、抗CD38抗体歴が削除、lenalidomide抵抗性が追加、前治療歴が3レジメンから1レジメンに緩和)。米国は3月に諮問委員会上程予定。</li>
<br />
<li>MSDのKeytruda(pembrolizumab):切除可能非小細胞性肺癌で再発リスクが高い患者の術前、術後アジュバント。米国は昨年10月に承認。</li>
<br />
<li>ブリストル マイヤーズ スクイブのReblozyl(luspatercept):骨髄異形成症候群における赤血球生成刺激剤不応という限定を解除。</li>
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>ESBL産生菌にも強い複合セフェムが承認</u>
<br />
(2024年2月22日発表)
<br />
<br />
FDAはフランスのAllecra Therapeuticsが承認申請したExblifep(cefepime、enmetazobactam)を成人の感受する微生物による複雑尿路感染症(腎盂腎炎を含む)の治療薬として承認した。前者は第4世代セファロスポリン、後者は新開発のベータ・ラクタマーゼ阻害剤。第3相試験では総合的奏効率が79.1%とpiperacillin及びtazobactam(Zosynの配合成分)を投与した群の58.9%を上回り、非劣性解析だけでなく優越性解析も成功した。ESBL(基質特異性拡張型ベータ・ラクタマーゼ)産生菌サブグループにも73.7%対51.5%と良好な成果を上げた。治療時発現深刻有害事象の発生率は各群4.3%と3.7%だった。
<br />
<br />
EUでは1月に成人の複雑尿路感染症、院内感染肺炎、これらの感染に伴う菌血症の治療薬としてCHMPの肯定的意見を受けている。
<br />
<br />
Allecraは未上場のベンチャー系企業であるためか、承認に関するプレスリリースは発出していない(2月25日時点)。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/appletter/2024/216165Orig1s000ltr.pdf" target="blank">
FDAのAllecra社宛て承認通知(pdfファイル)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.accessdata.fda.gov/drugsatfda_docs/label/2024/216165s000lbl.pdf" target="blank">
Exblifepの処方情報(FDAサイト、pdfファイル)</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<table border="1" cellpadding="4" cellspacing="1" frame="box">
<caption><b></b></caption>
<tbody><tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)</td></tr>
<tr><td>24年3-4月</td><td align="left">ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)</td></tr>
<tr><td>24/3/4</td><td align="left">Vanda PharmaceuticalsのHetlioz(tasimelteon、入眠障害追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/13</td><td align="left">Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/18 </td><td align="left">Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)</td></tr>
<tr><td>24/3/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>24/3/26</td><td align="left">MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)</td></tr>
<tr><td>24/3/27 </td><td align="left">AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>24/3/5</td><td align="left">MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)</td></tr>
<tr><td>24/3/14</td><td align="left">ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)</td></tr>
<tr><td>24/3/15</td><td align="left">ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)</td></tr>
</tbody></table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-75524826731528164282024-02-17T16:11:00.002+09:002024-02-17T16:11:23.388+09:00第1142回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>ソルビトール脱水素酵素欠乏症の第3相中間解析が成功 </li>
<li>経口遺伝性血管浮腫発作治療薬の第3相が成功 </li>
<li>大塚、アルツハイマー性アジテーションの第3相がフェール </li>
<li>CSLもapoA-Iの心筋梗塞再発予防試験がフェール </li>
<li>サレプタ、DMD用薬の対象年齢拡大を申請 </li>
<li>タピナロフをアトピーに適応追加申請 </li>
<li>BMS、AugtyroをNTRK融合型固形癌に適応拡大申請 </li>
<li>PPARデルタ・アゴニストを原発性胆管炎に承認申請 </li>
<li>BridgeBio、ATTR-CM用薬を承認申請 </li>
<li>タグリッソを一次治療にも承認 </li>
<li>ゾレアを突発的食物アレルギー抑制に適応拡大 </li>
<li>T細胞療法を悪性黒色腫に加速承認 </li>
<li>メルクのc-MET阻害剤、米国で本承認に切替 </li>
<li>初の凍傷治療薬が承認 </li>
<li>FDA、オニバイドを一次治療にも承認 </li>
<li>武田、budesonideの粘性懸濁液が好酸球性食道炎に承認</li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>ソルビトール脱水素酵素欠乏症の第3相中間解析が成功</u>
<br />
(2024年2月15日発表)
<br />
<br />
Applied Therapeutics(Nasdaq:APLT)はアルドース還元酵素阻害剤AT-007(govorestat)をガラクトース血症やSORD(ソルビトール脱酸素酵素)欠乏症などに開発し、前者は昨年12月に欧米で承認申請したばかりだが、後者も第2/3相の中間解析で主評価項目を達成した。FDAと承認申請に向けて相談する考え。複雑な試験で良く分からないところが多々あるが、酵素欠乏による希少疾患用なので容認されるかもしれない。
<br />
<br />
この第2/3相試験は複数回の中間解析で様々な便益を評価していることが印象的。昨年2月には、50人の中間解析で血漿sorbitol水準が90日間の治療により平均52%低下したことが発表された。今回は56人の12ヶ月解析で、共同主評価項目のうち、ソルビトール水準の低下はp<0.001、ソルビトール水準と複合臨床的評価項目(10メートル歩行走行テスト、4段昇段テスト、座位起立テスト、6分歩行テスト、背屈テストに基づく)の相関性はp=0.05となった。
<br />
<br />
この試験の最終的な主評価項目は24ヶ月時点の10メートル歩行走行テストとなっており、同社は引き続き追跡する予定。
<br />
<br />
SORD欠乏症は遺伝性疾患でCharcot-Marie-Tooth病の一形態。米国の罹患者数は3300人、欧州は4000人と推定されている。
<br />
<br />
古典的ガラクトース血症の第3相は主評価項目はフェールしたが複合評価指標における幾つかの症状は改善が見られたため承認申請した。EMAは承認申請を受理、FDAが受理するかどうかはもうそろそろ明らかになるだろう。SORD欠乏症も酵素欠乏による希少遺伝性疾患なので、有害代謝物であるガラクチトールが減少し、臨床的な便益を支持するある程度のエビデンスを収集できれば、承認される可能性がありそうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.appliedtherapeutics.com/news-releases/news-release-details/applied-therapeutics-announces-positive-results-12-month-interim" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>経口遺伝性血管浮腫発作治療薬の第3相が成功</u>
<br />
(2024年2月13日発表)
<br />
<br />
KalVista Pharmaceuticals(Nasdaq:KALV)は、KVD900(sebetralstat)の第3相遺伝性血管浮腫(HAE)発作治療試験が良好な結果になったと発表した。24年上期に米国で、下期までに欧日でも、承認申請する考え。初めての経口剤なので、発作後に注射用薬より早い段階で服用される可能性があり、更に早く症状緩和できるようになるかもしれない。
<br />
<br />
血漿カリクレイン阻害剤。第2相試験で服用後12時間以内にレスキュー治療が必要になった患者が15%と偽薬群の半分に留まり、副次的評価項目である症状改善までの時間も1.6時間と偽薬群の9時間より大きく短縮された。第3相のKONFIDENT試験では12歳以上の小児成人患者136人を偽薬群、新たに設定された300mg群、そして600mg群に無作為化割付けした。110人で264回発作が起き、症状改善が始まるまでのメジアン時間は各群6.72時間、1.61時間、1.79時間で、両用量とも偽薬比有意な違いがあった。シーケンシャルに実施された副次的評価項目の解析は、重症度緩和奏効率も、完解までの時間も、両用量とも有意な差があった。24時間完解率は各群28%、44%、52%。
<br />
<br />
この試験は発作予防薬を用いている患者も組み入れており、両群合わせて24人で58回の発作が起きたが、このような患者にも効果が見られた。
<br />
<br />
治療関連有害事象の発生率は各群4.8%、2.3%、2.2%と大差なく、深刻例はなかった。有害事象による治験離脱もなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.kalvista.com/news-releases/news-release-details/kalvista-pharmaceuticals-reports-phase-3-konfident-trial-meets" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>大塚、アルツハイマー性アジテーションの第3相がフェール</u>
<br />
(2024年2月13日発表)
<br />
<br />
大塚製薬は、AVP-786(deudextromethorphan hydrobromide, quinidine sulfate)の第3相試験がフェ-ルしたと発表した。アルツハイマー型認知症における攻撃的言動などのアジテーション症状を改善する効果を検討したが、2用量群共に偽薬比有意な差がなかった。有害事象は転倒が増加した。
<br />
<br />
15年に買収したAvanir Pharmaceuticalsが12年にConcert Pharmaceuticalsからライセンスしたもの。10年に米国で情動調節障害治療薬として承認されたNuedexta(dextromethorphan、quinidine sulfate)の類似品で、NMDA受容体拮抗・シグマ-1作動剤dextromethorphanの水素を重水素に置換することでCYP2D6による代謝を抑制、2D6を阻害するために併用するquinidineの用量を減らすことを可能にした。
<br />
<br />
Nuedextaはアルツハイマー病患者などのアジテーションに流用されることがあり、19年には介護施設の認知症患者に投与した医師にAvanirがキックバックを払っていたとされる件で米国司法省と1.16億ドルの司法和解を結んでいる。Nuedextaが果たせなかった治験成功をAVP-786が達成できれば良かったが、実現しなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ssl4.eir-parts.net/doc/4578/tdnet/2394645/00.pdf" target="blank">
大塚のプレスリリース(和文、pdfファイル)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>CSLもapoA-Iの心筋梗塞再発予防試験がフェール</u>
<br />
(2024年2月11日発表)
<br />
<br />
CSL(ASX:CSL)はヒト由来アポリポプロテインA-Iの第3相AEGIS-II試験がフェールしたと発表した。急性心筋梗塞の診断から5日以内で、PCI/薬物治療後の再発リスクが高い18200人を、試験薬と偽薬に2対1割付けして週一回、4回静注し、90日間のMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)を追跡したもの。データは4月6日にACC(米国心臓学会)で発表する考え。
<br />
<br />
後期第2相試験でも30日MACEを改善する作用は見られなかったが、検出力不足だったので結論が出せなかった。
<br />
<br />
HDLの主構成物質であるアポA-Iは、Medicine CompanyもA-Iミラノという心血管疾患リスクの低さと関連する多型の遺伝子組換え版を用いてIVUS(血管内超音波)試験を行ったが、16年にフェールした。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://newsroom.csl.com/2024-02-11-CSL-Announces-Top-line-Results-from-the-Phase-3-AEGIS-II-Trial-Evaluating-the-Efficacy-and-Safety-of-CSL112-apolipoprotein-A-I-human" target="blank">
CSLのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>サレプタ、DMD用薬の対象年齢拡大を申請</u>
<br />
(2024年2月16日発表)
<br />
<br />
サレプタ・セラピューティックスはElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)の加速承認を本承認に切替えるとともに、歩行可能な4~5才児という限定を解除すべく、FDAに追加申請し受理された。審査期限は6月21日。
<br />
<br />
第3相EMBARK試験に基づく。主評価項目の52週North Star Ambulatory Assessment総合スコアは偽薬比有意に改善しなかったものの、副次的評価項目のうつ伏せから起立までの時間(ベースラインの3.5秒から偽薬調整後0.67秒低下)や10メートル歩行走行テスト(4.8秒から同0.42秒低下)が有意に改善した。治療関連深刻有害事象の発生率は11%(偽薬群は0%)だった。
<br />
<br />
Elevidysはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子療法。ある程度機能するマイクロジストロフィンの遺伝子をアデノ随伴ウイルスベクターで導入する。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investorrelations.sarepta.com/news-releases/news-release-details/sarepta-therapeutics-announces-us-fda-acceptance-efficacy?_ga=2.238110528.1305668769.1708128506-712814459.1708128506" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>タピナロフをアトピーに適応追加申請</u>
<br />
(2024年2月14日発表)
<br />
<br />
Roivant Sciences(Nasdaq:ROIV)の皮膚病領域における子会社であるDermavant Sciencesは、Vtama(tapinarof 1%クリーム)を2歳以上のアトピー性皮膚炎の治療薬としてFDAに適応追加申請した。2歳以上の中重度アトピー性皮膚炎を組入れた二本の試験で、奏効率(Validated Investigator Global Assessment for Atopic Dermatitisで評価)が一本は46%(偽薬群は18%)、もう一本は45%(同14%)だった。有害事象は、乾癬試験と同様に、毛包炎などの発生率が偽薬群を上回った。
<br />
<br />
アリル炭化水素受容体調節剤で、表皮細胞の新陳代謝やバリア形成にかかわる遺伝子の発現を促す。22年に米国で乾癬治療薬として承認され、日本でもJTが乾癬に承認申請中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.dermavant.com/dermavant-submits-supplemental-new-drug-application-snda-to-fda-for-vtama/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BMS、AugtyroをNTRK融合型固形癌に適応拡大申請</u>
<br />
(2024年2月14日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブは、Augtyro(repotrectinib)を12歳以上のNTRK(Neurotrophic tropomyosin kinase receptors)遺伝子融合のある局所進行/転移/切除不適な固形癌に米国で適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は6月15日。
<br />
<br />
ROS1やTRK、ALKを阻害する経口剤で、昨年11月に米国で成人のROS1再編成のある局所進行/転移非小細胞性肺癌に承認された。日欧でも承認審査中だが、EUでは今回の適応も申請している。22年に74億ドルで買収したTurning Point Therapeuticsの開発品。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2024/U.S.-Food-and-Drug-Administration-Accepts-for-Priority-Review-Bristol-Myers-Squibbs-Application-for-Augtyro-repotrectinib-for-the-Treatment-of-Patients-with-NTRK-Positive-Locally-Advanced-or-Metastatic-Solid-Tumors/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>PPARデルタ・アゴニストを原発性胆管炎に承認申請</u>
<br />
(2024年2月12日発表)
<br />
<br />
CymaBay Therapeutics(Nasdaq:CBAY)はseladelparを原発性胆管炎の管理薬としてFDAに承認申請し、受理された。優先審査を受け、審査期限は8月14日。EUでも上期中に承認申請する考え。日本は昨年、科研製薬が開発商業化権を取得した。
<br />
<br />
18年前にJohnson and JohnsonからライセンスしたPPARデルタ・アゴニスト。類薬はイプセンがGenfit(Nasdaq:GNFT)からライセンスしたelafibranorを一足先に欧米で承認申請し、米国の審査期限は6月10日となっている。どちらも成人の、UDCA(ursodeoxycholic acid)に十分応答しないまたは不耐の患者が対象。第3相は主評価項目の定義が異なるのか偽薬群の奏効率がかなり異なっており、効果を比較するのは現時点では難しそうだ。
<br />
<br />
同日、ギリアド・サイエンシズによる企業買収で合意したことも発表した。一株当たり32.5ドル、先週末の株価比27%のプレミアム、総額はエクイティ・バリュー・ベースで43億ドル。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.cymabay.com/investors-media/news-events/press-releases/detail/592/cymabay-announces-fda-acceptance-of-nda-and-priority-review" target="blank">
CymaBay のプレスリリース(NDA)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.cymabay.com/investors-media/news-events/press-releases/detail/591/gilead-sciences-expands-liver-portfolio-with-acquisition-of" target="blank">
ギリアドとCymaBayのプレスリリース(買収合意)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BridgeBio、ATTR-CM用薬を承認申請</u>
<br />
(2024年2月5日発表)
<br />
<br />
BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)はacoramidisをATTR心筋症(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)用薬として欧米で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は11月29日。
<br />
<br />
スタンフォード大学発のコンパウンドで、トランスサイレチンの4量体構造に結合し安定化させ、アミロイドーシスに至るプロセスを妨げる。第3相ATTRibute-CM試験でNYHAクラスIとIIの患者632人を800mgを一日二回経口投与する群と偽薬群に2対1割付けして転帰を比較したところ、パートAの主評価項目である12ヶ月後の6分歩行テストはフェールしたが、パートBの30ヶ月複合評価項目のWin Ratioが1.8、p<0.0001となり、成功した。構成項目のうち全死亡だけの副次的評価はp=0.057と有意ではなかったが、心血管入院が50%少なかったことなどが寄与した模様だ。
<br />
<br />
Win Ratio法は、各群1例ずつをランダムに選択して優先順位に即して勝ち負けを決める。例えば、投与開始の半年後に各群1人ずつ心筋梗塞を発症し、偽薬群は即死、試験薬群はその半年後に死亡したようなケースでは、一般的な解析法であるtime-to-event法では優劣無しと評価されるが、Win Ratio法では最優先となる全死亡時期に半年の違いがあるため試験薬の勝ちとなる。Win Ratio法を採用したのは、主評価項目の構成が全死亡、心血管関連入院、NT-proBNPの変化、6分歩行距離となっており重要性がかなり異なるためだ。
<br />
<br />
日本の権利はアクテリオンが取得、先日、ブリッジング・スタディの30ヶ月生存率が対照群より高かった旨を発表している。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://bridgebio.com/news/bridgebio-pharma-announces-u-s-food-and-drug-administration-fda-acceptance-of-new-drug-application-nda-for-acoramidis-for-the-treatment-of-patients-with-transthyretin-amyloid-cardiomyopathy-attr/" target="blank">
BridgeBioのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>タグリッソを一次治療にも承認</u>
<br />
(2024年2月16日発表)
<br />
<br />
FDAはアストラゼネカのTagrisso(osimertinib)を一次治療に使うことを認めた。EGFRの遺伝子にエクソン19欠損又はエクソン21のL878R変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌における、再発治療限定を解除するもの。白金薬ベースの化学療法と併用する。FLAURA2試験でPFS(無進行生存期間)のメジアン値が25.5ヶ月とTagrissoだけを投与した群の16.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62だった。副次的評価項目の全生存期間については、目標進捗率が45%と未成熟だが損なわれるようなトレンドは観察されていない、という文言がレーベルに記載された。G3以上の有害事象の発生率は64%とTagresso単剤群の27%を上回った。骨髄抑制などにより被験者の半数近くが何れかの薬を中止した。
<br />
<br />
FDAは今回の申請を、優先審査、ファースト・トラック、再生医療先端治療、そして希少疾患として指定し審査した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-osimertinib-chemotherapy-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ゾレアを突発的食物アレルギー抑制に適応拡大</u>
<br />
(2024年2月16日発表)
<br />
<br />
FDAはジェネンテックのXolair(omalizumab)を1歳以上の免疫グロブリンE(IgE)調停性食物アレルギーを抑制する目的で使用することを認めた。突発的な曝露に備える趣旨であり、少数だが応答しない患者もいるため、アレルゲンを回避する努力は続ける必要がある。
<br />
<br />
抗IgE抗体で、米国では03年に管理不良喘息症用薬として承認され、その後、ある種の慢性副鼻腔炎や蕁麻疹に適応拡大した。今回のエビデンスとなったのはNIH(米国立医療研究所)が主導したアレルゲン・チャレンジ試験。ピーナツに加えてもう一つの食品にアレルギーを持つ1~17歳の168人を組入れて16~20週間治療したところ、68%の患者が600mg以上のピーナツ蛋白(約2.5個分)を摂取しても中等度以上のアレルギー症状を起こさなかった(偽薬群は6%)。一方で、17%の患者は耐容量が増えなかった。
<br />
<br />
カシューナッツでは42%、牛乳は66%、卵は67%が中等度以上のアレルギー症状を起こさなかった。
<br />
<br />
Xolairはアナフィラキシーのリスクが枠付き警告されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-medication-help-reduce-allergic-reactions-multiple-foods-after-accidental" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>T細胞療法を悪性黒色腫に加速承認</u>
<br />
(2024年2月16日発表)
<br />
<br />
FDAはIovance Biotherapeutics(Nasdaq:IOVA)のAmtagvi(lifileucel)を成人の切除不能/転移黒色腫用薬として加速承認した。PD-1標的抗体医薬(BRAFにV600変異を持つ場合はBRAF阻害剤も)による治療歴を持つ患者が適応になる。臨床試験におけるORR(客観的反応率、解析対象73人)は31.5%、反応持続期間のメジアン値は未達、反応者の43.5%は12ヶ月以上持続した。枠付き警告は、治療関連死(160人中12人)、重度の血球減少(G3以上の熱性好中球減少症発生率47%)、感染症、心肺症、腎障害。
<br />
<br />
切除した腫瘍細胞から採取し培養した腫瘍浸潤リンパ球(主としてCD4/CD8陽性T細胞)の細胞療法。リンパ枯渇療法を7日間施行した後に投与し、その後2~4日間、遺伝子組換えIL-2製剤を12時間おきに投与して増殖を促す。
<br />
<br />
当初は20年に承認申請の予定だったが、腫瘍抗原を認識するT細胞がどの程度あるのか測定することが難しいため、FDAが力価アッセイに関して様々な追加データを要求、承認申請が23年3月に遅れ、審査期間も延長された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-accelerated-approval-lifileucel-unresectable-or-metastatic-melanoma" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>メルクのc-MET阻害剤、米国で本承認に切替</u>
<br />
(2024年2月15日発表)
<br />
<br />
FDAはメルクの米国子会社であるEMDセラノのTepmetko(tepotinib)をMET遺伝子にエクソン14スキップのある転移非小細胞性肺癌に承認した。この適応は21年に加速承認した時と同じ。薬効評価方法もORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)と反応持続期間で同じ。臨床試験が進捗し、症例数が約310人とほぼ倍増、反応持続期間の追跡期間も増加したため、本承認に切り替えた。通常は無作為化割付け対照試験で延命またはそれに準じる効果を確認する必要があるが、希少疾患用の分子標的薬ではFDAがフレキシブルな対応を行うことがある。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-tepotinib-metastatic-non-small-cell-lung-cancer" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>初の凍傷治療薬が承認</u>
<br />
(2024年2月14日発表)
<br />
<br />
FDAは、Eicos SciencesのAurlumyn(iloprost)を成人の重度凍傷の治療薬として承認した。指切除のリスクを抑制する。有害事象は頭痛、紅潮、動悸、悪心嘔吐などで、症候性低血圧のリスクが警告注意されている。
<br />
<br />
プロスタグランディンI2の類縁体で、他社の吸入用製剤が肺高血圧症治療薬として欧米日で承認されている。Aurlumynは静注点滴用製剤で、臨床試験では一日6時間、最大8日間投与した。パッケージ・インサートが未公開なのでエビデンスは明らかではないが、FDAのリリースで参照されている、フランスで行われた治験研究と推測される。スキー・リゾートとして有名なシャモニーの医師が2011年にNew England Journal of Medicine誌に寄稿した治験報告によると、96年から08年に山岳救助隊に運ばれてきた重度凍傷患者47人に、復温に加えてアスピリンと血管拡張剤buflomedilの静注を施行した上で3群に割付けて最大8日間治療し、骨スキャンで指切断が必要と判定されるリスクを比較した。アスピリン・buflomedil継続投与群は60%が指切断判定されたのに対して、アスピリン・iloprost併用群は0%、アスピリン・iloprostに加えて初日だけrTPAを投与した群は19%だった。
<br />
<br />
尚、buflomedilは欧州の一部国で末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)の治療に長年用いられていたが、安全域が狭く、PAOD患者がしばしば合併する腎障害で曝露が増加することなどが響き、痙攣や癲癇重積症の副作用が報告され、2011年にフランスが承認停止、翌年、欧州委員会も承認停止を勧告した。
<br />
<br />
EicosはCiVi Biopharmaの子会社で、どちらも未上場。設立は上記論文の刊行より後なので、既存の活性成分と既存の治験記録を活用して承認を取得する企業戦略なのかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-medication-treat-severe-frostbite" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc1000538" target="blank">
Cauchyらの治験報告書簡(N Engl J Med 2011; 364:189-190)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1016/j.wem.2019.05.002" target="blank">
Wilderness Medical Societyの凍傷予防治療ガイドライン</a>
<br />
<br />
<br />
<u>FDA、オニバイドを一次治療にも承認</u>
<br />
(2024年月日発表)
<br />
<br />
FDAはイプセンのOnivyde(irinotecanリポソーム製剤)を転移膵臓腺腫の一次治療に用いる適応拡大を承認した。50mg/m2を90分点滴静注、oxaliplatinを120分点滴静注、leucovorin30分点滴静注、fluorouracil46時間点滴静注という順番のコースを2週毎に施行する。
<br />
<br />
未治療の転移膵管腺腫を組入れた第3相NAPOLI 3試験で、メジアン生存期間が11.1ヶ月と、nab-paclitaxelとgemcitabineを併用した群の9.2ヶ月を僅かに上回り、ハザードレシオは0.83、p=0.04だった。副次的評価項目のPFS(無進行生存期間)はメジアン7.4ヶ月対5.6ヶ月、ハザードレシオは0.69。G3/4の治療時発現有害事象は下痢や悪心、疲労が低カリウム血症の発生率が上回った一方、骨髄抑制は下回った。
<br />
<br />
Onivydeは15~16年に米欧で、20年には日本でも、二次治療に承認された。17年にMerrimack Pharmaceuticalsから関連資産を取得したもの。今回の承認に伴い225百万ドルの目標達成金を貰えるMerrimackは、5月に特別株主総会を招集し、会社清算の承認を得る考え。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-irinotecan-liposome-first-line-treatment-metastatic-pancreatic-adenocarcinoma" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>武田、budesonideの粘性懸濁液が好酸球性食道炎に承認</u>
<br />
(2024年2月12日発表)
<br />
<br />
武田薬品は、FDAがEohilia(budesonide)を11歳以上の小児・成人の好酸球性食道炎の治療薬として承認したと発表した。一巡目の審査は期限超過の末に審査完了となり、追加試験を推奨されたことから一時は開発中止となったが、何とかゴールにたどり着いた。
<br />
<br />
budesonideの粘着付着性局所性経口剤。2mg/10mLを一日二回、経口投与する。ゲル・ボールペンのインクはフリクション・ボールが紙の上で転がると液状化し、紙の上で再び固形化する。Eohiliaも同様なメカニズムを利用しており、10秒以上シェイクして粘度を落としてから服用する。
<br />
<br />
当方が把握している範囲では、08年にVerus PharmaceuticalsがMeritage Pharmaに権利を譲渡、11年にViroPharmaがMeritage買収オプションを取得、13年にViroPharmaを買収したShireが15年にオプション行使、19年に武田がShireを買収という経緯。
<br />
<br />
好酸球性食道炎では22~23年にRegeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab)が米欧で適応拡大した。皮下注用で、従来治療法に不応不適な患者に限定されている。年齢下限は昨年、米国で、1歳に引き下げられた。もう一つの違いは、Eohiliaは12週を超える投与の有効性や安全性が確認されていない。最初にEohiliaの12週コースを施行し、不十分/不耐ならDupixentにスイッチするイメージだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.takeda.com/newsroom/newsreleases/2024/fda-approves-eohilia/" target="blank">
武田薬品のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/2/22 </td><td align="left">Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)</td></tr>
<tr><td>24年3-4月</td><td align="left">ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)</td></tr>
<tr><td>24/3/13</td><td align="left">Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/18 </td><td align="left">Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)</td></tr>
<tr><td>24/3/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>24/3/26</td><td align="left">MSDのMK-7962( sotatercept、肺動脈高血圧症)</td></tr>
<tr><td>24/3/27 </td><td align="left">AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>24/3/5</td><td align="left">MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)</td></tr>
<tr><td>24/3/14</td><td align="left">ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)</td></tr>
<tr><td>24/3/15</td><td align="left">ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-19284721611653549042024-02-10T09:35:00.001+09:002024-02-10T09:35:31.049+09:00第1141回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>ハンター症候群の遺伝子療法試験が成功 </li>
<li>リリー、デュラグルチドの第2相脂肪性肝炎試験が成功 </li>
<li>Vertex、膿疱性線維症新薬の第3相がポジティブな結果に </li>
<li>JNJの抗FcR抗体も筋無力症試験が成功 </li>
<li>Blenrep shall return </li>
<li>ギリアド、二剤の第3相がフェール </li>
<li>BMS、オプジーボを肺癌術前術後補助療法として承認申請 </li>
<li>PRAC、パキロビッドと一部の免疫抑制剤の併用注意喚起 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>ハンター症候群の遺伝子療法試験が成功</u>
<br />
(2024年2月7日発表)
<br />
<br />
米国のRegenxbio(Nasdaq:RGNX)は、RGX-121のハンター症候群(別名ムコ多糖症II型)におけるpivotal試験で主目的を達成したと発表した。24年下期にFDAに加速承認を申請する考え。
<br />
<br />
ハンター症候群はX染色体劣性遺伝性疾患。ライソソームのI2S(iduronate-2-sulfatase)遺伝子が欠乏し、ヘパラン硫酸などが分解されずに蓄積、発達障害をもたらす。米国では年30~40人の新生児が診断される。治療は週一回、まる一日をかけて酵素補充療法(ERT)を受ける。RGX-121はヒトI2Sの遺伝子をAAV9ベクターを用いて中枢神経系に導入する。第1/2/3相CAMPSIITE試験では5歳までの神経障害性ハンター症候群患者に脳の大槽(一部の患者は脳室内)に一回投与し、その後の48週間、免疫抑制療法を施行した。薬効は、疾病活動性のサロゲート・マーカーとされるヘパラン硫酸のD2S6コンポーネントの脳脊髄液における水準の変化で評価した
<br />
<br />
用量変動パートでは15人の第16週D2S6が用量に応じて30~78%低下した。追跡期間が長い、最低用量を投与した3人は4年後も低水準を維持した。最大用量の2.9x10^11gc/gを投与した5人中4人はERTが不要になった。最大用量をpivotalパートで10人に投与したところ、第16週D2S6が86%低下し、8人は正常水準に達した。
<br />
<br />
有害事象はウイルスや細菌の感染症が見られるが、薬物や免疫抑制との関連性は否定されたようだ。pivotalパートでは肝機能検査値異常の深刻有害事象が1例発生したが、ステロイド治療で解消した。
<br />
<br />
ヘパラン硫酸削減効果に基づく承認は、日本ではJCRファーマの遺伝子組換え酵素補充療法イズカーゴ(パビナフスプアルファ)が21年に承認されているが、米国では本剤が初となる見込み。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://regenxbio.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/regenxbio-announces-pivotal-trial-rgx-121-treatment-mps-ii" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>リリー、デュラグルチドの第2相脂肪性肝炎試験が成功</u>
<br />
(2024年2月6日発表)
<br />
<br />
イーライリリーは2023年決算発表に合わせてパイプライン・アップデートを行った。GLP-1/GIP受容体アゴニストtirzepatideの第2相MASH(代謝障害関連脂肪性肝炎、旧NASH)試験が主目的を達成し、CDK4/6阻害剤Verzenio(abemaciclib)の第3相前立腺癌試験はフェールした。
<br />
<br />
tirzepatideは二型糖尿病薬Mounjaroや体重管理薬Zepboundの活性成分で、MASH領域でも期待の新薬だ。第2相SYNERGY-NASH試験ではステージ2と3の患者を偽薬、5mg、10mg、15mgに無作為化割付けして52週間治療し、奏効率を比較した。奏功の定義は、主評価項目ではMASHが解消し線維症が悪化しないこと。副次的評価項目では線維症が1段階以上改善しMASHが悪化しないこと。前者は各群12.6%、51.8%、63.1%、73.9%となり、3用量とも偽薬比統計的に有意だった。MASH領域の他の開発品の数値と見比べても良さそうだ(比較可能性があるとは限らないが)。後者は全用量とも臨床的に意味のある数値が出たとのことだが、統計的に有意とは記されていない(第2相なので検出力がないのかもしれないが)。
<br />
<br />
同社とノボ ノルディスクのGLP-1作用剤はスタチンや抗PD-1抗体に続く超大型製品に育っている。リリーのTrulicityとMounjaro、Zepboundの合計売上高は22年の79億ドルが23年には124億ドルに増加、同年第4四半期だけ見ると年率160億ドルに膨れ上がり、それでも、(二社とも)供給が需要に追い付かない状態だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/static-files/ecfe166b-dd40-45df-afd7-ddb81fe2cb33" target="blank">
同社の23Q4決算プレゼン用スライド(P.17に関連図表)</a>
<br />
<br />
一方、Verzenioは第3相CYCLONE-2試験で転移去勢抵抗性前立腺癌にabirateroneと併用する便益を検討したが、PFS(無進行生存期間、放射線学的評価)がabiraterone・偽薬併用群を有意に上回らなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lilly-reports-strong-fourth-quarter-2023-financial-results-and" target="blank">
同社の23Q4決算リリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Vertex、膿疱性線維症新薬の第3相がポジティブな結果に</u>
<br />
(2024年2月5日発表)
<br />
<br />
Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は膿疱性線維症薬として開発しているトリプル・コンビ・レジメンの第3相試験がポジティブな結果になったと発表した。24年央までにグローバルな承認申請を行う予定。米国では優先審査バウチャを用いて審査期間短縮を図る。
<br />
<br />
vanza tripleと通称される開発品は、CFTRコレクターのVX-121(vanzacaftor)とVX-661(tezacaftor)及びCFTRポテンシエーターVX-561(deutivacaftor)の配合剤。第3相は、二本の試験に12歳以上のこれらの薬剤に感受する変異型を持つ膿疱性線維症患者を組入れて、一日一回経口投与する便益を、同社の既存製品であるTrikafta(elexacaftor、tezacaftor、ivacaftorの配合剤)を朝に、Kalydeco(ivacaftor)を夕に、経口投与する群と比較した。ラン・イン期間に全員にTrikaftaレジメンによる治療を施行した後の数値との比較なので、新製品にスイッチする当否を検討したわけだ。三剤の用量は、新製品が各20mg、100mg、250mg、Trikaftaレジメンは朝は各100mg、50mg、75mg、夕はivacaftorだけ75mgとなっており、共通成分であるtezacaftorの用量も異なっている。
<br />
<br />
主目的である第24週のppFEV1(一秒量の予測値比パーセント)は二本とも非劣性解析が成功した。ベースライン値比増減の群間差は二本とも0.2%だった。副次的評価項目である汗中塩化物奏効率(汗中塩化物検査値が膿疱性線維症の診断基準である60mmol/Lを下回った患者の比率)はスイッチ群ではベースライン値の76%から86%に10%改善したのに対して、継続群では74%から76%に微増に留まり、有意な差があった。安全性は大きな群間差はなかった。
<br />
<br />
もう一本のRIDGELINE 105試験は6~11歳の感受変異型を持つ膿疱性線維症を組入れた単群試験。主目的は安全性だが、副次的評価項目の第24週汗中塩化物はTrikaftaラン・イン後のベースライン値と比べて8.6mmol/L改善。汗中塩化物奏効率はベースラインの84%から95%に改善した。
<br />
<br />
Trikaftaからスイッチさせるには患者や医師、保健機関などにメリットをアピールする必要がある。塩化物の汗中浸出が減少する意義をどれだけアピールできるか、且つ又、価格でどれだけアピールできるかが課題になりそうだ。同社にとっては、第3者に支払うべき売上ロイヤルティ率が既存製品より低いことに加えて、おそらく知的所有権の有効期間も長いのだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.vrtx.com/news-releases/news-release-details/vertex-announces-positive-results-pivotal-trials" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>JNJの抗FcR抗体も筋無力症試験が成功</u>
<br />
(2024年2月5日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソンはJNJ-80202135(nipocalimab)の第3相重症筋無力症(gMG)試験が成功したと発表した。当局と相談する考え。シェーグレン症候群の第2相用量変動試験が良好な結果になったことも明らかにした。
<br />
<br />
20年にMomenta Pharmaceuticalsを買収して入手した、胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するアグリコシル化抗体。抗FcRn抗体は21~22年にargenx(Nasdaq:ARGX)の抗体フラグメント、Vyvgart(efgartigimod alfa-fcab)が、23~24年にはUCBのIgG4型抗体、Rystiggo(rozanolixizumab-noli)も、米日欧で抗アセチルコリン受容体抗体陽性のgMGなどに承認されている。JNJの開発の特徴は様々な用途にテストしていることで、23年に早発性重度胎児新生児溶血性疾患(EOS-HDFN)の第2相が成功、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)の第2/3相試験も進行中だ。
<br />
<br />
第3相gMG試験、VIVACITYは標準療法の効果が不十分な成人の中重度gMG患者を組入れて2週毎静注し、第22~24週のMG-ADLを偽薬群と比較した。データは未発表。第2相では4用量・用法群ともMG-ADL2ポイント低下奏効率が52%と偽薬群の15%を有意に上回った。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/press-releases/johnson-johnson-reports-positive-topline-results-for-nipocalimab-from-a-phase-3-pivotal-study-in-generalized-myasthenia-gravis-gmg-and-a-phase-2-study-in-sjogrens-disease-sjd" target="blank">
JNJのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Blenrep shall return</u>
<br />
(2024年2月5日発表)
<br />
<br />
GSKは、昨年11月、Blenrep(belantamab mafodotin-blmf)の第3相多発骨髄腫試験、DREAMM-7で主目的を達成したと発表したが、2月のASCO(米国臨床腫瘍学会)Plenary Seriesでデータが発表された。全生存期間のデータが成熟するのを待って承認申請に向かうのでないか。
<br />
<br />
Blenrepは、協和キリン・グループのBioWaが創製した、骨髄腫細胞のサバイバルを促すBCMAをブロックする抗体と細胞毒を結合した抗体薬物複合体。主要4剤を使い果たした再発/難治多発骨髄腫を組入れた第2相で良績を上げス20年に米欧で加速承認/条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験である第3相DREAMM-3が22年にフェールし、3次治療におけるPFS(無進行生存期間)がpomalidomide・dexamethasoneを有意に上回るといいう仮説を立証できなかった。全生存期間の解析は未成熟だったがハザードレシオ1.14と数値上、見劣りした。このため、米国では23年2月に加速承認が取り消された。EUでもCHMPが昨年12月に条件付き承認を更新すべきでないという勧告を再確認したため、早晩、取り消されるだろう。
<br />
<br />
このような経緯があるため今回の試験成功はサプライズだ。難治/再発骨髄腫の二次治療試験で、Velcade(bortezomib)、低量dexamethasone、そしてDarzalex(daratumumab)を併用する標準療法の、daratumumabに代えてBlenrepを併用する効用を検討したところ、中間解析で主評価項目のPFSを達成した。ハザードレシオ0.41、p<0.00001、メジアン期間は36.6ヶ月対13.4ヶ月と、かなり良い。副次的評価項目である全生存期間もハザードレシオ0.57、p=0.00049と大変良い数値が出ているが、中間解析の成功認定基準はp<0.00037と厳しく設定されていたため、統計的に有意とは言えず、引き続き追跡する。
<br />
<br />
有害事象は血小板減少症や好中球減少症、肺炎などの発生率が対照群を上回った。G3以上の視覚有害事象(霞目やドライアイ、視力低下など)が34%の患者で発生したが、多くは回復した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/dreamm-7-phase-iii-trial-shows-pfs-improvement-and-strong-os-trend-for-blenrep-combo-versus-soc-combo-in-multiple-myeloma/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ギリアド、二剤の第3相がフェール</u>
<br />
(2024年2月6日発表)
<br />
<br />
ギリアド・サイエンシズは23年第4四半期の決算発表に際して、GS-5245(obeldesivir)の第3相COVID-19試験とGS-4721(magrolimab)の第3相急性骨髄性白血病(AML)試験がフェールしたことを明らかにした。どちらも他の第3相がパッとしない結果だったのでサプライズ感は小さい。
<br />
<br />
obeldesivirはCOVID-19治療薬Veklury(remdesivir)の類縁体で、肝臓以外にも分布する酵素によって活性化されることから、経口剤として開発されている。第3相OAKTREE試験は米国と日本の施設で陽性判定から3日以内の、重症化リスクが高くなく入院もしていないCOVID-19感染者に350mgを一日2回、5日間投与し、症状改善までの期間を偽薬と比較したが、有意な改善が見られなかった。ウイルスや免疫の変化により流行のピーク時には最大2週間あった罹患期間が1週間足らずになったことも一因と見なされている。
<br />
<br />
昨年9月には、米国以外の施設で陽性判定から5日以内の重症化リスクが高い非入院COVID-19感染者を対象とする第3相BIRCH試験が組入れ中止になった。感染者数が減少、重症化や死亡例も減少し、組入れが順調に進まなかったことが原因のようだ。
<br />
<br />
Vekluryも23年の売上高が前年比でほぼ半減、前々年比では6割減の21億ドルに留まっており、経口剤の試験フェールは効果というよりは治療の必要性の問題なのだろう。
<br />
<br />
GS-4271は抗CD47抗体。マクロファージのSIRPアルファ受容体に結合して免疫抑制するのを妨げる。複数の第3相がロンチされたが、23年に高リスクMDS(骨髄異形成症候群)の一次治療azacitidine併用試験とTP53変異AMLのazacitidine併用試験が無益中止となったのに続いて、今回、集中的治療不適なAMLのvenetoclax・azacitidine併用一次治療試験、ENHANCE-3が、中間解析で死亡リスクが見られたことから、中止となった。FDAは治験の完全停止命令を発出、過去にも部分停止命令を出したことがあり、同社は、血液癌における開発を中止する考えだ。
<br />
<br />
20年にForty Seven社を49億ドルで買収して入手したコンパウンド。その前年に小野薬品が日本などの開発商業化権を取得し、日本で第1相、韓国台湾でAMLの第3相試験中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://s29.q4cdn.com/585078350/files/doc_financials/2023/q4/GILD-Q423-Earnings-Presentation-6-February-2024.pdf" target="blank">
ギリアドの23Q4決算プレゼン用資料(pdfファイル)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>BMS、オプジーボを肺癌術前術後補助療法として承認申請</u>
<br />
(2024年2月7日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはOpdivo(nivolumab)をステージIIAからIIIBの非小細胞性肺癌の切除術前と後のアジュバント療法に米国で適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限は10月8日。EUでは1月に受理されていたことも明らかにした。
<br />
<br />
CheckMate-77T試験に基づくもの。術前に化学療法と共に360mgを3週毎に4サイクル投与し、術後は480mgを4週毎に1年間投与したところ、Opdivoの代わりに偽薬を投与した群と比べて、EFS(無イベント生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.58と、有意な改善が見られた。副次的評価項目の全生存期間は未成熟。G3/4治療関連有害事象の発生率は試験薬群が32%、偽薬群は25%だった。
<br />
<br />
昨年10月に米国で適応拡大が承認されたMSDのKeytruda(pembrolizumab)のKeyNote-671試験の成績と見比べると、EFSのハザードレシオは0.58で、こちらは治験医評価なので単純には比較できないものの、まあ似たようなもの。違いはKeytrudaは共同主評価項目である全生存期間のハザードレシオが0.72、p=0.0103と、この中間解析に割当てられたアルファの0.0109と比べると高度に有意とは言い難いものの、効果が確認されていること。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2024/Bristol-Myers-Squibb-Announces-Acceptance-of-U.S.-and-EU-Regulatory-Filings-for-Neoadjuvant-Opdivo-nivolumab-and-Chemotherapy-Followed-by-Surgery-and-Adjuvant-Opdivo-in-Resectable-Non-Small-Cell-Lung-Cancer/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【医薬品の安全性】</h4>
<br />
<u>PRAC、パキロビッドと一部の免疫抑制剤の併用注意喚起</u>
<br />
(2024年2月9日発表)
<br />
<br />
EUの薬品審査機関であるEMAのファーマコビジランス・リスク評価委員会、PRACは、ファイザーのCOVID-19治療薬Paxlovid(nirmatrelvir、ritonavir)と狭安全域の免疫抑制剤に関する併用注意/禁忌を再喚起した。致死例を含む深刻な有害事象が報告されているため。医療従事者向けの直接通知(DHCP)を発出する予定。
<br />
<br />
PaxlovidはnirmatrelvirのCYP3A4による代謝を遅らせる目的でritonavirを配合しているため、この酵素に影響される薬を同時服用すると、安全性や効果が変わってしまう可能性がある。曝露が少し増えるだけでも深刻有害事象のリスクが高まる、安全域の狭い薬は特に注意が必要だ。PRACは、プレスリリースの中で、併用する場合は血中濃度を密接且つ定期的に監視すべき薬としてカルシニューリン阻害剤(tacrolimusやciclosporin)やmTOR阻害剤(everolimusやsirolimus)を挙げている。監視できない場合は併用してはいけない。更に、voclosporinが併用禁忌であることも再喚起した。
<br />
<br />
これらの薬は代表的な3A4阻害剤であり、順守されない症例があるのは意外だが、Paxlovidはチェックすべき薬が多すぎるので使い難いという日本の一部医師の声の裏返しなのだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-pharmacovigilance-risk-assessment-committee-prac-5-8-february-2024" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/2/13 </td><td align="left">イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)</td></tr>
<tr><td>24/2/22 </td><td align="left">Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)</td></tr>
<tr><td>24/2/24 </td><td align="left">Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">ロシュのXolair(omalizumab、食物アレルギー適応拡大)</td></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">アストラゼネカのTagrisso(osimertinib、未治療EGFRm+NSCLC)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)</td></tr>
<tr><td>24年3-4月</td><td align="left">ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)</td></tr>
<tr><td>24/3/13</td><td align="left">Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/18 </td><td align="left">Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)</td></tr>
<tr><td>24/3/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>24/3/26</td><td align="left">MSDのMK-7962( sotatercept、肺動脈高血圧症)</td></tr>
<tr><td>24/3/27 </td><td align="left">AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Rocket PharmaceuticalsのRP-L201(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>24/3/5</td><td align="left">MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)</td></tr>
<tr><td>24/3/14</td><td align="left">ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)</td></tr>
<tr><td>24/3/15</td><td align="left">ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-45678529697200146572024-02-03T14:29:00.004+09:002024-03-03T09:14:18.958+09:00第1140回<h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>Vertex、画期的鎮痛剤の第3相が成功 </li>
<li>抗PD-1抗体の腎細胞腫術後補助療法試験が遂に成功 </li>
<li>リジェネロン、抗BCMAxCD3抗体を承認申請 </li>
<li>MAGE標的T細胞療法を滑膜肉腫に承認申請 </li>
<li>ダラキューロ配合剤を新患に適応拡大申請 </li>
<li>BMS、プレヤンジを濾胞性リンパ腫などに効能追加申請 </li>
<li>エンハーツをher2陽性固形癌に適応拡大申請 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>Vertex、画期的鎮痛剤の第3相が成功</u>
<br />
(2024年1月30日発表)
<br />
<br />
Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)はVX-548の第3相中重度疼痛治療試験が良好な結果になったと発表した。年央に承認申請する考え。作用機序は斬新だが効果はオピオイド系合剤と同程度またはそれ以下のようなので、オピオイド不適/嫌悪患者向きというイメージだ。
<br />
<br />
末梢性疼痛のシグナル伝達に関わる電位依存性ナトリウム・チャネル、NaV1.8チャネルを選択的に阻害する経口剤。オピオイドと異なり中枢神経作用がない。第3相試験は、腹壁形成術後の患者1100人超を組入れた偽薬・実薬対照試験、バニオン切除後の1000人超を組入た偽薬・実薬対照試験、そして様々な術後疼痛患者と少数だが手術関連ではない疼痛患者も組入れた、様々な急性疼痛用途で承認を得るための単群試験の3本。試験薬は最初は100mg、その後は50mgを12時間おきに3回、経口投与した。対照試験二本の主評価項目はSPID48という、術後48時間に亘り一定の間隔でNumeric Pain Rating Scale (NPRS) を評価し、時間加重和を求め、偽薬群と比較したもの。最小二乗平均差は腹壁形成術試験が48.4、バニオン切除術試験が29.3となり、どちらも統計的に有意だった。
<br />
<br />
一方、hydrocodone bitartrate(5mg)とacetaminophen(325mg)の両方を6時間おきに7回投与した群と試験薬のSPID48を比較した副次的評価は、最小二乗平均差が各6.6(95%信頼区間-5.4, 18.7)と-20.2(同-32.7, -7.7)となり、どちらもフェールしただけでなく、後者は有意に劣る可能性を示した。
<br />
<br />
話が分かりやすいNPRS自体のベースライン比変化に注目すると、腹壁形成術試験では改善(低下幅)が偽薬群は2.3、試験薬群は3.4、実薬対照群は3.2、バニオン切除術試験では各2.6、3.4、3.6だった。
<br />
<br />
第2相試験の学会発表時に指摘された、偽薬よりは有効だが実薬より優れているようには見えないという評価が裏打ちされた格好だ。
<br />
<br />
リード・インディケーションは急性疼痛のようだが、非オピオイド系鎮痛剤ということなら慢性疼痛のほうが名実ともに需要が大きいかもしれない。糖尿病性末梢神経痛のPOC試験などが既に成功している。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.vrtx.com/news-releases/news-release-details/vertex-announces-positive-results-vx-548-phase-3-program" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>抗PD-1抗体の腎細胞腫術後補助療法試験が遂に成功</u>
<br />
(2024年1月27日発表)
<br />
<br />
MSDはASCO GU(米国臨床腫瘍学会泌尿生殖器癌シンポジウム)でKeytruda(pembrolizumab)の第3相腎細胞腫術後アジュバント試験の全生存期間の解析結果を発表した。これまで多くの抗PD-1/PD-L1抗体がフェールした鬼門だったが、ついに改善に成功した。
<br />
<br />
このKeyNote-564試験は、腎淡明細胞腫の摘出術を受けたが再発リスクが中程度高度または高度と推定される患者を組入れて、200mgを3週毎に最大17回、投与する効果を偽薬と比較した。主目的のDFS(無病生存期間)は中間解析でハザードレシオ(HR)0.68、p=0.001と成功した。この時点では全生存期間はHR0.54、p=0.0164と好ましい方向を指していたものの成功判定基準には達していなかったが、昨年11月の中間解析が成功、今回、HRが0.72であったことが公表された。48ヶ月生存率(推定値)は91.2%と偽薬群の86.0%を上回った。PD-L1陽性(CPS≧1)にも陰性にも好ましい数値が出た。
<br />
<br />
この発表(LBA359)の直前にはBMSのOpdivo(nivolumab)のCheckMate-914試験がフェールしたことが発表された(LBA358)。腎細胞腫を完全/部分切除したが再発リスクが中程度以上と推定された患者を組入れてDFSを偽薬二剤を投与する群と比較したもので、Yervoy(ipilimumab)と併用する便益を検討したパートAは22年にフェールが公表されたが、今回、OpdivoとYervoy偽薬を投与したパートBも偽薬二剤群と大差なかったことが公表された。パートAのHRは0.92、パートBは0.87だった。
<br />
<br />
この二つの試験は患者層も試験薬も類似しており、なぜKeytrudaはDFSも全生存期間も成功し、OpdivoはDFSすらダメだったのか、理解に苦しむ。Opdivoの用法は2週毎に最大12回投与と、投与回数や期間が短いことや、組み入れ条件が若干異なることなどが響いたのかもしれない。
<br />
<br />
Opdivoは腎細胞腫摘出術の前に1回、後に4週毎に9回投与したPROSPER非盲検試験もフェールした。類薬の類似試験ではロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)のIMmotion010試験(3週毎1年間投与)もDFSのHRが0.93、全生存期間は0.97となり、フェールした。こうして見ると、Keytrudaの成功のほうが例外的と言えそうだ。DFSだけでなく全生存期間の解析も成功したことで、採用が増加するかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://conferences.asco.org/gu/abstracts-posters" target="blank">
2024 ASCO GU抄録ダウンロード頁</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>リジェネロン、抗BCMAxCD3抗体を承認申請</u>
<br />
(2024年2月2日発表)
<br />
<br />
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、REGN5458(linvoseltamab)をEUに承認申請し受理されたと発表した。米国でも昨年12月に承認申請していた。BCMAとCD3を架橋する二重特異性抗体で、成人の3種類以上の治療歴を持つ難治/再発多発骨髄腫に用いる。3次以上の治療歴を持つ、または主要三剤に難治の難治/再発多発骨髄腫を組入れた第1/2相のLINKER-MM1試験で、ORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が71%、完全反応率は46%だった。G3以上の有害事象発現率は85%で、サイトカイン放出症候群や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群は少なかったが、感染症などが多く、12%の患者が主として治療時発現感染症により死亡した。
<br />
<br />
第3相は昨年9月にLINKER-MM3試験を開始、やや早期段階の患者におけるPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)を EPdレジメン(elotuzumab、pomalidomide、dexamethasoneの3剤併用)と比較する。成否判明は32年と、かなり遅くなる予定。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.regeneron.com/news-releases/news-release-details/linvoseltamab-receives-ema-filing-acceptance-treatment" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>MAGE標的T細胞療法を滑膜肉腫に承認申請</u>
<br />
(2024年1月31日発表)
<br />
<br />
Adaptimmune(Nasdaq:ADAP)は、FDAがADP-A2M4(afamitresgene autolecel、略称afami-cel)の承認申請を受理したと発表した。優先審査を受け、審査期限は8月4日。
<br />
<br />
MAGE-A4を標的とする高親和性、特異的TCRを患者から採取したT細胞に導入した、T細胞療法。MAGE-A4を発現(腫瘍細胞の30%以上でIHC法2+以上)する進行滑膜肉腫で治療歴のあるHLA-A*02型患者に用いる。MRCL(粘液/円形細胞型脂肪肉腫)も組入れた第2相SPEARHEAD-1試験で一回投与したところ、47人中34%がORR(客観的反応率、独立評価)、太宗を占めた滑膜肉腫では36%だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.adaptimmune.com/investors-and-media/news-center/press-releases/detail/260/adaptimmune-announces-u-s-fda-acceptance-of-biologics" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ダラキューロ配合剤を新患に適応拡大申請</u>
<br />
(2024年1月30日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソンはDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)を自家造血幹細胞移植(HSCT)が適応になる新患多発骨髄腫の薬物補助療法に用いる用法追加をFDAに承認申請した。第3相PERSEUS試験に基づくもので、VRdレジメン(Velcade、Revlimid、dexamethasoneの3剤併用)による導入療法の後にHSCTを行い、その後にRevlimidによる維持療法を施行する標準療法群と比べて、導入療法と維持療法にDarzalexを追加した群のPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが中間解析で0.42となり、p値は中間解析に配賦されたアルファの0.0126を下回る、0.0001未満となった。48ヶ月無進行生存率は84.3%対67.7%と大きく上回った。維持療法期に入った試験薬群の患者の64%は、維持療法を24ヶ月以上施行し、完全反応を達成し、且つ12ヶ月以上MRD(微小残存疾患)が検出不能という条件を充足し、Darzalexによる治療を中止した。
<br />
<br />
G3/4の有害事象は好中球減少症や肺臓炎、下痢などが増加した。
<br />
<br />
Darzalexはジェンマブからライセンスした抗CD38抗体。様々なステージの多発骨髄腫に様々な薬と併用することが米欧日などで承認されている。オリジナルの製剤は点滴静注用だったが、皮下注できるようにしたのがFaspro。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/johnson-johnson-submits-supplemental-biologics-license-application-to-u-s-fda-seeking-approval-of-darzalex-faspro-daratumumab-and-hyaluronidase-fihj-based-regimen-for-the-treatment-of-patients-with-transplant-eligible-newly-diagnosed-multiple-myeloma" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BMS、プレヤンジを濾胞性リンパ腫などに効能追加申請</u>
<br />
(2024年1月30日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブは、Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)の適応拡大を米国と日本で申請し受理されたと発表した。米国の予定適応症は第2相TRANSCEND FL試験に基づき成人の再発/難治濾胞性リンパ腫、そして、第1相TRANSCEND NHL 001試験に基づき成人のBTK阻害剤による治療歴を持つ再発/難治マントル細胞腫。どちらも優先審査指定を受け、審査期限は前者は24年5月23日、後者は同月31日。日本は前者の適応を申請した。
<br />
<br />
CD19を標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に米日欧で承認されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2024/Regulatory-Applications-Accepted-in-the-U.S.-and-Japan-for-Bristol-Myers-Squibbs-Breyanzi-lisocabtagene-maraleucel-in-Relapsed-or-Refractory-Follicular-Lymphoma-FL-and-Relapsed-or-Refractory-Mantle-Cell-Lymphoma-MCL/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>エンハーツをher2陽性固形癌に適応拡大申請</u>
<br />
(2024年1月29日発表)
<br />
<br />
第一三共とアストラゼネカは、米国でEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を成人の切除不能/転移her2陽性固形癌に適応拡大申請し受理されたと発表した。前治療歴を持つ、あるいは他に妥当な治療オプションがない患者に用いることを予定している。優先審査を受け、審査期限は第一三共によると5月30日、アストラゼネカのホームページに掲載されている両社の英文プレスリリースによると24年第2四半期。
<br />
<br />
エビデンスは第2相DESTINY-PanTumor02試験など。この試験はIHC(免疫組織化学染色)法で2+以上の患者を癌種毎に40人程度組入れてORR(客観的反応率、反応が一定期間持続した確認例のみ)を評価したが、承認申請は3+だけだった。2+以上と3+のみのデータを比較すると、子宮内膜腫では57.5%と84.6%、子宮頸癌は50%と75%、卵巣癌は45%と63%、膀胱癌では39%と56%となっており、2+だけのORRはそれほど良くなかったのかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2024/enhertu-granted-priority-review-in-the-us-for-patients-with-metastatic-her2-positive-solid-tumours.html" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<table border="1" cellpadding="4" cellspacing="1" frame="box">
<caption><b></b></caption>
<tbody><tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
<tr><td>24/2/13 </td><td align="left">イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)</td></tr>
<tr><td>24/2/22 </td><td align="left">Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)</td></tr>
<tr><td>24/2/24 </td><td align="left">Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">ロシュのXolair(omalizumab、食物アレルギー適応拡大)</td></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">アストラゼネカのTagrisso(osimertinib、未治療EGFRm+NSCLC)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)</td></tr>
<tr><td>24年3月推</td><td align="left">BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)</td></tr>
<tr><td>24年3-4月</td><td align="left">ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)</td></tr>
<tr><td>24/3/13</td><td align="left">Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)</td></tr>
<tr><td>24/3/14 </td><td align="left">BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)</td></tr>
<tr><td>24/3/18 </td><td align="left">Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)</td></tr>
<tr><td>24/3/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>24/3/26</td><td align="left">MSDのMK-7962( sotatercept、肺動脈高血圧症)</td></tr>
<tr><td>24/3/27 </td><td align="left">AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Rocket PharmaceuticalsのRP-L201(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)</td></tr>
<tr><td>24/3/31</td><td align="left">Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>24/3/5</td><td align="left">MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)</td></tr>
<tr><td>24/3/14</td><td align="left">ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)</td></tr>
<tr><td>24/3/15</td><td align="left">ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)</td></tr>
</tbody></table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-90744964536075890022024-01-27T16:29:00.003+09:002024-01-27T16:29:35.371+09:00第1139回<h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>キイトルーダの尿路上皮腫術後療法試験の成績 </li>
<li>テセントリク・カボメティクス併用試験が遂に成功 </li>
<li>デルゴシチニブが手湿疹第3相でアリトレチノインに勝つ </li>
<li>Ionis、HAE向けアンチセンス薬が第3相も成功 </li>
<li>ギリアド、抗TROP-2ADCの肺癌試験がフェール </li>
<li>CHMP、複合セフェムなどの承認を支持 </li>
<li>CHMP、プソイドエフェドリンの一部禁忌を支持 </li>
<li>FDA、CAR-Tの二次性腫瘍リスクを枠付き警告へ </li>
<li>カービクティの早期使用承認申請は欧米とも委員会に上程へ </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>キイトルーダの尿路上皮腫術後療法試験の成績</u>
<br />
(2024年1月26日発表)
<br />
<br />
MSDは昨年10月にKeytruda(pembrolizumab)の第3相AMBASSADOR/KEYNOTE-123試験で主評価項目の一つを中間解析で達成したと発表したが、詳細がASCO GU(全国臨床腫瘍学会泌尿生殖器癌)で公表された。局在性MIUC(筋層浸潤尿路上皮腫瘍)または局所進行性尿路上皮腫瘍の切除術を受けた患者約700人を組入れて、200mgを3週毎に最大18回投与する効果を検討したところ、DFS(無病生存期間)がメジアン29.0ヶ月と経過観察群の14.0ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.69、p=0.001だった。
<br />
<br />
意外だったのはもう一つの主評価項目である全生存期間。10月のプレスリリースでは未成熟であるため継続観察するとだけ記されていたが、目標(320人)の8割に相当する257人死亡時の中間解析でメジアン生存期間が50.9ヶ月と観察群の55.8ヶ月を下回り、ハザードレシオでも0.98と大差なかった。観察群のうち、再発後にKeytrudaによる治療を受けた患者は22%とそれほど多くない(他の抗PD-1抗体を使ったかもしれないが)。
<br />
<br />
類薬ではBMSのOpdivo(nivolumab)が21年に米国で、22年にはPD-L1陽性に限定だがEUでも、筋層浸潤尿路上皮癌の術後アジュバント療法として承認された。エビデンスはDFSで、全生存期間の延長効果は未だ確認されていない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/mercks-keytruda-pembrolizumab-significantly-improved-disease-free-survival-dfs-as-adjuvant-therapy-versus-observation-in-high-risk-patients-with-localized-muscle-invasive-and-locall/" target="blank">
MSDのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>テセントリク・カボメティクス併用試験が遂に成功</u>
<br />
(2024年1月25日発表)
<br />
<br />
Exelixis(Nasdaq:EXEL)はロシュと提携してVEGF受容体拮抗剤Cabometyx(cabozantinib)と抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)の併用第3相試験を複数の癌で実施し、転移非小細胞性肺癌のCONTACT-01試験は22年にフェールしたが、転移去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)を組入れたCONTACT-02試験の共同主評価項目の一つが23年8月に成功、今回、詳細がASCO GU(全国臨床腫瘍学会泌尿生殖器癌)シンポジウムで発表された。骨盤外軟部組織疾患を併発するmCRPCで最近のホルモン療法薬(NHT:abiraterone、apalutamide、darolutamide、enzalutamide)の一つによる治療歴を持つ患者約500人を組入れて、CabometyxとTecentriqを併用する群と、別のNHT(abirateroneとprednisone併用またはenzalutamide)にスイッチする群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間を比較したもの。DFSのハザードレシオは成功認定時の解析(最初の400人が対象)では0.65、メジアン値は6.3ヶ月対4.2ヶ月。Intent-to-treat(ITT)ベース507人でも各0.64、6.3ヶ月、4.2ヶ月とほぼ同じ結果になった。
<br />
<br />
サブグループ分析では肝臓や骨に転移した患者にも好ましい成績を上げている。
<br />
<br />
もう一つの主評価項目である全生存期間はITTベースの中間解析でハザードレシオ0.79(95%信頼区間0.58-1.07)、メジアン16.7ヶ月対14.6ヶ月と、好ましい方向を示しているが死亡者数が目標の半分弱と未成熟であるため優越性認定基準に到達していない。
<br />
<br />
G3/4治療時発現有害事象の発生率は各群48%と23%、G5は8%と12%だが、両群とも治療関連とは判定されなかった。
<br />
<br />
FDAはPFSに基づく承認に後ろ向きな姿勢を示す事例が散見されるが、Exelixisも、次の全生存期間中間解析結果が年内にまとまるまで適応拡大申請を待つ考えのようだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.exelixis.com/news-releases/news-release-details/exelixis-announces-detailed-results-phase-3-contact-02-pivotal" target="blank">
Exelixisのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>デルゴシチニブが手湿疹第3相でアリトレチノインに勝つ</u>
<br />
(2024年1月24日発表)
<br />
<br />
デンマークのレオ ファーマはdelgocitinibのクリーム製剤を中重度手湿疹治療薬として開発しているが、alitretinoinカプセルと直接比較した第3相DELTA FORCE試験がポジティブな結果になったと発表した。第12週のHECSI(Hand Eczema Severity Index)の改善が有意に上回った。既に第3相偽薬対照試験が二本、成功しており、昨年8月にはEUが販売承認申請を受理した旨のプレスリリースがBusiness Wireで公開された(何故かレオのホームページには掲載されていない)。
<br />
<br />
日本たばこの中重度アトピー性皮膚炎治療薬、コレクチム軟膏のクリーム製剤版で、レオは皮膚外用薬を日本以外で開発販売する権利を14年に取得している。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.businesswire.com/news/home/20240123989016/en/LEO-Pharma-Announces-Positive-Phase-3-Head-to-head-Data-Results-from-DELTA-FORCE-Trial-Comparing-Delgocitinib-Cream-With-Alitretinoin-Capsules-in-Adults-With-Severe-Chronic-Hand-Eczema-CHE" target="blank">
レオのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Ionis、HAE向けアンチセンス薬が第3相も成功</u>
<br />
(2024年1月22日発表)
<br />
<br />
Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)はIONIS-PKK-LRx(donidalorsen)の第3相遺伝性血管浮腫(HAE)試験で主評価項目を達成したと発表した。米国で承認申請する予定。EUでも提携先の大塚製薬が申請準備中。
<br />
<br />
donidalorsenはHAEの原因と目されるカリクレインの前駆体、Prekallikrein(PKK)のRNAを沈黙させるライガンド結合アンチセンス薬。今回のOASIS-HAE試験では12歳以上のHAE患者91人を組入れて、80mgを8週毎または4週毎に皮下注する効果を偽薬と比較した。主評価項目は第1~25週HAE発作頻度。リスク削減率は公表されていないが、偽薬比p値は8週毎投与群が0.004、4週毎投与群は0.001未満だった。
<br />
<br />
参考までに、20人の成人患者に80mgを4週毎皮下注した第2相では、第1~17週のHAE発作頻度が偽薬群より80%少なかった。
<br />
<br />
HAEはカリクレインなどを標的とする様々な新薬が続々と承認されており、donidalorsenが存在価値を示すには効果と安全性が上回ることを立証する必要がありそうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.ionispharma.com/news-releases/news-release-details/ionis-announces-positive-topline-results-phase-3-oasis-hae-study" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ギリアド、抗TROP-2ADCの肺癌試験がフェール</u>
<br />
(2024年1月22日発表)
<br />
<br />
ギリアド・サイエンシズはTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)の第3相EVOKE-01試験で主目的を達成できなかったことを明らかにした。第一三共がアストラゼネカと共同開発している類似薬も似たような試験が手放しで喜べるような結果にならなかった。Trodelvyはある種の乳癌や尿路上皮腫に承認されているが、肺癌は容易な標的ではなさそうだ。
<br />
<br />
EGP1(別名TROP-2)を標的とする抗体とirinotecanの活性代謝物を結合した抗体医薬複合体。20年に米国で、21年にはEUでも、切除不能局所進行/転移トリプル・ネガティブ乳癌の3次治療薬として承認され、23年にはホルモン受容体陽性her2陰性サブタイプに適応拡大した。米国では21年に局所進行/転移尿路上皮腫の3次治療にも加速承認されている。
<br />
<br />
今回の試験は化学療法と抗PD-1/PD-L1抗体による治療歴を持つ転移/進行非小細胞性肺癌603人をTrodelvy群とdocetaxel群に無作為化割付けして全生存期間を比較した。抗PD-1/PD-L1抗体による最終治療に不応だったサブグループにおいてはメジアン生存期間が対照群を3ヶ月上回ったが、応答サブグループではこのような差は見られなかった模様。前者のサブグループ分析はプロトコルで事前に設定した、被験者の6割超を対象とするものなのである程度の意味があるが、アルファの修正はなされていないとわざわざ記されているので、仮に修正したとすると統計的に有意にならない程度なのではないか。
<br />
<br />
第一三共/アストラゼネカのDS-1062(datopotamab deruxtecan)は第3相TROPION-Lung01試験で主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン4.4ヶ月とdocetacel群の3.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.75、統計的に有意だったが、プレスリリースには「臨床的にも意味のある」という最近よく聞くキラー・ワードは付されていなかった。もう一つ残念だったのは全生存期間の中間解析がメジアン12.4ヶ月対11.0ヶ月と小さな差しかなく、ハザードレシオは0.90と一般的な期待水準に達していないことだ。但し、未成熟な解析なので、今後、改善する可能性も残っている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.gilead.com/news/news-details/2024/Gilead-Provides-Update-on-Phase-3-EVOKE-01-Study/default.aspx" target="blank">
ギリアドのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>CHMP、複合セフェムなどの承認を支持</u>
<br />
(2024年1月26日発表)
<br />
<br />
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-committee-medicinal-products-human-use-chmp-22-25-january-2024" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
Exblife(cefepime、enmetazobactam)は第4世代セファロスポリンと、ESBL(基質特異性拡張型ベータ・ラクタマーゼ)産生菌にも有効な新開発のベータ・ラクタマーゼ阻害剤の合剤。成人の複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)、院内感染肺炎(人工呼吸器関連肺炎を含む)、そしてこれらの感染症に伴う菌血症に用いることが支持された。グラム陰性菌による複雑性尿路感染症/急性腎盂腎炎の患者を組入れた第3相でpiperacillinとtazobactamを併用した群と奏効率が非劣性だった。優越性解析も成功した。肺炎におけるエビデンスは上皮被覆液浸透試験のようだ。
<br />
<br />
英国のAdvanz PharmaがフランスのAllecra Therapeuticsから欧州における開発商業化権を取得して承認申請したもの。米国でも昨年6月に承認申請されたので、来月頃に審査結果が出るのではないか。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/exblifep" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
Evive BiotechのRyzneuta(efbemalenograstim alfa)はrhG-CSFとhIgG2の固定領域を融合した長期作用性G-CSF。骨髄以外の癌の化学療法を受ける成人の、化学療法誘導性好中球減少症の罹患期間や熱性好中球減少症のリスクを抑制する。既存の長期作用性G-CSFと異なりポリエチレングリコールにアレルギーを持つ患者にも使いやすい。
<br />
<br />
米国はAurobindo Pharmaの子会社であるAcrotech Biopharmaが商業化権を取得した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/ryzneuta" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
一方、Minoryx TherapeuticsのNezglyal(leriglitazone)は否定的意見となった。CHMPは、主要なエビデンスである第2/3相ADVANCE試験は成人の副腎脊髄ニューロパチー(AMN)患者が対象であり、予定適応症である2歳以上の脳副腎白質ジストロフィー(cALD)とは異なることを理由に挙げている。申請時の会社側プレスリリースではこの二つを含む上位概念であるX染色体関連副腎白質ジストロフィー(X-ALD)用薬と記されていたので意外だ。
<br />
<br />
経口PPARガンマ阻害剤。ADVANCE試験で主目的の6分歩行テストがフェールしたが、同社はサブグループ分析に注目し承認申請を断行した。米国ではcALDの第3相試験を開始、死亡したり、寝たきり/永続的呼吸補助になるリスクを削減する効果を検討している。cALDはAMNと比べてかなり深刻で余命は3~4年と推定されており、同社は26年ごろに最終解析を予想している。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/nezglyal" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)のSyfovre (pegcetacoplan)も否定的意見となった。米国では23年にAMD(加齢性黄斑変性)の合併症である地図状萎縮の治療薬として承認されたが、CHMPは、網膜病変の拡大が偽薬より小さいだけでは足りず、臨床的に意味のある便益が必要と判断した。他の種類のAMDや炎症を発症するリスクも懸念した。
<br />
<br />
Syfovreは米国で承認後に網膜血管炎などの有害事象が報告され、学会が警告した。一部の19ゲージ フィルター・ニードルに内部構造ムラがあった模様で、18ゲージを用いるよう呼びかけられたが、網膜血管炎との関連性は明らかではない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/EPAR/syfovre" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
PTC Therapeutics(NASDAQ: PTCT)のTranslarna(ataluren)は14年にEUでデュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー用薬として条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験がフェールしたため、昨年9月にCHMPが条件付き承認を更新しないよう勧告した。会社側は再審を請求したが、今回、非更新勧告を維持した。臨床試験で歩行能力改善採用が見られず、ジストロフィンを増やす作用も見られなかった。会社側は使用した患者と使用していない患者のレジストリー・データの比較分析も提出したが、CHMPは病因や治療方法が異なるため比較できないと判定した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/ema-confirms-recommendation-non-renewal-authorisation-duchenne-muscular-dystrophy-medicine-translarna" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
適応拡大が支持されたのは、
<br />
<br />
・BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel):3クラスによる2次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の成人の再発/難治多発骨髄腫(3クラス3次以上から変更)
<br />
・Swedish Orphan BiovitrumのAspaveli(pegcetacoplan):発作性夜間ヘモグロビン尿症(C5阻害剤歴を持つ患者という限定を解除)
<br />
・イーライリリーのRetsevmo(selpercatinib):進行RET融合陽性甲状腺癌(VEGF受容体阻害剤歴のある成人という限定を解除、放射性ヨードが適応になる患者は放射性ヨード難治、という条件を追加)
<br />
・ファイザーのPrevnar 20:小児適応追加(6週から17歳、肺炎球菌による侵襲性疾患と中耳炎の予防)
<br />
<br />
<h4>【医薬品の安全性】</h4>
<br />
<u>CHMP、プソイドエフェドリンの一部禁忌を支持</u>
<br />
(2024年月日発表)
<br />
<br />
既報の通り、EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品安全性監視・リスク評価委員会、PRACは、昨年12月、Pseudoephedrine配合剤のレーベル変更を勧告した。風邪や鼻炎による鼻詰まりの治療薬として市販薬を含めて広く普及しているが、PRES(可逆性後頭葉白質脳症)やPCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)の副作用例が報告されていることから、疑われる症状が現れたら即座に服用を止めて受診するよう処方時に指示する。重度/管理不良の高血圧症や急性/慢性の腎臓疾患/腎不全の患者に投与すべきでない。
<br />
<br />
今回、CHMPはPRACの勧告に同意し、欧州委員会に禁忌追加などを勧告すると発表した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/ema-confirms-measures-minimise-risk-serious-side-effects-medicines-containing-pseudoephedrine" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>FDA、CAR-Tの二次性腫瘍リスクを枠付き警告へ</u>
<br />
(2024年1月19日付)
<br />
<br />
FDAはCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)製品のメーカーにレーベル改訂を要請した。入院/致死例を含む深刻な二次性T細胞腫瘍を枠付き警告するよう求めている。当該製品を含む、BCMAあるいはCD19を標的とする遺伝子組み換え自家T細胞免疫療法による治療後に、T細胞腫瘍が発生した症例がある旨、記載する。
<br />
<br />
FDAの生物学的製剤を対象とする安全性や入手可能性に関する情報サイトに安全性レーベル変更通知書簡がアップロードされ、判明した。対象製品は、BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel)とBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)、Legend Biotech/ジョンソン・エンド・ジョンソンのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)、ノバルティスのKymriah(tisagenlecleucel)、ギリアド・サイエンシズのYescarta(axicabtagene ciloleucel)とTecartus(brexucabtagene autoleucel)。
<br />
<br />
Tecartusはひと悶着あった模様で、筆者が当該サイトにアクセスした時点ではTecartusだけ見当たらなかったが、翌日、再びアクセスしたところ、1月23日付の書簡が載っていた。各種報道によると、Tecartusは投与後のT細胞腫瘍症例が報告されていないことを踏まえて、最初に公開された書簡では、Tecartusなどの製品で起こり得ると記されていたが、他の製品では既に報告されていることに配慮したのか、修正された書簡では、他の製品のレーベルと同様に、このクラスの薬で症例がある旨の文言に変わった。
<br />
。
<br />
<br />
CAR-Tと二次性T細胞腫瘍の因果関係は明確ではない。CAR-T投与の下準備として免疫細胞を枯渇させる目的で投与する別の抗癌剤も二次性腫瘍のリスクを伴う。一方で、二次性T細胞腫瘍の遺伝子からCAR-Tの導入遺伝子が検出された症例も数例あるようだ。
<br />
<br />
発生頻度は低く、FDAは、少なくとも承認されている用途用法に関しては、便益が危険を上回ると判定している。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/safety-availability-biologics/2024-safety-and-availability-communications" target="blank">
FDAの生物学的製剤安全性/入手可能性情報サイト</a>
<br />
<br />
<br />
<u>カービクティの早期使用承認申請は欧米とも委員会に上程へ</u>
<br />
(2024年1月23日公表)
<br />
<br />
Legend Biotech(Nasdaq:LEGN)がJanssen Biotechと共同開発販売しているCAR-T療法、Carvykti(ciltacabtagene autoleucel)は、多発骨髄腫の二次以降の治療薬として欧米で適応拡大申請されているが、どちらも専門家委員会に上程されることが判明した。Legend社がSEC(米国証券取引委員会)にform 6-Kを提出して開示した。米国はODAC(腫瘍学諮問委員会)、EUはSAG-O(科学的諮問グループ:腫瘍学)が検討する見込み。日程は未定。
<br />
<br />
議題は不明だが、おそらく、上記の二次性T細胞腫瘍リスクと推測される。現状、CAR-Tは最後の手段としての位置づけなので、治療をあきらめるのとどちらが良いか、判断することになるが、二次治療となると、他の複数の薬との比較になる。エビデンスとなるCARTITUDE-4試験では、有害事象による死亡が208人中10人と、PVdまたはDPdレジメンを用いた対照群の211人中5人を上回った。癌の進行などによるものなどを含む全死亡は39人対46人で若干下回っているので、便益が危険を上回っているようにも感じられるが、入院なども含む全体像は明らかではない。
<br />
<br />
Carvyktiと同様にBCMAを標的とする多発骨髄腫用CAR-Tでは、ブリストル マイヤーズ スクイブが申請したAbecma(idecabtagene vicleucel)の三次治療適応拡大申請も、日本では12月に承認されたが、米国は諮問委員会上程が決まり審査期限(昨年12月16日)を超過した。Carvyktiと一緒に諮問されるのではないか。上記の通り、CHMPが支持したのは好材料。
<br />
<br />
CAR-Tの早期使用申請では、BMSの慢性リンパ性白血病用薬Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)も適応拡大申請中で、審査期限は3月14日となっており、諮問委員会上程となるか、注目される。
<br />
<br />
尚、FDAは医薬品の諮問委員会招集を見直しているのか、昨年11月17日の肺・アレルギー薬諮問委員会を最後に招集しておらず、今後の日程も一件も発表されていない。
<br />
<br />
リンク:<a href="https://investors.legendbiotech.com/node/8401/html" target="blank">
Legend Biotechのフォーム6-K</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<table border="1" cellpadding="4" cellspacing="1" frame="box">
<caption><b></b></caption>
<tbody><tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
<tr><td>24/2/13 </td><td align="left">イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)</td></tr>
<tr><td>24/2/22 </td><td align="left">Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)</td></tr>
<tr><td>24/2/24 </td><td align="left">Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
</tbody></table><br />
<br /><br /><br />
今週は以上です。
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-35596456519759674812024-01-21T10:59:00.005+09:002024-01-22T08:09:19.775+09:00第1138回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>ASCO GI:MSI-H/dMMR結腸直腸癌にチェックポイント阻害剤併用が大変良い成績 </li>
<li>ASCO GI:ルタテラの一次治療試験が成功 </li>
<li>ASCO GI:イミフィンジのTACE併用試験が成功したが... </li>
<li>ASCO GI:ロシュ、抗PD-L1と抗TIGHTの併用試験が成功したが... </li>
<li>ASCO GI:キノコ成分が第2相膵癌試験で良績 </li>
<li>FDA、JNJの汎FGFR阻害剤を本承認 </li>
<li>CRISPER/Cas9薬がベータサラセミアにも承認 </li>
<li>武田の皮下注用免疫グロブリンが適応拡大 </li>
<li>FDA、プラリアの低カルシウム血症リスクを枠付き警告 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>ASCO GI:MSI-H/dMMR結腸直腸癌にチェックポイント阻害剤併用が大変良い成績</u>
<br />
(2024年1月20日発表)
<br />
<br />
ブリストル・マイヤーズ・スクイブはASCO GI(米国臨床腫瘍学会胃腸癌シンポジウム)で第3相CheckMate-8HW試験の主目的の一つを達成したと発表した。同社は抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と抗CTLA4抗体Yervoy(ipilimumab)の併用レジメンを様々な腫瘍にテストしているが、対照試験の成績としてはこれまでにない程の良績を上げた。
<br />
<br />
抗PD-1抗体は、MSI-H(マイクロサテライト不安定性高)やdMMR(ミスマッチ修復不全)型の、変な蛋白が多く生成され免疫機構の注目を惹きやすい腫瘍に良い成績を挙げている。今回のオープン・レーベル試験はMSI-H/dMMR陽性結腸直腸癌において、異なった免疫チェックポイントに作用するYervoyを併用する便益を検討した。対照群は医師がmFOLFOX-6またはFOLFIRIベースの化学療法から選んで施行した。また、Opdivoだけの群も設定された。
<br />
<br />
一次治療を受ける患者においてOpdivo・Yervoy併用と化学療法を比較した主評価項目は中間解析で成功。PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)はハザード・レシオ0.21(95%信頼区間0.14-0.32)、メジアン値はOY併用群は未達(38.4ヶ月-評価不能)、対照群は5.9ヶ月(4.4-7.8ヶ月)だった。G3/4治療関連有害事象発生率は各群23%と48%だった。
<br />
<br />
二次治療以降の患者も含めてOY併用群とOpdivo単剤群を比較するもう一つの主評価項目は継続追跡中。
<br />
<br />
Opdivoだけより良いのか、という疑問が残っているが、MSDのKeytruda(pembrolizumab)の類似試験であるKeyNote-177試験では、単剤投与群のメジアンPFS(盲検独立中央評価)が16.5ヶ月(5.4-32.4ヶ月)、mFOLFOX-6/FOLFIRIベース化学療法を施行した群が8.2ヶ月(6.1-10.2ヶ月)、ハザード・レシオは0.60(0.45-0.80)だった。
<br />
<br />
ハザードレシオやその信頼区間を見比べるかぎり、OYレジメンのほうがかなり効果が高いのではないかと期待が高まる。
<br />
<br />
尚、Keytrudaの試験では全生存期間の解析は点推定値は良好もp値が0.07とフェールした。対照群の多くが進行後にKeytrudaを用いたため効果が目立たなくなった模様だ。BMSの試験で顕在化するか注目される。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2024/Opdivo-nivolumab-Plus-Yervoy-ipilimumab-Reduced-the-Risk-of-Disease-Progression-or-Death-by-79-Versus-Chemotherapy-in-Patients-with-Microsatellite-Instability-High-or-Mismatch-Repair-Deficient-Metastatic-Colorectal-Cancer-in-CheckMate--8HW-Trial/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://conferences.asco.org/gi/abstracts-posters" target="blank">
2024 ASCO GI抄録ダウンロード頁</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ASCO GI:ルタテラの一次治療試験が成功</u>
<br />
(2024年1月19日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはLutathera(lutetium Lu 177 dotatate/USAN)の第3相NETTER-2試験の成績をASCO GIで発表した。グレード2~3の進行ソマトスタチン受容体陽性GEP-NETs(胃腸膵神経内分泌腫瘍)の一次治療において長期作用性octreotideと併用する効果を長期作用性octreotideの高量とオープン・レーベルで比較したところ、メジアンPFSが各群22.8ヶ月と8.5ヶ月、ハザードレシオは0.26と、大きな改善を見た。
<br />
<br />
Lutatheraはソマトスタチン受容体を通じて細胞内に侵入し局所的に放射線を照射する。欧米日などで承認されていて、米国では今回の用途用法も既に承認されているが、明確なエビデンスが存在していなかったために、一次治療にはそれほど普及していなかった様子だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-lutathera-significantly-reduced-risk-disease-progression-or-death-72-first-line-treatment-patients-advanced-gastroenteropancreatic-neuroendocrine-tumors" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ASCO GI:イミフィンジのTACE併用試験が成功したが...</u>
<br />
(2024年1月19日発表)
<br />
<br />
アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第3相EMERALD-1試験の成績をASCO GIで発表した。肝癌の20~30%を占めるTACE(冠動脈化学閉塞療法)適合の切除不能肝細胞腫616人を組入れて、TACEにImfinziを追加する便益を検討したところ、主評価項目(bevacizumabも追加した群と偽薬だけ追加した群のPFS、盲検独立中央評価)のハザード・レシオが0.77、p=0.032、メジアン値は各15ヶ月と8.2ヶ月と、高度に有意ではないが成功した。G3/4有害事象発生率は各45.5%と23.3%。
<br />
<br />
悩ましいのは副次的評価項目であるImfinziだけ追加した用群の偽薬・TACE併用比が0.94、メジアン値は10ヶ月対8.2ヶ月とフェールしたこと。TACEに血管新生阻害剤を併用する手法は幾つかの試験で効果が示唆されたとNCCN(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインで指摘されている。このため、Imifinzi追加による限界効用はそれほど大きくないのではないか、という疑問がわく。また、過去の進行肝細胞腫の試験でPFSだけでなく全生存期間も改善した3本では、PFSハザードレシオが0.6以下だった。Imfinzi・bevacizumab追加が延命効果に繋がるか、注目される。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2024/imfinzi-with-tace-and-bevacizumab-in-patients-with-hepatocellular-carcinoma-eligible-for-embolisation.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ASCO GI:ロシュ、抗PD-L1と抗TIGHTの併用試験が成功したが...</u>
<br />
(2024年1月18日発表)
<br />
<br />
ロシュはASCO胃腸癌シンポジウム(ASCO GI)でSKYSCRAPER-08試験の結果を発表した。同社の抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)と開発品である抗TIGHT抗体RG6058(tiragolumab)の二剤を「標準療法」に追加する効能を検討したところ、PFS(無進行生存期間、独立評価)も全生存期間も有意に上回った。但し、今日では標準療法が抗PD-1抗体も含む三剤併用に変わっているため臨床的な意義は明確でない。
<br />
<br />
この試験は中国などアジアの施設で切除不能な局所進行性/難治性または転移性の食道扁平上皮腫の一次治療を受ける461人を、paclitaxelとcisplatinの「標準療法」にTecentriq(1200mg)とtiragolumab(600mg)を追加する群と偽薬二剤を追加する群に無作為化割付けした。PFSは各群のメジアン値が6.2ヶ月と5.4ヶ月、ハザードレシオは0.56、全生存期間は各群15.7ヶ月と11.1ヶ月、0.70となった。治療関連有害事象により各群2.6%と0.9%の患者が死亡した。
<br />
<br />
これらの数値をKeytruda(pembrolizumab)のKeyNote-590試験と見比べると、PFSは「標準療法」にKeytrudaを追加したがメジアン6.3ヶ月、偽薬追加群は5.8ヶ月、ハザードレシオは0.65。メジアン生存期間は各群12.4ヶ月と9.8ヶ月、ハザードレシオは0.73だった。メジアン生存期間は今回のほうが大きく増加したが、ハザードレシオで見ると大差ない。PFSはメジアン値もハザードレシオも大きくは変わらない。このため、抗PD-1/L1抗体だけで足りるのではないかという疑問がわく。尚、KeyNote-590はアジアの施設の組入れは53%と、SKYSCRAPER-08より低い。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ascopost.com/news/january-2024/combining-pd-l1-and-tigit-inhibitors-plus-chemotherapy-in-esophageal-cancer/" target="blank">
ASCO Post(SKYSCRAPER-08試験について)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ASCO GI:キノコ成分が第2相膵癌試験で良績</u>
<br />
(2024年1月18日発表)
<br />
<br />
台湾のGolden Biotechnology(TPEX 4132)はHOCENA(antroquinonol)の第2相転移膵癌試験の成績をASCO胃腸癌シンポジウムでポスター発表した。抄録には昨年5月に発表した数値が記されているが、プレスリリースに記されている数値は更に改善している。対照試験ではないため第3相で確認することが望まれる。
<br />
<br />
アントロキノノールは台湾の高山部に生息する固有種、ベニクスノキタケの抽出物。イソプレニル・トランスフェラーゼを阻害しRAS経路に介入する。この第1/2相試験は米韓台の施設で転移膵癌の一次治療を受ける患者を組入れ、nab-paclitaxelとgemcitabineの標準療法に試験薬(一日三回経口投与)を追加する便益を検討した。第2相ポーションでは第1相ポーションで最大耐容量となった300mgを投与した。
<br />
<br />
結果は、メジアン生存期間が14.1ヶ月だった。nab-paclitaxelとgemcitabineの文献データである8.5ヶ月や、適応が若干異なるがFOLFIRINOXの11.1ヶ月と見比べて良好だ。
<br />
<br />
抄録には第2相40人のデータが12.6ヶ月と記されているので、直近ではさらに改善したことになるが、冷静に考えれば、症例数が少なく点推定値がブレやすいことの反映かもしれない。ClinicalTrials.govに記載されている米国の治験参加施設は高名ではなく、典型的な米国患者とは背景が異なるかもしれない。十分な検出力を持つ対照試験で再現されることを期待したい。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.prnewswire.com/news-releases/asco-gi-2024-golden-biotechs-antroquinonol-shows-significantly-prolonged-survival-in-untreated-metastatic-pancreatic-cancer-patients-302038201.html" target="blank">
同社のプレスリリース(PR Newswire)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>FDA、JNJの汎FGFR阻害剤を本承認</u>
<br />
(2024年1月19日発表)
<br />
<br />
FDAはJanssen BiotechのBalversa(erdafitinib)を成人のFGFR3感受性変異を持ち一次以上の全身性治療歴のある局所進行性/転移性尿路上皮腫に用いることを本承認した。19年に加速承認された時の適応と似ているがFGFR2感受性変異が対象外になった。
<br />
<br />
FGFR1~4を阻害する汎FGFR阻害剤で、8mg(忍容なら9mgに増量)を一日一回、経口投与する。エビデンスとなる第3相THOR試験のコフォート1ではメジアン生存期間は12.1ヶ月と、vinflunineまたはdocetaxelを用いた群の7.8ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.64だった。コフォート2では抗PD-1/L1抗体歴のない患者だけを組入れて全生存期間をKeytruda(pembrolizumab)と比較したが、レーベルによると、メジアン値は10.9ヶ月対11.1ヶ月、ハザード・レシオは1.18となり、優越性仮説がフェールした。このため、抗PD-1/L1抗体が適応になる患者はそちらを先に使うよう推奨されている。
<br />
<br />
欧州や日本でもFGFR3感受性変異を持つ尿路上皮腫に承認申請中。
<br />
<br />
08年にジョンソン・エンド・ジョンソンがAstex Therapeutics(後に大塚製薬が買収)からライセンスしたもの。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-erdafitinib-locally-advanced-or-metastatic-urothelial-carcinoma" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>CRISPER/Cas9薬がベータサラセミアにも承認</u>
<br />
(2024年1月16日発表)
<br />
<br />
CRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)とライセンシーのVertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は、夫々に、FDAがCasgevy(exagamglogene autotemcel)を輸血依存ベータ・サラセミアに適応拡大したと発表した。審査期限は3月だったが、難治鎌状赤血球病における初承認の1ヶ月遅れで承認された。患者から採取したCD34陽性細胞の遺伝子をCRISPER/cas9技術で編集し、胎生ヘモグロビンの転写抑制因子を改竄することによって、胎生ヘモグロビンの発現を促し、ベータ鎖に異常のあるヘモグロビンの代わりにする。ベータ・サラセミアの臨床試験では42人中39人が12ヶ月以上、輸血しないで済んだ。残りの3人も7割以上減少した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.crisprtx.com/news-releases/news-release-details/crispr-therapeutics-announces-us-food-and-drug-administration" target="blank">
CRISPRのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>武田の皮下注用免疫グロブリンが適応拡大</u>
<br />
(2024年1月16日発表)
<br />
<br />
武田薬品はFDAが点滴皮下注用免疫グロブリンHyQviaをCIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)の維持療法に用いることを承認したと発表した。点滴静注用製剤による治療が順調に進み投与量が安定している成人患者がスイッチできる。第3相試験ではHyQvia群(modified intent-to-treat解析対象57人)の再発率が14%と偽薬群(同65人)の32%を下回った(p=0.0314)。血栓症が枠付き警告されている(免疫グロブリン製剤のクラス警告)。
<br />
<br />
レーベルに記載された上記の再発率は武田薬品が22年7月にトップライン結果を発表した時の数値やClinicalTrials.gov記載値と異なっている(各群9.7%と31.4%、p=0.0045)。理由は不明だが、ClinicalTrials.govによると薬効解析対象は各群62人と70人となっており、レーベル記述から推測すると、無作為割付された138人のうち投与を受けた全132人のデータを集計したもののようだ。
<br />
<br />
modified intent-to-treat解析結果はClinicalTrials.govに記されていないので、ポスト・ホックなのか、感受性分析なのか、何れにせよ、元々の主評価項目や副次的評価項目ではないのだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.takeda.com/en-us/newsroom/news-releases/2024/us-fda-approves-takedas-hyqvia-as-maintenance-therapy-in-adults-with-chronic-inflammatory-demyelinating-polyneuropathy-cidp" target="blank">
武田のプレスリリース(英文)</a>
<br />
<br />
<h4>【医薬品の安全性】</h4>
<br />
<u>FDA、プラリアの低カルシウム血症リスクを枠付き警告</u>
<br />
(2024年1月19日発表)
<br />
<br />
FDAはアムジェンの骨粗鬆症治療薬Prolia(denosumab)のレーベルを改訂し、進行した慢性腎疾患を併発する会社に投与すると深刻な低カルシウム血症のリスクが高まる旨の枠付き警告を追加した。長期安全性確認試験で確認されたため、警告をステップアップした。当該患者に用いる場合はCKD-MBD(慢性腎疾患患者におけるミネラル・骨障害)を熟知する医療従事者が適否を判断し、もし開始する場合は血中カルシウム量の検査やCKD-MBDの兆候症状を評価する必要がある。
<br />
<br />
需要のうち該当する患者の比率は3%程度である模様。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/safety/medical-product-safety-information/prolia-denosumab-drug-safety-communication-fda-adds-boxed-warning-increased-risk-severe-hypocalcemia" target="blank">
FDAの安全性情報</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<table border="1" cellpadding="4" cellspacing="1" frame="box">
<caption><b></b></caption>
<tbody><tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/1/17 </td><td align="left">MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
<tr><td>24/2/13 </td><td align="left">イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)</td></tr>
<tr><td>24/2/22 </td><td align="left">Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)</td></tr>
<tr><td>24/2/24 </td><td align="left">Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
</tbody></table><br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-8619162971874827252024-01-13T10:08:00.004+09:002024-01-13T10:08:54.437+09:00第1137回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>アルコン、新規作用機序のドライアイ治療薬を承認申請へ </li>
<li>バイエルも非エストロゲン系VMS治療薬を承認申請へ </li>
<li>セムブリックスの一次治療試験が成功 </li>
<li>経口エダラボンのALS試験がフェール </li>
<li>ファイザー、TF標的ADCの本承認切替を申請 </li>
<li>アステラス、画期的新薬の承認がお預けに </li>
<li>キイトルーダの子宮頸癌CRT併用が承認 </li>
<li>EMA:男性がvalproateを服用する場合も要注意 </li>
<li>FDA、GLP-1受容体アゴニストの自殺リスクに否定的 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>アルコン、新規作用機序のドライアイ治療薬を承認申請へ</u>
<br />
(2024年1月9日発表)
<br />
<br />
スイスのアルコン(SIX/NYSE:ALC)は、AR-15512の第3相ドライアイ試験二本で主目的を達成したと発表した。年央に米国で承認申請する考え。
<br />
<br />
ドライアイの治療は人口涙液に加えて、近年はボシュロムのLFA-1阻害剤Xiidra点眼薬(lifitegrast)やOyster Point Pharma(Nasdaq:OYST)のTyrvaya(varenicline)点鼻スプレーなどの画期的新薬が登場してきている。AR-15512はメンソールの誘導体で、瞼や角膜に分布する、蒸発による冷感を感受する冷受容体、TRPM8(transient receptor potential melastatin 8)を作動する。第3相のCOMET-2試験と同3試験は合わせて930人超のドライアイ患者を組入れて0.003%点眼液を一日二回投与し、奏効率(第14日に非麻酔下シルマー検査値が10mm以上改善した患者の比率)を偽薬と比較したところ、p値が0.0001を下回った。オンセットや持続性も良好で、改善は第1日から見られ、第90日でも持続していた。
<br />
<br />
アルコンが22年に株式価値ベース7.7億ドルで買収したAerie Pharmaceuticalsが、その3年前にスペインのAvizorex Pharmaを買収して入手したもの。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.alcon.com/media-release/alcon-announces-positive-topline-results-phase-3-comet-trials-ar-15512-novel-topical" target="blank">
アルコンのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>バイエルも非エストロゲン系VMS治療薬を承認申請へ</u>
<br />
(2024年1月8日発表)
<br />
<br />
バイエルはBAY3427080(elinzanetant)の第3相VMS(血管運動性症状)試験が二本とも成功したと発表した。OASIS-1と2で60mgカプセル2個を一日一回、12週間投与する効果を偽薬と比較したところ、第4週と第12週の中重度ホットフラッシュの頻度と重症度に有意な差があった。QOLなど主要副次的評価項目の解析も成功した。データは今後、発表する。1年安全性確認試験の結果が数ヶ月後に判明するのを待って承認申請に向かう予定。
<br />
<br />
GSKのニューロキニン受容体パイプラインを引き継いでスピンアウトしたKaNDy Therapeuticsを20年に買収して入手した、NK-1,3受容体のデュアル・アンタゴニスト。類薬ではアステラス製薬のNK-3受容体アンタゴニスト、Veozah(fezolinetant)が23年に欧米で承認されたが、肝障害のリスクがあるため定期的に肝機能検査を行う必要がある。また、有害事象に不眠症がリストアップされている。elinzanetantの肝毒性については今回のバイエルのプレスリリースでは特に言及されていない。一方、睡眠障害は副次的薬効評価項目の一つに設定され、偽薬比有意な改善効果が見られた。別途、閉経期睡眠障害の第2相試験も進行中で、第3相も含めて再現されるならば、デュアル・アンタゴニストの強みとしてVeozahと差別化要因になりうる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.bayer.com/media/en-us/bayers-elinzanetant-meets-all-primary-and-key-secondary-endpoints-in-pivotal-oasis-1-and-2-phase-iii-studies/" target="blank">
バイエルのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>セムブリックスの一次治療試験が成功</u>
<br />
(2024年1月8日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはScemblix(asciminib)の第3相新患フィラデルフィア染色体陽性慢性期慢性骨髄性白血病(Ph+CML-CP)試験で主目的を達成したと発表した。データは公表されていないが、類薬と比べて統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。忍容性も良好とのこと。適応拡大申請に向かうだろう。
<br />
<br />
Ph+CMLの代表的な治療薬であるBCR-ABL阻害剤の一つだが、既存薬がATP競合的阻害剤であるのに対して、ABLミリストイル・ポケットを阻害するアロステリック・インヒビターであるため、既存薬に耐性変異を生じた癌にも有効な可能性がある。21~22年に米日欧で承認された。米国では2種類以上の治療歴を持つ、またはT315I変異のある、Ph+CML-CPに加速承認されているが、今回の成功で本承認切替も可能なのではないか。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-scemblix-shows-superior-major-molecular-response-mmr-rates-vs-standard-care-tkis-phase-iii-trial-newly-diagnosed-patients-chronic-myeloid-leukemia" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>経口エダラボンのALS試験がフェール</u>
<br />
(2024年1月10日発表)
<br />
<br />
スペインのFerrer社は欧州の施設で実施したedaravone経口製剤の第3相ALS(筋萎縮性側索硬化症)試験がフェールしたと発表した。100mgを一日一回、48週間投与したが、主評価項目のALSFRS-Rも、主要な副次的評価項目も、偽薬群と大差なかった。
<br />
<br />
edaravoneは田辺三菱製薬が脳梗塞急性期治療薬ラジカットとして日本で実用化、15~17年には日米でALSに適応拡大、22年には日米で経口液新製剤も承認されたが、欧州では未承認。FerrerのFAB122はオランダのTreeway社からライセンスしたもので、田辺三菱とは異なった製剤の模様だ。日本のALS試験が成功し欧州試験がフェールした理由は明らかではないが、ラジカットも脳梗塞用途でも欧米試験はフェールした模様であり、人種や医療風土の影響もあるのかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ferrer.com/en/results-study-ADORE-ALS" target="blank">
Ferrerのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>ファイザー、TF標的ADCの本承認切替を申請</u>
<br />
(2024年1月9日発表)
<br />
<br />
ファイザーはTivdak(tisotumab vedotin-tftv)の本承認切替を申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は24年5月9日。米国外でも承認申請する考えだ。
<br />
<br />
昨年12月に企業価値430億ドルで買収したSeagenがジェンマブから共同開発販売権を取得したTF(組織因子)を標的とする抗体薬物複合体。21年に第2相試験の反応率データなどに基づき難治/転移子宮頸癌に用いることが加速承認された。第3相innovaTV 301試験で1次治療歴を持つ難治/転移子宮頸癌におけるメジアン生存期間が11.5ヶ月と、医師が選んだ化学療法を用いた群の9.5ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.70だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.pfizer.com/Investors/News/news-details/2024/TIVDAK-Supplemental-Biologics-License-Application-Accepted-for-Priority-Review-by-FDA-for-Patients-with-Recurrent-or-Metastatic-Cervical-Cancer/default.aspx" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>アステラス、画期的新薬の承認がお預けに</u>
<br />
(2024年1月9日発表)
<br />
<br />
アステラス製薬は23年に日米欧でzolbetuximabを承認申請したが、米国は審査完了通知を受領した。FDAが生産委託先の査察時に、対応すべき事項を発見したため。薬効や安全性に関する懸念は表明されていない由。
<br />
<br />
承認審査時に査察を行うのは米国だけなので日欧はスルーするかもしれないが、FDAはEUなどとの情報交換を活発化しているため、油断すべきではないだろう。
<br />
<br />
BioNTechの創業者であるUgur Sahin、Ozlem Tureci夫妻が設立したGanymed Pharmaceuticalsを16年に完全子会社化して入手したキメラ抗体で、胃腸線癌の多くで高発現するclaudin 18.2が標的。claudin 18.2陽性her2陰性の切除不能局所進行性/転移性胃・食道胃接合部腺腫の一次治療にmFOLFOX6またはCAPOXレジメンと併用する用途用法で申請された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astellas.com/jp/news/28731" target="blank">
同社のプレスリリース(和文)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>キイトルーダの子宮頸癌CRT併用が承認</u>
<br />
(2024年1月12日発表)
<br />
<br />
FDAはMSDのKeytruda(pembrolizumab)の適応拡大を承認した。FIGO 2014病期分類でステージIII~IVAと判定された未治療の子宮頸癌に、化学放射線療法と併用で200mgを3週サイクルで5回投与し、その後も400mgを6週毎に最大15回投与する。エビデンスとなるKeyNote-A18試験はステージIB2~IIBでリンパ節転移のある患者も組入れたが、このサブグループには十分な効果が見られなかった。このため、FDAはPFS(無進行生存期間)の偽薬追加群比ハザードレシオが0.59だったステージIII~IVAに限定して承認した。全生存期間の解析は未成熟だが、昨年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)での発表によると、ステージIB2~IIBも含む解析でハザードレシオ0.73(95%信頼区間0.49-1.07)と好ましい方向を向いている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-pembrolizumab-chemoradiotherapy-figo-2014-stage-iii-iva-cervical-cancer" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【医薬品の安全性】</h4>
<br />
<u>EMA:男性がvalproateを服用する場合も要注意</u>
<br />
(2024年1月12日発表)
<br />
<br />
EMA(欧州薬品庁)のPRAC(ファーマコビジランス・リスク評価委員会)は抗癲癇薬valproateの警告を強化するよう勧告した。癲癇や双極障害、EUの一部の国では片頭痛にも承認されているが、服用中の女性が出産すると子供の神経発達障害が100人当り30~40人と、高頻度で発生することが知られている。今回、男性服用者の子供もリスクが高まる可能性が浮上した。デンマークなど北欧3国の患者登録データの後顧的研究で、妊娠前3ヶ月間に服用していた男性の子供における発生率が100人当り5人と、lamotrigineまたはlevetiracetam服用例の100人当り3人より高く、ハザードレシオは1.5倍だった。尤も、患者背景や服用期間に偏りがあるため、因果関係が確立したとは言えない。EUはvalproateを処方する医療施設向けにDHPC(直接的医療従事者向け通信)を送付する予定。
<br />
<br />
英国は先月、もっと厳しい規制を決定した。55歳以下の男女に新規に処方する場合は、二人以上の専門医が、独立して、他に適切な治療法がない、またはリスクが当てはまらないことを確認することを義務付けた。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/potential-risk-neurodevelopmental-disorders-children-born-men-treated-valproate-medicines-prac-recommends-precautionary-measures" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>FDA、GLP-1受容体アゴニストの自殺リスクに否定的</u>
<br />
(2024年1月11日発表)
<br />
<br />
FDAはGLP-1受容体アゴニストの自殺思慮・実行リスクを検討しているが、予備的な分析では明確な関連性は見つからなかったと発表した。FAERS(FDAの有害事象報告システム)に届出された症例を検討したが、多くの場合、情報は限定的で、他の要素にも影響されうる。臨床試験のデータでも関連性は見られなかった。
<br />
<br />
今後、全てのGLP-1作用剤の臨床試験のメタアナリシスや、Sentinel Systemに登録されている医療保険、薬剤費給付組織、大学病院などの医療記録の分析を行って、結論を出す考え。
<br />
<br />
この問題はEMAも昨年7月に検討を開始した。semaglutideとliraglutaideの曝露2000万人年超における自傷/自殺思慮可能例が150例報告されていた由。一方、Nature Medicine論文によると、TriNetX Analytics Networkの電子医療記録を用いた後顧的コフォート研究ではsemaglutideを用いた二型糖尿病/肥満症患者の自殺思慮リスクは用いなかった患者より低かった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/safety/medical-product-safety-information/certain-type-medicines-approved-type-2-diabetes-and-obesity-drug-safety-communication-update-fdas" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/1/17 </td><td align="left">MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
<tr><td>24/2/13 </td><td align="left">イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)</td></tr>
<tr><td>24/2/22 </td><td align="left">Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)</td></tr>
<tr><td>24/2/24 </td><td align="left">Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
</table><br />
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-31461680356643589292024-01-06T15:42:00.003+09:002024-01-06T15:42:45.179+09:00第1136回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>フロリダ州がカナダから薬を輸入へ </li>
<li>経口剤のサラセミア治療試験が成功 </li>
<li>Anavex社、小児Rett症候群試験は判然としない結果に </li>
<li>アルドース還元酵素阻害剤の糖尿病性心筋症試験がフェール </li>
<li>アルドース還元酵素阻害剤をガラクトース血症に承認申請 </li>
<li>COVID-19予防用抗体をEUA申請 </li>
<li>ニーマン・ピック病C型に再承認申請 </li>
<li>etripamilの承認申請は受理されず </li>
<li>外来治療できる伝染性軟属腫治療薬が承認 </li>
<li>GLP-1作用剤の自殺リスクに関する疫学研究 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>フロリダ州がカナダから薬を輸入へ</u>
<br />
(2024年1月5日発表)
<br />
<br />
FDAはフロリダ州が申請していたカナダから医薬品を輸入するプログラムを認可した。連邦食品医薬品化粧品法の第804節に基づくもので、実際に開始する前に、輸入する薬に関する情報をFDAに提供して認可を得、仕様や基準などがFDAに承認されている薬と同様であることを確認し、添付文書をFDA承認品と一致させなけれなばらない。輸入やコストセーブの進捗、そして、もし発生したら品質面などに関する問題を四半期毎にFDAに報告する。
<br />
<br />
フロリダ州は、まず、HIVなどの慢性疾患の維持療法薬から開始する予定。年間薬剤費を1.8億ドル抑制する考えだ。
<br />
<br />
プログラムが順調に進むかどうか不透明だ。現状で輸入を計画しているのはフロリダ州だけだが、ほかの州も追随するようならば、カナダ政府が、米国向け輸出が増加し国内で供給不足にならないようセーフガードを発動するだろう。製薬会社も黙っていないだろう。EUでは一部の国が他の加盟国から安価な薬を併用輸入しようとしたことがあったが、製薬会社が流通在庫管理を徹底することで余剰を輸出できなくした。
<br />
<br />
FDAの認可は輸入開始から2年間有効。その後も続けるのか不明だが、Ron DeSantisフロリダ州知事は次期大統領選に出馬を表明しており、今回のアクションも政治的プロパガンダの一つと目されているので、2年後に思いを寄せる論者は不在のようだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-authorizes-floridas-drug-importation-program" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.flgov.com/2024/01/05/florida-becomes-first-in-the-nation-to-have-canadian-drug-importation-program-approved-by-fda/" target="blank">
Ron DeSantisフロリダ州知事のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>経口剤のサラセミア治療試験が成功</u>
<br />
(2024年1月3日発表)
<br />
<br />
Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)はPyrukynd(mitapivat)の第3相非輸血依存サラセミア試験で主目的を達成した。グロビンのベータ鎖またはアルファ鎖に変異を持つ成人患者194人を2対1割付けして100mgまたは偽薬を一日二回、経口投与したところ、ヘモグロビン応答率(第12週から24週までの平均値が1g/dL以上増加)が各群42.3%と1.6%となり、統計的に有意な差があった。すべてのサブグループ分析や副次的評価項目の疲労評価尺度なども成功した。離脱に繋がる有害事象の発生率は各群3.1%とゼロだった。
<br />
<br />
Pyrukyndはピルビン酸キナーゼRのアロステリック・アクティベイター。22年に欧米で成人のピルビン酸キナーゼ欠乏症における貧血症治療薬として承認された。輸血依存サラセミアの第3相は年央に開票する見込み。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.agios.com/news-releases/news-release-details/agios-announces-phase-3-energize-study-mitapivat-met-primary" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Anavex社、小児Rett症候群試験は判然としない結果に</u>
<br />
(2024年1月2日発表)
<br />
<br />
Anavex Life Sciences(Nasdaq:AVXL)はANAVEX2-73(blarcamesine)の第2/3相EXCELLENCE試験のトップラインを公表した。5~17歳のRett症候群92人を30mg群と偽薬群に2対1割付けして12週間治療したもので、プレスリリースの記述が不明瞭なところもあるが、結論は、偽薬群の成績が予想以上で望ましい結果を得られなかったということのようだ。
<br />
<br />
主評価項目の一つであるRSBQ(Rett Syndrome Behavioural Questionnaire、介護者評価)は改善が示されたが、事前に特定していた事後的なMMRM(mixed-effect model for repeated measure)法による評価は各群12.93点と8.32点低下となり、p=0.063とフェールした。もう一つのCGI-I(Clinical Global Impression-Improvement)はフェールした。安全性に関する新たな問題は見られなかった。
<br />
<br />
Rett症候群はMECP2などの遺伝子変異による神経系発達障害。blarcamesineはsigma-1受容体のアゴニスト。経口液を一日一回、投与する。英豪のMECP2変異陽性成人Rett患者33人を組入れた第3相AVATAR試験でRSBQレスポンダー率やCGI-Iが偽薬群を有意に上回った。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.anavex.com/post/anavex-life-sciences-provides-update-rett-syndrome-program" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>アルドース還元酵素阻害剤の糖尿病性心筋症試験がフェール</u>
<br />
(2024年1月4日発表)
<br />
<br />
Applied Therapeutics(Nasdaq:APLT)はAT-001(caficrestat)の第3相二型糖尿病性心筋症治療試験がフェールしたと発表した。SGLT2阻害剤もGLP-1作用剤も用いていないサブグループではp=0.04とそこそこの数値が出た由だが、開発続行よりも開発パートナー探しを優先する考え。
<br />
<br />
最高酸素摂取量(ピークVO2)が標準値の75%未満で心不全を合併するリスクのある患者675人を偽薬、1g、または1.5gを一日二回経口投与する群に無作為化割付けして15ヶ月間治療し、心肺運動負荷試験でピークVO2の低下を比較したところ、1.5g群はkg/分当り0.01mL、偽薬群は0.31mLで、p=0.21とフェールした。SGLT2阻害剤/GLP-1作用剤非使用サブグループでは同0.08mL改善し、偽薬群は0.54mL低下した。深刻な有害事象の発生率は各群17.3%と14.3%だった。1g群のデータは公表されていない。
<br />
<br />
アルドース還元酵素阻害剤パイプラインの一つで、もう一つは、前日に、欧米承認申請が公表された(次項)。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.appliedtherapeutics.com/news-releases/news-release-details/applied-therapeutics-announces-topline-results-arise-hf-phase-3" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>アルドース還元酵素阻害剤をガラクトース血症に承認申請</u>
<br />
(2024年1月3日発表)
<br />
<br />
Applied Therapeutics(Nasdaq:APLT)は12月に米国でAT-007(govorestat)を古典的ガラクトース血症の治療薬として承認申請したと発表した。EUでも承認申請し既に受理された。
<br />
<br />
ガラクトース血症はガラクトースをグルコースに分解する酵素の欠乏によりガラクチトールなどの毒性代謝物が蓄積する。患者数は米国はGALT欠損型(古典的ガラクトース血症)が3000人、EUではGALK欠損型と合わせて4000人と推定されている。AT-007はガラクトースをガラクチトールに代謝するアルドース還元酵素の阻害剤。2~17歳の古典的ガラクトース血症47人を組入れて、OWLS-2やBASC-3のサブスケールを抜粋して作成した複合評価項目の改善度合いを検討したが、フェールした。但し、発語や聞取りに関するサブスケールを除外した解析ではp=0.0205と、それらしい結果が出た。難しい所だが、超希少疾患であることなどから、規制機関は門前払いすべきでないと考えたのではないか。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.appliedtherapeutics.com/news-releases/news-release-details/applied-therapeutics-announces-maa-validation-and-nda-submission" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>COVID-19予防用抗体をEUA申請</u>
<br />
(2024年1月3日発表)
<br />
<br />
Invivyd(Nasdaq:IVVD)はVYD222を免疫力が低下した青年成人のCOVID-19感染予防薬としてEUA(非常時使用認可)するようFDAに申請した。薬効のエビデンスは薬物動態とin vitroのIC50データで、感染予防効果が確立している類薬、ADG20(adintrevimab)のデータとブリッジングした。
<br />
<br />
ADG20は免疫力不問の第2/3相試験で曝露前の成人の症候性COVID-19感染症リスクを有意に抑制し、曝露後予防コフォートや軽中等症治療試験も良好な成績を上げたが、その頃に流行の主流となったBA.2系統に対する力価が低いため、EUA申請には至らなかった。
<br />
<br />
VYD222はADG20よりも更にスペクトラムを拡大した抗SARS-CoV-2抗体で、現在米国で感染例の半分近くを占めるJN.1系統にも高力価を示している。第3相CANOPY試験で免疫力低下300人と高リスク450人の二つのコフォートにおける曝露前予防効果を検討しているが、前者のコフォートにおける中和抗体力価(薬物動態とin vitro試験におけるXBB.1.5系統に対するIC50から推定)とADG20の力価及び症候性感染予防効果をブリッジングしてEUA申請した。プレスリリースによると、VYD222の試験でも感染予防効果の兆候は見られるようだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.invivyd.com/news-releases/news-release-details/invivyd-submits-request-emergency-use-authorization-eua-us-fda" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ニーマン・ピック病C型に再承認申請</u>
<br />
(2023年12月27日発表)
<br />
<br />
Zevra Therapeutics(NasdaqGS:ZVRA)はarimoclomolをニーマン・ピック病C型(NPC)用薬として12月22日にFDAに再承認申請したと27日に発表した。希少疾患なので薬効や安全性の要求水準が低くなるが、エビデンスが薄弱で、migulstatをこの用途でも承認しているEUですら、承認しなかったので、見通しは楽観できない。
<br />
<br />
NPCはライソゾーム疾患の一つ。細胞内コレステロール輸送に関わるNPC遺伝子の変異により、肝臓、脾臓、神経細胞などにスフィンゴミエリン、コレステロール、糖脂質などが蓄積、組織に障害を与える。arimoclomolはヒート・ショック・プロテイン増幅剤。作用機序は明確ではないが、不要蛋白のスクラップを促すファーマシューティカル・シャペロンとして機能すると考えられているようだ。
<br />
<br />
エビデンスは欧米の2~18歳の患者50人を偽薬と2対1割付けした第2/3相試験。体重に応じた量を一日3回、12ヶ月間投与した。主評価項目の一つであるNPC-CSS(Clinical Severity Scale)のうち五つのドメインを集計したものは0.5点の悪化に留まり、偽薬群の1.9点を下回ったが、p=0.0506と僅かに有意水準を下回った。欧州申請に向けた、miglustat副作用サブグループでは-0.2と1.8でp=0.0071だった。FDAのアドバイスで採用した共同主評価項目であるCGI-Iは58.8%対56.3%だった。有害事象による治験離脱発生率は8.8%とゼロだった。
<br />
<br />
後に刊行された治験論文では数値が若干変動しp=0.04と閾値をクリアしているが、どちらにせよボーダーライン上であることに変わりはない。一巡目の審査では承認されず、今回、5ドメインNPC-CSSの有効性の裏付けや作用機序に関する追加資料、上記試験の4年延長試験のデータなどを追加提出した。
<br />
<br />
arimoclomolは元々、ハンガリーで糖尿病治療薬候補として発見された模様だ。米国のCytRXが権利を取得、ライセンスを取得したデンマークのOrphazymeが上記第2/3相試験を実施し欧米で承認申請したが、承認されず、22年に事業資産をZevraに譲渡した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.zevra.com/news-releases/news-release-details/zevra-therapeutics-announces-resubmission-arimoclomol-new-drug" target="blank">
Zevraのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>etripamilの承認申請は受理されず</u>
<br />
(2023年12月26日発表)
<br />
<br />
カナダのMilestone Pharmaceuticals(Nasdaq:MIST)は10月に米国でetripamil点鼻用スプレーを発作性上室性頻拍(PSVT)の治療薬として承認申請したが、受理されなかった。FDAは第3相試験における有害事象の記録時期を明確化するよう求める一方で、副作用自体に関する懸念は表明していない由。FDAと対処方法を相談して再申請することになる。
<br />
<br />
etripamilは短期作用性カルシウム・チャネル・ブロッカー。一本目の第3相は洞調律達成期限を5時間とゆるゆるにしたためかメジアン値では25分対50分と大きな差があったがp=0.12だった。そこで二本目のRAPID試験では30分に短縮したところ、洞調律達成率が64%と偽薬群の31%を大きく上回り、ハザードレシオ2.62、統計的に有意だった。様々な症状も改善した。薬物関連深刻有害事象は発生しなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.milestonepharma.com/news-releases/news-release-details/milestone-pharmaceuticals-receives-refusal-file-letter-us-fda" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>外来治療できる伝染性軟属腫治療薬が承認</u>
<br />
(2024年1月5日発表)
<br />
<br />
Ligand Pharmaceuticals(Nasdaq:LGND)はFDAがZelsuvmi(berdazimer)を1歳以上の伝染性軟属腫の治療薬として承認したと発表した。局所性ゲル製剤で、生後6ヶ月以上の患者891人に一日一回、12週間投与したB-SIMPLE4試験で完解率が32.4%と偽薬群の19.7%を上回った。有害事象は塗布箇所反応や紅斑など。深刻有害事象は発生しなかった。
<br />
<br />
berdazimerは一酸化窒素放出剤。Novan社が開発し承認申請したが、経営破綻によりLigandに資産譲渡した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.ligand.com/news-and-events/press-releases/news-details/2024/U.S.-Food-and-Drug-Administration-Approves-ZELSUVMI-as-a-First-in-Class-Medication-for-the-Treatment-of-Molluscum-Contagiosum/default.aspx" target="blank">
Ligandのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【医薬品の安全性】</h4>
<br />
<u>GLP-1作用剤の自殺リスクに関する疫学研究</u>
<br />
(2024年1月5日発表)
<br />
<br />
FDAやEMAはGLP-1作用剤の安全性を再検討中だが、その一項目である自殺リスクに関する大規模な疫学研究の論文がNature Medicineで刊行された。日本を含む多くの国の電子医療記録を解析する、TriNetX Analytics Networkのプラットフォームを利用した後顧的コフォート研究で、ノボ ノルディスクのsemaglutide製品の利用者と他のクラスの薬の利用者の自殺思慮リスクを比較したところ、肥満/オーバーウェイトの240,618人ではハザードレシオが0.27とむしろ低かった。後顧的研究は症状兆候を見落とすリスクが前向き研究より高いが、当該リスクが比較的小さいであろう、自殺思慮歴のある患者だけの解析でも0.44と、望ましい結果が出ている。二型糖尿病患者1,589,855人の解析でも同様な結果になった。
<br />
<br />
この論文だけでは答えは出ないだろうが、取り敢えず、好ましい結果だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.nature.com/articles/s41591-023-02672-2" target="blank">
Wangらの研究論文要旨(Nature Medicine)</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/1/12 </td><td align="left">アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/17 </td><td align="left">MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)</td></tr>
<tr><td>24/1/20 </td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
<tr><td>24/2/13 </td><td align="left">イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)</td></tr>
<tr><td>24/2/22 </td><td align="left">Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)</td></tr>
<tr><td>24/2/24 </td><td align="left">Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
</table><br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-8467362316521395212023-12-30T10:47:00.002+09:002023-12-30T10:47:58.828+09:00第1135回<h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>Cytokineticsも心ミオシン阻害剤のoHCM試験が成功 </li>
<li>長期作用性GLP-2作用剤を承認申請 </li>
<li>抗her3ADCを承認申請 </li>
<li>先天性高インスリン血症用薬の承認はお預け </li>
<li>ルマケラス、市販後コミットメント達成とは認められず </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>Cytokineticsも心ミオシン阻害剤のoHCM試験が成功</u>
<br />
(2023年12月27日発表)
<br />
<br />
Cytokinetics(Nasdaq:CYTK)はCK-3773274(aficamten)の第3相SEQUOIA-HCM試験がポジティブな結果になったと発表した。成人の左心室流出閉塞を伴う症候性肥大性心筋症(HCM)患者270人を組入れて、一日一回、経口投与し、第24週にCPET(心肺運動負荷試験)を行ってpVO2(最高酸素摂取量)をベースラインと比較したところ、偽薬群を1.74mL/kg/分、上回った。事前に設定されたサブグループ分析も、副次的評価項目も、良好な結果になった。治療時発現深刻有害事象の発生率は5.6%(偽薬群は9.3%)。LVEF(左室駆出率)が50%を下回った症例は5人(3.5%)で偽薬群の1人(0.7%)を上回った。
<br />
<br />
心ミオシン阻害剤はブリストル マイヤーズ スクイブのCamzyos(mavacamten)が22~23年に米欧で承認されている。臨床試験でLVEF低下リスクが顕在化し、55%以上の患者だけに用いることや、治療中に50%を下回ったり心不全症状が出たら投与を中断するプロトコルが導入された。心不全治療薬の副作用が心不全というのでは釈然とせず、もしaficamtenのリスクが小さいなら注目できるが、今回の試験だけでは何とも言えないだろう。一次治療単剤投与metoprolol対照MAPLE-HCM試験や非閉塞性HCMを組み入れるACACIA-HCM試験のデータが25~26年にまとまれば明確になるのではないか。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.cytokinetics.com/news-releases/news-release-details/cytokinetics-announces-positive-results-sequoia-hcm-pivotal" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>長期作用性GLP-2作用剤を承認申請</u>
<br />
(2023年12月23日発表)
<br />
<br />
デンマークのZealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)は米国でZP 1848(glepaglutide)を承認申請した。GLP-2のアミノ酸の一部を改変し作用を長期化したもので、成人の非経口栄養サポート下の短腸症候群に用いる。武田薬品のGattex(レベスティブ、teduglutide)が米国では11年前に承認されているが、毎日皮下注ではなく週二回で足りる。第3相EASE 1試験では10mg週二回投与群の週間非経口栄養量がベースライン比5.1L減少し、偽薬群の2.8L減少を有意に上回った。週一回投与群も3.1L減少したが有意水準には届かなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.globenewswire.com/news-release/2023/12/22/2800463/0/en/Zealand-Pharma-submits-New-Drug-Application-to-the-US-FDA-for-glepaglutide-in-short-bowel-syndrome.html" target="blank">
同社のプレスリリース(GlobeNewswire)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>抗her3ADCを承認申請</u>
<br />
(2023年12月25日発表)
<br />
<br />
第一三共と開発販売パートナーのMSDは、米国でpatritumab deruxtecanをher2変異のある局所進行/転移非小細胞性肺癌の3次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は24年6月26日。
<br />
<br />
第一三共が08年に買収したU3 PharmaがアムジェンのXenomouse技術を用いて創製した、her3を標的とする抗体薬物複合体。9月のWCLC(世界肺癌会議)発表によると、EGFR阻害剤と白金ベース化学療法歴を持つEGFR変異陽性非小細胞性肺癌225人を組入れた第2相HERTHENA-Lung01試験で、5.6mg/kg群のORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が29.8%、メジアン反応持続期間は6.4ヶ月だった。G3以上の治療時発現有害事象発生率は65%、間質性肺疾患の発生数はG3が3人、G5が1人だった。用量制限的毒性は血小板減少症、アミノトランスフェラーゼ上昇など。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/patritumab-deruxtecan-granted-priority-review-in-the-u-s-for-certain-patients-with-previously-treated-locally-advanced-or-metastatic-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer/" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>先天性高インスリン血症用薬の承認はお預け</u>
<br />
(2023年12月23日発表)
<br />
<br />
デンマークのZealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)は米国でZegalogue(dasiglucagon)を乳幼児の先天性高インスリン血症の治療薬として適応拡大申請していたが、審査完了通知を受領した。FDAが生産委託先の査察時に改善すべき点を指摘したため。効果や安全性に関する指摘はなかった由。委託先が指摘事項に対処した上で24年上期に回答する考え。
<br />
<br />
持続皮下注用グルカゴン・アナログで6歳以上の糖尿病患者の重度低血糖症治療薬として米国で21年に承認された。ペン型なので素早く使える。昨年6月に適応拡大申請され、生後7日以降の小児に最大3週間連続投与する用法用途だけ優先審査指定されたが、迅速承認とはならなかった。ウェラブル・ポンプによる3週間以上の連続投与はFDAがデータの追加分析を求めたため、24年上期に提出する考え。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.globenewswire.com/news-release/2023/12/23/2800891/0/en/U-S-Food-and-Drug-Administration-issues-Complete-Response-Letter-for-dasiglucagon-in-congenital-hyperinsulinism-for-up-to-three-weeks-of-dosing-due-to-inspection-findings-at-third-.html" target="blank">
同社のプレスリリース(GlobeNewswire)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ルマケラス、市販後コミットメント達成とは認められず</u>
<br />
(2023年12月26日発表)
<br />
<br />
アムジェンのKRAS-G12C阻害剤Lumakras(sotorasib)は21年に米国でKRAS-G12C変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌の二次治療薬として加速承認された。翌年、市販後コミットメントである第3相CodeBreaK 200試験が成功、アムジェンは本承認切替などを申請していたが審査完了通知を受領した。10月の諮問委員会でも12人中10人が承認に反対したので驚きではない。FDAは新たな市販後コミットメント試験を28年2月までに完了するよう求めた。
<br />
<br />
上記第3相は加速承認と同じ適応のdocetaxel対照試験。メジアンPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が5.6ヶ月と対照群の4.5ヶ月を上回りハザードレシオは0.66だった。メジアン値の差は5週程度だが、プロトコルにおける定期検査頻度は6週毎だったので、医師が前倒しで造影検査を行うかどうかで変わってしまう程度の差と言えないこともない。主観の入る余地が小さいメジアン生存期間は10.6ヶ月と11.3ヶ月で3週ほど見劣りし、ハザードレシオは1.01だった。クロスオーバーの影響や検出力の問題も影を落としている模様なので、はっきりしたことは分からない。FDAは無作為化割付の有効性やドロップアウトに関する群間の偏りなど実行面での問題点も指摘した、
<br />
<br />
もう一つの宿題であった至適用量の再検討に関しては、従来通り960mg一日一回で決着した模様だ。CodeBreak 300試験でPFS(同上)が240mg群はメジアン3.9ヶ月、960mg群は5.6ヶ月だった。Lonsurf(trifluridine、tipiracil)またはStivarga(regorafenib)を投与した標準療法群は2.2ヶ月で、ハザードレシオは各0.58と0.49だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.amgen.com/newsroom/press-releases/2023/12/amgen-provides-regulatory-update-on-status-of-lumakras-sotorasib" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>24/1/5</td><td align="left">Novan(Ligand Pharmaceuticals)のberdazimer(伝染性軟属腫)</td></tr>
<tr><td>24/1/12 </td><td align="left">アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/17 </td><td align="left">MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)</td></tr>
<tr><td>24/1/20 </td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
<tr><td>24/2/13 </td><td align="left">イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)</td></tr>
<tr><td>24/2/22 </td><td align="left">Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)</td></tr>
<tr><td>24/2/24 </td><td align="left">Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)</td></tr>
<tr><td>24/2/26 </td><td align="left">Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)</td></tr>
</table><br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-41839904399196581402023-12-23T14:22:00.000+09:002023-12-23T14:22:27.560+09:00第1134回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li><u>シクロベンザプリンの線維筋痛症試験が成功 </u></li>
<li>GSK、抗PD-1抗体とPARP1/2阻害剤の併用で良績 </li>
<li>PSMA陽性前立腺癌試験が成功 </li>
<li>ヒフデュラの適応拡大試験がまたフェール </li>
<li>サノフィ、なけなしのADCが開発中止に </li>
<li>AlloVir、T細胞療法の第3相3本が総崩れ </li>
<li>JNJ、デュアルEGFRブロック療法を承認申請 </li>
<li>MSD、21価肺炎球菌ワクチンを承認申請 </li>
<li>ロシュ、ゾレアを食物アレルギー予防に適応拡大申請 </li>
<li>リフヌアは米国ではやはり承認されず </li>
<li>Checkpoint社の免疫チェックポイント阻害剤は審査完了に </li>
<li>TTR-PN用アンチセンス薬が承認 </li>
<li>IgA腎症用薬が初の本承認 </li>
<li>表皮水疱症用薬が承認 </li>
<li>カービクティの二次性血液癌リスクを警告強化 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>シクロベンザプリンの線維筋痛症試験が成功</u>
<br />
(2023年12月20日発表)
<br />
<br />
Tonix Pharmaceuticals(Nasdaq:TNXP)はTNX-102(cyclobenzaprine HCl 、舌下錠)の第3相RESILENT試験が成功したと発表した。線維筋痛患者457人を組入れて、5.6mg(最初の2週間は半量)を就寝前に服用する効果を偽薬と比較したところ、疼痛の数値的評価スケールの改善が1.8と、偽薬群の1.2を有意に上回った。睡眠などに関する副次的評価項目も成功した。有害事象は口の感覚鈍麻など。深刻有害事象は試験薬との関連性がないと評価された腎臓癌と、可能性ありとされた急性膵炎が各1例。
<br />
<br />
3年前に成功発表されたRELEF試験でも1.9対1.5、有意に上回っており、24年下期に承認申請する予定。
<br />
<br />
同社は中枢神経系領域で既存薬の転用(repurpose)を進めている。cyclobenzaprine HCIは筋弛緩剤だが構造が三環系抗鬱剤と類似しており、EULAR(欧州リウマチ学会)は線維筋痛症における睡眠障害に用いることを認めているが、疼痛緩和作用は確認されていなかったようだ。同社は舌下錠を開発することで吸収や生物学的利用率などを向上した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.tonixpharma.com/news-events/press-releases/detail/1443/tonix-pharmaceuticals-announces-highly-statistically" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>GSK、抗PD-1抗体とPARP1/2阻害剤の併用で良績</u>
<br />
(2023年12月18日発表)
<br />
<br />
GSKは抗PD-1抗体Jemperli(dostarlimab-gxly)とZejula(niraparib)を化学療法二剤と併用したRUBY試験のパート2がポジティブな結果になったと発表した。ステージIII/IV原発性進行/難治内膜腫を組入れてcarboplatinとpaclitaxelを併用する標準療法にパート1ではJemperliだけを追加する用法を検討したところ、特にdMMR(ミスマッチ修復機能不全)やMSI-H(マイクロサテライト不安定性高)でPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.28、24ヶ月PFS率61.4%対15.7%と大変良い成績となり、欧米で適応拡大が認められている。今回のパート2では二剤追加群の便益を検討したところ、全体の解析でも、pMMR(ミスマッチ修復機能十分)・MSS(マイクロサテライト安定性)サブグループでも標準療法比で統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を達成した。数値は未発表。全生存期間の成績次第で適応拡大申請に向かいそうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/jemperli-plus-zejula-combination-significantly-improved-progression-free-survival-in-endometrial-cancer-phase-iii-trial/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>PSMA陽性前立腺癌試験が成功</u>
<br />
(2023年12月18日発表)
<br />
<br />
Lantheus(Nasdaq:LNTH)とPOINT Biopharma(Nasdaq:PNT)は、177Lu-PNT2002(lutetium Lu 177 )の第3相mCRPC試験で有意差を確認したと発表した。全生存期間の数値は未だ熟しておらず、次の解析を行ってから承認申請する考え。
<br />
<br />
放射性核種をPSMAに結合するレガンドと結合した局所放射線療法。今回のSPLASH試験では、abirateroneなどのアンドロゲン受容体パスウェイ阻害剤のうち一つ以上による治療に進行し化学療法が不適または拒否する患者を組入れて、8週おきに4回投与する群と、enzalutamideまたはabirateroneをステロイドと併用する群のPFS(無進行生存期間、盲検独立放射線学的中央評価)を比較したところ、メジアン値が各9.5ヶ月と6.0ヶ月、ハザードレシオは0.71で統計的に有意だった。全生存期間の解析は未だ目標の46%しか到達していないため未成熟だが、ハザードレシオ1.11となっている。本試験はクロスオーバー可能で試験薬群の多くが進行後にクロスオーバーしたことが攪乱要因になっているのかもしれないが、この点推定値が真なら別のアンドロゲン受容体パスウェイ阻害剤を使った後に残しておいたほうが良いかもしれない。
<br />
<br />
尤も、22年承認の類薬であるノバルティスのPluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)のデータも概ね同様だ。POINT Biopharmaはイーライリリーが買収で合意していて、株主の応募はあまり進捗していなかったが、この内容なら第三者が高値をオファーする可能性はあまりないだろうから、応募が進むのではないか。
<br />
<br />
Lantheusは22年に本剤とPNT2003の世界商業化権を取得した(アジアの一部地域は対象外)。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.pointbiopharma.com/press-releases/splash-topline-results" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ヒフデュラの適応拡大試験がまたフェール</u>
<br />
(2023年12月20日発表)
<br />
<br />
argenx(Nasdaq:ARGX)はVyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa、hyaluronidase-qvfc) の第3相天疱瘡試験のフェールを発表した。ステロイドだけの群の成績が想定外に良かったことが敗因のようだが、この用途の開発は中止する。
<br />
<br />
中重度の尋常性天疱瘡(PV)190人と落葉状天疱瘡(PF)32人を組入れて、30週内の完全反応率を偽薬と比較した。両群ともステロイドを併用したが、開始用量は治療ガイドラインの推奨より低量で、漸減した。主評価項目のPVサブグループにおける完全反応率は35%、偽薬・ステロイド併用群は30.3%、p=0.60だった。副次的な評価項目もフェールした。
<br />
<br />
この皮下注用薬は11月に慢性免疫性血小板減少症の第3相もフェールした。点滴静注用の製剤を用いた試験は成功したので、共通の適応症である抗AChR抗体陽性全身性重症筋無力症とは何かが違うのかもしれない。今回の第3相は皮下注用だけなので静注用と比較できない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.argenx.com/news/argenx-reports-topline-results-address-study-efgartigimod-sc-pemphigus" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>サノフィ、なけなしのADCが開発中止に</u>
<br />
(2023年12月21日発表)
<br />
<br />
サノフィはSAR408701(tusamitamab ravtansine)の開発中止を発表した。CEACAM5陽性再発性非扁平上皮非小細胞性肺癌の第3相試験を進めてきたが、中間解析でPFS(無進行生存期間)も全生存期間もdocetaxel群を有意に上回らなかった。他のCEACAM5標的抗体医薬複合体にシフトする考え。今回の中止で開発後期のADCがなくなった。
<br />
<br />
<br />
Immunogen(Nasdaq:IMGN)との広範な共同開発プロジェクトの成果。
<br />
リンク:
<a href="https://www.sanofi.com/en/media-room/press-releases/2023/2023-12-21-06-30-00-2799759" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>AlloVir、T細胞療法の第3相3本が総崩れ</u>
<br />
(2023年12月22日発表)
<br />
<br />
AlloVir(Nasdaq:ALVR)はALVR105(posoleucel)の第3相試験を3本実施していたが、夫々のデータ監視委員会が無益認定したため、中止を決めた。身売りなどの戦略オプションを検討する考え。
<br />
<br />
BKウイルス、サイトメガロウイルス、アデノウイルス、エプスタイン-バー・ウイルス、ヒト・ヘルペスウイルス6型、JCウイルスの6種類を標的とする他家T細胞療法。造血幹細胞移植を受けた患者のウイルス感染症予防や、ウイルス関連出血性膀胱炎の治療、そしてアデノウイルス感染症の治療における便益を検討してきたが、ワークしなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.allovir.com/news-releases/news-release-details/allovir-provides-updates-phase-3-clinical-development-program" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>JNJ、デュアルEGFRブロック療法を承認申請</u>
<br />
(2023年12月21日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗EGFRxMET二重特異性抗体Rybrevant(amivantamab-vmjw)と新開発の第3世代EGFR阻害剤JNJ-73841937(lazertinib)を化学療法薬と併用でEGFRに特定の変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌用薬として欧米で承認申請した。第3相MARIPOSA試験に基づくもので、EGFRにエクソン19欠損やL858R置換などの変異のある局所進行/転移非小細胞性肺癌1074人のフロントライン治療における便益を標準療法であるTagrisso(osimertinib)と比較したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン23.7ヶ月対16.6ヶ月、ハザードレシオ0.70、全生存期間は未成熟だがハザードレシオ0.80と好ましい方向を向いている。尚、Rybrevantだけ投与する参考群も設定されたが、メジアン値は18.5ヶ月と若干上回る程度だ。
<br />
<br />
G3以上の有害事象はラッシュや爪周囲炎、低アルブミン血症や末梢浮腫、静脈血栓塞栓など。間質性肺疾患の発生率は両群とも3%未満となっている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/johnson-johnson-submits-supplemental-biologics-license-application-and-new-drug-application-to-u-s-fda-seeking-approval-of-rybrevant-amivantamab-vmjw-plus-lazertinib-for-the-treatment-of-patients-with-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer-nsclc" target="blank">
同社のプレスリリース(FDA申請)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/janssen-submits-marketing-authorisation-application-to-the-european-medicines-agency-seeking-approval-of-lazertinib-in-combination-with-rybrevant-amivantamab-for-the-first-line-treatment-of-patients-with-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer" target="blank">
Janssenのプレスリリース(EU申請)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>MSD、21価肺炎球菌ワクチンを承認申請</u>
<br />
(2023年12月19日発表)
<br />
<br />
MSDは21価肺炎球菌ワクチンV116を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は24年6月17日。18歳以上の成人が対象。
<br />
<br />
肺炎球菌ワクチンは23価のPneumovaxを擁するMSDが38年ぶりに無毒性変異ジフテリア毒素結合15価ワクチンVaxneuvanceを発売して、このタイプで先行したファイザーのPrevnarシリーズを追いかけている。カバーしている血清型の数ではPrevnar 20を一つ上回るだけだが中身がかなり異なり、65歳以上の侵襲性肺炎球菌疾患の3割を占める8株についてはPneumovaxも含めて初のワクチンだ。肺炎球菌ワクチンを初めて接種する2663人を組入れて免疫原性をPrevnarと比較したSTRIDE-3試験では、独自の血清型だけでなく共通する血清型に関しても抗体価が有意に上回ったとのこと。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/fda-grants-priority-review-to-mercks-new-biologics-license-application-for-v116-an-investigational-21-valent-pneumococcal-conjugate-vaccine-specifically-designed-to-protect-adults/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ロシュ、ゾレアを食物アレルギー予防に適応拡大申請</u>
<br />
(2023年12月19日発表)
<br />
<br />
ロシュは米国でXolair(omalizumab)の適応拡大申請を行い、受理された。意図せぬ摂取による食物アレルギーのリスクを抑制するもので、優先審査を受け、審査期限は24年第1四半期とのみ記されている。対象は1歳以上。食べても大丈夫ということではなく、少なくとも現段階では、アレルゲンの摂取回避努力を続ける必要がある。
<br />
<br />
XolairはIgEを標的とする抗体医薬で、難治喘息症などに承認されている。今回の用途はNIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)が主導した第3相OUtMATCH試験の第1ステージに基づく。ピーナツを含む3種類以上の食物アレルギーを持つ1~17歳を165人組み入れて、体重と血漿IgE水準に基づき決定する用量と投与頻度で16週間治療し、アレルゲン・チャレンジ(発症するまで摂取量を少しずつ増やしていく、最大6044mg)を行ったところ、中間解析でピーナツや卵白、牛乳、カシューナッツの耐容摂取量が偽薬群を上回った。
<br />
<br />
この試験は成人患者のコフォートや、応答後に摂取回避を止める試験も予定されている模様だが、続行しているかどうかは不明。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2023-12-19" target="blank">
ロシュのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.nih.gov/news-events/news-releases/antibody-reduces-allergic-reactions-multiple-foods-nih-trial" target="blank">
NIHのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>リフヌアは米国ではやはり承認されず</u>
<br />
(2023年12月20日発表)
<br />
<br />
MSDは、末梢作用性選択的P2X3受容体アンタゴニストLyfnua(gefapixant)を成人の難治性または説明不能な慢性咳嗽の治療薬として開発、昨年1月に日本で、今年9月にはEUでも、承認を獲得したが、米国は審査完了通知を受領した。薬効不十分ということのようだ。11月の諮問委員会でも13人の委員中12人が承認に反対した。
<br />
<br />
携帯型24時間録音機を用いて咳の回数を計測し、会社側はlog変換した数値を用いて解析したが、FDAが独自に実施した変換前の集計値によると、一時間当たりの回数がベースラインのメジアン20~26回から24週後に45mg群は7~9回、偽薬群は11回余に減少した。3回程度の差が臨床的に意味があるかどうか、という分かりやすい議論が可能になった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/merck-provides-u-s-regulatory-update-on-gefapixant/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Checkpoint社の免疫チェックポイント阻害剤は審査完了に</u>
<br />
(2023年12月18日発表)
<br />
<br />
Checkpoint Therapeutics(Nasdaq:CKPT)はCK-301(cosibelimab)を治癒的切除や放射線療法が不適な局所進行/転移皮膚扁平上皮腫用薬としてFDAに承認申請していたが、1月3日の審査期限を約2週間前倒しで、審査完了通知を受領した。FDAによる生産委託先の査察で指摘事項があったことが唯一のボトルネックである模様。
<br />
<br />
Dana-Farber Cancer Instituteからライセンスした抗PD-L1抗体で、エビデンスはORR(客観的反応率)。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.checkpointtx.com/news-events/press-releases/detail/111/u-s-food-and-drug-administration-issues-complete-response" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>TTR-PN用アンチセンス薬が承認</u>
<br />
(2023年12月21日発表)
<br />
<br />
Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)と開発販売パートナーのアストラゼネカは、夫々、FDAがWainua(eplontersen)を成人の遺伝性トランスサイレチン調停アミロイドーシスにおけるポリニューロパチーの治療薬として承認したと発表した。35週間の臨床試験で血清トランスサイレチン濃度がベースライン比81%低下しmNIS+7ニューロパチー障害スコアも偽薬比有意な差があった。オートインジェクターによる皮下注用薬で4週毎に投与する。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/wainua-eplontersen-granted-first-ever-regulatory-approval-us-treatment-of-adults-with-polyneuropathy-hereditary-transthyretin-mediated-amyloidosis.html" target="blank">
アストラゼネカのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>IgA腎症用薬が初の本承認</u>
<br />
(2023年12月20日発表)
<br />
<br />
Calliditas Therapeutics(Nasdaq:CALT)は、FDAがIgA腎症治療薬Tarpeyo(budesonide遅放性カプセル)の加速承認を本承認に切り替えたと発表した。第3相NefIgArd試験のパートAで成人の原発性IgA腎症患者のUPCR(尿蛋白クレアチニン比)が9ヶ月の治療後に偽薬比有意に改善することを立証、21年に米国で加速承認、22年にはEUでも条件付き承認された。パートBでは試験薬の投与を打ち切った上で更に15ヶ月間追跡したところ、eGFR(推算糸球体濾過量)のベースライン比低下が偽薬比有意に小さかった。このため、今回、IgA腎症用薬として初めて、腎機能低下を抑制する効能が認められた。最大耐容量のRAS阻害剤と併用する。主な有害事象は末梢浮腫や高血圧症、筋痙攣、挫創など。
<br />
<br />
eGFRの経時的推移を見ると、群間差は試験薬服用中の第3月に5mL/分/1.73m2に拡大し、その後の拡大はあまり大きくない。つまり、偽薬群と同様なペースで悪化していく。安全性を考えて9ヶ月しか投与しないのだろうが、残念なことだ。
<br />
<br />
IgA腎症は免疫グロブリンAが補体などと結合して腎臓に沈着し、傷害を与える。新薬開発が活発なので、向こう5年間に多くのライバルが登場するだろう。もう一つ、心配なのが、通常製剤のGE薬との競合だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.calliditas.se/en/calliditas-therapeutics-announces-full-fda-approval-of-tarpeyo-the-only-fda-approved-treatment-for-iga-nephropathy-to-significantly-reduce-the-loss-of-kidney-function/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>表皮水疱症用薬が承認</u>
<br />
(2023年12月19日発表)
<br />
<br />
ChiesiグループのChiesi Global Rare Diseasesは、FDAがFilsuvez(birch triterpenes)を栄養障害型表皮水疱症(DEB)と接合部型表皮水疱症(JEB)の治療薬として承認したと発表した。生後6ヶ月以上が対象になる。白樺の樹皮から抽出したトリペリテンのゲル製剤で、第3相で45日創傷閉鎖達成率が41%と偽薬群の29%を上回った。有害事象は創傷部位の合併症や掻痒、貧血などが増加した。重度有害事象発生率は12%(偽薬群は5%)、有害事象治験離脱率は2.8%(同1.8%)だった。
<br />
<br />
EUでは昨年6月に承認されたが、米国では同年2月に審査完了通知を受領、紛争調停手続きを経てゴールに到達した。
<br />
<br />
DEB治療薬は5月にKrystal Biotech(Nasdaq:KRYS)のVyjuvek(beremagene geperpavec-svdt)が承認されている。米国の推定患者数3000人の希少疾患で、Vyjuvekは遺伝子療法ということもありディスカウント前の薬剤費が年63万ドルと高く設定された。Filsuvezの価格はどうなるのか、注目される。FDAがストレートに承認しなかった理由は不明だが、審査報告書が公表されれば判明するだろう。
<br />
<br />
Amryt Pharma(Nasdaq:AMYT)を今年1月に12.5億ドルで買収して入手したコンパウンド。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.globenewswire.com/news-release/2023/12/19/2798751/0/en/Chiesi-Global-Rare-Diseases-Receives-FDA-Approval-for-FILSUVEZ-birch-triterpenes-topical-gel-for-the-Treatment-of-Epidermolysis-Bullosa.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【医薬品の安全性】</h4>
<br />
<u>カービクティの二次性血液癌リスクを警告強化</u>
<br />
(2023年12月21日発表)
<br />
<br />
Legend Biotech(Nasdaq:LEGN)は、Janssen Biotechと共同開発販売しているBCMA標的CAR-T療法、Carvykti(ciltacabtagene autoleucel)の米国における処方情報が改訂され、二次性血液癌の警告が枠付き警告に格上げされたことをSEC提出資料で明らかにした。日米の施設で3次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の多発骨髄腫97人を組入れたCARTITUDE-1試験で10人が発症した。内容は骨髄異形成症候群と急性骨髄性白血病で発症時期は治療の162~1040日後。次の治療を開始していたケースもあり、また、前治療薬が犯人の可能性もある。10人中9人は死亡した。
<br />
<br />
FDAは11月にBCMAまたはCD19を標的とするCAR-T6製品について深刻なT細胞腫瘍のリスクが対策の必要性を検討すると発表しており、クラス・イフェクトの可能性が高い。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.legendbiotech.com/node/8351/html" target="blank">
同社のフォーム6-K</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)←AC上程で遅延へ</td></tr>
<tr><td>23/12/19</td><td align="left">IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期か</td></tr>
<tr><td>23/12/24</td><td align="left">アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)</td></tr>
<tr><td>23/12/30</td><td align="left">Zealand PharmaのZegalogue(dasiglucagon、先天性高インスリン血症に適応追加)</td></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)→23Q4から遅延</td></tr>
<tr><td>24/1/5</td><td align="left">Novan(Ligand Pharmaceuticals)のberdazimer(伝染性軟属腫)</td></tr>
<tr><td>24/1/12 </td><td align="left">アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/17 </td><td align="left">MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)</td></tr>
<tr><td>24/1/20 </td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
</table><br />
注:ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)は審査期限が12月21日から24年3月21日に延期された
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-24671196874439044302023-12-16T16:07:00.004+09:002023-12-16T16:07:52.962+09:00第1133回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>ASH:ダラキューロのMMフロントライン試験が成功 </li>
<li>ノバルティス、B因子阻害剤はC3糸球体症の第3相も成功 </li>
<li>ASH:ブレヤンジが濾胞性リンパ腫二次治療でも良績 </li>
<li>ASH:アベクマ、早期段階試験で延命効果は確認できず </li>
<li>LSD類薬が全般不安症の第3相へ </li>
<li>Opdualagの大腸癌試験が無益中止に </li>
<li>CSL、抗XIIa抗体をHAEに承認申請 </li>
<li>アムジェン、小細胞肺癌用二重特異性抗体を承認申請 </li>
<li>MDMAをPTSDに承認申請 </li>
<li>ファイザーも抗TFPI抗体を血友病に承認申請 </li>
<li>EUもCRISPR-Cas9テクノロジー薬に肯定的意見 </li>
<li>PDE4阻害剤が脂漏性皮膚炎に承認 </li>
<li>尿路上皮腫にパドセブ・キイトルーダ併用が瞬速承認 </li>
<li>MSDのHIF-2アルファ阻害剤に新適応 </li>
<li>エフロルニチンが高リスク神経芽細胞腫用薬として復活 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>ASH:ダラキューロのMMフロントライン試験が成功</u>
<br />
(2023年12月12日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソンはASH(米国血液学会)でDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)の第3相PERSEUS試験の結果を発表した。新患多発骨髄腫の標準療法の一つであるVRd(Velcade、Revlimid、dexamethasoneによるインダクション及びRevlimidによるメンテナンス)に皮下注用Darzalexによるインダクションとメンテナンスを追加する便益を検討したオープン・レーベル試験で、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.42、統計的に有意だった。メジアン値は未達、48ヶ月PFS率は84.3%対67.7%だった。G3/4有害事象は好中球減少症などの骨髄抑制と肺臓炎、下痢などが増加した。
<br />
<br />
多発骨髄腫は治療の選択肢が増加してVelcadeやRevlimidのような主力薬を一次治療で併用するような豪華なレジメンが可能になった。今回、更に豪華なレジメンを採用することでPFSをさらに改善できることが明らかになった。先に使ってしまうと再発時の治療オプションが限られてしまうが、8割以上の患者が4年以上進行しないなら、大きな問題にはならないかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/darzalex-faspro-daratumumab-and-hyaluronidase-fihj-based-quadruplet-therapy-regimen-shows-significant-improvement-in-outcomes-for-patients-with-transplant-eligible-newly-diagnosed-multiple-myeloma" target="blank">
JNJのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2312054?query=featured_home" target="blank">
Sonneveldらの治験論文抄録(New England Journal of Medicine)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ノバルティス、B因子阻害剤はC3糸球体症の第3相も成功</u>
<br />
(2023年12月11日発表)
<br />
<br />
ノバルティスは可逆的B因子阻害剤Fabhalta(iptacopan)が発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)における初の経口剤として米国で承認されたばかりだが、第3の希少疾患試験が成功した。補体系が調停する超希少腎疾患であるC3糸球体症(C3G)を組入れて6ヶ月後の尿蛋白クレアチニン比(UPCR)の改善を偽薬と比較した、APPEAR-C3G試験で主目的を達成した。適応拡大に向けて承認審査機関と相談する考え。
<br />
<br />
Fabhaltaは10月に原発性IgA腎症のAPPLAUSE-IgAN試験が中間解析でUPCRの有意な改善を達成したことが発表された。eGFR(推算糸球体濾過量)の解析は未だ行われていないので加速承認を申請できるか不透明であり、もしかしたらC3Gのほうが先になるかもしれない。非典型溶血性尿毒症症候群でも第3相試験中。アストラゼネカのC5因子阻害剤Soliris(eculizumab)やUltomiris(ravulizumab-cwvz)とバッティングする疾患で急速に存在感を高めている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-investigational-iptacopan-phase-iii-study-demonstrates-clinically-meaningful-and-statistically-significant-proteinuria-reduction-patients-c3-glomerulopathy-c3g" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ASH:ブレヤンジが濾胞性リンパ腫二次治療でも良績</u>
<br />
(2023年12月10日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはCD19を標的とするキメラ抗原受容体T細胞療法、Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)の第2相TRANSCEND FL試験における二次治療コフォートの成績をASH(米国血液学会)で発表した。23人中22人がORR(客観的反応率)を達成、その全員がCR(完全反応)だった。メジアン16ヶ月追跡で反応持続期間は未だメジアン値に達していない。CAR-Tに付き物のサイトカイン放出症候群はG3の発生率が1%、G4、G5はなかった。G3神経学的イベントの発生率も2%と低く、G4、G5はゼロ。
<br />
<br />
同社は6月に本試験の三次治療コフォートの成績も発表している。101人中ORRが97%、CRは94%、メジアン16ヶ月追跡で反応持続期間のメジアン値は未達と、似たような結果になっている。当局と適応拡大申請に向けて相談する考え。
<br />
<br />
Breyanjiは難治びまん性巨細胞型B細胞リンパ腫などの治療薬として米欧日などで承認されている。FDAはCAR-Tの二次性腫瘍リスクについて再検討を開始しており、適応拡大審査における攪乱要因になるかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/Bristol-Myers-Squibb-Presents-New-Data-at-ASH-2023-Demonstrating-Clinical-Benefit-Across-B-cell-Malignancies-with-Breyanzi-as-a-Second-Line-Treatment-in-High-Risk-Follicular-Lymphoma-and-in-Relapsed-or-Refractory-Chronic-Lymphocytic-Leukemia/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ASH:アベクマ、早期段階試験で延命効果は確認できず</u>
<br />
(2023年12月11日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはASH(米国血液学会)でBCMAを標的とするCAR-T療法Abecma(idecabtagene vicleucel)のKarMM-3試験のアップデート・データも発表した。3種類の代表的な抗癌剤を既に経験し最終治療に応答しなかった難治再発多発骨髄腫の薬として米欧日で承認されているが、本試験は3代表薬を含む2~4次治療歴を持ち最終治療抵抗性の難治かつ再発多発骨髄腫における便益を標準療法群と比較した。主評価項目のPFS(無進行生存期間)は22年の中間解析で成功、ハザードレシオ0.49、13.8ヶ月対4.4ヶ月と良好な成果を上げた。しかし、今回、副次的評価項目の全生存期間がハザードレシオ1.01、41.4ヶ月対37.9ヶ月と、差が小さく有意でなかったことが明らかになった。クロスオーバー可であったため標準療法群の56%が進行後にAbecmaによる治療を受けており、その影響を除外した感受性分析ではハザードレシオが0.69と上向いたとのことだが、有意水準には達していない模様であり、そもそも先行解析がフェールしているため説得力は万全ではない。
<br />
<br />
日本ではこの試験をエビデンスに2次以上の治療歴を持つ患者に用いることが今月、承認されたが、米国ではFDAが全生存期間のデータに懸念を持ち最近になって諮問会議上程を決定、12月16日の審査期限までに承認されないことがほぼ確定した。FDAがどのデータを気にしているのかは明らかではなく、また、全生存期間が標準療法と同程度でもPFSが伸びればそれなりに意義があるようにも思われるので、今回のデータがポジティブ/ネガティブのどちらに作用するかは明確ではない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/Abecma-Delivers-Sustained-Progression-Free-Survival-Versus-Standard-Regimens-in-Earlier-Lines-of-Therapy-for-Relapsed-and-Refractory-Multiple-Myeloma-Based-on-Longer-Term-Follow-up-from-KarMMa-3/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>LSD類薬が全般不安症の第3相へ</u>
<br />
(2023年12月14日発表)
<br />
<br />
Mind Medicine(Nasdaq:MNMD)はMM-120(lysergide d-tartrate)が後期第2相全般不安症試験で良好な結果を出したと発表した。FDAと相談した上で24年下期に第3相へ進める考え。後述のMDMAといい、幻覚剤の医療使用が前進してきた。
<br />
<br />
MM-120はトリプタミン系のサイケデリックでセロトニン2A受容体を部分作動する。今回の試験では重度全般不安症患者198人を組入れて25mcg、50mcg、100mcg、200mcgまたは偽薬を一回投与し、4週後に効果を評価した。主評価項目のHAM-A(ベースライン値は30点前後)が偽薬群は13.7点、100mcgは21.3点、200mcgは19.3点、夫々低下した。25mcgの効果は小さく、50mcgの数値は公表されていないがグラフを見ると100mcgほど低下していない。100mcg群は偽薬群との差のp<0.0004と高度に有意で、Cohenのイフェクト・サイズは0.88と標準療法薬の過去データの倍と大きく、他の評価項目でも他の用量を凌いだことから、至適用量と見なされた。
<br />
<br />
投与日に発生した有害事象は幻覚剤らしくイリュージョン(100mcgの発生率57%)、悪心(同40%、多汗症(同22%)、瞳孔散大(同20%)が多く、幻覚や陶酔感、不安なども発生した。尚、投与後は薬力学的症状が回復するまで最大12時間、留めて観察した。また、相互作用の懸念から本試験では心理療法などは併用されていない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.mindmed.co/news-events/press-releases/detail/131/mindmed-announces-positive-topline-results-from-phase-2b-trial-of-mm-120-in-generalized-anxiety-disorder" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Opdualagの大腸癌試験が無益中止に</u>
<br />
(2023年12月15日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブは22年に欧米で切除不能/転移黒色腫用薬として承認されたOpdivo(nivolumab)と抗LAG-3抗relatlimabの合剤、Opdualagで様々な第3相試験を実施しているが、RELATIVITY-123試験は中止すると発表した。マイクロサテライト安定性のある転移結腸直腸癌の2~4次治療薬としての便益をStivarga(regorafenib)またはLonsurf(trifluridine、tipiracil)を投与する群と比較していたが、独立データ監視委員会が中間解析結果を踏まえて続行しても目的達成の可能性は極めて低いと無益認定したため。免疫チェックポイント阻害剤の併用は当初期待されたほどの成果を挙げていない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/Bristol-Myers-Squibb-Provides-Update-on-RELATIVITY-123-Trial-Evaluating-the-Fixed-Dose-Combination-of-Nivolumab-and-Relatlimab-in-Patients-with-Previously-Treated-Metastatic-Microsatellite-Stable-MSS-Colorectal-Cancer/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>CSL、抗XIIa抗体をHAEに承認申請</u>
<br />
(2023年12月14日発表)
<br />
<br />
CSL(ASX:CSL)はCSL312(garadacimab)を欧米でHAE(遺伝性血管浮腫)の発作抑制薬として承認申請し受理されたと発表した。kallikrein-kininカスケードをトリガーする活性化XII因子をブロックする抗体医薬で、12歳以上のC1エステラーゼ・インヒビターが不足するHAE患者63人を組み入れた第3相VANGUARD試験で、月一回皮下注して6ヶ月間の発作頻度を観察したところ、月平均0.27回と偽薬群の2.01回より8割以上少なかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://newsroom.csl.com/2023-12-14-CSLs-Garadacimab,-a-First-in-Class-Factor-XIIa-Inhibitor,-Receives-FDA-and-EMA-Filing-Acceptance" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>アムジェン、小細胞肺癌用二重特異性抗体を承認申請</u>
<br />
(2023年12月13日発表)
<br />
<br />
アムジェンはAMG 757(tarlatamab)を小細胞性肺癌の3次治療薬として米国で承認申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は24年6月12日。 小細胞性肺癌の8割で発現し健常細胞にはないデルタ様リガンド3(DLL3)とT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体で、半減期延長装飾を行い二週毎投与を可能にした。エビデンスとなる第2相DeLLphi-301試験で220人の患者を10mg群と100mg群に割付けてORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)を調べたところ、夫々40%と32%だった。有害事象はクラス・イフェクトであるサイトカイン放出症候群が各51%と61%で発生したがG3は1%と6%だけ、G3のICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群)はなかった。
<br />
<br />
100mg群のORRが見劣りするのは忍容性の問題なのだろう。ESMO(欧州臨床腫瘍学会)やNew England Journal of Medicineで結果発表した時の会社側プレスリリースには10mgのデータしか記されていなかったので、この用量だけ申請したのではないか。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.amgen.com/newsroom/press-releases/2023/12/fda-grants-priority-review-to-amgens-tarlatamab-application-for-advanced-small-cell-lung-cancer" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>MDMAをPTSDに承認申請</u>
<br />
(2023年12月12日発表)
<br />
<br />
MAPS PBCはMDMA(midomafetamine)をPTSD(トラウマ後ストレス障害)用薬としてFDAに承認申請した。ブレークスルー・セラピー指定を受けており、会社側は優先審査を求めている。
<br />
<br />
精神療法のセッションを行う時に1.5~2時間おいて2回、経口投与する。第3相試験二本では第18週のCAPS-5(Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)が偽薬比有意に改善した。二本目の試験の探索的解析では71%の患者がDSM-5における診断基準に該当しなくなった(偽薬群は47%)。深刻な有害事象は発生しなかった。但し、MDMAは心室期外収縮のリスクが指摘されている。
<br />
<br />
サイケデリック(幻覚剤)の承認申請は初めて。現在はDEA(麻薬取締局)が依存リスクが高く医療に使われない物質として最も厳しい規制が課されるスケジュールIに指定されているが、承認されたら緩和され、その後、州毎の規制も緩和が見込まれる。
<br />
<br />
同社は1986年設立の非営利研究・教育組織、Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(略称MAPS)が、サイケデリックやマリファナなどの合法的な販売を目標に、設立した。PBC(Public Benefit Corporation)は州法における法人形態の一つで、営利法人だが株主と同等またはそれ以上に公益も重視することを定款で定めている。税制上のインセンティブなどは無い模様であり、人間としての誇りの表明だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://mapsbcorp.com/news/mdma-for-ptsd-fda-submission/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ファイザーも抗TFPI抗体を血友病に承認申請</u>
<br />
(2023年12月11日発表)
<br />
<br />
ファイザーは、PF-06741086(marstacimab)をインヒビターを持たないA型とB型の血友病治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年第4四半期とのこと。EUでも承認審査が始まっており、25年第1四半期にも結論が出る見込み。
<br />
<br />
TFPI(組織因子パスウェイ・インヒビター)のKunitz2ドメインに結合する抗体医薬。12歳以上の重症A型血友病と中程度重症又は重症のB型血友病患者145人を組入れた第3相BASIS試験のインヒビターを持たない116人のコフォートで、リードイン期の治療方針が出血したら治療だった患者は出血頻度が92%低下、血液凝固因子の予防的投与だった患者でも35%低下した。インヒビターを持つ患者のデータは来年遅くに判明する見込み。
<br />
<br />
類薬であるノボ ノルディスクのアレモ(concizumab)は今年、カナダと日本で承認されたが、米国は審査完了通知を受領し、EUは申請が遅かったため未だ審査中と、開発状況が地域により区々。臨床試験で非致死的な血栓性有害事象が発生し治験を一時中断したことや、TFPIは検査方法が普及しておらず薬の効き具合を確認できないことなども影響したのかもしれない。marstacimabも他山の石ではないかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.pfizer.com/Investors/News/news-details/2023/FDA-and-EMA-Accept-Marstacimab-Regulatory-Submissions-for-the-Treatment-of-Hemophilia-A-and-B/default.aspx" target="blank">
ファイザーのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>EUもCRISPR-Cas9テクノロジー薬に肯定的意見</u>
<br />
(2023年12月15日発表)
<br />
<br />
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-committee-medicinal-products-human-use-chmp-11-14-december-2023-0" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
Vertex Pharmceuticals(Nasdaq:VRTX)がCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)から共同開発販売権を取得して承認申請したCasgevy(exagamglogene autotemcel)はベータサラセミアや鎌状赤血球病のex vivo遺伝子療法。正常な赤血球を生成できない患者に、患者から採取した造血幹細胞を、本来は胎児期などにしか発現しない胎生ヘモグロビンを産生できるように遺伝子編集して培養し、患者に戻す。CRISPR-Cas9技術を用いた製品の第一号で米国でも今月、鎌状赤血球病に承認され、来年3月にはベータサラセミアでも承認される見込み。どちらも12歳以上で造血幹細胞移植が適応になるがHLA適合ドナーが見つからない患者が対象で、鎌状赤血球病における便益は血管閉塞性クリーゼの抑制、ベータサラセミアでは赤血球輸血の抑制。条件付き承認なので26年8月までに臨床試験の最終解析結果や長期追跡データを提出するなどして本承認を取得しなければならない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/first-gene-editing-therapy-treat-beta-thalassemia-and-severe-sickle-cell-disease" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
Reata Pharmaceuticals(Nasdaq:RETA)のSkyclarys(omaveloxolone)は16歳以上のフリードライヒ運動失調症に用いる。臨床試験ではmFARS症状評価スコアが偽薬比有意に改善した。この常染色体劣性遺伝性疾患では、細胞が酸化ストレスに対抗する上で必要なパスウェイを活性化するNrf2が少ないことが指摘されている。SkyclarysはNrf2のアクティベイター。米国では2月に承認されている。
<br />
<br />
ファイザーのVelsipity(etrasimod)はS1P受容体調節剤。16歳以上の中重度活性期潰瘍性大腸炎で従来療法又はバイオ薬に不十分応答/不耐な患者に用いる。米国では10月に承認。
<br />
<br />
一方、GSKの抗BCMA抗体薬物複合体、Blenrep(belantamab mafodotin)の条件付き承認を更新しないよう推奨した。多発骨髄腫のサルベージ用薬として20年8月にEUでは条件付き承認、米国では加速承認されたが、薬効確認試験に位置付けられた3次治療3剤併用試験がフェールしたため。CHMPは9月に非更新を推奨したがGSKの請求により再審査し、評価を再確認したもの。米国も承認取消の手続きが進行している。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/ema-confirms-recommendation-non-renewal-authorisation-multiple-myeloma-medicine-blenrep" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
適応拡大に関する肯定的意見を得たのは、まず、武田薬品グループのバクスアルタのHyQvia。免疫グロブリンとヒト・ヒアルロニダーゼの皮下注用配合剤で、免疫グロブリン静注による治療を受けたCIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)患者の維持療法に用いる。臨床試験で神経筋障害や機能障害の再発を偽薬比7割抑制した。米国でも審査中。
<br />
<br />
ベーリンガー・インゲルハイムのMetalyse(tenecteplase)は急性虚血性脳卒中の治療に用いることが支持された。状態が良好だった時から4.5時間以内で頭蓋内出血のない成人患者が適応になる。心筋梗塞後の血栓溶解剤としてEUで承認されたのは21年前なので、そういえばこちらは脳梗塞未承認だったっけ、という印象。
<br />
<br />
医薬品の承認審査機能を持たない国は、日米欧などで承認されている薬は原則的に承認します、というスタンスを取ることが多い。EUは、一歩進んで、EU域外で治療に用いられることを前提に承認審査するEU-M4allという制度を設けている。今回、肯定的意見を得たのが住血吸虫症治療薬arpraziquantelだ。代表的な治療薬であるメルクのpraziquantelは適応が6歳以上で、剤形が大きく苦い短所がある。そこで、光学異性体を用いて、水に分散して飲め、未就学児の味覚に合い、熱帯気候にも耐えうる製剤を開発した。生後3ヶ月から6歳、且つ体重5kg以上の幼小児が適応になる。メルクが様々な製薬会社とコンソーシアムを組んで開発、臨床試験では治癒率が90%超だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/new-treatment-young-children-parasitic-disease-schistosomiasis" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
EMAからの発表ではないが、Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)は、加齢性黄斑変性による地図状萎縮の治療薬として承認申請しているSyfovre(pegcetacoplan)に関して、1月の会合でCHMPが否定的意見を出す見込みであることを公表した。12月の会合で非公式なトレンド投票を行ったところ、否定的な委員が多かったため。正式決定後に再審請求などの手続きを取る考え。
<br />
<br />
米国で21年に承認されたが市販後に網膜血管炎などが報告され視力喪失に至った患者もいたため、学会が注意を呼び掛けた。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.apellis.com/news-releases/news-release-details/apellis-provides-update-ongoing-regulatory-review-pegcetacoplan" target="blank">
同社のプレスリリース(12/14付)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>PDE4阻害剤が脂漏性皮膚炎に承認</u>
<br />
(2023年12月15日発表)
<br />
<br />
Arcutis Biotherapeutics(Nasdaq:ARQT)はFDAがZoryve(roflumilast)のフォーム製剤を9歳以上の中重度脂漏性皮膚炎の治療薬として承認したと発表した。22年に乾癬治療薬として承認されたクリーム製剤と異なり、毛髪の生えている部位にも塗布しやすい。第3相試験では第8週のIGA奏効率が80%と偽薬群の59%を有意に上回った。疼痛などの症状も緩和した。有害事象発生率は低い。中重度肝障害は禁忌。
<br />
<br />
roflumilastは経口剤がCOPD治療薬として10年以上前に欧米で承認された。同社はアストラゼネカから開発権を取得、クリーム製剤はアトピー性皮膚炎に適応拡大申請中、フォーム製剤は頭部などの乾癬治療にも承認申請する計画。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.arcutis.com/fda-approves-arcutis-zoryve-roflumilast-topical-foam-0-3-for-the-treatment-of-seborrheic-dermatitis-in-individuals-aged-9-years-and-older/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>尿路上皮腫にパドセブ・キイトルーダ併用が瞬速承認</u>
<br />
(2023年12月15日発表)
<br />
<br />
FDAはアステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv)をMSDのKeytruda(pembrolizumab)と併用で局所進行/転移尿路上皮癌の1次治療に用いることを承認した。審査期限は来年5月9日だったので5ヶ月前倒し、申請受理から1ヶ月余の瞬速承認だ。第3相試験では白金薬とgemcitabineを併用した群と比べて全生存期間のハザードレシオが0.47、メジアン生存期間は31.5ヶ月対16.1ヶ月と良好な成績を上げた。
<br />
<br />
Padcevはネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体。今年4月にcisplatin不適患者限定でKeytruda併用一次治療が加速承認されたばかり。Agensysが11年にSeattle Genetics(現Seagen)に共同開発・商業化権を供与した後、前者はアステラスに買収され、後者は先般、ファイザーに買収された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-enfortumab-vedotin-ejfv-pembrolizumab-locally-advanced-or-metastatic-urothelial-cancer" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>MSDのHIF-2アルファ阻害剤に新適応</u>
<br />
(2023年12月14日発表)
<br />
<br />
FDAはMSDのWelireg(belzutifa)の適応追加を承認したと発表した。HIF-2アルファを阻害する経口剤で、21年にVHL病関連腎細胞腫などに用いることが承認された。新用途は、進行腎細胞腫でPD-1/L1阻害剤とVEGFRチロシン・キナーゼ阻害剤を既に使用した患者に120mgを一日一回、経口投与する。第3相でeverolimus対照群と比べてPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.75、片側p=0.0008だった。尚、メジアン値は両群とも5.6ヶ月だった。
<br />
<br />
MSDが19年にPeloton Therapeuticsを買収して入手したコンパウンド。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-belzutifan-advanced-renal-cell-carcinoma" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>エフロルニチンが高リスク神経芽細胞腫用薬として復活</u>
<br />
(2023年12月14日発表)
<br />
<br />
US WorldMeds社はFDAがIwilfin(eflornithine)を神経芽細胞腫の維持療法薬として承認したと発表した。抗GD2免疫療法を含む多剤併用療法に部分反応以上だったが再発リスクが高いと推測される成人小児の患者に、一日二回、2年間にわたり経口投与する。第2相単群試験で4年EFS(無イベント生存期間)率が84%だった。別の臨床試験のデータをプロペンシティ・マッチングにより外挿した外部対照群では73%だった。全生存率も96%対84%で上回った。有害事象は難聴、中耳炎、発熱、肺炎、下痢など。
<br />
<br />
神経芽細胞腫の米国における年間診断数は700~800人で、その5割が高リスクと判定され5年生存率は5割程度とされる。eflornithineは米国で1990年にアフリカトリパノソーマ症(睡眠症)用薬Ornidylとして承認されたが商業上の理由で発売されなかった模様だ。クリーム製剤が脱毛用薬として承認されたが現在は販売されていない模様。全く異なる用途で復活することになるが、神経芽細胞腫で多く発現するオルニチン脱炭酸酵素を阻害する作用が寄与しているようだ。開発は順調ではなく様々な会社が関わった後、今年7月にUS WorldMedsがCancer Prevention社からライセンスした。
<br />
<br />
10月の腫瘍学薬諮問委員会では一部の委員が対照試験が実施されていないことを批判したが、FDAは、深刻な希少疾患で、自然歴が確立しており、治療効果が大きい場合は容認できると述べた。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.businesswire.com/news/home/20231214522803/en/US-WorldMeds-Announces-FDA-Approval-of-IWILFIN%E2%84%A2-eflornithine-to-Strengthen-Fight-Against-Aggressive-Childhood-Cancer" target="blank">
同社のプレスリリース(BusinessWire)</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)←AC上程で遅延へ</td></tr>
<tr><td>23/12/19</td><td align="left">IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期か</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)</td></tr>
<tr><td>23/12/22</td><td align="left">Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)</td></tr>
<tr><td>23/12/24</td><td align="left">アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)</td></tr>
<tr><td>23/12/27</td><td align="left">MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
<tr><td>23/12/30</td><td align="left">Zealand PharmaのZegalogue(dasiglucagon、先天性高インスリン血症に適応追加)</td></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)→23Q4から遅延</td></tr>
<tr><td>24/1/3</td><td align="left">Checkpoint TherapeuticsのCK-301(cosibelimab、皮膚扁平上皮癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/5</td><td align="left">Novan(Ligand Pharmaceuticals)のberdazimer(伝染性軟属腫)</td></tr>
<tr><td>24/1/12 </td><td align="left">アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/20 </td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
</table><br />
注:ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)は審査期限が12月21日から24年3月21日に延期された
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-21741825822760716802023-12-09T20:35:00.003+09:002024-03-03T09:39:03.094+09:00第1132回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>SABCS:内分泌療法抵抗性乳癌の新薬 </li>
<li>サークリサの多発骨髄腫一次治療試験が成功 </li>
<li>RegeneronもBCMA・CD3抗体を承認申請へ </li>
<li>オプジーボとヤーボイのMSI-H/dMMR大腸癌試験が成功 </li>
<li>SABCS:Seagenのher2阻害剤、二次治療試験で全生存が悪い方向? </li>
<li>MSD、Keytrudaと他社の経口剤の併用試験が二本フェール </li>
<li>メルクのBTK阻害剤、多発性硬化症の第3相が二本ともフェール </li>
<li>イーライリリーのCDK4/6阻害剤も延命効果は確立せず </li>
<li>デュアルPPARアゴニストを原発性胆汁性胆管炎に承認申請 </li>
<li>BMS、オプジーボを尿路上皮腫一次治療に適応拡大申請 </li>
<li>Kisqaliの乳癌摘出術後アジュバントをEUで適応追加申請 </li>
<li>FDAが二種類の鎌状赤血球症遺伝子療法を承認 </li>
<li>ノバルティス、新規作用機序のPNH用薬が承認 </li>
<li>イーライリリー、BTK阻害剤が適応拡大 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>SABCS:内分泌療法抵抗性乳癌の新薬</u>
<br />
(2023年12月8日発表)
<br />
<br />
ロシュはSABCS(サン・アントニオ乳癌シンポジウム)でPI3Kアルファ阻害剤RG6114(inavolisib)の第3相INAVO120試験の成功を発表した。ホルモン受容体陽性乳癌の約4割ではPI3Kアルファの遺伝子であるPIK3CAに変異が見られ、内分泌療法に応答し難いことがある。本試験はホルモン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌でPIK3CA変異を持ちアロマターゼ阻害剤やtamoxifenによる切除術後アジュバント療法に抵抗性を示した325人を組入れて、Ibrance(palbociclib)とfulvestrantの標準的療法にinavolisibを追加する便益を検討した。
<br />
<br />
結果は、PFS(無進行生存期間、担当医評価)のハザードレシオが0.57と大きな改善を見た。全生存期間はハザードレシオが0.64、p=0.0338と良さそうな結果が出ているが、解析計画で割当てられたアルファは0.0098だけであるため、未だ有意とは言えない。プレスリリースによると投与中止率は6.8%で偽薬追加群の0.6%を上回った。G3/4有害事象は血小板減少症、貧血、口内炎、高血糖などで、忍容性は概して良好だった。
<br />
<br />
同社は新薬承認申請に向けて承認審査機関と相談する考え。
<br />
<br />
類薬ではノバルティスのPiqray(alpelisib)が19~20年に米欧でfulvestrantと併用することが承認された。適応や治験組入れ条件は若干異なっており、転移後に内分泌療法を受けて抵抗性を示した癌や、CDK4/6阻害剤歴を持つ患者も含まれている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.roche.com/media/releases/med-cor-2023-12-08" target="blank">
ロシュのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>サークリサの多発骨髄腫一次治療試験が成功</u>
<br />
(2023年12月7日発表)
<br />
<br />
サノフィは抗CD38抗体Sarclisa(isatuximab-irfc)の第3相IMROZ試験が中間解析で主目的を達成したと発表した。適応拡大を申請する考え。
<br />
<br />
20年に米欧日で成人の難治再発多発骨髄腫の三次以降の治療薬としてPomalyst(pomalidomide)及びdexamethasoneと三剤併用することが承認され、翌年には二次以降の治療にVelcade(carfilzomib)及びdexamethasoneと三剤併用が承認と、早期治療に向けて一段ずつ階段を上がってきた。今回の試験は造血幹細胞移植が適応にならない多発骨髄腫の一次治療として、Velcade、Revlimid(lenalidomide)、及びdexamethasoneと4剤併用することでPFS延長を図った。データは未発表。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.sanofi.com/en/media-room/press-releases/2023/2023-12-07-06-35-00-2792221" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>RegeneronもBCMA・CD3抗体を承認申請へ</u>
<br />
(2023年12月7日発表)
<br />
<br />
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は骨髄腫で発現するBCMAとT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体、REGN5458(linvoseltamab)の第1/2相LINKER-MM1試験の成績を公表した。3次以上の治療歴を持つ難治再発多発骨髄腫の試験で、200mgを投与した117人におけるORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が71%、完全反応率は46%だった。G3以上の有害事象発現率は85%で、感染症が34%と多かったが、この種の薬に特徴的な有害事象であるサイトカイン放出症候群は1%、ICANS(免疫細胞関連神経毒性症候群)は2%と少なかった。治療時発現有害事象により14人が死亡したことは気にかかる(殆どが感染症)。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.regeneron.com/news-releases/news-release-details/updated-linvoseltamab-pivotal-data-demonstrated-strong-rates-and" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>オプジーボとヤーボイのMSI-H/dMMR大腸癌試験が成功</u>
<br />
(2023年12月7日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブは、MSI-H(高度マイクロサテライト不安定性)またはdMMR(ミスマッチ修復不全)の転移結腸直腸癌におけるOpdivo(novolumab)とYervoy(ipilimimab)の併用法を検討したCheckMate-8HW試験が中間解析で主目的の一つを達成したと発表した。一次治療サブグル-プにおいてPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が医師の選んだ化学療法を施行した群と比べて統計的に有意な、かつ臨床的に意味のある、改善を示した。もう一つの、全被験者におけるOpdivo・Yervoy併用とOpdivo単剤投与の比較は継続追跡する。
<br />
<br />
ライバルであるMSDのKeytruda(pembrolizumab)は類似した内容のKeyNote-177試験でPFSのハザードレシオが0.60だった。全生存期間はp値が0.07とフェールしたがハザードレシオは0.74で悪くはなく、化学療法群の6割が抗PD-1抗体にクロスオーバーしたことを考えれば健闘したといえる。おそらく、Opdivoの単剤投与群も化学療法群と見比べて良好な成績を上げるだろう。従って、本試験の眼目はもう一つの主評価項目の成否だろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/Bristol-Myers-Squibb-Announces-Phase-3-CheckMate--8HW-Trial-Evaluating-Opdivo-nivolumab-Plus-Yervoy-ipilimumab-Compared-to-Chemotherapy-in-Microsatellite-InstabilityHigh-or-Mismatch-Repair-Deficient-Metastatic-Colorectal-Cancer-Meets-Primary/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>SABCS:Seagenのher2阻害剤、二次治療試験で全生存が悪い方向?</u>
<br />
(2023年12月6日発表)
<br />
<br />
Seagen(Nasdaq:SGEN)は8月にher2チロシンキナーゼ阻害剤Tukysa(tucatinib)のHER2CLIMB-02試験が成功したと発表したが、SABCS(サン・アントニオ乳癌シンポジウム)で、全生存期間は好ましくない方向であることが明かされた模様だ。イベント数が目標の5割強と未成熟な段階の解析なので、今後反転する可能性がないとも言えないが、PFS(無進行生存期間、治験医評価)に基づく適応拡大申請は難しそうだ。
<br />
<br />
Tukysaは20~21年に米欧でher2標的薬による治療歴を持つ切除不能/転移her2陽性乳癌用薬としてtrastuzumab及びcapecitabineと併用することが承認された。エビデンスとなるHER2CLIMB試験はtrastuzumab、pertuzumabそしてado-trastuzumab emtansineによる治療歴を持つ患者が対象。今回の試験は、taxane系の薬とtrastuzumabによる治療を術後アジュバントまたは進行/転移後に受けた患者を組入れて、ado-trastuzumab emtansineに追加する効果を検討した。主評価項目であるPFSはメジアン9.5ヶ月と偽薬を追加した群の7.4ヶ月を2ヶ月ほど上回り、ハザードレシオは0.76と良好だが、p値は0.0163とまあまあな水準だった。抗her2抗体は脳転移に対する活性が弱いことが多いが、Tukysaは小分子薬なので効果があり、本試験の44%を占めたベースライン時点で脳転移のあったサブグループにおけるハザードレシオは0.64と更に良好だった。
<br />
<br />
8月時点と同様に、今回のプレスリリースでも全生存の解析は未成熟としか記されていないが、複数の報道によると、SABCSでハザードレシオが1.23(95%信頼区間0.87、1.74)と悪い方向を向いていることが明かされた。FDAはPFSだけでなく全生存期間の延長効果を要求する傾向を強めている旨、複数の製薬会社がコメントしており、適応拡大申請は難しそうだ。また、第一三共/アストラゼネカのEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)は類似したデザインのDESTINY-Breast03試験で全生存期間のハザードレシオがado-trastuzumab emtansine比0.64で統計的に有意だった。除外条件であった症候性あるいは安定していない脳転移のある患者以外はEnhertuに見劣りする。
<br />
<br />
Seagenは22年に社長兼CEO兼会長が家庭内セクハラ問題で退任。今年3月にファイザーが企業価値ベース430億ドルで買収することに合意しており、反トラスト機関の認可を待っている状態。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.seagen.com/press-releases/news-details/2023/TUKYSA-tucatinib-in-Combination-with-Antibody-Drug-Conjugate-ado-Trastuzumab-Emtansine-Improves-Progression-Free-Survival-in-Patients-with-Previously-Treated-HER2-Positive-Metastatic-Breast-Cancer/default.aspx" target="blank">
Seagenのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.aacr.org/about-the-aacr/newsroom/news-releases/tucatinib-plus-trastuzumab-emtansine-may-benefit-patients-with-advanced-or-metastatic-her2-positive-breast-cancer/" target="blank">
AACR(米国癌研究協会)のSABCSプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>MSD、Keytrudaと他社の経口剤の併用試験が二本フェール</u>
<br />
(2023年12月7-8日発表)
<br />
<br />
MSDは、Keytruda(pembrolizumab)とアストラゼネカのPARP阻害剤Lynparza(olaparib)を併用した第3相転移扁平上皮性非小細胞性肺癌一次治療試験を無益中止すると発表した。Keytrudaと化学療法による標準療法を施行し疾病安定化以上の成果を挙げた患者をKeytruda・Lynparza併用群とKeytruda・偽薬併用群に無作為化割付けして転帰を比較していたが、共同主評価項目のうちPFS(無進行生存期間、放射線学的盲検独立中央評価)は第2回中間解析でも有意水準に到達せず、全生存期間は独立データ監視委員会が第3回中間解析で無益認定、打ち切りを勧告した。
<br />
<br />
両社はLynparzaの開発販売で提携しており、肺癌や前立腺癌、婦人科癌などで多くの第3相併用試験を進めているが、昨年3月には転移性去勢抵抗性前立腺癌のKEYLYNK-010が無益中止された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/merck-announces-keylynk-008-trial-evaluating-keytruda-pembrolizumab-plus-lynparza-olaparib-for-patients-with-metastatic-squamous-non-small-cell-lung-cancer-to-stop-for-futility/" target="blank">
同社のプレスリリース(12/7付)</a>
<br />
<br />
翌日、MSDはエーザイと共に第3相LEAP-001試験のフェールを発表した。MSI-H(高度マイクロサテライト不安定性)ではなくpMMR(ミスマッチ修復機能十分)な進行/難治内膜腫の一次治療として、エーザイのLenvima(lenvatinib)とKeytrudaの併用法を検討したが、全生存期間もPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)も標準療法群(carboplatinとpaclitaxelの併用)を有意に上回らなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/merck-and-eisai-provide-update-on-phase-3-leap-001-trial-evaluating-pembrolizumab-plus-lenvima-lenvatinib-as-first-line-treatment-for-patients-with-advanced-or-recurrent-endometrial-carcinom/" target="blank">
両社のプレスリリース(12/8付)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>メルクのBTK阻害剤、多発性硬化症の第3相が二本ともフェール</u>
<br />
(2023年12月5日発表)
<br />
<br />
ドイツのメルクは、M2951(evobrutinib)の第3相再発性多発性硬化症試験が二本ともフェールしたと発表した。血液癌用薬として複数の製品が承認されているBTK阻害剤のもう一つの有望用途と見なされているので驚きだ。
<br />
<br />
45mgを一日二回、経口投与する効果をサノフィのAubagio(teriflunomide)14mg一日一回経口投与と比較した試験で、主評価項目である年率再発率が一本は両群とも0.11、もう一本は0.15対0.14で、大差なかった。会社側はAubagio群の成績が予想以上に良かったことを指摘している。確かに、20年に米国で承認されたノバルティスの抗CD20抗体Kesimpta(ofatumumab)の第3相Aubagio対照試験二本では0.11対0.22と0.10対0.25、21年承認のJanssenのS1P1調節剤Ponvory(ponesimod)の試験では0.20対0.29だった。Aubagio自身は12年に承認され、14mgは第3相試験の一本で0.37(偽薬群は0.54)、もう一本は0.32(同0.50)だった。
<br />
<br />
優れた治療薬が普及するにつれて、未知の要素が残る新薬の臨床試験の被験者を募集するのが難しくなる。偽薬ではなく実薬対照とするのは対策の一つだが、Aubagioは咬ませ犬状態で、近年の多くの新薬が対照試験で有意な差を付けているため、担当医が比較的状態がよく再発の少ない患者を選りすぐって組み入れるリスクがありそうだ。それにしても、数値が対照群並みに留まったのは失望的だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merckgroup.com/en/news/evobrutinib-phase-lll.html" target="blank">
独メルクのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>イーライリリーのCDK4/6阻害剤も延命効果は確立せず</u>
<br />
(2023年12月5日発表)
<br />
<br />
イーライリリーのCDK4/6阻害剤Verzeni(abemaciclib)は18年に米欧日でホルモン受容体陽性her2陰性乳癌の一次治療としてアロマターゼ阻害剤と併用することが承認された。エビデンスとなったMONARCH 3試験の中間解析でPFS(無進行生存期間)がメジアン28ヶ月とアロマターゼ阻害剤・偽薬併用群の14ヶ月を上回り、ハザードレシオが0.54、p<0.0001と良好な成績を収めた。承認から5年経ち、副次的評価項目である全生存の解析は有意水準に達しなかったことがサン・アントニオ乳癌シンポジウムで発表された。メジアン生存期間は66.8ヶ月対53.7ヶ月で1年以上上回ったが、ハザードレシオは0.804と、承認されている薬の多くと異なり0.80の壁をクリアできなかった。p値も0.066だった。
<br />
<br />
ノバルティスのCDK4/6阻害剤Kisqali(ribociclib)は上記と類似した内容のMONALEESA-2試験でPFSのハザードレシオ0.556、副次的評価項目である全生存のハザードレシオは0.76となり、どちらも統計的に有意だった。数値の上では大きな差があるわけではないので、検出力の違いが命運を分けたのかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lilly-present-final-overall-survival-analysis-monarch-3-study" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>デュアルPPARアゴニストを原発性胆汁性胆管炎に承認申請</u>
<br />
(2023年12月7日発表)
<br />
<br />
イプセンは、欧米でelafibranorを原発性胆汁性胆汁炎(PBC)に承認申請し受理されたことを公表した。標準療法であるUDCA(ウルソデオキシコール酸)に十分応答しない患者に80mgを一日一回経口投与する。米国は優先審査で審査期限は6月10日、EUは米国より前に受理された模様だ。
<br />
<br />
PBCは自己免疫性疾患。肝内胆管が徐々に破壊され胆汁が肝臓内に滞留、肝臓障害を齎す。罹患率は10万人当り20~40人。50~60代の女性患者が多いようだ。elafibranorは同じフランスのGenfit(Nasdaq:GNFT)からライセンスしたPPARアルファ・デルタ作動剤。第3相ELATIVE試験でがUDCAに十分応答しない患者に追加投与したところ、第52週生化学的反応率(アルカリフォスファターゼがULN(基準値上限)の1.67倍未満でベースライン比15%以上低く、総ビリルビンがULN以下)が51%と偽薬群の4%を大きく上回った。副次的評価項目のアルカリフォスファターゼ正常化率も15%対0%で上回った。一方、掻痒評価スコアの改善はトレンドに留まった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ipsen.com/press-releases/ipsen-confirms-u-s-fda-grants-priority-review-for-new-drug-application-for-elafibranor-for-the-treatment-of-rare-cholestatic-liver-disease-pbc/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BMS、オプジーボを尿路上皮腫一次治療に適応拡大申請</u>
<br />
(2023年12月5日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはOpdivo(nivolumab)を成人の切除不能/転移尿路上皮腫の一次治療としてcisplatinベースの化学療法と併用する適応拡大を米国で申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は24年4月5日。
<br />
<br />
エビデンスとなるCheckMate-901試験ではgemcitabineをcisplatinまたはcarboplatinと併用する標準療法と、更にOpdovoも使う三剤併用法、そして一部の患者においてOpdivoとYervoy(ipilimumab)の二剤併用を施行し、全生存期間を比較した。様々な主評価項目のうち、前二群を比較したサブスタディでメジアン生存期間が21.7ヶ月と標準療法群の18.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.78、p値は0.0171だった(多重性補正の有無は不明)。共同主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)も7.6ヶ月、7.9ヶ月、0.72、0.0012とこちらは高度に有意だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/U.S.-Food-and-Drug-Administration-Accepts-for-Priority-Review-Bristol-Myers-Squibbs-Application-for-Opdivo-nivolumab-in-Combination-with-Cisplatin-Based-Chemotherapy-for-the-First-Line-Treatment-of-Adult-Patients-with-Unresectable-or-Metastatic/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Kisqaliの乳癌摘出術後アジュバントをEUで適応追加申請</u>
<br />
(2023年12月8日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはCDK4/6阻害剤Kisqali(ribociclib)の第3相NATALEE試験のアップデート・データをSABCS(サン・アントニオ乳癌シンポジウム)で発表するとともに、EUで適応追加申請したことを明らかにした。米国でも今月中に優先審査バウチャを添えて申請する予定。
<br />
<br />
Kisqaliは日本における開発は中止された様子だが欧米ではホルモン受容体陽性her2陰性の進行/転移乳癌に承認されている。本試験はステージIIとIIIのホルモン受容体陽性her2陰性の乳癌を切除したが再発リスクが高いと予想される患者5101人を組入れて、非ステロイド系アロマターゼ阻害剤(適応ならgoserelinも)と併用する効果を検討した。進行/転移乳癌における600mg一日一回より少ない400mgを28日サイクルで21日オン、7日オフのスケジュールで投与した。iDFS(無侵襲性疾病生存)のハザードレシオは0.749で6月のASCOで発表された0.748と大差なく、ステージIIとIIIのサブグループ・データも概ね同様だったが、イーライリリーのVerzenio(abemaciclib)の同様な試験では組み入れられなかった、リンパ節転移のないサブグループの数値は0.63から0.72に変わった。
<br />
<br />
一部報道によると、全生存期間のハザードレシオは0.882に留まっている。Verzenioの同様な試験も全生存延長効果は確立しなかった。死亡率が3%強と未成熟であるため信頼性が低く、また、早期乳癌は再発/転移後の治療手段が多いためこれらの薬の影響も考えなくてはならないが、FDAが全生存期間を重視する姿勢を示していることを考えると、数年後に発表されるであろう全生存期間のキチンとした解析結果を注視する必要があるだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/latest-novartis-kisqali-natalee-analysis-reinforces-25-reduction-risk-recurrence-across-broad-population-patients-early-breast-cancer-supports-regulatory-submissions" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>FDAが二種類の鎌状赤血球症遺伝子療法を承認</u>
<br />
(2023年12月8日発表)
<br />
<br />
FDAは鎌状赤血球症のex vivo遺伝子療法を二品、承認した。一つはCRIPR/cas-9という遺伝子編集技術の代表的な企業であるCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)がVertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)と共同開発したCasgevy(exagamglogene autotemcel)。もう一つは、遺伝子療法薬の承認が相次いでいるbluebird bio(Nasdaq:BLUE)のLyfgenia(lovotibeglogene autotemce)で、審査期限前倒しで競合品と同日承認された。
<br />
<br />
どちらも患者から採取した造血幹細胞の遺伝子を修飾し培養した上で患者に戻す。拒絶反応が起きないように、投与前に化学療法による骨髄枯渇処理を施行する。二品の適応は若干異なるが、どちらも重い血管閉塞性クリーゼ(急性症状)を経験した12歳以上の患者の再発を予防するために、一回施行する。臨床試験の主評価項目が若干異なるので単純比較はできないが、どちらも9割以上の患者が長期間予防できた。
<br />
<br />
違いは遺伝子操作手法とその標的遺伝子。鎌状赤血球症は赤血球のヘモグロビンの遺伝子に変異があり、赤血球が鎌状となって、壊れたり毛細血管で詰まったりする。臓器障害を合併するリスクもある。アフリカ系に多い。
<br />
<br />
Casgevyは、ヘモグロビンの代わりに、胎児・新生児期にしか発現しない胎生ヘモグロビン(HbF)を発現させるために、転写抑制因子であるBCL11A遺伝子の赤血球系特異的エンハンサー領域をCRISPR/cas-9技術で切断する。修復メカニズムが作用するが、切断・修復を繰り返す内にエラーが発生し遺伝子が壊れる。
<br />
<br />
Lyfgeniaは同社のレンチウイルス・ベクターを用いてベータ・グロブリンの遺伝子を導入し正常なヘモグロビンを生成できるようにするもの。臨床試験で血液癌が数例見られたことが枠付き警告されている。
<br />
<br />
価格はCasgevyが220万ドル、Lyfgeniaは310万ドルとのことだが、少なくともbluebirdはアウトカム・ベースの代価決定をオファーする考えであり、例えば3年間分割払いにして急性期治療の頻度が所定を超えたらその時点で打ち切り、のようなフォーミュラが採用されるのではないか。患者が多いメディケイドにおけるプライシングも要注目点だ。
<br />
<br />
尚、Casgevyはベータ・サラセミアの治療にも承認申請されているが、優先審査ではなく、審査期限は24年3月30日。
<br />
<br />
bluebirdはLyfgeniaが承認されたら優先審査バウチャをノバルティスに1億ドル余で売却する予定だったが、バウチャを取得できず期待外れに終わった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-gene-therapies-treat-patients-sickle-cell-disease" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://investors.vrtx.com/news-releases/news-release-details/vertex-and-crispr-therapeutics-announce-us-fda-approval" target="blank">
Vertex・Crisprのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://investor.bluebirdbio.com/news-releases/news-release-details/bluebird-bio-announces-fda-approval-lyfgeniatm-lovotibeglogene" target="blank">
bluebirdのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ノバルティス、新規作用機序のPNH用薬が承認</u>
<br />
(2023年12月6日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはFDAがFabhalta(iptacopa)を成人の発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)用薬として承認したと発表した。血液凝固B因子を阻害する作用機序も、PNHの経口剤も、初。200mgを一日二回服用する。
<br />
<br />
抗血液凝固C5因子抗体で治療してもHgbが十分に上昇しない患者を組入れたAPPLY-PNH試験で24週奏効率(輸血を受けずにHgbが2g以上上昇)が82.3%となり、抗C5抗体を継続投与した群の0%を有意に上回った。抗C5抗体歴のない患者を組入れた単群試験では77.5%だった。前者の試験では輸血回避率も95.2%対45.7%で大きな差があった。
<br />
<br />
有害事象は胃腸系の発現率が抗C5抗体を上回り、ウイルス感染症は下回った。深刻有害事象の発現率は二次治療試験で3%、ナイーブ試験は5%だった。莢膜細菌感染症が枠付き警告。ワクチンを接種した上で、投与後は兆候・症状を観察する。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-receives-fda-approval-fabhalta-iptacopan-offering-superior-hemoglobin-improvement-absence-transfusions-first-oral-monotherapy-adults-pnh" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>イーライリリー、BTK阻害剤が適応拡大</u>
<br />
(2023年12月1日発表)
<br />
<br />
イーライリリーはFDAがJaypirca(pirtobrutinib)を慢性リンパ性白血病/小リンパ急性リンパ腫に承認したと発表した。成人の、他のBTK阻害剤とbcl-2阻害剤を含む2次以上の治療歴を持つ成人が適応になる。
<br />
<br />
第1/2相BRUIN試験で、200mgを一日一回経口投与したコフォートのORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が72%、完全反応はゼロ、メジアン反応持続期間は12ヶ月だった。深刻な有害事象の発生率は56%、有害事象による治験離脱率は9%だった。
<br />
<br />
加速承認なので第3相試験で延命またはそれに準じる便益を確認しなければならない。
<br />
<br />
Jaypircaは今年1月に米国で、成人のBTK阻害剤を含む2次以上の全身性治療歴を持つ難治/再発マントル細胞腫に加速承認された。他のBTK阻害剤と異なり共有結合せず、BTK抵抗性変異にも活性を持つ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/jaypircar-pirtobrutinib-now-approved-us-fda-treatment-adult" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-grants-accelerated-approval-pirtobrutinib-chronic-lymphocytic-leukemia-and-small-lymphocytic" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)←AC上程で遅延へ</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">Arcutis Biotherapeuticsのroflumilastクリーム(脂漏性皮膚炎)</td></tr>
<tr><td>23/12/19</td><td align="left">IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期か</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)</td></tr>
<tr><td>23/12/22</td><td align="left">Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)</td></tr>
<tr><td>23/12/24</td><td align="left">アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)</td></tr>
<tr><td>23/12/27</td><td align="left">MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
<tr><td>23/12/30</td><td align="left">Zealand PharmaのZegalogue(dasiglucagon、先天性高インスリン血症に適応追加)</td></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)→23Q4から遅延</td></tr>
<tr><td>24/1/3</td><td align="left">Checkpoint TherapeuticsのCK-301(cosibelimab、皮膚扁平上皮癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/5</td><td align="left">Novan(Ligand Pharmaceuticals)のberdazimer(伝染性軟属腫)</td></tr>
<tr><td>24/1/12 </td><td align="left">アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/17 </td><td align="left">MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)</td></tr>
<tr><td>24/1/20 </td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
</table><br />
注:ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)は審査期限が12月21日から24年3月21日に延期された
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-37444910829684292722023-12-02T14:54:00.000+09:002023-12-02T14:54:10.577+09:00第1131回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>アストラゼネカ、高カリウム血症用薬のアウトカム試験を中止 </li>
<li>中国製プラスチック・シリンジは要注意 </li>
<li>アッヴィ、c-Met ADCが第2相で良績 </li>
<li>広カバレッジ肺炎球菌ワクチンの第3相成績 </li>
<li>Blenrep shall return </li>
<li>BioVieのアルツハイマー試験で波乱 </li>
<li>ウィフガートの皮下注用はpITP試験がフェール </li>
<li>ファイザーの経口GLP-1作用剤、服用中止が多く第3相入りが不透明に </li>
<li>パドセブの4剤併用法を申請 </li>
<li>CAR-TをALLに承認申請 </li>
<li>EUでデュピクセントをCOPDに効能追加申請 </li>
<li>エプキンリをEUで適応拡大申請 </li>
<li>Aldeyraのドライアイ治療薬はやっぱり承認されず </li>
<li>初のデスモイド腫瘍治療薬が承認 </li>
<li>PRAC、プソイドエフェドリンやGLP-1作用剤に関してアップデート </li>
<li>FDA、CAR-T療法後の二次性腫瘍の精査を開始 </li>
<li>FDA、一部の抗癲癇薬のDRESSリスクを警告 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>アストラゼネカ、高カリウム血症用薬のアウトカム試験を中止</u>
<br />
(2023年12月1日発表)
<br />
<br />
アストラゼネカは18~20年に欧米日で高カリウム血症薬として承認されたLokelma(sodium zirconium cyclosilicate)の心腎アウトカム試験二本を中止すると発表した。患者組入れに時間がかかり、イベント発生率も低いことから、医療を前進させる上で意味のある時間軸内に結果を出すことが困難になったため。安全性問題が原因ではないとしている。
<br />
<br />
二本のうちSTABILIZE-CKD試験は高カリウム血又はそのリスクが高い慢性腎疾患1360人を組入れて悪化抑制作用をeGFR(推算糸球体濾過量)で評価するもの。DIALIZE-Outcomesは高カリウム血症を合併した慢性血液透析患者2800人を組入れて、突然心臓死や卒中、不整脈による入院/ER入室などのリスクを偽薬と比較していた。ClinicalTrials.govによると何れも21年に開始、当初は24~25年に主評価項目の結果が判明する見込みだったが直近では26年に変更されている。
<br />
<br />
15年にZS Pharmaを27億ドルで買収して入手した、非ポリマー系カリウム結合剤。FDAのオレンジブックには35年失効の特許も収載されているが、新薬排他権は今年、失効した。承認当時は年商10億ドル超の声もあったが、23年1-9月期売上高は3億ドルに留まっている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/update-on-crystalize-evidence-trials.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>中国製プラスチック・シリンジは要注意</u>
<br />
(2023年11月30日発表)
<br />
<br />
FDAは中国で製造された液体注入/吸引用プラスチック・シリンジについてデータ収集・分析を行っていることを発表した。中国製造者数社の製品の品質問題に関する情報提供があり、安定的かつ十分な品質や機能を持っていない可能性が疑われるため。
<br />
現時点ではガラス製シリンジ、プリフィルド・シリンジ、経口/局所用シリンジは対象外。
<br />
<br />
消費者や医療提供者、関連施設に対して、レーベルなどをチェックしてもし中国製であった場合はそうでない製品の使用を検討するよう推奨している。中国製しか保有していない場合は使用することができるが、液漏れや破損などのトラブルを密接に監視する。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/medical-devices/safety-communications/evaluating-plastic-syringes-made-china-potential-device-failures-fda-safety-communication" target="blank">
FDAの安全性情報</a>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>アッヴィ、c-Met ADCが第2相で良績</u>
<br />
(2023年11月29日発表)
<br />
<br />
アッヴィは抗c-Met抗体薬物複合体ABBV-399(telisotuzumab vedotin)の第2相LUMINOSITY試験のデータを公表した。昨年初にFDAのブレークスルー・セラピー指定を受けた当時のデータほどではないが良好な成績で、複数の報道によると、加速承認申請を検討しているようだ。
<br />
<br />
この試験はc-Metを発現し、EGFRは野生型の進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌で白金薬による治療歴を持つ患者の単群2次/3次治療試験。c-Met高発現例ではORR(客観的反応率、独立中央評価)が35%、メジアン反応持続期間9ヶ月、メジアン生存期間は14.6ヶ月だった。中程度発現例では各23%、7.2ヶ月、14.2ヶ月だった。
<br />
<br />
c-Met陽性はEGFR野生型進行非小細胞性肺癌の25%程度を占める。同社はVENTANA MET (SP44) RxDxアッセイ(IHC検査)でスクリーニングしている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.abbvie.com/2023-11-29-AbbVie-Announces-Positive-Topline-Results-from-Phase-2-LUMINOSITY-Trial-Evaluating-Telisotuzumab-Vedotin-Teliso-V-for-Patients-with-Previously-Treated-Non-Small-Cell-Lung-Cancer-NSCLC?_ga=2.223543518.496912796.1701302892-1305939607.1679376037" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>広カバレッジ肺炎球菌ワクチンの第3相成績</u>
<br />
(2023年11月28日発表)
<br />
<br />
MSDは21価肺炎球菌ワクチンV116の第3相STRIDE-3試験の結果を公表した。配合されている株の数は既存ワクチンとそれほど変わらないが、既存ワクチンがカバーしていない、そのため感染者数の多い株をカバーしていることが長所。多くの第3相を実施中で、承認申請時期は明らかではない。
<br />
<br />
肺炎球菌は血清型が多く、同社のVaxneuvanceは15価、Pneumovax 23は23価、ファイザーのPrevnar 20は20価ワクチンとなっている。V116は21価で、直接のライバルであるPrevnar 20と大差ないが、株の種類がかなり異なっており、65歳以上の侵襲性肺炎球菌疾患の30%を占める15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35Bの8株をカバーしているのはV116だけ。
<br />
<br />
今回の試験は肺炎球菌ワクチン未接種の成人をV116群とPrevnar 20群に無作為化割付けして一回筋注し、30日後の免疫応答(オプソニン食作用活性試験における幾何平均抗体価で評価)を比較した。50歳以上のコフォート(2362人を1:1割付け)では共通する10株における非劣性検定が成功した。V116だけが配合する11株中10株では、優越性検定が成功し、もう一つの主評価項目である幾何平均抗体価4倍増奏効率でも優越性が確認された。
<br />
<br />
18~49歳のコフォート(301人を2:1割付)では、50~64歳における免疫応答と比較したところ、全21株について非劣性検定が成功した。なぜPrevnar 20群と比較しないのか分からないが、Prevnar 20の試験でも18~59歳に関する比較対象は対照ワクチンではなく60~64歳のデータだったので、薬効の挙証が完璧でないワクチンと比較すると推定誤差が広がってしまうことを恐れたのかもしれない。
<br />
<br />
第3相8本のうちSTRIDE-6試験(肺炎球菌ワクチン接種歴を持つ50歳以上を組入れてVaxneuvanceやPneumoxax 23と比較)も全株に関して有意に上回った旨、公表されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/mercks-v116-an-investigational-21-valent-pneumococcal-conjugate-vaccine-specifically-designed-to-protect-adults-demonstrated-superior-immunogenicity-for-10-of-11-unique-serotypes-compared/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Blenrep shall return</u>
<br />
(2023年11月27日発表)
<br />
<br />
GSKはBlenrep(belantamab mafodotin-blmf)の第3相DREAMM-7試験が中間解析で主目的達成したと発表した。欧米共に既存の販売承認は返上/取消の見込みだが、別途承認/適応追加申請に向かうのではないか。
<br />
<br />
BCMAに結合する抗体薬物複合体で20年に欧米で再発/難治多発骨髄腫の5次治療薬として条件付き承認/加速承認されたが、市販後薬効確認試験であるDREAMM-3試験がフェールし3次治療においてpomalidomide及びdexamethasoneのPdレジメンに追加しても進行・死亡リスクを十分に抑制できず全生存期間は数値上悪化することが判明。米国では11月に承認返上手続きに着手、EUでは9月にCHMPが承認更新に否定的意見をまとめた。
<br />
<br />
起死回生ともいうべき今回の試験は2次治療を受ける494人を組入れて、bortezomibとdexamethasoneのVdレジメンにBlenrepを追加する群とDarzalex(daratumumab)を追加する群のPFS(独立評価委員会方式)を比較した。独立データ監視委員会の勧告に基づき盲検解除した。副次的評価項目である全生存期間は継続追跡するが、中間の名目p値は0.0005と好ましい方向を向いている由。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/gsk-announces-positive-results-from-dreamm-7-head-to-head-phase-iii-trial-for-blenrep/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BioVieのアルツハイマー試験で波乱</u>
<br />
(2023年11月29日発表)
<br />
<br />
米国のBioVie(Nasdaq:BIVI)はNE3107の第3相軽中度アルツハイマー病試験が順調に進まなかったことを明らかにした。プロトコルやGCP(臨床試験基準)の違反例がひどく多く、検出力が失われた。adaptive designの試験であることを利用して、CRO(医薬品開発業務受託機関)を変更した上で追加組入れを行う考え。この用途でのPOC試験は行われていないので、成否の予想は困難だ。
<br />
<br />
NE3107はERK阻害剤。FDAの研究者が抗炎症作用やインスリン感受性改善作用を確認したが糖尿病薬としての開発は上手く行かなかった様子で、開発権が様々な会社に変遷。BioVieはアルツハイマー病患者の多くでインスリン抵抗性が見られることなどに着目、21年にNeurMedixから資産を買収した。アップフロントは300万ドルと株式、目標達成金は730万ドルと株式、という倹しいディールだ。
<br />
<br />
第3相は米国の39施設で439人を組入れて、偽薬群と20mg群(一日二回経口投与、用量は漸増)の第30週におけるADAS-Cog 12とCDR-SB(後者はFDAの推奨に基づき試験中に変更)を比較した。開始当時のプレスリリースによると、プロトコル開発で協力したCROはWorldwide Clinical Trials、実施を担ったCROはCognitive Research Corporation。
<br />
<br />
データ収集・解析を始めたところ、同一施設の複数の症例のMRI画像が酷似していたり、偽薬群の患者の数値が過去の試験では見られなかったほど改善していたり、異常なデータが散見された。精査した結果、15の施設でプロトコルからの顕著な逸脱やGCP違反が判明した。このような場合は当該施設のデータを全て除去して解析することになるが、残った症例は81人のみ、治験を完了し血液検査で服用が確認されたper protocol解析対象は57例しかなかった。
<br />
<br />
この一握りの症例に関しては、最近のアルツハイマー病薬と同様なささやかな治療効果が見られたが、全く有意ではなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://feeds.issuerdirect.com/news-release.html?newsid=5901034322848314" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ウィフガートの皮下注用はpITP試験がフェール</u>
<br />
(2023年11月28日発表)
<br />
<br />
アルジェニクス(Euronext/Nasdaq:ARGX)はVyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa、hyaluronidase-qvfc)の第3相原発性免疫性血小板減少症(pITP)試験、ADVANCE-SC試験がフェールしたと発表した。昨年、点滴静注用薬を用いたADVANCE試験が成功し、持続的血小板回復奏効率が21.8%と偽薬群の5%を上回ったが、今回は13.7%対16.2%で数値上、偽薬以下だった。IWG基準に基づく反応率も点滴静注試験は51%対20%で成功したが、皮下注試験は有意差がなかった。敗因は明らかではない。
<br />
<br />
抗AchR抗体陽性全身性重症筋無力症に承認されている点滴静注用薬Vyvgartの皮下注用新製剤で、米国で6月に承認、日欧でも承認申請中。
<br />
<br />
同社はADVANCE試験に基づき世界に先駆けて6月に日本で一部変更申請した。24年第1四半期に審査結果が出る見込み。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.argenx.com/news/argenx-reports-topline-results-advance-sc-study-vyvgart-hytrulo-primary-immune" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ファイザーの経口GLP-1作用剤、服用中止が多く第3相入りが不透明に</u>
<br />
(2023年12月1日発表)
<br />
<br />
ファイザーは二種類の経口GLP-1作用剤を並行して開発し、第2相の成績を踏まえて片方は第3相ステージアップを断念したが、もう片方も忍容性問題が浮上し不透明になってきた。
<br />
<br />
そーせい社の創薬プラットフォームを利用して創製したPF-07081532(lotiglipron)は今年6月、薬物相互作用や肝臓酵素上昇リスクから開発中止した。マッチ・レース状態だったPF-06882961(danuglipron)は二型糖尿病の用量変動試験でA1cが最大1.16%、体重が4.1kg減少し、経口剤であるため期待が高まった。今回開票した肥満症の後期第2相試験でも第32週に体重が6~11%減少し、偽薬群(1%増加)より優れた成績を上げた。
<br />
<br />
しかし、GLP-1作用剤に付き物の胃腸系副作用の発生率が嘔吐は最大47%、下痢も同25%と高く、各用量とも離脱率が50%を超えた。偽薬群も40%なので、注射用薬よりハードルが低い分、副作用忍容力が低い被験者が集まった可能性もあるかもしれない。
<br />
<br />
それでも、ファイザーは、現行の一日二回服用薬の開発を断念し、24年上期に一日一回型製剤の薬物動態試験の結果が出てから今後の方針を決定する予定。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-announces-topline-phase-2b-results-oral-glp-1r" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>パドセブの4剤併用法を申請</u>
<br />
(2023年11月30日発表)
<br />
<br />
Seagen(Nasdaq:SGEN)とアステラス製薬は、抗ネクチン-4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)をMSDのKeytruda(pembrolizumab)、gemcitabine、及び白金薬と併用で局所進行/転移尿路上皮癌の一次治療に用いる適応拡大をFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は24年5月9日。
<br />
<br />
EV-302/KeyNote-A39試験に基づくもので、gemcitabineと白金薬だけの群と比べて全生存期間のハザードレシオが0.47、メジアン生存期間は31.5ヶ月対16.1ヶ月だった。共同主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)も有意に上回った。
<br />
<br />
Padcev・Keytruda併用は米国でcisplatinベースの化学療法に不適な局所進行/転移尿路上皮癌の一次治療に加速承認されている。上記試験は市販後コミットメントも兼ねているため、本承認切替えも認められるだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.seagen.com/press-releases/news-details/2023/FDA-Grants-Priority-Review-for-Supplemental-Biologics-License-Application-sBLA-of-PADCEV-enfortumab-vedotin-ejfv-with-KEYTRUDA-pembrolizumab-for-First-Line-Treatment-of-Advanced-Bladder-Cancer/default.aspx" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>CAR-TをALLに承認申請</u>
<br />
(2023年11月27日発表)
<br />
<br />
英国のAutolus Therapeutics(Nasdaq:AUTL)は米国でobecabtagene autoleucelを成人の難治/再発B細胞急性リンパ芽球性白血病に承認申請した。EUでも来年上期に申請する予定。CD19を標的とするCAR-T(キメラ抗体受容体-T細胞)療法で、結合後の遊離を早める装飾を行って、過剰刺激に伴う副作用の抑制を図った。エビデンスは第2相FLEX試験で、6月のASCO(米国臨床腫瘍学会)における発表によれば、94人におけるORR(客観的反応率、独立評価)は76%(完解率54%、血球数以外完解21%)だった。メジアン9.5ヶ月追跡時点で61%が寛解を維持していた。G3以上のサイトカイン放出症候群発生率は3%、同ICANは7%だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://autolus.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/autolus-therapeutics-submits-biologics-license-application-us" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>EUでデュピクセントをCOPDに効能追加申請</u>
<br />
(2023年11月27日発表)
<br />
<br />
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)とサノフィは、Dupixent(dupilumab)の二本目のCOPD試験が中間解析で目的達成したと発表した。米国で24年上期に適応拡大申請する考え。EUでは一本目のデータに基づき適応拡大申請中であることも明らかにされた。
<br />
<br />
二本とも、二型炎症性(血中好酸球数が300セル/mcL以上)の中重度COPDで三剤併用しても増悪を十分に管理できない患者を組入れて、52週間の中重度急性増悪の頻度を偽薬と比較したところ、一本目のBOREAS試験では30%抑制、二本目のNOTUS試験では中間解析で34%抑制した(p=0.0002)。副次的評価項目のFEV1の改善も前者では160ml対77mL、後者でも139mL対57mLと、どちらも有意に上回った。尚、今回の試験では有害事象による死亡の発生率が2.6%対1.5%だったが、一本目は1.5%対1.7%で大差なかった。
<br />
<br />
Dupixentは抗IL-4受容体アルファ抗体。アトピー性皮膚炎や好酸球性喘息症など二型炎症反応が関わる疾患に承認されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.regeneron.com/news-releases/news-release-details/dupixentr-dupilumab-significantly-reduced-copd-exacerbations" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>エプキンリをEUで適応拡大申請</u>
<br />
(2023年11月27日発表)
<br />
<br />
アッヴィは、ジェンマブから共同開発販売権を取得した抗CD20/CD3二重特異性抗体、Tepkinly(欧州名、米国ではEpkinly、一般名epcoritamab)の適応拡大をEUで申請し受理されたと発表した。第1/2相のEPCORE NHL-1試験の濾胞性リンパ腫コフォートのデータに基づくもので、成人の難治/再発患者におけるORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が82%(n=128)だった。反応持続期間はメジアン未達。G3のサイトカイン放出症候群が1.6%で発生した。
<br />
<br />
Tepkinlyは23年に米欧日で難治/再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫用薬として承認された(米国は加速承認、EUは条件付き承認)。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.abbvie.com/2023-11-27-AbbVie-Announces-U-S-Food-and-Drug-Administration-FDA-and-European-Medicines-Agency-EMA-Updates-for-Epcoritamab-EPKINLY-R-TEPKINLY-R-for-the-Treatment-of-Relapsed-Refractory-Follicular-Lymphoma?_ga=2.171377888.1542478541.1701128014-1305939607.1679376037" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>Aldeyraのドライアイ治療薬はやっぱり承認されず</u>
<br />
(2023年11月27日発表)
<br />
<br />
Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)は米国でADX 102(reproxalap)をドライアイ治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。事前に開示されていたとおり、FDAは薬効の挙証が不十分と見なし、追加試験を求めた。
<br />
<br />
FDAが2020年にパブコメを求めたドライアイ治療薬に関する開発ガイダンス草案は立証すべき便益として選択肢を三つ挙げている。同社が採用した、兆候と症状の改善効果に関しては夫々について一本を超える臨床試験で実証することを求めている(兆候と症状の両方を評価した試験二本でもよい)。ところが、同社は兆候に関してはシルマー試験と充血度を検討する偽薬対照試験を二本実施したものの、症状はドライアイ・チャンバー・クロスオーバー試験を一本実施してその副次的評価項目として検討しただけだった。承認されなくても無理はない申請内容だったことになる。
<br />
<br />
同社はもう一本ドライアイ・チャンバー・クロスオーバー試験を行ってデータを24年上期にも追加提出する計画。一本目と同様に、目に強風を当てて症状を偽薬群と比較するもので、申請後に不適切と言われないように事前にSPA(特別プロトコル評価)を求める考えだ。
<br />
<br />
ADX 102はRASP(反応性アルデヒド種)調節剤。免疫原となる有機アルデヒド遊離体に結合し炎症推進作用を妨げる。アレルギー性結膜炎でもチャンバー試験が二本、成功しているが、市場性の大きいドライアイ用途を優先している。11月にアッヴィが開発生産販売オプションを取得したところ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.aldeyra.com/news-releases/news-release-details/aldeyra-therapeutics-receives-complete-response-letter-us-food" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/media/144594/download" target="blank">
FDAのドライアイ治療薬開発ガイダンス(草案、2020年12月、pdfファイル)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>初のデスモイド腫瘍治療薬が承認</u>
<br />
(2023年7月27日発表)
<br />
<br />
FDAはSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)のOgsiveo(nirogacestat)を成人の全身性治療が必要な進行性デスモイド腫瘍の治療薬として承認した。150mgを一日二回、経口投与する。
<br />
<br />
デスモイド腫瘍は軟組織における稀な腫瘍。致死的なことは稀だが、手術で摘出してもしばしば再発し、周辺組織に浸透することもある。症状は部位や大きさにより区々。新患は年数千人。Ogsiveoはガンマ・セクレターゼ阻害剤。デスモイド腫瘍の成長を活性化するシグナルを阻害する。第3相試験ではPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが偽薬比0.29、確認ORR(客観的反応率)も41%対8%で上回り、疼痛や身体機能、全般的QoLも有意に改善した。治療時発現有害事象による離脱が20%で発生した(偽薬群は1%)。再生産年齢の女性の75%で無月経症などの卵巣機能障害が見られた。
<br />
<br />
同社は2017年にファイザーから当剤を含む難病薬の開発権を継承して設立された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-therapy-rare-type-non-cancerous-tumors" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://ir.springworkstx.com/news-releases/news-release-details/springworks-therapeutics-announces-fda-approval-ogsiveotm" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【医薬品の安全性】</h4>
<br />
<u>PRAC、プソイドエフェドリンやGLP-1作用剤に関してアップデート</u>
<br />
(2023年12月1日発表)
<br />
<br />
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品安全性監視・リスク評価委員会、PRACは、pseudoephedrineを配合した医薬品やGLP-1作用剤の安全性に関してアップデートした。
<br />
<br />
前者は鼻詰まり用薬として市販薬なども含めて広く普及しているが、PRES(可逆性後頭葉白質脳症)やPCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)の副作用例が報告されていることから、疑われる症状が現れたら即座に服用を止めて受診するよう処方時に指示しなければならない。また、重度または管理不良の高血圧症や急性/慢性の腎臓疾患/腎不全の患者に投与すべきでない。EMAは製薬会社に添付文書を改訂して警告を追加するよう求めた。また、CHMP(医薬品科学的評価委員会)の追認を経て、DHPC(直接的医療従事者向け通知)を発出する考えだ。
<br />
<br />
GLP-1作用剤は様々な副作用懸念が残存しているが、今回は、自殺思慮や自傷思慮に関する症例が臨床試験、市販後薬物監視、刊行物などで報告されているため、製薬会社に追加的な質問を行うことを決めた。来年4月のPRACで改めて検討する予定。現時点では因果関係の結論は出ていないが、クリアすべき事項が残っている由だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-pharmacovigilance-risk-assessment-committee-prac-27-30-november-2023" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>FDA、CAR-T療法後の二次性腫瘍の精査を開始</u>
<br />
(2023年11月28日発表)
<br />
<br />
FDAはCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法後の二次性腫瘍のリスクを評価すると発表した。レンチウイルスやレトロウイルスをベクターとする遺伝子療法のレーベルでは既に警告済みだが、FAERS(FDAの有害事象報告システム)などの症例報告が20件程度蓄積されたため、リスクを精査しFDAによる対応が必要かどうか、検討する。便益が危険を上回るという評価には変わりはない、とのこと。
<br />
<br />
対照はBCMAまたはCD19を標的とする以下の6製品。
<br />
<br />
<li>2seventy bio/BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、和名アベクマ)</li>
<li>セルジーンのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、和名ブレヤンジ)</li>
<li>Legend Biotech/JanssenのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、和名カービクティ)</li>
<li>ノバルティスのKymriah(tisagenlecleucel、和名キムリア)</li>
<li>ギリアド・サイエンシズのTecartus(brexucabtagene autoleucel)</li>
<li>同、Yescarta(axicabtagene ciloleucel、和名イエスカルタ)</li>
<br />
証券会社の調査データを見ると施行実績が多い製品ほど有害事象報告が多いが、当然といえば当然で、FDAはクラス・イフェクトと考えているようだ。CAR-T細胞陽性の腫瘍も見られた由。
<br />
<br />
メーカー側は因果関係について概して懐疑的である様子。血液癌患者に別の血液癌が併発したり、化学療法後に別の血液癌が生じたりすることは珍しくなく、CAR-Tは複数の抗癌剤を経験した患者に用いられることが多いため前治療が原因かもしれない。勿論、理論的な懸念材料なのでCAR-Tが犯人かもしれない。もしそうだとしても、幸いなことに報告件数で見ると頻度は1000人に一人程度とそれほどでもなく、実際は10倍としても100人に一人程度だ。
<br />
<br />
ASH(米国血液学会)が始まるので色々、議論されるだろう。先週号で書いたように、Abecmaの適応拡大申請に関する諮問委員会が招集される模様なので、議題に上がるかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/safety-availability-biologics/fda-investigating-serious-risk-t-cell-malignancy-following-bcma-directed-or-cd19-directed-autologous" target="blank">
FDAの安全性情報</a>
<br />
<br />
<br />
<u>FDA、一部の抗癲癇薬のDRESSリスクを警告</u>
<br />
(2023年11月28日発表)
<br />
<br />
FDAはUCBのKeppra(levetiracetam、和名イーケプラ)とルンドベックのOnfi/Frisium(clobazam)の警告事項にDRESS(薬剤性過敏症症候群)を追加するようメーカー側に要請した。前者は米国で24年前に承認、後者も12年前と市販歴が長く今更だが、この、速やかに診断し治療しなければ命に係わる過敏反応の有害事象が稀に報告されている由。大半は米国外で発生した様子だ。
<br />
<br />
患者に対しては医師に相談する前に服用を止めないよう注意した。ラッシュやリンパ節/顔の腫脹など、異常な症状や反応が現れたら即座に救急医療を求める。ラッシュを伴わないこともあるので診断は簡単ではない。
<br />
<br />
Onfiは米国では11年にレノックス・ガストー症候群の治療薬として承認されたが、活性成分は欧州などでもっと前から抗不安症薬として用いられており、日本でも住友製薬の癲癇治療薬マイスタンとして2000年に承認された。米国では13年にFDAがスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死融解症(TEN)が稀に発生している旨の安全性情報を発出したことがある。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/safety/medical-product-safety-information/antiseizure-medicines-keppra-keppra-xr-elepsia-xr-spritam-levetiracetam-and-onfi-sympazan-clobazam" target="blank">
FDAの安全性情報</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<br />
<table border="1" cellpadding="4" cellspacing="1" frame="box">
<caption><b></b></caption>
<tbody>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23/12/8 </td><td align="left">Vertex/CRISPR TherapeuticsのCTX-001(exagamglogene autotemcel、鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)←AC上程で遅延へ</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">Arcutis Biotherapeuticsのroflumilastクリーム(脂漏性皮膚炎)</td></tr>
<tr><td>23/12/19</td><td align="left">IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期か</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">bluebird bioのbb1111(lovotibeglogene autotemcel、鎌状赤血球症)</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)</td></tr>
<tr><td>23/12/22</td><td align="left">Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)</td></tr>
<tr><td>23/12/24</td><td align="left">アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)</td></tr>
<tr><td>23/12/27</td><td align="left">MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
<tr><td>23/12/30</td><td align="left">Zealand PharmaのZegalogue(dasiglucagon、先天性高インスリン血症に適応追加)</td></tr>
<tr><td>24年1Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)→23Q4から遅延</td></tr>
<tr><td>24/1/3 </td><td align="left">Checkpoint TherapeuticsのCK-301(cosibelimab、皮膚扁平上皮癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/5 </td><td align="left">Novan(Ligand Pharmaceuticals)のberdazimer(伝染性軟属腫)</td></tr>
<tr><td>24/1/12 </td><td align="left">アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)</td></tr>
<tr><td>24/1/17 </td><td align="left">MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)</td></tr>
<tr><td>24/1/20 </td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)</td></tr>
<tr><td>24/1/31 </td><td align="left">Vylumaのatropine点眼(小児近視)</td></tr>
</tbody></table><br />
注:ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)は審査期限が12月21日から24年3月21日に延期
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-34621808428113297022023-11-25T09:19:00.002+09:002023-11-25T09:19:22.185+09:00第1130回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>BET阻害剤を骨髄線維症に承認申請へ </li>
<li>TLR9アゴニストの潰瘍性大腸炎試験がフェール </li>
<li>バイエルのXIa阻害剤、最初の第3相が無益中止 </li>
<li>ヤンセン、二重特異性抗体の化学療法併用法を追加申請 </li>
<li>アベクマの早期使用承認が不透明に </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>BET阻害剤を骨髄線維症に承認申請へ</u>
<br />
(2023年11月20日発表)
<br />
<br />
ドイツのMorphoSys(FSE/Nasdaq:MOR)はCPI-0610(pelabresib)の第3相骨髄線維症試験で主目的を達成したと発表した。12月のASH(米国血液学会)で結果を発表し、24年央に欧米で承認申請する考え。株価は筆頭副次的評価項目がフェールしたことを嫌気して下落した。
<br />
<br />
21年にConstellation Pharmaceuticalsを17億ドルで買収して入手したBET阻害剤。転写因子の動員に関わるbromodomain and extra-terminal domainを阻害して炎症や癌を抑制することが期待されている。今回のMANIFEST-2試験はDIPSSリスク予測スコアがintermediate-1以上でJAK阻害剤未経験の骨髄線維症430人を組入れて、JAK阻害剤ruxolitinibと併用する効果をruxolitinib・偽薬併用と比較した。主評価項目の第24週脾臓量35%削減奏効率(SVR35)は各群66%と35%となり、統計的に有意な差があった。
<br />
<br />
一方、最初の副次的評価項目として設定されたTSS(合計症状スコア)50%削減奏効率(TSS50)は52%対46%、p=0.216とフェールした。TSS自体の低下も15.99点対14.05点、差は1.94でp=0.0545だった。但し、intermediateリスク400人のサブグループ分析はどちらもp値が0.05を下回った。TSS50は全体の解析と見比べて偽薬群の数値が低くなっている。逆に言えば、高リスク・サブグループの奏効率が中リスク・グループよりかなり高かったことになり、変な感じだ。尤も、高リスク・サブグループは逸失データが多かったため解析を見送った由であり、同じ理由で全体の解析も歪められているのかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.morphosys.com/en/news/morphosys-phase-3-study-pelabresib-myelofibrosis-demonstrates-statistically-significant" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>TLR9アゴニストの潰瘍性大腸炎試験がフェール</u>
<br />
(2023年11月21日発表)
<br />
<br />
スウェーデンのInDex Pharmaceuticalsは、IDX0150(cobitolimod)の第3相潰瘍性大腸炎試験の独立データ監視委員会(iDMC)が無益認定したため治験中止すると発表した。5月にヴィアトリス・ジャパンが日本における開発販売権を取得したばかり。
<br />
<br />
このCONCLUDE試験は伝統的治療薬に加えてバイオ薬やJAK阻害剤にも十分応答しない、中重度左側潰瘍性大腸炎における便益と危険を検討するもの。寛解導入における至適用量を決定するステージ1で、440人を偽薬、250mg、または500mgを第0週と第3週に大腸内投与する3群に無作為化割付けして、第6週における臨床的寛解率を比較した。ステージ2は至適用量による寛解導入、ステージ3は応答者に対する維持療法、を検討する予定だった。しかし、ステージ1の中間評価(n=133)で試験を続行しても目的達成の確率は低いと判定された。
<br />
<br />
cobitolimodは同社のDNA-based ImmunoModulatory Sequenceプラットフォームの成果で、TLR9に結合して炎症抑制的なサイトカインの分泌を誘導する。後期第2相のCONDUCT試験で250mg群の第6週臨床的寛解率が21%と偽薬群の7%を上回り、片側p値は0.05を下回った。しかし、31mg群が13%、125mg群は5%、隔週ではなく4週連続投与した125mgの群は10%とあまり用量反応相関は見られなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.indexpharma.com/en/index-pharmaceuticals-discontinues-cobitolimod-phase-iii-program/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>バイエルのXIa阻害剤、最初の第3相が無益中止</u>
<br />
(2023年11月19日発表)
<br />
<br />
バイエルはBAY 2433334(asundexian)の第3相脳卒中予防/治療試験を2本実施しているが、独立データ監視委員会が予防試験を無益認定、勧告に従い繰上げ中止することを明らかにした。治療試験は勧告に従い続行する。予防ではもう一本、やや異なった第3相を計画しているが、デザインを見直す予定。
<br />
<br />
Xa阻害剤を販売するバイエルやBMS/JNJ陣営が新たな抗凝固剤として開発している経口XIa阻害剤の一つ。抗凝固薬は血栓塞栓リスクを抑制できるが、その裏返しで出血リスクが高まるのが難点。Xa阻害剤は例外と考えられたが、期待ほどではなかった。次の期待がXIa阻害剤で、アシュケナージ系ユダヤ人で比較的多い欠乏者は脳卒中リスクが低いだけでなく特発的出血も少ない点が注目される。
<br />
<br />
後期第2相のPACIFIC-Stroke試験では非心原性虚血性脳卒中から48時間以内の標準療法を受けている患者に追加投与して6ヶ月間追跡したが、高用量2群は脳卒中発生率が偽薬群より数値上高かった。検出力を上げるために無症候性の隠れ脳梗塞(MRIで判定)もカウントしたことが裏目に出た模様で、メジアン10ヶ月追跡時点の症候性虚血性脳卒中またはTIA(一過性脳虚血発作)発生率は、少なくとも数値上は、用量と逆相関していた。
<br />
<br />
今回のOCEANIC-AF初発予防試験は心房細動で脳梗塞のリスクが高い患者18000人を組入れて脳卒中/全身性塞栓症のリスクや大出血のリスクをBMS/ファイザーのEliquis(apixaban)と比較した非劣性検定試験。日本の施設も参加した。安全性は過去の試験と同様であった由なので、予防効果が期待以下だったのだろう。
<br />
<br />
続行するOCEANIC-STROKE再発予防試験は非心原性虚血性脳卒中または高リスクTIAを発症してから72時間以内の9300人を組入れて、虚血性脳卒中、そして大出血のリスクを偽薬と比較している。三本目のOCEANIC-AFINA試験は65歳以上の高リスク心房細動で、経口抗凝固剤が不適な患者を組入れて効果や安全性を偽薬と比較する予定。一言でいえば、実薬対照試験は打ち切りになったがunmet medical needに応えるべき偽薬対照試験は継続する。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://irpages2.equitystory.com/cgi-bin/show.ssp?companyName=meldeverlinkung&language=English&id=999&companyDirectoryName=bayer&lang=en&newsID=2640311" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>ヤンセン、二重特異性抗体の化学療法併用法を追加申請</u>
<br />
(2023年11月20日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen Pharmaceuticalは米国でEGFR・MET二重特異性抗体Rybrevant(amivantamab-vmjw)をEGFRにエクソン19欠損またはL858R置換を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌に適応拡大申請した。Tagrisso(osimertinib)による治療歴を持つ患者にcarboplatin及びpemetrexedと併用する。第3相MARIPOSA-2試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が6.3ヶ月とRybrevantの代わりに偽薬を用いた群の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.48だった。全生存期間の解析は未成熟だが、ハザードレシオの点推定値は0.77だった。深刻な有害事象の発生率は32%対20%で上回った。
<br />
<br />
この試験では第3世代EGFR阻害剤JNJ-73841937(lazertinib)と4剤併用する群も設定されており、組入れは3剤併用群だけ半数に留められていたことから考えれば、本命は4剤併用だったと推測されるが、今回の申請には含まれなかったようだ。PFSのメジアン値は8.3ヶ月、2剤併用群比ハザードレシオは0.44で統計的に有意だったので数値は悪くないが、3剤併用と見比べてハザードレシオが大きくは変わらないことや、未成熟とは言え全生存のハザードレシオが0.96であること、そして、深刻有害事象発生率が52%であることなどを考慮したのかもしれない。あるいは、単に準備が整わなかっただけかもしれない。
<br />
<br />
Rybrevantは21年に欧米で承認。白金薬による治療歴を持ちEGFRにエクソン20挿入変異のある転移性非小細胞性肺癌に単剤投与する。市販後薬効確認試験のPAPILLON試験が成功、本承認切替や新患患者にcarboplatin及びpemetrexedと併用する一部変更を申請中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/janssen-submits-supplemental-biologics-license-application-to-u-s-fda-seeking-approval-of-rybrevant-amivantamab-vmjw-plus-chemotherapy-for-the-treatment-of-patients-with-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer-who-progressed-on-or-after-osimertinib" target="blank">
JNJのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>アベクマの早期使用承認が不透明に</u>
<br />
(2023年11月20日発表)
<br />
<br />
2seventy bio(Nasdaq:TSVT)と開発販売パートナーのブリストル マイヤーズ スクイブはAbecma(idecabtagene vicleucel)を承認用法より早い段階で用いる一変申請を行い、日本では薬食審再生医療等製品・生物由来技術部会が効能追加を了承したところだが、米国は審査期限の12月16日には間に合わないとの通知を受けた。腫瘍学諮問委員会に上程が決まったため。招集は12月下旬以降、審査結果がまとまるのはその1ヶ月以上後だろうから、2月以降に持ち越される可能性が高い。急に諮問が決まったことから想像すれば、審査の途中で何らかの懸念材料が浮上したのではないか。
<br />
<br />
AbecmaはBCMAを標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法。今回の申請は3種類の作用機序の治療薬すべてを含む2~4次治療歴を持ち最終治療抵抗性の難治/再発多発骨髄腫を適応に追加するもの。エビデンスとなる第3相KarMMa-3試験では、PFS(無進行生存期間、独立委員会評価)のメジアン値が13.3ヶ月と標準治療群(5種類のレジメンから医師が選択)の4.4ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.49だった。全生存期間の解析は未成熟だが、死亡率は30%対26%で上回った。原因による内訳を見ると癌の進行や有害事象によるものは大差ないが、「死」としか報告されていないものが3.5%対0.2%となっているのが注目される。一方、致死的な有害事象の発生率は14%対6%で上回り、治療時発現有害事象によるものだけに絞っても2.7%対0.8%となっており、薬が原因とは断定できないにしても、有害事象に偏りがあることは軽視できないだろう。。
<br />
<br />
現在の適応は、米国では3クラス全てを含む4次治療歴。エビデンスとなった試験は3次以上の治療歴を持つ患者を組入れたが、欧日と異なり、FDAは被験者の88%を占めた4次治療歴を持つ患者に限定した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/Bristol-Myers-Squibb-and-2seventy-bio-Provide-Update-on-U.S.-FDA-Review-of-sBLA-for-Abecma-idecabtagene-vicleucel-in-Earlier-Lines-of-Therapy-for-Triple-Class-Exposed-Relapsed-or-Refractory-Multiple-Myeloma/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23/11/23</td><td align="left">Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">SpringWorksのnirogacestat(デスモイド腫瘍)</td></tr>
<tr><td>23/12/8 </td><td align="left">Vertex/CRISPR TherapeuticsのCTX-001(exagamglogene autotemcel、鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)←遅延へ</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">Arcutis Biotherapeuticsのroflumilastクリーム(脂漏性皮膚炎)</td></tr>
<tr><td>23/12/19</td><td align="left">IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期される?</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">bluebird bioのbb1111(lovotibeglogene autotemcel、鎌状赤血球症)</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)</td></tr>
<tr><td>23/12/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>23/12/22</td><td align="left">Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)</td></tr>
<tr><td>23/12/24</td><td align="left">アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)</td></tr>
<tr><td>23/12/27</td><td align="left">MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-49861657352528082512023-11-18T15:33:00.002+09:002023-11-18T15:33:51.938+09:00第1129回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>バイエル、PI3K阻害剤の承認を返上へ </li>
<li>第二の神経線維腫用薬を承認申請へ </li>
<li>イミフィンジのステージ3NSCLC試験がフェール </li>
<li>リフヌアは米国では支持されず</li>
<li>AKT阻害剤が一部の乳癌に承認 </li>
<li>イクスタンジが高リスクHSPCに適応拡大 </li>
<li>CRISPR技術の薬が英国で世界初承認 </li>
<li>キイトルーダがher2陰性の胃癌等にも承認 </li>
<li>中心静脈カテーテル用抗微生物薬が承認 </li>
<li>BMSのROS1陽性NSCLC用薬も承認 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>バイエル、PI3K阻害剤の承認を返上へ</u>
<br />
(2023年11月13日発表)
<br />
<br />
バイエルはPI3Kアルファ/デルタ阻害剤Aliqopa(copanlisib)の米国における販売承認申請を自主的に撤回すべくFDAと協働する考えであることをプレスリリースで正式公表した。6年前に2種類以上の全身性治療歴を持つ成人の再発濾胞性リンパ腫用薬として加速承認されたが、市販後薬効確認試験で延命またはそれに準じる効果が見られなかった。同薬は中国と台湾でも承認されているが、EUはCHMPが懐疑的で申請撤回を余儀なくされた。
<br />
<br />
PI3K阻害剤では加速承認後の市販後薬効確認試験フェールが相次いでいる。Aliqopaの場合、加速承認のエビデンスとなった第2相単群試験で良好なORR(客観的反応率)と反応持続性を示し、市販後に完了したCHRONOS-3試験ではrituximabに追加するとメジアンPFS(無進行生存期間)を半年ほど伸ばせることが明らかになったが、同試験の全生存期間の解析はフェールし、適応拡大申請は見送られた。更に、今回、rituxanなどによる1~3次治療歴を持つ難治性緩徐進行非ホジキンリンパ腫を組入れたCHRONOS-4試験で、rituxan-bendamustine併用レジメンあるいはR-CHOP多剤併用レジメンに追加してもPFS延長効果が見られなかった。
<br />
<br />
効果のない薬の臨床試験がフェールするのは珍しくないが、効果のある薬なら必ず成功するとも限らない。Never give upが重要だが、PI3K阻害剤はORRが意味のある延命と必ずしもリンクしないことがかなり明確になってきたので、セカンド・チャンスやサード・チャンスを貰うのは難しい。他社の先行事例を見ても、承認返上は已むを得ないとことだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.bayer.com/en/us/news-stories/update-on-aliqopar" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>第二の神経線維腫用薬を承認申請へ</u>
<br />
(2023年11月16日発表)
<br />
<br />
米国のSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)はmirdametinibの後期第2相ReNeu試験がポジティブな結果になったと発表した。2歳以上の切除不能神経線維腫症1型関連叢状神経線維腫(NF1-PN)に2mg/m2(最大4mg)を一日二回、28日サイクルで21日反復経口投与したところ、小児におけるcORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が52%、成人では41%、メジアン反応持続期間は未到達、メジアン投与期間はどちらも22ヶ月となった。ORRの判定基準は腫瘍量が96週内に20%以上減少すること。悠長だが、過去の試験で1年以上経ってから基準達成する症例もあったことから、追跡期間を投与開始後8ヶ月ではなく約22ヶ月に設定した経緯がある。
<br />
<br />
G3以上の治療関連有害事象発生率は各25%と16%。同社は24年上期に承認申請する考え。
<br />
<br />
NF1はMAPK経路のサプレッサーであるニューロフィブロミンの遺伝子の常染色体性優性遺伝性疾患。米国の罹患者は推定10万人。症状は区々だ。20~22年に米欧日でアストラゼネカのMEK1/2阻害剤Koselugo(selumetinib)が承認された。mirdametinibもMEK1/2阻害剤で会社側は忍容性面でKoselugoを凌ぐことを期待している。SpringWorksは17年にファイザーからmirdametinibなど希少難病領域のパイプラインを継承して設立された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.springworkstx.com/news-releases/news-release-details/springworks-therapeutics-announces-positive-topline-results" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>イミフィンジのステージ3NSCLC試験がフェール</u>
<br />
(2023年11月14日発表)
<br />
<br />
アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第3相PACIFIC-2試験がフェールしたことを明らかにした。切除不能なステージIII非小細胞性肺癌(NSCLC)328人を組入れて、根治的白金薬ベース化学放射線療法(CRT)と同時に4週毎投与し、その後も癌が進行するまで維持投与したが、PFS(無進行生存期間)が偽薬を同時投与・維持投与した群と大差なかった。
<br />
<br />
ImfinziはステージIIINSCLCでCRTに反応/疾病安定化した患者の維持療法として承認されている。上記試験が成功すれば早い段階で、より多くの患者に用いることができるはずだったが、課題持越しとなった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/update-on-pacific-2-phase-iii-trial-for-imfinzi.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>リフヌアは米国では支持されず</u>
<br />
(2023年11月17日報道)
<br />
<br />
FDAは肺・アレルギー用薬諮問委員会を招集し、MSDが成人の難治/説明不能な慢性咳嗽の治療薬として承認申請した末梢作用性選択的P2X3受容体アンタゴニスト、Lyfnua(gefapixant)について意見を聞いた。12人対一人という圧倒的多数が、薬効に懐疑的なFDAの評価を支持した。日本で22年1月に、EUでも今年9月に承認を取得したが、米国は難しそうだ。審査期限は12月27日。
<br />
<br />
第3相試験では英国のVitalograph社のVitaloJAK咳モニターを用いて最大24時間連続で咳嗽を録音、無音部分や雑音部分を圧縮した上で、人が咳の回数を数えた。この胸部センサーとマイクを有する機器はFDAの510(k)認証を得ているが、MSDは独自のディバイスと圧縮アルゴリズムを採用したため、FDAは一巡目の承認審査でバリデーションが不十分と見なし、咳のカウント方法にも注文を付け、更に臨床的な便益についても疑問を持ち、審査完了通知を発出した。MSDは追加的分析を提出、二巡目に入った。FDAは、改訂されたデータに基づいて、治療効果が限定的で臨床的な便益があるかどうか不明と再び主張した。
<br />
<br />
主評価項目の解析はログ変換値を用いて実施されたが、理解しやすい生データのメジアン値に注目すると、COUGH-2試験ではベースライン値の20回/時前後から45mg群は9.8回/時減少したのに対して偽薬群は8.7回/時減少と、差は1回程度に過ぎない。COUGH-1試験ではベースライン(試験薬群は20.9回/時、偽薬群は26.1回/時)比で各10.5回/時と8.9回/時減少と、ここでも1~2回程度の差に過ぎない。
<br />
<br />
結局のところ、偽薬効果というノイズが大きすぎて試験薬の有難さがぼやけてしまった憾みがある。
<br />
<br />
ロシュのスピンアウトであるAfferent Pharmaceuticalsを16年に買収して入手したコンパウンド。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fiercebiotech.com/biotech/fda-adcomm-shoots-down-mercks-chronic-cough-med-12-1-vote)" target="blank">
Fierce Biotechの報道</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>AKT阻害剤が一部の乳癌に承認</u>
<br />
(2023年11月17日発表)
<br />
<br />
FDAはアストラゼネカのTruqap(capivasertib)を成人のホルモン受容体陽性her2陰性局所進行/転移乳癌用薬として承認した。PIK3CA、ATK1、またはPTENに変異を持ち、転移後に一次以上の内分泌療法を施行した後に進行、または切除術後付随療法が完了してから12ヶ月内に再発した癌が適応になる。選択的エストロゲン受容体ダウンレギュレータであるFaslodex(fulvestrant)と併用する。上記変異の有無を検査するFoundationOne CDxアッセイも承認された。日欧でも承認申請中。
<br />
<br />
エビデンスとなる第3相CAPItello-291試験では共同主評価項目である上記変異を持つサブグループ(n=289)でも、全ユニバース(n=708)でも、PFS(無進行生存期間、担当医評価)が有意に伸びた。前者のメジアン値は7.3ヶ月、Faslodex・偽薬併用群は3.1ヶ月、ハザードレシオは0.50、全ユニバースの数値は各7.2ヶ月、3.6ヶ月、0.60であったため、アストラゼネカは全ユニバース向けに申請したが、FDAはサブグループに限定した。レーベルによると、上記変異を持たない313人ではハザードレシオ0.79(95%信頼区間0.61-1.02)で、効果がないとも言い難い数値だ。FDAが限定した理由は明らかではないが、ORRやPFSが必ずしも全生存期間とリンクしないPI3K阻害剤の連想かもしれない。Truqapの標的であるATKはPI3Kの川下に位置していて、適応がTruqapとオーバーラップするノバルティスのPiqray(alpelisib)はPI3Kアルファ阻害剤である。
<br />
<br />
あるいは、変異陰性サブグループの全生存期間のデータがあまり有望ではないのかもしれない。PFSの解析が実施された段階では未成熟とのことで、全ユニバースのデータすら公表されていないが...
<br />
<br />
第一三共/アストラゼネカのEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)が承認されて以来、her2陰性の定義が複雑/曖昧になっている。本剤の適応範囲もFDAは下記リリースでher2陰性と呼んでいるがアストラゼネカはher陰性/低発現と一部食い違っているが、レーベルの上記試験成績の欄では括弧書きでher2低発現も含むことを明記しており、実際には食い違いはない。
<br />
<br />
Truqapは05年にAstex(13年に大塚製薬が子会社化)と結んだ創薬提携の成果。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-capivasertib-fulvestrant-breast-cancer" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/truqap-approved-in-us-for-hr-plus-breast-cancer.html" target="blank">
アストラゼネカのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>イクスタンジが高リスクHSPCに適応拡大</u>
<br />
(2023年11月17日発表)
<br />
<br />
アステラス製薬は、Xtandi(enzalutamide)を未だ転移していない、去勢療法にも抵抗性が生じていない段階の前立腺癌に単剤、またはアンドロゲン除去療法剤と併用投与することがFDAに承認されたと発表した。根治的前立腺全摘/放射線療法後にPSA値が9ヶ月間以内に倍増するなど、生化学的再発(BCR)リスクが高い患者が適応になる。第3相EMBARK試験で、併用群の5年MFS(無転移生存)が83.5%とleuprolide・偽薬並行群の71.4%を上回り、ハザードレシオは0.42。Xtandi単剤群もハザードレシオ0.63だった。MFS解析時点では全生存のデータは未成熟だったが、数値自体は良好と報じられている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astellas.com/jp/news/28626" target="blank">
同社のプレスリリース(和文)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>CRISPR技術の薬が英国で世界初承認</u>
<br />
(2023年11月16日発表)
<br />
<br />
CRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)とパートナーのVertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は、Casgevy(exagamglogene autotemcel)が英国で鎌状赤血球病とベータ・サラセミアの治療薬として承認されたと発表した。12歳以上の、造血幹細胞移植が適応になるがHLA型がマッチするドナーが見つからない、鎌状赤血球病の場合は特定の遺伝子型を持ち血管閉塞性クリーゼを繰り返す患者が、適応になる。鎌状赤血球病の試験では評価可能29人中28人において12ヶ月以上に亘り重度疼痛クリーゼが発生しなかった。ベータ・サラセミアでは42人中39人が12ヶ月以上の間、赤血球輸血が不要だった。残り3人も7割減少した。有害事象は造血幹細胞移植と似ていた。
<br />
<br />
CRISPR社はCRISPR/Cas9遺伝子編集技術の発明者の一人として20年にノーベル化学賞を受賞したEmmanuelle Charpentierらが設立した会社で、今回、同技術に基づく医薬品が世界で初めて承認された。ヘモグロビンの欠乏を補うために、患者から採取したCD34陽性細胞をCRISPR/Cas9編集し、胎児期や新生児期にだけ発現する胎生ヘモグロビン(HbF)の転写抑制因子であるBCL11A遺伝子を切断・改変した上で患者に戻すもの。赤血球機能が十分に発揮されるようになるまで移植後1ヶ月ほど入院する。
<br />
<br />
米国やEUでも承認申請中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.gov.uk/government/news/mhra-authorises-world-first-gene-therapy-that-aims-to-cure-sickle-cell-disease-and-transfusion-dependent-thalassemia" target="blank">
MHRA(英国の承認審査機関)のプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://ir.crisprtx.com/news-releases/news-release-details/vertex-and-crispr-therapeutics-announce-authorization-first" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>キイトルーダがher2陰性の胃癌等にも承認</u>
<br />
(2023年11月16日発表)
<br />
<br />
FDAはKeytruda(pembrolizumab)を成人のher2陰性で局所進行切除不能/転移性の胃/胃食道接合部腺腫に用いることを承認した。fluoropyrimidine系及び白金系の化学療法薬と併用する。KeyNote-859(1次治療試験)の中間解析でメジアン生存期間が12.9ヶ月と偽薬併用群の11.5ヶ月を若干上回り、ハザードレシオは0.78だった。15%の患者が有害事象によりKeytrudaの投与を永続的に中止した。
<br />
<br />
CPS(腫瘍や免疫細胞におけるPD-L1発現評価スコア)が1未満のサブグループにおけるハザードレシオは0.92と見劣りするためか、EUのCHMPは10月にCPS≧1に限定して肯定的意見を出したが、FDAは限定しなかった。
<br />
<br />
her2陽性患者に用いることは一足早く21年に加速承認されたが、その後の追跡でCPS≧1以上のサブグループにしかPFS延長効果が見られなかったため、適応範囲が縮小され、EUでもCPS≧1限定で承認された経緯がある。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-pembrolizumab-chemotherapy-her2-negative-gastric-or-gastroesophageal-junction" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>中心静脈カテーテル用抗微生物薬が承認</u>
<br />
(2023年11月15日発表)
<br />
<br />
米国のCorMedix(Nasdaq:CRMD)は、FDAがDefencath(taurolidine、heparin)を承認したと発表した。腎不全患者に中心静脈カテーテルによる慢性透析を施行する場合、終了後にヘパリンを注入して次回施行までの間に血栓ができるのを防ぐが、抗微生物薬も投与することにより、カテーテル関連血流感染症(CRBSI)を抑制する。806人を組入れた第3相試験の中間解析でヘパリン注入群と比べてリスクが72%小さかった(p=0.0034)。有害事象はカテーテル機能不良、出血、悪心嘔吐など。
<br />
<br />
20年にローリング承認申請を完了したが、生産委託先やヘパリン調達先が査察時に指摘事項を受け、審査完了通知を二回受領したが、やっと承認に漕ぎ着けた。
<br />
<br />
the 21st Century Cures Actで導入されたLPAD(Limited Population Pathway for Antibacterial and Antifungal Drugs)に基づく承認。適応を限定することを条件に小規模な臨床試験に基づく承認申請を認めるもので、18年に難治性非結核性抗酸菌症性肺炎用薬として承認されたインスメッドのArikayce(amikacin)、19年に高度抵抗性肺結核用薬として承認されたGlobal Alliance for TB Drug DevelopmentのPretomanid(pretomanid)に続く第3号。806人は小規模ではないように感じるが、他の要件が一部簡略化されているのかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://cormedix.com/cormedix-inc-announces-fda-approval-of-defencath-to-reduce-the-incidence-of-catheter-related-bloodstream-infections-in-adult-hemodialysis-patients/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BMSのROS1陽性NSCLC用薬も承認</u>
<br />
(2023年11月15日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはFDAがAugtyro(repotrectinib)を成人の局所進行/転移ROS1陽性非小細胞性肺癌用薬として承認したと発表した。22年にTurning Point Therapeuticsを41億ドル(エクイティ・バリュー・ベース)で買収して入手した経口大環状ROS1チロシン・キナーゼ阻害剤で、160mgを最初の14日は一日一回、その後は二回、経口投与する。
<br />
<br />
第1/2相試験で類薬を未経験の71人におけるcORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が79%(完全反応率は6%)、メジアン反応持続期間34ヶ月、1剤経験し化学療法未経験の56人では各38%(同5%)、14ヶ月だった。主な有害事象は眩暈、末梢ニューロパチー、便秘、呼吸困難、運動失調など。致死的有害事象の発生率は4%で、肺臓炎や心停止など。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/U.S.-Food-and-Drug-Administration-Approves-Augtyro-repotrectinib-a-Next-Generation-Tyrosine-Kinase-Inhibitor-TKI-for-the-Treatment-of-Locally-Advanced-or-Metastatic-ROS1-Positive-Non-Small-Cell-Lung-Cancer-NSCLC/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>lebrikizumabがEUでは承認された</u>
<br />
(2023年11月17日発表)
<br />
<br />
スペインのAlmirall(BME:ALM)は、EUがEbglyss(lebrikizumab)を年齢12歳以上、体重40kg以上の小児と成人の全身性治療が適応になる中重度アトピー性皮膚炎の治療薬として承認したと発表した。最初の2回は500mg、その後は250mgを皮下注し、二週毎に16週間反復した第3相試験でEASI75達成率が偽薬を有意に上回った(ADvocate 1試験では59%対偽薬群16%、ADvocate 2では51%対18%)。共同主評価項目であるIGA奏効率も有意に上回った(同じく43%対13%と33%対11%)。
<br />
<br />
抗IL-13抗体で、ロシュから権利を取得したDermiraが19年に欧州での権利を導出したもの。米国では20年にDermiraを買収したイーライリリーが承認申請したが、生産委託先が査察指摘事項を受け、10月に審査完了通知を受領した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.almirall.com/newsroom/news/almirall-receives-european-commission-approval-of-ebglyss-lebrikizumab-for-moderate-to-severe-atopic-dermatitis" target="blank">
Almirallのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23/11/23</td><td align="left">Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">SpringWorksのnirogacestat(デスモイド腫瘍)</td></tr>
<tr><td>23/12/8 </td><td align="left">Vertex/CRISPR TherapeuticsのCTX-001(exagamglogene autotemcel、鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">Arcutis Biotherapeuticsのroflumilastクリーム(脂漏性皮膚炎)</td></tr>
<tr><td>23/12/19</td><td align="left">IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期される?</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">bluebird bioのbb1111(lovotibeglogene autotemcel、鎌状赤血球症)</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)</td></tr>
<tr><td>23/12/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>23/12/22</td><td align="left">Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)</td></tr>
<tr><td>23/12/24</td><td align="left">アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-84101109319942189142023-11-12T10:54:00.000+09:002023-11-12T10:54:18.664+09:00第1128回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>AHA:ウゴービの心血管アウトカム試験成績が発表 </li>
<li>バイエル、PI3K阻害剤の承認を自主返上か </li>
<li>BTK阻害剤を蕁麻疹に承認申請へ </li>
<li>イミフィンジ、肝癌のTACE併用試験が成功 </li>
<li>ブレヤンジをCLL/SLLに適応拡大申請 </li>
<li>CHMP、GSKのJAK阻害剤などの承認を支持 </li>
<li>チクングニア熱ワクチンが初めて承認 </li>
<li>武田薬品の二剤が米国で承認 </li>
<li>イーライリリーの二型糖尿病薬も肥満症に実質的適応拡大 </li>
<li>当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>AHA:ウゴービの心血管アウトカム試験成績が発表</u>
<br />
(2023年11月11日発表)
<br />
<br />
2020年代のスーパースター、GLP-1作用剤の肥満症心血管アウトカム試験の結果がAHA(米国心臓協会)科学部会とNew England Journal of Medicine誌で発表された。ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide)のSELECT試験に関するもので、トップラインは8月に発表済み。同社は欧米でレーベル収載申請した。
<br />
<br />
本試験は45歳以上でBMIが27kg/m2以上、且つ心血管疾患を持つ17604人を偽薬群とWegovy群に無作為化割付けして平均40ヶ月追跡し、MACE(主要有害心血管事象:心血管死、非致死的心筋梗塞、または非致死的脳卒中)の発生リスクを比較した。semaglutideはやや低用量が二型糖尿病用薬Ozempicとして販売されているが、本試験では糖尿病患者は除外された。
<br />
<br />
結果は、ハザードレシオ0.80、p<0.001、と良好な結果になった。発生率は偽薬群が8.0%、試験薬群は6.5%なので、66人に4年間投与すると一人をMACEから救うことができる計算になる。
<br />
<br />
有害事象による投与中止率は各8.2%と16.6%。胆嚢障害の発生率は各2.3%と2.8%。膵炎や自殺の増加は見られなかった。
<br />
<br />
過去の肥満症薬は、肺動脈高血圧や不整脈が増えたり、心血管アウトカム試験で効果がなかったり自殺や未遂が増えたりして、散々だったことを考えると、大きな前進だ。但し、このような試験は多くの除外条件が設けられるので、現実の医療では効果は低下し副作用は増えると覚悟すべきだ。また、一人をMACEから救うのに必要な薬剤費(米国のリスト・プライスで計算)は350万ドル超と聞くと、急に眉を顰める人が増えそうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novonordisk.com/content/nncorp/global/en/news-and-media/news-and-ir-materials/news-details.html?id=166345" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>バイエル、PI3K阻害剤の承認を自主返上か</u>
<br />
<br />
一部報道によると、バイエルはPI3Kアルファ/デルタ阻害剤Aliqopa(copanlisib)の米国における販売承認を自主返上する考えだ。17年に2種類以上の治療歴を持つ濾胞性リンパ腫に加速承認されたが、市販後薬効確認試験である第3相CHRONOS-4試験(rituximabを含む1~3次治療歴のある患者を組入れて、R-BまたはR-CHOPレジメンに追加する便益を検討)がフェールしたとのこと。CHRONOS-3試験(rituximabに反応/安定化後に進行した患者にrituxuimab再開する時に追加)では主評価項目のPFSは有意に改善したが全生存期間では有意差が出ず2年生存率は86%と偽薬追加群の90%より見劣りした。
<br />
<br />
PI3K阻害剤は多くの新薬が加速承認されたが、安全性懸念が浮上したり、市販後薬効確認試験がフェールしたり、期待を裏切るニュースが陸続している。Aliqopaよ、お前もか!
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>BTK阻害剤を蕁麻疹に承認申請へ</u>
<br />
(2023年11月9日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはLOU-064(remibrutinib)の第3相慢性特発性蕁麻疹試験が二本とも成功したと8月に発表したが、トップライン・データが明らかになった。H1ブロッカーに十分応答しない患者に25mgを一日二回、12週間に亘り経口投与して、UAS7(週次蕁麻疹活動性スコア)の変化を調べたところ、一本では20.1点(偽薬群は13.8点)、もう一本では19.6点(同11.7点)減少し、偽薬比有意な差があった。有害事象全体や、BTK阻害剤でしばしば見られる肝機能検査値異常は偽薬並みだった。
<br />
<br />
24年に承認申請する考え。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-data-show-potential-remibrutinib-oral-treatment-chronic-spontaneous-urticaria-providing-significant-symptom-improvement-early-week-2" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>イミフィンジ、肝癌のTACE併用試験が成功</u>
<br />
(2023年11月9日発表)
<br />
<br />
アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第3相肝細胞腫試験、EMERALD-1の成功を発表した。塞栓術が適応になる切除不能肝細胞腫616人を組入れて、TACE(肝動脈化学閉塞療法)にImfinziを追加する効果を検討したところ、維持療法期にbevacizumabも採用した群のPFS(無進行生存期間)が偽薬追加群より統計的に有意な、そして臨床的に意味のある、延長を示した。副次的評価項目である全生存期間を検討するため治験は続行している。尚、同じく副次的評価項目であるImfinziだけ追加した群の成否は明らかではない。
<br />
<br />
Imfinziは切除不能肝細胞腫では抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab-actl)と二剤併用することが承認されている。進行中の第3相では、切除術付随療法としてbevacizumabと併用したり、TACE適合肝細胞腫にImfinzi、Imjudo、エーザイのlenvatinibを併用する手法も検討中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/imfinzi-combination-improves-pfs-in-liver-cancer.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>ブレヤンジをCLL/SLLに適応拡大申請</u>
<br />
(2023年11月9日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブは、Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)を難治再発慢性リンパ性白血病や小リンパ急性リンパ腫に用いる一部変更申請がFDAに受理されたと発表した。優先審査だが、審査期限は来年3月14日とのこと。TRANSCEND試験でbcl-2阻害剤による治療歴を持ちBTK阻害剤に反応しなかった患者49人に投与したところ、CR(完全反応率、独立評価委員会査読)が18%、反応持続期間はメジアン未達(メジアン21ヶ月追跡時点)。ORR(客観的反応率)は42.9%だった。CAR-T療法につきもののサイトカイン放出症候群の頻度はG3が8.5%、G4以上はゼロ、G3/4神経学的イベントの発生率は18.8%だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/U.S.-Food-and-Drug-Administration-Accepts-for-Priority-Review-Bristol-Myers-Squibbs-Application-for-Breyanzi-lisocabtagene-maraleucelfor-Relapsed-or-Refractory-Chronic-Lymphocytic-Leukemia-CLL-or-Small-Lymphocytic-Lymphoma-SLL/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>CHMP、GSKのJAK阻害剤などの承認を支持</u>
<br />
(2023年11月10日発表)
<br />
<br />
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-committee-medicinal-products-human-use-chmp-6-9-november-2023" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
GSKのOmjjara(momelotinib)は成人の中重度貧血症を伴う骨髄線維症患者における脾腫などの症状を治療する。JAK1/2だけでなくACVR1も阻害するせいか、骨髄線維症でしばしば発現し、既存のJAK阻害剤を投与するとしばしば増悪する、貧血症のリスクが小さいことが長所。効果自体は既存薬と大差なさそうだ。米国では9月にOjjaara名で承認、日本でも承認申請中。昨年、Sierra Oncologyを買収して権利を取得したもの。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/omjjara" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
UCBのRystiggo(rozanolixizumab)は皮下注用抗ヒト胎児Fc受容体抗体。標準療法を受けている成人の抗AChR/MuSK抗体陽性全身性重症筋無力症患者に追加投与する。米国では6月に、日本では9月に承認された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/rystiggo" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
NovartisのSpexotras(trametinib)はMEK1/2阻害剤。1歳以上の患者のBRAF V600E変異のある低/高グレード神経膠腫に同社のBRAF阻害剤Finlee(dabrafenib)と併用する。Finleeのほうは9月に肯定的意見を得ているが、Spexotrasはなぜか2ヶ月遅れとなった。製品名は今回初めて聞いたが、遅延と何か関係があるのかもしれない。米国では前者はMekinist名、後者はTafinlar名で販売されているが、欧州は用途などに応じて二つの製品名を使い分けている様子だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/spexotras" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
Mirati Therapeutics(Nasdaq:MRTX)のKrazati(adagrasib)はKRAS G12C阻害剤。KRAS G12C置換のある進行非小細胞性肺癌に単剤投与する。条件付き承認なので別途、薬効を確認する必要がある。
<br />
<br />
7月に否定的意見を受けたが、今回、肯定的意見に変更された。理由はCHMPの説明文を読んでも良く分からない。否定的意見を出した時は条件付き承認の要件であるunmed medical needを充足していないと記していたが、今回のQ&A資料を読むと、22年に条件付き承認されたアムジェンの類薬、Lumykras(sotorasib、米国名Lumakras)の市販後薬効確認試験、CodeBreaK 200の成績が前回の判断に影を落としていたように感じられる。Krazatiの単群試験と同様にORRが良好で、主評価項目のPFSはdocetaxel群を有意に上回ったが、メジアン値の差は1ヶ月余と小さかった。また、全生存期間は大差なく、検出力不足であるにしても、実薬より大きく優れるとは言い難いものだった。このため、FDAも、10月に上程されたFDA諮問委員会も、便益が確立したとは言えないと受け止めた。薬がフェールしたというよりは治験がフェールしただけという見方が多かったようだったが、本当にそうなのか、改めて試験しなければ分からない。もし既存薬と同程度なら、unmet medical needに応える薬とは呼べない。
<br />
<br />
今回、CHMPが意見を変えたのは、腫瘍学のエキスパートの意見などを求めた上で、KrazatiはLumykrasの類薬だが違った点もあるのでCodeBreaK 200試験の結果に配慮する必要は必ずしもないと考え直したためとのこと。あいまいな説明だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/krazati" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/documents/smop-initial/questions-answers-approval-marketing-authorisation-krazati-adagrasib-outcome-re-examination_en.pdf" target="blank">
Q&A資料(pdf)</a>
<br />
<br />
一方、ノバルティスがPROS(PIK3CA関連過成長症候群)の治療薬として承認申請したPI3K阻害剤Vijoice(alpelisib)は、申請撤回となった。米国では昨年4月に承認されたが、CHMPは、臨床的便益が明確でないこと、様々なサブタイプのうち一つにしか作用が見られないこと、成長・発達に与える影響など長期的な安全性が確認されていないことなどから、後ろ向きに評価していた。エビデンスは前向き無作為化割付け対照試験ではなく、Compassionate Use Programに則り人道的な観点から適応外投与が行われた約40人の後顧的チャート・レビューなので、評価が分かれても不思議はない。
<br />
<br />
尚、活性成分はPiqray名でPIK3CA変異などを持つ転移性乳癌に欧米で承認されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/withdrawn-applications/vijoice" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
適応拡大に関する肯定的意見は以下の通り。
<br />
<br />
<li>Blueprint Medicines(Nasdaq:BPMC)のAyvakyt:成人の緩徐全身性肥満細胞腫。KITやPDGFRの阻害薬で、進行性肥満細胞腫やPDGFR変異陽性切除不能/転移消化管間質腫瘍に承認されている。</li>
<li>MSDのKeytruda(pembrolizumab):成人の局所進行性切除不能/転移胆管腫瘍の一次治療としてgemcitabine及びcisplatinと併用する。</li>
<li>イーライリリーのMounjaro(tirzepatide):肥満症や高リスクオーバーウェイトの体重管理に用いるGIP/GLP-1受容体作動剤。米国では別名販売されるがEUでは二型糖尿病薬の適応拡大という扱いになるようだ。</li>
<li>ファイザーのTalzenna(talazoparib):成人の転移性去勢抵抗性前立腺癌(但し化学療法が不適な場合に限る)。同社のXtandi(enzalutamide)と併用する。臨床試験のサブグループ・データが一貫しなかったせいか、限定が付いた。米国ではHRR(相同組換え修復)不全に限定で承認された。PARP阻害剤で、最初の適応であるBRCA変異乳癌でも、EUと米国の適応範囲が若干異なっていた。</li>
<br />
尚、イプセン・グループのAlbireo Pharma(Nasdaq:ALBO)の局所作用性回腸胆汁酸輸送体阻害剤Bylvay(odevixibat)は、7月のCHMPでアラジール症候群における胆汁鬱滞性掻痒に適応拡大することが支持されたが、10月に申請撤回された。希少疾患用薬指定の打切りが決まったことが原因のようだ。21年に進行性家族性肝内胆汁鬱滞症用薬として承認され、希少疾患用薬指定もされているが、アラジール症候群における希少疾患用薬指定が外されると国によっては保険還付に影響するため、アラジール症候群用薬を別ブランドとして改めて承認申請する考え。
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>チクングニア熱ワクチンが初めて承認</u>
<br />
(2023年11月9日発表)
<br />
<br />
FDAは、スイスのValneva(Nasdaq:VALN、Euronext Paris: VLA)が開発したチクングニア熱の弱毒化生ワクチン、Ixchiqを加速承認した。チクングニア・ウイルスに曝露するリスクが高い18歳以上に一回、筋注する。免疫原性試験で28日後の防御的中和抗体獲得率が98.5%、半年後でも96%だった。市販後薬効確認試験はブラジルで行われている12歳以上の第3相試験に加えて、別のエンデミック地域でプラグマティックな無作為化割付け対照試験を実施する必要がある。
<br />
<br />
審査期限は8月だったが、市販後薬効確認に関して合意が遅れた模様で、延期された。今回、重度チクングニア様有害事象が1.6%で発現したことも明らかになった(偽薬群はゼロ)。入院例や30日以上持続した症例もあった模様で、市販後監視対象に組み込まれた。
<br />
<br />
チクングニア熱はネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカによって媒介されるチクングニアウイルス感染症。熱帯・亜熱帯地域に多いが米国や日本でも散見されるようになった。死亡率は高くない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-vaccine-prevent-disease-caused-chikungunya-virus" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>武田薬品の二剤が米国で承認</u>
<br />
(2023年11月9日発表)
<br />
<br />
武田薬品が米国で承認申請した新薬二品が米国で承認された。一つはAdzynma(ADAMTS13, recombinant-krhn)。成人小児のcTTP(先天的血栓性血小板減少性紫斑症)の治療や予防的投与に用いる。cTTPではvon Willebrand因子(VWF)の切断酵素であるADMTS13が欠乏しVWFの重合体が微小血管で血栓を形成、溶血性貧血や虚血性障害、血小板減少症などをもたらす。AdzynmaはADMTS13の補充療法。19年に買収したシャイアがその3年前に合併したBaxaltに起源を持つ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-first-treatment-patients-rare-inherited-blood-clotting-disorder" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
Fruzaqla(fruquintinib)はVEGFR1/2/3阻害剤。成人の転移性結腸直腸癌のサルベージ療法で、代表的な治療薬であるfluoropyrimidine、oxaliplatin、及びirinotecanの全てとVEGF阻害剤、そして使用が適切な場合はEGFR阻害剤の治療歴を持つ患者っ適応になる。5mgを28日サイクルで21日反復投与し7日間休む。Lonsurf(trifluridine/tipiracil)やregorafenibにも不応不耐の患者を組入れた第3相FRESCO-2試験でメジアン生存期間が7.4ヶ月と偽薬群の4.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.66だった。中国のHutchmed(Nasdaq:HCM、和黄医薬)から中国香港マカオ以外の地域での権利を取得したもの。欧日でも承認申請中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2023/20231109_8410/" target="blank">
武田のプレスリリース(和文)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>イーライリリーの二型糖尿病薬も肥満症に実質的適応拡大</u>
<br />
(2023年11月8日発表)
<br />
<br />
FDAはイーライリリーのZepbound(tirzepatide)を体重管理薬として承認した。肥満症(BMIが30kg/m2以上)、または肥満関連疾病(高血圧症、二型糖尿病、高脂血症、閉塞性睡眠時無呼吸、心血管疾患など)を持つオーバーウェイト(同27~29kg/m2)が適応になる。低カロリー・ダイエット及び運動療法に追加する。
<br />
<br />
食欲や胃腸における食物吸収などを抑制するGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)/GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体アゴニスト。22年に米日欧で二型糖尿病薬として承認されたMounjaroの別ブランドで、どちらも、2.5mg週一回皮下注で開始して、それぞれ4週以上空けて、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgと増量していく。主な有害事象は悪心嘔吐、下痢、便秘、腹痛など。
<br />
<br />
GLP-1作用剤のクラス警告である、齧歯類における甲状腺C細胞腫(ヒトにおける甲状腺髄様腫に該当)所見や、甲状腺髄様腫歴/家族歴あるいは多発性内分泌腫瘍症2型(MEN2)における禁忌が枠付き警告されている。膵炎の患者における安全性や有効性は検討されていない。妊娠したら中止する。同時使用すると経口避妊薬の効果が低下する虞がある。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-approves-new-medication-chronic-weight-management" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/fda-approves-lillys-zepboundtm-tirzepatide-chronic-weight" target="blank">
イーライリリーのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">アストラゼネカのAZD5363(capivasertib、局所進行性/転移性乳癌)</td></tr>
<tr><td>23/11/23</td><td align="left">Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">BMSのrepotrectinib(ROS1陽性非小細胞性肺癌)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">SpringWorksのnirogacestat(デスモイド腫瘍)</td></tr>
<tr><td>23/12/8 </td><td align="left">Vertex/CRISPR TherapeuticsのCTX-001(exagamglogene autotemcel、鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)</td></tr>
<tr><td>23/12/16</td><td align="left">Arcutis Biotherapeuticsのroflumilastクリーム(脂漏性皮膚炎)</td></tr>
<tr><td>23/12/19</td><td align="left">IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期される?</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">bluebird bioのbb1111(lovotibeglogene autotemcel、鎌状赤血球症)</td></tr>
<tr><td>23/12/20</td><td align="left">Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)</td></tr>
<tr><td>23/12/21</td><td align="left">ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)</td></tr>
<tr><td>23/12/22</td><td align="left">Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)</td></tr>
<tr><td>23/12/24</td><td align="left">アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>23/11/16</td><td align="left">ODAC:Acrotech BiopharmaのPTCL用薬二剤、Folotyn(pralatrexate)とBeleodaq(belinostat)の市販後薬効確認が遅延している件</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">PADAC:MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
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ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-62539283060173327062023-11-04T13:24:00.001+09:002023-11-04T13:24:04.197+09:00第1127回<h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>サレプタ、DMD遺伝子療法の市販後薬効確認試験がフェール </li>
<li>新規淋病治療薬の第3相が成功 </li>
<li>統合失調症用新薬の第3相が成功 </li>
<li>アトラセンタンがIgA腎症用薬として復活 </li>
<li>DecipheraもCSF-1R阻害剤をTGCTに承認申請へ </li>
<li>点鼻型発作性上室性頻拍治療薬を承認申請 </li>
<li>CRSPR/Cas9編集薬が承認に向け前進 </li>
<li>ボノプラザンが米国でも食道炎に承認 </li>
<li>キイトルーダが胆道癌に承認 </li>
<li>コセンティクスが化膿性汗腺炎に適応拡大 </li>
<li>中華PD-1阻害薬が米国で遂に承認 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>サレプタ、DMD遺伝子療法の市販後薬効確認試験がフェール</u>
<br />
(2023年10月31日発表)
<br />
<br />
サレプタ・セラピューティックスはElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)の市販後薬効確認試験、EMBARKで主目的を達成できなかったと発表した。副次的評価項目では統計的に有意且つ臨床的に意義がある治療効果が見られたと判断、適応年齢を拡大すべくFDAと相談する考え。
<br />
<br />
Nationwide Children's Hospitalからライセンスして開発した、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の遺伝子治療で、アデノ随伴ウイルスをベクターとして通常のジストロフィン遺伝子より小さいがある程度機能するマイクロジストロフィンの遺伝子を導入する。臨床試験でマイクロジストロフィン発現を確認し、22年に4~7歳の歩行能力が未だ残っている患者を対象に米国で承認申請した。FDAの担当部署は運動機能など臨床的な便益が未確認であることを懸念したが、生物学製剤を担当するCBERのヘッドであるPeter Marksの鶴の一声で諮問委員会を招集したところ、12人の委員中6人が承認に賛成した。反対も同数あったが、また鶴の一声があった模様で、今年6月に4~5歳限定で加速承認に至った。
<br />
<br />
加速承認を得た企業は、市販後薬効確認試験(PMS)を実施して臨床的な便益を確認する必要がある。サレプタは過去7年間にDMD治療薬4品の加速承認を得たが、PMSの進捗が遅く、これが担当部署がElevidysの加速承認に前向きでなかった一因であった様子だ。最初に結果が出たのがフェールというのは皮肉であり、ジストロフィン等の発現が増えても十分な臨床的便益は得られないのではないか、というFDA審査担当部署側の懸念が現実化した格好だ。
<br />
<br />
会社側発表によると、主評価項目の52週NSAA(North Star Ambulatory Assessment)総スコアはベースライン平均の23点から2.6点改善、偽薬群は1.9点改善、治療効果は0.65でp=0.24だった。一方、主要副次的評価項目の一つであるtime to rise from floorはベースライン平均の3.5秒から0.27秒短縮、偽薬群は0.37秒増加、治療効果は0.64秒でp=0.0025だった。もう一つの10メートル歩行/走行テストはベースライン平均の4.8秒から0.34秒短縮、偽薬群は0.08秒増加、治療効果は0.423秒、p=0.0048。何れも、4~5歳のサブグループでも、6~7歳サブグループでも有意差が見られた。
<br />
<br />
主評価項目がフェールしたのだから副次的評価項目のp値が0.05を下回っても統計的に有意とは言わないのではないかと思われる。臨床的に意義があるという主張も釈然としない。一方で、自然歴データを見てもDMD患者の歩行機能低下が顕著になるのは8歳以降であり、4-7歳の患者における便益を検討するには1年追跡するだけではそもそも足りなかったようにも感じられる。FDAの評価が注目される。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investorrelations.sarepta.com/news-releases/news-release-details/sarepta-therapeutics-announces-topline-results-embark-global-0?_ga=2.43802469.139634707.1698707670-561453751.1698707670" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>新規淋病治療薬の第3相が成功</u>
<br />
(2023年11月1日発表)
<br />
<br />
GARDP(グローバル抗菌薬研究開発パートナーシップ)は、Innoviva(Nasdaq:INVA)の専門薬子会社と共に、zoliflodacinの第3相淋病試験で主目的を達成したと発表した。承認申請に向かうのではないか。アメリカ、オランダ、ベルギー、タイ、南アの施設で非複雑性泌尿器生殖器淋病の患者930人を組入れて、3gを一回経口投与する効果を標準療法(ceftriaxone 500mg筋注とazithromycin 1g経口の併用)と比較したところ、1週後の泌尿器生殖器における微生物学的治癒率の群間差が5.31%(95%信頼区間1.38-8.65%)となり、非劣性マージンの12%をクリアした。
<br />
<br />
淋病は年82万人が感染、うち30%は経口抗生剤に耐性を持ち、最近ではceftriaxone耐性菌も散見されるようになった。新薬が必要だが開発してもやがて耐性菌が生じるだろうから無限ループである。ダイエット薬やしわ取り薬をセレブに売り込む方が賢いビジネスという風潮を補完する組織の一つが薬物耐性菌に有効な新薬を開発するスイスの非営利法人、GARDで、日本を含む様々な国が資金を拠出している。
<br />
<br />
zoliflodacinはspiropyrimidinetrione系の新規抗生物質でトポイソメラーゼIIを阻害、DNAの生合成を妨げる。ceftriaxone耐性菌も含め既存の耐性菌にも活性を維持している。アストラゼネカからスピンアウトしたEntasis TherapeuticsをInnovivaが22年に買収して入手した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.businesswire.com/news/home/20231101634842/en/Positive-Results-Announced-in-Largest-Pivotal-Phase-3-Trial-of-a-First-in-Class-Oral-Antibiotic-to-Treat-Uncomplicated-Gonorrhea" target="blank">
両社のプレスリリース(Business Wire)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>統合失調症用新薬の第3相が成功</u>
<br />
(2023年10月30日発表)
<br />
<br />
米国カリフォルニア州のReviva Pharmaceuticals(Nasdaq:RVPH)は、RP5063(brilaroxazine)の最初の第3相試験、RECOVERで高用量群が目的達成したと発表した。24年に二本目を開始し、25年に承認申請を狙う。
<br />
<br />
自社で発見したセトロニンとドパミンのシグナル調節剤。本試験は統合失調症急性期の412人を偽薬、15mg、または50mgを一日一回、経口投与する群に無作為化割付けして4週間治療し、PANSS(Positive and Negative Syndrome Scale)の改善(点数低下)を比較した。ベースライン平均値は99点。50mg群の低下は23.9点と、偽薬群の13.8点を有意に上回った。治療効果は10.1点、イフェクト・サイズ(Cohen's d)は0.6だった。15mg群は数値上、上回ったが有意ではなかった。
<br />
<br />
治療時発現有害事象の発生率は各群30%、34.5%、35.5%で頭痛や傾眠など。体重増やアカシジア、錐体外路症状の発生率はあまり高くなかった。有害事象による治験離脱率は各群4%、1%、0%だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://revivapharma.com/reviva-announces-positive-topline-results-from-global-pivotal-phase-3-recover-trial-of-brilaroxazine-in-schizophrenia/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>アトラセンタンがIgA腎症用薬として復活</u>
<br />
(2023年10月30日発表)
<br />
<br />
ノバルティスは経口エンドテリンA受容体拮抗剤atrasentanの第3相IgA腎症試験、ALIGHで、主目的を達成したと発表した。24年に加速承認を申請すべくFDAと相談する考え。
<br />
<br />
IgA腎症用薬の開発は、薬効確認試験の6~9ヶ月時点のUPCR(尿蛋白クレアチニン比)改善効果に基づき加速承認を申請し、2年時点のeGFR低下抑制効果を確認して本承認切替申請を行うパターンが多い。今回も、RAS阻害剤で治療しても十分改善しない患者に0.75mgを一日一回投与して、まず、36週UPCRが偽薬比有意に改善することを確認した。データは未公表。
<br />
<br />
atrasentanはアッヴィが04年に前立腺癌の骨転移治療薬として承認申請したが承認されず、糖尿病性腎症の第3相で良好な便益が示されたが承認申請には至らず、20年にカナダのChinook Therapeuticsに導出した。Chinookは20年にAduro Biotechと合併して抗APRIL抗体BION-1301(zigakibart)を入手、今年7月に第3相IgA腎症試験を開始した。ノバルティスは今年8月にChinookを32億ドル及び後発価値証書3億ドルで買収して両剤を入手した。
<br />
<br />
atrasentanの糖尿病性腎症試験では心不全や全死亡が偽薬群より多かった。統計的に有意ではなかったが、検出力が十分なのかどうか、分からない。今回の第3相では心不全は除外条件になっている。
<br />
<br />
ノバルティスは発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬として欧米で承認申請中の経口B因子阻害剤、LNP023(iptacopan)も第3相IgA腎症試験が成功しており、もし三剤とも承認された場合に、どのように使い分けるのか、気になるところだ。
<br />
<br />
アストラゼネカも10年以上前に前立腺癌の第3相三本がフェールしたZD4054(zibotentan)で慢性腎疾患の第3相を行う予定で、エンドテリンA受容体拮抗剤の復活が続いている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-investigational-atrasentan-phase-iii-study-demonstrates-clinically-meaningful-and-highly-statistically-significant-proteinuria-reduction-patients-iga-nephropathy-igan" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>DecipheraもCSF-1R阻害剤をTGCTに承認申請へ</u>
<br />
(2023年10月30日発表)
<br />
<br />
Deciphera Pharmaceuticals(Nasdaq:DCPH)はDCC-3014(vimseltinib)の第3相腱滑膜巨細胞腫(TGCT)試験、Motionで、目的を達成したと発表した。手術に適さないTGCT患者123人(うち3/4は過去に手術歴あり)に偽薬または30mgを週二回、経口投与して、25週時点のORR(客観的反応率)を調べたところ、各群ゼロと40%となった。主な有害事象は眼窩周囲や顔の浮腫、CPK値上昇、掻痒、高血圧、肝機能検査値上昇など。米国で24年第2四半期に、EUでも第3四半期に、承認申請する考え。
<br />
<br />
CSF-1R(コロニー刺激因子1受容体)を阻害する小分子薬としては、19年に第一三共のTuralio(pexidartinib)が米国で成人の重体又は機能低下を伴う切除不適症候性TGCTに承認された。22年度売上高38億円のニッチ薬だ。Toralioは死亡する可能性もある肝障害のリスクが枠付き警告されている。DCC-3014の第3相の規模は同程度なので、深刻例が発現していないようならば、使いやすくなるかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.deciphera.com/news-releases/news-release-details/deciphera-pharmaceuticals-announces-positive-top-line-results-0" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>点鼻型発作性上室性頻拍治療薬を承認申請</u>
<br />
(2023年10月24日発表)
<br />
<br />
カナダ本社のMilestone Pharmaceuticals(Nasdaq:MIST)は短期作用性カルシウム・チャネル・ブロッカーのMSP-2017(etripamil)を発作性上室性頻拍(PSVT)の治療薬として米国で承認申請した。点鼻スプレー製剤であることが特徴。第3相NODE-301試験はフェールしたが、追跡時間を5時間と長く取ったことが敗因であった模様で、30分内に洞調律した患者の比率は試験薬群54%、偽薬群35%、ハザードレシオ1.87、p=0.02だった。そこで、この試験の第2部として位置付けられたRAPID試験で仮説検証したところ、64%対31%、ハザードレシオ2.62、p<0.001となり目的を達成した。2本のプール分析でER入室が39%少なかった(p=0.035)。主な有害事象は鼻の不快感や鼻詰まりなど。
<br />
<br />
PSVTは珍しくない疾患で、不快・不安以外に異常はないことが多いが、米国ではPSVTによる入院が年5万件と推測されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.milestonepharma.com/news-releases/news-release-details/milestone-pharmaceuticals-announces-submission-new-drug" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>CRSPR/Cas9編集薬が承認に向け前進</u>
<br />
(2023年10月31日発表)
<br />
<br />
CRISPR/Cas9遺伝子編集の代表的企業の一つであるスイスのCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)と創薬研究パートナーである米国のVertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は、CTX-001(exagamglogene autotemcel)を欧米で承認申請しており、米国の審査期限は鎌状赤血球病用途が12月8日、輸血依存ベータサラセミア用途は来年3月30日となっている。FDAは、CTGTAC(細胞、組織、遺伝子療法諮問委員会)を招集して、標的外編集リスクの検討が十分か、もし十分でないならどのような試験を行うべきか、意見を聞いたところ、症例を少しくらい増やしても大同小異なので患者の長期追跡調査に重点を置くべきという意見が大勢だった。薬効には問題はなさそうなので、承認に向けて一歩前進したといえるだろう。
<br />
<br />
CTX-001は患者の造血幹細胞・前駆細胞の遺伝子を体外で改変し、通常は胎児期や新生児期にしか発現しない胎生ヘモグロビン(HbF)を分泌するよう処理してから患者に戻し、ヘモグロビンの欠乏を補うもの。具体的には、HbFの転写抑制因子であるBCL11AのエンハンサーをCas9で切断する。天然の遺伝子修復メカニズムが作動するが、切断→修復を繰り返すうちに修復エラーが発生し、当該遺伝子が機能しなくなる。承認されればCRISPR/Cas9編集技術を応用した初の医薬品になる。
<br />
<br />
この技術の理論的なリスクは、もし標的以外の箇所に同様な塩基配列があった場合、思わぬ副作用が生じてしまうかもしれないことだ。鎌状赤血球病などの患者が多いアフリカ系の人たちに関する遺伝子サンプル量は白人ほど多くないので、特に検討が難しい。
<br />
<br />
塩基配列は人により異なるので、100人、1000人に投与して安全でも1001人目で発生しないとは限らない。委員からは、善を成すに不確実を憂うべきではないという趣旨の発言もあったようだ。今回の結語と呼んでもよいだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.crisprtx.com/news-releases/news-release-details/crispr-therapeutics-announces-completion-fda-advisory-committee" target="blank">
Crispr社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>ボノプラザンが米国でも食道炎に承認</u>
<br />
(2023年11月1日発表)
<br />
<br />
Phathom Pharmaceuticals(Nasdaq:PHAT)はFDAがVoquezna(vonoprazan)をびらん性食道炎の治療と寛解維持用途で承認したと発表した。前日には、昨年承認されたものの未発売であったピロリ菌除菌用製品、トリプル・パックとデュアル・パックに含まれる同薬の新製剤も承認されており、プトロン・ポンプ阻害剤大国である米国で、いよいよ、発売されることになる。
<br />
<br />
武田薬品が開発したPCAB(カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)で、日本では14年に胃潰瘍、十二指腸潰瘍、ピロリ菌除菌用薬タケキャブとして承認された。Phathom社はGSKの研究開発本部長やビル&メリンダ・ゲイツ財団のグローバル・ヘルス・プログラムのヘッド、そして武田薬品の取締役などを歴任した故山田忠孝氏らが設立した企業。北米欧州市場でライセンスし米国で承認にこぎつけたが、発売の前に発癌性が疑われるNVP(N-nitroso-vonoprazan)が微量検出され、製剤の見直しや長期安定性試験の実施が必要になった。H2ブロッカーやARBで浮上したNDMA(N-ニトロソジメチルアミン)と類似した性質を持つ不純物で、保存中にも増加する可能性があるため、厄介だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.phathompharma.com/news-releases/news-release-details/phathom-pharmaceuticals-announces-fda-approval-voqueznar" target="blank">
同社のプレスリリース(GERD用)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://investors.phathompharma.com/news-releases/news-release-details/phathom-pharmaceuticals-announces-fda-approval-reformulated" target="blank">
同(ピロリ菌除菌用、10/30付)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>キイトルーダが胆道癌に承認</u>
<br />
(2023年11月1日発表)
<br />
<br />
MSDはFDAがKeytruda(pembrolizumab)を局所進行切除不能/転移胆道癌の一次治療に用いることを承認したと発表した。gemcitabine及びcisplatinと併用する。KeyNote-966試験では、三剤併用群のメジアン生存期間が12.7ヶ月と、Keytrudaの代わりに偽薬を併用した群の10.9ヶ月を少し上回った。ハザードレシオは0.83、片側p値は0.0034だった。大した数値ではないが2年生存率は各24.9%と18.1%と5ポイント以上改善した。G3/4治療関連有害事象の発生率は各群70%と69%で大差ない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/fda-approves-mercks-keytruda-pembrolizumab-plus-gemcitabine-and-cisplatin-as-treatment-for-patients-with-locally-advanced-unresectable-or-metastatic-biliary-tract-cancer/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>コセンティクスが化膿性汗腺炎に適応拡大</u>
<br />
(2023年10月31日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはFDAがCosentyx(secukinumab)を成人の中重度化膿性汗腺炎に用いることを承認したと発表した。300mgを最初の4回は週一回、その後は4週毎に投与する。応答不十分な場合は2週毎投与も可。第3相試験二本では、4週毎投与群のHiSCR50奏効率が一本は42.5%で偽薬群の26.1%を有意に上回ったが、もう一本は41.9%対29.4%で有意ではなかった。2週毎投与群は一本が36.6%、もう一本では44.5%となり、いずれも偽薬比有意。尚、FDAが解析方法に注文を付けた模様で、昨年9月に同社が発表した数値から変わっている。
<br />
<br />
Cosentyxは抗IL-17A抗体。プラク乾癬など多くの自己免疫疾患に承認されている。化膿性汗腺炎はEUでも5月に適応拡大した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/fda-approves-novartis-cosentyx-first-new-biologic-treatment-option-hidradenitis-suppurativa-patients-nearly-decade" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>中華PD-1阻害薬が米国で遂に承認</u>
<br />
(2023年10月27日発表)
<br />
<br />
Coherus BioSciences(Nasdaq:CHRS)はFDAがLoqtorzi(toripalimab-tpzi)を成人の転移/難治局所進行性上咽頭癌用薬として承認したと発表した。Junshi Biosciences(HKSE:1877、上海君実生物医薬)が創製した抗PD-1抗体で、中国発の抗PD-1/L1抗体が米国で承認されたのは初めて。
<br />
<br />
FDAは中国だけで実施される薬効確認試験の信憑性に疑問を持っており、Innovent Biologics(HKEX:01801)が非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療薬として承認申請した抗PD-1抗体、sintilimabは承認されず、イーライリリーが米国権を返還した。ノバルティスが抗PD-1抗体tislelizumabの欧米日などの権利をBeiGene(Nasdaq:BGNE、HKEX:6160、百済神州)に返還したのも、FDAの姿勢が理由ではないかと言われている。Loqtorziは何が違うのか?
<br />
<br />
エビデンスとなる第3相JUPITER-02試験は289人中270人を中国の施設で組入れ、台湾とシンガポールは19人だけとなっているためか、同社はグローバル試験ではなく拡大中国試験と呼んでいる。従って、中国以外も参加したからという単純な話ではなく、全体的なデザインやデータや判定の査読が妥当と判断されたのだろう。また、上咽頭癌はアジアに多く米国の患者数は決して多くないことも地域的な偏在を正当化する理由になったのだろう。
<br />
<br />
21年9月に承認申請したが、品質管理面の指摘事項や、COVID-19の流行による米国連邦職員の渡航制限などにより、承認が遅れた。24年第1四半期にロンチする予定。中国では米国企業の抗PD-1/L1抗体よりかなり安く販売されているが、Coherusは価格攻勢をかけるつもりはない模様だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.coherus.com/news-releases/news-release-details/coherus-and-junshi-biosciences-announce-fda-approval-loqtorzitm" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">アストラゼネカのAZD5363(capivasertib、局所進行性/転移性乳癌)</td></tr>
<tr><td>23年4Q推</td><td align="left">イーライリリーのtirzepatide(体重管理薬)</td></tr>
<tr><td>23年11月推 </td><td align="left">武田薬品のTAK-755(先天的血栓性血小板減少性紫斑症)</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">Phathom Pharmaceuticalsのvonoprazan(びらん性胃食道逆流症)</td></tr>
<tr><td>23/11/23</td><td align="left">Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">BMSのrepotrectinib(ROS1陽性非小細胞性肺癌)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">SpringWorksのnirogacestat(デスモイド腫瘍)</td></tr>
<tr><td>23/11/30</td><td align="left">Hutchmed/武田のfruquintinib(結腸直腸癌)</td></tr>
<tr><td>23/11末</td><td align="left">ValnevaのVLA1553(チクングニア熱ワクチン)←3ヶ月延長</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>23/11/16</td><td align="left">ODAC:Acrotech BiopharmaのPTCL用薬二剤、Folotyn(pralatrexate)とBeleodaq(belinostat)の市販後薬効確認が遅延している件</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">PADAC:MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
</table>
注:イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)のPDUFAは24Q1に延期された
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-45880799354704132252023-10-29T09:44:00.003+09:002023-10-29T09:44:57.939+09:00第1126回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>大塚、ADHD用薬の第3相が成功 </li>
<li>GSK、RSVワクチンを50代にも承認申請へ </li>
<li>ESMO:Dato-DXdは既存薬より一歩前進? </li>
<li>ESMO:EGFRデュアル・キリングの効果 </li>
<li>ESMO:Pluvictoの前立腺癌ポストARP阻害剤試験の続報 </li>
<li>ESMO:Seagen、二剤のPMS試験が成功 </li>
<li>ESMO:カボメティクスが神経内分泌腫瘍に著効 </li>
<li>フルミストの自己点鼻を承認申請 </li>
<li>ACIP、高リスク・グループに対するMpoxワクチン勧奨を継続 </li>
<li>「解離性」ステロイドがDMDに承認 </li>
<li>バビースモがRVOに適応拡大 </li>
<li>オンボーが米国でも承認 </li>
<li>IDH1阻害剤が骨髄異形成症候群に適応拡大 </li>
<li>CHMP、GLP-1作用剤の甲状腺癌問題に関してアップデート </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>大塚、ADHD用薬の第3相が成功</u>
<br />
(2023年10月27日発表)
<br />
<br />
大塚製薬は、centanafadineの第3相小児ADHD試験二本で統計的に有意な改善作用が示されたと発表した。13~17歳を組み入れた試験も、6~12歳の試験も、二用量群の平均と高用量群のADHD-RS-5評価尺度改善が偽薬群を有意に上回った。低用量群はフェールした模様だ。長期安全性試験などを経て承認申請に向かう予定。
<br />
<br />
17年にNeurovanceを買収して入手した、ノルエピネフィリンとドパミンの再取込阻害剤で、セロトニンの再取込も阻害する。2020年に成人ADHDの第3相二本がポジティブな結果になったが、小児向けは開発が遅れ、買収時の暖簾の減損を計上したことがある。
<br />
<br />
ClinicalTrials.govによると、成人試験は100mgまたは200mgを一日二回経口投与した。両試験、両用量ともAIDRS評価尺度が偽薬比有意に改善したが、一本のp値は低量が0.02、高量が0.04でそれほど低くない。一方、今回の小児試験はXRカプセルを一日一回経口投与した。13~17歳の試験は164.4mg群と328.8mg群を設定、もう一本はClinicalTrials.gov上では4~12歳が対象となっており、用量は体重に応じて決定としか記されていない。
<br />
<br />
暖簾償却が発表された当時、なぜ成人ADHDだけでも承認申請しないのか不思議に思ったが、XRカプセルに切替を狙ったのかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2023/20231027_1.html" target="blank">
同社のプレスリリース(和文)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>GSK、RSVワクチンを50代にも承認申請へ</u>
<br />
(2023年10月25日発表)
<br />
<br />
GSKは米欧日で60歳以上向けに承認されたRSVワクチン、Arexvyの50~59歳における効果を60歳以上と比較した液性免疫原性非劣性試験がポジティブな結果になったと発表した。対象年齢拡大申請を行う予定。ACIP(ワクチン接種諮問委員会)で発表されたデータによると、RSV A型にもB型も、RSV感染時の下部気道疾患発症リスクが高い人たちにもそうでない人たちにも、免疫原性が見られた。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.gsk.com/en-gb/media/press-releases/new-data-for-arexvy-show-potential-to-help-protect-adults-aged-50-to-59/" target="blank">
GSKのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:Dato-DXdは既存薬より一歩前進?</u>
<br />
(2023年10月24日発表)
<br />
<br />
先週に続いて、10月23日に閉幕したESMO(欧州臨床腫瘍学会)の発表を振り返る。第一三共は複数のADC(抗体医薬複合体)が臨床段階にあり、開発が進んでいるher2標的ADC、Enhertu(trastuzumab deruxtecan)とTROP標的ADC、DS-1062(datopotamab、略称Dato-DXd)に関するアストラゼネカ提携に続いて、her3標的ADCのU3-1402(patritumab deruxtecan)などを対象とするMSDとの共同開発販売提携も戦術発表された。意外な組み合わせで、MSDは自社ADCプログラムも進めているが、44年前の恩讐は彼方に去ったのかもしれない。
<br />
<br />
第一三共とアストラゼネカはDato-DXdの第3相試験のうち、肺癌と乳癌の単剤投与実薬対照試験の結果を発表した。24年3月までに承認申請する考え。
<br />
<br />
TROPION-Lung01試験は、進行/転移非小細胞性肺癌で、白金薬と、分子標的薬適応になる癌は分子標的薬、それ以外は抗PD-1/PD-L1抗体による治療歴を持つ600人を組入れて、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間をdocetaxelと比較した。ハザードレシオ0.75、メジアン値は各群4.4ヶ月と3.7ヶ月で、統計的に有意な差があった。被験者の3/4を占めた非扁平上皮非小細胞性肺癌ではハザードレシオ0.63、メジアン5.6ヶ月対3.7ヶ月と、統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった由。
<br />
<br />
共同主評価項目である全生存期間の中間解析は好ましい方向を向いているが未成熟で未だ有意差は出ていない。G3以上の治療関連有害事象発生率は25%対41%、G3以上の間質性肺疾患(ILD)の発生率は3.4%対1.4%で、試験薬群では7人が死亡、但しうち4人は治験医が病気の進行によるものと判定している。
<br />
<br />
TROPION-Breast01試験は、ホルモン受容体陽性、her2陰性/低発現の手術不能/転移性乳癌で、内分泌療法不応/不適、1~2次の化学療法歴を持つ患者732人を試験薬群と化学療法群(capecitabine、gemcitabine、eribulin mesylate、vinorelbineの中から担当医が選択)に無作為化割付けしてPFS(同上)と全生存期間を比較した。前者はハザードレシオ0.63、メジアン6.9ヶ月対4.9ヶ月となり、統計的にも臨床的にも意味のある差が見られた。後者は未成熟だが、ハザードレシオは中間解析で0.84と少なくとも向きは正しい方向を向いている。G3以上の治療関連有害事象発生率は各群21%と45%、試験薬群の間質性肺疾患の発生率は3%で、一人が死亡した。試験薬群のILD発生率は3%で、一人が死亡した。
<br />
<br />
実薬対照試験なので一歩でも前進すれば意味があるが、高価な新薬がGE薬と対抗するには価格に見合う効果がほしい所だ。肺癌試験はメジアン値の差が1ヶ月足らずで、Enhertuと同様に重度ILDリスクも見られるので、今回発表程度では印象が薄い。全生存期間のハザードレシオが0.8を下回るか、結果を待ちたい。一方、乳癌試験のほうはPFSも、全生存期間の点推定値も、好ましい結果だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202310/20231024_J2.pdf" target="blank">
両社のプレスリリース(肺癌試験、和文、pdfファイル)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.daiichisankyo.co.jp/files/news/pressrelease/pdf/202310/20231024_J1.pdf" target="blank">
同(乳癌試験、同)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:EGFRデュアル・キリングの効果</u>
<br />
(2023年10月23日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssenは、抗EGFRxMET二重特異性抗体Rybrevant(amivantamab)の市販後薬効確認試験の成功(先週記載)に続いて、第3世代EGFRチロシン・キナーゼ阻害剤JNJ-73841937(lazertinib)を併用した第3相実薬対照試験の結果を公表した。前者は21年に欧米でEGFR遺伝子にエクソン20挿入活性化変異を持つ転移非小細胞性肺癌に用いることが承認された。今回の二本はEGFR遺伝子にエクソン19欠損又はL858R置換のある局所進行/転移非小細胞性肺癌が対象で、MARIPOSA試験は一次治療における便益をアストラゼネカのTagrisso(osimertinib)と比較、MARIPOSA-2試験はTagrisso歴を持つ患者約650人を組入れて、carboplatin及びpemetrexedの標準療法に追加する便益を検討した。
<br />
<br />
一次治療試験はJanssenの二剤を併用した群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が23.7ヶ月、Tagrisso群は16.6ヶ月、ハザードレシオは0.70で統計的に有意だった。参考群であるRybrevantだけを追加する群のPFSはメジアン18.5ヶ月だった。副次的評価項目の全生存期間の解析は未成熟だが、二剤併用群のハザードレシオ0.80、95%信頼区間0.61-1.05と、好ましい方向を向いている。
<br />
<br />
ポストTagrisso試験はPFS(同上)がメジアン8.3ヶ月と化学療法だけの群の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.44、統計的に有意だった。Rybrevantだけを追加した群はメジアン6.3ヶ月、ハザードレシオ0.48、統計的に有意。良く分からないのは全生存期間の中間解析で、Rybrevant追加群のハザードレシオは0.77(95%信頼区間0.49-1.21)と好ましい方向を指しているが、二剤追加群は0.96(0.67-1.35)と案外だ。前提イベント数に到達する前の中間解析なので今後のフォローアップ待ちだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/landmark-phase-3-mariposa-study-shows-rybrevant-amivantamab-vmjw-plus-lazertinib-resulted-in-30-percent-reduction-in-risk-of-disease-progression-or-death-compared-to-osimertinib-in-patients-with-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer" target="blank">
JNJのプレスリリース(MARIPOSA)</a>
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/phase-3-mariposa-2-study-shows-rybrevant-amivantamab-vmjw-plus-chemotherapy-given-with-or-without-lazertinib-reduced-risk-of-disease-progression-or-death-by-56-and-52-percent-respectively-in-patients-with-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer-who-progressed-on-or-after-osimertinib" target="blank">
同(MARIPOSA-2)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:Pluvictoの前立腺癌ポストARP阻害剤試験の続報</u>
<br />
(2023年10月23日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはPluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)の第3相PSMAfore試験の第2次中間解析結果を報告した。PSMA陽性の転移去勢抵抗性前立腺癌で、enzalutamideなどの第2世代アンドロゲン受容体経路(ARP)阻害剤歴を持ち、化学療法や免疫療法、放射線療法は未だ受けていない、PARP阻害剤が適応にならない患者468人を組入れて、7.4 Gbqを6週毎に6回照射する群と、前治療とは異なる第2世代ARP阻害剤を投与する群のPFS(無進行生存期間、放射線学的評価)を比較した試験で、第1次中間解析で目的を達成したことが昨年12月に公表されたが、延命効果は明確でなかった。
<br />
<br />
今回の解析では、PFSのハザードレシオは前回と大差ない0.41、メジアン値は12.0ヶ月と5.6ヶ月、全生存期間のハザードレシオはクロスオーバーの調整前で1.16(95%信頼区間0.83-1.64)、調整後でも0.80(同0.48-1.33)で有意差が出ていない。対照群の84%が進行判定後にPluvictoにクロスオーバーしたことや、最終解析に必要なイベント数の45%しか到達していないことを考えるとやむを得ないが、次回の75%到達時の解析で明確な答えが出るか注目される。FDAが全生存期間を重視している模様で、ノバルティスは23年中の適応拡大申請を見送る。
<br />
<br />
Pluvictoはドイツの癌研究所DKFZとハイデルベルグ大学病院が共同開発した放射性医薬品で、PSMAに結合し局所的にベータ線照射を行う。18年にEndocyte社を21億ドルで買収して入手した。22年に米欧で成人のPSMA陽性転移去勢抵抗性前立腺癌でARP阻害剤とtaxaneベース化学療法歴を持つ患者にアンドロゲン枯渇療法薬と併用することが承認された。FDAが供給不足医薬品にリストアップしていたがやっと解除された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-pluvictotm-shows-clinically-meaningful-and-highly-statistically-significant-rpfs-benefit-patients-psma-positive-metastatic-castration-resistant-prostate-cancer-pre-taxane-setting" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:Seagen、二剤のPMS試験が成功</u>
<br />
(2023年10月22日発表)
<br />
<br />
Seagenは抗ネクチン4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin)とMSDのKeytruda(pembrolizumab)を尿路上皮癌に併用する用法と、子宮頸癌用抗TF抗体薬物複合体Tivdak(tisotumab vedotin)の市販後薬効確認試験が成功したと発表した。米国における承認範囲よりやや広範な患者を組入れており、本承認切替に加えて、一部変更も申請することになりそうだ。
<br />
<br />
EV-302/KN-A39試験は局所進行/転移尿路上皮腫の一次治療を受ける患者886人を組入れて、Padcev・Keytruda併用群とcisplatinまたはcarboplatinをgemcitabineと併用する群の全生存期間やPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較したもので、どちらも中間解析で目的達成した。前者はハザードレシオ0.47、メジアン値は31.5ヶ月対16.1ヶ月と大変良い成績。後者も同様に0.45、12.5ヶ月、6.3ヶ月と好成績。
<br />
<br />
一つ気になるのは、PD-L1陰性の患者でも陽性患者と同様な差が見られたのだろうか?抗PD-1/PD-L1抗体の尿路上皮腫試験は上手く行ったり行かなかったり区々で、成功してもPD-L1陰性サブグループにおける便益が明確でないケースがしばしば見られるからだ。陰性にはPadcevだけで十分という可能性も無視できないだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.seagen.com/press-releases/news-details/2023/Groundbreaking-EV-302-Trial-Significantly-Extends-Overall-Survival-and-Progression-Free-Survival-in-Patients-Treated-with-PADCEV-enfortumab-vedotin-ejfv-and-KEYTRUDA-pembrolizumab-in-First-Line-Advanced-Bladder-Cancer/default.aspx" target="blank">
Seagenのプレスリリース</a>
<br />
<br />
TivdakのinnovaTV 301試験は難治/転移子宮頸癌で難治/転移後の一次治療歴を持つ502人を組入れて医師が選んだ化学療法と比較した。主評価項目の全生存期間はハザードレシオ0.70、メジアン値は各11.5ヶ月と9.5ヶ月で、まあまあな成績だ。G3以上の治療時発現有害事象発生率は各群29.2%と45.2%。
<br />
<br />
尚、Seagenはファイザーに買収されることで合意しており、反トラスト局の認可待ち状態。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.seagen.com/press-releases/news-details/2023/TIVDAK-tisotumab-vedotin-tftv-Significantly-Prolonged-Overall-Survival-in-Patients-with-Recurrent-or-Metastatic-Cervical-Cancer-Compared-with-Chemotherapy-in-Global-Phase-3-innovaTV-301-Trial/default.aspx" target="blank">
同</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:カボメティクスが神経内分泌腫瘍に著効</u>
<br />
(2023年10月22日発表)
<br />
<br />
Exelixis(Nasdaq:EXEL)はVEGFR阻害剤Cabometyx(cabozantinib)の第3相神経内分泌腫瘍(NET)試験の詳細を発表した。米国で適応拡大申請する考え。
<br />
<br />
このCABINET試験は米国立癌センターがExelixisとコラボで資金提供した医師共同試験。治療歴のある進行膵NET93人のコフォートと、胃腸や肺などを原発とする膵外NET197人のコフォートにおけるPFS(無進行生存期間、担当医評価)を偽薬群と比較したところ、中間で目的達成が認定された。膵NETではハザードレシオ0.27、メジアン値は11.4ヶ月と3.0ヶ月、膵外NETでは各0.45、8.3ヶ月、3.2ヶ月だった。
<br />
<br />
Cabometyxは腎細胞腫などに承認されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.exelixis.com/news-releases/news-release-details/detailed-results-phase-3-cabinet-pivotal-trial-evaluating" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>フルミストの自己点鼻を承認申請</u>
<br />
(2023年10月24日発表)
<br />
<br />
アストラゼネカは点鼻用4価インフルエンザ弱毒化生ワクチンFluMistを自己噴霧する用法追加申請を米国で行い、受理された。18~49歳は本人が、2~17歳は介護者や保護者が投与する。審査期限は来年第1四半期の見込みで、順調なら24/25年シーズンから使用可能になる。
<br />
<br />
FluMistは子会社のMedImmuneが07年に米国で発売した、注射が嫌な人に適したワクチン。1~64歳向けに承認申請されたが症例不足と判定され、現在でも50歳以上は適応外。米国では皮下注射用の3倍の価格で発売されたことや、15~17年頃にワクチン効率の著減が見られたことなどから、年商は2億ドル前後に留まり、需要の大半は欧州、となっている。日本では第一三共がライセンスし、承認申請から足掛け7年、今年3月に承認された。
<br />
<br />
CDC(米国疾病管理予防センター)はほぼ全国民にインフルエンザ・ワクチンの接種を勧奨しているが、接種率は5割前後と推定されている。米国では薬局で接種することも可能で、施設別の推定シェアは4年前の6%から16%に上昇しているが、主流は医療スタッフによる投与だ。点鼻薬なら使いやすいだろうから、接種率引き上げに資するかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/us-food-drug-administration-accepts-review-astrazeneca-supplemental-biologics-license-application-self-administration-flumist-quadrivalent.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>ACIP、高リスク・グループに対するMpoxワクチン勧奨を継続</u>
<br />
(2023年10月25日発表)
<br />
<br />
CDC(米国疾病管理予防センター)のACIP(ワクチン接種諮問委員会)は、22年に、Mpox(旧称サル痘)のアウトブレイクが発生したため、高リスク・グループの人たちにワクチン接種を勧奨したが、今回、アウトブレイクが終わっても勧奨継続を勧告した。弱毒化生ワクチンJynneosを供給しているBavarian Nordic(Nasdaq Copenhagen:BAVA)は、正式に決定されたら24年上期に上市すると発表した。
<br />
<br />
高リスク・グループとは、最近、性病を罹患したり、複数のセックス・パートナーを持つなどの、ゲイなどの人々。該当人口は200万人程度で、そのうち既に接種したのは23%と推定されている。一方、患者を治療する可能性のある医療従事者についてはルーチンな接種を勧奨しなかった。
<br />
<br />
米国は22年にアウトブレイクが発生、これまでに3万人が発症し54人が死亡したが、23年に入り新患が1日1件程度に減少した。現在は中国が多いようだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.bavarian-nordic.com/investor/news/news.aspx?news=6840" target="blank">
Bavarian Nordicのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>「解離性」ステロイドがDMDに承認</u>
<br />
(2023年10月27日発表)
<br />
<br />
スイスのSanthera Pharmaceuticals(SIX:SANN)は、FDAがAgamree(vamorolone)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬として承認したと発表した。10月にEUのCHMP(医薬品委員会)が4歳以上を対象に肯定的意見をまとめたが、FDAは適応下限を2歳とした。
<br />
<br />
DMDの治療にしばしば用いられるコルチコステロイドの一種で、骨代謝や成長には悪影響しないため、解離性コルチコステロイドと呼ばれている。経口懸濁液。欧州の施設で4~6歳の歩行可能な少年121人を組入れたVISION-DMD試験で、6mg/kg/日群の起立テスト成績が偽薬比有意に改善した。治療効果は0.06起立/秒。試験薬群は6秒から4.6秒に改善、偽薬群は0.1秒悪化した。一方、2mg/kg/日はフェールした。6分歩行テストや10メートル走行テストは両用量とも有意差があった。
<br />
<br />
6mg/kg/日群はprednisoneを0.75mg/kg投与した群とポスト・ホック優越性検定がフェールした。
<br />
<br />
有害事象は内分泌機能変化、免疫抑制/感染症、心血管/腎機能変化、胃腸穿孔、行動気分障害、骨影響、眼科影響、生/弱毒化ワクチン併用禁忌。
<br />
<br />
米国メリーランド州のReveraGen Biopharmaからライセンスして開発したもの。米国やカナダ、メキシコではCatalyst Pharmaceuticalsが商業化する。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.santhera.com/assets/files/press-releases/2023-10-27_FDA-approval_e_final.pdf" target="blank">
Santheraのプレスリリース(pdfファイル)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>バビースモがRVOに適応拡大</u>
<br />
(2023年10月27日発表)
<br />
<br />
ロシュはFDAがVabysmo(faricimab-svoa)をRVO(網膜静脈閉塞症)に伴う黄斑浮腫の治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。網膜中心静脈閉塞症と網膜静脈分岐閉塞症の二本の第3相で視力改善がRegeneron/サノフィのEylea(aflibercept)比非劣性だった。
<br />
<br />
Angiopoietin-2とVEGF-Aに結合する二重特異性抗体で、nAMD(新生血管加齢性黄斑変性)やDME(糖尿病性網膜浮腫)の治療薬としても承認されている。6mgを硝子体注射する。米国で承認されている投与スケジュールは適応により若干異なり、4週毎投与で開始するのは同じだが、nAMDは5回目から検査結果に基づき8週毎、12週毎、16週毎の何れか、DMDは5回目から4週毎もしくは8週毎、または7回目から8週毎、そしてRVOでは4週毎に6ヶ月間治療する。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.roche.com/investors/updates/inv-update-2023-10-27" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>オンボーが米国でも承認</u>
<br />
(2023年10月26日発表)
<br />
<br />
イーライリリーはFDAがOmvoh(mirikizumab-mrkz)を成人の中重度活性期潰瘍性大腸炎用薬として承認したと発表した。IL-23のp19サブユニットに選択的に結合する薬がこの用途で承認されたのは初。
<br />
<br />
日本では今年3月、EUでも5月に承認されたが、米国は製造問題が理由で一旦、審査完了通知を受領し、遅延した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/fda-approves-lillys-omvohtm-mirikizumab-mrkz-first-class" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>IDH1阻害剤が骨髄異形成症候群に適応拡大</u>
<br />
(2023年10月24日発表)
<br />
<br />
セルビエは、IDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)阻害剤Tibsovo(ivosidenib)が米国でIDH1変異陽性難治再発骨髄異形成症候群に適応拡大したと発表した。18人に投与した臨床試験で寛解率が38.9%、客観的反応率は83.3%だった。IDH1変異は癌化の初期段階を駆動する変異で、骨髄異形成症候群の3-4%で見られる。
<br />
<br />
Tibsovoは18年に米国でIDH1変異難治再発急性骨髄性白血病に承認された。セルビエはAgios Pharmaceuticalsから腫瘍学ポートフォリオを買収して入手した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://servier.us/blog/servier-announces-fda-approval-of-tibsovo-ivosidenib-tablets-for-the-treatment-of-idh1-mutated-relapsed-or-refractory-r-r-myelodysplastic-syndromes-mds/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【医薬品の安全性】</h4>
<br />
<u>CHMP、GLP-1作用剤の甲状腺癌問題に関してアップデート</u>
<br />
(2023年10月27日発表)
<br />
<br />
EUの医薬品ファーマコビジランス・リスク評価委員会、PRACは、GLP-1作用剤の幾つかの副作用懸念に関して検討を行っているが、甲状腺癌との因果関係を示す新たなエビデンスはないと結論した。製薬会社が引き続き監視し、文献を含め、新たなエビデンスを取得したら定期報告時に報告する。
<br />
<br />
GLP-1作用剤は齧歯類の癌原性試験で甲状腺C細胞腫瘍の増加が見られた。この腫瘍はヒトで言えば甲状腺髄様腫に該当するとのことだ。EUの処方情報によると、GLP-1受容体が甲状腺C細胞腫瘍を調停するメカニズムに対する感受性が齧歯類は特に高いので、ヒトのリスクにつながる可能性は低いと考えられるが、完全に否定することはできない。米国のレーベルも概ね同じで、但し、甲状腺髄様腫を罹患もしくは家族歴を持つ人、または多発内分泌新生物症候群2型(MEN2)の患者は禁忌としている。今回のPRAC発表は、従来の見解を維持することを意味する。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-pharmacovigilance-risk-assessment-committee-prac-23-26-october-2023" target="blank">
PRACのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">アストラゼネカのAZD5363(capivasertib、局所進行性/転移性乳癌)</td></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>23年4Q推</td><td align="left">イーライリリーのtirzepatide(体重管理薬)</td></tr>
<tr><td>23年11月推 </td><td align="left">武田薬品のTAK-755(先天的血栓性血小板減少性紫斑症)</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">Phathom Pharmaceuticalsのvonoprazan(びらん性胃食道逆流症)</td></tr>
<tr><td>23/11/23</td><td align="left">Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">BMSのrepotrectinib(ROS1陽性非小細胞性肺癌)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">SpringWorksのnirogacestat(デスモイド腫瘍)</td></tr>
<tr><td>23/11/30</td><td align="left">Hutchmed/武田のfruquintinib(結腸直腸癌)</td></tr>
<tr><td>23/11末</td><td align="left">ValnevaのVLA1553(チクングニア熱ワクチン)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>23/10/31</td><td align="left">CTGTAC:Vertex/Crisprのexagamglogene autotemcel<br />(ベータサラセミアと鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/11/16</td><td align="left">ODAC:Acrotech BiopharmaのFolotyn(pralatrexate)とBeleodaq(belinostat)<br />市販後薬効確認が遅延している件</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">PADAC:MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-90844131444123301862023-10-22T13:52:00.000+09:002023-10-22T13:52:17.474+09:00第1125回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>COVID-19薬のチャンピオン、ご苦労様でした </li>
<li>ESMO:レットヴィモ、実薬対照試験で二冠達成 </li>
<li>ESMO:イミフィンジとリムパーザの内膜腫試験 </li>
<li>ESMO:イミフィンジだけか、リムパーザも併用するか、判断がキビシイ </li>
<li>ESMO:EGFR・MET二重特異性抗体のPMS成功 </li>
<li>ESMO:キイトルーダのデータが続々発表 </li>
<li>ESMO:アレセンサのほうが完全切除後の再発死亡を防ぐ </li>
<li>ESMO:オプジーボの2試験の結果を発表 </li>
<li>武田のクローン病細胞療法、二本目の第3相はフェール </li>
<li>抗MASP-2抗体のIgA腎症試験がフェール </li>
<li>タグリッソを一次治療に承認申請 </li>
<li>デュピクセントは蕁麻疹に適応拡大できず </li>
<li>反応性アルデヒド調節剤の承認が遅れそう </li>
<li>BrainStorm、筋萎縮性側索硬化症用細胞療法の承認申請を取下げ </li>
<li>初の5価髄膜炎菌ワクチンが承認 </li>
<li>低量ピロカルピンが老眼治療薬として承認 </li>
<li>UCB、gMG用薬と乾癬用薬が承認 </li>
<li>抗議が奏功してテナパノルの承認を取得 </li>
<li>キイトルーダ、肺癌ペリオペラティブに用法追加 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>COVID-19薬のチャンピオン、ご苦労様でした</u>
<br />
(2023年10月13日発表)
<br />
<br />
ファイザーは、COVID-19治療薬に関する米国政府との契約の改定と23年の売上高ガイダンスの下方修正を発表した。この機会に、ファイザー、BioNTech、モデルナ、MSD、その他のCOVID-19ワクチン、治療薬メーカーの過去3年間の貢献に改めて感謝したい。
<br />
<br />
ファイザーは米国政府にPaxlovid(nirmatrelvir、ritonavir)を2000万人分供給する契約を結んだが、免疫獲得が進んだことや比較的重症化しにくい株が流行するようになったことなどから未使用在庫が相当数残っていると言われている。5月に正式承認されたことや、政府一括調達から通常の医療施設/薬局毎の調達に変わることを機に、ファイザーは23年末の未使用在庫を引き取ることに合意した。返金はせず、代わりに、政府の医療プログラム(メディケアやメディケイドなど)が24年に処方する分と、保険非加入者や最低限しかカバーされていない加入者が24~28年に処方を受ける分を、無償で提供する。このほかに、政府戦略備蓄に100万人分を供給する。
<br />
<br />
決算上は通常の返品と同様に売上高から控除し、24年以降に供給したら売上計上する。Paxlovidの世界売上高は22年に189億ドルに達し、23年の期初ガイダンスは80億ドルと半減を見込んでいたが、今回、10億ドルに下方修正された。政府が790万人分、42億ドル相当を返品と前提している。
<br />
<br />
Covid-19ワクチンComirnatyのファイザーにおける売上高は20年1.5億ドル、21年367億ドル、22年378億ドルと推移し、23年の期初ガイダンスは135億ドルだったが、今回、115億ドルに下方修正された。第3四半期に9億ドルの在庫償却を行うことも公表された。
<br />
<br />
売上計画未達を補うためコスト削減策を断行する考え。犠牲になる従業員は自分が悪いわけでもファイザーが反社会的な行為をしたわけでもないのに、やりきれないだろう。あらためて感謝を表明するから、何とかならないものか。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.pfizer.com/Investors/News/news-details/2023/Pfizer-Amends-U.S.-Government-Paxlovid-Supply-Agreement-and-Updates-Full-Year-2023-Guidance/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>ESMO:レットヴィモ、実薬対照試験で二冠達成</u>
<br />
(2023年10月21日発表)
<br />
<br />
ESMO(欧州臨床腫瘍学会)が始まり、これまで目的達成としか発表されていなかった臨床試験のトップライン・データが続々と公表された。
<br />
<br />
イーライリリーはRET阻害剤Retevmo(selpercatinib)の第3相実薬対照試験二本の成績をESMOとNew England Journal of Medicine誌で発表した。ニッチ薬だが効果はピカイチという分子標的薬の特徴が良く表れている。既承認の用途用法とオーバーラップしているが、評価を高める上で重要だろう。
<br />
<br />
LIBRETTO-431試験はRET融合変異のある進行/転移非小細胞性肺癌の一次治療を受ける261人をRetevmo群と標準療法群(白金薬とpemetrexed、そして約8割の患者がKeytruda(pembrolizumab)も併用)に2対1割付けしてPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)をオープン・レーベルで比較した。主評価項目であるKeytruda併用サブグループのPFSは中間解析で目的達成、メジアン値は24.8ヶ月と11.2ヶ月、ハザード・レシオは0.465だった。シーケンシャルに実施されたintent-to-treatベースの解析もハザード・レシオ0.482で成功。対照群の患者は進行後にRET阻害剤を用いることが許可されているため、8割の患者が追跡打ち切りとなっており、全生存期間の意味のある解析は難しそうだ。
<br />
<br />
LIBRETTO-531試験はRET変異のある進行/転移甲状腺髄様腫の291人を試験薬群と医師が選んだ薬(VEGFR阻害剤のcabozantinibまたはvandetanib)の群に2:1割付けしPFS(同上)をオープン・レーベルで比較した。中間解析で目的を達成した。ハザード・レシオは0.28、メジアン値は未達と16.8ヶ月。この試験も進行後のクロスオーバーにより対照群は8割以上が全生存期間の追跡打ち切りとなった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lillys-retevmor-selpercatinib-phase-3-results-ret-fusion" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:イミフィンジだけか、リムパーザも併用するか、判断がキビシイ</u>
<br />
(2023年10月21日発表)
<br />
<br />
医師共同治験グループであるGOGとENGOTが主導しアストラゼネカが補助金を拠出したDUO-E試験は、全体としては良好だがサブグループ分析は良く分からない結果になった。進行/難治内膜腫の新患718人を標準療法群(calboplatinとpaclitaxelを併用)、Imfinzi(durvalumab)追加群(Imfinziは維持療法も施行)、Imfinzi・Lynparza(olaparib)の二剤追加群(Imfinziは維持療法も施行、Lynparzaは維持療法だけ)に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間)を比較した偽薬対照試験。共同主評価項目のうち、Imfinzi追加群と標準療法群の比較はハザード・レシオ0.71、二剤追加群と標準療法群の比較は0.55となり、有意な差があった。
<br />
<br />
Imfinzi追加群と二剤追加群の比較は行われていないが大いに気になるところだ。二剤追加すべき最適なサブグループを探索することが重要な課題になる。本試験ではPD-L1とMMR(ミスマッチ修復)能という腫瘍シグナチュアに基づくサブグループ分析が行われたが、解釈が難しい。
<br />
<br />
Imfinziは抗PD-L1抗体なのでPD-L1陽性癌のほうが得意なはずだ。本試験でもPD-L1陽性癌におけるハザード・レシオは良好だったが、陰性癌ではImfinzi追加群は0.89で今一つ、二剤追加群しても0.80で、この程度なのかという印象だ。
<br />
<br />
LynparzaはDNAの一本鎖修復に関わるPARPを阻害する薬なので、二重連鎖修復に関わるBRCAなどの機能が不十分なdMMR(ミスマッチ修復不全)癌のほうが得意なはずだが、ハザード・レシオは、Imfinzi追加群が0.42、二剤追加群が0.41で、Lynparza追加のメリットが見えない。むしろ、pMMR(ミスマッチ修復能保持)のほうに上乗せ効果が感じられる。
<br />
<br />
サブグループ分析の点推定値がチグハグな結果になるのは珍しくなく、だから、主評価項目以外はあまり拘らないほうが良いのだが、薬を増やすかどうかは医療従事者にとっては手間暇、患者にとっては副作用、医療保険にとっては費用の面で非常に重要な関心事であるだけに、今後も様々な議論が行われるだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/imfinzi-plus-lynparza-reduced-risk-disease-progression-death-45-percent-vs-chemotherapy-advanced-recurrent-endometrial-cancer.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://ascopubs.org/doi/abs/10.1200/JCO.23.02132" target="blank">
Westinらの治験論文抄録(Journal of Clinical Oncology)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:EGFR・MET二重特異性抗体のPMS成功</u>
<br />
(2023年10月21日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssenは、Rybrevant(amivantamab)の市販後薬効確認試験(PMS)、第3相PAPILLONの結果を発表した。21年に米国で加速承認、EUで条件付き承認されたEGFRとMETに結合する二重特異性抗体で、本試験に基づき、欧米で本承認切替を申請中。
<br />
<br />
EGFR遺伝子のエクソン20に挿入変異を持つ未治療の進行/転移非小細胞性肺癌308人を組入れて、carboplatinとpemetrexedの標準療法に追加する便益をオープン・レーベルで検討したところ、PFS(盲検独立中央評価)がメジアン11.4ヶ月と標準療法群の6.7ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.395だった。全生存期間の中間解析はハザード・レシオ0.67、p=0.106で。良さそうだが未だ有意差は出ていない。対照群の76%が進行後にクロスオーバーしており、追跡を進めても一次治療における便益が二次治療である程度相殺されてしまう可能性がありそうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/new-data-from-phase-3-papillon-study-show-rybrevant-amivantamab-vmjw-plus-chemotherapy-resulted-in-60-percent-reduction-in-risk-of-disease-progression-or-death-in-patients-with-previously-untreated-egfr-exon-20-insertion-mutation-positive-non-small-cell-lung-cancer" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2306441" target="blank">
Zhouらの治験論文抄録(New England Journal of Medicine)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:キイトルーダのデータが続々発表</u>
<br />
(2023年10月20日発表)
<br />
<br />
MSDのKeytruda(pembrolizumab)の第3相試験成績が数多く発表された。
<br />
<br />
肺癌ではKeyNote-671試験。切除可能な早期非小細胞性肺癌(ステージII、IIIA、IIIB)の術前化学療法に追加し、術後も単剤投与する効果を偽薬追加と比較した試験で、中間解析におけるEFS(無イベント生存期間)延長効果に基づき今月米国で適応拡大した。今回、第2次中間解析で共同主評価項目である全生存も目的達成したことが学会発表された。ハザード・レシオ0.72(95%信頼区間0.56-0.93)、片側p=0.00517、36ヶ月生存率71.3%(偽薬追加群は64.0%)というもの。
<br />
<br />
MSDの臨床試験に関するプレスリリースに片側p値が載るのは珍しい。米国のレーベルによると、両側p値は0.0103で、割当てられたアルファは0.0109なので高度に有意とは言えないが点推定値は中々だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/keytruda-pembrolizumab-plus-chemotherapy-before-surgery-and-continued-as-single-agent-after-surgery-reduced-risk-of-death-by-28-versus-pre-operative-chemotherapy-in-resectable-stage-ii-iiia-o/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
子宮頸癌では医師共同治験グループであるENGOTやGOGが実施したKeyNote-A18試験。局所進行性子宮頸癌で高リスクの新患患者1060人を組入れて、同時化学放射線療法(外照射放射線療法、cisplatin、小線源治療)に追加する便益を検討したところ、中間解析でPFS(無進行生存期間)を達成した。ハザード・レシオ0.70、24ヶ月無進行生存率67.8%(偽薬追加群は57.3%)だった。共同主評価項目の全生存期間はハザード・レシオ0.73(95%信頼区間0.49-1.07)となっており、良い方向を向いているが未だ成熟していないので有意水準には達しておらず、引き続き追跡する。
<br />
<br />
米国では適応拡大申請済みで、審査期限は24年1月20日。
<br />
<br />
6月に目的達成したことだけを発表した時の「統計的に有意且つ臨床的に意味のある」という表現にふさわしい成績だった。この表現を使う企業が増えたのは好ましいことだ。臨床試験を中間解析で終わらせて早く収益に貢献させるべく、検出力を極めて高く設定するのが当たり前になったのと裏腹で、統計的にはギリギリ有利だが全生存期間が1ヶ月延びるだけというような悩ましい事例も散見されるからだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/mercks-keytruda-pembrolizumab-plus-concurrent-chemoradiotherapy-significantly-improved-progression-free-survival-pfs-versus-concurrent-chemoradiotherapy-alone-in-newly-diagnosed-hi/" target="blank">
同上</a>
<br />
<br />
乳癌ではKeyNote-756試験。エストロゲン受容体陽性、her2陰性の高リスク早期乳癌約1280人を組入れて、術前化学療法に4サイクル分追加し、術後内分泌療法にも9サイクル追加する便益を検討したもので、共同主評価項目のうち、pCR(病理学的完全反応)が成功した。試験薬群の達成率は24.3%、偽薬群は15.6%だった。一方、G3-5の有害事象発現率は各52.5%と46.4%、有害事象によるいずれかの薬の中止が19.1%と10.1%で発生した。一番重要な共同主評価項目であるEFSは継続追跡中。
<br />
<br />
同社が7月にpCR達成だけを公表したプレスリリースには、統計的に有意としか記されていなかった。癌が衰退しても体も衰退してしまったら困るので、pCRだけでは臨床的に意味があるとは言えないという含意かもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/mercks-keytruda-pembrolizumab-plus-chemotherapy-showed-statistically-significant-improvement-in-pathological-complete-response-pcr-rate-as-neoadjuvant-therapy-versus-chemotherapy-in/" target="blank">
同上</a>
<br />
<br />
胃癌における抗PD-1/PD-L1抗体の有益性は良く分からないところがあり、Keytrudaも、他の製品も、試験が成功したりしなかったりである。Keytrudaは第2相試験のORR(客観的反応率)に基づき17年に米国でCPS≧1の局所進行性/転移性G/GEJ(胃・胃食道接合部)腺腫に加速承認されたが、薬効確認試験がフェールしたことなどから、21年7月に適応自主返上を決定、1年後にレーベル変更された。前後して、her2陽性局所進行切除不能/転移G/GEJ腺腫の一次治療に化学療法及びtrastuzumabと併用することがKeyNote-811試験の副次的評価項目であるORRに基づいて加速承認された。しかし、主評価項目であるPFS(独立盲検中央評価)と全生存期間も中間解析で達成したものの効果が見られたのは被験者の8割以上を占めたCPS≧1の患者だけだったため、MSDは、適応範囲をCPS≧1に縮小申請する考えを明らかにした。
<br />
<br />
今回、データが明らかになった。PFSのハザード・レシオは0.72、CPS≧1では0.70、1未満のデータは不明。全生存期間は各0.84と0.81で、どちらも有意ではなかったが、多重性補正の影響もありそうだ。
<br />
<br />
尚、EUでは今年8月に適応拡大されたが、対象はCPS≧1だけ。FDAのように勇み足をしなかったことが、この件に関しては、正解だった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/keytruda-pembrolizumab-plus-trastuzumab-and-chemotherapy-significantly-improved-progression-free-survival-pfs-versus-trastuzumab-and-chemotherapy-in-first-line-her2-positive-advanced-gastric/" target="blank">
同上</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:アレセンサのほうが完全切除後の再発死亡を防ぐ</u>
<br />
(2023年10月18日発表)
<br />
<br />
ロシュはAlecensa(alectinib)の第3相ALINAが中間解析で目的を達成したと9月に発表したが、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)のPresidential Symposiumでの発表に3日先駆けて、トップラインを公表した。ステージIBからIIIAのALK陽性非小細胞性肺癌の完全切除を終えた257人を組入れて、DFS(無病生存期間)を白金薬ベースの化学療法と比較したもので、学会抄録によると主解析対象はステージIIからIIIAまでの231人。ハザード・レシオは0.24、統計的に有意だった。シーケンシャルに実施された全ユニバースの解析も同じく0.24で成功した。2年DFS率はどちらの解析でも試験薬群が93%、化学療法群が63%だった。全生存期間の解析は未成熟で実施されていない。G3/4の有害事象発生率は各群30%と31%、有害事象による治験離脱率は5.5%と12.5%だった。適応拡大申請の予定。
<br />
<br />
Alecensaは中外製薬発のALK阻害剤。14~17年に非小細胞性肺癌の2~5%を占めるALK陽性型の二次治療薬として日米欧で承認された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.roche.com/investors/updates/inv-update-2023-10-18" target="blank">
ロシュのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ESMO:オプジーボの2試験の結果を発表</u>
<br />
(2023年10月17日発表)
<br />
<br />
ESMOのレート・ブレーカー・アブストラクトの解禁時間違反があったようで、予定より早く一般公開され、ブリストル マイヤーズ スクイブが概要に関するプレスリリースを出した。二本ともOpdivo(nivolumab)の第3相で、非小細胞性肺癌のペリオペラティブ試験が10月21日、尿路上皮腫化学療法併用試験が22日に発表というスケジュールだ。
<br />
<br />
CheckMate-77T試験はステージIIAからIIIBまでの切除可能非小細胞性肺癌452人を組入れて、術前化学療法にOpdivoを追加し術後にもOpdivoを単剤投与する効果を検討した無作為化割付二重盲検偽薬対照試験。主評価項目はEFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)で、ハザード・レシオは0.58と、上記のKeytrudaの類似した試験と同水準だった。副次的評価項目の全生存期間は未だ成熟していない。
<br />
<br />
OpdivoはステージIBからIIIAの切除可能非小細胞性肺癌を組入れた術前化学療法併用試験で、EFSのハザード・レシオが0.63だった。今回とそれほど変わらず、術後も続けるメリットがどの程度なのか、良く分からない。PD-L1陰性患者における便益がやや小さかったが、今回はどうなのだろうか?
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/Perioperative-Regimen-of-Neoadjuvant-Opdivo-nivolumab-and-Chemotherapy-Followed-by-Adjuvant-Opdivo-Shows-Significant-Improvement-in-Event-Free-Survival-for-Patients-with-Resectable-Non-Small-Cell-Lung-Cancer-in-Phase-3-CheckMate--77T-Trial/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース(CheckMate-77T)</a>
<br />
<br />
CheckMate-901試験は切除不能/転移尿路上皮腫の一次治療試験。1290人をOpdivoとYervoy(ipilimumab)を併用する群と対応する化学療法群、Opdivoと化学療法を併用する群と対応する化学療法群の4群に割付けた。ClinicalTrials.govによると、主評価項目は4種類ある。
<br />
<br />
その一つであるPD-L1陽性患者におけるOpdivo・Yervoy併用療法の全生存期間の解析はフェールした。cisplatin不耐患者におけるOpdivo・Yervoy併用の全生存期間の解析は、今のところ音沙汰がない。
<br />
<br />
ESMOで発表されるのは、同社がサブスタディと呼んでいる、Opdivo・化学療法併用の便益に関するもの(解析対象608人)。主評価項目のうち全生存期間はメジアン21.7ヶ月と化学療法・偽薬併用群の18.9ヶ月を2か月強上回り、ハザード・レシオは0.78、p=0.0171だった。共同主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)は各7.9ヶ月、7.6ヶ月、0.72、0.0012だった。
<br />
<br />
前者のp値の0.0171というのは決して高水準とはいえない。この数値が多重性補正後なのかは明らかではないが、もし未補正なら、猶更、高水準とはいえない。サブスタディではなく、CheckMate-091試験全体の主評価項目の一つと解釈する場合は、全く高水準とは言い難くなる。学会で補足説明がなされるだろうか?
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/Opdivo-nivolumab-in-Combination-with-Cisplatin-Based-Chemotherapy-Followed-by-Opdivo-Demonstrates-Significant-Survival-Benefits-for-Cisplatin-Eligible-Patients-with-Unresectable-or-Metastatic-Urothelial-Carcinoma-in-Phase-3-CheckMate--901-Trial/default.aspx" target="blank">
BMSのプレスリリース(CheckMate-901)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>皮下注用オプジーボを承認申請へ</u>
<br />
(2023年10月19日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはOpdivo(nivolumab)の皮下注用製剤の第3相、CheckMate-67T試験で主目的を達成したと発表した。Halozyme社のrHuPH20(遺伝子組換えヒト・ヒアルロン酸分解酵素)を配合して皮下における吸収を可能にしたもので、投与時間5分と、現在の点滴静注用製剤の30分から短縮化できる。本試験では全身性治療歴を持つ進行/転移クリア・セル腎細胞腫の495人を組入れて、オープンレーベルで薬物動態などを比較した。共同主評価項目のCavgd28(初回投与後28日目までの平均血清中濃度)とCminss(定常状態における最低血清中濃度)の両方とも、点滴静注群と非劣性だった。副次的評価項目のORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)も非劣性だった。
<br />
<br />
同社は複数の適応で承認申請すべく規制当局と相談する考え。一部報道によると、他の抗癌剤との併用は申請しない様子だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/Phase-3-CheckMate--67T-Trial-of-Subcutaneous-Nivolumab-nivolumab-and-hyaluronidase-Meets-Co-Primary-Endpoints-in-Advanced-or-Metastatic-Clear-Cell-Renal-Cell-Carcinoma/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>武田のクローン病細胞療法、二本目の第3相はフェール</u>
<br />
(2023年10月18日発表)
<br />
<br />
武田薬品はAlofisel(darvadstrocel)の第3相、ADMIRE-CD-IIで主目的を達成できなかったと発表した。成功なら米国で承認申請するはずだった。
<br />
<br />
健常者の脂肪細胞由来の幹細胞で、16年にベルギーのTiGenixを買収して入手した。18年にEUで、21年には日本でも、クローン病の合併症である痔瘻の治療薬として承認された。今回の第3相のデザインは欧州承認のエビデンスとなった第3相ADMIRE-CD試験と類似しており、なぜ異なった結果になったのか、良く分からない。尤も、一本目の試験では24週間解率が50%と偽薬群の34%を上回ったが、p値は0.024なので、高度に有意とは言い難い。なぜ米国における承認申請が遅れたのかも明らかではないが、FDAは、通常、一本の試験だけで承認申請する場合はp値が0.05の二乗値である0.0025を下回ることを求める。今回のようなことが起こりうるからだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2023/20231018_8405/" target="blank">
同社のプレスリリース(和文)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>抗MASP-2抗体のIgA腎症試験がフェール</u>
<br />
(2023年10月16日発表)
<br />
<br />
Omeros(Nasdaq:OMER)はOMS721(narsoplimab)の第3相ARTEMIS-IGAN試験で中間評価項目を達成できず中止すると発表した。IgA腎症の患者を組入れて第36週のUPE(尿蛋白排泄)を偽薬群と比較したがフェールし、FDA承認申請も断念した。
<br />
<br />
OMS721は補体系の活性化を齎すレクチン経路に介入する抗MASP-2(マンナン結合レクチン関連セリン・プロテアーゼ2)完全ヒト化抗体。20年に造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)用薬として米国で承認申請したが、治療効果の立証が不十分として、審査完了通知を受領した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.omeros.com/news-releases/news-release-details/omeros-corporation-provides-update-interim-analysis-artemis-igan" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>タグリッソを一次治療に承認申請</u>
<br />
(2023年10月16日発表)
<br />
<br />
アストラゼネカは米国でTagrisso(osimertinib)をEGFR変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌の一次治療に化学療法と併用する用法追加申請を行ない、受理されたことを公表した。優先審査で、審査期限は24年第1四半期とのことなので受理されたのは7~9月なのだろう。
<br />
<br />
エビデンスとなるFLAURA2試験は、Tagrisso・化学療法併用群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン29.4ヶ月とTagrisso・偽薬併用群の19.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.62だった。一方、副次的評価項目の全生存期間はハザード・レシオ0.9と案外だった(但し、未だデータが熟していない)。更に、有害事象による治験離脱率が18.1%(偽薬併用群は13.3%)、G3以上の有害事象発生率が44.8%(同33.7%)と忍容性が見劣りした。骨髄抑制的有害事象により過半の患者が何れかの薬の投与を中止したという。
<br />
<br />
効果は高そうだが、副作用も増えるので、Tagrisso単剤にすべきか、化学療法を併用すべきか、患者毎に判断することになるのだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.astrazeneca.com/media-centre/press-releases/2023/tagrisso-plus-chemotherapy-granted-priority-review-us-patients-egfr-mutated-advanced-lung-cancer.html" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>デュピクセントは蕁麻疹に適応拡大できず</u>
<br />
(2023年10月20日発表)
<br />
<br />
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)と開発販売パートナーのサノフィは、抗IL-4受容体アルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)を12歳以上の管理不良慢性特発性蕁麻疹に米日で適応拡大申請しているが、米国は審査完了となった。薬効に関して追加データが必要と判定された。「スタディC」の結果が24年後半に判明する見込みなので、再申請はその後になりそうだ。
<br />
<br />
第3相のLIBERTY-CSU CUPID試験は、抗ヒスタミンに十分応答しない、バイオ薬未経験の6歳以上の中重度患者138人に追加投与した「スタディA」でISS7(痒みの評価尺度)もUAS7(蕁麻疹活動性評価尺度)も偽薬比有意に改善したが、バイオ薬にも応答不十分/不耐の83人を組み入れた「スタディB」はフェールした。その後、スタディAと同様な患者を組入れるスタディCが追加された。通常、薬効のエビデンスとなる試験は二本必要であることを考えると、審査完了通知を受領する可能性も踏まえて申請したのかもしれない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.regeneron.com/news-releases/news-release-details/regeneron-and-sanofi-provide-update-dupixentr-dupilumab-sbla" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>反応性アルデヒド調節剤の承認が遅れそう</u>
<br />
(2023年10月16日発表)
<br />
<br />
Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)は、米国証券取引委員会にフォーム8-Kを提出し、ADX 102(reproxalap)の承認が遅れる可能性があることを適時開示した。ドライアイの症候症状治療薬として承認申請し、11月23日に審査期限を迎えるが、Late-cycle review meetingで薬効の挙証が不十分と指摘された模様だ。同社は追加情報を提出したので解決できると考えているが、この度受領した議事録が懐疑的な内容のままだった模様で、追加試験の実施を示唆された。
<br />
<br />
ADX 102はRASP(反応性アルデヒド種)調節剤。アレルゲンとなる有機アルデヒド遊離体に結合し炎症推進作用を妨げる。第3相二本で目の充血を緩和する効果を検討したが、一本目がフェールしたため、良好な結果が出た副次的評価項目のシルマー・テストをもう一本の主評価項目に変更したところ、成功。1年安全性試験を経て昨年11月に承認申請したもの。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.sec.gov/ix?doc=/Archives/edgar/data/1341235/000119312523256532/d760002d8k.htm" target="blank">
Aldeyraのフォーム8-K(SECのEdgarデータベース)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BrainStorm、筋萎縮性側索硬化症用細胞療法の承認申請を取下げ</u>
<br />
(2023年10月18日発表)
<br />
<br />
BrainStorm Cell Therapeutics(Nasdaq:BCLI)はNurOwnをALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療薬として米国で承認申請していたが、取り下げた。第3相の主評価項目はフェール、治療効果自体も小さく、一方、死亡者数が偽薬群の3倍だったため、FDAは申請前相談で前向きな姿勢を示さず、会社側の学会などでの発表内容を否定するプレスリリースすら出していた。承認申請が受理されなかったためfile over protest(抗議に基づく申請)という異例の手段を用いたが、諮問委員会でも18人中一人しか便益を認めなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.brainstorm-cell.com/2023-10-18-BrainStorm-Cell-Therapeutics-to-Meet-with-US-FDA-to-Discuss-Development-Plan-for-NurOwn-as-a-Treatment-of-ALS" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>初の5価髄膜炎菌ワクチンが承認</u>
<br />
(2023年月日発表)
<br />
<br />
ファイザーは、FDAが5価髄膜炎菌ワクチンPenbrayaを10~25歳向けに承認したと発表した。10月25日にCDC(疾病予防管理センター)のACIP(ワクチン接種諮問委員会)が勧奨の当否や範囲などを討議する予定。
<br />
<br />
同社の髄膜炎菌ワクチンはNimenrixがA、C、W135、Y群を、TrumenbaはB群を、カバーしているが、5群をカバーする初めての製品がPenbrayaだ。第3相試験では免疫原性が非劣性だった。注射回数が半減するので、B群ワクチンの普及が進まない理由の一つが解消しよう。GSKも5価ワクチンの試験が成功、承認申請の予定。
<br />
<br />
CDCは4価ワクチンに関して、11~12歳になったら全員が接種し、16歳になったら追加接種することを勧奨している。しかし、B群ワクチンに関しては、勧奨は10歳以上の高リスクのみ、但し、16~23歳の人が医師と相談の上、接種しても可、接種回数は一回以上が良い、と抑え気味である。米国の青少年の感染はB群が最も多いが、B群ワクチンの普及率は3割程度、二回接種はもっと少ない由だ。4価ワクチンも16歳における接種率は5割程度と言われている。5価ワクチンの登場でACIPや医師、国民の認識が変わり普及が進むのか、注目される。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/fda-approves-penbrayatm-first-and-only-vaccine-prevention" target="blank">
ファイザーのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>低量ピロカルピンが老眼治療薬として承認</u>
<br />
(2023年10月18日発表)
<br />
<br />
米国フロリダ州のOrasis Pharmaceuticalsは、FDAがQlosi(pilocarpine hydrochloride、0.4%点眼液)を老眼治療薬として承認したと発表した。活性成分はドライマウスなどの治療に用いられていて、21年に承認されたアッヴィの老眼治療用点眼液Vuityと同じだが、用量が約1/3。一日二回、2週間点眼投与した二本の第3相試験で、応答率が約40%と偽薬群の20%前後を有意に上回った。尚、奏効率の定義は、第8日の点眼一時間後の近見視力がベースライン値より3行以上改善し、遠見視力は1行以上悪化しないこと。治療関連有害事象は頭痛、点眼箇所痛など。14年に発売する予定。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.orasis-pharma.com/orasis-pharmaceuticals-announces-fda-approval-of-qlosi-pilocarpine-hydrochloride-ophthalmic-solution-0-4-for-the-treatment-of-presbyopia/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>UCB、gMG用薬と乾癬用薬が承認</u>
<br />
(2023年10月17、18日発表)
<br />
<br />
UCBのgMS(重症筋無力症)用薬と乾癬治療薬が米国で相次いで承認された。
<br />
<br />
Zilbrysq(zilucoplan)は自己注が可能なC5インヒビター。アミノ酸15個の大環状ペプチド薬で、アセチルコリン受容体(AChR)に対する抗体を持つgMSの成人患者に一日一回皮下注する。日本では9月に承認。
<br />
<br />
19年にRa Pharmaceuticalsを25億ドルで買収して入手したもの。UCBは6月にRystiggo(rozanolixizumab-noli)も承認された。gMGの8~9割を占めるAChR型はどちらも適応になるが、どうやって使い分けたらいいのだろうか?
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ucb.com/stories-media/Press-Releases/article/UCB-announces-US-FDA-approval-of-ZILBRYSQR-zilucoplan-for-the-treatment-of-adults-with-generalized-myasthenia-gravis" target="blank">
同社のプレスリリース(10/17付)</a>
<br />
<br />
Bimzelx(bimekizumab-bkzx)はIL-17AとIL-17Bの二重特異性抗体。成人の全身性治療又は光力学療法が候補となる中重度プラク乾癬に用いる。直接比較試験でジョンソン・エンド・ジョンソンのStelara(ustekinumab )よりPASI90奏効率が高かった(85%対50%)。欧州では21年に、日本でも22年に承認されたが、米国は、COVID-19流行に伴う連邦政府職員の渡航制限や、ベルギー工場の査察で指摘事項があったことなどから遅延した。日欧では強直性脊椎炎やX線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎、乾癬性関節炎などに適応拡大申請/承認されているので、米国もキャッチアップしていくだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ucb.com/stories-media/Press-Releases/article/BIMZELXR-Approved-by-the-US-FDA-for-the-Treatment-of-Adults-with-Moderate-to-Severe-Plaque-Psoriasis" target="blank">
同社のプレスリリース(10/18付)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>抗議が奏功してテナパノルの承認を取得</u>
<br />
(2023年10月17日発表)
<br />
<br />
米国のArdelyx(Nasdaq:ARDX)は、FDAがXphozah(tenapanor)を成人の透析期慢性腎疾患の高リン血症治療薬として承認したと発表した。標準的療法であるリン結合剤に十分応答しない、または不耐の患者に、30mg錠を一日二回、経口投与する。
<br />
<br />
承認申請から承認まで3年4ヶ月かかり、後から申請した日本のほうが先に承認された(協和キリンがライセンシー)。昨年11月に召集された心臓腎臓薬諮問委員会のFDAブリーフィング資料によると、FDAが審査完了通知を発出した主因は効果に関する疑念。ピボタル試験で血清リン量が減少したが、効果はリン結合剤と比べて小さい。そもそも、血清リン量の低下が臨床的便益とリンクするというエビデンスは確立していない。
<br />
<br />
同社は異議や不服を申立て、諮問委員会で過半の委員の支持を得ることに成功、承認に繋がった。
<br />
<br />
XphozahはNHE3(ナトリウム水素交換輸送体3)を阻害、細胞と細胞の接着を強化してリンの透過を抑制する。活性成分は米国で便秘型過敏性腸症候群用薬Ibsrelaとしても承認されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.ardelyx.com/news-releases/news-release-details/fda-approves-xphozahr-tenapanor-first-class-phosphate-absorption" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>キイトルーダ、肺癌ペリオペラティブに用法追加</u>
<br />
(2023年10月16日発表)
<br />
<br />
MSDはFDAがKeytruda(pembrolizumab)の用法適応追加を承認したと発表した。4cm以上の大きさの、またはリンパ節転移した切除可能非小細胞性肺癌の術前(ネオアジュバント)・術後(アジュバント)療法に用いるもので、ネオアジュバントは化学療法と併用、アジュバントは単剤投与する。
<br />
<br />
エビデンスとなるKeyNote-671試験では、全生存期間のハザード・レシオが0.72、p=0.0103(複数設定された主評価項目の中間解析なので成否判定の閾値は0.0109)、EFS(無イベント生存期間、担当医評価)は0.58、p値は0.0001未満だった(閾値は0.0092)。
<br />
<br />
同日、EUでアジュバント適応拡大が認められたことも発表した。完全切除後に白金薬ベースの治療を受けたが再発リスクの高い非小細胞性肺癌に単剤投与するもので、米国では1月に承認されている。
<br />
<br />
抗PD-1/PD-L1抗体はネオアジュバントだけ、完全切除後のアジュバントだけ、今回の術前術後(ペリオペラティブ)の三種類の用法があり、効果だけを見ればペリが良いのだろうが、副作用や患者自身の気持ちのありようを考えれば、再発転移リスクの多寡に応じて使い分けるのが理想だろう。そのためにはもっと色々な情報が必要だ。例えば、術前のpCR(組織学的完全反応)の有無と全生存期間は相関するのか?PD-1発現との関連はないのか?ペリ対ネオ対アジュバントの直接比較試験を実施するのは難しいだろうから、せめて、サブグループ・データなどの解析を進めてもらいたいものだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/fda-approves-keytruda-pembrolizumab-for-treatment-of-patients-with-resectable-t%e2%89%a54-cm-or-n-nsclc-in-combination-with-chemotherapy-as-neoadjuvant-treatment-then-continued-as-a-single/" target="blank">
MSDのプレスリリース(米承認)</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/european-commission-approves-keytruda-pembrolizumab-as-adjuvant-treatment-for-adults-with-non-small-cell-lung-cancer-at-high-risk-of-recurrence-following-complete-resection-and-platinum-based/" target="blank">
MSDのプレスリリース(EU承認)</a>
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<caption><b></b></caption>
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">アストラゼネカのAZD5363(capivasertib、局所進行性/転移性乳癌)</td></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>23年4Q推</td><td align="left">イーライリリーのtirzepatide(体重管理薬)</td></tr>
<tr><td>23/10/26</td><td align="left">Santhera Pharmaceuticalsのvamorolone(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)</td></tr>
<tr><td>23年11月推 </td><td align="left">武田薬品のTAK-755(先天的血栓性血小板減少性紫斑症)</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">Phathom Pharmaceuticalsのvonoprazan(びらん性胃食道逆流症)</td></tr>
<tr><td>23/11/23</td><td align="left">Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">BMSのrepotrectinib(ROS1陽性非小細胞性肺癌)</td></tr>
<tr><td>23/11/27</td><td align="left">SpringWorksのnirogacestat(デスモイド腫瘍)</td></tr>
<tr><td>23/11/30</td><td align="left">Hutchmed/武田のfruquintinib(結腸直腸癌)</td></tr>
<tr><td>23/11末</td><td align="left">ValnevaのVLA1553(チクングニア熱ワクチン)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>23/10/31</td><td align="left">CTGTAC:Vertex/Crisprのexagamglogene autotemcel<br />(ベータサラセミアと鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/11/16</td><td align="left">ODAC:Acrotech BiopharmaのFolotyn(pralatrexate)とBeleodaq(belinostat)<br />市販後薬効確認が遅延している件</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">PADAC:MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-15444958723124719092023-10-14T19:16:00.001+09:002023-10-14T19:16:33.436+09:00第1124回<h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>リリー、オンボーのクローン病試験が成功 </li>
<li>セマグルチドが糖尿病性腎症の進行を抑制したが </li>
<li>キイトルーダのNSCLC補助療法試験、延命効果も確認 </li>
<li>AnaptysBio、抗IL-36R抗体の第3相成功も導出へ </li>
<li>H3受容体拮抗剤の特発性過眠症試験がフェール </li>
<li>サンファーマ、米国で円形脱毛症用薬の承認申請が受理 </li>
<li>アルナイラム、パチシランの適応拡大は成らず </li>
<li>CHMP、DMD用薬などの承認を支持 </li>
<li>オプジーボが中リスク黒色腫の術後補助に承認 </li>
<li>ファイザー、S1P受容体調節剤が潰瘍性大腸炎に承認 </li>
<li>BRAF-V600E変異型非小細胞性肺癌の併用用薬が承認 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>リリー、オンボーのクローン病試験が成功</u>
<br />
(2023年10月12日発表)
<br />
<br />
イーライリリーはOmvoh(mirikizumab)の第3相クローン病試験で共同主評価項目二つを達成したと発表した。承認申請に向かう予定。
<br />
<br />
抗IL-23p19サブユニット抗体で、3月に日本で、5月にはEUでも、中重度潰瘍性大腸炎の寛解導入と維持用に承認された(米国は製造問題で審査完了)。今回の試験は中重度活性期クローン病患者を偽薬、試験薬、JNJの抗IL-12/23p40サブユニット抗体Stelara(ustekinumab)の3群に無作為化割付けして12週間投与し、応答した患者はそのまま、非応答は盲検のままmirikizumabにスイッチして総計52週間、投与を続けた。応答の定義は大便回数または腹痛が30%以上減少しどちらも悪化しないことで、患者自身が評価した。
<br />
<br />
主評価項目のうち、12週応答かつ52週臨床的寛解(CDAI総スコアが150未満)は試験薬群では45.4%が達成、偽薬群の19.6%を有意に上回った。12週応答且つ52週内視鏡的応答(Simple Endoscopic Score – Crohn's Disease総スコアが50%以上低下)も38.0%対9.0%で有意。
<br />
<br />
Stelara比は評価方法が違うようで、52週臨床的寛解率では非劣性解析が成功、内視鏡的応答率は優越性解析がフェールした。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lillys-mirikizumab-helped-patients-crohns-disease-achieve-long" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>セマグルチドが糖尿病性腎症の進行を抑制したが</u>
<br />
(2023年10月11日発表)
<br />
<br />
ノボ ノルディスクはGLP-1作用剤Ozempic(semaglutide)のアウトカム試験、FLOWを繰上げ完了すると発表した。独立データ監視委員会が中間薬効解析で目標達成を認定したため。慢性腎疾患を合併する二型糖尿病患者3534人を欧米日本などの施設で組入れて、1mgを週一回皮下注する群の転帰を偽薬群と比較したたもので、主評価項目は腎不全、eGFR半減、透析又は腎移植、腎疾患死、心血管疾患死の複合評価項目。データは24年上期に判明する見込み。承認用途ではあるが、血糖治療薬に求められるエビデンスができたことになる。尚、Ozempicは2mgも承認されている。
<br />
<br />
semaglutideは二型糖尿病を伴わない肥満症/オーバーウェイト患者の心血管アウトカム試験、SELECTでも主要有害心血管イベントを偽薬比20%抑制することに成功した(この適応では2.4mgを週一回皮下注)。また、ノボの最初のGLP-1作用剤であるVictoza(liraglutide)も、心血管疾患または高リスクの二型糖尿病患者を組入れた心血管アウトカム試験、LEADERで、主要有害心血管イベントを偽薬比13%抑制した。比較的新しいクラスであるGLP-1作用剤も様々なサブグループにおけるエビデンスが着々と積み上がっている。
<br />
<br />
意外だったのが、その翌日、透析サービス大手のDaVitaのJeff Giullian CMOが出した声明だ。この試験の組入れ基準に該当するのは慢性腎疾患の患者の1割足らずであること、複合評価項目を構成する一つだけでも条件を満たせば繰上げ完了になるのでどれが良かったのか現時点では分からないこと、eGFR悪化を抑制したのならSGLT2阻害剤とどちらが良いのか、などと指摘した。臨床試験は選ばれた施設の選ばれた医師が選びに選び抜かれた患者を対象にして実施するのでデータを外挿する際にはどちらにせよ熟慮が必要だ。また、元々糖尿病性腎症の試験なので慢性腎疾患全体を母数とするのは適切ではない。ただ、これらを考えても、1割未満というのは驚きだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novonordisk.com/news-and-media/news-and-ir-materials/news-details.html?id=166327" target="blank">
ノボのプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://newsroom.davita.com/2023-10-12-DaVita-Statement-on-GLP-1-and-Potential-Implications-on-Chronic-Kidney-Disease" target="blank">
DaVitaの声明</a>
<br />
<br />
<br />
<u>キイトルーダのNSCLC補助療法試験、延命効果も確認</u>
<br />
(2023年10月10日発表)
<br />
<br />
MSDはKeytruda(pembrolizumab)の非小細胞性肺癌術前術後補助療法(ペリアジュバント)試験、KeyNote-671で、共同主評価項目である全生存期間も中間解析で達成した。詳細は10月20日にESMO(欧州臨床腫瘍学会)のProffered Paperセッションで発表される見込み(LBA56)。
<br />
<br />
この試験は切除可能なステージII、IIIA、IIIBの非小細胞性肺癌を組入れて、術前白金薬ベース化学療法に偽薬またはKeytrudaを追加し、術後に偽薬またはKeytrudaを施行してEFS(無イベント生存期間)と全生存期間を比較した。今年のASCOにおける発表によると、EFSのハザードレシオ0.58、25.2ヶ月追跡してメジアン値は偽薬群が17ヶ月、試験薬群は未達、全生存期間は未成熟でハザードレシオは0.73だが、p=0.02124で成功認定の閾値を満たしていなかった。MSDはこれらのデータに基づきFDAに追加承認申請を行い、審査期限は今月16日となっている。
<br />
<br />
ライバルのBMSのOpdivo(nivolumab)も類似したデザインのCheckMate-77T試験が中間解析で主目的であるEFSを達成、10月21日にESMOのPresidential 1セッションで発表される予定(LBA1)。
<br />
<br />
KeytrudaはステージIB、II、IIIAの非小細胞性肺癌で切除術と術後白金薬ベース化学療法を受けた患者に単剤投与することが1月に米国で承認され、EUでもCHMPが肯定的意見をまとめた。効果の面では早期に併用したほうが良いのだろうが、毒性もあるので、どう使い分けすべきなのか知りたいところだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/merck-announces-pivotal-keynote-671-trial-meets-dual-primary-endpoint-of-overall-survival-os-in-resectable-stage-ii-iiia-or-iiib-non-small-cell-lung-cancer-nsclc/" target="blank">
MSDのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>AnaptysBio、抗IL-36R抗体の第3相成功も導出へ</u>
<br />
(2023年10月9日発表)
<br />
<br />
米国の新興医薬品開発会社、AnaptysBio(Nasdaq:ANAB)は、ANB019(imsidolimab)の第3相GEMIMI-1試験で主目的を達成したと発表した。GPP(汎発性膿疱性乾癬)患者45人を偽薬、300mg、750mgの3群に無作為化割付けして一回静注し、第4週の奏効率(GPPPGA尺度が0(解消)または1(ほぼ解消))を比較したところ、750mg群は53.3%となり、偽薬群の13.3%を有意に上回った(p=0.0131)。忍容性は大きな問題は発生せず、試験薬群30人中1人で抗imsidolimab抗体が検出されたが、中和抗体ではなかった。
<br />
<br />
偽薬群15人中10人が、第8日時点で改善が見られなかったらレスキューとして750mgを一回静注できるというプロトコルに従いクロスオーバーした。この人たちと試験薬群はGEMINI-2試験に進み、偽薬または200mgを月一回、皮下注する維持用法フェーズに進んでいる。
<br />
<br />
同社は24年第3四半期に米国で承認申請する考え。同年中に導出先を決定し、自身はPD-1アゴニスティック抗体などの開発に注力する考えだ。
<br />
<br />
GPPは広範囲にわたる無菌性膿疱を特徴とする好中球性の炎症性皮膚疾患。大半はIL-36受容体アンタゴニストをコードするIL36RN遺伝子に変異を持つ。imsidolimabはIgG4型抗IL-36抗体。同じ作用機序を持つベーリンガー・インゲルハイムのSpevigo(spesolimab-sbzo)がGPPのフレア治療薬として22年に米日欧で承認されており、こちらは、一週後の改善が不十分ならもう一度投与することが承認されている。一方、imsidolimabは、もし維持療法が承認されれば差別化要因になりうるだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.anaptysbio.com/news-releases/news-release-details/anaptys-announces-positive-top-line-phase-3-clinical-trial" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
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<br />
<br />
<u>H3受容体拮抗剤の特発性過眠症試験がフェール</u>
<br />
(2023年10月13日発表)
<br />
<br />
Harmony Biosciences(Nasdaq;HRMY)はWakix(pitolisant)の第3相INTUNE試験がフェールしたと発表した。19年に米国で、麻薬指定されていない初のナルコレプシー治療薬として承認されたH3受容体拮抗剤で、ヒスタミンの合成・放出を増やし覚醒状態を維持するうえで重要なヒスタミン・ニューロンの活性を増強する。今回は米国の推定患者数8万人という特発性過眠症を対象とした無作為化割付け離脱試験。213人に8週間投与して応答した患者を投与継続群と偽薬スイッチ群に無作為化割付けして4週後の症状を比較したが、主評価項目も副次的評価項目もトレンドに留まった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.harmonybiosciences.com/newsroom/harmony-biosciences-announces-topline-data-from-phase-3-intune-study/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>サンファーマ、米国で円形脱毛症用薬の承認申請が受理</u>
<br />
(2023年10月6日発表)
<br />
<br />
インド本社のSun Pharmaceutical Industriesは、米国でdeuruxolitinibを承認申請し受理されたと発表した。成人の中重度円形脱毛症を適応とする予定。
<br />
<br />
骨髄線維症などの治療薬として用いられているJAK1/2阻害剤、ruxolitinibを重水素化したもの。3月にConcert Pharmaceuticalsを買収して入手した。臨床試験では8mgまたは12mgを一日二回、経口投与して偽薬と比較したところ、SALTスコア(脱毛範囲を指数化、ベースライン平均値は85~88)が20以下に改善した患者の比率が一本では各群29%と41%、もう一本では33%と38%となり、偽薬群の1%足らずを有意に上回った。
<br />
<br />
申請用量は8mg。上記試験の延長試験において12mg群で肺塞栓症例が発生しFDAがこの用量だけ治験停止命令を発出したことがある。JAK阻害剤は様々な副作用がありFDAは特に慎重なスタンスを示している。
<br />
<br />
重水素化技術は水素分子を重水素に置換して薬物代謝酵素に分解されにくくする。テバのハンチントン舞踏病用薬Austedo(deutetrabenazine)はtrabenazineを重水素化して服用頻度を一日二回に削減した。deuruxolitinibの服用頻度はruxolitinibと同じなので、用途が違うとはいえ、重水素化のメリットが良く分からない。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://sunpharma.com/wp-content/uploads/2023/10/Sun-Pharma-Announces-US-FDA-Filing-Acceptance-for-Deuruxolitnib.pdf" target="blank">
同社のプレスリリース(pdfファイル)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>アルナイラム、パチシランの適応拡大は成らず</u>
<br />
(2023年10月9日発表)
<br />
<br />
アルナイラム・ファーマシューティカルズはOnpattro(patisiran)をTTR調停心筋症の治療薬として米国で適応拡大申請していたが、審査完了通知を受領した。効果が小さく治療する意義が明確ではないと判定された。
<br />
<br />
トランスサイレチンのmRNAを標的とするRNA介入薬。トランスサイレチン遺伝子変異によるポリニューロパチーの治療薬として米欧日で承認されている。適応拡大試験のAPOLLO-Bでは、遺伝子変異の有無を問わず36人を組入れて、0.3mg/kgの3週毎静注を12ヶ月間反復する群の12分歩行テスト成績を偽薬群と比較した。偽薬群は平均375メートルから31メートル減少したが、試験薬群は平均361メートルから13メートル減少に留まり、有意な差があった(p=0.0162)。本試験では25%の患者がファイザーのTTR調停心筋症治療薬tafamidisを同時使用していたが、残念なことに、このサブグループにおける治療効果は殆どなかった。更に悩ましいことに、同時使用していないサブグループにおける治療効果は、tafamidisの第3相試験における治療効果に見劣りした。
<br />
<br />
9月に開催された諮問委員会では、便益は限定的だが危険性はもっと小さいとして9人の委員が適応拡大を支持し、反対は3人に留まったが、FDAは、最近では珍しく、希少疾患用薬の審査に際して諮問委員会より厳しい評価を下した。
<br />
<br />
同社は3ヶ月毎皮下注のTTR調停ポリニューロパチー用薬Amvuttra(vutrisiran)でもTTR調停心筋症適応拡大試験を実施中。Onpattroの試験の倍の患者を組入れて、6分歩行テストよりも訴求力がある全死亡/心血管疾患入院/心不全緊急治療というハードな複合評価項目における便益を偽薬と比較していて、24年に結果が出る見込み。このため、同社はこれ以上、Onpattroの適応拡大申請を行わない考え。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.alnylam.com/press-release?id=27741" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>CHMP、DMD用薬などの承認を支持</u>
<br />
(2023年10月13日発表)
<br />
<br />
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/news/meeting-highlights-committee-medicinal-products-human-use-chmp-9-12-october-2023" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
スイスのSanthera Pharmaceuticals(SIX:SANN)が米国のReveraGen Biopharmaからライセンスして開発したAgamree(vamorolone)はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬。後期第2相試験に基づき4歳以上の患者に承認することが支持された。仰向け→うつ伏せ→起立に要する時間や6メートル歩行テスト成績を改善する。適応は歩行可能な患者に限定されていない様子だ。米国でも審査中で起源は今月26日。ステロイドの類薬だが骨などに与える副作用が小さい。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/agamree" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
ファイザーのElrexfio(elranatamab)はBCMAとCD3の二重特異性抗体。成人の代表的な3クラスの治療薬すべてを含む3次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の難治/再発多発骨髄腫に用いることを条件付き承認するよう勧告した。米国でも8月に加速承認されているが、適応は4次以上の治療歴とやや異なっている。日本でも承認申請中。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/elrexfio" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
フランスのゲルベ社がイタリアのブラッコ社と提携して開発し別名販売するのが大環状ガドリニウムMRI造影剤、Elucirem(gadopiclenol)とVueway。2歳以上の患者の中枢神経系や臓器などの強調造影が必要な場合に用いる。米国では22年9月に承認。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/elucirem" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
スウェーデンのImmedica PharmaのLoargys(pegzilarginase)は高アルギニン血症の酵素補充療法。2歳以上の患者に例外的環境条項に基づき承認するよう勧告した。臨床試験で血漿アルギニン量が71%低下した(偽薬群は5%低下)。副次的評価項目である運動機能の改善はトレンドに留まった。
<br />
<br />
米国のAeglea BioTherapeutics(Nasdaq:AGLE)が開発し22年に米国で承認申請したが、臨床的効用が確立していないとして受理されず、CEOが退任、今年7月に欧州中東のライセンシーだったImmedicaにグローバル権を供与した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/loargys" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
ドイツのMundipharmaのRezzayo(rezafungin)は成人の侵襲性カンジダ症の治療薬。caspofungin対照試験で30日死亡率や全般的治癒率が非劣性だった。Cidara Therapeutics(Nasdaq:CDTX)がSeachaid Pharmaceuticalsから権利を取得して開発し、米日以外の地域における商業化権を同社に供与した。米国はMelinta Therapeutics(Nasdaq:MLNT)がライセンス、今年3月に他の選択肢がない場合のサルベージ用途で承認された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/rezzayo" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
アステラス製薬のVeoza(fezolinetant)はNK3受容体拮抗剤。閉経に伴う中重度の血管運動症状の治療に用いる。米国では5月にVeozah名で承認。17年にベルギーのOgeda社を買収して入手したもの。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/summaries-opinion/veoza" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
一方、ドイツのmedac GmbHがher2陽性局所進行/転移乳癌の3次治療薬として申請していた抗体医薬複合体、Jivadco(trastuzumab duocarmazine)は、申請取下げとなった。第3相実薬対照試験でPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.64と良好な成績を上げたが、CHMPは、投与中止例の評価や追跡状況、あるいは治験施設査察時の所見などから、大きな懸念を抱いていた。
<br />
<br />
オランダのByondisから欧州における商業化権を取得したもの。米国でも申請されたが今年5月に審査完了通知を受領した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.ema.europa.eu/en/medicines/human/withdrawn-applications/jivadco" target="blank">
EMAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
以下の適応拡大も支持された。
<br />
<br />
<li>BeiGene(百済神州)のBrukinsa(zanubrutinib):難治/再発濾胞性リンパ腫の3次治療にobinutuzumabと併用。米国でも審査中。</li>
<li>アストラゼネカのImfinzi(durvalumab):成人の未治療進行性/切除不能肝細胞腫に単剤投与。日本で昨年12月に承認。</li>
<li>GSKのJemperli(dostarlimab):成人のdMMR/MSI-H原発性進行/難治内膜腫にcarboplatin及びpaclitaxelと併用。米国では8月に承認。</li>
<li>MSDのKeytruda(pembrolizumab):成人のPD-1陽性(CPS≧1)の局所進行切除不能/転移胃・胃食道接合部腺腫でher2陰性の場合(陽性は一足先に承認)。</li>
<li>MSDのPrevymis(letermovir);CMV感染腎臓を非感染者に移植した後のCMV感染予防。米国では6月に承認。</li>
<li>Pharmaand GmbHのRubraca(rucaparib):成人の進行ハイグレード卵巣癌で白金薬ベース化学療法による一次治療に完全/部分反応した患者の維持療法。ファイザーからライセンスして実用化にこぎつけたClovis Oncologyがチャプター11申請し、同社が事業買収している。</li>
<li>武田薬品のBaxalta社のVeyvondi:フォン・ヴィレブランド病の出血治療/予防薬。A型血友病を不可とする制限を解除する。</li>
<br />
一方、ロシュはRoActemra(tocilizumab)の全身性硬化症適応拡大申請を撤回した。米国では21年に全身性硬化症関連間質性肺疾患の治療薬として承認されたが、CHMPは、主評価項目の皮膚厚改善が二本の臨床試験ともフェールしたことや、副次的評価項目の肺機能低下抑制効果ははっきりしないと判断していた。
<br />
<br />
CHMPは9月に以下の薬の条件付き承認を更新しないよう勧告したが、異議申し立て手続きに則り、再審査を決めた。
<br />
<br />
<li>PTC TherapeuticsのDMD用薬Translarna(ataluren)</li>
<li>GSKの多発骨髄腫用薬Blenrep(belantamab mafodotin)</li>
<br />
16年に条件付き承認した原発性胆汁性肝硬変治療薬Ocaliva(obeticholic acid)について再検討することも決定した。臨床的便益を確認するCOBALT試験で死亡/合併症リスクが偽薬並みで、副作用は多かったため。早ければ24年1月にCHMPの評価をまとめる予定。尚、承認を取ったのはIntercept Pharmaceuticals(Nasdaq:ICPT)だったが、経営不振によりイタリアのAlfasigmaが事業買収した。
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>オプジーボが中リスク黒色腫の術後補助に承認</u>
<br />
(2023年10月13日発表)
<br />
<br />
ブリストル マイヤーズ スクイブはFDAがOpdivo(nivolumab)をステージIIBやIICの悪性黒色腫の切除後アジュバント療法として承認したと発表した。IIIB、IIIC、IVには17年に承認されているが、対象が拡大した。EUでは8月に承認済み。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.bms.com/news/details/2023/U.S.-Food-and-Drug-Administration-Approves-Opdivonivolumab-as-Adjuvant-Treatment-for-Eligible-Patients-with-Completely-Resected-Stage-IIB-or-Stage-IIC-Melanoma1/default.aspx" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ファイザー、S1P受容体調節剤が潰瘍性大腸炎に承認</u>
<br />
(2023年10月13日発表)
<br />
<br />
ファイザーはFDAがVelsipity(etrasimod)を中重度潰瘍性大腸炎用薬として承認したと発表した。2mgを一日一回、経口投与する。22年にArena Pharmaceuticalsを買収して入手した開発品の一つ。治療開始前に心臓、肝機能、眼底、使用薬などとチェックする。心筋梗塞などを発症してから半年以内などの患者は禁忌。
<br />
<br />
S1P受容体調節剤はBMSのZeposia(ozanimod)が21年に中重度潰瘍性大腸炎に適応拡大した。2年遅れだが、用量漸増/滴定しなくて良い点が長所。心毒性などはクラス・イフェクト。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/us-fda-approves-pfizers-velsipitytm-adults-moderately" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>BRAF-V600E変異型非小細胞性肺癌の併用用薬が承認</u>
<br />
(2023年10月11日発表)
<br />
<br />
FDAは、ファイザーが19年に企業価値ベース1114億ドルで買収したArray BioPharmaのMektovi(binimetinib)とBraftovi(encorafenib) をBRAFにV600E変異を持つ非小細胞性肺癌に併用する適応拡大を承認した。エビデンスは欧韓米で実施された100人足らずの第2相試験のORR(客観的反応率、独立評価委員会査読)。前者は45mgを一日2回、後者は450mgを一日1回、経口投与したところ、未治療患者では75%、反応持続期間はメジアン未達、既治療患者では46%と16.7ヶ月だった。有害事象は疲労、悪心嘔吐、下痢なと。FoundationOne CDx/Liquid CDxもコンパニオン診断薬として承認された。後者の血液検査で陰性の場合、前者の組織学的検査を施行する。
<br />
<br />
Mektoviは名前の通り、MEK阻害剤、Braftoviも名前の通り、BRAF阻害剤。BRAF-V600E変異型の黒色腫などに用いることが米欧や日本(小野薬品がライセンス)などで承認されている。
<br />
<br />
類薬ではノバルティスのMEK阻害剤Mekinist(trametinib)とBRAF阻害剤Tafinlar(dabrafenib) の併用が同用途で17~18年に欧米日で適応拡大している。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/drugs/resources-information-approved-drugs/fda-approves-encorafenib-binimetinib-metastatic-non-small-cell-lung-cancer-braf-v600e-mutation" target="blank">
FDAのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">アストラゼネカのAZD5363(capivasertib、局所進行性/転移性乳癌)</td></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>23年4Q推</td><td align="left">イーライリリーのtirzepatide(体重管理薬)</td></tr>
<tr><td>23年10月</td><td align="left">ファイザーのMenABCWY(5価髄膜炎菌ワクチン)</td></tr>
<tr><td>23年10月推</td><td align="left">ArdelyxのXphozah(tenapanor、高リン血症)</td></tr>
<tr><td>23/10/16</td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、非小細胞性肺癌術前術後補助療法に一変)</td></tr>
<tr><td>23/10/17</td><td align="left">ArdelyxのXphozah(tenapanor、透析期CKDの高リン血症) </td></tr>
<tr><td>23/10/22</td><td align="left">Orasis PharmaceuticalsのCSF-1(pilocarpine、老眼)</td></tr>
<tr><td>23/10/22</td><td align="left">Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、慢性特発性蕁麻疹に一変)</td></tr>
<tr><td>23/10/26</td><td align="left">Santhera Pharmaceuticalsのvamorolone(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>23/10/31</td><td align="left">CTGTAC:Vertex/Crisprのexagamglogene autotemcel(ベータサラセミアと鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/11/16</td><td align="left">ODAC:Acrotech BiopharmaのPTCL用薬二剤、Folotyn(pralatrexate)とBeleodaq(belinostat)の市販後薬効確認が遅延している件</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">PADAC:MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
</table>
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-19176895134194034132023-10-06T14:02:00.000+09:002023-10-06T14:02:10.788+09:00第1123回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul>
<li>FDA、早産児にプロバイオティクスを与える危険を警告 </li>
<li>キイトルーダの尿路腫瘍後補助療法試験が成功 </li>
<li>成人に続き小児の先天性副腎過形成治療試験も成功 </li>
<li>ノバルティス、iptacopanはIgA腎症試験も成功 </li>
<li>KMT2再編成型急性白血病試験が成功 </li>
<li>白血球接着不全症の遺伝子療法を承認申請 </li>
<li>劣性栄養障害型表皮水疱症の遺伝子療法を承認申請 </li>
<li>FDA諮問委員会、ルマケラスの薬効確認試験にダウト </li>
<li>FDA諮問委員会、DFMOの外部対照試験によるエビデンスを受け入れ </li>
<li>イーライリリーの抗IL-13抗体は承認されず </li>
<li>武田、Exkivityの加速承認を自主返上へ </li>
<li>ノボの高シュウ酸尿症用siRNAも承認 </li>
<li>ノババックスもXB.1.5型COVID-19ワクチンが米国で承認 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【今週の話題】</h4>
<br />
<u>FDA、早産児にプロバイオティクスを与える危険を警告</u>
<br />
(2023年9月29日発表)
<br />
<br />
FDAはDHCPレター(医療提供者向け通知)を発出し、入院中の早産児にプロバイオティクス(生きた細菌や酵素)を与えると、その細菌や真菌による、侵襲性で致死的になりうる疾患を引き起こすリスクがあると警告した。医学誌に症例報告が寄せられているほか、Evivo with MCT Oilというビフィズス菌系のプロバイオティクスを与えられた早産児がビフィドバクテリウム・ロングム(ビフィズス系細菌)による敗血症で死亡したことを明らかにした。
<br />
<br />
メーカー側も認識しているようで、同製品のホームページには正規産児に用いることを意図していると記されている。また、AAP(米国小児科アカデミー)も、早産児、特に体重が1000g未満の場合は、ルーチンにプロバイオティクスを与えないよう勧告している。理由の一つは、FDAの承認を受けている乳幼児用プロバイオティクス製品は存在しないことだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/safety/medical-product-safety-information/risk-invasive-disease-preterm-infants-given-probiotics-formulated-contain-live-bacteria-or-yeast" target="blank">
FDAの安全性情報</a>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>キイトルーダの尿路腫瘍後補助療法試験が成功</u>
<br />
(2023年10月5日発表)
<br />
<br />
MSDは、NCI(米国立癌センター)の補助金などを受けて実施されているKeytruda(pembrolizumab)の第3相研究者主導試験、AMBASSADOR/KEYNOTE-123で、共同主評価項目の一つを達成したと発表した。局在性MIUC(筋層浸潤尿路腫瘍)と局所進行性尿路腫瘍の摘出術を受けた702人を組入れて、200mgを3週毎に最大18サイクル投与する群のDFS(無病生存期間)と全生存期間を観察群と比較するもので、前者の中間解析で統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善が見られた。後者は引き続き追跡する。
<br />
<br />
類薬であるBMSのOpdivo(nivolumab)は類似した試験が成功、21年に欧米でDFSデータに基づき適応拡大が認められた。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.merck.com/news/mercks-keytruda-pembrolizumab-met-primary-endpoint-of-disease-free-survival-dfs-in-certain-patients-with-muscle-invasive-urothelial-carcinoma-miuc-after-surgery/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>成人に続き小児の先天性副腎過形成治療試験も成功</u>
<br />
(2023年10月5日発表)
<br />
<br />
米国カリフォルニア州のNeurocrine Biosciences(Nasdaq:NBIX)は、NBI-74788(crinecerfont)の第3相小児CAHtalyst pediatric試験の成功を発表した。21-OHD(水酸化酵素)欠乏による古典的CAH(先天性副腎過形成)の青少年に4週間投与したところ、血清アンドロステンジオン量が偽薬比有意に減少した。成人を組入れた試験も成功しており、長期追跡データを取得して24年に欧米で承認申請する考え。
<br />
<br />
古典的CAHの9割超は常染色体性劣性遺伝により21-OHDが産生されずコルチゾールが欠乏する。アルドステロンの欠乏も多く見られる。コルチコイドが有効だが、副腎皮質刺激ホルモンなどの過剰分泌を防ぐために多量投与する必要がある。
<br />
<br />
NBI-74788はCRF1(コルチコトルピン放出因子受容体1)の経口アンタゴニストで、コルチコイドの使用量を減らせる長所がある。本試験は、30%の患者がアンドロゲンが管理不良にならずにコルチコイドを減量することに成功した(偽薬群はゼロ)。成人試験ではこの奏効率が主評価項目で、63%対18%、有意な差があった。副次的評価項目のアンドロステンジオン減少率も有意に高かった。
<br />
<br />
有害事象は頭痛、発熱、嘔吐などで、忍容性はそれほど悪くなさそうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://neurocrine.gcs-web.com/news-releases/news-release-details/neurocrine-biosciences-announces-phase-3-pediatric-study-results" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ノバルティス、iptacopanはIgA腎症試験も成功</u>
<br />
(2023年10月2日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはLNP023(iptacopan)の第3相原発性IgA腎症試験、APPLAUSE-IgANの中間解析で主目的を達成したと発表した。もう一つの主評価項目の成否を待たずに加速承認申請する方向で規制機関と相談する考え。
<br />
<br />
IgA腎症は免疫グロブリンAが腎臓に蓄積して傷害を与え、血液や蛋白が尿に漏出する。LNP023は補体系のB因子を拮抗する経口剤で、抗C5抗体に十分応答しない、あるいは未経験のPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)の輸血ニーズを抑制する薬として第2四半期に欧米で承認申請された。
<br />
<br />
今回の試験は470人の患者を200mg一日二回投与群と偽薬群に無作為化割付けして、9ヶ月後のUPCR(尿タンパク・クレアチニン比)と、24ヶ月間のeGFR(推算糸球体濾過量)を比較するもの。今回、前者で臨床的に意味のある且つ統計的に高度に有意な改善が見られた。後者の結果が出るのは25年の見込み。
<br />
<br />
IgA腎症は近年、コルチコステロイドの遅放性新製剤やAT2/ETAアンタゴニストなど新薬承認が相次いでいるが、この二剤とも同じ試験の中間UPCRデータに基づき加速承認、最終eGFRデータに基づき本承認という、LNP023と同じ道を歩んでいる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-investigational-iptacopan-phase-iii-study-demonstrates-clinically-meaningful-and-highly-statistically-significant-proteinuria-reduction-patients-iga-nephropathy-igan" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>KMT2再編成型急性白血病試験が成功</u>
<br />
(2023年10月2日発表)
<br />
<br />
米国マサチューセッツ州の新薬開発企業、Syndax Pharmaceuticals(Nasdaq:SNDX)は、SNDX-5613(revumenib)のピボタルP1/2試験でKMT2再編成型の患者を組入れた2コフォートのプール分析が目的達成したと発表した。年末までに米国で承認申請する考え。同社の株価は1月以降、下落傾向にあり、今回の発表後も流れが変わらなかった。これが株式市場の受け止めなのだろう。
<br />
<br />
SNDX-5613はmenin阻害剤。急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)の5~10%で見られるメチル化酵素KMT2の遺伝子再編成や、AMLの30%で見られるNPM1の変異を標的としている。上記試験の第2相ポーションではKMT2再編成AML、同じくALL、そしてNPM1変異AMLの三つのコフォートが設定されているが、FDAとの相談を踏まえて、KMT2再編成2コフォートのプール分析を行うプロトコル変更が期中に実施された。今回、組入れ94人のうち評価可能な57人を対象に解析したところ、完全寛解/部分的完全寛解率が23%(95%下限12.7%)、メジアン反応持続期間6.4ヶ月となった。目的達成判定基準(おそらく95%下限の閾値)は明らかではない。
<br />
<br />
用量決定が行われた第1相ポーションの数値は各30%と9.1ヶ月だったので、やや失望的なデータだ。また、G3以上の分化症候群の発生率が16%、G3のQTc延長発生率が14%と、忍容性はそれほど良くない。尤も、第1相ポーションのメジアン生存期間は7ヶ月という深刻な疾患なので、多少の副作用は受け入れざるを得ないのだろう。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.syndax.com/news-releases/news-release-details/syndax-announces-pivotal-augment-101-trial-revumenib" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>白血球接着不全症の遺伝子療法を承認申請</u>
<br />
(2023年10月2日発表)
<br />
<br />
米国ニュージャージー州の遺伝子療法開発会社、Rocket Pharmaceuticals(Nasdaq:RCKT)は、RP-L201(marnetegragene autotemcel)を重度LAD-1(白血球接着不全症1型)用薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年3月31日。
<br />
<br />
LAD-1は常染色体性劣性遺伝性疾患。白血球が血管に接着し血管外遊出するのに必要なベータ2インテグリンのCD18部位をエンコードするITGB2遺伝子に変異があり、命に係わる感染症を頻発する。重症患者は過半が2歳までに死去する。欧米の推定患者数は800~1000人。RP-L201は患者から採取した造血幹細胞にレンチ・ウイルスを使ってITGB2遺伝子を導入し、培養した上で患者に戻す。スペインのCIEMAT(エネルギー環境技術研究センター)などからライセンスした。第1/2相試験で生後5ヶ月から9歳の患者9人に投与したところ、カプラン・マイヤー推定で1年生存率が100%だった。重度感染症や全理由入院が治療前と比べて大きく減少した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.rocketpharma.com/news-releases/news-release-details/rocket-pharmaceuticals-announces-fda-acceptance-biologics" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>劣性栄養障害型表皮水疱症の遺伝子療法を承認申請</u>
<br />
(2023年9月26日発表)
<br />
<br />
米国オハイオ州の新興遺伝子療法開発会社、Abeona Therapeutics(Nasdaq:ABEO)は、EB-101を劣性栄養障害型表皮水疱症(RDEB)の治療薬としてFDAに承認申請したと発表した。優先審査を求めている。
<br />
<br />
RDEBは真皮と表皮を繋ぐ7型コラーゲンの遺伝子、COL7A1に優性/劣性遺伝による機能喪失変異を持ち、皮膚に水疱や糜爛が生じやすく、感染症や扁平上皮腫のリスクがある。米国の患者数は3000人と推定されている。EB-101は患者から採取したケラチノサイトやその前駆細胞にレトロウイルス・ベクターを用いて上記遺伝子を導入し、患者に戻す。第3相VIITAL試験で11人に施行したところ、6ヶ月後の奏効率(病変が半分以上治癒)が81%と、治療しなかった病変部位における16%を大きく上回った。病変関連疼痛も有意に緩和した。治療関連深刻有害事象や死亡、増殖能を持つレトロウイルス検出例も発生しなかった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.abeonatherapeutics.com/press-releases/detail/265/abeona-therapeutics-submits-biologics-license-application" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>FDA諮問委員会、ルマケラスの薬効確認試験にダウト</u>
<br />
(2023年10月5日発表)
<br />
<br />
FDAはODAC(腫瘍学薬諮問委員会)を招集し、アムジェンのKRAS-G12C阻害剤、Lumakras(sotorasib)の市販後薬効確認試験、CodeBreaK 200について意見を聞いた。12人の委員のうち10人が、承認審査担当者と同様に、データに信頼性に疑問を呈した。薬の問題というよりは臨床試験のデザインや実施状況の瑕疵と思われ、FDA側も直ぐに加速承認を取消す考えはないようだ。
<br />
<br />
Lumakrasは21年に米国でKRAS-G12C変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌の二次治療薬として加速承認され、翌年、欧日でも条件付き承認/承認された。加速承認のエビデンスは非対照試験のORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)なので、市販後に対照試験で延命またはそれに準じる効果を確認する必要がある。アムジェンがコミットしたのが今回のCodeBreaK 200だ。この薬が適応となる患者345人を組入れてPFS(無進行生存期間)をdocetaxelと比較したオープン・レーベル試験で、ハザードレシオは0.66と良好だったがメジアン値は5.6ヶ月対4.5ヶ月と大差ない。無症状でも癌が進行していることがあるので定期的に画像診断する必要があるが、本試験では6ヶ月毎となっており、結局、過半の患者はそれ以前に任意の画像診断や症状に基づき進行判定されたことになる。つまり、医師のバイアスが働いた可能性がある。
<br />
<br />
この疑いを強めさせるのが全生存期間の解析だ。検出力不足とは言え、ハザード・レシオ1.01、メジアン値は10.6ヶ月と11.3ヶ月と大差ない。優越性解析のフェールは非劣性解析の成功とは異なるので、結局、延命効果は確立していないことになる。
<br />
<br />
本試験ではdocetaxel群のドロップアウトや患者同意書撤回が多く、盲検試験ではないことを考えると、バイアスが影響した可能性もありうる。そもそも、PFSの1ヶ月程度の差は決して大きくない。
<br />
<br />
加速承認を本承認に切り替える申請の審査期限は12月24日。別途、薬効確認試験を実施するよう求められる可能性が高そうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.fiercepharma.com/pharma/amgens-lumakras-flunks-fda-expert-meeting-market-withdrawal-looks-unlikely-now" target="blank">
Fierce Pharmaの報道</a>
<br />
<br />
<br />
<u>FDA諮問委員会、DFMOの外部対照試験によるエビデンスを受け入れ</u>
<br />
(2023年10月4日発表)
<br />
<br />
FDAはODAC(腫瘍学諮問委員会)を招集し、US WorldMedsが小児高リスク神経芽細胞腫の維持療法薬として承認申請したeflornithine(通称DFMO)について、意見を聞いた。
<br />
<br />
本件の特異性は、薬効や安全性のエビデンスが通常の無作為化割付け対照試験ではなく、プロペンシティ・マッチによる外部対照試験であること。FDAは前者を推奨したが、メーカー側は小児希少疾患であることなどから実施は困難と主張。FDAは試験データを元に様々な検証的解析を実施し、便益を認めた上で、諮問委員会に挙証十分と判断するか、尋ねた。委員はこの試験だけでなく総合的な判断に基づいて、と前提した上で、14人が薬効を認め、6人は認めなかった。
<br />
<br />
反対意見は、そもそも無作為化割付け試験が可能だろうと主張した。また、賛成者も含めて、これが前例になるのは好ましくないと主張した。
<br />
<br />
外部対照試験のデータ自体は好ましいものだ。手術や放射線療法、化学療法など標準医療により完解した患者105人に、体表面積に応じた量を一日二回、2年間、投与したところ、2年間のEFS(無イベント生存)ハザードレシオが0.48(95%上限0.85)、全生存期間のそれは0.32(同0.70)だった。但し、無作為化割付け試験ではないので、補正されていない因子の影響を受けている可能性がある。
<br />
<br />
eflornithineはアフリカ・トリパノソーマ症の静注用薬や脱毛クリームの活性成分として米国で承認されている。神経芽細胞腫では、予後予測因子の一つとされるornithine decarboxylase(ODC)を阻害する作用が期待されているようだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.medpagetoday.com/hematologyoncology/othercancers/106644" target="blank">
MedPage Todayの報道</a>
<br />
<br />
<br />
<u>イーライリリーの抗IL-13抗体は承認されず</u>
<br />
(2023年10月2日発表)
<br />
<br />
イーライリリーは米国で抗IL-13抗体lebrikizumabを中重度アトピー性皮膚炎用薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。EUでは権利を持つAlmirallが申請し9月にCHMPの肯定的意見を受領したので油断していたが、FDAがCMOの査察時に問題点を発見した模様だ。
<br />
<br />
ジェネンテックが喘息症で第3相を実施したが十分な効果が見られず、17年にDermiraに導出。Dermiraは欧州の権利をAlmirallに導出した翌年の20年に、イーライリリーに11億ドルで買収された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/us-food-and-drug-administration-issues-complete-response-2" target="blank">
リリーのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>武田、Exkivityの加速承認を自主返上へ</u>
<br />
(2023年10月3日発表)
<br />
<br />
武田薬品はExkivity(mobocertinib)の米国などにおける承認を自主返上する考えを明らかにした。21年に米国で、22年に英国で、23年には中国でも加速承認/条件付き承認/暫定承認されたが、市販後薬効確認試験がフェールしてしまった。FDAは、近年、このような事例に厳しい態度を示すことが増えている。適応がオーバーラップするジョンソン・エンド・ジョンソンのRybrevant(amivantamab-vmjw)の市販後薬効確認試験が成功したことも影響したかもしれない。
<br />
<br />
ExkivityはEGFRやher2のエクソン20挿入変異に活性を持つ小分子薬。17年にAriad Pharmaceuticalsを買収した時に入手した。米国における適応は、白金薬ベースの化学療法を施行中または実施後に病状が進行した、EGFRエクソン20挿入変異を伴う局所進行/転移非小細胞性肺癌。4ヶ月早く加速承認されたRybrevantと需要を二分していた。40mgカプセルを一度に4個、一日一回、経口投与する。薬効のエビデンスは第1/2相試験の反応率と反応持続期間。
<br />
<br />
市販後コミットメント試験は第3相Exclaim-2。EGFRエクソン20挿入変異を持つ新患318人を組入れて、PFS(無進行生存期間)を白金薬ベースの化学療法と比較した。データは今後、発表されるだろう。
<br />
<br />
武田はEUでも条件付き承認を申請していたが、反応率が低いことや対照試験の結果がまだ出ていないことからCHMPの評価が思わしくなく、申請撤回となった。今回はCHMPが正しかったことになる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2023/20231003_8402/" target="blank">
同社のプレスリリース(和文)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>ノボの高シュウ酸尿症用siRNAも承認</u>
<br />
(2023年10月3日発表)
<br />
<br />
ノボ ノルディスクはFDAがRivfloza(nedosiran)を9歳以上の原発性高シュウ酸尿症1型の治療薬として承認したと発表した。腎機能が比較的保持されている(eGFR≧30ml/分/1.73m2など)患者が適応になる。年齢や体重に応じた所定量を月一回、皮下注する。米日欧の施設で6歳以上の35人を組入れたピボタル試験では、1型患者の尿シュウ酸量が偽薬比56%低下した。尚、2型患者では効果が見られなかったが症例数が少ないので判然としない。
<br />
<br />
GalNAcを結合して標的結合性を向上した二重連鎖siRNA(小型介入的RNA)薬。このカテゴリーではアルナイラム・ファーマシューティカルズのOxlumo(lumasiran)が20年11月に欧米で原発性高シュウ酸尿症1型用薬として承認されている。どちらもシュウ酸の生成を抑制するが攪乱すべき標的が異なり、Oxlumoはグリコール酸オキシダーゼの発現を邪魔してグリオキシル酸の生成を阻害、Rivflozaはグリオキシル酸をシュウ酸に代謝する乳酸脱水素酵素の発現を阻害する。特許紛争を経てアルナイラムとクロスライセンス契約を結んだが、アルナイラムが払うべきロイヤルティ率の方が高くなっている。
<br />
<br />
ノボは21年にDicerna Pharmaceuticalsを33億ドルで買収して入手した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novonordisk-us.com/media/news-archive/news-details.html?id=166325" target="blank">
ノボのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>ノババックスもXB.1.5型COVID-19ワクチンが米国で承認</u>
<br />
(2023年10月3日発表)
<br />
<br />
ノババックス(Nasdaq:NVAX)はXB.1.5対応COVID-19ワクチンがFDAにEUA(非常時使用認可)されたと発表した。12歳以上が対象。CDC(米国疾病予防管理センター)も接種勧奨した。ファイザー/BioNTechやモデルナに次ぐ、第3のXB.1.5対応ワクチンで、mRNAではなくスパイク蛋白を抗原としていることが特徴。卵黄培養ではなく、バキュロウイルスをベクターとして昆虫由来の細胞に感染させて培養した。
<br />
<br />
mRNAワクチンは開発や製造期間を短縮できることが取り柄で、COVID-19ワクチンは20年12月に米国承認と、ノババックスより1年以上早く実用化された。しかし、XB.1.5対応ワクチンの承認は1ヶ月遅れただけだった。
<br />
<br />
mRNAワクチンと言えば、カタリン・カリコ博士は研究補助金をカットされてハンガリーからアメリカに脱出し、ペンシルバニア大学を首になったがノーベル賞を受賞した。元々は腫瘍学における応用を優先課題としていたようだが、COVID-19の流行が天恵となった。不遇を託つ研究者たちの心に明かりを灯すエピソードになったらいいな。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.novavax.com/press-releases/2023-10-03-Novavax-2023-2024-COVID-19-Vaccine-Now-Authorized-and-Recommended-for-Use-in-the-U-S" target="blank">
ノババックスのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">ファイザーのBraftoviとMektovi(BRAF-V600E変異型非小細胞性肺癌に併用)</td></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">アストラゼネカのAZD5363(capivasertib、局所進行性/転移性乳癌)</td></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>23年4Q推</td><td align="left">イーライリリーのtirzepatide(体重管理薬)</td></tr>
<tr><td>23年10月</td><td align="left">ファイザーのMenABCWY(5価髄膜炎菌ワクチン)</td></tr>
<tr><td>23年10月推</td><td align="left">ファイザーのetrasimod(中重度潰瘍性大腸炎)</td></tr>
<tr><td>23年10月推</td><td align="left">ArdelyxのXphozah(tenapanor、高リン血症)</td></tr>
<tr><td>23/10/8 </td><td align="left">Alnylam PharmaceuticalsのOnpattro(patisiran、TTR調停アミロイドーシスによる心筋症)</td></tr>
<tr><td>23/10/13</td><td align="left">BMSのOpdivo(nivolumab、悪性黒色腫アジュバント一変)</td></tr>
<tr><td>23/10/16</td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、非小細胞性肺癌術前術後補助療法に一変)</td></tr>
<tr><td>23/10/17</td><td align="left">ArdelyxのXphozah(tenapanor、透析期CKDの高リン血症) </td></tr>
<tr><td>23/10/22</td><td align="left">Orasis PharmaceuticalsのCSF-1(pilocarpine、老眼)</td></tr>
<tr><td>23/10/22</td><td align="left">Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、慢性特発性蕁麻疹に一変)</td></tr>
<tr><td>23/10/26</td><td align="left">Santhera Pharmaceuticalsのvamorolone(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>23/10/31</td><td align="left">CTGTAC:Vertex/Crisprのexagamglogene autotemcel(ベータサラセミアと鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">PADAC:MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
</table>
<br />
<br />
今週は以上です。
<br />
<br />
ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0tag:blogger.com,1999:blog-8432552779880431452.post-21020284556672114192023-10-01T11:07:00.000+09:002023-10-01T11:07:04.818+09:00第1122回<p> </p><h4>【ニュース・ヘッドライン】</h4>
<ul><li>ベネクレクスタ、適応拡大試験がフェールも承認申請を協議へ </li>
<li>JNJ、二剤併用が単剤に勝つ </li>
<li>カイロミクロン血症の第3相が成功 </li>
<li>ルタテラのGEP-NETs一次治療試験が成功 </li>
<li>抗CD47抗体にまたまた悲報 </li>
<li>REGN、新規リンパ腫用薬を承認申請 </li>
<li>統合失調症の新規合剤を承認申請 </li>
<li>Akebia、バダデュスタットを米国で再承認申請 </li>
<li>FDA諮問委員会もALSの細胞療法を支持せず </li>
<li>難治ポンペ病用併用療法が承認 </li>
<li>画期的抗鬱剤が30年を経て遂に承認 </li>
<li>武田、皮下注用エンタイビオが米国でも承認 </li>
<li>眼検査後瞳孔散大治療薬が承認 </li>
</ul>
<br />
<br />
<h4>【新薬開発】</h4>
<br />
<u>ベネクレクスタ、適応拡大試験がフェールも承認申請を協議へ</u>
<br />
(2023年9月29日発表)
<br />
<br />
アッヴィはVenclexta(venetoclax)の第3相Canova試験のヘッドラインを公表した。多発骨髄腫では最も多く見られる第11染色体と第14染色体の転座を持つ患者を対象とした試験で、主評価項目は有意ではなかったが点推定値はあと一歩、延命効果のトレンドも見られたため、承認申請に向けて規制機関と相談する考え。
<br />
<br />
Venclextaは癌細胞のアポトーシスを妨げるbcl-2に結合し阻害する作用を持ち、慢性リンパ性白血病や急性骨髄性白血病の治療に用いられている。米国ではジェネンテックが共同販売している。
<br />
<br />
Canova試験は成人の二次以上の治療歴を持つt(11;14)陽性難治再発多発骨髄腫263人を組入れて、dexamethasoneの併用薬としてVenclextaを使う群とBMSのPomalyst(pomalidomide)を使う群のPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)を比較した。結果は、PFSのハザードレシオは0.823、p=0.237、メジアン値は各群9.9ヶ月と5.8ヶ月となり、点推定値はあと一歩、但しp値はあと百歩。主評価項目がフェールしたので副次的評価項目の解析は探索的なものになってしまうが、ORRの名目pは0.001未満、全生存のハザードレシオは0.697、名目p0.067、メジアン32.4ヶ月対24.5ヶ月と、好ましい方向を向いている。
<br />
<br />
尚、Venclextaは19年にFDAが臨床試験部分停止命令を出したことがあるが、治療プロトコルの見直しや無益性判定基準の見直し、そしてリスク管理策の導入などを経て、3ヶ月後に解除された。部分停止命令の発端は、Velcade(bortezomib)及びdexamethasoneのレジメンに追加した第3相P3BELLINI試験で、PFSのハザードレシオが0.63と大変良い結果が出たものの死亡率が21%対11%と非常に多かったため。ClinicalTrials.govによるとBELLINI試験の全生存期間ハザードレシオは1.191、p=0.385とのことなので、フェールはフェールだが倍増するわけではなかった。それにしても、PFSを妄信すべきでないことを示す一例だ。
<br />
<br />
PFSは全生存期間より早く有意差を検出できるので主評価項目に採用されることが多いが、この二本の試験はあべこべの結果になってしまった。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://news.abbvie.com/news/press-releases/abbvie-presents-results-from-phase-3-canova-study-venetoclax-in-patients-with-relapsed-or-refractory-multiple-myeloma.htm" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>JNJ、二剤併用が単剤に勝つ</u>
<br />
(2023年9月28日発表)
<br />
<br />
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen Pharmaceutical Companiesは、EGFRとMETの二重特異性抗体Rybrevant(amivantamab-vmjw)と第3世代EGFRチロシン・キナーゼ阻害剤JNJ-73841937(lazertinib)の併用第3相試験、MARIPOSAで主評価項目を達成したと発表した。EGFRにエクソン19欠損などの抵抗性変異を持つ局所進行性/転移性非小細胞性肺癌のフロントライン試験で、1074人の患者を併用群とアストラゼネカのEGFR阻害剤Tagrisso(osimertinib)群に無作為化割付けして非盲検下でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較したところ、統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。副次的評価項目の全生存期間も中間解析で好ましい傾向が現れているとのこと。データは学会で発表する予定。
<br />
<br />
Rybrevantは21年に欧米でEGFRにエクソン20挿入型活性化変異を持つ非小細胞性肺癌に用いることが承認された。lazertinibは韓国のYuhanがOscotecの米国子会社からライセンスしてJanssenに韓国外の権利を導出したもの。T790M変異やL858変異に高い活性を持ち、血管脳関門を通過し、野生型EGFRには作用しない。
<br />
<br />
この併用法は第3相MARIPOSA-2試験も先日、成功が発表された。EGFRにエクソン19欠損やL858R置換のある局所進行性/転移性非小細胞性肺癌でTagrisso歴を持つ患者を組入れて、carboplatin及びpemetrexedの標準療法にこの二剤またはRybrevantだけを追加する便益を検討したところ、PFS(同)が統計的有意且つ臨床的に意味のある延長を見た。
<br />
<br />
アストラゼネカも黙って見ていない。類似した患者層を対象にTagrissoとpemetrexed及び白金薬を併用する便益を検討した第3相FLAURA2試験の成功が5月に発表された。但し、全生存期間の中間解析は未成熟とは言えハザードレシオ0.9とそれほどでもなく、G3以上の有害事象がTagrissoだけの群よりかなり多かった。
<br />
<br />
ヤンセンの二剤併用も全生存の解析がどうなるか、忍容性はどの程度損なわれるのか、など、今後の発表が注目される。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.jnj.com/landmark-phase-3-mariposa-study-meets-primary-endpoint-resulting-in-statistically-significant-and-clinically-meaningful-improvement-in-progression-free-survival-for-rybrevant-amivantamab-vmjw-plus-lazertinib-versus-osimertinib-in-patients-with-egfr-mutated-non-small-cell-lung-cancer" target="blank">
JNJのプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>カイロミクロン血症の第3相が成功</u>
<br />
(2023年9月26日発表)
<br />
<br />
Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は、olezarsenの第3相家族性カイロミクロン血症候群(FCS)試験で主目的を達成したと発表した。24年の早期に欧米で承認申請する考え。承認されれば初めての治療薬になる。同社にとっては自社販売薬第一号にもなる。
<br />
<br />
FCSはリポプロテイン・リパーゼの産生不良や機能低下によりカイロミクロンの分解が進まず、トリグリセライドが高値に推移する。100万人当り1~2人の超希少疾患。olezarsenはトリグリセライドの代謝を制御するapoC-IIIのmRNAを阻害するアンチセンス・オリゴヌクレオチド。19年にEUでは条件付き承認されたWaylivra(volanesorsen)と同じ核酸配列を持つが、N-acetyl-galactosamine(GalNAc)を結合して力価や忍容性を向上した。
<br />
<br />
今回の第3相Balance試験は18歳以上の患者66人を組入れて低脂肪食とスタチンなどの標準療法を施行するとともに、偽薬、50mgまたは80mgを4週毎に皮下注し、6ヶ月後のトリグリセライド値を比較したところ、80mg群は偽薬比有意な差があった(尚、Waylivraの承認用法は300mg週一回皮下注)。FCSの主要な合併症である急性膵炎はゼロだった(偽薬群は11件)。
<br />
<br />
急性膵炎はゼロ。肝腎毒性は見られず、血小板数の臨床的に意味のある現象は見られなかった。一名死亡したが薬物関連とは見られていない。
<br />
<br />
Waylivraは血小板減少や出血事故のリスクが見られ、FDAが18年に審査完了通知を発出したのはこれが主因と推測される。今回の試験でも血小板減少が全く見られなかった訳ではなさそうであり、また、超希少疾患の試験なのでリスクを厳密に査定することはできないが、重大事故が発生しなかったことは取り敢えず一安心だ。GalNAc技術は他の開発品にも関わる重要なイノベーションであることからも注目できる。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.ionispharma.com/news-releases/news-release-details/ionis-announces-positive-olezarsen-topline-results-phase-3-study" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
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<br />
<u>ルタテラのGEP-NETs一次治療試験が成功</u>
<br />
(2023年9月25日発表)
<br />
<br />
ノバルティスはLutathera(lutetium Lu 177 dotatate)の第3相NETTER-2試験が成功したと発表した。米国では適応内と思われるがエビデンスが充実した。EUなどでは既存治療進行性の限定を解除する一部変更申請に向かうのではないか。
<br />
<br />
17年にAdvanced Accelerator Applicationsを39億ドルで買収して入手した、放射線核種標識ソマトスタチン類縁体。18年に米国でソマトスタチン受容体陽性の膵・消化管神経内分泌腫(GEP-NETs)用薬として承認された。30年以上の市販歴を持つソマトスタチン類縁体、octreotideの低量と併用する。この時のエビデンスは、進行性高分化進行/転移中腸カルチノイド腫瘍を組入れてPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)を標準用量octreotideと比較したNETTER-1試験と、前腸や後腸のNETsも組入れた単一施設expanded accessプログラムにおけるORR(客観的反応率)だった。
<br />
<br />
NETTER-2試験は未治療の胃腸または膵臓のNEPs222人を組入れて併用療法と標準用量octreotideのみのPFSを比較したところ、統計的に有意な、また、臨床的に意味のある改善を見た。5年前に積み残した虫食い箇所を埋めたことになる。数値は未公表。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-radioligand-therapy-lutathera-demonstrated-statistically-significant-and-clinically-meaningful-progression-free-survival-first-line-advanced-gastroenteropancreatic-neuroendocrine-tumors-gep-nets" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
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<br />
<br />
<u>抗CD47抗体にまたまた悲報</u>
<br />
(2023年9月26日発表)
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<br />
ギリアド・サイエンシズはGS-4721(magrolimab)の二本目の第3相試験、ENHANCE-2を無益中止したことを明らかにした。TP53に変異のある急性骨髄性白血病におけるazacitidine併用時の延命効果をvenetoclax・azacitidine併用または強化化学療法と比較する試験で、当初の予定にはなかった中間解析を行ったところ、独立データ監視委員会が無益認定した。安全性は両群同程度であった由。
<br />
<br />
スタンフォード大学の研究者が15年に設立したForty Seven社を20年に49億ドルで買収して入手した抗CD47抗体。22年にFDAが治験の部分停止命令を出したが、第3相試験三本は既に中間解析に必要な症例数を組入れ済みだったため、結果が注目されていた。しかし、高リスク骨髄異形成症候群の一次治療azacitidine併用試験、ENHANCE-1が、当初から計画されていた中間解析で全生存期間がazacitidine単剤を上回る可能性は著しく低いと無益認定された。今回は3ヶ月間に二回目のネガティブ・ニュースだ。残るはENHANCE-3試験。強化化学療法に適さない急性骨髄性白血病の一次治療において、venetoclaxとazacitidineの併用レジメンに追加する便益を検討している。
<br />
<br />
CD47は血液癌や乳癌などで高発現する膜貫通型表面分子。マクロファージなどのSIRPアルファ受容体に結合し、この細胞を貪食するなというシグナルを送る。magrolimabの後期第1相ではazacitidine併用でTPS53変異型の急性骨髄性白血病に特に良さそうな完全寛解率を挙げた。
<br />
<br />
最近は抗CD47抗体を巡るネガティブなニュースが陸続している。ALX Oncologyは急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群の臨床試験を中止した。アッヴィはI-Mabからライセンスした抗47抗体を返品した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.gilead.com/news-and-press/company-statements/gilead-statement-on-the-discontinuation-of-magrolimab-study-in-aml-with-tp53-mutations#" target="blank">
同社の声明</a>
<br />
(フェールした試験に関する発表はプレスリリースではなく声明として発出する方針のようだ)
<br />
<br />
<h4>【承認申請】</h4>
<br />
<u>REGN、新規リンパ腫用薬を承認申請</u>
<br />
(2023年9月29日発表)
<br />
<br />
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、8月のEUに続いて、米国でもREGN1979(odronextamab)を非ホジキン型リンパ腫用薬として承認申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は24年3月31日。成人の二種類以上の全身性治療歴を持つ難治性/再発性の濾胞性リンパ腫(FL)とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に用いる。
<br />
<br />
CD20とCD3を標的とする二重特異性抗体。昨年のASH(米国血液学会)における発表によると、FL121人における完全反応率は75%、CAR-T治療歴のないDLBCL130人では31%、ある31人では32%だった。治療関連死亡者が3人いた(肺炎、進行性多巣性白質脳症、全身性真菌症)。期中にFDAの部分停止命令に応じてプロトコル変更を実施したためサイトカイン放出症候群の発生率大きく改善したとのことだが、変更後の全体的な成績はどうだったのか、知りたいところだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investor.regeneron.com/news-releases/news-release-details/odronextamab-bla-treatment-relapsedrefractory-follicular" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>統合失調症の新規合剤を承認申請</u>
<br />
(2023年9月28日発表)
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<br />
米国ボストンのKaruna Therapeutics(Nasdaq:KRTX)はKarXT(xanomeline、trospium)を米国で統合失調症治療薬として承認申請した。前者は新規ムスカリンM1・M4受容体アゴニスト、後者は他社が過活動膀胱治療薬として実用化した末梢性ムスカリン受容体アンタゴニストで、併用することにより前者の好ましくない作用をオフセットして望ましい作用だけを発揮させるアイディアだ。急性期治療試験二本では5週後にPANSSが20ポイント程度低下し、偽薬群の10~12ポイント低下を有意に上回った。治療関連深刻有害事象や治療関連有害事象による離脱は少し増える程度だった。
<br />
<br />
前者はイーライリリーがアルツハイマー病薬として開発したが失神など有害事象の発生率が高かった。しかし、Karunaの第3相試験では失神は発生せず、心拍数の上昇が見られたが治療を継続するうちに改善した由。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://investors.karunatx.com/news-releases/news-release-details/karuna-therapeutics-submits-new-drug-application-us-food-and" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>Akebia、バダデュスタットを米国で再承認申請</u>
<br />
(2023年9月28日発表)
<br />
<br />
米国ケンブリッジのAkebia Therapeutics(Nasdaq:AKBA)は米国でvadadustatを透析期慢性腎疾患の成人患者の貧血治療薬として再承認申請した。日本など35ヶ国で承認されているが、FDAはHIF-PH(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)阻害剤などの貧血症治療薬の心血管有害事象に懸念を持っており、vadadustatは心血管安全性試験でリスクがエポエチン製剤と比べて非劣性ではなかったことや、薬物誘導性肝障害が散見されたことなどから、22年3月に審査完了通知を出した。同社はFDR(公式紛争解決)を請求し、追加試験をオミットして再申請する道筋が示唆されたため、今回の再申請に至った。日本での数万人分の市販後調査(薬物誘導性肝障害はゼロ)も提出した様子だ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.akebia.com/news-releases/news-release-details/akebia-therapeutics-resubmits-new-drug-application-fda" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<h4>【承認審査・委員会】</h4>
<br />
<u>FDA諮問委員会もALSの細胞療法を支持せず</u>
<br />
(2023年9月27日発表)
<br />
<br />
FDAはCTGTAC(細胞、組織、遺伝子療法諮問委員会)を招集し、BrainStorm Cell Therapeutics(Nasdaq:BCLI)が軽中度ALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認申請したNurOwnについて意見を聞いた。18人の委員のうち17人が不支持と圧倒的多数が便益を認めなかった。審査期限は12月8日。同社の株価は20年に4ドル台から急騰し10月には17ドル台に乗せたが、翌月、第3相がフェールするや下落に転じ、今年9月はとうとう1ドル割れし、風前の灯火状態だ。
<br />
<br />
NurOwnは骨髄由来の間葉系幹細胞を採取し神経栄養因子を多く分泌するよう分化・増殖させたもの。第3相では急速進行性の患者189人を組入れて偽薬または試験薬を8週毎に3回、髄腔内投与して、ALSFRS-Rスコアの改善が閾値を超える奏効率を比較したところ、数値上は上回ったもののp=0.453とフェールした。数値自体の平均改善幅は両群大差なかった。会社側は、既に進行してしまった患者を除外したサブグループ分析でp=0.05だったことなどに基づき承認申請したが、品質管理面の欠陥などから、受理されなかった。異議申立ても受け入れられず、file over protestという最後の手段に進み、諮問委員会の直前には適応を軽中度患者に限定するなどの手管も使ったが、不首尾に終わりそうだ。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.brainstorm-cell.com/2023-09-27-BrainStorm-Cell-Therapeutics-Provides-Update-on-FDA-Advisory-Committee-Meeting-to-Review-NurOwn-for-the-Treatment-of-ALS" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
リンク:
<a href="https://www.fda.gov/vaccines-blood-biologics/cellular-gene-therapy-products/update-amyotrophic-lateral-sclerosis-als-product-development" target="blank">
FDAの声明(21年3月2日付)</a>
<br />
<br />
<h4>【承認】</h4>
<br />
<u>難治ポンペ病用併用療法が承認</u>
<br />
(2023年9月28日発表)
<br />
<br />
アミカス・セラピューティクス(Nasdaq: FOLD)はFDAがPombiliti(cipaglucosidase alfa-atga)とOpfolda(miglustat)を遅発性ポンペ病の治療薬として承認したと発表した。体重が40kg以上で、酵素補充療法に十分応答しない患者が適応になる。Opfoldaカプセルを経口投与し、1時間後にPombilitiを4時間点滴静注する。2週毎に繰り返す。
<br />
<br />
Pombilitiはポンペ病患者で欠乏しているGAAの遺伝子組換え型酵素補充療法。細胞内取込みを向上する糖鎖最適化が行われている。Opfoldaの活性成分はゴーシェ病やニーマンピック病の治療に用いられているが、今回の併用法ではPombilitiに結合、安定化して活性を高める。
<br />
<br />
アミカスのExecutive ChairmanであるJohn Crowleyが娘のために開発し事業をジェンザイムに売却したalglucosidase alfaと比較した第3相優越性確認試験では、主評価項目である52週後の6分歩行テストが対照群と大差なくフェールした。副次的評価項目の%努力肺活量は低下が小さく、名目的p値は0.023だった。治験開始までalglucosidase alfaによる治療を受けていた患者ではどちらも良好な数値が出た一方で、少数の未経験者における数値は良くなかったため、FDAはこのサブグループに限定して承認した。
<br />
<br />
欧州でもPombilitiは今年3月に、Opfoldaは6月に、承認された。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://ir.amicusrx.com/news-releases/news-release-details/amicus-therapeutics-announces-fda-approval-and-launch-new" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>画期的抗鬱剤が30年を経て遂に承認</u>
<br />
(2023年9月28日発表)
<br />
<br />
米国テキサス州のFabre-Kramer Pharmaceuticals(以下、FK社)は、FDAがEXXUA(gepirone)を成人の大鬱病の治療薬として承認したと発表した。5HT1A受容体アゴニストで、これだけを作動する抗鬱剤は初。代表的な抗鬱剤と比べて性的不全や体重増加副作用が見られないことが特徴。抗鬱剤のクラス・レーベルである自殺思慮・行動が枠付き警告された。禁忌は一定以上のQT延長や重度肝障害、3A4強阻害薬との併用、モノアミン酸化酵素を阻害する薬を服用中または中止後14日以内。
<br />
<br />
同社は93年にブリストル マイヤーズ スクイブから権利を取得した。開発権を供与したオルガノン(後にシェリング・プラウ、そしてMSDが子会社化)が第3相試験を実施したが一勝一敗で、99年に承認申請を断行したものの受理されず、01年には申請が受理されたが02年に非承認可能通知を受領、03年に修正申請も04年に再び非承認可能通知を受領し、FK社に権利返還した。
<br />
<br />
FK社は追加試験を二本実施したがやはり一勝一敗となり、07年に修正承認申請したが三度目の非承認可能通知を受領した。15年に紛争調停手続きの要請が受け入れられたが、諮問委員会は13人中9人が承認に反対した。その後、QT延長試験などのデータを追加して22年に再承認申請したところ、今回、承認に至った。何故承認されたのかは明らかではない。レーベルに載っている臨床試験の薬効データは上記二本の成功した試験のもので、12本実施して成功は2本だけという成績には変わりがないようだ。
<br />
<br />
30年の努力が実ったといえば聞こえがいいが、この薬を必要としている患者にとっては、30年も待たされたことになる。何とかならなかったのだろうか?
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://fabrekramer.com/fabre-kramer-pharmaceuticals-announces-fda-approval-of-exxua-the-first-and-only-oral-selective-5ht1a-receptor-agonist-for-the-treatment-of-major-depressive-disorder-in-adults/" target="blank">
同社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<u>武田、皮下注用エンタイビオが米国でも承認</u>
<br />
(2023年9月28日発表)
<br />
<br />
武田薬品はEntyvio(vedolizumab)の皮下注用プリフィルド・ペンが米国で中重度活性期潰瘍性大腸炎の維持療法として承認されたと発表した。寛解導入期は静注用製剤を30分点滴するが、3回目からの維持療法期は108mgを二週毎皮下注で足りる。
<br />
<br />
抗アルファ4ベータ7インテグリン抗体で、静注用はクローン病にも承認されているが皮下注用は未だ承認審査中。EUでは20年に承認。日本でも今年、両方の適応で相次いで承認されている。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://www.takeda.com/jp/newsroom/newsreleases/2023/20230928_8400/" target="blank">
同社のプレスリリース(和文)</a>
<br />
<br />
<br />
<u>眼検査後瞳孔散大治療薬が承認</u>
<br />
(2023年9月27日発表)
<br />
<br />
ヴィアトリス(Nasdaq:VTRS)とOcuphire Pharma(Nasdaq:OCUP)は、Ryzumvi 0.75%点眼液(phentolamine)が瞳孔散大薬の解毒剤としてFDAに承認されたと発表した。24年上期に発売予定。
<br />
<br />
米国ではアドレナリン作用剤や副交感神経遮断剤による瞳孔散大措置を伴う眼検査が年1億回施行されている。検査が終了しても最大24時間、霞目などの副作用が残る。そこで、措置の1時間後に点眼して瞳孔径を元に戻す。有害事象は刺痛、灼熱感、結膜充血、味覚異常など。
<br />
<br />
アルファ1と2のアドレナリン・アンタゴニストを点眼薬にしたもので、Ocuphireが開発、米欧日印中などの三用途における開発商業化権を取得したFamyGen Life Sciencesが同時にヴィアトリスに商業化権を供与した。
<br />
<br />
リンク:
<a href="https://newsroom.viatris.com/2023-09-27-Viatris-and-Ocuphire-Pharma-Announce-FDA-Approval-of-RYZUMVl-TM-Phentolamine-Ophthalmic-Solution-0-75-Eye-Drops-for-the-Treatment-of-Pharmacologically-Induced-Mydriasis-Produced-by-Adrenergic-Agonists-e-g-,-Phenylephrine-or-Parasympatholytic-e" target="blank">
両社のプレスリリース</a>
<br />
<br />
<br />
<h4>【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】</h4>
<br />
<Table Border="1" Frame="box" Cellspacing="1" Cellpadding="4" >
<tr><th colspan="2">PDUFA</th></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">ファイザーのBraftoviとMektovi(BRAF-V600E変異型非小細胞性肺癌に併用)</td></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">アストラゼネカのAZD5363(capivasertib、局所進行性/転移性乳癌)</td></tr>
<tr><td>23年4Q</td><td align="left">イーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)</td></tr>
<tr><td>23年4Q推</td><td align="left">イーライリリーのtirzepatide(体重管理薬)</td></tr>
<tr><td>23年10月</td><td align="left">ファイザーのMenABCWY(5価髄膜炎菌ワクチン)</td></tr>
<tr><td>23年10月推</td><td align="left">ファイザーのetrasimod(中重度潰瘍性大腸炎)</td></tr>
<tr><td>23年10月推</td><td align="left">ArdelyxのXphozah(tenapanor、高リン血症)</td></tr>
<tr><td>23/10/8 </td><td align="left">Alnylam PharmaceuticalsのOnpattro(patisiran、TTR調停アミロイドーシスによる心筋症)</td></tr>
<tr><td>23/10/13</td><td align="left">BMSのOpdivo(nivolumab、悪性黒色腫アジュバント一変)</td></tr>
<tr><td>23/10/16</td><td align="left">MSDのKeytruda(pembrolizumab、非小細胞性肺癌術前術後補助療法に一変)</td></tr>
<tr><td>23/10/17</td><td align="left">ArdelyxのXphozah(tenapanor、透析期CKDの高リン血症) </td></tr>
<tr><td>23/10/22</td><td align="left">Orasis PharmaceuticalsのCSF-1(pilocarpine、老眼)</td></tr>
<tr><td>23/10/22</td><td align="left">Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、慢性特発性蕁麻疹に一変)</td></tr>
<tr><td>23/10/26</td><td align="left">Santhera Pharmaceuticalsのvamorolone(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)</td></tr>
<tr><th colspan="2">諮問委員会</th></tr>
<tr><td>23/10/4 </td><td align="left">ODAC:US WorldMedsのeflornithine(小児神経芽細胞腫)</td></tr>
<tr><td>23/10/5 </td><td align="left">ODAC:アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS-G12C変異NSCLCの本承認切替)</td></tr>
<tr><td>23/10/31</td><td align="left">CTGTAC:Vertex/Crisprのexagamglogene autotemcel(ベータサラセミアと鎌状赤血球病)</td></tr>
<tr><td>23/11/17</td><td align="left">PADAC:MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)</td></tr>
</table>
<br />
今週は以上です。
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ジレッタントhttp://www.blogger.com/profile/02917265338724112884noreply@blogger.com0