2021年3月27日

第992回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19:リジェネロンの抗体カクテルは入院死亡を7割削減 
  • COVID-19:VIR/GSKも抗体医薬をEUA申請 
  • COVID-19:アストラゼネカのワクチンの米州試験が成功 
  • COVID-19:EMAもイベルメクチンの使用を推奨せず 
  • BMS、オプジーボと抗LAG-3抗体を併用した第3相黒色腫試験が成功 
  • ノバルティス、放射性医薬品新薬の第3相が成功 
  • ロシュ、テセントリクの肺癌術後地固め試験が成功 
  • tesetaxelが一転して開発中止に 
  • ロシュ、ハンチントン病の第3相を打ち切りへ 
  • 武田薬品、デング熱ワクチンをEUに承認申請 
  • BMS、閉塞性肥大性心筋症治療薬を承認申請 
  • ノボ、オゼンピックの用量追加申請がFDAに受理されず 
  • FDA諮問委員会、抗NGF抗体の安全性を懸念 
  • CHMP、PI3K阻害剤などの承認を支持 
  • ベタニス、神経因性排尿筋過活動に適応拡大 
  • グルカゴン新製剤がまた承認 
  • JNJのS1P1調節剤も承認 
  • キイトルーダが食道癌に適応拡大 
  • FDA、シングリックスのレーベルにギラン・バレー症候群の警告を追加 



【今週の話題】


COVID-19:リジェネロンの抗体カクテルは入院死亡を7割削減
(2021年3月23日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)は、REGEN-COV(casirivimabとimdevimabの同梱製品)の第3相試験が成功したと発表した。軽中等症で入院はしていないが重症化リスク因子を持つ患者4567人を偽薬、各剤1200mgずつ、または2400mgずつを一回点滴静注する各群に無作為化割付して、29日COVID-19関連入院・死亡リスクを比較したところ、両用量とも偽薬比有意に優れていた。米国では既にEUA(非常時使用認可)を得ているが、ウイルス抑制効果だけでなく臨床的転帰改善効果も確認されたことから、本承認切替を狙う。欧米以外の地域での承認申請の道も開けた。

1355人を組入れた2400mgずつの群は29日COVID-19関連入院・死亡率が1.3%と偽薬群の4.6%より71%小さかった。736人を組入れた1200mgずつの群は1.0%と、この用量の対照偽薬群の3.2%より70%小さかった。副次的評価項目のメジアン罹病期間は両用量とも10日間で、偽薬群の14日間と有意な差があった。

EUAの用量は各剤1200mgずつだが、今回の第3相のコンパニオン試験とされる第2相ウイルス抑制試験では、最低用量(点滴では300mgずつ、皮注では600mgずつ)でも1200mgずつあるいは2400mgずつと同程度の効果があった。抗SARS-CoV-2抗体のウイルス抑制作用が臨床的転帰改善作用とリンクしていることはこれまでの各社の試験でかなり明確になったので、これらの低用量がEUAではなく正式承認される可能性もあるのではないか。一人当たり点滴量が4分の1に減れば4倍の数の患者に用いることができるので意義が大きい。また、外来治療には皮注のほうが便利だろうから、抗体医薬が中々普及しない現状を打破するのに有効だろう。

リンク: 同社のプレスリリース



COVID-19:VIR/GSKも抗体医薬をEUA申請
(2021年3月26日発表)

サンフランシスコのVir Biotechnology(Nasdaq:VIR)と共同開発販売パートナーのグラクソ・スミスクラインは、VIR-7831/GSK4182136のEUAをFDAに申請した。SARS-CoV-2のスパイク蛋白に結合するモノクローナル抗体で、12歳以上かつ体重40kg以上の軽中等症COVID-19感染症で入院リスクが高い患者に500mgを一回、点滴静注する。第3相試験では入院・死亡リスクが偽薬比85%小さく(p=0.002)、中間解析で成功認定された。

世界各地で脅威となっている英国型、南ア型、ブラジル型、カリフォルニア型、ニューヨーク型の変異株にシュードウイルスを用いたin vitro試験で活性を示した。モノセラピーは抵抗性ウイルスの選択が懸念材料になり得るので、臨床試験のデータを見てみたいものだ。

他社の抗SARS-CoV-2抗体と同様に中等症入院患者の臨床試験はフェールした。合併症が顕著になった段階で抗ウイルス治療を行っても手遅れなのか、それとも、抗体誘導性疾病増強と呼ばれる現象が起きてしまうのか、良く分からない。

リンク: 両社のプレスリリース



COVID-19:アストラゼネカのワクチンの米州試験が成功
(2021年3月25日発表)

アストラゼネカはAZD1222/ChAdOx1-S (遺伝子組換え)の米州COVID-19予防試験が成功したと発表した。米国でEUA(非常時使用認可)取得に一歩前進しただけでなく、高齢者における良好なエビデンスも確立した。

残念なことに、またゴタゴタが発生した。同社が22日に中間解析結果を発表したところ、独立データ安全性監視委員会(IDSMB)が同社や治験を主導したNIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)に書簡を送付、都合の良いデータを選んで発表したと批判した。同社は主解析結果をIDSMBに提示した上で25日に発表したが、このデータも全発症例の査読が完了していない段階のデータであり今後、変更される可能性が残っているようだ。

アストラゼネカのワクチンは元々、ワクチン効率に関する様々なデータがあり、何を採用したらよいのか全然分からない。決定版は米州試験と考えていたが、結局、ノイズが増えただけだった。ここでは、3月25日発表に即して説明する。

米州試験は米国、ペルー、チリで18歳以上の32449人をAZD1222と偽薬に2対1無作為化割付して、症候性COVID-19感染リスクを比較した二重盲検試験。英国試験では二回接種の間隔が3ヶ月以上空いた症例もあったが、今回は4週。結果は、両群合わせて190人が感染し、ワクチン効率は76%、重症・入院に関しては100%だった。英国やEUで承認された時点では65歳以上の接種実績がごく少なかったが、今回は被験者の2割を占め、ワクチン効率は85%と良好だった。

アストラゼネカは4月にもEUAを申請する考え。尚、米国での承認申請が遅れたのは、英国試験で横断性脊髄炎など神経学的有害事象が発生し中断した時、英国と違ってFDAは1ヶ月以上、再開を許可しなかったために、米州試験の進捗が遅れたことや、英国やブラジルの試験ではアフリカ系の組入れが十分ではなかったためと推測される(南アフリカ試験では多かったかもしれないが、おそらく変異ウイルスの影響で、ワクチン効率がひどく低かった)。

欧州でCVST(脳静脈洞血栓症)やDIC(播種性血管内凝固症候群)の懸念が浮上しているが、今回の試験では発生しなかった。欧州での市販後報告頻度は100万人に一人程度なので、3万人の試験で検出できなくても不思議はない。

このワクチンはオックスフォード大学が創製、開発販売企業を募集しアストラゼネカが応じた。オックスフォード大学が英国第2/3相試験を開始した後に、用量選択に過ちがあったことをアストラゼネカが発見、途中で変更した関係で、初回半量レジメンと全量レジメン、両レジメン合計の三つのデータが英国試験には存在する。ブラジル第3相試験は対照群など様々な点で英国試験と異なっているため、ブラジル試験だけのデータや英伯合計のデータもある。投与間隔を広げたほうがよいとの都市伝説まがいの論説もあり、どのデータを信じたらよいのか、そして、どう使ったらよいのかも、分からない。

EMAの評価ではワクチン効率は59.5%となり、リピッド・ナノパーティクルmRNAワクチンの90%超と比べてだいぶ見劣りしていた。米州試験では上向いたので、ワクチンを選り好みできない人たちの不満をある程度和らげる効果があるだろう。但し、ワクチン抵抗性が推測されている南ア型変異やブラジル型変異が欧米で流行した場合、製品毎の明暗がどの程度広がるのかは、分からない。選べるならmRNAワクチンがいいな、と思っている人は多いだろう。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース(中間解析結果を発表、3/22付)
リンク: NIAIDのプレスリリース(上記プレスリリースを批判、3/23付)
リンク: アストラゼネカのプレスリリース(補足説明、3/23付)
リンク: アストラゼネカのプレスリリース(主解析結果を発表、3/25付)



COVID-19:EMAもイベルメクチンの使用を推奨せず
(2021年3月22日発表)

放線菌の産物を元に開発された寄生虫駆除用薬、ivermectinは、後ろ向き疫学試験や一部の研究者の熱烈な支持を背景に、COVID-19治療薬として期待され、スロバキアやチェコでは承認された。しかし、トップクラスのエビデンスである、よくデザインされた対照試験は行われておらず、それ以外の臨床試験の結果は芳しくない。このため、今年1月にはNIH(米国立衛生研究所)が推奨を中止した。今回、EMAも不支持を表明した。

治療・予防効果を支持する十分なデータはなく、in vitro試験ではSARS-CoV-2の複製を抑制したが、用量を換算すると承認用量よりかなり多く、副作用の増加が懸念されるとのことだ。

リンク: EMAのプレスリリース


【新薬開発】


BMS、オプジーボと抗LAG-3抗体を併用した第3相黒色腫試験が成功
(2021年3月25日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、切除不能/転移悪性黒色腫の一次治療における抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)と、抗LAG-3抗体BMS-986016(relatlimab)の併用効果を検討した第3相RELATIVITY-047試験が成功したと発表した。PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)をOpdivoだけの群と比較した無作為化割付二重盲検試験で、併用群は固定用量合剤を使ったため偽薬の設定はない。

データは学会などで発表する考え。承認審査機関と相談すると記しているので、全生存期間の解析を待たずに承認申請する可能性もありそうだ。

LAG-3(lymphocyte activation gene-3)はイフェクターT細胞や制御的T細胞が発現する免疫チェックポイント受容体で、主要組織適合性複合体(MHC)などと結合し、T細胞の反応や活性、増殖を抑制する。

17年のASCOでの発表によれば、抗PD-1/PD-L1抗体歴を持つ再発悪性黒色腫に両剤を併用したところ、ORR(客観的反応率)がLAG-3陽性癌では20%、陰性では7%だった。

悪性黒色腫一次治療ではチェックポイント阻害剤の先輩であるYervoy(ipilimumab)とOpdivoの併用が承認されているが、どちらの併用レジメンのほうが優れているのだろうか?

リンク: BMSのプレスリリース



ノバルティス、放射性医薬品新薬の第3相が成功
(2021年3月22日発表)

ノバルティスは企業買収を通じて放射性医薬品領域に進出・強化している。欧米で17~18年に承認され日本でも承認申請されたGEP-NETs(胃腸膵神経内分泌腫瘍)用薬Lutathera(lutetium Lu 177 dotatate)に続いて、177Lu-PSMA-617も第3相試験の成功が発表された。

18年にEndocyte社を買収して入手したパイプラインで、転移前立腺癌の8割超で発現し正常細胞には少ないPSMA(Prostate-Specific Membrane Antigen)に結合する小分子薬とベータ線放出核種を結合したもの。今回の試験は、taxane系抗癌剤とアンドロゲン受容体標的薬による治療歴を持つ転移去勢抵抗性前立腺癌でPETスキャンでPSMA陽性の患者を組入れて、医師が選んだ最良標準療法(支持療法を含む)だけの群と、177Lu-PSMA-617を併用する群のPFS(無進行生存期間、放射線学的評価)と全生存期間を比較した。

データは学会などで発表する予定。承認申請に向かうだろう。

リンク: ノバルティスのプレスリリース



ロシュ、テセントリクの肺癌術後地固め試験が成功
(2021年3月22日発表)

ロシュはTecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)のIMpower010試験が成功したと発表した。当局との相談が上手く行けば承認申請に向かうのではないか。

この試験は、ステージIB-IIIA(早期)非小細胞性肺癌を切除しcisplatinレジメンによる術後アジュバント療法を受けた患者を、1200mgを3週毎に最大16回投与する群と観察群に無作為化割付し、DFS(無病生存期間、担当医評価)を比較したもの。主評価項目のうち、PD-L1陽性でステージII-IIIAのサブグループの解析と、全ステージII-IIIAの解析が成功、IBを含むintent-to-treatの解析は未だ有意差が出ていない模様だ。副次的評価項目の全生存期間もまだ成熟していないため治験は続行する。

プレスリリースにはPD-L1陽性サブグループのデータが特に良かったと記されているが、陰性/不明サブグループにも効果があったのかどうかは記されていない。

非小細胞性肺癌は乳がんと異なり早期段階で発見できることは少なく、そのせいか、術後アジュバント試験もあまり行われていない印象だ。直近ではEGFR陽性の早期癌を組入れたTagrisso(osimertinib、和名タグリッソ)のADAURA試験が成功、昨年12月に米国で適応拡大が承認された。ステージI~IIIAにおけるDFS(担当医評価)ハザードレシオが0.27、2年無病生存率が89%(偽薬群は53%)とい良好な結果だった。

リンク: ロシュのプレスリリース



tesetaxelが一転して開発中止に
(2021年3月22日発表)

米国のOdonate Therapeutics(Nasdaq:ODT)は、tesetaxelの開発を中止し、事業も終息(wind down)することを明らかにした。誰かが買収オファーを持ってくるのを息を潜めて待つ考えなのだろう。

第3相が成功し承認申請に向かうはずだったが、FDAが申請前ミーティングで承認に否定的な見解を示した。買い推奨していたアナリストが売りに転じたことなどから株価が暴落した。

tesetaxelは第一三共からライセンスしたタキサン誘導体(DJ-927)で、経口投与でき、半減期が長いことが特徴。第3相試験ではher2陰性、ホルモン受容体陽性の転移性乳癌でpaclitaxelなどタキサン系薬による治療歴を持つ患者685人をtesetaxel群(27mg/m2、3週毎、低量capecitabine併用)と標準量capecitabine群に無作為化割付してPFS(無進行生存期間、独立放射線学的評価委員会方式)を比較したところ、メジアン値は各群9.8ヶ月対6.9ヶ月、ハザードレシオは0.716、p=0.003だった。有害事象は、タキサンには付き物とは言え、熱性好中球減少症などの発現率が高かった。

PFSという薬効評価手法はX線/CT検査のタイミングに影響されるところがあり、症状が悪化しなくても6週毎とか8週毎に定期検査することになっているが、二重盲検でも偽薬だけを投与する群の患者はなぜか初回定期検査より早い時期に続々と進行認定され治験離脱する現象が頻発する。担当医の評価を第三者委員会が査読することである程度、解消できるはずだが、担当医が進行と認めなかった患者は査読に回らないだろうし、そもそも、定期検査以外のタイミングで検査するか否かを決めるのは放射線学的評価委員会ではない。また、委員会が進行認定を否定する症例が増えて治験の検出力が低下してしまうようなこともある。だから、末期癌の試験にPFSを採用するのは私は嫌いだ。今回の試験は偽薬対照ではないが、オープンレーベルなので主観バイアスが影響しなかったかどうか、検証する必要がある。

DJ-927を最初にライセンスしたジェンタ社は、bcl-2アンチセンス薬の承認申請用試験の目標症例数を増やしたため結果判明時期が遅れることを1年ぶりに開催した決算説明電話会議で初めて開示し、アナリストの顰蹙を買ったことがあった。Odonateも、上場企業としてタイムリーにリスク情報を開示したと言えるのかどうか、検証が必要だ。

リンク: Odonate社のプレスリリース



ロシュ、ハンチントン病の第3相を打ち切りへ
(2021年3月22日発表)

ロシュは、RG6042(tominersen)の第3相ハンチントン病試験を打ち切ると発表した。独立データ監視委員会が中間解析に基づき勧告した。安全性に関する新しい兆候は浮上していないようなので、効果が偽薬と大差なかったのだろう。

ハンチントン病は常染色体優性遺伝病。大脳の基底核や皮質が萎縮、不随意運動や精神・行動症状が進行する。tominersenはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)との共同研究の成果で、17年にライセンスした。病気の原因となるハンチントン蛋白(HTT)の生産を、変異種も含めてすべて、抑制する。第3相試験は18ヶ国で791人を組入れて、120mgを2ヶ月毎または4ヶ月毎に髄腔内投与し、cUHDRSの変化を25ヶ月間に亘り、偽薬と比較するもの。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認申請】


武田薬品、デング熱ワクチンをEUに承認申請
(2021年3月26日発表)

武田薬品は、TAK-003をEUで承認申請した。中南米や東南アジアでエンデミックとなっているデング熱のワクチンで、対象年齢は思ったより広く、4-60歳を想定している。EUは医薬品の承認審査体制が整っていない国に代わって評価する制度を持っているが、今回の申請はEU域外だけでなく域内の承認取得も目指している。

4価弱毒化生ワクチンで3ヶ月置いて2回、皮注する。第3相試験ではワクチン効率(二回接種後18ヶ月間のデータ)が73.3%、ベースライン時点で血清反応陽性(過去に感染歴を持つと推測される)患者では76.1%、陰性では66.2%だった。4種類の株のうち1型は69.8%、2型は95.1%、3型は血清反応陽性患者では61.8%と有意なワクチン効率が示されたが、陰性患者や4型に対する効果は確立していない。

デング熱では一回目の感染は軽くても二回目に重症化する現象が見られ、サノフィが開発したワクチンでは自然感染歴のない人が接種後に感染すると重篤化する抗体依存的増強リスクが表面化した。武田のワクチンではどうなのか、長期追跡データの発表が待たれる。

リンク: 武田のプレスリリース(和文)



BMS、閉塞性肥大性心筋症治療薬を承認申請
(2021年3月19日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、mavacamtenを症候性閉塞性肥大性心筋症用薬としてFDAに承認申請し、受理されたと発表した。審査期限は22年1月28日。優先審査指定されなかったのは意外だ。何か、簡単には結論を出せない問題があるのだろう。

昨年11月に買収したMyoKardia社の開発品で、心臓ミオシンのアロステリック・モジュレータ。肥大性心筋症におけるミオシンとアクチンの過剰な架橋を抑制し、心筋収縮性を調整する。251人の患者を組入れた第3相試験では、臨床的反応率(30週後のNYHA分類や心肺運動負荷試験における最大酸素摂取量から判定)が36.6%と偽薬群の17.2%を有意に上回った(p=0.0005)。NYHAクラスが1段階以上改善した患者の比率は各群65%と31%だった。

リンク: BMSのプレスリリース



ノボ、オゼンピックの用量追加申請がFDAに受理されず
(2021年3月23日発表)

ノボ ノルディスクはGLP-1作用剤のベストセラーであるOzempic(semaglutide、和名オゼンピック)の高用量(2mg週一回皮注)をFDAに追加申請したが、受理されなかった。肥満症の適応拡大などに備えて新増設した生産施設に関する追加情報を要求された模様だ。ノボは第2四半期に提出する予定。

二型糖尿病用バイオ薬におけるライバルであるイーライリリーはGLP-1だけでなくGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の受容体も作動するLY3298176(tirzepatide)の第3相試験を行っている。直接比較試験でOzempicの1mgより高いHbA1c低下作用と体重削減作用を示した。ノボは2mgが承認されれば差を付けられずに済むだろう。

リンク: ノボのプレスリリース



【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、抗NGF抗体の安全性を懸念
(2021年3月25日発表)

FDAは関節炎諮問委員会と薬品安全性リスク管理諮問委員会の共催会議を招集し、ファイザーがイーライリリーと提携して開発し中重度変形性関節炎治療薬として承認申請したPF-4,383,119(tanezumab)について意見を聞いた。ファイザーが提案するREMS(リスク評価管理戦略)を採用すれば便益が危険を上回るか、という諮問に対して、19人の委員がNo、一人がYesと回答した。FDAがブリーフィング資料で示した懸念が支持されたので、おそらく、承認されないだろう。

このIgG2型抗ヒトNGF抗体は、ジェネンテックのスピンアウトであるRinat Neuroscienceを06年に買収して入手したコンパウンドの一つ。ジェネンテックはNGFを同定し筋萎縮性側索硬化症などのPOC試験を行ったがフェールした。疼痛が増大したという副作用報告があったため抗体でブロックする試験を行ったところ、疼痛緩和作用が確認され、変形性関節炎などに臨床開発が進められた。一時は制癌作用が期待されたTNFが、自己免疫疾患を治療するためにブロックすべき標的として蘇ったのと似ているが、明暗は分かれた。

ファイザーだけでなくリジェネロン/サノフィやアストラゼネカ、ジョンソン・エンド・ジョンソンなど多くの会社が抗NGF抗体の変形性関節炎臨床試験を推進したが、2010年になって、変形性関節炎の急速な悪化(RPOA)が一部の患者で観察され、FDAが癌性疼痛以外の用途の臨床試験を停止した。関節炎諮問委員会が開発続行を支持したことなどから12年8月に解除されたが、他社が行った毒性試験で末梢神経影響が見られたため、4ヶ月後に再び部分停止命令。ファイザー自身が検証を終え、解除されたのは15年3月のことだった。

他社は開発を断念したが、ファイザーはイーライリリーとリスク・シェアリング契約を結んで複数の大規模な第3相試験を行い、効果やRPOAリスクを検証した。結果は、5mgは副作用リスクがやや高く、2.5mgは効果がそれほどでもなかった。

承認申請の内容は、中重度変形性関節炎に伴う、既存薬に不応不耐の、慢性疼痛の治療に2.5mgを8週毎皮注するというもの。NSAIDs不応患者を組入れた臨床試験では、5mgにスイッチした群はNSAIDs継続投与群比有意に疼痛が緩和したが、2.5mgは大差なかった。従って、この予定適応症の妥当性は議論の余地がある。

RPOAの発生率は1型(関節裂隙狭小化)は2.3%でNSAIDs群の1.1%、偽薬群のゼロと比べて統計的に有意。より進行した2型(関節損傷・破壊)は0.4%対0.1%で有意ではないが検出力不足なのだろう。偽薬群はゼロだった。転帰を見ると、1型発症者の15%、2型の60%が、関節全置換術(TJR)を受けた。リスク因子は不明、投与を止めても損傷が進行し、NSAIDs併用患者では発生率が2-3倍高かった。

提案されたREMSの内容は、RPOAとTJRの枠付警告、医師などの研修・認証プログラム、治療前と年一回の造影検査、NSAIDs併用を避けるよう注意など。可逆性がないとなると早期に発見しても手遅れの可能性がありそうだ。鎮痛剤は服用を続けるうちに効果が感じられなくなって思わず服用量を増やしてしまうdose creep現象が見られるので、ダメを押してもNSAIDsを服用してしまう患者がいるかもしれない。

関節炎の治療を期待したのに悪化してしまったら患者は救われないだろう。

リンク: 両社のプレスリリース



CHMP、PI3K阻害剤などの承認を支持
(2021年3月26日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、PI3K阻害剤などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

Verastem(Nasdaq:VSTM)がインフィニティ社から世界開発販売権を取得して開発したCopiktra(duvelisib)は、PI3K(phosphoinositide 3-kinase)デルタとガンマの選択的阻害剤。二次以上の治療歴を持つ再発/難治CLL(慢性リンパ性白血病)や二次以上の治療に難治性だった濾胞性リンパ腫に用いることが支持された。

米国では18年に承認、日本はヤクルトが開発販売権を取得した。尚、VerastemはCopiktraに関する資産を昨年9月にSecura Bio社に売却しており、EUでのライセンスも譲渡されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

ジョンソン・エンド・ジョンソンのPonvory(ponesimod)はS1P1調節剤。臨床/画像診断により活性期と判定された再発型多発硬化症に用いる。米国で今週、承認された(下記)。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: JNJのプレスリリース

ベルギーのMithra(Euronext:MITRA)が15年にActavisからライセンスして開発した、estetrol(新規エストロゲン)とdrospirenone(プロゲスチン)の合剤は経口避妊薬。子会社のEstetra SPRLがLydisilkaという製品名で、ライセンシーであるハンガリーのGedeon RichterはDrovelis名で、肯定的意見を得た。日本は富士製薬が16年に権利を取得、FSN-013として開発している。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: 両社のプレスリリース

英国のDiurnal Group(AIM:DNL)のEfmodyはhydrocortisoneの新規調整放出製剤で、12歳以上の先天性副腎過形成症に用いる。一日二回、経口投与する。通常のコルチコイドと比べて早朝の17-hydroxyprogesteroneのピークが小さいことが特徴。副作用は副腎機能不全、疲労、頭痛、食欲亢進、眩暈、体重増など。欧州の先天性副腎過形成症患者は41000人と推定されている。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、グラクソ・スミスクラインのBenlysta(belimumab)を成人の活性期ループス腎炎に用いることが支持された。米国では昨年12月に承認。BenlystaはHuman Genome Sciencesを買収して入手した抗BLyS抗体で、全身性エリテマトーデスに承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: GSKのプレスリリース

ヴァーテックス・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:VRTX)のKaftrio(米国名Trikafta:elexacaftor、tezacaftor 、ivacaftor)は嚢胞性線維症の治療薬。12歳以上で両親から引き継いだCFTRの両方にF508欠損がある、または、片方がF508欠損でもう片方が最小機能変異である患者に承認されているが、後者の最小機能変異限定を解除することが支持された。臨床試験でゲーティング変異や残存機能変異にも効果が確認されたため。文言は、F508欠損が一つ以上ある場合、となる予定。

三剤のうちivacaftorだけは一日二回、服用する必要があるため、朝はKaftrio、夕方はKalydeco(ivacaftor)を服用する。Kaftrioの限定解除に伴い、Kalydecoの当該適応における限定も解除される予定。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

ロシュのTecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)をPD-L1高発現の転移非小細胞性肺癌の一次治療に用いることも支持された。腫瘍細胞における発現が50%以上、または腫瘍浸潤免疫細胞における発現が10%以上で、EGFRやALKに変異のない癌に、単剤投与する。臨床試験では全生存期間の化学療法比ハザードレシオが0.59だった。米国では昨年5月、日本でも12月に、承認された。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース

アステラス製薬がファイザーと共同開発販売しているXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)を転移性ホルモン感受前立腺癌に用いることも支持された。アンドロゲン枯渇療法と併用する。

リンク: EMAのプレスリリース

一方、CHMPが承認に後ろ向きで申請撤回となったのがアストラゼネカのP2Y12阻害剤、Brilique(ticagrelor、和名ブリリンタ)。THEMIS心血管アウトカム試験の成果に基づいて、冠動脈疾患と二型糖尿病を併発しPCIを施行した成人の心筋梗塞初発リスクを抑制する目的でアスピリンと併用する適応拡大を狙ったが、米国とは異なり、認められなかった。

THEMIS試験は成功したが予防効果は決して大きくなく、出血リスクが増加した。サブスタディではPCI歴を持つサブグループ以外は効果が見られなかった。これを受けてFDAはPCI歴など高リスク患者に絞って承認したが、CHMPは、便益が明確ではなくPCIに絞る理由や妥当性もあいまいと見做していた。

リンク: EMAのプレスリリース

COVID-19の世界的な流行に伴い、行政に対する批判があちこちで高まっている。EU加盟国ではEMAの承認審査が他の国と比べて遅いのではないか、という批判が高まっているようで、EMAは、幾つかの未承認薬について、加盟国が区々な評価や適応に基づいて承認しないよう、参考情報を発出している。今回は、韓国のCelltrionが開発しEUでローリング審査を受けているCT-P59(regdanvimab)について声明を発した。

他の抗SARS-CoV-2抗体と同様に、軽中等症で酸素補給は不要だが重症化リスクの高い成人COVID-19感染症を適応とするよう勧告した。臨床試験の第1部では入院リスクを抑制する効果が支持されたが、現時点では盤石とは言えないとのこと。

リンク: EMAのプレスリリース


【承認】


ベタニス、神経因性排尿筋過活動に適応拡大
(2021年3月25日発表)

FDAはアステラス製薬のMyrbetriq(mirabegron、和名ベタニス)錠を3歳以上の神経因性排尿筋化活動に用いる適応拡大と、新規格である内服懸濁液用顆粒を承認した。この疾患は二分脊椎などが原因で発症し、失禁だけでなく腎臓に傷害を与えるリスクもある。Myrbetriqはベータ3受容体作動剤で過活動膀胱に承認されている。血圧上昇や血管浮腫のリスクを持つ。

リンク: FDAのプレスリリース



グルカゴン新製剤がまた承認
(2021年3月22日発表)

デンマークのZealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)は、FDAがZegalogue(dasiglucagon)を6歳以上の糖尿病患者が重症低血糖症になった時のレスキュー治療薬として承認したと発表した。皮注用のグルカゴン類縁体でプリフィルド・シリンジとオート・インジェクターの二種類あり、粉末を調整しなくても使える。常温で最大12ヶ月間保存可能。

米国では19年にイーライリリーの点鼻用薬Baqsimiが4歳以上に、Xeris PharmaceuticalsのGvoke HypoPenが2歳以上にと、二種類のグルカゴン新製剤が承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース(GlobeNewswire)



JNJのS1P1調節剤も承認
(2021年3月22日発表)

JNJグループのJanssen Pharmaceuticalは、FDAがPonvory(ponesimod)を成人の再発型多発硬化症用薬として承認したと発表した。17年にアクテリオンを買収した時に入手したS1P1調節剤で、類薬は多いが、オフセットが比較的早いのが特徴。COVID-19に感染したりワクチンを接種する時は免疫抑制作用が妨げになりかねないが、服用を止めれば他のS1P1調節剤よりも早いリンパ球回復が期待できる。

第3相試験では年率再発率が0.202とteriflunomide群の0.290を有意に下回った。欧州でも承認審査中。

リンク: JNJのプレスリリース



キイトルーダが食道癌に適応拡大
(2021年3月22日発表)

FDAは、MSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を食道・胃食道接合部腫瘍に用いる適応拡大を承認した。転移性/局所進行性で切除術や化学放射線療法が不適の患者にcisplatinおよびfluropyrimidineと併用する。KeyNote-590試験ではメジアン生存期間が12.4ヶ月と化学療法群の9.8ヶ月を上回った。

リンク: FDAのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、シングリックスのレーベルにギラン・バレー症候群の警告を追加
(2021年3月24日発表)

FDAはグラクソ・スミスクラインの帯状疱疹ワクチン、Shingrix(和名シングリックス)のレーベルを改訂してギラン・バレー症候群に関する警告を追加すると発表した。MSDの帯状疱疹生ワクチンであるZostavaxの市販後報告と比べて発生率が高かったため、高齢者医療制度であるメディケアのデータベースを分析して、65歳以上の人の接種後第1日から42日までのリスクを第43日から183日と比べたところ、初回接種では100万回当り6例と増加した。2回目はどちらの期間も大差なかった。

このため、FDAは、市販後観察的試験で接種後42日間はおけるギラン・バレー症候群のリスク増加が観察された、という文言を入れるようGSKに求めた。現段階では関連性に留まり、因果関係は確立していないとのこと。

リンク: FDAの安全性情報





今週は以上です。

2021年3月21日

第991回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19:一部の抗体医薬は一部の変異株には無効 
  • COVID-19:EMA、アストラゼネカのワクチンを支持 
  • COVID-19:インサイトのJAK阻害剤は二本目もフェール 
  • Clovis、Rubracaの第3相卵巣癌試験が成功 
  • キイトルーダ・レンビマ併用の内膜腫市販後確認試験が成功 
  • リジェネロン、抗PD-1抗体の子宮頚部癌試験が成功 
  • イーライリリー、抗IL-23p19抗体の潰瘍性大腸炎試験が成功 
  • イーライリリー、アルツハイマー試験のデータを発表 
  • MSD、フォン・ヒッペル・リンドウ病の腎臓癌用薬を承認申請 
  • アッヴィ、リンヴォックの適応拡大が遅延 
  • FDA、IL-1トラップを再発性心膜炎に適応拡大 
  • オリタバンシンの新製品が承認 


【今週の話題】


COVID-19:一部の抗体医薬は一部の変異株には無効
(2021年3月18日発表)

FDAはイーライリリーとリジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)の抗SARS-CoV-2抗体を軽中等症COVID-19用薬としてEUA(非常時使用認可)しているが、ファクトシートをアップデートして、各地で流行している変異型に関するシュードウイルス試験の結果を記載した。

EUAを受けているイーライリリーのbamlanivimab(単剤)は、英国型変異(B.1.1.7系統)は感受するが、ニューヨーク型(B.1.525系統やB.1.526系統)のうちE484K変異のあるもの、カリフォルニア型(B.1.427系統やB.1.429系統)、南ア型(B.1.351系統)、そしてブラジル型(B.1.1.248/P.1)は大きく低下するため有効性は期待できないと評価した。この4変異株は感染やワクチン接種により獲得する抗体や抗体医薬をエスケープする可能性のあるスパイク蛋白L452R変異またはE484K変異を持っている。

bamlanivimabとetesevlmabを併用すれば、カリフォルニア型やニューヨーク型は感受する。しかし、南ア変異やブラジル変異には無効と評価した。

臨床試験で投与後にK417NやE484Kのような抵抗性変異が選択された症例もあるようだ。併用より単剤のほうが発生率が高いようだ。

リジェネロンのcasirivimabとimdevimabの併用レジメンは、これらの変異株の何れも感受する。臨床試験でG446Vが選択された症例があったようだが、インプリケーションは不明。

連邦政府はワクチンと同様にこれらの抗体医薬も一括で買い取り、無償提供しているが、カリフォルニア型が流行している三州はbamlanivimab単剤の配布を止めた。

欧米では南ア型変異やブラジル型変異は主流になっていないが、南アとブラジルでは圧倒的な主流株になっており、英国型変異と同様に、感染者数がある水準を超えたら翌月には過半を占めるようになるかもしれない。ワクチンだけでなく抗体医薬も対応が必要になるだろう。

リンク: FDAのファクトシート改訂に関するプレスリリース
リンク: bamlanivimabのEUAファクトシート(pdfファイル)
リンク: bamlanivimab・etesevlmab併用のEUAファクトシート(同上)
リンク: casirivimabとimdevimab併用のEUAファクトシート(同上)



COVID-19:EMA、アストラゼネカのワクチンを支持
(2021年3月18日発表)

欧州の薬品審査機関、EMAのPRAC(ファーマコビジランス・リスク・アセスメント委員会)は3月18日に臨時会議を開催し、アストラゼネカのCOVID-19ワクチンを接種した患者数人が血栓塞栓性疾患で死亡した件について検討、頻度が低いことなどから便益が危険を上回ると判定した。一部の国で接種が中断していたが、再開し始めた。

このワクチンはEEA(欧州経済領域)や英国で3月16日までに約2000万人が接種したが、血栓塞栓イベントの報告数は469例で、人口全体の発生率より低い。オーストリアではバッチ番号ABV5300が疑われたが、EMAは特定のバッチや工場との関連を示すエビデンスはないと結論した。

但し、CVST(脳静脈洞血栓症)やDIC(播種性血管内凝固症候群)に関しては、ワクチン接種と関連する可能性が残っているので更なる検討が必要と判定した。頻度は低く、CVSTは18例、DICは7例。殆どが55歳以下、過半は女性、致死例は9人だった。症例数が少なく、人口全体でも少数であるためリスクを統計学的に評価するのは難しいが、50歳以下に関してはリスクが高い可能性がある。3月16日までに接種した人のうち何人がワクチン以外の理由で接種14日以内に発症するかをCOVID-19流行前のデータに基づいて推定したところ、CVSTは1.35人、DICは1人未満だったが、アストラゼネカのワクチン接種者では各12人と5人だったからだ。50歳超ではこのような偏りは見られなかった。

EMAは医療従事者に対して、血栓塞栓性疾患の兆候に注意するよう接種者に伝えることを勧奨した。具体的には出血や易出血性、持続性または重度の頭痛など。多くは14日以内に発生しているので、接種直後の副反応が終わった後も油断しないよう促す必要がある。

米国や日本はCOVID-19ワクチンの臨床成績に係る詳細なデータを開示しているが、米国で承認された3製品のうちBioNTech/ファイザーやModernaのワクチンは血栓塞栓性イベントのリスクは見られなかったようだ。一方、アストラゼネカと同様にアデノウイルス・ベクターを使っているジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンは血栓塞栓イベントが15例と偽薬群の10例を上回った。

残念なことに、アストラゼネカのワクチンが承認されている英国やEUではまだ詳細な治験データは開示されていないため、臨床試験でリスクが見られなかったのかどうか、分からない。

リンク: EMAのプレスリリース



COVID-19:インサイトのJAK阻害剤は二本目もフェール
(2021年3月18日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)はJakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)の第3相危機的COVID-19試験、DEVENTがフェールしたと発表した。そこまで重症ではない患者を組入れた第3相もフェールしており、同じJAK1/2阻害剤でありながら、NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)主導試験が成功しEUA(非常時使用認可)を得たイーライリリーのOlumiant(baricitinib、和名オルミエント)と明暗が分かれた。

尤も、数値自体は良く、患者組入れを途中で打ち切ったことが裏目に出た可能性がありそうだ。死亡率が高い患者層だけに数値が実力なら価値がある。同社は当局とExpanded Access Program(承認前の薬の提供を認める制度)の認可などを相談する考え。

Jakafiは真性多血症と、原発性、真性多血症後、あるいは本態性血小板血症後の骨髄線維症、そして移植片宿主病の治療に承認されている。米国外はノバルティスが開発販売。

今回のDEVENT試験は急性呼吸窮迫症候群を合併し人工呼吸器装着の患者500人を組入れて、5mgや15mgを一日二回投与する群の29日全死亡率を偽薬と比較する計画だった。しかし、もう一本の、サイトカイン放出症候群合併患者を組入れた試験がフェールしたせいか、途中で組入れ中止となり、今回の解析対象は211例に留まった。

結果は、5mg群の29日全死亡率が55.2%と偽薬群の74.3%を大きく下回り、オッズ比0.42(95%信頼区間0.171-1.023)、p=0.0280、15mg群も51.8%対69.6%、オッズ比0.46(0.201~1.028)、p=0.0292と、数値上は大変良かったが統計学的には有意ではなかった。サンプルサイズや多重性補正が影を落としたのではないだろうか。

米国の施設で組入れられた191人だけの解析では5mg群が46.7%対69.1%、オッズ比0.39、p=0.0189、10mg群は47.1%対66.7%、オッズ比0.43、p=0.0215だった。

尚、この試験では開始前/治験中に被験者の90%がコルチコステロイド、55%がremdesivirによる標準治療を受けていた。

さて、問題は、フェールしたRUXCOVID試験との整合性だ。29日死亡/人工呼吸器管理/ICU入室率が12.0%と偽薬群の11.8%と大差なかった。重症度が異なるとはいえ再現性を疑う余地はありそうだ。

OlumiantのACTT-2試験では呼吸器疾患合併患者にremdesivirと併用する効果を検討したところ、回復までの期間が7日と偽薬群の8日より短かった。これだけではパッとしないが、29日死亡率は7.1%と偽薬群の4.7%を下回り、p=0.09で有意ではないが数値は良かった。このため、2歳以上の酸素投与や人工呼吸器、ECMOが必要な患者に用いることが認められた。OlumiantはJakafiにない作用を持っているのかもしれないが、順番から言えば、同じJAK阻害剤でありながらなぜ食い違うのかを先に検討すべきだろう。

リンク: インサイトのプレスリリース


【新薬開発】


Clovis、Rubracaの第3相卵巣癌試験が成功
(2021年3月19日発表)

Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)はPARP阻害剤Rubraca(rucaparib)の第3相ARIEL4試験が成功したと発表した。生殖細胞系又は体細胞系のBRCA有害変異(g/sBRCAm)を持つ卵巣癌の三次治療試験で、主評価項目はPFS(無進行生存期間、担当医評価)。BRCAに復帰変異(reversion mutation)のある患者を除いた325人の解析でメジアン7.4ヶ月と化学療法群の5.7ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.64、p=0.001だった。シーケンシャルに行われた全349人の解析でも7.4ヶ月対5.7ヶ月、ハザードレシオ0.67、p=0.002と類似した結果になった。G3以上の治療時発現有害事象は貧血症、好中球減少症、疲労、血小板減少、肝機能検査値異常など。

Rubracaは欧米でg/sBRCAmを持つ卵巣癌の三次治療と、卵巣癌の白金薬反応後維持療法に承認されているので、ARIEL4試験の内容はオン・レーベルだが、二つの点で意義がある。米国は維持療法承認時に三次治療も本承認に切り替わったがEUは条件付き承認のままので、この試験のデータを提出すれば通常の承認に変わる。そもそも、加速承認/条件付き承認のエビデンスは反応率と反応持続期間で抗癌剤に求められる延命またはそれに準じる便益は確立していなかった。他社の類薬と競争する上でエビデンスの充実は重要だ。

第二に、元々のBRCAに有害変異があっても復帰変異が起きたらRubracaなどのPARP阻害剤に抵抗性が生じると言われているが、本試験では全集団の解析でも有効性が示されたこと。但し、サンプル数は少なく、また、復帰変異症例だけのデータは開示されていないので、本当に有効かどうかは未だ明らかではない。

リンク: 同社のプレスリリース


キイトルーダ・レンビマ併用の内膜腫市販後確認試験が成功
(2021年3月19日発表)

MSDとエーザイは、Keytruda(pembrolizumab)とLenvima(lenvatinib)を子宮内膜腫の二次治療に併用する効果を検討した第3相KEYNOTE-775/309試験が成功したと昨年12月に発表したが、データをSGO(婦人科腫瘍学会議)で発表した。治癒的手術不能な白金薬治療歴を持つ患者を組入れて効果を化学療法群と比較したところ、全生存期間はメジアン18.3ヶ月対11.4ヶ月、ハザードレシオ0.62、PFS(盲検独立中央評価)は7.2ヶ月対3.8ヶ月、ハザードレシオ0.56だった。

もう一つの主評価項目である、ミスマッチ修復機能が十分な患者だけの解析でも全生存期間は17.4ヶ月対12.0ヶ月、ハザードレシオ0.68、PFSは6.6ヶ月対3.8ヶ月、ハザードレシオ0.60と有意な効果が示された。米国で加速承認されているのはこの患者層だ。

G3以上の治療時発現有害事象は各群88.9%と72.7%、致死的な治療時発現有害事象は5.7%と4.9%の患者で発生した。

本試験成功を受けて、本承認切替申請を行う予定。修復不全の患者は承認されているKeytruda単剤と比較したエビデンスが必要かもしれないが、支持的エビデンスを用意できるなら当該患者層に適応拡大の余地もあるのではないか。また、米国外で承認申請することもできるだろう。

リンク: 両社のプレスリリース



リジェネロン、抗PD-1抗体の子宮頚部癌試験が成功
(2021年3月15日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とサノフィは、Libtayo(cemiplimab)の第3相子宮頸癌試験が成功したと発表した。適応拡大申請に向かう予定。

LibtayoはIgG4型抗PD-1抗体で、米国では進行皮膚扁平上皮腫、基底細胞腫、PD-L1高度発現進行非小細胞性肺癌に承認されている。今回の試験は治療歴のある難治/転移子宮頸癌(扁平上皮腫と腺腫)をPD-L1発現不問で組み入れて、350mgを3週毎に単剤投与する群と化学療法群の全生存期間を比較した。メジアン生存期間は各群12.0ヶ月と8.5ヶ月、ハザードレシオは0.69、95%信頼区間0.56-0.84となった。扁平上皮腫だけ、腺腫だけの解析でも夫々良い数値が出た。深刻な有害事象は30%対27%、有害事象による治験離脱は8%対5%で少し上回った。

リンク: 両社のプレスリリース



イーライリリー、抗IL-23p19抗体の潰瘍性大腸炎試験が成功
(2021年3月16日発表)

イーライリリーは、LY3074828(mirikizumab)の第3相LUCENT-1試験が成功したと発表した。既存薬不応の中重度潰瘍性大腸炎の寛解導入試験で、臨床的寛解率(排便頻度や出血などがほぼ正常化)が偽薬を有意に上回った。副次的評価項目の臨床的応答率や内視鏡的寛解率などでも有意差があった。バイオ薬やJAK阻害剤に不応な患者にも効果が見られた。試験完了者を組入れたLUCENT-2寛解維持試験の結果が22年に判明した段階で承認申請に向かうのではないか。

IL-23のp19サブユニットに結合するIgG4型抗体医薬で、既に完了した第3相中重度乾癬試験ではノバルティスのIL-17A抗体、Cosentyx(secukinumab)を上回る効果を示した。抗IL-23p19抗体はアッヴィのSkyrizi(risankizumab)やジョンソン・エンド・ジョンソンのTremfya(guselkumab)、そしてSun PharmaのIlumya(tildrakizumab)が既に承認されているので、新薬承認申請用試験のほかに適応拡大試験を積極的に推進する必要がある。

リンク: リリーのプレスリリース



イーライリリー、アルツハイマー試験のデータを発表
(2021年3月13日発表)

イーライリリーは今年1月、LY3002813(donanemab)の第2相早期症候性アルツハイマー病試験が成功したことを明らかにしたが、詳細をAD/PD 2021学会とNew England Journal of Medicines誌で発表した。主評価項目であるiADRSで有意な悪化抑制効果を示したが、この指標は未確立で、改善するのではなく悪化をある程度抑制するだけなので臨床的意義は明確ではない。また、p値は0.04なので閾値と大きな差があった訳ではない。

除外水準を緩和し組入れ人数を大きく増やした第2相が進行中で2013年にも成否が判明する見込み。二本成功なら承認申請に向かう可能性がありそうだ。

donanemabはアミロイドプラクにだけ見られるN端末側がピログルミタル化されたアミロイドベータに結合するIgG1型抗体。今回のTRAILBLAZER-ALZ試験は、認知機能低下が見られる早期(軽度認知障害及び軽度アルツハイマー病)の患者で、PET検査陽性、かつ、NFT(神経原繊維変化)の蓄積が低中度(早期症候性患者の30-45%が該当)の患者257人を偽薬群とdonanemab群に無作為化割付して4週毎点滴静注し、76週間のiADRSの変化を比較した。

donanemabの用量は、最初の3回は700mg、その後は1400mgに増量し、アミロイドプラクが正常水準に低下したら、700mg、そして偽薬に減量した。1年後には過半が偽薬にスイッチできた模様だ。

iADRSはバイオジェン/エーザイのADCOMSと同様な発想で開発された評価方法で、過去の臨床試験のデータを基にして、既存の病状評価指標を組み合わせて治療効果感応度を高めたもの。計算方法はiADRSのほうが簡単で、ADAS-cog14(スコアのレンジは0-90、大きい方が悪い)とiADL(手段的ADL、0-56、小さい方が悪い)を組み合わせるため前者の正負を反転して加算し、レンジを0-146にするため90を加えたもの。

iADLのベースライン値は平均106で、76週後に偽薬群は平均10.06低下したが、試験薬群は6.86の低下に留まり、32%の進行抑制効果が見られた。CDR-SBやADAS-Cog13、ADCS-iADL、MMSEなどでは20~40%の差があったが有意とは言えなかった。ADAS-Cog13の差は2ポイント程度なので決して大きいとは言えないが、承認されている薬でも半年で3ポイント程度の治療効果であることを考えれば、無視できるほどでもない。何れにせよ、アセチルコリン還元酵素阻害剤は一時的とはいえ症状が改善するのに対して、抗アミロイドベータ抗体は悪化がやや穏やかになるだけなので、本人も介護者も治療効果を実感できない可能性があり、顧客満足度は低そうだ。

抗アミロイドベータ抗体にはアミロイド関連画像異常(ARIA)という副作用がつきもの。本試験ではARIA浮腫が27%の患者で発現した(症候性だけカウントしても6%)。ARIA出血は8.4%、脳微小出血が7.6%、中枢神経脳表ヘモジデリン沈着症(出血の合併症)が13.7%で発現。深刻な点滴反応は2.3%で発生。有害事象による治験離脱は30%でその半分はARIAが発現したら離脱というプロトコルに従ったものだった。

リンク: イーライリリーのプレスリリース
リンク: IRプレゼンテーション用資料(pdfファイル)
リンク: Mintunらの治験論文抄録(NEJM)
リンク: WesselsらのiADRSに関する論文(PubMedサイト)



【承認申請】


MSD、フォン・ヒッペル・リンドウ病の腎臓癌用薬を承認申請
(2021年3月16日発表)

MSDはMK-6482(belzutifan)を米国で承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は9月15日。HIF-2(低酸素誘導因子2)を阻害する経口剤で、フォン・ヒッペル・リンドウ(VHL)病の患者の即時手術不要な腎細胞腫の治療に用いる。

VHLは米国で1万人、世界では20万人が罹患する常染色体優性遺伝子疾患で、サブレッサー遺伝子の不活化によりHIF-アルファが蓄積、VEGFなどの腫瘍関連遺伝子の転写が増加する。VHL患者の最大7割が腎細胞腫を合併すると推測されている。MSDは非VHL性腎細胞腫の臨床試験も進めている。

19年にダラスのPeloton Therapeuticsを買収して入手したパイプライン。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認審査・委員会】


アッヴィ、リンヴォックの適応拡大が遅延
(2021年3月17日発表)

アッヴィのJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib、和名リンヴォック)は19~20年に日米欧でリウマチ性関節炎治療薬として承認された。乾癬性関節炎や強直性脊椎炎、アトピー性皮膚炎などにも開発されており、前二者は欧州で承認されたが、米国はFDAがJAK阻害剤の安全性に警戒心を持っているため遅れ気味だ。今回、乾癬性関節炎の適応拡大申請の審査期限が6月頃に3ヶ月延期されたことが公表された。要求に応じて危険対便益に関する追加データを提出したことが審査期限延期の要件である申請内容の主要な変更と見なされたため。アトピー性皮膚炎の適応拡大申請に関しても追加データ提出を求められた模様。

JAK阻害剤は経口剤でありながらバイオ薬に見劣りしない効果を持つが重要な副作用も持っている。ファースト・イン・クラスのXeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)は主要有害心血管イベントや癌のリスクをTNF阻害剤と比較した長期安全性確認試験で非劣性解析がフェールした。感染症などのリスクも高い。

Xeljanzの副作用の多くはクラス・イフェクトであるため、FDAはJAK阻害剤全般の安全性に警戒的なスタンスだったが、上記長期安全性確認試験の結果判明後は一層、警戒を強めたとしても不思議はないだろう。

リンク: アッヴィのプレスリリース


【承認】


FDA、IL-1トラップを再発性心膜炎に適応拡大
(2021年3月18日発表)

FDAは、Kiniksa Pharmaceuticals(Nasdaq:KNSA)のArcalyst(rilonacept)を再発性心膜炎の再発予防に用いる適応拡大を承認した。この疾患の治療薬が承認されたのは初めて。

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)が創製したIL-1アルファとIL-1ベータに結合する融合蛋白で、08年に米国でFCAS(家族性寒冷自己炎症性症候群)やMWS(マックル・ウェルズ症候群)などのクリオピリン関連周期症候群の治療薬として承認された。

Kiniksaはバミューダ籍の新興製薬会社で、17年にRegeneronから新規用途での開発販売権を取得した。再発性心膜炎の第3相試験では、12週間のランイン期間中に86人全員に週一回皮注して、応答した61人を継続群と離脱(偽薬にスイッチ)群に無作為化割付して再発リスクを比較したところ、無再発比率が各群93%と26%となった。

命に係わることもある感染症のリスクがあるため、活性期/慢性感染症は禁忌。治療中は生ワクチンは禁忌。

今回の承認により、Kiniksaは米国や日本でも全用途の開発販売権を取得した。Regeneronは利益の半分を得る。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Kiniksaのプレスリリース



オリタバンシンの新製品が承認
(2021年3月15日発表)

Melinta Therapeutics(Nasdaq:MLNT)は、FDAがKimyrsa(oritavancin)を急性細菌性皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認したと発表した。MRSAも含めて、oritavancinに感性のグラム陽性菌が対象。

14~15年に欧米で同じ適応症に承認されたOrbactivの溶解性を改善した新製剤。用量は1200mgを一回だけ点滴静注で同じだが、5%ブドウ糖液バッグだけでなく0.9%生理食塩液バッグに溶解することも可能。また、調整濃度をOrbactivの4倍に設定して点滴時間を3時間から1時間に短縮した。

MelintaはOrbactivの売上が伸びず、19年にスポンサーを確保した上で破産法を申請、会社再生中。

リンク: 同社のプレスリリース(Business Wire)






今週は以上です。

2021年3月13日

第990回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19:JNJのワクチンがEUでも承認 
  • COVID-19:VIR/GSKの抗体が入院・死亡を9割近く抑制 
  • COVID-19:イーライリリーの抗体カクテルが入院・死亡を9割近く抑制 
  • COVID-19:ポリメラーゼ阻害剤のPOC成功 
  • COVID-19:ブラジルの試験で抗アンドロゲンが良績 
  • COVID-19:抗CCR5抗体のサブグループ分析 
  • COVID-19:アクテムラの重症患者試験がフェール 
  • FDA、抗PD-1/PD-L1抗体の加速承認取消の当否について諮問へ 
  • ロシュも抗PD-L1抗体の尿路上皮腫二次治療を承認返上へ 
  • ノバルティス、抗IL-1抗体の肺がん治療試験がフェール 
  • イドルシア、オレキシン受容体アンタゴニストを承認申請 
  • AVEO社のVEGFR拮抗剤、8年を経て遂に承認 
  • FDAがイエスカルタを濾胞性リンパ腫に適応拡大 


【今週の話題】


COVID-19:JNJのワクチンがEUでも承認
(2021年3月11日発表)

EUはジョンソン・エンド・ジョンソンのワクチンを18歳以上のCOVID-19疾患予防に条件付き承認した。米国でも2月にEUA(非常時使用認可)されている。アデノウィルス26型をベクターとしてSARS-CoV-2のスパイク蛋白の遺伝子を接種者の細胞に導入するもので、ワクチン効率(接種の14日後以降、1ヶ月程度の期間の中重度感染症予防効果)は67%だった。地域別の成績は変異株の流行次第で変動し、米国では74%、南アでは52%、ブラジルでは66%だったが、、重症や危機的な感染症だけに限定すると各国7-8割で大差なかった。他社のワクチンは軽症も含めてワクチン効率を算出しているが、JNJの第3相では軽症患者数が中重症と比べてあまりにも少なく、おそらく、報告漏れが相当あるのではないかと思われるので、比較できない。。

有害事象はワクチンに一般的なものが多いが、印象的なのは、最近欧州でオックスフォード大学/アストラゼネカのチンパンジー・アデノウイルスをベクターとするワクチンに関して話題になっている血栓塞栓イベントの発生数が、15例と偽薬群の10例より数値上、多かったこと。1000~2000人に一人程度の発現率になるが、因果関係は不明。

他のワクチンと比べて特徴的なのは、接種が一回筋注だけであること、超低温環境は必要なく通常の冷蔵庫で最大3ヶ月保存可能であること、そして、パンデミック中は儲け無しで販売されること。

ECDC(欧州疾病予防管理センター)の3月11日時点の集計によると、EUなど30ヶ国に配布されたCOVID-19ワクチンは約5500万本、接種実績は約4200万本で接種進捗率は77%。このうち、BioNTech/ファイザーのワクチンは約3800万本配布、進捗率は88%と高いが、Modernaとアストラゼネカのワクチンは、どちらも、約3400万本配布して進捗率は52%と低い。

アストラゼネカのワクチンは高齢者のエビデンスが少なく、受託生産が多いせいか品質管理に問題が生じて供給が滞ったり、血栓塞栓イベントで死亡例が発生したため複数の国が接種を一時停止したりしているので、進捗が遅くても不思議はないが、Modernaの進捗も低いとなると、先行者利潤が相当大きいと想像できる。

JNJのワクチンはワクチン効率がリピッド・ナノパーティクル・ワクチンより見劣りするため米国では、拒否すべきではないというキャンペーンが行われている。データの不利と後発の不利をどの程度、克服できるか、注目される。

リンク: EUのプレスリリース
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: JNJのプレスリリース


COVID-19:VIR/GSKの抗体が入院・死亡を9割近く抑制
(2021年3月10日発表)

米国サンフランシスコのVir Biotechnology(Nasdaq:VIR)とグラクソ・スミスクラインは、共同開発している抗SARS-CoV-2抗体、VIR-7831/GSK4182136の第3相試験が良好な結果になったと発表した。米国などでEUA(非常時使用認可)などを申請する考え。

VIR社はCRISPRのようなゲノム編集技術とin silico解析、そして機械学習を組み合わせて抗ウイルス薬のターゲットを特定する技術を持っている。VIR-7831はSARS-CoV-1と共通の、よく保存された部位に結合する抗体で、Xencor社(Nasdaq:XNCR)の技術を適用して肺における生物学的利用率や半減期を向上したもの。

今回のCOMET-ICE試験は軽中等症で入院していない患者を組入れて500mgを一回、静注した無作為化割付偽薬対照二重盲検試験。昨年10月に第3相ポーションに進み、今回、中間解析(583人、過半がヒスパニック/ラテン系)で独立データ監視委員会が薬効を認定し新規組入れを中止するよう勧告した。28日入院・死亡リスクが偽薬比85%小さかった(p=0.002)。24週間追跡するため現在も盲検が続いている。

静注ではなく筋注用製剤も開発しており、第2四半期中に外来治療や予防の第3相を開始する予定。

尚、この抗体医薬は(この抗体医薬も)、中等症入院患者の試験がフェールしている。NIH(米国立衛生研究所)傘下のNIAID(国立アレルギー・館戦争研究所)がActiv-3試験で症状改善効果を検討したが、当初300人の解析で群間の偏りを補正すると十分な効果が見られなかったため、組入れ拡大が見送られた。

VIR-7831はシュードウイルスの試験で英国や南ア、ブラジルの変異株にも有効だった。シュードウイルスはSARS-CoV-2とは違うし人間の体はin vitroほど単純ではないので臨床試験で確認する必要があるが、今のところは、次項のイーライリリーの抗SARS-CoV-2抗体よりは期待できそうだ。

リンク: 両社のプレスリリース


COVID-19:イーライリリーの抗体カクテルが入院・死亡を9割近く抑制
(2021年3月10日発表)

イーライリリーはカナダのAbCellera Biologicsからライセンスした抗SARS-CoV-2抗体、bamlanivimabを単剤で、及び中国のJunshi Biosciencesからライセンスした抗SARS-CoV-2抗体、etesevimabと併用で開発し、入院の必要がない軽中等症COVID-19感染症の治療薬としてFDAのEUA(非常時使用認可)を取得した。併用法のエビデンスとなる臨床試験では各剤2800mgずつ、一回、点滴静注したが、今回、EUAの推奨用量である各700mgと1400mgを投与した試験の結果が発表された。薬力学面・薬物動態面だけでなく、入院・死亡リスクの面でも2800mgの試験と見劣りしないことが明らかになった。

この試験は、第3相二重盲検試験、BLAZE-1のコフォートの一つとして行われた。発症から数日以内で軽中等症だが重症化リスク因子を持つ12歳以上の患者769人を偽薬群と抗体カクテル群に1:2の比率で無作為化割付し、1回投与後の入院・死亡リスクを比較した。結果は、各群15人と4人が入院・死亡し、相対リスク削減率は87%、p<0.0001だった。死亡者は各群4人(全員がCOVID-19関連死)とゼロだった。

2800mgずつ投与したコフォートの入院・死亡リスク削減率は70%、p=0.0004、死亡は10人対ゼロ(この試験は1:1割付)だったので概ね同様な結果だ。尚、bamlanivimab単剤のコフォートは入院・ER入室リスクが72%小さかったので、併用の効果と大差ないが、リアルなのかフェイクなのか良く分からない。

二本合計すると、偽薬群の入院・死亡率は6.6%、抗体カクテル群は1.5%で、20人に投与すると1人を入院・死亡から救うことができる計算になる(残りの19人は投与してもしなくても結果が同じ)。イベント数が少ないので信頼性は低いものの、死亡も56人で1人救う恰好なので、なかなか良い。

問題は、このデータが勢力を増しつつある英国型や南ア型、ブラジル型にも当てはまるのかどうかだ。また、今のところ、抗SARS-CoV-2抗体は入院患者に対する効果が確立しておらず、逆に、有害である可能性すら示唆されている。本試験のように、発症早期の患者に絞り込むことが重要なのだろう。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


COVID-19:ポリメラーゼ阻害剤のPOC成功
(2021年3月6日発表)

MSDとマイアミの抗ウイルス薬開発会社、Ridgeback Biotherapeuticsは、MK-4482/EIDD-2801(molnupiravir)の前期第2相試験の途中経過をCROI(レトロウイルスと日和見感染症学会)で発表した。第5日時点で感染力を持つウイルスが消失という大変良い内容だった。外来患者や入院患者の第2/3相試験で臨床的な効用が確認されるかどうか、注目される。

molnupiravirはエモリー大学で創製されたRNAポリメラーゼ阻害剤。昨年3月にRidgeback Biotherapeuticsがライセンスし、5月にMSDに世界開発商業化権を供与した。

今回のPOC試験は、症候性外来患者を偽薬、200mg、400mg、800mgに割付けて、一日二回、5日間に亘って経口投与し、陰転状況をトータルで28日間、追跡した。感染状況はRT-PCRではなく上咽頭スワブ検体をVero細胞で培養して感染力のあるものだけをカウントした。

ベースライン時点の検体で培養・ウイルス検出ができた78人の中間解析で、第5日時点のウイルス検出率は偽薬群が24%であったのに対して試験薬群は3用量ともにゼロだった(名目p=0.001)。薬物関連深刻有害事象は発生しなかった。

経口剤なので外来治療には適している。抗ウイルス効果の試験方法が異なるので既存薬との比較は難しく、また、現時点では症状改善効果やウイルス再燃リスク、抵抗性ウイルス出現リスクなど分からないことが多いが、抗ウイルス剤で有力候補が現れ始めたのは良い兆候だ。

リンク: 両社のプレスリリース


COVID-19:ブラジルの試験で抗アンドロゲンが良績
(2021年3月11日発表)

中国蘇州のKintor Pharmaceutical(HKEX:9939)は、ブラジルで実施されたGT-0918(proxalutamide)の第三相研究者主導試験が良好な結果になったと明らかにした。米国カリフォルニア州のApplied Biology社がブラジル アマゾナス州の病院グループであるSamel Groupと12医療施設で実施した無作為化割付二重盲検試験で、入院後48時間以内の患者588人に300mgまたは偽薬を一日一回、14日間に亘って経口投与したところ、主評価項目の14日WHO序数スケールがベースライン(5.6)から各群4.01ポイントと0.25ポイント低下し、有意(p<0.0001)な差があった。驚くべきは死亡率で、各群3.7%と47.6%と信じられないほど大きな差があった。メジアン入院期間でも各群5日と14日という大きな差があった。

偽薬群の死亡率の高さに驚くのは私だけではないらしく、Kintorのプレスリリースには、注記として、北ブラジルにおけるCOVID-19入院患者の死亡率が50%というLancet誌に掲載された疫学論文のリンクが貼られている。

proxalutamideは非ステロイド系の抗アンドロゲン。COVID-19は女性より男性の方が重症化しやすく、子供は重症化しにくいことや、SARS-CoV-2のスパイク蛋白が宿主細胞のACE2に結合する前にTMPRSS2による切断を受けるが、このセリン・プロテアーゼの発現がアンドロゲンによって誘導されることなどから、今回の試験が着想された。治験登録によると並行して軽中等症非入院患者の試験も行ったはずなので、結果発表が待たれる。また、米国で治験認可が降りたので、再現されるかどうか注目される。

リンク: Kintor社のプレスリリース


COVID-19:抗CCR5抗体のサブグループ分析
(2021年3月5日発表)

カナダのCytodyn(OTC.QB:CYDY)は、Vyrologix(leronlomab)の第3相試験の結果を発表した。主評価項目の28日死亡率は偽薬群と大差なかったが、試験薬群は高齢者の構成比が高かったことが影響した可能性があるようで、65歳超と以下のサブグループ分析や、危機的患者だけの分析結果に会社側は期待している。FDAとの相談を踏まえて危機的患者を更に140人、オープンレーベル試験に組入れる考え。

leronlomabは10年前にProgenics Pharmaceuticals(現Lantheus Holdings(Nasdaq:LNTH))の抗CCR5抗体、PRO 140をライセンスしたもの。HIV/AIDSのピボタル試験を行って昨年5月に承認申請したが、受理されなかった。今上期に再申請する考え。

COVID-19では重症患者394人を試験薬群(700mgを第0日と7日に皮注)と偽薬群に2:1割付して28日死亡率を比較した。結果は20.5%で偽薬群の21.6%と大差なかった。65歳超のサブグループでは40.9%と44.8%、以下では9.9%と14.6%となっており、65歳超の構成比が各33%と23%と偏りがあったことが影響した可能性があるようだ。

また、解析対象384人のうち人工呼吸器・ECMO装着の危機的患者62人のサブグループ分析では、28日死亡率が27.9%対36.8%、平均入院期間33.0日対38.5日、28日生存退院率27.9%対10.5%だった。

サブグループ分析はアテにならず、intent-to-treatで重要な因子に群間の偏りがあったのならば、サブグループ分析では別の偏りがあっても不思議はない。追加試験はオープンレーベルとのことだが、もし偽薬対照試験であるならば、症例数が増加するだけでなく前向き試験で仮説検証することになるので、価値があるだろう。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Form 8-K(3/8付のIRミーティングで用いられたスライド、pdfファイル)


COVID-19:アクテムラの重症患者試験がフェール
(2021年3月11日発表)

ロシュは、Actemra(tocilizumab、和名アクテムラ)の第3相無作為化割付偽薬対照重症COVID-19肺炎試験、REMDACTA試験がフェールしたと発表した。Veklury(remdesivir)と併用することにより退院の早期化を図ったが、達成できなかった。データは医学誌などで発表する考え。

Actemraを中心とする抗IL-6受容体抗体のCOVID-19治療試験は結果が区々で、何を信じたらよいのか分からないのが現状だ。ポジティブなエビデンスの筆頭は英国でオックスフォード大学が主導したRECOVERY試験で、酸素飽和度低下またはCRP上昇を伴う患者の28日死亡率が偽薬比14%小さかった。4116人と組入れ数が圧倒的に大きいため説得力が高いが、二重盲検でないことや、他の薬の試験とファクトリアル・デザインで実施された特殊性が弱点だ。尚、率比0.86という水準はそれほどでもないが、100人に投与すると4人を死亡から救う計算になるので、軽視できない。

英国などで行われたREMAP-CAP試験も成功した。重度COVID-19肺炎でICUで呼吸または循環サポートを始めた患者803人の臓器無サポート日数(最大21日間追跡)や院内死亡率が対照群より良好だった。尚、この試験ではリジェネロン/サノフィの抗IL-6受容体抗体であるsarilumabも一部の患者で使われ、良い成績を挙げた。

一方、ロシュ主導試験は区々で、重症患者を組入れたCOVACTA試験は28日症状改善率も副次的評価項目の28日死亡率も偽薬群と大差なかった。また、酸素濃度が低下しているが人工呼吸器装着には至っていない患者を組入れたEMPACTA試験は、28日死亡・人工呼吸器装着率が12.2%と偽薬群の19.3%を下回り、ハザードレシオ0.56、p=0.0348となったが、28日死亡率は10.4%対8.6%と有意ではないが好ましくない数値だった。

リンク: ロシュのプレスリリース


FDA、抗PD-1/PD-L1抗体の加速承認取消の当否について諮問へ
(2021年3月12日発表)

FDAは、4月27日から29日の三日間、腫瘍学薬諮問委員会を招集して、加速承認後の市販後コミットメント試験がフェールした事例について現状を報告する。対象は3種類の抗PD-L1/PD-1抗体の4種類の適応症(下記)。各種報道によると、メーカー側が自発的な承認返上に同意しなかった事例について、委員会の意見を求める趣旨のようだ。もし諮問委員会が承認取消に同意した場合、公聴会を経て1年くらい後に断行されるのではないか。

【4月27日】
ロシュのTecentriq(atezolizumab):PD-L1陽性の切除不能局所進行性/転移性トリプル乳癌(nab-paclitaxelを併用)

【4月28日】
MSDのKeytruda(pembrolizumab)とロシュのTecentriq:局所進行性/転移性尿路上皮腫(cisplatinを含む化学療法に不適な場合)

【4月29日】
MSDのKeytruda:PD-L1陽性難治局所進行性/転移性胃・胃食道接合部腺腫(二次以上の治療歴を持つ場合)
MSDのKeytrudaとBMSのOpdivo(nivolumab):肝細胞腫(sorafenibによる治療歴を持つ場合)


米国の加速承認制度は、命に係わる難病を治療する新薬の開発・承認をスピードアップするために、本来求められる薬効(抗癌剤の場合、延命効果またはそれに準じるものや、QOLの改善など)に代えて、反応率やPFS(無進行生存期間)などの代理マーカーに基づいて承認する制度だ。加速承認を得たものは、市販後コミットメントとして、本来求められる薬効を持っていることを別の臨床試験などを通じて立証しなければならない。

非常に優れた制度で、EUは条件付き承認制度として、日本も迅速承認制度として、追随した。一方で不都合な真実も露呈しており、90年代後半には、加速承認の食い逃げを巡ってFDAの軟弱な姿勢を腫瘍学諮問委員会が糾弾したこともあった。承認された薬の偽薬対照試験を行うのは倫理的な問題もあり組入れが中々進まないため、何年経っても完了せず、結局、うやむやになってしまった事例が複数、発生したからだ。対策として、加速承認の時点で市販後コミットメント試験の患者組入れをかなり終えていることが求められるようになったが、今度は、フェールして薬効確認できない事例が増加した。

著名な事例がロシュのAvastin(bevacizumab)だ。08年に転移性乳癌にXelodaと併用することが承認されたが、市販後薬効確認試験が二本ともPFSは成功したものの全生存の解析がフェール、二度の諮問委員会や公聴会を経て、11年11月にFDAが承認を撤回した。尚、欧州や日本では今でも承認されており、判断の難しさを表している。

最近になって、抗PD-1/PD-L1抗体の自発的適応返上が相次いでいる。昨年12月、BMSがOpdivoの小細胞性肺癌三次治療における適応を返上すると発表した。市販後コミットメントを19年7月までに履行する予定だったが二次治療試験がフェール、一次治療後維持療法試験もフェールしたので止むを得ない。

アストラゼネカも今年2月、Imfinzi(durvalumab)を尿路上皮腫の二次治療に用いる適応を自主返上すると発表している。一次治療試験がフェールしたのでこれもやむを得ないだろう。

3月に入って、MSDもKeytrudaを転移性小細胞性肺癌の三次治療に用いる米国での承認を返上すると発表した。次項のように、ロシュもTecentriqの尿路上皮腫二次治療の適応返上を発表した。

残された議題を4月の諮問委員会が検討することになる。

米国でしか承認されていない適応症もあるが、欧州や日本も対岸の火事と懐手している時ではないだろう。制度を適切に運用するためにどのようなアクションが求められるのか、重要な先例になり得るからだ。

リンク: FDAのプレスリリース


ロシュも抗PD-L1抗体の尿路上皮腫二次治療を承認返上へ
(2021年3月8日発表)

ロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)は16年に米国で白金薬による治療歴を持つ局所進行性/転移性尿路上皮腫に初承認された。反応率と反応持続期間に基づく加速承認なので、市販後コミットメント試験であるGO292944試験(IMvigor211試験)で延命効果を確認する必要があったが、PD-L1陽性(IC2/3)患者のメジアン生存期間が11.1ヶ月と化学療法群の10.6ヶ月と大差なく、ハザードレシオ0.87、p=0.41とフェールしてまった。

Tecentriqは17年にcispaltin不適患者の一次治療にも加速承認され、市販後コミットメント試験であるIMvigor130試験がロンチされていた。このため、IMvigor211試験に代えてこの試験で延命効果を確認することになったが、執行猶予は束の間に終わり、この度、二次治療承認を自主的に返上することとなった。

IMvigor130試験は化学療法併用群はPFS(無進行生存期間、担当医評価)が化学療法群を上回り、データは未成熟なものの全生存も数値上は良好だった。しかし、加速承認されているモノセラピーは今一つで推移している。最終結果次第では、モノセラピーの承認も自主返上し、代わりに化学療法併用が承認される、というシナリオもありそうだ。

リンク: ロシュのプレスリリース


【新薬開発】


ノバルティス、抗IL-1抗体の肺がん治療試験がフェール
(2021年3月9日発表)

ノバルティスは、抗IL-1ベータ抗体canakinumabの第3相非小細胞性肺癌試験がフェールしたと発表した。進行/転移非小細胞性肺癌の二次/三次治療を受ける患者237人を組入れてdocetaxelに追加する延命効果を偽薬追加群と比較したが、有意な差がなかった。

canakinumabはIlaris名でクリオピリン関連周期性症候群や全身性若年性特発性関節炎などに承認されている。ノバルティスは炎症が関与する可能性のある様々な疾患に野心的な適応拡大試験を行ってきた。その一つであるCANTOS心筋梗塞再発予防試験の探索的解析で肺癌発症や肺癌死が偽薬群より少なかったことから、非小細胞性肺癌治療試験がロンチされた。

上記のほかに、一次治療レジメンとして白金ベース化学療法及びKeytruda(pembrolizumab)と併用する試験が進行中で、年内に結果が出る見込み。また、早期非小細胞性肺癌の切除後アジュバント試験も組入れ中。

リンク: ノバルティスのプレスリリース
リンク: RidkerらのCANTOS試験探索的研究論文(Lancet、要旨)


【承認申請】


イドルシア、オレキシン受容体アンタゴニストを承認申請
(2021年3月10日発表)

スイスのイドルシア(SIX:IDIA)は、daridorexantを成人の不眠症の治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。先般、EUでも承認申請済み。第3相試験二本で主観的・客観的評価項目の改善が偽薬比有意だった。但し、50mgを検討したのは一本だけ、25mgは二本ともテストしたが一部指標は有意水準に届かず、10mgは唯一の試験がトレンドに留まった。多くの解析を行うためにタイプIエラーを大きめに設定したことが影を落としているようだが、エビデンスが強固とは言い難い。

オレキシン受容体アンタゴニストの先輩としてはMSDのBelsomra(suvorexant、和名ベルソムラ)やエーザイのDayvigo(lemborexant、和名デエビゴ)がある。

日本では持田製薬と共同開発販売する。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


AVEO社のVEGFR拮抗剤、8年を経て遂に承認
(2021年3月10日発表)

FDAはAVEO Oncology(Nasdaq:AVEO)のFotivda(tivozanib)を再発/難治性の進行腎細胞腫に承認した。VEGFR阻害剤を含む二次以上の治療歴を持つ患者が適応になる。臨床試験ではメジアンPFS(無進行生存期間)が5.6ヶ月とsorafenib群の3.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.73、p=0.016だった。メジアン生存期間は16.4ヶ月とsorafenib群の19.2ヶ月より短かかったが、ハザードレシオは0.97(95%信頼区間0.75-1.24)で、最終解析で1を上回り承認申請撤回するという最悪のシナリオは実現しなかった。

AVEOはキリンからKRN951をライセンス、アステラス製薬と共に開発し12年にVEGFR阻害剤歴などを持たない患者に承認申請したが、PFSがsorafenibを上回ったとはいえp=0.04と十分に低いとは言えず、全生存期間のハザードレシオは1.245と有意ではないものの好ましくない数値だったためか、13年に審査完了通知を受領、14年にはアステラスが共同開発販売権を返還した。

二本目の第3相三次治療試験が成功し、承認申請したが、ここでもPFSのハザードレシオのpは0.02だった。副次的評価項目である全生存期間のハザードレシオはフラフラしており、最初の解析では1.06だったが、FDAの要請に基づき打切り例の追跡調査を行ったところ1.12に悪化、その後の解析では0.99に改善したがメジアン値は16.4ヶ月対19.6ヶ月と見劣りした。

AVEOは、最終解析で1を超過した場合、申請を撤回することをコミットして承認申請を断行、今回、遂に承認に漕ぎ着けた。

切除不能/転移腎細胞腫は抗PD-1/PD-L1抗体とVGFR阻害剤の併用が一次治療試験で良い成績を挙げており、Fotivdaの試験が行われた頃とは前治療が変わってきている。類薬は複数の適応を持つがFotivdaは一つだけだ。類薬のジェネリック化も始まっており、承認が8年遅れて失ったものは大きい。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: AVEOのプレスリリース


FDAがイエスカルタを濾胞性リンパ腫に適応拡大
(2021年3月5日発表)

FDAはギリアド・サイエンシズのYescarta(axicabtagene ciloleucel)を成人の再発難治濾胞性リンパ腫の3次/4次治療に用いることを加速承認した。辺縁帯リンパ腫も申請していたはずだが、承認されなかったようだ。

B細胞で発現するCD19に結合する抗体のフラグメントやT細胞に副刺激を与えるT細胞受容体の表面分子などを患者から採取したT細胞に導入した、CAR-T療法。17年に米国で再発難治大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として承認されている。

今回の加速承認の根拠となる試験(n=81)では、ORR(客観的反応率)が91%、寛解率は60%だった。8%の患者でG3以上のサイトカイン放出症候群が、21%でG3以上の神経学的毒性が、発生した。

イエスカルタは日本でも第一三共が今年1月、再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫に承認取得した。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ギリアドのプレスリリース





今週は以上です。

2021年3月6日

第989回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19:ワクチンは変異型にも有効か 
  • COVID-19:EMA、ロシアのワクチンのローリング審査を開始 
  • COVID-19:コルヒチンはCOVID-19入院患者を救命できない 
  • COVID-19:抗体医薬の入院患者試験がまた無益認定 
  • FDA、ALSコミュニティーの批判に回答 
  • イーライリリー、新薬が直接比較試験でノボの競合品に勝つ 
  • イーライリリー、JAK1/2阻害剤の第3相円形脱毛症試験が成功 
  • チャンピックスの活性成分をドライアイに承認申請 
  • MSD、慢性咳嗽治療薬を承認申請 
  • 経口パクリタキセルは審査完了に 
  • ロキサデュスタットの米国承認が更に遅延へ 
  • MSD、キイトルーダの小細胞性肺癌適応を返上へ 
  • ロシュ、アクテムラが全身性硬化症の間質性肺疾患に適応拡大 
  • ファイザー、ローブレナが二次治療限定解除 
  • ADHDのメチルフェニデート系配合剤が米国で承認 
  • FDA、ペプチド薬物複合体を承認 
  • FDA、モリブデン補因子欠乏症A型用薬を承認 
  • ジセレカは精巣安全性試験で懸念は浮上しなかったが... 


【今週の話題】


COVID-19:ワクチンは変異型にも有効か
(2021年3月1日発表)

米国のワクチン接種に関する委員会、ACIPの3月1日の会合で、CDC(疾病予防管理センター)のHeather Scobie(PhD, MPH)がSARS-CoV-2の変異型に対するワクチンの効果について、プレゼンテーションを行った。学術誌に刊行された論文や査読前原稿、プレスリリースなどをまとめたもので、拙稿で以前取り上げたものも多かったが、私にとって初耳だったのは二点。変異型に対する免疫誘導が遅い、あるいは一回接種では足りないことを示唆する研究結果と、アストラゼネカのワクチンの南ア型変異に関するデータだ。

前者はBioNTech/ファイザーのワクチンを接種した人の血清を用いて、変異型と同様な変異を導入した別のウイルスを中和する能力を調べた複数の小規模な研究結果を一つのグラフにまとめたもの。B.1.1.7系統(以下、英国型)やB.1.351系統(以下、南ア型)は第2週でも対照群(D614G変異を持つ在来型のウイルス)ほどは中和されなかった。英国型は第3週には対照群とそれほど変わらない水準まで改善したが南ア型は第2週から少し改善した程度だった。二回目の接種後の第4週には両型とも対照群並みに改善したが、一部の人はほとんど反応しなかった。

ワクチンを二回接種する代わりに一回ずつ、より多くの人に接種したほうが流行鎮静化に役立つ、という議論が欧米で活発化しているが、難点が二つある。一つは効果の持続期間がどの程度変わるのか分からないこと(ワクチンの効果に関するエビデンスは2-4ヶ月分しかない)、もう一つは変異型に対して十分な効果があるかどうか分からないことだ。上記研究は、南ア型(そしておそらくはブラジル型も)が流行したら一回接種ではあまり防げなくなるリスクがあることを示唆している。

試験管試験と大規模な感染予防試験をブリッジングできるほどの情報はCOVID-19に関しては未だ無いので、効果は臨床試験で検討するのが望ましい。氏がまとめたこれまでの臨床試験成績を見ると、リピッド・ナノパーティクル・ワクチンではBioNTech/ファイザーの承認後データを見ると、英国(殆どの感染者が英国型変異)では予防効果が86%、イスラエル(英国型が8割)では94%だった。一方、Novavax(Nasdaq:NVAX)は英国試験で英国型の感染を86%、それ以外の感染は96%、予防した。南ア(95%が南ア型の感染)では60%に留まり、南ア型に限定すると51%だった。

アデノウイルス・ベクターのワクチンでは、ジョンソン・エンド・ジョンソンの第3相試験(中重症感染だけをカウント)では米国では74%、ブラジル(69%がブラジルP.2型)では66%、南ア(95%が南ア型)では52%だった。アストラゼネカの試験成績は英国で英国型感染を75%、それ以外の感染を84%予防した。Madhiらの治験論文草稿によると、南ア(93%が南ア型)では軽中等症感染を20%しか防げず、南ア型だけに絞ると10%だけだった。

ジョンソン・エンド・ジョンソンの試験でも重症・危機的感染だけを見ると7割以上予防できているので、アストラゼネカのワクチンも南ア型による重症感染を防ぐ効果はもっと高いかもしれない。しかし、軽中等症感染を殆ど防げないとなると、他の人にうつるリスクもあまり削減できないだろうから、大流行を鎮静化するには非力かもしれない。

リンク: ScobieのACIPプレゼンテーション・スライド
リンク: Madhiらの治験論文草稿(medRxiv)


COVID-19:EMA、ロシアのワクチンのローリング審査を開始
(2021年3月4日発表)

EMAは、ガマレヤ疫学・微生物研究所が開発しロシアで接種が進められているCOVID-19ワクチン、Sputnik Vのローリング審査を開始した。前臨床などのデータの評価を前倒しすることによって承認申請後の審査期間を短縮する。尚、欧州ではドイツのR-Pharmaが承認申請を行う。

ソビエトが世界に先駆けて打ち上げた人工衛星の名前を引き継いだこのワクチンは、遺伝子組換え型アデノウイルス26型と同5型をベクターとする二種類のスパイク蛋白核酸ワクチンを前者はプライム、後者はブースターとして21日置いて接種する。アデノウイルスは自然感染を通じて抗体を獲得している人が少なくないので、特殊な亜型をベクターとして使い、二回目はそのベクターに抗体ができて接種の効果が低減するのを防ぐために別の亜型を使う狙いと推測される。

Lancet誌で発表された第3相論文によると、モスクワの18歳以上の21977人を組入れた試験で、ワクチン効率(初回接種後28日目からメジアン20日間の症候性感染をカウント)は91%、深刻有害事象の発現率は0.4%で偽薬群の0.3%と大差なかった。

リンク: EMAのプレスリリース


COVID-19:コルヒチンはCOVID-19入院患者を救命できない
(2021年3月5日発表)

オックスフォード大学の主導で英国などで実施されているRECOVERY試験は、COVID-19入院患者の治療薬候補を次々とテスト、死亡リスク抑制に有効な薬と期待できない薬の仕訳を進めている。これまでにdexamethasoneやActemra(tocilizumab)の有効性を明らかにする大きな成果を上げた。一方で、hydroxychloroquineやKaletra(lopinavir+ritonavir)、azithromycin、回復期血漿は十分な効果が見られず組入れ打ち切りとなった。

今回、痛風治療薬colchicineも無効認定された。独立データ監視委員会が定期会議で効果や安全性をチェックしたところ、被験者11162人の28日死亡率がcolchicine群は20%、通常医療だけの群は19%、リスク比は1.02で95%信頼区間0.94-1.11だった。同委員会の勧告を受け入れ、組入れ終了が決まった。

リンク: RECOVERY試験共同主任研究員の声明


COVID-19:抗体医薬の入院患者試験がまた無益認定
(2021年3月3日発表)

COVID-19治療薬候補のスクリーニングで大きな成果を上げた、オックスフォード大学と並ぶ組織が、米国のNIH(国立衛生研究所)だ。ACTT-1試験でVeklury(remdesivir)の便益を確立し、ACTT-2試験でVekluryにOlumiant(baricitinib、和名オルミエント)を追加すると退院が若干早まり死亡率が低下する可能性があることを示した。

NIHはACTIVシリーズの臨床試験もロンチ、ACTIV-1では抗TNFアルファ抗体など、ACTIV-2は抗SARS-CoV-2抗体などを外来患者を対象に、ACTIV-3は抗SARS-CoV-2抗体などを入院患者を対象に、ACTIV-4は抗血栓・抗血小板薬、ACTIV-5はインターロイキンやGM-CSFを標的とする抗体などを第2相試験として、テストしている。

失望的なニュースが多いのがACTIV-3試験で、今回、二種類の抗SARS-CoV-2抗体レジメンの組入れが打ち切りとなった。一つはサンフランシスコのVir Biotechnology(Nasdaq:VIR)がグラクソ・スミスクラインと共同開発しているVIR-7831(GSK4182136)。組入れ拡大の当否を判定するために、投与後5日間の病状改善の中間解析を行ったところ、基準を上回る数値が出たものの、ベースライン時点の病状の違いを調整した感受性分析が思わしくなかったため、データ監視委員会が無益認定した。

もう一つは中国系のBrii Biosciencesが創製した、異なったエピトープに結合する二種類の抗体、BRII-196とBRII-198のカクテル。こちらは組入れ拡大判定基準をクリアできなかった。

これらの抗体医薬は英国変異や南ア変異にも有効と言われていたため、期待されたが、少なくとも入院患者に関しては失望的な結果になってしまった。

イーライリリーのLY-CoV555(bamlanivimab)は米国で軽中等症外来患者向けにEUA(非常時使用認可)されているが、入院治療に関してはACTIV-3試験で十分な肺機能改善が見られず、無益認定された。抗SARS-CoV-2抗体で生き残っている抗SARS-CoV-2抗体は、ACTIV-3試験のAZD7442(アストラゼネカがVanderbilt University Medical Centerからライセンスした二種類の抗体のカクテル)とRECOVERY試験のREGN-COV2(リジェネロンが創製した二種類の抗体のカクテル)くらいになってしまった。

REGN-COV2も入院不要な軽中等症患者にEUAを得ている。なぜ、入院患者には十分な効果を発揮できないのだろうか?炎症や免疫反応が亢進し肺などに合併症が出た後で抗ウイルス治療をしても手遅れ、あるいはピント外れなのだろうか?それとも、LY-CoV555の入院試験論文が可能性の一つとして言及している、抗体依存性感染増強(ADE:ウイルスが抗体と一緒に細胞内に取り込まれてしまう現象)なのか?

もしADEが原因だとしたら、ワクチンで誘導される抗体によるADEが発生する可能性もあるのではないか?特に、HIV感染者や免疫用製剤を常用している患者の場合、あるいは、南ア変異のようなワクチンの効果が低下する可能性のある変異型に感染した場合、リスクが高まるのではないか?

ワクチンよりも抗体医薬のほうが症例分析しやすいだろうから、フェールした原因を是非とも探求してほしいものだ。

リンク: NIHのプレスリリース(3/4付)
リンク: Vir社とGSKのプレスリリース
リンク: Brii社のプレスリリース


FDA、ALSコミュニティーの批判に回答
(2021年3月2日発表)

BrainStorm Cell Therapeutics(Nasdaq:BCLI)はNurOwnをALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認申請する考えだったが、FDAのフィードバックは、止めはしないが承認に必要なエビデンスは整っていない、という否定的なものだった。同社が2月22日のプレスリリースで公表したところ、ALSの医師、患者、患者支援団体などが次々に失望や不満を表明したらしく、FDAは、極めて異例ながら、状況を説明するプレスリリースを出した。

NurOwnは再生医療の一種で、患者から採取した間葉系幹細胞(MSC)を神経栄養因子(NTF)分泌能を増強しながら培養したもの。急速進行性患者189人を組入れた第3相試験で8週毎に3回、髄腔内投与して、その後28週間のALSFRS-Rスコアの変化を偽薬群と比較したところ、奏効率(月平均1.25ポイント以上の改善)が34.7%と偽薬群の27.7%を上回ったが、解析計画の前提より差が小さくp=0.453と有意ではなかった。低下幅も5.52対5.88で大差なかった。

しかし、事前に設定されたサブグループ分析で早期患者に良い数値が出たことに同社は希望を見つけた模様だ。

守秘義務があるのでFDAの説明は簡素なものにならざるを得ないが、NurOwn群の奏効率が32.6%と会社側発表より低いことが注目される。死亡数が偽薬群をある程度上回ったというのも初耳だ。

論点には違和感はないが、このようなプレスリリースを出して患者と向き合う姿勢を示した点に、新しいFDAを感じる。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: BrainStorm社のプレスリリース(2/22付)


【新薬開発】


イーライリリー、新薬が直接比較試験でノボの競合品に勝つ
(2021年3月4日発表)

イーライリリーはGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)・GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体アゴニストのLY3298176(tirzepatide)を二型糖尿病治療薬として開発、来年にも承認申請する考えだ。長期投与が必要な慢性疾患で新旧の競合品も多いことから様々な第3相試験が進行中だが、今回、SURPASS-2試験の成功が発表された。

第一選択薬であるmetforminを服用しても血糖値を十分に管理できない二型糖尿病の成人を、5mg、10mg、または15mgを週一回皮注する群に割付けて、HbA1c引き下げ効果をノボ ノルディスクのGLP-1受容体アゴニスト、Ozempic(semaglutide)1mgを週一回皮注する群と比較したオープンレーベル試験で、主評価項目(10mg及び15mgのOzempicに対する非劣性解析)が成功した。

副次的項目の5mg対Ozempicの非劣性解析も成功した。更に、三用量の優越性解析も成功した。具体的には、ベースライン(8.28%)比で各群2.09%、2.37%、2.46%、1.86%低下した。

GLP-1作用剤は血糖治療薬としては珍しく体重が減るのが特徴。本試験では、ベースライン(93.7kg)比で各群8.5%、11.0%、13.1%、6.7%低下し、三両量ともOzempicを有意に上回った。

血糖治療薬の典型的な副作用である低血糖(54mg/dL未満に低下)の発現率は各群0.6%、0.2%、1.7%、0.4%、有害事象による治験離脱率は5.1%、7.7%、7.9%、3.8%だった。当然と言えば当然だが、忍容性は若干見劣りする。

ノボはOzempicの2.0mgを欧米で承認申請した。夫々の臨床試験のデータを見比べると、LY3298176の15mgと大差なさそうなので、結局、どちらが優れているとも言えない状況だろう。何れにせよ、GLP-1作用剤は悪心嘔吐の発現率が比較的高く、高用量にステップアップできない患者が少なくないので、最高用量は客寄せパンダのようなものかもしれない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


イーライリリー、JAK1/2阻害剤の第3相円形脱毛症試験が成功
(2021年3月3日発表)

イーライリリーは、Olumiant(baricitinib、和名オルミエント)の第3相重度円形脱毛症試験の一つが成功したと発表した。データは未発表。もう一本も6月までに判明する見込みなので、二本成功なら適応拡大申請に向かうのではないか。

Olumiantはインターロイキン受容体などの細胞内シグナル伝達に係るJAK1/2を阻害する経口剤。インサイト(Nasdaq:INCY)から共同開発販売権を取得した。中重度リウマチ性関節炎や日欧では中重度アトピー性皮膚炎にも承認されている。また、COVID-19による肺炎で酸素投与や人工呼吸器装着の患者に米国でEUA(非常時使用認可)された。

今回のBRAVE-AA2試験は、脱毛歴8年以内、毛髪50%以上喪失の患者546人を日本を含む9ヶ国の施設で組入れて、2mgまたは4mgを一日一回投与する効果を偽薬と比較した。主評価項目は36週後の奏効率(Alopecia Areata Investigator Global Assessmentが0または1、かつ、ベースライン比で2ポイント以上改善した患者の比率)。

JAK阻害剤は血栓塞栓性疾患や感染症、腫瘍などのリスクが指摘されているが、この試験では主要有害心血管イベントや血栓塞栓イベント、死亡などは発生しなかったとのこと。

FDAはJAK阻害剤の安全性について日欧の承認審査機関より強い関心を持っている。Olumiantは日欧では4mgまで承認されているが、米国では2mgだけだ。アトピー性皮膚炎の適応拡大は米国だけ申請が遅く未だ審査中だが、安全性問題が背景にあるのかもしれない。リウマチほど日常生活に差し障る病気ではなく激しい痛みもないという点では似ているので、取り敢えず、米国でアトピーに承認されるかどうかが注目だ。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


【承認申請】


チャンピックスの活性成分をドライアイに承認申請
(2021年3月2日発表)

Oyster Point Pharma(Nasdaq:OYST)は、OC-01(varenicline)をドライアイの治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査期限は10月17日。ドライアイ治療薬としてはファースト・イン・クラスだがFDAは現時点では諮問委員会の招集を考えていない。

アルファ4ベータ2選択的ニコチン受容体部分作動剤で、禁煙補助薬Chantix(和名チャンピックス)として商業化したファイザーから、眼科用途や点鼻用薬に関する特許の非独占的実施権を19年に取得した。点眼ではなく点鼻スプレーで、鼻腔の三叉神経のニコチン・アセチルコリン受容体を刺激することによって、涙を制御する副交感神経を活性化する狙い。

二種類の濃度を一日二回、点鼻した第3相試験では、奏効率(シルマー試験で10mm以上改善)が各44%と47%となり、対照群の26%を有意に上回った。但し、主観的症状評価はトレンドに留まった。

リンク: 同社のプレスリリース


MSD、慢性咳嗽治療薬を承認申請
(2021年3月1日発表)

MSDは、MK-7264(gefapixant)を難治性又は原因不明の慢性咳嗽の治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は12月21日。FDAは諮問委員会を招集する考え。

選択的P2X3受容体アンタゴニストで、気道粘膜の炎症などにより放出されるATPが迷走神経のC線維上に多く分布するP2X3受容体に結合し過剰感作して咳を誘発させるのを妨げる。第3相試験二本では45mgを一日二回、経口投与した群の咳頻度がベースライン値の18回/時から7回/時に減少、偽薬比14~19%の相対リスク削減効果が見られた。

味覚関連有害事象が用量依存的に増加、45mg群は58~69%の患者が経験したが、大半は軽中度だった。有害事象による治験離脱率は15~20%で偽薬群の3~5%を上回った。味覚障害はこの薬の泣き所で、発生率が低い15mg群が注目されたが、忍容性だけでなく効果も偽薬と大差なかった。

ロシュのスピンアウトであるAggerent Pharmaceuticalsを16年に買収して入手したコンパウンド。日本でも今月、承認申請された。塩野義製薬なども類薬を開発しているので、諮問委員会を注目するだろう。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認審査・委員会】


経口パクリタキセルは審査完了に
(2021年3月1日発表)

Athenex(Nasdaq:ATNX)はOraxol(paclitaxel、encequidar)を転移乳癌用薬として承認申請し、優先審査を受けたが、審査完了通知を受領した。好中球減少症のリスクや薬効評価の不透明性がネックになったようだ。もう一本臨床試験を行うことになるのではないか。

OraxolはP糖蛋白阻害剤HM30181A(encequidar)をpaclitaxelと同時服用することにより点滴用薬を経口投与できるようにしたもの。可溶化paclitaxelの30mgカプセルを205mg/m2相当とencequidar 15mg錠を3日服用して4日休む。paclitaxel(175mg/m2)を2週毎に3時間点滴静注する群比較した第3相では、cORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)やPFS(無進行生存期間)、全生存期間が有意に上回り、G3神経症は少なかった。一方、G3/4の好中球減少症は30%対28%で若干増加、G3/4の下痢や悪心嘔吐も増加した。

好中球減少症が若干増えるだけならと思っていたが、重度重篤例が多かったのかもしれない。FDAは用量の再検討や高リスク患者の除外などのリスク回避策の作成を求めた。反応率についても、査読に進むプロセスでバイアスが生じた可能性を指摘したとのことなので、担当医評価と食い違いがあったのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース


ロキサデュスタットの米国承認が更に遅延へ
(2021年3月1日発表)

FibroGen(Nasdaq:FGEN)とアストラゼネカはFG-4592(roxadustat、和名エベレンゾ)を透析期及び非透析依存の慢性腎臓疾患患者の貧血治療薬として米国で承認申請している。審査期限は一度延期されて3月20日となったが、FDAが今になって心臓腎臓薬諮問委員会を招集する意向を通知してきた。日程はこれから決定するとのことなので、期限に間に合わない可能性が高く、それどころか、スムーズに承認されないリスクを意識せざるを得ないだろう。

roxadustatはHIF2-PH阻害剤。経口投与できるので特に保存期慢性腎疾患のヘモグロビン矯正には使いやすい。ライセンシーのアストラゼネカが18年に中国で、同じくアステラス製薬が19年に日本で、承認取得した。

米国はエポエチンなどの積極利用による心血管リスクに敏感で、新薬についても赤血球生成刺激薬(ESA)よりリスクが高まらないことを確認するよう求めている。日本ではHIF2-PH阻害剤が既に三剤承認されているが、roxadustatは国内の透析期と保存期の試験でダルベポエチンアルファ群より重篤な血栓塞栓症が多かった。海外でも保存期の試験で心血管疾患や痙攣発作が若干多かった。このため、日本のリスク管理計画書では、重要な特定されたリスクとして、脳梗塞や心筋梗塞などの血栓塞栓症や高血圧症、痙攣発作、腫瘍悪化リスクなどを指摘している。多くはクラス・イフェクトだがroxadustatは特に目立つように感じられる。

これまでの流れから推測すると、FDAが懸念事項を更に検討するために必要なデータをメーカーから取得し、申請内容の重大な変更として審査期限延長を決定。精査の上でメーカーと今後の方策を協議したが合意に達しなかったため、諮問委員会の意見を聞くことになったのではないか。

リンク: 両社のプレスリリース


MSD、キイトルーダの小細胞性肺癌適応を返上へ
(2021年3月1日発表)

MSDはKeytruda(pembrolizumab)を転移性小細胞性肺癌の三次治療に用いる米国での承認を返上すると発表した。FDAが、再び、加速承認の食い逃げに厳しくなったことが背景のようだ。

米国は難病における充足されないニーズに応え得る新薬に関して、比較的小規模・短期間の試験でも結果が出る代理マーカーに基づく薬効評価を受け入れる、加速承認制度を持っている。承認後に本来の薬効評価方法(抗癌剤の場合は延命効果やQOL改善効果)を確認する必要があるが、試験が成功するとは限らず、また、既に承認され入手可能な薬の偽薬対照試験を行うのは倫理に反する可能性があるため、波乱含みだ。

Keytrudaの場合、ORR(客観的反応率、盲検独立委員会評価)と反応持続期間のデータに基づいて19年6月に加速承認された。MSDは市販後コミットメントとして進展期小細胞性肺癌の実薬対照試験で延命効果を確認し21年3月までに提出することをコミットしたが、KeyNote-604試験(進展期小細胞性肺癌一次治療、化学療法併用試験)でPFS(無進行生存期間)は中間解析で達成したものの、全生存期間は最終解析でも未達だった。

尤も、ハザードレシオは0.80、95%信頼区間は0.64-0.98だった。メジアン生存期間は10.8ヶ月で化学療法だけの群の9.7ヶ月と大差ないものの、全然ダメとは思えない。この試験は(この試験も)評価項目が複数設定され中間解析も行うため個々の解析に付与されたアルファが小さく、全生存期間のp値は0.0164と決して悪くはなかったのだが、最終解析のアルファは0.0128しかなかったため、フェールしたのである。

この内容なら再試験の猶予を獲得できるのではないかと思ったが、何か事情があったのだろう、FDAと協議の上、自主返上を決めた。

ここ数ヶ月に抗癌剤の適応返上が相次いでいる。昨年12月、BMSがOpdivo(nivolumab)の小細胞性肺癌三次治療における適応を返上すると発表した。市販後コミットメントを19年7月までに履行する予定だったが二次治療試験がフェール、一次治療後維持療法試験もフェールしたので止むを得ない。Opdivoは肝細胞腫二次治療の加速承認も、一次治療のCheckMate-459試験がフェールしたため、at riskと言えるだろう。

アストラゼネカも今年2月、Imfinzi(durvalumab)を尿路上皮腫の二次治療に用いる適応を自主返上すると発表している。一次治療試験がフェールしたのでこれもやむを得ないだろう。

こうして見ると抗PD-1/PD-L1抗体ばかりだが、開発競争が激しいためスピードアップのため主評価項目を多数設定することが少なくなく、臨床試験や適応症の絶対数も多いので、取りこぼしが多くても不思議ではないだろう。

リンク: MSDのプレスリリース


【承認】


ロシュ、アクテムラが全身性硬化症の間質性肺疾患に適応拡大
(2021年3月5日発表)

ロシュは、抗IL-6受容体抗体Actemra(tocilizumab、和名アクテムラ)をSSc-ILD(全身性硬化症関連間質性肺疾患)に用いる適応拡大が米国で承認されたと発表した。全身性硬化症の皮膚病変の治療を試みた臨床試験はフェールしたが、太宗を占めた間質性肺疾患合併患者で副次的評価項目である肺機能の悪化を遅らせる効果が見られた。この効能だと競合薬があるので、効果に優劣があるか、気になるところだ。

リンク: 同社のプレスリリース


ファイザー、ローブレナが二次治療限定解除
(2021年3月3日発表)

FDAはファイザーのLorbrena(lorlatinib、和名ローブレナ)をALK陽性転移性非小細胞性肺癌に用いる適応拡大を承認した。18年にALKチロシンキナーゼ阻害剤による治療歴を持つ患者に用いる薬として加速承認したが、市販後コミットメントとして実施された一次治療実薬対照試験が成功したため、二次治療を本承認に切り替えると共に二次治療限定を解除した。

第2世代、第3世代のALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害剤で、ファースト・イン・クラスである同社のXalkori(crizotinib)より効果が高く、脳転移を治療する効果も持っている。直接比較試験でXalkoriを負かした新薬は複数あるが、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザード比は0.28とこの薬が一番良い。一方、G3/4の認知影響、気分変動が見られる。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース


ADHDのメチルフェニデート系配合剤が米国で承認
(2021年3月2日発表)

既存薬のプロドラッグを改良薬として、あるいは新用途で開発するビジネスモデルの米国の製薬会社、KemPharm(Nasdaq:KMPH)は、FDAがAzstarys(serdexmethylphenidate、dexmethylphenidate)を6歳以上の青少年と成人のADHD治療薬として承認したと発表した。活性成分のうち前者はdexmethylphenidateのプロドラッグで、30分で作用を発揮、13時間持続する。即放性のdexmethylphenidateと配合することで投与直後の血中濃度のスパイクを抑制しながら、一日一回、経口投与を実現した。

米国では事業投資を目的に資金調達・上場する、投資信託や企業買収ファンドのような『特定目的買収会社』が雨後の筍化している。若干違うものの、AzstarysはKemPharmが戦略的事業・資本提携を結んでいるGurnet Point Capitalの出資先の一つであるCoriumが今年下期に発売する予定。

リンク: 同社のプレスリリース


FDA、ペプチド薬物複合体を承認
(2021年2月26日発表)

FDAはOncopeptides AB(Nasdaq Stockholm:ONCO)のPepaxto(melphalan flufenamide)を多発骨髄腫の5次治療薬として加速承認した。3種類の代表的なクラスの薬全てに抵抗性を持つ癌に、dexamethasone併用で、月一回、30分点滴静注する。臨床試験ではORR(客観的反応率)が23.7%、メジアン反応持続期間は4.2ヶ月だった。

ペプチドと結合して親油性を向上するドラッグ・デリバリー技術の応用品。melphalanは造血幹細胞移植を施行する前のコンディショニングも代表的な用途だが、FDAは、この製剤に関してはエビデンスが無いので臨床試験以外で使うことは推奨できないと注意した。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Oncopeptidesのプレスリリース(PR Newswire、3/1付)


FDA、モリブデン補因子欠乏症A型用薬を承認
(2021年2月28日発表)

FDAはBridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)とその子会社であるOrigin Biosciencesが開発・承認申請したNulibry(fosdenopterin)をモリブデン補因子欠乏症A型(A型MoCD)の治療薬として承認した。

この疾患は常染色体劣性遺伝疾患で、NOCS1(モリブデン補因子合成1)遺伝子の変異により亜硫酸オキシダーゼの活性が低下、亜硫酸やS-sulfocysteineが蓄積する。患者数は世界で150人未満の超希少疾患。出生後まもなく顕在化し、メジアン生存期間は4年とされる。

NulibryはAlexion Pharmaceuticalsからライセンスした合成cPMP(環状ピラノプテリン一リン酸)。体内で代謝されてモリブデン補因子に転換されるので、補因子補充療法と呼ばれている。

遺伝子組換え型cPMPも含む三本の自然歴対照試験で、死亡のハザードレシオが遺伝子型などがマッチする過去症例と比べて0.18、95%信頼区間0.04-0.72だった。被験者13人の3年生存率は84%、自然歴18人は55%だった。有害事象はカテーテル関連や発熱、ウイルス感染症や肺炎、中耳炎、嘔吐など。動物試験で光毒性が見られたのでサンスクリーンなどで防御する。

希少小児疾患優先審査バウチャが交付される。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Bridgebioのプレスリリース


【医薬品の安全性】


ジセレカは精巣安全性試験で懸念は浮上しなかったが...
(2021年3月4日発表)

ベルギーのガラパゴス社((Euronext/Nasdaq:GLPG)は、抗リウマチ薬として日欧で承認されているJAK1阻害剤、Jyseleca(filgotinib、和名ジセレカ)の精巣安全性試験の中間解析概要を公表した。一本は関節リウマチなどの、もう一本は日欧で適応拡大申請中の潰瘍性大腸炎の患者を合計248人組入れて、偽薬または200mgを一日一回、13週に亘って経口投与し、精子濃度半減の発生率を比較したもの。半減した患者は薬の投与を止めて、可逆性を検証する。

今回の中間解析は13週時点のもので、試験薬群の半減発生率は6.7%、偽薬群は8.3%だった。この試験は有意性を検出するパワーを持っていない由。詳細は、可逆性を検討するステージが終了した後で発表する予定。

Jyselecaは毒性試験でオスの生殖機能毒性が示唆された。ラットではヒトに200mg/日を投与した時のAUCの7.3倍に相当する量でも精子形成障害・受胎能低下が見られ、イヌは5.1倍相当量で精子形成障害が発生した。このため、FDAは第2相試験では用量を100mgに抑えるよう要求した。第3相では200mgを許容したが、いざ承認審査の段階になって、複数の臨床試験の実施を求めて審査完了通知を出した。共同開発販売パートナーであるギリアド・サイエンシズは100mgでは競争力がないと判断、米国での関節リウマチの承認取得を断念した。日本の販売権は維持するが、欧州は一部を除いてライセンスを返上した。

精巣安全性試験の結果を待たずにギリアドが戦線縮小を決めたことを考えると、今回の中間解析成功を素直に喜ぶのは難しいだろう。私には知識がないが、精子濃度半減というのは珍しくないことなのだろうか?もし一時的な変動があるのだとしたら、この試験では一定期間後に再検査して持続的な症例だけを抽出するプロセスを取ったのだろうか?それとも、可逆性検討フェーズの結果と照らし合わせることで確認する考えなのか?もしそうだとしたら、偽薬群は8割が回復した(中間解析での低下は一時的だった)が試験薬群は2割に留まった、というような結果になることも考えられないでもないので、結局、中間解析結果だけでは何とも言えないのではないか?

リウマチ性関節炎は日常生活に影響したリ痛みを伴ったりするため、MTXや、他剤不応不耐の患者にはカルシニューリン阻害剤など、副作用を警戒すべき薬も使われている。JAK阻害剤もその一つで、血栓塞栓性疾患や感染症、腫瘍増悪などのリスクが見られるが、承認されている。それでも、類薬が多数ある中でプラスアルファのリスクを持つ製品を敢えて承認する必要があるのか、難しい問題だ。

リンク: ガラパゴスのプレスリリース(GlobeNewswire)





今週は以上です。