【ニュース・ヘッドライン】
- 抗IL-33抗体のCOPD試験が遂に成功
- 抗VEGF抗体バイオポリマー複合体の二本目の第3相が成功
- アリケイスのMAC一次治療試験が成功
- ライム病ワクチンを承認申請へ
- Dizal社、ex20挿入変異肺癌の単剤一次治療試験が成功
- アレキサンダー病のアンチセンス薬を承認申請
- 遅報:kit阻害剤を全身性肥満細胞症に承認申請
- 遅報:田辺三菱由来の降圧剤を承認申請
- 3月のCHMP決定
- 白血球接着不全症1型用薬が承認
- アウィクリが米国でも承認
- ハンター症候群のBBB通過性酵素補充療法が承認
- グルココルチコイド受容体拮抗剤が卵巣癌に承認
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【新薬開発】
抗IL-33抗体のCOPD試験が遂に成功
(2026年3月27日発表)
アストラゼネカはMEDI3506(tozorakimab)の第3相難治COPD維持療法試験二本で主目的等を達成したと発表した。今上期中に投与頻度を増やした第3相の結果も判明する見込みで、承認申請に向かうのではないか。
IL-33に結合する抗体医薬。今回のOBERON試験とTITANIA試験は、成人の10箱年以上の喫煙歴を持つ症候性COPDで、維持療法用薬を2剤以上併用しても過去12ヶ月間に中程度以上の増悪を2回、あるいは重度増悪を1回、経験した患者を2本合計で2306人組入れて、300mg4週毎皮下注を追加する便益を偽薬追加と1年間、比較した。主評価項目は煙草を止めた患者における中重度COPD増悪年率。副次的評価項目である喫煙者も含めた全体の解析も成功した。データは未発表。この二本の延長試験として、2年目以降の治療法を探る2用量群の偽薬対照試験も進行中。更に、上記2本と類似した内容だが300mgを2週毎投与する第3相MIRANDA試験も進行中。
他の用途では、第3相TILIA試験でウイルス性肺感染症により入院酸素補給を受けている患者を組入れて死亡や侵襲的人工呼吸器/ECMO(体外式膜型人工肺)装着リスクを偽薬と比較しており、治験登録によると、26年6月に成否判明する見込み。尚、上記はすべて日本の施設も参加している。
抗IL-33抗体によるCOPD増悪予防試験は、昨年、アムジェンのAMG 282(astegolimab)の第3相ARNASA試験がフェール。Regeneron PharmaceuticalsのREGN3500(itepekimab)は一勝一敗だった。増悪リスク削減率を見ると前者は2週毎投与群で14%、後者は4週毎群が21%と12%、2週毎群は27%と2%で、2本の試験の平均で見るとアムジェンの数値と大差ない。アストラゼネカの数値がどの程度なのか、注目される。
リンク: プレス・リリース
抗VEGF抗体バイオポリマー複合体の二本目の第3相が成功
(2026年3月26日発表)
米国のKodiak Sciences(Nasdaq:KOD)は、Zenkuda(tarcocimab tedromer)が第3相糖尿病網膜症試験で主評価項目と主要副次的評価項目を達成したと発表した。第3四半期に新生血管加齢黄斑変性用途で米国で承認申請する計画だが、DRの承認申請も前倒しする可能性があるようだ。
抗VEGF抗体(150kDa)とバイオポリマー結合体(950kDa)を1:4で混合した硝子体注射用製剤。半減期が20日と長い。22~23年に旧製剤の第3相aflibercept対照試験が開票したが、新生血管加齢性黄斑変性のP2/3DAZZLE試験も、糖尿病性黄斑浮腫の第3相GLEAM試験と同GLIMMER試験も非劣性解析がフェールした。これらの試験で白内障が増加する懸念が浮上、一旦は開発中止を決めたものの、新生血管加齢性黄斑変性は第3相DAYLIGHT試験が成功していたことに加え、新たに網膜静脈閉塞症による網膜浮腫の第3相BEACON試験も非劣性解析が成功したため、糖尿病性網膜症の第3相GROW1シャム対照試験を実施したとことろ、奏効率(DRSS評価尺度が48週後に2段階以上改善)が41.1%(シャム群は1.4%)と有意に上回った。そこで、更に実施したのが今回のGROW2試験だ。
GROW1試験は欧米の施設で中程度重度または重度の患者253人を組入れて第0、8、20、44週に投与した。GROW2試験は更に糖尿病性黄斑浮腫や増殖性糖尿病性網膜症も含む255人を組入れて、第0、4、8、20、44週に投与し、48週奏効率(前回と同様)をシャム群と比較したところ、62.5%とシャム群の3.3%を有意に上回った。被験者の半分弱はGLP-1作用剤を同時使用していたが、効果は大差なかった。副次的評価項目の、視力を脅かす合併症(増殖性糖尿病性網膜症を合併/悪化など)の発生率も2.4%対15.8%で有意だった(アルファ調整後)。
既存薬では眼内炎症性疾患が見られたものもあるが、この試験では網膜血管炎や閉塞性網膜血管炎を含め発生しなかった。白内障発生率は2.3%(シャム群は1.6%)でこの疾患における自然発生率と大差無かった。尚、視力は両群とも安定的に推移したようだ。
同社は抗IL-6抗体とVEGFトラップを組み合わせた二重特異性蛋白バイオポリマー複合体であるKSI-501(tabirafusp tedromer)も新生血管加齢性黄斑変性の第3相DAYBREAK試験中で、第3四半期に48週BCVA(最良矯正視力)がaflibercept比非劣性かどうか、判明する見込み。KSI-101(二重特異性蛋白)の第3相MESI(炎症後黄斑浮腫)試験二本も第4四半期に開票予定。
風前の灯火から復活できるか、詳細発表が待望される。
リンク: プレス・リリース
アリケイスのMAC一次治療試験が成功
(2026年3月23日発表)
Insmed(Nasdaq:INSM)は吸入用抗菌剤Arikayce(amikacin)の後期第3相新患MAC(マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス)肺炎一次治療試験、ENCOREで主目的等を達成したと発表した。18~21年に米欧日で難治性のMAC肺炎の治療薬として承認されたが、26年下期に米日などで適応拡大申請する考え。承認なら対象患者が現行の3万人から20万人に増加する見込み。
この試験は、425人の患者を組入れて、azithromycinとethambutolの併用法にArikayce 590mg一日一回吸入を追加する便益を偽薬追加と比較した。主評価項目は12ヶ月の治療を終えた第13月における呼吸器症状スコア(Quality of Life-Bronchiectasis Respiratory Domainの37項目中8項目を利用)。17.77点となり、偽薬群の14.66点を有意に上回った(p=0.0299)。副次的評価項目の第6月や第12月などの培養検査陰転率も多重性補正後で有意だった。
有害事象は深刻TEAE(療時発現有害事象)の発生率が14.1%(偽薬追加群は11.3%)、TEAEによる投与中止は14.6%(同8.5%)、致死的TEAEは両群0.5%(1名)だった。特別関心TEAEは気管支痙攣が23%(同11.8%)、過敏性肺臓炎が2.3%(同ゼロ)で発生したが他の評価項目は両群大差なかったようだ。
米国の承認は持続的陰転率というサロゲート・マーカーに基づく加速承認だが、市販後薬効確認試験に位置付けられた今回の試験成功により本承認に切替えられるだろう。
リンク: プレス・リリース
ライム病ワクチンを承認申請へ
(2026年3月23日発表)
ファイザーとフランスのValneva(Nasdaq:VALN)は、ライム病ワクチンPF-07307405/VLA15の第3相試験のトップラインを発表すると共に、欧米で承認申請する考えを明らかにした。この試験は数奇な経緯を持っており組入れ数や薬効評価期間などが変更になっている。主評価項目が僅かにフェールしたこともあり、承認されるかどうか、予断を許さないだろう。
ライム病はマダニが媒介するボレリア・ブルグドルフェリ菌の感染症。米国では年50万人近くが感染と推定されている。1998年にスミスクライン・ビーチャム(当時)のLYMErixが米国で承認されたが、全米で見ると罹患率は高くなく深刻感染症も多くはないことに加えて、臨床試験の主任研究員が交差耐性や自己免疫疾患のリスクに懸念を表明したり、多数のPL訴訟が提起されたりしたことなどから、需要が低迷し2002年に自主的販売中止となり、ワクチン無しの時代に戻った。尚、FDAはLYMErixの副作用懸念を支持してはいないようである。
PF-07307405はファイザーがValnevaから共同開発・単独製造商業化権を取得した、6価OspAアルミ・アジュバント・ワクチン。第3相のVALOR試験は米国と北中欧の数ヶ国の施設で5歳以上を対象として180mcgの予防効果を偽薬と比較した。初回免疫はライム病シーズンが始まる4月までに完了できるよう見計らって、第0月、2月、5~9月に合計3回接種した。完了の1年後に追加接種した。当初の組入れ目標は18000人、薬効面の主評価項目は初回免疫完了の28日後から10月末までのライム病相対リスク削減率と、追加免疫の28日後以降の同様なリスク削減率だった。
ところが、両社は23年2月に複数の米国施設でGCP(臨床試験実施基準)違反があったとして、これらの施設を除外すると発表した。同日、これらの施設を担当するCROのCare Accessが反論し、同年10月にはFDAのGCP査察で指摘事項(form 483)がなかったことを公表したが、その後は両社からは音沙汰ないようである。
両社はこの件を踏まえて組入れ数を見直すと共に、初回免疫後の相対リスク削減率を主評価項目から除外した。今回発表された追加接種後の相対リスク削減率は73.2%、95%信頼区間は15.8-93.5で、下限は成否判定の閾値である20%を上回らなかった。副次的評価項目である追加接種翌日から起算すると74.8%(21.7-93.9)だった。
不透明要素は、まず、20%という閾値をクリアできなかったことがどれほどの重大性を持つか。報道によると感染数が前提を下回ったようなので、ある程度斟酌されるかもしれない。よく分からないのが、初回免疫のデータが無くても良いのか、ということ。Care Accessの担当施設を除外したデータはあるのだろうから、支持的証跡として審査対象になるのだろう。LYMErixの経験を踏まえると、安全性や感染者の再感染時の転帰なども気になるところだ。
リンク: 両社のプレス・リリース
リンク: VALOR試験の登録内容更改履歴(ClinicalTrials.gov)
リンク: 両社のプレス・リリース(23年2月17日付、治験デザイン変更について)
リンク: Care Accessのプレス・リリース(23年2月17日付、ファイザーの決定に関して)
リンク: Care Accessのプレス・リリース(23年10月11日付、FDAのGCP立入り調査でform 483指摘がなかった件)
Dizal社、ex20挿入変異肺癌の単剤一次治療試験が成功
(2026年3月21日発表)
Dizal(SHEX:688192、迪哲医药) はZegfrovy(sunvozertinib)が第3相WU-KONG28試験で主評価項目等を達成したと発表した。適応拡大申請に向かう考え。
選択的、不可逆的EGFR阻害剤。23年に中国で承認され、25年7月には米国でも、白金ベース化学療法中または後に進行したEGFRにエクソン20挿入変異を持つ成人の局所進行/転移非小細胞性肺癌に用いることが加速承認された。今回の試験は米中欧亜の施設で、再発治療ではなく一次治療としての便益を白金ベース化学療法と比較した。主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)や副次的な確認ORR(客観的反応率)なども有意に上回った。数値は未公表。
エクソン20挿入変異を標的とする治療薬は、ジョンソン エンド ジョンソンのRybrevant(amivantamab-vmjw)をcarboplatin及びpemetrexedと併用することが24年に米欧日で承認されている。シェア争いをしていた武田薬品のExkivity(mobocertinib)は今回と同様な単剤投与による市販後薬効確認試験がフェールし承認返上となった。
リンク: プレス・リリース
【承認申請】
アレキサンダー病のアンチセンス薬を承認申請
(2026年3月23日発表)
Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)はION373(zilganersen)を米国でアレキサンダー病用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年9月22日。
アレキサンダー病は運動機能や認知機能などに影響する100~300万人に一人の超希少難病。患者の9割でアストロサイトを支えるグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)の遺伝子変異が見られる。ION373はGFAPのアンチセンス薬。日本を含む8ヶ国の施設で1歳半から53歳の患者54人を組入れて髄腔内投与したピボタル試験(第1~3相用量漸増試験)で主評価項目である50mg投与例の61週10メートル歩行テストの成績が偽薬群比33%上回った(p=0.0412)。副次的評価項目の進行遅延なども好ましい傾向が見られた模様。忍容性は良好だった模様。
リンク: プレス・リリース
遅報:kit阻害剤を全身性肥満細胞症に承認申請
(2026年3月16日発表)
Cogent Biosciences(Nasdaq:COGT)は米国でCGT9486(bezuclastinib)を非進行全身性肥満細胞症用薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は26年12月30日。Plexxikon社(後に第一三共が買収)からライセンスしたc-kit阻害剤で、承認申請を意図したSUMMIT試験のパート2で全般症状尺度の改善が偽薬を有意に上回り、より多くの患者が肥満細胞活性のバイオマーカーである血清トリプターゼの半減を達成した。有害事象は毛髪変色や味覚異常、悪心、ALT/AST上昇など。
進行した全身性肥満細胞腫の承認申請用試験も主目的(客観的反応率)を達成しており今上期中に承認申請する考え。また、c-kit阻害剤imatinib不応不耐のGIST(消化管間質腫瘍)にVEGFR阻害剤sunitinibと併用した第3相PEAK試験もPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン16.5ヶ月とsunitinibだけの群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオ0.50と良好な結果が出ており、4月にローリング承認申請を完了する計画だ。
リンク: プレス・リリース
遅報:田辺三菱由来の降圧剤を承認申請
(2026年3月9日発表)
米国フィラデルフィア州のMineralys Therapeutics(Nasdaq:MLYS)は米国でMLS-101(lorundrostat)を高血圧治療薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は26年12月22日。
21年に田辺三菱製薬(当時)からライセンスしたCYO11B2阻害剤で、コルチゾールなどに影響せずにアルドステロンの合成を阻害できる。2~5剤服用しても管理不良な高血圧症患者に追加投与した第3相Launch-HTN試験で第6週最大高血圧(自動測定器を用いて医療施設で測定)が偽薬比9.1mmHg低下した。有害事象は高カリウム血症など。
尚、同剤の睡眠時無呼吸における症状改善作用を探索した第2相がフェールしたことも公表された。
リンク: プレス・リリース
【承認審査・委員会】
3月のCHMP決定
(2026年3月27日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: プレス・リリース
フェリング・ファーマシューティカルズのAdstiladrin(nadofaragene firadenovec) は成人のBCG不応筋層非浸潤膀胱癌(CIS w/wo乳頭腫)用薬。遺伝子組換え型アデノウイルス5型をベクターとして、インターフェロン・アルファ2bの遺伝子を導入する。3ヶ月毎膀胱内注入。米国では22年に承認、日本でも昨年9月、承認申請された。
アムジェンのImdylltra(米国ではImdelltra、日本はイムデトラ、tarlatamab)は進展型小細胞性肺癌の二次治療薬。小細胞性肺癌の8割が発現するDLL3とTCRのCD3を架橋するTセル・エンゲイジャーで、24年に三次治療薬として米国で加速承認、日本で承認、されている。今回のエビデンスである第3相DeLLphi-304試験では死亡リスクが各地の標準療法薬と比較して有意に低下した。
オランダのPharming(Euronext Amsterdam:PHARM)のJoenja(leniolisib)は活性化PI3Kデルタ症候群(APDS)用薬。米国では23年に承認されたが、EUは22年の申請から3年半経ち、今月承認の日本にも後れを取った。例外的環境下承認で、12歳45kg以上の未成年と成人が適応になる。31人の単群試験でリンパ節腫脹が改善したが、この疾患の主要な合併症である感染症の頻度を抑制する作用は示されていない。尚、4~11歳は日本では適応追加されたが米国は審査完了となっている。
スペインのPharma MarのZepsyre(米ではZepzelca、lurbinectedin)は進展期小細胞性肺癌の維持療法用薬。atezolizumab、carboplatin、etoposideによる一次治療導入療法後にatezolizumabと共に投与する。IMforte試験で全生存期間のハザード・レシオがatezolizumabだけの群比0.73だった。米国では導出先のJazz Pharmaceuticalsが20年6月に単剤で再発治療に加速承認を取得、昨年10月に今回の用途で適応拡大している。
ダブリン籍の小児用薬会社、Proveca Pharmaが申請したBopediat(furosemide)は、フランスでは49年前に承認されたループ利尿薬、Lasilixの活性成分を用いた口内分散性新製剤。新生児から17歳までの小児の心臓や腎臓を起源とする浮腫、肝原性浮腫、そして慢性腎疾患患者の高血圧治療に用いる。
適応拡大が支持されたのは以下の通り。
承認申請が撤回されたのはNYのAnavex Life Sciences(Nasdaq:AVXL)のANAVEX2-73(blarcamesine)。sigma-1受容体アゴニストで、会社側は22年12月に後期第2相/第3相AD-004試験が成功と発表したが、CHMPによると共同主評価項目がどちらもフェールした。同社は25年12月の否定的意見を再検討するよう請求したが、結果を待たず撤回した。
適応範囲縮小が推奨されたのは、SIGA Technologies(Nasdaq:SIGA)のTecovirimat SIGA(米国製品名はTOPX)X。22年1月に例外的環境下承認を取得したが、適応となる体重13kg以上の小児と成人のオルソポックスウイルス疾患のうち、エムポックスを除外し天然痘などに限定するよう欧州委員会に推奨した。散発的にしか流行しないことなどの理由で、霊長類における死亡抑制作用に基づき承認したが、その後に実施された大規模な試験4本の何れでも罹患期間を短縮できなかった。米国では霊長類試験に基づき18年に体重3kg以上の小児と成人の天然痘薬として承認。日本では日本バイオテクノファーマが承認申請し、24年12月に痘そうやエムポックスなどの治療薬として承認された。
リンク: プレス・リリース
【承認】
白血球接着不全症1型用薬が承認
(2026年3月27日発表)
Rocket Pharmaceuticals(Nasdaq:RCKT)は、FDAがKresladi(marnetegragene autotemcel)を小児の重度LAD-1(白血球接着不全症1型)用薬として加速承認したと発表した。HLA適合近親ドナーがいない、ITGB2遺伝子に両アレル変異を持つ患者が適応になる。LAD-1は常染色体性劣性遺伝性小児疾患で、白血球が血管に接着し組織移行するのを助けるベータ2インテグリンのCD18サブユニットをエンコードするITGB2遺伝子に変異があり、命に係わる感染症を繰り返す。米国の新生児の10~20万人に一人が罹患する希少疾患で、この2/3が重度とのこと。Kresladiは自家造血幹細胞にex vivoでレンチウイルス・ベクターを用いてITGB2遺伝子を導入する遺伝子療法。スペインのCIEMAT(エネルギー環境技術研究センター)などからライセンスした。
9人の第1/2相試験で重度感染症や全入院が治療前より大きく減少した。23年10月に承認申請されたが、製造関連の理由で審査完了通知を受領するなどして承認まで2年半かかり、好中球のCD185やCD11aの発現増というサロゲート・マーカーに基づく加速承認に留まりった。市販後コミットメントは被験者の長期追跡と市販後レジストリー調査。
取得した希少小児疾患優先バウチャは売却する考え。想定施術数は年数件とのこと。
リンク: プレス・リリース
アウィクリが米国でも承認
(2026年3月26日発表)
ノボ ノルディスクはFDAがAwiqli(insulin icodec-abae)を成人の二型糖尿病の治療薬として承認したと発表した。ヒト・インスリンのアミノ酸配列を一部置換・除去して週一回の投与で足りるようにした長期作用性製品で、欧州と日本では夫々24年5月と6月に一型糖尿病を含め承認されたが、米国は製造に関する問題と一型糖尿病におけるリスクがネックとなり、24年7月に審査完了通知を受領、25年に二型糖尿病限定で再申請していた。
一日一回投与型インスリンと比較した第3相試験では低血糖症の発生率が上回り、特に一型糖尿病で顕著だった。このため、一型糖尿病が適応になる欧州でも便益が明白な場合だけに用いるよう釘を刺しており、日本でも一型には慎重投与、二型は一型ほどの発生頻度ではないものの同様な傾向にあることを考慮するよう、推奨している。
リンク: プレス・リリース
ハンター症候群のBBB通過性酵素補充療法が承認
(2026年3月25日発表)
FDAはDenali Therapeutics(Nasdaq:DNLI)のAvlayah(tividenofusp alfa-eknm)を体重5kg以上のハンター症候群の治療薬として加速承認した。神経性疾患が未だ進行していない段階で治療を開始する。FDAや同社のプレス・リリースによるとハンター症候群の神経症状治療薬が承認されたのは初。しかし、脳脊髄液ヘパラン硫酸というサロゲート・マーカーに基づく承認なので、進行中の第2/3相COMPASS試験でVineland Adaptive Behavior Scale改善作用を確認するまで神経症状治療薬とは呼べないのではないか?
日本で21年に承認されたJCRファーマのイズカーゴ(pabinafusp alfa)と同様なアイディアで、ハンター症候群で欠如するライソゾーム酵素、iduronate-2-sulfataseをトランスフェリン受容体に結合するFc領域と融合することにより中枢神経通過性を持たせた。週一回、3mg/kg点滴静注で開始し15mg/kg(4時間点滴静注)を目標に漸増する。枠付き警告はアナフィラキシーを含むアレルギー反応。所定の頻度でヘモグロビン値や腎機能、尿蛋白を検査する。報道によると150mgバイアルのWAC(問屋取得価格)は5200ドル。同社は希少小児疾患優先審査バウチャを取得した。
ハンター症候群用薬といえば、Regenxbio(Nasdaq:RGNX)がRGX-121(clemidsogene lanparvovec)を脳脊髄液ヘパラン硫酸のD2S6コンポ―ネント抑制作用に基づき承認申請したが、2月に審査完了通知を受領した。臨床試験の組入れ基準や自然歴対照試験の妥当性に加えて、D2S6のサロゲート・マーカーとしての妥当性などにFDAは疑問を呈していた。今回の判断と一貫性があるのか、部外者にはよく分からないが、RGX-121は遺伝子療法なので審査はCDER(小分子薬や抗体医薬を所管)ではなくCBER(生物学的製剤を所管)が担当したこと、そして4月に退任するCBERのヘッドはサロゲート・マーカーに基づく加速承認に慎重な傾向が見られることが関連している可能性もあるだろう。
リンク: プレス・リリース
グルココルチコイド受容体拮抗剤が卵巣癌に承認
(2026年3月25日発表)
FDAはCorcept Therapeutics(Nasdaq:CORT)のLifyorli(relacorilant)を成人の、bevacizumabを含む1~3次全身性治療歴を持つ、白金抵抗性上皮性卵巣癌、卵管癌、原発性腹膜癌向けに承認した。nab-paclitaxelと併用する。グルココルチコイド受容体拮抗剤で、nab-paclitaxelを投与する前日、当日、翌日に150mgを経口投与して、コルチゾールがpaclitaxelの作用を妨げないよう抑制する。第3相ROSELLA試験でメジアン生存期間が16.0ヶ月とnab-paxlitaxelだけの群の11.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.65、p=0.0004だった。
命に係わる症状に対処するためにコルチコステロイド治療が必要な患者は禁忌。警告注意は好中球減少症、重度感染症、副腎不全など。添付文書には低血圧や血圧低下は言及されていない。
審査期限より3ヶ月半早く承認された。報道によると28日サイクル分のWACは37900ドル。欧州でも昨年10月に承認申請された。
このグルココルチコイド受容体拮抗剤は、今回の適応より先に、副腎皮質ホルモン過剰症による高血圧症の治療薬として承認申請されたが、用途が異なるせいか、第3相試験の高血圧サブグループのデータに基づいているせいか、便益が危険を上回るとは確立していないとして昨年12月に審査完了通知を受領していた。この第3相では100mg一日一回経口投与で開始し400mgに漸増しており、卵巣癌試験とは用量や投与頻度が異なる。
リンク: プレス・リリース
【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】
| PDUFA | |
|---|---|
| 26/3推 | サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件) |
| 26/3推 | Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件) |
| 26/3/29 | LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤) |
| 26/4推 | アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症) |
| 26/4/3 | バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加) |
| 26/4/6 | Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植) |
| 26/4/10 | ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫) |
| 26/4/13 | Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加) |
| 26/4/23 | サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤) |
| 26/4/23 | Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血) |
| 26/4/28 | MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症) |
| 26/4/29 | サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病) |
| 26/4/30 | Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂) |
| 26/5推 | GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防) |
| 26/5推 | ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫) |
| 26/5推 | WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症) |
| 26/5/10 | argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症) |
| 26/5/18 | 第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法) |
| 26/5/24 | エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除) |
| 諮問委員会 | |
| 26/4/3 | 腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib) |
今週は以上です。