2023年4月29日

第1100回

【ニュース・ヘッドライン】

  • リリー、GLP-1/GLP-1作動剤は2DM・肥満合併患者にも有効 
  • AAN:アストラゼネカのATTR-PN用アンチセンス薬 
  • 上海君実の抗PD-1抗体、中国の肺癌アジュバント試験が成功 
  • Applied社、ガラクトース血症用薬の承認申請を断行する構え 
  • テセントリクのTNBCアジュバント試験が無益認定 
  • ブルーバード、鎌状赤血球症の遺伝子療法を承認申請 
  • GSK、抗PD-1抗体を適応拡大申請 
  • リムパーザの前立腺癌適応はBRCA変異に限定すべし 
  • EU、高齢者用RSVワクチンなどの承認を支持 
  • レーバー遺伝性視神経症用薬の欧州承認申請を撤回 
  • 20価プレベナーが幼小児にも承認 
  • 2ヶ月持続するエビリファイが承認 
  • 経口マイクロバイオーム療法薬が承認 
  • SOD1型ALS用薬が承認 


【新薬開発】


リリー、GLP-1/GLP-1作動剤は2DM・肥満合併患者にも有効
(2023年4月27日発表)

イーライリリーは二型糖尿病(以下、2DM)用薬Mounjaro(tirzepatide)を肥満症/オーバーウェイトの患者向けにも開発している。2DM以外のリスク因子を持つ患者を組入れた第3相に続いて、2DM合併患者の第3相、SURMOUNT-2試験の結果が公表された。過去の他剤の試験と同様に、減量効果が非2DM試験より小さかったが、それでも、15%と大きな成果を上げた。治験離脱率の低さも注目できる。

この試験はアメリカ、アルゼンチン、ブラジル、インド、日本、プエルトルコ、ロシア、台湾の施設で938人を偽薬群、10mg群、または15mg群に無作為化割付けして週一回皮下注し、72週間の体重変化を比較した。悪心嘔吐や下痢などを抑制するため、2.5mgで開始して4週毎に2.5mgずつ漸増した。主評価項目の一つである体重減少率は各群3.3%、13.4%、15.7%となり二用量とも偽薬を有意に上回った。言うまでもなく、もう一つの5%減量成功率も有意に上回った。

治験を離脱した患者のデータも継続追跡するTreatment-regimen estimandベースでも体重減少率が各群3.2%、12.8%、14.7%と、大きくは変わらない結果になった。各群の治験離脱率が15%、9%、14%と大差なかったからだろう。尚、有害事象による離脱率も各群4%、4%、7%とそれほど変わらなかった。悪心や下痢の発生率は約2割、嘔吐は約1割だった。

2DM以外を組入れたSURMOUNT-1試験では偽薬群、10mg群、15mg群の体重減少率が2.4%、21.4%、22.5%だった。今回の治療効果は半分だが、水準としては他社のGLP-1作用剤を若干上回っている。

米国ではローリング承認申請中。

リンク: 同社のプレスリリース


AAN:アストラゼネカのATTR-PN用アンチセンス薬
(2023年4月24日発表)

アストラゼネカはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスしたトランスサイレチン標的アンチセンス薬、eplontersenを遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症(ATTR-PN)治療薬として米国で承認申請中だが、第3相試験成績をAAN(米国神経学会)で公表した。4週毎皮下注で66週後に血清トランスサイレチン濃度がベースライン比81%減少し、偽薬群の11%減を有意に上回った。mNIS+7(ニューロパチーの障害尺度)は0.28点の増加に抑えられた(偽薬群は25点増加)。先行薬であるIonisのTegsedi(inotersen)やアルナイラム・ファーマシューティカルズのsiRNA介入薬Amvuttra(vutrisiran)と比べて勝るとも劣らない、高い効果が示唆された。尚、本試験の偽薬群はTegsediの第3相試験における偽薬群のデータを外挿している。

先行薬は多いが自己注の余地がある点が長所。

リンク: 同社のプレスリリース


上海君実の抗PD-1抗体、中国の肺癌アジュバント試験が成功
(2023年4月21日発表)

Junshi Biosciences(HKSE:1877)はtoripalimabの第3相非小細胞性肺癌術前術後補助療法試験の成績をASCO(米国臨床腫瘍学会)の学会で発表した。中国の施設だけで実施されたので米国申請は無理だろうが、この用途で成功した薬はまだ少ないので注目される。

18年に中国で悪性黒色腫用薬として承認された、価格優位を武器に同国市場を席巻している中華抗PD-1抗体の第一号。今回の第3相Neotorch試験はステージII/IIIの非小細胞性肺癌を組入れて、化学療法と併用で術前に3サイクル、術後に1サイクル施行し、更に地固め療法としてtoripalimabだけを3週毎に最大13サイクル投与する群と、toripalimabの代わりに偽薬を投与する群の主要病理学的反応率とEFS(無イベント生存率、担当医評価)を比較した。解析対象はステージIIIだけと全体のニ種類が設定されたが、前者が中間解析で成功認定された。主要病理学的反応率は各群48.5%と8.4%、EFSのハザードレシオは0.40でメジアン値は未達と15.1ヶ月。PD-L1陽性/陰性を問わず便益が見られた。全生存期間の解析はハザードレシオ0.62と良好だが未だ有意水準には到達していない。

toripalimabは米国でライセンシーのCoherus BioSciences(Nasdaq:CHRS)が上咽頭癌用薬として承認申請しているが渡航規制の影響で中国施設の査察ができなかったため遅れている。EUでも上咽頭癌と食道扁平上皮腫に申請中。

リンク: Junshiのプレスリリース(Globe Newswire)
リンク: LuらのASCO抄録


Applied社、ガラクトース血症用薬の承認申請を断行する構え
(2023年4月24日発表)

Applied Therapeutics(Nasdaq:APLT)はAT-007(govorestat)の第3相ACTION-Galactosemia Kids試験の結果を明らかにした。主評価項目で有意差が見られなかったが、一部の指標で有効性が示唆されたことから、承認申請に向けてFDAと協議する考え。FDAは希少疾患用薬の承認ハードルを下げたように感じられるので、可能性がないでもないだろう。

本剤の対象疾患であるガラクトース血症は常染色体性劣性遺伝性疾患で、ガラクトースをグルコースに分解するために必要な一連の酵素の一部が欠乏、ガラクチトールなどの毒性代謝物が蓄積し、発達障害などをもたらす。米国ではGALT(ガラクトース-1-リン酸ウリジルトランスフェラーゼ)欠損型の古典的患者が3000人程度いる模様だ。AT-007は中枢神経浸透性選択的アルドース還元酵素阻害剤。ガラクチトールの生成を妨げる。同社は血漿ガラクチトール減少作用に基づく承認申請を企図したが、FDAが臨床的転帰を検討するよう求めた経緯がある。

今回の試験は2~17歳の古典的ガラクトース血症患者47人を組入れて、パートAで年齢毎の至適用量を決定し、パートBで仮説検定した。主評価項目はOWLS(口頭筆記言語尺度)の口頭表現と聴解、及びBASC(子供の行動評価システム)の行動症状と日常生活動作のサブスケールの合成尺度。フェールしたが、日常生活動作や行動、認知、適応行動などの項目で改善が見られたようだ。発語は改善しなかったが、発語セラピーの影響か偽薬群でも悪化しなかったことが影響したとのこと。治療関連深刻有害事象は発生しなかった。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: 治験登録(ClinicalTrials.gov、23年2月24日最終更新)


テセントリクのTNBCアジュバント試験が無益認定
(2023年4月26日発表)

ロシュは、23年第1四半期の業況報告に際して、Tecentriq(atezolizumab)の第3相IMpassion030試験が無益認定されたことを明らかにした。ステージII/IIIのトリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)の切除後アジュバント療法としてtaxanesなどの化学療法に追加する便益を検討したもの。他の抗PD-1/PD-L1抗体同様、TNBCの治験成績はパッとしない。

TecentriqはIC≧1%(腫瘍浸透免疫細胞におけるPD-L1発現が腫瘍領域の1%以上で見られる)の切除不能局所進行/転移TNBCの一次治療にnab-paclitaxelと併用することが19年に米欧日で承認されたが、市販後薬効確認試験がフェールしたことなどから、21年に米国の加速承認を自主返上した。また、早期TNBCの術前ネオアジュバント試験が成功し欧州で適応拡大申請したが、21年に撤回している。

リンク: 上記試験の治験登録(ClinicalTrials.gov)

【承認申請】


ブルーバード、鎌状赤血球症の遺伝子療法を承認申請
(2023年4月24日発表)

bluebird bio(Nasdaq:BLUE)はbb1111(lovotibeglogene autotemcel、略称lovo-cel)を血管閉塞性イベント歴を持つ12歳以上の鎌状赤血球症の治療薬として米国で承認申請した。ベータ・グロブリンの遺伝子を導入した自家造血幹細胞を移植する遺伝子療法で、エビデンスは36人をメジアン32ヶ月追跡した第1/2相試験など。

似たような薬はCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)がVertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)と共同開発したCTX001(exagamglogene autotemcel、略称exa-cel)を昨年12月にEUで、今月は米国でも、鎌状赤血球症と輸血依存ベータ・サラセミアに承認申請している。

リンク: bluebirdのプレスリリース


GSK、抗PD-1抗体を適応拡大申請
(2023年4月25日発表)

GSKは抗PD-1抗体Jemperli(dostarlimab-gxly)の適応拡大をEUに申請し受理されたと発表した。dMMR(相同組換え修復不全)またはMSI-H(マイクロサテライト不安定高)の原発性進行/難治内膜腫に用いることが承認されているが、化学療法併用を追加する考え。第3相RUVY試験でcarboplatinとpaclitaxelの併用レジメンに追加し6週毎維持療法も施行したところ、PFS(無進行生存期間、担当医評価)のハザードレシオが偽薬追加群比0.28、24ヶ月PFS率は61.4%対15.7%と良好な結果になった。全生存期間は未だ有意差が出ていないがハザードレシオは0.30なので悪くない。dMMR/MSI-Hではないサブグループの数値も良さそうだったが、少なくとも今回は申請しなかったようだ。米国でも申請した模様で上期中の審査開始を予想している由。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認審査・委員会】


リムパーザの前立腺癌適応はBRCA変異に限定すべし
(2023年4月28日発表)

FDAは腫瘍学諮問委員会を招集し、アストラゼネカのLynparza(olaparib)の適応拡大申請について意見を聞いた。化学療法未施行の転移性去勢抵抗性前立腺癌にabiraterone及びprednisone(prednisolone)と併用する用途用法に関するもので、第3相PROpel試験が中間解析で目的達成したが、FDAは、便益を受けたのは、専ら、被験者の1割程度に過ぎないBRCA変異サブグループだけであることを指摘。諮問委員も13人中11人がBRCA変異型に限定して承認することに賛成した(他は反対1人、棄権1人)。

FDAの解析によると、腫瘍組織またはctDNA(血中循環腫瘍DNA)の検査で陽性と判定されたサブグループ(被験者の11%)では主評価項目のPFS(放射線学的無進行生存期間)のハザードレシオがLynparzaの代わりに偽薬を併用した群と比べて0.24だったが、両方で陰性だったサブグループ(同54%)では0.85、両方不明、あるいは片方が不明でもう片方が陰性だった不確定サブグループ(35%)では0.66と、かなり異なっていた。全生存期間におけるハザードレシオは各0.30、1.06、0.73と、両方陰性サブグループでは死亡リスクが高まる可能性すら浮上した。

他のPARP阻害剤の同様な臨床試験でもBRCA変異のない患者に対する便益は小さく、Lynparzaだけが違うと考える理由もない。また、PARP阻害剤はPFS延長が延命に繋がらないことがあり、主評価項目ではなく事前に設定された解析でもないとはいえ、BRCA陰性患者の死亡リスクが1.06倍という点推定値は軽視できない。

尤も、適応範囲の細かいところをどのように決めるかは承認審査機関の裁量次第という面もある。実際、EUは、化学療法不適という条件が付くもののBRCAステータスは不問で昨年12月に承認している。FDAは抗PD-1抗体など他の抗癌剤に関してはサブグループ分析で便益が小さい可能性が浮上していても無視することがあるが、PARP阻害剤は話が別ということなのだろう。


BRCA変異検査結果(単位:人)
 腫瘍組織標本検査:
陽性陰性不明合計
ctDNA検査:
 陽性34181769
 陰性12427226665
 不明4401862
 合計50485261796

出所:FDAブリーフィング資料

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


EU、高齢者用RSVワクチンなどの承認を支持
(2023年4月26日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

GSKのArexvyは60歳以上を対象とするRSウイルス・ワクチン。一回筋注でRSVによる下部気道感染症を83%予防する。翌年のシーズンにおける効果は未だ明らかではない。欧州ではRSVに感染し入院中に死亡する65歳以上の患者が年17000人いるとのことだが、今までワクチンがなかった。米国でも5月3日までに承認される見込み。今秋は高齢者はインフルエンザ・ワクチン、COVID-19ワクチンと合わせて三本打つことになりそうだ。

リンク: EMAのプレスリリース

ブリストル マイヤーズ スクイブのCamzyos(mavacamten)は成人の症候性閉塞性肥大性心筋症の治療薬。臨床試験の一つではNYHAステージの改善且つ又心肺運動負荷試験におけるpVO2(最大酸素摂取量)の改善が見られ、別の試験ではSRT(中隔縮小治療)をしなくてすむ患者が増加した。

心臓ミオシン選択的可逆的アロステリック・インヒビターで、米国では昨年、前者の効能で承認され、後者の効能は審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

ロシュのColumvi(glofitamab)はB細胞のCD20とT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。成人の再発難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療以降に用いる。第2相試験で108人中35%が完全反応した(NEJM論文では155人中39%)。サイトカイン放出症候群を抑制するために抗CD20抗体obinutuzumab(Gazyva)でプリトリートしてから投与する。上記試験で64%の患者で発現したが60%はG1/2だった。米国でも承認審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

イーライリリーのJaypirca(pirtobrutinib)は可逆的BTK阻害剤。他のBTK阻害剤による治療歴を持つ成人の難治再発マントル細胞腫に用いる条件付き承認が支持された。第1/2相試験で120人中60人が反応し、メジアン持続期間は8.3ヶ月だった。米国で1月に加速承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

大鵬薬品のLytgobi(futibatinib)は汎FGFR阻害剤。FGFR2融合/再編成のある局所進行/転移胆管癌の二次治療に単剤投与する条件付き承認が支持された。臨床試験で客観的反応率が42%、メジアン反応持続期間は9.7ヶ月だった。米国は昨年9月に加速承認、日本でも申請中。類薬はIncyteのPemazyre(pemigatinib)が米欧日で、BridgeBioのTruseltiq(infigrtnib)が米国で、承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース

アミカス・セラピューティクスのOpfolda(miglustat)は、3月に肯定的意見を得た同社のポンペ病酵素補充療法、Pombiliti(cipaglucosidase alfa)と併用する。後者に結合し安定化することによって活性や持続性を増強する。活性成分はアクテリオンがガウシェ病3型やニーマンピック病C型の治療薬Zavescaとして商品化しているが、Opfoldaは100mgではなく65mgのハードカプセルで、投与頻度は100~200mg一日二回ではなく195~260mgをPombilitiと同じ二週毎に投与する。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では以下などが肯定的意見を得た。

UCBのBimzelx(bimekizumab):成人の従来治療に応答不十分または不耐の活性期強直性脊椎炎と成人のCRP検査やMRIで炎症の兆候が見られNSAIDsに応答不十分または不耐の活性期nr-axSpA(X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎)。

ノバルティスのCosentyx(secukinumab):成人の従来治療に応答不十分な活性期中重度化膿性汗腺炎。

武田薬品のRevestive(teduglutide):適応年齢の下限を生後1歳から修正妊娠年齢4ヶ月に変更(低出生体重児における適応下限が元々の予定日の4ヶ月後であることが明確になる)。


レーバー遺伝性視神経症用薬の欧州承認申請を撤回
(2023年4月20日発表)

フランスのGenSight Biologics(Euronext:SIGHT)はLumevoq(lenadogene nolparvovec)を15歳以上のND4遺伝子変異を持つレーバー遺伝性視神経症(LHON)の視力治療薬としてEUで承認申請していたが、撤回した。ND4のcDNAをアデノ随伴ウイルス2型ベクターで硝子体に届ける遺伝子療法薬だが、便益の裏付けが不十分であることなどから、CAT(EMAの先端医療委員会)が承認に前向きでなかった。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: EMAのプレスリリース

【承認】


20価プレベナーが幼小児にも承認
(2023年4月27日発表)

ファイザーは、FDAがPrevnar 20を幼小児の侵襲性肺炎球菌疾患と肺炎球菌性中耳炎の予防に用いることを承認したと発表した。生後6週から17歳までが対象で、臨床試験では、Prevnar 13などと同様に、生後2、4、6ヶ月時点と、12~15ヶ月の間に、合わせて4回筋注した。

Prevnar 13がカバーする13株に加えて8、10A、11A、12F、15BC、22F、33Fの7株を追加したもので、この7株は5歳以下の小児における肺炎球菌疾患の37%を占めるとのことだ。尚、中耳炎予防に関してはカバレッジは7株でPrevnar 13と同じ。

Prevnar 20は21年に米国で、翌年にはEUでも、成人用肺炎球菌ワクチンとして承認された。競合する新ワクチンがMSDの15価ワクチンVaxneuvanceで、成人向けは21年に、幼小児向けは22年に、欧米で承認された。胸膜ポリサッカライドワクチンPneumovaxの23価には未だ追いついていないが、MSDなどが21価ワクチンなどを第3相に進めている。

リンク: ファイザーのプレスリリース


2ヶ月持続するエビリファイが承認
(2023年4月27日発表)

大塚製薬とルンドベックは、FDAがAbilify Asimtufii(aripiprazole)を成人の統合失調症や双極障害I型の維持療法として承認したと発表した。2ヶ月に一回、臀部に筋注する。

Abilifyは月一回筋注用のAbilify Maintenaがラインアップされているが、Asimtufiiの960mgはMaintenaの400mg月一回投与と薬物動態が類似していた。

Maintenaと異なり三角筋注射は不可。添加物はマンニトールに代えてポリエチレングリコール、塩化ナトリウム、そしてポビドンが加わっている。

薬を嫌がる患者や受診に来ない患者もいるので長期持効性製剤は重要だ。aripiprazoleではAlkermes(Nasdaq:ALKS)のAristada(aripiprazole lauroxil)が15年に毎月/二ヶ月毎筋注で承認されている。非定型向精神薬ではジョンソン・エンド・ジョンソンのInvega Hafyeraが半年に一回の投与で足りる。

リンク: 両社のプレスリリース

経口マイクロバイオーム療法薬が承認
(2023年4月26日発表)

FDAはSeres Therapeutics(Nasdaq:MCRB)のVowst(fecal microbiota spores, live-brpk)を難治クロストリディオイデス・ディフィシル(CD)感染症の成人の再発予防薬として承認した。ネスレの医療関連製品子会社と共同販売する。

CDは他の細菌が抗生剤治療などにより衰退すると代わりに勢力を伸ばす。マイクロバイオーム療法は再発を繰り返すCD感染症患者の腸に健常者の糞便に含まれる非病原性細菌を移植してCDを牽制させるもの。Vowstはファーミキューテス門腸内細菌芽胞を精製、エタノール処理したもので、抗生剤による治療を完了した患者に、カプセル4個を一日一回、3日連続投与する。臨床試験では、過去12ヶ月間に3回以上の発症歴を持つ患者320人を組入れて投与後8週間観察したところ、再発率が12%と偽薬群の40%を有意に下回った。24週追跡でも21.3%台47.3%で有意差を維持した。

有害事象は腹部膨張や便秘、悪寒、下痢など。感染性病原体や食物アレルゲンの検査を行っているがリスクがないとは断定できない由。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 両社のプレスリリース


SOD1型ALS用薬が承認
(2023年4月25日発表)

FDAはバイオジェンのQalsody(tofersen)をSOD1(スーパーオキシドディスムターゼ1)変異型筋萎縮性側索硬化症(ALS)の治療薬として加速承認した。ALS機能評価尺度(改訂版)の悪化を遅らせる効果を検討した臨床試験はフェールしたが、サロゲート・マーカーである血漿ニューロフィラメント軽鎖が55%減と偽薬群の12%増を大きく下回ったことから、臨床的便益を合理的に推測できると判断した。偽薬群の患者は28週間の試験終了後に試験薬にスイッチしたが、累計52週間後の群間差が3.5点と28週時点の1.16点から拡大したことも評価されたのかもしれない(ベースライン値は36)。

フェーズIVコミットメントとして、発症前のSOD1変異型ALSを組み入れるATLAS試験で便益を確認する。

ALSの殆どは孤発型だが一部は家族性でその更に一部は活性酸素分解酵素SOD1の遺伝子に機能獲得変異などが見られる。QalsodyはSOD1の発現を妨げるアンチセンス・オリゴヌクレオチド。Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスした。ALS用薬では昨年9月に米国でAmylyx(Nasdaq:AMLX)の神経変性経路阻害剤合剤、Relyvrio(sodium phenylbutyrate、taurursodiol)も特定のタイプに限定なしで承認された。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: バイオジェンのプレスリリース


【主なFDA審査期限、諮問委員会(23年4~5月)】


    PDUFA:
  • 23年5月推 ファイザーのPF-06651600(ritlecitinib、12歳以上の円形脱毛症)
  • 23年5月 ファイザーのPF-06928316(60歳以上のRSVワクチン)
  • 23年5月 Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、心不全)
  • 23/5/1 Gamida CellのNiCord(omidubicel、血液癌他家造血幹細胞移植における好中球生着促進)
  • 23/5/3 GSKのGSK3844766A(60歳以上のRSVワクチン)
  • 23/5/10 大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、アルツハイマー型認知症のアジテーションに適応拡大)
  • 23/5/12 ByondisのSYD985(vic-trastuzumab duocarmazine、her2陽性乳癌)
  • 23/5/19 Krystal BiotechのVyjuvek(beremagene geperpavec、栄養障害型表皮水疱症)
  • 23/5/21 アッヴィのepcoritamab(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫3次治療)
  • 23/5/22 アステラス製薬のESN364(fezolinetant、閉経期血管運動神経症状)
  • 23/5/22 Blueprint MedicinesのAyvakit(avapritinib、緩徐全身性肥大細胞腫に適応拡大)
  • 23/5/23 ImmunityBioのAnktiva(BCG不応ハイグレード筋層非浸潤性膀胱癌)
  • 23/5/29 Sarepta TherapeuticsのSRP-9001(delandistrogene moxeparvovec、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)

諮問委員会:
  • 23/5/9-10 NPDAC・ORUDAC共同会議:Perrigoの避妊薬Opill(norgestrel)のOTCスイッチ
  • 23/5/11 PADAC:ARS Pharmaceuticalsのエピネフィリン点鼻スプレイ(アナフィラキシー治療薬)
  • 23/5/12 CTGTAC:Sarepta TherapeuticsのSRP-9001(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)
  • 23/5/18 VRBPAC:ファイザーのAbrysvo(妊婦接種による新生児RSV予防用ワクチン)
  • 23/5/19 GIDAC:Intercept Pharmaceuticalsのobeticholic acid(NASH)



今週は以上です。

2023年4月22日

第1099回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • カービクティの学会抄録が誤って公開? 
  • 百済神州、抗PD-1抗体の胃癌一次治療試験が成功 
  • AACR:早期肝癌を切除した後はテセントリク・アバスチン療法が有効 
  • AACR:キイトルーダも胆道癌試験が成功 
  • AACR:イミフィンジもNSCLCの術前術後療法に有益 
  • GSK、単純性尿路感染症の画期的新薬を承認申請へ 
  • ロンサーフのベバシズマブ併用を米国で一変申請 
  • アベクマを3次治療に適応拡大申請 
  • ヴァンフリタの一次治療承認が米国で遅延 
  • FDA諮問委員会、多剤耐性アシネトバクタ―感染症用薬の承認を支持 
  • ポライビーが米国でもやっと一次治療に承認 
  • イスラエル発の臍帯血細胞療法が承認 
  • アッヴィ、経口CGRP受容体拮抗剤が慢性片頭痛に適応拡大 
  • 前立腺癌用ニラパリブ配合剤がEUで世界初承認 


【今週の話題】


カービクティの学会抄録が誤って公開?
(2023年4月19日報道)

中国系バイオ企業Legend Biotech(Nasdaq:LEGN)と共同開発販売パートナーのジョンソン・エンド・ジョンソンは1月にBCMA標的CAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)、Carvykti(ciltacabtagene autoleucel)の第3相CARTITUDE-4試験が中間解析で主目的を達成したことを明らかにしたが、学会発表の抄録が誤って公開された模様だ。各種報道によると、5月にASCO(米国臨床腫瘍学会)とEHA(欧州血液学会)で結果発表される予定だが、後者の抄録を読んだ複数の証券アナリストが投資家向けレポートで報告・評価した。

Carvyktiは成人の難治再発多発骨髄腫の、米国では5次治療薬、欧日では4次治療薬として承認されている。代表的な治療薬である免疫調停剤(lenalidomideなど)、プロテアソーム阻害剤(bortezomibなど)、抗CD38モノクローナル抗体(daratumumab)すべてによる治療を受けた患者が適応になる。CARTITUDE-4はlenalidomideによる治療に応答しなかった成人の2~4次治療試験で、PFS(無進行生存期間)をPVdレジメンまたはDPdレジメンを施行する群と比較した。報道によると、ハザードレシオは0.26と大変良いものだった。完全反応率は各群73%と22%、微小残存病変も消失は61%と16%だった。

米国が5次治療しか承認しなかったのは第3相試験における4次治療患者の組入れ数が多くなかったことが原因のようだ。今回は2次治療の症例数が十分以上である模様。アナリスト達は1次治療への将来展望にも期待しているようだ。


【新薬開発】


百済神州、抗PD-1抗体の胃癌一次治療試験が成功
(2023年4月20日発表)

中国のBeiGene(Nasdaq:BGNE、HKEX:6160)は、抗PD-1抗体BGB-A317(tislelizumab)のグローバル第3相胃癌一次治療試験、RATIONAL 302がPD-L1陽性以外も含むintent-to-treatベースでもポジティブな結果になったと発表した。昨年、PD-L1陽性(VENTANA SP263 アッセイでPD-L1≧5%)サブグループの中間解析が成功し中国で適応拡大が認められたが、今回の成功で先行するBMSのOpdivo(nivolumab)と肩を並べることになる。但し、データは未発表なのでどの程度の意義があるのかは明らかではない。

tislelizumは中国での開発が先行し、19年以降、10の適応症が認められた。中国外の権利はセルジーンがライセンスしたが、BMSに買収されたため返還され、新たに、ノバルティスがライセンスした。食道扁平上皮腫用薬として欧米で承認審査中だが、米国は中国工場の査察がCOVID-19対応の渡航規制で不可能だったことなどから、審査が長引いている。やっと第2四半期に実施される予定になったが、治験実施施設の査察はまだ確定していない模様だ。尚、上海君実(Junshi Biosciences、HKSE:1877)の抗PD-1抗体toripalimabも中国渡航制限により上咽頭癌におけるFDA審査が長引いているが、第2四半期に予定が決まったようだ。

今回の試験は中国、日本、韓国、欧米ロシアなどの施設で局所進行性切除不能/転移性の胃/胃食道接合部腺腫の一次治療を受ける患者997人を組入れて、fluoropyrimidine系と白金系の併用レジメンに追加する効果を偽薬追加と比較した。主評価項目であるPD-L1≧5%のサブグループ546人の全生存期間は中間解析でハザードレシオ0.74、メジアン17.2ヶ月対12.6ヶ月となり、目的達成。シーケンシャルな(先行解析が成功した時だけ意味を持つ)主評価項目である全患者の解析も今回成功した。

BMSのOpdivoの試験はPD-L1判定手法がやや異なるが、CPS≧5のサブグループにおける全生存期間のハザードレシオは0.71で有意、全体の解析も0.80で有意だったが、CPS<5のサブグループは0.94、メジアン値は12.4ヶ月で偽薬追加群の12.3ヶ月と大差なかった。米国ではPD-L1不問で承認されているがEUではCPS≧5に限定された。

Keytruda(pembrolizumab)は同じ用途で米国で加速承認されているがORR(客観的反応率)に基づくもの。承認後薬効確認試験はフェールしたが、KeyNote-859試験が中間解析で成功した。全生存期間のハザードレシオは0.78で有意な差があったが、PD-L1陰性サブグループは0.92に留まった。先行二剤がこうなのだから、tislelizumabも、全体の解析が成功したという情報だけでは不十分だ。

リンク: BeiGeneのプレスリリース


AACR:早期肝癌を切除した後はテセントリク・アバスチン療法が有効
(2023年4月16日発表)

ロシュは1月に早期肝細胞腫の治癒的切除術/焼灼術を受けた患者を組入れた第3相IMbrave050試験の成功を明らかにしたが、データをAACR(米国癌研究学会)とプレスリリースで公表した。Tecentriq(atezolizumab)とAvastin(bavacizumab)の併用により再発を抑制することができた。同社は適応拡大申請する予定だが、全生存期間の解析が成熟して好ましい方向に向くまで承認されないのではないか。

この試験は再発リスクの高い患者668人を併用群(Tecentriqは1200mg、Avastinは15mg/kgを3週毎に最大12ヶ月間投与)と積極的観察群に無作為化割付けした非盲検試験。主評価項目はRFS(無再発生存期間、第3者独立評価)。ハザードレシオ0.72、p=0.012と良好な結果が出た。

全生存期間はハザードレシオ1.42と好ましくないが、死亡者が47人とまだ少ないため、信頼性は高くない。報道によると、併用群が27人、観察群は20人で、癌の進行によるものは17人対16人で大差なく、治療時発現有害事象によるものが6人対1人と上回った。

この併用法は切除不能肝細胞腫の一次治療に米日欧で承認されている。

リンク: ロシュのプレスリリース


AACR:キイトルーダも胆道癌試験が成功
(2023年4月16日発表)

MSDは1月にKeytruda(pembrolizumab)の第3相胆道癌化学療法併用試験がポジティブな結果になったことを明らかにしたが、データをAACRとLancet誌で公表した。アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)に続いて適応拡大が認められるのではないか。但し、どちらも限界効用はそれほど大きくなさそうだ。

このKeyNote-966試験は進行/切除不能胆道癌の一次治療を受ける患者1069人を組み入れて、gemcitabineとcisplatinの標準療法に200mg3週毎投与を追加する便益を検討した。メジアン生存期間は試験薬群が12.7ヶ月、偽薬追加群が10.9ヶ月でハザードレシオは0.83、p=0.0034となり、成功した。2年生存率は各群24.9%と18.1%だった。G3/4治療関連有害事象の発生率は70%と69%。治療関連有害事象による死亡率は1.5%と0.56%だった。

ImfinziのTopaz-1試験ではメジアン生存期間が各12.8ヶ月と11.5ヶ月、ハザードレシオ0.80、2年生存率は25%と10%で、概ね似たような結果になっている。

リンク: MSDのプレスリリース


AACR:イミフィンジもNSCLCの術前術後療法に有益
(2023年4月16日発表)

アストラゼネカはAACRでImfinzi(durvalumab)の非小細胞性肺癌術前術後アジュバント療法試験のEFS(無イベント生存期間)中間解析結果を発表した。MSDに続いて適応拡大申請するのではないか。

この第3相AEGEAN試験はステージIIAからIIIBまでの切除可能非小細胞性肺癌を対象に、化学療法による術前ネオアジュバント療法にTecentriq(3週毎)を追加し、術後にもアジュバント療法を4週毎に最長12ヶ月間施行する効果を偽薬追加と比較した。ネオアジュバントにおける主評価項目であるpCR(病理学的完全反応率)は試験薬群17.2%、偽薬群4.3%と有意な差があり、肝心のEFSもハザードレシオ0.68、p=0.004、メジアンは未達と25.9ヶ月となり、成功した。

MSDのKeytuda(pembrolizumab)は類似したデザインのKeyNote-671試験が成功、米国で適応拡大申請し、審査期限は10月16日。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


GSK、単純性尿路感染症の画期的新薬を承認申請へ
(2023年4月15日発表)

GSKはECCMID(欧州臨床微生物感染症学会)でGSK2140944(gepotidacin)の第3相単純性尿路感染症試験二本の結果を公表した。どちらも非劣性解析が成功し、一本は優越性解析も成功した。第3四半期に承認申請する予定。

試験薬群は750mg錠二錠を一日二回、実薬対照群はnitrofurantoinを100mgずつ一日二回、どちらも5日間服用した。主評価項目は第10~13日における臨床的・細菌学的複合奏効率。一本は各群50.6%と47.0%、もう一本は58.5%対43.6%となり、後者は有意に上回った。

細菌の複製に係わる二種類のトポイソメラーゼを阻害する、ファースト・イン・クラスの抗生剤で、フルオロキノロン耐性菌などにも活性が見られる。抗生剤は新薬を開発してもやがて耐性菌が生まれてキリがないため殆どの大手製薬会社が関心を失ったが、GSKは例外で、米国政府の支援を受けながら開発を進めている。単純性淋病でも第3相中。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


ロンサーフのベバシズマブ併用を米国で一変申請
(2023年4月19日発表)

大塚ホールディング・グループの大鵬薬品はLonsurf(trifluridine、tipiracil)と抗VEGF抗体bevacizumabを転移結腸直腸癌のサルベージ療法として併用する用法追加をFDAに申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は8月13日。

欧州などでの権利を持つセルビエと共に実施した第3相SUNLIGHT試験で、Lonsurfは28日サイクルで最初の2週間に一日二回、5日連続服用し2日休むスケジュールで投与し、bevacizumabは2週毎投与したところ、メジアン生存期間が10.8ヶ月となり、この適応で承認されているLonsurfだけを投与した対照群の7.5ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.61、統計的に有意だった。有害事象発生率は大きくは変わらなかった。

リンク: 大鵬のプレスリリース


アベクマを3次治療に適応拡大申請
(2023年4月17日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブと2seventy bio(Nasdaq:TSVT)は、日米欧でAbecma(idecabtagene vicleucel)を難治多発骨髄腫の3次治療に適応追加申請した。米国の審査期限は12月26日。KarMMa-3実薬対照試験に基づくもの。多発骨髄腫は過去四半世紀に続々と新薬が登場し、一次、二次治療で多剤併用することも可能になった。今回の申請が承認されれば、Abecmaの出番も早まることになる。

骨髄腫で高発現するBCMAを標的とする抗体の可変領域をCD8やCD3、4-1BBなどと結合したキメラ抗原受容体-T細胞(CAR-T)。ニューロンのシグナル伝達速度(時速270マイル)を上回るスピードで革新的な治療アイディアを実行に移すことを狙う、2seventy bioが創製し米欧日で代表的な薬を使い終えた難治性・再発性多発骨髄腫向けに承認されている。適応範囲は若干異なっており、米国は抗CD38抗体を含む代表的な4種類の薬全てによる4次以上の治療歴を持つ患者、EUは代表的な3種類全てによる3次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の患者となっている。

KarMMa-3試験の対象は、代表的な3種類の薬全てによる2~4次治療歴を持ち最終治療抵抗性の多発骨髄腫。PFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)を代表的な5種類の併用レジメンの何れかを使う群と比較した。ハザードレシオは0.49、メジアン値は13.3ヶ月と4.4ヶ月だった。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


ヴァンフリタの一次治療承認が米国で遅延
(2023年4月21日発表)

第一三共はFTL3チロシンキナーゼ阻害剤quizartinibをFLT3-ITD変異のある急性骨髄性白血病(AML)用薬として開発、19年に日本で救援用法薬ヴァンフリタとして承認を取得したが、欧米では認められなかった。メジアン生存期間が1.5ヶ月延長するだけで効果が限定的であり、臨床試験の解析方法や実施内容が万全ではなく、副作用を正当化できるほどではないことなどがネックとなった。その後、FLT3-ITD変異陽性AMLの一次治療化学療法併用試験が成功し、日米欧で申請したが、米国は審査期限が4月24日から7月24日に延期された。REMS(副作用リスクを緩和するための施策)の見直しに伴うもののようだ。有効性や安全性に関する追加データは提出していないとのことなので、新期限前に承認される可能性もあるのではないか。

承認申請は第3相QuANTUM-First試験に基づくもの。標準的な寛解導入療法と奏効時の地固め療法に追加するとともに、その後の維持療法としても単剤投与する便益を検討したところ、メジアン生存期間が31.9ヶ月と偽薬追加群の15.1ヶ月より大きく伸び、ハザードレシオ0.776、p=0.0324だった。但し、カプラン・マイヤー・カーブを見ると、最初の半年程度は試験薬群のほうが死亡者が多い。致死的治療時発現有害事象が11.3%と対照群の9.7%を上回っており、感染症などのリスクが影を落としているのではないかと思われる。

副次的評価項目を見ると完全寛解率は55%程度で両群大差なく、無イベント生存期間は0.03ヶ月と0.71ヶ月でほとんど意味がない。最初から併用するのではなく、地固め、あるいは維持療法に限定することで便益危険バランスを改善できたらいいのになと感じられる。先に承認されたノバルティスのRydapt(midostaurin)も全生存期間は延びるが完全寛解率は54%が59%に上がる程度で有意差は出ていない。

リンク: 同社のプレスリリース(和文、pdfファイル)


FDA諮問委員会、多剤耐性アシネトバクタ―感染症用薬の承認を支持
(2023年4月17日発表)

FDA抗微生物薬諮問委員会は、Entasis Therapeuticsがアシネトバクター・バウマンニ-カルコアセティカス(ABC)複合体による院内感染細菌性肺炎/人工呼吸器関連細菌性肺炎のサルベージ治療薬として承認申請したETX2514SULを検討し、12人の委員全員が便益が危険を上回ると判定した。審査期限は5月29日。

ABC複合体感染症は危機的状態にある患者が感染すると重体化しやすい日和見感染症の一つで、多剤耐性菌が増加してきている。ETX2514SULは新開発のクラスA、C、Dベータラクタマーゼ阻害剤sulbactamとベータラクタムsulvactamの固定用量合剤。6時間おきに3時間点滴静注する。第3相ATTACK試験でimipenemとcilastatinのレジメンに併用したところ、カルバペネム抵抗ABC複合体感染が確認された約60人における28日全死亡率が19.0%となり、左記二剤とcolistinを併用した群の32.3%と非劣性だった(差の95%信頼区間は-30.0、3.5)。副次的評価項目の臨床的治癒率は68.3%対41.9%だった(差の95%信頼区間は7.9、44.7)。

腎毒性発現率は13.2%対37.6%で有意に低かった。薬物関連有害事象発生率は12.1%対30.2%。薬物関連深刻有害事象はアナフィラキシーが1例発生した。

ATTACK試験ではcolistin抵抗性患者は無作為化割付けせずパートBとして試験薬レジメンを投与したが、28人における28日全死亡率は17.9%とパートAの試験薬群と似たような結果だった。

Entasisは15年にアストラゼネカが抗生剤開発事業をスピンアウトして設立した。22年にInoviva(Nasdaq:INVA、旧称Theravance)が完全子会社化した。ETX2514SULの日本を含むアジア太平洋地域の開発販売権は中国のZai Lab(Nasdaq:ZLAB)が保有している。

リンク: Inovivaのプレスリリース

【承認】


ポライビーが米国でもやっと一次治療に承認
(2023年4月19日発表)

FDAはPolivy(polatuzumab vedotin-piiq)を未治療のDLBCL NOS(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、非特異型)またはHGBL(高悪性度B細胞リンパ腫)に用いる適応拡大を承認した。IPI(国際予後指標)が2以上の高リスク患者に、R-CHP(rituximab、cyclophosphamide、doxorubicin、prednisone)レジメンと併用する。EUでは昨年5月に、日本でも8月に適応拡大が認められたが、FDAは実薬対照試験において延命効果が見られなかったことなどに疑問を感じた模様で、申請も承認も遅れた。

Seagenの技術を利用して開発したCD79bを標的とする抗体薬物複合体。19年に造血幹細胞移植不適の難治再発DLBCLの3次治療としてbendamustineおよびrituximabと併用することが米国で加速承認されたが、今回、本承認に切り替えられた。

一次治療における効用を検討したPOLARIX試験では、代表的な併用法であるR-CHOPのうちvincristineを省きPolivyを加えたレジメンのPFSをR-CHOP群と比較した。結果はハザードレシオ0.73と良好で、G3/4有害事象発現率は57.7%対57.5%、致死的有害事象発現率は3.0%対2.3%と大差なかった。

だが、副次的評価項目の全生存期間は最終解析でもハザードレシオ0.94で有意差がなく、2年生存率は両群とも88.7%だった。DLBCLは様々なタイプの寄せ集めだが、大半を占めるNOS(『その他』)型ではPFSのハザードレシオは0.75と良好も全生存期間は1.02で大差なかった。

FDAは3月に諮問委員会を招集し意見を聞いたところ、13人の委員中11人と多数がFDAの肩を押した。審査期限になっても承認発表されなかったので危惧していたが、まあ順当な結果になった。

NCCNのガイドラインは既にステージIIの一部とIII、IVのDLBCL NOSの一次治療としてPolivy-R-CHPレジメンとR-CHOPの両方をpreferred regimensに採用している。

リンク: ロシュのプレスリリース


イスラエル発の臍帯血細胞療法が承認
(2023年4月17日発表)

Gamida Cell(Nasdaq:GMDA)はOmisirge(omidubicel-onlv)がFDAに承認されたと発表した。12歳以上の血液癌の他家造血幹細胞移植に用いる臍帯血由来の細胞療法で、標準的な臍帯血と比べて好中球の生着が早く、感染症のリスクが小さい。同社は戦略的パートナーを探索中。

臍帯血は採取が比較的容易だが細胞数が少ないのが難点。同社はニコチンアミドを用いて造血幹細胞の培養を増強する技術を持っており、ボランティアの臍帯血をイスラエルの工場で30日かけて精製培養する。125人の患者を組み入れた第3相試験では好中球生着がメジアン12日と、標準的な臍帯血の22日より有意に早く、100日間の感染症合併率は各群39%と60%だった。

枠付き警告は点滴反応、移植片宿主病、生着症候群、生着不全。

リンク: 同社のプレスリリース


アッヴィ、経口CGRP受容体拮抗剤が慢性片頭痛に適応拡大
(2023年4月17日発表)

アッヴィはFDAがQulipta(atogepant)を慢性片頭痛の治療に適応拡大したと発表した。CGRP受容体拮抗剤の一つで経口錠であることが特徴。21年に米国で反復性片頭痛に承認され、欧州でも両適応症で申請中。

月15日以上の片頭痛が1年以上続く患者を組入れた第3相では、月間片頭痛日数がベースライン値の19日から6.9日減少した。偽薬群の減少は5.1日で、統計的に有意な差があった。片頭痛頻度が半減した患者の比率も41%対26%で有意差があった。尚、片頭痛を月4~14日経験する反復性患者の一日一回用量は10mg、30mg、60mgの中から選べるが慢性片頭痛は60mgのみ。

リンク: 同社のプレスリリース


前立腺癌用ニラパリブ配合剤がEUで世界初承認
(2023年4月21日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen Pharmaceuticalは、Akeega(niraparib、abiraterone acetate)がEUで転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)用薬として承認されたと発表した。BRCAに生殖細胞性/体細胞性変異を持ち、化学療法が適応にならない成人患者に用いる。米国でも承認申請中。

エビデンスとなる臨床試験の主評価項目は相同組換え修復不全サブグループのPFS(無進行生存期間、盲検中央放射線学的評価)。ハザードレシオ0.73、p=0.022となったが、効果の中心はBRCA変異型で、延命効果のトレンドが見られたのもBRCA変異型だった。そのせいか、米国でもこのタイプだけに承認申請している。申請時期が今年2月と遅れたのは、FDAがPARP阻害剤のPFSデータに疑義を持っていて、検出力があろうがなかろうが全生存期間のデータが出るのを待ちたがるせいだろう。

リンク: JNJのプレスリリース

【主なFDA審査期限、諮問委員会(23年4-5月)】


PDUFA:
  • 23年4月 Emergent BioSolutionsのAV7909(炭疽ワクチン)
  • 23/4/25 バイオジェンのBIIB067(tofersen、SOD1変異のある筋萎縮性側索硬化症)
  • 23/4/26 Seres TherapeuticsのSER-109(クロストリディオイデス・ディフィシル再燃の抑制)
  • 23/4/30 アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン欠乏症)
  • 23年5月推 ファイザーのPF-06651600(ritlecitinib、12歳以上の円形脱毛症)
  • 23年5月 ファイザーのPF-06928316(60歳以上のRSVワクチン)
  • 23年5月 Lexicon PharmaceuticalsのZynquista(sotagliflozin、心不全)
  • 23/5/1 Gamida CellのNiCord(omidubicel、血液癌他家造血幹細胞移植における好中球生着促進)
  • 23/5/3 GSKのGSK3844766A(60歳以上のRSVワクチン)
  • 23/5/10 大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、アルツハイマー型認知症のアジテーションに適応拡大)
  • 23/5/12 ByondisのSYD985(vic-trastuzumab duocarmazine、her2陽性乳癌)
  • 23/5/19 Krystal BiotechのVyjuvek(beremagene geperpavec、栄養障害型表皮水疱症)
  • 23/5/21 アッヴィのepcoritamab(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫3次治療)
  • 23/5/22 アステラス製薬のESN364(fezolinetant、閉経期血管運動神経症状)
  • 23/5/22 Blueprint MedicinesのAyvakit(avapritinib、緩徐全身性肥大細胞腫に適応拡大)
  • 23/5/23 ImmunityBioのAnktiva(BCG不応ハイグレード筋層非浸潤性膀胱癌)
  • 23/5/29 Sarepta TherapeuticsのSRP-9001(delandistrogene moxeparvovec、デュシェンヌ型筋ジストロフィー)

  • 諮問委員会:
  • 23/4/28 ODAC:アストラゼネカのLynparza(olaparib)、転移CRPCにabiraterone併用
  • 23/5/9-10 Nonprescription Drugs Advisory Committee・Obstetrics, Reproductive and Urologic Drugs Advisory Committee共同会議:Perrigoの避妊薬Opill(norgestrel)のOTCスイッチ
  • 23/5/11 PADAC:ARS Pharmaceuticalsのエピネフィリン点鼻スプレイ(体重30kg以上の小児成人のアナフィラキシー治療薬)
  • 23/5/12 CTGTAC(細胞、組織、遺伝子療法諮問委員会):Sarepta TherapeuticsのSRP-9001(デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬)
  • 23/5/18 VRBPAC:ファイザーのAbrysvo(妊婦接種による新生児RSV予防ワクチン)
  • 23/5/19 GIDAC:Intercept Pharmaceuticalsのobeticholic acid(NASH用薬)




  • 今週は以上です。

    2023年4月15日

    第1098回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • 分裂する米国、今度は中絶用薬で二権が対立 
    • FDA諮問委員会:レキサルティをアルツハイマー病の激昂に適応拡大すべし 
    • イーライリリー、オンボーは米国では承認見送り 
    • マラリアの新ワクチンがガーナで承認 


    【今週の話題】


    分裂する米国、今度は中絶用薬で二権が対立

    米国は元々、政治や世論の振り子が大きく振れる傾向があるが、近年は勢力間の対立が一層激しくなっている。妊娠中絶については、昨年、避妊を禁じる法律は憲法違反という半世紀前の判決を最高裁が覆し、共和党系知事の州が続々と禁止令を出した。薬物療法に関しては規制があまり進んでいなかったが、妊娠中絶以外の適応を持たないmifepristoneは、今年3月にワイオミング州が販売を禁止したのに続いて、今月、連邦テキサス北部裁判所のトランプ前大統領が指名した判事がFDAに承認停止を命令した。

    司法省が控訴したところ、第5巡回裁判所は2000年の承認自体は支持したものの、2016年以降に行われた措置については係争可能と判断し、郵送を解禁したのは違法と判定した。司法省は最高裁に緊急救済を請求、とりあえず4月19日までの猶予を得たところだ。

    mifepristoneはフランスのRoussel-Uclafが開発し1980年代後半に同国で承認を取得した。大株主のヘキストを含め多くの抗議を受け、出荷を中止する破目になったが、フランス政府が承認薬はもはや一企業だけのものではないとして再開を命じた。フランス外での開発は進まず、米国の権利はNGOを通じてDanco Laboratoriesが取得、Mifeprex名で販売した。Roussel-Uclafは1997年にヘキストの完全子会社となるや、mifepristoneの生産を中止するとともに、権利をExelgyn社に譲渡した。

    この、仏独の文化・宗教的な違いも投影された対立が、30年経って米国で再燃した格好だ。

    子供のころ、日本は三権分立ではなくお互いに見なかったふりをする三権別々だと思ったが、米国も正反対の意味で別々だ。今回の件は、暴力による妊娠などの同情すべきケースがあることを考えれば完全禁止するのはやり過ぎのような気がするが、どうだろうか。

    【承認審査・委員会】


    FDA諮問委員会:レキサルティをアルツハイマー病の激昂に適応拡大すべし
    (2023年4月14日発表)

    FDAは精神薬理学薬諮問委員会と末梢中枢神経系薬諮問委員会の共催会議を招集し、大塚製薬がルンドベックと共同開発販売している非定型向精神薬Rexulti(brexpiprazole)をアルツハイマー病関連アジテーション(AAD)に適応拡大する当否について意見を聞いた。10人の委員のうち、消費者代表以外の9人が承認を支持した。

    FDAは向精神薬を高齢者に投与すると死亡リスクが高まると枠付き警告しているが、アジテーションは介護者の脅威・危険になりうるせいか、学会も容認的のようだ。今回、正式に承認されればオフレーベルや訴訟リスクを回避できるので画期的だ。

    RexultiはAbilify(aripiprazole)の類薬で米日欧で統合失調症や鬱病に承認されている。AADでは三本の第3相試験が実施され、うち二本で主評価項目のCMAI(Cohen-Mansfield Agitation Inventory)が偽薬比有意に改善した。一本は2mg群のCMAIがベースライン値の71から12週間で21.6低下、偽薬群は17.8低下で、p=0.04だった。二本目は0.5-2mgのレンジで滴定する方法を検討したところ、ベースラインの71.5から18.9低下し、偽薬群の16.5低下と大差なかった。追加試験では2mg群と3mg群の合計で80.6から22.6低下、偽薬群は17.3低下でp=0.0026と高度に有意な差があった。

    安全性の面では枠付き警告されている既存の向精神薬と大差ないとFDAはみなしている。30日間の追加追跡を加えた期間の死亡率は三本合計で1.2%(8人)、偽薬群は0.3%(1人)で、発生率比は4.16(95%信頼区間0.51、33.83)。既存薬はFDAが過去に実施したメタアナリシスによると10週間死亡率が4.5%、偽薬群は2.6%、率比は1.6~1.7だった。Rexultiは率比が高いがイベント数が少ないため信頼性は高くない。9例中6例は30日追加追跡期間中の死亡であることも留意すべき。また、偽薬群の死亡率がかなり違うので被験者の特性が異なる可能性がる。

    死亡リスクが高まる懸念があってもFDAや諮問委員が肯定的なのは、便益が確立しているからだろう。米国の承認審査は、かっては、安全性のチェックだけで便益は問わなかった。副作用事件が輩出し安全性審査の強化が求められたが、薬はそもそも安全ではないため、代わりに、薬効の挙証を求めるようになった。今回も同じパターンだ。

    リンク: Medpage Todayの報道


    イーライリリー、オンボーは米国では承認見送り
    (2023年4月13日発表)

    イーライリリーは抗IL-23p39サブユニット抗体Omvoh(mirikizumab)を既存治療効果不十分な中重度潰瘍性大腸炎の治療薬として承認申請し、日本では3月に承認、EUでも同月、CHMPの肯定的意見を得たが、米国は審査完了通知を受領した。データや安全性などは問題ないようで、言及されているのは製造問題だけとのこと。

    リンク: 同社のプレスリリース


    【承認】


    マラリアの新ワクチンがガーナで承認
    (2023年4月13日発表)

    インドの大手ワクチン製造会社、Serum Institute of India(SIIPL)は、R21/Matrix-Mワクチンがガーナで承認されたと発表した。オックスフォード大学がNovavax(Nasdaq:NVAX)のMatrix-Mアジュバントを利用して開発したマラリア・ワクチンで、今回が世界初承認。5~36ヶ月児に、当初免疫は3回、一年後にもう一回、接種する。後期第2相試験では1年間の感染リスクを77%抑制した。WHOが目標とする75%予防を達成したのは初めて。但し、WHOは未だ事前認証しておらず、第3相試験も今年、結果が出る見込みなので、勇み足感もある。

    マラリアはサブサハラ・アフリカ地域で年40~50万人が死亡する。ワクチンはGSKのMosquirixが昨年、WHOの事前認証を取得し、UNICEFと3年間に1800万回分を最大1.7億ドルで供給する契約を結んだ。

    R21/Matrix-Mのほうが効果が高そうなので、第3相で再現されれば、主流になっていくのではないか(Mosquirixの対象は生後6週から17ヶ月児とやや異なるが)。

    リンク: SIIPLのプレスリリース

    【主なFDA審査期限、諮問委員会(23年4月)】


    PDUFA:
  • 23年4月 Emergent BioSolutionsのAV7909(炭疽ワクチン)
  • 23/4/24 第一三共のVanflyta(quizartinib、FLT3-ITD陽性AML1L導入・地固めに適応拡大)
  • 23/4/25 バイオジェンのBIIB067(tofersen、SOD1変異のある筋萎縮性側索硬化症)
  • 23/4/26 Seres TherapeuticsのSER-109(クロストリディオイデス・ディフィシル再燃の抑制)
  • 23/4/30 アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン欠乏症)

  • 諮問委員会:
  • 23/4/17 AMDAC(Entasis Therapeuticsのsulbactam-durlobactam、アシネトバクター感染症)
  • 23/4/28 ODAC(アストラゼネカのLynparza(olaparib)、転移CRPCにabiraterone併用)




  • 今週は以上です。

    2023年4月8日

    第1097回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • 危機的COVID-19の治療法を尋ねてみた! 
    • イミフィンジの卵巣癌試験が成功 
    • 速筋トロポニン活性化剤の第3相が中止に 
    • キイトルーダ・レンビマ併用試験が二本フェール 
    • ファイザーも希少型NSCLCに二剤併用を承認申請 
    • 遺伝子編集技術薬を承認申請 
    • 和黄医薬、VEGFR阻害剤を米国でも申請 
    • TransCon PTHの承認は遅延へ 
    • CHMP、オンボーなどの承認を支持 
    • 危機的COVID-19の救命薬がEUA 
    • パドセブ・キイトルーダ併用で尿路上皮腫に承認 
    • FDAが17-OHPCの承認を取消 
    • イムブルビカのMCLとMZL適応を自主返上へ 


    【今週の話題】


    危機的COVID-19の治療法を尋ねてみた!
    (2023年4月6日作成)

    Gohibic(vilobelimab)のEUA(後述)を期に、他の治療法について尋ねたところ、以下の回答を得た。

    コロナウイルス感染症に罹患した患者が危機的な状態に陥った場合、以下の治療が必要となります。

    1. 酸素療法:重症化した患者は、肺炎によって酸素不足が起こります。そのため、酸素療法が必要となります。酸素マスクや酸素吸入器、人工呼吸器などが使用されます。

    2. 抗炎症療法:COVID-19は炎症を引き起こすため、ステロイド薬や抗体製剤などの抗炎症療法が行われることがあります。ただし、患者の状態や治療のタイミングによっては、効果が限定的であることもあります。

    3. 血液浄化療法:血液浄化療法は、血液中に含まれる炎症性物質を除去するために使用されます。ECMO(人工心肺装置)やCRRT(連続的腎代替療法)などの方法があります。

    4. 抗ウイルス療法:抗ウイルス薬のうち、レムデシビルやマレンピラビルなどが使用されることがあります。

    5. 血漿療法:COVID-19から回復した人が持つ抗体を含む血漿を投与することで、患者の治療に効果があるとされています。

    6. 免疫グロブリン療法:免疫グロブリンを使用して、患者の免疫力を高めることができます。

    COVID-19による危機的な状態に陥った患者には、上記の治療法を組み合わせて行われることがあります。治療は、患者の状態や症状に合わせて個別に決定されます。早期の診断と治療が重要です。

    そつない回答で、本稿よりよっぽど丁寧だ。今後はChatGPTに書かせようかとも思ったが、ニュース系は弱いようで、トランプ前大統領はまだ起訴されていない、将棋の最強プレイヤーは居将棋のランキング1位である羽生善治九段、藤井聡太七段が八冠になれるかどうかは断言できないと言っている。事前に学習すべき情報の量が限られる分野でAIが活躍するのは未だ先のようだ(有料版は最新の情報を収集できるのかもしれないが)。

    リンク: ChatGPTを提供するOpenAIのホームページ

    【新薬開発】


    イミフィンジの卵巣癌試験が成功
    (2023年4月5日発表)

    アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)とPARP阻害剤Lynparza(olaparib)の第3相卵巣癌一次治療試験、DUO-Oの中間解析で主評価項目の一つが良好な成績を上げたことを明らかにした。抗PD-1/PD-L1抗体の卵巣癌試験が成功するのは珍しい。延命効果などは未確認。データは今後、発表する予定。

    この試験は日本を含む多くの国の医療施設で進行ハイ・グレード上皮性卵巣癌の一次治療を受ける患者1200人以上を組み入れた。tBRCA型(腫瘍細胞のBRCA遺伝子に悪性変異あり)ではない患者は標準療法群(白金薬ベース化学療法とbevacizumabによる導入療法とbevacizumabによるメンテ療法)、Imfinzi追加群(導入とメンテ合わせて最大24ヶ月間投与)、またはImfinzi・Lynparza追加群(Lynparzaはメンテのみ、最大24ヶ月間投与)に無作為化割付けし、tBRCA型は別の群に割り付けた。主評価項目は二剤追加群と標準療法群のPFS(無進行生存期間、治験医評価)で、全患者とHRD(相同組換え不全)型サブグループの二つの解析が予定されている。

    今回の中間解析では、このうち、全患者のPFSに統計的にも臨床的にも意味のある差が見られたとのこと。Imfinziだけ追加した群も点推定値は上回った模様だ。HRDサブグループの解析は言及されていないが、サンプルサイズが小さくなるので未成熟なのかもしれない。

    Imfinziは卵巣癌には承認されていないので新市場になりうる。Lynparzaは白金薬ベース化学療法に部分反応以上した患者のメンテ療法に承認されているが適応になるのはHRD型だけなので、本試験でもしHRD型以外にも便益が見られるならば、対象が倍増することになる。

    リンク: 同社のプレスリリース


    速筋トロポニン活性化剤の第3相が中止に
    (2023年3月31日発表)

    Cytokinetics(Nasdaq: CYTK)はCK-2127107(reldesemtiv)の第3相COURAGE-ALS試験を中止すると発表した。データ安全性監視委員会が200人の24週データの中間解析で無益性を認定した。昨年、心ミオシン活性化剤CK-1827452(omecamtiv mecarbil)の第3相もフェールしており、崖っぷちに追い込まれた。

    この試験は筋力低下が発現してから2年以内の筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者を組入れて300mgを一日二回、経口投与する効果を検討した。150~450mgをテストした第2相では主評価項目のSVC肺活量も副次的評価項目のALSFRS-Rもフェールしたが、三用量のプール分析で効果の兆候が見られたため、21年8月に第3相入りしたもの。前後してアステラス製薬が共同開発から降りたこともあり、ハイリスク・プロジェクトと見なされていた。

    リンク: 同社のプレスリリース


    キイトルーダ・レンビマ併用試験が二本フェール
    (2023年4月7日発表)

    MSDとエーザイは抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)とVEGFR阻害剤Lenvima(lenvatinib)を併用する第3相試験を数多く実施しており、内膜腫などは承認に結び付いたが、枝の高い所に生っている実の取りこぼしも少なくない。今回は、二本のフェールが公表された。

    LEAP-003試験は切除不能/転移黒色腫の一次治療薬であるKeytrudaにLenvimaを追加する効果を検討した。共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)は以前実施した中間解析で有意に延びていたが、もう一つの全生存期間は今回の中間解析で便益が見られなかった。独立データ監視委員会の勧告に従い中止する。

    LEAP-017試験はMMR(ミスマッチ修復不全)でもMSI-H(高マイクロサテライト不安定性)でもない切除不能/転移結腸直腸癌で5-FU、oxaliplatin、irinotecan、BRAF阻害剤などのレジメンに不応再発不耐の患者を組入れて、サルベージ薬としての延命効果をregorafenibまたはtrifluridine・tipiracil合剤を投与する群と比較したが、事前に設定された解析計画に基づく最終解析でハードルをクリアできなかった。全生存期間も副次的評価項目であるPFSやORR(客観的反応率)も上回る傾向は見られたようだ。

    わざわざ事前に設定された解析計画と書いているところを見ると、別の解析方法や、中間解析と最終解析のアルファの配分次第では、結論が変わる可能性があったのかもしれない。何れにせよ有意性は高度ではないだろうから、承認申請するにしても他のエビデンスと合わせて総合的な分析を提示する必要があるだろう。

    尚、MMRやMSI-Hは遺伝子複製過程で多くの過ちが生じているため変な蛋白ができやすく、免疫強化療法の標的になりうる。切除不能/転移結腸直腸癌の場合、Keytrudaが一次治療や二次治療以降に承認されている。

    リンク: 両社のプレスリリース

    【承認申請】


    ファイザーも希少型NSCLCに二剤併用を承認申請
    (2023年4月4日発表)

    ファイザーは、非小細胞性肺癌の2%程度で見られるBRAFにV600E変異を持つ癌にBRAF阻害剤Braftovi(encorafenib)とMEK阻害剤Mektovi(binimetinib)を併用する一変をFDAに申請し受理された。審査期限は今年第4四半期とのこと。ノバルティスのTafinlar(dabrafenib)とMekinist(trametinib)は17~18年に欧米日で適応拡大しているので6年遅れとなる。エビデンスは欧韓米の施設で98人を組入れた第2相試験におけるORR(客観的反応率)で、データは今後発表する。

    両剤は19年にArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)を114億ドルで買収して入手したもので、18~19年に米欧日でV600EまたはV600K変異を持つ切除不能/転移黒色腫に併用することが承認された。Braftoviはcetuximabと併用でV600E変異のある転移結腸直腸癌に用いることも承認されている(日本はMektoviを含む三剤併用も承認)。

    リンク: 同社のプレスリリース


    遺伝子編集技術薬を承認申請
    (2023年4月3日発表)

    Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)と遺伝子編集技術のフロントランナーの一社であるCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)は、CTX001(exagamglogene autotemcel、略称exa-cel)の米国におけるローリング承認申請を完了した。適応は鎌状赤血球病と輸血依存ベータ・サラセミア。優先審査を要請しており、認められれば審査期限が申請の12ヶ月後から8ヶ月後に早まる。

    患者のCD34陽性造血幹細胞や前駆細胞をex vivoでCRISPR/Cas9遺伝子編集し、胎児期にしか発現しない胎児ヘモグロビン(HbF)の発現を促すことによって、成人ヘモグロビン(HbA)の欠乏を補うもの。臨床試験で血管閉塞性クリーゼや輸血頻度を抑制する効果を示した。

    リンク: 両社のプレスリリース


    和黄医薬、VEGFR阻害剤を米国でも申請
    (2023年3月31日発表)

    中国のHutchmed(和黄医薬、Nasdaq:HCM)は米国でElunate(fruquintinib)のローリング承認申請を完了した。汎VEGF受容体阻害剤で難治/転移結腸直腸癌に用いる。中国で5年前に承認、欧日でも年内に承認申請する考え。中国外の権利は武田薬品が保有している。

    米欧日豪で実施した第3相試験でLonsurf(trifluridine、tipiracil)及びVEGF受容体阻害剤Stivarga(regorafenib)に不応/不耐で他の標準療法薬は全て使い果たした進行/難治/転移結腸直腸癌に投与したところ、メジアン生存期間が7.4ヶ月と偽薬群の4.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.66だった。G3以上の有害事象発現率は各群62.7%と50.4%で高血圧症や無気力、手足症候群などが増加した。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    TransCon PTHの承認は遅延へ
    (2023年4月3日発表)

    デンマークのアセンディス・ファーマ(Nasdaq:ASND)はTransCon PTH(palopegteriparatide)を副甲状腺ホルモン欠乏症用薬として昨年、欧米で承認申請し、米国の審査期限は今月30日となっているが、遅延の可能性がでてきた。申請内容に瑕疵があるため、審査手続きの最終段階であるパッケージ・インサートや承認後試験に関する協議に進めない旨、FDAから連絡が来たとのことだ。具体的な内容は不明。

    TransCon PTHは体内で副甲状腺ホルモンに変わるプロドラッグをキャリアと結合して一日一回皮下注と投与頻度を減らした。第3相試験では79%の患者がカルシウムと活性化ビタミンDの服用を止めても血清カルシウム量が正常水準(8.3~10.6mg/dL)に維持することができた。偽薬群は5%のみだった。症状やQOLも改善が見られた。

    リンク: 同社のプレスリリース


    CHMP、オンボーなどの承認を支持
    (2023年3月31日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

    リンク: EMAのプレスリリース

    イーライリリーのOmvoh(mirikizumab)は抗IL-23p19サブユニット抗体。中重度活性期潰瘍性大腸炎で既存薬に不耐、不十分応答、または再燃した成人患者に用いる。3月に日本で承認された。米国でも審査中。

    リンク: EMAのプレスリリース

    Fennec Pharmaceuticals(Nasdaq:FENC)のPedmarqsi(sodium thiosulfate)は抗癌剤の聴覚毒性を緩和する薬。生後1ヶ月から18歳までの局所性または非転移性固形癌にcisplatinベースの化学療法を施行する時に用いる。臨床試験ではリスクが4~7割低下した。米国では昨年9月に承認。

    リンク: EMAのプレスリリース

    TG Therapeutics(Nasdaq:TGTX)のBriumvi(ublituximab)は抗CD20キメラ抗体。糖鎖のフコースを抑制しADCC(抗体依存性細胞傷害毒性)活性を強化した。抗CD20抗体の代表的な用途の一つである活動性再発寛解型多発硬化症に用いる。臨床試験では今やこの領域の咬ませ犬化したteriflunomide比で再発が半減した。米国では昨年12月に承認。オランダのPropharma Groupが承認申請者となっている。

    リンク: EMAのプレスリリース

    先週号で報じたように、スペインのHIPRA HUMAN HEALTHが申請したCOVID-19ワクチン、Bimervaxも支持された。蛋白抗原型ワクチンで、mRNAワクチン接種歴のある16歳以上の小児・成人の追加接種に用いる。

    適応拡大では、まず、ブリストル マイヤーズ スクイブのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)。現在は再発難治性のDLBCL(びまん性巨細胞型B細胞リンパ腫)、PMBCL(原発性縦隔B細胞リンパ腫) 及びFL3B(濾胞性リンパ腫グレード3B)の成人の三次治療薬として承認されているが、難治または初回治療後12ヶ月以内に再発した成人の二次治療に用いることが支持された。上記3種類に加えてHGBCL(ハイ・グレードB細胞リンパ腫)も適応になる予定。

    リンク: EMAのプレスリリース

    アストラゼネカ傘下のAlexion PharmaceuticalsのUltomiris(ravulizumab)は抗アクアポリン4抗体陽性視神経脊髄炎の成人に用いることが支持された。日米でも申請中。臨床試験では48週間無再燃率が98%と偽薬群の63%を大きく上回った。現在は発作性夜間ヘモグロビン尿症、非典型溶血性尿毒症症候群、アセチルコリン受容体に対する抗体を持つ全身性筋無力症の治療に承認されている。

    リンク: EMAのプレスリリース

    一方、Covis PharmaがFeraheme(ferumoxytol)の承認申請を商業的な理由で撤回したことが明らかにされた。米国では14年前に承認された鉄欠乏性貧血治療薬で既にGE薬が発売されている。欧州で申請していたのは初耳。

    リンク: EMAのプレスリリース

    【承認】


    危機的COVID-19の救命薬がEUA
    (2023年4月4日発表)

    FDAはInflaRx(Nasdaq:IFRX)が開発したGohibic(vilobelimab)を危機的COVID-19用薬としてEUA(非常時使用認可)した。人工呼吸器やECMOを装着後48時間以内の成人患者に800mgを最大6回(第1、2、4、8、15、22日)点滴静注する。ICU退室後も入院中は治療を続ける。尚、EUAなのでFDAに承認されているわけではない。

    C5a補体に結合するマウス抗体の可変領域とヒトの固定領域を結合したIgG4カッパ型キメラ抗体。欧州や中南米、ロシア、南アの施設で約370人を組入れた臨床試験で28日死亡率(カプラン・メイヤー推定)が31.7%と偽薬群の41.6%を下回り、ハザードレシオ0.67、p値は0.05を下回った。副次的評価項目の60日死亡率も各36.5%、47.2%、0.67、0.05未満だった。有害事象は肺炎や敗血症が増加した。

    上記は介入方法と年齢を共変数とするCox比例ハザードモデルによる解析結果で、元々は主解析方法だったが、盲検解除の二週間前に、承認審査機関のアドバイスにより、治験実施施設で階層化した上で解析する方法に変更された。階層化から漏れる症例が発生したせいか、ハザードレシオは0.728と良い数値が出たがp=0.094でフェールしてしまった。標準療法に国毎の違いがあっても不思議がないので階層化したほうが良いだろうし、米国施設が参加していないのでEUAされるかどうか不透明な状態だった。

    尚、危機的COVID-19にはdexamethasoneやActemra(tocilizumab)、Veklury(remdesivir)、Olumiant(baricitinib)も用いることができるが、当試験での使用率は各薬99%(他のステロイドも含む)、16%、5%、3%となっており、高価な薬と同時使用する時の上乗せ効果は明確ではない。また、Gohibicの一人当たり価格はVekluryの10倍以上に設定されるようだ。

    欧州でも承認申請予定。同社はドイツ企業で欧州の施設も参加したことを考えれば、なぜ未だ申請されていないのだろうか。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: 医療従事者向けファクト・シート(pdfファイル)


    パドセブ・キイトルーダ併用で尿路上皮腫に承認
    (2023年4月3日発表)

    FDAはSeagen(Nasdaq: SGEN)がアステラス製薬と共同開発販売している抗ネクチン4抗体薬物複合体、Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)と、MSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を併用でcisplatin不適局所進行性/転移尿路上皮腫の一次治療に用いる適応拡大を加速承認した。Keytrudaは200mgを3週毎または400mgを6週毎に点滴静注する。Padcevは再発後に単剤投与する場合は1.25mg/kg(最大125mg)を週一回、三週連続投与して翌週は休む投与スケジュールだが、今回の用法はKeytrudaに合わせた3週サイクルで左記用量を二週オン、一周オフとなっている。

    エビデンスは第2相試験のORR(客観的反応率)とその持続性。121人に投与したところORRは68%、完全反応率は12%だった。両社は市販後薬効確認試験をコミットしている。

    リンク: FDAのプレスリリース

    【承認返上/取消】


    FDAが17-OHPCの承認を取消
    (2023年4月6日発表)

    FDAはRobert Califf長官とNamandjé Bumpusチーフ・サイエンティストの連名でCovis PharmaのMakena(hydroxyprogesterone caproate、通称17-OHPC)とジェネリック薬の承認取消決定を発表した。加速承認から12年、市販後薬効確認試験がフェールしてから4年経ち、やっと決着した。次の焦点は他の国の産婦人科医や学会の対応だ。

    活性成分は1956年にスクイブが米国で販売承認を取得したが、その後、商業上の理由で販売を打ち切った。21世紀に入って、研究者主導試験で37週未満の早産を抑制する効果を示し、調剤薬局品が普及。安全性懸念のある薬剤が未承認のまま広く用いられるのは好ましくないためFDAが呼びかけたところ、KV Pharmaceuticalsが06年に承認申請し、市販後薬効確認試験(PROLONG試験)を開始した後の11年に加速承認された。適応・効能は37週より前の単体自然早産歴を持つ女性の早産予防。

    ところが、19年にPROLONG試験がフェールしてしまった。サロゲート・マーカーである35週未満の早産も、臨床的に重要な評価項目である新生児の有病・死亡率も、偽薬群と大差なかった。FDA諮問委員会の意見は分かれたが、2020年、FDAがメーカー側に自主的な承認返上を推奨した。

    この間、メーカーも変遷した。KVはMakenaを調剤薬局品の100倍の価格で発売するとともに、薬局調剤をスクイーズアウトしようとしたが、政治介入などにより果たせず、破産法適用申請に至った。Makena事業などはAMAG Pharmaceuticalsが継承したが、FDAが自主返上を促した翌月、ルクセンブルグ籍の未上場企業、Covis Pharmaに6.5億ドルで買収された。Covisは3年近く粘ったが今年3月に承認返上を決定した。

    FDAが承認取消ではなく自発的承認返上を求めるのは、そのほうが簡便・迅速だからだ。承認を取り消すためには公聴会や諮問委員会を開催する必要がある。今回の場合、議題や委員に配布される資料、販売中止する場合の経過措置などについて事前の協議が進まず、開催まで2年かかった。製薬会社には社員や株主、医療従事者など様々なステークホルダーが存在し、顧客と呼べるかどうか曖昧な患者のためにベストな選択をするとは限らないだけに、今回の経験を生かすには法改正などが必要だろう。

    知人の娘さんが治療を始めたと聞いた直後にフェールを知ったので個人的に強い関心を持っていたが、『米国では』、一応の決着を見た。

    Makena問題の推移

  • 1956年、スクイブ社が米国で販売承認を取得(適応は不明。当時は安全性データがあれば承認された)
  • 2003年、New England Journal of Medicine誌がNIH主導試験の論文を刊行し、薬局調剤品が普及
  • 2006年、FDAの開発要請に応じたKV Phamaceuticalsが承認申請
  • 2008年、FDA諮問委員会で21人の委員中12人が35週前の切迫早産の予防効果を認めたが、FDAは非承認可能通知を発出
  • 2011年、市販後薬効確認試験が開始されたことを受け、FDAが加速承認。薬局調剤品の販売を禁止できず、KVが裁判所に破産法の適用を申請
  • 2013年、KVの会社更生が認められ、AMAG PharmaceuticalsがMakina事業など、Perrigoがそれ以外を分割買収
  • 2019年、市販後薬効確認試験のPROLONGがフェール。FDA諮問委員会で9人が承認取消を支持、7人がもう一度薬効確認試験を促すことを支持(但し産婦人科医の委員に関しては6人中5人が再試験を支持)
  • 2020年10月、FDAの小分子薬担当部門、CDERがAMAGに自発的承認返上を推奨
  • 同年11月、Covis PharmaがAMAGを約6.5億ドルで買収
  • 2021年8月、Covisがやっと公聴会の開催を要請
  • 2022年10月17~19日、FDAが公聴会とORUDAC(産科、再生産、泌尿器科用薬諮問委員会)を開催。15人の諮問委員中14人が承認取消を支持
  • 同月、Clovisが自発的承認返上をFDAに提案したが、治療中の患者や流通在庫の扱いに関して合意できず
  • 2023年3月、Covisが承認返上を決定
  • 同年4月、FDAがMakenaとGE薬の承認を取消。

  • リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: FDAのMakena情報ページ


    イムブルビカのMCLとMZL適応を自主返上へ
    (2023年4月6日発表)

    Btk阻害剤Imbruvica(ibrutinib)を共同開発販売しているPharmacyclics(アッヴィの子会社)とJanssen Biotech(ジョンソン・エンド・ジョンソンの子会社)は、夫々、適応の一部を米国で返上する意向を明らかにした。

    一つは13年に加速承認されたマントル細胞腫(MCL)の二次治療。もう一つは17年に加速承認された辺縁帯リンパ腫(MZL)の二次治療。どちらも市販後薬効確認試験が良好な結果にならず、FDAが本承認切替を認めなかった。

    MCLは初めて治療を受ける65歳以上の患者に化学療法と併用したSHINE試験が成功し、PFS(無進行生存期間)が有意に増加した。しかし、副作用などによる死亡が増加したため、全生存期間は化学療法・偽薬併用群と大差なかった。両社はEUで二種変更申請したが、CHMPは便益が限定的で深刻な感染症のリスクも見られることから懐疑的で、申請撤回した。

    MZLは難治再発濾胞性リンパ腫を組入れたSELENE化学療法併用試験でMZLサブグループも含めてPFS延長を達成できなかったとのこと。データは今後発表予定。

    Imbruvicaは上記のほかに慢性リンパ性白血病/小リンパ球性白血病やワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症、慢性移植片宿主病の二次治療に承認されている。

    リンク: Janssen Pharmaceuticalのプレスリリース
    リンク: アッヴィのプレスリリース(開示内容が若干異なるのが興味深い)

    【主なFDA審査期限、諮問委員会(23年4月)】


    PDUFA:
  • 23年4月 Emergent BioSolutionsのAV7909(炭疽ワクチン)
  • 23/4/2 ロシュのPolivy(polatuzumab vedotin-piiq、未治療のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に適応拡大)・・・遅延?
  • 23/4/21 SeagenのPadcev(enfortumab vedotin-ejfv、尿路上皮腫にKeytruda併用に適応拡大)
  • 23/4/24 第一三共のVanflyta(quizartinib、FLT3-ITD陽性AML1L導入・地固めに適応拡大)
  • 23/4/25 バイオジェンのBIIB067(tofersen、SOD1変異のある筋萎縮性側索硬化症)
  • 23/4/26 Seres TherapeuticsのSER-109(クロストリディオイデス・ディフィシル再燃の抑制)
  • 23/4/30 アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン欠乏症)・遅延へ

  • 諮問委員会:
  • 23/4/14 PCNSDAC・PDAC(大塚製薬のbrexpiprazole、アルツハイマー病のアジテーション用途)
  • 23/4/17 AMDAC(Entasis Therapeuticsのsulbactam-durlobactam、アシネトバクター感染症)
  • 23/4/28 ODAC(アストラゼネカのLynparza(olaparib)、転移CRPCにabiraterone併用)





  • 今週は以上です。