2022年4月30日

第1048回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • MMWR:未成年の7割以上が既に感染 
  • ベクルリー、生後28日の患者も使用可能に 
  • その他の領域: 
  • イーライリリー、tirzepatideが体重管理でも高い効果 
  • 中国発の抗PD-1抗体、食道扁平上皮腫の一次治療試験が成功 
  • アストラゼネカ、抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体の併用を承認申請 
  • 閉塞性肥大性心筋症治療薬が承認 
  • アッヴィ、リンヴォックが強直性脊椎炎に適応拡大 
  • 難治性外陰膣カンジダ治療薬が承認 
  • ユルトミリス、筋無力症に適応拡大 


【COVID-19関連】


MMWR:未成年の7割以上が既に感染
(2022年4月26日発表)

CDC(米国疾病管理予防センター)のCOVID-19緊急対応チームはSARS-CoV-2の抗体保有状況をMMWR(疫学週報)で報告した。民間ラボがSARS-CoV-2感染検査以外の目的で採取した検体を4週当り4~8万本の規模で調べたもので、検出対象は、米国で承認/EUAされたワクチンには含まれない、ヌクレオカプシドに対する抗体。

抗体保有率は昨年12月時点の33%から今年2月には57%に上昇した。年齢別では11歳以下が44%から75%に、12-17歳も45%から74%に上昇しており、4人に3人は感染歴があることになる。一方、65歳以上は19%から33%に上昇はしたものの水準自体は若年層ほど高くない。このように、年齢やワクチン接種完了率と逆相関している。

今回の調査の制約は、受診した人だけが対象であることや、人種や生活環境の違いが反映されていないことなど。ワクチン接種後に感染しても抗ヌクレオカプシド抗体価があまり上がらないことがあるので、偽陰性の可能性もありうる。

COVID-19は無症状の隠れ感染が多く、オミクロン株は特に顕著で過去の流行とは異なり若年層も感染しやすいため、真の感染状況を把握する上で抗体保有調査は重要だ。

残念なことに、感染やワクチン接種により獲得する抗体は長続きしない。流行当初に期待された集団免疫は、感染に関しては無理そうだ。米国の流行株は短期間にBA.1からBA.1.1、そしてBA.2に変遷し、直近ではBA.2.12.1の比率が3割まで上昇したとのことなので早晩、主流になるだろう。防御力が低下する一方で感染力はどんどん高まっている。

尤も、抗体が減少しても細胞性免疫はもっと長持ちするだろうから、重症・死亡を抑制することはできるかもしれない。実際、米国政府の主席医療顧問を務めるNIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)のアンソニー・ファウチ所長は、現状を、爆発的な流行期から管理可能な流行期への移行期に入ったと指摘してる。

米国は年初のピーク時で一日に190万人が感染、4000人が死亡した。日本の10倍に相当する、惨状だ。日本並みになるだけでも大きな変化ということになる。感染の第7波、第8波が来る可能性自体は否定していないようだが、入院患者数や死亡者数が少なければ管理可能と考えているようだ。但し、具体的に何人程度を想定しているのかは不明。

抗体保有率
年齢層21/12時点22/2時点ワクチン完了率
0-11歳44.2%75.2%28%
12-17歳45.6%74.2%59%
18-49歳36.5%63.7%69%
50-64歳28.8%49.8%80%
65歳以上19.1%33.2%90%
全年齢33.5%57.7%82%
注:0-11歳と全年齢のワクチン完了率は承認/EUAされている5歳以上の人口に対する比率。
出所:Clarkeら(MMWR Morb Mortal Wkly Rep 2022;71)をもとに作成

リンク: K. Clarkeらの論文(MMWR)


ベクルリー、生後28日の患者も使用可能に
(2022年4月25日発表)

FDAはギリアド・サイエンシズのVeklury(remdesivir)の対象年齢を引き下げ、生後28日以上且つ体重3kg以上のCOVID-19感染症に用いることを正式承認した。入院患者と、重症化リスクが高い軽中等症外来患者が適応になる。生後28日以上の患者を組入れた第2/3相単群試験や成人の臨床成績に基づく。

これまでは12歳以上且つ体重40kg以上が正式承認、体重3.5kg以上40kg未満または体重3.5kg以上の12歳未満はEUA(非常時使用認可)だった。生後1ヶ月どころか生まれたばかりの患者に投与することも法制上は可能だったわけだが、28日以上とはっきり記載されているのを目の当たりにすると、臨床試験に携わった人たちの勇気と誠意に感動する。

リンク: FDAのプレスリリース

【新薬開発】


イーライリリー、tirzepatideが体重管理でも高い効果
(2022年4月28日発表)

イーライリリーはLY3298176(tirzepatide)の第3相SURMOUNT 1試験の結果を公表した。米国や中国、日本などで成人の肥満症またはリスク要素を持つ太り過ぎの患者(糖尿病は除く)2539人を組入れて、偽薬、5mg、10mg、または15mgを週一回皮注する効果を比較したところ、体重がベースライン値の105kgから各群平均2.4%、16%、21.4%、22.5%減少した。5%減量成功率は28%、89%、96%、96%となった。夫々の主評価項目は10mgと偽薬、そして15mgと偽薬の比較だが5mgでもある程度の結果が出ている。一方、15mgは10mgと大差なさそうだ。

有害事象発生率のうち悪心は各群9%、24%、33%、31%、嘔吐は1%、8%、10%、12%、有害事象による治験離脱率は2%、4%、7%、6%だった。

肥満症や二型糖尿病の新薬ではノボ ノルディスクのGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)作用剤semaglutideが好評だ。tirzeptideはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)受容体も作動するデュアルアゴニストで、昨年、日米欧で二型糖尿病用薬として承認申請された。

二型糖尿病におけるHbA1c治療効果は米国でsemaglutideの高用量(Ozempic 2mg)が承認され大差なくなったが、肥満症では、semaglutideの高用量(Wegovy 2.4mg)のHbA1c治療効果が10%程度であるのに対してtirzepatideは20%前後と高い。異なった試験のデータを比較するのは難しいが、ベースライン値も偽薬群の体重減少も大差ないので、他の試験が開票するまでは、効果が上回ると考えた方が良さそうだ。

忍容性はtirzepatideの数値のほうが良好だが、判定がプロトコルや国や施設により異なる可能性があるので、悪いと考える理由はない位に受け止めておけばよいだろう。

両剤とも副作用を抑制するため低量で開始して4週毎に増量するが、体重管理では、Wegovyが0.25mgで開始して第17週に目標維持用量である2.4mgに達するのに対して、tirzepatideは2.5mgで開始、目標が10mgなら第13週に到達するので、効果がフルに発揮される時期も早まるかもしれない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


中国発の抗PD-1抗体、食道扁平上皮腫の一次治療試験が成功
(2022年4月27日発表)

中国の百済神州(Nasdaq:BGNE)と日米欧などでの開発販売パートナーであるノバルティスは、BGB-A317(tislelizumab)の第3相RATIONAL 306試験が中間で主目的を達成したと発表した。切除不能/局所進行/難治/転移食道扁平上皮腫の一次治療として化学療法に追加する延命効果を検討したところ、偽薬追加を有意に上回った。数値は学会で発表する予定。

中国企業が創製した抗PD-1抗体の一つで中国では古典的ホジキンリンパ腫や膀胱癌、ある種の肺癌などに承認されている。食道扁平上皮腫では既に二次治療試験が成功しており、中国では今年4月に承認、米国でも昨年9月に初の承認申請が行われた。EUでも肺癌に承認申請中。

今回の試験は中国、北米、欧州に加えて日本の施設も参加したようなので、製造販売承認申請の可能性があるのではないか。

抗PD-1抗体ではBMSのOpdivo(nivolumab)の同様な試験が成功、欧州では今年2月にCHMPがPD-L1陽性(≧1%)限定で肯定的意見をまとめた。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認申請】


アストラゼネカ、抗PD-L1抗体と抗CTLA-4抗体の併用を承認申請
(2022年4月25日発表)

アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)とファイザーからライセンスした抗CTLA-4抗体tremelimumabを併用で切除不能肝細胞腫の治療に用いる承認申請をFDAに行い、受理されたと発表した。優先審査バウチャを用い、審査期限を今年第4四半期に前倒しすることができた。尚、この併用は転移性非小細胞性肺癌の一次治療レジメンとして米欧日などで承認申請中。

抗CTLA-4抗体はブリストル マイヤーズ・スクイブのYervoy(ipilimumab)が第1号。tremelimumabは第2号と目されていたが臨床試験が失敗続きで11年にアストラゼネカ・グループのメディミューンに導出された。抗CTLA-4抗体は毒性が高いせいか、その後もフェールが続いたが、非小細胞性肺癌にImfinziとtremelimumab、そして化学療法を併用したPOSEIDON試験が成功。肝細胞腫一次治療における全生存をsorafenibと比較したHIMARAYA試験も成功した。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


閉塞性肥大性心筋症治療薬が承認
(2022年4月28日発表)

ブリストル マイヤーズ・スクイブはFDAがCamzyos(mavacamten)を成人のNYHAクラスII-IIIの症候性閉塞性肥大性心筋症の治療薬として承認したと発表した。心不全リスクを持つためREMS(リスク評価緩和戦略)を導入した。

肥大性心筋症におけるミオシンとアクチンの過剰な架橋とそれに伴う心筋収縮・弛緩を抑制する心臓ミオシンの可逆的アロステリック・インヒビター。20年にMyoKardiaを131億ドルで買収して入手した。

臨床試験ではpVO2(最大酸素摂取量)やNYHAクラス、LVOT(左室流出路ピーク勾配、KCCQ-23 CSS症状スコアの改善が見られた。6%の患者でLVEF(左室駆出率)が50%を下回ったが投与中断後に回復した。

便益と危険のバランスを取るためにはスクリーニングとさじ加減が重要。事前に検査してLVEFが55%未満なら投与は推奨されない。薬物相互作用にも注意が必要。この薬の代謝酵素であるCYP2C19の中強度インヒビター/インデューサーや3A4の強度インヒビター/中強度インデューサーは併用禁忌。また、この薬自体が2C19、3A4、2C9のインデューサーとなる。プロトン・ポンプ阻害剤やH2ブロッカーなどOTC化された薬も含めて要チェックだ。

問題なければ5mg一日一回経口投与で開始、LVOTやLVEF、心不全症状に応じて2.5mg、10mg、15mgに増減量する。

第三相試験は上記と同じLVEF55%以上が組入れ条件だった。被験者の75%がベータブロッカーを、17%がカルシウム・チャネル・ブロッカーを服用していたが、両方服用は除外条件だった。

適用拡大はSRT(中隔縮小療法)が適応になるほど進行した患者の第3相が既に成功。非閉塞性の拡張性心筋症は第2相がフェールしたが高リスクには良さそうな結果が出た模様で第3相に進む見込み。

リンク: BMSのプレスリリース


アッヴィ、リンヴォックが強直性脊椎炎に適応拡大
(2022年4月29日発表)

アッヴィはJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)を活性期強直性脊椎炎の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。TNF阻害剤に十分に反応しなかった、または、不耐の患者が適応になる。EUでは1月にTNF阻害剤未経験も含めて承認されたが、米国はJAK阻害剤の適応をバイオ薬不応不耐に限定している。

15mgを一日一回経口投与した第3相試験で第14週のASA40奏効率が44.5%と偽薬群の18.2%を有意に上回った。深刻有害事象の発生率は各群2.8%と0.5%だった。

Rinvoqは米国では成人のTNF阻害剤不応不耐の中重度リウマチ性関節炎/活性期乾癬性関節炎/中重度潰瘍性大腸炎と12歳以上のバイオ薬不応不適なアトピー性皮膚炎に承認されている。深刻な感染症、腫瘍、主要有害心臓イベント、血栓症のリスクや他社のJAK阻害剤のリウマチ性関節炎長期安全性確認試験でTNF阻害剤より死亡率が高かったことが枠付警告されている(JAK阻害剤のクラス・ウオーニング)。

リンク: 同社のプレスリリース


難治性外陰膣カンジダ治療薬が承認
(2022年4月28日発表)

米国ノースカロライナ州の新興薬品会社、Mycovia Pharmaceuticals(未上場)は、FDAがVivjoa(oteseconazole)を難治外陰膣カンジダ症(RVVC)治療薬として承認したと発表した。アゾール系の経口抗真菌薬で、真菌のCYP51の選択性が高い。同社の開発品が承認されたのも、RVVC治療薬の承認も、初。

fluconazoleによる治療コースを終えた患者を組入れた二本の偽薬対照試験で奏効率(48週間に亘り再発無し)が一本は93%(偽薬群は57%)、もう一本は96%(60%)だった。急性期もその後の維持期もVivjoaを用いたultraVIOLET試験では奏効率(酵母感染が治癒し50週間の維持期に再発無し)が89%と、fluconazoleで治療し維持期は偽薬を投与した群の57%を上回った。

主な有害事象は頭痛や悪心など。

欧州などはハンガリーのGedeon Richterが、中国は江蘇恒瑞医薬が、開発商業化権を取得している。

リンク: 同社のプレスリリース


ユルトミリス、筋無力症に適応拡大
(2022年4月28日発表)

アストラゼネカはFDAがUltomiris(ravulizumab-cwvz)を全身性筋無力症の治療に用いることを承認したと発表した。患者の8割を占める抗AChR抗体陽性が適応になる。日欧でも承認申請中。

同社の抗C5抗体Soliris(eculizumab)の半減期を延長した特許切れ対策用薬で、維持用量の投与間隔が2倍の4週毎で済むことが長所。Solirisの主用途であるPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)、aHUS(非典型溶血性尿毒症症候群)による補体調停性血栓性微小血管症、そして全身性筋無力症に順次、適応を広げている。

リンク: 同社のプレスリリース





今週は以上です。

2022年4月23日

第1047回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • CDC、小児急性肝炎の原因が不明ならアデノウイルス検査を勧告 
  • 第2のピロカルピン点眼液の老眼治療試験が成功 
  • エンハーツをher2変異肺癌に適応拡大申請 
  • ダーブロックを米国でも承認申請 
  • PI3K阻害剤を血液癌に開発するなら延命効果を確認せよ 
  • CHMP、新薬三品の承認に肯定的意見 
  • CHMP、PARP阻害剤Rubracaの一部適応を再検討


【今週の話題】


CDC、小児急性肝炎の原因が不明ならアデノウイルス検査を勧告
(2022年4月21日発表)

英国などで原因不明の小児肝炎が100例以上、報告されているが、CDC(米国疾病管理予防センター)は、米国でも小児のアデノウイルス感染を伴う肝炎が報告されていたことを医師や公衆衛生組織に通知した。小児肝炎は肝炎ウイルスによるものが多いが、もし陰性で原因不明な場合はアデノウイルスのqPCR検査を行い、陽性なら州の公衆衛生組織やCDCに報告するよう勧告した。

昨年11月にアラバマ州の小児病院が5例の顕著な肝障害を報告した。うち3例は急性肝不全で、アデノウイルス検査陽性だった。全員、それまでは健康だった。COVID-19感染歴もなかった。類似症例の探索により、昨年10月から今年2月までの期間にアデノウイルス感染を伴う肝炎が全部で9例、見つかった。2例は肝移植を受けた。死亡例はない。ゲノム分析が行われた5例全てが41型アデノウイルスだった。2例は血漿のpCRで陰性判定されたが全血で再検査したところ陽性判定に代わった。

41型アデノウイルス感染は急性胃腸炎を起こし、下痢や嘔吐、発熱、そしてしばしば呼吸症状を発現する。免疫不全の小児で肝炎の報告例があるものの、他に病気のない小児で原因になるとは知られていない。

症例は英国が多いため当方はアデノウイルス・ベクターCOVID-19ワクチンとの関連を危惧したが、何れもワクチン接種歴はないようだ。

リンク: CDCの通達

【新薬開発】


第2のピロカルピン点眼液の老眼治療試験が成功
(2022年4月21日発表)

イスラエルと米国に拠点を持つOrasis PharmaceuticalsはCSF-1(pilocarpine 0.4%点眼液)の第3相老眼治療試験二本が成功したと発表した。下期に承認申請する予定。

ムスカリン受容体刺激剤pilocarpineは錠剤がシェ―グレン症候群のドライマウスの治療に、点眼薬が緑内障の治療に用いられているが、昨年10月、米国でアッヴィのVuity(1.25%点眼液)が老眼治療薬として承認された。OrasisやEyenovia(Naasdaq:EYEN)も独自技術の製剤で第3相試験中。CSF-1は濃度がVuityの半分以下であることと、一日一回ではなく二回点眼すること、そして第3相試験の薬効判定時期が第30日の点眼3時間後ではなく第8日の1時間後であることが特徴。Vuityの効果は1時間後がピークで8時間後には偽薬群と大差なくなるので、1時間後を主評価項目にした方が良い数値が出るし、働いている人は一日二回のほうが良いかもしれない。実際、アッヴィも一日二回試験を実施中だ。

第3相試験の結果は断片的にしか公表されていない。米国の施設で45~64歳の老眼患者613人を組入れて2週間点眼させ応答率を偽薬対照群と比較した。DCNVA(距離矯正近見視力)が3行以上改善し、且つ、CDVA(矯正遠見視力)が1行以上悪化しない症例を応答と判定した。結果は、二本のプール分析で、試験薬群の応答率は第8日の一回目の1時間後で40%、二回目は50%で、統計的に有意な差があった。

治療時発現有害事象は頭痛(6.8%)や点眼箇所痛(5.8%)など。中等症以上の発生率は2.6%だった。

Vuityの1時間後の応答率も同程度なので、薬効面では大差なさそうだ。一日一回だと朝刊は読めても夕刊は時間切れ、スマホは出勤時は見れるが帰りは見辛くなるので、一日二回版の発売でどちらが先んじるかが注目だ。

尚、Eyenoviaはマイクロ製剤を独自のディバイスで投与するMicroLineの二本目の第3相が年央にも開票する見込み。

リンク: Orasis社のプレスリリース

【承認申請】


エンハーツをher2変異肺癌に適応拡大申請
(2022年4月19日発表)

第一三共とアストラゼネカはEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)をher2変異陽性非小細胞性肺癌の再発治療薬としてFDAに適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は第3四半期。

91人を組入れた第2相DESTINY-Lung01試験でcORR(確認客観的反応率、独立中央評価)が54.9%、メジアン反応持続期間は9.3ヶ月だった。

her2変異は少なく、非扁平上皮非小細胞性肺癌の2-3%を占める。判定には次世代シーケンサが必要。

リンク: 両社のプレスリリース

ダーブロックを米国でも承認申請
(2022年4月19日発表)

グラクソ・スミスクラインは米国でGSK1278863(daprodustat)を承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年2月1日。

HIF-PH阻害剤で慢性腎疾患の貧血を治療する。保存期の患者を組入れた試験でも透析期の試験でもヘモグロビン矯正効果がAranesp(darbepoetin alfa)比非劣性だった。MACE(主要有害心臓イベント)も非劣性だった。

日本で20年にダーブロック名で承認、今年3月にはEUでも承認申請が受理された。FDAはHIF-PH阻害剤の安全性に懸念を持っているので先行きは不透明。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


PI3K阻害剤を血液癌に開発するなら延命効果を確認せよ
(2022年4月21日発表)

FDAは腫瘍学薬諮問委員会を招集し、PI3K阻害剤の承認基準の変更について意見を聞いた。単群試験の反応率データに基づく加速承認はせず、無作為化割付対照試験で延命効果を確立するよう求めるもので、棄権の1名を除いて全員が賛成した。尚、乳がんの治療に用いるPI3K阻害剤は今回の議論の対象外。

PI3K阻害剤は腫瘍学の有望領域で、血液癌では14年にギリアドのZydelig(idelalisib)、17年にバイエルのAliqopa(copanlisib)、18年にVerastem(Nasdaq:VSTM)のCopiktra(duvelisib)、21年にはTG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)のUkoniq(umbralisib)が相次いでFL(濾胞性リンパ腫)などに米国で承認され、21年にはインサイト(Nasdaq:INCY)がINCB050465(parsaclisib)を承認申請、今年はMEI Pharma/協和キリンがME-401(zandelisib)を申請すべくFDAと相談した。

適応のうちCLL(慢性リンパ性白血病)は無作為化割付対照試験のエビデンスに基づく正式承認だが、FLやMZL(辺縁帯リンパ腫)は単群再発治療試験におけるORR(客観的反応率)に基づく加速承認なので市販後に延命またはそれに準じる便益を確認しなければならない。承認用途で偽薬対照試験を行うのは困難なのでrituximabなどとの併用や、三次治療薬なら二次治療、初度治療の試験を行うことになる。

ところが、薬効確認試験は順調に進まず、多くの会社が加速承認された適応の一部または全てを返上した。きっかけは16年にZydeligの第3相試験三本が安全性懸念から打ち切られたこと。深刻有害事象や死亡が対照群を上回った。Aliqopaは主評価項目のPFSが偽薬比有意に増加したが全生存期間では有意差がなく、2年生存率は数値上下回った(FDAによると比例ハザードの仮説が崩れたためハザード・レシオの信頼性は高くない)。Copiktraは資産を譲り受けたSecura Bioが市販後薬効確認試験をネグっている。Ukoniqは自社開発の抗CD20抗体の併用試験で主評価項目のPFSが延長したが死亡は偽薬群より多かった。

これらのエピソードは、ORRは言うに及ばず、延命効果や毒性をある程度反映するPFSでも不十分であることを示している。FDAは既に方針転換しており、市販後薬効確認試験を迅速に実施するよう示唆されたインサイトは加速承認の申請を撤回。MEI Pharma/協和キリンは加速承認申請を断念した。

深刻有害事象で多いのは熱性好中球減少症や肺臓炎などの感染症、下痢、大腸炎など。深刻有害事象の内訳として開示される死亡は少数だが、全生存の解析に用いられる死亡はもっと多い。今回初めて見て驚いたのでFDAのブリーフィング資料から抜粋して以下に示した。FDAは、特にrituximabなどと併用する時の、至適用量の検討が不十分なのではないかと指摘している。

主なPI3K阻害剤の開発承認歴(米国)

ギリアドのZydelig(idelalisib):14年にFLとSLLの三次治療に加速承認も、P4組入れ遅延を理由に22年1月に返上。再発CLLは14年に本承認。16年にFLやCLLの併用試験三本が安全性懸念で中止に。

バイエルのAliqopa(copanlisib):17年にFL三次治療で加速承認。MZLなども組入れたrituximab併用対照試験でPFS延長に成功、適応拡大申請したが、全生存の解析が有意水準に届かず撤回。。

Secura BioのCopiktra(duvelisib):18年にFL三次治療が加速承認も市販後コミットメント試験を実施せず21年に返上。CLL/SLL三次治療は本承認。日本でヤクルトが開発中。

TG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)のUkoniq(umbralisib):21年に加速承認されたMZL二次治療とFL三次治療をどちらも返上。併用試験でPFSは達成も死亡リスク上昇。

インサイト(Nsdaq:INCY)のINCB050465(parsaclisib):21年にFLなどに加速承認を申請したが、今年1月に撤回。市販後確認試験を期限までに完了することが困難なため。

MEI Pharma/協和キリンのME-401( zandelisib):FL二次治療の加速承認を狙ったがFDAが対照試験の実施を要求したため断念。

注:FL=濾胞性B細胞リンパ腫、MZL=辺縁帯リンパ腫、SLL=小リンパ球性リンパ腫、CLL=慢性リンパ性白血病、PFS=無進行生存期間

PI3K阻害剤の第3相試験における死亡率
製品名試験薬群対照群HR(95%CI)
Zydelig(死亡率、vs. 偽薬):
未治療CLL8%3%3.34(1.08, 10.39)
治療歴iNHL5%1%4.72(0.6, 37.12)
治療歴iNHL8%6%1.51(0.71, 3.23)
Aliqopa(2年生存率、vs. 偽薬):
再発iNHL86%90%
Copiktra(死亡率、vs. ofatumumab)
治療歴CLL/SLL50%44%1.09(0.79, 1.51)
出所:FDAのODACブリーフィング資料(4/21付)

リンク: ENDPOINTSNewsの報道


CHMP、新薬三品の承認に肯定的意見
(2022年4月22日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、白樺抽出物などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら1~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

アイルランド籍のAmryt Pharma(Nasdaq:AMYT)のFilsuvez(カバノキ皮質抽出物のゲル製剤)は表皮水疱症治療薬。栄養障害型と接合部型の表皮水疱症患者の部分層創傷に塗布する。6ヶ月児以上が適応になる。臨床試験では45日創傷閉鎖達成率が41%と偽薬の28%を上回った(p=0.013)。主な有害事象は創傷/塗布箇所の各種合併症など。

21年3月に欧米で承認申請されたが、米国では審査完了通知を受領した。EUでは同社の類似薬であるEpisalvanも16年に承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース

ロシュのLunsumio(mosunetuzumab)はB細胞のCD20と細胞傷害性T細胞のCD3エプシロン鎖を架橋する二重特異性抗体。二次以上の治療歴を持つ成人の難治/再発濾胞性リンパ腫に単剤投与することを条件付き承認することが支持された。90人の臨床試験で完全反応率60%、客観的反応率は80%、メジアン反応持続期間は22ヶ月だった。米国でも承認審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

ノバルティスがインサイト(Nsdaq:INCY)からライセンスして開発したMET阻害剤、Tabrecta(capmatinib)も承認認が支持された。条件付き承認ではないようだ。METの遺伝子にエクソン14をスキップしてしまう変異があり、免疫療法且つ又白金治療歴のある非小細胞性肺癌が適応になる。米国では20年5月に加速承認、日本も同年6月にタブレクタ名で承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース

スイスのオブシーバ(Nasdaq:OBSV)がキッセイ薬品からライセンスして開発したYselty(linzagolix choline)は昨年12月に肯定的意見を得たが、欧州委員会から指摘があった模様で、再評価を経て再び肯定的意見となった。安全性懸念があったようだが、内容は不明。

非ペプチド系GnRH受容体アンタゴニストで再生産年齢期の成人女性の子宮筋腫に伴う中重度症状を治療する。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大が支持されたのは、

MSDのKeytruda(pembrolizumab):成人の再発リスクが高い局所進行性/早期トリプル・ネガティブ乳癌の切除術補助療法(術前に化学療法併用、術後は単剤)。米国では昨年7月に承認。

ロシュのTecentriq(atezolizumab):成人の再発リスクが高い非小細胞性肺癌の完全切除及び白金化学療法後維持療法。但し、PD-L1高度陽性(TC≧50%)でEGFR悪性変異/ALK変異のない場合。米国では昨年10月に承認され、PD-L1は陽性(TC≧1%)なら適応。日本でもPD-L1陽性に適応拡大申請中。

ギリアド・サイエンシズの子会社であるKite PharmaのYescarta(axicabtagene ciloleucel):成人の難治再発濾胞性リンパ腫の4次治療。米国では昨年3月に3次、4次治療に加速承認。

オルガノンのElonva(corifollitropin alfa):再生産医療補助薬として承認されている遺伝子組換え卵胞刺激ホルモン薬を14歳以上の成年男子の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の治療に用いる。

ノボ ノルディスクのNovoSeven:重度産後出血の治療。子宮収縮薬で十分に止血できない場合に用いる。

一方、メーカー側が承認申請を撤回したのは、まず、バイオジェンのAduhelm (aducanumab)。CHMPは薬効の立証が不十分で脳の浮腫や出血など安全性懸念もあることから昨年12月に否定的意見をまとめた再審請求を受けて再評価中だったが、諦めたのだろう。FDAに背中を押されて承認申請し米国では加速承認されたが、海外では支持されず米国でも医療や支払い側には受け入れられなかった。承認はゴールではなく出発点に過ぎないことを思い知らされる。

Orphazyme(Nasdaq Copenhagen:ORPHA.CO)のMiplyffa(arimoclomol)はニーマン・ピック病C型の治療薬として欧米で承認申請されたが、エビデンスとなるべき第2/3相試験はフェールしているため、米国では審査完了、CHMPも2月の予備的な採決で否定的な意見が多く、申請撤回となった。

【医薬品の安全性】


CHMP、PARP阻害剤Rubracaの一部適応を再検討開始
(2022年4月21日発表)

EUの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)のPARP阻害剤Rubraca(rucaparib)の適応の一つについて、再検討を始めたと発表した。白金薬治療歴のあるBRCA変異陽性卵巣癌の3次治療に関するもので、18年に条件付き承認した時の市販後コミットメント試験であるARIEL4試験が、主評価項目のPFS(無進行生存期間、治験医評価)は化学療法群を有意に上回ったものの、全生存期間の中間解析結果が見劣りしたため(初耳だ)。結論が出るまで新規に治療を開始しないよう推奨した(正式な勧告は欧州委員会が決定する)。

PFSのハザードレシオは0.64、p=0.001、メジアン値は7.4ヶ月対5.7ヶ月と2ヶ月弱の差があったが、全生存のハザードレシオは1.55(95%信頼区間1.085-2.214)、メジアン値は19.6ヶ月対27.1ヶ月だった。階層化因子である白金薬感受性に基づくサブグループ分析では、白金感受癌のハザードレシオは1.12、部分感受癌は1.15だが白金抵抗性癌サブグループでは1.72だった。

安全性の問題ではないようだ。CHMPによると、今回の推奨はRubracaのもう一つの適応症である白金薬による二次以降の治療に反応した患者の維持療法には当てはまらない。

Rubracaは米国でも承認されているので、FDAも何らかの情報を出すのではないか。

リンク: EMAのプレスリリース






今週は以上です。

2022年4月16日

第1046回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • 呼気による感染検査がEUA 
  • コミナティを5~11歳のブースターに申請へ 
  • 英国で第6のワクチンが承認 
  • BA.2に弱いため抗体医薬の認可申請を断念 
  • その他の領域: 
  • PI3K阻害剤の加速承認がまたもや返上に 
  • 抗生剤のサブスクはハウ・マッチ? 
  • CD3/CD20二重特異性抗体の承認申請を視野 
  • オプジーボの肺癌切除前投与試験の学会/論文発表 
  • IL-2とオプジーボの併用開発を断念 
  • 中国発の抗PD-1抗体をEUで承認申請 
  • 高アルギニン血症治療薬を承認申請 
  • レルゴリクスの適応拡大は遅延しそう 


【COVID-19関連】


呼気による感染検査がEUA
(2022年4月14日発表)

FDAはInspectIR SystemsのCOVID-19 BreathalyzerをEUA(非常時使用認可)した。呼気を検査してCOVID-19感染を診断する。鼻や喉のサンプルを取るのはクシャミの飛沫を浴びたりリスクを伴うし、幼児は嫌がって取れないかもしれないので、補完性が高そうだ。。所要時間は3分と早い。

2409人の試験で感度(陽性サンプルの的中率)が91.2%、特異度(陰性サンプルの的中率)が99.3%だった。感染率がたった4.2%のユニバースで行われた試験では陰性反応的中度(陰性判定の的中率)が99.6%だった。

FDAによると、GC-MS(gas chromatography gas mass-spectrometry)技術を用いて化学物質を抽出・特定し、SARS-CoV-2感染に付随する5種類のVOC(揮発性有機化合物)を検出する。

検出された場合は推定陽性と判定され、改めてPCR検査などで確認することになる。陰性であった場合でも即断せず、行動履歴や臨床兆候・症状など総合的に判定する。いつもの注意書きではあるものの、一次スクリーニング色が強そうだ。

供給や処理能力は案外で、機器の生産ペースは週100台、一台当たり検査能力は一日160件とのこと。イベント会場の入場者チェック等には不十分だ。

説明書の類はまだFDAのサイトにも同社のホームページにもアップされていない。同社HPで紹介されているInspectIR PNY-1000が上記製品に当たるのではないかと思われるが、機内持ち込み可能サイズのスーツケース型機器で、ストローのようなものを差し込んで10秒ほど息を吹き込む。消毒した上で排気するのか、機器内に貯め込むのかは不明。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: InspectIR Systemのホームページ


コミナティを5~11歳のブースターに申請へ
(2022年4月14日発表)

BioNTech(Nasdaq:BNTX)とファイザーは5歳以上12歳未満の小児にCOVID-19ワクチンComirnaty(tozinameran)をブースターショットした試験が良好な結果になったと発表した。米国などでレーベル変更申請を行う考え。

この第2/3相試験はプライマリー接種を終えてから6ヶ月経った5~11歳の140人が対象。用量はこの年齢層のプライマリー接種と同じ10mcg。1ヶ月後の中和抗体GMT(幾何平均力価)をプライマリー接種完了1ヶ月後のデータと比較したところ、野生株に関しては6倍に増加した。注目のオミクロン株に対するGMTはサブグループ30人のデータしかないようだが、36倍に増加した。

解釈は難しい。GMTとワクチン効率がどの程度パラレルに動くのかよく分からないからだ。そもそも、液性免疫が経時的に減衰しても細胞性免疫が維持され重症感染を防ぐことができるなら必ずしもブースターが必要とは限らない。重症化リスクが低いオミクロン株流行下では尚更だ。COVID-19ワクチン接種後にごく稀だが心筋炎を発症することがあり、リスクは20代以下の方が高いことも考慮しなければならない。一方、ある種の持病を持っている人は重症化リスクが相対的に高い。三密環境でクラブ活動などを行う人たちは感染リスクが高く、その分、重症感染症のリスクも高まるだろう。便益と危険のバランスはワン・サイズ・フィット・オールで考えるべきではない。 別件だが、先日New England Journal of Medicineに掲載されたOffit医学博士の論考を読んで、改めてそう思った。

リンク: 両社のプレスリリース
リンク: P. Offitのエディトリアル(NEJM)


英国で第6のワクチンが承認
(2022年4月14日発表)

スイスのワクチン会社、Valneva SE(Euronext Paris:VLA)は、VLA2001が英国で条件付き承認されたと発表した。18~50歳が対象。英国では既にmRNAワクチンが二品、アデノウイルス系ベクターのワクチンが二品、そして全長スパイク蛋白を抗原とするワクチン一品が承認されているが、不活化ウイルス・ワクチンは初めて。

英国の施設で18歳以上の4012人を組入れて4週おいて2回筋注した臨床試験では、中和抗体GMT(幾何平均力価)比がVaxzevria(アストラゼネカ)群を有意に上回った。抗体陽転率は両群とも95%超で非劣性だった。探索的評価項目とされたCOVID-19感染は両群同程度。注射箇所反応は各群73%と91%、全身性副反応は70%と91%で発生した。

スパイク蛋白を高密度化した弱毒化全ウイルス抗原をベースに、アルミとDynavax社のCpG 1018(TLR9アゴニスト)を添加して抗原性を高めたもの。3月にバハレーンで初承認された。

リンク: 同社のプレスリリース


BA.2に弱いため抗体医薬の認可申請を断念
(2022年4月14日発表)

Adagio Therapeutics(Nasdaq:ADGI)は抗SARS-CoV-2抗体ADG20(adintrevimab)の治療、暴露後発症予防、暴露前予防試験が何れも成功し、FDAにEUA申請を相談したが、諦めた。変異株出現に備えてSARS-CoV-2だけでなくSARSなど同系統のウイルスにも有効な抗体をスクリーニングして開発したが、オリジナルのオミクロン株には力価を維持するものの、BA.2中和力が十分ではないため。

BA.2は既存の抗SARS-CoV-2抗体でも有効なものは限られており、新たな選択肢が必要だ。尤も、オミクロン株は重症化率が低いので、抗SARS-CoV-2抗体や小分子抗ウイルス薬で重症化予防する便益も小さくなる。

リンク: 同社のプレスリリース

【今週の話題】


PI3K阻害剤の加速承認がまたもや返上に
(2022年4月15日発表)

米国ニューヨーク州の新興製薬会社、TG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)は、PI3Kデルタ阻害剤Ukoniq(umbralisib)の加速承認を自発的に返上し、新開発の抗CD20抗体TG-1101(ublituximab)の承認申請も撤回したと発表した。この二剤の併用試験で死亡リスクが高まる懸念が浮上したため。PI3K阻害剤は加速承認後の薬効確認が果たせず返上が相次いでいる。この二剤は来週22日に、他の案件はその翌日に、腫瘍学薬諮問委員会に上程される予定だったが、前者はキャンセルされた。

Ukoniqは12年にスイスのRhizen Pharmaceuticalからライセンス、21年にORR(客観的反応率)データに基づき辺縁帯リンパ腫の二次治療と濾胞性リンパ腫の4次治療に用いることがFDAに加速承認された。

安全性懸念が浮上したのは第3相UNITY-CLL試験。上記二剤を併用するU2レジメンの慢性リンパ性白血病におけるPFS(無進行生存期間、独立評価委員会判定)をGazyva(obinutuzumab)とchlorambucilの併用と比較するもの。以下は紆余曲折するが、中間解析は成功した。未治療患者ではハザードレシオ0.546、難治再発患者では0.60と有意に上回った。

一方、深刻有害事象は各群46%と23%、有害事象による治験離脱は17%対8%と忍容性は見劣りした。

副次的評価項目の全生存期間は検出力不足であるため21年3月の承認申請時点では未実施だったようだ。FDAの要請で行ったところ、ハザードレシオ1.23と好ましくない数値が出た。しかし、COVID-19関連の死亡を除くと1.04と大差なかったようだ。その後、追跡不能例を減らすべく追加調査したところ、1.23より改善したとのこと。

ところが、再びアップデートしたところ値が悪化、今回の決断に至ったと会社側は説明している。

ORRは癌が縮小すれば奏効とされるが、患者にとって癌の縮小は手段に過ぎず、目標は苦痛なく生き続けることだ。患者の40%で癌が消滅したが残りの60%は副作用で死亡した、という極端なケースもありえないとは限らないのだから、ORRを奏効率と呼ぶのは過大表示である。PFSはマシだが、今回のような例もあるので過信できない。

尚、TG-1101は再発型多発硬化症の維持療法薬として別途承認申請中で、審査期限は9月28日。

リンク: 同社のプレスリリース


抗生剤のサブスクはハウ・マッチ?
(2022年4月12日発表)

英国の医薬品等に関する費用対効果評価機関、NICEは、多剤耐性菌用抗生物質二品をサブスクリプション方式で調達する場合の妥当な支払額に関する草案を発表した。メーカー側との協議を経て最終決定する。QALF(質調整生存年)で表現しているため金額は不明だが、各剤年1000~2000万ポンド程度と推測される。

対象となるのは塩野義製薬のFetcroja(cefiderocol、米名Fetroja)と欧州ではファイザーが販売するZavicefta(ceftazidimeとavibactamの合剤、米国などではアッヴィのAvycaz)。3年契約+7年延長オプションで調達する場合、前者のQALFは970以上、後者は580以上が適正と推定した。

欧米政府がサブスク方式を検討しているのは、新規抗生物質の開発にインセンティブを与えるためだ。NICEによると、2020年時点で臨床開発中の新薬のうち、免疫腫瘍学薬は1800品あったのに対して、抗微生物薬は41品のみだった。多剤耐性菌に有効な薬が登場しても、多用すると新たな耐性菌が生まれるので、重症で他に治療手段がない時以外は使わない方が良い。みんなが望む薬を開発しても使われないパラドックスを解きほぐすために、使用量に関わらず毎年一定額を製薬会社に支払う。

英国以外に米国などもサブスク方式を検討している。世界の抗生物質市場に占める英国のシェアは3%とのことなので、世界に広がれば各剤のサブスク収入が年10億ドル規模に達する可能性がありそうだ。米国の優先審査バウチャ制度を上回る大きなインセンティブになりうる。

リンク: NICEのプレスリリース

【新薬開発】


CD3/CD20二重特異性抗体の承認申請を視野
(2022年4月13日発表)

アッヴィとデンマークのジェンマブ(Nasdaq:GMAB)はDuoBody-CD3xCD20(epcoritamab)の第1/2相試験、EPCORE NHL-1の第1コフォートが良好な結果になったと発表した。承認審査機関に報告する考え。承認申請を打診するのだろう。

難治再発の大細胞型B細胞リンパ腫で二次以上の治療歴を持つ患者157人を組入れた単群試験で、ORR(確認客観的反応率、独立評価委員会方式)が63.1%、反応持続期間はメジアン12ヶ月だった。G3/4治療時発現有害事象は骨髄抑制が中心で、サイトカイン放出症候群は2.5%の患者でG3が報告された。尚、被験者の39%がCAR-T療法歴を持っていた。

細胞傷害性T細胞のCD3とB細胞のCD20を架橋する二重特異性抗体で、両社のこの分野における共同開発提携の成果。米国と日本市場は両社が共同で、他の地域はアッヴィが開発販売する予定。

類薬ではロシュが一足早くRG7828(mosunetuzumab)を濾胞性リンパ腫の三次治療薬として欧米で承認申請中。

リンク: 両社のプレスリリース


オプジーボの肺癌切除前投与試験の学会/論文発表
(2022年4月11日発表)

ブリストル マイヤーズ・スクイブはOpdivo(nivolumab)の肺癌ネオアジュバント試験の結果をAACR(米国癌研究会)とNew England Journal of Medicine誌で発表した。ステージIBからIIIAの切除可能非小細胞性肺癌を対象に、化学療法による術前付随療法に更にOpdivoを追加する効果を検討した無作為化割付オープンレーベル試験で、Opdivoは360mgを3週毎に最大3回投与した。尚、この試験はOpdivoとYervoy(ipilimumab)を併用する群も設定されたが、途中で組入れ中止となった。

主評価項目のうち、pCR(病理学的完全反応率、独立盲検評価)は化学療法だけの群が2.2%、Opdivo併用群は24%と大きな差があった。各群75%と83%の患者が摘出術に進んだ。もう一つのEFS(病気の進行や再発なく生存、独立盲検評価)もハザードレシオ0.63、97.38%信頼区間0.43-0.91、p=0.0052、各群のメジアン値は20.8ヶ月と31.6ヶ月だった。

このデータに基づき3月にFDAが適応拡大した。BMSは2月28日に申請し受理されたことを公表したが、FDAは4ヶ月以上前倒しで3月4日に承認したので、私たちにとっては一週間もしない光速承認だった。

この試験の特徴は様々なステージの患者をPD-L1不問で組入れたこと。FDAの承認内容も切除可能非小細胞性肺癌という幅広いものだったが、実際は、PD-L1陰性サブグループやステージIBやIIのサブグループのEFSハザードレシオは0.85~0.87とそれほど良くはなかったようだ。G3-4の治療時発現有害事象は大差なかったので、適応外にするほどでもないという判断なのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Fordeらの治験論文抄録(NEJM)


IL-2とオプジーボの併用開発を断念
(2022年4月14日発表)

Nektar Therapeutics(Nasdaq:NKTR)とブリストル マイヤーズ・スクイブは、前者のNKTR-214(bempegaldesleukin)と後者のOpdivo(nivolumab)の併用試験を打ち切ると発表した。悪性黒色腫の第3相に続いて、腎細胞腫の第3相と膀胱癌の第2相がフェールしたため。

抗PD-1/PD-L1抗体の大成功を受けて、免疫チェックポイント阻害薬とシナジーを生みそうな作用機序の薬の開発が活発化、今年3月にはBMSのnivolumabと抗LAG-3抗体relatlimab-rmbwの同梱製品、Opdualagが米国で悪性黒色腫に承認された。

IL-2は癌の微小環境でNK細胞やT細胞の量やPD-1発現を増強するためシナジーが期待されたが、品質の安定性に懸念が生じたり、順調には進まなかった。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認申請】


中国発の抗PD-1抗体をEUで承認申請
(2022年4月6日発表)

ノバルティスはEUでtislelizumabを非小細胞性肺癌や食道癌向けに承認申請したと発表した。中国の百済神州(Nasdaq:BGNE)から日米欧市場などでライセンスした抗PD-1抗体で、米国でも承認申請中だが、EUのほうが適応症が多い。FDAは、中国だけで臨床試験が実施された、類薬が既に存在する抗癌剤に関して、厳しいスタンスを取っているが、EUはどう考えているのだろうか?

EUで申請した4種類の適応/用法のうち、局所進行性/転移性非小細胞性肺癌一次治療化学療法併用は、扁平上皮腫試験も非扁平上皮腫試験も中国だけで実施された。非小細胞性肺癌の単剤二次治療試験はグローバルだが、中国以外の施設はロシアや南米などだった。一方、切除不能難治/局所進行/転移食道扁平上皮腫の単剤二次治療試験は中国のほかにアメリカや日本、欧州なども参加している。米国で承認申請されtのは食道扁平上皮腫だけだ。

中国は複数の抗PD-1抗体が承認されていて価格競争力を武器に高いシェアを占めている。このうちInnovent Biologics(HKEX:01801)が開発したsintilimabはイーライリリーがライセンスして米国で進行/転移非扁平上皮非小細胞肺癌の一次治療化学療法併用薬として承認申請したが、FDAは批判的で、諮問委員会も大多数の委員が反対、今年3月に審査完了通知を受領した。中国で実施される臨床試験の厳格性や倫理性、外挿性等に関する懸念が背景のようだ。

リンク: ノバルティスのプレスリリース


高アルギニン血症治療薬を承認申請
(2022年4月12日発表)

米国テキサス州のAeglea BioTherapeutics(Nasdaq:AGLE)はAEB1102(pegzilarginase)を高アルギニン血症(アルギナーゼ1欠乏症)治療薬としてFDAに承認申請した。臨床試験では血漿アルギニンが大きく低下した。運動機能改善効果は確認されなかったが、希少疾患であることや、障害が比較的軽い患者では改善が見られたことなどから、承認される可能性がありそうだ。

高アルギニン血症は尿素サイクルの最終段階に登場する酵素、アルギナーゼ1の遺伝子の機能喪失変異による常染色体劣性遺伝性疾患で、アルギニンが分解されずに血中量が上昇する。治療しないと痙攣や発達遅滞を招く。AEB1102はPEG化遺伝子組換え型ヒト・アルギナーゼ1の酵素補充療法。2歳以上の32人を偽薬と2対1割付して24週間治療した第3相では、平均血漿アルギニン値が71%低下し、偽薬群の5%低下と大きな差があった。正常化達成率も91%対0%だった。

副次的評価項目の運動機能(GMFM-E)は4.2単位改善と偽薬群の0.4単位悪化を上回ったがp=0.1087とフェールした。

一方、GMFCS(Gross Motor Function Classification System:本来は脳性麻痺の運動機能障害をIからVの5段階で評価するもので小さいほど軽い)がレベルI-IIIの26人では三種類の運動機能検査の一つ以上が改善した患者の比率が偽薬群より多かった(65%対44%)。

EUでも年内に承認申請する計画。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


レルゴリクスの適応拡大は遅延しそう
(2022年4月12日発表)

住友ファーマの子会社であるMyovant Sciences(NYSE:MYOV)は武田薬品からゴナドトロピン放出ホルモン受容体拮抗剤relugolixを欧米などでライセンス、前立腺癌用薬Orgovyxとして承認を取得するとともに、エストロゲンやプロゲスチンを配合したアドバック療法薬Myfembree/Ryeqoとして子宮筋腫による過剰出血に承認を獲得した。配合剤は子宮内膜腫に伴う疼痛治療薬として米国で適応拡大申請中で、審査期限は5月6日だが、遅れそうだ。FDAから、申請内容の欠陥が見つかったため承認審査の最終段階であるレーベルや市販後確認試験に関する協議に進めない旨の通知があったため。理由は不明。

この種の薬は連続使用期間に制限が付く。religolixは日本で武田がレルミナ名で販売しているが、連続投与は6ヶ月以内。一方、米国は、副作用軽減を狙い最初から配合剤を開発したことが奏功したのか、24ヶ月以内と競合品より長く使うことができることが特徴。

リンク: 両社のプレスリリース






今週は以上です。

2022年4月9日

第1045回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • ECDC・EMA、免疫不全を除き再追加接種は時期尚早 
  • 抗アンドロゲンの入院予防試験が成功? 
  • ゼビュディのEUAを取りやめ 
  • アクテムラを正式に承認申請 
  • その他の領域: 
  • CMS、アデュヘルムは臨床試験以外カバーせず 
  • ACC:SRTの前にmavacamtenを試してもよい 
  • デュピクセントを好酸球性食道炎に適応拡大申請 
  • フリードライヒ運動失調症用薬を承認申請 
  • FDA、バダデュスタットの小児試験に停止命令 
  • リアル・ワールド・データでPROS用薬が承認 
  • TSC用薬ラパリムスゲルが米国でも承認 


【COVID-19関連】


ECDC・EMA、免疫不全を除き再追加接種は時期尚早
(2022年4月6日発表)

米国のFDAとCDC(疾病管理予防センター)はCOVID-19ワクチンの追加接種を受けて4ヶ月以上経った50歳以上の人がもう一回接種することを容認したが、ECDC(欧州疾病管理予防センター)とEMA(欧州医薬品庁)は、従来から推奨している免疫不全状態の人以外は、時期尚早との声明を出した。現時点ではCOVID-19による重症感染や死亡のリスクが低く、また、最初の追加接種による重症感染予防効果が顕著に低下したことを示唆するEU地域でのデータがないため。再追加接種の効果の持続性が不明であることも指摘している。

最終的な勧奨は加盟国が夫々に行う。EU/EEA地域では成人の83%がプライマリー接種を、63%がブースター接種を受けた(3月末時点)。既に独仏など9ヶ国が人口の一部に再追加接種を勧奨している。呼吸器感染症が増加する冬に向けて検討している国も多いようだ。

再追加接種のエビデンスは免疫原性試験や疫学研究が中心。ECDCとEMAの共同声明によると、接種が早かったイスラエルのデータでも有効性が示唆されたのは60歳以上とのこと。追加接種後4ヶ月以上経過すると感染予防効果が低下するが、重症・死亡予防効果はそれほど低下しない。米国の疫学研究では入院予防効果(ワクチン効率)が追加接種の1~2ヶ月後の90%強から4ヶ月経過後は80%弱に低下するが、10ポイントしか低下しないと考えることもできそうだ。

このため、両者は、免疫不全でない人にもう一回追加接種することは現時点では支持されないと判断した。もし重症化リスクが上昇したり免疫力が低下する現象がEUで見られた場合は、80歳以上など高リスク人口を対象に接種を検討するよう勧奨した。この場合、オミクロン株などに対応したワクチンを使うことが望ましいとした。

米国も、臓器移植を受けて強力な免疫抑制療法を受けているなど免疫不全状態の人を除いて、再追加接種を勧奨していない。FDAもCDCも、したいなら接種していいよと言っているだけであることを強調したい。

リンク: ECDCとEMAの共同声明

抗アンドロゲンの入院予防試験が成功?
(2022年4月6日発表)

中国のKintor Pharmaceutical(HKEX:9939)はGT-0918(proxalutamide)の第3相軽中等症COVID-19外来治療試験が成功したと発表した。米国や中国で認可申請する考え。

proxalutamideは非ステロイド抗アンドロゲン。SARS-CoV-2のスパイク蛋白が宿主細胞のACE2に結合して細胞内に入り込む上で必要なTMPRSS2(transmembrane protease, serine 2)を阻害し、Nrf2パスウェイを活性化してIL-6の分泌抑制などの抗炎症作用も発揮する。ブラジルの第3相研究者主導試験(COVID-19感染者590人に偽薬または300mgを一日一回、14日間投与)で症状改善、入院期間短縮化、死亡率抑制の効果を示した。死亡率は3.7%、偽薬群は47.6%と、俄かには信じられないほど大きな差が出た。

今回の第3相(NCT04870606)は米国の施設で200mgを一日一回、14日間投与する効果を偽薬と比較した無作為化割付偽薬対照二重盲検。昨年12月に中間解析(n=348)フェールを公表した時に、治験のデザインを変更して高リスク患者の組入れを増やす旨、書いていたが、実際に何を変えたのかは過去の治験登録を見ても良くわからない。

今回の解析(n=733)では1日以上投与を受けた被験者(n=730)では試験薬群の入院が4人(死亡はゼロ)、偽薬群は8人(1人)でリスクが50%小さかった。1日超投与を受けた被験者(n=721)では各2人(ゼロ)と7人(1人)で71%小さい。。7日超投与(n=693)では各ゼロと6人(1人)でp<0.02だった。pが記載されているのはこの項目だけなので、おそらくこれが主評価項目なのだろう。

デルタでもオミクロンでもウイルス量抑制効果が見られた。治療時発現有害事象が試験薬群の9.6%、偽薬群の7.9%で発生したが深刻なものはなかった。

治験デザインに関する記述によると主評価項目には酸素投与も含まれているが、結果に関する記述では言及されていない。重症化リスクの低いオミクロン株の流行を踏まえて、途中でデザインを見直し酸素投与を追加して検出力を高めるようなことがあったとしても不思議ではないが、一旦決めたものの、結果を見て元々の主評価項目のデータをチェリーピックしたなんてことも考えられないではない。ちゃんとした発表を見たいものだ。

リンク: 同社のプレスリリース


ゼビュディのEUAを取りやめ
(2022年4月5日発表)

FDAはsotrovimab(Xevudy)を最早EUA(非常時使用認可)しないと発表した。昨年5月に12歳40kg以上の成人小児の軽中等症COVID-19の外来治療薬としてEUAしたが、米国の全地域でBA.2感染が過半を占めるようになったため。

この抗SARS-CoV-2抗体はオミクロン株(BA.1)やその派生株であるBA.1.1には有効だがBA.2にはIC50が10~30倍と弱い。米国はBA.1からBA.1.1に流行が変遷したが、徐々にBA.2の感染シェアが上昇してきた。FDAは東海岸や西海岸などBA.2が過半を占めるようになった地域を逐次、適応外に指定してきたが、最後に残ったアイオワ州などを含む地域やコロラド州などの地域でも過半に達したため、全米的なEUA取り止めを決めた。

sotrovimabはグラクソ・スミスクラインがサンフランシスコのVir Biotechnology(Nasdaq:VIR)からライセンスしてグローバルに商品化した。

抗SARS-CoV-2抗体のうち今年2月にEUAされたイーライリリーのbebtelovimabはBA.2にも活性を持つ。治療用途は未承認だが暴露前予防薬として欧米で認可され治療試験も成功済みであるアストラゼネカのEvusheld(tixagevimab、cilgavimab同梱製品)はBA.1やBA.1.1には増量が必要だがBA.2には効果を維持している。今後は、これらや小分子の抗ウイルス薬に頼ることになる。

リンク: FDAのプレスリリース


アクテムラを正式に承認申請
(2022年4月4日発表)

ロシュはActemra(tocilizumab)をCOVID-19の治療に用いる適応拡大をFDAに申請した。酸素投与や侵襲的/非侵襲的機械換気、ECMOを必要とする成人入院患者で全身性コルチコステロイド治療を受けている患者を対象する予定。昨年6月にEUA(非常時使用認可)されているが、EUAは正式な承認ではないので、流行が収まったら取消されてしまう。エビデンス充実の観点からも正式に承認を取得することが好ましい。

但し、EUAは2歳以上が対象だが今回は成人のみだ。

臨床試験のエビデンスは区々で、RECOVERY試験では28日死亡率が30.7%と偽薬群の34.9%を有意に下回ったが、EMPACTA試験やCOVACTA試験、REMDACTA試験ではトレンドに留まるか偽薬群と大差なかった。死亡リスクに関しては検出力不足だった可能性もあるが、主評価項目すら達成できなかった試験も多い。RECOVERY試験でも全身性コルチコステロイドを同時使用しなかったサブグループでは死亡リスクが数値上、高まった。欧米共にステロイド併用を義務付けているのはこのためだ。免疫抑制剤の併用が良くないというのはよくある話だが、逆は理解できない。

リンク: ロシュのプレスリリース

【今週の話題】


CMS、アデュヘルムは臨床試験以外カバーせず
(2022年4月7日発表)

米国で高齢者や低所得者向けの医療制度を管轄するCMS(Centers for Medicare and Medicaid Services)は、バイオジェンがエーザイと共同開発して昨年、加速承認されたAduhelm(aducanumab-avwa)のような抗アミロイド抗体型アルツハイマー病薬に関して、適格臨床試験に参加する患者以外は医療費給付しない方針を決定した。1月発表の草案を踏襲した。CMSの基準を満たす臨床試験に参加できるのは一部の医療施設・患者だけであり、患者にとっては偽薬群に割付けられる可能性のある未承認の開発品と同じようなものである。

FDAが承認していない用途にCMSが医療費給付するのは珍しくないが、逆は極めて異例。臨床試験でアミロイド・ベータ削減効果が見られたが、認知機能や日常生活機能の悪化を遅らせる効果が確立しなかったことが響いた。バイオジェンは市販後コミットメント試験で確認する計画だが、成否が判明するのは26年頃の見込み。両社が共同開発しているBAN2401(lecanemab)やイーライリリーのLY3002813(donanemab)、ロシュのR1450(gantenerumab)の同様な試験より遅れるため、これらが全滅しない限り、Aduhelmは「米国で18年ぶりに承認された新薬」以外の称号を獲得できないだろう。の一行で終わるだろう。

尚、このNational Coverage Decisionは臨床的な便益を反映する直接的な薬効指標に基づいて承認された薬に関しても適格臨床試験参加者以外は給付しないとしているが、レジストリでもよいので、ハードルが低くなる。目的はアミロイドベータ量などのバイオマーカーと臨床症状の相関性や患者、医師、施設による便益や副作用リスクの違いを調査することなので、症例が積み重なれば条件が緩和されるのではないか。

リンク: CMSのNational Coverage Decision

【新薬開発】


ACC:SRTの前にmavacamtenを試してもよい
(2022年4月2日発表)

ブリストル マイヤーズ・スクイブはmavacamtenの第3相閉塞性肥大性心筋症試験、VALOR-HCMの結果をACC(米国心臓学会)で発表した。SRT(中隔縮小療法)が適応になる閉塞が進んだ患者112人を組入れて、SRTが決定したリ16週経っても適応外にならない患者の比率を調べたところ、18%と偽薬群の77%を大きく下回った。治療ガイドラインに基づきSRTが適応ではなくなったと判定された患者数に大きな違いが出た。副次的評価項目であるNYHA機能クラス(ベースライン時点で9割超がIII)が1段階以上改善した患者の比率にも有意な差があった。

LVEF(左心駆出率)低下リスクがあるようで、本試験では2人が50%を下回った。プロトコル通りに数値をモニタリングして小まめに用量調節する必要があるようだ。

20年にMyoKardia社を131億ドルで買収して入手した、心臓ミオシンATPaseのアロステリック・モジュレーター。今年3月に米国で承認申請が受理された。pLVOT(ピーク左心室流路)勾配が50mm/Hg以上でSRTは適応にならない、被験者の7割がクラスIIIだったEXPLORER-HCM試験に基づくもので、30週後の臨床的反応率(NYHAクラスが改善且つ最大酸素摂取量が1.5mL/kg/分以上改善、または最大酸素摂取量が3mL/kg/分以上改善)が36.6%と偽薬群の17.7%を有意に上回った。この試験でも5%程度の患者でLVEFが50%未満に低下したが、多くは用量調整で対処できた。審査期限は延長されて4月28日になった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


デュピクセントを好酸球性食道炎に適応拡大申請
(2022年4月4日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とサノフィは、抗IL-4Rサブユニット抗体Dupixent(dupilumab)を12歳以上の好酸球性食道炎の治療に用いる適応拡大をFDAに申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は8月3日。

好酸球性食道炎は米国で16万人がステロイドなどの治療を受けているが、4.8万人が管理不良と言われている。正式に承認されている薬はない。Dupixentの第3相試験の一本では、300mg週一回皮注群の64%で症状改善(自己評価)が見られた。偽薬群は41%だった。各群59%と6%で食道上皮内の好酸球数抑制に成功した。

Dupixentは米国でアトピー性皮膚炎、好酸球数増加を伴うまたは経口ステロイド治療が必要な喘息症、そして鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎の治療に承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


フリードライヒ運動失調症用薬を承認申請
(2022年3月31日発表)

Reata Pharmaceuticals(Nasdaq:RETA)はRTA 408(omaveloxolone)の米国におけるローリング承認申請を完了したと発表した。承認されたならば、フリードライヒ運動失調症の初めての治療薬になる。常染色体劣性遺伝性の緩徐性運動失調症で、遺伝子の三塩基異常伸長によりミトコンドリア蛋白であるフラタキシンが欠乏、筋肉の衰弱や言語障害、心臓疾患などをもたらす。RTA 408はNrf2転写因子を活性化する。103人を組入れて150mg一日一回投与の効果を検討した試験でmFARSが48週後に1.55改善、0.85悪化した偽薬群と有意な差があった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA、バダデュスタットの小児試験に停止命令
(2022年4月7日発表)

Akebia Therapeutics(Nasdaq:AKBA)はHIF-PH阻害剤vadadustatを成人の腎性貧血治療薬として開発、米国で承認申請したが3月に審査完了通知を受領した。4月7日にSEC(米国証券取引委員会)に提出したフォーム8-Kの中で、4月4日に人員削減を決定したことを報告するついでに、「その他の事象」として、4月1日にFDAから臨床試験を部分停止するよう通知を受けたことを明らかにした。このフォーム8-Kは4月1日付となっており、公表も提出も遅れた恰好だ。

部分停止命令の対象は小児試験。理由は明らかではない。FDAがvadadustatを承認しなかったのは透析患者を組入れた試験で血栓塞栓リスクが見られたこと、保存期の試験で心血管疾患リスクがエポエチン製剤比非劣性ではなかったこと、薬物誘導肝障害の懸念が理由。改めて確認試験を行うよう推奨したのだから、成人に臨床試験を行う際のリスクは許容範囲と考えているのだろう。

欧州ではライセンシーの大塚製薬が承認申請中。日本ではライセンシーの田辺三菱製薬が承認取得し、20年8月にバフセオ名で発売した。

リンク: Akebia社のフォーム8-K(4月1日付!)

【承認】


リアル・ワールド・データでPROS用薬が承認
(2022年4月6日発表)

ノバルティスはFDAがVijoice(alpelisib)をPROS(PIK3CA関連過成長症候群)用薬として加速承認したと発表した。2歳以上が適応。この100万人に14人の希少疾患の薬が承認されたのは初めて。

PROSはPIK3CA遺伝子の機能獲得変異によりPI3K/AKT/mTOR経路が異常活性化する病気の総称。血管やリンパ系が異常成長し、機能障害や発達遅延、疼痛など様々な症状が現れ、QOLや社会生活にも影響する。

Vijoiceの活性成分はPIK3CA変異のあるホルモン受容体陽性乳癌用薬、Piqrayと同じ。Piqrayは150mgフィルムコート錠を二錠、一日一回食中服用し、副作用が生じたら250mgそして200mgに減量する。規格は50mg、150mg、200mg。Vijoiceは成人は250mgフィルムコート錠を一日一回、食中服用。小児は50mg錠一日一回食中で開始、6歳以上は臨床/放射線学的評価により応答不十分と判定した場合は125mg錠に増量しても良い。規格は50mg、125mg、250mg。なぜ商標名や用量が異なるのかは不明。

エビデンスは、コンパッショネート・ユース・プログラムを通じて投与を受けた重症患者の後顧的チャート・レビュー研究、EPIK-P1。主評価項目はベースライン時点で標的病変データのある患者における20%縮小奏効率。第24週時点で37人中10人が達成した(因みに、昨年のESMO発表時は32人中12人だった)。副次的評価項目の症状改善奏効率は、疼痛が22人中20人、疲労は42人中32人、播種性血管内凝固症候群は29人中16人だった。主な有害事象は下痢、口内炎、高血糖など。G3/4は蜂巣炎が4%の患者で発生した。

リンク: 同社のプレスリリース


TSC用薬ラパリムスゲルが米国でも承認
(2022年4月4日発表)

ノーベルファーマはFDAがHyftor(sirolimusゲル0.2%)を結節性硬化症(TSC)に伴う顔面血管線維腫の治療薬として承認したと発表した。この疾患の治療薬も、同社の製品も、米国で承認されるのは初めて。

TSCは常染色体優性遺伝による希少疾患で、mTOR(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)の活性を抑制すべき蛋白の機能不全により、上衣下巨細胞性星細胞腫などの良性腫瘍ができやすい。血管線維腫は75~80%の患者で発現する。sirolimusは放線菌由来のmTOR阻害剤。

活性成分はワイスが腎移植後拒絶反応防止薬として実用化した。局所製剤はノーベルファーマが開発、日本で18年に承認・発売された。

リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)





今週は以上です。

2022年4月2日

第1044回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • FDA、mRNAワクチンの二回目のブースター接種を認可 
  • BA.2に有効な抗体医薬がEUでも予防薬として承認 
  • Adagio社、抗SARS抗体を申請へ 
  • イベルメクチンの大規模試験がフェール 
  • その他の領域: 
  • 活性化PI3Kデルタ症候群治療薬を承認申請へ 
  • PARP阻害剤の卵巣癌メンテ試験がまた成功 
  • ロシュ、抗TIGIT抗体の第3相がフェール 
  • FDA、PI3K阻害剤は加速承認しない 
  • 眼科用ベバシズマブを承認申請 
  • 大鵬薬品、FGFR阻害剤を承認申請 
  • 解離性ステロイドをDMDにローリング承認申請着手 
  • 抗葉酸受容体抗体薬物複合体の承認申請を断行 
  • IgA腎症治療薬を承認申請 
  • FDA、バダデュスタットも承認せず 
  • FDA諮問委員会、ALS用薬の評価が二分 
  • CHMP、CAR-Tなどに肯定的意見 
  • イエスカルタがLBCLの二次治療に承認 
  • フェンフルラミンがレノックス・ガストー症候群にも承認 


【COVID-19関連】


FDA、mRNAワクチンの二回目のブースター接種を認可
(2022年3月29日発表)

FDAはBioNTech/ファイザーとモデルナのmRNAワクチンを二回目のブースター接種に用いることをEUA(非常時使用認可)した。50歳以上と、臓器移植レシピエントまたはそれと同様な免疫不全状態にある前者のワクチンの場合は12歳以上、後者は18歳以上の人で、初回のブースターから4ヶ月以上経った人が適応になる。初回ブースターと異なる製品でもよい。

FDAによると、前者のワクチンはイスラエルの70万人規模の安全性実績と154人の中和抗体誘導試験、後者は120人の安全性データと中和抗体誘導試験がエビデンス。

メーカー側は夫々、65歳以上と18歳以上の人口を想定して申請したが、FDAは独自に判断した。

報道によると、FDA側は今秋にも三回目のブースター接種が必要になる可能性を否定しなかった。

リンク: FDAのプレスリリース


BA.2に有効な抗体医薬がEUでも予防薬として承認
(2022年3月28日発表)

アストラゼネカはEUがEvusheld(tixagevimab、cilgavimab)を12歳以上で体重が40kg以上の人のCOVID-19感染症予防薬として承認したと発表した。二種類の抗SARS-CoV-2抗体の同梱製品で、各剤150mgを順番に筋注する。オミクロン株のうちBA.1と米国などで流行しているBA.1.1には効果が低下するが、欧州の一部の国で主流となったBA.2に高い活性を維持していることが特徴。日本も参加した、高リスク感染者の治療試験も成功したので、年内にも適応拡大されるだろう。

FDAは昨年12月に予防薬としてEUAした後、BA.1やBA.1.1に対する力価低下を補うため、投与量を各剤300mgと倍増した。EUも至適用量の検討を続ける考え。

リンク: 同社のプレスリリース


Adagio社、抗SARS抗体を申請へ
(2022年3月30日発表)

Adagio Therapeutics(Nasdaq:ADGI)はADG20(adintrevimab)の第2/3相COVID-19感染予防試験と治療試験が成功したと発表した。第2四半期にEUAを申請する予定。

SARS-CoV-2だけでなくSARS-CoV-1やWIV1、SHC014など様々な類似ウイルスも阻害できる抗体医薬。300mgを一回、筋注する。予防試験のPrEP(暴露前予防)コフォートでは症候性感染が偽薬比71%少なかった。尚、このコフォートは3ヶ月間追跡したが、オミクロン株出現後の時期は解析対象から除外された。オミクロン株出現後の被験者だけの解析では4割程度の相対リスク削減が見られた。PEP(曝露後予防)コフォートは28日間の症候性感染が75%少なかった。軽中等症患者約330人を治療した試験ではCOVID-19関連入院・死亡が66%少なかった。

忍容性は概ね良好で深刻有害事象の発生率は予防試験では両群同程度、治療試験では試験薬群のほうが少なかった。

この抗体医薬はオミクロン株にはある程度の効果がありそうだが、パスツール研究所などの研究によると、BA.2はadintrevimabやsotrovimabに抵抗性を持つ。米国でも東部を中心にBA.2のシェアが高まっており、FDAがEUAするかどうかは不透明だ。

リンク: 同社のプレスリリース


イベルメクチンの大規模試験がフェール
(2022年3月30日発表)

日本発の経口駆虫薬ivermectinは高用量でSARS-CoV-2の増殖抑制作用が見られ、疫学試験で死亡リスクを大きく低下させる可能性が浮上したため、世界的に注目を集めた。しかし、前向き介入試験の結果は区々で、WHOも、FDAも、EMAも、エビデンス不足を理由に臨床使用を推奨していない。それでも強力な支持者たちはめげず、根拠ではなく信念に基づく医療を続けている模様だ。

答えを出すのに必要な大規模な試験の結果がNew England Journal of Medicine誌に論文刊行された。ブラジルの12の医療施設で実施されているTOGETHERプラットフォーム試験のivermectinコフォートに関するもので、発症7日以内の高リスク外来患者1358人(ワクチン接種歴不問)を偽薬とivermectin(400mcg/kgを一日一回、3日間投与)に無作為化割付して、入院/長時間ER入室リスクを28日間追跡した。結果は、相対リスクが0.90となったもののベイズ確率に基づく95%信頼区間上限が1.16となり、臨床上意味のある効果はないという仮説が棄却されなった。

ivermectinはオックスフォード大学もPRINCIPLE試験で1500人規模の割付を行っている。良質なエビデンスが蓄積されるにつれて真贋が明確になるだろう。

リンク: Reisらの治験論文(NEJM)

【新薬開発】


活性化PI3Kデルタ症候群治療薬を承認申請へ
(2022年4月1日発表)

オランダのPharming(Euronext Amsterdam:PHARM)はleniolisibの第2/3相APDS(活性化PI3Kデルタ症候群)治療試験の結果を学会発表した。リンパ節腫脹の縮小とナイーブB細胞比率の上昇が見られた。第2四半期中に欧米で承認申請する予定。

APDSは100万人に一人の希少原発性免疫不全。遺伝子変異によりPI3Kデルタが異常に活性化し免疫細胞の成熟が妨げられる。leniolisibは19年にノバルティスから開発販売権を取得した。

今回の試験はノバルティスが実施。APDSの成人小児37人を組入れて70mgを一日二回、85日間経口投与して効果を偽薬と比較した。主評価項目の一つであるリンパ節腫脹の対数変換直径積和の調整変化は各群-0.30と-0.06でp=0.0012。ナイーブB細胞比率はベースライン(48%未満)比34.76%増と5.37%減となり、p<0.0001。深刻有害事象は偽薬群より少なく、薬物関連と見なされるものはなかった。

早くもClinicalTrials.govに試験結果が登録されている。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: 治験成績(ClinicalTrials.gov)


PARP阻害剤の卵巣癌メンテ試験がまた成功
(2022年3月31日発表)

Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)はPARP阻害剤Rubraca(rucaparib)の卵巣癌一次治療後維持療法試験が成功したと発表した。第2四半期に米国で、第3四半期にはEUでも、適応拡大申請する予定。

白金薬レジメンに応答した患者を組入れたATHENA試験の単剤投与パートに関するもので、538人を偽薬群と4対1割付してPFS(無進行生存期間、治験医評価)を比較したところ、最初の主評価項目であるHRD(相同組換え機能修復不全)陽性サブグループ234人の解析が成功した(ハザードレシオ0.47、各群のメジアン値は28.7ヶ月と11.3ヶ月)。この指標が成功した時だけ行われるintent-to-treatベースの解析も成功した(各0.52、20.2ヶ月、9.2ヶ月)。

このような場合に、HRD陰性サブグループにも効果があるのか素朴な疑問を常に感じるが、今回は答えがあった。探索的な解析という位置付けだが、各0.65、12.1ヶ月、9.1ヶ月と、HRD陽性ほどではないにしても効かないようには感じられない。

類薬ではグラクソ・スミスクラインのZejula(niraparib)が17年に、アストラゼネカのLynparza(olaparib)がBRCA悪性変異型限定だが18年に、同様な用途用法で承認されている。

ATHENA試験で注目すべきはRubracaに更にnivolumabを追加するATHENA-COMBOパートの成績だろう。23年第1四半期に判明する見込み。

リンク: Clovisのプレスリリース


ロシュ、抗TIGIT抗体の第3相がフェール
(2022年3月30日発表)

ロシュは抗TIGHT抗体RG6058(tiragolumab)の第3相小細胞性肺癌試験がフェールしたと発表した。進展型小細胞性肺癌の一次治療としてTecentriq(atezolizumab)、carboplatin、etoposideの3剤併用レジメンに追加する効果を検討したが、主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)がフェールし、全生存期間の解析は未成熟ではあるものの最終解析が成功する可能性は低いと判定された。

抗TIGHT抗体の開発は人気があり、ロシュは非小細胞性肺癌や食道扁平上皮腫の第3相も実施中。最初の開票が外れだったのは残念だが、元々、懐疑的な意見があった模様だ。

リンク: 同社のプレスリリース


FDA、PI3K阻害剤は加速承認しない
(2022年3月24日発表)

MEIファーマと協和キリンはME-401(zandelisib)を第二相単群試験の反応率データに基づいて米国で承認申請する計画だったが、断念した。FDAは多くのPI3K阻害剤を第2相データに基づき加速承認してきたが、方針転換した。

加速承認された薬は市販後に改めて延命またはそれに準じる効果を立証する必要があるが、複数の薬の市販後コミットメント試験が、様々な理由でフェールしたり打ち切られたりして、加速承認の返上に至っている。その後も、TG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)が抗CD20抗体とPI3K阻害剤を併用で慢性リンパ性白血病を治療した試験でPFS(無進行生存期間)がobinutuzumab・chlorambucil併用群を有意に上回ったが、死亡リスクはむしろ上昇する懸念が浮上した。FDAは4月21~22日に腫瘍学薬諮問委員会を招集してPI3K阻害剤を加速承認する当否やTG社の併用試験について意見を聞く予定だが、PI3K阻害剤は無作為化割付対照試験で延命またはそれに準じる効果が確認されるまで承認しない腹を既に決めたことが明らかになった。

リンク: MEIファーマのプレスリリース

【承認申請】


眼科用ベバシズマブを承認申請
(2022年3月31日発表)

Outlook Therapeutics(Nasdaq:OTLK)はONS-5010(bevacizumab-vikg)を新生血管加齢性黄斑変性(wAMD)の治療薬としてFDAに承認申請した。抗VEGF抗体Avastinの活性成分を硝子体注射用に製剤したもの。ジェネンテックの抗VEGF抗体フラグメントLucentis(ranibizumab)が06年にwAMD治療薬として米国で承認された頃、Avastinで代用すれば一回分が1950ドルではなく7ドルで済むことが注目され、調剤薬局が分包した商品を販売するようになった。Avastinは硝子体注射薬に求められる品質基準を満たしていないため、FDAが安全性懸念を警告し、ジェネンテックが眼科用に出荷しようとしていた2億ドル分の製品の廃棄を命じるなどの対策を取ったが、未だにオフレーベル使用されている模様。Outlook社は正式に承認を取って調剤薬局品を代替する考え。

第3相試験とPOC試験、安全性試験の三本の「トータリティ」に基づく申請とプレスリリースに記されているので、エビデンスは頑強ではないのだろう。第3相のNORSE TWO試験は米国の39施設で228人の患者を組入れて、BCVA(最高矯正視力)が15字以上改善した患者の比率をLucentisと比較した。試験薬は毎月、Lucentisは4回目からは医師が黄斑を検査して必要と認めた時に投与するPIERレジメンを採用した。結果は、41%対23%と有意に優れていた。per protocolでも同様な数値が出たが、p値は0.0052対0.04でかなり違っている。副次的評価項目のBCVA改善は平均11.2字対5.8字だった。薬物関連の眼球深刻有害事象は1例発生しただけだった。

上記はトップライン発表時のプレスリリースに記されているものだが、その後のリリースは試験薬群の数値とp値だけでLucentis群の数値は割愛されている。何かあったのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


大鵬薬品、FGFR阻害剤を承認申請
(2022年3月30日発表)

大鵬薬品はTAS-120(futibatinib)を前治療歴を有するFGFR2再編成/融合を伴う進行胆管癌用薬として米国で承認申請し、受理された。優先審査を受け、審査期限は9月30日。第二相のFOENIX-CCA2試験でORR(客観的反応率、独立中央評価)が103人中43人、41.7%だった。

類薬ではインサイト(Nasdaq:INCY)のPemazyre(pemigatinib)が2000年に、QED Therapeuticsがノバルティスからライセンスして開発したTruseltiq(infigratinib)が21年に、ほぼ同じ用途で米国で加速承認されている。Pemazyreは日本でも21年にペマジール名で承認された。

リンク: 大鵬薬品のプレスリリース(和文、pdf)


解離性ステロイドをDMDにローリング承認申請着手
(2022年3月29日発表)

スイスのSanthera Pharmaceuticals(SIX:SANN)と米国のReverGen Biopharmaは、vamoroloneをデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬としてローリング承認申請に着手した。第2四半期に完了する予定。欧州は第3四半期に申請予定。

DMDの治療で広く用いられているステロイドは副作用も多いが、vamoroloneは体重や筋骨格系の副作用が小さい。SantheraはReverGenから正解ライセンスを取得。

欧州で4~6歳の歩行可能な少年121人を組入れて24週間治療した後期第2相試験では、6mg群も2mg群も仰向けから立ち上がるまでの速度が偽薬比有意に改善し、6mg群はprednisoneを投与した群と有意な差がなかった。6分歩行テストは各群偽薬比42メートルと37メートルの治療効果が見られた。

リンク: 両社のプレスリリース


抗葉酸受容体抗体薬物複合体の承認申請を断行
(2022年3月29日発表)

ImmunoGen(Nasdaq:IMGN)は葉酸受容体アルファを標的とする抗体をDM4細胞毒を結合したIMGN853(mirvetuximab soravtansine)を葉酸受容体陽性卵巣癌の治療薬として開発しているが、19年に白金薬感受癌の実薬対照試験がフェール。高発現サブグループのORR(客観的反応率)や全生存期間に基づきFDAと相談したが、申請を断念した。

一方、bevacizumabを含む1~3次治療歴を持つ葉酸受容体高発現白金薬抵抗性卵巣癌の単群試験は確認ORR(客観的反応率、担当医評価)が32.4%、メジアン反応持続期間6.9ヶ月、PFS(無進行生存期間、担当医評価)4.3ヶ月と望ましい結果となり、今回、承認申請に踏み切った。

対照試験ではないので評価は難しいが、医師が選んだ薬と比較する第3相試験が今年第3四半期にも開票する見込みなので、FDAが加速承認しようがしまいが、答えが出るだろう。

リンク: 同社のプレスリリース


IgA腎症治療薬を承認申請
(2022年3月21日発表)

Travere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)はsparsentanをIgA腎症治療薬としてFDAに承認申請した。ACE阻害剤やARBを服用しても蛋白尿が解消しない404人を組入れて尿蛋白/クレアチニン比の改善効果をirbesartanと比較した第3相試験の中間解析で49.8%減対15.1%減、p<0.0001となかなか良い成績を挙げた。このデータで加速承認を取得し、eGFR(推定糸球体濾過量)の長期データが判明してから本承認を申請する考え。

IgA腎症では昨年12月にCalliditas Therapeutics(Nasdaq Stockholm:CALTX)が同様なデータで新規ステロイド製剤の加速承認を取得している。

sparsentanはブリストル マイヤーズ・スクイブのアンジオテンシンII受容体サブタイプ1とエンドテリン1受容体サブタイプAを阻害するデュアル・アンタゴニスト、BMS-346567を12年にLigand Pharmaceuticals経由でライセンスしたもの。当時はRetrophinという社名だった。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA、バダデュスタットも承認せず
(2022年3月30日発表)

Akebia Therapeutics(Nasdaq:AKBA)はHIF-PH(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)阻害剤AKB-6548(vadadustat)を成人の腎性貧血治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。透析期慢性腎疾患試験で血栓塞栓リスクが見られたことや、保存期慢性腎疾患試験でMACE(主要有害心臓イベント)がエリスロポイエチン製剤比非劣性でなかったこと、そして薬物誘導性肝障害の懸念から、追加試験の実施を求められた。

欧州は提携先の大塚製薬が昨年10月に承認申請した。日本は田辺三菱製薬が導入、20年にバフセオ名で発売した。

FDAはHIF-PH阻害剤に厳しく、昨年8月にはFibroGenのroxadustat(日本ではアステラス製薬が19年にエベレンゾ名で発売)の承認を血栓塞栓リスクを理由に見送った。

リンク: 同社のプレスリリース


FDA諮問委員会、ALS用薬の評価が二分
(2022年3月30日発表)

FDAは末梢中枢神経系薬諮問委員会を招集し、Amylyx(Nasdaq:AMLX)がALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認申請したAMX0035(sodium phenylbutyrate、taurursodiol)について意見を聞いた。第二相試験で薬効が確立したか、という質問に4人の委員がイエス、6人がノーと答え、改めてこの承認申請の難しさが浮き彫りになった。

尿素サイクル異常症用薬と原発性胆汁性肝硬変用薬の合剤で、前者は小胞体、後者はミトコンドリアから始まる神経変性経路を阻害する作用を持っていることから、ALSやアルツハイマー病用薬として開発されている。ALSは第二相のCENTAUR試験でALSFRS-R総スコアがベースラインの35.7から29.1に改善、36.7から26.7に改善した偽薬群を有意に上回った。副次的評価項目はすべてフェールした。FDAは第3相を実施してから申請することを推奨したが、延長試験期間も含めた解析で死亡リスク抑制効果が見られたため、申請を認めた。

諮問委員会でFDAが指摘した問題点は、第一に、薬効解析方法。このスコアは早期段階と進行段階で経時的な変化速度が異なるため単純計算できず、調整した解析ではp=0.11と有意ではなかった。また、ALSの生存期間は区々なのでFDAは機能と死亡の複合評価を推奨しているが、本試験では考慮しなかった。

第二は執行状況。生存しているのに追跡不能とされた被験者の比率が両群とも17~18%と高く、観察バイアスが生じかねない。また、ベースライン時点では偽薬群のほうがALS治療薬riluzoleまたはedaravoneを使っている患者が多かったが、試験中の新規開始は試験薬群は89人中14人、偽薬群は48人中2人と、大きな偏りがあった。

死亡リスクに関しては特定のカット・オフ時期のデータで有意な差があったが時期によっては有意でないことを指摘した。

FDA諮問委員会は患者や支援団体、研究者などが意見を述べる機会が設けてられている。ALSは早期承認を求める圧力が強い疾患の一つで、当委員会でも多くの要望があったようだ。FDAも木で鼻を括るような対応はせず、一歩譲ったうえで、承認できるかどうか検討しているように感じられる。諮問委員も同じだろう。

同社は第3相試験も実施しており、24年に完了予定だ。ALSは死に至る病気なので、それまで待てとも言い難い。だが、患者が求めているのは新薬ではなく自分に有効な薬なのだから、不確かなまま承認するのは却って不誠実と考えることもできる。代替策としては、承認されている薬より制約が多いものの、Expanded Access Programなど未承認の薬を利用するための制度も存在する。他の病気で承認されている薬なのでオフレーベル使用も可能だ。病気をネタにジョークを言う人間と怒って平手打ちする人間と、どっちも正しくないが、より悪いのはどっちか?難しい問題が多い。

審査期限は6月29日。同社はカナダでも昨年6月に承認申請した。EUでも申請予定。

リンク: 同社のプレスリリース


CHMP、CAR-Tなどに肯定的意見
(2022年3月25日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、上記アストラゼネカのCOVID-19感染予防薬Evusheldに加えて、抗BCMA CAR-Tなどの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら1~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

Janssen-Cilag InternationalのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)は、多発骨髄腫の多くが発現するBCMA(B細胞成熟抗原)を標的とする二つの単ドメイン抗体と4-1BB共刺激ドメインなどを結合したCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)。免疫調整剤やプロテアソーム阻害剤、そして抗CD38抗体を含む3次以上の治療歴を持つ成人の難治再発多発骨髄腫に条件付き承認することが支持された。米国では2月に4次以上の治療歴を持つ患者に承認されている。日本では3次以上に承認申請中。GenScript Biotech(HKEx:1548)の上場子会社であるLegend Biotech(Nasdaq:LEGN)から世界共同開発商業化権を取得したもの。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、まず、Ipsen PharmaのCabometyx(cabozantinib、和名カボメティクス)。Exelixis(Nasdaq:EXEL)から北米日本以外でインライセンスしたVEGFR阻害剤で、今回、放射線ヨウ素難治・不適で全身性治療歴のある成人の局所進行性/転移性分化甲状腺癌に用いることが支持された。米国では昨年9月に12歳以上を対象として承認。

リンク: EMAのプレスリリース

ノバルティスがインサイトから米国外のライセンスを得て開発販売しているJAK阻害剤、Jakavi(ruxolitinib、和名ジャカビ)をステロイド不応移植片宿主病(GvHD)に用いることも支持された。12歳以上の急性または慢性GvHDが適応になる。米国では急性GvHDが19年に、慢性GvHDは21年に承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

MSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)はMSI-H(高度マイクロサテライト不安定性)またはdMMR(ミスマッチ修復欠損)のある三種類の癌(fluoropyrimidineレジメン歴のある切除不能/転移結腸直腸癌、白金レジメン歴のある治癒的手術や放射線療法が適応にならない進行/難治内膜腫、治療歴のある切除不能性/転移性の胃癌、小腸癌、胆道癌)と、PD-L1陽性(CPS≧1)の持続・再発・転移性子宮頸癌に用いることが支持された。前者はKEYNOTE-158試験とKEYNOTE-164試験の単群反応率データに基づくもの。胃癌は24人中11人、小腸癌は19人中8人、胆道癌は22人中9人が部分反応以上した。

尚、MSI-H/dMMRの結腸直腸癌は一次治療が先に承認されている。

米国では17年に上記試験に基づいてMSI-H/dMMRの固形癌全般に、子宮頸癌は昨年10月に、承認された。日本は前者は18年承認、後者は申請中。

リンク: EMAのプレスリリース

ノバルティスのKymriah(tisagenlecleucel、和名キムリア)は抗CD-19抗体-キメラ抗原受容体T細胞(CAR-T)療法。難治再発濾胞性リンパ腫に用いることが支持された。第2相試験で完全反応率(独立評価委員会方式)が66%だった。

リンク: EMAのプレスリリース

ロシュのPolivy(polatuzumab vedotin、和名ポライビー)は抗CD79b抗体とチューブリン重合阻害剤の抗体薬物複合体。成人の再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一次治療にR-CHP(rituximab、cyclophosphamide、doxorubicin、prednisone)と併用することが支持された。日本でも適応拡大申請中。

リンク: EMAのプレスリリース

【承認】


イエスカルタがLBCLの二次治療に承認
(2022年4月1日発表)

FDAは、ギリアド・サイエンシズが17年に119億ドルで子会社化したKite PharmaのCAR-T療法、Yescarta(axicabtagene ciloleucel)を大細胞型B細胞リンパ腫(LBCL)の二次治療に用いる適応拡大を承認した。化学免疫療法による一次治療に難治または12ヶ月以内に再発した患者が適応になる。原発性中枢神経系リンパ腫は適応外。これ以前に三次治療や濾胞性リンパ腫の3/4次治療などが承認されている。

ZUMA-7試験でEFS(進行せず新規治療も開始せずに生存、盲検中央評価)を標準療法(化学療法を施行して部分反応以上なら高強度化学療法を経て自家幹細胞移植に進む)と比較したところ、ハザードレシオは0.4、メジアン値は各8.3ヶ月と2.0ヶ月だった。

欧州でも適応拡大審査中。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Kiteのプレスリリース


フェンフルラミンがレノックス・ガストー症候群にも承認
(2022年3月28日発表)

UCBはFintepla(fenfluramine hydrochloride)をレノックス・ガストー症候群(LGS)の転換治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。2歳以上の患者が適応になる。欧州でも申請中。

LGSは小児期に発症する難病で癲癇や知的障害を伴う。Finteplaはセロトニン作動薬で20年に欧米でドラベ症候群治療薬として承認された。LGSの治療試験では失立発作が24%減少し、偽薬群の9%減を上回った。

日本では昨年12月に承認申請、承認されたら日本新薬が販売する。

UCBは今月、Zogenix社を19億ドルで買収して入手した。

この活性成分は1960年代にフランスでダイエット補助薬として発売され、米国ではアメリカン・ホーム・プロダクツがPondiminとして販売、96年には光学異性体のRedux(dexfenfluramine)も投入したが、phentermineと併用するフェンフェン療法が大流行した直後に肺高血圧症や心弁疾患のリスクが表面化、和解金が200億ドルを超える巨大薬害訴訟となった。

サリドマイドが多発骨髄腫の治療薬として復活した事例を彷彿させる。副作用禍をハレモノのように扱い見ないふりをしたり、75日経つのを待つのではなく、リスクをよく調査分析した上で危険を冒さない使い方を探索することの重要性を思い知らされる。

リンク: UCBのプレスリリース





今週は以上です。