2026年5月16日

第1259回

【ニュース・ヘッドライン】

  • CNPV案件が今年どこかで諮問委員会上程 
  • イミフィンジの3種類目のMIBC試験が成功 
  • Regenxbio、DMDの遺伝子療法薬を承認申請へ
  • アストラゼネカ、PTHR1アゴニストの第3相が成功 
  • Regeneron社、抗LAG-3抗体の最初の第3相がフェール 
  • 遅報:GSK、米国でもB型肝炎新薬を承認申請 
  • SIGA・EMA、エムポックスにテコビリマトを使うな 
  • テセントリクがctDNAでスクリーニングされた患者向けに承認 
  • エンハーツ、乳癌切除術の術前療法と術後療法が承認 
  • 大鵬の合剤が新患AMLに適応拡大 
  • BeOne社、bcl2阻害剤がMCLに承認 
  • ファセンラがHESに適応拡大
  • ウィフガート、全身性重症筋無力症における限定が解除 
  • ヒムペブジがEUでインヒビター保有血友病に適応拡大 
  • FDA:タズベリクの二次原発腫瘍リスクは思っていたより高い 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


CNPV案件が今年どこかで諮問委員会上程
(2026年5月12日発表)

FDAは、ホームページで、内分泌代謝学薬諮問委員会の開催予定を公表した。サノフィのTzield(teplizumab-mzwv)の適応拡大申請に関わるもので、昨年10月にCNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)指定を受け、順調なら26年初めにも承認されていたはずだが、音沙汰がない。今回の発表も前例と異なり、アジェンダは記されているが日程は26年末までに開催としか書かれていない。まあ、第2次トランプ政権下のFDAは前例を次々と打ち破っているし、もしかしたら、FDA委員長のMarty Makaryが突如退任したことも影響しているのかもしれない。本当に、今のFDAはお騒がせだ。

この抗CD3抗体は、イフェクターT細胞を抑制し抑制的T細胞を強化することで一型糖尿病患者のベータ細胞がT細胞に攻撃されるのを抑制する。22年に米国で、26年1月にはEUでも、8歳以上のステージ2(OGTT検査で血糖値が高めだが糖尿病判定基準より低い)一型糖尿病がステージ3(口渇など症状を合併する)に進行するのを遅らせる薬として承認された。米国では4月に対象年齢が1歳以上に広がった。

新用途は、8歳以上の最近ステージ3と診断された1型糖尿病患者の進行抑制。第3相試験でベータ細胞機能の指標である負荷後Cペプチド濃度が78週に偽薬を有意に上回った。25年10月に承認申請が受理されたが順調ではない様子で、1月のロイター報によれば、癲癇や血栓、死亡事例が見られたことことがネックになっている。5月には、専門メディアが、CDER(小分子薬と一部のバイオ薬の承認審査を担当)の担当部門は承認を支持したがヘッドであるTracy Beth Høegが否定的であるため、サノフィがCNPV指定を解除するよう要請したと報じた。

Tzieldは、40年前に米国で急性拒絶反応治療薬として承認された世界初の抗体医薬であるマウス・モノクローナル抗体、Orthoclone OKT3(muromonab-CD3)のアミノ酸二つを置換して免疫刺激性を緩和したヒト化抗体。Ala-Alaの愛称で長い試験歴を持つ。当方の把握している範囲では、2005年にMacroGenicsがTolerance TherapeuticsからIPを取得、2007年にイーライリリーがライセンスし第3相を実施したがフェールし2010年に返還、2018年に全資産を取得したProvention Bioが2021年に承認申請し、障壁を乗り越えて翌年に承認に漕ぎ着けた。今年1月にはEUでも承認。サノフィは23年に同社を29億ドルで買収して入手した。25年売上高は6300万ユーロ。

リンク: プレス・リリース

【新薬開発】


イミフィンジの3種類目のMIBC試験が成功
(2026年5月14日発表)

アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)が第3相VOLGA試験の中間解析でEFS(無イベント生存率)や全生存期間を達成したと発表した。標準療法群(膀胱全摘、承認されている術後補助療法可)比で統計的に有意な且つ臨床的に意味のある改善を見た。抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab-actl)を併用した群もEFSが有意且つ臨床的に意味のある成績を上げたが全生存期間は今回の中間解析では改善トレンドに留まった。データは未発表。

この試験は、白金薬レジメンに不適/拒否のMIBC(筋層浸潤性膀胱癌)を対象に、ファイザー/アステラス製薬の抗Nectin-4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin)による術前療法とimfinziによる術前術後療法レジメンや、術前Padcevと術前術後Imfinzi・Imdudo併用のレジメンを、標準療法群と比較した。ClinicalTrials.govには主評価項目としてEFSのほかに安全性ベンチマークが多数列挙されており、2~3剤併用の忍容性も重要な観察事項であることが窺われる。

Imfinziは白金薬レジメンが適応になるMIBCに術前術後投与した第3相アドオン試験が成功、25年に米欧日で適応拡大が承認された。TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を受けた筋層未浸潤膀胱癌のBCG併用試験もDFS(高リスク疾患無再発/進行生存期間)を達成している。

リンク: プレス・リリース


Regenxbio、DMDの遺伝子療法薬を承認申請へ
(2026年5月14日発表)

Regenxbio(Nasdaq:RGNX)はRGX-202がAFFINITY DUCHENNE試験の承認申請用部分で主目的を達成したと発表した。加速承認申請に向かう考え。発表を受けて株価が急騰したが、値下がりに転じて引けた。

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)で欠乏するジストロフィンの代わりに、短縮したマイクロジストロフィンの遺伝子をAAV8ベクターで患者に導入する、遺伝子療法。類薬であるSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)と異なり、筋細胞発現を増強する意図でC端末ドメインも持たせている。今回の解析は北米の1歳以上の歩行可能なDMD患者30人における12週後のマイクロジストロフィン発現量を検討したもの。93%の患者が正常水準の10%以上という目標を達成した。閾値は不明だが、統計的に有意とのこと。平均で正常水準の71%に到達し、Elevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)があまり良い成績を上げられなかった8歳以上の患者でも41%と良好な成果を上げた。また、発現率と臨床的評価(NSAAや10メートル歩行走行テストなど)の相関性分析も9名の中間解析が成功した。更に、NSAAなどに関する外部対照検定でも統計的に有意な改善が見られた。

深刻有害事象は亜急性心筋梗塞と無症候性肝障害が1例ずつ発生した。株価下落はこれが原因のようだ。

第2次トランプ政権下のFDAではSareptaが承認されたのだからRegenxbioも行けるはずとは言えない、と言っているうちに政治任命された上層部が続々と退任し、暗雲が薄れたのか違う色が塗り重ねられたのか、何とも予見し難い状況になっている。

リンク: プレス・リリース


アストラゼネカ、PTHR1アゴニストの第3相が成功
(2026年5月12日発表)

アストラゼネカは昨年3月にAZP-3601(eneboparatide)の第3相CALYPSO試験が成功したと発表したが、今回、データをECS(欧州内分泌学学会)で公表した。副甲状腺ホルモン受容体1のアゴニストで、一日一回、皮下注する。第3相のデザインは複雑で、成人の標準療法による治療を受けている慢性副甲状腺機能低下症患者202人を試験薬と偽薬に2対1割付けして24週間追加投与した。標準療法のうち活性化ビタミンDは期中に中止、カルシウム製剤も600mg/日以下に減量することを目指した。主評価項目である奏効率は、これらの目標を達成した上で血清カルシウム水準(アルブミン調整後)が目標範囲(8.3~10.6mg/dL)に収まっている患者の比率。試験薬群は31.1%、偽薬群は5.9%となり、有意な差があった。

奏効率の時系列を見ると、当初は上昇するがその後は徐々に低下している。大半の患者で抗薬物抗体が生じ、一部の患者では効果が減衰したとのことなので、カルシウム増量などで対処し奏効とは言えなくなった症例が足を引っ張ったのかもしれない。

この疾患ではアセンディス・ファーマのPTH(1-34)補充療法薬、Yorvipath(palopegteriparatide)などが既に承認されている。奏効率はYorvipathのほうが高く見えるので、第2選択のような位置付けになるのだろう。

リンク: プレス・リリース


Regeneron社、抗LAG-3抗体の最初の第3相がフェール
(2026年5月15日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、抗LAG-3抗体REGN3767(fianlimab)の第3相切除不能局所進行/転移黒色腫1次治療試験がフェールしたと発表した。12歳以上の小児と成人の患者1546人を、同社の抗PD-1抗体Libtayo(cemiplimab)と低量fianlimab(400mg)を併用する群、Libtayoと高量(1600mg)の併用群、Keytruda(pembrolizumab)群、またはLibtayo単剤との違いを見るための参考群に割付けして、併用2群のPFS(無進行生存期間、治験登録上は盲検独立中央評価となっているがプレス・リリースには記載なし)をKeytruda群と比較した。低量群はメジアン9.6ヶ月と良好だったがハザード・レシオは0.931、p=0.4661。高量群は11.5ヶ月とKeytruda群の6.4ヶ月を上回ったがハザード・レシオは0.845、p=0.0627だった。Libtayo単剤群はメジアン6.3ヶ月だった。尚、低量群は組入れ期間が異なるのか、Keytruda群の同時期に組み入れられた症例と比較している。

fianlimabの第3相は高量をLibtayoと併用する効果をBMSの類似併用薬であるOpdualag(nivolumab、relatlimab-rmbw)と比較する第3相Harmony Head-to-Head試験も進行中だが、ClinicalTrials.govによると、主評価項目はORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)。このほかに、PD-L1高発現非小細胞性肺癌のLibtayo併用試験や、黒色腫術後療法試験が進行中。

抗LAG-3抗体はBMSが開発に成功したが、MSDのMK-4280(favezelimab)など、フェールも多い。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


遅報:GSK、米国でもB型肝炎新薬を承認申請
(2026年4月28日発表)

GSKはGSK3228836(bepirovirsen)の承認申請をFDAが受理したと発表した。日本、EU、中国に続いた。優先審査を受け、審査期限は26年10月26日。

Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスした、HBsAg(B型肝炎表面抗原)をコードするmRNAなどを標的とするアンチ・センス・オリゴヌクレオチド。ヌクレオチ(シ)ド・アナログ(NA)による治療を受けている安定した状態の慢性B型肝炎患者を組入れた第3相試験二本で、24週間追加投与→NAだけで更に24週間治療→NAも中止して24週観察し、ファンクショナル・キュア(HBV DNAが24週に亘り定量化下限以下)奏効率を偽薬群と比較した。データは5月下旬のEASL(欧州肝臓学会)で発表する考え。

リンク: プレス・リリース


【承認審査・委員会】


SIGA・EMA、エムポックスにテコビリマトを使うな
(2026年5月11日発表)

SIGA Technologies(Nasdaq:SIGA)とEMA(欧州薬品庁)は、DHPC(直接的医療従事者通知)を発出し、エムポックスの新患にTecovirimat SIGA(tecovirimat)を用いないよう注意を促した。4本の臨床試験で効果が確認されなかったため。これらの試験は病変が確認された6~9日後に投与を開始しており、遅すぎた可能性があることにも言及している。尤も、裏返せば、動物試験における投与時期が現実の医療とかけ離れているのかもしれないが(敗血病の開発品が臨床試験で続々とフェールした時のように)。

オルソポックスウイルスのVP37エンベロープ蛋白の機能を阻害して感染細胞から出芽できなくする抗ウイルス薬。動物試験に基づき18年に米国で天然痘用薬Tpoxxとして承認。EUでは22年に、日本でも24年12月に、天然痘、エムポックス、そして牛痘の治療と痘そうワクチン接種後のワクシニアウイルス増殖による合併症の治療薬として承認された(EUは例外的環境条項に基づく承認)。

天然痘は発生例が少なく致死率は高いため偽薬対照試験を行うのは人道に反するが、エムポックスは天然痘ほどではなく、一部地域で散発的な流行が見られたため、病変治癒を早める効果を確認する研究者主導試験がEU承認後に4本実施された。ところが、死亡率が比較的高いクレードI型の流行期にコンゴ民主共和国で実施されたPALM 007試験が日本承認の4か月前に当たる24年8月にフェール、クレードII流行期の試験も米国などの施設が参加したSTOMP試験が中間解析を踏まえて24年12月に無益中止、UNITY試験もフェールしたことが25年7月に学会発表され、PLATINUM試験は流行が収まり組入れ中止となった。

エムポックス治療薬は無いため、既に治療を受けている患者は継続できる。また、他の適応は変更なし。

Tpoxxの25年売上高は8800万ドルで前年の1億3300万ドルから減少した。うち、2600万ドルは米国連邦の戦略備蓄(天然痘ウイルス・テロに備える)向け静注用製剤。

リンク: プレス・リリース

【承認】


テセントリクがctDNAでスクリーニングされた患者向けに承認
(2026年5月15日発表)

FDAはロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)の適応拡大を承認した。MIBC(筋層浸潤性膀胱癌)の全摘・リンパ節郭清を受けた患者を12ヶ月間、定期的に血液検査してctDNA(循環腫瘍DNA)が探知されたら1680mgを4週毎、1年間、投与するもの。高リスク患者を素早く発見、素早く治療開始するアイディアだ。コンパニオン診断薬としてNatera(Nasdaq:NTRA)のSignatere CDxも承認された。IMvigor011試験でDFS(無病生存期間、担当医評価)がメジアン9.9ヶ月と偽薬群の4.8ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.64だった。メジアン生存期間も各32.8ヶ月、21.1ヶ月、0.59だった。日本でも中外製薬が承認申請中。

リンク: プレス・リリース


エンハーツ、乳癌切除術の術前療法と術後療法が承認
(2026年5月15日発表)

FDAは第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)に関する二つの適応拡大を承認した。一つは、成人のher2陽性(IHC3+またはISH+)のステージII/III乳癌における術前付随療法。5.4mg/kgを3週毎に4回、その後THPレジメン(paclitaxel、trastuzumab、pertuzumabの併用)を4回施行するもので、日本も参加した第3相DESTINY-Breast11試験で、pCR(病理学的完全反応率)が67.3%と標準療法群(高強度doxorubicin・cyclophosphamideレジメン後にTHPレジメンを施行)の56.3%を有意に上回った。EFS(無イベント生存期間)や全生存期間の解析は統計学的に万全ではなかったり検出力不足であったりするため確立していないが、後述の試験が支持的エビデンスとなった。

もう一つは、her2標的薬による術前療法後に侵襲性残存病変を有していたher2陽性(同上)乳癌に対する術後療法。日本も参加した第3相DESTINY-Breast05試験でIDFS(無侵襲性疾患生存期間)をロシュのKadcyla(trastuzumab emtansine)と比較したところ、ハザード・レシオが0.47、3年無浸潤疾患生存率は各群92.4%と83.7%となった。全生存期間は未成熟で確立していない。

リンク: プレス・リリース


大鵬の合剤が新患AMLに適応拡大
(2026年5月13日発表)

FDAは大鵬薬品のInqovi(decitabine、cedazuridine)を75歳以上、または強化導入療法不適な成人の、新患AML(急性骨髄性白血病)向けに承認した。DNAメチル化阻害剤とその代謝を抑制するシチジンデアミナーゼ阻害剤の固定用量合剤で、20年にMDS(骨髄異形成症候群)用薬として初承認されている。今回の適応拡大は後期第2相ASCERTAIN-V試験で101人にアッヴィ/ジェネンテックのbcl2阻害剤venetoclaxと併用したところ、完全寛解(CR)率41.6%、CR持続期間はメジアン値未達(レンジは0.5~16.3ヶ月)だった。警告注意は骨髄抑制と胚胎毒性。欧州では23年に適応は同じだがこの合剤だけを投与する用法で承認、venetoclax併用は4月にCHMPを通過したところ。

リンク: プレス・リリース


BeOne社、bcl2阻害剤がMCLに承認
(2026年5月13日発表)

FDAはBeOne Medicines(Nasdaq:ONC)のBeqalzi(sonrotoclax)を成人の再発/難治MCL(マントル細胞腫)向けに加速承認した。btk阻害剤を含む2次以上の全身性治療歴を持つ患者が適応になる。bcl2(B-cell lymphoma-2)阻害剤はアッヴィ/ジェネンテックのVenclexta(venetoclax)がCLL(慢性リンパ性白血病)などに承認されているが、MCLでは初めて。メジアン3次治療歴を持つ患者103人を組入れた201試験でORR(客観的反応率)が52%、完全反応率は16%、メジアン反応持続期間は15.8ヶ月だった。Venclextraと同様に腫瘍崩壊症候群のリスクがあり、4週間かけて1mgから320mg一日一回に8段階で用量漸増する。警告注意事項は腫瘍崩壊症候群(漸増しても発生率7%)、深刻感染症(致死的なものの発生率2.6%)、好中球減少症(G3/4発生率18%)など。市販後薬効確認試験は米州欧中豪日などの施設が参加している第3相CELESTIAL-RR MCL試験。抗CD20抗体を含む1~5治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発/難治MCLを組入れて、同社のbtk阻害剤Brukinsa(zanubrutinib)に追加する便益を検討している。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: BeOne社のプレス・リリース


ファセンラがHESに適応拡大
(2026年5月13日発表)

FDAもアストラゼネカもプレス・リリースは出していない様子だが、抗IL-5受容体アルファ鎖ポテリジェント抗体Fasenra(benralizumab)が12歳以上の小児と成人の好酸球増多症候群(HES)に適応拡大した。FDAの承認通知がDrug@FDAサイトで、レーベルがアストラゼネカの商品ウェブサイトで、確認できた。薬物過敏反応や寄生虫/HIV感染症、非血液腫瘍などによる血液学的二次性疾患の場合は適応外。第3相NATRON試験で30mgを4週毎に24週間、皮下注した群はHESフレアのハザード・レシオ(time to the first event分析)が0.35、発生率は19.4%と偽薬群の42.5%を下回った。日本でも4月に第2部会を通過している。

リンク: FDAの承認通知
リンク: 米国のレーベル(アストラゼネカの製品サイト)


ウィフガート、全身性重症筋無力症における限定が解除
(2026年5月8日発表)

アルジェニクスは、FDAが抗FcRn抗体Vyvgart静注用(efgartigimod alfa-fcab)とVyvgart Hytrulo皮下注用(efgartigimod alfa andhyaluronidase-qvfc)を全身性重症筋無力症に承認したと発表した。これまでは患者の8-9割を占める抗AChR抗体陽性患者に限定されていたが、抗MuSK抗体陽性や抗LRP4抗体陽性、そしてこれら何れも陰性のトリプル・セロネガティブに使えるようになった。抗AChR抗体陰性の患者だけを組入れた第3相ADAPT SERON試験で29日MG-ADLが3.35点改善し、偽薬群の1.9点改善より統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を達成した。

リンク: プレス・リリース


ヒムペブジがEUでインヒビター保有血友病に適応拡大
(2026年5月13日発表)

ファイザーは、Hympavzi(marstacimab)が欧州で12歳以上かつ35kg以上の第8因子インヒビターを持つA型血友病と第9因子インヒビターを持つB型血友病に適応拡大したと発表した。TFPI(tissue factor pathway inhibitor)に結合する抗体医薬で、24年に米欧日で12歳以上のインヒビターを持たない先天性A型/B型血友病における出血傾向を抑制する薬として承認されている。

今回の適応拡大は日本でも申請中。米国では6歳以上のインヒビター保有性患者向けと6~11歳の非保有者向けに適応拡大申請中で、6月までに審査結果が出る見込み。

リンク: プレス・リリース

【医薬品の安全性】


FDA:タズベリクの二次原発腫瘍リスクは思っていたより高い
(2026年5月11日発表)

FDAは、イプセンがEZH2(enhancer of zeste homolog 2)阻害剤Tazverik(tazemetostat)を自主回収していることに注意喚起した。20~25年に米、日、中でEZH2遺伝子変異陽性の濾胞性リンパ腫など向けに承認されたが、米国の加速承認後コミットメント試験であるSYMPHONY-1(難治/再発濾胞性リンパ腫の2次治療、lenalidomideおよびrituximab併用)で二次原発腫瘍(SPM)の発生率が高かったため。

米国の添付文書には加速承認までの臨床試験で729人中0.7%がMDS(骨髄異形成症候群)やAML(急性骨髄性白血病)を発症したと記されているが、今回のFDAリリースによると、承認段階でのSPM発生率は1.7%だった。SYMPHONY-1試験では、併用試験であることも影響したのか、318人中18人、5.7%に上昇した。

中国で販売するHutchmedも、日本の開発販売権を持つエーザイも、販売中止を表明している。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
26/5推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
26/6/18アストラゼネカのTruqap(capivasertib、PTEN欠乏HSPC)
26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
26下推ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26下推ギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy、laur/mTNBC1L PD-L1阻害剤不適向けと併用)
26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/7推JNJのTremfya(guselkumab、乾癬性関節炎における関節損傷抑制効能追加)
26/7推武田薬品のPTG-300(rusfertide、真性多血症)
26/7推ロシュのRG6171(giredestrant、内分泌療法及びCDK4/6i歴のあるER+her2-la/mBC)
26/7推Ultragenyx PharmaceuticalのUX111(rebisufligene etisparvovec、ムコ多糖症IIIA型)
26/7/3Ascelia Pharma ABのOrviglance(manganese chloride tetrahydrate、重度腎障害患者の肝MRI造影剤)
26/7/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
26/7/7Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、her2陽性固形癌)
26/7/7Vera Therapeuticsのatacicept(IgA腎症)
26/7/17Celcuityのgedatolisib(HR+her2-進行乳癌)
26/7/23Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
26/7/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
26/7/24大塚製薬のcentanafadine(ADHD)


今週は以上です。

2026年5月9日

第1258回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • アンデス・ウイルスのアウトブレイク発生 
  • 心ミオシン阻害剤が閉塞なき肥大性心筋症にも有効 
  • Viridian社、抗IGF-1R抗体の二つ目の第3相が成功 
  • 原発性硬化性胆管炎用薬の承認申請を相談へ 
  • HyQviaより早く投与できる新製剤の第3相が成功 
  • gedatolisibはPIK3CA変異型乳癌にも有効 
  • 抗her2二重特異性抗体と抗PD-1抗体を適応拡大申請 
  • ピエール ファーブル、細胞療法の追加データを提出へ 
  • 抗her2・her3二重特異性抗体の適応拡大が光速承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


アンデス・ウイルスのアウトブレイク発生

オランダのクルーズ船運航会社、Oceanwide ExpeditionsのMV Hondius号で数名がハンタウイルス(確認例は全てアンデス・ウイルス)感染症を発症した。こういう時に、騒ぎすぎると風評被害を招きかねない。しかし、沈黙するとSNSで誤った、あるいは誇張された、情報が広がりかねない。今回は、WHOやOceanwide社、米CDC(疾病管理予防センター)の発表や、BBC報道などを踏まえて、推移などを記録に残す。

これまでの経緯
  • 26年4月1日、MV Hondius号が乗客114人とともにアルゼンチンのUshuaiaを出航。西太平洋の諸島を巡る。途中で6人が乗船し乗客は120人に。

  • 4月11日、オランダ籍成人男性(WHO症例1)が呼吸逼迫症候群により死去。微生物学的検査は実施されておらず、アンデス・ウイルス感染症可能(probable)例と判定される。乗船前に南米旅行で妻(症例2)とバードウオッチングなどを行い、Ushuaiaの、ハンタウイルスのキャリアとなり得るラットの生息地も訪問していた由。

  • 4月14日、Tristan da Cunhaで成人男性(症例8)が下船。その後、4月28日に下痢を発症、2日後には発熱も。5月8日時点では安定した状態で隔離継続。感染可能例として検査中。

  • 4月24日、英国領Saint Helena島に停泊中に、30人(英国人7人、米国人6人など)が下船(症例1と症例2も含む)。この時点ではアンデス・ウイルス感染症の懸念は浮上していなかった。5月6日、下船者1名(症例7)がハンタウイルス(アンデス・ウイルス)に感染と確認されチューリッヒ大学病院に入院。その妻も自主隔離を開始。

  • 同日、英国籍成人男性(症例3)が肺炎症状で船医の診察を受ける。症状が悪化し、4月27日にAscension Islandで隔離下船、南アフリカで入院した。当初の検査(an extensive respiratory pathogen panel)では陰性だったが、5月2日、PCR検査でアンデス・ウイルス感染が確認された。5月8日時点でもICU入室中。

  • 4月26日、4月11日死亡者の妻(症例2)が救急病院で死去。後のPCR検査でアンデス・ウイルス感染が確認された。

  • 4月27日、船舶ガイドの成人男性(症例6)が軽度呼吸器/消化器症状を発症。PCRでアンデス・ウイルス感染が確認。

  • 4月28日、ドイツ国籍の成人女性(症例4)が発熱。肺炎を合併し5月2日に死去。オランダにおける検体検査でアンデス・ウイルス感染が確認。

  • 4月30日、同船の船医である成人男性(症例5)が発熱など発症。5月6日にオランダで入院・隔離。PCRでアンデス・ウイルス感染が確認。

  • 5月2日、WHOにハンタウイルス感染症のクラスター発生が報告される。

  • 5月6日、無症状だが5月2日死亡者に濃厚接触した1名が症例5および6と共に下船、7日までにオランダの医療施設に入院(ドイツ籍女性は後にデュッセルドルフの病院に転院)。うち1名はPCRと血清学的検査で陰性であったため可能例ではなくなったが、潜伏期間が長いため継続観察中。

  • 5月6日、MV Hondiusが、スペイン当局の承諾を得て、Canary IslandsのTenerife島Granadailla港に向けて出港。現地では反対運動が起きている。

5月8日時点で、確認例は8例(うち2人死亡)、可能例は2例(死亡1人、検査中1人)となっている。

CDCによると、ハンタウイルスは感染齧歯類の糞尿や唾液、汚染された土壌に接触したりエアロゾルを吸入して感染することが多い。曝露から発症まで1~8週間と区々だが、典型的には2~4週間。米州地域では25年に8ヶ国で229例が報告され、59人(26%)が死去した。HPS(ハンタウイルス肺症状)を伴う事例が多く、呼吸器症状を合併すると死亡率38%。欧州地域では23年に1885例が報告され、東アジアでは、中国や韓国などで、HFRS(腎症状を伴うハンタウイルス出血熱)が年数千例発生している。欧州もHFRS型が多く、原因株がHantaan株やDobrava株の場合は致死率5-15%、Seoul株などでは1%未満と、HPS型よりかなり低い。

印象的なのは、米国当局の動きがほとんど報じられていないことだ。アウトブレイク発生前に下船した6人のうち一部は州政府の担当者がコンタクトし自主隔離していることを確認した模様だが、先頭に立つべきCDCは、第2次トランプ政権下で大規模なリストラが断行されたせいか、ケネディHHS長官が病気や医療に関して独自の見解を持っているせいか、最低限の情報提供しかしていない。

BBCはオランダで入院した英国籍乗員の実名を本人の許可を得た上で報じている。アウトブレイクが表面化する前に下船した英国籍7人についても、6人が自主隔離又は帰国していないことを確認し、所在不明の1名についても帰国していないことを確認している。日本人乗船者は一人だけであるようなので報道の扱いは難しいだろう。2009年新型インフルエンザの時の神奈川の学生のような被害を繰り返してはいけないが、情報が無いことほど不安や疑念、パニックを招くものはないので、ワクチン効果(少量暴露させることで感染時のパニックを防ぐ)を狙って概要だけ発表してもよいのではないか。

リンク: WHOのニュース(5/8付)
リンク: CDCのアンデス・ウイルス情報(5/8付)
リンク: BBCサイトの関連情報(5/8アクセス)
リンク: MV Hondius号(写真)

【新薬開発】


心ミオシン阻害剤が閉塞なき肥大性心筋症にも有効
(2026年5月5日発表)

Cytokinetics(Nasdaq: CYTK)はMyqorzo(aficamten)が第3相ACACIA-HCM試験で主目的を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。

25~26年に米中欧で症候性閉塞性肥大型心筋症の治療薬として承認された、アロステリック可逆的心ミオシン阻害剤。ミオシンとアクチンの過剰な架橋を抑制し心筋の伸縮性を改善する由。今回の試験は症候性非閉塞性の肥大性心筋症患者516人を組入れて、20mg一日一回経口投与を目標に心エコーで確認しながら滴定する群と偽薬群の36週Kansas City Cardiomyopathy Questionnaire Clinical Summary ScoreとpVO2(最大酸素摂取量)を比較したもの。前者は各群11.4点と8.4点、群間差3.0点、p=0.021。後者は+0.64mL/kg/分と-0.03mL/kg/分、群間差0.67mL/kg/分、p=0.003だった。

日本市場はバイエルがライセンスしている。この試験は日本も参加したはずだが、上記症例数等は日本以外のデータのようだ。

リンク: プレス・リリース


Viridian社、抗IGF-1R抗体の二つ目の第3相が成功
(2026年5月5日発表)

Viridian Therapeutics(Nasdaq:VRDN)は抗IGF-1R抗体VRDN-001(veligrotug)を活動期甲状腺眼症の点滴静注用薬として米欧で承認申請中で、米国では審査結果が6月30日までに判明する見込みだが、慢性期甲状腺眼症の第3相も成功したことを明らかにした。活動期の第3相では発症後15ヶ月以内でClinical Activity Score(CAS)が3点以上の患者113人を組入れたが、慢性期試験では発症から15ヶ月以上経った患者188人をCAS不問で組入れた。用量用法は10mg/kgの30分点滴静注を3週毎に5回で同じ。主評価項目もPRR(眼球突出応答率)で同じだが定義は若干異なるようだ。結果は、試験薬群が56%、偽薬群は8%で、活動期試験の70%対5%と概ね似たような結果になった。

類薬はアムジェンの抗IGF-1R抗体Tepezza(teprotumumab-trbw)が20~25年に米日欧で承認されている。3週毎に60~90分点滴静注と一回の拘束時間がveligrotugより長い。Xeris Biopharma社の技術を用いて開発した、5分弱の皮下注を2週毎投与する新製剤の第3相偽薬対照試験が4月に成功しており、競争力の先行きは分からなくなっている。

リンク: プレス・リリース


原発性硬化性胆管炎用薬の承認申請を相談へ
(2026年5月4日発表)

Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)はvolixibatが後期第2相VISTAS試験で主目的等を達成したと発表した。今夏にFDAと承認申請前会議を持つ考え。

武田薬品グループのシャイアがサノフィからライセンスした胆汁酸輸送体阻害剤を18年にライセンスしたもの。今回の試験は原発性硬化性胆管炎(PSC)患者158人を組入れて、20mgを一日一回経口投与する効果を偽薬と比較したもの。主評価項目は、ベースライン時点の掻痒がAdult Itch Reported Outcome尺度に基づき中度以上と評価された111人におけるItchR0(最終12週間における、各週で最も重かった日のスコアの平均値を採用)。2.72点改善し、偽薬群の1.08点を有意に上回った。G3以上の治療時発現有害事象発生率は13%(偽薬群は11%)、深刻治療時発現有害事象は10%(同6%)だった。

このほかに、原発性硬化性胆汁鬱滞症(PSC)の第3相も進行中。

リンク: プレス・リリース


HyQviaより早く投与できる新製剤の第3相が成功
(2026年5月4日発表)

武田薬品はTAK-881の第2/3相原発性免疫不全症試験で主目的を達成したと発表した。27年3月期中に日米欧で承認申請する考え。13~14年に欧米で、24年には日本でも承認されたHyQvia(遺伝子組換えヒト・ヒアルロニダーゼ含有皮下注用血漿由来人免疫グロブリン10%製剤)の濃度を20%に高め点滴時間を短縮できるようにした新製剤。薬物動態をHyQviaと比較したところ、非劣性だった。

リンク: プレス・リリース(Business Wire)


gedatolisibはPIK3CA変異型乳癌にも有効
(2026年5月1日発表)

米国のCelcuity(Nasdaq:CELC)はgedatolisibが第3相試験のPIK3CA変異型コフォートで主目的を達成したと発表した。データは6月2日にASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表する予定。

PI3K/AKT/mTOR経路をPI3KとmTORC1/2の両方から締め上げる静注用薬。ワイス時代の開発品をファイザーからライセンスした。ホルモン受容体陽性、her2陰性でアロマターゼ阻害剤とCKD4/6阻害剤歴を持つ進行乳癌を組入れる第3相VIKTORIA-1試験のPIK3CA遺伝子に変異の無いコフォートでfulvestrant併用群とfulvestrant・palbociclib併用群がfulvestrant群比PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を達成、25年11月に承認申請された。今回、PIK3CA変異コフォートにおいても同様な2剤併用と3剤併用のPFS(同)が対照群(fulvestrantとalpelisibの併用)を統計的に有意かつ臨床的に意味のある改善を見た。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


抗her2二重特異性抗体と抗PD-1抗体を適応拡大申請
(2026年4月27日発表)

Jazz Pharmaceuticalsとビーワン・メディシンズは、夫々、her2標的二重特異性抗体Ziihera(zanidatamab-hrii)と抗PD-1抗体Tevimbra(tislelizumab)を米国で胃食道腺腫の一次治療に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、Jazzによると、Ziiheraの審査期限は26年8月25日。Tevimbraも同じではないか。

日本も参加した第3相HERIZON-GEA-01試験に基づくもの。切除不能局所進行/難治/転移性でher2陽性の胃・胃食道接合部・食道腺腫の一次治療を受ける914人を組入れた試験でZiihera群とZiihera・Tevimbra併用群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を化学療法・trastuzumab併用群と比較したところ、ハザード・レシオが各0.65と0.63、メジアン値はどちらも12.4ヶ月(対照群は8.1ヶ月)となった。一方、共同主評価項目である全生存期間の中間解析におけるハザード・レシオはZiihera群が0.80、p=0.0564、Ziihera・Tevimbra併用群が0.72、p=0.0043となり、メジアン値も24.4ヶ月と26.4ヶ月(対照群は19.2ヶ月)と、併用群の数値のほうが良かった。次回の解析は26年央の見込みとのことなので、審査期限に間に合うか、微妙なところ。

リンク: Jazz社のプレス・リリース

【承認審査・委員会】


ピエール ファーブル、細胞療法の追加データを提出へ
(2026年5月7日発表)

ピエール ファーブルは、1月にFDAから審査完了通知を受領した他家細胞療法薬Ebvallo(tabelecleucel)に関するアップデートを行った。審査完了後に行われるタイプA会議で、適切な外部対照試験に基づく申請が容認された。同社は第3相非対照試験、ALLELEの追加症例や継続追跡データなどを添えて再承認申請する考え。外部対照試験を行う、あるいは提出する、とは記されていないためちぐはぐな印象を受ける。FDAで生物学的製品の承認審査を担当するCBER(Center for Biologics Evaluation and Resaerch)のトップが4月に退任したため、流れが変わるか注目されているが、方向転換第1号になるかどうか、当方は懐疑的だ。

ドナー由来のT細胞をエプスタイン・バー・ウイルス(EBV)に感染させたB細胞と会合させ免疫刺激した上で培養したもの。Atara Biotherapeutics(Nasdaq:ATRA)が開発、22年にEUで条件付き承認を取得した。臓器移植や骨髄移植を受けた2歳以上の小児と成人の深刻なEBV陽性リンパ増殖性疾患の二次治療に用いる。上記試験で臓器移植後に発症しrituximabと化学療法歴を持つ16人のうち9人がORR(最良反応が部分反応以上)、メジアン反応持続期間15ヶ月、造血幹細胞移植後に発症しrituximab歴を持つ14人では7人、23ヶ月だった。

一方、米国はアカデミア主導試験で用いられたバッチと同社製バッチの同等性確認を求められて申請が24年に遅延した。starting materialsの調達先におけるFDA査察で指摘事項があった模様で、一巡目は審査完了となった。同社はリストラや戦略オプションの検討などを行い、調達先における問題の解決を受けて25年に7月に再申請したが、今回、前回の簡素な審査完了通知では言及されていなかった、単群試験一本だけであることを理由に、承認されなかった。この間、EUでの承認や米国での承認申請がピエール ファーブルに移管されている。

リンク: プレス・リリース

【承認】


抗her2・her3二重特異性抗体の適応拡大が光速承認
(2026年5月8日発表)

FDAは、Partner TherapeuticsのBizengri(zenocutuzumab-zbco)の適応拡大を承認したと発表した。her2とher3に結合する二重特異性抗体で、NRG1遺伝子融合により大量に生成されるneuregulin 1がher3に結合し癌化を促すのをブロックする。24年12月に成人の全身性治療中/後に進行した、NRG1遺伝子融合のある、進行/切除不能/転移性の非小細胞性肺癌と膵腺腫に加速承認されているが、今回、同様な特徴を持つ胆管細胞癌が追加された。第2相試験で評価可能19人におけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が36.8%、反応持続期間のレンジは2.8~12.9ヶ月だった。

4月に適応拡大申請され、FDA側が発表しなかったため見落としていたが、5月6日にCNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)を受領、その2日後に承認された。審査期間は1ヶ月足らずと推測され、これまでのCNPV案件よりはるかに短い。元々はオランダのMerus(昨年12月にジェンマブが買収)の開発品でPartner社は初承認の直前に米国商業化権を取得しただけだったが、いつの間にか、FDA認可も取得していた。

リンク: プレス・リリース(Bizengri承認について)
リンク: 同(CNPV案件承認について)

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
26/5推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
26/6/18アストラゼネカのTruqap(capivasertib、PTEN欠乏HSPC)
26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
注:エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期アルツハイマー病、維持療法限定解除)のPDUFAは26年8月24日に3ヶ月延期された。

今週は以上です。

2026年5月2日

第1257回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • FDAがアバコバンの承認取消手続きを開始 
  • ファイザー、BCMA-CD3二重特異性抗体の2次治療試験が成功 
  • ベーリンガー、抗肥満薬の最初の第3相が成功 
  • インサイト、新規JAK1阻害剤の白斑試験が成功 
  • 経口ミノキシジルの第3相脱毛症試験が成功 
  • エキノカンジンの造血幹細胞移植後予防試験が成功 
  • 遺伝性血管浮腫の遺伝子療法試験が成功 
  • こっちのコンパス、第3相は今一つ 
  • Newron Pharmaceuticals、統合失調症第3相が米国だけ部分停止 
  • Immunome、デスモイド腫瘍用薬を承認申請 
  • ギリアド、HIVの2剤合剤を承認申請 
  • リンヴォックを米国でも脱毛症に申請 
  • 大鵬薬品ら、EGFRtk阻害剤を承認申請
  • FDA諮問委員会、アストラゼネカの2品を検討 
  • 新規乳癌用薬が承認も、自社販売はしない考え
  • Axsome社、NMDA受容体拮抗剤がアルツハイマー性アジテーションに適応拡大
  • ビレーズトリが喘息症に適応拡大 
  • JNJ、統合失調症治療薬が7年を経て再燃予防に適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


FDAがアバコバンの承認取消手続きを開始
(2026年4月27日発表)

FDAで小分子薬の承認審査を担うCDER(Center for Drug Evaluation and Research)は、アムジェンに、Tavneos(avacopan)の承認を返上するよう提案した。21年にANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎の治療薬として承認したが、アムジェンの株主代表訴訟の中で、申請内容に不実があったことが発覚した。市販後に深刻な薬物誘導肝障害が数十例、日本などで報告されていることもあり、1月にアムジェンに承認を自主返上するよう要請したが、拒否されたため、時間も手間もかかる承認取消手続きに踏み切ったもの。薬効不十分と結論付けられたわけではなさそうだが、エビデンスがあるとは言えなくなったことや、それ以上に、規制機関を欺くと報いを受けることを広く知らしめる狙いがありそうだ。

EUのCHMPも1月に不正問題の検討を開始している。日本はどうするのだろう?アムジェンのTavneosの25年売上高は4.5億ドル、前年比62%だった。

22年に子会社化したChemoCentryxのC5a受容体拮抗剤で、日本(キッセイ薬品がライセンス)で21年9月に世界初承認され、EU(Vifor Fresenius Medical Care Renal Pharmaがライセンス)でも22年1月に承認された。第3相Adovocate試験はステロイドなどで治療を受けている患者に追加投与したが、同時使用状況が複雑であることなどから、21年5月の諮問委員会でも9人が薬効を支持、9人は不支持、安全性は10人支持、8人不支持と評価が分かれた。それだけに三極承認となったのは意外だった。

FDAがアムジェンに送付した下記書簡によると、Adovocate試験の主解析はフェールしたが、ChemoCentryxが偽薬群で3例、試験薬群で6例の不自然例を発見し、改めて査読させたところ、試験薬群の5例の評価が持続的寛解に変更された。この結果、52週持続的寛解率が偽薬群は164人中90人(54.9%)、試験薬群は166人中109人(65.7%)、奏効率の群間差のp=0.013、試験成功となった。このような変更/修正は時々見かけるが、同社は治験計画に基づく解析がフェールしたことも事後的に変更したこともFDAに報告していなかった。

アムジェンは提案に応じることも、広聴機会を請求することもできる。26年第1四半期決算発表に合わせて、上記肝毒性報告などに関してレーベル変更申請したことを明らかにしており、FDAの提案の応じる考えはなさそうだ。製薬会社の権利は保護されているが、医師や患者の、少なくとも事実関係を知った上で使用の適否を判断する権利は置き去りにされている。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: アムジェンあての書簡

【新薬開発】


ファイザー、BCMA-CD3二重特異性抗体の2次治療試験が成功
(2026年4月29日発表)

ファイザーはElrexfio(elranatamab-bcmm)が第3相MagnetisMM-5試験の中間解析で主目的を達成したと発表した。データは学会等で発表する考え。世界の規制機関に報告する。

23~24年に米欧日で難治/再発多発骨髄腫用薬として承認された、形質細胞のBCMAとT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。3種類の代表的な多発骨髄腫用薬全てを含む米国では4次以上、EUでは3次以上の治療歴を持つ患者に単剤投与する。今回の試験はもっと早い段階の、lenalidomide及びプロテアソム阻害剤を含む1次以上の治療歴を持つ497人を組入れて、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を標準療法であるDPdレジメン(daratumumab、pomalidomide及びdexamethasoneを併用)と比較した。用量用法は承認用途と同じ。単剤投与群が標準療法群に統計的に有意且つ臨床的に意味のある差を付けた。

治験登録によるとこの試験にはElrexfioとdaratumumabを併用する群も設定されているが、下記プレス・リリースでは言及されていない。継続追跡ならそう書くだろうから、途中で無益認定されたのだろうか?

リンク: プレス・リリース


ベーリンガー、抗肥満薬の最初の第3相が成功
(2026年4月28日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムは、BI 456906(survodutide)が第3相SYNCHRONIZE-1試験で主目的を達成したと発表した。詳細はADA(米国糖尿病学会)で発表する考え。

グルカゴンとGLP-1の受容体を作動する週一回皮下注用薬。肥満症やMASH(代謝異常関連脂肪肝炎)の治療薬として第3相段階。今回の日本も参加した試験は、二型糖尿病を伴わない肥満症の患者725人を偽薬、3.6mg、6.0mgの3群に無作為化割付けして76週間治療し、体重低下率と5%減量奏効率を比較した。試験薬群(どちらの用量なのか、それとも2群平均値なのか、記されていない)は16.6%低下、偽薬群の3.2%を有意に上回った。試験薬群の奏効率は85.1%と38.8%で有意差があった。尚、イーライリリーやノボ ノルディスクのプレス・リリースとは異なり、同社はintent-to-treatに近く医師や患者にとって重要なefficacy estimandベースの数値だけを公表した。

体重低下作用の面ではGIP・GLP-1アゴニスト程ではなさそうに見えるが、今回の試験では除脂肪体重の低下が小さかったとのことなので、他の試験でも再現されれば筋肉減少副作用が小さい点で差別化できるかもしれない。

肥満症では、二型糖尿病を伴う患者のSYNCHRONIZE-2試験やSYNCHRONIZE-CVOT心血管アウトカム試験、そして日本だけ、中国だけの試験も進行中。

リンク: プレス・リリース


インサイト、新規JAK1阻害剤の白斑試験が成功
(2026年4月28日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)は、2026年第1四半期決算発表に合わせて、INCB-54707(povorcitinib)が第3相非分節型白斑試験2本で主目的を達成し27年上期に承認申請する考えであることを明らかにした。

既存薬より選択性が高いJAK1阻害剤。成人の活性期中重度化膿性汗腺炎向けの開発が先行しており、25年10月にEUで、今年第1四半期には米国でも、承認申請が受理された。第3相では45mg群と75mg群をテストしたが、主評価項目のHiSCRベース奏効率もG3以上の治療時発現有害事象発生率も大差なかった。

非分節型白斑のSTOP-V1試験と同V2試験は30mg群と偽薬群の第52週F-VASI75(Facial Vitiligo Area Scoring Indexが75%以上低下)達成率を比較した。一本は各群18.9%と6.8%、もう一本は18.9%と3.1%だった。5人に一人が奏効というのは見栄えがしないが、今年2~3月に欧米日で適応拡大申請されたRinvoq(upadacitinib)も一本は25%(偽薬群は6%)、もう一本は23%(同7%)だった。

リンク: プレス・リリース


経口ミノキシジルの第3相脱毛症試験が成功
(2026年4月27日発表)

Veradermics(NYSE:MANE)はVDPHL01延長放出錠(minoxidil)が第2/3相302試験で主目的と全副次的評価項目を達成したと発表した。26年下期に第3相304試験の結果が判明する見込みなので、再現されれば承認申請に向かうのではないか。

頭皮に塗布する毛生え薬の経口投与用新製剤で、活性代謝物である製剤minoxidil sulfateに徐々に変換されるため、一日1回又は2回の投与で足りる。CMaxが低くなるため心安全性の向上も期待されている。特許失効は一番早いものでも2043年とのこと。

今回の試験は軽中度アンドロゲン型脱毛症519人を偽薬群、8.5mg一日一回群、同一日二回群に無作為化割付けして6ヶ月治療し効果を比較した。共同主評価項目の一つである標的領域MAHC(非産毛毛髪数、cm2当たり)は各群7.2、30.3、33.0、もう一つの改善/大幅改善奏効率(Androgenetic Alopecia Impact Rating Scaleに基づき患者が評価)は13.4%、48.4%、62.9%となった。治療関連深刻有害事象は発生せず、特別関心有害事象である心原性イベントは発生しなかったとのこと。

この疾患は男性型脱毛症と呼ばれることが多いが、当社は女性のアンドロゲン型脱毛症の試験も行っているため、このような表記にした。

リンク: プレス・リリース


エキノカンジンの造血幹細胞移植後予防試験が成功
(2026年4月27日発表)

CorMedix Therapeutics(Nasdaq:CRMD)はRezzayo(rezafungin)が第3相ReSPECT試験で主目的を達成したと発表した。今年下期に適応拡大申請する考え。

エキノカンジン系点滴静注用薬。23年に米欧でカンジダ血症などのサルベージ用薬として承認された。米国は抗生剤の開発に様々な支援を行っているが展望が明るいとは言い難く、米国における開発/販売者はCidra、Melinta Therapeuticsと変遷し、CorMedixは25年にMelintaの事業を3億ドルで入手した。米国と日本以外はMundipharmaが権利を持っており、今回の試験もMundipharmaがスポンサーだ。

リンク: プレス・リリース


遺伝性血管浮腫の遺伝子療法試験が成功
(2026年4月27日発表)

遺伝子編集技術を持つIntellia Therapeutics(Nasdaq:NTLA)はNTLA-2002(lonvoguran ziclumeran、通称lonvo-z)が第3相HAELO試験で主目的と全副次的評価項目を達成した発表した。ローリング承認申請に着手しており、年内に完了する予定。

in vivo遺伝子療法で、Kallikreinの前駆蛋白の遺伝子であるKLKB1に特定的なgRNAとCas9 mRNAをリピッド・ナノパーティクルに封入したもの。肝臓のLDL-C受容体を通じて細胞内に入り、遺伝子転座を誘導、前駆蛋白をノックアウトする。16歳以上の遺伝性血管浮腫(HAE)患者80人を組入れて50mg群と偽薬群に2対1割付けしたところ、第5~28週におけるHAE発作回数が偽薬比87%少なかった。深刻有害事象は発生しなかった。

HAEは近年、高い発作予防効果を持つ新薬が続々登場しており、本剤は治療抵抗性患者向けになるのではないか。

リンク: プレス・リリース(第3相結果)
リンク: 同(ローリング申請開始)


こっちのコンパス、第3相は今一つ
(2026年4月27日発表)

Compass Therapeutics(Nasdaq:CMPX)はCTX-009(tovecimig)の第2/3相胆管癌試験における副次的評価項目の解析結果を公表した。一番重要な延命効果はクロスオーバーの影響もあり確認されていない。同社は承認申請に向けFDAと相談する考え。

DLL4(Delta-like ligand 4)とVEGF-Aに結合する二重特異性抗体。今回のCOMPANION-002試験は、成人の切除不能進行/転移難治胆管癌の二次治療を受ける168人を試験薬とpaclitaxelの併用群とpaclitaxelだけの群に2対1割付けしてORR(最良客観的反応率、独立委員会による放射線学的評価)を比較した。25年4月に、各群17.1%と5.3%、両側p=0.031と成功したことが公表されている。今回、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が各群4.7ヶ月と2.6ヶ月、ハザードレシオは0.44、p<0.0001であることが明らかにされた。

ORRのp値は一本の試験で承認を取るには十分に低いとはいえない。反応が持続しない症例も含まれていたのではないかと推測され、ORRで承認を取る時の重要な指標である反応持続期間は公表されていない。このため、PFSの解析が成功したのは朗報だ。但し、全生存期間はメジアン8.9ヶ月と対照群の9.4ヶ月と大差なく、ハザード・レシオも1.05だった。対照群57人中31人が進行後に試験薬にクロス・オーバーしたが、それを調整しても1.13とのことだ。

Compass Pathways(Nasdaq:CMPS)はサイケデリックの承認申請に向け順調だが、こっちのコンパスは針が揺れ動いているように見える。

リンク: プレス・リリース


Newron Pharmaceuticals、統合失調症第3相が米国だけ部分停止
(2026年4月29日発表)

イタリアのNewron Pharmaceuticals(SIX:NWRN)はNW-3509(evenamide)の第3相治療抵抗性統合失調症試験を二本、実施しているが、米国施設が参加しているENIGMA-TRS 2試験に関してFDAが新規組入れ停止を命じたと発表した。米国外の施設で突然死が発生したため。但し、担当研究員は薬物関連ではないと評価しており、独立安全性監視委員会も検討の上で治験継続を推奨したとのこと。他の国の施設は停止命令の対象外。欧州アジアなどで実施している第3相ENIGMA-TRS 1試験も対象外。

自社創製の電位依存性ナトリウムチャネル阻害剤。ナトリウムチャネルの異常活性化によるグルタミン放出を抑制するとされる。30mgを一日二回投与した第2/3相難治統合失調症試験で第4週PANSS総スコアが偽薬比有意に改善した。第3相はENIGMA-TRS 1試験では30mgと半量の15mgをテストしているが、ENIGMA-TRS 2試験は15mgだけ。尚、日本市場は24年にEAファーマがライセンスしている。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


Immunome、デスモイド腫瘍用薬を承認申請
(2026年4月29日発表)

米国ワシントン州の新興医薬品企業、Immunome(Nasdaq:IMNM)は、AL102(varegacestat)を成人のデスモイド腫瘍用薬としてFDAに承認申請したと発表した。Ayala Oharmaceuticalsから取得したガンマ・セクレターゼ阻害剤で、未治療患者や手術や放射線療法、化学療法後に進行した難治再発性デスモイド腫瘍156人を組入れた第3相で、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)の偽薬比ハザード・レシオが0.16(95%信頼区間0.071-0.375)、cORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)は56%(偽薬群は9%)だった。有害事象は下痢や疲労、ラッシュ、悪心などで多くはG2以下だった。

デスモイド腫瘍の米国患者数は1万人程度、年1000~1650人が診断される。癌ではないが疼痛などの症状を伴い、命に係わる臓器障害を合併する場合もあるようだ。類薬は23年にSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)のOgsiveo(nirogacestat)が承認されている。

リンク: プレス・リリース


ギリアド、HIVの2剤合剤を承認申請
(2026年4月29日発表)

ギリアド・サイエンシズはbictegravir(インテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビター)とlenacapavir(カプシド阻害剤)の合剤を米国で承認申請し受理されたと発表した。成人のHIV患者で抗ウイルス療法によりウイルス量を抑制できている患者がスイッチするもので、標準的治療レジメンに十分応答せずたくさんの薬を併用している患者に特に適している。一日に2~11剤を服用してウイルスを抑え込むのに成功した患者を組入れた第3相Artistry-1試験や、同社のBiktarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide fumarate)で抑え込めている患者を組入れたArtistry-2試験でフェール率(48週HIV-1 RNAが50コピー/mL以上)がスイッチしなかった群と非劣性だった。

bictegravirは米国で18年に承認されたBiktarvyに配合、lenacapavirは22~23年に欧米日で承認されたSunlencaなどの活性成分。

リンク: プレス・リリース


リンヴォックを米国でも脱毛症に申請
(2026年4月28日発表)

アッヴィは米国でJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)を成人と青少年の重度円形脱毛症に適応拡大申請したと発表した。日本でも昨年12月に円形脱毛症(ただし、脱毛部位が広範囲に及ぶ難治の場合に限る)に一変申請している。12~64歳の患者を組入れた第3相UP-AA試験で15mgと30mgの第24週SALT20達成率(脱毛面積が全体の20%以下)が一本では各45%と55%と偽薬群の3%を有意に上回り、もう一本も各45%、54%、3%で有意だった。治療時発現有害事象の発生率は、夫々、1.4%、2.8%、0と1.9%、1.8%、0.7%だった。

リンク: プレス・リリース


大鵬薬品ら、EGFRtk阻害剤を承認申請
(2026年4月28日発表)

Cullinan Oncologyと大鵬薬品は、CLN-081/TAS6417(zipalertinib)を米国で白金薬歴のあるEGFRエクソン20欠損型局所進行/転移非小細胞性肺癌用薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は28年2月28日。

上記変異を持つEGFRのチロシン・キナーゼを不可逆的に阻害する経口剤。臨床試験でメジアン2前治療歴を持つ176人にcORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が35%、メジアン反応持続期間8.8ヶ月、白金歴のみの125人では同じく40%、8.8ヶ月だった。脳転移にも有効。治療関連有害事象は爪囲炎やラッシュなど。

リンク: プレス・リリース(和文)

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、アストラゼネカの2品を検討議
(2026年4月30日発表)

現行のFDA首脳陣はコンセンサスに拘らず少数意見を積極的に取り入れている。一例が、新薬や適応拡大に関する諮問委員会が激減していること。代わりに、FDA委員長が自分の意見に賛同するであろう委員を多く集めた会議でお墨付きを得る事例が散見される。

そのような中、FDAは9ヶ月ぶりに新薬や適応拡大に関わる諮問委員会を開催した。軌道に戻ったかと思われたが、これ以降の開催予定は発表されていないので、再び闇の時代に戻るのかもしれない。今回のアジェンダが他の案件と何が違うのか、良く分からないが、おそらく、camizestrantの第3相試験のデザインに関して、FDAや諮問委員の見解を他の製薬会社にも伝えるべきと考えたのだろう。

本題に入ると、午前の部で検討されたのはアストラゼネカの次世代選択的エストロゲン受容体零落剤、AZD9833(camizestrant)。日本も参加した第3相SERENA-6試験に基づき、成人のホルモン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移性乳癌で、内分泌療法薬による一次治療中にctDNA検査でESR1変異が検出された、未だ癌が進行していない段階の患者向けに承認申請され、25年7月に受理された。上記試験で、内分泌療法薬をcamizestrantにスイッチした群のメジアンPFS(無進行生存期間、治験医評価)は16.0ヶ月と、スイッチしなかった群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.44、統計的に有意だった。

しかし、この試験におけるPFSの意義は曖昧だ。camizestrantにスイッチしなかった患者は進行後にスイッチできるかもしれないが、camizestrant群はできないので、もし効かなくなるまでの期間が同じだった場合、治療オプションを早く使い果たすことになりかねない。懸念を払しょくするには副次的評価項目である全生存期間のデータが重要だが、未だ成熟しておらず最終解析は28年頃の見込みだ。そもそも検出力不足で答えが出るかどうか分からないようだ。有害事象も増加することなどから、FDAは懐疑的な意見を示し、諮問委員も9人中6人が、便益が棄権を上回るとは示されていないと判定した。

ERS1変異は内分泌療法による一次治療を受けている患者の3割程度で発生する、内分泌療法抵抗性のシグナルと考えられている。延命効果が確立されれば重要なバイオマーカーになりうるので、今回の諮問委員会は、製薬業界や臨床研究者に対する重要なメッセージだ。

camizestrantは欧州や日本でも承認申請中。

午後のアジェンダは同社が25年8月18日に承認申請した、AKT阻害剤Truqap(capivasertib)の適応拡大。23~24年に米日欧で承認された用途は特定の遺伝子変異を持つ局所進行/転移乳癌の再発治療だが、今回は成人のPTEN欠乏転移性ホルモン感受性前立腺癌。第3相CAPItello-281試験でアンドロゲン枯渇療法、abiraterone、及びprednisoneのレジメンに追加したところ、PFS(無進行生存期間、放射線学的評価)がメジアン33.2ヶ月と偽薬追加群の25.7ヶ月を上回った。ハザード・レシオは0.81、p=0.034だったが、抗癌剤のハザード・レシオの要求水準は0.8以下と言われ、臨床試験一本で承認を取る場合に必要なp値は0.0025未満と言われているので、微妙な成績だ。全生存期間の中間解析もハザード・レシオ0.90、p=0.401と、見静寂なのでp値は無視してもよいがハザード・レシオは今一つ。G3以上の有害事象発生率は67%対40%でかなり増加した。FDAはこれらの点に懸念を持っている様子だ。

しかし、諮問委員会は支持が7人、反対が1人、棄権1人と圧倒的多数が承認を支持した。メジアンPFSの群間差が7ヶ月超と比較的大きかったことが後押しした模様だ。

この適応拡大はEUでも承認申請中。

FDAの諮問委員会は特定の側面に関して意見を聞くもので、委員の多数が便益が棄権を上回る(承認に値する)と評価したとしても、拘束力はない。

リンク: アストラゼネカのプレス・リリース(camizestrant)
リンク: 同(Truqap)

【承認】


新規乳癌用薬が承認も、自社販売はしない考え
(2026年5月1日発表)

FDAは、米国コネチカット州のArvinas(Nasdaq:ARVN)のVeppanu(vepdegestrant)を成人の内分泌療法後に進行したESR1変異型、エストロゲン受容体陽性、そしてher2陰性の進行/転移乳癌向けに承認した。Guardant360 CDxをコンパニオン診断薬として承認した。日本も参加した第3相VERITAC-2試験で200mgを一日一回経口投与する群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)をfulvestrant筋注と非盲検下で比較したところ、PFSが5.0ヶ月対2.1ヶ月と上回り、ハザード・レシオは」0.57、p=0.0001だった。全生存期間の解析は未成熟。警告注意事項はQTc間隔延長と胚胎毒性。

同社は標的蛋白に結合する分子とセレブロン(CRBN)に結合分子をリンカーで繋げたPROTAC(PROteolysis TArgeting Chimera)技術を持っており、Veppanuは実用化第1号。この作用機序は添付文書でヘテロ二機能性蛋白分解誘導剤と表現されている。ファイザーと共同開発してきたが、両社は、商業化権を導出することで合意した。上記試験はESR1変異型以外も含む全被験者のPFSも共同主評価項目だったが、両群大差なかった。ESR1変異型は2次治療患者の4割程度が該当と言われているのでベッパンに任せるほどでもないはずだが、一次治療併用などもっと長期間投与できるTPOでの展望などを考慮したのかもしれない。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: Arvinasのプレス・リリース

Axsome社、NMDA受容体拮抗剤がアルツハイマー性アジテーションに適応拡大
(2026年4月30日発表)

米国ニュー・ヨーク州のAxsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、Auvelity(dextromethorphan Hbr、bupropion HCl)をアルツハイマー病患者のアジテーションの治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。この疾患で向精神薬以外が承認されたのは初めて。鎮咳去痰薬として使われてきたNMDA(N-methyl D-aspartate)受容体アンタゴニストの半減期を、鬱病や薬物依存の治療薬として使われてきた薬のCYP2D6阻害作用の利用して長期化し一日二回経口投与で足りるようにした、温故知新型合剤で、22年に米国で鬱病用薬として承認された。

アルツハイマー病の代表的な症状の一つであるアジテーションを抑制する作用は、第3相急性期治療試験2本と、急性期治療に応答した患者を継続投与群と偽薬スイッチ群に無作為化割付けした第3相離脱試験2本で検討され、前者は一勝一敗、後者は二勝だったが、添付文書には各1本ずつしか記されていない。

鬱病の用法は各剤45mgと105mgを配合する錠剤を最初は一日一回、4日目に一日二回と漸増する。アルツハイマー病ではもう少し緩徐で、30/105mg錠一日一回で開始、一週間後から同一日二回、第15日から45/105mg錠を一日二回、と漸増していく。枠付き警告は、抗鬱剤治療を受けている青年とヤング・アダルトにおける自殺思慮・行動。

リンク: プレス・リリース


ビレーズトリが喘息症に適応拡大
(2026年4月28日発表)

アストラゼネカは、Breztri(budesonide、glycopyrrolate、formoterol fumarate)を12歳以上の喘息症の維持療法に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。第3相のLOGOS試験や日本も参加したKALOS試験でbudesonideとformoterol fumarateの二剤合剤と比較したところ、24週の1秒量(0~3時間後の曲線下面積)が有意に上回った。欧州や日本でも適応拡大申請中。

19~20年に日米欧でCOPDの維持療法薬として承認された、ステロイドと長期作用性ムスカリン拮抗剤、長期作用性ベータ2作用剤の吸入用3剤合剤。COPDでは各活性成分を160mcg、9mcg、4.8mg配合した製品を一度に二回、一日二回吸入するが、喘息症は各剤160mcg、18mcg、4.8mcgとムスカリン拮抗剤が増量されている。尚、gycopyrrolate 9mcgは欧日の添付文書ではglycopyrronium bromide 7.2mcgと表現されている。

リンク: プレス・リリース


JNJ、統合失調症治療薬が7年を経て再燃予防に適応拡大
(2026年4月27日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは、Caplyta(lumateperone)を統合失調症の維持療法に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。Caplytaによる急性期治療が奏功した228人を組入れて継続投与の便益を検討した第3相試験で、偽薬にスイッチした群と比べた症状再燃ハザード・レシオが0.37、再燃率は各群38.6%と16.4%だった。

Intra-Cellular Therapiesを買収して入手した、5-HT2A受容体とドパミンD2受容体の拮抗薬。オリジンはブリストル マイヤーズ スクイブのようだ、米国で19年に統合失調症の急性期用薬として承認され、双極性障害の鬱症状や大鬱病のアジャンクティブ用途(追加投与)に適応拡大してきた。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
26/5推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
26/6/18アストラゼネカのTruqap(capivasertib、PTEN欠乏HSPC)
26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)


今週は以上です。

2026年4月25日

第1256回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • トランプ大統領、サイケデリックの開発を後押し 
  • FDA、サイケデリック3剤にCNPV供与 
  • 経口セマグルチドを小児T2Dに承認申請へ 
  • ユルトミリスをIgA腎症に適応拡大申請へ 
  • エンスプリングはMOGADに有効 
  • ノボ、経口鎌状赤血球症薬を承認申請へ 
  • アストラゼネカ、抗IL-33抗体の2週毎投与試験も成功 
  • ウェリレグの3剤併用腎細胞腫試験はフェール 
  • ガザイバを全身性エリテマトーデスに適応拡大申請 
  • 重症筋無力症のsiRNA薬を承認申請 
  • Praxis社、抗癲癇薬2剤を相次いで承認申請 
  • L型アミノ酸輸送体のPET造影剤を承認申請 
  • パドセブを筋層浸潤膀胱癌の周術期薬物療法に適応拡大申請 
  • Grace Therapeutics、一発承認ならず 
  • CHMP、4月の会議報告 
  • 重度難聴の遺伝子療法薬が承認 
  • Ala-Ala、1歳も使えるようになった 
  • MSD、HIV感染症の新規配合錠が承認 
  • モデルナ、欧州でインフルエンザ・COVID-19混合ワクチンが承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


トランプ大統領、サイケデリックの開発を後押し
(2026年4月18日発表)

トランプ米国大統領はサイケデリックに関する執行命令を下した。既存の治療薬に十分応答しない、深刻な精神疾患に有効な薬の実用化を後押しする。具体的には、

  • FDAは、ブレークスルー・セラピー指定を受けた適切なサイケデリック薬のうち、基準を満たす開発品にCNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)を供与し、承認審査をスピードアップする。
  • FDAは、Right to Try法(深刻な難病患者が通常の臨床試験の枠外で未承認の薬による治療を受けることを認める法律)などに則り、条件を満たす患者がibogaineなどのサイケデリック薬を承認前に利用するプロセスを確立し施行する。
  • HHS(米国連邦保健福祉省)は、サイケデリック薬を合法化または開発推進している州政府を支援・協働するために既存の財源から5000万ドル以上拠出する。
  • HHSやFDAは退役軍人省と協働する(従軍中/後に精神疾患を発症した患者のケアを強化する意図)
  • 司法長官は、条件を満たした場合に、麻薬取締法スケジュール1指定の見直しを可能な限り速やかに実施する。

  • サイケデリックは5-HT2A受容体作動を通じて精神状態に影響する物質で、LSDやMDMAなどが様々な形で用いられている。米国では、好ましくない作用を持ち便益が確立していない物質として、麻薬取締法の中で規制が最も厳しいスケジュール1指定されている。今回の執行命令は、薬効や安全性のハードルを引き下げる意図は感じられない。

    近年の失敗例はLykos Therapeutics(旧称MAPS PBC)。23年にMDMA(midomafetamine)をPTSD(トラウマ後ストレス離障害)の精神療法補助剤として承認申請したが、臨床試験の実施方法や安全性確認が不十分と見なされ、審査完了通知を受領した。同社以外にも複数の新興企業が臨床開発を進めており、1~2年後に第1号が承認されるかもしれない。

    リンク: トランプ大統領の大統領執行命令


    FDA、サイケデリック3剤にCNPV供与
    (2026年4月24日発表)

    上記執行命令を受けて、FDAはサイケデリックを医療用に開発している3社にCNPVを供与したことなどを発表した。社名等は記されていないが、メディアの取材などにより下記と判明している。

  • 英国のCompass Pathways(Nasdaq:CMPS)のCOMP360(psilocybin)。治療抵抗性鬱病の第3相が2本成功し、第4四半期に承認申請する計画。企業側プレス・リリースによるとローリング承認申請が認められた。
  • 米国の非営利医療研究組織、Usona InstituteのPSIL201(psilocybin)。大鬱病の患者を治療抵抗性に限定せず組入れた第3相uAspire試験中。ClinicalTrials.govによると今年1月に結果判明の見込みだが、ホームページを見ても関連ニュースは出ていない。
  • Transcend TherapeuticsのTSND-201(methylone)。3月にPTSDで第3相を開始するとともに、大塚ホールディングスによる買収に合意した。

  • ホワイトハウス発表文でも言及されているibogaineに関しては、DemeRx NBのDMX-1001(noribogaine)のアルコール使用障害における臨床試験を認可した。DemeRx側は数日前に公表済み。活性成分はibogaineの長期作用性代謝物で、幻覚性や依存性がない由。ibogaineの過去の臨床研究では突然死などの懸念が見られたようだが、こちらはどうなのだろうか?

    リンク: FDAのプレス・リリース


    【新薬開発】


    経口セマグルチドを小児T2Dに承認申請へ
    (2026年4月23日発表)

    ノボ ノルディスクは10~17歳の二型糖尿病におけるsemaglutide錠の血糖管理効果を評価した前期第3相試験、Pioneer Teensがポジティブな結果になったと発表した。今年下期に欧米で対象年齢拡大申請する考え。このGLP-1作用剤は皮下注用がOzempicやWegovyの製品名で二型糖尿病や肥満症などに承認されている。経口剤も二型糖尿病薬Rybelsusが19~20年に米欧日で、肥満症用薬Ozempic錠が25年12月に米国で、二型糖尿病用新製剤Ozempic錠が26年2月に米国で、成人患者向けに承認されている。

    今回の試験では3mg、7mg、14mgを偽薬と比較したとのことなのでRybelsusを用いたと推測されるが、成人用と同様に、Ozempic錠(1.5mg、4mg、9mgが相当)の承認も求めるのだろう。

    リンク: プレス・リリース


    ユルトミリスをIgA腎症に適応拡大申請へ
    (2026年4月21日発表)

    アストラゼネカは、長期作用性C5補体阻害剤Ultomiris(ravulizumab-cwvz)が第3相I CAN試験で主目的を達成した。高リスクIgA腎症を対象に腎機能悪化を遅らせる効果を検討したところ、共同主評価項目の一つである34週24時間UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が偽薬比有意に下回った。近年承認されたIgA腎症用薬と同様に、このデータで加速承認を取得し、共同主評価項目の106週eGFR(推算糸球体濾過量)で本承認切替を狙う考えのようだ。

    Ultomirisは米欧日などで発作性夜間ヘモグロビン尿症などの治療薬として承認されている。

    リンク: プレス・リリース


    エンスプリングはMOGADに有効
    (2026年4月21日発表)

    ロシュはEnspryng(satralizumab-mwge)が第3相MOGAD(抗ミエリン・オリゴデンドロサイト糖蛋白抗体関連障害)試験で主目的などを達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。

    グループの中外製薬が創製した、抗IL-6受容体リサイクリング抗体。20~21年に日米欧でAQP4-IgG抗体陽性のNMOSD(視神経脊髄エンスクトラム障害)の治療薬として承認された。MOGADは中枢神経系組織のミエリン・オリゴデンドロサイト糖蛋白が自己抗体に攻撃され、視神経、骨髄、脳などで予測不能な発作的症状が表れる。脳脊髄液でIL-6の増加が見られるようだ。今回、AAN(米国神経学会)で結果発表されたMETEOROID試験は12歳以上の患者を組入れて、体重に応じて60~180mgを最初の3回は2週毎、その後は4週毎に皮下注したところ、再燃が偽薬群比68%少なかった(p=0.0025)。試験薬群の87%は48週間に一度も再燃しなかった(偽薬群は67%)。主な有害事象は注射箇所反応、インフルエンザ、関節痛など。

    Enspryngは甲状腺眼症でも第3相試験の一本で突出減少奏効率が53%と偽薬群の23%を有意に上回り、もう一本も49%対31%と、p=0.0715だが数値上は上回った。被験者の2割強が解析対象から外れているのでintent to treatでは低くなるかもしれないが、いずれにせよ、この用途でも適応拡大申請するのだろうか?

    リンク: プレス・リリース


    ノボ、経口鎌状赤血球症薬を承認申請へ
    (2026年4月20日発表)

    ノボ ノルディスクはetavopivatが第3相Hibiscus試験で主目的を達成したと発表した。承認申請する考え。22年にForma Therapeutics(Nasdaq:FMTX)を10億ドル超で買収して入手した、PKR(赤血球ピルビン酸キナーゼ)のアロステリック・アクティベイタで、鎌状赤血球症で生成されるヘモグロビンSの重合化を抑制するなどの作用を持つ。今回、12歳以上の385人を偽薬群と400mg一日一回経口投与群に無作為化割付けして52週間追跡したところ、52週VOC(血管閉塞クリーゼ)が偽薬比27%低下した。time to the first event分析もメジアン38.4週対20.9週と、より長く抑制した。

    リンク: プレス・リリース


    アストラゼネカ、抗IL-33抗体の2週毎投与試験も成功
    (2026年4月20日発表)

    アストラゼネカは抗IL-33抗体MEDI3506(tozorakimab)が第3相MIRANDA試験で主目的などを達成したと発表した。先に成功した2本は300mgを4週毎皮下注したが、本試験は同用量を2週毎皮下注しており、データが公表された段階で効果や忍容性がどう変わるのか、チェックすることになる。

    この3本は、10箱年以上の喫煙歴を持つ症候性COPDで吸入薬を2剤以上服用しても中度以上の増悪が起きる患者を組入れて、1年間の中重度増悪リスクを偽薬と比較した。主評価項目は禁煙しているサブグループだけが対象だが、現在の喫煙者も含む全体の解析も統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を見たとのこと。

    リンク: プレス・リリース


    ウェリレグの3剤併用腎細胞腫試験はフェール
    (2026年4月21日発表)

    MSDとエーザイは第3相LITESPARK-012試験が中間解析でフェールしたと発表した。腎細胞腫の再発治療や切除後アジュバント療法に有効な薬が一次治療に無効というのは意外だが、限界効用逓減則が当て嵌まったのか、もしかしたら忍容性が悪化したのかもしれない。

    この日本も参加した進行腎細胞腫1次治療試験は、653人の患者を3群に無作為化割付けして、MSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)とエーザイがMSDと共同開発販売しているVEGF阻害剤Lenvima(lenvatinib)の併用(21~22年に米欧日で承認)を対照群として、HIF-2アルファ阻害剤Welireg(belzutifan)と3剤併用する群と、新規抗CTLA-4抗体MK-1308(quavonlimab)と3剤併用する群(実際はpembrolizumabとの合剤であるMK-1308AをLenvimaと併用)のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間を検討した。

    主評価項目が二つあり群間比較も2種類あるので検出力が高く設定されているのだろうが、中間解析で全生存期間もフェールするというのは案外だ。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    ガザイバを全身性エリテマトーデスに適応拡大申請
    (2026年4月21日発表)

    ロシュは米国で抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab)を成人の活性期全身性エリテマトーデスに適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限等は不明。EUでも申請済みとのこと。

    303人を組入れた第3相ALLEGORY標準療法アドオン試験で、52週SLI-4達成率(SELENA SLEDAIスコアが4点以上改善など)が76.7%と偽薬群の53.5%を有意に上回った。深刻有害事象の発生率は各群15.9%と11.9%だった。

    リンク: プレス・リリース


    重症筋無力症のsiRNA薬を承認申請
    (2026年4月21日発表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、AAN(米国神経学会)やLancetでの治験成績発表に合わせて、26年に第1四半期に米国でcemdisiranを重症筋無力症(gMG)の治療薬として承認申請していたことを明らかにした。年内に他の地域でも申請する考え。

    成人の抗AChR抗体陽性gMG患者に600mgを12週毎皮下注した第3相NIMBLE試験で、24週MG-ADL総スコアが偽薬比2.3点低下した。200mgを米国でCHAPLE症候群用薬として承認されているVeopoz(pozelimab-bbfg)200mgと4週毎皮下注した群も同1.74点低下したが、申請されたのは単剤のみのようだ。

    深刻な治療連関有害事象の発生率は単剤群が3%、偽薬群14%、併用群は9%。筋無力症悪化という有害事象の発生率が各群1%、17%、5%となっており、便益の裏返しみたいになってしまっている。

    cemdisiranは、Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)からライセンスした、補体C5を標的とするsiRNA薬。19年に開始された両社の広範な研究開発提携の成果で、第2相で良好な結果を出したが、Regeneronは提携を離脱、Alnylamも開発を停止、と紆余曲折の末、24年になってRegeneronが単独開発を決めた経緯がある。

    リンク: プレス・リリース


    Praxis社、抗癲癇薬2剤を相次いで承認申請
    (2026年3月30日発表、4月14日発表)

    Praxis Precision Medicines(Nasdaq:PRAX)は今年3月に続いて4月にも別の抗癲癇薬を承認申請しFDAに受理されたと発表した。見落としていたため3月受理分から記すと、PRAX-562(relutrigine)は持続性ナトリウム電流優先的阻害剤の経口液。SCN2A/SCN8A変異型DEE(発達性及び癲癇性脳症)に用いる。2歳以上の患者を組入れたEMBOLD試験の承認申請用コフォート(76人)で16週てんかん頻度が偽薬比53%低下した(p<0.0002)。2変異型どちらにも整合的な結果が出た。優先審査を受け、審査期限は26年9月27日。

    SCN2AとSCN8Aは電位依存性Naチャネルの各NaV1.2とNav1.6をコードする遺伝子。米国の推定患者数5000人という希少遺伝子性疾患で、小児用薬バウチャを受領する可能性があるようだ。同社はそれ以外の変異型患者も組入れたEMERALD試験を実施中で、今年下期に開票する見込み。成功なら市場規模が年5億ドルから20億ドルに拡大と期待している。

    リンク: プレス・リリース(relutrigine、26年3月30日)

    PRAX-944(ulixacaltamide HCL)は成人の本態性振戦の治療薬として承認申請され、審査期限は27年1月29日。T型カルシウム・チャネル・ブロッカーで、CTC(小脳-視床-皮質)回路における異常な神経発火を阻害することで振戦発作を予防する。米国で実施された第3相Essential 3試験の偽薬対照治療試験部分で60mg(20mgから漸増)一日一回経口投与群の12週mADL11がベースライン比4.3低下(改善)と偽薬群の1.7低下を有意に上回り、リード・イン期に試験薬を全員に投与し応答者を無作為化割付けした離脱試験部分で4週応答維持率が55%と偽薬にスイッチした群の33%を上回った(p=0.037)。薬品関連治療時発現有害事象による離脱率は治療試験の試験薬群が27.0%、偽薬群は1.7%、離脱試験のリード・イン期は28.1%だった。

    リンク: プレス・リリース(ulixacaltamide、26年4月14日)


    L型アミノ酸輸送体のPET造影剤を承認申請
    (2026年4月10日発表)

    オーストラリアのTelix(ASX:TLX)は米国でPixclara(foretyrosine F 18)を再承認申請し受理されたと発表した。審査期限は26年9月11日。

    神経膠芽腫の診断や治療効果を特定するためにL型アミノ酸輸送体LAT1とLAT2をPET造影するもの。米国で承認されている類薬はないとのこと。同社は24年に承認申請したが追加的薬効確認試験を求められた模様だ。1年足らずの期間に完了したのかどうかは明らかではない。

    リンク: プレス・リリース


    パドセブを筋層浸潤膀胱癌の周術期薬物療法に適応拡大申請
    (2026年4月20日発表)

    アステラス製薬とファイザーは、米国でPadcev(enfortumab vedotin-ejfv)を筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の術前術後療法に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年8月17日。日本も参加した第3相EV-304試験(MSD側ではKeyNote-B15試験)で治癒的膀胱全摘・骨盤リンパ節郭清術を受ける白金薬が適応になる患者にKeytrudaと併用したところ、2年EFS(無イベント生存率)が79.4%と、gemcitabineとcisplatinの術前投与だけ施行した群の66.2%を上回り、ハザード・レシオは0.53だった。副次的評価項目の全生存期間のハザード・レシオも0.65、有意だった。G3以上の有害事象発生率は各群75.7%と67.2%。

    このTPOにおけるPadcevとKeytrudaの併用は白金薬不適/拒否の患者を組入れた試験も成功、米国では昨年11月に承認され、日本でも今年1月に一変申請されている。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    Grace Therapeutics、一発承認ならず
    (2026年4月23日発表)

    Grace Therapeutics(Nasdaq:GRCE)はGTx-104(nimodipine新製剤)をaSAH(脳動脈瘤によるくも膜下出血)の治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。浸出物、前臨床毒性評価、製造委託会社における製造問題などの指摘事項があった模様。追加的臨床情報は要求されなかった由。会社側は対処可能と記しているが、株価はほぼ半減した。

    GTx-104はカルシウム・ブロッカーnimodipineをナノパーティクル化することで点滴静注できるようにしたもの。100人余を組入れた第3相経口nimodipine対照試験で薬物関連低血圧が有意に少なく、転帰(90日mRS)も上回った。aSAHによる死亡例が5人対2人と多かったことが気になるが、治療関連ではないとのことだ。

    リンク: プレス・リリース


    CHMP、4月の会議報告
    (2026年4月24日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

    リンク: EMAプレス・リリース

    サノフィのCenrifki(tolebrutinib)はブルトン型チロシン・キナーゼ阻害剤。血液癌ではなく、成人の、過去2年間に再発を伴わなかった、二次性進行型多発硬化症に用いる。第3相試験で症状が進行するハザード・レシオが0.69と有意に低かった。最も厄介な副作用は薬物誘導性肝障害。尚、再発寛解型多発硬化症の第3相二本はフェールした。米国でも承認申請されたがこの2点が主因で審査完了通知を受領した。

    ノバルティスのItvisma(onasemnogene abeparvovec-brve) は、脊髄性筋萎縮症(SMA)の点滴静注用AAV遺伝子療法薬であるZolgensmaを髄腔内投与用に仕立てた新製剤。2歳以上のSMN1遺伝子に両アレル変異を持つ5q MSAに用いる。米国では25年11月に承認、日本でもゾルゲンスマ髄注として4月に承認されたところ。

    Arrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)のRedemplo(plozasiran)はapolipoprotein C-IIIを沈黙させるsiRNA薬。成人の家族性カイロミクロン血症候群におけるトリグリセライド値の抑制に用いる。米国では昨年11月に承認。

    適応拡大が支持されたのは、まず、アッヴィの経口CGRP受容体拮抗剤、Aquipta(atogepant)。片頭痛予防薬としては21~26年に米欧日で承認されているが、今回、片頭痛の急性期治療に用いることが支持された。日本でも申請中。

    大塚製薬のInaqovi(decitabine、cedazuridine;米国名はInqovi)はDNAメチル化阻害薬とその代謝を抑制する薬を合剤にすることで前者を経口投与できるようにしたもの。未治療の急性骨髄性白血病で標準的な寛解導入療法に適さない成人患者に、既承認の単剤投与に加えて、venetoclaxと併用することが支持された。米国では審査期限が5月25日に延期された。

    BMSのOpdivo(nivolumab)は12歳以上の未治療ステージIII/IV古典的ホジキンリンパ腫にAVDレジメン(doxorubicin、vinblastine、dacarbazine併用)と併用することが支持された。SWOG 1826試験でPFS(無進行生存期間)が、OpdivoではなくファイザーのAdcetris(brentuximab vedotin)を併用した群を有意に上回った。米国では3月に承認。

    CSL BehringのPrivigen(人免疫グロブリン)は、はしかの曝露前/後予防に用いることが支持された。ワクチン禁忌/不適な患者に、ガイドラインなどを参考にした上で、適否を決定する。

    アッヴィのVenclyxto(venetoclax;米名Venclexta)は成人の未治療慢性リンパ性白血病に、既承認のobinutuzumab併用に加えて、Imbruvica(ibrutinib)併用やアストラゼネカのCalquence(acalabrutinib)併用(更にobinutuzumab追加可)が支持された。後者は第3相AMPLOFY試験がエビデンスと推測され、米国でも申請中。Imbruvica併用のエビデンスは当方は把握できていない。

    一方、CHMPが否定的で申請撤回となったのは、まず、Soleno Therapeutics(Nasdaq:SLNO)のdiazoxide choline延長放出性新製剤。米国ではプラダー・ウィリ症候群における過食の治療薬Vykat XRとして25年に承認されたが、CHMPはエビデンスの頑強性やニトロスアミン不純物などから懐疑的で、4月に同社の買収を決めたNeurocrine Biosciencesの意向を受けて、撤回を決めた。

    ノバルティスは放射性医薬品Pluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)を無症状/軽度症状のPSMA陽性転移去勢抵抗性前立腺癌でアンドロゲン受容体経路阻害剤後に悪化したが未だ化学療法の候補にはならない、プリキモに適応拡大申請し、米国では25年3月に承認されたが、EUは撤回となった。別のアンドロゲン受容体経路阻害剤にスイッチする群と比較した第3相PSMAfore試験でPFSハザード・レシオが0.41となったが、CHMPは、対照群が妥当ではないことや延命効果が確認されていないことなどから否定的に見ていた。

    何とも言い難いのがBMSのOpdualag(relatlimab、nivolumab)。切除不能/転移悪性黒色腫の一次治療nivolimab対照試験に基づき22年に米欧で承認されたが、主評価項目であるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザード・レシオが0.75、メジアン値は10.1ヶ月対4.6ヶ月と良好だったものの、4割強を占めたPD-L1陽性(≧1%)サブグループでは大差なかったため、EUはPD-L1陰性の患者に限定している。BMSは限定解除を申請したようだが、CHMPは認めず、それでも、データ収載は認めることを決めた。3年追跡後の描写的解析に関する治験論文が刊行されているが、PD-L1陽性サブグループにおけるPFSのハザード・レシオは0.98だったものの、全生存期間は0.78と、陰性サブグループの0.83と大差なく、難解だ。

    【承認】


    重度難聴の遺伝子療法薬が承認
    (2026年4月23日発表)

    FDAは、Regeneron Parmaceuticals(Nasdaq:REGN)のOtarmeni(lunsotogene parvec-cwha、これまでDB-OTOと呼ばれていた)を小児と成人のOTOF遺伝子両アレル変異を伴う重度聴力喪失(90dB HL超)用薬として加速承認した。CNPV(FDA委員長国家的優先バウチャ)案件で、承認申請受理から61日で光速承認した。同社は米国患者に無償提供する。

    外有毛細胞機能が保持され、蝸牛インプラント未設置の患者に、7.2x10^12vgを蝸牛内点滴投与する。CHORD試験で生後10ヶ月から16歳の20人に投与したところ、16人で24週時点の聴力が改善した(PTA検査値70dB HL以下)。このうち、48週経過した患者全てが応答を維持しており、12人中5人は正常域(25dB HL以下)に到達した。有害事象は中耳炎、悪心嘔吐、眩暈など。市販後コミットメントとして、この試験で効果の持続性や、言語発達やQOL改善効果を追跡調査する

    OTOF関連難聴は米国の新生児のうち年50人程度の超希少疾患。内耳の有毛細胞の蝸牛で変換された電気信号を聴神経に伝達する上で重要な役割を果たす、otoferlin蛋白の遺伝子に機能喪失・低下変異がある。Otarmeniはotoferlinをコードする遺伝子とそれを有毛細胞特異的に発現させるMyo15プロモータをアデノ随伴ウイルス・ベクターで導入するもの。Decibel Therapeuticsとの共同研究が成功し、同社を買収して入手した。

    同社は、Otarmeni承認と合わせて、トランプ米国大統領が一部の製薬会社に求めたディールに応える意向を表明した。米国における薬価を主要海外市場の水準を意識して決定すること、コレステロール治療薬Praluent(alirocumab)をTrumpRx.govで販売すること、米国内で研究開発施設や製造施設に大きな投資を行うことなどだ。薬価引き下げ命令や3年間の特別課税が免除されることになる。

    リンク: FDAのプレス・リリース
    リンク: Regeneronのプレス・リリース(Otarmeni承認)
    リンク: 同(薬価抑制策)


    Ala-Ala、1歳も使えるようになった
    (2026年4月22日発表)

    サノフィはFDAがTzield(teplizumab-mzwv、別称Ala-Ala)の対象年齢拡大を承認したと発表した。22年に8歳以上のステージ2一型糖尿病(高血糖ではないが高目で膵島細胞自己抗体を持ち、二型糖尿病とは考えられない)患者がステージ3(症候性)に進展するリスクを抑制する薬として承認されたが、薬物動態や安全性の試験に基づき、1~7歳にも使えるようになった。

    23年にProvention Bioを買収して入手した、CD3エプシロン鎖に結合する抗体医薬。昨年10月には8歳以上の最近診断されたステージ3一型糖尿病という適応拡大申請が受理され、CNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)も受領した。こちらはベータ細胞の機能を示すサロゲート・マーカーである負荷後Cペプチド濃度というサロゲート・マーカーに基づくもので、78週の数値が偽薬を有意に上回った。

    リンク: プレス・リリース


    MSD、HIV感染症の新規配合錠が承認
    (2026年4月21日発表)

    MSDはFDAがIdvynso(doravirine、islatravir:和名はイドビンソ配合錠)を承認したと発表した。成人のHIV-1感染症で、抗レトロウイルス療法によりウイルスRNA量を50コピー/mL未満に抑制できている、ウイルス学的治療フェール歴を持たず、doravirine抵抗性置換を持たない患者がスイッチできる。CYP3A強誘導剤などとの併用は禁忌。日本では3月に承認された。

    doravirineは非ヌクレオシド系逆転写阻害剤で、18~20年にPifeltro/ピフェルトロ名で米欧日で承認された。islatravirはヌクレオシド系逆転写酵素トランスロケーション阻害剤と呼ばれ、ウイルスのDNA鎖に組み込まれて伸長を妨げる。大類洋博士らがヤマサ醤油や最初の抗HIV薬を発見した満屋裕明博士との共同研究を通じて特定した。Idvynsoは0.25mg含有だが、高量を投与した試験で一部の患者にリンパ球減少症が発生したため用量を減らして改めて第3相試験を実施した経緯がある。

    スイッチ試験ではウイルス抑制維持率がスイッチせず従来の薬を使い続けた群と非劣性だった。治療が成功しているならば敢えてスイッチするニーズは小さいだろうから、初めて治療を受けるナイーブ患者向けが重要な市場になりそうだ。昨年11月に一次治療Bictarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide)対照試験で非劣性解析が成功したので、適応拡大申請されるのではないか。

    リンク: プレス・リリース


    モデルナ、欧州でインフルエンザ・COVID-19混合ワクチンが承認
    (2026年4月21日発表)

    モデルナは欧州委員会がmCOMBRIAXを承認したと発表した。25年に米日欧で承認された新規COVID-19予防用ワクチン、mNEXSPIKEと、新開発の季節性インフルエンザmRNAワクチン、mRNA-1083を配合した2価混合ワクチンで、50歳以上が対象。臨床試験で、インフルエンザ・ワクチンのFluzone HDまたはFluarixを同社のもう一つのCOVID-19ワクチンであるSpikevaxと同時接種した群と比べて、免疫原性が非劣性だった。

    米国でも同時期に申請されたが、なぜか、受理されず、FDAと相談の末、50~64歳と65歳以上に分けて承認申請することになった。審査期限は26年8月5日なのでシーズンには間に合いそうだ。カナダやオーストラリアでも承認申請中。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
    26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
    26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
    26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
    26/6/5ArvinasのARV-471(vepdegestrant、ER1陽性乳癌)
    26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
    26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
    26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
    26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
    26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
    26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
    諮問委員会
    26/4/30腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)
    注:サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)は7月23日に延期された。

    今週は以上です。

    2026年4月18日

    第1255回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • MeiraGTx、網膜色素変性症の遺伝子療法を日米欧で承認申請へ 
    • リリーの経口GLP-1受容体アゴニスト、二型糖尿病安全性試験が無事完了 
    • リリー、ジャイパーカの3剤併用試験が成功 
    • 抗CSF-1R抗体のTGCT試験が成功 
    • CNPV案件の第3相膵管腺腫試験が成功 
    • PKC阻害剤のブドウ膜黒色腫試験が成功 
    • BioNTech、中華ADCを承認申請へ 
    • 第一三共、B7-H3標的ADCの承認申請が受理 
    • 3月のEU承認申請
    • 初の巣状分節性糸球体硬化症用薬が承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    MeiraGTx、網膜色素変性症の遺伝子療法を日米欧で承認申請へ
    (2026年4月16日発表)

    MeiraGTx(Nasdaq:MGTX)はX連鎖性網膜色素変性症(XLRP)の遺伝子療法薬、AAV5-hRKp.RPGR(botaretigene sparoparvovec)の関連資産をジョンソン エンド ジョンソンから買戻したことを発表した。Janssen Pharmaceuticalsが実施した第3相LUMEOS試験は昨年5月にフェールしたが、一部の評価項目で良好な成果を挙げたことなどから、患者支援財団のFFB(Foundation Fighting Blindness)やLUMEOS試験の研究員が連名で承認申請するよう声明を出していた。

    XLRPは、主としてRPGR(retinitis pigmentosa GTPase regulator)遺伝子の変異により光受容体の機能不全を生じ、視力が低下する。欧米の推定患者数は2万人超。本剤はRPGRの遺伝子をアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして患者に導入する。LUMEOS試験で95人を中量群、低量群、対照群(対照期間終了後に試験薬にクロスオーバー可)に無作為化割付けして、52週後のVMA(視認に基づく移動性の評価:低輝度迷路でテスト)を比較した。フェールしたが、改善傾向は見られた模様だ。

    FFBが25年に主催した学会の主要発表に関するプレス・リリースや、上記開発要請リリースによると、試験薬群の45%でLLVA(低輝度視力)が10字(2行)以上改善した。対照群は7%だった。試験薬群は15字以上改善も20%が達成した。更に、40%が2種類以上の評価項目で改善を示した。

    XLRP用薬は25年7月に米国テキサス州のNanoscope Therapeuticsが光受容体蛋白であるオプシンを導入する遺伝子療法薬、MCO-010(sonpiretigene isteparvovec)のローリング承認申請に着手した。約30人の後期第2相RESTORE試験で52週BCVA(最高矯正視力)が偽薬比有意に改善した。26年初めに申請を完了する見込みだったが、今のところ、完了したという発表はしていない。

    リンク: MeiraGTxのプレス・リリース
    リンク: Foundation Fighting BlindnessなどによるRetinal Therapy Innovation Summit報告(25年6月4日付、SESSION 5に関連記述)
    リンク: 同財団とLUMEOS研究員による承認申請要請


    【新薬開発】


    リリーの経口GLP-1受容体アゴニスト、二型糖尿病安全性試験が無事完了
    (2026年4月16日発表)

    イーライリリーはFoundayo(orforglipron)が第3相ACHIEVE-4試験で良好な成績を上げたと発表した。予定通り、米国で二型糖尿病に適応拡大申請する考え。

    中外製薬からライセンスした非ペプチド型経口GLP-1受容体作動薬。今月、肥満症や体重関連医療問題を伴うオーバーウェイト(OW)の成人の体重管理薬として米国で承認されたところ。今回の試験は肥満または高リスクOWの二型糖尿病成人2700人超を組入れて心血管安全性をinsulin glargine(サノフィのLantusなど)と比較した。主評価項目であるMACE-4(心血管死、心臓発作、卒中、または非安定性突発性胸痛による入院)はハザード・レシオが0.84(95%信頼区間0.59-1.20)となり、95%上限が1.8(!)を上回らなかったため、非劣性解析が成功した。

    3点MACEもハザード・レシオ0.77(同0.52-1.13)と良好。52週A1cは各群1.6%と1.0%低下し、有意な差があった(efficacy estimandベース。ベースライン値は8.22%)。アルファは配分されていないが事前に設定されていた全生存期間の解析も、ハザード・レシオ0.43(同0.25-0.75)、名目p=0.002と好ましい結果になった。

    試験薬群の当初52週間における有害事象による投与中止率は10.6%だった。重点監視項目である薬物誘導性肝障害のシグナルは見られたかった。

    同社は本剤に関してCNPV(委員長国家的優先バウチャ)を受領しており、初承認時の審査期間は50日だった。同社は二型糖尿病の適応拡大申請にもCNPVを用いる考え。FDAはCNPV供与時に本剤の用途を肥満症及び肥満関連健康状態と描写しており、二型糖尿病はしばしば肥満/OWを伴うので、一粒で二度おいしい使いまわしが可能なのだろうか?CNPVプログラムは本当に不透明感が強い。

    リンク: プレス・リリース


    リリー、ジャイパーカの3剤併用試験が成功
    (2026年4月13日発表)

    イーライリリーはJaypirca(pirtobrutinib)が第3相Bruin CLL-323試験で主目的を達成したと発表した。データは未公表。適応拡大申請に向かうのではないか。

    米欧日である種のマントル細胞腫やCLL/SLL(慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫)に承認されている、非共有結合性BTK阻害剤。今回の試験は共有結合性BTK阻害剤歴を持つ再発/難治CLL/SLL患者639人を組入れて、bcl-2阻害剤venetoclaxと抗CD20抗体rituximabの併用レジメンに追加する便益を検討した。3剤とも2年経ったら投与を中止する用法。主評価項目はPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だがトレンドが見られる由。

    この用途では単剤投与が承認されているが、3剤併用が承認されればもう少し早い段階で使えるようになる。

    リンク: プレス・リリース


    抗CSF-1R抗体のTGCT試験が成功
    (2026年4月13日発表)

    SynOx Therapeuticsはemactuzumabが第3相試験で主目的などを達成したと発表した。データは未公表。26年下期に米国で、次いでEUでも、承認申請する考え。

    同社は、オックスフォード大学発ベンチャーのCelleron Therapeutics(合併を経て現在の社名はIngenOx Therapeutics)が、ロシュからライセンスした抗CSF-1R抗体、RG-7155/RO-5509554を開発するために設立した。今回のTANGENT試験はTGCT(腱滑膜巨細胞腫瘍)患者に1000mgを2週毎に5回投与し、6ヶ月後にORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)を判定した。腫瘍量の減少に加えて、患者評価や機能的評価も改善した由。

    類薬は第一三共のTuralio(pexidartinib)が19年に米国でTGCTに承認されたが、EUでは肝毒性リスクから承認されなかった。SynOxは忍容性改善を企図して上記のように累積投与量を抑制する工夫を採用している。

    リンク: プレス・リリース


    CNPV案件の第3相膵管腺腫試験が成功
    (2026年4月13日発表)

    米国のRevolution Medicines(Nasdaq:RVMD)はRMC-6236(daraxonrasib)が第3相試験で主目的を達成したと発表した。承認申請する考え。CNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)を取得しており、2~3ヶ月の審査で承認される可能性がる。

    同社はこの薬をRAS(ON)阻害剤と呼んでいる。シャペロン蛋白であるcyclophilin Aに結合し変形させることによって、活性化RASの癌原性変異体と三重複合体を形成し活性を阻害できるように仕向けるもの。今回の日本も参加したRASolute 302試験は、転移膵管腺腫の2次治療を受ける510人を300mg一日一回経口投与する群と化学療法群に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間を比較した。主評価項目はRASのG12変異型サブグループだけが対象だが、最初の中間解析で全集団の解析も成功した。数値が公表されたのは全集団の全生存期間だけで、メジアン値は13.2ヶ月対6.7ヶ月、ハザード・レシオは0.40だった。詳細はASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表される予定。

    このほかに、転移膵管腺腫の一次治療や術前術後療法、そしてRAS変異型非小細胞性肺癌の2~3次治療における第3相が進行中。

    リンク: プレス・リリース


    PKC阻害剤のブドウ膜黒色腫試験が成功
    (2026年4月13日発表)

    米国のIDEAYA Biosciences(Nasdaq:IDYA)とセルビエは、IDE-196(darovasertib)が第2/3相ブドウ膜黒色腫試験で主目的等を達成したと発表した。26年下期に加速承認を申請する考え。

    汎PKC阻害剤。18年にIDEAYAがノバルティスからライセンスし、25年9月に米国外の権利を供与したセルビエと共同開発している。今回の承認申請用試験、OptimUM-02は、HLA-A*A2:01型ではない転移ブドウ膜黒色腫の一次治療を受ける432人を組入れて、300mgをファイザーのcMET阻害剤Xalkori(crizotinib)200mgとともに一日二回経口投与する群と、医師が選んだオフレーベル療法を施行する群(8割はnivolumabとipilimumabの併用、残りはpembrolizumabを選択)に2対1割付けして、転帰を比較した。主評価項目のPFS(無進行生存期間、独立中央評価)は各群6.9ヶ月と3.1ヶ月、ハザード・レシオは0.42、p<0.0001となった。共同主評価項目である全生存期間は未成熟だが改善傾向が見られる由で、継続追跡して延命効果を確認し、加速承認を本承認に切替える狙い。G3以上の治療時発現有害事象は下痢や失神、低血圧など。治療関連深刻有害事象の発生率は一桁とのこと。

    ブドウ膜黒色腫の罹患数は米国で年3000人以上、欧加豪を含めると1万人以上で、その半分は転移癌に進行する。転移患者の5~7割はHLA型がA*02:01ではない。尚、A*02:01型にはImmunocore(Nasdaq:IMCR)のGP100・CD3二重特異性T細胞受容体、Kimmtrak(tebentafusp-tebn)が22年に米欧で承認されている。

    リンク: プレス・リリース


    BioNTech、中華ADCを承認申請へ
    (2026年4月11日発表)

    BioNTech(Nasdaq:BNTX)はBNT323(trastuzumab pamirtecan)が、第1相/前期第2相試験の治療歴のあるher2陽性進行内膜腫コフォートで良績を挙げたと発表した。年内の承認申請に向けてFDAと相談する考え。

    中国のDualityBio(映恩生物、HK:9606)から中国外の権利を取得した、抗her2抗体とトポイソメラーゼI阻害剤の抗体薬物複合体。中国では第3相が成功、ある種のher2陽性転移乳癌に承認申請され、今月、受理された。今回の米中豪韓などで実施された試験では、当該コフォートのうちher2発現がセントラルラボで確認されていて免疫チェックポイント阻害剤(ICI)歴を持つ73人における確認ORR(客観的反応率)が49.3%(95%信頼区間37.4-61.3)だった。ICI歴のない患者も含むセントラルラボ確認96人では同47.9%、PFS(無進行生存期間)はメジアンは8.1ヶ月だった。

    G3以上の治療関連有害事象発現率は46.9%、ADCの泣き所であるILD(間質性肺疾患、第3者査読後)はG3以上の発生率が4.8%だった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    第一三共、B7-H3標的ADCの承認申請が受理
    (2026年4月14日発表)

    第一三共はDS-7300(ifinatamab deruxtecan)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年10月10日。

    B7-H3に結合する抗体医薬複合体で、MSD提携の対象。1~3次治療歴のある進展型小細胞肺癌を組入れた第2相IDeate-Lung01試験で、12mg/kgコフォート137人におけるORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が48.2%(95%信頼区間39.6-56.9)、メジアン反応持続期間は5.3ヶ月だった。脳転移のある65人では頭蓋内ORRが46%だった。G3以上の治療関連有害事象発生率は36.5%、治療関連間質性肺疾患/肺臓炎は12.4%でうち2人(1.5%)は致死的だった。

    リンク: プレス・リリース


    3月のEU承認申請
    (2026年4月14日発表)

    EMAによると、3月に承認申請が受理された新規医療用活性成分は以下の通り。

    EMAの承認申請受理実績(26年3月)
    申請者名称一般名種類適応症米国
    LENZ TherapeuticsLNZ100aceclidineAChRアゴニスト成人の老視25/7承認
    GSKGSK3228836bepirovirsenmRNAアンチセンス薬成人の慢性B型肝炎不明
    MSDMK-0616enlicitide経口PCSK9阻害剤成人の原発性高コレステロール血症と混合異脂血症不明
    SavaraMolbreevimolgramostimGM-CSF、吸入用成人の肺胞蛋白症25/12申請
    エーザイ(Nuvation)IbtrozitaletrectinibROS1/NTRK阻害剤成人のROS1陽性進行非小細胞性肺癌25/6承認
    Miltenyi BiomedicineMB-CART2019.1zamtocabtagene autoleucelCD20xCD19 CAR-T成人の大細胞型B細胞リンパ腫不明
    出所:EMAなど。申請者や名称、種類、米国開発状況は当方の推測を含む。

    【承認】


    初の巣状分節性糸球体硬化症用薬が承認
    (2026年4月13日発表)

    Travere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)はFDAがFilspari(sparsentan)をFSGS(巣状分節性糸球体硬化症)に適応拡大したと発表した。第3相がフェールしたためハイリスクと考えていたが、主評価項目の事後的見直しや進行した患者を適応外とする措置が承認につながったように思われる。

    アンジオテンシンIIタイプ1受容体とエンドテリンA受容体のアンタゴニスト。オリジンはブリストル マイヤーズ スクイブのようだ。23~24年に米欧でIgA腎症の治療薬として承認された。FSGSでは第3相DUPLEX試験に8歳以上の原発性FSGS患者371人を組入れて、800mgまで用量漸増する群とirbesartan 300mg群の36週蛋白尿部分寛解率や108週eGFR(推算糸球体濾過量)を比較した。同社はIgA腎症と同様に前者で加速承認を申請し後者で加速承認を本承認に切り変える方針だったが、FDAが蛋白尿をサロゲート・マーカーと認めることに後ろ向きであったため、見送った。後者の解析は23年にフェールし、やっぱり蛋白尿はアテにならないのかと思われたが、今回、コペルニクス的転回が顕現した。

    一因は、患者支援団体が関連学会やFDAと共に実施したカンファレンスで、FSGSの患者は多様であるためeGFRによる薬効評価はミスリーディングであり蛋白尿のほうが適切、という意見が多かったことのようだ。その蛋白尿抑制作用も、被験者の1/3を占めた活性期ネフローゼ症候群を合併するサブグループでは小さかったためか、適応外となった。それ以外の患者では108週UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が44.8%低下しirbesartan群の18.5%低下を上回った。

    Filspariは肝障害懸念に関するREMS(リスク評価緩和戦略)が付されている。FSGS試験における主な有害事象は末梢浮腫、起立性を含む低血圧症、高カリウム血症、眩暈、貧血症。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/4推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
    26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
    26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
    26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
    26/6/5ArvinasのARV-471(vepdegestrant、ER1陽性乳癌)
    26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
    26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
    26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助)
    26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
    26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
    26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
    諮問委員会
    26/4/30腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)



    今週は以上です。

    2026年4月11日

    第1254回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • FDA、GSKのleucovorinの承認を撤回 
    • アムジェン、皮下注用テプロツムマブの第3相が成功 
    • Nuvalent、第2の分子標的薬を承認申請 
    • Ultragenyx、サンフィリッポ症候群A型用薬の再申請が今度は受理 
    • Replimuneの腫瘍溶解性ウイルス療法は今回も承認されず 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    FDA、GSKのleucovorinの承認を撤回
    (2026年4月10日発表)

    FDAは、4月10日付のFederal Register(米国連邦政府官報)で、GSKのWellcovorin(leucovorin calcium)の承認を同日付で撤回すると発表した。GSKの要請に基づき、5mg錠と25mg錠の承認を取消す。

    この葉酸誘導体は米国では1983年に承認され、今日でもmethotrexateなどの副作用を緩和する用途で広く用いられているが、既にGE化していてGSKはとっくの昔に販売を打ち切っている。ところが、昨年、FDAからCFD(脳葉酸欠乏症)に適応拡大申請するよう要請を受け、11月に申請、今年6月に、症例報告などに基づき、葉酸受容体1の遺伝子であるCFD-FOLR1に変異が確認された小児成人の脳葉酸欠乏症向けに承認された。体重40kg以上の患者の例では1~2mg/kg/日且つ最大330mg/日の範囲で用量調整し一日1~6回に分けて経口投与、一回25mg以下が望ましいというアバウトな用量・用法だ。

    Wellcovorinが無くてもGE薬で代用できるが、GE薬のレーベルには承認の根拠となるデータや推奨される用法用量は記載されていないので、結局のところ、文献や、もし収載されているならばコンペンディア等を参照して適否を判断し投与する時代に戻ることになる。米国はこれらの根拠があれば未承認用途に用いることも不可能ではないので、実態的には承認前も後も大して変わらない。同様に、GSKの適応拡大申請も、取消要請も、形だけと言って良いだろう。やり方としては日本の開発要請、希望企業募集のほうが合理的と感じられる。

    リンク: Federal Registerの当該頁(4月10日付)

    【新薬開発】


    アムジェン、皮下注用テプロツムマブの第3相が成功
    (2026年4月6日発表)

    アムジェンは甲状腺眼症用薬Tepezza(teprotumumab-trbw)の皮下注用新製剤が第3相偽薬対照試験で主目的等を達成したと発表した。承認申請に向かうのではないか。

    23年にHorizon Therapeuticsを買収して入手した、抗IGF-1R抗体。20~25年に米日欧で中重度活動性甲状腺眼症の3週毎60~90分点滴静注用薬として承認された。皮下注用はon body injectorで2週毎に5分足らずの時間、投与する。今回の日本も参加したTEPEZZA OBI試験は成人の中重度活動性甲状腺眼症を対象に、24週間治療後の突出応答率(眼球突出が2mm以上減少、かつ反対側が2mm以上突出しない)を偽薬と比較した。各群76.7%と19.6%、有意な差があった。副次的評価項目である突出減少は平均3.17mm対0.80mmだった。主な有害事象は筋痙攣、耳鳴り、体重減など。軽中度の注射箇所反応が見られたが、投与中断/中止に至るものではなかった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    Nuvalent、第2の分子標的薬を承認申請
    (2026年4月7日発表)

    米国マサチューセッツ州ケンブリッジのNuvalent(Nasdaq:NUVL)は米国でNVL-655(neladalkib)を承認申請したと発表した。想定適応症はチロシン・キナーゼ阻害剤(TKI)歴を持つ進行ALK陽性非小細胞性肺癌。血管脳関門透過性を持つALK阻害剤で、TRK(tropomyosin receptor kinase)は阻害しないため中枢神経系副作用が小さく、ALK阻害剤誘導性変異であるG1202R変異にも強い。First-in-humanであるALKOVE-1試験の第2相ポーションで、150mg一日一回経口投与を受けた253人におけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が31%、その64%で反応が12ヶ月以上持続した。中枢神経系疾患を持つ92人ではORR32%、12ヶ月持続率71%だった。既存のALK阻害剤の中でG1202R変異に活性を持つlorlatinibによる治療歴を持つ患者190人ではORR26%、メジアン反応持続期間17.6ヶ月と、それ以外の63人における46%、1年持続率80%より低かった。

    第3相はTKI未経験のALK陽性非小細胞性肺癌450人を組入れて、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を中外製薬/ロシュのAlecensa(alectinib)と比較している。

    同社は昨年、血管脳関門透過性を持ちG2032R変異にも有効なROS1阻害剤、NVL-520(zidesamtinib)を成人のROS1-TKI歴を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌に承認申請しており、今年9月18日に審査期限を迎える。neladalkibが優先審査指定されたら、年内に2剤が相次いで承認される可能性が生まれる。

    リンク: プレス・リリース


    Ultragenyx、サンフィリッポ症候群A型用薬の再申請が今度は受理
    (2026年4月2日発表)

    Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)はFDAがUX111(rebisufligene etisparvovec)の再承認申請を受理したと発表した。審査期限は26年9月19日。

    10万人に一人という希少な常染色体劣性遺伝性疾患であるサンフィリッポ症候群A型(ムコ多糖症IIIA型)の遺伝子療法。欠乏するSGSH遺伝子をアデノ随伴ウイルス9型を用いて導入する。脳脊髄液ヘパラン硫酸をサロゲート・マーカーとして米国で24年に加速承認申請したが、審査完了通知を受領した。CMC(化学、製造、管理)に関する指摘を受けた模様だ。臨床成績などに関する指摘はなかったとのこと。今年1月にCMC問題に回答するとともに長期追跡データを追加提出したが、不十分と指摘され、今回、やっと受理された。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    Replimuneの腫瘍溶解性ウイルス療法は今回も承認されず
    (2026年4月10日発表)

    Replimune Group(Nasdaq:REPL)は24年11月に米国でRP1(vusolimogene oderparepvec)を成人の抗PD-1抗体による治療歴を持つ進行黒色腫向けに承認申請したが、25年7月に続き、2回目の審査完了通知を受領した。1巡目の審査は、生物学的製剤を担当するCBERや腫瘍学薬を担うOCEのトップが介入したのではないかと見る向きもあり、その後、この2名が退任/退任決定したことから、一部で期待も広がっていたが、結局駄目だった。

    興味深いのは、今回、openFDAサイトでいち早く審査完了通知が公開されたこと。ページ数も3頁から7頁に増えている。それによると、バイアスなどを避けるために1巡目とは異なるメンバーが審査したが、Office of Therapeutic Products(OTP)もOncology Center of Excellence(OCE)も薬効の挙証が不十分という結論で一致した。そもそも、21年の段階で、承認申請を意図した試験である第2相IGNYTE試験のデザインにFDAは疑問を呈していた。nivolumab併用でORRが3割台だったが、抗PD-1抗体中/後に進行した患者とはいえ、本当にnivolumab単剤ではこれだけの成果が上がらないのか?前治療で化学療法と併用した患者と抗PD-1抗体だけだった患者を分けて考える必要はないのか?同社は自然歴との比較も実施しているが、患者背景が様々なので比較可能なのか明らかではない。

    同社は加速承認後薬効確認試験という位置付けの第3相試験の途中経過も提出した模様だが、目標症例数の10分の1に過ぎない40例の、事前に設定された評価項目ではないPFS解析なので、信頼性が十分ではない。そもそも、加速承認を取るためには承認の段階で市販後薬効確認試験に目標症例数の過半を組入れ終わっていることが望ましいはずだ。会社側は下記プレス・リリースで開発中止の可能性も示唆しており、FDAは、加速承認してもフェーズIVコミットメントを果たさないリスクを懸念したかもしれない。

    この用途ではIovance Biotherapeutics(Nasdaq:IOVA)の自家TIL(腫瘍浸潤リンパ球)療法、Amtagvi(lifileucel)が24年に米国で加速承認されている。抗PD-1抗体と、BRAF阻害剤が適応になるならBRAF阻害剤による治療歴を持つ成人の局所進行/転移黒色腫を組入れた第2相でORRが31%、その43%は12ヶ月以上持続した。160人中12人が治療関連と見做される死亡だったことが枠付き警告されている。今回の第2相は前例と何が違うのか、今のところ明らかではない。AmtagviもEUではCHMPが薬効の度合いや死亡リスクに懸念を示し申請撤回に至っている。インにせよアウトにせよ紙一重であることが窺われる。

    リンク: Raplimuneのプレス・リリース
    リンク: 審査完了通知(26年4月10日付)
    リンク: 審査完了通知(25年7月21日付)

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/4推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    26/6推ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎)
    26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
    26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
    26/6/2第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L)
    26/6/5ArvinasのARV-471(vepdegestrant、ER1陽性乳癌)
    26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
    26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
    26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助)
    26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
    26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
    26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
    諮問委員会
    26/4/30腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)



    今週は以上です。

    2026年4月4日

    第1253回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • アストラゼネカ、肝細胞腫TACE付随3剤併用試験でPFSを達成 
    • アストラゼネカ、新規低ホスファターゼ症用薬の第3相が成功 
    • AAD:田辺、プロトポルフィリン症用薬の試験成績を発表 
    • トレプロストのIPF試験が2本目も成功 
    • MSDの経口PCSK9阻害剤、3本目の第3相が成功 
    • Viridian社、皮下注用甲状腺眼症薬の第3相が成功 
    • Cogent社、c-KIT阻害剤をGISTにも承認申請 
    • Scholar Rock、SMA用薬を再承認申請 
    • Egetis社、MCT8欠乏症用薬を米国でも承認申請 
    • アイリーア8mgの2年目20週毎投与が承認 
    • イーライリリーの経口GLP-1作用剤が承認 
    • Vertexの嚢胞性線維症薬、カバー率が95%に上昇 
    • バイオジェン、高量スピンラザが米国でも承認 
    • FDA:タブネオスは日本で多くの深刻肝毒性例 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    アストラゼネカ、肝細胞腫TACE付随3剤併用試験でPFSを達成
    (2026年4月2日発表)

    アストラゼネカは、日本も参加した第3相EMERALD-3試験で主目的のPFS(無進行生存期間)を達成したと発表した。切除不能肝細胞腫のTACE(肝動脈化学塞栓術)を受ける患者を組入れて、同社の抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab-actl)と抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)そしてエーザイのVEGFR阻害剤Lenvima(lenvatinib)による周術期薬物療法の便益をTACEだけの群と比較したもの。全生存期間も中間解析で好ましいトレンドが見られたとのこと。尤も、過去のTACE付随試験ではPFSが成功しても全生存の改善が見られなかった事例もあり、また、ImjudoとImfinziだけを併用した群もPFSや全生存期間が向上するトレンドが見られた由なので、解釈は複雑だ。全容の発表や全生存の最終解析結果が待望される。

    Imfinziは類似したデザインの第3相EMERALD-1試験で抗VEGF抗体bevacizumabと併用したところ、PFSがTACEだけの群を有意に上回った(ハザード・レシオ0.77、p=0.032、メジアン値は15ヶ月対8.2ヶ月)。一方、G3/4有害事象発現率も45%対23%で上回った。全生存期間の解析は未成熟。良く分からないのは、bevacizumabを併用しなかった群のPFSハザード・レシオは0.94、メジアン値は10.2ヶ月となりフェールしていることだ。Imfinziは不要なのかもしれないが、作用機序を考えれば、全生存期間におけるハザード・レシオはもう少し良いかもしれない。PFS解析結果は24年1月のASCO胃腸学会で発表されたが、未だ承認されたという話は聞かず、会社側は延命効果が確認されるのを待っている状態なのではないか。

    Lenvimaは、TACEを受ける患者にMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)と併用した第3相LEAP-012試験で偽薬比ハザード・レシオが0.66、メジアン値は14.6ヶ月対10.0ヶ月と良好な成績を上げ、その時点では全生存期間もハザード・レシオ0.8(95%信頼区間0.57-1.11)、p=0.0867と悪くはなさそうな数値が出ていたが、1年後、全生存期間の中間解析がフェールし成功の見込みも低いことから治験終了となった。

    リンク: プレス・リリース


    アストラゼネカ、新規低ホスファターゼ症用薬の第3相が成功
    (2026年3月31日発表)

    アストラゼネカはALXN1850(efzimfotase alfa)の第3相低ホスファターゼ症試験3本の結果を公表した。日欧米で承認されている同社の酵素補充療法、Strensiq(asfotase alfa)の第2世代品で、低量を、週3~6回ではなく2週に1回、皮下注するだけで足りる。

    メインの薬効確認試験と言えるMULBERRY試験は、Strensiqによる治療を受けていない2~11歳の患者29人を試験薬と偽薬に2対1割付けして24週間投与し、25週のRGI-C(放射線学的全般的状態変化)を比較したところ、統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。副次的評価項目のRSS(くる病重症度スコア)も有意に改善。6分歩行テストも偽薬群より改善した。また、Strensiqによる治療を受けている2~11歳の43人を組入れて、試験薬にスイッチする群とStrensiqを継続する群をオープン・レーベルで比較したCHESTNUT試験では、安全性が確認され、副次的評価項目のRGI-CやRSSも維持された。

    Strensiqは欧米では周産期・幼児期発症型や少年期発症型の低ホスファターゼ症が適応で、低フォスファターゼ症患者の8割を占める成人の多くはunmet medical needになっている。ALXN1850はHICKORY試験でStrensiqによる治療を受けていない12歳以上の青少年・成人患者124人を偽薬群と2対1割付けして効果を25週の6分歩行テストで計測したが、トレンドに留まった。成人発症型サブグループの偽薬群の成績が想定以上だったことが影響した模様で、小児発症型サブグループでは臨床的に意味のある便益が見られた由だ。

    以上を踏まえると、Strensiqが適応になる患者に関してはALXN1850のほうが投与頻度が少ない分、良さそうに見える。但し、Strensiqは自然歴対照試験で死亡リスクや侵襲的人工呼吸器装着リスクを大きく抑制する作用が確認されており、症状改善のエビデンスだけで足りるのか、議論の余地があるかもしれない。成人患者向けが承認されれば市場性が大きく膨らむが、主評価項目がフェールした以上、サブグループ分析や副次的/支持的解析結果を総合的に評価することが必要であり、現時点では不透明だ。

    リンク: プレス・リリース


    AAD:田辺、プロトポルフィリン症用薬の試験成績を発表
    (2026年3月30日発表)

    田辺ファーマはAAD(米国皮膚科学会)で選択的メラノコルチン1受容体作動剤dersimelagonの第3相INSPIRE試験成績を発表した。光線過敏症の既往を有する12歳以上の小児・成人の赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)およびX連鎖性プロトポルフィリン症(XLP)患者165人を偽薬群と試験薬群(200mgを一日一回経口投与)に無作為化割付けして、12-16週における、日光曝露に伴う前駆症状が発現するまでの時間を評価したところ、偽薬比23分余遅く、p=0.004と有意に改善した。副次的評価項目では総疼痛イベントも39%少なかった。有害事象はメラノサイト性母斑などが増加した。米国でローリング承認申請に着手している。

    プロトポルフィリン症は遺伝子性疾患で血球などにプロトポルフィリンが蓄積し、皮膚が光線過敏を示す。日光曝露が続くと疼痛が発現し、数日間持続する可能性もあるようだ。

    リンク: プレス・リリース(和文)


    トレプロストのIPF試験が2本目も成功
    (2026年3月30日発表)

    United Therapeutics(Nasdaq:UTHR)は、Tyvaso(treprostinil、ネブライザ吸入用)の第3相IPF(特発性肺線維症)試験がTETON-2に続きTETON-1も主目的を達成したと発表した。FVC(努力肺活量)の52週間の悪化が49.9mLと偽薬群の136.4mLを下回り、偽薬調整後で95.6mL改善、統計的に有意だった。nintedanibなど承認薬の同時使用や喫煙、酸素療法の併用の有無を問わず便益が見られた。副次的評価項目である臨床的悪化リスクも有意に低下した。忍容性面で新たなシグナルは見られなかった。夏の終わりまでに適応拡大申請する考え

    TyvasoはプロスタグランジンI2製剤。09年に米国で、22年には日本でも持田製薬のトレプロストとして、肺高血圧症向けに承認された。

    リンク: プレス・リリース


    MSDの経口PCSK9阻害剤、3本目の第3相が成功
    (2026年330月日発表)

    MSDは経口PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)阻害剤のMK-0616(enlicitide decanoate)を高脂血症などの治療薬として開発中で、既に3本の第3相試験の成功が公表されている。このうち、実薬対照試験であるCORALreef AddOn試験の成績がACC(米国心臓学会)で発表された。アテローム硬化性心血管疾患が既往または高リスクでスタチンを服用している高脂血症患者301人を、enlicitide(20mg)群、ACL阻害剤のbempedoic acid(180mg)群、NPC1L1阻害剤のezetimibe(10mg)群、そしてbempedoic acid(180mg)とezetimibe(10mg)を併用する群に2:1:1:2割付けして56日間投与したところ、enlicitide群のLDL-Cは64.6%低下し、bempedoic acid群比56%、ezetimibe群比36%、併用群比28%低下と優れた治療効果を示した。

    類似した患者層を組入れた偽薬対照試験、CORALreef Lipidsでは偽薬修正後で5-6割の治療効果を示した。ヘテロ接合性家族性高脂血症のスタチン・アドオン試験であるCORALreef HeFHでも偽薬修正後6割近く低下した。日本も参加しているアウトカム試験も進行中。米国のIRA(インフレ抑制法)の影響で承認申請が遅れる可能性もあったようだが、昨年12月にはFDAからCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)を受領しており、承認申請に向かいそうだ。

    リンク: プレス・リリース


    Viridian社、皮下注用甲状腺眼症薬の第3相が成功
    (2026年3月30日発表)

    米国のViridian Therapeutics(Nasdaq:VRDN)は抗IGF-1R抗体VRDN-003(elegrobart)が第3相活性期甲状腺眼症試験、REVEAL-1で主目的を達成したと発表した。24週PRR(眼球突出応答率)が4週毎投与群は54%、8週毎群は63%となり、偽薬群の18%を有意に上回った。副次的評価項目である突出の減少幅も有意に上回った。慢性期患者を組入れたREVEAL-2試験の結果は第2四半期に判明する見込み。

    同社は類薬のVRDN-001(veligrotug)を甲状腺眼症の治療薬として欧米で承認申請しており、米国のPDUFA(処方薬ユーザー・フィー法に基づく審査完了目標日)は今年6月30日。10mg/kgを3週毎に点滴静注する。一方、elegrobartは半減期が長いため4~8週毎の投与が可能で、オートインジェクターで皮下に自己注することを想定している。ただ、今回の試験成績は競合品などと比べてやや見劣りする。

    日本は25年7月にキッセイ薬品が両剤の権利を取得している。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    Cogent社、c-KIT阻害剤をGISTにも承認申請
    (2026年4月1日発表)

    Cogent Biosciences(Nasdaq:COGT)は米国でCGT9486(bezuclastinib)の消化管間質腫瘍(GIST)における承認申請を完了したと発表した。imatinibによる治療歴を持つ患者を組入れた第3相PEAK試験で、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン16.5ヶ月とsunitinib群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.50だった。一方、治療関連投与中止の発生率は各群7.4%と3.8%だった。

    この申請はFDAがReal-Time Oncology-Reviewの対象としており、昨年12月に申請され今年12月30日に審査期限を迎える非進行全身性肥満細胞症用途と前後して承認される可能性があるだろう。進行した全身性肥満細胞腫等の承認申請用試験でもORR(客観的反応率)が49%という成績を挙げており、今上期中に承認申請する考え。

    CGT9486はc-KIT阻害剤でD816V変異などのエクソン17変異型に活性を持つ。第一三共が2011年に買収したPlexxikonからPLX9486をライセンスした企業が、株式公開企業の換骨奪胎型逆買収を経て、社名を上記に変更したもの。

    リンク: プレス・リリース


    Scholar Rock、SMA用薬を再承認申請
    (2026年3月31日発表)

    Scholar Rock(Nasdaq:SRRK)はSRK-015(apitegromab)をFDAに再承認申請したと発表した。フィル・フィニッシュ工程を担う、ノボ ノルディスクが買収し運営しているCatalentのIndiana施設で発生した製造問題の余波を受けた複数の企業の一つで、昨年9月に審査完了通知を受領した。その後、FDAとの相談やノボ・FDA間の協議を経て、問題の施設の再査察は未だこれからだが、米国における第2のフィル・フィニッシュ施設の情報も含めて、提出した。同社は、FDAが30日内に受理し審査期限を9月下旬に設定すると予想している。

    TGFベータ・スーパーファミリーの一つであるmyostatinの前駆体・不活性体であるproMyostatinに結合する抗体。活性化されるのを妨げ、筋力低下を抑制する。欧州でも審査中で、会社側は年央に審査結果と予想している。

    リンク: プレス・リリース


    Egetis社、MCT8欠乏症用薬を米国でも承認申請
    (2026年3月27日発表)

    スウェーデンのEgetis Therapeutics AB(Nasdaw Stockholm:EGTX)は米国でEmcitate(tiratricol)をMCT8(モノカルボン酸トランスポーター8)欠乏症用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年9月28日。

    この疾患は超希少なX染色体性遺伝子疾患で、甲状腺ホルモンの一つであるT3を細胞内に移送するトランスポータが欠乏し、知能や運動機能の発達障害が表れる。tiratricolはT3甲状腺ホルモン類縁体で、フランスで甲状腺ホルモン抵抗性症候群などの治療薬として半世紀の市販歴がある。細胞膜を通過するのにMCT8を必要としない。EUでは25年2月にRare Thyroid Therapeutics International ABが承認を取得。米国は別途、ReTRIACt離脱試験を実施して投与を止めると血清T3水準が増加してしまうことを確認し、親会社に相当するEgetisが承認申請した。尚、日本は23年に藤本製薬が権利を導入している。

    リンク: プレス・リリース

    【承認】


    アイリーア8mgの2年目20週毎投与が承認
    (2026年4月2日発表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はFDAがEylea HD(aflibercept 8mg)の20週毎投与を承認したと発表した。新生血管加齢性黄斑変性や糖尿病性網膜症の治療に用いる場合には、8mgを最初は4週毎に3回、硝子体内注射した後に、状態に応じて8~16週毎投与に移行し、応答が持続しないようなら4週毎に戻すことを検討するというプロトコルだったが、今回、応答が1年以上持続する場合は20週毎投与にシフトするオプションが承認された。

    同社はEylea HDに関して適応症や用法に関する様々な変更申請を行ったが、ノボ ノルディスクが買収したCatalant Indiana工場の製造問題に巻き込まれ、承認が遅れていた。プリフィルド・シリンジの承認も遅れているが、充填委託会社を変更して申請中で、今月中に審査結果が判明する見込みだ。

    リンク: プレス・リリース


    イーライリリーの経口GLP-1作用剤が承認
    (2026年4月1日発表)

    イーライリリーはFDAがFoundayo(orforglipron)を成人の肥満症や体重関連医療問題を伴うオーバーウェイトの治療薬として承認したと発表した。カロリー抑制食事療法及び身体活動強化と共に施行する(第3相試験では週150分以上の身体活動を行うようカウンセリングした)。GLP-1作用剤だが注射ではなく一日一回経口投与する。製剤が第3相試験までのものと異なっており、第3相では各群6mg、12mg、または36mgを目標に用量漸増したが、最終製品は0.8mg一日一回で開始して30日おきに2.5mg、5.5mg、そして、成果や忍容性に応じて、目標用量である9mg、14.5mg、または17.2mgに漸増する。経口GLP-1作用剤の承認はノボ ノルディスクのsemaglutideを含有するWegovyピル(肥満症)、Ozempicピル(二型糖尿病)、Rybelsus(同)に次ぐ。

    Foundayoの第3相成績は、糖尿病を合併しない患者を組入れたATTAIN-1試験では72週間の体重減少が目標用量群により7~11%となり、偽薬群の2%を上回った。糖尿病合併者を組入れたATTAIN-2試験では5~9%対2%で上回った。尚、Wegovy 25mgピルは糖尿病非合併患者のOASIS-4試験で13%対2%で上回った。ノボ ノルディスクが肥満薬の学会で発表した、ATTAIN-1試験とOASIS-4試験のポピュレーション調整非直接的比較研究、ORIONによると、減量率はWegovyのほうが3%上回った。直接比較試験を行えばはっきりするかもしれないが、この程度の差だとノイズを拾ってしまうリスクもありそうだ。

    18年に中外製薬からライセンスしたもの。ロシュが第一選択権を持っていたが行使しなかった。FDAのCNPV(委員長国家的優先バウチャ)を受領しており、承認申請から50日で承認された。

    図表:CNPV案件の審査結果
    企業対象疾患など結果
    USAntibioticsAugmentin XR(amoxicillin、
    clavulanate potassium)
    重要な抗菌剤の国内生産承認(25/12)
    Disc MedicineDISC-0974(bitopertin)赤芽球性プロトポルフィリン症審査完了(26/2)
    ベーリンガー・インゲルハイムHernexeos(zongertinib)her2陽性肺癌承認(26/2、44日審査)
    ジョンソン エンド ジョンソンTecvayli(teclistamab-cqyv)
    ・Darzalex Faspro(daratumumab、
    hyaluronidase-fihj)併用
    多発骨髄腫承認(26/3、55日審査)
    ノボ ノルディスクWegovy 7.2mg(semaglutide)肥満症承認(26/3、54日審査)
    イーライリリーorforglipron肥満症承認(26/4、50日審査)
    出所:FDA発表を基に作成

    リンク: イーライリリーのプレス・リリース
    リンク: FDAのCNPV供与案件承認に関するプレス・リリース


    Vertexの嚢胞性線維症薬、カバー率が95%に上昇
    (2026年4月1日発表)

    Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は、嚢胞性線維症用3剤合剤であるAlyftrek(vanzacaftor、tezacaftor、deutivacaftor)とTrikafta(elexacaftor、tezacaftor 、ivacaftor)の有効範囲追加がFDAに承認されたと発表した。主因であるCFTR変異には様々なものがあり、同社は第1号製品のKalydeco(ivacaftor)が2012年に欧米で初承認されて以降、様々な変異型の臨床試験やin vitro試験を行い、有効範囲を確認してきた。今回、Alyftrekは564変異型に、Trilaftaは521変異型に、有効である旨の記述がレーベルに掲載された。米国の対象患者が800人増加し、嚢胞性線維症患者の95%をカバーできるようになった由だ。10年間、よくやり遂げましたね。

    リンク: プレス・リリース


    バイオジェン、高量スピンラザが米国でも承認
    (2026年3月30日発表)

    バイオジェンは、FDAが脊髄性筋萎縮症用薬Spinraza(nusinersen)の高用量規格・レジメンを承認したと発表した。16年に初承認時の用量用法は12mgを当初は第0、14、28、58日に、その後は4ヶ月毎に、髄腔内投与する。高用量レジメンは当初は50mgを第0、14日に、その後は39mgを4週毎に、髄腔内投与する。第2/3相DEVOTE試験のパートBで、第6月のCHOP-INTENDが初承認時のエビデンスであるENDEAR試験のシャム群の適合例20人を有意に上回った。死亡または永続的換気(人工呼吸器装着など)のリスクもハザード・レシオが0.33、p=0.0006だった。尚、この試験は12mgレジメンを施行する群も設定されているが、日本の資料によると、CHOP-INTENDが12mg群比ハザード・レシオ0.70だったがp=0.33なので有意水準ではない。

    高用量レジメンは日本では昨年9月に承認、EUでも今年1月に承認されたが、米国ではCMC(化学・製造・管理)に関わる追加情報などを求められ承認が遅れていた。

    リンク: プレス・リリース

    【医薬品の安全性】


    FDA:タブネオスは日本で多くの深刻肝毒性例
    (2026年3月31日発表)

    FDAはアムジェンのANCA関連血管炎用薬Tavneos(avacopan)に関する安全性通達を発出した。このC5a受容体阻害剤は21年9月に日本でライセンシーのキッセイ薬品が世界初承認を取得し、アムジェンも翌月に米国で、22年1月にはEUでも、承認を取得した。薬物誘導性肝障害のリスクは承認前から知られていたが、市販後に致死例やVBDS(胆管消失症候群)合併例が報告されているため、改めて連絡した。FDAは、24年10月までの期間にavacopanとの関連性に関する合理的なエビデンスのある76例を特定した。うち死亡は8人、入院は54例あった。深刻な合併症であるVBDSは7例で3人が死亡した。地域的には極めて偏っており、日本が66例、米国5例、欧州4例などとなっている。

    FDAは、定期的に肝機能検査などを行い、ALT/AST(通常上限の3倍超)やALP(同2倍超)の異常上昇や症候性胆汁鬱滞などが見られた場合は投与を中止、代替的治療法などを検討するよう推奨している。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】



    PDUFA
    26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/4推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/3バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加)
    26/4/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
    26/4/10ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    諮問委員会
    26/4/30腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)

    審査期限変更:Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)は7月6日に、LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)は8月29日に、変更。
    訂正とお詫び:アストラゼネカの二品の腫瘍学諮問委員会は、4月30日と書くべきところを3日と誤記していました。

    今週は以上です。