【ニュース・ヘッドライン】
- 欧州でもタブネオスの承認取消勧告
- 欧州委員会がインフルエンザ・ワクチンの情報提供活動に捜査開始
- MSD、抗TL1A抗体の第3相が成功
- LSD類薬の第3相鬱病試験が成功
- Exelixis、承認申請中の新規VEGF阻害剤は一部患者に効果が弱い
- Regenxbio、FDAの姿勢軟化を受けて再申請へ
- ファイザー、抗インテグリン抗体薬物複合体の第3相がフェール
- 新規禁煙補助薬は承認されず
- CHMP、アジュバント型インフルエンザ・ワクチンなどの承認を支持
- 甲状腺眼症の治療薬が承認
- イブランスがHR+her2+乳癌の維持療法に承認
- ApoC-IIIアンチセンス薬が高TG血症に適応拡大
- ギリアドの抗TROP-2抗体薬物複合体、PD-L1不問でTNBC一次治療に適応拡大
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
欧州でもタブネオスの承認取消勧告
(2026年6月26日発表)
EUの医薬品審査委員会、CHMPは、MPA(顕微鏡的多発血管炎)やGPA(多発血管炎性肉芽腫症)の治療薬として承認されているTavneos(avacopan)の承認を取り消すよう勧告した。承認の根拠となった臨床試験にGCP(実施基準)違反などが発覚したため。欧州委員会が最終決定する。
このC5a受容体阻害剤はChemoCentryx(22年にアムジェンが子会社化)が開発し21年9月に日本でライセンシーのキッセイ薬品が世界に先駆けて承認を取得、翌月にはChemoCentryxが米国で、22年1月にはライセンシーのVifor Fresenius Medical Care Renal PharmaがEUで、承認を得た。しかし、ChemoCentryxの株主が提訴した代表訴訟で、プロトコルに即した解析が両側p=0.1025とフェールしていたこと、そして、データが疑わしい症例を査読させポジティブなデータに変更されていたことが判明、CHMPやFDAが精査を開始した。FDAはアムジェンに自主回収を打診したが断られ、承認取消に向けた時間のかかる公的手続きを開始している。
安全性に関しても、既知のリスクである薬物誘導性肝障害に加えて、市販後に多くの胆管消失症候群が報告されるようになった。FDAによると薬物との関連に関する合理的なエビデンスのある症例が24年10月時点で76例(うち8人死亡)、うち日本が66例を占めた。キッセイ薬品の発表によると、22年から26年4月までに日本で重篤胆管消失症候群が22例発生、13人が死亡した。投与実績は年8500人程度。このため、日本でも新患投与差控え等の措置が取られたが、ブルーレター発出により終了した。
リンク: EMAのプレス・リリース
欧州委員会がインフルエンザ・ワクチンの情報提供活動に捜査開始
(2026年6月26日発表)
欧州委員会は、非競争的行為の容疑でサノフィの捜査を開始したと発表した。高齢者向けインフルエンザ・ワクチンEflueldaの情報提供活動の過程で、主としてドイツとフランスにおいて、競合するCSL Seqirus社のFluadより効果が高いとするキャンペーンを行ったことが、EU疾病管理予防センターや加盟国政府の推奨と異なり、ミスリーディングな行為との疑いが浮上したもの。
インフルエンザ・ワクチンは配合されている株と流行株のミスマッチが毎年のように発生するため、臨床試験の実施時期により感染予防効果が変動してしまうリスクがある。15年にFluadが加速承認された時の市販後コミットメントである市販後薬効確認試験では、ワクチン効率が19.8%と成功判定の閾値である40%を大きく下回った。サノフィは22年にFDAに対してこのデータをレーベルに記載するよう市民請願したことがある。おそらく、今回も、この試験成績の評価が論点だろう。サノフィの問題提起は無視すべきではないだろうから、接種希望者にとって最も望ましい解決方法は、司法捜査ではなく、疫学試験を行って各種インフルエンザ・ワクチンの効果を比較検討することだろう。
リンク: 欧州委員会のプレス・リリース
【新薬開発】
MSD、抗TL1A抗体の第3相が成功
(2026年6月22日発表)
MSDはMK-7240(tulisokibart)が第3相ATLAS-UC試験の一つで主目的などを達成したと発表した。データは未公表。もう一本、成功させて承認申請に向かうだろう。
Th1やTh17などが調停する炎症や線維化に関わるTL1A(TNF-like cytokine 1A)に結合する抗体医薬。TL1Aの発見者が設立したPrometheus Biosciencesを23年に買収して入手した。日本も参加したATLAS-UC試験は、既存治療不応不耐などの中重度活性期潰瘍性大腸炎を組入れて2種類の用量を偽薬と比較した。導入期と維持期における便益を検討するスタディ1と導入期だけのスタディ2から成り、今回、後者で12週臨床的寛解率(修正Mayo Scoreベース)が偽薬群を上回った。両用量群とも達成したかどうかは不明。第2相試験では1000mg点滴静注で開始、2、6、10週後に500mgを投与したところ、臨床的寛解率が26.5%と偽薬群の1.5%を上回った。
治験登録によるとスタディ1の結果判明は8月と推測されている。他の疾患では中重度活性期クローン病も第3相試験中。
リンク: プレス・リリース
LSD類薬の第3相鬱病試験が成功
(2026年6月22日発表)
米国ニュー・ヨーク州のDefinium Therapeutics(Nasdaq:DFTX)はDT120(lysergide d-tartrate)が第3相鬱病試験で主目的等を達成したと発表した。年内に鬱病でもう一本、全般不安障害で2本の結果が出そうなので、承認申請が近付いている。
lysergideはロシュではなくサンドの研究者だったAlbert Hofmannが1938年に合成、試験中に誤って皮膚吸収してしまったことが切っ掛けで幻覚作用を発見した。医薬品としての開発は難航し、むしろ乱用による被害が衆目を浴びるようになったが、ここにきて、サイケデリック系コンパウンドの医療開発が成果を上げ始めた。4月にはトランプ米国連邦大統領が、充足されない医療ニーズに応え得るサイケデリックの開発を後押しするプログラムを発表し、その一つを担うCNPV(FDA委員長の国家優先バウチャ)が英国のCompass Pathways(Nasdaq:CMPS)、米国の非営利医療研究組織であるUsona Institute、大塚ホールディングスが買収予定のTranscend Therapeuticsの3社に供与された。尚、Definiumは受領していない(大統領献金が足りないのだろうか?)
今回のEmerge試験は米国の大鬱病の成人149人を100mcg一回投与群と偽薬群に無作為化割付けした二重盲検試験。他社の臨床試験は精神療法の補助療法としての便益を検討しているが、本剤は薬物療法だけ施行している。被験者の過半は2剤以上の抗鬱剤治療歴を持っていた。幻覚症状などに対処するため、投与後はチェックリストに即して症状が治まるまで5~8時間観察を続け、1時間毎に終了の適否を判定した。
主評価項目の第6週MADRS総スコア(ベースライン値は35点)は、試験薬群が13.3点低下、偽薬群は5.2点低下、最小二乗平均差は-8.1、p<0.0001だった。第1週から-14.2点の差が見られ、第12週でも-7.3点と維持された。承認されている抗鬱剤のデータより良いが、比較可能性は不明。投与日に観察された有害事象は幻覚や多幸感など。自殺思慮・行動は発生しなかった。チェックリストをクリアするまでの時間は平均で5.8時間、最長でも8時間以内だった。
試験薬群の過半が幻覚を経験しており、盲検がちゃんと機能したか疑うことが可能。もう一本のAscend試験では一部の被験者を50mcg群に割付けて、影響を評価できるようにしている。
同社は今年1月にMind MedicineからDefinium Therapeuticsにリブランドした。
リンク: プレス・リリース
Exelixis、承認申請中の新規VEGF受容体拮抗剤は一部患者に効果が弱い
(2026年6月22日発表)
Exelixis(Nasdaq:EXEL)は2月に米国でXL092(zanzalintinib)を成人の転移結腸直腸癌用薬として承認申請したが、エビデンスとなる第3相STELLAR-303試験で、共同主評価項目である肝転移の無いサブグループの全生存期間解析が有意水準に達しなかったと発表した。先に開票したintent-to-treat(ITT)ベースの解析は成功しており、解析計画では一方がフェールしても有意判定に影響はないが、適応範囲が縮小されたり、治療の意義が再検討されたりする可能性がありそうだ。
同社のcabozantinibの後継となるべきVEGF受容体拮抗剤。上記試験は標準療法不応不耐でMSI-H(高マイクロサテライト不安定性)ではない患者901人を組入れて、ロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)と併用で100mgを一日一回経口投与する群と、バイエルのVEGF受容体拮抗剤Stivarga(regorafenib)群の全生存期間を比較した。主解析対象は変遷しており、当初はITTベースの予定だったが、MSDの抗PD-1抗体とエーザイのVEGF受容体拮抗剤の併用効果を検討したLEAP-017試験がフェールしたことを受けて、過去の試験で効果が比較的大きかった、肝転移の無いサブグル-プに限定され、さらにその後、ITTとサブグループのどちらも主評価項目とするよう変更された。
ITTの解析はハザード・レシオ0.80、p=0.0045と良好だった。但し、メジアン生存期間は10.9ヶ月対9.4ヶ月と、2剤併用の割には差が小さい。昨年10月の学会発表時点では肝転移の無いサブグループのハザード・レシオは未成熟でp=0.0875に留まっていたが点推定値自体は0.79とITTと大差なかった。ところが、最終解析では0.83(95%信頼区間0.66-1.05)、p=0.118と好ましくない方向にドリフトしてしまった。悩ましいのは、メジアン生存期間は15.9ヶ月対12.7ヶ月と、こちらのサブグループのほうが延命月数が大きいこと。ハザード・レシオの点推定値には大きな違いがないので、こちらのデータのほうが重要かもしれないのだ。
もう一つ悩ましいのは、サブグループのデータが悪化したのなら、ITTの解析もアップデートすれば悪化するのではないか、と疑ってしまうことだ。FDAは、LEAP-017試験の成績との違いも検討するだろう。
審査期限は12月3日。成否が注目される。
リンク: プレス・リリース
Regenxbio、FDAの姿勢軟化を受けて再申請へ
(2026年6月22日発表)
Regenxbio(Nasdaq:RGNX)は昨年3月に米国でNavsunli(RGX-121:clemidsogene lanparvovec-sngl)をムコ多糖症II型(ハンター症候群)の遺伝子療法として承認申請したが、臨床試験の対象や評価項目、外部自然歴対照などデザイン面が不適切として、今年2月に審査可能通知を受領した。FDAは対照試験を行うよう助言したが、現実的でないとの反論が奏功したのか、FDA上層部の総入替えが幸いしたのか、追加試験は行わずに、7月にType A会議(意見対立や治験停止、特別プロトコル評価などに関する会議)で長期追跡データなどを説明した上で、第3四半期に承認申請することでFDA側と同調(align)した。
アデノ随伴ウイルスを用いてハンター症候群で欠乏するiduronate-2-sulfataseの遺伝子を導入するもの。5歳以上の患者10人に脳室内投与したところ、脳脊髄液中のヘパラン硫酸のD2S6コンポーネントが16週で86%減少し、8人では正常水準に達した。12ヶ月追跡データでも82%減だった。ところが、FDAは、外部自然歴対照群との比較可能性やD2S6のサロゲート・マーカーとしての妥当性などに疑問を呈した。また、本件とは話が別に、今年1月にRGX-111のムコ多糖症I型試験で脳室内腫瘍が発生した時にはFDAがRGX-121も治験停止命令を発出した(5月にRGX-121だけ解除)。暗雲が立ち込めていたので、取り敢えず、日が射してきたと言えるだろう。
Regenxbioが梃子摺る内に、Denali Therapeutics(Nasdaq:DNLI)もiduronate-2-sulfatase補充療法のAvlayah(tividenofusp alfa-eknm)を承認申請し、今年3月にFDA承認を取得した。エビデンスは47人に週一回反復投与した第1/2相単群試験。RGX-121のエビデンスとの違いは、投与実績が多く、類似疾患を含めて多くの医薬品が承認されている酵素補充療法であること、そして主評価項目が、類薬と同じ、脳脊髄液中のヘパラン硫酸であること。
RGX-121とRGX-111は25年1月に日本新薬が米国における独占販売権と日本を含むアジアでの独占開発販売権などを取得している。
リンク: プレス・リリース
ファイザー、抗インテグリン抗体薬物複合体の第3相がフェール
(2026年6月22日発表)
ファイザーは、PF-08046047(sigvotatug vedotin、Seagen時代の開発コードはSGN-B6A)の第3相SigVie-002試験がフェールしたと発表した。米欧日本などの施設で、白金薬と抗PD-(L)1抗体(分子標的薬適応なら対応薬も)による治療歴を持つ局所進行/切除不能または転移性の非扁平上皮非小細胞性肺癌の703人を試験薬群とdocetaxel群に無作為化割付けして延命効果を比較したもので、この抗インテグリン・ベータ6抗体・MMAE結合体の最初の第3相試験だったが、目標に届かなかった。但し、被験者の2/3を占めた一次治療歴だけの患者では全生存期間もPFS(無進行生存期間)もトレンドが見られた模様。一方、探索的解析で、インテグリン・ベータ6の発現と応答性の関連性は見られなかった由。
本剤は第3相Be6A Lung-02も進行中。PD-L1著高発現(TPS≧50%)の局所進行切除不能/転移非小細胞性肺癌の一次治療としてMSDのKeytruda(pembrolizumab)に追加する便益を検討するもので、ClinicalTrials.govによると、結果判明は28年の見込み。
同社は、100人以上の第1相試験の後、第2相をスキップして上記第3相に進んでいる。
リンク: プレス・リリース
【承認審査・委員会】
新規禁煙補助薬は承認されず
(2026年6月22日発表)
Achieve Life Sciences(Nasdaq:ACHV)は昨年6月に米国でcytisiniclineを禁煙補助薬として承認申請したが、審査完了通知を受領した。4月に公表したように、生産委託先がFDA査察後に指摘事項を受領したことやレーベル審査が未了であるため。同社は委託先をAdare Pharma Solutionsに変更した上で、今年第4四半期にFDAに完全回答して27年上期中の承認を目指す。
cytisinicleは植物アルカロイド。アルファ4ベータ2ニコチン・アセチルコリン受容体を部分作動して、離脱症状を緩和し、喫煙がもたらす報酬を抑制する。ブルガリアのSopharmaが中東欧などで実用化している。Achieve社は10年以上前にそれ以外の地域での開発販売権を取得した。米国の第3相試験二本で3mgを一日3回投与したところ、12週コース群は3割強が最後の4週間に禁煙を維持できた。偽薬群は7-9%だった。
米国では燃焼式たばこの成人喫煙者が2500万人、eシガレットなどの吸入式たばこの使用者が1800万人いる。FDAは、昨年10月、後者の用途で同社にCNPV(FDA委員長の優先バウチャ)を供与した。
リンク: プレス・リリース
CHMP、アジュバント型インフルエンザ・ワクチンなどの承認を支持
(2026年6月26日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら1~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレス・リリース
CSL SeqirusのAujemfluは50歳以上向けの3価インフルエンザ・ワクチン。細胞培養した抗原とアジュバント(免疫刺激物質)を含有している。今月上旬に承認した英国のMHRAによると、50歳以上の7699人を組入れた臨床試験で、接種4週後の免疫原性が鶏卵ベースのアジュバント添付ワクチンを上回り、遺伝子組換え型ワクチンと同程度だった。
リンク: EMAのプレス・リリース
イーライリリーのOnswik(insulin efsitora alfa)は週一回投与型の基礎インスリン。二型糖尿病の治療に用いる。臨床試験で効果が一日一回投与型のインスリンと非劣性だった。類薬としてはノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec)が欧日では24年に、米国でも26年に、承認されている。
リンク: EMAのプレス・リリース
ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)のDaybu(trofinetide)はレット症候群の初の治療薬。IGF-1類縁体で、神経炎症を抑制しシナプス機能を支持すると考えられている。効果が小さいためCHMPは2月に否定的意見を纏めたが、メーカーから再審請求を受け、総合的な評価に基づき効果は許容範囲と見直した。米国では23年3月に承認、25年の純売上高は3.9億ドルに達しており、ワールド・カップで日本のサッカー・チームが予選通過したが、『Daubuの1ミリ』も大きかった。
リンク: EMAのプレス・リリース
適応拡大で肯定的意見を得たのは、
一方、3剤が否定的意見となった。Netherlands Cancer Instituteの自家黒色腫由来TIL(腫瘍浸潤性リンパ球)製剤、Tacquellは、デンマークとオランダでPD-1標的薬歴を持つ切除不能進行黒色腫患者168人を組入れたM14TIL試験でPFS(無進行生存期間)が7.2ヶ月とipilimumab群の3.1ヶ月を上回り、ハザード・レシオ0.50、p<0.001となった。メジアン生存期間も25.8ヶ月対18.9ヶ月で数値上上回った。しかし、CHMPは、臨床試験のGCP順守問題に加えや、デザインや解析方法、品質管理面にも問題があると結論した。
リンク: EMAのプレス・リリース
Omeros (Nasdaq:OMER)のYartemlea(narsoplimab)は抗MASP-2(mannan-binding lectin-associated serine protease-2)抗体。2歳以上の造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)の治療薬として承認申請されたが、主臨床試験が対照試験ではないことや、他剤同時使用が可能など実施方法が不適切であること、小児のエビデンスが不十分であることなどを指摘した。米国でも初回は審査完了に終わったが、主臨床試験に参加した28人の全生存期間を患者登録データと比較した研究に基づき昨年12月に2歳以上を適応として承認された。しかし、CHMPは、この比較も不適切と判定した。
リンク: EMAのプレス・リリース
フランスのMaaT Pharma(EURONEXT:MAAT)のXervyteg(MaaT013)は同種便由来マイクロバイオーム療法。欧州の施設でステロイドやruxolitinibに十分応答しない胃腸症状を伴う急性移植片対宿主病患者66人を組入れて実施した第3相ARES試験で28日胃腸総合応答率が62%と、想定の38%を大きく上回り、感染症リスクは高まらなかった。しかし、CHMPは、対照群が設定されていないこと、他剤同時使用が可能であったこと、発生した感染症が病気によるものなのか薬によるものなのか判別できないことなどから、効果や安全性のエビデンスが不足と判定した。
リンク: EMAのプレス・リリース
【承認】
甲状腺眼症の治療薬が承認
(2026年6月26日発表)
Viridian Therapeutics(Nasdaq:VRDN)は、FDAがLumvoa(veligrotug-vvze)を甲状腺眼症の治療薬として承認したと発表した。アムジェンのTepezza(teprotumumab)と類似した抗IGF-1R抗体で、臨床成績を見比べると効果が上回るようには感じられないが、1回のコースにおける投与回数(どちらも3週毎)が5回対8回で少なく、点滴静注時間が30~45分対60~90分と短い。同社は皮下注用のVRDN-003(elegrobart)を27年第1四半期に承認申請することで差別化を進める考えだったがアムジェンも今年4月にオン・ボード・インジェクター型開発品の第3相を開始した。
リンク: プレス・リリース
イブランスがHR+her2+乳癌の維持療法に承認
(2026年6月24日発表)
FDAはファイザーのCDK4/6阻害剤Ibrance(palbociclib)の適応拡大を承認した。成人のホルモン受容体陽性かつher2陽性(乳癌の1割を占める)の局所進行/転移乳癌で、一次治療(taxane系抗癌剤とtrastuzumabの併用、更にpertuzumab併用も可)により進行しなくなった患者の維持療法として、trastuzumab(pertuzumab追加可)および内分泌療法と併用する。エビデンスとなるPATINA試験では、trastuzumab(pertuzumab追加可)および内分泌療法だけを施行した群と比べて、PFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザード・レシオが0.76(95%信頼区間0.59-0.97)、片側p=0.0134だった。FDAによると、追跡打切り例の影響でメジアン値の適切な推定はできない(ハザード・レシオの数値とともに、24年12月の学会発表とは異なっている)。全生存期間の解析は未成熟。
Ibranceは切除不能/転移ホルモン受容体陽性her2陰性乳癌の一次療法などに承認されている。
リンク: プレス・リリース
ApoC-IIIアンチセンス薬が高TG血症に適応拡大
(2026年6月24日発表)
FDAはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のTryngolza(olezarsen)を重度高トリグリセライド(TG)血症の治療に用いる適応拡大を承認した。ApoC-IIIのmRNAを妨げるアンチセンス薬で、24~25年に米欧で家族性カイロミクロン血症候群の治療薬として承認された。適応拡大のエビデンスとなる二本の第3相では、50mg群と80mg群のTG値が6ヶ月後に一本では偽薬比各63%と73%、もう一本では49%と54%、低下した。二本のプール分析で、急性膵炎(査読)の率比が50mg群は偽薬比0.09、80mg群は0.24となり、重度TG血症治療薬で初めて、急性膵炎抑制作用が確認された。NNT(急性膵炎を年1例減らすために投与すべき人数)は20と大変良好だ。
リンク: プレス・リリース
ギリアドの抗TROP-2抗体薬物複合体、PD-L1不問でTNBC一次治療に適応拡大
(2026年6月24日発表)
FDAはギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)を成人の切除不能局所進行/転移トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療に適応拡大を認めた。PD-L1陽性(CPS≧10)の場合はMSDのKeytruda(pembrolizumab)の静注用または皮下注用製剤と併用、適応にならない場合は単剤投与する。
前者はASCENT-04/KEYNOTE-D196試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が11.2ヶ月とKeytruda・化学療法併用群の7.8ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.65だった。昨年のASCO(米国臨床腫瘍学会)での発表によると全生存期間のハザード・レシオは0.89と今一つだが、未成熟であることや対照群の4割が進行後にクロスオーバーしたことが影響している可能性がある。
後者はASCENT-03試験でメジアンPFSが9.7ヶ月と化学療法群の6.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.62だった。全生存期間の解析は未成熟。
日本でも適応拡大申請中。EUでは今月、後者の適応が承認された。
Trodelvyは、同じ抗TROP-2抗体薬物複合体である第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk)の追い上げを受けていて、後者の適応では先んじられたが、前者では先んじた。MSDはKelun Pharmaceutical(002422.SZ)グループのSichuan Kelun-Biotech Biopharmaceutical(6990.HK)から中国外の市場で導入した類薬、sacituzumab tirumotecanで様々な癌の第3相を開始しており、3社の適応拡大競争はますます激化していくだろう。
リンク: プレス・リリース
【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】
| PDUFA | |
|---|---|
| 26/6/27 | SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風) |
| 26/6/29 | LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤) |
| 26下 | ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS) |
| 26/7推 | Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防) |
| 26/7推 | 武田薬品のrusfertide(真性多血症) |
| 26/7/3 | Ascelia Pharma ABのOrviglance(manganese chloride tetrahydrate、重度腎障害患者の肝MRI造影剤) |
| 26/7/6 | Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植) |
| 26/7/7 | Vera Therapeuticsのatacicept(IgA腎症) |
| 26/7/17 | Celcuityのgedatolisib(HR+her2-進行乳癌) |
| 26/7/23 | Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫) |
| 26/7/23 | サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤) |
| 26/7/24 | 大塚製薬のcentanafadine(ADHD) |
| 26/8推 | Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎) |
| 26/8推 | 武田薬品のTAK-861(oveporexton、ナルコレプシータイプ1) |
| 26/8推 | Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症) |
| 26/8推 | JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血) |
| 26/8推 | アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌) |
| 26/8/5 | モデルナのmRNA-1010(季節性インフルエンザ・ワクチン) |
| 26/8/13 | LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査) |
| 26/8/17 | BMSのiberdomide(多発骨髄腫) |
| 26/8/17 | Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型) |
| 26/8/17 | ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv、筋層浸潤膀胱癌術前術後、pembrolizumab併用) |
| 26/8/22 | Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD) |
| 26/8/23 | Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型) |
| 26/8/24 | エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除) |
| 26/8/25 | Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫) |
| 26/8/25 | BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫) |
| 26/8/27 | ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV) |
| 26/8/28 | ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍) |
| 26/8/30 | ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加) |
今週は以上です。