2026年10月17日

第1281回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • マラリキシバットのその他胆汁鬱滞性肝臓疾患試験が成功 
  • BMS、2剤の第3相試験が成功 
  • MSD、Wnt経路活性化抗体の第3相試験が成功したが... 
  • Vanda社、SAD用薬の第3相がフェール 
  • BionTech、頭頚部癌のmRNA療法試験でPFS解析はフェール 
  • ピエール・ファーブル、EBV陽性リンパ増殖性疾患用T細胞療法を再申請 
  • Elevar社、VEGFR-2阻害剤を再承認申請
  • ロシュ、自社創製抗IL-6抗体を米国でも承認申請 
  • 10月のCHMP結果 
  • エンスプリングが甲状腺眼症に適応拡大 
  • ジルビスクのオートインジェクターが承認 
  • FDA、IL-15融合蛋白の尿路上皮癌限定を解除 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


マラリキシバットのその他胆汁鬱滞性肝臓疾患試験が成功
(2026年10月12日発表)

Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)はLivmarli(maralixibat)が第3相EXPAND試験で主目的を達成したと発表した。頂端側ナトリウム依存性胆汁酸輸送体阻害剤で、アラジール症候群や、進行性家族性肝内胆汁鬱滞症患者における掻痒の治療薬として米欧日で承認されている。今回、胆道閉鎖症などのより希少な疾患における胆汁鬱滞性掻痒における便益を検討するため小児患者46人と成人患者6人を組入れて、既存適応より少量の285mcg/kgを1日2回経口投与する便益を検討した。

主評価項目は小児患者におけるItchR0(0bs)という掻痒重症度評価スコア(レンジは0~4点)で、第13週から20週における、一週間で一番重かった日のスコアを平均した。試験薬群は1.81点改善し、偽薬群の0.83点改善を有意に上回った。胆道閉塞サブグループでは各群2.16点と1.01点の改善となった。

安全性に関する新規所見はなかった。関心対象の治療時発現有害事象では下痢(64%対11%)、腹痛(20%対15%)、ALT上昇(8.0%対3.7%)が偽薬比増加した。

27年上期に適応拡大申請する考え。

本剤は、シャイアが14年にLumena Pharmaceuticalsを買収して入手しアラジール症候群や原発性硬化性胆管炎のPOC試験を実施したがフェール、18年にMirumに導出したもの。日本はシャイアの親会社である武田薬品が21年に権利を取得し25年に上記二適応で承認取得した。

リンク: プレス・リリース


BMS、2剤の第3相試験が成功
(2026年10月12日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、GEP-NETs(膵消化管神経内分泌腫瘍)とIPF(特発性肺線維症)における新薬2剤の第3相試験が成功したと発表した。承認申請に向け当局と相談する考え。

RYZ101(225Ac-DOTATATE)はactinium-225でアルファ線を照射する放射性核種薬。第1b/3相のACTION-1試験でLutetium 177標識ソマトスタチン類縁体による治療歴を持つ切除不能進行分化ソマトスタチン受容体発現GEP-NETsにおけるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を標準療法(抗VEGFR薬や高量ソマトスタチン類縁体)と比較したところ、事前に計画されていた中間解析で主目的を達成した。

RYZ101は24年にRayzeBioを41億ドルで買収して入手したもの。

BMS-986278(admilparant)はLPA1(リゾフォスファチジン酸受容体1)アンタゴニスト。IPFとPPF(進行性肺線維症)で第3相試験中だが、まず前者が成功した。ALOFT-IPF試験に40歳以上の患者1255人を偽薬群、60mg1日2回投与群、そして120mg1日2回投与群に無作為化割付けして52週間投与し、FVC(努力肺活量)を比較したところ、60mg群の低下が偽薬群を有意に上回った。120mg群はトレンドに留まった。忍容性は良好で、有害事象による治験離脱は両用量とも偽薬群並みだった由。

プレス・リリース後のアナリスト向けテレカンファレンスでは、120mg群で急性肝障害が1例発生したが査読委員会が試験薬との関連性は考え難いと評価した旨、報告されたようだ。同社の類薬が過去に肝障害懸念などから開発中止になったことがある。本剤も9月に、割付けは不明だが第3相で1名が急性肝障害や肝壊死、自己免疫性溶血性貧血症により死去し長期延長試験で観察強化や中止基準導入のプロトコル変更が実施されたことが明らかになっていた。

リンク: プレス・リリース(RYZ101)
リンク: 同(BMS-986278)


MSD、Wnt経路活性化抗体の第3相試験が成功したが...
(2026年10月10日発表)

MSDは9月にMK-3000(remigromig)が第3相糖尿病性網膜浮腫試験で主目的を達成したと発表したが、AAO(米国眼科学会)で詳細を明らかにした。当局と相談する考え。24年にEyeBiotechを当初金13億ドル+達成報奨金17億ドルで買収して入手した画期的抗体医薬の一つだが、効果が既存薬と非劣性、副作用の発生率はやや高いとなると、抗VEGF薬不応不耐患者に絞った臨床試験を実施してもよいのではないか。

LRP5(low-density lipoprotein receptor-related protein 5)の二つのエピトープに結合する部位と、FZD4(Frizzled-4)に結合する二つの部位を、ヘテロ二量体Fc領域で繋いだ4価3重特異性抗体で、LRP5とFZD4を架橋してWntシグナル伝達経路を活性化する。今回の後期第2/第3相試験、BRUNELLOは、欧米等の施設で成人患者984人を0.5mg群、0.8mg群、そして実薬のranibizumab群に無作為化割付けして4週毎に硝子体注射し、52週におけるBCVA(最良矯正視力)を比較した。ベースライン比で各群9.1字、8.7字、11.8字改善し、2試験用量ともranibizumab比非劣性だった。尚、試験薬2剤の95%信頼区間上限はranibizumabの95%下限を下回っており、見栄えが悪い。

もう一本、米州や日本の施設が参加する第3相BAROLO試験も進行中。

リンク: プレス・リリース


Vanda社、SAD用薬の第3相がフェール
(2026年10月14日発表)

Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq:VNDA)は、VQW-765の第3相社交不安障害(SAD)試験がフェールしたと発表した。主評価対象である女性サブグループも、全体の解析も、効果は偽薬並みだった。第2相試験の事後的サブグループ分析は当てにならないという実例がまた一つ増えた。

このアルファ7ニコチン・アセチルコリン受容体部分作動剤はノバルティスがAQW-051として統合失調症の第2相まで進めた。2014年にVandaがライセンス、21年にSADで今回と同様な第2相を開始したところ、効果は偽薬群と大差なかったが、7割を占めた女性サブグループではp=0.034と悪くない数値だった。

第3相は米国の成人患者546人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして、一回投与後にTrier Social Stress Test(TSST)を実施した。5分間のスピーチの準備フェーズと実行フェーズに分かれ、主評価項目は女性サブグループの実行フェーズにおけるSUDS(主観的苦痛尺度、レンジは0-100で大きいほど強い、第2相論文を読むと、60秒毎に5回計測する模様)。偽薬群は66.0点、試験薬群は65.6点と大差なかった。副次的評価項目の男性も含めた解析も63.8点対64.7点で大差なかった。

リンク: プレス・リリース


BionTech、頭頚部癌のmRNA療法試験でPFS解析はフェール
(2026年10月13日発表)

COVID-19のmRNAワクチンComirnatyを創製し世界的な貢献を果たしたドイツのBioNTech(Nasdaq:BNTX)は、癌領域で複数のmRNAワクチン療法や抗体薬物複合体を開発している。前者は今のところこれといった成功を収めておらず、今回発表されたBNT113(tenumomeran/raplemomeran)の第3相頭頚部扁平上皮腫(SCCHN)試験も最初に開票した主評価項目であるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がフェールした。免疫療法なのでPFS効果が小さくても全生存期間は伸ばせる可能性があり、独立データ監視委員会は続行推奨した。

BNT113はSCCHNでしばしば認められるヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)の16型の腫瘍蛋白、E6とE7をエンコードするmRNAをリポプレックスに封入したもの。今回の第2/3相AHEAD-MERIT試験は欧米アジアの施設でHPV16陽性、PD-L1陽性(CPS≧1)の切除不能難治/転移SCCHNの1次治療を受ける患者を組入れて、第3相に当たるパートBで抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)と併用で最大24ヶ月投与する便益をKeytrudaだけの群と比較した。主評価項目はPFSと全生存期間の二つで、どちらかが成功すれば目的達成となる解析計画とのこと。

リンク: プレス・リリース
リンク: AHEAD-MERIT試験デザイン論文抄録(Sabaら、International Journal of Radiation Oncology・Biology・Physics、26年5月)

【承認申請】


ピエール・ファーブル、EBV陽性リンパ増殖性疾患用T細胞療法を再申請
(2026年10月14日発表)

Atara Biotherapeutics(Nasdaq:ATRA)は、Ebvallo(tabelecleucel)の導出先であるピエール・ファーブルが米国で3巡目の承認申請を行い受理されたことを明らかにした。審査期限は27年3月31日。

エプスタイン・バー・ウイルス(EBV)を標的とする他家T細胞療法。臓器/骨髄移植後のEBV陽性リンパ増殖性疾患でrituximabベースの治療に応答しなかった患者を組入れた第3相ALLELE非対照試験が中間解析でORR(客観的反応率、独立評価)を達成、EUでは22年に2歳以上の深刻例向けに例外的環境条項に基づき承認された。しかし、米国では、アカデミアの試験で用いられたバッチとの同等性を確認するよう求められたことなどから承認申請が当初予定の2020年から24年5月に大きく遅延し、starting materialsの調達先における製造問題などから、一巡目は審査完了となった。Ataraは財務的にひ弱であるため、欧州におけるライセンシーであるピエール・ファーブルが米国の承認申請を継承し、25年7月に再承認申請したが、今年1月に再び審査完了通知を受領した。製造問題は解消したが、一巡目には指摘されなかった、エビデンスとなる試験一本のデザイン、実行、解析が盤石でないことがボトルネックになったようだ。ところが、5月のタイプA会議で外部対照試験による再申請が認められ、今回の再申請に至った。

2巡目から3巡目の申請に至る経緯は、どこかで聞いたような話だ。先例では、FDA長官を含む上層部が25年12月から26年5月の期間に更迭され、彼らに却下された承認審査担当部署の評価が生き返ったことが関係しているのではないか、と言われている。但し、邪魔者がいなくなったからと言ってすんなり承認されるとは限らない。程度の差はあれ、先例と同様に、高リスク案件と考えるべきだろう。

リンク: プレス・リリース


Elevar社、VEGFR-2阻害剤を再承認申請
(2026年10月14日発表)

韓国のHLB(KOSDAQ:067630)が過半の株式を保有する米国子会社、Elevar Therapeuticsは、VEGFR-2阻害剤rivoceranibを再申請したと発表した。

切除不能/転移性肝細胞腫の1次治療に中国のJiangsu Hengrui Pharmaceuticals(江蘇恒瑞医薬、上海:600276)の抗PD-1抗体camrelizumabと併用するもので、中国などアジア中心だがMD Anderson Cancer Centerなど欧米の施設も参加した第3相CARES-310試験でメジアン生存期間が22.1ヶ月とVEGFR阻害剤sorafenibだけを投与した群の15.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.62、統計的に有意だった。中国(一般名はrivoceranidではなくapatinib)では23年に承認されたが、米国は難航し、一巡目はHengrui社側の工場問題とロシアやウクライナの治験施設査察が不可能であったために審査完了、2巡目はcamrelizumabに関する新たな製造問題、3巡目は今度はElevar者側の製造施設に関する問題で、今年7月に審査完了通知を受領した。三度あることは四度ない、となるか。

Hengrui側は少なくとも英語ではプレス・リリースは出していない模様だが、おそらく、前後して申請されるのだろう。

リンク: プレス・リリース


ロシュ、自社創製抗IL-6抗体を米国でも承認申請
(2026年10月10日発表)

ロシュはRG6179(vamikibart)の非感染性ブドウ膜炎における黄斑浮腫改善作用を検討した第3相試験二本の長期追跡データをAAOで発表すると共に、米国で承認申請し受理されたことを明らかにした。審査結果は27年7月を見込んでいるとのことなので、9月に受理されたのだろう。日本では8月に承認申請、EUでも、同月、EMA(欧州薬品庁)が審査を開始している。

Fc領域を改変し血中消失を早めた抗IL-6抗体。第3相MEERKAT試験で2用量群のBCVA(最良矯正視力)改善奏効率が何れもシャム群を上回ったが、日本も参加したSANDCAT試験はフェールした。有害事象は結膜出血や眼圧上昇など。

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


10月のCHMP結果
(2026年10月16日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAプレス・リリース

Revolution Medicines(Nasdaq:RVMD)のRasonque(daraxonrasib)はRAS阻害剤。成人の治療歴のある転移性膵管腺腫に用いる。この癌の9割でRAS変異が見られるが、活性化したRASは結合ポケットが無いため薬で阻害するのは不可能と考えられていた。Rasonqueはシャペロン蛋白である細胞内cyclophilin Aと結合し形態を変えることによってRASと三量体を形成できるようにしたもの。米国ではFDA委員長の国家的優先バウチャ・プログラムに指定され、承認申請受理の翌月に承認。EMAも、米国のローリング承認審査制度に類似した新しい制度であるCancer Medicines Pathfinderプロジェクトに即して、承認申請が完了する数ヶ月前に、品質、前臨床、または臨床情報の何れかが出来た段階で審査を開始し、そこから3ヶ月でCHMP通過まで持ってきた。

本剤は日本も参加した第3相RASolute 302試験で300mgを一日一回経口投与したところ、主評価項目のRAS G12変異型サブグループでも、副次的な全集団の解析でも、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間が化学療法群を有意に上回った。CHMPのプレス・リリースには後者の26年6月カット・オフ値が記されており、試験薬群はメジアン12.4ヶ月、偽薬群は6.7ヶ月と米国のレーベルや治験論文の数値より群間差がほんの少し縮小している。米国のレーベルによると皮膚有害事象リスクがあるため局所性ステロイドや経口抗生剤、サンスクリーンなどの使用・検討が推奨される。

リンク: EMAプレス・リリース(10/15発表)

イーライリリーの非ペプチド型経口GLP-1受容体作動剤Foundayo(orforglipron)は肥満/リスク因子を持つオーバーウェイト患者における体重管理や、二型糖尿病における体重や血糖値の治療に、健康的な食事および身体活動を実践しながら、用いる。二型糖尿病では他剤と併用するがmetforminに不適不耐な場合はモノセラピー可。ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide)ピルと異なり服用タイミングに関する制限はない。米国では肥満症だけに昨年12月に申請、今年4月に承認された。

中外製薬が開発したが親会社のロシュが第一選択権を行使せずイーライリリーに導出したもの。ロシュは自社開発品を持っていたが、その後の進捗は今一つで、大きな魚を逃がした。抗IL-6抗体では中外由来の製品に加えてロシュ品も上記のように承認申請しており、かって、ファイザーのライバルはファイザーと呼ばれていた時代を彷彿させる(活発に企業買収を行い開発品が重複したが敢えて整理統合せず競争させた)。

リンク: EMAプレス・リリース

アセンディス・ファーマのYuviwel(navepegritide)は2歳以上の、骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症の治療薬。欠乏するC型ナトリウム利尿ペプチドの代わりに前駆体を週一回、皮下注する。米国では今年2月に承認された。

新剤形ではOrphelia PharmaのKizfizo(temozolomide)の承認が支持された。活性成分は四半期超の使用歴があるが、今回、新開発の経口液製剤が、成人の新患多形神経膠芽腫(放射線療法付随)と1歳以上の標準療法難治/進行性悪性グリオーマを予定適応として、支持された。

適応拡大が支持されたのは以下の通り。

  • Janssen-Cilag InternationalのGPRC5DxCD3二重特異性抗体Talvey(talquetamab):成人の再発/難治多発骨髄腫の2次治療以降に、同社のdaratumumabと併用(更にBMSのpomalidomideも追加可)。第3相MonumenTAL-3試験でdaratumumab、pomalidomide、そしてdexamethasoneを併用した群と比べて全生存期間などが大きく改善した。
  • ファイザーのher2チロシン・キナーゼ阻害剤Tukysa(tucatinib):成人の切除不能/転移性her2陽性乳癌で、化学療法による一次治療で安定/反応した後の維持療法として、trastuzumab及びpertuzumabと併用。第3相HER2CLIMB-05試験でPFS(無進行生存期間、治験医評価)がこの二剤に偽薬を併用した群を有意に上回った。米国では今月承認、日本でも4月に一変申請された。
  • Swedish Orphan BiovitrumのApoC-IIIアンチセンス薬Tryngolza(olezarsen)を重度高トリグリセライド血症に拡大。血清トリグリセリド値を抑制し、治験のプール分析で急性膵炎イベントの大きな抑制効果も見られた。米国ではライセンス元のIonis Pharmaceuticalsが6月に適応拡大。
  • アストラゼネカのH5N1株対応パンデミック・インフルエンザ・ワクチン(点鼻用):今年5月にパンデミック下における1~17歳のインフルエンザ予防に承認された、A/Vietnam/1203/2004 (H5N1) 株弱毒化生ワクチン。今回、小児青年限定の解除が支持された。
  • ノボ ノルディスクのKyinsu(insulin icodec、semaglutide):適応症におけるinsufficiently controlledという語句の重複を整理する変更のように見える。

このほかに、Regeneron Pharmaceuticalsの発表によると、抗PD-1抗体Libtayo(cemiplimab)の用法追加も支持された。扁平上皮腫の手術・放射線療法後アジュバント療法における投与スケジュールと同じ、350mgを3週毎に30分以上かけて4回点滴静注した後に、700mg6週毎30分点滴静注にスイッチすることが他の適応でも可能になる。また、350mgに関して、初回投与時に忍容性が良好ならば次回から投与時間を15~30分に短縮することも可能になる。

一方、否定的意見が確認されたのはOmeros(Nasdaq:OMER)のYartemlea(narsoplimab)。抗MASP-2抗体で米国では承認申請から5年を経て25年12月に2歳以上の造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症治療薬として承認されたが、CHMPは6月に続き、臨床試験のデザイン面の欠点などから挙証不十分と判定した。同社は米国需要が旺盛であることから、EUにおけるcompassionate use programmeを既存患者だけとする考え。26年第2四半期の企業ベース純営業収入は28.5百万ドル。

適応拡大申請が9月に撤回となったのはファイザーのCDK4/6阻害剤Ibrance(palbociclib)。ホルモン受容体陽性かつher2陽性という、乳癌の1割を占めるセグメントで、転移後一次治療により安定化した患者の維持療法として標準療法に追加するもの。米国では6月に、日本でも9月に、承認されたが、CHMPは、盲検下の試験ではないのに治験医によるPFS(無進行生存期間)の評価に依存していることや、スキャンの独立評価では効果が確認できなかったこと、そして、他の支持的証跡もないことから、後ろ向きに評価していた。

アストラゼネカもAKT阻害剤Truqap(capivasertib)の前立腺癌に関する適応拡大申請を取消した。詳細は未公表だが、おそらく、米国では6月に承認された、PTEN欠乏性のアンドロゲン経路調整剤未経験/感受性転移前立腺癌に関するものだろう。

適応拡大は認めないがデータ掲載だけは認める、という時々見られる大岡裁きとなったのが、ファーザーの抗CD33抗体・抗生剤複合体、Mylotarg(gemtuzumab ozogamicin)。1ヶ月児以上の未成年者の新患CD33陽性急性骨髄性白血病に関するもので、エビデンスはmitoxantrone及びcytarabineと併用下で一回投与と三回投与を比較した試験だが、EFS(無イベント生存期間)の解析がフェールしたことや、対照群が適切でないことなどから、CHMPは後ろ向きに考えていた。米国では20年に1ヶ月児以上の未成年に適応拡大しているが、上記試験はその時のものとは異なる模様で、探しても見つからなかった。

リンク: EMAプレス・リリース

【承認】


エンスプリングが甲状腺眼症に適応拡大
(2026年10月16日発表)

ロシュはFDAがEnspryng(satralizumab-mwge)を成人の甲状腺眼症に用いることを承認したと発表した。第3相試験二本のうち、SatraGO-2試験で主評価項目である活性期患者における24週突出短縮奏効率が53%と偽薬群の23%を有意に上回った。日本も参加したSatraGo-1試験は49%対31%、p=0.07とフェールした。被験者の2割程度を占めた非活性期も含めた全体の解析でも前者の試験では47%対22%、p<0.01となり、後者も全体的に一貫性が見られた。

中外製薬が創製した抗IL-6受容体リサイクリング抗体。20~21年に日米欧でMOGAD(抗ミエリン・オリゴデンドロサイト糖蛋白抗体関連障害)の治療薬として承認された。今回は、第3相が一勝一敗なのに承認される珍しい例となった。

リンク: プレス・リリース


ジルビスクのオートインジェクターが承認
(2026年10月16日発表)

UCBはZilbrysq(zilucoplan)のオートインジェクター版が米国で承認されたと発表した。27年第1四半期にロンチする予定。23年にプリフィルド・シリンジ版が日米欧で成人のAChR自己抗体陽性全身型重症筋無力症用薬として承認され、自己注射も認められているが、取扱いが簡便になる。日本でも剤形追加申請中。

リンク: プレス・リリース


FDA、IL-15融合蛋白の尿路上皮癌限定を解除
(2026年10月14日発表)

FDAはImmunityBio(Nasdaq:IBRX)のAnktiva(nogapendekin alfa inbakicept-pmln)の適応拡大を承認した。IL-15のN72D変異株をIL-15受容体の一部やIgG1のFc領域と融合した遺伝子組換え薬で、24年に米国で、今年2月にはEUでも、成人のBCG不応NMIBC(筋層非浸潤膀胱癌)に承認された。この段階ではエビデンスとなる第2/3相QUILY-3.032試験の対応コフォートに即して適応範囲がCIS(上皮内腫瘍)に限定されていたが、今回、限定解除され乳頭状腫瘍だけの患者も適応となった。

同社は、上記試験のCISはなく乳頭状腫瘍だけのコフォートでPFS(無進行生存期間)などが良好な結果になったと発表し今年1月にはJournal of Urologyに論文も刊行された。しかし、FDAの判断は二転三転。25年1月の事前会議で好反応を得て3月に適応拡大申請したが、受理されなかった。その後の経緯は明らかではないが、今年3月に再び承認申請、審査期限は27年1月6日なので標準審査だったが、前倒しで承認された。

FDA首脳部入れ替えに伴うゴタゴタの一例かとも思われたが、下記リリースによると、FDAは乳頭状NMIBCに関するガイダンス資料のドラフト(実態は最終稿)が完成間近となっている。今後は、CISにおけるエビデンスがあれば乳頭状腫瘍だけの患者も適応になりうるようだ。Anktivaは第1号だったのである。実際、新しいレーベルには乳頭状腫瘍だけの症例に関する治験成績は記載されていない。

ジョンソン エンド ジョンソンはInlexzo(gemcitabine)膀胱内留置システムで乳頭状NMIBCだけの第3相SunRISe-5実薬対照試験を実施中だが、やらなくても承認は取れたのだろうか?まあ、腫瘍学における適応範囲は必ずしもFDA承認レーベルが重視さる訳ではなく、また、FDAが承認しようがしまいが、エビデンスは無いよりあったほうがだいぶ良い。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/10推アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬)
26/10推GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、dMMR/MSI-H結腸癌、CNPV案件)
26/10/26GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎)
26/10/29Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎)
26/10/30Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫)
26/11推Merck KGaAのpimicotinib(腱滑膜巨細胞腫)
26/11推バイエルのBAY 2433334(asundexian、虚血性脳卒中再発予防)
26/11推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv、多発骨髄腫単剤4次治療)
26/11推Dizal PharmaceuticalのZegfrovy(sunvozertinib、EGFR ex20ins変異のあるNSNSCLC1L)
26/11推ロシュのGazyva(obinutuzumab、原発性膜性腎症)
26/11推ファイザーのTalzenna(talazoparib)とアステラス/ファイザーのXtandi(enzalutamide)の併用(去勢感受前立腺癌)
26/11推Regeneron PharmaceuticalsのALN-CC5(cemdisiran、全身性筋無力症)
26/11/1Agios Pharmaceuticalのmitapivat(鎌状赤血球症適応拡大)
26/11/14Summit tderapeuticsのSMT112(ivonescimab、3G EGFR阻害剤歴のあるEGFR変異陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
26/11/14CytokineticsのMyqorzo(aficamten、MAPLE-HCM試験データ)
26/11/17Mandos LLC(Beren tderapeuticsの子会社)のVTS-270(adrabetadex、ニーマン・ピック病I型)
26/11/22SavaraのMolbreevi(molgramostim、吸入用、自己免疫性肺胞蛋白症)
26/11/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/11/25サノフィのSAR402671(venglustat、III型ゴーシェ病)
26/11/27BridgeBio PharmaのBBP-418(ribitol、肢帯型筋ジストロフィー2I/R9型)
26/11/27Zydus Therapeuticsのsaroglitazar(原発性胆汁性胆管炎)
26/11/27Nuvalent(GSKグループ)のNVL-655(neladalkib、TKI歴のあるALK+NSCLC)
26/11/28PolypidのD-PLEX100(doxycycline長期局所放出製剤、
26/11/30ロシュのRG6171(giredestrant、早期乳癌術後療法)
26/11/30Vertex Pharmaceuticalsのpovetacicept(IgG腎症)
26/11/30Cogent BioscienceのCGT9486(bezuclastinib、GIST2L)
諮問委員会
26/10/30DODAC:SydnexisのRyjunea(atropine、小児進行性近視)


今週は以上です。

2026年10月10日

第1280回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • BMSのCELMoD薬、PFS延長を確認 
  • 画期的パーキンソン病用薬の第3相が成功 
  • エプキンリのDLBCL一次治療試験が成功 
  • 31価肺炎球菌ワクチンの免疫原性試験が成功 
  • ヒフデュラのシェーグレン試験は無益中止へ 
  • 中華EGFRtk阻害剤のグローバル第3相がフェール 
  • Newron社、治験停止命令の背景をアップデート 
  • オプトジェネティクス系新薬を承認申請 
  • 9~10月のEU承認申請 
  • 旭化成グループ企業のヘルペス治療薬が承認 
  • PDSSリスクが小さそうなオランザピン注が承認 
  • テセントリクがdMMR結腸癌の術後療法に適応拡大 
  • ラプシドが特発性でない蕁麻疹に適応拡大 
  • ツカイザがher2陽性乳癌の一次治療後維持療法に適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


BMSのCELMoD薬、PFS延長を確認
(2026年10月8日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブはZenbexus(iberdomide)が第3相EXCALIBER-RRMM試験で共同主評価項目のPFS(無進行生存期間)を達成したと発表した。期待された通り、定番的な評価項目でも便益が確認された。

セレブロンに結合してイカロスやアイオロスなどの転写因子の零落を誘導し、腫瘍細胞の増殖を抑制、アポトーシスを誘導、そして免疫を賦活する、CELMoDと呼ばれる免疫調停薬。8月に米国で、この試験のもう一つの主評価項目である微小残存病変陰転率という新規評価方法に基づき、プロテアソム阻害剤と免疫調停薬を含む1次以上の治療歴を持つ多発骨髄腫向けに加速承認された。中間解析でZenbexusをDarzalex Faspro(daratumumabとhyaluronidase-fihj、和名ダラキューロ)及びdexamethasoneと併用した群は41%、DVdレジメン群(bortezomibをdaratumumab及びdexamethasoneと併用)群は21%だった。

PFSもメジアン値(メジアン23ヶ月追跡)で42ヶ月対20ヶ月と、こちらもほぼ倍増し、ハザード・レシオは0.49だった(p<0.0001)。

リンク: プレス・リリース


画期的パーキンソン病用薬の第3相が成功
(2026年10月7日発表)

米国ボストンの医薬品開発会社、Cerevanceは、CVN424(solengepras)が第3相進行パーキンソン病試験で主目的を達成したと発表した。承認申請に向けて当局と相談する考え。

パーキンソン病におけるドパミン欠乏の影響は直接路の抑制と間接路の亢進の2種類あるが、solengeprasはGPR6受容体のインバース・アゴニズムを通じて後者を抑制する。今回のARISE試験は欧米豪州の施設でドパミン系薬品の効果が薄れるオフタイムが1日3時間以上ある患者341人を組入れて、偽薬、75mg、または150mgを一日一回、12週間、追加投与したところ、150mgが主目的のオフタイム減少で偽薬比有意な成果を上げた。ベースライン値は5.65時間、偽薬群は0.95時間減少したが150mg群は1.56時間減少し、群間差のp=0.035だった。

副次的評価項目のジスキネジアなきオンタイムの増加は偽薬調整後で0.60時間、p=0.0468、日常生活機能や睡眠評価も改善した。有害事象は頭痛、尿路感染症、不眠、悪心など。ジスキネジアの発現率は4.4%、偽薬群は1.8%だった。

後期第2相ではオフタイムが2時間以上の141人を偽薬、50mg、150mgの3群に割付けて4週後のオフタイムを検討したところ、150mg群は偽薬調整後で1.3時間減少、p=0.02となった。被験者の9割弱を占めたオフタイム3時間以上のサブグループでは群間差1.78時間、p=0.0045とかなり良かった。しかし、3時間以上を組入れた第3相の成績は低下しており、p値がそれほど低い訳でもないので、もう一本実施せずに承認申請が認められるかどうか、不透明感がある。

リンク: プレス・リリース


エプキンリのDLBCL一次治療試験が成功
(2026年10月5日発表)

ジェンマブと共同開発販売パートナーのアッヴィは、抗CD3xCD20二重特異性抗体Epkinly(epcoritamab-bysp)が第3相新患DLBCL(びまん性大細胞型B細胞型リンパ腫)試験で主目的等を達成したと発表した。適応拡大に向け当局と相談する考え。

Epkinlyは米国で再発/難治DLBCLの3次治療薬として加速承認され、再発/難治濾胞性リンパ腫にも3剤併用または3次治療以降に単剤投与が承認されている。今回のEpcore DLBCL-2試験はIPS予後予測分類が2~5の新患DLBCL患者をR-CHOP群(rituximab8サイクルとcyclophosphamide、doxorubicin hydrochloride、vincristine、及びprednisoneを6サイクル)とR-CHOP・Epkinly併用群(R-CHOP6サイクルとEpkinly8サイクル)に無作為化割付けしてPFS(無進行生存期間)を比較した。主評価項目のIPS3~5サブグループではハザード・レリオ0.49、副次的評価項目の全体の解析も0.49となり、どちらも統計的に有意だった。

同様なセッティングではロシュの抗CD79b抗体薬物複合体Polivy(polatuzumab vedotin-piiq)がR-CHOPのうちvincristineを外したR-CHPレジメンと併用で22~23年に日欧米で適応拡大承認されている。R-CHOP比のPFSハザード・レリオは0.73なので、今回のほうが少なくとも効果に関しては高そうだ。

リンク: プレス・リリース


31価肺炎球菌ワクチンの免疫原性試験が成功
(2026年10月5日発表)

米国カリフォルニア州のワクチン開発会社、Vaxcyte(Nasdaq:PCVX)は、VAX-31の最初の第3相試験であるOPUS-1で良好な成果を上げたと発表した。既存の肺炎球菌ワクチン二品と比べて、共通株に関しては一部を除いて非劣性、独自株は優越性を概ね達成した。他の二本の結果を27年上期に取得し、ロット同等性試験を経て28年上期に承認申請する考え。

今回の試験は米国の50歳以上で肺炎球菌ワクチン接種歴のない3572人をVAX-31群、PVC20(ファイザーのPrevnar 20)群、PVC21(MSDのCapvaxive)群に無作為化割付けして、一回接種の1ヶ月後のOPA(オプソニン貪食活性)法に基づく免疫原性のGMR(算術平均比)を検討した。主評価項目打ち、PCV20またはPCV21と共通する28の配合株に関しては95%下限が閾値の0.667を上回った。3剤共通の11株では少なくともどちらかと比較して非劣性、PCV20だけと共通の9株やPCV21だけと共通の8株でも、非劣性だった。

多価ワクチンの試験では一つ二つ取りこぼすことも珍しくない。製品毎の比較では、PCV20とは全株、非劣性だったが、PCV21比では3型と12F型がフェールした(同社によると、伝統的な非劣性マージンである0.5はクリアした)。

共同主評価項目である、VAX-31だけが配合する3株及び交差応答する1株に関しては優越性解析(95%下限が2.0超)を達成した。

米国で近年流行している株のカバレッジはPrevnar 20よりCapvaxiveの方が優れる。このため、承認審査ではPVC21との優劣が重要な評価点の一つになると同社は考えている。

尚、この試験は18~49歳の475人もPCV20と3対1割付けで組入れており、安全性や、免疫原性のブリッジング可能性が確認された。

他の第3相は、OPUS-2試験でインフルエンザ・ワクチンと同時または1ヶ月遅れで接種する時の免疫原性などを検討し、OPUS-3試験ではPPSV23(MSDのPneumovax)も含め肺炎球菌ワクチン接種歴を持つ50歳以上の752人を組入れるPCV20対照免疫原性試験が進行中。承認申請までには未成年者向け第2相の結果も判明しそうだ。

リンク: プレス・リリース


ヒフデュラのシェーグレン試験は無益中止へ
(2026年10月8日発表)

オランダのアルジェニクスはVyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa and hyaluronidase-qvfc)でシェーグレン疾患の第3相試験を実施しているが、無益中止が決まった。日本も参加したUNITY試験に抗Ro/SSA自己抗体を持つ中重度原発性シェーグレン疾患の成人631人を組入れて48週間投与し、EULARシェーグレン症候群疾病活動性指数の改善を偽薬群と比較する計画だったが、独立データ監視委員会が中間解析で無益認定し中止を勧告した。

Vygartは抗FcRn抗体フラグメント。皮下注用のHytruloとオリジナルの静注用が全身性重症筋無力症などに承認されている。

リンク: プレス・リリース


中華EGFRtk阻害剤のグローバル第3相がフェール
(2026年10月6日発表)

米国フィラデルフィア州の新興医薬品企業、ArriVent Biopharma(Nasdaq:AVBP)は、EGFRチロシン・キナーゼ阻害剤firmonertinibが第3相FURVENT試験で主目的を達成しなかったと発表した。中国では複数のEGFR変異非小細胞性肺癌向けに承認されており、今回は標的変異が異なるとはいえ、意外な結果になった。

中枢神経浸透性第3世代EGFR阻害剤で、様々な変異型に活性を持つ。中国では21年にEGFRtk阻害剤歴のあるT790M変異非小細胞性肺癌に承認、22年にはエクソン19欠損またはL858R変異型の一次治療薬としても承認された。ArriVentはオリジネイターのShanghai Allist Pharmaceuticals(SSE:688578)から中国外の権利を取得、2本の第3相試験を実施している。

今回の日本も参加した試験は、エクソン20挿入変異のある局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療を受ける約400人を160mg一日一回経口投与群、240mg一日一回経口投与群、そして白金ベース化学療法群に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較した。各群のメジアン値は8.4ヶ月、11.0ヶ月、9.5ヶ月となり、低量群のハザード・レシオは0.91でフェール、高量群は0.75と良さそうだったがp=0.0654でフェールした。一方、副次的評価項目の担当医評価に基づくPFSはメジアン値が各群8.3ヶ月、11.1ヶ月、7.1ヶ月と特に対照群で第三者査読値と大きく変わり、高量群のハザード・レシオは0.61(95%信頼区間0.46-0.81)と見栄えがした。また、全生存期間の解析は未成熟ながら改善の傾向が見られるとのことだ。

もう一本の第3相ALPACCA試験はEGFRの一般的ではない変異型であるPACC(P-Loop and Alpha C-Helix Compressing)型局所進行/転移非小細胞性肺癌を組入れて、PFS(同上)などをosimertinibと比較している。ClinicalTrials.govによると成否判明は29年とのことなので、名誉挽回の機会はFURVENT試験の生存期間解析のほうが先かもしれない。

リンク: プレス・リリース


Newron社、治験停止命令の背景をアップデート
(2026年10月8日発表)

イタリアのNewron Pharmaceuticals(SIX:NWRN)は電位依存性ナトリウム・チャネル阻害剤NW-3509(evenamide)が治療抵抗性統合失調症の治療薬として第3相段階にあるが、米国では、FDAが4月に第3相ENIGMA-TRS 2試験に関して新規組入れ停止を命じたため、まだ一例も投与を開始していない。今回、アップデートが行われた。

事の発端は、米国外の施設で投与を受けた患者1名が突然死したこと。担当医は薬物関連とは判定せず、欧州アジアなど米国外で実施しているENIGMA-TRS 1試験も担当する独立安全性監視委員会は試験継続を勧告したが、FDAは、ナトリウム・チャネル阻害剤でしばしば見られる不整脈やそれに伴う心血管事故や癲癇発作のリスクを懸念している模様だ。

evenamideの臨床試験ではこれまでに4名が死亡しており、偽薬群の1名より数値上は多いが、3例は治験担当医が薬物関連無しと評価している由。また、100人年当りの発生率で見ると1.31と、偽薬群の1.81と比べて高くはない。

FDAはQTc間隔の穏やかな短縮が見られることにも注目している模様。QTc間隔の大きな延長を誘導する薬は突然死のリスクを伴うことが知られていて、安全性評価に使える閾値も存在するが、QTc短縮は初耳で、プレス・リリースからも当惑も窺われる。

TRS 1試験のほうは組入れが進捗しており、27年第1四半期には主評価項目のPANSS(陽性・陰性症状評価尺度)の解析結果が判明する見込みだ。成功なら後期第2相の008A試験と合わせて承認申請に向かう可能性があるが、米国に関しては遅れそうだ。

evenamideは24年にEAファーマが日本などの市場で、25年にはMyung In Pharmaが韓国で、開発販売権を取得している。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


オプトジェネティクス系新薬を承認申請
(2026年9月9日発表)

ノーベル生理学・医学賞に繋がったオプトジェネティクス技術を検索していて、以前マークした新薬の承認申請が米国と日本で受理されていたことに気付いた。米国テキサス州ダラスの未公開ベンチャーであるNanoscope Therapeuticsが開発した網膜色素変性症(RP)用薬、Mogenry(開発名MCO-010、sonpiretigene isteparvovec)だ。網膜椎体に分布する光受容に係る蛋白、オプシンの改変プラスミドを組み込んだAAV2ベクターを硝子体注射する遺伝子療法で、RPと関連する遺伝子変異は多数あるが、不問で使える可能性がある。承認申請の根拠となる後期第2相RESTORE試験で進行RPの患者に投与したところ、第52週のBCVA(最高矯正視力、超低視力でも検査できるフライブルク法で計測)がシャム群比有意に改善した。RPの無作為化対照試験で臨床的に意味のある視力改善を達成したのは初めてとのこと。

当初の計画より2年遅れたが9月に米国で重度視力喪失を伴うRPを予定適応症とする承認申請が受理された。プレス・リリースには審査期限等は記されていない。10月1日には、日本で受理と発表された。予定適応症は遺伝性網膜ジストロフィーとなっており、RPだけでなく、第2相で臨床的に意味のあるBCVA改善を達成したシュタルガルト症などもカバーする考えのようだ。

リンク: プレス・リリース(FDA受理、9/9付)
リンク: プレス・リリース(PMDA受理、10/1付)


9~10月のEU承認申請
(2026年10月9日公表資料から抜粋)

EMAによると、9月15日と10月1日に新薬承認審査を開始した品目は以下の通り。

申請者呼称一般名種類適応症米国
MSDLipfendraEnlicitide経口PCSK9阻害剤成人の原発性高脂血症と混合異脂血症26/7承認
Jiangsu Hengrui PharmaceuticalsWevduryFuzuloparibPARP1/2阻害剤成人の転移性去勢抵抗性前立腺癌不明
Relay TherapeuticsLyrfigtuLirafugratinibFGFR2阻害剤成人の治療歴のある切除不能、局所進行、転移性胆管腫26/9承認
Biosplice TherapeuticsSM04690LorecivivintDYRK1A/CLK2阻害剤成人の膝・腰変形性関節炎26/1承認申請
ノバルティス(MorphoSys)CPI-0610PelabresibBET阻害剤原発性骨髄線維症などの成人における膵臓肥大や症状の治療不明
Ultragenyx PharmaceuticalFayuviRebisufligene etisparvovecAAV9遺伝子療法生後から18歳までのMPS IIIA26/9承認
United TherapeuticsTyvasoTreprostinilPGI2製剤、ネブライザ吸入用成人の特発性肺線維症26/9適応拡大申請受理
出所:Applications for new human medicines under evaluation by the CHMP(2026年10月5日付)
注:一般名と適応症以外は主として会社発表や当方の推測による。

このうちfuzuloparibはJiangsu Hengrui Pharmaceuticals(江蘇恒瑞医薬、上海:600276)側もプレス・リリースを出している。第3相FUZUPRO試験でCYP17阻害剤abiraterone acetate及びprednisone(別名prednisolone)のレジメンに追加したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が24.8ヶ月と追加しなかった群の19.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.71、統計的に有意だった。被験者の5割弱は中国本土以外の施設の組入れで、ClinicalTrilas.govを見ると多くの米国施設も参加しているので、米国でも承認取得を目指しているのではないか。尚、中国ではある種の卵巣癌や乳癌向けに承認されている。

リンク: EMAの承認審査案件開示サイト
リンク: Jiangsu Hengrui Pharmaceuticalsのプレス・リリース

【承認】


旭化成グループ企業のヘルペス治療薬が承認
(2026年10月9日発表)

FDAはドイツのAicuris Anti-infective Cures AGのHovilpri(PDSS(post-injection delirium/sedation syndrome))を承認した。免疫力が低下している患者の単純ヘルペスウイルス感染症における、既存薬不応の皮膚粘膜病変の治療に用いる。第3相PRIOH-1で負荷用量400mg、維持用量100mgを1日1回、最大28日間経口投与したところ、63%の患者が完治し、DNAポリメラーゼ阻害剤などを用いた対照群の34%を有意に上回った。

DNA二重らせんをほどくヘリカーゼとRNAプライマーを合成するプライマーゼの複合体を阻害する。Aicuris社は06年にバイエルからスピンアウト、今年4月に旭化成の米国子会社であるVeloxis Pharmaceuticalsに7.8億ユーロで買収された。

リンク: プレス・リリース


PDSSリスクが小さそうなオランザピン注が承認
(2026年10月9日発表)

テバファーマスーティカルはFDAがWeltruza(olanzapine)を統合失調症薬として承認したと発表した。オリジネイターであるイーライリリーのZyprexaは17~18年前に欧米で筋注用製剤のZyprexa Relprevvが投入されているが、臨床試験で2%程度の患者でPDSS(注射後せん妄鎮静症候群)が発生したため枠付き警告され、投与後は3時間以上モニタリングし付き添いと帰宅することが推奨されている。Weltruzaのレーベルにも警告注意事項として記載されているが、849人の投与実績で一例も発生しなかったことから、枠付き警告やモニタリング勧奨が無い、クリーンな内容になった。

EUでも5月に承認申請が受理されている。

リンク: プレス・リリース


テセントリクがdMMR結腸癌の術後療法に適応拡大
(2026年10月8日発表)

FDAはロシュの静注点滴用抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)とその皮下注用製品をステージIIIのdMMR(ミスマッチ修復機能欠損)型結腸癌の全摘後アジュバント療法に併用することを承認した。静注用製剤は2歳以上、皮下注用は12歳以上かつ体重40kg以上の患者が適応になる。日本でも適応拡大申請中。

エビデンスとなる第3相ATOMIC試験でmFOLFOX6レジメンの6ヶ月コースにTecentriqの12ヶ月コースを追加したところ、中間解析でDFS(無病生存期間)のハザード・レシオが0.50となり、p値は閾値の0.009を下回った。両群ともメジアン未到達だが、3年無病生存率は86.4%対76.6%で10パーセンテージ・ポイント程度の差があった。G3以上の有害事象の発生率は71.7%対62.1%だった。

リンク: プレス・リリース


ラプシドが特発性でない蕁麻疹に適応拡大
(2026年10月7日発表)

ノバルティスはFDAがRhapsido(remibrutinib)を成人のH1抗ヒスタミンに十分応答しない症候性皮膚描記症(SD)に適応拡大を承認したと発表した。25~26年に米欧日で慢性特発性蕁麻疹用薬として承認されたbtk阻害剤で、マスト細胞などが分泌するブルトン型チロシン・キナーゼを阻害して自己免疫疾患における免疫亢進を抑制する。

今回の承認は特発性(原因不明)ではない蕁麻疹に関する適応拡大の第一弾。日本も参加した第3相RemIND試験で25mgを一日二回経口投与したところ、SDコフォートでは12週完全反応率が29%と偽薬群の14%を上回った(p=0.023)。このコフォートの4割はアジアの施設で組み入れられた。このほかに、寒冷蕁麻疹やコリン性蕁麻疹のコフォートも12週奏効率を達成しており、逐次、承認取得が進められるのではないかと思われる。

remibrutinibは100mgを投与した多発硬化症の第3相も2本成功、承認申請に向かう見込み。

リンク: プレス・リリース


ツカイザがher2陽性乳癌の一次治療後維持療法に適応拡大
(2026年10月7日発表)

FDAはTukysa(tucatinib)をher2陽性切除不能/転移乳癌の一次治療後維持療法に承認した。第3相HER2CLIMB-05試験でtrastuzumab、pertuzumab、タクサンの3剤併用インダクション療法が疾病安定化以上の成果を上げた654人を組入れて、trastuzumabとpertuzumabの継続投与に偽薬またはTukysa(300mg一日二回)を追加したところ、PFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザード・レシオが0.64、メジアンPFSは各群16.3ヶ月と24.9ヶ月となった。全生存期間の解析はまだ熟していないが、25年のサン・アントニオ乳癌カンファレンスにおける発表によれば、ハザード・レシオ0.539と好ましい方向を指している。この適応拡大はEUや日本でも今春、承認審査が開始されている。

ファイザー・グループのSeagenが18年にOncothyreonを6億ドルで買収して入手した選択的her2チロシン・キナーゼ阻害剤。20年に米国で、21年にはEUでも、複数のher2標的薬歴を持つher2陽性切除不能/転移乳癌にtrastuzumab及びcapecitabineと併用することが承認され、26年には日本でも化学療法歴のあるher2陽性手術不能/再発乳癌に同レジメンが承認された。乳癌以外では、23年に米国でher2陽性切除不能/転移結腸直腸癌のサルベージ療法としてtrastuzumab併用が加速承認され、今年4月に日本で化学療法歴のあるher2陽性胆道癌にtrastuzumab併用が一変申請された。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】

PDUFA
26/10推アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬)
26/10推GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、dMMR/MSI-H結腸癌、CNPV案件)
26/10/15ロシュのEnspryng(satralizumab-mwge、甲状腺眼症)
26/10/26GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎)
26/10/29Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎)
26/10/30Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫)
26/11推Merck KGaAのpimicotinib(腱滑膜巨細胞腫)
26/11推バイエルのBAY 2433334(asundexian、虚血性脳卒中再発予防)
26/11推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv、多発骨髄腫単剤4次治療)
26/11推Dizal PharmaceuticalのZegfrovy(sunvozertinib、EGFR ex20ins変異のあるNSNSCLC1L)
26/11推ロシュのGazyva(obinutuzumab、原発性膜性腎症)
26/11推ファイザーのTalzenna(talazoparib)とアステラス/ファイザーのXtandi(enzalutamide)の併用(去勢感受前立腺癌)
26/11推Regeneron PharmaceuticalsのALN-CC5(cemdisiran、全身性筋無力症)
26/11/1Agios Pharmaceuticalのmitapivat(鎌状赤血球症適応拡大)
26/11/14Summit tderapeuticsのSMT112(ivonescimab、3G EGFR阻害剤歴のあるEGFR変異陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
26/11/14CytokineticsのMyqorzo(aficamten、MAPLE-HCM試験データ)
26/11/17Mandos LLC(Beren tderapeuticsの子会社)のVTS-270(adrabetadex、ニーマン・ピック病I型)
26/11/22SavaraのMolbreevi(molgramostim、吸入用、自己免疫性肺胞蛋白症)
26/11/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/11/25サノフィのSAR402671(venglustat、III型ゴーシェ病)
26/11/27BridgeBio PharmaのBBP-418(ribitol、肢帯型筋ジストロフィー2I/R9型)
26/11/27Zydus Therapeuticsのsaroglitazar(原発性胆汁性胆管炎)
26/11/27Nuvalent(GSKグループ)のNVL-655(neladalkib、TKI歴のあるALK+NSCLC)
26/11/28PolypidのD-PLEX100(doxycycline長期局所放出製剤、
26/11/30ロシュのRG6171(giredestrant、早期乳癌術後療法)
26/11/30Vertex Pharmaceuticalsのpovetacicept(IgG腎症)
26/11/30Cogent BioscienceのCGT9486(bezuclastinib、GIST2L)
諮問委員会
26/10/30DODAC:SydnexisのRyjunea(atropine、小児進行性近視)

今週は以上です。

2026年10月4日

第1279回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • リットフーロの白斑試験が成功 
  • BI/Zealandの体重管理薬、第3相がまた成功 
  • 大鵬薬品、新規合剤を承認申請へ 
  • tasimelteonが新たな睡眠障害に効果 
  • 抗SARS-CoV2抗体のmRNAワクチン対照試験 
  • ハンチントン病の遺伝子治療薬、4年目のデータは今一つだが... 
  • Mirum社、HDV薬の第3相が成功 
  • 新規GPIIa/IIIb受容体拮抗剤を承認申請 
  • ロシュ、BTK阻害剤を多発硬化症に承認申請 
  • イミフィンジを筋層浸潤膀胱癌に適応拡大申請 
  • ノボ、ヘムライブラ対抗品の承認審査が遅延 
  • 第一三共、抗B7-H3ADCの承認申請を撤回 
  • EUでHansoh PharmaのEGFR阻害剤の承認が取消に 
  • ジャイパーカが未治療CLL/SLLに適応拡大 
  • 初のMCT8欠乏症薬が承認 
  • 新作用機序のパーキンソン病薬が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


リットフーロの白斑試験が成功
(2026年10月2日発表)

ファイザーは7月にJAK3/TEC阻害剤Litfulo(ritlecitinib)が第3相非分節型白斑試験二本で主目的などを達成と発表したが、データをEADV(欧州皮膚科学会)で公表した。承認されているインサイト(Nasdaq:INCY)のJAK1/2阻害剤クリーム、Opzelura(ruxolitinib)と比べ効果が大きく変わるようには見えないが、経口剤である点が異なる。欧米で承認申請する考え。

この日本も参加したTranquillo試験とTranquillo 2試験は、前者は12歳以上の小児と成人を50mg一日一回投与群と偽薬群に2:1割付けして52週間投与、後者は成人を100mg一日一回投与群と偽薬群、そして、参考群である50mg一日一回投与群に無作為化割付けして52週間投与した。100mg群と偽薬群の主評価項目のF-VASI75(顔面に関する評価指数が75%以上改善した患者の比率)は、夫々、12.47%対2.48%と、21.86%対2.40%となり、偽薬比有意な差があった。後者の試験の50mg群の数値は公表されていない。共同主評価項目(但し米国外では副次的評価項目)のT-VASI50(全身の評価指数が50%以上改善した患者の比率)は、各、8.98%対1.98%と13.02%対2.40%で、こちらも有意な差があった。

Litfuloは23年に米日欧で12歳以上の重度円形脱毛症に承認されている。

リンク: プレス・リリース


BI/Zealandの体重管理薬、第3相がまた成功
(2026年10月1日発表)

ベーリンガー・インゲルハイム(BI)は、Zealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)からライセンスしたグルカゴン受容体とGLP-1受容体のデュアル・アゴニスト、BI 456906(survodutide)が第3相SYNCHRONIZE-2試験で主目的を達成したと発表した。EASD(欧州糖尿病学会)年次総会とNew England Journal of Medicine(NEJM)誌でデータを明らかにした。

この試験は肥満/オーバーウェイトで心血管リスク因子を持ち二型糖尿病を併発する患者を偽薬群、3.6mg群、6.0mg群に無作為化割付けして一日一回皮下注を76週間反復し、体重の変化と5%減量奏効率を偽薬と比較した。例によって、製薬会社のプレス・リリースには薬自体の潜在力を反映するefficacy estimand(ちゃんと投与を続けた患者だけの解析)ベースの成績が、NEJM誌には患者にとって重要な、そして米国のレーベルに記載されるであろうtreatment-regimen setimand(途中で打ち切った患者やレスキュー薬投与を開始した症例も解析)ベースの数値が記されている。また、プレス・リリースは用量に言及していないので、両群のプール値だけを発表しているのかもしれない。

体重減量率は、BIによると、偽薬群が3.1%、試験薬群は13.1%。NEJM論文によると偽薬群3.9%、3.6mg群8.2%、6.0mg群9.8%。5%減量奏効率の解析も成功した。副次的評価項目のうち、A1c低下幅(ベースライン値は7.4%)はBIによると0.03%と1.21%、NEJM論文では各群0.2%、0.9%、0.8%となっている。

二型糖尿病を合併していない患者を組入れたSYNCHRONIZE-1試験や肥満/オーバーウェイトの線維症を伴うMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)における肝臓脂肪抑制試験、中国試験も成功しており、心血管アウトカム試験も進行中。承認申請に近付いている。肥満症関連では多くの新薬、既存薬が競っているので、セールス・トークに使える長所が欲しい所だ。

リンク: プレス・リリース
リンク: Whartonらの治験論文抄録(NEJM)


大鵬薬品、新規合剤を承認申請へ
(2026年10月1日発表)

大鵬薬品はazacitidineとcedazuridineの合剤(ASTX030)が第3相試験で主目的を達成したと発表した。米国で承認申請する考え。

azacitibineはオリジナルの皮下注用製剤は既にGE化したDNAメチル基転移酵素阻害剤。MDS(骨髄異形成症候群)などに承認されている。20~21年にかけて米欧で、今年8月には日本でも、経口剤のOnuregが急性骨髄性白血病の寛解後維持療法として承認された。cedazuridineはシチジンデアミナーゼ阻害剤。DNAメチル基転移酵素阻害剤decitabineを経口投与する時の代謝を遅らせ効果を長持ちさせる作用を持ち、合剤が20~23年に米欧で標準的寛解導入療法不適の急性骨髄性白血病薬Inqovi/Inaqoviとして承認された。

今回成功したのは第3相AZTOUND試験の単剤投与ポーション。MDSやCMML(慢性骨髄単球性白血病)の患者88人を対象にクロスオーバー方式で、合剤を経口投与する時と、azacitibineを皮下注射する時のazacitidineの曝露(血中濃度の24時間曲線下面積)を比較したもの。

Onuregとの比較が気になるところだが、こちらは偽薬対照試験における反応率に基づいて異なった癌の異なった用途に承認されたので、分からない。

リンク: プレス・リリース(和文)


tasimelteonが新たな睡眠障害に効果
(2026年9月29日発表)

Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq:VNDA)はMT1/2受容体作動剤Hetlioz(tasimelteon)が第3相DSWPD(睡眠・覚醒相抗体障害)試験で主目的などを達成したと発表した。他の睡眠障害試験のデータと共に適応拡大申請すべくFDAと相談する考え。

Hetliozは14~15年に欧米で非24時間障害(盲目などにより概日リズムが不調)の治療薬として承認された。類似疾患における適応拡大が積極的に進められ、20年に米国でスミス・マギニス症候群(遺伝子の部分欠失による発達障害)の睡眠障害に承認されたが、その後は、25~26年にEUでスミス・マギニス症候群適応拡大が認められず、米国ではジェットラグ障害や不眠症の入眠障害に関する適応拡大申請が中々承認されず不服申し立て手続きを進めるなど、今や、病気というよりは当局と戦う製薬会社の体をなしている。

DSWPD試験は成人患者43人を組入れて、承認用途と同じ20mg一日一回経口投与の便益を偽薬と比較した。28日の主観的睡眠潜時がベースライン比42.5分改善、偽薬群の5.4分改善を37.1分上回った(p=0.022)。安全性は過去の試験と同様とのこと。

本試験は6年前に開始、260人をスクリーニングしても43人しか割付けられなかった(ClinicalTrials.govによると目標は70人)。p値が今一つなのは検出力不測の面もあるのではないか。

前例を踏まえると、まずはFDAのフィードバックが注目される。

リンク: プレス・リリース


抗SARS-CoV2抗体のmRNAワクチン対照試験
(2026年9月29日発表)

米国のInvivyd(Nasdaq:IVVD)はVYD2311が第3相LIBERTY実薬対照試験で良好な成績を上げたと発表した。もう一本、第3相DECLARATION偽薬対照試験も進行中で、10月にこちらの忍容性及び免疫原性データを取得した上で、COVID-19曝露前予防薬としてFDAに加速承認を申請する考え。

同社は24年3月に米国で抗SARS-CoV2抗体Pemgarda(pemivibart)のEUA(非常時使用認可)を取得した。免疫低下によりワクチンでは十分な免疫応答が期待できない12歳以上、体重40kg以上の人に3ヶ月毎に反復投与する。25年の売上高は5300万ドルと小さい。HHS(保健福祉省)は27年6月末を以てCOVID-19治療/予防薬のEUAを終了する計画なので、次の弾を打ち出す必要がある。

VYD2311は同社の抗SARS-CoV2抗体第3弾。流行株の変遷に振り回されて、第3相が成功したがお蔵入りしたADG20(adintrevimab)、Pemgarda、VYD2311と衣替えしてきた。今回のLIBERTY試験は18~49歳の210人を250mg一回筋注群、ファイザーのComirnaty筋注群、両剤併用群の3群に割付けしたダブル・ダミー試験。主評価項目の接種後6日間の有害事象発生率(治療時発現有害事象、注射箇所反応、過敏反応が対象)は各群56.5%(Comirnaty群比有意)、91.4%、78.9%と不思議な結果になった。共同主評価項目の6日間全身性有害事象発生率も、副次的評価項目の56日有害事象発生率も、VYD2311群が一番低く、次が併用群、一番悪いのがComirnaty群となっている(有意ではないものも含む)。便益に関しては、併用群の56日中和抗体価がComirnaty群の2.5倍とのことだが、単剤群に関する記述はない。

主エビデンスとなるべきDECLARATION試験は米国の12歳以上2400人を試験薬の一回投与群、月一回3回投与群、そして偽薬群に無作為化割付けしている。主評価項目は90日症候性COVID-19罹患率(リアル・タイムPCRで確認)。

PemgardaのEUAは抗体価試験とADG20のEVADE曝露前予防試験の感染予防データのブリッジングに基づくもの。今回も薬効に関してはDELCARATION試験の抗体価データとEVADE試験のブリッジングで加速承認を取得する考え。既に多くのワクチンが正式承認されていることを考えると、加速承認時の適応範囲は従来同様に免疫低下者などに限定されるのではないだろうか。

リンク: プレス・リリース


ハンチントン病の遺伝子治療薬、4年目のデータは今一つだが...
(2026年9月29日発表)

uniQure(Nasdaq:QURE)はAMT-130(ifezuntirgene inilparvovec)をハンチントン病の遺伝子治療薬として9月に米国で加速承認申請したところだが、エビデンスとなる第1/2相試験の48ヶ月追跡データを発表した。36ヶ月データより悪化し自然歴対照群との差が有意でなくなったため株価が下落したが、ノイズも多そうなので、よく分からない。承認申請は36ヶ月データに基づいているが、申請に至るまでも波乱があったので、不透明な状況が続く。

原因遺伝子と目される変異ハンチントン遺伝子を沈黙させるmicroRNAをAAV5ベクターを用いて脳に投与する遺伝子療法。薬効のエビデンスは第1/2相試験の主評価項目であるcUHDRS症状評価尺度、主要副次評価項目は市販後薬効確認試験の主評価項目と同じTotal Functional Capacity。低量群と高量群が設定されたが高量が主眼のようだ。対照群は傾向マッチする自然歴群。厄介なのは、36ヶ月時解析の対照群と48ヶ月時解析のそれは症例数が異なっており、連続性が無さそうだ。

cUHDRSの変化は36ヶ月時点では高量群-0.38、対照群-1.52、差のp値は0.003だったが、48ヶ月時点では-0.90、-1.61、差はp=0.144だった。試験薬群だけ比較的大きく低下したが、一部報道によると、極端な外れ値が一例あったようだ。また、高量群の症例数は36ヶ月時点と同じだが対照群は36ヶ月から48ヶ月の間に半減しており、サバイバル・バイアスが影響した可能性もある。

uniQureは24年に外部対照試験に基づき加速承認することでFDAと合意したが、いざ申請へという時に前言を覆され、説得に半年を費やす羽目になった。難病や希少病の薬は承認のハードルが下がるが、どこまで下がるかは裁量の余地が大きいので、一筋縄ではいかないかもしれない、程度のことしか言えない。

リンク: プレス・リリース
リンク: IRテレカンファレンス用スライド


Mirum社、HDV薬の第3相が成功
(2026年9月28日発表)

Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)はbrelovitugが第3相慢性D型肝炎試験で主目的を達成したと発表した。もう一本も成功なら27年上期に米国で承認申請する考え。

B型肝炎ウイルス表面抗原(HBsAg・・・D型肝炎ウイルスと共通)を中和する抗体医薬。今年1月にBluejay Therapeuticsを買収して入手した。今回のAzure1試験は初めて治療を受ける153人を300mg週一回皮下注群、900mg4週毎皮下注群、待機群(24週到達後から試験薬を開始)に2:2:1割付けして24週時点の奏効率(HDV RNAがベースライン比2log10以上減少または検出不能に、且つ、ALT値が正常化)を比較したところ、各群56%、45%、ゼロとなった。試験薬2群はウイルス学的奏功率は各86%と85%で大差なかったがALT正常化率が63%と54%だった。治療関連有害事象の発現率は各群23%、33%、ゼロ。

もう一本は80人の未治療患者を上記3群に2:1:1割付けしている。こちらの試験の対照群は12週間待機後に試験薬を開始する。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


新規GPIIa/IIIb受容体拮抗剤を承認申請
(2026年9月30日発表)

米国のCelecor Therapeuticsはzalunfibanを承認申請しFDAに受理されたと発表した。審査期限は27年6月18日。

皮下注用のGPIIb/IIIa受容体拮抗剤で、効果が15分でピークに達し2時間後には消失と速効速消であることを生かし、ST上昇型心筋梗塞を発症した患者を専門病院に入院させる前の応急措置として利用する。第3相CeleBrate試験で欧州米州の患者2467人を偽薬群、0.11mg/kg群、0.13mg/kg群の3群に無作為化割付けして入院前のメディカル・コンタクト時に一回投与したところ、試験薬群のプール分析で、30日修正改善オッズ(死亡から梗塞拡大までの6項目の複合評価)が0.79、p=0.028となった。軽中度出血が増加したが重度出血発生率は1.2%と偽薬群の0.8%と大差なかった。

リンク: プレス・リリース


ロシュ、BTK阻害剤を多発硬化症に承認申請
(2026年9月30日発表)

ロシュは米国でRG7845(fenebrutinib)を再発型と一次性進行型の多発硬化症用薬として承認申請し受理されたと発表した。再発型では第3相teriflunomide対照試験で再発が一本では51%、もう一本では58.5%、少なかった。一次性進行型では同社の抗CD20抗体Ocrevus(ocrelizumab)と比較した試験でcCDP12(複数の評価尺度に基づく疾病進行リスク)が非劣性だった。深刻有害事象の発生率は再発型では9%(対照群も9%)と11%(同6%)、一次性進行型では両群19%だった。

中枢神経浸透性BTK阻害剤。他社のBTK阻害剤の腫瘍学以外での開発は、3社の3開発品で可逆的な薬物誘導性肝障害の懸念が浮上、FDAが臨床試験の部分停止を命じ、一剤は開発中止、一剤は欧州では承認されたが米国は審査完了となった。RG7845は非共有結合性であるためか特にリスクが高まるようには見えないが、一方で、どちらの用途の試験でも少数とは言え死亡数に群間の偏りが見られたことがリスク要素だ。

リンク: プレス・リリース


イミフィンジを筋層浸潤膀胱癌に適応拡大申請
(2026年9月25日発表)

アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(tremelimumab)を米国で周術期筋層浸潤膀胱癌に適応拡大申請したと発表した。優先審査を受け、PDUFA(処方薬ユーザー・フィー法)に基づく審査目標日は今年第4四半期中とのこと。

cisplatinベース化学療法不適/拒否の患者に、膀胱全摘術前はファイザー/アステラス製薬のPadcev(tremelimumab-actl)と併用で、術後は単剤で投与するもの。第3相VOLGA試験の中間解析でEFS(無イベント生存期間)が標準的術後アジュバント療法群と比べて統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を見た。データは未公表。5月の成功発表時点では全生存期間は未成熟でトレンドのみとのことだったが、今回、統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を達成したことを明らかにした。

日欧などでも適応拡大申請中。

尚、上記試験は同社の抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab)も併用する群も設定されているが、成否は未公表。この用途ではMSDのKeytruda(pembrolizumab)もPadcev併用が承認されている。3剤併用が成功すれば一歩前に出ることができるのだが...

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


ノボ、ヘムライブラ対抗品の承認審査が遅延
(2026年10月2日)

ノボ ノルディスクはFrehemgo(denecimig)を小児や成人のA型血友病の予防的投与薬として欧米で承認申請し、EUでは9月にCHMPの肯定的意見を得たが、米国は審査遅延となった。工場問題の解消策に関わるもので、薬効や安全性に関する問題はないとのこと。新たなPDUFA日(処方薬ユーザー・フィー法に基づく審査終了目標日)は通知されていないとのことなので、もしかすると、あまり長引かないのかもしれない。

中外製薬/ロシュのHemlibra(emicizumab-kxwh)と同様に活性化第IX因子と第X因子を架橋する抗体医薬で、活性化IX因子に結合するアームが一方であることと、第X因子切断活性を向上する改変が導入されているとのこと。

リンク: プレス・リリース


第一三共、抗B7-H3ADCの承認申請を撤回
(2026年9月28日発表)

第一三共は、MSDと共同開発している抗B7-H3抗体薬物複合体、DS-7300(ifinatamab deruxtecan)を米国で再発/難治性進展型小細胞癌用薬として承認申請していたが、撤回した。25年9月のWCLC(世界肺癌学会)での発表によると、第2相で12mg/kg群137人におけるORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が48%、メジアン反応持続期間5.3ヶ月とのことだったが、FDAは加速承認の条件を満たしていないと否定的だったようだ。第3相実薬対照試験の組入れがもうすぐ完了するようなので、梃子にして再起を図ることになる。

第一三共は複数の抗体薬物複合体が開発後期にあるが、近年は失望的なニュースが陸続している。

リンク: プレス・リリース


EUでHansoh PharmaのEGFR阻害剤の承認が取消に
(2026年9月27日発表)

Hansoh Pharma(翰森製薬集団、3692.HK)のEGFRチロシン・キナーゼ阻害剤aumolertinibは、21年以降、中国で様々な癌に承認されている。国外では米国のEQRxが中国試験のデータで承認申請を図ったが、対照薬が米国で承認されている最良レジメンと異なることにFDAが難色を示し、結局、同社は開発を断念し身売りした。一方、欧州では代理人と目されるSFL Pharmaceuticalsが今年2月に変異EGFRを持つ進行非小細胞性肺癌の一次治療薬Aumseqaとして承認を取得した。

今回、このEU承認が9月25日付で取り消された。中国試験のデータと、白人などにも当てはまることを確認するブリッジング試験のデータに基づく承認だったが、データの一部が、アストラゼネカが類薬であるTagrisso(osimertinib)の承認を得た時に獲得した新薬排他権を侵害してしまった模様だ。16年2月の承認なのでHansohは24年まで申請できないが、申請は22年だった。

アストラゼネカがEU司法裁判所に承認取消を求めて提訴しており、まだ決定は出ていない模様だが、欧州委員会のDirectorate-General(厚生。食品安全担当)が取消を決定した。

アストラゼネカのデータ保護期間は既に終わっており、Hansohは再承認申請する考え。EMA(欧州薬品庁)は通常より短期間の審査を行うことを示唆しているとのこと。不服申立ても考えている模様だが再申請のほうが話が早いのではないか。尚、同薬は中国以外では未発売。

リンク: プレス・リリース

【承認】


ジャイパーカが未治療CLL/SLLに適応拡大
(2026年10月2日発表)

FDAはイーライリリーのJaypirca(pirtobrutinib)を成人の未治療CLL/SLL(慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫)に適応拡大することを承認した。EUでも9月に承認されている。第3相BRUIN CLL-313試験で200mg一日一回経口投与群をbendamustineとrituximabの併用レジメンと比較したところ、PFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)のハザード・レシオが0.20、メジアン値は未達対33.5ヶ月と、大きな差があった。全死亡は未成熟だが死亡率は各群2.1%と7.1%と、悪化の兆候は見られない。Jaypirca群の深刻有害事象発生率は28%だった。

この試験で17p欠損型のCLL/SLLは、対照群で採用されたレジメンの効果が弱いため、除外されていたため、欧米ともに、17p欠損型は適応外。

Jaypircaは貴重な非共有結合性を持つ、BTK阻害剤。一次治療における有用性は明らかだが、再発した後の治療手段が限られてしまうため、高齢者や心臓疾患を持つ患者以外は共有結合性BTK阻害剤を先に使ってJaypircaは取って置くべきという向きも多いようだ。

リンク: プレス・リリース


初のMCT8欠乏症薬が承認
(2026年9月28日発表)

FDAは、Emcitate(tiratricol)を成人小児のMCT8欠乏症の治療薬として承認した。この疾患は、モノカルボン酸トランスポーター8に遺伝子変異があり、最重要な甲状腺ホルモンであるT3が細胞内に輸送されず周囲に悪影響を与える。知能や運動機能に障害を齎す可能性がある。活性成分はT3の類縁体で、MCT8に依存せずに細胞膜を通過する。臨床試験では末梢血のT3濃度が偽薬比大きく減少した。心拍数や血圧の上昇も改善した。神経発達遅延を改善する効果は未確認のようだ。

経口懸濁液用の錠剤で、体重やT3水準、症状や兆候に応じて用量を決定し、一日2~3回に分けて服用する。有害事象は下痢、嘔吐、ラッシュ、異常発汗など。

半世紀前にフランスで発売された薬の転用。スウェーデンのPledPharma ABがRare Thyroid Therapeutics International ABを買収しEgetis Therapeutics AB(Nasdaq Stockholm:EGTX)を設立して開発を継承、欧州では25年2月に承認された。日本は23年に藤本製薬がライセンスしている。

リンク: プレス・リリース


新作用機序のパーキンソン病薬が承認
(2026年9月28日発表)

アッヴィは、FDAがJuvmo(tavapadon)をパーキンソン病薬として承認したと発表した。既存のドパミン作動剤が主としてD3/D4受容体をターゲットとしているのに対して、D1/D5を選択的にしかも部分作動する、初めての薬。診断から1年以内の患者を組入れた第3相二本でMDS-UPDRS症状評価尺度が偽薬比有意に改善した。レボドパの効果が低下してきた患者に追加投与した試験ではジスキネジアを伴わないオン・タイムが偽薬比有意に増加しオフ・タイムは減少した。警告注意事項は低血圧/起立性低血圧、賭博/食欲/買い物/性活動などに関する衝動、幻覚、ジスキネジア。

ファイザーのPF-06649751を導入・開発していたCerevel Therapeuticsを24年に株式価値ベース87億ドルで買収して入手したもの。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/10推アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬)
26/10推GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、dMMR/MSI-H結腸癌、CNPV案件)
26/10/9ロシュのTecentriq(atezolizumab、dMMR/MSI-HステージIII結腸癌の術後療法)
26/10/15ロシュのEnspryng(satralizumab-mwge、甲状腺眼症)
26/10/26GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎)
26/10/29Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎)
26/10/30Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫)
26/11推Merck KGaAのpimicotinib(腱滑膜巨細胞腫)
26/11推バイエルのBAY 2433334(asundexian、虚血性脳卒中再発予防)
26/11推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv、多発骨髄腫単剤4次治療)
26/11推Dizal PharmaceuticalのZegfrovy(sunvozertinib、EGFR ex20ins変異のあるNSNSCLC1L)
26/11推ロシュのGazyva(obinutuzumab、原発性膜性腎症)
26/11推ファイザーのTalzenna(talazoparib)とアステラス/ファイザーのXtandi(enzalutamide)の併用(去勢感受前立腺癌)
26/11推Regeneron PharmaceuticalsのALN-CC5(cemdisiran、全身性筋無力症)
26/11/1Agios Pharmaceuticalのmitapivat(鎌状赤血球症適応拡大)
26/11/14Summit tderapeuticsのSMT112(ivonescimab、3G EGFR阻害剤歴のあるEGFR変異陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
26/11/14CytokineticsのMyqorzo(aficamten、MAPLE-HCM試験データ)
26/11/17Mandos LLC(Beren tderapeuticsの子会社)のVTS-270(adrabetadex、ニーマン・ピック病I型)
26/11/22SavaraのMolbreevi(molgramostim、吸入用、自己免疫性肺胞蛋白症)
26/11/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/11/25サノフィのSAR402671(venglustat、III型ゴーシェ病)
26/11/27BridgeBio PharmaのBBP-418(ribitol、肢帯型筋ジストロフィー2I/R9型)
26/11/27Zydus Therapeuticsのsaroglitazar(原発性胆汁性胆管炎)
26/11/27Nuvalent(GSKグループ)のNVL-655(neladalkib、TKI歴のあるALK+NSCLC)
26/11/28PolypidのD-PLEX100(doxycycline長期局所放出製剤、
26/11/30ロシュのRG6171(giredestrant、早期乳癌術後療法)
26/11/30Vertex Pharmaceuticalsのpovetacicept(IgG腎症)
26/11/30Cogent BioscienceのCGT9486(bezuclastinib、GIST2L)
諮問委員会
26/10/30DODAC:SydnexisのRyjunea(atropine、小児進行性近視)

今週は以上です。

2026年9月26日

第1278回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • トレムフィア、体軸性乾癬性関節炎の体軸性症状を改善 
  • MSD、新種のDME用薬の第3相が成功 
  • ロシュ、新種のIgA腎症用薬を承認申請へ 
  • FUS-ALSの第3相が成功 
  • CD40L標的蛋白のシェーグレン試験が成功 
  • 血管浮腫にも有効な蕁麻疹治療薬 
  • XLRPの遺伝子療法を承認申請へ 
  • Gossamer Bio、承認申請を断行 
  • インスメッド、アリケイスをMAC肺疾患の一次治療に適応拡大申請 
  • エピネフィリン系舌下薬を承認申請 
  • 焦点起始発作用薬を承認申請 
  • FDA諮問委員会、GRAIL社の多種腫瘍早期検査をポジティブに評価 
  • Mirum社のFOP用薬も承認 
  • ガザイバがネフローゼ症候群に適応拡大 
  • 腎癌の新規併用法が承認 
  • オンスイクが米国でも承認 
  • 胆道癌の新薬が承認 
  • エアウィンの早期治療データがレーベル収載 
  • EUで脳副腎白質ジストロフィー用薬が承認
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


トレムフィア、体軸性乾癬性関節炎の体軸性症状を改善
(2026年9月25日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは抗IL-23p19サブユニット抗体Tremfya(guselkumab)が第4相STAR試験で主目的や主要副目的を達成したと発表した。データは学会で発表する考え。

乾癬性関節炎(PsA)の早期患者の5-28%、長期罹患者の25-70%では脊椎や仙腸関節にも炎症が広がっている。今回の試験は、この体軸性症状を伴う活性期PsA患者で、バイオ薬以外の治療に十分応答しない成人患者411人をTremfya群と偽薬群に無作為化割付けして24週のBASDAI(Bath Ankylosing Spondylitis Disease Activity Index)を比較した。これは脊椎痛や関節症状など5症状に関する患者評価指数。レンジは0~10で大きいほど重い。元々は体軸性脊椎関節炎の評価指数だ。主要副目的はASDAS-CRP(Ankylosing Spondylitis Disease Activity Score with C-Reactive Protein:背痛や末梢痛などの患者評価とCRPの変化を示す複合指数)と仙腸関節の炎症に関するMRI評価。

Tremfyaは活性期中重度乾癬性関節炎に承認されているため、適応拡大という訳ではないが、重要なエビデンス。

リンク: プレス・リリース



MSD、新種のDME用薬の第3相が成功
(2026年9月24日発表)

MSDはMK-3000が後期第2相/3相糖尿病性網膜浮腫(DME)試験で主目的を達成したと発表した。もう一本で再現されれば、27年にも承認申請の可能性がありそうだ。

24年に子会社化したEyeBiotech(EyeBio)が開発している4価3重特異性抗体。Wntシグナル伝達経路を活性化する天然のライガンド、norrinの網膜血管保護作用を模した。今回のBRUNELLO試験は欧米等の施設で成人のDME患者984人を0.5mg群、0.8mg群、そして抗VEGF抗体フラグメントranibizumab(ジェネンテック/ノバルティスのLucentis)群に無作為化割付けして4週毎に硝子体内注射し、52週時点のBCVA(最良矯正視力)を比較した。両用量とも非劣性解析が成功した。気がかりなのは、増殖性糖尿病性網膜症や硝子体出血がranibizumab群より多かったこと。データは今後発表される。

もう一本の第2/3相BAROLO試験は米州と日本の施設で1054人を組入れて進行中。ClinicalTrials.govには27年3月に主目的完了予定と記されている。

リンク: プレス・リリース


ロシュ、新種のIgA腎症用薬を承認申請へ
(2026年9月23日発表)

ロシュはRO7434656(sefaxersen)が第3相原発性IgA腎症試験で主評価項目を達成したと発表した。承認審査機関と協議する考え。

IgA腎症の治療薬は既に様々な新薬が承認されているが、ロシュがIonis PharmaceuticalsのIONIS-FB-LRxをライセンスして開発しているsefaxersenは肝臓における補体因子Bの生産を阻害するアンチセンス・オリゴヌクレオチドという新しい標的とモダリティを持っている。今回の日本も参加した第3相IMAgINATION試験は高リスク原発性IgA腎症の成人459人を組入れて、月一回皮下注(但し最初の3回は2週毎)する便益を偽薬と比較した。主評価項目の37週における24時間UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が偽薬比で統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を示した。

IgA腎症用薬の米国における開発方針は、UPCRデータに基づき加速承認を得て、2年間のeGFR(推算腎濾過量)データを取得した段階で本承認切替申請するパターン。ロシュもeGFRを105週間追跡すべく盲検を続ける。

リンク: プレス・リリース


FUS-ALSの第3相が成功
(2026年9月22日発表)

大塚製薬とIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は、ION363(ulefnersen)が第3相FUS変異関連ALS(筋萎縮性側索硬化症)試験で主目的を達成したと発表した。承認申請に向かうのではないか。

FUS(Fused in sarcoma)変異があると有害なFUS蛋白が運動ニューロンで蓄積し損傷を与える。該当するのはALSの0.6%程度、G7における患者数は350人程度と推測されている。小児や若年期発症患者に比較的多い模様だ。ION363はFUSに結合し発現を妨げるアンチセンス・オリゴヌクレオタイド。24年に大塚が世界独占製造販売権を取得した。

第1-3相FUSION試験で10歳以上の患者を対象に標準療法に追加する安全性や便益を検討しており、第3相ポーションでは試験薬を当初2回は4週毎、その後は12週毎に腰椎髄腔内投与した。主評価項目はランク付け複合評価項目で、505日のALSFRS-R(改訂ALS機能評価尺度)、レスキュー治療や状態悪化による離脱までの期間、死亡または永続的換気に至るまでの期間を観察した。結果は偽薬比p=0.0005と有意な差があった。

複合評価項目はどの項目がどの程度良かったか知る必要があるが、詳細は不明。副次的評価項目の死亡までの期間、永続的換気までの期間などの解析も成功した模様なので、悪くはなさそうだ。有害事象の大部分は軽中度だった。

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CD40L標的蛋白のシェーグレン試験が成功
(2026年9月22日発表)

アムジェンはdazodalibepが第3相シェーグレン症候群試験で主目的を達成したと発表した。もう一本は今年10-12月期に結果が判明する見込み。

CD40レガンドに結合する融合蛋白。23年に280億ドルで買収したHorizon Yjerapeuticsが、アストラゼネカの子会社であるMedImmuneから18年にスピンアウトしたViela Bioを21年に買収して入手したもの。22年に臓器障害などを伴う患者の第2相が成功、23年には自覚症状主導型の患者の試験でも良績を上げ、24年に日本も参加して第3相入りした。

今回成功したのはOASIZ 301試験。ESSDAIが5点以上と中重度全身性症状を伴う、抗Ro自己抗体陽性またはRF陽性の患者621人を組入れて、2種類の用量の点滴静注の効果を確かめた。主評価項目は48週ESSDAI。ESSDAIはEULAR Sjogren's Syndrome Disease Activity Indexの略で、リンパ節や関節、臓器など、12項目に関して医師が評価するもの。類似した内容の第2相では24週ESSDAIがベースラインの10.7点から6.3点低下、偽薬群は4.1点低下に留まった。尚、ESSPRI(EULAR Sjögren's Syndrome Patient Reported Index:乾燥、疲労、疼痛に関する患者の自己評価)は大差なかった。

もう一本の第3相、303試験は、ESSDAIは5点未満と医師評価はそれほどでもないがESSPRIが5点以上の、抗Ro自己抗体陽性またはRF陽性患者を組入れて、ESSPRI改善作用などを検討している。第2相では24週で1.8点低下、偽薬群は0.5点の低下だった。

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血管浮腫にも有効な蕁麻疹治療薬
(2026年9月22日発表)

Celldex Therapeutics(Nasdaq:CLDX) はDX-0159(barzolvolimab)が第3相慢性特発性蕁麻疹(CSU)試験二本で主評価項目と主要副次的評価項目を達成したと発表した。オープン・レーベル期を含め52週間追跡した上で、27年に承認申請する考え。

KITに結合するヒト化抗体。第3相のEMBARQ-CSU1と同2は、は抗ヒスタミンに不十分応答または不耐の成人各970人前後を組入れて、150mg4週毎(初回は300mg)投与群と300mg8週毎(初回は450mg)群の効果を偽薬と比較した。主評価項目は12週UAS7(掻痒活動性スコア、7日間合計、ベースライン値は2本とも30点前後)。CSU1では各群20.2点、20.5点、10.7点低下、CSU2では20.2点、19.7点、11.4点低下となり、何れも偽薬比有意だった。被験者の1割強を占めた、既存薬である抗IgE抗体omalizumabに難治の患者にも有効。被験者の約7割は血管浮腫を併発していたが、6割強が寛解した(偽薬群は3割強)。患者背景等が異なるのかもしれないが、最近の承認薬であるRegeneron Pharmaceuticals/サノフィの抗IL-4Rアルファサブユニット抗体、Dupixent(dupilumab)の試験では血管浮腫緩和作用が見られなかったので、承認後のセールス・ポイントになりそうだ。

有害事象はKIT阻害によるものらしいが被験者の5割前後で毛髪色調変化、1割前後で皮膚色素沈着低下、皮膚色素沈着過剰、好中球減少症、味覚異常、味覚低下が発生した。深刻有害事象は二本合計で各群1人、3人、4人と若干増加した。

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XLRPの遺伝子療法を承認申請へ
(2026年9月21日発表)

英国のBeacon Therapeuticsは、AGTC-501(laruparetigene zovaparvovec)が第2/3相XLRP(X連鎖網膜色素変性症)試験で主目的等を達成したと発表した。この希少疾患のpivotal試験が成功したのは初めて。10月10日にAAO(眼科学学会)で詳細発表する予定。26年末までに米国でローリング承認申請に着手する考えで、欧州に関しては導出の可能性もあるようだ。

XLRPは主にRPGR(retinitis pigmentosa GTPase regulator)の遺伝子の先天的変異により視力や視野が低下していく。罹患率は欧米豪州で25,000男子に一人。AGTC-501は欠乏する遺伝子をアデノ随伴ウイルスのカプシドをベクターとして供給する。生体内で不安定性な塩基配列を、同じコドンをコードする安定性の高い配列に置換する処理も行われている。

今回のVista試験は米豪加英の施設で12~48歳の男性85人を対照群、3.7E+11vg群、6.8E+11vg群に無作為化割付けして第12月のLLVA(薄明下視力)がETDRS視力チャートで15字以上改善した患者の比率を評価者盲検で比較した。対照群はゼロ、低量群は24.1%(対照群比p=0.01)、高量群は31.0%(同0.0019)と、両群とも有意な差があった。試験薬関連治療時発現有害事象が低量群で38%、高量群は25%で発生した。

バイオジェンやMeiraGTx/JNJのRPGR遺伝子療法試験はフェールしたが、主評価項目は前者が網膜感受性、後者は低輝度迷路試験と異なっているので、3試験の副次的評価項目のデータが出揃うまで、何が違うのか分からない。勿論、どんな勝ちでも勝ちは勝ちだ。

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【承認申請】


Gossamer Bio、承認申請を断行
(2026年9月23日発表)

米国カリフォルニア州のGossamer Bio(Nasdaq:GOSS)はGB002(seralutinib)を肺動脈高血圧症用薬として承認申請したと発表した。第3相PROSERA試験は統計学的に有意とは言えない結果になっており、ダメ元申請と目されている。

PDGFR、CSF1R、c-KITなどを阻害する小分子薬。上記試験はWHO機能クラスがII/IIIの肺動脈高血圧症約400人を組入れて、既存治療に追加する便益を検討した。主評価項目の24週6分歩行テストが28.2メートル改善と偽薬群の13.5メートルを上回り、Hodges–Lehmann法に基づく治療効果は13.3メートル、p=0.0320となったが、アルファの0.025を下回れなかった。治療時発現深刻有害事象の発生率は各群16.0%と18.9%だったが、肝機能検査値異常上昇(3xULN超)の発生率は13%対1%で上回った。この試験結果を受け、Chiesiは開発販売提携を解消した。

同社の時価総額は数千万ドルで推移している。

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インスメッド、アリケイスをMAC肺疾患の一次治療に適応拡大申請
(2026年9月21日発表)

インスメッドはArikayce(amikacin)をMAC(マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス)による肺疾患の治療薬としてFDAに適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は27年1月28日。日本でも26年内に承認申請する考え。

18年に米国で、20年にはEUで、21年には日本でも、承認されたアミカシンのネブライザ吸入用製品。米国における適応は、MACによる非結核性抗酸菌肺感染症で、抗生剤併用による前治療後も喀痰検査が陰転せず、他の治療選択肢が限られている場合。エビデンスは喀痰検査陰転率というサロゲート・マーカーだったため加速承認となった。

今回のエビデンスとなる後期第3相ENCORE試験はMAC肺疾患の患者425人(うち8割は初治療)をazithromycin及びethambutolのレジメンをベースにamikacin(590mg)を追加する群の呼吸器症状改善作用を偽薬追加群と比較した。主評価項目はQuality of Life-Bronchiectasis Respiratory Domain(8項目ある)。1年後に各群17.77点と14.66点改善し、群間差はp=0.0299だった。深刻治療時発現有害事象発生率は各群14.1%と11.3%、致死的なものの発生率は両群0.5%だった。特別関心治療時発現有害事象の一つである気管支痙攣の発生率は各群23.0%と11.8%、過敏性肺臓炎は2.3%と0%だった。

会社側は承認なら対象患者数が3万人から20万人に増加と見込んでいる。加速承認に伴う市販後コミットメントも充足することになる。

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エピネフィリン系舌下薬を承認申請
(2026年9月17日発表)

Aquestive Therapeutics(Nasdaq:AQST)は米国でAnaphylm(dibutepinephrine)を再承認申請したと発表した。活性成分はエピネフィリン(アドレナリン)のプロドラッグで、一型アレルギー反応を発症した時に舌下投与する。切手サイズなので携帯に便利。同社は25年に承認申請したが、パウチを開けるのに時間がかかるなどのヒューマン・ファクターにより審査完了通知を受領。所要時間をメジアン17秒から3秒に減らす改良を行い、再申請に漕ぎ着けた。

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焦点起始発作用薬を承認申請
(2026年9月17日発表)

Xenon Pharmaceuticals(Nasdaq:XENE)は米国でKv7カリウム・チャネル・オープナーのXEN1101(azetukalner)を焦点起始発作用薬として承認申請したと発表した。アジャンクト(治療を受けている患者に追加投与)試験で一日一回経口投与したところ、後期第2相では10mg、15mg、25mg群の28日間焦点起始発作頻度(ベースライン値はメジアン13.5回)が33%、46%、53%減少し、偽薬群の18%減を有意に上回った。第3相X-TOLE2試験では15mg群と25mg群のみテストしたところ34%と53%減少し、偽薬群の10%減を有意に上回った。深刻な治療時発現有害事象が各群3.2%と5.6%で発生した(偽薬群は2.4%)。第3相はX-TOLE3試験ももうすぐ開票するのではないか。

同社は大鬱病や原発性全般性強直間代発作(PGTCS)でも第3相試験中。前者は錯乱や失語などの精神症状が見られたため、今月、自発的に新患組入れを停止したが、一本は検出力が足りる水準まで進捗しているため、27年第1四半期にトップラインを発表する計画。

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、GRAIL社の多種腫瘍早期検査をポジティブに評価
(2026年9月23日発表)

FDAはMCGPMDAC(診断機器などに関する諮問委員会)を招集し、GRAIL(Nasdaq:GRAL)が1月にPMA(市販前承認)申請したGalleri MCED(多種腫瘍早期検出)スクリーニング・システムについて意見を聞いた。諮問委員10人の評価は、安全性は全員支持、便益は6対4で支持が僅かに上回っただけだったが、便益が危険を上回る(承認に値する)と判定した委員が7人、反対2人、1名棄権と、多数が支持した。一方で、早く探知すれば寿命が延びるのか、そもそも、早期という文言が適切なのか、という根源的な疑問も上がったようだ。

50歳以上を対象に、次世代シーケンサーで血中の循環無細胞DNAのメチル化シグナチュアを調べることにより、症状が出る前に癌を検知するもの。アルゴリズムは機械学習に基づく。原発部位の推定も行う。マンモグラフィなど既存のスクリーニング検査と共に実施する。エビデンスは英国でNHS(国民保健サービス)と共同で実施したNHS-Galleri試験と、北米のPATHFINDER2試験。前者は5万人、後者は2.5万人に検査を行い、1年内に通常の診断手法で癌と診断される患者を予測できるか、検討した。

図表:Galleriの試験成績
NHS-Galleri試験:癌診断例非診断例
陽性例259132PPV:66.2%
陰性例56149786NPV:98.9%
感度:
31.6%
特異度:
99.7%
偽陽性率:0.26%、Number needed to screen:196
PATHFINDER 2試験:
陽性例10632PPV:77.0%
陰性例19721084NPV:99.1%
感度:
35.0%
特異度:
99.85%
偽陽性率:0.15%、Number needed to screen:202
出所:FDAの諮問委員会ブリーフィング資料より作成

発症部位別の感度(1年内に癌と診断された患者のうち、Galleri検査で陽性だった患者の比率)は、発症例が多く他のスクリーニング手法が確立している癌では前立腺が両試験とも1割前後、乳癌は2割前後に留まっているが、肺癌は英国試験は63%、北米試験も47%と比較的高い。サンプル数が少なく信頼性の面では今一つだがスクリーニング手法が確立していない癌では肝臓癌(肝内胆管癌を含む)や卵巣・卵管癌は両試験とも6~8割とかなり高くなっている。

リンク: Grailのプレス・リリース

【承認】


Mirum社のFOP用薬も承認
(2026年9月25日発表)

FDAはMirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)のAtebrioz(zilurgisertib)を12歳以上の進行性骨化性線維異形成症(FOP)の治療薬として承認した。米国の推定患者数300人、世界でも900人とされる超希少疾患で、新薬承認は3剤目。EUでも申請中。

FOPは全身の筋肉やその周辺が徐々に骨に変わり、手足の可動域が狭まったり背中が変形したりする。骨形成因子であるBMPの受容体、ACVR1の変異型がActivin Aより活性化されることが主因と推測されている。AtebriozはIncyte(Nasdaq:INCY)から世界開発商業化権を取得したALK2受容体阻害剤。第2相PROGRESS試験のコフォート1で12歳以上の患者63人に100mgまたは偽薬を一日一回、24週間、経口投与したところ、各群一人と5人で新規異所性骨化(HO)が認められ、81%の抑制効果が示唆されたが、症例数が少ないせいかp=0.0986だった。承認の根拠は副次的評価項目である、患者一人当たり新規HO総量。FDAのリリースによると、偽薬群は平均24.6cm3増加したが試験薬群は3.2cm3減少した。

上記試験はコフォート2で6~11歳、3では2~11歳の患者を組入れて低年齢における便益や安全性を検討している。

米国のFOP治療薬は、23年にイプセンの経口レチノイン酸受容体ガンマ・アゴニスト、Sohonos(palovarotene)が、今年8月にはRegeneron Pharmaceuticalsの静注用抗Activin A抗体Pasatru(garetosmab-grts)が何れも新規HO量、承認されており、市場規模を考えると過密状態になりつつある。

リンク: プレス・リリース


ガザイバがネフローゼ症候群に適応拡大
(2026年9月25日発表)

FDAはジェネンテック(ロシュ子会社)のGazyva(obinutuzumab)を小児期発症特発型ネフローゼ症候群に適応拡大を認めた。2~25歳の小児と成人の、頻回再発型あるいはステロイド依存性患者が、寛解時に用いて再発を抑制する。第3相INShore試験で52週間持続的完全寛解率(投与開始8週後以降に再発がなく、UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が0.2g/g以下を維持)が95%と、mycophenolate mofetil群の73%を有意に上回った。日欧でも承認申請中。

様々な自己免疫疾患に承認されている糖鎖改変型抗CD20抗体。抗CD20抗体の先達であるrituximabも日本で医師主導試験に基づき2014年に小児期発症の頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す難治性ネフローゼ症候群に承認されている。

リンク: プレス・リリース


腎癌の新規併用法が承認
(2026年9月24日発表)

FDAは、MSDのHIF-2アルファ阻害剤Welireg(belzutifan)とエーザイのVEGFR阻害剤Lenvima(lenvatinib)を併用で進行腎細胞腫の治療に充てる適応拡大を承認した。抗PD-(L)1阻害剤による治療歴を持つ成人が適応になる。日本も参加した第3相LITESPARK-011試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン14.8ヶ月とVEGFR阻害剤cabozantinibだけを投与した群の10.7ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.70だった。共同主評価項目である全生存期間の解析はトレンドに留まった。FDAのプレス・リリースによるとメジアン生存期間は33.7ヶ月対28.6ヶ月、ハザード・レシオは0.85(95%信頼区間0.70-1.03)と、今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表された第2次中間解析の0.85(同0.68-1.05)からそれほど変わっていない。

両社はLenvimaなどの共同開発で提携している。今回の適応拡大は英国や日本でも承認審査中。

リンク: プレス・リリース


オンスイクが米国でも承認
(2026年9月24日発表)

FDAはイーライリリーのOnswik(insulin efsitora alfa-gobe) を二型糖尿病薬として承認した。日本でも今月、承認され、EUでは6月にCHMPが肯定的意見を出した。

米国では3月に承認されたノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec-abae)と同様に、二型糖尿病患者に週一回投与する。インスリン治療中の患者や未経験者を組入れた、一日一回投与型インスリン製剤対照試験で血糖管理効果が非劣性だった。一型糖尿病に用いると重度低血糖のリスクが高まるため適応外。

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胆道癌の新薬が承認
(2026年9月23日発表)

FDAは米国のElevar TherapeuticsのLyrfigtu(lirafugratinib)を承認した。成人の、FGFR2遺伝子に融合又は再編成を持つ治療歴のある切除不能、局所進行、または転移性の胆管癌に、70mgを一日一回、経口投与する。第1/2相ReFocus試験でcORR(確認客観的反応率、独立評価委員会方式、n=114)が46.5%、メジアン反応持続期間は11.8ヶ月だった。G3以上の治療関連有害事象は手足症候群や口内炎など。警告注意事項は網膜色素上皮剥離やドライアイなど、高リン血症と軟部組織石灰化、胚胎毒性。

24年に米国のRelay Therapeutics(Nasdaq:RLAY)から世界開発商業化権を取得した選択的FGFR2阻害剤。Elevarの親会社のHLBによると、韓国企業が米国で新薬の承認を取得したのは初。

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エアウィンの早期治療データがレーベル収載
(2026年9月22日発表)

MSDはFDAがWinrevair(sotatercept-csrk、和名エアウィン)の添付文書改訂を承認したと発表した。第3相HYPERION試験の成績が収載され、適応範囲が広がるわけではないが、早期患者における有効性を示すエビデンスが強化された。

activinのIIa型受容体を標的とする融合蛋白。運動機能などの悪化や死亡リスクを抑制する。24~25年に肺動脈性高血圧症(PAH)用薬として米欧日で承認された。エビデンスとなった第3相STELLAR試験は診断から平均8.8年経った、平均3剤服用している患者に追加投与したが、今回のHYPERION試験は診断から1年以内、7割が2剤併用と、早期の患者における臨床的悪化抑制作用を検討している。ハザード・レシオは0.24、臨床的悪化発生率は10.6%と偽薬群の36.9%を大きく下回った。複合評価項目のうち、PAH関連の24時間以上の入院や、PAHの悪化(6分歩行テストに加えて観察項目の一つが悪化)が少なかった。有害事象は鼻血や毛細血管拡張症など。

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EUで脳副腎白質ジストロフィー用薬が承認
(2026年9月25日発表)

スペインのMinoryx TherapeuticsとドイツのNeuraxpharm Groupは、欧州委員会がNezglyal(leriglitazone)を脳副腎白質ジストロフィーの(cALD)の治療薬として承認したと発表した。2~12歳の、脳MRI検査でガドリウム(Gd)強調病変が陰性、かつ神経学的機能尺度(NFS)が0または1の場合に、適応となる。20人規模のNEXUS試験で2年間の臨床的・放射線学的進行抑制奏効率が35%と、自然歴の10%を上回った。例外的環境下承認。

脳浸透性PPARガンマ・アゴニスト。二型糖尿病用薬pioglitazoneの活性代謝物のようだ。Minoryxが開発、Neuraxpharmが欧州で販売する。

Gd強調病変が見られるcALDで、造血幹細胞移植やelivaldogene autotemcel遺伝子療法が不適/拒否の約40人を組入れた第3相CALYXも進行中。主評価項目は死亡、または、寝たきり/永続的呼吸補助までの期間。米国はこの試験の結果が出てから承認申請する考えかもしれない。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
26/10推アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬)
26/10推GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、dMMR/MSI-H結腸癌、CNPV案件)
26/10/9ロシュのTecentriq(atezolizumab、dMMR/MSI-HステージIII結腸癌の術後療法)
26/10/10第一三共のDS-7300(ifinatamab deruxtecan、進展型小細胞性肺癌)
26/10/15ロシュのEnspryng(satralizumab-mwge、甲状腺眼症)
26/10/26GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎)
26/10/29Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎)
26/10/30Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫)
26/11推Merck KGaAのpimicotinib(腱滑膜巨細胞腫)
26/11推バイエルのBAY 2433334(asundexian、虚血性脳卒中再発予防)
26/11推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv、多発骨髄腫単剤4次治療)
26/11推Dizal PharmaceuticalのZegfrovy(sunvozertinib、EGFR ex20ins変異のあるNSNSCLC1L)
26/11推ロシュのGazyva(obinutuzumab、原発性膜性腎症)
26/11推ファイザーのTalzenna(talazoparib)とアステラス/ファイザーのXtandi(enzalutamide)の併用(去勢感受前立腺癌)
26/11推Regeneron PharmaceuticalsのALN-CC5(cemdisiran、全身性筋無力症)
26/11/1Agios Pharmaceuticalのmitapivat(鎌状赤血球症適応拡大)
26/11/14Summit tderapeuticsのSMT112(ivonescimab、3G EGFR阻害剤歴のあるEGFR変異陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
26/11/14CytokineticsのMyqorzo(aficamten、MAPLE-HCM試験データ)
26/11/17Mandos LLC(Beren tderapeuticsの子会社)のVTS-270(adrabetadex、ニーマン・ピック病I型)
26/11/22SavaraのMolbreevi(molgramostim、吸入用、自己免疫性肺胞蛋白症)
26/11/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/11/25サノフィのSAR402671(venglustat、III型ゴーシェ病)
26/11/27BridgeBio PharmaのBBP-418(ribitol、肢帯型筋ジストロフィー2I/R9型)
26/11/27Zydus Therapeuticsのsaroglitazar(原発性胆汁性胆管炎)
26/11/27Nuvalent(GSKグループ)のNVL-655(neladalkib、TKI歴のあるALK+NSCLC)
26/11/28PolypidのD-PLEX100(doxycycline長期局所放出製剤、
26/11/30ロシュのRG6171(giredestrant、早期乳癌術後療法)
26/11/30Vertex Pharmaceuticalsのpovetacicept(IgG腎症)
26/11/30Cogent BioscienceのCGT9486(bezuclastinib、GIST2L)
諮問委員会
26/10/30DODAC:SydnexisのRyjunea(atropine、小児進行性近視)

今週は以上です。

2026年9月20日

第1277回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ロシュ、ルンスミオの濾胞性リンパ腫二次治療試験が成功 
  • IgA腎症用薬の本承認切替申請へ 
  • サイケデリックの第3相がまたまた成功 
  • エンハーツの肺癌一次治療試験が成功したが 
  • 承認申請中のEGFR阻害剤の一次治療試験が成功 
  • GSK、ROS1阻害剤の一次治療試験が成功 
  • BIの新規アルドステロン合成酵素阻害剤、最初の第3相が無益中止に 
  • アストラゼネカ、低ホスファターゼ症の皮下注用薬を米でも承認申請 
  • 武田、TYK2阻害剤を承認申請 
  • 9月のCHMP結果 
  • イーライリリーのイムルリオ、ベージニオ併用も承認 
  • 毛細血管拡張性運動失調症の初の運動症状用薬が承認 
  • サンフィリッポ症候群A型の遺伝子療法が承認 
  • バイエル、ケレンディアが一型糖尿病腎症に適応拡大 
  • 神経膠腫の新規PET診断薬が承認 
  • 新種の脊髄筋萎縮症用薬を承認 
  • 小細胞性肺癌用薬イムデトラの投与後観察時間が大幅減少 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 

【新薬開発】


ロシュ、ルンスミオの濾胞性リンパ腫二次治療試験が成功
(2026年9月17日発表)

ロシュはLunsumio(mosunetuzumab-axgb)が第3相CELESTIMO試験で主目的を達成したと発表した。承認申請に向かうのではないか。22~24年に欧米日で再発/難治濾胞性リンパ腫(r/rFL)の3次治療薬として承認されたが、欧米は条件付き/加速承認なので、本承認切替も見込まれる。

この日本も参加した試験はr/rFLの2次治療を受ける患者を組入れて、抗CD20xCD3二重特異性抗体Revlimid(lenalidomide)と併用する便益をlenalidomideと抗CD20抗体rituximabを併用するレジメンと比較した。両群とも忍容なら12サイクル施行。主評価項目のPFSを中間解析で達成、統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。数値は未公表。全生存期間のデータは未成熟。

r/rFLの2次治療薬としては、lenalidomideとrituximabの2剤にアッヴィの抗CD20xCD3二重特異性抗体Epkinly(epcoritamab-bysp)あるいはIncyte社の抗CD19抗体Monjuvi(tafasitamab-cxix)を加える3剤併用療法が24~25年に米欧日で承認されている。今回は2剤併用なので、PFSや忍容性がどの程度違うか、注目される。

リンク: プレス・リリース


IgA腎症用薬の本承認切替申請へ
(2026年9月15日発表)

Vera Therapeutics(Nasdaq:VERA)はTrutakna(atacicept-vymj)の第3相ORIGIN 3試験で事前に設定した全評価項目を達成したと発表した。今年7月にIgA腎症用薬としてFDAに加速承認されたばかりだが、10~12月四半期に本承認切替申請を行う考え。

BAFF(B cell activating factor)とAPRIL(A Proliferation Inducing Ligand)に結合するTACI(transmembrane activator and calcium modulator cyclophilin ligand interactor)と免疫グロブリンG1のFcドメインを細胞融合したもの。他の多くのIgA腎症薬と同様に、第3相試験の36週UPCR(尿蛋白クレアチニン比、24時間平均)低下作用に基づき加速承認され、今回、同試験の104週eGFR(推算糸球体濾過量)で腎機能悪化を抑制する作用が確認された。偽薬群が年率で5.6mL/min/1.73m低下したのに対して試験薬群は0.6mL/min/1.73m低下に留まり、治療効果は5.0mL/min/1.73m、統計的に有意だった。

腎疾患の進行に係る複合評価項目のハザード・レシオは0.24(95%信頼区間0.12-0.48)だった。プレス・リリースには集計対象イベントの内容は記されておらず、ClinicalTrials.govにはこの評価項目は記されていない。

尚、他製品の同様な試験はeGFRを共同主評価項目としているが、本試験は36週UPCRだけを主評価項目としている点が特徴的。報道によるとFDAの了解を得ているようだ。

リンク: プレス・リリース


サイケデリックの第3相がまたまた成功
(2026年9月14日発表)

米国ニューヨーク州のDefinium Therapeutics(Nasdaq:DFTX)は、DT120(lysergide d-tartrate)が第3相Panorama試験で全般不安症の症状を改善したと発表した。後期第2相と合わせて3連勝。大鬱病の第3相も一本成功しており、同社はどちらの適応症を先に申請するかなどをFDAと相談する考え。

1938年にロシュではなくサンドのAlbert Hofmannが合成したLSで、セロトニン2A受容体を部分作動する。Catalent社のZydis溶解技術を採用して知財を増強した。今回の試験は欧米の施設で適切な治療を初めて受ける成人患者245人を偽薬群、100mcg一回投与群、50mcg一回投与参考群に無作為化割付けして12週間投与し、HAM-A(ハミルトン不安評価尺度)総スコアの変化を群間比較した。100mcg群は偽薬調整後で5.1点改善し、統計的に有意な成果を上げた。50mcg群も3.8点改善した(有意性は検討対象外)。尚、偽薬群は4.7点改善した。

第3相VOYAGE試験では100mcg群の治療効果(偽薬調整後)が5.4点で有意だった。後期第2相では100mcgの第4週HAM-Aが偽薬調整後6.0点、50mcg群は5.0点だった。

サイケデリックは多くの患者で錯覚、幻覚、陶酔感などが表れるため被験者がどちらを服用したか気付き盲検が無効になってしまうリスクがある。このため、Panorama試験で50mcg群を設定して、精神症状は発生するが治療効果は小さい、事実上の偽薬群としての参考値を取得した。ただ、後期第2相と同様に、50mcg群の治療効果が100mcg群より大きく見劣りする訳でもない。用量反応相関が検討されていないのではっきりとしたことは言えないが、それでも、多くの人は、50mcgでもそこそこの効果があると受け止めるのではないか。忍容性が大差ないなら100mcgで良いのかもしれないが。

尚、同社の第3相は精神療法は施行せず、薬物療法だけの便益を検討した。副作用に対応するため、投与終了後5時間以上、被験者を留め、1時間おきにチェックリストで精神症状解消を確認し医師が承認したら帰宅可、という他の企業の承認申請用第3相試験と同様なプロトコルが導入されている。

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エンハーツの肺癌一次治療試験が成功したが
(2026年9月14日発表)

第一三共の抗her2抗体薬物複合体Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を共同開発販売しているアストラゼネカは、第3相DESTINY-Lung04試験の成績をWCLC(World Congress of Lung Cancer)で発表した。PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が標準療法を有意に上回ったが全生存期間の中間解析は、未成熟なためか、パッとしない結果になった。

この日本も参加したグローバル試験は、her2にエクソン19/20変異のある切除不能、局所進行、または転移性の扁平上皮非小細胞性肺癌の患者454人をEnhertu群(承認されている2次治療と同じ5.4mg/kg3週毎投与)または標準療法群(白金薬、pemetrexed、pembrolizumabの併用)に無作為化割付けして転帰を比較した。主評価項目のPFSはメジアン値が各群14.3ヶ月と8.3ヶ月、ハザード・レシオは0.63となり、統計的にも臨床的にも有意な差があった。一方、副次的評価項目の全生存期間(47%成熟時点)はメジアン29.3ヶ月対33.1ヶ月、ハザード・レシオは1.15(95%信頼区間0.88-1.52)となり、死亡リスクが5割高い可能性が現時点では否定されていない。

アストラゼネカによると、2次以降の治療内容がかなり異なることが影響した可能性がある。her2標的薬の使用率は23.3%で標準療法群の48.0%よりだいぶ低かった。また、Enhertu群は2次以降に化学免疫療法にクロスオーバーした患者は23.8%のみだった。

今回の全生存解析は正式なものではないようだ。正式な、第2回と最終解析の結果が注目される。

忍容性ではG3以上の治療関連有害事象発生率は各群34.1%対33.6%と大差なかった。ADCに付き物のILD/肺臓炎(独立査読委員会判定)の発生率は20.8%、これによる死亡率は1.8%だった。

リンク: プレス・リリース


承認申請中のEGFR阻害剤の一次治療試験が成功
(2026年9月13日発表)

米国のCullinan Oncology(Nasdaq:CGEM)と大鵬薬品は、両社で共同開発し米国で承認申請中のEGFR阻害剤、CLN-081/TAS6417(zipalertinib)が第3相一次治療試験の中間解析で主目的を達成したと8月に発表したが、WCLCでデータを公表した。FDAと相談の上で承認申請する考え。

EGFR阻害剤耐性変異であるエクソン20挿入(ex20ins)変異を標的とする不可逆的阻害剤。野生EGFRは阻害しない。今年4月に白金薬ベース化学療法(amivantamab併用可)を施行中又は施行後に進行したEGFR ex20ins変異局所進行/転移非小細胞性肺癌の薬としてFDAが承認申請を受理、審査期限は27年2月27日となっている。エビデンスとなる第1/2相REZILIENT1試験の後期第2相ポーションで、治療歴のあるEGFR ex20ins変異非小細胞性肺癌におけるORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が35%、反応持続期間はメジアン8.8ヶ月だった。白金薬歴のみの患者では各40%と8.8ヶ月だった。

今回のREZILIENT3試験はEGFR ex20ins変異局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療を受ける成人279人を組入れて化学療法に追加する便益を検討した。用量用法は再発治療と同じ、100mg一日2回経口投与。主評価項目のPFSはハザード・レシオ0.50、メジアン値は14.5ヶ月と化学療法だけの群の8.5ヶ月を上回った。脳転移サブグループの解析も良好。全生存期間は30%しか成熟していないが、ハザード・レシオ0.72(95%信頼区間0.42-1.23)と望ましい方向を指している。G3以上の有害事象発生率は87.1%対54.4%と上昇した。

リンク: プレス・リリース


GSK、ROS1阻害剤の一次治療試験が成功
(2026年9月13日発表)

GSKはJideytro(zidesamtinib)がチロシン・キナーゼ阻害剤未治療のROS1(receptor tyrosine kinase c-ros oncogene 1)変異陽性非小細胞性肺癌に高いORR(客観的反応率)と反応持続期間を示したとWCLCで発表した。25年11月に米国でROS1チロシン・キナーゼ阻害剤歴を持つROS1陽性進行非小細胞性肺癌向けに承認されているが、年内に一次治療に適応拡大申請する考え。

7月にNuvalent社を買収して入手したばかりのROS1阻害剤。ROS1阻害剤誘導性変異であるG2032R変異などにも活性を持ち、中枢神経浸透性。今回データは、承認のエビデンスとなったfirst in human試験である第1/2相試験のチロシン・キナーゼ未経験コフォートのもの。94人中ORRが94%(完全反応15%)、その86%でメジアン反応持続期間が12ヶ月以上だった。症例は少ないが脳転移にも効果が見られた。

リンク: プレス・リリース


BIの新規アルドステロン合成酵素阻害剤、最初の第3相が無益中止に
(2026年9月15日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはBI 690517(vicadrostat)の慢性腎不全における第3相EASi-KIDNEY試験を中止すると発表した。独立データ監視委員会が無益中止を推奨したため。他の疾患における3本の第3相試験はデータ監視委員会が続行を推奨した。

新開発のアルドステロン合成酵素阻害剤。今回の日本も参加した試験は、進行リスクの高い慢性腎疾患患者11000人を組入れて、SGLT阻害剤empagliflozin(ACE阻害剤/ARB併用可)と併用する便益を検討した。主評価項目は、腎不全、eGFRの持続的40%超低下、心不全入院、または心血管疾患死の複合time to event分析。

他の第3相は、左室駆出率が40%未満に低下した心不全のEASi-HF-Reduced試験、40%以上を維持する心不全のEASi-HF-Preserved試験、そして二型糖尿病、高血圧症、または心血管疾患で心不全歴はない患者のEASi-PROTKT試験の3本が進行中。何れもempagliflozinに追加することで心不全などの心血管アウトカムの向上を図るもの。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


アストラゼネカ、低ホスファターゼ症の皮下注用薬を米でも承認申請
(2026年9月18日発表)

アストラゼネカはALXN1850(efzimfotase alfa)を低ホスファターゼ症(HPP)用薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は27年上期とのみ公表している。日本では第2四半期に承認申請、EUは8月に承認審査開始。

患者で欠乏するTNSALP(tissue-nonspecific alkaline phosphatase)を補充する。同社のStrensiq(asfotase alfa)は週3~6回の皮下注が必要だが、一部改変により2週毎皮下注で足りるようにした。Strensiq治療歴のない2~11歳の患者を組入れた試験とStrensiqからスイッチする試験が成功し、6月のICCBHで学会発表された。12歳以上の未治療小児・成人患者を組入れて歩行能力の改善を図った第3相はフェールしたが、成人発症型サブグループ以外には良好な結果であった模様。

リンク: プレス・リリース


武田、TYK2阻害剤を承認申請
(2026年9月14日発表)

武田薬品は、次期主力製品と期待するTAK-279(zasocitinib)を中重度尋常性乾癬用薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は27年1-3月四半期とのこと。欧州でもEMA(欧州薬品庁)が8月に承認審査を開始している。

23年にNimbus Therapeuticsの子会社を40億ドル及び達成報奨金最大20億ドルで買収して入手したTYK2阻害剤。IL-12やIL-23、一型インターフェロンによるシグナル伝達を調停する。類薬はブリストル マイヤーズ スクイブのSotyktu(deucravacitinib)が22~23年に米日欧で同適応症に承認されているが、TAK-279はTYK2を24時間阻害し、選択性が高いとされる。実際、LATITUDE直接比較試験で16週PASI100達成率が35%超と、Sotyktu群の2.5倍以上であった模様だ。

リンク: プレス・リリース(和文)

【承認審査・委員会】


9月のCHMP結果
(2026年9月18日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAプレス・リリース

ノボ ノルディスクのFrehemgo(denecimig)は血液凝固第VIX2因子と第X因子を架橋する二重特異性抗体。第VIII因子のインヒビターを保有する、または保有していないが第VIII因子の活性が低く予防的投与を必要とするA型血友病に用いる。米国でも承認申請中。

リンク: EMAプレス・リリース

Ensacove(ensartinib)はALK阻害剤。成人のALK陽性進行非小細胞性肺癌で、ALK阻害剤未経験又はcrizotinib歴のある患者に用いる。承認申請者はSFL Pharmaceuticals Deutschland GmbHとなっているが、おそらく承認後に変更されるのだろう。中国ではBetta Pharmaceuticals(貝達薬業)が20年に承認を取得、一次治療や摘出術付随療法に適応拡大を進めてきた。米国ではその子会社であるXcovery Holdingsが24年に今回と同様な適応で承認取得している。

リンク: EMAプレス・リリース

アストラゼネカの子会社、アレクシオンのKlygefa(gefurulimab)は抗C5抗体の可変領域重鎖一本に抗ヒト・アルブミン抗体を結合したもの。類薬であるUltomiris(ravulizumab-cwvz)と比べて分子量が1/5と小さく、点滴静注ではなく皮下注が可能。今後、適応拡大が進められるだろうが、初回適応症はアセチルコリン受容体に対する抗体を持つ全身型重症筋無力症。標準療法に追加投与する。日本では今月、承認されたところ。

リンク: EMAプレス・リリース

Corcept Therapeutics(Nasdaq:CORT)のLifyorli(relacorilant)は選択的可逆的グルココルチコイド受容体拮抗剤。全身性治療薬による1~3次治療歴のある白金抵抗性のハイグレード上皮性卵巣癌、卵管癌、または原発性腹腔癌に、nab-paclitaxelと併用する。化学療法感受性を向上する模様で、第3相ROSELLA試験ではPFS(無進行生存期間)がnab-paclitaxelだけの群を有意に上回った。米国では3月に承認され、副腎皮質ホルモン過剰症による高血圧症の治療に2巡目の適応拡大申請中。

リンク: EMAプレス・リリース

インサイト(Nasaq:INCY)のPovofortay(povorcitinib)はJAK1阻害剤。活性期中重度化膿性汗腺炎の成人で、抗TNFアルファ抗体に応答不十分、不耐、禁忌な場合に用いる。日本も参加した第3相試験二本で、奏効率が40%強と偽薬群の30%弱を有意に上回った。米国でも承認申請中。

リンク: EMAプレス・リリース

Sepalna(senaparib)はPARP阻害剤。成人の進行上皮性卵巣癌、卵管がん、または原発性腹膜癌で白金ベースの一次治療に部分反応以上だった患者の維持療法に用いる。申請者はSFL Pharmaceuticals deutschland GmbH。中国のImpact Therapeutics(07630.HK)が25年1月に中国で承認を取得、26年に卵巣癌維持療法に関する欧州などにおける製造開発商業化権を英国のPharmanoviaに供与している。

リンク: EMAプレス・リリース
リンク: IMPACT TherapeuticsとPharmanoviaの共同プレス・リリース

サノフィ・グループのSanofi Winthrop Industrieが申請したVaxRabeoは狂牛病の曝露前/曝露後予防に用いる不活化全粒子ワクチン。年齢制限はない。サノフィは狂牛病のワクチンとしてIMOVAX RaviesやVero細胞培養型のVerorabを世界各地で展開しているが、VaxRabeoとの異同は当方は分からなかった。

リンク: EMAプレス・リリース

デンマークのZealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)のZeydovio(glepaglutide)は長期作用性GLP-2作用剤。短腸症候群の成人に、術後に小腸が順応し安定した段階で投与を開始する。武田薬品のGattex(teduglutide)は一日一回皮下注だが、こちらは週2回投与で足りる。同社は23年に米国でも承認申請したが、審査完了通知を受領した。

リンク: EMAプレス・リリース

適応拡大では以下が肯定的意見を受けた。
  • ノバルティスのCosentyx(secukinumab):グルココルチコイド不十分応答/再燃の成人のリウマチ性多発筋痛症。米日でも申請中。
  • 第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan):成人のher2陽性乳癌でtaxane系とher2標的薬による術前療法後に浸潤性残存病変を有する摘出術後付随療法。米国で5月に承認、日本でも申請中。
  • AlfasigmaのJyseleca(filgotinib):成人の活性期非放射線学的体軸性脊椎関節炎(nr-axSpA)でCRP上昇且つ又MRI所見で炎症の客観的な兆候が見られる場合。及び、成人の活性期r-axSpAで従来療法に不十分応答の場合。
  • ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin)とMSDのKeytruda(pembrolizumab):筋層浸潤膀胱癌の術前術後併用療法におけるcisplatin不耐限定を解除。米は7月に承認、日本でも申請中。
  • Oncopeptides ABのPepaxti(melphalan flufenamide):成人の多発骨髄腫、但し、2次以上の治療歴を持ちlenalodomideと最終治療に抵抗性の場合。米国は21年に4次治療で加速承認されたが市販後薬効確認試験がフェールし24年に承認取消。EUは4次治療に加え23年には今回と同じ3次治療でも承認されたが、商業的な理由で取下げていた。
  • ジョンソン エンド ジョンソン・グループのTecvayli(teclistamab):再発多発骨髄腫のモノセラピーにおける4次治療以降限定を2次治療以降に変更。米でも申請中。
  • ベーリンガー・インゲルハイムのPradaxa(dabigatran etexilate):静脈血栓塞栓の予防や再発予防用途における適応年齢下限を、『柔らかい食事を飲み込める年齢』から8歳に変更。米は21年に承認。

一方、6月に否定的意見となったフランスのMaaT Pharma(EURONEXT:MAAT)のXervyteg(同種便マイクロバイオーム療法)は、再審査を経て再び否定的意見となった。急性移植片対宿主病の治療薬として申請されたが、対照試験が実施されていないため、エビデンス不足と判定した。
7月に否定的意見を纏めたが申請者側の要請に基づき再審を決定したのは、
  • Proveca PharmaのKemSu(sufentanil、ketamine):1~17歳の小児の急性疼痛治療。
  • Zevra TherapeuticsのMeplyffa(arimoclomol):ニーマン・ピック病C型。米国では24年にMiplyffa名で承認。
  • CATS Consultants GmbHのQezzaqar(catequentinib):平滑筋肉腫3次治療と滑膜肉腫2次治療

新薬承認申請が撤回されたのは、
  • Scholar Rock(Nasdaq:SRRK)のIsembyld(apitegromab-mstn):期限までにcGMP問題を解消できず8月に撤回。米国ではCatalent Indianaの問題を乗り越えて9月に脊髄筋萎縮症薬として承認取得できたので、欧州でも早晩、承認されるのではないか。
  • デンマークのPharmacosmosのCosela(trilaciclib):CDK4/6阻害剤。米国では進展型小細胞性肺癌の化学療法誘導性骨髄抑制を緩和する用途で21年に承認されたが、 欧州はCHMPが便益の多寡や抗癌剤との相互作用リスクを懸念し、後ろ向きに考えていた。

適応拡大申請が撤回されたのは、
  • ノボ ノルディスクのAlhemo(concizumab):血友病向け抗組織因子経路インヒビター抗体。11歳以下の患者に対象年齢拡大申請していたが、CHMPは様々なサブグループに関するエビデンスが充実していないことなどに懐疑的だった。
  • Regeneron PharmaceuticalsのKaftrio(elexacaftor、tezacaftor 、ivacaftor):1歳以上のクラスI変異型ではない嚢胞性線維症を適応とする承認申請を9月に撤回した。CHMPは未だ当初審査段階だったとのことなので自己都合と想像される。

【承認】


イーライリリーのイムルリオ、ベージニオ併用も承認
(2026年9月18日発表)

イーライリリーは、FDAがInluriyo(imlunestrant)の用法追加を承認したと発表した。適応範囲が思っていたより狭く、また、既承認用法と共食いになる可能性がありそうだ。

脳浸透性SERD(選択的エストロゲン受容体アルファ零落剤)。25年9月に米国で成人の一次以上の内分泌療法歴を有するエストロゲン受容体陽性、her2陰性、ESR1変異型の進行/転移乳癌に400mgを一日一回、経口投与することが米国で承認され、同年12月には日本でも承認はされた。第3相EMBER-3試験で、ESR1変異サブグループにおける単剤投与群138人のPFS(無進行生存期間、治験医評価)がメジアン5.5ヶ月と実薬対照群(fulvestrantまたはexemestaneを投与)118人の3.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.62だった。

今回の承認は同試験の共同主評価項目である、同社のCDK4/6阻害剤Verzenio(abemaciclib)と併用した群と単剤投与群の、但しintent-to-treatベースではなくESR1変異サブグループの探索的解析に基づくもの。単剤投与群はESR1変異を有しないサブグループやintent-to-treatベースでは偽薬比有意な効果を示さなかった。このため、FDAは、併用もESR1変異サブグループ以外、承認しなかった。レーベルによると、併用群67人のPFSはメジアン11.1ヶ月、単剤投与群92人は5.5ヶ月で、ハザード・レシオは0.53(95%信頼区間0.35-0.80)だった。因みに、intent-to-treatベースではメジアン9.4ヶ月対5.5ヶ月、ハザード・レシオ0.57だった。

深刻有害事象と致死的有害事象の発生率は、単剤投与群は各10%と1.8%、併用群は21%と3.8%だった。

治療効果に有意な差があるので忍容なら単剤より併用のほうが良さそうだ。問題は、ESR1変異を有さない患者に併用するのは本当に駄目なのか?イーライリリーの抗癌剤では以前にもあったが、初承認後に改めて、目標適応症全体における承認を狙うことになりそうだ。

類薬ではアストラゼネカのSERD、Etcamah(camizestrant)が定期血液検査でESR1変異が確認された、まだ一次治療がフェールしたとは言えない段階でスイッチする斬新な用法で、6~9月に日欧米で承認されたところ。米国の諮問委員会では反対票が上回ったので危ぶんだが、無事ゴールした。一方、Inluriyoは意外な顛末になった。

リンク: プレス・リリース


毛細血管拡張性運動失調症の初の運動症状用薬が承認
(2026年9月18日発表)

FDAはIntraBioのAqneursa(levacetylleucine)を体重15kg以上の小児と成人の毛細血管拡張性運動失調症に適応拡大を認めた。4歳以上の患者を組入れた第3相クロス・オーバー試験で、SARA機能評価値が偽薬服用期間より改善した。運動症状改善作用が確認された薬は初。EUでも承認審査中。

アミノ酸の一つであるロイシンの補充療法。24年9月に米国で、今年1月にはEUでも、ニーマン・ピック病C型の治療薬として初承認された。

リンク: プレス・リリース


サンフィリッポ症候群A型の遺伝子療法が承認
(2026年9月17日発表)

FDAはUltragenyx(Nasdaq:RARE)のFayuvi(rebisufligene etisparvovec-hopf)をムコ多糖症IIIA型、別名サンフィリッポ症候群A型の治療薬として承認した。欠乏しているSGSH(N-sulfoglucosamine sulfohydrolase)遺伝子をアデノ随伴ウイルス9型をベクターとして導入し、グリコサミノグリカンが分解されずに蓄積するのを防ぐ、初の根源的治療薬。

事業として成り立つ地域における患者数は世界で3000~5000人と推測されている超希少疾患なので、本剤の安全性データ・ベースは33例、うち、承認用量である3.0x10^13vg/kgの投与実績は27例と少ない。年齢が2歳以下、または神経発達障害が軽度の患者合わせて17人に施行したところ、認知発達指数(Bayley Scales of Infant and Toddler Development-III Cognitive Scale)が生後24ヶ月から60ヶ月までの期間に16.0点改善した。自然歴対照群は7.6点悪化となり、有意な差があった。警告注意事項は肝毒性、血小板減少症、血栓性微小血管症、過敏/点滴反応、そしてAAVベクターのDNAがゲノムに統合され癌を生じさせる懸念。

オハイオ州立大学とNationwide Children's Hospitalの研究者が創製。ライセンスを持つAbeona Therapeutics(Nasdaq:ABEO)が22年にUltragenyxに導出したもの。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: Ultragenyxのプレス・リリース


バイエル、ケレンディアが一型糖尿病腎症に適応拡大
(2026年9月17日発表)

バイエルは、FDAがKerendia(finerenone)を一型糖尿病患者の慢性腎疾患に適応拡大を認めたと発表した。この適応の承認は30年以上ぶりとのこと。

21~22年に米欧日で二型糖尿病患者の慢性腎不全治療薬として承認された非ステロイド系鉱質コルチコイド受容体拮抗剤。左心駆出率が軽度低下または保持されている心不全にも承認されている。今回の承認の根拠は、242人を組入れた第3相FINE-ONE試験におけるUACR(尿アルブミン・クレアチニン比)低下抑制作用。UACRだけではエビデンスとして弱いが、二型糖尿病の慢性腎不全を組入れた二本の第3相試験のプール分析で腎保護作用の8割以上がUACR低下の寄与であることを確認し、支持的証跡とした。

リンク: プレス・リリース


神経膠腫の新規PET診断薬が承認
(2026年9月14日発表)

オーストラリアのTelix(ASX:TLX)は、FDAがPixclara(foretyrosine F18)を1ヶ月児以上の神経膠腫のPET造影剤として承認したと発表した。治療関連変化が難治/進行性神経膠腫かどうか評価するために用いる。この種のアミノ酸造影剤は国際的な診断治療ガイドラインで推奨されているが、FDAに承認された製品は初めて。24年10月に承認申請し、2巡目で承認にたどり着いた。

リンク: プレス・リリース


新種の脊髄筋萎縮症用薬を承認
(2026年9月11日発表)

FDAはScholar Rock(Nasdaq:SRRK)のIsembyld(apitegromab-mstn)を脊髄筋萎縮症(SMA)治療薬として承認した。2歳以上でSMN2標的薬による治療を受けている患者に追加投与する。第3相SAPPHIRE試験で歩行不能な2/3型SMA患者に4週毎点滴静注したところ、主評価対象である2~12歳の患者において、推奨用量である10mg/kgを投与した群の1年後HFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)が1点上昇し、偽薬群の1.2点低下と有意な差があった。3点上昇達成率は各群34.2%と13.5%、オッズ比のp値は0.0125だった。主な有害事象は上部気道感染症、嘔吐、咳など。

SMAではバイオジェン/IonysのSpinraza(nusinersen)、ロシュのEvrysdi(risdiplam)、ノバルティスのZolgensma(onasemnogene abeparvovec-xioi)といった、機能していないSMN1遺伝子の代わりにSMN2を発現させる治療法が承認されているが、筋力低下を直接的に遅らせる薬の承認は初めて。動物試験でTGFベータ・スーパーファミリーの一つであるマイオスタチンを抑制したら筋力が向上したことに着目、前駆不活性体であるproMyostatinに結合するIgG4ラムダ抗体を開発した。25年1月に承認申請したが、フィル・フィニッシュ工程の委託先である、ノボ ノルディスクが買収したCatalentのノボが運営するインディアナ工場のcGMP問題に巻き込まれ、承認が遅れた。

リンク: プレス・リリース


小細胞性肺癌用薬イムデトラの投与後観察時間が大幅減少
(2026年9月11日付)

FDAはアムジェンの抗DLL3xCD3二重特異性抗体Imdelltra(tarlatamab-dlle)に関するレーベル改訂を承認し、初回投与と2回目投与時の推奨モニタリング時間を従来の22~24時間から6~8時間に短縮した(起算は1時間の点滴静注開始時)。患者に対するいざという時に1時間以内に適切な治療を受けられる場所で48時間過ごすという推奨や、3回目以降のモニタリング時間は変更ない。

Imdelltraは米国で24年5月に進展期小細胞性肺癌の2次治療薬として加速承認、12月には日本でも承認された。クラス・イフェクトであるサイトカイン放出症候群(CRS)のリスクがあるため、投与後の様子を確かめるプロトコルが導入された。3回目以降の3回は6~8時間、その後の4回は3~4時間、さらにその後は2時間、モニターするよう推奨している。日本でも米国よりは負担が軽いがモニタリングが採用されている。

EUでは、2年遅れて、第3相試験で延命効果が確認された後の今年5月に承認された。エビデンスとなったDeLLphi-304試験では、投与後モニター時間を6~8時間に留める43人と48時間モニターする209人のCRSリスクを比較したが、大差なかった。そのせいか、初回と2回目のモニタリングは6~8時間とされた。3回目以降は医師が決定、患者は当初の2回は24時間に亘り医療施設の近く(proximity)で介護者と過ごすことを推奨している。米国のほうが厳しいが、おそらくエビデンスは同じだろう。アムジェンは、第3相DeLLphi-305一次治療後維持療法試験で、初回と2回目のモニタリング時間を1~2時間と更に短縮する手法を検討している。

リンク: Imdelltraのレーベル(Drug@FDA)

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
26/9/21MSDのWinrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
26/10推アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬)
26/10推GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、dMMR/MSI-H結腸癌、CNPV案件)
26/10/4MSDのWelireg(belzutifan)とエーザイのLenvima(lenvatinib)、併用で進行腎細胞腫
26/10/9ロシュのTecentriq(atezolizumab、dMMR/MSI-HステージIII結腸癌の術後療法)
26/10/10第一三共のDS-7300(ifinatamab deruxtecan、進展型小細胞性肺癌)
26/10/15ロシュのEnspryng(satralizumab-mwge、甲状腺眼症)
26/10/26GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎)
26/10/29Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎)
26/10/30Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫)
26/11推Merck KGaAのpimicotinib(腱滑膜巨細胞腫)
26/11推バイエルのBAY 2433334(asundexian、虚血性脳卒中再発予防)
26/11推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv、多発骨髄腫単剤4次治療)
26/11推Dizal PharmaceuticalのZegfrovy(sunvozertinib、EGFR ex20ins変異のあるNSNSCLC1L)
26/11推ロシュのGazyva(obinutuzumab、原発性膜性腎症)
26/11推ファイザーのTalzenna(talazoparib)とアステラス/ファイザーのXtandi(enzalutamide)の併用(去勢感受前立腺癌)
26/11推Regeneron PharmaceuticalsのALN-CC5(cemdisiran、全身性筋無力症)
26/11/1Agios Pharmaceuticalのmitapivat(鎌状赤血球症適応拡大)
26/11/14Summit tderapeuticsのSMT112(ivonescimab、3G EGFR阻害剤歴のあるEGFR変異陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
26/11/14CytokineticsのMyqorzo(aficamten、MAPLE-HCM試験データ)
26/11/17Mandos LLC(Beren tderapeuticsの子会社)のVTS-270(adrabetadex、ニーマン・ピック病I型)
26/11/22SavaraのMolbreevi(molgramostim、吸入用、自己免疫性肺胞蛋白症)
26/11/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/11/25サノフィのSAR402671(venglustat、III型ゴーシェ病)
26/11/27BridgeBio PharmaのBBP-418(ribitol、肢帯型筋ジストロフィー2I/R9型)
26/11/27Zydus tderapeuticsのsaroglitazar(原発性胆汁性胆管炎)
26/11/27Nuvalent(GSKグループ)のNVL-655(neladalkib、TKI歴のあるALK+NSCLC)
26/11/28PolypidのD-PLEX100(doxycycline長期局所放出製剤、
26/11/30ロシュのRG6171(giredestrant、早期乳癌術後療法)
26/11/30Vertex Pharmaceuticalsのpovetacicept(IgG腎症)
26/11/30Cogent BioscienceのCGT9486(bezuclastinib、GIST2L)
諮問委員会
26/9/23MCGP:Grail社のGalleri多癌種早期探知血液検査


今週は以上です。