2023年1月29日

第1087回

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • FDA、エバシェルドのEUAを停止 
  • その他の領域: 
  • カービクティの二次治療試験が成功 
  • キイトルーダ、この日は一勝一敗 
  • 抗体医薬の第3相VAP試験がフェール 
  • KIT阻害剤を緩徐全身性肥満症に適応拡大申請 
  • ジャディアンスをCKDに適応拡大申請 
  • FDA諮問委員会、新規エキノカンジンの限定的使用承認を支持 
  • CHMPが乾癬治療薬の承認を支持 
  • ESR1変異乳癌用薬が承認 
  • 可逆的BTK阻害剤が承認 
  • キイトルーダもNSCLCアジュバントが承認 
  • 新規SGLT2阻害剤が周回遅れで承認 


【COVID-19関連】


FDA、エバシェルドのEUAを停止
(2023年1月26日発表)

FDAは、アストラゼネカのCOVID-19用薬Evusheld(tixagevimab、cilgavimab)はEUA(非常時使用認可)されていないと発表した。感受しないウイルスが殆どになったため。感受ウイルスの比率が上昇する時に備えて薬剤は廃棄しないよう推奨した。

Evusheldは二種類の抗SARS-CoV-2抗体の同梱製品。米国で曝露前感染予防用途に、欧日では治療用途にも、承認されている。オミクロン株にも力価を維持することから抗SARS-CoV-2抗体医薬の中で唯一、EUAが維持されていたが、力価が大きく低下してしまう株が昨秋来、流行しだし、CDC(米疾病予防管理センター)の推定によると、今年1月15日の週には非感受株の比率がXBB.1.5は49%、BA.1.1は27%、BQ.1は13%、XBBは3%と、合わせて9割を超えるようになった。

FDAはEvusheldのレーベルを改訂し、EUAは非感受株比率が90%以下である場合に限定されることを明記した。90%は高すぎるように感じられるが、米国は広く、地域により流行株が異なるケースが散見されることや、流行株が一変した時に朝令暮改にならないよう、緩めにしたのだろう。医師は地域の流行状況を踏まえて採否を決める必要があり、これまで、FDAは州毎の当否判断を公表していた。

リンク: FDAのプレスリリース

【新薬開発】


カービクティの二次治療試験が成功
(2023年1月27日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen PharmaceuticalはCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)の第3相CARTITUDE-4試験の独立データ評価委員会が中間解析に基づき盲検解除勧告を行ったと発表した。PFS(無進行生存期間)をPVdレジメン(pomalidomide+bortezomib+dexamethasone)やDPdレジメン( daratumumab+pomalidomide+dexamethasone)と比較した試験で、データは未発表。目的が達成されたので適応拡大申請に向かうだろう。

BCMA(B細胞成熟抗原)を標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)療法で、22年に米欧日で再発難治多発骨髄腫のサルベージ薬として承認された。適応になるのは免疫調節剤、プロテアーゼ阻害剤、抗CD38抗体による、EUと日本は3次以上、米国は4次以上の治療歴を持つ患者。

今回の試験は1~3次治療歴を持つ患者が対象なので、承認されれば早期段階の治療が可能になる。

類薬ではBMS/2seventy bioのAbecma(idecabtagene vicleucel)が3次以上の治療歴を持つ患者再発難治多発骨髄腫に承認されており、2~4次治療歴を持つ患者を組み入れたKarMMa-3試験が昨年8月に中間解析で成功認定された。データが大差ないならば、二次治療に使えるCarvyktiのほうが有利だろう。

リンク: JNJのプレスリリース


キイトルーダ、この日は一勝一敗
(2023年1月25日発表)

MSDはKeytruda(pembrolizumab)の第3相試験二本の成否を夫々、発表した。ポジティブな結果になったのがKEYNOTE-966試験。進行/切除不能の胆管癌で一次治療を受ける1069人を組入れて、gemcitabineとcisplatinのレジメンに追加して全生存期間の延長を図ったもの。Keytrudaは200mgを3週毎に最長2年間投与した。データは今後、学会などで発表される。適応拡大申請に向かうだろう。

胆管癌ではアストラゼネカのImfinzi(durvalumab)のTopaz-1試験が21年に中間解析で成功認定され、22年に米欧日で適応拡大が認められた。gemcitabineとcisplatinの併用と比べて、Imfinziを追加したレジメンの全生存ハザードレシオは0.80、メジアン生存期間は12.8ヶ月対11.5か月で1.3ヶ月延びるだけだが2年生存率は25%対10%と、一部の患者にはある程度大きな効果を示した。

一方、転移ホルモン療法感受性前立腺癌(mCSPC)のKEYNOTE-991試験は中間解析で独立安全性監視委員会が無益認定したため中止が決まった。アンドロゲン枯渇療法と Xtandi(enzalutamide)を併用するレジメンに追加する便益を検討したが、共同主評価項目である全生存期間と放射線学的無進行生存期間の何れも、成功の見込みが僅少と判定された。G3~5の有害事象や深刻有害事象も増加した。

リンク: 同社のプレスリリース(KEYNOTE-966試験)
リンク: 同(KEYNOTE-991試験)


抗体医薬の第3相VAP試験がフェール
(2023年1月25日発表)

米国のAridis Pharmaceuticals(Nasdaq:ARDS)はAR-301の最初の第3相試験がフェールしたと発表した。COVID-19やウクライナ戦争の影響で目標症例数に到達しなかったことが敗因の可能性があり、同社は、規制機関と相談の上、二本目を開始する予定。

AR-301は黄色ブドウ球菌のアルファ毒素に結合し活性複合体の形成を妨げる、点滴静注用の抗体医薬。第3相はグラム陽性黄色ブドウ球菌による人工呼吸器関連肺炎の治療に際して、抗生剤による標準療法に追加する便益を検討した。主評価項目の21日臨床的治癒率は68.9%と偽薬群の57.6%を有意に上回ったが、p=0.23と有意ではなかった。240人を組入れる計画だったが、45施設で40ヶ月かけて174人と大きく下回り、黄色ブドウ球菌感染が濃厚な薬効解析対象は120人に留まったため、検出力が大きく低下したことが響いたのだろう。

薬物関連深刻有害事象は発生しなかった。全死亡率は各群23.0%と23.7%と大差なかった。肺炎による死亡は1.6%と5.0%だったので、それ以外の原因による死亡は試験薬のほうが多かったのだろう。

リンク: 同社のプレスリリース(Globe Newswire)

【承認申請】


KIT阻害剤を緩徐全身性肥満症に適応拡大申請
(2023年1月23日発表)

Blueprint Medicines(Nasdaq:BPMC)はAyvakit(avapritinib)を成人の緩徐全身性肥満症の治療に用いる適応拡大をFDAに承認申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は5月22日。PIONEER試験でTSS症状スコアの低下が24週で15.6と偽薬群の9.2を有意に上回った。有害事象は末梢/眼窩周囲浮腫がやや増加した。

高力価高度選択的KIT阻害剤で、標準療法に抵抗性を示すPDGFRアルファ エクソン18変異型にも活性を持つ。20年に欧米でこのタイプの消化管間質腫瘍の4次治療薬として、21~22年には進行性全身性肥満細胞腫にも、承認された。全身性肥満細胞腫の9割は緩徐なので、高リスク・サブグループだけでも使用されるようになれば市場が拡大する。

リンク: 同社のプレスリリース


ジャディアンスをCKDに適応拡大申請
(2023年1月20日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムと共同開発販売パートナーのイーライリリーは、Jardiance(empagliflozin)を成人の慢性腎疾患に用いる適応拡大を米国で申請し、受理された。審査期限は不明。

慢性腎疾患は既承認の二型糖尿病の合併症の一つであるが、二型糖尿ではない患者が過半を占めたEMPA-KIDNEYアウトカム試験で腎臓病進行・心血管死のリスクを28%抑制した。

SGLT2阻害剤で、慢性心不全の心不全入院・心血管死を抑制する用途でも承認されている。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、新規エキノカンジンの限定的使用承認を支持
(2023年1月25日発表)

FDAは抗微生物薬諮問委員会を招集し、Cidara Therapeutics(Nasdaq:CDTX)が成人のカンジダ血症や侵襲性カンジダ症の治療薬として承認申請したRezzayo(rezafungin)について意見を聞いた。FDAは限定的使用(limited use indication)制度を適用する考えで、諮問委員会は、これを前提に、15人中14人が便益が危険を上回ると判定した。反対は1名で、全生存解析の信頼区間上限が高いことを危惧した。審査期限は3月21日。欧州でも承認審査中。

Seachaid Pharmaceuticalsからライセンスした新規エキノカンジン系抗真菌剤で、既存薬より効果が高い可能性があるが確立はしていない。現時点で最大の長所は週一回静注で足りること。既存のエキノカンジン系薬は一日一回、14~28日間投与するが、駆除/軽快したらアゾール系経口抗菌薬に『ステップ・ダウン』することが多いようだ。問題は、耐性菌や薬物相互作用が理由でアゾール系に適さない患者。米国は在宅点滴静注が可能だが、医療保険でカバーされていない場合、治癒退院の障害になる。

"limited use indication"というのは初耳だが、内容的には、2016年のFDA&C法改正で導入された、LPAD経路(Limited Population Pathway for Antibacterial and Antifungal Drugs)と同じに見える。細菌はどんどん変異して抗菌剤耐性を獲得するので人類も次々と画期的新薬を創出する必要があるが、現実にはむしろ低調化しているため、開発期間を短縮し費用を節減できるように、適応対象を絞り込む代わりに承認基準を緩和するもの。

今回の申請は第2相一本と第3相一本に基づくもの。rezafunginは週一回、2~4回投与。対照群はcaspofunginを一日一回、14~28日間投与したが、地域の治療ガイドラインに即して、fluconazoleにステップダウンすることが認められた。結果は、FDA向け主評価項目である30日全死亡率は各23.7%と21.3%で、群間差は2.4、非劣性解析の95%信頼区間は-9.7~14.4だった。limited use indicationなので非劣性マージンが20%と甘く設定されており、非劣性判定された。真の死亡率がfluconazoleの倍近くても容認することを意味する。

EMA向けの主評価項目である14日全般的治癒率は各59.1と60.6%で、群間差は-1.1(95%信頼区間-14.9~12.7)だった。ここでも、治癒率が10ポイント以上低くても容認することになる。

LPAD経路は治療方法がない、あるいは、限られている患者に使う薬が対象になるので、rezafunginも承認時はこの但し書きが付くことになろう。

安全性面では、エキノカンジン系のクラス・イフェクトと目される振戦の発生率が2.6%対ゼロで偏りがあったが、たった187人の試験なので信頼性は高くない。実数は4人とゼロで、もしクラス・イフェクトだとしたら対照群の数値も実態を表していないと考えるべきだろう。

rezafunginは米国ではMelinta Therapeutics(Nasdaq:MLNT)が、欧州などではMundipharmaが販売する。日本はCidaraが留保しているので、誰かがライセンスするかもしれない。

リンク: CidaraとMelintaのプレスリリース(Globe Newswire)


CHMPが乾癬治療薬の承認を支持
(2023年1月27日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、BMSの乾癬治療薬の承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

BMSのSotyktu(deucravacitinib)は選択的アロステリックTYK2阻害剤。JAKの一種でIL-23やIL-12などによる細胞内シグナル伝達を調停するチロシン・キナーゼ2を阻害する経口剤で、成人の全身性治療が候補になる中重度プラク乾癬に一日一回投与する。第3相試験の一つでは、同じ経口剤であるアムジェンのPDE4阻害剤、Otezla(apremilast)よりPASI 75やsPGAに基づく奏効率が有意に高かった。

昨年9月に米日で承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、BMSのReblozyl(luspatercept)を成人のベータ・サラセミアで輸血依存ではない患者の貧血治療にも用いることが支持された。ドイツのPaionは麻酔薬Byfavo(remimazolam)を全身麻酔に用いることが支持された。現在は内視鏡検査における処置鎮静に承認されている。日本ではムンディファーマが全身麻酔用薬アネレムとして販売。バイエルのNubeqa(darolutamide)は転移リスクの高い非転移性去勢抵抗性前立腺癌に加えて、新たに、転移ホルモン感受性前立腺癌にdocetaxel及びアンドロゲン枯渇療法と併用することが支持された。米国では昨年8月に承認、日本も適応拡大審査中。

一方、否定的意見となった新薬は、イプセンが進行性骨化性線維異形成症の治療薬として申請したSohonos(palovarotene)。19年に10億ドル超で買収したClementia Pharmaceuticalsがロシュからライセンスして第3相試験を実施したが、主評価項目がフェールした。事後的評価項目に基づき欧米で承認申請したが、米国に続き、EUでも受け入れられなかった。レチノイン酸受容体ガンマの作動薬で、クラス・イフェクトである成長板早期閉鎖(成長期の患者における成長抑制)が見られたためFDAが14歳未満の患者の組入れ停止を命じている。薬効のエビデンスも第3相試験で事前に設定された目的を達成できなかったため事後的分析に立脚しており、更に、対照群は観察的研究に基づく外部データなので説得力が十分ではない。米国では今年第1四半期に修正申請を行う予定。

リンク: EMAのプレスリリース

JNJグループのJanssen-Cilag InternationalはImbruvica(ibrutinib)を自家造血幹細胞移植(ASCT)不適のマントル細胞腫の一次治療にbendamustine及びrituximabと併用する適応拡大を申請していたが、昨年12月に撤回した。CHMPは便益が限定的であることや感染症などの深刻な有害事象が見られること、そして、ASCTには適さないがこのようなリスクを忍容できる患者を判定するのは困難であることから、エビデンス不足と考えていた。

65歳以上のASCT不適患者を組入れた第3相SHINE試験ではPFS(無進行生存期間)が6.7年とbendamustineとrituximabだけの群の4.4年を上回り、ハザードレシオ0.75だったが、全生存期間はハザードレシオ1.07で有意ではなかった。有害事象死亡率が10.7%と対照群の6.1%を上回ったことも影響したのだろう。

リンク: EMAのプレスリリース


CHMP、Adakveoの薬効を再審査
(2023年1月27日発表)

CHMPはノバルティスのAdakveo(crizanlizumab)に関する審査開始を発表した。Pセレクチンを標的とする抗体医薬で、16歳以上の鎌状赤血球症の血管閉塞性疼痛クリーゼを抑制する薬として20年に第2相試験に基づき欧州で条件付き承認されたが、承認を維持するために必要な第3相試験、STAND試験がフェールしたため。

そもそも何故条件付き承認になったのか、明確ではない。米国は通常の承認だった。ClinicalTrials.govの記載を比較する限りでは第2相と3相の間には顕著な違いは感じられない。年齢下限が各16歳以上と12歳以上であること、組入れ数が各198人と254人、試験用量が前者は0.25mg/kgと承認用量の0.5mg/kg、後者は0.5mg/kgと0.75mg/kgであること位だ。第2相では血管閉塞性疼痛クリーゼの発生頻度が年率1.63回と、偽薬群の2.98回を有意に下回ったが、EUの審査文書には判定基準や逸失データの統計処理法が万全でなかったような記述があるので、これらの点や、臨床試験のエビデンスが一本だけであることが理由なのかもしれない。

第2相と異なった結果になった理由を想像するのは困難だ。データが未発表なので猶更だ。アップデートを待ちたい。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

【承認】


ESR1変異乳癌用薬が承認
(2023年1月27日発表)

FDAはイタリアのメナリニの子会社であるStemline TherapeuticsのOrserdu(elacestrant)を閉経後女性または成人男性のエストロゲン受容体陽性、her2陰性の進行/転移乳癌用薬として承認した。内分泌薬とCKD4/6阻害剤による一次以上の治療歴を持ち、ESR1(エストロゲン受容体1)のライガンド結合ドメインに機能喪失変異を持つ患者が適応になる。345mgを一日一回、食中服用した第3相試験では、PFS(画像審査委員会が盲検評価)が3.78ヶ月と標準療法群(fulvestrantやアロマターゼ阻害剤)の1.87ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.55だった。有害事象は筋骨格痛、悪心嘔吐、コレステロールやTG値の上昇など。

第3相試験はESR1陰性の患者を含む全体のPFSも成功したが、陰性患者だけのハザードレシオは0.86で有意ではなかったためか、陽性限定となった。コンパニオン診断薬としてGuardant Health(Nasdaq:GH)のGuardant360 CDx ctDNAアッセイも承認された。

Radius Healthが06年にエーザイからライセンスし開発したが、経営不振により腫瘍学撤退を決め、20年にメナリニに資産譲渡したもの。

リンク: FDAのプレスリリース


可逆的BTK阻害剤が承認
(2023年1月27日発表)

イーライリリーのJaypirca(pirtobrutinib)が米国で成人の難治再発マントル細胞腫用薬として承認された。BTK阻害剤を含む二次以上の全身性治療歴を持つ患者が適応になる。第1/2相試験で120人中60人がORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)となり、うち完全反応は15人だった。メジアン反応持続期間は8.3ヶ月。報道によると30日分の価格は21000ドルとなる模様。

19年に買収したLoxo Oncologyが17年にRedx PharmaからライセンスしたBTK阻害剤で、既存のBTK阻害剤と異なり共有結合しないので可逆的で、今回のように、既存のBTK阻害剤に抵抗性を持つ腫瘍にも有効。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


キイトルーダもNSCLCアジュバントが承認
(2023年1月26日発表)

FDAはMSDのKeytruda(pembrolizumab)を非小細胞性肺癌の切除術後薬物療法に用いる適応拡大を承認した。ステージIB、II、IIIAの腫瘍を摘出し白金薬レジメン薬物療法を受けた患者が適応になる。ロシュのTecentriq(atezolizumab)が一足先に米日欧で承認されているが、PD-L1陽性ではない患者が適応になったのは初めて。

エビデンスとなるKEYNOTE-091試験では、全摘後に白金薬レジメンによるアジュバント療法を受けたサブグループ(被験者の86%)におけるメジアンDFS(無病生存期間、治験医評価)が58.7ヶ月と偽薬群の34.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.73だった。尚、それ以外の患者におけるハザードレシオは1.25と逆の方向を指していた。有害事象は、過去の非小細胞性肺癌試験と比べて、甲状腺機能の低下や亢進、肺臓炎が増加した。また、心筋炎で2名(0.3%)が死亡した。

リンク: FDAのプレスリリース


新規SGLT2阻害剤が周回遅れで承認
(2023年1月23日発表)

TheracosBio(旧称Theracos)のBrenzavvy(bexagliflozin)が成人の二型糖尿病用薬として承認された。SGLT2阻害剤で、新味はないが、昨年12月に猫の糖尿病用薬として承認されたElanco Animal Health(NYSE:ELAN)のBexacatと同じ活性成分を用いていることが目を引く。Bexacatは体重3kg以上の猫に15mgフレーバー錠を一日一回投与するが、Brenzavvyは20mg錠を一日一回投与する。Bexacatの新患治療試験では56日奏効率が83%だった。Brenzavvyの第3相試験では第24週のA1cが偽薬比0.48%多く低下した。52週間のMACE+(不安定性狭心症を含む主要有害心臓イベント)の発生率は7.9%で対照群の10.1%を数値上下回り、ハザードレシオ0.77、95%上限1.08で非劣性だった。

有害事象はSGLT2阻害剤のクラス・イフェクトが数多く記されているが、Brenzavvy自身のデータとしては、上記MACE試験で下肢切断リスクが1000人年当り8.3件と対照群の同5.1件を上回ったことが明らかにされた。

リンク: TheracosBioのプレスリリース(Business Wire)





今週は以上です。

2023年1月21日

第1086回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 抗CLDN18.2抗体の第3相データ 
  • オニバイドが直接比較試験で標準療法を若干上回る 
  • テセントリク、HCCアジュバント試験が成功 
  • モデルナも高齢者向けRSVワクチンを承認申請へ 
  • ロンサーフ、ベバシズマブ併用大腸癌試験が成功 
  • HIV予防ワクチンはJNJも第3相フェール 
  • リリーの抗アミロイド・ベータは承認されず 
  • 百済神州のbtk阻害剤が適応拡大 
  • her2阻害剤と抗her2抗体の併用が大腸癌の一部に承認 


【新薬開発】


抗CLDN18.2抗体の第3相データ
(2023年1月20日発表)

アステラス製薬はASCO GIで抗CLDN18.2抗体IMAB362(zolbetuximab)の第3相SPOTLIGHT試験の成績を発表した。CLDN18.2陽性、her2陰性の切除不能局所進行性/転移性胃・食道胃接合部腺癌の一次治療を受ける患者を組み入れて、mFOLFOX6レジメンに追加する効果を偽薬追加群と比較したところ、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.751、メジアン値は各群8.67ヶ月と10.61ヶ月で統計的に有意な差があった。副次的評価項目の全生存期間もハザードレシオ0.75、メジアン値は各15.54ヶ月と18.23ヶ月で3ヶ月弱の延命効果が見られた。治療時発現深刻有害事象が各群43.5%と44.8%の患者で見られた。承認申請を予定。

BioNTechの共同創設者夫妻が設立したGanymed Pharmaceuticalsを16年に買収して入手したコンパウンド。CLDN18.2は細胞間接着分子で、胃・食道胃接合部の腺癌の4割弱がCLDN18.2を高発現している。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)


オニバイドが直接比較試験で標準療法を若干上回る
(2023年1月20日発表)

イプセンは昨年11月にOnivyde(irinotecan liposome)の膵管腺癌一次治療試験の成功を公表したが、データをASCO GIで発表した。全生存期間が標準療法を有意に上回ったが、p値はボーダーライン近辺で、点推定値の差もそれほど大きくはない。適応拡大申請する考え。

Onivydeはトポイソメラーゼ阻害剤irinotecanのPEG化、リポソーム製剤。15~20年に米欧日で転移性膵腺腫の二次治療薬として承認された。今回のNAPOLI 3は、Onivydeを5-FU、leucovorin、及びoxaliplatinと併用するNalirifoxレジメンと、標準療法の一つであるnab-paclitaxelとgemcitabineのレジメンを比較した。主評価項目の全生存期間はハザードレシオ0.83、p=0.04、メジアン値は11.1ヶ月対9.2ヶ月で、一般的な要求水準であるハザードレシオ0.8、メジアン値の上乗せ2ヶ月をクリアしていない。副次的評価項目のPFS(無進行生存期間)はハザードレシオ0.69、メジアン値は7.4ヶ月と5.6ヶ月。

G3/4治療時発現有害事象は下痢や悪心、低カリウム血症の発生率が対照群より高く、貧血や好中球減少症が少なかった。

リンク: 同社のプレスリリース


テセントリク、HCCアジュバント試験が成功
(2023年1月19日発表)

ロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)をbevacizumabと併用で早期肝細胞腫の治癒的切除/焼灼術後アジュバントに用いた第3相、IMbrave050試験が成功した。早期肝細胞腫は手術が奏功しても7~8割が再発するという。本試験はリスク因子を持つ662人を組入れてTecentriq(1200mg)とAvastin(15mg/kg)を3週毎に、最大12ヶ月間、投与する効果を積極的監視群と比較した。主評価項目は無再発生存期間(独立評価)。データは未発表。

TecentriqとAvastinの併用は切除不能肝細胞腫の一次治療レジメンとして米日欧で承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


モデルナも高齢者向けRSVワクチンを承認申請へ
(2023年1月17日発表)

モデルナはmRNA-1345の第3相ConquerRSV試験で主目的を達成した。今年上期に承認申請する考え。今秋にはGSKやファイザーの抗原ワクチンとともに高齢者の接種が始まるのではないか。

同社のSpikevax(elasomeran等)と同様な、ウイルスのmRNAをリキッド・ナノパーティクルに封入したワクチンで、RSウイルスの融合前F糖蛋白を発現させ免疫を誘導する。今回の試験は60歳以上の被験者を第2相パートも含めて37000人組入れて、一回接種の効果を偽薬と比較した。主評価項目は、二つ以上の症状を伴うRSV関連下部気道疾患(RSV-LRTS)と、三つ以上の症状を伴うRSV-LRTS。前者は各群9人と55人が該当し、ワクチン効率は83.7%(95.88%信頼区間66.1-92.2)、後者は3人と17人でワクチン効率82.4%(96.36%信頼区間34.8-95.3)となり、高い予防効果が示された。

G3以上の有害事象発現率は4.0%対2.8%でそれほど増えなかった。

昨年10~11月に日欧米で承認申請が受理されたGSK3844766Aのワクチン効率は82.6%、12月に米国で承認申請が受理されたファイザーのPF-06928316は2症状以上のRSV-LRTSが66.7%、3症状以上は85.7%だった。点推定値は大小あるが信頼区間は重複しており、定義が異なる可能性もあるので、大差ないと考えたほうが良いだろう。米国の審査期限はGSKのワクチンが5月3日、ファイザーは5月とだけ公表されている。モデルナも順調なら秋までに承認されるのではないか。

リンク: モデルナのプレスリリース


ロンサーフ、ベバシズマブ併用大腸癌試験が成功
(2023年1月17日発表)

セルビエと大鵬薬品の米国子会社は、Lonsurf(trifluridine、tipiracil)の第3相SUNLIGHT試験の結果をASCO GI学会で発表した。最大2レジメンによる前治療に不応不耐の転移結腸直腸癌を欧米露ウクライナの医療施設で組入れて、bevacizumab併用群とLonsurfだけの群の全生存期間を比較したところ、ハザードレシオは0.61、メジアン値は10.8ヶ月対同7.5ヶ月と有意な延命効果が示された。適応拡大申請する予定。

Lonsurfは米国では結腸直腸癌や胃癌の三次治療薬として単剤投与することが承認されている。セルビエは北米、メキシコ、アジアを除く地域の販売権を持っている。

リンク: 両社のプレスリリース(BUSINESS WIRE)


HIV予防ワクチンはJNJも第3相フェール
(2023年1月18日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、Ad26.Mos4.HIVの第3相HIV感染予防試験がフェールしたと発表した。欧州米州の男性とセックスする男性やトランスジェンダー女性3800人を組入れて、一年間に4回接種する効果を検討したが、独立データ安全性監視委員会が中間解析で無益認定し、中止が決まった。

二種類のHIVの遺伝子の一部をアデノウイルス26型に組み込んだ『モザイク』ワクチンで、3回目と4回目はClade CとMosaic gp140のアルミアジュバント・ワクチンも接種した。

サブサハラ・アフリカの女性を組み入れた後期第2相試験もワクチン効率が25%、95%下限は-10.5とフェールしており、開発中止になりそうな状態だ。

ワクチンの開発はフェールが続いているが、ギリアドのTruvada(tenofovir DF, emtricitabine)が臨床試験で40~75%の予防効果を示し、多くの国で承認されているので、選択肢の一つになる。

リンク: JNJのプレスリリース

【承認審査・委員会】


リリーの抗アミロイド・ベータは承認されず
(2023年1月19日発表)

イーライリリーはLY3002813(donanemab)を早期アルツハイマー病用薬としてFDAに承認申請し、加速審査を受けていたが、審査完了通知を受領した。第2相試験で示されたアミロイド・ベータ削減作用に基づき加速承認を求めたが、12ヶ月以上投与した症例が100例未満であったため、安全性の挙証が不十分と判定された模様。今年第2四半期に第3相試験の結果が出る見込みなので、そのデータに基づき本承認を求めることになりそうだ。

抗アミロイド・ベータ抗体の実用化はエーザイ/バイオジェン連合が先行。先般、Leqembi(lecanemab-irmb)が米国で加速承認された。要約審査報告書によると、承認された10mg/kg二週毎投与の実績は1年以上が217例、6ヶ月以上が237例と、前者は命に係わらない病気の長期治療薬に関するICH(医薬品規制調和国際会議)基準の100例を上回っていたが、後者は300人に達していなかったが、要約審査報告書によると、アルツハイマー病は深刻な命に係わる疾患であり、また、1年基準を上回っていれば6ヶ月基準を満たしていなくても許容できる。

加速承認時点では第3相試験の成功が公表されていたことも考慮しなければならないが、アルツハイマー病が深刻な命に係わる疾患ならば12ヶ月100例というE1基準は適用されないのだから、今回の判定はダブルスタンダードの疑いがある(donanemabの1年投与実績があまりに少ないとか、ほかにも理由があるのかもしれないが)。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: LeqembiのFDA Summary Review(pdfファイル)

【承認】


百済神州のbtk阻害剤が適応拡大
(2023年1月19日発表)

FDAはBrukinsa(zanubrutinib)をCLL(慢性リンパ性白血病/SLL(小リンパ球性リンパ腫)の治療に用いる適応拡大を承認した。一次治療のSEQUOIA試験ではPFS(無進行生存期間、独立評価委員会ベース)がbendamustineとrituximabを併用した群を有意に上回った。難治再発患者のALPIN試験ではORR(客観的反応率)が88%となり、Imbruvica(ibrutinib)群の73%を若干上回った。有害事象は骨髄抑制や二次的腫瘍、心房細動・粗動など。

BeiGene(百済神州)のbtk阻害剤で米国ではマントル細胞腫やワルデンシュトレームマクログロブリン血症にも承認されている。

リンク: FDAのプレスリリース


her2阻害剤と抗her2抗体の併用が大腸癌の一部に承認
(2023年1月19日発表)

FDAはSeagen(Nasdaq:SGEN)のTukysa(tucatinib)の適応拡大を加速承認した。20~21年に米欧でher2阻害剤による治療歴を持つ切除不能/転移her2陽性乳癌に承認されたher2阻害剤で、今回は、切除不能/転移結腸直腸癌で5-FU、oxaliplatin、またはirinotecanベースのレジメンによる治療歴を持ち、RASが野生型である患者が適応になる。dMMR/MSI-H型は抗PD-1/PD-L1抗体歴も必要。臨床試験ではORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が38%、メジアン反応持続期間は12.4ヶ月だった。

リンク: FDAのプレスリリース





今週は以上です。

2023年1月14日

第1085回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 小児脳腫瘍薬の承認申請用試験が成功 
  • 経口インスリンの第3相がフェール 
  • 向精神薬をアルツハイマー性アジテーションに適応拡大申請 
  • レカネマブを欧州でも承認申請 
  • vamoroloneは標準審査に 
  • バイオマリンのA型血友病遺伝子治療の3年目データ 
  • 喘息発作治療用合剤が承認 


【新薬開発】


小児脳腫瘍薬の承認申請用試験が成功
(2023年1月8日発表)

Day One Biopharmaceuticals(Nasdaq:DAWN)はDAY101(tovorafenib)の第2相再発/進行性pLGG(小児低悪性度神経膠腫)試験が良好な結果になったと発表した。今年上期中に承認申請する考え。

このFIREFLY-1試験は生後6ヶ月以上の患者を組み入れてORR(客観的反応率、RANO基準に基づく盲検独立中央評価)を検討している。今回、解析対象となった69人はメジアン3治療歴を持ち、86%は承認されている薬がもう無い。結果は、確認完全反応3人、確認部分反応31人、未確認部分反応1人でORR64%となった。疾病安定化を含めると91%。

有害事象は毛髪変色、CPK上昇、貧血、疲労、ラッシュが多くの患者で発生した。

経口II型汎RAF阻害剤で、武田薬品のミレニアム・ファーマシューティカルズが2011年にSunesis Pharmaceuticals(現Viracta Therapeutics)からライセンス、Day Oneは19年に武田とSunesisから一部の希少疾患を除く権利を取得した。

リンク: Day Oneのプレスリリース


経口インスリンの第3相がフェール
(2023年1月12日発表)

Oramed Pharmaceuticals(Nasdaq:ORMP)はORMD-0801の最初の第3相二型糖尿病試験がフェールしたと発表した。二本目の結果を待たずにこの用途の開発中止を決めた(非アルコール性脂肪性肝炎の第2相が進行中)。

インスリンに賦形剤を付与して小腸での分解を回避し腸上皮通過を可能にした、インスリンの経口カプセル製剤。第3相は2~3種類の経口剤を服用しても管理不良な二型糖尿病710人を組入れて8mgを一日一回、または二回、投与する効果を偽薬と比較した。主評価項目の26週HbA1cも、副次的評価項目の空腹時血糖値も、有意な差がなかった。

後期第2相試験では0.8%程度の有意な治療効果が見られたが、異常値が出た二施設のデータを解析対象から除外している。時々聞く話ではあるが、治験施設の選定や監督がキチンとできていたのか、他の施設は大丈夫なのか、気にかかるところだ。第3相は当初計画では1~3種類の経口剤を服用しても管理不良の二型糖尿病を組入れる予定で、ClinicalTrials.govの記述もそうなっているが、いつの間にか2~3種類服用者に変更された様子である。盲検解除前なら問題ないが、事前の検討が十分だったのか、気にかかる。二本目は薬物療法を受けていない、またはmetforminだけの患者を対象としているので、もし単剤治療しか受けていない患者には期待できないと信じる根拠があるならば、結果を待たずに中止したのも理解できる。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


向精神薬をアルツハイマー性アジテーションに適応拡大申請
(2023年1月10日発表)

大塚製薬と共同開発パートナーのルンドベックはRexulti(brexpiprazole)をアルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの治療に用いる効能追加をFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は5月10日。諮問委員会に上程される見込み。向精神薬をアルツハイマー病に用いると死亡リスクが高まる可能性があるが、例外になりうるか、エビデンスは十分であるかが注目される。

非定型向精神薬のベストセラーAbilify(aripiprazole)の類薬で15~18年に米日欧で統合失調症などに承認された。今回の用途は3本の第3相が実施され、二本で主評価項目のCMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory)の改善が偽薬を有意に上回った。フェールした試験も副次的評価項目であるCGS-S(Clinical Global Impression-Severity Illness)のアジテーション評価が有意に改善した。

アルツハイマー病患者は怒りっぽくなることがあり、介護者などに危険を及ぼす場合は対策が必要になる。向精神薬がしばしば用いられるが、複数の薬の臨床試験で死亡率が上昇しため、正式に承認された薬はない。Rexultiの第3相では試験薬群も偽薬群も死亡率が1%未満だったとのことだが、臨床試験は選ばれた医療施設の選ばれた医師が厳選された患者を対象に実施するので、現実の医療では奏効率は低下し副作用は増加すると思うべきである。

リンク: 両社のプレスリリース(和文、pdf)


レカネマブを欧州でも承認申請
(2023年1月11日発表)

エーザイとバイオジェンは、抗アミロイド・ベータ抗体lecanemabをEUで早期アルツハイマー病に承認申請した。米国では先日、Leqembi名で加速承認されたところ。日本でも3月までに申請予定。米国の加速承認は脳内アミロイド量を削減する効果を検討した第2相試験に基づくものだが、承認審査中に第3相で症状スコアの悪化が偽薬群の7掛け程度で収まることが確認されたため、加速承認の直後に本承認切替申請され、次いでEU、次いで日本という順番になった。開発はエーザイが主導しているが、日本が最後になったのは当局の感触が良くないのか、それとも、単に日本の優先順位が低いのだろうか?

リンク: 両社のプレスリリース(和文)

【承認審査・委員会】


vamoroloneは標準審査に
(2023年1月9日発表)

スイスのSanthera Pharmaceuticals(SIX:SANN)と米国のReveraGen Biopharma(未上場)は昨年10月に米国でvamoroloneをデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として承認申請したが、優先審査の要望は受け入れられず、審査期限は10月26日となった。FDAは諮問委員会召集を考えていない。ローリング申請が認められた、unmet medical needsを標的とする薬なので順当なら優先審査指定されるだろうし、もし申請内容に大きな論点があるというなら諮問委員会に上程されるだろうから、奇妙な話だ。

欧州の施設で4~6歳の歩行可能な121人を組み入れた後期第2相試験で、6mg/kg/日群が起立テストや6分歩行テスト、10メートル走行歩行テストで偽薬比有意な改善を示した。prednisone群との比較は有意差がなかった模様。

vamoroloneは抗炎症作用を持つが体重や筋骨格系に影響しないステロイドの経口液製剤。SantheraはReveraGenからライセンスした。

リンク: 両社のプレスリリース(pdfファイル)


バイオマリンのA型血友病遺伝子治療の3年目データ
(2023年1月8日発表)

BioMarin Pharmaceutical(Nasdaq:BMRN)はRoctavian(valoctocogene roxaparvovec)の第3相重度A型血友病試験、GENEr8-1のフォロー・アップ・データを公表した。施行後3年目は治療を必要とする出血の年率発生率が平均1.0、メジアン値はゼロで、依然として高い出血防止効果を示した。解析対象数が若干異なるが、この試験のベースライン時点の数値は4.8、1年目は0.9、2年目は0.7だった。第VIII因子の予防的投与を受けている患者に投与した試験で継続投与が認められているが、3年経過時点では被験者の92%が打ち切った。

アデノ随伴ウイルス5型をベクターとして第VIII因子の遺伝子を肝臓で発現させる遺伝子療法。遺伝子療法は一回治療するだけで済む印象があるが、これまでのところ、長期的な持続性は承認後に確認する手筈になることが多い。Roctavianは上記試験の2年追跡データなどに基づき昨年8月にEUで条件付き承認された。米国は3月31日が審査期限だが、今回のデータを提出する予定なので、会社側は延期されると予想している。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認】


喘息発作治療用合剤が承認
(2023年1月11日発表)

FDAはアストラゼネカのAirsupra(albuterol、budesonide)を成人の喘息症患者のレスキュー・セラピーとして承認した。短期作用性ベータ2作用剤とコルチコステロイドのpMDI吸入用合剤で、発作時の気管支収縮を治療し、再発や増悪を抑制する目的で、各90mcgと80mcgの合剤を一度に二回ずつ吸入する。必要に応じて、24時間に最大12回まで吸入できる。他のベータ2作用剤配合剤と同様に、心血管疾患、不整脈、高血圧症の患者は副作用に注意する。

喘息症で増悪リスクの高い患者は長期作用性ベータ2作用剤やムスカリン受容体拮抗剤のような気管支拡張剤とコルチコステロイドを1~3剤吸入して予防する(維持療法)。増悪時は短期作用性ベータ2作用剤を吸入する(レスキュー・セラピー)のが一般的だが、今回初めて、気管支拡張作用は期待できないが発作の源となる炎症を抑制するコルチコステロイド合剤が承認された。第3相試験では維持療法だけではER入室/入院などのリスクを十分に管理できない患者に追加投与したところ、albuterolだけを追加した群と比べて増悪が27%少なかった。Airsupraの一日当たり吸入頻度は平均2.6回だった。

同社は4歳以上の患者に承認申請したが、臨床試験組入れ数が限定的であることや、幼小児にステロイドを投与するリスクなどから、諮問委員会でも17歳以下は反対が賛成を上回った。

13年にPearl Therapeuticsを買収して入手した開発品の一つ。同じ英国のAvillion社が米国での開発販売権を持っており、第3相も同社が主導した。アストラゼネカは米国商業化オプションを持っている。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アストラゼネカのプレスリリース





今週は以上です。

2023年1月7日

第1084回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 武田、超希少疾患用酵素補充療法の第3相が成功 
  • テロメラーゼ阻害剤の第3相が成功 
  • 中華経口レムデシビルの第3相が成功 
  • ロシュの抗CD20xCD3抗体も米国申請 
  • 伝染性軟属腫治療薬を承認申請 
  • UCB、第2のgMG用薬を承認申請 
  • アストラゼネカ、一回投与型RSV予防薬を米国でも承認申請 
  • C5阻害剤を地図状萎縮に承認申請 
  • PCAB阻害剤の米国発売がニトロソアミン問題でさらに遅延 
  • 抗アミロイド・ベータ抗体が早期アルツハイマー病に加速承認 


【新薬開発】


武田、超希少疾患用酵素補充療法の第3相が成功
(2023年1月5日発表)

武田薬品はTAK-755の第3相cTTP(先天的血栓性血小板減少性紫斑症)試験の中間解析で良好な結果を得たことを公表した。欧米などで承認申請する考え。

cTTPは米国の患者数が300~400人の超希少疾患。血小板を繋げて血栓を形成するvWFを切断する酵素であるADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)の遺伝子が欠乏・不十分であるためvWFが超高分子量重合体のまま残り、本来なら損傷・出血箇所だけであるべき血栓が微小血管で形成され、溶血性貧血や虚血性臓器障害、血小板が足りなくなる血小板減少症などをもたらす。標準治療は血漿療法。

TAK-755は遺伝子組換え型ADAMTS13。血液製剤大手のBaxterから15年にスピンアウトされたBaxaltを買収したシャイアを19年に買収して入手した。今回の第3相は12歳以上の患者を組み入れて、40IU/kgを2週毎点滴静注する効果を標準療法とオープン・レーベル、クロスオーバー方式で比較した。重要な疾患活動性マーカーである血小板減少症事象が標準療法比60%(95%信頼区間30~70%)少なかった。有害事象の発生率は8.9%で標準療法の47.7%より小さかった。

解析対象症例数は不明。ClinicalTrials.govによると、急性TTPを治療するコフォートと予防するコフォートが設定された模様だが、武田のプレスリリースでは言及されていない。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)


テロメラーゼ阻害剤の第3相が成功
(2023年1月4日発表)

テロメラーゼ阻害剤を開発しているGeron(Nasdaq:GERN)は、GRN163L(imetelstat)の第3相試験が成功したと発表した。MDS(骨髄異形成症候群)に伴う貧血を治療する試験で、4割の患者が輸血不要になった(偽薬群は15%)。欧米で23年央から承認申請を開始する予定。

テロメラーゼのRNAを標的とするオリゴヌクレオチドでMDSや骨髄線維症の第3相が進行中。今回の試験は低リスクのMDSで赤血球生成刺激剤による貧血治療に応答せず輸血に依存している患者178人を7.5mg/kgを4週毎投与する群と偽薬群に2対1割付けして輸血独立達成率を比較した。主評価項目は8週時点の上記数値。24週時点でも28%対3%で有意な差があった。予後因子や輸血必要量などに基づく各サブグループに有効だった。

G3/4有害事象は血小板減少症(発生率62%、偽薬群は8%)、好中球減少症(67%対3%)、貧血(19%対6%)など。貧血治療薬で貧血が増えるのは奇妙だが、輸血を我慢しすぎたのかもしれない。FDAが肝毒性を危惧して治験停止命令を出したこともある薬剤だが、本試験ではG3のALT上昇発生率は3.4%と偽薬群の5.1%と大差なかった。Hyの法則該当例はゼロとのことだが、FDAのガイダンスは慢性病用薬である場合は1000人に一人以下であることを確認するよう求めているので、低リスクMDSにも当てはまるかどうかは兎も角として、リスクがないと決めつけるのは時期尚早だろう。

リンク: 同社のプレスリリース


中華経口レムデシビルの第3相が成功
(2022年12月28日発表)

ギリアド・サイエンシズが開発したポリメラーゼ阻害剤Veklury(remdesivir)はCOVID-19治療薬として広く用いられている。静注用薬だが、中国で開発された経口重水素化塩の第3相試験の論文がNew England Journal of Medicine誌に刊行された。商業化の一翼を担うJunshi Biosciences(上海君実生物医薬、HKSE:1877)によると21年にウズベキスタンで承認されたとのことだが、中国などでの承認申請状況は不明。ギリアドの知財との関係性も不明。

このVV116(deuterated remdesivir hydrobromide)は中国の複数の大学における研究を礎にVigonvita Life SciencesがJunshiと共に臨床開発と商業化を進めているもの。第3相は今年4~5月のBA.1流行期に上海の7指定病院で軽中等症だが高リスクの患者を試験薬(初日は600mg、第2~5日は300mgを12時間おきに投与)とPaxlovid(nirmatrelvir、ritonavir)に無作為化割付けして非劣性仮説を評価者盲検方式で検討した。持続的臨床的回復のハザードレシオ(n=771)は1.17となり、95%下限は1.02で0.8超というハードルをクリアした。持続的臨床的回復のメジアン期間は各群4日と5日だった。

数値上はPaxlovidより若干良いが、回復した患者の比率は第5日時点でもそれ以降でも両群大差なかったようだ。また、オミクロン株流行下ではやむを得ないが、重症化した患者は両群ゼロだったため抑制効果は検討できなかった。グレード3/4の有害事象発生率は両群大差なかった。

留意点は、被験者の9割が軽症、ワクチン接種済みが75%、発症5日以内に投与した症例は77%と、ベンチマークであるPaxlovidの第3相試験の患者背景と一致していないこと。非劣性試験はA>P、C≒A、∴C>Pという三段論法の上に成り立っているので、患者の特性をできるだけ近づける必要があるはずだ。

また、中国の臨床試験はサブスタンダードなものが多いらしく、FDAは、中国でのエビデンスしかない抗癌剤の承認を相次いで見送っている。

それはそれとして、もし経口剤が実用化されれば入院していない患者には特に有益だろう。薬物相互作用リスクが小さいならそれも長所になるだろう。

リンク: Caoらの治験論文(NEJM)
リンク: Junshiのプレスリリース(Globe Newswire、12/29付)

【承認申請】


ロシュの抗CD20xCD3抗体も米国申請
(2023年1月6日発表)

ロシュはRG6026(glofitamab)を米国でも承認申請し受理された。審査期限は7月1日。CD20に結合するモノクローナル抗体可変領域とCD3に結合する可変領域を2対1の比率で固定領域と結合した二重特異性抗体で、成人の難治/再発大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療に用いることを想定している。EUでは昨春に承認申請しており、米国が遅れた理由は不明。

同社は同様な抗CD20xCD3抗体のLunsumio(mosunetuzumab-axgb)が昨年欧米で承認された。難治/再発濾胞性リンパ腫の3次治療薬で、進行が穏やかな血液癌は忍容性が上回るLunsumio、悪性度の高い血液癌はglofitamab、という棲み分けを図る考え。

抗CD20xCD3抗体はアッヴィもジェンマブからライセンスしたepcoritamabを難治/再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として欧米日で承認申請中。ジェンマブによると米国の審査期限は5月21日で、glofitamabの7月1日より1か月強早い。完全反応率はどちらも大差なさそうだ。

リンク: ロシュのプレスリリース


伝染性軟属腫治療薬を承認申請
(2023年1月6日発表)

米国ノース・キャロライナ州の新興製薬会社、Novan(Nasdaq:NOVN)は、SB206(berdazimer)を伝染性軟属腫治療薬として米国で承認申請した。一日一回塗布するファースト・イン・クラスのジェル製剤で、順調なら正式に承認された初めての治療薬となるが、会社側は優先審査を想定していないので、unmet medical needsではないのだろう。

生後6ヶ月以上の小児成人891人を組入れて12週間治療した第3相試験で、病変の完全解消率が32.4%と偽薬群の19.7%を有意に上回った。有害事象は注射箇所反応や紅斑など。治療関連深刻有害事象は発生せず、有害事象治験離脱率は4.1%だった(偽薬群は0.7%)。

このウイルス感染症は外科治療が一般的で、薬はimiquimodなどがオフレーベル使用されているようだ。

リンク: 同社のプレスリリース


UCB、第2のgMG用薬を承認申請
(2023年1月6日発表)

UCBはUCB7665(rozanolixizumab)を成人のAChR(アセチルコリン受容体)またはMuSK(筋特異的チロシン・キナーゼ)に対する自己抗体を持つ重症筋無力症(gMG)用薬として欧米で承認申請した。ヒトneonatal Fc受容体に結合する抗体医薬で、米欧日などで実施された第3相試験では43日間のMG-ADL総スコアの悪化が偽薬比2.6ポイント程度小さかった。治療時発現有害事象が82%の患者で見られた(偽薬群は67%)。

同社はC5を選択的に阻害する環状ペプチド、zilucoplanも昨年11~12月に欧米日で成人の抗AChR抗体を持つgMGに承認申請している。19年に第3相入りと前後して25億ドルで買収したRa Pharmaceuticalsの開発品で、第3相試験では12週間のMG-ADL総スコアの悪化が偽薬比2ポイント程度小さかった。治療時発現有害事象発生率は76.7%(偽薬群は70.5%)。二剤のデータを比較できるかどうかは不明。評価時期だけでなく、組み入れ条件も前者はベースライン時点のMG-ADLが3以上、後者は6以上と若干異なっている。

リンク: 同社のプレスリリース


アストラゼネカ、一回投与型RSV予防薬を米国でも承認申請
(2023年1月5日発表)

アストラゼネカはFDAがnirsevimabの承認申請を受理したと発表した。審査期限は今年第3四半期。欧州では昨年11月にBeyfortus名で承認された。サノフィが販売権を持っている。

子会社のMedImmuneが創製したRSV疾患予防用抗RSV-Fタンパク抗体Synagis(palivizumab)の後継品で、固定領域のアミノ酸を3個置換して半減期を平均2ヶ月程度に長期化したため、RSV流行シーズンに毎月ではなく、一回だけ筋注で足りる。適応範囲も広く、早産児や心臓疾患などを持つ乳幼児に限定されなさそうだ。

同社は最初のRSVシーズンを迎える新生児/幼児と二回目を迎える重症RSV疾患に脆弱な幼児(例:心臓疾患など)を目標適応としているが、EUは前者しか承認しなかったので、2年目はシナジスを使うことになる。米国の適応範囲がどうなるか注目される。

リンク: 同社のプレスリリース


C5阻害剤を地図状萎縮に承認申請
(2022年12月20日発表)

Iveric Bio(Nasdaq:ISEE)は22年11月にavacincaptad pegolのローリング承認申請に着手したが、12月に完了した。加齢性黄斑変性に伴う地図状萎縮の治療薬で、2mgを月一回、硝子体注射する。第3相試験では地図状萎縮の広がりを一本では偽薬比27%、もう一本では14%、抑制した。

07年にArchemixからライセンスしたRNAアプタマーで、C5がC5aとC5bに切断されるのを妨げる。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


PCAB阻害剤の米国発売がニトロソアミン問題でさらに遅延
(2023年1月3日発表)

Phathom Pharmaceuticals(Nasdaq:PHAT)はvonoprazan合剤の米国での発売や単剤のびらん性食道炎用薬としての承認が遅延すると発表した。22年5月にPCAB阻害剤と抗生剤を配合したピロリ菌除菌用製品Voqueznaとして米国で承認されたが、商業用バッチから微量のNVP(N-nitroso-vonoprazan)が検出されたため、発売予定が22年第2四半期から23年第1四半期に変更された。今回、合剤の発売がさらに遅れ、1月11日に審査期限を迎えるvonoprazan単剤の承認もFDAから遅れる旨の連絡を受けたことが公表された。製薬業界に激震を起こしているニトロソアミン及び関連物質は保管中に増加する現象が見られる。同社は、FDAと協議の上、有効期間中に許容摂取量である96ナノグラム/日を超えないことを確認することを決めた。発売はこの安定性試験が完了しFDAの審査を受けた後になりそうだ。

時期は不明。vonaprazanは日本では武田薬品がタケキャブとして販売しているが、有効期間は3年となっている。

リンク: Phathomのプレスリリース

【承認】


抗アミロイド・ベータ抗体が早期アルツハイマー病に加速承認
(2023年1月6日発表)

FDAは、エーザイが07年にスウェーデンのバイオアークティック・ニューロサイエンスからライセンスしてバイオジェンと共同開発した抗アミロイド・ベータ抗体、Leqembi(lecanemab-irmb)をアルツハイマー病用薬として承認した。MCI(軽度認知障害)または軽度アルツハイマー病で脳にアミロイド・ベータの蓄積が確認された患者に、10mg/kgを2週毎に1時間点滴静注する。アミロイド・ベータ蓄積を削減する作用を示した第2相試験に基づく加速承認で、臨床的便益は未確認だが、既に第3相の成功が発表されているので、順調なら1年以内に本承認されるだろう。

両社は21年にもやや異なった抗アミロイド・ベータ抗体Aduhelm(aducanumab-avwa)が米国でだけ加速承認された。Leqembiの違いは、第3相が成功したこととARIA(アミロイド関連画像異常)の発生率がやや低いこと。レーベル面の違いは、治療開始時点で早期段階の患者だけが適応と承認当初から明記されていること。

WAC(問屋取得価格)は体重75kgの患者で年26500ドルと、Aduhelmの引き下げ後の価格(74kgの患者で28200ドル)より少し安くなる模様。共同開発品は夫々の会社が十分なROE(自己資本利益率)を獲得しようとするため割高になりがちだが、普通に高価な薬に収まった。

日本の製薬会社は時々、面白いネーミングをする。第一三共のprasugrelはサノフィのプラビックスより優れるという期待を示したものと日本人なら推察できる。Leqembiは一般名を反映したようにも見えるが、報道によると、バイオアークティックの創業者の頭文字であるLとエーザイのe、そして、健康のq、エレガントのe、そして美(bi)を組み合わせたものでもあるという。

米国で普及するのはまだ先だろう。薬剤費300万円以上と診療費、MRI検査費用を全額自己負担できる人は少数なので、高齢者向け医療制度メディケアのカバレッジが必要であり、そのためには、第3相試験のデータを提出して本承認を取得するとともに、CDR-SBの18ヶ月間の低下が1.21点と偽薬群の1.66点より0.45点小さいという治療効果の意義を説得しなければならない(差はCDR-SBのノッチである0.5または1より小さい)。

メディケアがカバーしてくれれば自己負担はアンブレラ加入者は多くて一日数ドル、なくても14.5ドル程度で済む由だが、翻って、日本だと1割負担で月2~3万円、3割だと7~8万円、更に診察費や高価なMRI検査費用も上乗せされる。米国同様に、健康保険料も引き上げられるだろう。国民年金だけの人は生活費が残るかどうか分からない。

重要な有害事象は点滴関連反応とARIA。後者は多くの場合、MRI画像に異常が見られるだけで臨床症状を伴わないが、米国で広く報道されているように、臨床試験でLeqembiの投与を受けていた患者のうち3名が脳梗塞や脳内出血で死亡した。何れも抗血栓薬やtPAを用いており、報道によると、昨年、臨床試験のインフォームド・コンセントが改訂され、血栓予防薬を併用すると死に至ることもある脳出血のリスクが100人当たり1人以上、5人未満に高まる可能性があることが開示された。

今回、エーザイが発表した声明では、アルツハイマー病のリスク因子であるアポリポ蛋白のエプシロン4型を両親から継承したApoE4ホモ接合型患者は、臨床試験でLeqembiの投与を受けた10人中4人が症候性ARIAを発現し、うち2人は重度ARIAだった。当該試験の症候性ARIA発現例は5人なので、その8割がApoE4ホモ接合型だったことになる。可能なら投与前に検査したほうが良さそうだ。

尚、レーベルやプレスリリースに記載されている有害事象発現率は第2相試験のものであり、第3相のデータが収載された段階でARIA発生率などのデータが変わるだろう。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Prescribing Information(pdfファイル)
リンク: エーザイの声明(和文pdfファイルのリンクページ)






今週は以上です。