2026年4月25日

第1256回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • トランプ大統領、サイケデリックの開発を後押し 
  • FDA、サイケデリック3剤にCNPV供与 
  • 経口セマグルチドを小児T2Dに承認申請へ 
  • ユルトミリスをIgA腎症に適応拡大申請へ 
  • エンスプリングはMOGADに有効 
  • ノボ、経口鎌状赤血球症薬を承認申請へ 
  • アストラゼネカ、抗IL-33抗体の2週毎投与試験も成功 
  • ウェリレグの3剤併用腎細胞腫試験はフェール 
  • ガザイバを全身性エリテマトーデスに適応拡大申請 
  • 重症筋無力症のsiRNA薬を承認申請 
  • Praxis社、抗癲癇薬2剤を相次いで承認申請 
  • L型アミノ酸輸送体のPET造影剤を承認申請 
  • パドセブを筋層浸潤膀胱癌の周術期薬物療法に適応拡大申請 
  • Grace Therapeutics、一発承認ならず 
  • CHMP、4月の会議報告 
  • 重度難聴の遺伝子療法薬が承認 
  • Ala-Ala、1歳も使えるようになった 
  • MSD、HIV感染症の新規配合錠が承認 
  • モデルナ、欧州でインフルエンザ・COVID-19混合ワクチンが承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


トランプ大統領、サイケデリックの開発を後押し
(2026年4月18日発表)

トランプ米国大統領はサイケデリックに関する執行命令を下した。既存の治療薬に十分応答しない、深刻な精神疾患に有効な薬の実用化を後押しする。具体的には、

  • FDAは、ブレークスルー・セラピー指定を受けた適切なサイケデリック薬のうち、基準を満たす開発品にCNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)を供与し、承認審査をスピードアップする。
  • FDAは、Right to Try法(深刻な難病患者が通常の臨床試験の枠外で未承認の薬による治療を受けることを認める法律)などに則り、条件を満たす患者がibogaineなどのサイケデリック薬を承認前に利用するプロセスを確立し施行する。
  • HHS(米国連邦保健福祉省)は、サイケデリック薬を合法化または開発推進している州政府を支援・協働するために既存の財源から5000万ドル以上拠出する。
  • HHSやFDAは退役軍人省と協働する(従軍中/後に精神疾患を発症した患者のケアを強化する意図)
  • 司法長官は、条件を満たした場合に、麻薬取締法スケジュール1指定の見直しを可能な限り速やかに実施する。

  • サイケデリックは5-HT2A受容体作動を通じて精神状態に影響する物質で、LSDやMDMAなどが様々な形で用いられている。米国では、好ましくない作用を持ち便益が確立していない物質として、麻薬取締法の中で規制が最も厳しいスケジュール1指定されている。今回の執行命令は、薬効や安全性のハードルを引き下げる意図は感じられない。

    近年の失敗例はLykos Therapeutics(旧称MAPS PBC)。23年にMDMA(midomafetamine)をPTSD(トラウマ後ストレス離障害)の精神療法補助剤として承認申請したが、臨床試験の実施方法や安全性確認が不十分と見なされ、審査完了通知を受領した。同社以外にも複数の新興企業が臨床開発を進めており、1~2年後に第1号が承認されるかもしれない。

    リンク: トランプ大統領の大統領執行命令


    FDA、サイケデリック3剤にCNPV供与
    (2026年4月24日発表)

    上記執行命令を受けて、FDAはサイケデリックを医療用に開発している3社にCNPVを供与したことなどを発表した。社名等は記されていないが、メディアの取材などにより下記と判明している。

  • 英国のCompass Pathways(Nasdaq:CMPS)のCOMP360(psilocybin)。治療抵抗性鬱病の第3相が2本成功し、第4四半期に承認申請する計画。企業側プレス・リリースによるとローリング承認申請が認められた。
  • 米国の非営利医療研究組織、Usona InstituteのPSIL201(psilocybin)。大鬱病の患者を治療抵抗性に限定せず組入れた第3相uAspire試験中。ClinicalTrials.govによると今年1月に結果判明の見込みだが、ホームページを見ても関連ニュースは出ていない。
  • Transcend TherapeuticsのTSND-201(methylone)。3月にPTSDで第3相を開始するとともに、大塚ホールディングスによる買収に合意した。

  • ホワイトハウス発表文でも言及されているibogaineに関しては、DemeRx NBのDMX-1001(noribogaine)のアルコール使用障害における臨床試験を認可した。DemeRx側は数日前に公表済み。活性成分はibogaineの長期作用性代謝物で、幻覚性や依存性がない由。ibogaineの過去の臨床研究では突然死などの懸念が見られたようだが、こちらはどうなのだろうか?

    リンク: FDAのプレス・リリース


    【新薬開発】


    経口セマグルチドを小児T2Dに承認申請へ
    (2026年4月23日発表)

    ノボ ノルディスクは10~17歳の二型糖尿病におけるsemaglutide錠の血糖管理効果を評価した前期第3相試験、Pioneer Teensがポジティブな結果になったと発表した。今年下期に欧米で対象年齢拡大申請する考え。このGLP-1作用剤は皮下注用がOzempicやWegovyの製品名で二型糖尿病や肥満症などに承認されている。経口剤も二型糖尿病薬Rybelsusが19~20年に米欧日で、肥満症用薬Ozempic錠が25年12月に米国で、二型糖尿病用新製剤Ozempic錠が26年2月に米国で、成人患者向けに承認されている。

    今回の試験では3mg、7mg、14mgを偽薬と比較したとのことなのでRybelsusを用いたと推測されるが、成人用と同様に、Ozempic錠(1.5mg、4mg、9mgが相当)の承認も求めるのだろう。

    リンク: プレス・リリース


    ユルトミリスをIgA腎症に適応拡大申請へ
    (2026年4月21日発表)

    アストラゼネカは、長期作用性C5補体阻害剤Ultomiris(ravulizumab-cwvz)が第3相I CAN試験で主目的を達成した。高リスクIgA腎症を対象に腎機能悪化を遅らせる効果を検討したところ、共同主評価項目の一つである34週24時間UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が偽薬比有意に下回った。近年承認されたIgA腎症用薬と同様に、このデータで加速承認を取得し、共同主評価項目の106週eGFR(推算糸球体濾過量)で本承認切替を狙う考えのようだ。

    Ultomirisは米欧日などで発作性夜間ヘモグロビン尿症などの治療薬として承認されている。

    リンク: プレス・リリース


    エンスプリングはMOGADに有効
    (2026年4月21日発表)

    ロシュはEnspryng(satralizumab-mwge)が第3相MOGAD(抗ミエリン・オリゴデンドロサイト糖蛋白抗体関連障害)試験で主目的などを達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。

    グループの中外製薬が創製した、抗IL-6受容体リサイクリング抗体。20~21年に日米欧でAQP4-IgG抗体陽性のNMOSD(視神経脊髄エンスクトラム障害)の治療薬として承認された。MOGADは中枢神経系組織のミエリン・オリゴデンドロサイト糖蛋白が自己抗体に攻撃され、視神経、骨髄、脳などで予測不能な発作的症状が表れる。脳脊髄液でIL-6の増加が見られるようだ。今回、AAN(米国神経学会)で結果発表されたMETEOROID試験は12歳以上の患者を組入れて、体重に応じて60~180mgを最初の3回は2週毎、その後は4週毎に皮下注したところ、再燃が偽薬群比68%少なかった(p=0.0025)。試験薬群の87%は48週間に一度も再燃しなかった(偽薬群は67%)。主な有害事象は注射箇所反応、インフルエンザ、関節痛など。

    Enspryngは甲状腺眼症でも第3相試験の一本で突出減少奏効率が53%と偽薬群の23%を有意に上回り、もう一本も49%対31%と、p=0.0715だが数値上は上回った。被験者の2割強が解析対象から外れているのでintent to treatでは低くなるかもしれないが、いずれにせよ、この用途でも適応拡大申請するのだろうか?

    リンク: プレス・リリース


    ノボ、経口鎌状赤血球症薬を承認申請へ
    (2026年4月20日発表)

    ノボ ノルディスクはetavopivatが第3相Hibiscus試験で主目的を達成したと発表した。承認申請する考え。22年にForma Therapeutics(Nasdaq:FMTX)を10億ドル超で買収して入手した、PKR(赤血球ピルビン酸キナーゼ)のアロステリック・アクティベイタで、鎌状赤血球症で生成されるヘモグロビンSの重合化を抑制するなどの作用を持つ。今回、12歳以上の385人を偽薬群と400mg一日一回経口投与群に無作為化割付けして52週間追跡したところ、52週VOC(血管閉塞クリーゼ)が偽薬比27%低下した。time to the first event分析もメジアン38.4週対20.9週と、より長く抑制した。

    リンク: プレス・リリース


    アストラゼネカ、抗IL-33抗体の2週毎投与試験も成功
    (2026年4月20日発表)

    アストラゼネカは抗IL-33抗体MEDI3506(tozorakimab)が第3相MIRANDA試験で主目的などを達成したと発表した。先に成功した2本は300mgを4週毎皮下注したが、本試験は同用量を2週毎皮下注しており、データが公表された段階で効果や忍容性がどう変わるのか、チェックすることになる。

    この3本は、10箱年以上の喫煙歴を持つ症候性COPDで吸入薬を2剤以上服用しても中度以上の増悪が起きる患者を組入れて、1年間の中重度増悪リスクを偽薬と比較した。主評価項目は禁煙しているサブグループだけが対象だが、現在の喫煙者も含む全体の解析も統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を見たとのこと。

    リンク: プレス・リリース


    ウェリレグの3剤併用腎細胞腫試験はフェール
    (2026年4月21日発表)

    MSDとエーザイは第3相LITESPARK-012試験が中間解析でフェールしたと発表した。腎細胞腫の再発治療や切除後アジュバント療法に有効な薬が一次治療に無効というのは意外だが、限界効用逓減則が当て嵌まったのか、もしかしたら忍容性が悪化したのかもしれない。

    この日本も参加した進行腎細胞腫1次治療試験は、653人の患者を3群に無作為化割付けして、MSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)とエーザイがMSDと共同開発販売しているVEGF阻害剤Lenvima(lenvatinib)の併用(21~22年に米欧日で承認)を対照群として、HIF-2アルファ阻害剤Welireg(belzutifan)と3剤併用する群と、新規抗CTLA-4抗体MK-1308(quavonlimab)と3剤併用する群(実際はpembrolizumabとの合剤であるMK-1308AをLenvimaと併用)のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間を検討した。

    主評価項目が二つあり群間比較も2種類あるので検出力が高く設定されているのだろうが、中間解析で全生存期間もフェールするというのは案外だ。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    ガザイバを全身性エリテマトーデスに適応拡大申請
    (2026年4月21日発表)

    ロシュは米国で抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab)を成人の活性期全身性エリテマトーデスに適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限等は不明。EUでも申請済みとのこと。

    303人を組入れた第3相ALLEGORY標準療法アドオン試験で、52週SLI-4達成率(SELENA SLEDAIスコアが4点以上改善など)が76.7%と偽薬群の53.5%を有意に上回った。深刻有害事象の発生率は各群15.9%と11.9%だった。

    リンク: プレス・リリース


    重症筋無力症のsiRNA薬を承認申請
    (2026年4月21日発表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、AAN(米国神経学会)やLancetでの治験成績発表に合わせて、26年に第1四半期に米国でcemdisiranを重症筋無力症(gMG)の治療薬として承認申請していたことを明らかにした。年内に他の地域でも申請する考え。

    成人の抗AChR抗体陽性gMG患者に600mgを12週毎皮下注した第3相NIMBLE試験で、24週MG-ADL総スコアが偽薬比2.3点低下した。200mgを米国でCHAPLE症候群用薬として承認されているVeopoz(pozelimab-bbfg)200mgと4週毎皮下注した群も同1.74点低下したが、申請されたのは単剤のみのようだ。

    深刻な治療連関有害事象の発生率は単剤群が3%、偽薬群14%、併用群は9%。筋無力症悪化という有害事象の発生率が各群1%、17%、5%となっており、便益の裏返しみたいになってしまっている。

    cemdisiranは、Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)からライセンスした、補体C5を標的とするsiRNA薬。19年に開始された両社の広範な研究開発提携の成果で、第2相で良好な結果を出したが、Regeneronは提携を離脱、Alnylamも開発を停止、と紆余曲折の末、24年になってRegeneronが単独開発を決めた経緯がある。

    リンク: プレス・リリース


    Praxis社、抗癲癇薬2剤を相次いで承認申請
    (2026年3月30日発表、4月14日発表)

    Praxis Precision Medicines(Nasdaq:PRAX)は今年3月に続いて4月にも別の抗癲癇薬を承認申請しFDAに受理されたと発表した。見落としていたため3月受理分から記すと、PRAX-562(relutrigine)は持続性ナトリウム電流優先的阻害剤の経口液。SCN2A/SCN8A変異型DEE(発達性及び癲癇性脳症)に用いる。2歳以上の患者を組入れたEMBOLD試験の承認申請用コフォート(76人)で16週てんかん頻度が偽薬比53%低下した(p<0.0002)。2変異型どちらにも整合的な結果が出た。優先審査を受け、審査期限は26年9月27日。

    SCN2AとSCN8Aは電位依存性Naチャネルの各NaV1.2とNav1.6をコードする遺伝子。米国の推定患者数5000人という希少遺伝子性疾患で、小児用薬バウチャを受領する可能性があるようだ。同社はそれ以外の変異型患者も組入れたEMERALD試験を実施中で、今年下期に開票する見込み。成功なら市場規模が年5億ドルから20億ドルに拡大と期待している。

    リンク: プレス・リリース(relutrigine、26年3月30日)

    PRAX-944(ulixacaltamide HCL)は成人の本態性振戦の治療薬として承認申請され、審査期限は27年1月29日。T型カルシウム・チャネル・ブロッカーで、CTC(小脳-視床-皮質)回路における異常な神経発火を阻害することで振戦発作を予防する。米国で実施された第3相Essential 3試験の偽薬対照治療試験部分で60mg(20mgから漸増)一日一回経口投与群の12週mADL11がベースライン比4.3低下(改善)と偽薬群の1.7低下を有意に上回り、リード・イン期に試験薬を全員に投与し応答者を無作為化割付けした離脱試験部分で4週応答維持率が55%と偽薬にスイッチした群の33%を上回った(p=0.037)。薬品関連治療時発現有害事象による離脱率は治療試験の試験薬群が27.0%、偽薬群は1.7%、離脱試験のリード・イン期は28.1%だった。

    リンク: プレス・リリース(ulixacaltamide、26年4月14日)


    L型アミノ酸輸送体のPET造影剤を承認申請
    (2026年4月10日発表)

    オーストラリアのTelix(ASX:TLX)は米国でPixclara(foretyrosine F 18)を再承認申請し受理されたと発表した。審査期限は26年9月11日。

    神経膠芽腫の診断や治療効果を特定するためにL型アミノ酸輸送体LAT1とLAT2をPET造影するもの。米国で承認されている類薬はないとのこと。同社は24年に承認申請したが追加的薬効確認試験を求められた模様だ。1年足らずの期間に完了したのかどうかは明らかではない。

    リンク: プレス・リリース


    パドセブを筋層浸潤膀胱癌の周術期薬物療法に適応拡大申請
    (2026年4月20日発表)

    アステラス製薬とファイザーは、米国でPadcev(enfortumab vedotin-ejfv)を筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の術前術後療法に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年8月17日。日本も参加した第3相EV-304試験(MSD側ではKeyNote-B15試験)で治癒的膀胱全摘・骨盤リンパ節郭清術を受ける白金薬が適応になる患者にKeytrudaと併用したところ、2年EFS(無イベント生存率)が79.4%と、gemcitabineとcisplatinの術前投与だけ施行した群の66.2%を上回り、ハザード・レシオは0.53だった。副次的評価項目の全生存期間のハザード・レシオも0.65、有意だった。G3以上の有害事象発生率は各群75.7%と67.2%。

    このTPOにおけるPadcevとKeytrudaの併用は白金薬不適/拒否の患者を組入れた試験も成功、米国では昨年11月に承認され、日本でも今年1月に一変申請されている。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    Grace Therapeutics、一発承認ならず
    (2026年4月23日発表)

    Grace Therapeutics(Nasdaq:GRCE)はGTx-104(nimodipine新製剤)をaSAH(脳動脈瘤によるくも膜下出血)の治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。浸出物、前臨床毒性評価、製造委託会社における製造問題などの指摘事項があった模様。追加的臨床情報は要求されなかった由。会社側は対処可能と記しているが、株価はほぼ半減した。

    GTx-104はカルシウム・ブロッカーnimodipineをナノパーティクル化することで点滴静注できるようにしたもの。100人余を組入れた第3相経口nimodipine対照試験で薬物関連低血圧が有意に少なく、転帰(90日mRS)も上回った。aSAHによる死亡例が5人対2人と多かったことが気になるが、治療関連ではないとのことだ。

    リンク: プレス・リリース


    CHMP、4月の会議報告
    (2026年4月24日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

    リンク: EMAプレス・リリース

    サノフィのCenrifki(tolebrutinib)はブルトン型チロシン・キナーゼ阻害剤。血液癌ではなく、成人の、過去2年間に再発を伴わなかった、二次性進行型多発硬化症に用いる。第3相試験で症状が進行するハザード・レシオが0.69と有意に低かった。最も厄介な副作用は薬物誘導性肝障害。尚、再発寛解型多発硬化症の第3相二本はフェールした。米国でも承認申請されたがこの2点が主因で審査完了通知を受領した。

    ノバルティスのItvisma(onasemnogene abeparvovec-brve) は、脊髄性筋萎縮症(SMA)の点滴静注用AAV遺伝子療法薬であるZolgensmaを髄腔内投与用に仕立てた新製剤。2歳以上のSMN1遺伝子に両アレル変異を持つ5q MSAに用いる。米国では25年11月に承認、日本でもゾルゲンスマ髄注として4月に承認されたところ。

    Arrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)のRedemplo(plozasiran)はapolipoprotein C-IIIを沈黙させるsiRNA薬。成人の家族性カイロミクロン血症候群におけるトリグリセライド値の抑制に用いる。米国では昨年11月に承認。

    適応拡大が支持されたのは、まず、アッヴィの経口CGRP受容体拮抗剤、Aquipta(atogepant)。片頭痛予防薬としては21~26年に米欧日で承認されているが、今回、片頭痛の急性期治療に用いることが支持された。日本でも申請中。

    大塚製薬のInaqovi(decitabine、cedazuridine;米国名はInqovi)はDNAメチル化阻害薬とその代謝を抑制する薬を合剤にすることで前者を経口投与できるようにしたもの。未治療の急性骨髄性白血病で標準的な寛解導入療法に適さない成人患者に、既承認の単剤投与に加えて、venetoclaxと併用することが支持された。米国では審査期限が5月25日に延期された。

    BMSのOpdivo(nivolumab)は12歳以上の未治療ステージIII/IV古典的ホジキンリンパ腫にAVDレジメン(doxorubicin、vinblastine、dacarbazine併用)と併用することが支持された。SWOG 1826試験でPFS(無進行生存期間)が、OpdivoではなくファイザーのAdcetris(brentuximab vedotin)を併用した群を有意に上回った。米国では3月に承認。

    CSL BehringのPrivigen(人免疫グロブリン)は、はしかの曝露前/後予防に用いることが支持された。ワクチン禁忌/不適な患者に、ガイドラインなどを参考にした上で、適否を決定する。

    アッヴィのVenclyxto(venetoclax;米名Venclexta)は成人の未治療慢性リンパ性白血病に、既承認のobinutuzumab併用に加えて、Imbruvica(ibrutinib)併用やアストラゼネカのCalquence(acalabrutinib)併用(更にobinutuzumab追加可)が支持された。後者は第3相AMPLOFY試験がエビデンスと推測され、米国でも申請中。Imbruvica併用のエビデンスは当方は把握できていない。

    一方、CHMPが否定的で申請撤回となったのは、まず、Soleno Therapeutics(Nasdaq:SLNO)のdiazoxide choline延長放出性新製剤。米国ではプラダー・ウィリ症候群における過食の治療薬Vykat XRとして25年に承認されたが、CHMPはエビデンスの頑強性やニトロスアミン不純物などから懐疑的で、4月に同社の買収を決めたNeurocrine Biosciencesの意向を受けて、撤回を決めた。

    ノバルティスは放射性医薬品Pluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)を無症状/軽度症状のPSMA陽性転移去勢抵抗性前立腺癌でアンドロゲン受容体経路阻害剤後に悪化したが未だ化学療法の候補にはならない、プリキモに適応拡大申請し、米国では25年3月に承認されたが、EUは撤回となった。別のアンドロゲン受容体経路阻害剤にスイッチする群と比較した第3相PSMAfore試験でPFSハザード・レシオが0.41となったが、CHMPは、対照群が妥当ではないことや延命効果が確認されていないことなどから否定的に見ていた。

    何とも言い難いのがBMSのOpdualag(relatlimab、nivolumab)。切除不能/転移悪性黒色腫の一次治療nivolimab対照試験に基づき22年に米欧で承認されたが、主評価項目であるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザード・レシオが0.75、メジアン値は10.1ヶ月対4.6ヶ月と良好だったものの、4割強を占めたPD-L1陽性(≧1%)サブグループでは大差なかったため、EUはPD-L1陰性の患者に限定している。BMSは限定解除を申請したようだが、CHMPは認めず、それでも、データ収載は認めることを決めた。3年追跡後の描写的解析に関する治験論文が刊行されているが、PD-L1陽性サブグループにおけるPFSのハザード・レシオは0.98だったものの、全生存期間は0.78と、陰性サブグループの0.83と大差なく、難解だ。

    【承認】


    重度難聴の遺伝子療法薬が承認
    (2026年4月23日発表)

    FDAは、Regeneron Parmaceuticals(Nasdaq:REGN)のOtarmeni(lunsotogene parvec-cwha、これまでDB-OTOと呼ばれていた)を小児と成人のOTOF遺伝子両アレル変異を伴う重度聴力喪失(90dB HL超)用薬として加速承認した。CNPV(FDA委員長国家的優先バウチャ)案件で、承認申請受理から61日で光速承認した。同社は米国患者に無償提供する。

    外有毛細胞機能が保持され、蝸牛インプラント未設置の患者に、7.2x10^12vgを蝸牛内点滴投与する。CHORD試験で生後10ヶ月から16歳の20人に投与したところ、16人で24週時点の聴力が改善した(PTA検査値70dB HL以下)。このうち、48週経過した患者全てが応答を維持しており、12人中5人は正常域(25dB HL以下)に到達した。有害事象は中耳炎、悪心嘔吐、眩暈など。市販後コミットメントとして、この試験で効果の持続性や、言語発達やQOL改善効果を追跡調査する

    OTOF関連難聴は米国の新生児のうち年50人程度の超希少疾患。内耳の有毛細胞の蝸牛で変換された電気信号を聴神経に伝達する上で重要な役割を果たす、otoferlin蛋白の遺伝子に機能喪失・低下変異がある。Otarmeniはotoferlinをコードする遺伝子とそれを有毛細胞特異的に発現させるMyo15プロモータをアデノ随伴ウイルス・ベクターで導入するもの。Decibel Therapeuticsとの共同研究が成功し、同社を買収して入手した。

    同社は、Otarmeni承認と合わせて、トランプ米国大統領が一部の製薬会社に求めたディールに応える意向を表明した。米国における薬価を主要海外市場の水準を意識して決定すること、コレステロール治療薬Praluent(alirocumab)をTrumpRx.govで販売すること、米国内で研究開発施設や製造施設に大きな投資を行うことなどだ。薬価引き下げ命令や3年間の特別課税が免除されることになる。

    リンク: FDAのプレス・リリース
    リンク: Regeneronのプレス・リリース(Otarmeni承認)
    リンク: 同(薬価抑制策)


    Ala-Ala、1歳も使えるようになった
    (2026年4月22日発表)

    サノフィはFDAがTzield(teplizumab-mzwv、別称Ala-Ala)の対象年齢拡大を承認したと発表した。22年に8歳以上のステージ2一型糖尿病(高血糖ではないが高目で膵島細胞自己抗体を持ち、二型糖尿病とは考えられない)患者がステージ3(症候性)に進展するリスクを抑制する薬として承認されたが、薬物動態や安全性の試験に基づき、1~7歳にも使えるようになった。

    23年にProvention Bioを買収して入手した、CD3エプシロン鎖に結合する抗体医薬。昨年10月には8歳以上の最近診断されたステージ3一型糖尿病という適応拡大申請が受理され、CNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)も受領した。こちらはベータ細胞の機能を示すサロゲート・マーカーである負荷後Cペプチド濃度というサロゲート・マーカーに基づくもので、78週の数値が偽薬を有意に上回った。

    リンク: プレス・リリース


    MSD、HIV感染症の新規配合錠が承認
    (2026年4月21日発表)

    MSDはFDAがIdvynso(doravirine、islatravir:和名はイドビンソ配合錠)を承認したと発表した。成人のHIV-1感染症で、抗レトロウイルス療法によりウイルスRNA量を50コピー/mL未満に抑制できている、ウイルス学的治療フェール歴を持たず、doravirine抵抗性置換を持たない患者がスイッチできる。CYP3A強誘導剤などとの併用は禁忌。日本では3月に承認された。

    doravirineは非ヌクレオシド系逆転写阻害剤で、18~20年にPifeltro/ピフェルトロ名で米欧日で承認された。islatravirはヌクレオシド系逆転写酵素トランスロケーション阻害剤と呼ばれ、ウイルスのDNA鎖に組み込まれて伸長を妨げる。大類洋博士らがヤマサ醤油や最初の抗HIV薬を発見した満屋裕明博士との共同研究を通じて特定した。Idvynsoは0.25mg含有だが、高量を投与した試験で一部の患者にリンパ球減少症が発生したため用量を減らして改めて第3相試験を実施した経緯がある。

    スイッチ試験ではウイルス抑制維持率がスイッチせず従来の薬を使い続けた群と非劣性だった。治療が成功しているならば敢えてスイッチするニーズは小さいだろうから、初めて治療を受けるナイーブ患者向けが重要な市場になりそうだ。昨年11月に一次治療Bictarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide)対照試験で非劣性解析が成功したので、適応拡大申請されるのではないか。

    リンク: プレス・リリース


    モデルナ、欧州でインフルエンザ・COVID-19混合ワクチンが承認
    (2026年4月21日発表)

    モデルナは欧州委員会がmCOMBRIAXを承認したと発表した。25年に米日欧で承認された新規COVID-19予防用ワクチン、mNEXSPIKEと、新開発の季節性インフルエンザmRNAワクチン、mRNA-1083を配合した2価混合ワクチンで、50歳以上が対象。臨床試験で、インフルエンザ・ワクチンのFluzone HDまたはFluarixを同社のもう一つのCOVID-19ワクチンであるSpikevaxと同時接種した群と比べて、免疫原性が非劣性だった。

    米国でも同時期に申請されたが、なぜか、受理されず、FDAと相談の末、50~64歳と65歳以上に分けて承認申請することになった。審査期限は26年8月5日なのでシーズンには間に合いそうだ。カナダやオーストラリアでも承認申請中。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
    26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
    26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
    26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
    26/6/5ArvinasのARV-471(vepdegestrant、ER1陽性乳癌)
    26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
    26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
    26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
    26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
    26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
    26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
    諮問委員会
    26/4/30腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)
    注:サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)は7月23日に延期された。

    今週は以上です。

    2026年4月18日

    第1255回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • MeiraGTx、網膜色素変性症の遺伝子療法を日米欧で承認申請へ 
    • リリーの経口GLP-1受容体アゴニスト、二型糖尿病安全性試験が無事完了 
    • リリー、ジャイパーカの3剤併用試験が成功 
    • 抗CSF-1R抗体のTGCT試験が成功 
    • CNPV案件の第3相膵管腺腫試験が成功 
    • PKC阻害剤のブドウ膜黒色腫試験が成功 
    • BioNTech、中華ADCを承認申請へ 
    • 第一三共、B7-H3標的ADCの承認申請が受理 
    • 3月のEU承認申請
    • 初の巣状分節性糸球体硬化症用薬が承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    MeiraGTx、網膜色素変性症の遺伝子療法を日米欧で承認申請へ
    (2026年4月16日発表)

    MeiraGTx(Nasdaq:MGTX)はX連鎖性網膜色素変性症(XLRP)の遺伝子療法薬、AAV5-hRKp.RPGR(botaretigene sparoparvovec)の関連資産をジョンソン エンド ジョンソンから買戻したことを発表した。Janssen Pharmaceuticalsが実施した第3相LUMEOS試験は昨年5月にフェールしたが、一部の評価項目で良好な成果を挙げたことなどから、患者支援財団のFFB(Foundation Fighting Blindness)やLUMEOS試験の研究員が連名で承認申請するよう声明を出していた。

    XLRPは、主としてRPGR(retinitis pigmentosa GTPase regulator)遺伝子の変異により光受容体の機能不全を生じ、視力が低下する。欧米の推定患者数は2万人超。本剤はRPGRの遺伝子をアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして患者に導入する。LUMEOS試験で95人を中量群、低量群、対照群(対照期間終了後に試験薬にクロスオーバー可)に無作為化割付けして、52週後のVMA(視認に基づく移動性の評価:低輝度迷路でテスト)を比較した。フェールしたが、改善傾向は見られた模様だ。

    FFBが25年に主催した学会の主要発表に関するプレス・リリースや、上記開発要請リリースによると、試験薬群の45%でLLVA(低輝度視力)が10字(2行)以上改善した。対照群は7%だった。試験薬群は15字以上改善も20%が達成した。更に、40%が2種類以上の評価項目で改善を示した。

    XLRP用薬は25年7月に米国テキサス州のNanoscope Therapeuticsが光受容体蛋白であるオプシンを導入する遺伝子療法薬、MCO-010(sonpiretigene isteparvovec)のローリング承認申請に着手した。約30人の後期第2相RESTORE試験で52週BCVA(最高矯正視力)が偽薬比有意に改善した。26年初めに申請を完了する見込みだったが、今のところ、完了したという発表はしていない。

    リンク: MeiraGTxのプレス・リリース
    リンク: Foundation Fighting BlindnessなどによるRetinal Therapy Innovation Summit報告(25年6月4日付、SESSION 5に関連記述)
    リンク: 同財団とLUMEOS研究員による承認申請要請


    【新薬開発】


    リリーの経口GLP-1受容体アゴニスト、二型糖尿病安全性試験が無事完了
    (2026年4月16日発表)

    イーライリリーはFoundayo(orforglipron)が第3相ACHIEVE-4試験で良好な成績を上げたと発表した。予定通り、米国で二型糖尿病に適応拡大申請する考え。

    中外製薬からライセンスした非ペプチド型経口GLP-1受容体作動薬。今月、肥満症や体重関連医療問題を伴うオーバーウェイト(OW)の成人の体重管理薬として米国で承認されたところ。今回の試験は肥満または高リスクOWの二型糖尿病成人2700人超を組入れて心血管安全性をinsulin glargine(サノフィのLantusなど)と比較した。主評価項目であるMACE-4(心血管死、心臓発作、卒中、または非安定性突発性胸痛による入院)はハザード・レシオが0.84(95%信頼区間0.59-1.20)となり、95%上限が1.8(!)を上回らなかったため、非劣性解析が成功した。

    3点MACEもハザード・レシオ0.77(同0.52-1.13)と良好。52週A1cは各群1.6%と1.0%低下し、有意な差があった(efficacy estimandベース。ベースライン値は8.22%)。アルファは配分されていないが事前に設定されていた全生存期間の解析も、ハザード・レシオ0.43(同0.25-0.75)、名目p=0.002と好ましい結果になった。

    試験薬群の当初52週間における有害事象による投与中止率は10.6%だった。重点監視項目である薬物誘導性肝障害のシグナルは見られたかった。

    同社は本剤に関してCNPV(委員長国家的優先バウチャ)を受領しており、初承認時の審査期間は50日だった。同社は二型糖尿病の適応拡大申請にもCNPVを用いる考え。FDAはCNPV供与時に本剤の用途を肥満症及び肥満関連健康状態と描写しており、二型糖尿病はしばしば肥満/OWを伴うので、一粒で二度おいしい使いまわしが可能なのだろうか?CNPVプログラムは本当に不透明感が強い。

    リンク: プレス・リリース


    リリー、ジャイパーカの3剤併用試験が成功
    (2026年4月13日発表)

    イーライリリーはJaypirca(pirtobrutinib)が第3相Bruin CLL-323試験で主目的を達成したと発表した。データは未公表。適応拡大申請に向かうのではないか。

    米欧日である種のマントル細胞腫やCLL/SLL(慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫)に承認されている、非共有結合性BTK阻害剤。今回の試験は共有結合性BTK阻害剤歴を持つ再発/難治CLL/SLL患者639人を組入れて、bcl-2阻害剤venetoclaxと抗CD20抗体rituximabの併用レジメンに追加する便益を検討した。3剤とも2年経ったら投与を中止する用法。主評価項目はPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だがトレンドが見られる由。

    この用途では単剤投与が承認されているが、3剤併用が承認されればもう少し早い段階で使えるようになる。

    リンク: プレス・リリース


    抗CSF-1R抗体のTGCT試験が成功
    (2026年4月13日発表)

    SynOx Therapeuticsはemactuzumabが第3相試験で主目的などを達成したと発表した。データは未公表。26年下期に米国で、次いでEUでも、承認申請する考え。

    同社は、オックスフォード大学発ベンチャーのCelleron Therapeutics(合併を経て現在の社名はIngenOx Therapeutics)が、ロシュからライセンスした抗CSF-1R抗体、RG-7155/RO-5509554を開発するために設立した。今回のTANGENT試験はTGCT(腱滑膜巨細胞腫瘍)患者に1000mgを2週毎に5回投与し、6ヶ月後にORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)を判定した。腫瘍量の減少に加えて、患者評価や機能的評価も改善した由。

    類薬は第一三共のTuralio(pexidartinib)が19年に米国でTGCTに承認されたが、EUでは肝毒性リスクから承認されなかった。SynOxは忍容性改善を企図して上記のように累積投与量を抑制する工夫を採用している。

    リンク: プレス・リリース


    CNPV案件の第3相膵管腺腫試験が成功
    (2026年4月13日発表)

    米国のRevolution Medicines(Nasdaq:RVMD)はRMC-6236(daraxonrasib)が第3相試験で主目的を達成したと発表した。承認申請する考え。CNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)を取得しており、2~3ヶ月の審査で承認される可能性がる。

    同社はこの薬をRAS(ON)阻害剤と呼んでいる。シャペロン蛋白であるcyclophilin Aに結合し変形させることによって、活性化RASの癌原性変異体と三重複合体を形成し活性を阻害できるように仕向けるもの。今回の日本も参加したRASolute 302試験は、転移膵管腺腫の2次治療を受ける510人を300mg一日一回経口投与する群と化学療法群に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間を比較した。主評価項目はRASのG12変異型サブグループだけが対象だが、最初の中間解析で全集団の解析も成功した。数値が公表されたのは全集団の全生存期間だけで、メジアン値は13.2ヶ月対6.7ヶ月、ハザード・レシオは0.40だった。詳細はASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表される予定。

    このほかに、転移膵管腺腫の一次治療や術前術後療法、そしてRAS変異型非小細胞性肺癌の2~3次治療における第3相が進行中。

    リンク: プレス・リリース


    PKC阻害剤のブドウ膜黒色腫試験が成功
    (2026年4月13日発表)

    米国のIDEAYA Biosciences(Nasdaq:IDYA)とセルビエは、IDE-196(darovasertib)が第2/3相ブドウ膜黒色腫試験で主目的等を達成したと発表した。26年下期に加速承認を申請する考え。

    汎PKC阻害剤。18年にIDEAYAがノバルティスからライセンスし、25年9月に米国外の権利を供与したセルビエと共同開発している。今回の承認申請用試験、OptimUM-02は、HLA-A*A2:01型ではない転移ブドウ膜黒色腫の一次治療を受ける432人を組入れて、300mgをファイザーのcMET阻害剤Xalkori(crizotinib)200mgとともに一日二回経口投与する群と、医師が選んだオフレーベル療法を施行する群(8割はnivolumabとipilimumabの併用、残りはpembrolizumabを選択)に2対1割付けして、転帰を比較した。主評価項目のPFS(無進行生存期間、独立中央評価)は各群6.9ヶ月と3.1ヶ月、ハザード・レシオは0.42、p<0.0001となった。共同主評価項目である全生存期間は未成熟だが改善傾向が見られる由で、継続追跡して延命効果を確認し、加速承認を本承認に切替える狙い。G3以上の治療時発現有害事象は下痢や失神、低血圧など。治療関連深刻有害事象の発生率は一桁とのこと。

    ブドウ膜黒色腫の罹患数は米国で年3000人以上、欧加豪を含めると1万人以上で、その半分は転移癌に進行する。転移患者の5~7割はHLA型がA*02:01ではない。尚、A*02:01型にはImmunocore(Nasdaq:IMCR)のGP100・CD3二重特異性T細胞受容体、Kimmtrak(tebentafusp-tebn)が22年に米欧で承認されている。

    リンク: プレス・リリース


    BioNTech、中華ADCを承認申請へ
    (2026年4月11日発表)

    BioNTech(Nasdaq:BNTX)はBNT323(trastuzumab pamirtecan)が、第1相/前期第2相試験の治療歴のあるher2陽性進行内膜腫コフォートで良績を挙げたと発表した。年内の承認申請に向けてFDAと相談する考え。

    中国のDualityBio(映恩生物、HK:9606)から中国外の権利を取得した、抗her2抗体とトポイソメラーゼI阻害剤の抗体薬物複合体。中国では第3相が成功、ある種のher2陽性転移乳癌に承認申請され、今月、受理された。今回の米中豪韓などで実施された試験では、当該コフォートのうちher2発現がセントラルラボで確認されていて免疫チェックポイント阻害剤(ICI)歴を持つ73人における確認ORR(客観的反応率)が49.3%(95%信頼区間37.4-61.3)だった。ICI歴のない患者も含むセントラルラボ確認96人では同47.9%、PFS(無進行生存期間)はメジアンは8.1ヶ月だった。

    G3以上の治療関連有害事象発現率は46.9%、ADCの泣き所であるILD(間質性肺疾患、第3者査読後)はG3以上の発生率が4.8%だった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    第一三共、B7-H3標的ADCの承認申請が受理
    (2026年4月14日発表)

    第一三共はDS-7300(ifinatamab deruxtecan)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年10月10日。

    B7-H3に結合する抗体医薬複合体で、MSD提携の対象。1~3次治療歴のある進展型小細胞肺癌を組入れた第2相IDeate-Lung01試験で、12mg/kgコフォート137人におけるORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が48.2%(95%信頼区間39.6-56.9)、メジアン反応持続期間は5.3ヶ月だった。脳転移のある65人では頭蓋内ORRが46%だった。G3以上の治療関連有害事象発生率は36.5%、治療関連間質性肺疾患/肺臓炎は12.4%でうち2人(1.5%)は致死的だった。

    リンク: プレス・リリース


    3月のEU承認申請
    (2026年4月14日発表)

    EMAによると、3月に承認申請が受理された新規医療用活性成分は以下の通り。

    EMAの承認申請受理実績(26年3月)
    申請者名称一般名種類適応症米国
    LENZ TherapeuticsLNZ100aceclidineAChRアゴニスト成人の老視25/7承認
    GSKGSK3228836bepirovirsenmRNAアンチセンス薬成人の慢性B型肝炎不明
    MSDMK-0616enlicitide経口PCSK9阻害剤成人の原発性高コレステロール血症と混合異脂血症不明
    SavaraMolbreevimolgramostimGM-CSF、吸入用成人の肺胞蛋白症25/12申請
    エーザイ(Nuvation)IbtrozitaletrectinibROS1/NTRK阻害剤成人のROS1陽性進行非小細胞性肺癌25/6承認
    Miltenyi BiomedicineMB-CART2019.1zamtocabtagene autoleucelCD20xCD19 CAR-T成人の大細胞型B細胞リンパ腫不明
    出所:EMAなど。申請者や名称、種類、米国開発状況は当方の推測を含む。

    【承認】


    初の巣状分節性糸球体硬化症用薬が承認
    (2026年4月13日発表)

    Travere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)はFDAがFilspari(sparsentan)をFSGS(巣状分節性糸球体硬化症)に適応拡大したと発表した。第3相がフェールしたためハイリスクと考えていたが、主評価項目の事後的見直しや進行した患者を適応外とする措置が承認につながったように思われる。

    アンジオテンシンIIタイプ1受容体とエンドテリンA受容体のアンタゴニスト。オリジンはブリストル マイヤーズ スクイブのようだ。23~24年に米欧でIgA腎症の治療薬として承認された。FSGSでは第3相DUPLEX試験に8歳以上の原発性FSGS患者371人を組入れて、800mgまで用量漸増する群とirbesartan 300mg群の36週蛋白尿部分寛解率や108週eGFR(推算糸球体濾過量)を比較した。同社はIgA腎症と同様に前者で加速承認を申請し後者で加速承認を本承認に切り変える方針だったが、FDAが蛋白尿をサロゲート・マーカーと認めることに後ろ向きであったため、見送った。後者の解析は23年にフェールし、やっぱり蛋白尿はアテにならないのかと思われたが、今回、コペルニクス的転回が顕現した。

    一因は、患者支援団体が関連学会やFDAと共に実施したカンファレンスで、FSGSの患者は多様であるためeGFRによる薬効評価はミスリーディングであり蛋白尿のほうが適切、という意見が多かったことのようだ。その蛋白尿抑制作用も、被験者の1/3を占めた活性期ネフローゼ症候群を合併するサブグループでは小さかったためか、適応外となった。それ以外の患者では108週UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が44.8%低下しirbesartan群の18.5%低下を上回った。

    Filspariは肝障害懸念に関するREMS(リスク評価緩和戦略)が付されている。FSGS試験における主な有害事象は末梢浮腫、起立性を含む低血圧症、高カリウム血症、眩暈、貧血症。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/4推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
    26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
    26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
    26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
    26/6/5ArvinasのARV-471(vepdegestrant、ER1陽性乳癌)
    26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
    26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
    26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助)
    26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
    26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
    26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
    諮問委員会
    26/4/30腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)



    今週は以上です。

    2026年4月11日

    第1254回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • FDA、GSKのleucovorinの承認を撤回 
    • アムジェン、皮下注用テプロツムマブの第3相が成功 
    • Nuvalent、第2の分子標的薬を承認申請 
    • Ultragenyx、サンフィリッポ症候群A型用薬の再申請が今度は受理 
    • Replimuneの腫瘍溶解性ウイルス療法は今回も承認されず 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    FDA、GSKのleucovorinの承認を撤回
    (2026年4月10日発表)

    FDAは、4月10日付のFederal Register(米国連邦政府官報)で、GSKのWellcovorin(leucovorin calcium)の承認を同日付で撤回すると発表した。GSKの要請に基づき、5mg錠と25mg錠の承認を取消す。

    この葉酸誘導体は米国では1983年に承認され、今日でもmethotrexateなどの副作用を緩和する用途で広く用いられているが、既にGE化していてGSKはとっくの昔に販売を打ち切っている。ところが、昨年、FDAからCFD(脳葉酸欠乏症)に適応拡大申請するよう要請を受け、11月に申請、今年6月に、症例報告などに基づき、葉酸受容体1の遺伝子であるCFD-FOLR1に変異が確認された小児成人の脳葉酸欠乏症向けに承認された。体重40kg以上の患者の例では1~2mg/kg/日且つ最大330mg/日の範囲で用量調整し一日1~6回に分けて経口投与、一回25mg以下が望ましいというアバウトな用量・用法だ。

    Wellcovorinが無くてもGE薬で代用できるが、GE薬のレーベルには承認の根拠となるデータや推奨される用法用量は記載されていないので、結局のところ、文献や、もし収載されているならばコンペンディア等を参照して適否を判断し投与する時代に戻ることになる。米国はこれらの根拠があれば未承認用途に用いることも不可能ではないので、実態的には承認前も後も大して変わらない。同様に、GSKの適応拡大申請も、取消要請も、形だけと言って良いだろう。やり方としては日本の開発要請、希望企業募集のほうが合理的と感じられる。

    リンク: Federal Registerの当該頁(4月10日付)

    【新薬開発】


    アムジェン、皮下注用テプロツムマブの第3相が成功
    (2026年4月6日発表)

    アムジェンは甲状腺眼症用薬Tepezza(teprotumumab-trbw)の皮下注用新製剤が第3相偽薬対照試験で主目的等を達成したと発表した。承認申請に向かうのではないか。

    23年にHorizon Therapeuticsを買収して入手した、抗IGF-1R抗体。20~25年に米日欧で中重度活動性甲状腺眼症の3週毎60~90分点滴静注用薬として承認された。皮下注用はon body injectorで2週毎に5分足らずの時間、投与する。今回の日本も参加したTEPEZZA OBI試験は成人の中重度活動性甲状腺眼症を対象に、24週間治療後の突出応答率(眼球突出が2mm以上減少、かつ反対側が2mm以上突出しない)を偽薬と比較した。各群76.7%と19.6%、有意な差があった。副次的評価項目である突出減少は平均3.17mm対0.80mmだった。主な有害事象は筋痙攣、耳鳴り、体重減など。軽中度の注射箇所反応が見られたが、投与中断/中止に至るものではなかった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    Nuvalent、第2の分子標的薬を承認申請
    (2026年4月7日発表)

    米国マサチューセッツ州ケンブリッジのNuvalent(Nasdaq:NUVL)は米国でNVL-655(neladalkib)を承認申請したと発表した。想定適応症はチロシン・キナーゼ阻害剤(TKI)歴を持つ進行ALK陽性非小細胞性肺癌。血管脳関門透過性を持つALK阻害剤で、TRK(tropomyosin receptor kinase)は阻害しないため中枢神経系副作用が小さく、ALK阻害剤誘導性変異であるG1202R変異にも強い。First-in-humanであるALKOVE-1試験の第2相ポーションで、150mg一日一回経口投与を受けた253人におけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が31%、その64%で反応が12ヶ月以上持続した。中枢神経系疾患を持つ92人ではORR32%、12ヶ月持続率71%だった。既存のALK阻害剤の中でG1202R変異に活性を持つlorlatinibによる治療歴を持つ患者190人ではORR26%、メジアン反応持続期間17.6ヶ月と、それ以外の63人における46%、1年持続率80%より低かった。

    第3相はTKI未経験のALK陽性非小細胞性肺癌450人を組入れて、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を中外製薬/ロシュのAlecensa(alectinib)と比較している。

    同社は昨年、血管脳関門透過性を持ちG2032R変異にも有効なROS1阻害剤、NVL-520(zidesamtinib)を成人のROS1-TKI歴を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌に承認申請しており、今年9月18日に審査期限を迎える。neladalkibが優先審査指定されたら、年内に2剤が相次いで承認される可能性が生まれる。

    リンク: プレス・リリース


    Ultragenyx、サンフィリッポ症候群A型用薬の再申請が今度は受理
    (2026年4月2日発表)

    Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)はFDAがUX111(rebisufligene etisparvovec)の再承認申請を受理したと発表した。審査期限は26年9月19日。

    10万人に一人という希少な常染色体劣性遺伝性疾患であるサンフィリッポ症候群A型(ムコ多糖症IIIA型)の遺伝子療法。欠乏するSGSH遺伝子をアデノ随伴ウイルス9型を用いて導入する。脳脊髄液ヘパラン硫酸をサロゲート・マーカーとして米国で24年に加速承認申請したが、審査完了通知を受領した。CMC(化学、製造、管理)に関する指摘を受けた模様だ。臨床成績などに関する指摘はなかったとのこと。今年1月にCMC問題に回答するとともに長期追跡データを追加提出したが、不十分と指摘され、今回、やっと受理された。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    Replimuneの腫瘍溶解性ウイルス療法は今回も承認されず
    (2026年4月10日発表)

    Replimune Group(Nasdaq:REPL)は24年11月に米国でRP1(vusolimogene oderparepvec)を成人の抗PD-1抗体による治療歴を持つ進行黒色腫向けに承認申請したが、25年7月に続き、2回目の審査完了通知を受領した。1巡目の審査は、生物学的製剤を担当するCBERや腫瘍学薬を担うOCEのトップが介入したのではないかと見る向きもあり、その後、この2名が退任/退任決定したことから、一部で期待も広がっていたが、結局駄目だった。

    興味深いのは、今回、openFDAサイトでいち早く審査完了通知が公開されたこと。ページ数も3頁から7頁に増えている。それによると、バイアスなどを避けるために1巡目とは異なるメンバーが審査したが、Office of Therapeutic Products(OTP)もOncology Center of Excellence(OCE)も薬効の挙証が不十分という結論で一致した。そもそも、21年の段階で、承認申請を意図した試験である第2相IGNYTE試験のデザインにFDAは疑問を呈していた。nivolumab併用でORRが3割台だったが、抗PD-1抗体中/後に進行した患者とはいえ、本当にnivolumab単剤ではこれだけの成果が上がらないのか?前治療で化学療法と併用した患者と抗PD-1抗体だけだった患者を分けて考える必要はないのか?同社は自然歴との比較も実施しているが、患者背景が様々なので比較可能なのか明らかではない。

    同社は加速承認後薬効確認試験という位置付けの第3相試験の途中経過も提出した模様だが、目標症例数の10分の1に過ぎない40例の、事前に設定された評価項目ではないPFS解析なので、信頼性が十分ではない。そもそも、加速承認を取るためには承認の段階で市販後薬効確認試験に目標症例数の過半を組入れ終わっていることが望ましいはずだ。会社側は下記プレス・リリースで開発中止の可能性も示唆しており、FDAは、加速承認してもフェーズIVコミットメントを果たさないリスクを懸念したかもしれない。

    この用途ではIovance Biotherapeutics(Nasdaq:IOVA)の自家TIL(腫瘍浸潤リンパ球)療法、Amtagvi(lifileucel)が24年に米国で加速承認されている。抗PD-1抗体と、BRAF阻害剤が適応になるならBRAF阻害剤による治療歴を持つ成人の局所進行/転移黒色腫を組入れた第2相でORRが31%、その43%は12ヶ月以上持続した。160人中12人が治療関連と見做される死亡だったことが枠付き警告されている。今回の第2相は前例と何が違うのか、今のところ明らかではない。AmtagviもEUではCHMPが薬効の度合いや死亡リスクに懸念を示し申請撤回に至っている。インにせよアウトにせよ紙一重であることが窺われる。

    リンク: Raplimuneのプレス・リリース
    リンク: 審査完了通知(26年4月10日付)
    リンク: 審査完了通知(25年7月21日付)

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/4推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
    26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
    26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
    26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
    26/6/5ArvinasのARV-471(vepdegestrant、ER1陽性乳癌)
    26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
    26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
    26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助)
    26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
    26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
    26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
    諮問委員会
    26/4/30腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)



    今週は以上です。

    2026年4月4日

    第1253回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • アストラゼネカ、肝細胞腫TACE付随3剤併用試験でPFSを達成 
    • アストラゼネカ、新規低ホスファターゼ症用薬の第3相が成功 
    • AAD:田辺、プロトポルフィリン症用薬の試験成績を発表 
    • トレプロストのIPF試験が2本目も成功 
    • MSDの経口PCSK9阻害剤、3本目の第3相が成功 
    • Viridian社、皮下注用甲状腺眼症薬の第3相が成功 
    • Cogent社、c-KIT阻害剤をGISTにも承認申請 
    • Scholar Rock、SMA用薬を再承認申請 
    • Egetis社、MCT8欠乏症用薬を米国でも承認申請 
    • アイリーア8mgの2年目20週毎投与が承認 
    • イーライリリーの経口GLP-1作用剤が承認 
    • Vertexの嚢胞性線維症薬、カバー率が95%に上昇 
    • バイオジェン、高量スピンラザが米国でも承認 
    • FDA:タブネオスは日本で多くの深刻肝毒性例 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    アストラゼネカ、肝細胞腫TACE付随3剤併用試験でPFSを達成
    (2026年4月2日発表)

    アストラゼネカは、日本も参加した第3相EMERALD-3試験で主目的のPFS(無進行生存期間)を達成したと発表した。切除不能肝細胞腫のTACE(肝動脈化学塞栓術)を受ける患者を組入れて、同社の抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab-actl)と抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)そしてエーザイのVEGFR阻害剤Lenvima(lenvatinib)による周術期薬物療法の便益をTACEだけの群と比較したもの。全生存期間も中間解析で好ましいトレンドが見られたとのこと。尤も、過去のTACE付随試験ではPFSが成功しても全生存の改善が見られなかった事例もあり、また、ImjudoとImfinziだけを併用した群もPFSや全生存期間が向上するトレンドが見られた由なので、解釈は複雑だ。全容の発表や全生存の最終解析結果が待望される。

    Imfinziは類似したデザインの第3相EMERALD-1試験で抗VEGF抗体bevacizumabと併用したところ、PFSがTACEだけの群を有意に上回った(ハザード・レシオ0.77、p=0.032、メジアン値は15ヶ月対8.2ヶ月)。一方、G3/4有害事象発現率も45%対23%で上回った。全生存期間の解析は未成熟。良く分からないのは、bevacizumabを併用しなかった群のPFSハザード・レシオは0.94、メジアン値は10.2ヶ月となりフェールしていることだ。Imfinziは不要なのかもしれないが、作用機序を考えれば、全生存期間におけるハザード・レシオはもう少し良いかもしれない。PFS解析結果は24年1月のASCO胃腸学会で発表されたが、未だ承認されたという話は聞かず、会社側は延命効果が確認されるのを待っている状態なのではないか。

    Lenvimaは、TACEを受ける患者にMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)と併用した第3相LEAP-012試験で偽薬比ハザード・レシオが0.66、メジアン値は14.6ヶ月対10.0ヶ月と良好な成績を上げ、その時点では全生存期間もハザード・レシオ0.8(95%信頼区間0.57-1.11)、p=0.0867と悪くはなさそうな数値が出ていたが、1年後、全生存期間の中間解析がフェールし成功の見込みも低いことから治験終了となった。

    リンク: プレス・リリース


    アストラゼネカ、新規低ホスファターゼ症用薬の第3相が成功
    (2026年3月31日発表)

    アストラゼネカはALXN1850(efzimfotase alfa)の第3相低ホスファターゼ症試験3本の結果を公表した。日欧米で承認されている同社の酵素補充療法、Strensiq(asfotase alfa)の第2世代品で、低量を、週3~6回ではなく2週に1回、皮下注するだけで足りる。

    メインの薬効確認試験と言えるMULBERRY試験は、Strensiqによる治療を受けていない2~11歳の患者29人を試験薬と偽薬に2対1割付けして24週間投与し、25週のRGI-C(放射線学的全般的状態変化)を比較したところ、統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。副次的評価項目のRSS(くる病重症度スコア)も有意に改善。6分歩行テストも偽薬群より改善した。また、Strensiqによる治療を受けている2~11歳の43人を組入れて、試験薬にスイッチする群とStrensiqを継続する群をオープン・レーベルで比較したCHESTNUT試験では、安全性が確認され、副次的評価項目のRGI-CやRSSも維持された。

    Strensiqは欧米では周産期・幼児期発症型や少年期発症型の低ホスファターゼ症が適応で、低フォスファターゼ症患者の8割を占める成人の多くはunmet medical needになっている。ALXN1850はHICKORY試験でStrensiqによる治療を受けていない12歳以上の青少年・成人患者124人を偽薬群と2対1割付けして効果を25週の6分歩行テストで計測したが、トレンドに留まった。成人発症型サブグループの偽薬群の成績が想定以上だったことが影響した模様で、小児発症型サブグループでは臨床的に意味のある便益が見られた由だ。

    以上を踏まえると、Strensiqが適応になる患者に関してはALXN1850のほうが投与頻度が少ない分、良さそうに見える。但し、Strensiqは自然歴対照試験で死亡リスクや侵襲的人工呼吸器装着リスクを大きく抑制する作用が確認されており、症状改善のエビデンスだけで足りるのか、議論の余地があるかもしれない。成人患者向けが承認されれば市場性が大きく膨らむが、主評価項目がフェールした以上、サブグループ分析や副次的/支持的解析結果を総合的に評価することが必要であり、現時点では不透明だ。

    リンク: プレス・リリース


    AAD:田辺、プロトポルフィリン症用薬の試験成績を発表
    (2026年3月30日発表)

    田辺ファーマはAAD(米国皮膚科学会)で選択的メラノコルチン1受容体作動剤dersimelagonの第3相INSPIRE試験成績を発表した。光線過敏症の既往を有する12歳以上の小児・成人の赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)およびX連鎖性プロトポルフィリン症(XLP)患者165人を偽薬群と試験薬群(200mgを一日一回経口投与)に無作為化割付けして、12-16週における、日光曝露に伴う前駆症状が発現するまでの時間を評価したところ、偽薬比23分余遅く、p=0.004と有意に改善した。副次的評価項目では総疼痛イベントも39%少なかった。有害事象はメラノサイト性母斑などが増加した。米国でローリング承認申請に着手している。

    プロトポルフィリン症は遺伝子性疾患で血球などにプロトポルフィリンが蓄積し、皮膚が光線過敏を示す。日光曝露が続くと疼痛が発現し、数日間持続する可能性もあるようだ。

    リンク: プレス・リリース(和文)


    トレプロストのIPF試験が2本目も成功
    (2026年3月30日発表)

    United Therapeutics(Nasdaq:UTHR)は、Tyvaso(treprostinil、ネブライザ吸入用)の第3相IPF(特発性肺線維症)試験がTETON-2に続きTETON-1も主目的を達成したと発表した。FVC(努力肺活量)の52週間の悪化が49.9mLと偽薬群の136.4mLを下回り、偽薬調整後で95.6mL改善、統計的に有意だった。nintedanibなど承認薬の同時使用や喫煙、酸素療法の併用の有無を問わず便益が見られた。副次的評価項目である臨床的悪化リスクも有意に低下した。忍容性面で新たなシグナルは見られなかった。夏の終わりまでに適応拡大申請する考え

    TyvasoはプロスタグランジンI2製剤。09年に米国で、22年には日本でも持田製薬のトレプロストとして、肺高血圧症向けに承認された。

    リンク: プレス・リリース


    MSDの経口PCSK9阻害剤、3本目の第3相が成功
    (2026年330月日発表)

    MSDは経口PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害剤のMK-0616(enlicitide decanoate)を高脂血症などの治療薬として開発中で、既に3本の第3相試験の成功が公表されている。このうち、実薬対照試験であるCORALreef AddOn試験の成績がACC(米国心臓学会)で発表された。アテローム硬化性心血管疾患が既往または高リスクでスタチンを服用している高脂血症患者301人を、enlicitide(20mg)群、ACL阻害剤のbempedoic acid(180mg)群、NPC1L1阻害剤のezetimibe(10mg)群、そしてbempedoic acid(180mg)とezetimibe(10mg)を併用する群に2:1:1:2割付けして56日間投与したところ、enlicitide群のLDL-Cは64.6%低下し、bempedoic acid群比56%、ezetimibe群比36%、併用群比28%低下と優れた治療効果を示した。

    類似した患者層を組入れた偽薬対照試験、CORALreef Lipidsでは偽薬修正後で5-6割の治療効果を示した。ヘテロ接合性家族性高脂血症のスタチン・アドオン試験であるCORALreef HeFHでも偽薬修正後6割近く低下した。日本も参加しているアウトカム試験も進行中。米国のIRA(インフレ抑制法)の影響で承認申請が遅れる可能性もあったようだが、昨年12月にはFDAからCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)を受領しており、承認申請に向かいそうだ。

    リンク: プレス・リリース


    Viridian社、皮下注用甲状腺眼症薬の第3相が成功
    (2026年3月30日発表)

    米国のViridian Therapeutics(Nasdaq:VRDN)は抗IGF-1R抗体VRDN-003(elegrobart)が第3相活性期甲状腺眼症試験、REVEAL-1で主目的を達成したと発表した。24週PRR(眼球突出応答率)が4週毎投与群は54%、8週毎群は63%となり、偽薬群の18%を有意に上回った。副次的評価項目である突出の減少幅も有意に上回った。慢性期患者を組入れたREVEAL-2試験の結果は第2四半期に判明する見込み。

    同社は類薬のVRDN-001(veligrotug)を甲状腺眼症の治療薬として欧米で承認申請しており、米国のPDUFA(処方薬ユーザー・フィー法に基づく審査完了目標日)は今年6月30日。10mg/kgを3週毎に点滴静注する。一方、elegrobartは半減期が長いため4~8週毎の投与が可能で、オートインジェクターで皮下に自己注することを想定している。ただ、今回の試験成績は競合品などと比べてやや見劣りする。

    日本は25年7月にキッセイ薬品が両剤の権利を取得している。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    Cogent社、c-KIT阻害剤をGISTにも承認申請
    (2026年4月1日発表)

    Cogent Biosciences(Nasdaq:COGT)は米国でCGT9486(bezuclastinib)の消化管間質腫瘍(GIST)における承認申請を完了したと発表した。imatinibによる治療歴を持つ患者を組入れた第3相PEAK試験で、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン16.5ヶ月とsunitinib群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.50だった。一方、治療関連投与中止の発生率は各群7.4%と3.8%だった。

    この申請はFDAがReal-Time Oncology-Reviewの対象としており、昨年12月に申請され今年12月30日に審査期限を迎える非進行全身性肥満細胞症用途と前後して承認される可能性があるだろう。進行した全身性肥満細胞腫等の承認申請用試験でもORR(客観的反応率)が49%という成績を挙げており、今上期中に承認申請する考え。

    CGT9486はc-KIT阻害剤でD816V変異などのエクソン17変異型に活性を持つ。第一三共が2011年に買収したPlexxikonからPLX9486をライセンスした企業が、株式公開企業の換骨奪胎型逆買収を経て、社名を上記に変更したもの。

    リンク: プレス・リリース


    Scholar Rock、SMA用薬を再承認申請
    (2026年3月31日発表)

    Scholar Rock(Nasdaq:SRRK)はSRK-015(apitegromab)をFDAに再承認申請したと発表した。フィル・フィニッシュ工程を担う、ノボ ノルディスクが買収し運営しているCatalentのIndiana施設で発生した製造問題の余波を受けた複数の企業の一つで、昨年9月に審査完了通知を受領した。その後、FDAとの相談やノボ・FDA間の協議を経て、問題の施設の再査察は未だこれからだが、米国における第2のフィル・フィニッシュ施設の情報も含めて、提出した。同社は、FDAが30日内に受理し審査期限を9月下旬に設定すると予想している。

    TGFベータ・スーパーファミリーの一つであるmyostatinの前駆体・不活性体であるproMyostatinに結合する抗体。活性化されるのを妨げ、筋力低下を抑制する。欧州でも審査中で、会社側は年央に審査結果と予想している。

    リンク: プレス・リリース


    Egetis社、MCT8欠乏症用薬を米国でも承認申請
    (2026年3月27日発表)

    スウェーデンのEgetis Therapeutics AB(Nasdaw Stockholm:EGTX)は米国でEmcitate(tiratricol)をMCT8(モノカルボン酸トランスポーター8)欠乏症用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年9月28日。

    この疾患は超希少なX染色体性遺伝子疾患で、甲状腺ホルモンの一つであるT3を細胞内に移送するトランスポータが欠乏し、知能や運動機能の発達障害が表れる。tiratricolはT3甲状腺ホルモン類縁体で、フランスで甲状腺ホルモン抵抗性症候群などの治療薬として半世紀の市販歴がある。細胞膜を通過するのにMCT8を必要としない。EUでは25年2月にRare Thyroid Therapeutics International ABが承認を取得。米国は別途、ReTRIACt離脱試験を実施して投与を止めると血清T3水準が増加してしまうことを確認し、親会社に相当するEgetisが承認申請した。尚、日本は23年に藤本製薬が権利を導入している。

    リンク: プレス・リリース

    【承認】


    アイリーア8mgの2年目20週毎投与が承認
    (2026年4月2日発表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はFDAがEylea HD(aflibercept 8mg)の20週毎投与を承認したと発表した。新生血管加齢性黄斑変性や糖尿病性網膜症の治療に用いる場合には、8mgを最初は4週毎に3回、硝子体内注射した後に、状態に応じて8~16週毎投与に移行し、応答が持続しないようなら4週毎に戻すことを検討するというプロトコルだったが、今回、応答が1年以上持続する場合は20週毎投与にシフトするオプションが承認された。

    同社はEylea HDに関して適応症や用法に関する様々な変更申請を行ったが、ノボ ノルディスクが買収したCatalant Indiana工場の製造問題に巻き込まれ、承認が遅れていた。プリフィルド・シリンジの承認も遅れているが、充填委託会社を変更して申請中で、今月中に審査結果が判明する見込みだ。

    リンク: プレス・リリース


    イーライリリーの経口GLP-1作用剤が承認
    (2026年4月1日発表)

    イーライリリーはFDAがFoundayo(orforglipron)を成人の肥満症や体重関連医療問題を伴うオーバーウェイトの治療薬として承認したと発表した。カロリー抑制食事療法及び身体活動強化と共に施行する(第3相試験では週150分以上の身体活動を行うようカウンセリングした)。GLP-1作用剤だが注射ではなく一日一回経口投与する。製剤が第3相試験までのものと異なっており、第3相では各群6mg、12mg、または36mgを目標に用量漸増したが、最終製品は0.8mg一日一回で開始して30日おきに2.5mg、5.5mg、そして、成果や忍容性に応じて、目標用量である9mg、14.5mg、または17.2mgに漸増する。経口GLP-1作用剤の承認はノボ ノルディスクのsemaglutideを含有するWegovyピル(肥満症)、Ozempicピル(二型糖尿病)、Rybelsus(同)に次ぐ。

    Foundayoの第3相成績は、糖尿病を合併しない患者を組入れたATTAIN-1試験では72週間の体重減少が目標用量群により7~11%となり、偽薬群の2%を上回った。糖尿病合併者を組入れたATTAIN-2試験では5~9%対2%で上回った。尚、Wegovy 25mgピルは糖尿病非合併患者のOASIS-4試験で13%対2%で上回った。ノボ ノルディスクが肥満薬の学会で発表した、ATTAIN-1試験とOASIS-4試験のポピュレーション調整非直接的比較研究、ORIONによると、減量率はWegovyのほうが3%上回った。直接比較試験を行えばはっきりするかもしれないが、この程度の差だとノイズを拾ってしまうリスクもありそうだ。

    18年に中外製薬からライセンスしたもの。ロシュが第一選択権を持っていたが行使しなかった。FDAのCNPV(委員長国家的優先バウチャ)を受領しており、承認申請から50日で承認された。

    図表:CNPV案件の審査結果
    企業対象疾患など結果
    USAntibioticsAugmentin XR(amoxicillin、
    clavulanate potassium)
    重要な抗菌剤の国内生産承認(25/12)
    Disc MedicineDISC-0974(bitopertin)赤芽球性プロトポルフィリン症審査完了(26/2)
    ベーリンガー・インゲルハイムHernexeos(zongertinib)her2陽性肺癌承認(26/2、44日審査)
    ジョンソン エンド ジョンソンTecvayli(teclistamab-cqyv)
    ・Darzalex Faspro(daratumumab、
    hyaluronidase-fihj)併用
    多発骨髄腫承認(26/3、55日審査)
    ノボ ノルディスクWegovy 7.2mg(semaglutide)肥満症承認(26/3、54日審査)
    イーライリリーorforglipron肥満症承認(26/4、50日審査)
    出所:FDA発表を基に作成

    リンク: イーライリリーのプレス・リリース
    リンク: FDAのCNPV供与案件承認に関するプレス・リリース


    Vertexの嚢胞性線維症薬、カバー率が95%に上昇
    (2026年4月1日発表)

    Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は、嚢胞性線維症用3剤合剤であるAlyftrek(vanzacaftor、tezacaftor、deutivacaftor)とTrikafta(elexacaftor、tezacaftor 、ivacaftor)の有効範囲追加がFDAに承認されたと発表した。主因であるCFTR変異には様々なものがあり、同社は第1号製品のKalydeco(ivacaftor)が2012年に欧米で初承認されて以降、様々な変異型の臨床試験やin vitro試験を行い、有効範囲を確認してきた。今回、Alyftrekは564変異型に、Trilaftaは521変異型に、有効である旨の記述がレーベルに掲載された。米国の対象患者が800人増加し、嚢胞性線維症患者の95%をカバーできるようになった由だ。10年間、よくやり遂げましたね。

    リンク: プレス・リリース


    バイオジェン、高量スピンラザが米国でも承認
    (2026年3月30日発表)

    バイオジェンは、FDAが脊髄性筋萎縮症用薬Spinraza(nusinersen)の高用量規格・レジメンを承認したと発表した。16年に初承認時の用量用法は12mgを当初は第0、14、28、58日に、その後は4ヶ月毎に、髄腔内投与する。高用量レジメンは当初は50mgを第0、14日に、その後は39mgを4週毎に、髄腔内投与する。第2/3相DEVOTE試験のパートBで、第6月のCHOP-INTENDが初承認時のエビデンスであるENDEAR試験のシャム群の適合例20人を有意に上回った。死亡または永続的換気(人工呼吸器装着など)のリスクもハザード・レシオが0.33、p=0.0006だった。尚、この試験は12mgレジメンを施行する群も設定されているが、日本の資料によると、CHOP-INTENDが12mg群比ハザード・レシオ0.70だったがp=0.33なので有意水準ではない。

    高用量レジメンは日本では昨年9月に承認、EUでも今年1月に承認されたが、米国ではCMC(化学・製造・管理)に関わる追加情報などを求められ承認が遅れていた。

    リンク: プレス・リリース

    【医薬品の安全性】


    FDA:タブネオスは日本で多くの深刻肝毒性例
    (2026年3月31日発表)

    FDAはアムジェンのANCA関連血管炎用薬Tavneos(avacopan)に関する安全性通達を発出した。このC5a受容体阻害剤は21年9月に日本でライセンシーのキッセイ薬品が世界初承認を取得し、アムジェンも翌月に米国で、22年1月にはEUでも、承認を取得した。薬物誘導性肝障害のリスクは承認前から知られていたが、市販後に致死例やVBDS(胆管消失症候群)合併例が報告されているため、改めて連絡した。FDAは、24年10月までの期間にavacopanとの関連性に関する合理的なエビデンスのある76例を特定した。うち死亡は8人、入院は54例あった。深刻な合併症であるVBDSは7例で3人が死亡した。地域的には極めて偏っており、日本が66例、米国5例、欧州4例などとなっている。

    FDAは、定期的に肝機能検査などを行い、ALT/AST(通常上限の3倍超)やALP(同2倍超)の異常上昇や症候性胆汁鬱滞などが見られた場合は投与を中止、代替的治療法などを検討するよう推奨している。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】



    PDUFA
    26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/4推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/3バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加)
    26/4/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
    26/4/10ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    諮問委員会
    26/4/30腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)

    審査期限変更:Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)は7月6日に、LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)は8月29日に、変更。
    訂正とお詫び:アストラゼネカの二品の腫瘍学諮問委員会は、4月30日と書くべきところを3日と誤記していました。

    今週は以上です。