2026年9月5日

第1275回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • トランプ大統領、更に9社と薬価抑制ディール 
  • 英国もタブネオスの承認取消を決定 
  • アッヴィの抗BCMA・CD3二重特異性抗体も第3相が成功 
  • ノバルティス、レミブルチニブの多発硬化症試験が成功 
  • ノバルティス、APO(a)アンチセンス薬のアウトカム試験がフェール 
  • Ultragenyx、アンジェルマン症候群用薬の第3相がフェール 
  • milvexianのACS試験成績が発表 
  • Wainuaの敗因はスタビライザー併用か 
  • ハンチントン病の遺伝子療法を承認申請 
  • アストラゼネカのエトカマが米国でも承認 
  • アレキサンダー病のアンチセンス薬が承認 
  • インターフェロン製剤が米国でも本態性血小板血症に適応拡大 
  • FDAが静注用鉄の低リン血症リスクを枠付き警告に、EMAも検討開始 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


トランプ大統領、更に9社と薬価抑制ディール
(2026年8月31日発表)

トランプ米大統領は、処方薬の価格を他の先進国並みに引き下げる最恵国価格ディールなどについて、製薬会社9社と合意したと発表した。昨年も同様なディールを17社に要求し実現している。米国の医薬品価格は購入者により区々なのでどの程度割安になるのかは明らかではない。ディールの内容は企業毎に異なる模様だが、米国内の工場・研究所投資や戦略的備蓄に無償供与なども盛り込まれているようだ。見返りとして、製薬会社は将来導入が見込まれる追加課税から免除される。

昨年の17社はアッヴィ、アムジェン、アストラゼネカ、ベーリンガー・インゲルハイム、ブリストル マイヤーズ スクイブ、イーライリリー、EMDセラノ、ジェネンテック、ギリアド・サイエンシズ、GSK、ジョンソン エンド ジョンソン、メルク(北米外ではMSD)、ノバルティス、ノボ ノルディスク、ファイザー、Regeneron Pharmaceuticals、そしてサノフィ。今回の7社はアルコン、アステラス製薬、協和キリン、サンファーマ、CSL、Teva Pharmaceuticals、USB、ビーワン・メディシンズ、BridgeBio Pharma。先行17社と異なり、ホワイトハウスから事前の発表がなかったため、サプライズとなった。追加課税の実現性ははっきりしないが、もし導入されるなら業界全体に影響するので、おそらく、他にも通知を受け検討している会社があるだろう。

リンク: ホワイトハウスのプレス・リリース


英国もタブネオスの承認取消を決定
(2026年9月1日発表)

英国のMHRA(医薬品・医療製品規制庁)は、CSL Vifor社のMPA(顕微鏡的多発血管炎)やGPA(多発血管炎性肉芽腫症)の治療薬、Avacopan Vifor(旧称Tavneos)の承認を取消すことを決定した。9月1日を以て新患向けを停止、既に治療を受けている患者は承認取消となる27年3月1日までに他の治療法に移行する。EUや米国でも承認取消に向けた手続きが進行中。オーストラリアも8月に再評価を開始した。

この選択的補体C5a受容体阻害剤はChemoCentryxが開発、21年9月にライセンシーのキッセイ薬品が日本で、10月にChemoCentryxが米国で、翌年1月と5月には欧州のライセンシーであるVifor Fresenius Medical Care Renal PharmaがEUと英国で、承認を取得した。その後、ChemoCentryxはアムジェンに買収され、ViforグループはCSLの子会社となっている。

承認のエビデンスとなった第3相試験では、持続的寛解率が経験的薬物療法群比で非劣性であることが示された。しかし、ChemoCentryxの株主が同社を提訴した代表訴訟で、当初の解析はフェールしていたことが曝露された(p=0.1025)。フェール症例の担当医評価を再検討した結果、試験薬群166人中5人の判定が持続的寛解達成に変更され、p=0.013、治験成功に変貌したのだ。このようなことは前例が無いではないが、問題は、この経緯を規制当局に報告していなかったこと。この薬には薬物誘導性肝障害のリスクがあるので、それを上回る便益が求められるが、薬効が確立したとは言えなくなった。尤も、アムジェンがDuke大学に依頼した事後的盲検査読でも似たような結果になった模様であり、薬効に対する疑いというよりは、不適切な承認申請を許容すると悪い前例になりかねないことを懸念したものと推察される。肝障害例の殆どを占める日本における対応とは対照的だ。

リンク: プレス・リリース

【新薬開発】


アッヴィの抗BCMA・CD3二重特異性抗体も第3相が成功
(2026年9月3日発表)

アッヴィはAbbVie-383(etentamig)が第3相再発/難治多発骨髄腫試験の中間解析で二つの主評価項目を達成したと発表した。当局と次のステップを相談する考え。

21年にTeneobioから関連会社買収という形で取得した、BCMAとCD3に結合する二重特異性抗体。類薬は22~24年に米欧日でジョンソン エンド ジョンソンのTecvayli(teclistamab-cqyv)が、23~24年にはファイザーのElrexfio(elranatamab-bcmm)も、承認されているが、同社はCD3に対する結合性を抑制してサイトカイン放出症候群(CRS)や感染症のリスクを抑制し、BCMAは2ヶ所に結合させてアビディティー(合計結合性)を高める工夫をしている。

今回の日本も参加したCERVINO試験は、代表的な3種類の薬品(プロテアソム阻害剤、免疫調停剤、抗CD38抗体)による2次以上(米国は1次以上)の治療歴を持つ患者を組入れて、4週毎に点滴静注する便益を医師が選んだ標準療法(carfilzomib、elotuzumab及びpomalidomide、またはselinexor及びbortezomibを、dexamethasoneと併用)と比較した。中間解析対象は393人(メジアンで3次治療歴)。主評価項目のうちORR(客観的反応率、盲検独立評価)は74.0%対45.7%。PFS(無進行生存期間、盲検独立評価)のハザード・レシオは0.40で事前に特定されたサブグループの分析も整合的な結果になった。1年生存率は87.9%対72.0%、ハザード・レシオ0.48、名目p=0.0012と良さそうな結果だが、未だ成功認定の閾値はクリアしていない。

1回漸増だけだった患者におけるG3以上のCRSやG2以上のICANS(免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群)は見られなかった。尚、この試験は初回だけ低量を投与する用法が採用されたが、書きぶりから見ると、条件に適合したら2回目からフル投与するプロトコルだったのかもしれない。

治療時発現有害事象の発生率は各群3.6%と9.6%だった。治験の詳細は今月23日からスコットランドで開催されるIMS(国際骨髄腫学会)で発表される予定。

リンク: プレス・リリース


ノバルティス、レミブルチニブの多発硬化症試験が成功
(2026年9月1日発表)

ノバルティスはremibrutinibが再発性多発硬化症の第3相試験二本で主目的等を達成したと発表した。10月のMSToronto2026(欧米の多発硬化症学会が3年毎に共催する学会)でデータを発表する。承認申請する考え。

共有結合性BTK阻害剤。25mgを一日2回、経口投与する用法で25~26年に米欧日で抗ヒスタミンに応答不十分な慢性特発性蕁麻疹用薬Rhapsidoとして承認された。慢性誘発性蕁麻疹の試験も成功し米国で適応拡大申請中。今回のREMODEL-1/-2試験(日本は後者に参加)は10mg(投与頻度は不明)の再発率年率をサノフィのAubagio(teriflunomide)と盲検下で比較した(偽カプセル剤と偽錠剤を使用)。teriflunomideは咬ませ犬化しているため他の新薬の試験データと間接的に比較して競争力を判断する必要がある。

リンク: プレス・リリース


ノバルティス、APO(a)アンチセンス薬のアウトカム試験がフェール
(2026年9月4日発表)

ノバルティスは、TQJ230(pelacarsen)の第3相心血管アウトカム試験がフェールしたと発表した。APO(a)標的薬の臨床的便益を検討する画期的な試験だが、残念な結果になった。アムジェンもAPO(a)標的siRNA薬の第3相を実施中だが、結果判明見込み時期は当初の26年から28年にアップデートされている。

第2相試験後にIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスした、リポ蛋白(a)の構成要素であるAPO(a)の発現を阻害するアンチセンス・オリゴヌクレオタイド。80mgを月一回、皮下注する。様々な第3相が進行中だが、Lp(a)濃度抑制作用を検討するものが多く、心血管アウトカムを検討しているのは今回の、日本も参加したLp(a)HORIZON試験だけ。Lp(a)が70mg/dL以上で、心筋梗塞や虚血性脳卒中から3ヶ月以上経った、あるいは症候性末梢動脈疾患の、8323人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして、主要有害心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、または入院を必要とする緊急冠再建術)のリスクを比較した(time-to-event分析)。主評価項目は全集団と、Lp(a)≧90mgサブグループの二種類。当初は25年の結果判明が見込まれていたがイベント数が予想を下回って推移したため1年強、遅れた。

アムジェンがArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)からライセンスして開発しているAMG 890(olpasiran)は22年に日本も参加する7000人規模のOCEAN(a)心血管アウトカム試験に進んだ。当初は26年に結果判明の見込みだったが28年にアップデートされた。25年には米豪加の施設でアテローム硬化性心血管疾患のリスクを持つ1万人規模の一次予防試験も始まった。

リポ蛋白(a)は、疫学研究で心血管リスクとの関連性が指摘されているLp(a)の構成要素。上記2剤は第2相試験でLp(a)濃度を用量依存的に低下させたが、臨床的転帰を改善する作用はまだ確立していない。ノバルティスは治験の組入れ基準にmg/dLベースのレンジを示しているが、アムジェンはnmol/Lベース。70mg/dLは175nmol/Lに相当するようだが、異なった文献もあり、そもそも、検査アッセイにより数値にムラがあるようでもある。ノバルティスの試験は主評価項目で2種類の閾値を採用しており、アムジェンの試験は組入れ基準が200nmol/L以上と、おそらくノバルティスの試験より高い下限を採用している。これらは、閾値がまだ手探り状態であることを示唆している。

リンク: プレス・リリース


Ultragenyx、アンジェルマン症候群用薬の第3相がフェール
(2026年9月2日発表)

Ultragenyx(Nasdaq:RARE)はGTX-102(apazunersen)の第3相アンジェルマン症候群試験がフェールしたことを公表した。主評価項目も、主要副次的評価項目やその個々の構成要素でも、効果が見られなかった。株価は急落した。

アンジェルマン症候群は神経発達障害を示す、1~2万人に一人の希少疾患。殆どの患者で経験依存的シナプス可塑性に必要な蛋白、UBE3Aの特発的欠落/機能喪失変異が見られる。父親由来のUBE3Aは元々、UBE3A-AS(UBE3Aアンチセンス・トランスクリプト)により発現を抑制されているが、GTX-102はこのUBE3A-ASの発現を妨げるアンチセンス・オリゴヌクレオタイド。寝ている父を起こして働かせるアイディアだ。腰椎穿刺により髄腔内投与する。患者支援団体が設立しテキサス州立大学群からライセンスを取得した、GeneTxを22年に買収して入手したもの。

日本も参加した第3相Aspire試験は、UBE3A欠乏を伴う患者129人を組入れて、第338日のBayley-4 cognitive raw score(発達評価)をシャム群と比較した。主要副次的評価項目の、net response on the Multidomain Responder Indexもフェールし、この様々な希少疾患の試験で用いられる評価指標を構成する夫々の評価項目でも効果は見られなかったようだ。

前者は第1/2相試験ではコフォートにより5点又は8点改善し、自然歴の各1点を上回ったと24年のANN(米国神経学会)で発表されており、意外な結果になった。

リンク: プレス・リリース


milvexianのACS試験成績が発表
(2026年8月29日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは昨年11月にXIa阻害剤milvexianの第3相急性冠症候群後心血管アウトカム試験で独立データ監視委員会が無益認定したことを明らかにしたが、データをESC/NEJMで発表した。この日本も参加したLibrexia-ACS試験は、急性冠症候群を発症してから7日以内で、PCI(経皮的冠介入術)や保存的療法を受けた再発リスクの高い患者14194人を組入れて、抗血小板薬治療に加えて偽薬または25mgを一日2回、経口投与する便益を比較した。主評価項目である心血管死。心筋梗塞、または虚血性脳卒中のハザード・レシオ(time to event分析)は1.05、メジアン12ヶ月追跡時点の発生率は各群5.4%と5.1%だった。重大な出血(頭蓋内出血、視力に影響する眼内出血、または致死的出血)の発生率は両群0.3%だった。

第3相は急性虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作の再発予防試験や、心房細動の脳卒中予防試験も進行中。

ライバルであるバイエルのXIa阻害剤、BAY 2433334(asundexian)は、第3相OCEANIC-STROKE試験で虚血性脳卒中の再発や心血管イベントを偽薬比抑制することに成功、5月に日米欧で新薬承認申請が受理された。この試験に先立つ第3相OCEANIC-AF(心房細動の脳卒中予防試験、Xa阻害剤apixaban対照)は非劣性解析がフェールしている。XIa阻害剤も用途毎に一つ一つ、有効性を確認していくパターンになっている。

リンク: Gibsonらの治験論文抄録(NEJM)


Wainuaの敗因はスタビライザー併用か
(2026年8月28日発表)

アストラゼネカは遺伝性トランスサイレチン調停アミロイドーシスにおけるポリニューロパシーの治療薬として承認されているアンチセンス薬、Wainua(eplontersen)のトランスサイレチン・アミロイドーシス調停心筋症治療試験がフェールしたことを7月に公表したが、データをESC(欧州心臓学会)やNew England Journal Medicine誌で発表した。Nature誌のサイトで暫定公開されたサブスタディによると、既承認のトランスサイレチン・スタビライザー(ファイザーのtafamidisなど)を同時使用していた患者の成績が良くなかったようだ。

この日本も参加した第3相CARDIO-TTRansformは45mgを4週毎皮下注する便益を偽薬と比較した。主評価項目は心血管死や再発性心血管イベント(心不全増悪や主要有害心血管イベントによる入院など)のリスク。当初の組入れ予定は750人、盲検期間120週だったが、イベント発生率が計画を下回って推移したため、1000人140週に拡大され、組入れ実績は1432人と更に上回った。試験薬群は210人で381イベントが発生、偽薬群は231人392人イベントで、率比は0.89(95%信頼区間0.73-1.09)、p=0.277だった。被験者の57%がベースライン時点でスタビライザー薬を併用しており、期中には80%を超えた。ベースライン時点で併用していた患者では率比1.14(同0.85-1.53)だったが、していなかった患者では0.71(0.54-0.93)だった。安全性はどちらのサブグループでも大差なかった。

ライバルであるAlnylam PharmaceuticalsのAmvuttra(vutrisiran)は第3相HELIOS-B試験で全死亡/心血管イベントのハザード・レシオが0.72となり、25年に米日欧で適応拡大が承認された。24年に主評価項目にモノセラピー(tafamidias併用せず)サブグループの解析を追加するデザイン変更が行われたので、途中経過ベースでは併用者のデータが今一つだったのかもしれないが、少なくとも出来上がりでは、併用サブグループのハザード・レシオは0.79、モノセラピー・サブグループは0.67と、どちらも好ましい方向を向いていた。2剤の治験成績の違いが、アンチセンスとRNA介入というモダリティの違いに起因するものなのか、トランスサイレチンの発現を阻害する力価の違いが響いたのか、はたまた臨床試験のデザインや患者背景が異なるのか、それともデータのブレに過ぎないのか、今後も議論が続きそうだ。

それはそれとして、アストラゼネカとライセンス元であるIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)には残念な結果になった。

リンク: Fontanaらの治験論文抄録(NEJM)
リンク: Garcia-paviaらの治験論文抄録(Nature誌、本文もオープン・アクセス)


【承認申請】


ハンチントン病の遺伝子療法を承認申請
(2026年9月2日発表)

アムステルダム大学発ベンチャーであるuniQure N.V.(Nasdaq:QURE)は米国と英国でAMT-130(ifezuntirgene inilparvovec)をハンチントン病治療薬として承認申請したと発表した。米国は加速承認申請で、優先審査を求めている。事前相談でFDA側の意見が二転三転しており、高リスク案件と思われる。

ハンチントン病の原因と目される変異ハンチントン遺伝子を沈黙させるマイクロRNAをアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして送り込む遺伝子療法。MRIでモニタリングしながら線条体に持続陽圧下定位脳手術で一回、投与する。第1/2相米国試験(26人、低量/高量/シャムの3群)、欧州試験(13人、低量/高量群)、免疫抑制剤併用試験(12人)、線条体低量患者試験(6人、高量群のみ)の4本が施行されたが、シャム対照試験はフェールした模様で、薬効の主エビデンスは症状評価スコア(cUHDTS)の変化を傾向加重自然歴と比較した外部対照試験のようだ。

同社は24年12月にこのデータなどに基づき加速承認申請することでFDAと事前合意したと発表したが、翌年11月、申請前会議で外部対照試験だけでは不十分と告げられたことを公表、株価が暴落した。26年1月のタイプA会議でもFDA側のスタンスは変わらなかったが、6月のタイプB会議でFDAが譲歩、当初の計画通り、米国試験と英国試験の3年追跡データと自然歴対照試験などに基づき加速承認申請する方針を受け入れたという経緯だ。

FDA長官など上層部が入れ替わったことでこれまで冷遇されていた案件の展望が改善したと言われているが、少なくともこれまでのところは軒並み承認とはなっていない。

リンク: プレス・リリース

【承認】


アストラゼネカのエトカマが米国でも承認
(2026年9月4日発表)

FDAはアストラゼネカのEtcamah(camizestrant)を加速承認した。次世代経口選択的エストロゲン受容体零落剤で、成人のホルモン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌で、アロマターゼ阻害剤とCDK4/6阻害剤の併用による一次治療中にESR1(エストロゲン受容体アルファの遺伝子)に変異が検出された患者が、アロマターゼ阻害剤からスイッチする。4月の腫瘍学諮問委員会では反対が6名と賛成の3名を上回ったため危惧されたが、6月の日本、7月のEUに続き、承認された。Guardant360 CDxがESR1変異のctDNA(血中腫瘍DNA)のコンパニオン診断薬として承認された。

日本も参加した第3相SERENA-6試験にアロマターゼ阻害剤とCDK4/6阻害剤による一次治療を受け進行が抑制されている患者3050人を登録して2~3ヶ月毎にctDNA検査を実施し、変異が検出された、そして未だ進行していない患者315人を、75mg一日一回投与群と偽薬群に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間、治験医評価、PFSの起算はESR1変異陽転時)を比較した。結果はメジアン値が各群16.0ヶ月と9.2ヶ月、ハザード・レシオは0.44と大変良い結果が出た。サブグループ分析も整合的だった。

この治療手法のコンセプトは、薬の効果が薄れたことをいち早く発見し次の治療に移行するというもの。早く移行すると次の治療オプションが一つ減ってしまうのが痛し痒しだ。懸念を払拭するには全生存期間が延びることを挙証するのが一番だが、残念ながら、この試験は十分な検出力を持たない。それどころか、ごく初期の数値とは言え諮問委員会で示されたハザード・レシオは0.90、メジアン生存期間は41.2ヶ月対40.2ヶ月だった。今回、アストラゼネカがプレス・リリースで公表したアップデート値も0.87(95%信頼区間0.57-1.30)と、点推定値は一般的な閾値である0.8を上回っている。実薬対照試験なので必ずしも有意に上回っている必要はないが、PFSの数値からは想像もできない水準だ。諮問委員会で否定的意見が多かったのはこれが主因。今後の追跡で点推定値の改善が期待される。

枠対警告はQTc延長作用を持つ薬との同時使用。ribociclib(日本では未承認のCDK4/6阻害剤)以外は同時使用禁忌。警告注意は徐脈や胚胎毒性、CYP3A阻害剤などとの相互作用リスク。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: FDAのCDER(小分子薬審査部門)のプレス・リリース
リンク: アストラゼネカのプレス・リリース


アレキサンダー病のアンチセンス薬が承認
(2026年9月3日発表)

FDAはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のZanvastro(zilganersen)を小児と成人のアレキサンダー病用薬として承認した。この疾患の承認薬は初めて。同社は希少小児疾患優先審査バウチャを取得した。報道によると価格は一回28.5万ドル。27年に欧州や日本でも承認申請される予定(米国外の権利はレコルダティがライセンス)。

アレクサンダー病は100~300万人に一人の超希少精神運動発達障害。9割の患者でアストロサイトを支えるGFAP(グリア線維性酸性蛋白)の遺伝子に変異が見られる。ZanvastroはこのGFAPをアンチセンスするオリゴヌクレオタイド。50mgを12週毎に髄腔内投与する。日本も参加したpivotal試験で50mg群の61週10メートル歩行テスト成績は安定的だったが、シャム群は悪化した(p=0.04)。FDAは5歳以上の患者に関してはこの試験の歩行障害サブグループにおけるデータ、2~4歳では粗大運動機能データ(試験薬群は改善、シャム群は悪化)、2歳未満は薬物動態や4例の安全性評価をエビデンスとした。有害事象は嘔吐など。無菌性髄膜炎の発生が報告されており、症状に注意する。

リンク: プレス・リリース


インターフェロン製剤が米国でも本態性血小板血症に適応拡大
(2026年8月31日発表)

台湾のPharmaEssentia(TPEx:6446、薬華医薬)はFDAがBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft)を本態性血小板血症に適応拡大を承認したと発表した。第3相はhydroxyurea不応不耐患者を中国や日本などの施設で組入れたが、後期第2相のサブグループ分析で未治療サブグループでも高い客観的反応率が見られたせいか、適応は二次治療に限定されていない。日本でも8月に適応拡大が認められた。

ポリエチレン・グリコールを同社独自の技術でベータ・インターフェロンと結合したもの。19年にEUで、21年に米国で、23年には日本でも、真性多血症の治療薬として承認された。今回の用途はSURPASS-ET試験で持続的応答率が37.4%とanagrelide(武田薬品のAgrylin)群の3.6%を有意に上回った(レーベルによる。25年の同社発表やLancet論文では各群43%と6%)。

リンク: プレス・リリース

【医薬品の安全性】


FDAが静注用鉄の低リン血症リスクを枠付き警告に、EMAも検討開始
(2026年9月1、4日発表)

FDAはInjectafer(ferric carboxymaltose)のレーベルに枠付き警告を追加するレーベル変更を承認したと発表した。度重なるレーベル変更を経ても医療従事者の認知を得られず業を煮やした格好だ。GE品のレーベル変更も行う予定。

Injectaferは第一三共の子会社であるルイトポルド・ファーマシューティカルズ(19年にアメリカン・リージェントに社名変更)が鉄欠乏性貧血症の鉄補充療法として13年にFDAの承認を取得したもの。経口鉄製剤に不耐不応な患者に静注する。症候性低リン血症のリスクがあり、高リスク患者や、コースを完了後3ヶ月以内に再試行する場合は、リン酸値のモニタリングが勧奨されている。FDAは19年、20年、23年、25年と、このリスクに関連するレーベル変更を逐次承認してきたが、近年に至っても有害事象が報告され、モニタリングの実施率は2割以下と周知徹底されていないため、警告強化を決めた。レーベルの逐次変更は戦力の逐次投入と同様な愚策ということを示す事例がまた一つ積み重なった。

InjectaferはVifor(現CSL Vifor)からの導入品のようだ。Viforグループの企業が各国で承認を取得している欧州でも、EMA(欧州薬品庁)のPRAC(ファーマコビジランス・リスク評価委員会)が検討を開始した。骨軟化症合併例を含む深刻な低リン血症が報告されていて、リスク因子を持たない患者に1~2回投与しただけで発生した症例も見られるとのこと。低リン血症の症状は鉄欠乏症のそれと似ているため診断が遅れた症例も散見される。当初のX線検査では骨軟化症が探知できなかった症例もあった。

他の製品でも同様なリスクが見られることからPRACは注射用鉄製品全体の検討を開始した。

リンク: FDAのプレス・リリース(9/1付)
リンク: EMAのプレス・リリース(9/4付)

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
26/9/11TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤)
26/9/19UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型)
26/9/21Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
26/9/30Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症)
26/10推アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬)
26/10推GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、dMMR/MSI-H結腸癌、CNPV案件)
26/10/4MSDのWelireg(belzutifan)とエーザイのLenvima(lenvatinib)、併用で進行腎細胞腫
26/10/9ロシュのTecentriq(atezolizumab、dMMR/MSI-HステージIII結腸癌の術後療法)
26/10/10第一三共のDS-7300(ifinatamab deruxtecan、進展型小細胞性肺癌)
26/10/15ロシュのEnspryng(satralizumab-mwge、甲状腺眼症)
26/10/26GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎)
26/10/29Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎)
26/10/30Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫)
諮問委員会
26/9/23MCGP:Grail社のGalleri多癌種早期探知血液検査


今週は以上です。

2026年8月29日

第1274回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 心ミオシン阻害剤の非閉塞性肥大型心筋症試験が成功 
  • アストラゼネカ、テゼスパイアの好酸球性食道炎試験が成功 
  • Regenxbio、ハンター症候群の遺伝子療法が再び治験停止に 
  • GSK、JemperliをdMMR/MSI-H結腸癌に適応拡大申請 
  • 興和、NO供与性緑内障用薬の承認申請が受理 
  • Capricor社、予想通りFDAが審査期間延長 
  • 武田の真性多血症用薬が承認 
  • マンジャロの心血管アウトカム試験成績がレーベル収載 
  • 皮膚筋炎用JAK/TYK2阻害剤が承認 
  • ギリアドのスイッチ用HIV治療薬が承認 
  • 不可能を可能にした膵癌用薬が承認 
  • her2陽性胃・食道腺腫の新規併用法が承認 
  • アイマービーがwAIHAに適応拡大
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


心ミオシン阻害剤の非閉塞性肥大型心筋症試験が成功
(2026年8月28日発表)

Cytokinetics(Nasdaq:CYTK)はESC(欧州心臓学会)とNew England Journal of Medicine誌でMyqorzo(aficamten)の第3相ACACIA-HCM試験の成績を発表した。ブリストル マイヤーズ スクイブの類薬がフェールした用途で共同主評価項目等を達成した。第4四半期に適応拡大申請する考え。

欧米で閉塞性肥大型心筋症用薬として承認されている心ミオシン阻害剤。心臓の収縮性を抑制し、左室流出路閉塞を緩和する。今回は閉塞の見られない症候性肥大型心筋症患者517人(日本の施設の組入れは解析対象外である模様)を試験薬群(5mg一日一回経口投与で開始、最大20mgまで滴定)と偽薬群に無作為化割付けして72週間反復投与した。主評価項目のうち、36週KCCQ-CSS(Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire Clinical Summary Score、BL=65.7)は各群11.4点と8.4点増加し、有意な差があった(p=0.021、閾値は0.025なのでそれほど高度ではない)。共同主評価項目のpVO2(最高酸素摂取量、NL=18.0mL/kg/分)は各群0.64mL/kg/分増と-0.03mL/kg/分減となり有意な差があった(p=0.003、閾値は0.025)。サブグループ分析も整合的な結果だった。

心ミオシン阻害剤は左心駆出率低下リスクを伴う。本試験では50%未満に低下が各群10.5%と0.8%で低下したが、試験薬群の27人中21人は用量を維持/減量して投与期間を完走した。心不全による深刻有害事象の発生率は各群4.3%と0.4%だった。

BMSの閉塞性肥大型心筋症用の心ミオシン阻害剤Camzyos(mavacamten)は類似した第3相ODYSSEY-HCM試験がフェールした。48週KCCQ-23 CSSは試験薬群が+13.1点、偽薬群は+10.4点で群間差のp=0.06。pVO2は+0.52mL/kg/分対+0.05mL/kg/分で群間差のp=0.07だった。見比べると偽薬群の数値がやや良いので患者背景が若干異なるのかもしれない。左心駆出率50%未満低下の発生率がやや高かかったので有害事象リスクも結果に影響したかもしれない。

リンク: プレス・リリース
リンク: Masriらの治験論文(NEJM、オープン・アクセス)


アストラゼネカ、テゼスパイアの好酸球性食道炎試験が成功
(2026年8月27日発表)


アストラゼネカは、アムジェンと共同開発販売しているTezspire(tezepelumab-ekko)が第3相好酸球性食道炎(EoE)試験で二つの主評価項目を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうだろう。

21年以降、米欧日で重度で管理不良な好酸球性喘息症と鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎に承認された抗TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)抗体。今回のCrossing試験は、食事制限や局所性ステロイド、プロトン・ポンプ阻害剤などの治療を受けても管理不良な成人青年患者368人を組入れて4週毎皮下注する便益を偽薬と比較した。低量群と高量群が設定されているが、群毎の成績の詳細や評価方法(初めからプール分析の計画だったのか、群毎の解析ならアルファの配分方法、など)は不明。

最初の主評価項目である24週病理学的寛解達成率(食道組織生検でピーク時好酸球数が閾値以下に減少)を達成、第2の嚥下症状評価(Dysphagia Symptom Questionnaireに基づき頻度や重症度の変化を患者が評価)も達成した。

EoEでは22年にRegeneron Pharmaceuticals/サノフィの抗IL-4受容体アルファ抗体、Dupixent(dupilumab)が22~23年に米欧で適応拡大している。臨床試験の主評価項目は類似しているので、Tezspireのデータが公表されたら見比べられるだろう。

リンク: プレス・リリース


Regenxbio、ハンター症候群の遺伝子療法が再び治験停止に
(2026年8月24日発表)

Regenxbio(Nasdaq:RGNX)はRGX-121(clemidsogene lanparvovec-sngl)をハンター症候群(ムコ多糖症II型)用薬として開発している。初回の米国承認申請は審査完了となり臨床的便益を検討する対照試験を実施するよう求められたが、希少難病であることなどから、長期追跡データなどを追加提出して加速承認を請求する方向でFDAと事前相談を終え、今第3四半期中に再申請する考えだった。ところが、過去に施術を受けた5人で無症候性の脊椎MRI所見があったことで自体が一変。FDAがクリニカル・ホールドを命じ、会社側は、悪性とは感じられずRGX-121との関連性も確認されていないとしながらも、近い将来に再承認申請することは期待していないとトーンダウンした。

ハンター症候群はX染色体劣性遺伝子疾患で、iduronate-2-sulfataseが欠乏しヘパラン硫酸が蓄積する。RGX-121はアデノ随伴ウイルス9型をベクターとしてこの遺伝子を中枢神経系細胞に直接導入する。日本で承認されているJCRファーマのイズカーゴ(パビナフスプアルファ)と同様に中枢神経系症状にも有効性が期待される。日本新薬がRGX-121とムコ多糖症I型用のRGX-111の米日アジア市場における開発販売権を保有している。

この2剤は今年1月にFDAからクリニカル・ホールドを命じられた。4年前にRGX-111を施術した5歳児でMRI検査により無症候性の脳室内中枢神経系腫瘍が発見されたため。RGX-121は5月に解除され一安心と思われたが、残念な結果になった。今回の発見に至った検査は過去には実施されていなかったとのことなので、今後、更に多くの症例で顕在化する可能性も否定できない。会社側が慎重なのはこのためだろう。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


GSK、JemperliをdMMR/MSI-H結腸癌に適応拡大申請
(2026年8月24日発表)

GSKは抗PD-1抗体Jemperli(dostarlimab-gxly)を米国でdMMR(ミスマッチ修復不全)/MSI-H(高マイクロサテライト不安定性)を有する未治療のステージII/III局所進行結腸癌に適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限は27年2月とのこと。FDAが昨年11月にCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)を供与した案件なので10~11月に承認される可能性もあるのではないか。

Jemperliは欧米である種の子宮内膜腫などに承認されている。直腸癌は世界で年77万人が罹患、うちdMMR/MSI-Hは5-10%とのこと。エビデンスとなるのは日本も参加した第2相AZUR-1試験。500mgを3週毎に9回、点滴静注したところ、中間解析で主目的のcCR12(12ヶ月持続する臨床的完全反応率、独立中央評価)を達成した。データは今後、発表する考え。

リンク: プレス・リリース


興和、NO供与性緑内障用薬の承認申請が受理
(2026年8月27日発表)

興和は米国でK-911(bimatoprost grenod)を開放隅角緑内障/高眼圧症の眼圧抑制剤として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は27年4月30日。中国でも権利を持つOcumension Therapeuticsが今月、承認申請した。日本は第3相段階。

アッヴィのLumigan(bimatoprost)の活性成分であるプロスタグランジン類縁体に一酸化窒素供与体を結合したもの。第3相試験二本で眼圧低下作用がlatanoprostと非劣性だった。一酸化窒素供与性製剤を開発しているフランスのNicOx S.A.からライセンスした。

リンク: プレス・リリース(和文)

【承認審査・委員会】


Capricor社、予想通りFDAが審査期間延長
(2026年8月24日発表)

Capricor Therapeuticsは24年に米国でCAP-1002(deramiocel)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬として承認申請し、26年3月には2巡目の申請を行っているが、審査期限が8月22日から11月22日に延期された。7月の諮問委員会で諮問委員12人中9人がエビデンス不足と断じたことを受けて適応・効能をDMDにおける心筋症から第3相試験の主評価項目である上腕機能改善に変更したことなどが申請内容の主要な変更と見做された。

CAP-1002は日本新薬がグローバルな商業化権を保有しているが、係争中。

リンク: プレス・リリース

【承認】


武田の真性多血症用薬が承認
(2026年8月28日発表)

FDAは武田薬品のMimrylo(rusfertide)を成人の真性多血症による赤血球増加の治療薬として承認した。19mg週一回皮下注で開始して、9.5~108mgの範囲で滴定する。警告注意事項は血小板増加症(4週間で平均31%増加、著増例もあり)、注射箇所反応、胚胎毒性。

Protagonist Therapeutics(Nasdaq:PTGX)から米国における商業化権と海外市場の開発商業化権を取得した、ヘプシジン類縁体。赤血球の生成に必要な鉄の移動を妨げる。標準療法に十分応答せず瀉血(血を抜く)依存の真性多血症の成人を組入れた第3相VERIFY試験で77%の患者が瀉血不適応(ヘマトクリット値が改善など)となった。偽薬群は33%だった。平均瀉血回数も0.5回対18回と有意に減少した。

リンク: プレス・リリース


マンジャロの心血管アウトカム試験成績がレーベル収載
(2026年8月28日発表)

イーライリリーはFDAが二型糖尿病用GIP/GLP-1受容体アゴニストであるMounjaro(tirzepatide)のレーベル変更を承認したと発表した。心血管アウトカム試験である第3相SURPASS-CVOT試験でアテローム硬化性心血管疾患を併発する二型糖尿病における主要有害心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)のリスクが同社のGLP-1作用剤Trulicity(dulaglutide)比で非劣性だった(ハザード・レシオ0.9、95.3%上限1.01)。

Trulicityは第3相REWIND試験で同様なハザード・レシオが偽薬比0.88(95%上限0.99)だった。実薬対照試験における非劣性解析は悩ましく、対照薬の偽薬対照優越性試験の95%上限値と実薬対照非劣性試験の95%上限値をブリッジングして偽薬をどの程度上回るか推定するのが保守的なのだろうが、よく分からない。

リンク: プレス・リリース


皮膚筋炎用JAK/TYK2阻害剤が承認
(2026年8月27日発表)

FDAは、Roivant Therapeutics傘下でファイザーとの合弁会社であるPriovant TherapeuticsのLisraya(brepocitinib)を成人の皮膚筋炎用薬として承認した。一日一回経口投与する。ステロイドなどによる治療中、あるいは治療歴を持つ241人を組入れて15mgと30mgを検討した第3相試験で、後者の52週TIS(総合改善スコア)が47.5点と偽薬群の33.3点を有意に上回った。40点改善奏効率は各群69%と47%だった。ステロイドを減量できた患者も偽薬を上回った。

他の経口JAK阻害剤と同様に、深刻感染症や全死亡の増加、腫瘍、主要有害心血管イベント、血栓症が枠付き警告された。

ファイザーの開発コードはPF-06700841。円形脱毛症などのPOC試験を実施後に上記合弁を設立し世界開発権と米日における商業化権を供与した。非感染性ブドウ膜炎でも第3相試験中。

リンク: プレス・リリース


ギリアドのスイッチ用HIV治療薬が承認
(2026年8月27日発表)

ギリアド・サイエンシズはFDAがBixlenvo(bictegravir、lenacapavir)を承認したと発表した。抗ウイルス薬治療を受けウイルスを抑制できているHIV患者が、一日一回一錠を服用するだけで足りる配合剤にスイッチすることができる。但し、当初2日間はSunlenca(lenacapavir)300mgを2錠ずつ、併用する。日本でも承認申請中。

bictegravirはインテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビター。3剤合剤であるBiktarvyの配合成分として承認されている。lenacapavirは長期作用性カプシド阻害剤。Bixlenvoの第3相は、一日2~11剤を併用しているメジアン年齢60歳の患者を2対1割付けしたスイッチ試験と、Biktarvyによる治療を受けている患者を組入れたスイッチ試験の両方で、48週ウイルス抑制奏効率が継続群比で非劣性だった。

リンク: プレス・リリース


不可能を可能にした膵癌用薬が承認
(2026年8月26日発表)

FDAはRevolution Medicines(Nasdaq:RVMD)のRasonque(daraxonrasib)を成人の転移性膵管腺腫用薬として承認した。全身性治療歴を持つ、または、多剤併用全身性治療が不適の場合に用いる。CNPV(FDA長官国家的優先バウチャ)対象案件であり、今年2月に第3相試験が成功、7月に承認申請が受理され、1ヶ月で光速承認された。尚、長官が交代したせいか、今回のリリースには審査期間〇〇日という発表はなかった。なぜか、FDAと薬品部門が夫々にプレス・リリースを出している。

膵管腺腫の9割ではras変異が見られるが、活性化rasは薬剤が結合できるポケットを持たないため、創薬不能(undruggable)な標的と考えられてきた。同社の革新は、薬物をシャペロン蛋白である細胞内のcyclophilin Aに結合させ変形させることによりrasと三量体を形成させる技術を実用化したこと。日本も参加した501人の第3相RASolute 302試験で300mgを一日一回、経口投与したところ、メジアン生存期間が13.2ヶ月と化学療法群(4種類の併用法から医師が選択)の6.7ヶ月を上回り、ハザード・レシオ0.40、p<0.0001だった。尚、主評価項目はRAS G12変異サブグループ459人における全生存期間とPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)だったが、上記と大差なかった。

警告注意はラッシュなどの皮膚有害事象、口内炎、下痢、胃腸穿孔、間質性肺疾患/肺臓炎、胚胎毒性。皮膚有害事象の予防策として局所性ステロイドを顔や胸に塗布し、日光を避けサンスクリーンを使用、経口抗生剤の予防的投与も検討すべき。CYP3A阻害剤/誘導剤やP-gp阻害剤と薬物相互作用がある。

EUでもCHMPが段階的審査という、米国のローリング承認審査と類似した新しい制度に基づく審査に着手している。

他の第3相は膵管腺腫の一次治療や周術期、そしてras変異陽性非小細胞性肺癌の2/3次治療試験が進行中。

尚、同社は23年11月にEQRxを株式交換方式で買収し、保有する金融資産を入手した。EQRxは、ソフトバンク・グループ企業などの出資に支えられて、中国企業が実用化したme-too drugをライセンスして米国で競合品の半値で販売する事業モデルを追求していたが、リード・コンパウンドに関して、FDAが中国試験の対照群が米国の標準療法ではないという理由で承認申請を首肯しなかったため、経営が行き詰った。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: 同(薬品部門のプレス・リリース)


her2陽性胃・食道腺腫の新規併用法が承認
(2026年8月25日発表)

FDAは成人のher2陽性切除不能局所進行/転移性の胃・胃食道接合部・食道腺腫の一次治療として化学療法と二種類の抗体医薬を併用するレジメンを承認した。一つはジャズファーマシューティカルの抗her2二重特異性抗体、Ziihera(zanidatamab-hrii)。her2のtrastuzumabが結合するエピトープとPerjeta(pertuzumab)が結合するエピトープの両方に結合・架橋する。もう一つはビーワン・メディシンズの抗PD-1抗体Tevimbra(tislelizumab-jsgr)。5-FU系の化学療法レジメンと共に施行する。この適応におけるher2陽性はIHC法で3+、またはIHC法で2+且つISH法陽性を指すが、3+の場合はTevimbraを割愛してZiiheraだけを化学療法と併用することも認められた。

エビデンスとなる日本も参加した第3相HERIZON-GEA-01試験で914人を、化学療法(capecitabineとoxaliplatinの併用、または5-FUとcisplatinの併用)と併用で抗her2抗体trastuzumab、Ziihera、またはZiihera及びTevimbraを投与する3群に無作為化割付けして便益を比較したところ、PFS(無進行生存期間)はメジアン値が各群8.1ヶ月、12.4ヶ月(trastuzumab併用群比ハザード・レシオ0.65)、12.4ヶ月(同0.63)となり、両群とも有意に上回った。共同主評価項目の全生存期間はメジアン値が各群19.2ヶ月24.4ヶ月(同0.80)、26.4ヶ月(同0.72)となり、Ziihera・Tevimbra併用群だけ有意に上回った。G3以上の治療関連有害事象発現率は各群59.6%、59.0%、71.8%だった。

上記試験成績が1月のASCO GI(米国臨床腫瘍学会消化器癌シンポジウム)で発表された時は、Ziiheraだけ併用が承認されないリスクもあるのではないかと危惧したが、FDAは、PFSにおける便益が見られるのは専らIHC3+のサブグループだけとして、適応を限定する形で承認した(探索的解析でメジアン値が14.2ヶ月と対照群の7.6ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.55(95%信頼区間0.43-0.69))。FDAはこの種の事後的サブグループ分析には慎重という印象があったが、her2標的薬の便益がher2発現度と相関するのは数多の製品の試験成績から明らかなので、問題なしとしたのだろう。

リンク: プレス・リリース


アイマービーがwAIHAに適応拡大
(2026年8月24日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンはFDAが抗胎児性FcR抗体Imaavy(nipocalimab-aahu)を温式自己免疫性溶血性貧血症(wAIHA)に用いる適応拡大を承認したと発表した。12歳以上でステロイドによる治療中/治療歴のある患者に30mg/kgを4週毎投与する。

wAIHAは米国で8000人に一人の希少疾患で承認されている薬はなかった。日本も参加した第2/3相ENERGY試験に成人患者115人を組入れてヘモグロビン改善奏効率(Hgbが2g/dL以上増加、且つ、10g/dL以上に到達、但し、3回以上の検査で持続し、レスキュー薬や同時使用薬の変更がない場合に限る)を比較したところ、24%と偽薬群の8%を上回った(p=0.015)。尚、15mg/kg2週毎投与群は21%、偽薬比p=0.044で有意性判定の閾値をクリアできなかった。

Imaavyは全身性重症筋無力症用薬として25年に米日欧で初承認された。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/8推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
26/9/11TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤)
26/9/19UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型)
26/9/21Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
26/9/22Ionis PharmaceuticalsのION373(zilganersen、アレキサンダー病)
26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
26/9/30Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症)
26/10推アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬)
26/10推GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、dMMR/MSI-H結腸癌、CNPV案件)
26/10/4MSDのWelireg(belzutifan)とエーザイのLenvima(lenvatinib)、併用で進行腎細胞腫
26/10/9ロシュのTecentriq(atezolizumab、dMMR/MSI-HステージIII結腸癌の術後療法)
26/10/10第一三共のDS-7300(ifinatamab deruxtecan、進展型小細胞性肺癌)
26/10/15ロシュのEnspryng(satralizumab-mwge、甲状腺眼症)
26/10/26GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎)
26/10/29Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎)
26/10/30Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫)
諮問委員会
26/9/23MCGP:Grail社のGalleri多癌種早期探知血液検査


今週は以上です。

2026年8月22日

第1273回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • モデルナ、抗癌ワクチンの第3相が成功 
  • 胃バイパス術後低血糖の第3相が成功 
  • ヒフデュラの自己免疫性筋炎試験が成功 
  • アストラゼネカ、3剤の第3相結果を発表 
  • EyePoint社の加齢性黄斑変性試験は主目的を達成できず 
  • 糖原病Ia型の遺伝子療法が承認 
  • 異所性骨化の画期的新薬が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


モデルナ、抗癌ワクチンの第3相が成功
(2026年8月19日発表)

モデルナとMSDは、癌治療用ワクチンのmRNA-4157/V940(intismeran autogene)が第3相INTerpath-001の中間解析で主目的等を達成したと発表した。数値は未発表。承認申請に向けて当局と協議する考え。

このワクチンは、患者自身の癌細胞や血液を次世代シーケンサーで分析して最大34のネオアンチゲン(遺伝子変異によって生じた抗原)を発見し、一本のmRNAにエンコードしたものをリピッド・ナノパーティクルに封入したもの。日本も参加した今回の試験は、ステージIIBからIVまでの皮膚黒色腫を全摘した全身性治療未経験の患者のアジュバント療法として、共同開発販売パートナーであるMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)に追加する便益を検討するために、1137人を偽薬追加群と2対1割付けしてRFS(無再発生存期間、治験医評価)を比較した。Keytrudaは6週毎に9回点滴静注、mRNA-4157は1mgを3週毎に9回筋注した。

mRNA-4157追加群は統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を見た。副次的評価項目ではDMFS(無遠隔転移生存期間)も統計的有意且つ臨床的意味のある差が見られた。全生存期間は継続追跡する。

ステージIIIbとIVの患者だけを組入れた後期第2相KEYNOTE-942試験ではRFSのハザード・レシオが0.56、副次的評価項目のDMFSは0.347と好ましい方向を指す結果が出ていた。

尚、MSDは同様なセッティングにおけるKeytrudaと同社の抗TIGHT抗体MK-7684(vibostolimab)の併用試験、KEYVIBE-010も実施していたが、24年5月に独立データ監視委員会が無益認定し中止となった。

リンク: プレス・リリース


胃バイパス術後低血糖の第3相が成功
(2026年8月18日発表)

Amylyx Pharmaceuticals(Nasdaq:AMLX)はavexitideが第3相Lucidity試験で主目的等を達成したと発表した。年内に米国で承認申請する考え。

代表的な胃バイパス術の一つであるルーワイ胃バイパス術を受けた後に低血糖症をしばしば発症するようになった患者78人を試験薬群(90mgを朝食の1時間以上前に皮下注)と偽薬群に3:2割付けして16週間投与し、中重度低血糖イベントの発症リスクを比較したところ、試験薬群は55%小さかった(p<0.001)。すべての副次的評価項目も達成。有害事象は下痢や注射箇所の紅斑/皮下出血などで、体重変動や重度有害事象は見られなかった。

exendin-4系のGLP-1作用剤は二型糖尿病などの治療薬として承認されているが、exendinのアミノ酸の一部(9-39)だけからなるavexitideはGLP-1受容体の競合的阻害作用を持つ。経営破綻したEiger BioPharmaceuticalsの資産を24年に3510万ドルで落札して入手した。

FierceBiotechの報道によると、同社は日本市場も注目しているようだ。

リンク: プレス・リリース
リンク: FierceBiotechの報道(日本時間8/19アクセス)


ヒフデュラの自己免疫性筋炎試験が成功
(2026年8月17日発表)

オランダのアルジェニクスは、Vyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa and hyaluronidase-qvfc)が第2/3相自己免疫性筋炎試験で主目的を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。

同薬は全身性筋無力症など複数の適応を持つ抗胎児性Fc受容体抗体の皮下注用製剤。今回の日本も参加したAlkivia試験は、IMNM(免疫介在性壊死性ミオパチー)または皮膚筋炎の成人を組入れて週一回皮下注を52週間反復し、合計改善スコア(TIS)を比較したところ、47.95点と偽薬群の32.56点を15.4点上回った。IMNMサブグループでは45.05点対30.24点、群間差14.8点で統計的に有意、皮膚筋炎も51.51点対36.96点と良さそうな数値だが検出力不足で有意水準には達しなかったようだ。両サブグループとも、合計改善スコアに含まれる6項目すべての評価が改善した。

競合はRoivant Therapeuticsがファイザーから導入したJAK1/TYK2阻害剤brepocitinibを今年2月に米国で皮膚筋炎治療薬として承認申請している。

リンク: プレス・リリース


アストラゼネカ、3剤の第3相結果を発表
(2026年8月17日発表)

アストラゼネカは3剤の第3相試験結果を同日に発表した。

同社が共同開発販売している第一三共の抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)は、第3相DESTINY-Lung04試験で主目的を達成した。欧米アジアの施設で、her2の遺伝子のエクソン19または20に変異を持つ切除不能、局所進行性、または転移性の非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療を受ける454人をEnhertu群と標準療法群(白金薬、pemetrexed、及び抗PD-1抗体pembrolizumabの併用)に無作為化割付けしてPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較したところ、有意に上回った。

Enhertuはher2高発現/変異のある様々な腫瘍に承認されている。非小細胞性肺癌では22~23年に米日欧で二次治療に適応拡大した。米国は加速承認なので、今回の成功で一次治療の承認と二次治療の本承認切替が望めそうだ。

リンク: プレス・リリース

中国のHutch-medから中国や海外での販売権を取得した経口c-MET阻害剤、savolitinibは、中国でMET変異/増幅を持つ非小細胞性肺癌や胃/胃食道接合部腺腫の一部に承認されているが、今回、グローバル第3相SAFFRON試験が成功した。アストラゼネカの変異EGFR阻害剤Tagrisso(osimertinib)による治療に応答しなかったMET過剰発現/増幅EGFR変異非扁平上皮非小細胞性肺癌におけるPFS(無進行生存期間)や全生存期間を白金薬ベース化学療法群と比較したところ、どちらも統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。

Tagrissoのような第3世代EGFR阻害剤は有効だが3人に一人はMET過剰発現/増幅による抵抗性が生じる。中国ではTagrissoだけでなく他の第3世代EGFR阻害剤歴も含む第3相SACHI試験が25年に中間解析で成功認定され、同年6月に適応拡大が承認されている。中間解析でPFSのハザードレシオが0.4、全生存期間は未成熟だが0.84と良さそうなものだった。

リンク: プレス・リリース

一方、抗PD-1・CTLA-4二重特異性抗体のMEDI5752(volrustomig)は、第3相eVOLVE-Lung02試験の打ち切りが決まった。この日本も参加した試験はPD-L1発現が50%未満の転移非小細胞性肺癌の一次治療を受ける患者895人を組入れて、化学療法4サイクルと併用で750mgを3週毎、最大2年間投与する便益を、化学療法とpembrolizumabの併用群と比較したもの。主評価項目はPD-L1陰性(<1%)サブグループにおけるPFSと全生存期間。中間解析で独立データ監視委員会がどちらも無益認定した。

抗CTLA-4抗体は毒性が比較的高く、承認されている薬は化学療法と同様に数ヶ月の投与で終了する。本剤はデュアル・アクション薬なので長期間作用する点が異なる。

volrustomigの第3相は、胸膜中皮腫の標準療法アドオン試験や切除不能局所進行性頭頚部扁平上皮腫の同時化学放射線療法維持療法試験も進行中だが、成否判明は28年以降の見込みだ。

リンク: プレス・リリース


EyePoint社の加齢性黄斑変性試験は主目的を達成できず
(2026年8月17日発表)

米国マサチューセッツ州のEyePoint(Nasdaq:EYPT)は、滲出型加齢性黄斑変性(wAMD)におけるDuravyu(vorolanib)の便益をRegeneron Pharmaceuticals/サノフィのEylea(aflibercept)と比較した第3相LUGANO試験で非劣性解析がフェールしたと発表した。株価は暴落。wAMDと関係のない15字以上の視力低下が生じた患者(試験薬群211人中9人)を除くと名目p値が0.0096となっている由。同社によるとafliberceptの過去の試験では3~5%で発生したとのことで、今回の試験でゼロだったのが外れ値と考えることもできるようだ。副次的評価項目は達成したとのこと。

第3相はLUCIA試験も進行中で26年第4四半期に結果判明する見込み。糖尿病性黄斑浮腫の第3相2本も27年第4四半期に開票の見込み。Betta Pharmaceuticalsの関連企業であるEquinox Sciencesから大中国以外での権利を取得したもの。

リンク: プレス・リリース

【承認】


糖原病Ia型の遺伝子療法が承認
(2026年8月19日発表)

Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)は、FDAがGenglycos(pariglasgene brecaparvovec-opnr、開発コードDTX401)を8歳以上の小児と成人の糖原病Ia型用薬として加速承認したと発表した。既存の治療法であるコーンスターチの投与量を抑制することができる。警告注意事項は過敏反応/点滴反応、免疫調停肝毒性、副腎不全、AAVベクターの統合と腫瘍原性リスク。臨床試験でALT/AST上昇が7割の患者で発生しており、重度肝線維症や肝硬変は禁忌。本承認取得の条件である市販後コミットメントは50人の市販後症例と抗AAV8抗体を持ちGenglycosの治療を受けられない20人を非盲検下で追跡する。

糖原病1a型は米国の推定患者数が1500~2500人、商業事業可能な他の地域を含めても6000~8000人の超希少疾患。グルコース-6-リン酸を加水分解しグルコースを生成、輸送するグルコース-6-ホスファターゼ(G6Pase)の遺伝子であるG6PCの変異が関与している。臓器にグリコーゲンが蓄積、命に係わる低血糖や肝腫大を合併する。治療はコーンスターチを成人の場合で一日300~350mgを、夜間も含め3~4時間毎に摂取する。血糖値が大きく変動し高血糖を発症するリスクがある。Genglycosはアデノ随伴ウイルス8型をベクタ落としてG6PCを導入するもの。第3相GlucoGene試験で血糖値管理を損なわずにコーンスターチ摂取量を41%抑制することができた(偽薬群は10%抑制)。

同社は優先審査バウチャを取得した。日本でも6月に承認申請している。

リンク: プレス・リリース


異所性骨化の画期的新薬が承認
(2026年8月19日発表)

FDAはRegeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)のPasatru(garetosmab-grts、開発コードREGN2477)を成人のFOP(進行性骨化性線維異形成症)の治療薬として承認した。10mk/kgを4週毎に60分点滴静注する。不耐なら3mg/kgに減量可。欧州でも申請中。日本などでも申請する考え。

FOPは全身の筋肉や腱、靭帯などが徐々に骨に変わり、手足の可動域が狭小化したり背中が曲がったりする。BMPの受容体であるACVR1が変異しActivin Aにより活性化されることが関与していることを同社の研究者が解明した。患者数は世界で900人程度、米国は220人程度と推測される超希少疾患だが、診断されていない患者も多そうだ。PasatruはActivin Aに結合する抗体医薬。日本も参加した第3相OPTIMA試験に16歳以上のActivin A受容体1に病原性変異を持つ患者63人を組入れて、10mg/kg、3mg/kg、または偽薬を1年間投与したところ、各群、新規異所性骨化病変数が2、1、19となり、2用量とも90%以上抑制することができた。副次的評価項目である臨床的増悪回数は各群9回、53回、66回(25年9月会社発表の70回から偽薬群だけ変更)となり、10mg/kgは統計的に有意だった。

警告事項は皮膚皮膚組織感染症や鼻血。有害事象は他に毛髪成長の増加、眉毛喪失、膿瘍、座そうなどが見られた。胎児毒性を持つので妊娠可能な女性は治療中と終了後6ヶ月間、避妊する。

同社は第2相試験に基づき承認申請を企図したことがあったが、オープン・レーベル延長試験中も含めて43人中5人が死亡したことなどから同試験を中止した。まだ添付文書を見ていないが、FDAや同社のプレス・リリースでは特に言及されていないので、本剤とは無関係と判定されたのだろう。

FOP治療薬はイプセンのレチノイン酸受容体ガンマ・アゴニスト、Sohonos(palovarotene)が23年に米国で、26年には日本でも、承認された。臨床試験で異所性骨化が偽薬比半減した。Pasatruは未成年は適応外だが、Sohonosは米国で女性は8歳以上、男性は10歳以上が適応になる。但し、EUでは、この種の薬は不可逆的な早期骨端軟骨閉鎖のリスクがあることなどがボトルネックとなり、承認されなかった。イプセンの年商は24年、25年とも2000万ユーロ強となっている。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26/8推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/8推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
26/9/11TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤)
26/9/19UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型)
26/9/21Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
26/9/22Ionis PharmaceuticalsのION373(zilganersen、アレキサンダー病)
26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
26/9/30Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症)
26/10推アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬)
26/10推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血症)
26/10/4MSDのWelireg(belzutifan)とエーザイのLenvima(lenvatinib)、併用で進行腎細胞腫
26/10/9ロシュのTecentriq(atezolizumab、dMMR/MSI-HステージIII結腸癌の術後療法)
26/10/10第一三共のDS-7300(ifinatamab deruxtecan、進展型小細胞性肺癌)
26/10/15ロシュのEnspryng(satralizumab-mwge、甲状腺眼症)
26/10/26GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎)
26/10/29Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎)
26/10/30Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫)
諮問委員会
26/9/23MCGP:Grail社のGalleri多癌種早期探知血液検査


今週は以上です。

2026年8月15日

第1272回

【ニュース・ヘッドライン】

  • 欧州委員会がタブネオスの承認取消を最終決定 
  • 大鵬薬品、承認申請中のEGFR阻害剤が一次治療試験も達成 
  • LSD類縁体、今度は全般不安症試験が成功 
  • 経口レボシメンダンの第3相がフェール 
  • スタルガルト病用薬を承認申請 
  • EU、ライム病ワクチンの承認申請を受理 
  • Capricor、承認申請内容と訴訟日程を変更へ 
  • ITM社のGEP-NETs放射線療法は審査完了に 
  • BMSのCELMoDが承認 
  • タウNFTのPET検査薬が承認 
  • プラダー・ウィリ症候群用薬の安全性に関する医師声明 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


欧州委員会がタブネオスの承認取消を最終決定
(2026年8月13日発表)

欧州委員会は顕微鏡的多発血管炎(MPA)と多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の治療薬、Tavneos(avacopan)の承認取消を最終決定したことを明らかにした。8月4日付で決定し、EMA(欧州医薬品庁)の承認に基づき同薬を承認したEU加盟国に取消すよう勧告した。承認の根拠となった臨床試験に不正が発覚して信頼性が失われ、次の承認更新期限である27年1月までに代替的なエビデンスが提出される可能性は低いことが理由。米国も承認取消に向けて行政手続きを進めているが、最終決定したのはEUが世界初ではないか。震源地である日本で殆ど問題になっていないのと対照的だ。

同薬は21年9月日本でライセンシーのキッセイ薬品が世界初承認を取得、翌月には開発者のChemoCentryx社が米国で取得、22年1月にはEUでライセンシーのVifor Fresenius Medical Care Renal Pharma Franceが取得した。ChemoCentrxは22年10月にアムジェンに買収されたが、ChemoCentryxの株主代表訴訟で、エビデンスであるAdvocate試験が実はフェールしていたことが曝露された(両側p=0.1025)。同社は被験者331人中9人(偽薬群3人、試験薬群6人)の判定に疑問を抱き査読を実施したところ、試験薬群5人の評価が持続的寛解達成に変更された。

問題は、p値が0.05未満ということはそのような事象が偶然発生する確率は20回に一回未満という意味なので、20種類の解析を行えば一つくらいは0.05になるかもしれない。そこまでいかなくても、二つ、三つと増やせば増やすほど、信頼性が低下する。リスクを抑制するためには事前に解析計画を決定してアルファを配布するなり、一つがフェールしたらそれ以降の解析は探索的解析と扱うなどの処理が必要になる。

尤も、このような再評価実施は稀に聞くし、アムジェンによると、問題表面化後にデューク大学に依頼した盲検下査読でも、実薬対照群比非劣性解析が成功したという。従って、当局にとって最大の問題点は、主解析がフェールし査読に進んだという経緯を報告していなかったことと推測される。患者の治療機会を守るため、という理由で容認してしまったら今後も同じような案件が発生し、多くの患者に損失を与えるかもしれない。欧米当局にとって、おそらくこれが一番大きな問題意識なのではないだろうか。

リンク: 欧州委員会の最終決定

【新薬開発】


大鵬薬品、承認申請中のEGFR阻害剤が一次治療試験も達成
(2026年8月13日発表)

大塚ホールディング傘下の大鵬薬品は、TAS6417(zipalertinib)が第3相REZILIENT3試験の中間解析で主評価項目のPFS(無進行生存期間)を達成したと発表した。FDAと相談の上、承認申請する考え。

エクソン20挿入変異を持つEGFRを阻害するチロシン・キナーゼ阻害剤。この変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌の再発治療試験で良好なORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)と反応持続性を示し米国で承認申請され審査期限は27年2月27日となっている。今回の試験は扁平上皮腫以外で初めて治療を受ける成人患者285人を組入れて、化学療法に追加する便益を検討した。データは未公表だが、化学療法群と比べて統計的に有意且つ臨床的に意味のある延長が見られ、安全性は対処可能なものだった由。

リンク: 大塚のプレス・リリース


LSD類縁体、今度は全般不安症試験が成功
(2026年8月12日発表)

米国ニュー・ヨークのDefinium Therapeutics(Nasdaq:DFTX)は、DT120(lysergide d-tartrate)が第3相VOYAGE試験で主目的を達成したと発表した。もう一本進行中で、年内に結果判明する見込み。鬱病の第3相が成功したことも6月に発表されている。

LSD類縁体の口腔内崩壊錠。今回の試験は米国の成人の全般不安症患者214人を組入れて、100mcgを一回経口投与し、12週時点の症状評価を偽薬と比較した。主評価項目のHAM-A(ハミルトン不安評価尺度)総スコア(ベースライン平均値は28)が、試験薬群は11.6点、偽薬群は6.2点低下し、群間差は有意だった。5点以上の差が出たのは画期的とのこと。尚、サイケデリックの第3相は精神療法に追加する効果を検討するものが多いが、DT120は薬物療法だけ。急性副作用を緩和するため投与の後は数時間留め置いて、知覚症状などが収まったら帰宅を認める。本試験ではセッション終了の条件(チェック・リスト)を平均6.4時間でクリアした。

サイケデリックの第3相は反復投与しないので効果の長期持続性はよく分からないが、本試験は40週のオープン・レーベル延長試験中に重症度に応じて最大5回、投与することが認められているので、ある程度のアイディアは掴めそうだ。

もう一本のPanorama試験は欧米の施設で初めて治療を受ける患者250人を、100mcg群、偽薬群、50mcg参考群に無作為化割付けてして12週HAM-A総スコアを比較している。サイケデリックは特有の副作用があるためちゃんとした盲検試験ができない可能性があるが、本試験では、50mcg群のデータも実質的な偽薬群として参考にする。

鬱病向けは第3相Emerge試験が成功したがもう一本のAscend試験は今年始まったばかりなので、承認申請は全般不安症が先になるかもしれない。

リンク: プレス・リリース


経口レボシメンダンの第3相がフェール
(2026年8月10日発表)

米国ノース・キャロライナ州のTenax Therapeutics(Nasdaq:TENX)は、TNX-103(levosimendan)が第3相Level試験で主目的を達成しなかったと発表した。ベースライン値がメジアン以下のサブグループでは好ましい結果が出たことなどからFDAにタイプC会議を求める考え

フィンランドのオリオン社からライセンスしたカルシウム・センシタイザー。2000年にスエーデンで急性心不全用薬Simdaxとして承認されたが独仏英などでは相互認証を獲得できなかった。米国では90年代に承認申請が撤回されている。当時の開発販売パートナーであったアボットは2009年に一部市場を除いて権利を返上している。Tenaxはオリオンから2020年に経口剤の北米権を、24年には北米外の権利と皮下注用製剤の権利を、取得した。

今回のLevel試験は北米のHFpEF(左室駆出力保持心不全)を伴う肺高血圧症患者241人を1mg一日3回投与群(当初は2回)と偽薬群に無作為化割付けして12週間治療し、6分歩行距離の変化を比較した。試験薬群は+14.0メートル、偽薬群+10.4メートル、群間差は3.5メートルでp=0.63。KCCQ-TSSなどの副次的評価項目もフェールした。但し、ベースライン時点でメジアン値の333メートル未満だったサブグループでは+26.7メートル対-2.6メートル、群間差26.3メートル(95%信頼区間6~46.7メートル)だった。

治療関連有害事象の発生率は各群38.3%と17.4%、深刻有害事象発生率は10.8%と10.7%、特別関心有害事象の発生率は9.2%対5.8%。詳細は8月のESC(欧州心臓学会)のLate-Breaking Clinical Scienceセッションで発表する予定。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


スタルガルト病用薬を承認申請
(2026年8月11日発表)

米国カリフォルニア州のBelite Bio(Nasdaq:BLTE)はLBS-008(tinlarebant)をFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は27年2月12日。第3相DRAGON試験で12~20歳のスタルガルト病1型患者104人を5mg一日一回経口投与群と偽薬群に2:1割付けして萎縮病変の拡大(年率)を比較したところ、試験薬群は35.7%小さかった。2年間追跡したが視力の変化は両群とも小さく、差は出てない。有害事象は黄視症など。

スタルガルト病1型はABCA4遺伝子の変異によりレチノールの排出が進まず蓄積、萎縮性病変が拡大し中心視力が低下する。米国の推定患者数は53000人。LBS-008はレチノールを肝臓から眼に移送するRBP4の阻害薬。

リンク: プレス・リリース


EU、ライム病ワクチンの承認申請を受理
(2026年8月14日発表)

Pfizerとフランスのワクチン企業、Valneva SE(Nasdaq:VALN、Euronext Paris:VLA)は、EUがライム病ワクチンの承認申請を受理したと発表した。来年の感染シーズンに間に合うか微妙だが、順調なら再来年には実用化されるだろう。米国でも申請中と推測される。

ライム病はマダニが媒介するBorrelia burgdorferi(ボレリア・ブルグドルフェリ)菌の感染症。欧州では年10万人以上、米国では40万人以上が感染と推定されている。ファイザーがValnevaから生産商業化権を取得したPF-07307405/VLA15は細菌のOspA(外側表面タンパクA)を標的とする6価サブユニット・ワクチン。欧米などで5歳以上を組入れて実施した第3相VALOR試験で180mcgを第0月、2月、そして5~9月のどこかで3回目接種し、1年後に4回目接種したところ、4回目接種の28日後からシーズンが終了する10月までの期間における偽薬比相対リスク削減率が73.2%(95%信頼区間15.8-93.5)だった。

薬効評価方法が変だが、本試験は開始した翌年にCROのCare Accessが担当した複数の米国施設でGCP違反が判明し、組入れ目標を18000人から9000人に半減した上で、2年目の感染リスクを評価するプロトコル変更が行われた経緯がある。Care Access側はGCP違反などなくその後のFDA査察でも指摘事項はなかったと主張している。この二点が不確実要因だ。

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


Capricor、承認申請内容と訴訟日程を変更へ
(2026年8月13日発表)

米国カリフォルニア州のCapricor Therapeutics(Nasdaq:CAPR)はCAP-1002(deramiocel)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬としてFDAに承認申請しているが、7月の諮問委員会で12人の委員中9人が薬効のエビデンスが不十分と判定したことを受けて、適応/効能を変更する考えであることを2026年第2四半期決算発表後のカンファレンス・コールで公表した。審査期限の8月22日までに実施されれば3ヶ月延期される可能性がある。また、米欧日などの商業化権を持つ日本新薬を提訴した件で、8月に予定された州裁判所における予備的差止命令の動議申立てを、FDA審査結果が出るまで延期する考えも明らかにした。

CAP-1002は他家心臓球由来細胞療法。同社は第2相偽薬対照試験のHOPE-2試験とDMDの自然歴データをエビデンスとして24年12月にDMDにおける心筋症の治療薬として承認申請したが、諮問委員会の急遽中止を経て、審査期限の1ヶ月以上前に審査完了通知を受領した。筆者のような部外者には大変驚きなことに、FDAはHOPE-2試験はフェールしており便益が確立したとは言えないと断じた。その後の同社の説明によるとノンパラメトリック検定では統計的に有意とのことだが、事前に設定された解析方法か否かは不明。また、この試験の主評価項目は上腕機能(Performance of the Upper Limbスコアによる)で、心筋症は50もある副次的/探索的評価項目の一つに過ぎないこともFDAは指摘した。

その後、第3相HOPE-3試験の成功を経て完全回答したが、筆者のような部外者には大変驚きなことに、FDAは統計解析計画第1.1版に基づく、変化率ではなく変化幅による解析はフェールしたことなどから否定的で、諮問委員会も同意した。その後の同社の説明によると、第1.1版の段階では確定しておらず同社が解析に用いた第3.0版が採用されたのは盲検解除前なので、事後的解析ではないとのこと。

今回、同社は、deramiocelの便益を二本の試験の主評価項目である上腕機能に変更する考えを明らかにした。HOPE-3試験は心筋症を合併していない患者も組入れられているので心筋症改善作用に有意差が出なくてもやむをえない面があり、今回の適応/便益のほうがエビデンスに即したストレートなものと言えるだろう。尤も、今後、3度目の大変な驚きが発生しないとは限らない。今回の発表後に株価が6ドル台に急反発したが、4ヶ月前に付けた35ドルと比べると低迷したままだ。

リンク: 26年第2四半期決算報告書(フォーム10-Q、33頁に関連記載)


ITM社のGEP-NETs放射線療法は審査完了に
(2026年8月10日発表)

ドイツのITM Isotope Technologies Munich SEは米国でITM-11(n.c.a. 177Lu-edotreotide)をソマトスタチン受容体陽性の切除不能GEP-NETs(膵消化管神経内分泌腫瘍)薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。薬効や安全性に関する指摘や追加情報の請求はなく、CMC(化学製造管理)や第3者施設の査察に関する言及があったとのこと。

ベータ線を放出する無担体ルテチウム177と、ソマトスタチン受容体アゴニスト及びラジオアイソトープのキレート剤の複合体。第3相COMPETE試験でグレード1/2のGEP-NETsの1/2次治療を受ける患者を組入れてPFS(無進行生存期間)をeverolimusと比較したところ、メジアン23.9ヶ月対14.1ヶ月、ハザード・レシオ0.67、p=0.022と良好な結果が出た。全生存期間は中間解析段階だがハザード・レシオ0.78と好ましい方向を向いている。

リンク: プレス・リリース

【承認】


BMSのCELMoDが承認
(2026年8月13日発表)

FDAはブリストル マイヤーズ スクイブのZenbexus(iberdomide)を多発骨髄腫用薬として加速承認した。プロテアソム阻害剤及び免疫調停薬を含む1次以上の治療歴を持つ患者に、ジョンソン エンド ジョンソンの抗CD38抗体Darzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)及びdexamethazoneと併用する。Zenbexusは同社がセレブロンE3リガーゼ調節剤と呼ぶ新種の免疫調停薬の承認第1号で、1mgを21日間反復投与し7日間休む投与スケジュール。

1~2次治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発/難治患者を組入れた第3相EXCALIBER-RRMM試験で残存病変陰転を伴う完全反応率が41%と、Zenbexusではなくプロテアソム阻害剤Velcade(bortezomib)を併用した群の21%を大きく上回った。尚、このサロゲート・マーカーに基づく承認は今回が初めて。通常の完全反応率よりハードルが高いため延命効果との相関性が高いと考えられている。先輩類似薬と同様に胚胎毒性と静脈動脈血栓塞栓症が枠付き警告、警告注意事項は致死例も含む感染症、好中球減少症、二次性腫瘍。

同社のCELModはmezigdomideも日米欧で承認申請中。同社の先輩薬であるRevlimid(lenalidomide)と抗CD38抗体による1次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発/難治多発骨髄腫を組入れて、carfilzomibとdexamethasoneのKdレジメンに追加する便益を検討した第3相で、PFSが有意に向上した。両剤は今は対象患者が異なるが、そのうち棲み分けが曖昧にならないか、老婆心を持つ。

リンク: プレス・リリース


タウNFTのPET検査薬が承認
(2026年8月14日)

Lantheus Holdings(Nasdaq:LNTH)は、FDAがTauklarify(florquinitau F 18)を承認したと発表した。成人のアルツハイマー病の診断に際して、タウNFT(神経原繊維変化)を評価するためのPET造影剤。認知機能低下やアルツハイマー病を対象とした臨床試験二本で、感度や特異性が標準的検査方法と非劣性だった。

23年にCerveau Technologiesを買収して入手したもの。尚、Lantheusは、今月、ボストンのCuriumに買収されることで合意した。

リンク: プレス・リリース

【医薬品の安全性】


プラダー・ウィリ症候群用薬の安全性に関する医師声明
(2026年8月11日発表)

過食や知的発達障害などを伴う希少遺伝子疾患であるプラダー・ウィリ症候群(PWS)の治療を担う7人の医師が、Foundation for Prader-Willi Researchなどの患者支援団体を通じて、患者や医療従事者向けの声明を発表した。Soleno TherapeuticsのVykat XR(diazoxide choline、通称DCCR)に関するもので、因果関係は明らかではないが浮腫や呼吸器系、循環器系疾患の深刻有害事象がFDAに報告されているため配慮・注意を促した。

同薬の第3相は127人規模の偽薬対照治療試験がフェールしたが、ラン・イン期間に投与して応答した患者だけを組入れた離脱試験で継続投与群の過食質問票(HQ-CT)成績が偽薬スイッチ群を有意に上回り、25年3月に米国で承認された。4歳以上の過食を伴う患者に一日一回、経口投与する。高血糖と体液貯留/浮腫が警告注意事項となっているので、程度や頻度はともかく、リスクは認知されていた。

今回の、Vykatの臨床試験に参加したりSoleno/Neurocrineにコンサルティングを行ったことがある7人の声明によると、FDAの有害事象監視システムには浮腫などの深刻有害事象が26年7月末時点で100例以上届出されており、うち7例は致死的だった。

PWSは疾病自体が様々な合併症のリスクがあり同時副用薬も多いため因果関係は明らかではない。しかし、PWS患者登録のデータと比べると報告頻度が高い(患者背景が異なる可能性もあるので一概には言えないことを注記している)。PWS患者は痛みや不快感を医療従事者に訴えないことも珍しくないので余計配慮が必要と考えているようだ。

Solenoは今年4月にNeurocrine Biosciencesが29億ドルで買収合意している。

リンク: Foundation for Prader-Willi Researchの発表
リンク: 医師7名の声明文(pdfファイル)

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26/8推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/8推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
26/9/11TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤)
26/9/19UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型)
26/9/21Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
26/9/22Ionis PharmaceuticalsのION373(zilganersen、アレキサンダー病)
26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
26/9/30Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症)
諮問委員会
26/9/23MCGP:Grail社のGalleri多癌種早期探知血液検査


今週は以上です。

2026年8月8日

第1271回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • Arrowhead社、優先審査バウチャを2.15億ドルで取得へ 
  • Jazz社、Zepzelcaの一部適応を返上へ 
  • 大塚のシベプレンリマブがIgA腎症の悪化を防ぐ 
  • ボックスゾゴを軟骨低形成症に適応拡大申請 
  • MSD、RSVワクチンの2年目接種を承認申請 
  • 多種類癌スクリーニング検査が諮問委員会上程へ 
  • 7月のEU承認申請 
  • Replimune社、紆余曲折を経て最初のゴールに到達 
  • モデルナ、インフルエンザ・ワクチンが承認 
  • 武田薬品のナルコレプシー用薬が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


Arrowhead社、優先審査バウチャを2.15億ドルで取得へ
(2026年8月4日発表)

米国カリフォルニア州のArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)は、apolipoprotein C-IIIの発現を妨げるsiRNA薬、Redemplo(plozasiran)の適応拡大を早期実現するため希少小児疾患優先審査バウチャを2.15億ドルで取得することで合意した。相手方は非公表。FDAの審査期間を10ヶ月から6ヶ月に短縮することができる優先審査バウチャの価格は当初は1億ドル前後が多かったが、2年前に1.5億ドル、最近では2億ドル程度で売買される事例が増えている。2.15億ドルというのは、当方は初耳の水準だ。

Redemploは25~26年に米国とEUで成人のカイロミクロン血症候群におけるトリグリセライド抑制薬として承認された。重度トリグリセライド血症の第3相試験が成功、26年内に適応拡大申請する考え。

競合薬はIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のapolipoprotein C-III標的アンチセンス薬、Tryngolza(olezarsen)。24年に米国で、25年にはEUでも、家族性抗カイロミクロン血症に承認され、今年6月には米国で重度高トリグリセライド血症に適応拡大した。Arrowhead者がWAC(問屋取得価格)を著しく安価に設定したため、今年4月には対抗値下げを断行している。

リンク: 26年第2四半期決算発表リリース(関連記述はp20)


Jazz社、Zepzelcaの一部適応を返上へ
(2026年8月3日発表)

アイルランドに便宜置籍するJazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)は、26年第2四半期決算発表に合わせて、Zepzelca(lurbinectedin)の適応のうち転移小細胞性肺癌の進行/再発後治療を削除すべく第3四半期(7-9月)にFDAにレーベル変更申請する計画を公表した。市販後薬効確認試験がフェールしたため。もう一つの、進展期小細胞性肺癌の一次治療後維持療法は変更ない。

海洋生物から薬の種を見つけ出すスペインのPharmaMarからライセンスしたポリメラーゼII阻害剤。これまでの経緯は、

  • 20年6月、米国で第2相試験のORR(客観的反応率)などに基づき転移小細胞性肺癌の再発治療薬として加速承認。
  • 20年12月、市販後薬効確認試験候補の一つであった第3相doxorubicin併用実薬対照試験で優越性解析がフェール。FDAは、加速承認の用法と比べ用量が少なく単剤投与ではないことなどから、承認取消を求める市民請願を却下。
  • 24年10月、ロシュが主導した第3相IMforte試験が成功。進展期小細胞性肺癌の一次治療としてロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)と化学療法を併用し疾病安定化以上の成果があった患者にTecentriqだけでなくZepzelca(用量は加速承認と同じ)も併用することで全生存期間などが改善した。25年10月に米国で適応拡大が承認。この試験も市販後薬効確認試験候補であったはずだが、FDAは加速承認の本承認切替を見送った。尚、本試験に基づき今年5月にEUでPharmaMarが承認取得、6月には日本でメルクバイオファーマが承認申請した。
  • 26年6月、第3相LAGOON試験がフェール。転移小細胞性肺癌再発治療における単剤群(用量は加速承認内容と同じ)およびirinotecan併用群の全生存期間を医師が選んだ薬(irinotecanまたはtopotecan)の群と比較したところ、irinotecan併用群は有意に上回らず、単剤群は数値上、下回った。

リンク: プレス・リリース

【新薬開発】


大塚のシベプレンリマブがIgA腎症の悪化を防ぐ
(2026年8月4日発表)

大塚ホールディングスはVoyxact(sibeprenlimab-szsi)がIgA腎症によるeGFR(推算糸球体濾過量)の悪化を防いだと発表した。6月に成功したことだけ発表していたが、今回、GlomCon Hawaii 2026学会でデータを公表した。

米国で25年11月に加速承認された抗APRIL抗体。APRILがBCMA受容体に結合して形質細胞の生存を増強したり、TACI受容体に結合してB細胞の生存と分化を誘導するのを妨げる。18年にマサチューセッツ工科大学発in silico創薬ベンチャーであるVisterraを4.3億ドルで買収して入手した。加速承認のエビデンスとなった第3相VISIONARY試験は、標準療法を受けている成人患者510人を組入れて、400mgを4週毎皮下注する効果を検討した。主評価項目である第9月24時間uPCR(尿蛋白クレアチニン比)が50.2%低下、偽薬群の2.1%上昇を大きく上回る効果を示した。今回のデータは当試験の共同主評価項目である第24月のeGFR。年間スロープ分析でベースライン比+0.3mL/分/1.73m2となり、偽薬群の-4.2mL/分/1.73m2を有意に上回る悪化抑制作用を示した。48週段階のデータや、第2相ENVISION試験と同じような結果だ。

大塚は本承認切替に向けてローリング承認申請に着手している。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


ボックスゾゴを軟骨低形成症に適応拡大申請
(2026年8月6日発表)

バイオマリン(Nasdaq:BMRN)は、26年第2四半期決算発表に合わせて、最近米国でVoxzogo(vosoritide)を軟骨低形成症に適応拡大申請したことを明らかにした。27年のロンチを見込んでいる。修飾C型ナトリウム利尿ペプチド類縁体で、21~22年に欧米日で軟骨無形成症治療薬として承認されている。今回のエビデンスとなるCanopy-HCH-3試験では3~17歳の患者80人を組入れて身長の52週AGV(成長ベロシティ年率)を偽薬と比較したところ、2.33cmの有意な群間差があった。

リンク: プレス・リリース


MSD、RSVワクチンの2年目接種を承認申請
(2026年8月6日発表)

MSDは抗RSVワクチンEnflonsia(clesrovimab-cfor)を2回目のRSVシーズンを迎える幼児に用いる適応拡大をFDAに申請し受理されたと発表した。審査期限は27年3月22日なので、26/27年シーズンには殆ど間に合わない。EUで6月に適応拡大申請したことも公表した。

RSウイルスに結合して下部気道感染症を抑制する予防用抗体医薬。25~26年に米欧日で初めてのRSVシーズンを迎える乳幼児向けに承認された。2年目の薬効確認試験は専ら未熟児慢性肺疾患や先天性心臓疾患の患者を組入れてRSV関連下部気道感染症のリスクを観察したところ、180日間に7.3%が罹患、3.0%がRSV関連入院した。この数値はEnflonsia群の1年目のデータと同様だった。

リンク: プレス・リリース


7月のEU承認申請
(2026年8月4日付資料から抜粋)

EMAによると、7月に新薬承認審査を開始した品目は以下の通り。

申請者呼称一般名種類適応症米国
ノバルティスVanrafiaatrasentanエンドセリンA受容体拮抗剤成人の原発性IgA腎症25/4承認
Biodan Yelah推自家ケラチノサイトと他家線維芽細胞を他家血漿マトリクスに懸濁成人小児の部分深達性真皮熱傷と全層熱傷不明
PharvarisPHVS416deucrictibantBradykinin B2受容体拮抗剤12歳以上の遺伝性血管浮腫の治療26/7承認申請受理
不明不明不明抗IGF-1受容体抗体、IgG1成人の甲状腺眼症不明
エーザイDayvigolemborexantオレキシン1/2受容体拮抗剤成人の不眠症19/12承認
出所:EMAなど。一般名(呼称)と適応症以外は主として会社発表や当方の推測による。

【承認審査・委員会】


多種類癌スクリーニング検査が諮問委員会上程へ
(2026年8月7日発表)

米国のGrail(Nasdaq:GRAL)は1月にGalleri多種類癌早期探知(MCED)アッセイをFDAにPMA(市販前申請)したが、9月23日に諮問委員会(Molecular and Clinical Genetics Panel of the Medical Devices Advisory Committee)で討議されることが決まった。血中の循環無細胞DNAのメチル化と腫瘍の関係を機械学習させ、従来の方法では探知できない癌や早期段階の癌を検出する手がかりとするもの。実用化すれば早期発見に資するが、早期発見が患者の寿命の増加につながるかは未確認であり、また、偽陽性も多いので、論点になるだろう。

主エビデンスは北米で実施されたPATHFINDER2試験と英国のNHS-Galleri試験。前者は50歳以上の過去3年間に癌と診断されていない25878人を対象に、標準的なスクリーニング検査(マンモグラフィーやPSA検査など)に追加する便益を検討した。今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)における発表によると、Galleri群では287人が陽性判定され、うち173人が癌と診断された。PPV(陽性的中率)は60%、特異度99.6%、腫瘍部位推定の正確度91%だった。英国試験は14.2万人の巨大試験で、年1回、3年間検査してステージIII/IVの腫瘍を減らす便益を確認しようとしたが、フェールした。罹患率比は1.03。腫瘍と診断されたのはGalleri群が706人、対照群688人で、うち、ステージIIIは364人対291人で上回った。PATHFINDER2試験と同様な指標を見ると、陽性判定1801人、937人が癌と診断され、陽性的中率は52%、特異度98.9%、腫瘍部位推定の正確度は92%だった。有害事象は390人で発生し、うち276人は採血に伴うものだった。陽性判定例のうち侵襲的検査に至った例は少なかった模様。

米国ではメディケア加入者を対象とする非無作為化割付け試験、REACHも進行中で、ステージIV腫瘍罹患率を対照群と比較する。

リンク: プレス・リリース

【承認】


Replimune社、紆余曲折を経て最初のゴールに到達
(2026年8月6日発表)

FDAはReplimune Group(Nasdaq:REPL)のTudriqev(vusolimogene oderparepvec-wtpg、通称RP1)を切除不能進行皮膚黒色腫用薬として加速承認した。抗PD-1抗体による8週間以上の治療中に進行した患者に、BMSの抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と併用する。市販後薬効確認試験である第3相IGNYTE-3試験は抗PD-1抗体だけでなく禁忌でなければBMSの抗LAG-3抗体relatlimab歴も持つ患者400人を組入れて、全生存期間を医師が選んだ薬を投与する群と比較するもので、結果が出るのは29年と遅い。

単純ヘルペスウイルス1型にGM-CSFとテナガザル白血病ウイルスのエンベロープ蛋白の遺伝子を組入れて免疫原性を高めたもの。腫瘍の最大長1cm当り1mL、最大10mLを2週毎腫瘍内投与する。第2相IGNYTE試験で140人に投与したところ、薬効解析対象91人におけるORR(客観的反応率)は24.2%、メジアン反応持続期間は14.1ヶ月だった。尚、過去に会社側は、FDAが要請したRECIST 1.1ベースの解析でORR32.96%、メジアン反応持続期間は35ヶ月と発表していた。治験論文でも解析対象は140人だった。なぜこんなに変わったのか、なぜFDAは91人のデータしか認めなかったのか、不思議だ。

同社は24年11月に承認申請したが、IGNYTE試験のデザインが不十分として審査完了通知を受領した。一部報道によると、25年12月にCDER(小分子薬の審査部門)のヘッドを退任したRichard Pazdurが承認に反対したとのことだ。同社は僅かなデータを追加して25年10月に再申請し、初回とは異なるメンバーの審査を受けたが、今年4月に再び審査完了通知を受領した。同社は、一部報道によるとホワイト・ハウスにおける陳情を経て、今年6月に再申請したところ、7月の諮問委員会(OCTGTAC)で13人中10人の委員の支持を獲得、今回の承認に繋がった。

承認は最初のゴールだが本当のゴールは医師や患者の支持を得ることだ。加速承認なので本承認を取得することも次の課題になる。

リンク: プレス・リリース


モデルナ、インフルエンザ・ワクチンが承認
(2026年8月5日発表)

モデルナはFDAがmFlusiva(開発コードmRNA-1010)を50歳以上における季節性インフルエンザ予防用ワクチンとして承認したと発表した。26年1月に承認申請、2月に不受理との通知を受けた経緯がある。65歳以上の感染予防効果を検討する試験の対照薬が高量抗原ワクチンではなかったことが主因のようだが、FDAは、65歳以上に関しては免疫原性試験に基づく加速承認申請に変更して不受理を取消す大岡裁きが断行、6月の諮問委員会(VRBPAC)で9人全員の支持を獲得、承認に至った。mRNAワクチンの強みでサイクルタイムが短いため、今シーズンに余り遅れないで発売できるのではないか。

不受理が受理に代わったの背景は明らかではないが、承認申請から承認までの間にFDAのCBER(生物学的製剤審査部門)のヘッドであるVinay Prasadが4月をもって退任、5月にはMarty Makary長官も退任しており、様々なサプライズを引き起こしてきたメンバーが残り2名になったことが関連しているのかもしれない。

尚、EUではCOVID-19ワクチンとの二種混合製品、mCOMBRIAXが4月に承認されている。同ワクチンは日欧でも承認申請中。

リンク: プレス・リリース


武田薬品のナルコレプシー用薬が承認
(2026年8月5日発表)

FDAは武田薬品のOrzeyful(oveporexton)を成人のナルコレプシータイプ1の治療薬として承認した。オレキシン産生ニューロンの減少によりオレキシンが欠乏、日中でも覚醒を維持するのが困難になったり、情動脱力発作を発現したりする疾患で、覚醒剤系などの薬は承認されているが、オレキシン欠乏を補い様々な症状を改善する薬が承認されたのは初めて。DEA(麻薬取締役局)における管理物質指定の決定後に発売される。

オレキシン2型受容体作動薬。1mgまたは2mgを起床時と3~5時間後に経口投与する。臨床試験では眠ってしまうまでの時間が偽薬比20分前後長期化し、脱力発作頻度が6割程度低下した。有害事象は過半の患者で不眠と頻尿が発生、1割程度で無症候性のクレアチン・フォスフォキナーゼ異常上昇(5xULN超)が見られた。CYP3A4強阻害剤の併用は禁忌。

7月に中国で承認、日本も第1部会を通過したところ。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26/8推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/8推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
26/9/11TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤)
26/9/19UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型)
26/9/21Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
26/9/22Ionis PharmaceuticalsのION373(zilganersen、アレキサンダー病)
26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
26/9/30Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症)
諮問委員会
26/9/23MCGP:Grail者のGalleri多癌種早期探知血液検査


今週は以上です。

2026年8月1日

第1270回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • リットフーロの白斑試験が成功 
  • 新規慢性C型肝炎用薬の第3相、まず一本が成功 
  • アストラゼネカ、第3相結果をアップデート 
  • selinexorの内膜症試験はフェール 
  • ノボ、抗IL-6抗体の心血管アウトカム試験がフェール 
  • Axsome社、reboxetineを米国でナルコレプシーに承認申請 
  • UT社、肺動脈高血圧症の新薬を6月に承認申請していた
  • FDA諮問委員会、Replimuneのウイルス療法を支持! 
  • FDA諮問委員会、Capricor社のDMD細胞療法を支持せず 
  • プルヴィクトが去勢感受性前立腺癌に適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


リットフーロの白斑試験が成功
(2026年7月30日発表)

ファイザーはLitfulo(ritlecitinib)を非分節型白斑(NSV)の治療に用いる第3相試験二本で主目的を達成したと発表した。グローバルな承認申請に向かう考え。

23年に日米欧で円形脱毛症の治療薬として承認された、経口TEC/JAK3阻害剤。NSVでは日本も参加してTranquilloとTranquillo 2試験が実施された。前者は12歳以上の未成年と成人607人を円形脱毛症と同じ50mg一日一回または偽薬に2対1割付け。後者は成人1567人を50mg群、100mg群、そして偽薬群に無作為化割付けしたが、50mgは探索的解析という位置付けだ。主評価項目は52週F-VASI75(顔面の白斑領域指数が75%以上改善した患者の比率)。FDA向け限定で52週T-VASI50(全身の同指数が50%以上改善した患者の比率)も共同主評価項目とした。結果は、どちらの試験も、試験用量が偽薬比有意な、臨床的に意味のある差を示した。

NSVはIncyte(Nasdaq:INCY)のJAK阻害剤Opzelura(ruxolitinibクリーム)が22年に米国で適応拡大、23年に欧州で初承認されている。また、アッヴィがJAK阻害剤Rinvoq(upadacitinib)を適応拡大申請中で、6月にはEMAのCHMPが肯定的意見をまとめた。

リンク: プレス・リリース


新規慢性C型肝炎用薬の第3相、まず一本が成功
(2026年7月28日発表)

米国のAtea Pharmaceuticals(Nasdaq :AVIR)は、慢性C型肝炎の治療薬として開発している合剤が北米地域の第3相試験で主目的を達成したと発表した。欧亜アフリカにおける類似したデザインの第3相は27年初めに結果が判明する見込み。

この、NS5Bポリメラーゼ阻害剤bemnifosbuvirとMSDからライセンスしたNS5A阻害剤ruzasvirの合剤の第3相は、未治療慢性C型肝炎患者を組入れて、肝硬変を合併していない患者は8週間、合併例は12週間、一日一回経口投与する便益をギリアド・サイエンシズのEpclusa(NS5Bポリメラーゼ阻害剤sofosbuvirとNS5A阻害剤の合剤)の12週コースと非盲検下で比較している。主評価項目は24週におけるSVR(持続的ウイルス学的反応率・・・治療完了後12週または16週経ってもウイルスを検出できない)。北米試験はFDAが推奨した修正intent-to-treatベースの解析(n=905)で、各群93.9%と94.8%となり、群間差の95%上限が閾値の5%を下回った。肝硬変なき721人では93.5%対94.6%と短期間の治療で同程度の成果を上げ、肝硬変あり184人でも95.4%対95.4%だった。安全性は同程度だった。

bemnifosbuvirはsofosbuvirと比べて遺伝子型1~5のC型肝炎ウイルスに対する力価が10倍と高い。アッヴィのMavyret(NS3/4A阻害剤glecaprevirとNS5A阻害剤pibrentasvirの合剤)は肝硬変を合併していても未治療患者なら8週コースで足りるが、Ateaの合剤と異なり、空腹時服用はできない。まあ、一日一回なら大きな問題ではないだろうが。

リンク: プレス・リリース


アストラゼネカ、第3相結果をアップデート
(2026年7月27日発表)

アストラゼネカは26年第2四半期決算発表に合わせて以下の複数の第3相試験の結果を公表した。

  • 抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)とtremelimumab:NILE試験が部分的に成功。これは日本も含む施設で未治療の切除不能局所進行/転移性尿路上皮腫885人を組入れた試験。gemcitabineとcisplatinまたはcarboplatinの併用レジメンにImfinziを追加した群は全生存期間が統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を見たが、維持期に抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab)も併用した群はフェールした。
  • 抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab):EMERALD-2試験はフェール。治癒的切除/焼灼を受けた高リスク肝細胞腫のアジュバント療法として、bevacizumabとの二剤併用を偽薬2剤併用と比較したもの。主評価項目は放射線学的無再発生存期間。
  • Arcus Bioscienceの抗TIGHT抗体domvanalimab:PACIFIC-8試験を中止。アストラゼネカと協業で非小細胞性肺癌における化学放射線療法後維持療法としてImfinziに追加する便益を検討していたが、ギリアド・サイエンシズの抗PD-1抗体に追加した第3相試験が二本とも無益中止となったことを重視した。
  • AZD0901/CMG901(sonesitatug vedoxin):中国のKYM Biosciencesからライセンスした抗Claudin 18.2抗体薬物複合体。中国や日本も参加したグローバルCLARITY-Gastric01試験でCLDN18.2発現進行/転移胃/胃食道接合部腺癌の二次治療における便益を医師が選んだ治療法と比較したところ、主評価項目の一つである3次治療以降の患者における全生存期間が統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を示し、副次的評価項目である全被験者の全生存期間の解析も良好だった。一方、共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間、評価者盲検)はトレンドに留まった。一般的には前者の成功のほうが重要だが、どうだろうか。
  • Ultomiris(ravulizumab-cwvz):TMA-313試験で有意差出ず。12歳以上の造血幹細胞移植後血栓性微小血管症における26週イベント・フリー・サバイバル(血栓性微小血管症関連の臨床的悪化又は死亡)を改善する効果は偽薬比トレンドに留まった。当局と相談する考えなので、内容はそれほど悪くなかったのだろう。

  • リンク: 26年第2四半期決算発表リリース


    selinexorの内膜症試験はフェール
    (2026年7月30日発表)

    Karyopharm Therapeutics(Nasdaq:KPTI)はXpovio(selinexor)の新用途開発状況をアップデートした。まず、p53野生型進行/難治内膜腫の第3相、042試験がフェールした。化学療法(含チェック・ポイント阻害剤可)に応答した患者の維持療法として60mgを週一回経口投与する便益を偽薬と比較したが、第1順位の主解析である修正intent-to-treatベース(n=236)のPFS(無進行生存期間)が偽薬比ハザード・レシオ0.76(95%信頼区間0.51-1.12、片側p=0.079)と、トレンドに留まった。同社は内膜腫領域における投資を抑制し多発骨髄腫や骨髄線維症に重点を置く考え。

    先立つ第3相ではPFSのハザード・レシオが0.7、p=0.0486となり特にP53野生型103人で良績を上げたが、内容はそれほどでもなかったようで、FDA相談を経て今回の試験に進んだ。

    お口直しということか、Xpovioを8月に骨髄線維腫に適応拡大申請する計画も公表した。3月に第3相SENTRY試験が成功、ruxolitinibと併用でSVR35(脾臓量35%縮小奏効率)が50%とruxolitinib・偽薬併用群の28%を有意に上回った。全生存期間はハザード・レシオ0.43(95%信頼区間0.19-1.00)、名目片側p=0.0222となっており、もう少し成熟すれば有意水準に到達するかもしれないだ。

    Xpovioは核外輸送蛋白のexportin 1に結合・阻害する小分子薬。19年に米国で、21年にはEUでも、多発骨髄腫の再発治療薬として承認された。20年には米国で再発/難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として加速承認を受けたが、他剤が承認され市販後薬効確認試験の実施が困難になったという理由で、今年4月に承認返上している。

    リンク: プレス・リリース(内膜腫試験フェール)
    リンク: プレス・リリース(骨髄線維症の承認申請計画)


    ノボ、抗IL-6抗体の心血管アウトカム試験がフェール
    (2026年7月31日発表)

    ノボ ノルディスクは抗IL-6完全ヒト化抗体ziltivekimabの第3相Zeus試験がフェールしたと発表した。この日本も参加した試験は、アテローム硬化症と慢性腎臓疾患を併発しhsCRPが2mg/L以上と炎症性の患者6300人超を15mg月一回皮下注群と偽薬群に無作為化割付けして3点MACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的卒中の複合評価項目)を比較したが、ハザード。レシオ0.99となり、殆ど効果がなかった。後期第2相試験と同様にhsCRPや遊離IL-6の減少が見られたが、臨床的便益に繋がらなかった。

    2015年にアストラゼネカからスピンアウトしたCorvidia Therapeuticsを2020年に買収して入手した。第3相は他に心不全の症状緩和を目指すHermes試験と心筋梗塞の再発予防を目指すArtemis試験が進行中。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    Axsome社、reboxetineを米国でナルコレプシーに承認申請
    (2026年7月15日発表)

    米国NY州のAxsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、AXS-12(reboxetine)をナルコレプシー患者の脱力発作を抑制する適応・効能でFDAに承認申請し受理された。審査期限は27年5月1日。現時点では諮問委員会上程の計画はない。24年に成功発表された第3相治療試験と同離脱試験で脱力発作を偽薬比大きく抑制した。同社によると、特許は少なくとも2039年まで有効。

    活性成分はノルエピネフィリンの再取込を阻害し皮質ドパミンを調節する作用を持つ。ファルマシアが開発し、1997年に英国などで鬱病治療薬Edronaxとして承認されたが、米国では3回目の申請でも承認されなかった。抗鬱剤は偽薬効果が出やすく承認されている薬でも有意差が出ないことがあるため、特にこの頃は、承認取得に梃子摺る企業が多かった。Axsomeはファルマシアを買収したファイザーから2020年に臨床試験成績などを取得した。

    リンク: プレス・リリース


    UT社、肺動脈高血圧症の新薬を6月に承認申請していた
    (2026年7月29日発表)

    United Therapeutics(Nasdaq:UTHR)は、ralinepagの第3相試験論文がLancet誌で刊行されたことを発表すると共に、6月に米国で承認申請したことを明らかにした。非プロスタノイド系プロスタサイクリン受容体アゴニストで、日本新薬/ジョンソン エンド ジョンソンのUptravi(selexipag)の活性代謝物であるMRE-269と比べ受容体親和性が6倍と高く、投与頻度は一日2回経口投与ではなく1回で足りる。第3相ADVANCE OUTCOMES試験は肺動脈高血圧症(PAH)を対象に、臨床的悪化イベントを抑制する効果を偽薬と比較したもの。解析対象は687人で、うち8割はPAH治療薬2剤を同時使用、7割はNYHA機能分類がIIとそれほど重度ではない。試験薬は50mcgで開始し、忍容性や応答に応じて滴定した。52週時点のメジアン用量は300mg。

    結果は、ハザード・レシオが0.45、p<0.0001だった。複合評価項目のうち差が大きかったイベントは疾病進行(1年半程度の追跡期間中の試験薬群の発生率は3%、偽薬群は11%)、PAH悪化による注射薬や吸入薬の投与、長期臨床応答性不十分。ハードな評価項目である全死亡やPAH悪化による非選択的入院は大差なかった模様だ。副次的評価項目では6分歩行距離(ベースライン値は439m)が偽薬比20m長かった。有害事象による治験離脱率は19%対3%と上回った。

    18年にArena Pharmaceuticalsからライセンスしたもの。Arenaは22年にファイザーに買収された。

    リンク: プレス・リリース
    リンク: McLaughlinらの治験論文抄録(Lancet)


    【承認審査・委員会】


    FDA諮問委員会、Replimuneのウイルス療法を支持!
    (2026年7月30日発表)

    FDAはCTGTAC(細胞組織遺伝子療法諮問委員会)を招集し、Replimune Group(Nasdaq:REPL)が抗PD-1抗体歴を持つ進行黒色腫の治療薬として加速承認を申請しているRP1(vusolimogene oderparepvec)について意見を聞いた。意外なことに13人中10人がエビデンスとなる第1/2相単群試験、IGNYTE試験の成績を支持した。

    遺伝子組換え型ヒト単純ヘルペス・ウイルス1型を腫瘍細胞に注射して破壊させる、ウイルス療法。類薬では2015年に米欧でアムジェンのImlygic(talimogene laherparepvec)が切除不能黒色腫に承認されているが、RP1は、GM-CSFの遺伝子だけでなく免疫原性の高いGALV-GP(テナガザル白血病ウイルスのエンベロープ蛋白)の改変遺伝子も組み込んでいる。Imlygicは手術不適進行黒色腫に単剤投与した試験が成功、Keytruda(pembrolizumab)併用フロントライン試験はフェールしたが、IGNYTE試験は成人の抗PD-1抗体に応答しない進行黒色腫にnivolumabと併用するレジメンを採用した。Imlygicは持続的反応率や反応持続期間がGM-CSF群を有意に上回ったが、IGNYTE試験は倫理面の配慮から対照群が設定されなかった。

    IGNYTE試験(n=140)ではORR(客観的反応率、独立中央評価、修正RECIST 1.1ベース)が33.6%、完全反応率も16.4%あった。メジアン反応持続期間は24.6ヶ月。FDAの要請で行われたRECIST 1.1ベースの解析も各32.9%と35ヶ月超と、良好。有害事象はリパーゼや肝臓酵素、ビリルビンなどが上昇し、サイトカイン放出症候群や心筋症などが見られた。第3相は24年にIGNYTE-3試験が開始され、Opdualag(nivolumabと抗LAG-3抗体relatlimabの合剤)などを用いる群と全生存期間を比較している。結果が出るのは29年の見込みで、加速承認申請案件の市販後薬効確認試験候補としては悠長だ。

    同社は24年11月に承認申請したが25年7月に審査完了通知を受領した。10月に追加申請し、どういう経緯かFDAは最初の審査と異なるチームが審査したが、今年4月に審査完了通知を受領した。臨床試験のデザインや成績に関する問題などが指摘された。同社は、Wall Street Journal報道によるとホワイト・ハウスにおける陳情を経て、再申請した。審査期限は8月2日なので日程がタイトだ。

    FDA側は諮問委員会で試験デザインや薬効評価方法、治験結果の外挿性などに懐疑的な姿勢を示したが、委員は好意的だった。サルベージ段階の使用ならこの程度のエビデンスでも十分という考えなのだろう。そういえば、Imlygicの諮問委員会(CTGTACとODACの共済)もFDA側は懐疑的だったが諮問委員は薬を支持が22人、反対は1人と圧倒的な差が出た。

    リンク: プレス・リリース


    FDA諮問委員会、Capricor社のDMD細胞療法を支持せず
    (2026年7月29日発表)

    FDAはCTGTAC(細胞組織遺伝子療法諮問委員会)を招集し、Capricor Therapeutics(Nasdaq:CAPR)がデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の上腕機能を改善する薬として承認申請した他家心臓球由来細胞療法、CAP-1002(deramiocel)について意見を聞いた。諮問委員のうち薬効のエビデンスは十分と判定したのは3人、不十分は9人だった。今回のクラスII審査の期限は8月22日と間がないため、3ヶ月延期になる可能性があるが、何れにせよ、委員長が誰でも審査担当者が否定的な薬はよほどのことがない限り承認されない。

    同社は20人の患者を組入れた第2相偽薬対照試験、HOPE-2を実施、第12月のPUL(上腕機能評価)総合スコアが偽薬比有意に改善し、LVEF(左心駆出率)の改善も見られたため、自然歴対照データなどとともに24年12月に承認申請したが、審査完了通知を受領した。意外なことに、FDAの評価ではHOPE-2はフェールしており、Capricorのエビデンスであるノンパラメトリック検定による評価は採用されなかった。

    同社は並行して米国患者106人を組入れた第3相HOPE-3試験を実施、25年12月に成功を発表し、今月、Lancet誌に治験論文が刊行された。PUL総合スコアが3.86%低下と、偽薬群の8.41%低下ほどではなく、群間差は4.55パーセンテージ・ポイント、p=0.029だった。この解析は統計解析計画version 3.0(SAP 3.0)に基づくもの。%ではなく変化幅の群間差はLancet論文によれば1.2、同社資料では1.1でp=0.05だった。

    今回、FDAは、試験開始の後、かつ盲検解除の前に作成されたSAP3.0ではなく、事前に設定されたSAP1.0に基づき、PUL総合スコアの変化幅の群間差は0.66、p=0.24となりフェールしていると指摘。一方、会社側は、SAP1.0は素案に過ぎず事前に設定された解析計画ではないと主張した。尚、FDA分析の数値は上記数値とも異なるが、1.0と3.0は他にも様々な変更があるため、原因は不明。

    どちらの主張が正しいのか、よく分からないが、p=0.029というのはエビデンスが強固とは言い難いことを示しており、解析方法が変わると判定も変わるなら、更に言い難くなる。

    もう一つ気になるのは、同社が米日欧の独占商業化権を持つ日本新薬を5月に提訴したことだ。訴因の一つは、価格体系に関する合意を変更する必要が生じたのに日本新薬が応じないこと。風向きの変化に形振り構わず対応する同社のスタンスに同調しないのはFDAだけではないのだろう。

    リンク: MedPage Todayの報道
    リンク: McDonaldらのHOPE-3試験論文抄録(Lancet)

    【承認】


    プルヴィクトが去勢感受性前立腺癌に適応拡大
    (2026年7月31日発表)

    ノバルティスはFDAが放射性医療品Pluvicto(lutetium LU177 vipivotide tetraxetan)の適応拡大を承認したと発表した。22年に米欧で、25年には日本でも、PSMA陽性の遠隔転移去勢抵抗性前立腺癌の再発治療薬として承認されているが、今回、PSMA陽性転移去勢感受前立腺癌に標準療法と併用することが認められた。第3相PSMAddition試験でPFS(無進行生存期間、放射線学的評価)のハザード・レシオが0.72と偽薬併用群を有意に上回った。全生存期間は中間解析段階で未だ有意差は出ていないが、点推定値は良さそうなものが出ている。G3以上の有害事象発現率は50%対43%で上回った。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
    26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
    26/7推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
    26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
    26/8推武田薬品のTAK-861(oveporexton、ナルコレプシータイプ1)
    26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
    26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
    26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
    26/8/2ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/8/5モデルナのmRNA-1010(季節性インフルエンザ・ワクチン)
    26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
    26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
    26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
    26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
    26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
    26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
    26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
    26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
    26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
    26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
    26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
    26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
    26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
    26/9/11TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤)
    26/9/19UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型)
    26/9/21Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
    26/9/22Ionis PharmaceuticalsのION373(zilganersen、アレキサンダー病)
    26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
    26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
    26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
    26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
    26/9/30Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症)


    今週は以上です。

    2026年7月26日

    第1269回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • アムジェン、タブネオスの広聴機会を請求 
    • ブンディブギョ株エボラウイルス疾患による死者が早くも1000人に 
    • JNJ、テクベイリ・タービー併用二次治療試験が成功 
    • イーライリリー、トリプルGの第3相結果をまた公表 
    • HARMONi試験の全生存データがアップデート 
    • siRNA薬の重度高TG血症適応拡大試験が成功 
    • ギリアドとMSDの相乗り配合錠、第3相が成功 
    • サノフィも抗OX40L抗体の承認申請を断念 
    • イプセン、iBAT阻害剤の胆道閉鎖症試験はフェール 
    • 膵管腺腫の革命的新薬を承認申請 
    • ファイザー、ターゼナをCSPCに適応拡大申請 
    • ノバルティス、4品の承認申請を公表 
    • 7月のCHMP結果 
    • 大塚のADHD新薬が承認 
    • 硝子体注射用ベバシズマブが承認 
    • GSK、買収合意したばかりの企業のROS1阻害剤が承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    アムジェン、タブネオスの広聴機会を請求
    (2026年7月23日発表)

    アムジェンは、FDAがANCA関連血管炎治療薬Tavneos(avacopan)の承認を取消そうとしているため、広聴機会を請求する文書を送付すると共に、一般公開した。21~22年に日米欧で承認されるエビデンスとなった第3相Advocate試験でデータの不適切な取扱いがあったことが発覚、薬効データの頑強性が疑われ肝毒性などのリスクを上回ると言えなくなったことから、EUのCHMP(医薬品科学的評価委員会)も今年6月に承認取消するよう勧告した。100%効かないと断言できる訳ではないだろうが、どちらかと言えば、不正申請に甘い態度を示すと模倣犯が輩出する可能性を危惧したものだろう。

    発端は、アムジェンが22年に37億ドルで買収した、Tavneosを欧米承認まで進めたChemoCentryx社に関する株主代表訴訟。裁判の過程で、Advocate試験は主解析がp=0.1025とフェールしたが、奏効判定の妥当性が疑われた9人の再判定を行ない、試験薬群の6人中5人を持続的寛解達成例に変更していたことが発覚した(偽薬群の疑い例3人は変更なし)。尚、アムジェンは問題発覚後にデューク大に改めて盲検判定を要請したが、今回の文書によると、この再判定でもTavneos群の持続的寛解は偽薬群を有意に上回ったとのこと。

    問題は、主解析のフェール後に再検討が行われたことを当局に(今回の文書によるとアムジェンにも)報告していなかったこと。非劣性検定なので厳格な評価が必要だが、それ以前の問題だ。この薬は稀に深刻な肝臓有害事象が発生する。便益が明確でない以上、危険を受け入れる余地は小さいだろう。

    良く分からないのが肝毒性だ。26年1月時点で世界で25000人年以上の投与実績があり、うち米国は6500人とのことだが、売上高から推測すると患者数が一番多いのは最初に承認された日本だろう。ただそれにしても、特徴的な副作用であるVBDS(胆管消失症候群)の報告例31例中、日本が27例というのは偏りが過ぎる。残り4例中一人はカナダの中国系、2例は中国の文献報告なので、アムジェンは薬物遺伝学的な要因がある可能性にも言及している。また、日本では当初、添付文書で肝機能検査値等に関する具体的な投与再検討/中止基準が示されていなかったことが影響した可能性にも言及している。

    アムジェンは独英や日本で行われている市販後安全性調査の中間解析では特に肝臓リスクが浮上していないことも指摘している。日本のデータではVBDSは1例しか報告されていないようだ。調査のカバレッジが低すぎるのか、この種の調査に付き物な、調査施設のスクリーニング・バイアスが影響しているのかもしれない。

    リンク: アムジェンのFDA提出資料(7/23付)
    リンク: ADVOCATE試験論文の撤回通知(NEJM)


    ブンディブギョ株エボラウイルス疾患による死者が早くも1000人に
    (2026年7月22日発表)

    アフリカ地域では過去50年間にエボラウイルス疾患が散発的に流行し、過去最大規模となった2014~16年の大流行では、シエラレオネやリベリア、ギニアを中心に確認例で15261人、疑い例も含めると28652人の感染が報告され、うち11325人が死亡した。26年5月にコンゴ民主共和国(DRC)で始まった今回の流行は、まだそこまでは行っていないが、懸念されるのは、2014~16年の大流行では死亡者が1000人に達するまで8ヶ月かかったのに、今回は2ヶ月強と早いこと。実際に流行が始まったのは26年5月より前である可能性が高いと推測されているが、それにしても早い。感染拡大を抑えるには感染者の濃厚接触者を把握し隔離/自主隔離することが重要だが、追跡できているのは1割足らずに留まっている様子だ。新患の8割は既知の感染鎖と繋がっていはいない。実態を把握できないまま感染が新たなコミュニティや地域に広がっていることになる。死亡者の6割以上は治療を受ける前に亡くなっている。

    流行の中心地であるDRCのIturi地域はGoogleで衛星画像を見ても森と川らしきものばかりで、建物が見えない。ホテルを検索すると国境を跨いでウガンダ側には複数あるが、Ituri側には表示されない。今回のステルス拡大は、おそらく、都市化が進んでいないこともネックになっているのだろう。遺体の埋葬方法などについても住民の抵抗、反発が強いようだ。

    WHOの発表によると、今回のDRCにおける感染者は7月20日時点で確認例2473人、疑い例322人、感染確認者の死亡はこの時点では999人、確認例のCFR(症例致死率)は40%、回復者は482人。エボラウィルスのザイール株は治療薬やワクチンが承認されているが、今回流行しているBundibugyo株はまだ臨床試験が始まったばかりだ。

    リンク: MedPageTodayの報道
    リンク: エボラ感染症症例数(WHO)


    【新薬開発】


    JNJ、テクベイリ・タービー併用二次治療試験が成功
    (2026年7月23日発表)

    ジョンソン エンド ジョンソンは第3相MonumenTAL-6試験で主目的を達成したと発表した。lenalidomide及び抗CD38抗体を含む1~4次治療歴を持つ成人の再発/難治多発骨髄腫を対象に、同社の抗BCMAxCD3二重特異性抗体Tecvayli(teclistamab-cqyv)と抗GGPRC5DxCD3二重特異性抗体Talvey(talquetamab-tgvs)の併用法(Tec-Tal群)、及び、Talveyとpomalidomideの併用法(TAL-P群)の便益を標準療法(pomalidomide及びdexamethasoneをelotuzumabまたはbortezomibと併用)と比較したところ、どちらもPFS(無進行生存期間、独立委員会評価)と全生存期間が統計的に有意な、且つ、臨床的に意味のある改善を見た。Tec-Tal群のハザード・レシオはPFSが0.11、全生存期間は0.38。Tal-P群はPFSが0.27、全生存期間は未公表。

    同社は複数の多発骨髄腫用薬を持っているため様々な併用法や、病気のより早い段階における試験を進めている。他社も同じで、結果的に、一次治療や二次治療のレジメンが並立している。最初のうちは嬉しい悲鳴と呼んでいたが、どれをどの順番で使うのがベストなのか、その場合、効果が失われたらどれを使うのか、もうそろそろ交通整理してもらいたいものだ。今回のデータは中々のものなので、後から発売された薬が先輩を押しのける下剋上の時期が来たのかもしれない。

    リンク: プレス・リリース


    イーライリリー、トリプルGの第3相結果をまた公表
    (2026年7月23日発表)

    イーライリリーは、GLP-1/GIP/グルカゴン受容体アゴニスト(通称トリプルG)であるLY3437943(retatrutide)の第3相体重管理試験二本の結果を公表した。主要5本中4本が揃い、あとは睡眠時無呼吸試験だけとなった。27年第1四半期に承認申請する計画も明らかにした。

    第3相TRIUMPH-2試験は肥満症またはオーバーウェイトで二型糖尿病を合併する患者1152人を偽薬群、4mg群、9mg群、12mg群に無作為化割付けして週一回皮下注を80週間実施し、体重減少作用を比較した。結果は、Efficacy Estimandベースで、各群4.0%、12.7%、19.1%、20.8%低下し、主評価項目である9mg群と12mg群、そして参考群である4mgともに偽薬を大きく上回った(p値等は未公表)。intent-to-treatに近い解析方法であるTreatment Regimen Estimandベースの成績は記されていない。

    TRIUMPH-3試験はBMIが35kg/m2以上の重度肥満で心血管疾患を合併する高リスク患者(二型糖尿病は不問)1949人を偽薬群、9mg群、12mg群に2:1:1割付けして80週間投与し体重減少作用を検討した。こちらもEfficacy Estimandベースで、各群3.2%、21.6%、22.6%低下した(p値等は未公表)。プレス・リリースはMACE-5(全死亡、心筋梗塞、卒中、心不全事象、冠血行再建術)のtime to event解析がイベント数不足でフェールしたことを真っ先に述べているが、ClinicalTrials.govを見ると主評価項目でも副次的評価項目でもないので、心血管疾患予防効果が期待される薬の前例と同様に、この指標で心血管疾患が大きく増加しないことを確認し、あとは長期大規模な心血管アウトカム試験の結果が出るのを待つ開発戦略なのではないか。

    MACE-5は9mg群と12mg群のプール分析で、発生数は44件、偽薬群は52件、ハザード・レシオは0.82(95%信頼区間0.55-1.22)。MACE-3(全死亡、心筋梗塞、卒中)は、各、27件対23件、1.12(0.64-1.96)だった。もしこの解析がリスクが大きく上昇しないことを確認する趣旨だったとしたら、MACE-5の95%上限1.22はともかく、MACE-3の上限は眉を顰めるべき水準だろう。もし別途、心血管アウトカム試験を実施する考えがないならば、第3相5本のプール分析などが必要になるかもしれない。

    有害事象はGLP-1作用剤のクラス・イフェクトである胃腸系のものに加えて、retatrutideは今回も異常感覚が若干増加した。有害事象による治験離脱率はTRIUMPH-2試験が各群4.9%、3.8%、11.6%、7.7%、TRIUMPH-3試験は4.8%、9.8%、13.5%。この薬は4週毎に2mg→4mg→6mg→9mg→12mgと漸増するレジメンを採用しているが、それでも1割前後の脱落者が出ている。

    図表:retatrutideの第3相体重管理試験成績
    評価項目偽薬群4mg*9mg群12mg群
    体重低下(wk80、Efficacy Estimand basis):
    TRIUMPH-1試験2.2%19.0%25.9%28.3%
    TRIIUMPH-2試験4.0%12.7%19.1%20.8%
    TRIIUMPH-3試験3.2%設定なし21.6%22.6%
    体重低下(wk80、Treatment Regimen Estimand basis):
    TRIUMPH-1試験3.9%17.6%23.7%25.0%
    TRIIUMPH-2試験nananana
    TRIIUMPH-3試験nananana
    有害事象治験離脱率:
    TRIUMPH-1試験4.9%4.1%6.9%11.3%
    TRIIUMPH-2試験4.9%3.8%11.6%7.7%
    TRIIUMPH-3試験4.8%設定なし9.8%13.5%
    *4mg群は副次的評価項目
    出所:会社発表から作成

    リンク: プレス・リリース


    HARMONi試験の全生存データがアップデート
    (2026年7月22日発表)

    米国マイアミのSummit Therapeutics(Nasdaq:SMMT)は、中国のAkeso(康方生物、9926.HK)から欧米日本などの権利を取得し米国で承認申請中の抗PD-1xVEGF二重特異性抗体、ivonescimabの臨床成績について、追加的解析データを公表した。エビデンスとなる第3相HARMONiの共同主評価項目である全生存期間において、西側施設組入れ患者のハザード・レシオが、正式解析値の0.84から直近の解析で0.76に改善しアジア地域と同水準に達したというもの。FDAに追加提出したので、審査期限が11月14日から延期される可能性はあるものの、承認確率が若干上昇したと考えてよいだろう。但し、依然としてハイ・リスク・プロジェクトと当方は考えている。

    HARMONiは第3世代EGFRチロシン・キナーゼ阻害剤による治療後に進行したEGFR変異のある局所進行/転移性非扁平上皮非小細胞性肺癌の患者438人を組入れて、pemetrexed及びcarboplatinによる標準療法に追加する便益を偽薬追加群と比較したもの。主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)はハザード・レシオが0.52、p<0.001となったが、全生存期間のほうはハザード・レシオ0.79、p=0.057とフェールした。しかも、アジア地域の患者のハザード・レシオが0.76と良好な水準であったのに対して、西側患者165人では0.98と失望的だった。

    厄介なのは、この試験がAkesoが中国で実施したHARMONi-A試験とSummit社が欧米などで実施した試験のデータを合成したものであること。開始時期が異なるため主解析時点におけるアジア患者のメジアン追跡期間は32.7ヶ月だったが、西側の患者は9.2ヶ月とintent-to-treat(以下、ITT)ベースの偽薬追加群のメジアン生存期間である14ヶ月などと比べ短かった。

    FDAは全生存期間が統計的に有意に伸びるというエビデンスを求めたが、同社は承認申請を断行すると共に、前回と今回、西側施設の患者だけ追加的フォローアップ分析を行ったところ、0.98→0.84→0.76と次第に向上し、ついにアジアのデータと肩を並べた。

    但し、FDAを説得できるかは不透明だ。今回の解析はおそらく事前に計画されたものではない。プレス・リリースにはp値が記されていないので、有意水準ではないか、あるいは、事前にアルファが割り当てられていない解析なら前回と同様に名目値に過ぎないからだろう。AkesoはHARMONi-A試験に基づき中国で承認を取得したが、FDAは中国施設の患者が殆どを占める臨床試験に基づいて承認することに否定的なスタンスを明確にしており、西側患者における便益が十分に確立していないことに懸念を抱く可能性が高い。

    図表:全生存期間ハザード・レシオの推移
    カット・オフ25年4月25年9月26年6月
    ITT(n=438)0.790.780.76
    p値0.0570.033*未公表
    西側施設のみ(n=165)0.980.840.76
    メジアン追跡期間9.2ヶ月13.7ヶ月23.2ヶ月
    *名目値
    注:アジア施設組入れ患者のメジアン追跡期間は32.7ヶ月。
    出所:会社発表から作成

    リンク: プレス・リリース


    siRNA薬の重度高TG血症適応拡大試験が成功
    (2026年7月22日発表)

    米国のArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)はplozasiranが第3相重度高トリグリセライド(TG)血症試験二本で主目的等を達成したと発表した。年内に米国で適応拡大申請する考え。

    25年11月に米国で、今年6月にはEUでも、家族性カイロミクロン血症における高TGの治療薬として承認された、肝臓のアポリポ蛋白C-IIIの発現を妨げるGalNAc(N-acetylgalactosamine)結合siRNA薬。一年早く承認されたIonis Pharmaceuticalsのアポリポ蛋白C-IIIアンチセンス薬、Tryngolza(olezarsen)は月一回皮下注だがこちらは3ヶ月毎。あちらは6月に米国で重度高TG血症に適応拡大したが、こちらも今回、第3相のSHASTA-3と4が成功した。12ヶ月の治療でTG値メジアン低下率が各79%と81%となり、偽薬群の27%を有意に上回った。副次的評価項目である急性膵炎リスクのプール分析は、プレス・リリースの記載が曖昧なのではっきりしたことは分からないが、発生リスクのp値は0.0221を下回り、累積発生数は78%少なく、TG値が880mg/dL以上で急性膵炎歴を持つ高リスク患者では一件も発生しなかった。忍容性は良好で、肝臓障害リスクや過敏反応、血小板減少症は見られなかったとのこと。

    家族性カイロミクロン血症の米国患者数は3000人、重度高TG血症は300万人と1000倍なので、期待の大型適応拡大案件となる。

    リンク: プレス・リリース


    ギリアドとMSDの相乗り配合錠、第3相が成功
    (2026年7月21日発表)

    ギリアド・サイエンシズとMSDは前者のカプシド阻害剤GS-6207(lenacapavir)と後者のヌクレオシド系逆転写酵素トランスロケーション阻害剤MK-8591(islatravir)の合剤を共同開発しており、6月に週一回経口投与用合剤(各剤300mgと2mgを配合)のスイッチ試験二本の成功を公表したが、今回、AIDS 2026学会で発表されるデータを公表した。第3相ISLEND-1はギリアドの3剤合剤Biktarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide)による治療が奏功(HIV-RNAが50コピー/mL未満)している患者607人を組入れてスイッチする群と継続する群の50コピー/mL未満を維持できなくなるリスクを48週の二重盲検で比較したところ、0%対0.3%となった。第3相ISLEND-2は様々な標準療法レジメンによる治療が奏功した患者626人を組入れて同様なリスクをオープン・レーベルで比較したところ、0.3%対1.3%となった。

    治療関連有害事象発生率は前者の試験が13.5%対13.2%で大差なかったが、後者は18%対1%未満と、オープン・レーベル試験の欠点が露呈したのか、差が開いた。有害事象による治験離脱率は2%対1.7%と1%対1%未満で、こちらのほうが実態を示しているのだろう。

    islatravirは高量を非核酸系逆転写阻害剤ulonivirineと併用した試験でCD4カウントやリンパ球数が2割以上減少するリスクが顕在化し、FDAがクリニカル・ホールドを命じたことがある。その後、一日一回投与量を0.75mgから0.25mgに減らした試験が成功、ジョンソン エンド ジョンソンの非ヌクレオシド逆転写阻害剤doravirineとの合剤が26年に日米でイドビンソ/Idvunso名で承認された。今回の週一回投与の用量も20mgから2mgに大きく減らしており、CD4カウントやリンパ球数の減少は見られなかった。

    islatravirは抗HIV薬の研究で大きな役割を果たした日本で誕生、MSDはヤマサ醤油からライセンスした。

    リンク: プレス・リリース


    サノフィも抗OX40L抗体の承認申請を断念
    (2026年7月24日発表)

    サノフィは21年にKymab社を11億ドルで買収して入手した抗OX40レガンド抗体、SAR445229(amlitelimab)を26年下期にアトピー性皮膚炎の治療薬として承認申請する計画だったが、2月のCEO交代が影響したのか、開発中止を発表した。日本も参加した第3相試験4本で幾つかの主評価項目と主要副次的評価項目を達成したがフェールもあり、標準療法薬を上回る便益を提供することができないと判断した。

    抗原提示細胞などが発現するOX40レガンドが活性化T細胞のOX40に結合して免疫反応を強化するのを妨げる抗体医薬。OX40に結合する抗体も、協和発酵/アムジェンのポテリジェント抗体rocatinlimabが、今回と同様に第3相が成功し承認申請に向かうはずが突如、申請中止となった。共通するのは少数だがカポジ肉腫が報告されたこと。免疫抑制作用が強すぎるのかもしれない。

    リンク: プレス・リリース


    イプセン、iBAT阻害剤の胆道閉鎖症試験はフェール
    (2026年7月24日発表)

    イプセンはodevixibatの第3相胆道閉鎖症試験で主目的を達成できなかったと発表した。葛西肝門部肝空腸吻合術手術を受けた生後90日以内の254人を組入れて、120mcg/kgを一日一回、最大104週投与することで転帰向上を図ったが、主評価項目である、肝移植又は死亡に至る期間を延長することができなかった。

    本剤は回腸胆汁酸輸送体(iBAT)阻害剤。21年以降、欧米そして日本でも進行性家族性肝内胆汁鬱滞症に伴う掻痒の治療などに承認されている。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    膵管腺腫の革命的新薬を承認申請
    (2026年7月22日発表)

    米国のRevolution Medicines(Nasdaq:RVMD)はFDAがRMC-6236(daraxonrasib)の承認申請を受理したと発表した。CNPV(FDA前委員長の国家的優先バウチャ)対象案件なので順調なら2ヶ月前後で承認されることになる。

    RAS標的薬。活性化したRASは薬が結合できるポケットを持たないためundruggableな標的と考えられてきたが、同社は細胞内のcyclophilin Aに結合・変形させることでRASに結合できるようにした。日本も参加した第3相RASolute 302試験に転移膵管腺腫の二次治療を受ける患者約500人を組入れて、300mgを一日一回経口投与する便益を医師が選んだ化学療法レジメンと比較したところ、中間解析で、主評価項目であるRAS G12変異を持つ459人におけるメジアン生存期間が13.2ヶ月対6.6ヶ月、ハザード・レシオ0.40、p<0.001と成功した。全集団の解析も達成した。

    EUでもCHMPが欧州型ローリング承認申請制度である段階的審査手続きを開始している。

    daraxonrasibは膵管腺腫の転移癌一次治療や周術期療法後地固め療法、そしてRAS変異型非小細胞性肺癌における第3相試験も進行中。

    リンク: プレス・リリース


    ファイザー、ターゼナをCSPCに適応拡大申請
    (2026年7月22日発表)

    ファイザーはPARP阻害剤Talzenna(talazoparib)を相同組換え変異型転移性の去勢抵抗性前立腺癌(CSPC)に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は今年第4四半期としている。日本も参加した第3相TALAPRO-3試験で、同社がアステラス製薬と共同開発販売しているアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤、Xtandi(enzalutamide)に追加する便益を検討したところ、主評価項目のrPFS(放射線学的無進行生存期間、治験医評価)が偽薬追加群を有意に上回った(ハザード・レシオ0.48、3年rPFS率77%対56%)。副次的評価項目の全生存期間は未だ中間解析段階でハザード・レシオ0.77、p=0.09となっている。EUでも6月に二種変更承認審査が開始された。

    リンク: プレス・リリース


    ノバルティス、3品の承認申請を公表
    (2026年7月21日発表)

    ノバルティスは、26年第2四半期決算の発表に合わせて、承認申請状況をアップデートした。

    • KPE179(delpacibart zotadirsen):米国でエクソン44スキップ薬に応答するデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬として承認申請した。Avidity Biosciences(Nasdaq:RNA)を企業価値ベースで110億ドルで買収して入手した、抗トランスフェリン受容体1抗体とホスホロジアミデートモルフォリノオリゴ核酸の結合体。
    • Vanrafia(atrasentan):急速進行性原発性免疫グロブリンA腎症に関して、米国で25年の仮承認を本承認に切替るべく申請し、EUでは新薬承認申請した。アッヴィからライセンスしたChinook Therapeuticsを23年に32億ドル+後発価値3億ドルで買収して入手した、経口エンドセリンA受容体拮抗剤。
    • VAY736(ianalumab):欧米日でシェーグレン疾患用薬として新薬承認申請した。EMAは2月に審査を開始と公表している。MorphoSys社との共同研究から生まれた抗BAFF受容体抗体。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    7月のCHMP結果
    (2026年7月24日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

    リンク: EMAのプレス・リリース

    米国オハイオ州のLIB TherapeuticsのLyrokaul(lerodalcibep)は成人の原発性高脂血症や混合型脂質異常症の治療薬。PCSK9に結合するアドネクチンにアルブミンを結合して半減期を2週間程度に伸ばしたもので、300mgを月一回、皮下注する(自己注可)。既に薬物治療を受けている患者に追加投与した試験でもLDL-Cが偽薬調整後で5~6割低下した。米国では25年12月にLerochol名で承認。プリフィルド・シリンジだがオート・インジェクターも開発中。

    イタリアのMenariniのEvlarco(obicetrapib hemicalcium)とUbeslo(ezetimibeも配合)は成人の高脂血症(ヘテロ接合型家族性または非家族性)や混合型脂質異常症に用いる。obicetrapibは田辺三菱製薬(当時)が2013年にオランダのDezima Pharmaに導出したCETP(cholesteryl ester transfer protein)阻害剤。Dezimaは2019年にアムジェンに買収されたが、複数の他社のCETP阻害剤で安全性懸念が生じたことから、20年にDezimaと同じくアムステル大学Academic Medical Center発のベンチャーであるNewAmsterdam Pharmaに売却された。Menariniは欧州市場の権利を持っている。

    ロシュのSusvimo(ranibizumab)は新生血管加齢性黄斑変性の治療薬。ジェネンテック/ノバルティスのLucentisの活性成分である抗VEGF抗体フラグメントを6ヶ月間持続する硝子体内インプラントに仕立て上げたもので、Lucentisなどに応答した患者がスイッチできる。米国では21年に承認されたが、ディバイスと薬剤のコンビネーション薬であるためか、欧州では23年に一旦、申請撤回となった。日本では中外製薬が3月に医療機器部分の承認申請を実施、医薬品部分は年内に完了する考えだ。

    ジョンソン エンド ジョンソン・グループのJanssen-Cilag InternationalのIcotyde(icotrokinra)は経口投与用IL-23Rアンタゴニスト。全身性治療が候補になる12歳以上体重40kg以上の中重度尋常性乾癬に用いる。Protagonist Therapeutics(Nasdaq:PTGX)との創薬提携の成果。米国では3月に承認、日本でも承認申請中。

    GSKのLynavoy(linerixibat)はiBAT(回腸胆汁酸輸送体)阻害剤。成人の原発性胆汁性胆管炎における胆汁鬱滞性掻痒症に一日二回、経口投与する。米国では3月に承認。GSKは今年3月、Alfasigma社に本剤の世界独占開発製造販売権を供与している。

    Minoryx Therapeuticsは22年にNezglyal(leriglitazone)をX染色体性白質ジストロフィーの治療薬として承認申請したがCHMPに支持されず再審でも覆すことができなかった。今回、3度目の正直で例外的環境下承認に関する肯定的意見を獲得した。2~12歳の男子の脳副腎白質ジストロフィー(c-ALD)のうち、脳MRI検査でGd強調病変が見られず、NFS(神経学的機能スコア)が0または1の患者に適応が限定されている。造血幹細胞移植前の患者に投与したNEXUS試験で20人中35%が、最大96週間に亘り、病状の意味のある悪化を示さなかった。武田薬品が創製したPPARガンマ作動剤pioglitazoneの活性代謝物で中枢神経浸透性がある。ドイツのNeuraxpharmaが欧州での販売権を持っている。

    塩野義製薬のZokovea(ensitrelvir)はCOVID-19の曝露後予防に用いる3CLプロテアーゼ阻害剤。COVID-19感染者と接触した12歳以上の感染リスク者に、接触後72時間以内に投与を開始する。日本で22年に軽中度COVID-19感染症の治療に特例承認、24年に通常承認された。曝露後予防は今年3月に日本で適応拡大、5月には米国でXocova名で初承認された。

    適応拡大等が支持されたのは、

    • 第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan):成人のher2陽性進行/転移乳癌の一次治療にロシュの抗2C4抗体Perjeta(pertuzumab)と併用。米国では25年12月に承認、日本でも一変申請中。
    • ノバルティスののPiqray(alpelisib):エビデンスなど詳細が思いつかないが、適応範囲に関する文言が、単剤による内分泌療法歴から内分泌療法ベースのレジメン歴と、米国における文言と同様に変更されるようだ。
    • アムジェンのRepatha(evolocumab):アテローム硬化性心血管疾患に関する適応範囲が、心血管疾患の再発予防に加えて高リスク者の初発予防にも広がる。米国では昨年8月に同様な限定解除が承認された。
    • アッヴィのRinvoq(upadacitinib):2歳以上のDMARDに十分応答しない多関節性若年性特発性関節炎。米国では24年に承認、日本でも申請中。
    • ギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan):成人のPD-L1陽性(CPS≧10)の切除不能局所進行/転移トリプル・ネガティブ乳癌で転移後に全身性治療を受けていない場合。MSDのKeytruda(pembrolizumab)と併用する。米国では6月に承認、日本でも適応拡大申請中。
    • バイエルのJivi(damoctocog alfa pegol):内容は未だ公表されていない。

    また、26/27年シーズンのCOVID-19ワクチンの配合株をXFG株とすることに肯定的意見をまとめた。対象は、NovavaxのNuvaxovid及びスペインのHipra Human HealthのBimervax(ともに抗原ワクチン)、そして、BioNTech/ファイザーのComirnatyとモデルナのNuvaxovidとSpikevax(何れもmRNAワクチン)

    一方、否定的意見となったのは、まず、英国の小児用薬会社Proveca Pharmaが申請したKemSu(sufentanilとketamineの点鼻用合剤)。ketamineを併用する便益が十分に検討されていないことや、18歳未満の適応を想定しているがketamine併用でsufentanilの血中濃度を抑制できるという小児に関するエビデンスがなく有害事象緩和につながるかも明確でないことを指摘した。

    次に、米国のZevra Therapeuticsが2歳以上のニーマン・ピック疾患C型(NPC)の治療薬として承認申請したMiplyffa(arimoclomol)。臨床試験データの処理や解析方法、そして歩行や認知機能に関する便益が見られないことに疑義を指摘した。同社が申請したmiglustat同時使用サブグループの数値は良好だが非使用者には効果が見られなかったのでエビデンスが頑強ではないことも指摘。同社は経営破綻したOrphazymeから事業を買収し、米国では24年に承認取得したが、欧州はOrphazyme時代の承認申請と異なった評価を得ることができなかった。

    CATS Consultants GmbHが滑膜肉腫や平滑筋肉腫に承認申請したQezzaqar(catequentinib)はVEGFRなどのマルチ・チロシン・キナーゼ阻害剤。中国で複数の癌に承認されているようだ。今回の申請のエビデンスは明らかではないが、CHMPはPFS延長作用が小さく。ORRや全生存期間の改善は見られていないことを指摘した。

    適応拡大申請が撤回されたのは2件あり、どちらもサプライズ。アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)を筋層非浸潤膀胱癌のTURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)後の維持療法としてBCGと併用する適応・用法を申請していたが、CHMPが懐疑的なスタンスであったため、撤回した。第3相POTOMAC試験でDFS(無病生存期間)のハザード・レシオがBCGだけの群比0.68、2年DFS率は87%対82%、全生存は検出力不足だが25年の同社発表によると点推定値は0.80と、良さそうに見えた。しかし、CHMPは、観察された効果の臨床的重要性やデザインに問題があり、便益がリスクを上回るとは言えないと断じた。米国では5月に適応拡大が承認されている。DFSの構成イベントのうち、筋層浸潤膀胱癌や転移癌は減少せず、高リスク筋層非浸潤膀胱癌の再発や死亡が対照群より少なかった。もしかしたら、後者は薬の便益とは無関係、前者は便益としては不十分と見做されたのだろうか?

    サノフィはRegeneron Pharmaceuticalsからライセンスした抗IL-4Rアルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)を水疱性類天疱瘡に適応拡大申請していたが撤回した。CHMPは臨床試験で主目的が達成されなかったことや、他の評価項目はデザイン面の制約があり、改善しても穏やかで不確実であることから、懐疑的だった。米国では昨年6月に、日本でも3月に承認されているので意外。改めて米国のレーベルを見ると、主評価項目の持続的疾病完解率のデータが、24年にRegeneronが発表した20%(偽薬群は4%、p=0.0114)ではなく、18.3%(偽薬群は6.1%、差は12.2%で95%信頼区間は-0.8~26.1)と記されている。FDAも主評価項目フェールと判断していたのだ。

    【承認】


    大塚のADHD新薬が承認
    (2026年7月24日発表)

    大塚ホールディングスの米国子会社らは、FDAがSimtriyo(centanafadine)を6歳体重20kg以上の小児と成人のADHD(注意欠陥多動性障害)の治療薬として承認したと発表した。DEA(麻薬取締局)の管理物質指定を受けた上で年内に発売する考え。ノルエピネフィリンとドパミン、そしてセロトニンの3種類の神経伝達物質の再取込を阻害する、初めての薬。持続放出錠を一日二回投与した成人患者試験と徐放性カプセル製剤を一日一回投与した小児試験で症状評価尺度や有意に改善した(小児試験は高用量群のみ、また、承認されたのは徐放性カプセル製剤)。17年にNeurovanceを1億ドル+達成報奨金1.5億ドルで買収して入手した。

    リンク: プレス・リリース(米国サイト、英文)


    硝子体注射用ベバシズマブが承認
    (2026年7月24日発表)

    Outlook Therapeutics(Nasdaq:OTLK)はFDAがLytenava(bevacizumab-vikg)を新生血管加齢性黄斑変性(hAMD)の治療薬として承認したと発表した。1.25mgを月一回、硝子体注射する。年内に発売する考え。

    この活性成分はジェネンテック/ロシュが抗癌剤用途で実用化したが、米国ではオフレーベルでhAMDの治療に用いられている。腫瘍学用途より少量で足りるため、一回分の薬代が50~60ドルと激安と報じられている。今回、正式承認された製品が生まれたことは色々な意味で朗報だが、先に承認された英国では定価が625ドル相当とのことなので、価格は跳ね上がることになる。ジェネンテック/ノバルティスの抗VEGF抗体フラグメント、Lucentis(ranibizumab)よりは全然安いとのアピールが受け入れられるか、see what happenだ。

    リンク: プレス・リリース


    GSK、買収合意したばかりの企業のROS1阻害剤が承認
    (2026年7月22日発表)

    GSKは、FDAがJideytro(zidesamtinib)を成人のROS1(receptor tyrosine kinase c-ros oncogene 1) 変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌に承認したと発表した。ROS阻害剤で、この種の薬を既に使ってしまった患者に100mgを一日一回経口投与する。最初の臨床試験であるARROS-1試験でORR(客観的反応率、盲検独立中央評価、n=117)が44%、12ヶ月反応持続率は69%だった。ROS1阻害剤歴のないサブグループにも良好なORRを示しており、年内に適応拡大申請する考え。

    6月にエクイティ・バリュー106億ドルで買収合意した、Nuvalent(Nasdaq:NUVL)の開発品。ROS1阻害剤誘導性変異であるG2032R置換型や脳転移にも有効という特徴を持つ。審査期限の9月18日よりだいぶ早くゴールインした。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
    26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
    26/7推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
    26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
    26/8推武田薬品のTAK-861(oveporexton、ナルコレプシータイプ1)
    26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
    26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
    26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
    26/8/2ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/8/5モデルナのmRNA-1010(季節性インフルエンザ・ワクチン)
    26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
    26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
    26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
    26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
    26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
    26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
    26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
    26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
    26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
    26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
    26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
    26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
    26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
    26/9/11TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤)
    26/9/19UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型)
    26/9/21Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
    26/9/22Ionis PharmaceuticalsのION373(zilganersen、アレキサンダー病)
    26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
    26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
    26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
    26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
    26/9/30Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症)
    諮問委員会
    26/7/29CTGTAC:Capricorのderamiocel(デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける心筋症の治療)
    26/7/30CTGTAC:ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、黒色腫)


    今週は以上です。