2023年2月26日

第1091回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • エンタイビオのaGvHD予防試験が成功 
  • I-131標識抗体の第3相が成功 
  • ラゲブリオも曝露後予防試験がフェール 
  • チクングニア熱ワクチンの承認申請が受理 
  • ファイザーもBCMA架橋抗体を承認申請 
  • オンパットロをATTR心筋症に適応拡大申請 
  • ファイザー、妊婦接種用新生児RSV予防ワクチンを承認申請 
  • Regeneron、抗C5抗体をCHAPLE症候群に承認申請 
  • CHMP、IDH1阻害剤などに肯定的意見 
  • 週一回投与第VIII因子が承認 


【新薬開発】


エンタイビオのaGvHD予防試験が成功
(2023年2月18日発表)

武田薬品のEntyvio(vedolizumab)の第3相GRAPHITE試験の結果がASTCTとCIBMTRの共催による移植・細胞療法学会で発表された。血液癌または骨髄増殖性疾患で他家造血幹細胞移植を受ける333人を組入れて、移植の前日から5ヶ月間に300mgを7回点滴静注したところ、小腸における急性移植片宿主病(aGvHD)の発現が偽薬比半減した(85.5%の患者が小腸aGVHDの発現なしで生存、偽薬群は70.9%、ハザードレシオ0.45、p<0.001)。治療関連有害事象や同深刻有害事象の発現率は両群それほど変わらなかった。

Entyvioはα4β7インテグリンに結合する抗体医薬。炎症性大腸炎やクローン病の治療薬として欧米日で承認されている。今回の成功を受けて適応拡大申請に向かうのではないか。

リンク: 同社のプレスリリース(英文)


I-131標識抗体の第3相が成功
(2023年2月18日発表)

Actinium Pharmaceuticals(NYSE AMERICAN:ATNM)は昨年10月にIomab-B(apamistamab iodine-131)の第3相SIERRA試験が成功したと発表したが、データをASTCTとCIBMTRの共催による移植・細胞療法学会で発表した。北米の医療施設で55歳以上の難治/再発急性骨髄性白血病の患者153人を組入れて、他家骨髄移植(BMT)の前処理(骨髄枯渇)用薬としての便益を標準的な強度軽減前処理と比較したところ、6ヶ月時点における持続的完全反応率が22%と標準療法群の0%を有意に上回った。偽薬群の患者は過半が試験薬にクロスオーバーしたが、しなかった患者と比べて試験薬群の患者は1年生存率(26%対13%)もメジアン生存期間(6.4ヶ月対3.2ヶ月)も倍増した。

両群はBMTに進む条件も異なっており、試験薬群は前処理に完全反応しなくても実施できた。このため、試験薬群は全員がBMTに進んだが、標準療法群は18%のみだった。

承認申請に向かうのではないか。Iomab-Bは白血球などで発現するCD45に結合する抗体と放射性核種を結合したもの。Fred Hutchinson Cancer Research Centerからライセンスした。急性骨髄性白血病のBMT実施件数が米国の倍多い欧州での権利はスウェーデンのImmedicaが昨年取得した。

リンク: 同社のプレスリリース


ラゲブリオも曝露後予防試験がフェール
(2023年2月21日発表)

MSDはLagevrio(molnupiravir)の第3相曝露後予防試験、MOVe-AHEADの主目的を達成できなかったと発表した。作用機序は異なるがファイザーのPaxlovid(nirmatrelvir、ritonavir)も類似した第3相がフェールしている。

米欧日で軽中等症COVID-19感染症の重症化を抑制する薬として承認されている。RNA依存性RNAポリメラーゼを阻害する、新型インフルエンザ治療薬アビガン(ファビピラビル)と似た薬で、妊婦禁忌だけでなく、男性も治療完了後3ヶ月間、避妊が必要。

今回の試験は、症候性COVID-19感染者と同居の成人で、COVID-19感染検査陰性、症状もなく、ワクチン歴や感染歴のない人1500人超を欧米日などの施設で組入れて、800mgを12時間おきに5日間に亘り経口投与し、14日間の感染リスクを偽薬と比較した。23.6%小さかったが統計的に有意ではなかった。

PaxlovidのEPIC-PEP試験でも5日コースは偽薬比32%、10日コースは37%、小さかったが、有意水準に達しなかった。

感染者に曝露した人の中には、既に感染しているがウイルス量が少ないため検査で検出できないだけの人もいるだろう。軽中等症患者の重症化に有益なら未発症者でも評価項目が重症感染症だけならもっと高い効果を示せるのではないかとも思われるが、検出力を確保するためにはもっと大規模な試験が必要だろうから、現実的ではないのだろう。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認申請】


チクングニア熱ワクチンの承認申請が受理
(2023年2月20日発表)

フランスのValneva(Nasdaq:VALN)は、FDAがチクングニア熱の弱毒化生ワクチンVLA1553の承認申請を受理したと発表した。優先審査を受け、審査期限は8月末。第3相試験で一回接種による防御的中和抗体獲得率が98.9%、95%下限は96.7%となり、FDAのベンチマークとされる70%を上回った。観察期間は28日だが、6か月経過時点でも96.3%(95%下限93.1%)と高水準を維持した。

チクングニア熱はネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカによって媒介されるチクングニアウイルス感染症。死亡率はそれほど高くない。

リンク: 同社のプレスリリース


ファイザーもBCMA架橋抗体を承認申請
(2023年2月22日発表)

ファイザーはPF-06863135(elranatamab)を難治再発多発骨髄腫用薬として欧米で承認申請し受理されたと発表した。米国は優先審査を受け、年内に結果が判明する見込み。

骨髄腫の表面抗原であるBCMAとT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。第2相MagnetisMM-3試験で3種類の代表的な薬に応答せずBCMA標的薬歴を持たない患者123人に皮下注したところ、ORRが61%、9ヶ月反応持続率は84%だった。三段階用量漸増法を採用し、クラス・イフェクトであるサイトカイン放出症候群や免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群の重症度をG2以下に抑制している。

BCMAとCD3を架橋する抗体はヤンセンのTecvayli(teclistamab-cqyv)が、CAR-T療法薬は同じくヤンセンのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)が、昨年欧米で難治再発多発骨髄腫用薬として承認された(後者は日本でも承認)。

リンク: ファイザーのプレスリリース


オンパットロをATTR心筋症に適応拡大申請
(2023年2月21日発表)

Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)はOnpattro(patisiran)をトランスサイレチン型アミロイドーシス心筋症(ATTR-CM)の治療に用いる適応拡大を米国で承認申請し受理された。審査期限は10月8日。

家族性ATTRによるポリニューロパチーの治療薬として欧米日で承認されているRNA介入薬。ATTR-CM患者360人を組入れた試験では、0.3mg/kgを3週毎静注した群の12ヶ月後の6分歩行テストが偽薬比有意に上回った(p=0.0162)。副次的評価項目のKCCQ(QOL指標)はp=0.0397、全死亡/心血管イベント/6分歩行テスト悪化の複合評価項目はp=0.0574だった。異なった作用機序を持つ既存薬であるファイザーのVyndaqel/Vyndamax(tafamidis meglumine/tafamidis)に応答しなかった患者には便益が見られず、未使用の患者に対する成績はVyndaqelのデータに見劣りする。

リンク: Alnylamのプレスリリース


ファイザー、妊婦接種用新生児RSV予防ワクチンを承認申請
(2023年2月21日発表)

ファイザーは昨年、PF-06928316を60歳以上のRSV下部気道疾患予防用ワクチンとして米国で承認申請したが、今回、妊婦に接種して胎児が生後90日間に重症RSV下部気道疾患にならないよう予防する用途用法で申請し受理された。どちらも優先審査で、審査期限は前者が5月、後者は8月。EUでも両用途で承認申請が受理されており、年内に結果が出る見込み。日本でも妊婦向けの申請が発表された。

第3相MATISSE試験で妊娠第2~3期に120mcgを一回接種したところ、生後90日間の診療が必要な重症下部気道感染症のワクチン効率が81.8%だった。重症以外も含む解析は閾値をクリアできなかったようだ。

60年前に開発された初期のRSVワクチンで接種後に感染すると重症化してしまう懸念が表面化し、開発が長期低迷したが、NIH(米国立医療研究所)がRSVが宿主細胞に結合する前の構造を解明して以来、RSVpreFを抗原とするワクチンの開発がファイザーとGSKにより進展、高齢者向けは両社前後して承認申請された。一方、妊婦接種型はGSKのアジュバント不使用品の第3相が中間解析で打ち切りとなっており、ファイザーの製品はどこが違うのか、あるいはそれほど差がないのか、気になるところだ。

リンク: ファイザーのプレスリリース


Regeneron、抗C5抗体をCHAPLE症候群に承認申請
(2023年2月21日発表)

Regeneron PharmaceuticalsはREGN-3918(pozelimab)を米国でCHAPLE症候群の治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は8月20日。

CHAPLEはCD55/DAF deficiency with hyperactivation of complement, angiopathic thrombosis, and protein-losing enteropathyの略。補体制御因子であるCD55の遺伝子の常染色体性劣性遺伝性疾患で、補体系が異常に活性化しタンパク漏出性腸症や血栓症、低ガンマグロブリン血症や低アルブミン血症などを合併する。世界で数十人の極超希少疾患。pozelimabはC5を標的とする抗体で発作性夜間ヘモグロビン尿症などにも開発されている。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、IDH1阻害剤などに肯定的意見
(2023年2月24日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

セルビエのTibsovo(ivosidenib)はIDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)阻害剤。成人のIDH1 R132変異を持つ二種類の癌に用いる。一つは急性骨髄性白血病で、標準的な化学療法に適さない一次治療患者にazacitibineと併用。もう一つは全身治療歴のある局所進行性/転移性胆管癌にモノセラピー。米国では前者は18年、後者は21年に承認された。

20年にAgios Pharmaceuticalsの腫瘍学ポートフォリオを買収して入手したもの。

リンク: EMAのプレスリリース

Akebia Therapeutics(Nasdaq:AKBA)のVafseo(vadadustat)はHIF-PH(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)阻害剤。透析期慢性腎疾患の成人の症候性貧血の治療に用いる。保存期慢性腎疾患は臨床試験で心血管リスクがエリスロポイエチン比非劣性ではなかったせいか、支持されなかったが、米国はどちらも審査完了通知を受領したことを考えればマシな結果だ。日本はメディカル・ツーリズムに注力しているせいか日本に来なければ治療を受けられない薬が色々あり、田辺三菱製薬のバフセオとして20年に両方の適応で承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

Chiesi FarmaceuticiのElfabrio(pegunigalsidase alfa)はポンペ病の酵素補充療法。植物培養技術を持つProtalix BioTherapeutics(NYSE American:PLX)からグローバルな開発販売権を取得したもので、Protalixが生産する。米国はFDAの渡航規制などにより承認が遅れている。

リンク: EMAのプレスリリース

Janssen-CilagのAkeega(niraparib、abiraterone acetate)は成人の生殖細胞系/体細胞系BRCA1/2変異のある転移性去勢抵抗性前立腺癌で化学療法に適さない患者に用いる。前者の活性成分はGSKの卵巣癌用薬Zejulaに用いられているPARP阻害剤で、ヤンセンは16年にTesaro(後にGSKが買収)から前立腺癌などに関する開発販売権を取得した(日本市場は対象外)。Tesaroは12年にMSDからライセンスした。後者はヤンセンが前立腺用薬Zytigaとして販売しているCYP17阻害剤。元々は英国のBTGとICRの共同研究の成果である模様だ。

リンク: EMAのプレスリリース

インサイト(Nasdaq:INCY)のOpzelura(ruxolitinib)はJakafiなどの名称で販売されているJAK阻害剤のクリーム製剤。12歳以上の顔面を含む非分節型白斑の治療に用いる。米国では21年にアトピー性皮膚炎に承認、白斑は22年7月に承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

ノーベルファーマのHyftor(sirolimus)はmTOR阻害剤の外用ゲル製剤。6歳以上の結節性硬化症関連顔血管線維腫に用いる。18年に日本で、22年に米国で承認された。EUの申請者はドイツ子会社のPlusultra pharma。

リンク: EMAのプレスリリース

一方、MSDのLagevrio(molnupiravir)は、意外にも、否定的意見となった。日本で新型インフルエンザ治療薬アビガンとして承認されているfavipiravirと同じRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤で、SARS-CoV-2ウイルスのゲノムに変異をもたらし増殖を抑制する。英米日で軽中等症COVID-19の外来治療薬として承認されている。論点は色々ありそうだが、主として薬効がボトルネックとなった模様だ。第3相の中間解析で良好な重症化抑制効果を示したが、意外なことに、最終解析ではリスク削減率が大きく低下した。中間解析で目的を達成と聞くと凄く良い薬のような印象を受けるが、こういうことがあるから鵜呑みにしてはいけない・・・という知識は持っていたが、こんなに大きく変わるのを見たのは初めてだ。第3相試験はワクチン未接種者だけを組み入れたので欧米日の患者の過半を占める接種者における便益は確立していない。安全性では催奇性があり、アビガンと同様に精子を通じて胎児に移行する懸念もある。顕在化はしていないが変異ウイルスを選択する理論的な懸念もある。

Ridgeback Biotherapeuticsがエモリー大学からライセンス、MSDに世界開発商業化権を供与したもの。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、Valneva(Euronext Paris:VLA)の不活化COVID-19ワクチンを18~50歳の追加接種に用いることが支持された。但し、対象はこのワクチンまたはアデノウイルス・ベクター・ワクチンによる当初免疫を得た患者に限定される。

次に、ロシュのEsbriet(pirfenidone)。特発性肺線維症治療薬として日欧米で承認されているが、軽中等症限定を解除することが支持された。

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)の抗PD-1抗体Libtayo(cemiplimab)は、成人のPD-L1陽性(≧1%)、EGFR/ALS/ROS1変異陰性の局所進行性/転移性非小細胞性肺癌の一次治療に白金薬レジメンと併用することが支持された。このうち、局所進行性癌は根治的科学放射線療法が適応にならない場合に限られる。

最後に、アッヴィのJAK阻害剤Rinvoq(upadacitinib)は成人の中重度活性期クローン病でバイオ薬を含む従来治療に不応再燃不耐の患者に用いることが支持された。

【承認】


週一回投与第VIII因子が承認
(2023年2月23日発表)

サノフィのAltuviiio(Antihemophilic Factor (Recombinant), Fusion Protein-ehtl;efanesoctocog alfa)がFDAに承認された。第VIII因子でA型血友病の成人小児の出血傾向の抑制、出血の治療、周術期の出血管理に用いる。同社のEloctate(Antihemophilic Factor (Recombinant), Fc Fusion Protein;efmoroctocog alfa)は3-5日毎と点滴静注頻度が少ないが、新薬は週一回で足りるので第VIII因子製剤の中では利便性が高い。価格はEloctate並みの予定。日本でも承認審査中。

10年前のバイオジェンIDECとAmunix社の共同研究の成果で、第VIII因子と免疫グロブリンG1の固定領域、フォン・ヴィルブランド因子の第VIII因子結合領域、そしてAminixの技術であるXTEN疎水性ポリペプチドを細胞融合して半減期を長期化したもの。サノフィはバイオジェンがスピンアウトした血友病事業を18年に買収し、Amunixの免疫学と腫瘍学資産を22年に買収した。欧州などではSOBIが開発販売を主導する。

リンク: 同社のプレスリリース





今週は以上です。

2023年2月18日

第1090回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ライム病ワクチンの第3相で多くの症例がGCP違反に 
  • Marburgウイルス疾患で初のアウトブレイク 
  • モデルナのインフルエンザ・ワクチンは改良版で再挑戦か 
  • キイトルーダも胃癌一次治療試験がついに成功 
  • 複数のPARP阻害剤がキモナイーブmCRPCに良績 
  • デルゴシチニブの海外手湿疹試験が二本目も成功 
  • CDK4/6阻害剤の第3相結腸直腸癌試験が早期打ち切りに 
  • プレバイミスの投与期間延長と適応拡大を申請 
  • 遅報:gepironeのNDAが受理 
  • 合成ヒペリシンのNDAは受理されず 
  • IgA腎症用薬が加速承認 
  • αマンノシドーシスの酵素補充療法が承認 
  • C3阻害剤が今度は地図状萎縮用薬として承認 


【今週の話題】


ライム病ワクチンの第3相で多くの症例がGCP違反に
(2023年2月17日発表)

ファイザーとフランスのValneva(Nasdaq:VALN)は、ライム病ワクチンVLA15の第3相試験で多数のGCP(医薬品の臨床試験が順守すべき基準)違反があったことを明らかにした。第三者の複数の米国施設で発覚した。安全性問題ではないとのこと。当該社の施設以外で組入れを続行するとともに、承認審査機関と対応を相談する予定。25年に欧米で承認申請する予定は撤回していないが、不透明だろう。

VLA15は2002年に販売中止となったスミクライン・ビーチャムのLYMErixと同様にライム病の原因となるボレリア属細菌の表層蛋白Aを抗原とするサブユニットワクチンで、代表的な6種類の菌をカバーしている。20年にファイザーが共同開発単独商業化権を取得し22年に第3相を開始した。欧米などで5歳以上の6000人を組入れて、初回免疫(第0、2、6月に筋注)と追加免疫1回の効果を偽薬と比較するもの。今回の件で数千例が解析対象から外れる可能性があり、組入れ期間を延長するか、目標症例数/検出力を減らすか、何らかの対応が必要だ。

尚、上記第三者はCROのCare Accessである模様で、ファイザーの決定や根拠には同意しないとの声明を同日に出した。こちらもFDAや独立Institutional Review Boardに報告する考え。

ライム病ワクチンは1998年に米国でLYMErixが承認されたが、人口が決して多くない地域で稀にしか発症せず、多くの場合それほど深刻ではないことや、コスト、そして多くのPL訴訟が提起されパーセプションが悪化したことなどから売上不振だった。FDAは副作用懸念を支持しなかったが、商業上の理由で販売中止となった。

リンク: ファイザーとValnevaのプレスリリース
リンク: Care Accessの声明


Marburgウイルス疾患で初のアウトブレイク
(2023年2月13日発表)

Marburgウイルス疾患で初めてのアウトブレイクが赤道ギニアで発生した。WHOによると、これまでに少なくとも9人が死亡、疑い例は16で症状は発熱、疲労感、吐血、下痢など。セネガルのパスツール研究所で検体を検査したところ、8本のうち1本が陽性だった。

MarburgはEbolaと同じファミリーに属するウイルスで、致死率は最大88%といわれる。Ebolaについては複数の治療薬やワクチンが実用化された。Marburgは流行していなかったこともあり開発が遅れているが、基礎研究は実施済みだろうから、流行が広がるようなら複数の候補品が臨床開発に進むのではないか。

リンク: WHOのプレスリリース

【新薬開発】


モデルナのインフルエンザ・ワクチンは改良版で再挑戦か
(2023年2月16日発表)

モデルナはヘマグルチニンのmRNAを用いた4価季節性インフルエンザ・ワクチン、mRNA-1010の第3相試験を北半球と南半球で実施しているが、後者の中間解析結果を公表した。承認されている抗原配合ワクチンと比べてA型には良さそうだがB型には見劣りするので、北半球試験の中間解析結果が3月頃に出たあとで、B型に対する力価を向上したフォロー・オンにシフトするのではないか。

南半球試験は18歳以上の6102人を組入れて安全性と抗原性を既承認ワクチンと比較した。A/H3N2とA/H1N1に対する抗体陽転率は上回ったが、B/ビクトリアやB/山形では非劣性解析がフェールした。GMR(幾何平均抗体変化率)はA/H3N2は優越、A/H1N1は非劣性達成、B型二種は非劣性フェールだった。有害事象発生率はかなり上回ったが軽度のものが多かったとのこと。

COVID-19ワクチンとインフルエンザ・ワクチンの最大の違いは価格だ。既承認のワクチンは犬細胞培養型や点鼻用も含めて米国では20ドル前後の単価で販売されている。COVID-19ワクチンも同程度だが、政府一括調達でなくなれば流通費用や情報伝達費用が増加しスケールメリットも低下することから100ドル以上に値上がりする見込みである。インフルエンザ用mRNAワクチンも100ドル程度で売ろうと思ったら、予防効果がよほど高くないといけない。生産のリードタイムは鶏卵ベースのワクチンより短いだろうから、流行株の見込み違いリスクの緩和が期待されるが、実証する必要がある。

リンク: 同社のプレスリリース


キイトルーダも胃癌一次治療試験がついに成功
(2023年2月16日発表)

MSDは昨年11月にKeytruda(pembrolizumab)の第3相KeyNote-859試験が中間解析で目的達成したことを明らかにしたが、具体的な内容をESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表した。メジアン生存期間が1ヶ月伸びた程度だがハザードレシオは0.8を下回ったのでまあまあな結果だろう。ブリストル マイヤーズ スクイブのOpdivo(nivolumab)に遅ればせながらではあるが、適応拡大が認められるのではないか。

この試験はher2陰性で局所進行切除不能または転移性の胃や胃食道接合部の腺腫でfluoropyrimidineと白金薬ベースの一次治療を受ける1579人を組み入れて、Keytrudaを追加する効果を偽薬追加と比較した。結果は、各群のメジアン生存期間が12.9ヶ月と11.5ヶ月、ハザードレシオは0.78で、統計的に有意だった。PD-L1陰性サブグループのハザードレシオも0.76で有意。1年生存率は各群52.7%と46.7%、2年生存率は28.2%と18.9%だった。G3以上の治療関連有害事象発生率は各群59%と51%と上回ったが、G5は8人対16人で数値上少なかった。

Keytrudaは類似した患者層を対象としたKeyNote-062試験が19年にフェールした。PD-L1陽性(CPS≧1)の患者だけを組入れた試験がフェールして、今回の試験では陰性サブグループも大差ないというのは変な感じだが、062試験は二兎も三兎も追ったのが敗因かもしれない。763人を標準療法群とKeytruda追加群、Keytrudaモノセラピー群に割付けたので、一群当たりの症例数が少なく、多重性の補正も必要になる。標準療法群とKeytruda追加群の全生存期間のハザードレシオは0.85なので、今回の0.78とそれほど大きく違うわけではない。

リンク: MSDのプレスリリース


複数のPARP阻害剤がキモナイーブmCRPCに良績
(2023年2月16日発表)

ASCO GU(米国臨床腫瘍学会尿生殖器癌シンポジウム)でPARP阻害剤4品のキモナイーブmCRPC(転移性去勢抵抗性前立腺癌)の第3相併用試験のデータが発表された。HRR(相同組換え修復)不全やBRCA変異のない患者における便益は明確ではないように感じられるが、特にBRCA変異型には良績を上げた。

ここでは、アストラゼネカがMSDと共同開発販売しているLynparza(olaparib)とファイザーのTalzenna(talazoparib)を取り上げる。アストラゼネカは21年9月に中間解析で成功認定されたPROpel試験の全生存期間最終解析結果。abirateroneとprednisoneの併用レジメンに追加したところ、PFS(無進行生存期間、放射線学的評価)がメジアン24.8ヶ月と偽薬追加群の16.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.66、統計的に高度有意だった。一方、副次的評価項目の全生存期間は42.1ヶ月対34.7ヶ月、ハザードレシオ0.81で有意差はなかった。BRCA変異のあるサブグループではハザードレシオ0.29となったが、無いサブグループでは0.91と大きな違いが出ている。ジョンソン・エンド・ジョンソンのniraparibの類似したデザインの第3相MAGNITUDE試験ではHRRありのサブグループでPFSが有意に伸びたが無いサブグループは無益認定と、似たような違いが浮き彫りになった。

アストラゼネカは欧米で適応拡大申請し、EUでは化学療法が不適な患者に限定で昨年12月に承認された。米国は優先審査指定されたが審査期間延長となり、今四半期中に結果が判明する見込み。

リンク: 両社のプレスリリース

Talzenna(talazoparib)はファイザーが16年に140億ドル(企業価値ベース)で買収したMedivationがその前年にバイオマリンファーマシューティカルから資産取得したPARP阻害剤で、18~19年に欧米でher2陰性のgBRCA1/2変異を持つ局所進行/転移乳癌用薬として承認された。PARP阻害剤としては後発だが、ファイザーは前立腺癌用薬Xtandi(enzalutamide)を持っているので、シナジーが見込めるかもしれない。今回の第3相TALAPRO-2試験はキモナイーブmCRPC1095人を組み入れてXtandiと併用する効果をXtandi・偽薬併用と比較した。主評価項目のPFS(同)はハザードレシオが0.63、HRR不全サブグループは0.46、それ以外は0.70だった。全生存期間は未成熟だがハザードレシオ0.89で数値上良好である由。HRRの有無によるデータは不明。PARP阻害剤はPFS向上が必ずしも延命に繋がるとは限らないように感じられることに留意したい。

既に適応拡大申請したとのことだが、結果が出るのは23年内と、大雑把にしか開示していない。優先審査指定されるかどうか分からない、という意味なのかもしれない。

リンク: ファイザーのプレスリリース


デルゴシチニブの海外手湿疹試験が二本目も成功
(2023年2月10日発表)

デンマークのLEO Pharmaは、delgocitinibの二本目の第3相中重度慢性手湿疹試験が成功したと発表した。延長試験が完了し1年忍容性データを取得後に承認申請するのではないか。

日本たばこ/鳥居薬品が日本で20年にアトピー性皮膚炎治療薬コレクチム軟膏として発売したJAK1阻害剤で、同社は14年に日本以外の開発商業化権を取得。昨年12月に一本目の成功を発表している。どちらも一日二回塗布して16週後の奏効率(IGA-CHEベース)を偽薬と比較したもの。データは未発表。JAK阻害剤は稀だが深刻な服用リスクを持つので、外用薬のほうがやや安心感がある(個人の感想です)。

リンク: LEOのプレスリリース


CDK4/6阻害剤の第3相結腸直腸癌試験が早期打ち切りに
(2023年2月13日発表)

G1 Therapeutics(Nasdaq:GTHX)はtrilaciclibの第3相転移性結腸直腸癌試験、PRESERVE 1を中止すると発表した。FOLFOXIRIとbevacizumabの併用レジメンに更に追加する便益を検討したところ、共同主評価項目の一つである重度好中球減少症リスクは偽薬追加比有意に抑制できたものの、薬効評価項目であるPFS(無進行生存期間)や全生存期間は達成の見込みが立たないと判定した。独立データ監視委員会も同様な見方であり、繰り上げ中止を決めた。

CDK4/6阻害剤は細胞周期進行を妨げる作用を持つためホルモン陽性乳癌の治療などに用いられているが、同社は、化学療法による骨髄毒性を緩和する作用に注目、21年に米国で、進展型小細胞性肺癌の化学療法に付随する骨髄抑制副作用を抑制する薬、Coselaとして承認取得した。今回の試験は癌種が異なるものの、インダクション・フェーズにおける発生率が1%と偽薬群の20%を大きく下回り、発生した症例での持続期間も0.1日対1.3日を下回った。重度下痢なども少なかった。

しかし、ORR(客観的反応率)は50%と偽薬群の60%を下回り、PFSや全生存期間の解析は、プレスリリースには明記されていないが、おそらく無益認定されたのだろう。ORRから推測すると、寿命が短くなる懸念が生じたのかもしれない。

FOLFOXFIRIの用量減少や投与遅延は偽薬群より少なかったとのことなので、副作用が原因とも考えにくい。詳細発表が望まれる。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


プレバイミスの投与期間延長と適応拡大を申請
(2023年2月17日発表)

MSDはPrevymis(letermovir)の承認内容の一部変更をFDAに申請した。17年に米国で、18年に欧日で、他家造血幹細胞移植を受けたCMV(サイトメガロウイルス)抗体陽性患者のCMV感染予防薬として承認されたが、今回は、高リスク患者の治療期間を100日ではなく200日に延長することと、CMV抗体陽性ドナーの腎細胞の移植を受けたCMV抗体陰性レシピエントに用いることを申請した。後者はvalganciclovir対照試験で予防効果が非劣性、副作用リスクは低かった。

リンク: 同社のプレスリリース


遅報:gepironeのNDAが受理
(2023年1月24日発表)

米国テキサス州のFabre-Kramer Pharmaceuticalsは、FDAがgepironeの再承認申請を受理したと発表した。審査期限は6月23日。3度目の正直は成らなかったが、4度目は如何?

5HT1A選択的なアゴニストで鬱病の治療に用いる。1993年にブリストル マイヤーズ スクイブからライセンスした。導出先のオルガノンが99年に米国で承認申請したが受理されず、01年に改めて申請したが、02年に承認不可能通知を受領した。03年に修正申請したが04年に再び承認不可能通知を受領し、翌年、権利をFabre-Kramerに返還した。

同社は二本の追加試験を実施、一勝一敗となったことを受けて07年に修正申請したが、またも承認不可能通知を受領した。紛争調停を経て15年に精神疾患用薬諮問委員会が招集されたが、9対4で薬効の挙証不十分と見なす委員が上回った。

非上場企業であるためか開示事項は限られており、今回、どのような資料を追加提出したのか明らかではない。

リンク: 同社のプレスリリース


合成ヒペリシンのNDAは受理されず
(2023年2月14日発表)

米国ニュージャージー州のSoligenix(Nasdaq:SNGX)はSGX301(hypericin)を早期皮膚T細胞リンパ腫の光力学療法として米国で承認申請していたが、Refusal-to-File通知を受領した。詳細は不明だが、薬効評価方法の妥当性がネックになったのかもしれない。

SGX301はセント・ジョーンズ・ワートの成分の一つである光増感性物質、hipericinを合成した軟膏。皮膚病変に塗布して悪性T細胞腫に集積させ、24時間後に蛍光灯を照射することによって細胞毒性を発揮させる。第3相試験はステージIとIIAの早期菌状息肉腫/皮膚T細胞リンパ腫169人を試験薬群(8週サイクルで週二回、6週連続で塗布)と偽薬群に無作為化割付けして病変反応率(3ヶ所の重症度が5割以上改善)を比較した。第1サイクル後は各群16%と4%、p=0.04とボーダーライン周辺だが統計的に有意な差があった。試験薬群は第2サイクルに進み、反応率が40%に上昇、第3サイクル後は49%に達した。偽薬群は第1サイクルで終了した。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Kimらの治験論文抄録(JAMA Dermatology、2022年)

【承認】


IgA腎症用薬が加速承認
(2023年2月17日発表)

Travere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)はFilspari(sparsentan)が成人の急速進行性原発性IgA腎症の治療薬としてFDAに加速承認されたと発表した。ブリストル マイヤーズ スクイブ由来のアンジオテンシンIIタイプ1受容体とエンドテリンA受容体のデュアル・アンタゴニストで、ACE阻害剤やARBを服用してもタンパク尿が続く患者404人を組入れた第三相で、36週後の尿蛋白クレアチニン比が49.8%低下し、irbesartan群の15.1%低下を有意に上回った。この試験は盲検が継続しており、2年後のeGFR低下が有意に小さいことを確認した上で本承認切替を申請する予定。

価格は年12万ドルの予定。欧州でも申請中で今年下期に結果が判明する見込みで、承認後はCSL Viforが販売する。

Travereは一社供給の希少疾患用薬の販売権を取得し思いっきり値上げするビジネスモデルで鳴らしたMartin Shkreliが設立したRetrophinが20年に社名変更した。程度の差はあれ日本のGE薬メーカーもやっていることだが、氏は15年に証券不正容疑で逮捕され禁固7年の刑を受けることになった。

リンク: 同社のプレスリリース


αマンノシドーシスの酵素補充療法が承認
(2023年2月17日発表)

FDAはChiesi FarmaceuticiのLamzede(velmanase alfa-tycv)をαマンノシドーシス用薬として承認した。成人小児患者の非中枢神経系症状の治療に用いる。1mg/kgを週一回、緩徐点滴静注した52週間の試験で血漿オリゴサッカライド濃度が偽薬比有意に低下し、6分歩行テストやFVC検査値も数値上良好だった。有害事象は過敏反応など。

デンマークのZymenexを13年に買収して入手した、希少疾患用バイオ薬事業のフラッグシップ。EUでは18年に承認された。αマンノシドーシスはMAN2B1遺伝子の機能不全によりマンノーズの代謝が進まずオリゴサッカライドが蓄積、知的障害や難聴、免疫低下、筋骨格以上などを発現する。50万に一人の超希少疾患。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Chiesiのプレスリリース(PR Newswire)


C3阻害剤が今度は地図状萎縮用薬として承認
(2023年2月17日発表)

Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)はSyfovre(pegcetacoplan)が加齢性黄斑変性による地図状萎縮の治療薬としてFDAに承認されたと発表した。21年に米国で承認された皮下注用夜間ヘモグロビン尿症治療薬Empaveliの活性成分を硝子体注射用に変えたもので、Soliris(eculizumab)が阻害するC5の上流で機能するC3とC3bに結合する合成環状ペプチドにPEGを結合したもの。15mgを25~60日に一回投与する。レーベルには審査期間延長の原因となった24ヶ月追跡データが収載された。網膜病変(眼底自発蛍光検査で評価、ベースライン値は約8mm2)の拡大がシャム比20%前後小さかった(群間差は1mm2程度と推測)。

150mg/1mLのシングル・ドース・バイアルの値引き前価格は2190ドルとする予定。

リンク: 同社のプレスリリース





今週は以上です。

2023年2月12日

第1089回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • アベクマのMM3~5次治療データ 
  • 中外発の抗C5抗体をPNHに承認申請へ 
  • キイトルーダは子宮内膜腫の一次治療にも有効 
  • クラゾセンタンの欧米第3相はフェール 
  • ガラパゴス、ジセレカのクローン病適応は断念 
  • リジェネロン、抗C5抗体をCHAPLE症候群に新薬承認申請 
  • ODAC:dostarlimabを単群試験でdMMR直腸癌に加速承認申請してもよい 
  • 米国版タケキャブ製品は承認されず 
  • アイリーアが米国でも未熟児網膜症に承認 
  • 抗TROP-2抗体薬物複合体がホルモン受容体陽性乳癌の転移後二次治療薬として承認 
  • PRAC、プソイドエフェドリンの安全性を検討開始 


【新薬開発】


アベクマのMM3~5次治療データ
(2023年月日発表)

2seventy bio(Nasdaq:TSVT)と開発販売パートナーのブリストル マイヤーズ スクイブは、BCMA標的CAR-T療法Abecma(idecabtagene vicleucel)の第3相KarMMa-3試験のデータをNew England Journal of Medicineと欧州の学会で発表した。再発難治多発骨髄腫の米国では5次治療以降、欧州では4次治療以降に承認されているが、3~5次治療にも承認される可能性が出てきた。尤も、どちらも代表的な三種類の薬を既に使った患者が対象なので、実質的な違いは明確ではない。

この試験は免疫調停剤、プロテアソーム阻害剤、及び抗CD38抗体による2~4次治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発難治多発骨髄腫386人をAbecma群と標準療法(5種類のレジメンから選択)に2:1割付けしてPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)を比較した。中間解析でハザードレシオ0.49、メジアン値は各群13.3ヶ月と4.4ヶ月となり、成功認定された。

米欧日における承認のエビデンスとなった第2相は、免疫調停剤、プロテアソーム阻害剤、及び抗CD38抗体による3次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発難治多発骨髄腫を組入れた。使用済みの薬はもう使えないと考えれば、どちらの試験も似たような患者を組み入れたことになり、違うことは違うがそれほどの違いではないと言えないこともない。

リンク: 両社のプレスリリース


中外発の抗C5抗体をPNHに承認申請へ
(2023年2月7日発表)

ロシュはRG6107/SKY59(crovalimab)の第3相発作性夜間ヘモグロビン血症(PNH)試験で主評価項目を達成したと発表した。中国で優先審査中だが、米国などでも承認申請する予定。中外製薬がリサイクリング抗体技術を用いて創製した補体C5に結合阻害する抗体医薬で、維持期の投与頻度が4週毎と、類薬であるアストラゼネカのSoliris(eculizumab)の2週毎より少なく、静注ではなく皮下注であることが特徴。但し、アストラゼネカのUltomiris(ravulizumab)の8週毎静注には及ばない。

第3相のCOMMODORE 2試験は補体阻害剤を未使用のPNH患者約200人をcrovalimab群とeculizumab群に無作為化割付けして25週間治療し、輸血回避と溶血管理(LDH値が異常上昇しない)を比較したところ、何れも奏効率が非劣性だった。サポーティブ・エビデンスとなるのは第3相COMMODORE 1試験で、C5阻害剤で治療を受けているがLDH値が異常上昇している患者約190人を組入れて、スイッチする群とeculizumabを続ける群の安全性やPK、PDを比較したもの。スイッチした患者のDTDC(薬物の標的と薬物の複合体)関連臨床症状が主評価項目の一つに上がっている点が目を惹く。

治験登録によると、投与スケジュールは、第1日に1000mg(体重100kg以上の患者は1500mg)を静注、第2日からは340mgを週一回、合計5回皮下注し、その後は680mg(100kg以上は1020mg)を4週毎皮下注する。

リンク: 同社のプレスリリース


キイトルーダは子宮内膜腫の一次治療にも有効
(2023年2月3日発表)

MSDのKeytruda(pembrolizumab)が第3相NRG-GY018試験の中間解析で独立データ監視委員会により目的達成認定された。ステージIII/IVあるいは再発性の子宮内膜腫の一次治療を受ける819人を組入れて、carboplatin及びpaclitaxelの標準療法にKeytruda(最大20サイクル)を追加する便益を検討したもので、主評価項目はPFS(無進行生存期間)。被験者の3割を占めたdMMR(DNAミスマッチ修復不全)型にも、残りのpMMR(DNAミスマッチ修復可能)型にも効果が見られた。

この試験はNCI(米国立癌研究所)がスポンサーとなって、研究者共同治験グループがMSDの資金援助を受けて実施しているもの。データは未発表。適応拡大申請されるのではないか。

Keytrudaは米国で全身性治療後に進行した切除/放射線療法不適進行内膜腫に単剤(dMMRまたはマイクロサテライト不安定が高い患者に限定)またはエーザイのLenvima(lenvatinib)併用が承認されている。

リンク: MSDのプレスリリース


クラゾセンタンの欧米第3相はフェール
(2023年2月6日発表)

スイスのイドルシアは、clazosentanの第3相REACT試験がフェールしたと発表した。日本では二本の第3相がが成功し、昨年1月にaSAH(脳動脈瘤によるくも膜下出血)処置後の脳梗塞・脳虚血の発症を抑制する薬、ピヴラッツとして承認されたところなので、意外な結果だ。データは未発表。副次的評価項目の一つであるGOSE転帰はどうだったのだろうか?

速効性エンドセリンA受容体拮抗剤で、動脈瘤のクリッピング術やコイル塞栓術後に起こりがちな血管攣縮を抑制し転帰を向上することが期待されている。日本の第3相はクリッピング術を受けた患者とコイル塞栓術後の患者に分けて221人ずつ組み入れて、10mg/hrを最大15日間連続点滴静注し、6週間の新規脳梗塞、DIND(遅発性虚血性神経脱落症状)、または全死亡の複合評価項目を偽薬群と比較したところ、どちらも発生率が半分だった。Glasgow Outcome Scale-Extendedに基づく評価でpoor outcomeと判定された患者の比率も2~3割少なく、死亡率もやや少なかったが、検出力不足なのか統計的に有意ではなかった。

clazosentanは10年前に欧米などで似たような内容の第3相が二本、実施されたが、クリッピング術を受けた患者1147人に5mg/hrを連続点滴静注した試験がフェールし、Glasgow Outcome Scaleに基づく評価は数値上悪かった。コイル塞栓術を受けた患者を組み入れた試験は煽りを受け組入れ中止となってしまったが、5mg/hr群は効果が見られなかったものの、15mg/hr群は良い数値が出た。但し、Glasgow Outcome Scaleに基づく評価は偽薬群と大差なかった。

今回のREACT試験はクリッピング術または血管内コイル塞栓術を受けたaSAH患者409人を組入れて15mg/hrを最大14日連続点滴静注し14日間の遅発性脳虚血を偽薬群と比較した。新規脳梗塞も評価に含まれるかどうかは不明。

リンク: 同社のプレスリリース


ガラパゴス、ジセレカのクローン病適応は断念
(2023年2月8日発表)

ベルギーのGalapagos(Euronext/Nasdaq:GLPG)はJAK阻害剤Jyseleca(filgotinib)の第3相中重度活性期クローン病試験が部分的にしか成功しなかったことを明らかにした。適応拡大は断念した。

経口JAK1阻害剤で、日欧でリウマチ性関節炎や潰瘍性大腸炎の治療薬として承認されているが、精巣毒性が見られることなどから、先行類薬が複数存在することも踏まえて、米国では承認されなかった。

今回の第3相はバイオ薬の未経験者と経験者を組入れて、100mgまたは200mgを一日一回投与する効果を偽薬と比較した。第10週の臨床的寛解率(患者自身が評価)と内視鏡的奏効率はフェール、第58週は200mgだけ偽薬比有意だった。

共同開発販売権を持つギリアド・サイエンシズは米国で審査完了通知を受領後に提携範囲をクローン病だけに縮小したが、解消になりそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


リジェネロン、抗C5抗体をCHAPLE症候群に新薬承認申請
(2023年2月3日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は2022年決算を発表するとともに開発プロジェクトの進捗をアップデートした。

新薬ではREGN-3918(pozelimab)を米国で承認申請したことが公表された。抗C5抗体で、ファースト・イン・クラスであるアレクシオン(アストラゼネカ)のSoliris(eculizumab)の適応であるPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)などにも開発されているが、初申請の適応症はCHAPLE(CD55/DAF deficiency with hyperactivation of complement, angiopathic thrombosis, and protein-losing enteropathy)症候群という、病気も臨床開発されていたことも初耳の超希少疾患だ。PNHは後天的遺伝子変異の影響で補体制御因子であるCD55やCD59が細胞の表面から遊離し溶血症状を齎すが、CHAPLE症候群はCD55自体の機能喪失変異による劣性遺伝性疾患で、低たんぱく血症や浮腫をもたらすタンパク漏出性腸症や血栓症を合併する。REGN-3918はCD55が制御できないでいるC5をブロックすることで補体系の異常亢進を抑制する。

IL-6受容体アルファ・ユニットを標的とするKevzara(sarilumab)は類薬である中外製薬/ロシュのActemra(tocilizumab)と同様にリウマチ性関節炎に承認されているが、新たに、米国でグルココルチコイド抵抗性リウマチ性多発筋痛症に適応拡大申請された。第3相SAPHYR試験で持続的寛解率が28.3%と偽薬群の10.3%を上回った。p値は0.0193で、それほど低くない。COVID-19の影響で組入れが117人と目標の280人を大きく下回ったことや、52週間の治療完了率が6~7割とあまり高くないことが影響したのかもしれない。尚、持続的寛解率の水準もそれほど高くないのは、ステロイドを14週急速減量しながら12週時点で寛解し52週時点でも持続と、ハードルが高いことも斟酌すべきだろう。

加齢性黄斑変性や糖尿病性網膜浮腫の治療薬である硝子体注射用VEGFR融合蛋白、Eylea(aflibercept)は、8mg製剤が12月に米国で承認申請された。最初の3回は月一回だが、その後は3ヶ月毎や4ヶ月毎と既存の2mg製剤より低頻度で済むことが特徴。優先審査バウチャを用いて迅速承認を狙う。

IL-4受容体アルファ・サブユニットを標的とする同社の大ヒット抗体医薬、Dupixent(dupilumab)は、米国で成人と青少年の慢性特発性蕁麻疹に適応拡大申請された。第3相では6歳以上で抗ヒスタミンに十分応答しない、バイオ薬未経験の患者131人に追加投与したところ、FDA向けの主評価項目であるISS7(痒みの評価スケール)が24週間で10.24ポイント(63%)低下と、偽薬群の6.01%(35%)を有意に上回った。EMEA向けのUAS7(蕁麻疹活動性スケール)の低下も20.53ポイント(65%)対12.0ポイント(37%)で有意な差があった。一方で、ノバルティスのXolair(omalizumab)に応答不十分/不耐の患者を組入れた標準療法対照試験は無益認定された。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


ODAC:dostarlimabを単群試験でdMMR直腸癌に加速承認申請してもよい
(2023年2月9日発表)

FDAはODAC(腫瘍学薬諮問委員会)を招集しdMMR(ミスマッチ修復不全)の直腸癌におけるサロゲート・マーカーについて意見を聞いた。GSKの抗PD-1抗体Jemperli(dostarlimab-gxly)に関するもので、単群試験二本の臨床的反応率データに基づいて加速承認の是非を検討することに13人の委員のうち8人が賛成、5人が反対した。反応判定時期は1年では足りず3年とすべきという意見が見られたので、エビデンスを少しでも頑強化すべく評価方法や副次的評価項目を厳格化した上で、加速承認申請を認めるのではないか。

JemperliはdMMR難治/進行内膜腫や適切な治療方法がないdMMR再発/進行固形癌で白金薬による治療歴を持つ患者に用いることが米国で承認されている(後者は加速承認、前者は本承認に切り替わったところ)。dMMRは腫瘍のDNAに様々な変異があり抗PD-1/PD-L1抗体のような免疫療法が標的にしやすいところがある。JemperliのdMMR型直腸癌用途はメモリアル・スローン・ケッタリングがんセンター(MSKCC)が切除術前のネオアジュバント療法として単剤投与し、反応が不十分だったら化学放射線療法(CRT)にシフト、臨床的完全反応を達成したら手術はしないというプロトコルの30人規模の研究者主導単施設単群試験を実施中。昨年のASCO(米国臨床手票学会)で18人すべてが臨床的完全反応という中間解析結果が発表され、大きな注目を集めた。手術すれば完治が可能だが、再発の可能性や、人工肛門や排尿生殖機能障害などのリスクがあるため、結果が同じなら避けたいからだ。

FDAは、臨床的反応率が延命という最も重要な転帰を予測するかどうか確立していないため、CRTと切除術による標準療法と延命またはそれに準じる効果を比較する臨床試験を求めるべきか尋ねた。諮問委員は、直腸癌は米国で年46000人程度、うちdMMRは3~20%とあまり多くないことや、MSKCCデータが広く報じられ期待が高まっていることなどから、対照試験の実施は困難と指摘。GSKが実施する100人規模の単群反応率試験と合わせて、加速承認のエビデンスとすることを過半が首肯した。

リンク: GSKのプレスリリース
リンク: 内膜腫本承認に関するFDAのリリース


米国版タケキャブ製品は承認されず
(2023年2月9日発表)

Phathom Pharmaceuticals(Nasdaq:PHAT)は米国でvonoprazanをびらん性食道炎の治療と寛解維持に承認申請していたが、審査可能通知を受領した。日本で武田薬品がタケキャブとして販売しているカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(PCAB)をライセンスしたもので、昨年5月にはピロリ菌除菌療法に必要な抗生剤を同梱したVOQUEZNATRIPLE PAKとDual Pakが承認されたが、こちらも、品質に関する追加的申請が審査完了となり、発売が遅れている。

原因は、米国で生産されている製品からNVP(N-nitroso-vonoprazan)が微量検出されたこと。NDMA(N-nitrosodimethylamine)と同様に過量摂取時の癌原性が懸念されており、薬剤保管中に増加する可能性もあるため、有効期間(日本では3年)中に一日当り96ナノグラムの許容量を超えないことを確認する予定。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


アイリーアが米国でも未熟児網膜症に承認
(2023年2月8日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はFDAがEylea(aflibercept)をROP(未熟児網膜症)の治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。日欧では既に同剤とノバルティスのLucentis(ranibizumab)が承認されているが、米国でROP治療薬が承認されたのは初めて。第3相が二本ともフェールしたので危ぶんだが、対照群であるレーザー治療と非劣性でなくとも、なにもしないより良いだろうし、副作用の出方が違うので選択肢となりうるという判断なのだろう。

ROPは極低出生体重児でしばしば見られる網膜血管の異常増殖。自然治癒することもあるが失明に至ることもある。米国では年1100~1500人が治療すべきROPと診断されるとのこと。標準療法は網膜光凝固術。重度ROP患者を組入れた二本の試験で、第52週奏効率(ROPが治癒し構造的異常もない)が一本は78.7%、もう一本は79.6%だった。レーザ-治療群は各81.6%と77.8%で、どちらも非劣性解析がフェールした。

リンク: 同社のプレスリリース


抗TROP-2抗体薬物複合体がホルモン受容体陽性乳癌の転移後二次治療薬として承認
(2023年2月3日発表)

ギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)の適応拡大がFDAに承認された。22年に210億ドルで買収したImmunomedicsのTROP-2標的抗体薬物複合体で、トリプル・ネガティブ乳癌の転移後2次治療薬として承認されているが、今回、成人の切除不能局所進行性または転移性のホルモン受容体陽性her2陰性乳癌で内分泌療法薬に加えて転移後に二次以上の全身性治療歴を持つ患者に用いることが認められた。TROPiCS-02試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.66となり、メジアン値は5.5ヶ月と医師が選んだ薬を投与した対照群の4.0ヶ月を上回った。全生存期間は390人死亡後に実施された中間解析でハザードレシオ0.79となり有意な差があった。メジアン生存期間は各14.4ヶ月と11.2ヶ月。喜ぶほどではないが一歩前進した。

リンク: ギリアドのプレスリリース

【医薬品の安全性】


PRAC、プソイドエフェドリンの安全性を検討開始
(2023年2月10日発表)

EMAのファーマコビジランス・リスク・アセスメント委員会(PRAC)は、風邪などによる鼻詰まりの治療に用いられているプソイドエフェドリンを含有する薬について安全性の検討を開始した。心血管疾患や脳血管疾患のリスクを持つことが知られているが、有害事象報告や医学誌にRCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)やPRES(可逆性後頭葉白質脳症)症例が報告されたため。少数だが深刻な疾患なので、販売承認を継続すべきか、あるいは内容修正、停止、撤回すべきか、検討する。

フランスの承認審査機関であるANSMがEMAに検討を要請したもの。

リンク: EMAのプレスリリース




今週は以上です。

2023年2月3日

第1088回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 米国版テムセルを再承認申請 
  • 米国でも経口貧血治療薬が承認 
  • インド企業の人工涙液で多剤耐性菌感染が発生 


【承認審査・委員会】


米国版テムセルを再承認申請
(2023年1月31日発表)

Mesoblast(ASX:MSB)はremestemcel-Lを小児の他家造血幹細胞移植後のステロイド抵抗性急性移植片宿主病の治療薬としてFDAに再承認申請した。日本でJCRファーマがテムセル名で承認取得しているヒト間葉系幹細胞医薬品で、米国ではMesoblastが20年に承認申請したが、対照試験が実施されていないことやロット毎の力価の同等性が十分に検証されていないことから、同年9月に審査完了通知を受領していた。FDAが推奨した小児または成人の無作為化割付対照試験は未実施なので承認されるかどうか不透明だ。

同社が再申請で提出したのは、力価と延命効果の関連性を示す力価アッセイのバリデーション資料と、第3相試験の4年追跡データ、文献データとの外部対照群比較など。同社がもたもたしているうちに他剤が承認されたこともあり、不確かなエビデンスに基づいて急いで承認する必要性は低下している。

尚、日本の承認は臓器障害解消作用に基づくもの、Mesoblastが提出したのは専ら延命効果に基づく便益なので、評価尺度が異なっている。

リンク: 同社のプレスリリース(GLOBE NEWSWIRE)

【承認】


米国でも経口貧血治療薬が承認
(2023年2月1日発表)

FDAはGSKのJesduvroq(daprodustat)を承認した。慢性腎疾患の透析治療を4ヶ月以上受けている成人の貧血症を治療する。低酸素環境下におけるエリスロポイエチンの発現を妨げるHIF-PHI(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)の阻害薬で、日本では類薬と前後して20年にダーブロック名で承認されたが、米国ではファースト・イン・クラスとなった。経口剤なので簡便だが、透析を受ける患者はついでに赤血球生成刺激因子の投与も可能なので、選択肢が増えた程度の位置づけになりそうだ。

Aranesp(darbepoetin alfa)などと同様に、命に係わることもあるMACE(主要有害心臓事象)のリスクがあること、アグレッシブなヘモグロビン値矯正を行うとそのリスクを高めること、用量は赤血球輸血を抑制するために必要最小限に留めるべきであることが枠付き警告されている。

日本と異なり慢性腎疾患保存期の貧血治療が承認されなかった理由は明確ではないが、類薬の臨床成績があまり良くなかったことや、Jesduvroqも、非透析患者を組み入れた試験のMACEは100人年当り10.9とdarbepoetin alfa群の10.6と大差なく、ハザードレシオは1.03(95%上限1.19)で非劣性マージョンの1.25をクリアしたが、米国患者だけの解析は各13.8、11.9、1.19とやや心許なかったことだろう。10月の諮問委員会でも透析患者向けは賛成13人、反対3人だったが、非透析患者向けは5人対11人で反対が上回った。

4ヶ月以上透析を受けている患者、という限定の根拠は不明。第3相試験は90日以上透析を受けていていて赤血球生成因子治療歴が6週間以上の患者を組み入れた。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


インド企業の人工涙液で多剤耐性菌感染が発生
(2023年2月1日発表)

CDC(米国疾病予防管理センター)は多剤抵抗性が極めて高い細菌感染症が55例、発生したと発表した。多くがEzriCare Artificial TearsというOTC人工涙液を用いており、開封済み製品を検査したところ、米国で初めてのVIM-GES-CRPAが検出されたため、CDCは使用中止を勧告した。感染者は隔離する。製造企業であるインドのGlobal Pharma Healthcareは2月1日付で同製品とDelsam Pharmaが販売する別ブランド製品の自主的リコールを発表した。

VIM-GES-CRPAは殆どの抗生物質に感受しない緑膿菌。例外の可能性があるのが塩野義製薬の注射用シデロフォアセファロスポリン、Fetroja(cefiderocol)で、感受性テストが行われた標本は感受した。

入院や角膜感染症による永続的視力喪失に至った症例もあり、全身性感染症による死亡も1例発生した。

リンク: CDCのヘルス・アラート





今週は以上です。