2018年7月29日

2018年7月29日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • BAN2401の早期AD試験の問題点  
  • 武田のALK阻害剤もザーコリを破る 
  • キイトルーダ、頭頚部癌一次治療試験が成功 
  • トラゼンタ、心血管安全性試験が成功 
  • FDA諮問委員会、ヌーカラ好酸球性COPDに承認することに反対 
  • CHMPがhATTR用薬などの承認を支持 
  • 子宮内膜症薬が10年ぶりに承認 


【新薬開発】


BAN2401の早期AD試験の問題点
(2018年7月26日発表)

エーザイは、アルツハイマー病(AD)領域におけるバイオジェンとの共同開発プロジェクトの対象であるBAN2401の後期第二相早期AD試験の結果をAAIC(アルツハイマー病協会国際会議)で発表した。新開発の治療効果測定スコアを使って経時的な変化を調べたところ、最高用量群の悪化は偽薬比30%小さかった。オーソドックスな評価項目であるCDR-SBスコアでも悪化が26%小さかったが、統計的に有意ではなかった。

尤も、本試験の主評価項目はフェールしたのでこれらの二次的評価項目は仮説生成的とみなすべきであり、厳密にいえば統計学的に有意とは言えない。それでも、BIIB037(aducanumab)がP1bでCDR-Sスコアの悪化を用量依存的に抑制したり、BACE阻害剤E2609(elenbecestat)の最高用量が第二相MCI(軽度認知障害)/軽中等度AD試験で同じく31%抑制したりするなど、アミロイドベータの生成・蓄積を抑制すれば発症・進行を抑制できると考えるアミロイド仮説支持者にとって良いニュースが続いた。

真否は第三相試験の結果待ちだが、その前に、足元のデータを吟味してエビデンスの強固さを確認しておこう。上記のように、所詮第二相なので症例数が少なく、主評価項目はフェールしているので今回の成果も慎重に受け止めるべきであるが、何しろ、この試験は斬新な取り組みがテンコ盛りなので、突っ込みどころ満載だ。

この試験は無作為化二重盲検試験。対象は、画像診断や脳脊髄液検査でアミロイドの蓄積が確認された、アルツハイマー病性軽度認知障害または軽度ADの856人。割付は偽薬群と、試験薬は体重1kg当りで2.5mg二週毎投与、5mg月一回、5mg二週毎、10mg月一回、10mg二週毎の5用量に割付。

割付数はベイズ推定に基づくアダプティブデザインを採用、頻繁に中間解析を行って成功の確率の高そうな用量群の組入れを増やしていった。結果、各群の割付数は247人、52人、51人、92人、253人、161人となった。少なくとも途中経過時点では10mg月一回投与が最も有望と判定されたことになる。

主評価項目は、ADCOMSという新しい指標を採用。早期ADはまだ症状が軽いため既存の病状判定スコアは鋭敏性に欠け有意差が出にくい。そこで、過去の治験データなどを分析してCDR-SB、ADAS-cog、MMSEを構成する評価項目の中から鋭敏性に優れるものを選び出し、再構成したのがADCOMSだ。鋭敏性が高い分、治験の必要症例数を抑制し、期間や費用を節約できるメリットがある。

解析はベイズ確率を用いて、1年間のADCOMSの悪化を25%以上抑制しできる確率が80%以上であった場合、成功とみなす。

結果は、64%となりフェールした。しかし、二次的評価項目である18ヶ月時点のアミロイドベータ量やADCOMS、ADAS-cogの伝統的手法による解析では、最高用量群(10mg/kg二週毎)の偽薬比p値が0.05を下回った。CDR-SBは悪化が26%小さかったがp値は0.05を下回らなかった。ADCOMSの12ヶ月時点の解析でもベイズ推定とは異なりpが0.05を下回った。

良い結果に見えるが、問題は、最高用量群の患者背景が他の群と異なることだ。治験開始後に、ある国の規制機関(FDAではない)の要請を受けて、ApoE4陽性患者のこの群への新規割付や治療6ヶ月未満の患者への投与を打ち切ったことが原因だ。

BAN2401のような抗アミロイドベータ抗体は脳内免疫を刺激するので浮腫や出血の懸念があり、最初に第三相に進んだbapineuzumaは血管原性浮腫が原因で治験中止となった。爾後、ARIA-Eと通称されるMRI画像異常を伴う浮腫を監視するのが通例となっている。BAN2401は過去の抗体と比べて発生率が低く、リスクの高いApoE4型でも、偽薬群の発生率1.2%に対して最高用量群は14.6%に留まった。

その殆どは無症候性だったが、16例中3例は深刻有害事象とみなされた。10mg/kg月一回投与群でも深刻有害事象が1例あった。規制局が介入したのはこれが原因と推測される。早期ADは症状がそれほど重くなく、また、AChE阻害剤と異なり、抗アミロイドベータ薬は症状改善効果はなく悪化のスピードを緩和するだけと考えられている。それだけに、高い安全性が求められるのだ。

さて、このような経緯で、上記の最高用量群の安全性解析の対象となったApoE陽性患者は48人、陰性患者も含めた合計の30%に過ぎなかった。ApoE4は老人性アルツハイマー病の数少ない遺伝子的リスク因子であり、本試験全体、そして偽薬群では7割以上を占めた。ApoE陽性は疾病の進行が陰性より早いという意見があり、もし本当なら、最高用量群と偽薬群を比較するのは妥当でない。

もし本当でなくApoE4陽性も陰性も症状進行スピードは同じだとしても、ApoE4陽性患者の6%に深刻なARIA-Eをもたらす用量が本当に至適なのか、よく考えなければならない。

抗アミロイドベータ抗体の前例では、第三相でApoE4陽性には用量を減らすことが少なくない。BAN2401でも考えうるが、10mg/kg月一回投与の臨床的な効果は明らかに見劣りするのが難点だ。

エーザイはこの試験が成功なら前倒し承認を申請することを考えていた。今でも諦めていない様子だが、主評価項目がフェールしたことや、ADCOMSが薬効評価項目として確立していないこと、血管原性浮腫のリスクなどを考えると、少なくとも一本は第三相を行うよう求められるのではないか。

リンク: エーザイのプレスリリース

武田のALK阻害剤もザーコリを破る
(2018年7月26日発表)

武田薬品は、Alunbrig(brigatinib)のALK遺伝子転座陽性非小細胞性肺癌の一次治療試験が成功し、第三者が査読したPFS(無進行生存期間)がXalkori(crizotinib、和名ザーコリ)を有意に上回ったことを公表した。データは学会で発表する予定。

17年に54億ドルで買収したAriad PharmaceuticalsのALK阻害剤で、同年4月に米国でXalkori不応不耐のALK遺伝子転座陽性非小細胞性肺癌に承認された。

直接比較試験でALK阻害剤第一号のXalkoriに勝ったALK阻害剤は複数あり、また、PD-1/PD-L1阻害剤も有望なので、Alunbrigのライバルは多い。

リンク: 武田のプレスリリース

キイトルーダ、頭頚部癌一次治療試験が成功
(2018年7月25日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizuma、和名キイトルーダ)の第三相扁平上皮頭頚部癌試験の中間解析で、単剤投与群の全生存期間が標準療法群を有意に上回ったと発表した。Combined Positive Scoreが20以上のPD-L1陽性例を組入れた一次治療試験で、標準療法群はcetuximab、carboplatinまたはcisplatin、そして5-FUを三剤併用した。

承認審査機関に報告する予定。米国で16年に再発転移扁平上皮頭頚部癌に加速承認された時のフェーズIVコミットメントとして、一本以上の試験で延命効果を確認することが求められている。白金薬歴を持つ患者をPD-L1不問で組入れた試験はフェールしたので、今回、成功したことは重要。

今回の試験はPFSが共同主評価項目になっており、また、Keytrudaをcarboplatin/cisplatin、そして5-FUと併用する群も設定されている。MSDはデータ監視委員会の勧告に則り、治験を続行する。

リンク: MSDのプレスリリース

トラゼンタ、心血管安全性試験が成功
(2018年7月19日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムとイーライリリーは、Trajenta(linagliptin、和名トラゼンタ)のCARMELINA試験が成功したと発表した。心血管リスクを持つ二型糖尿病6979人を組入れた心血管アウトカム試験で、Trajentaを追加した群のMACE(主要有害心血管事象:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)は、偽薬追加群と比べて非劣性だった。

経口二型糖尿病の中にはMACE抑制作用を示したものもあるので、MACEだけ見るとTrajentaを始めとするDPP4阻害剤は見劣りするが、全体像で言えば各剤一長一短というべきだろう。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、ヌーカラを好酸球性COPDに承認することに反対
(2018年7月25日発表)

FDAは肺アレルギー薬諮問委員会を招集し、グラクソ・スミスクラインの抗IL-5ヒト化抗体、Nucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)を好酸球性COPDの治療に用いる適応拡大申請について意見を聞いた。安全性に関しては19人の委員のうち17人が支持したが、薬効は16対3で反対が上回り、同じく16対3で承認反対が上回った。

GSKは増悪予防試験を二本実施し、一本は成功したがもう一本はフェールした。このため、承認の可能性は低いと考えていたが、意外だったのは、FDAが対象疾患の定義・診断方法に異論を唱えたことだ。元々、確立した疾患ではない模様であり、また、第三相試験に、承認用途である好酸球性喘息症の患者が含まれていた可能性がある模様。

協和発酵キリンがポテリジェント技術を用いて創製してアストラゼネカに導出した抗IL-5受容体アルファ鎖抗体、Fasenra(benralizumab)は好酸球数不問でCOPD試験を二本実施したがフェールした。喘息症とCOPDの境界が曖昧になり治療薬もクロスオーバーしてきた中、IL-5/受容体標的薬に関しては、違いを見せている。

リンク: GSKのプレスリリース

CHMPがhATTR用薬などの承認を支持
(2018年7月27日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、7月の会合で、AlnylamのhATTR用薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。一方で、Opdivoの適応拡大申請はYervoy併用腎細胞腫一次治療が否定的意見、胃癌は申請撤回となった。

リンク: EMAのプレスリリース

新薬の主なものは、まず、Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)のOnpattro(patisiran)はhATTR(遺伝性TTR調停アミロイドーシス)の治療に用いるsiRNA(small interfering RNA)。トランスサイレチン遺伝子変異が原因で臓器に沈着し心臓病や肝臓腎臓障害、多発神経症を合併する病気で、Onpattroはトランスサイレチンの産生を妨げる。

5月のCHMPでIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のTegsedi(inotersen)が肯定的意見を得ているが、効果や忍容性はOnpattroが上回りそうだ。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Alnylamのプレスリリース

アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)は抗PD-L1抗体。切除不能局所進行非小細胞性肺癌の根治的化学放射線療法後の維持療法に用いる。意外なことに、CHMP自身による事後的分析に基づき、PD-L1陽性癌に適応が限定された。

日本で6月に承認。米国では17年に局所進行性転移性尿路上皮細胞腫の二次治療で初承認、今回の用途は今年3月に承認。何れもPD-L1発現は不問。

PD-1/PD-L1阻害剤は様々な癌に有効なので、Imfinziも適応拡大が続くだろう。他の製品も含めてエビデンスが積み重なるにつれて応答性予測因子の探求も進展するだろう。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

Tetraphase Pharmaceuticals(Nasdaq:TTPH)のXerava(eravacycline)は全合成フルオロサイクリン抗生剤。複雑腹腔内感染症の治療に用いる。米国でも承認審査中で審査期限は8月28日。

リンク: Tetraphase社のプレスリリース

イーライリリーのVerzenios(abemaciclib、米国名はVerzenio)はCDK4/6阻害剤。経口剤で、ホルモン受容体陽性her2陰性転移性乳癌に用いる。先行二社の製品と比べて好中球減少症のリスクが小さい。

次に、否定的意見を受けたが再審に進んだコンパウンドのうち、二品が再び否定的意見となった。一つはPortola Pharmaceuticals(Nasdaq:PTLA)の経口Xa阻害剤、Dexxience(betrixaban)。心不全や感染症など急性疾患で入院中の、静脈血栓塞栓リスクが高い患者に用いることが承認申請されたが、出血リスクが高まること、適応となる患者は概して脆弱で出血リスクが高いことがボトルネックになった。

リンク: Portola社のプレスリリース

Radius Health(Nasdaq:RDUS)のabaloparatideは骨粗鬆症治療薬として承認申請されたが、心毒性や治験実施施設のうち二ヶ所でcGCP違反があったことから、今年3月に否定的意見を受けた。抗議の結果、再審が実施されたが、今回も否定的意見。

リンク: Radius社のプレスリリース

適応拡大ではGenmabが創製しジョンソンエンドジョンソンにライセンスしたDarzalex(daratumumab、和名ダラザレックス)を自家造血幹細胞移植不適の多発骨髄腫の初度治療としてVelcade(bortezomib)、melphalan、及びprednisoneと四剤併用することが肯定的意見を受けた。現在は二次治療以降に限定されている。

また、ノバルティスのTafinlar(dabrafenib)とMekinist(trametinib)を併用でステージIIIのBRAF V600変異黒色腫の完全切除後アジュバント療法に用いることも肯定的意見。臨床試験では再発死亡リスクが53%低下した。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

一方、否定的意見を受けたのが、まず、BMSのOpdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を併用で中重度リスク腎細胞腫の一次治療に用いる適応拡大。CheckMate-214試験で全死亡のハザードレシオが実薬(sunitinib)比0.63と高い効果を示し、米国では今年4月に承認され、売上も好調だが、CHMPはYervoyの上乗せ効果の検討が不十分と判定、副作用リスクの増加を正当化できないと考えた。

次に、アムジェンのBlincyto(blinatumomab)をB細胞急性リンパ性白血病の治療後に残ったminimal residual disease(MRD)の治療に用いる適応拡大。臨床試験では、1回目または2回目の寛解に成功したがMRDが残る患者の81%がMRD消失した。こちらも米国では3月に承認されたがCHMPは否定的意見。延命効果が確立していないことが理由。

また、適応拡大申請の撤回が二件、公表された。一つはOpdivoの胃癌適応。小野薬品が主導して日韓台の医療施設で実施した第三相試験でメジアン生存期間が5.32ヶ月と対照群の4.14ヶ月を上回ったが、欧州でのエビデンスが不十分と判定された。日本の胃癌は早期に発見されることが多いせいか、欧米と比べると予後が比較的良い。過去のグローバル試験では、日韓の施設の対照群のデータが良すぎたためにフェールした例もある。

また、ファイザーのSutent(sunitinib)の腎細胞腫摘出術後アジュバントも申請撤回となった。米国では昨年承認されたが、CHMPは2月に否定的意見だった。


【承認】


子宮内膜症薬が10年ぶりに承認
(2018年7月24日発表)

アッヴィは、FDAがOrilissa(elagolix)を子宮内膜症の疼痛緩和薬として承認したと発表した。この用途の新薬は10年以上なかったとのこと。

ゴナドトロピン放出ホルモンアンタゴニストで、経口剤。用量用法は150mg一日一回投与の場合は最長24ヶ月間まで、200mg一日二回は6ヶ月までの治療期間制限がある。非可逆的なこともある骨塩密度低下が見られるため。中度肝機能障害は150mg一日一回を最長6ヶ月間。

子宮筋腫治療試験も成功しており、適応拡大申請に向かうことになりそうだ。

リンク: アッヴィのプレスリリース






今週は以上です。

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2018年7月22日

2018年7月22日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 塩野義のゾフルーザはインフルエンザ合併症も抑制 
  • ロシュ、テセントリクのアリムタ・白金薬併用試験が良好な結果に 
  • 武田、ニンラーロの維持療法試験が成功 
  • ダイエット補助薬の心血管アウトカム試験がフェール、否、成功 
  • Agios社、昨年のIDH2阻害剤に続いてIDH1阻害剤も承認 
  • マラリアの新薬が60年ぶりに承認 
  • ノバルティス、Kisqaliが適応拡大 



【新薬開発】


塩野義のゾフルーザはインフルエンザ合併症も抑制
(2018年7月17日発表)

塩野義製薬と海外の開発販売権を持つロシュは、夫々、インフルエンザ治療薬ゾフルーザ(バロキサビル マルボキシル)のCAPSTONE-2試験の成功を発表した。喘息症や心臓病、高齢などのリスク因子を持つインフルエンザ患者を組入れて、ゾフルーザの治療効果を偽薬やタミフル(オセルタミビル)と比較したグローバル試験で、ゾフルーザはインフルエンザ罹病期間が偽薬比有意に短かった。二次的評価項目のウイルス排出期間やウイルス量の減少では偽薬だけでなくタミフルと比べても有意な差があった。

この試験の狙いは、合併症のリスクが高いが故にインフルエンザ治療の必要性が高い患者群に、ちゃんと効くか確認すること、即ち、合併症削減効果の確立だ。治験登録を見ると、副次的評価項目の17番目に、治療開始から22日間の合併症(入院、死亡、副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、または肺炎)の群間比較が列記されている。結果は、偽薬比有意に抑制された。

タミフルの試験でも合併症予防効果が示唆されたが、様々な理由で、確立したとは言えなかった。タミフルが海外で発売された頃は、高リスク患者以外にインフルエンザ治療を行うことは貴重な医療資源の浪費という意見が根強かったため、日米など以外の国では普及率が低かった。しかし、WHOが包括的なトリ・インフルエンザ対策を推進したり、実際に新型インフルエンザが流行した結果、プロアクティブな治療が広がり、合併症予防効果の重要性が低下した。

とはいえ、ロシュが今年6月に米国で行った承認申請の適応は16歳以上の合併症のないインフルエンザとなっており、今でも、こだわりが残っている。このため、ゾフルーザが期待に応えた意義は大きい。後述のダイエット補助薬とは対照的だ。おそらく、ロシュが改めて効能追加申請することになるのではないか。

尚、プレスリリースには合併症がタミフルより有意に少なかったとは記されていない。おそらく、有意な差はなかったのだろう。罹病期間も有意差はなかった模様であり、臨床的には決定的な差はないのだろう。むしろ、一日二回5日間ではなく一日一回の経口投与で済む利便性のほうが評価できるだろう。

リンク: 塩野義製薬のプレスリリース(和文、pdf)

ロシュ、テセントリクのアリムタ・白金薬併用試験が良好な結果に
(2018年7月19日発表)

ロシュは、抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)の第三相IMpower132試験の主目的の一つであるPFS(無進行生存期間)延長効果が確認されたと発表した。もう一つの全生存期間はまだ中間解析で有意差が出ていないので、来年の解析を待つ必要がある。データは学会で発表される予定。承認機関と相談するとは記されていないので、今回のデータで適応拡大申請できるとは考えていないのではないか。

この試験は、末期非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療としてpemetrexedと白金薬(cisplatinまたはcarboplatin)の標準療法と更にTecentriqを追加する三剤併用の効果を検討した。PFSは担当医評価で第三者査読を受けていない。盲検試験ではないので、データの客観性は万全とは言えない。全生存期間の解析が共同主評価項目に設定されたのは、この弱点を補完する意図だろう。

尚、Tecentriqはこの用途ではpaclitaxel、carboplatin、bevacizumabと4剤併用で米国で承認審査中。

リンク: ロシュのプレスリリース

武田、ニンラーロの維持療法試験が成功
(2018年7月12日発表)

武田薬品は、Ninlaro(ixazomib cirate、和名ニンラーノ)の多発骨髄腫維持療法試験が成功したと発表した。適応拡大申請に進むのではないか。

このTOURMALINE-MM3試験は、大量化学療法と自家造血幹細胞移植による初治療が奏功以上だった患者を偽薬群とNinlaroに無作為化割付して、PFSを比較したもの。維持療法試験の成功はプロテアソーム阻害剤では初。

多発骨髄腫は薬の選択肢が増えたため二次治療、三次治療のために取って置く必要が低下し、初治療から三剤併用、四剤併用が可能になってきた。今回の維持療法も同じコンテクストだろう。承認されたら、患者の体力や再発リスクに基づいて選択の余地が広がる。

リンク: 武田のプレスリリース(和文)

ダイエット補助薬の心血管アウトカム試験がフェール、否、成功
(2018年7月17日発表)

エーザイは、選択的5-HT2cアゴニストBelviq(lorcaserin)の心血管アウトカム試験、CAMELLIA-TIMI 61試験のポジティブなトップライン結果を発表した。16年に米国でダイエット補助薬として承認された時のフェーズIVコミットメントとして実施されたもので、8ヶ国の医療施設で心血管疾患またはリスク因子を持つ肥満またはオーバーウェートの12,000人を偽薬群とBelviq群に無作為化割付し、MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的卒中)を追跡した。

結果は、偽薬比非劣性となり、主評価項目である安全性が確認された。次に、拡大MACE(不安定狭心症による入院や心不全、冠再建術を追加)の優越性解析が行われたがフェールした。心血管疾患に関しては毒にも薬にもならないことになる。

二次的評価項目である血圧、脂質、血糖、腎機能などは有意に改善した。二型糖尿病発症も有意に減少した。

二型糖尿病予防効果は重要だが、それ以外の点では、何のためにダイエットを行うのかよくわからないことになる。心血管リスクの介入方法は生活習慣改善も含めて数多あり、ダイエット補助薬の限界効用は小さいということなのだろう。

尚、本試験の最大のテーマが安全性なのは、フェンフェン事件の連想だ。90年代に米国でdexfenfluramineとfenfluramineを併用するフェンフェンが減量薬として流行したが、肺高血圧症や心臓弁障害の副作用が表面化。集団訴訟となり、ワイスは200億ドルを超える賠償金を拠出した。Belviqは5-HT2c受容体に選択的で5-HT2b比で100倍とのことだったが、疑惑を解消することができなかった。

オリジンはArena Pharmaceuticals(Nasdaq:ARNA)。Arenaは他の二社とダイエット補助薬の開発を競ったが、結局、誰も成功しなかった。三社とも開発販売パートナーを求めたが、欧米企業は静観、エーザイがArenaと、武田薬品がOrexigen(今年3月にチャプター11申請)と、手を組んだだけだった。

英国のAlizymeもリパーゼ阻害剤cetilistatを開発していたが、日本以外では承認されず、経営破綻した。その日本でも満足な薬価が付かず、導入した武田薬品は、先日、権利返還を決めた。

リンク: Arenaのプレスリリース


【承認】


Agios社、昨年のIDH2阻害剤に続いてIDH1阻害剤も承認
(2018年7月20日発表)

FDAは、Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)のTibsovo(ivosidenib)を難治再発AML(急性骨髄性白血病)用薬として承認したAMLの6-10%を占めるIDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)変異型が適応で、アボットが申請していたRealTimeアッセイも同時に承認された。

承認の根拠となった第一相試験では、500mgを一日一回、経口投与したところ、CR/CRh(完全反応/血液学的改善以外完全反応)が174人中32.8%だった。輸血依存の110人のうち37%は56日以上輸血不要だった。

副作用では、命に係わることもある分化症候群のリスクが枠付き警告された。QT延長やギラン・バレー症候群も要注意。

同社は昨年8月にIDH2阻害剤のIdhifa(enasidenib)がIDH2変異型難治再発AML用薬としてFDAに承認されており、一年足らずの間に初承認と二回目の承認を獲得したことになる。Idhifaはセルジーン(Nasdaq:CELG)との共同研究の成果なのでマイルストーンと売上ロイヤルティをもらうだけだが、Tibsovoは単独開発販売。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Agiosのプレスリリース

マラリアの新薬が60年ぶりに承認
(2018年7月20日発表)

グラクソ・スミスクラインとMedicines for Malaria Ventureは、FDAがKrintafel(tafenoquine)を三日熱マラリアのラジカルキュア(根治/再燃予防)として承認したと発表した。マラリアの新薬は60年以上なかったとのこと。GSKは熱帯病優先審査バウチャーを獲得した(言うまでもなく、熱帯病用薬以外の承認申請にも使うことができる)。

三日熱マラリアは治癒しても将来、再燃するリスクがある。その原因である肝臓に潜む休止体に作用できるのがtafenoquineだ。chloroquineや artemisininなどによる抗マラリア治療を受けている16歳以上の患者に、300mgを一回投与する。1978年にWalter Reed Army Institute of Researchが発見、Medicines for Malaria Ventureと協力して開発してきた。

リンク: GSKのプレスリリース

ノバルティス、Kisqaliが適応拡大
(2018年7月18日発表)

ノバルティスは、FDAがCDK4/6阻害剤Kisqali(ribociclib)の適応拡大を承認したと発表した。昨年3月にホルモン受容体陽性her2陰性の閉経後転移性乳癌の一次治療としてアロマターゼ阻害剤と併用する薬として初承認されたが、今回、一次治療または二次治療としてfulvestrant併用や、閉経後、周閉経期、閉経後の一次治療としてアロマターゼ阻害剤及びgoserelinと併用することが認められた。

CDK阻害剤市場では先に発売されたファイザーのIbrance(palbociclib)の後塵を浴びており、適応は一つでも多く欲しいところだ。

リンク: ノバルティスのプレスリリース





今週は以上です。

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2018年7月15日

2018年7月15日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • Acceleron/セルジーン、luspaterceptのベータサラセミア試験も成功 
  • イムブルビカ、リンパ腫試験がフェール 
  • CTI、EUでの条件付き承認を失うリスク 
  • キイトルーダ、肝細胞腫に適応拡大申請 
  • アッヴィ/ジェネンテック、bcl-2阻害剤をAML一次治療に適応拡大申請 
  • 天然痘の初の治療薬が米国で承認 
  • イクスタンジ、米国で転移前CRPCに適応拡大 
  • BMSのチェックポイント阻害コンビ、MSI-H/dMMR結腸直腸癌に承認


【新薬開発】


Acceleron/セルジーン、luspaterceptのベータサラセミア試験も成功
(2018年7月9日発表)

セルジーン(Nasdaq:ASDAQ: CELG) は、Acceleron Pharma(Nasdaq:XLRN)と共同開発しているACE-536(luspatercept)の第三相ベータサラセミア試験が成功したと発表した。輸血量を33%以上減らすことに成功した患者の比率が偽薬群を有意に上回った。データは学会で発表される予定。

ACE-536はactivin receptor type IIBとマウスの免疫グロブリンG2の融合蛋白で、TGFベータスーパーファミリーの作用をブロックする。6月には、低・低中度リスクのMDSで環状鉄芽球を持ち、貧血症でESA(エポエチンなど)に不応不耐不適の患者を組入れた第三相貧血治療試験の成功も発表された。来年上期に欧米で承認申請する予定。

リンク: セルジーンのプレスリリース

イムブルビカ、リンパ腫試験がフェール
(2018年7月11日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンとアッヴィは、Imbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)のPHOENIX試験(アッヴィ側ではDBL3001試験と呼んでいる)がフェールしたと別々のプレスリリースで発表した。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一種で難治性の非GCB(germinal center B cell)型またはABC(activated B-cell)型と診断され初めて治療を受ける患者を組入れた試験で、代表的なレジメンであるR-CHOP多剤併用療法と更にImbruvicaを追加する療法の無イベント生存期間を比較したが、大差なかった。

この二社の関係は、ファーマサイクリクスがジョンソン・エンド・ジョンソンと共同開発販売契約を結んだ後にアッヴィに210億ドルで買収され、呉越同舟となった。新興企業が有望新薬をアウトライセンスする時は、自社を敵対的に買収しないよう契約で拘束することが多い。身売りするなら複数の会社の入札にするほうが高く売れるからだ。その結果、Imbruvicaのような捻じれた提携が増えている。

リンク: アッヴィのプレスリリース

CTI、EUでの条件付き承認を失うリスク
(2018年7月9日発表)

CTI BioPharma(Nasdaq:CTIC)とセルビエは、Pixuvri(pixantrone)の第三相PIX306試験がフェールしたと発表した。アンスラサイクリン系の抗癌剤で、12年にEUで再発性難治性アグレッシブ型非ホジキンリンパ腫のサルベージ療法として条件付き承認された。今回の試験が成功すれば本承認に切り替わっただろうが、フェールしたことによって、承認を喪失するリスクが浮上した。

但し、前例を見る限りでは、執行猶予を受ける可能性もありそうだ。セカンドチャンスにチャレンジしたり、特許や排他権が失効するまで素知らぬ顔で販売し続ける戦略オプションが生まれる。

米国はこの試験で再承認申請する考えだったが、断念した。

リンク: CTIのプレスリリース

【承認申請】


キイトルーダ、肝細胞腫に適応拡大申請
(2018年7月11日発表)

MSDは、抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)の適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。治療歴のある末期肝細胞腫に用いるもので、第二相のKN224試験では客観的反応率が17%と、そこそこの効果があった。審査期限は11月9日。

リンク: MSDのプレスリリース
リンク: Zhuらの治験論文(Lancet Oncology)

アムジェン/UCB、抗スクレロスチン抗体の追加データをFDAに提出
(2018年7月12日発表)

アムジェンとUCBは、抗スクレロスチン抗体Evenity(romosozumab)を骨粗しょう症治療薬として16年に日米で承認申請し、米国では審査完了通知を受領した。申請後に結果が判明した大規模直接比較試験、ARCH試験で、心血管イベント発生率が2.5%とalendronate群の1.9%を上回ったことが影響した。

両社はARCH試験の解析を進め、今回、FDAに追加提出した。他の試験ではリスクは見られたかった模様だが、症例数も追跡期間の面でも一番大きな試験の、治験医の判定を第三者が査読したデータで懸念が浮上したことは意味が大きい。

リンク: 両社のプレスリリース

アッヴィ/ジェネンテック、bcl-2阻害剤をAML一次治療に適応拡大申請
(2018年7月12日発表)

アッヴィとジェネンテックは、慢性リンパ性白血病(CLL)の二次治療薬として承認されているbcl-2阻害剤、Venclexta(venetoclax)を一次治療薬に昇格させる適応拡大をFDAに申請したと、それぞれに発表した。

強化化学療法不適の患者に脱メチル化薬または低量cytarabineと併用する。それぞれ後期第1相試験と第1/2試験のデータに基づくもの。

リンク: アッヴィのプレスリリース

【承認】


天然痘の初の治療薬が米国で承認
(2018年7月13日発表)

FDAはTPOXX(tecovirimat)を天然痘治療薬として承認した。アニマルルールに基づき、臨床試験は健常者安全性確認試験だけで、薬効はウイルスに感染させた動物を使って確認した

天然痘はWHOを中心に世界的なワクチン接種キャンペーンが推進され、1980年代に駆除が宣言された。しかし、原因ウイルスは米国以外の研究所でも生存しており、生物兵器として使われるリスクが残っている。

このため、SIGA Technologies(Nasdaq:SIGA)が04年にViropharmaから資産を取得して、米国政府のプロジェクト・バイオシールドの一つとして資金や非臨床試験ファシリティの支援を受けてTPOXXを開発。国家備蓄用に販売する。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: SIGA社のプレスリリース

イクスタンジ、米国で転移前CRPCに適応拡大
(2018年7月13日発表)

ファイザーとアステラス製薬は、FDAがXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)の適応拡大を承認したと発表した。前立腺癌のアンドロゲン枯渇療法を受けていてPSA値が急上昇し始めたが未だ転移や症状が見られない段階の患者に追加投与するもの。

PROSPER試験では、無転移生存期間がメジアン36.6ヶ月と偽薬を追加投与した群の14.7ヶ月を大きく上回った。G3以上の有害事象の発生率は31%で偽薬群の23%を上回り、有害事象による死亡の発生率も3.4%対0.6%で上回った。

抗癌剤の開発はサルベージ用途を最初の目標として、雁行的に、一歩ずつ前の段階で用いる適応拡大を進めることが多い。Xtandiも順調に前進しており、前の段階のほうが対象患者数も平均投与期間も増えるので市場規模拡大に成功している。

リンク: ファイザーのプレスリリース

BMSのチェックポイント阻害コンビ、MSI-H/dMME結腸直腸癌に承認
(2018年7月11日発表)

BMSは、抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)と抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab)をMSI-H/dMMR型結腸直腸がんの三次治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。CM142試験では、独立放射線学的委員会の査読によるORR(客観的反応率)が46%だった。

MSI-H(マイクロサテライト不安定性-高)は塩基配列の繰返し箇所の繰返し回数が腫瘍と正常細胞で異なる。同様に、dMMRは塩基配列ミスマッチの修復が異なる。何れも細胞分裂時に発生しやすい遺伝子複製ミスが十分に修復されず癌化したことを示唆しており、免疫強化療法にとって重要な、異常蛋白の発現が多い可能性がある。 切除不能転移性結腸直腸癌の5%程度が該当する由だ。

リンク: BMSのプレスリリース






今週は以上です。

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2018年7月8日

2018年7月8日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • エーザイのアルツハイマー病薬がP2bで症状悪化抑制に成功 
  • テセントリク、トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療併用試験が成功 
  • キイトルーダ、扁平上皮非小細胞性肺癌一次治療の適応拡大申請が受理 
  • Clovis、欧州でPARP阻害剤の適応拡大申請受理 
  • Alkermes、治療開始時に使うaripiprazole徐放製剤が承認 


【新薬開発】


エーザイのアルツハイマー病薬がP2bで症状悪化抑制に成功
(2018年7月6日発表)

エーザイとバイオジェンは、BAN2401の後期第二相早期アルツハイマー病試験が成功したと発表した。臨床試験が敗北に次ぐ敗北でも敗走ならぬ転戦を繰り返してきたアミロイド仮説支持陣営には大きな成果だ。尤も、今回の試験は斬新な取り組みがテンコ盛りで成功してもフェールでも、薬の寄与なのかデザインが良かったのか、あいまいなところがある。そもそも、現時点ではデータが公表されておらず、十分な治療効果があったのかどうかすら分からない。学会・論文発表が待たれる。

BAN2401は、神経毒性の真犯人はアミロイドベータ自体ではなくモノマーの凝集過程における中間体、可溶性アミロイドベータ・プロトフィブリルであるという仮説の下に開発された、可溶性アミロイドベータ・プロトフィブリルと凝集体を標的とする抗体だ。これまで数多く実施された抗アミロイドベータ抗体やBACE阻害剤などとは一味違うことになる。07年にエーザイがスウェーデンのバイオアークティック社から開発販売権を取得。14年にバイオジェンと結んだアルツハイマー病領域の共同開発提携の対象である。

今回の201試験(NCT01767311)の特徴は、まず、被験者は、PETやCSF検査でアミロイドベータの蓄積が確認された、MCI(軽度認知障害)と軽度アルツハイマー病の856人。最近の流行に乗っている。過去の失敗経験を踏まえて、アミロイドベータを標的とするなら蓄積のある患者に絞り込むべき、しかし蓄積が進んで症状が重くなってから治療しても効果が限定的なのでもっと早い段階で介入したほうがよい、という考え方である。

介入方法と対照群は、BAN2401を60分点滴静注。用量決定試験で、体重1kg当りで2.5mgを二週毎、5mg四週毎、5mg二週毎、10mg四週毎、10mg二週毎の5用量と偽薬二週毎の6群が設定された。

主評価項目は、ClinicalTrials.govの治験登録によると、12ヶ月経過後のADCOMSの変化と安全性。ADCOMSは前向き試験では初めて主評価項目に採用されたアルツハイマー症状複合スコアで、確立した評価スコアであるADAS-cog、CDR-SB、MMSEの構成要素のうち過去の試験で治療に対する感受性が高かった項目とその組み合わせを選抜したもの。有意差を検出するのに必要な組入れ数を2-3割減らすことができる模様である。

解析は、伝統的な手法ではなく、ベイズ確率が採用された。ADCOMSの悪化が偽薬比25%以上小さい可能性が80%以上であった場合に成功と認定する。もう一つの特徴は、各用量群の組入れ数の決定にAdaptive Designが採用されたこと。頻繁に中間解析を行って成功の可能性が高そうな群の組み入れを増やしていく。これらの斬新な取り組みは、開発期間短縮が狙いである。201試験は12年末に開始されたが、最速で15年にも承認申請の可能性があった。

昨年12月に、残念ながら、主評価項目が達成されなかったことが公表された。元々ハードルが高かった模様だが、今更そんなことを言われても、部外者には、PICOのほぼ全てが前例が少ないため、判断がつかずキツネにつまままれるだけである。

今回成功認定されたのは最高用量である10mg/kg二週毎群の18ヶ月間のADCOMSの変化を伝統的な方法で偽薬と比較した解析。統計的に有意な差があったとのことだ。ベイズ解析とは異なり、12ヶ月時点でも有意差があった。アミロイドベータのPETイメージ読影診断でも有意差があった。この二つの評価項目とも、用量依存性が見られた由。

許容性は良好だった模様で、頻度が高かった有害事象は注射反応とARIA-E(抗アミロイドベータ抗体に関連して発生することがある画像上の異常のうち浮腫を伴うもの)。後者は各群10%以下で、最高用量群のAPOE4陽性例(ARIA-E発生リスクが高い)でも15%未満とのことだが、臨床的な転帰が気になるところだ。病気は早い段階で治療したほうが良い結果につながることが多いが、病気に伴う苦痛や不都合が小さい患者が許容できる副作用は重症の患者より小さい。

さて、治療効果の多寡はデータを見なければ分からないが、エビデンスの少ない評価スコアを用いているので、データを見ても例えばdonepezilと比べてどの程度良いのか、イメージを掴むのが困難かもしれない。

治療効果はあまり高くなかったのではないかと疑う背景は三点。第一に、そもそも早期患者は失ったものが少ない分、回復できるものも限られるのではないか?第二に、ベイズ解析の長所は小さな治療効果を合格と判定しないことである。12ヶ月時点の判定がベイズ解析はフェール、標準的解析は成功と食い違ったのは、ベイズ解析の閾値が高すぎたせいかもしれないが、治療効果が小さかったせいかもしれない。

もう一つ、アルファの配分が違う可能性もあるが、常識的に考えれば、標準的解析の12ヶ月時点の解析にはアルファが配布されていなかっただろうから、この議論は無益であろう。第三に、両社のプレスリリースは統計学的に有意と形容しており、どこを見ても臨床的に意味のある効果があったとは記されていない。

上記のように、ベストケースシナリオではこの試験のデータで承認申請される可能性もあったはずだ。エーザイやバイオジェンの株価が高騰したのと裏腹に、投資銀行アナリストの反応はクールで、承認申請できるほどの良い結果ではなく改めて第三相試験で成否が決まる、と考えているのだろう。個人的には、第三相段階だが類薬が数多くフェールしたBACE阻害剤の一つであるE2609(elenbecestat)よりもBAN2401のほうが希望が残っていると思っているのだが、何れにせよ、静かに見守るのが最善だろう。

リンク: 両社のプレスリリース(和文)
リンク: WangらのADCOMS論文(Journal of Neurology, Neurosurgery and Psychiatry)

テセントリク、トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療併用試験が成功
(2018年7月2日発表)

ロシュは、抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)の第三相IMpassion130試験が成功したことを発表した。転移性・切除不能な局所進行性トリプルネガティブ乳癌の一次治療として、nab-paclitaxelと併用する効果をnab-paclitaxelと偽薬の併用と比べたもの。共同主評価項目である担当医評価によるPFS(無進行生存期間)と全生存期間のうち前者が、PD-L1陽性患者だけの解析でもintent-to-treatでも、成功した。

全生存は中間解析段階である模様だが、PD-L1陽性サブグループの解析で「勇気づけられる」数値が出ている模様。

トリプルネガティブ乳癌は、ホルモン療法が適応になるホルモン受容体陽性でもfなく、her2標的薬が適応になるher2陽性でもない乳癌で、予後があまりよくなく、有効な薬も少ない。抗PD-1/PD-L1抗体が第三相試験でトリプルネガティブ乳癌に有効性を示したのは初めて。ロシュは欧米で適応拡大申請する考え。

抗PD-1抗体が開発後期に進んだ頃は免疫療法だから用途はメラノーマとか腎細胞腫とかに限られるだろうと思っていたが、適応はどんどん広がり、免疫抑制副作用を持つ化学療法との併用まで成功するなど、想像以上の進展を見せている。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認申請】


キイトルーダ、扁平上皮非小細胞性肺癌一次治療の適応拡大申請が受理
(2018年7月2日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を転移性扁平上皮性非小細胞性肺癌の一次治療薬としてcarboplatin及びpaclitaxel(またはnab-paxlitaxel)と併用する適応拡大申請をFDAが受理したと発表した。審査期限は10月30日。PD-L1発現に関しては不問としている。

第三相のKEYNOTE-407試験に基づくもので、全生存期間のハザードレシオは0.64、第三者査読によるPFSハザードレシオは0.56でどちらも統計的に有意だった。治療関連有害事象による死亡は10例(発生率3.6%)で偽薬併用群の6人(2.1%)より多かった。

リンク: MSDのプレスリリース

Clovis、欧州でPARP阻害剤の適応拡大申請受理
(2018年7月5日発表)

Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)は6月に欧州で行ったPARP阻害剤Rubraca(rucaparib)の適応拡大申請が受理されたと発表した。順調なら年内にCHMPの意見が出る見込み。

RubracaはBRCA有害変異型の末期卵巣癌の三次治療薬として5月にEUで初承認されたところ。今回の適応拡大は、白金薬による二次以降の治療に反応した患者の維持療法で、臨床試験ではBRCA有害変異のない患者にもPFS延長効果が見られ、申請が先行した米国ではBRCA限定なしで適応拡大が認められた。

リンク: Clovisのプレスリリース

【承認】


Alkermes、治療開始時に使うaripiprazole徐放製剤が承認
(2018年7月2日発表)

Alkermes(Nasdaq:ALKS)は、FDAがAristada Initio(aripiprazole lauroxil)を承認したと発表した。非定型向精神薬aripiprazole(大塚製薬が創製)の徐放性剤で、Aristadaの弱点であるオンセットの遅さを補う。

Aristadaは月一回または二か月に一回の投与で足りる持効性筋注用製剤で、血中濃度が十分な水準に到達するまで時間がかかるため、治療開始後21日間に亘り、aripiprazoleの経口剤を毎日服用する必要があった。

Aristada Initioは同社のナノクリスタル技術を用いてパーティクルを小型化、放出を速めた。これを使えば、初日に経口剤、Aristada Initio、Aristadaを投与すれば次からは1ヶ月または2ヶ月毎にAristadaを筋注するだけで足りる。

大塚製薬とルンドベックが共同開発販売しているariprazoleの月一回筋注用製剤、Abilify Maintenaは最初の二週間は経口剤を毎日服用する。この承認から4年、Aristada承認から3年経ち、やっと簡便なレジメンが登場した。

リンク: Alkermesのプレスリリース







今週は以上です。

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2018年7月1日

2018年7月1日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • セルジーン/Acceleron、MDS試験が成功 
  • テセントリク、小細胞性肺癌の一次治療試験が成功 
  • リムパーザ、卵巣癌一次治療後維持療法試験が成功 
  • GBT社、鎌状赤血球症治療薬の加速承認申請を狙う 
  • アステラスが導入したばかりの薬が開発中止に 
  • ゾフルーザの承認申請をFDAが受理 
  • ファイザー、SMO阻害剤を承認申請 
  • CHMPがCAR-Tなどの承認を支持 
  • マリファナの成分を用いた抗癲癇薬が承認 
  • 複雑性尿路感染症治療薬が承認 
  • ゼルヤンツ、EUで乾癬性関節炎治療薬として承認 


【新薬開発】


セルジーン/Acceleron、MDS試験が成功
(2018年6月28日発表)

セルジーン(Nasdaq:ASDAQ: CELG) は08年以来、Acceleron Pharma(Nasdaq:XLRN)のACE-536(luspatercept)を共同開発してきたが、遂にMDS(骨髄異形成症候群)の第三相試験が成功した。8週間以上赤血球を輸血しなくて済んだ患者の比率が偽薬群を有意に上回った。具体的なデータは学会発表の予定。

ACE-536はactivin receptor type IIBとマウスの免疫グロブリンG2の融合蛋白で、TGFベータスーパーファミリーの作用をブロックする。今回の第三相は、低リスクまたは低中度リスクMDSで環状鉄芽球を持ち、貧血症でESA(エポエチンなど)に不応不耐不適の患者を組入れて、3週間毎に皮注する効果を検討したもの。

19年上期に欧米で承認申請する計画。輸血依存型ベータサラセミアでも第三相試験中。

リンク: 両社のプレスリリース

テセントリク、小細胞性肺癌の一次治療試験が成功
(2018年6月25日発表)

ロシュは、抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)を進展型小細胞性肺癌の一次治療に用いたIMpower133試験が成功したと発表した。carbopatin及びetoposideを併用する標準療法に追加してPFS(無進行生存期間)と全生存期間を標準療法と比較したところ、最初の中間解析で成功認定された。進展型小細胞性肺癌は予後が悪く治療の選択肢も限られているので、重要なエビデンスだ。

リンク: ロシュのプレスリリース

リムパーザ、卵巣癌一次治療後維持療法試験が成功
(2018年6月27日発表)

アストラゼネカと開発販売パートナーのMSDは、Lynparza(olaparib、和名リムパーザ)のSOLO1試験が成功したと発表した。BRCA悪性変異を持つ末期卵巣癌で白金薬ベースの一次治療に完全/部分反応した患者を組入れて、300mg錠を一日二回服用する群と偽薬群のPFSを比較したもの。データは未発表。適応拡大に向けて当局と相談する計画。 

LynparzaはPARP阻害剤で卵巣癌の再発治療やBRCA悪性変異を持つ末期乳癌などに承認されている。

リンク: 両社のプレスリリース

GBT社、鎌状赤血球症治療薬の加速承認申請を狙う
(2018年6月27日発表)

米国のGlobal Blood Therapeutics(Nasdaq:GBT)は、GBT440(voxelotor)の第三相鎌状赤血球症試験のパートAが成功したと発表した。ヘモグロビン値改善効果が確認されたため、パートBを取りやめて承認申請する方向でFDAと相談を開始した。株価は下落したので、方針転換の先行きを危ぶんでいるのかもしれない。ヘモグロビンの改善が症状改善やクリーゼの防止につながると考えることができるかどうかがポイントになりそうだ。

鎌状赤血球症の患者154人を偽薬、900mg、1500mgの各群に割付て12週間治療し、HgBが1g/dL超増加した患者の比率を比較したところ、各群9%、38%、58%となり、両用量とも偽薬比有意に上回った。静脈閉塞性クリーゼも減少したが、追跡期間が短いこともあり、有意差は出なかった。

GBT440は赤血球の重合そして鎌状化を阻害する作用を持つ。米国でブレークスルーセラピーとファーストトラック、希少小児疾患用薬、希少疾患用薬の指定を受け、欧州でもPRIMEと希少疾患王約指定されている。

リンク: GBT社のプレスリリース

アステラスが導入したばかりの薬が開発中止に
(2018年6月27日発表)

Aquinox Pharmaceuticals(Nasdaq:AQXP)は、AQX-1125(rosiptor)の第三相間質性膀胱炎・膀胱痛症候群試験がフェールしたと発表した。開発を中止する。

PI3Kパスウェイに係わり炎症をダウンレギュレートする酵素、SHIP1を活性化する作用を持つ。小規模な第二相試験で、一部の評価項目でp値が0.01を下回ったが、多くは0.01~0.05に留まり、一部は0.05を上回った。第三相は偽薬、100mg、また200mgを一日一回経口投与して膀胱痛改善効果を検討したが有意差はなかった。

アステラス製薬は5月にアジア太平洋地域(中国とインドを除く)での権利を取得したことを発表したが、契約はもう発効したのだろうか?頭金2500万ドルは帰ってこないのだろうか?

リンク: Aquinox社のプレスリリース


【承認申請】


ゾフルーザの承認申請をFDAが受理
(2018年6月26日発表)

ロシュは、baloxavir marboxilを米国で12歳以上の合併症のないインフルエンザ感染症の治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は12月24日。

インフルエンザウイルス複製の初期過程であるmRNAの切り出しに必要な、Cap依存性エンドヌクレアーゼを阻害する画期的な作用機序を持ち、代表的なインフルエンザ治療薬であるTamiflu(oseltamivir)に耐性を持つウイルスにも活性を維持。Tamifluは一日二回経口投与で標準的には5日間服用するが、baloxavir marboxilは1回服用で足りることが長所。第三相試験では、症状軽快までの時間が偽薬より有意に短く、Tamifluと非劣性だった。

塩野義製薬の開発品で日本では今年2月にゾフルーザ錠として承認された。ロシュは日本や台湾以外の国で共同開発権を持つ。糖尿病など高リスク因子を持つインフルエンザ患者を組入れた第三相も進行中。

リンク: ロシュのプレスリリース

ファイザー、SMO阻害剤を承認申請
(2018年6月27日発表)

ファイザーはPF-04449913(glasdegib)を米国で承認申請し受理されたと発表した。SMO阻害剤で、適応は急性骨髄性白血病の新患または高リスク骨髄異形成症候群。集中的化学療法不適の場合に用いる。低量cytarabineと併用する。申請の根拠となった第二相試験では全生存期間が8.8ヶ月とcytarabineだけの群の4.9ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.50、統計的に有意だった。深刻有害事象は熱性好中球減少症や肺炎が増加した。

リンク: ファイザーのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMPがCAR-Tなどの承認を支持
(2018年6月29日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、6月の会合で、ノバルティスやギリアドのCAR-T療法などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

CAR-Tは、B細胞に特異的に発現するCD19に結合する抗体フラグメントと活性化共刺激伝達分子などの融合遺伝子を患者から採取したT細胞に導入し、リンパ枯渇処理を受けた患者に戻してやると、体内で増殖して癌化したB細胞を攻撃する。

開発はペンシルバニア大学の技術を導入したノバルティスとカイト社を買収したギリアド・サイエンスシズが先行しており、米国では夫々昨年8月と10月に承認。EUはギリアドのほうが先に承認申請したがCHMPは同時通過となった。日本はノバルティスが今年4月に再生医療等製品として申請。カイトは第一三共に導出した。

ノバルティスのKymriah(tisagenlecleucel)は、再発性難治性のB細胞性急性リンパ性白血病及びびまん性巨細胞性B細胞性リンパ腫に用いる。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ギリアドのYescarta(axicabtagene ciloleucel)は、再発性難治性のびまん性巨細胞性B細胞性リンパ腫及びPMBCL(原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫)に用いる。

CAR-Tの泣き所はサイトカイン放出症候群だ。発生時の治療のデファクト・スタンダードは中外製薬/ロシュのActemra(tocilizumab)で、CHMPはこの適応拡大にも肯定的意見を出した。米国は昨年8月に承認。日本は適応拡大申請中。

6月通過の新薬も希少疾患用薬が多かった。サノフィが子会社化したAblynx社のCablivi(caplacizumab)は二価抗フォン・ヴィレブランド因子ナノ抗体で、後天性血栓性血小板減少性紫斑症の治療に用いる。第二相試験に基づく承認だが、既に第三相も成功しており、米国はこのデータで承認申請する予定。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: サノフィのプレスリリース

Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)のMepsevii(vestronidase alfa)は遺伝子組換え型ヒト・ベータ・グルクロニダーゼで、ムコ多糖症VII型の酵素補充療法。米国は昨年11月に承認。正味価格ベース年375000ドルで発売された。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Ultragenyxのプレスリリース

シャイアーが子会社化したバクスアルタのVeyvondiは遺伝子組換え型フォン・ヴィレブランド因子。重度先天性フォン・ヴィレブランド病の患者の出血治療や周術期の出血予防・治療に用いる。米国では15年に承認。遺伝子組換え型vWFの承認は初。

リンク: EMAのプレスリリース

プーマ・バイオテクノロジー(NYSE:PBYI)がファイザーからライセンスして開発した不可逆的汎erbB阻害剤、Nerlynx(neratinib)は、2月に否定的意見を受けたが、今回、肯定的意見に変わった。her2陽性早期乳癌の摘出術を受けHerceptinなどによるアジュバント療法も終えた患者に更に延長アジュバント療法として使うもので、臨床試験でホルモン受容体陽性患者に限定すれば臨床的に意味のある効果が見られたことを評価した。

ホルモン受容体陽性に限定されるなら、昨年7月に承認したFDAと異なる判断になる。何れにせよ、全ての患者に使うべき薬ではなさそうだ。

リンク: EMAのプレスリリース

リンク: EMAのプレスリリース(意見変更に関するQ&A)

適応拡大では、エーザイがMSDと共同開発販売しているLenvima(lenvatinib)を肝細胞腫の一次治療に用いることが支持された。Nexavar対照試験で全生存期間のハザードレシオが0.92と非劣性だった。

リンク: EMAのプレスリリース

BMSのOpdivo(nivolumab)を悪性黒色腫の完全切除後のアジュバント療法としてモノセラピーで用いることも支持された。リンパ節転移などリスク因子を持つ患者が対象になる。

リンク: EMAのプレスリリース

エーザイのInovelon(rufinamide、和名イノベロン)は41歳以上のレノックス・ガストー症候群の治療薬として追加投与することが支持された。通常は成人の適応を取ってから小児治験を行うが、レノックス・ガストー症候群が小さい時に発症することが多く、壮年適応が後になる珍しいパターンになった。

リンク: EMAのプレスリリース


【承認】


マリファナの成分を用いた抗癲癇薬が承認
(2018年6月25日発表)

FDAは、英国のGW Pharmaceuticals(Nasdaq:GWPH)のEpidiolex(cannabidiol)をレノックス・ガストー症候群とドラベ症候群の治療薬として承認した。大麻に含まれるカンナビノイドの一つだが、テトラヒドロカンナビロールと異なり陶酔作用がない。大麻由来の医薬品やドラベ症候群治療薬の承認は米国初。麻薬取締省の麻薬指定審査の結果を待って発売する予定。欧州でも承認審査中。

リンク: FDAのプレスリリース

複雑性尿路感染症治療薬が承認
(2018年6月26日発表)

Achaogen(Nasdaq:AKAO)は、FDAがZemdri(plazomicin)を薬物耐性複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)の治療薬として承認したと発表した。大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクター・クロアカ、プロテウス・ミラビリスによる感染症に用いる。Achaogenは菌血症でも申請したが、治験が目標症例数に到達しなかったせいか、審査完了となった。

腎臓や聴器に対する毒性や神経筋遮断、催奇性などが枠付き警告となった。

リンク: Achaogenのプレスリリース

ゼルヤンツ、EUで乾癬性関節炎治療薬として承認
(2018年6月28日発表)

ファイザーは、JAK阻害剤のXeljanz(tofacitinib)を乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。疾病装飾的抗リウマチ薬に十分反応しない患者に、MTX併用で5mgを一日二回、経口投与する。米国では昨年12月に承認された。

リンク: ファイザーのプレスリリース






今週は以上です。

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