2026年7月4日

第1266回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ロシュのKRAS-G12C阻害剤が既存薬に勝つ 
  • BeOne社、ブルキンザの未治療MCL試験が成功 
  • エプキンリ、レブラミドを併用したDLBCL二次治療試験が成功 
  • フリードライヒ運動失調症用薬のローリング申請に着手 
  • VistaGen、点鼻ステロイドの第3相社交不安障害試験がまたフェール 
  • ロシュ、エンスプリングを甲状腺眼症に適応拡大申請 
  • Sarepta、二種類のDMD用薬の本承認切替を申請 
  • Replimune、rHSV-1療法を再申請 
  • SOBIの新規痛風薬は審査完了に 
  • Lantheusの新規造影剤も審査完了に 
  • FDA、Capricor社のDMD用薬を諮問委員会に上程へ 
  • Praxis社、抗癲癇薬の審査期限が延期に 
  • CRISPR技術を用いた薬が5~11歳も利用可能に
  • GvHDが起き難い造血幹細胞移植用薬が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


ロシュのKRAS-G12C阻害剤が既存薬に勝つ
(2026年7月2日発表)

ロシュは次世代KRAS-G12C阻害剤RG6330(divarasib)が第3相先輩対照試験で主目的などを達成したと発表した。承認申請に向かう考え。この日本も参加したKrascendo 1試験は、KRAS-G12C変異を持つ治療歴のある進行非小細胞性肺癌338人を対象に、一日一回経口投与する便益を既承認の第1世代品であるsotorasib(アムジェンのLumakras)またはadagrasib(BMSのKrazati)を投与する群とオープン・レーベルで比較したもの。主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を見た。副次的評価項目の全生存期間も中間解析で有意差が出た。安全性に関する新規シグナルは見られなかった由。

このほかに初めて治療を受けるG12C変異型進行非小細胞性肺癌を対象に抗PD-1抗体pembrolizumabと併用する便益をpembrolizumab、pemetrexed、白金薬の3剤併用と比較するKrascendo 2試験の結果が28年に、切除術を受けたG12C変異非小細胞性肺癌のアジュバント療法試験であるKrascendo 3試験の結果が32年ごろに、判明する見込み。

LumakrasとKrazatiは第2相試験のORR(客観的反応率)と反応持続期間に基づき米国で加速承認されたが、前者はdocetaxel対照市販後薬効確認試験でメジアンPFSの群間差があまり大きくなく全生存期間は検出力不足とは言え1.01と今一つであったことから、改めて市販後薬効確認試験を実施する方向。後者は市販後薬効確認試験でメジアンPFSが5.5ヶ月とdocetaxel群の3.8ヶ月を上回り、ハザード・レシオも0.58とLumakrasの試験の0.66と見比べても良好だったが、このデータに基づくEU初承認から2年以上経った今でも米国では本承認切替が承認されていない。米国の対象患者数は年2~3万人と肺癌の割には少ないこともあり、両剤とも売上高が伸び悩んでいる。

krasは薬で働きかけるのが困難な、undruggableな標的と言われていたが、やっと上記二剤が実用化された。中間で延命効果が確認されたとなると相応に好成績が期待され、次世代品の登場で普及が進むのか、データ発表が待ち望まれる。

リンク: プレス・リリース


BeOne社、ブルキンザの未治療MCL試験が成功
(2026年6月30日発表)

ビーワン・メディシンズはBTK阻害剤Brukinsa(zanubrutinib)が第3相MANGROVE試験の中間解析で主目的を達成したと発表した。26年下期にグローバルな適応拡大申請を行う考え。

この日本も参加した試験は、未治療の成人のマントル細胞腫(MCL)を対象に、rituximabと併用で、80mgカプセル2錠ずつを一日二回、経口投与する便益をBRレジメン(bendamustineとrituximabの併用)と比較した。主評価項目であるPFS(無進行生存期間、盲検評価委員会方式)のハザード・レシオが0.57と、大変良い結果になった。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だが改善傾向が見られるとのこと。安全性は過去と同様だった。

本剤は19~21年に米欧でマントル細胞腫の二次治療に承認、慢性リンパ性白血病(小リンパ球性リンパ腫を含む)などの用途で日本でも24年に初承認された。このほかに、米国の場合で辺縁帯リンパ腫やワルデンストレームマクログロブリン血症、濾胞性リンパ腫の再発治療にも承認されている。

リンク: プレス・リリース


エプキンリ、レブラミドを併用したDLBCL二次治療試験が成功
(2026年6月29日発表)

アッヴィはEpkinly(epcoritamab-bysp)が第3相EPICOR DLBCL-4試験で主目的を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。この日本も参加した試験は、抗CD20抗体を含む一次以上の治療歴を持ち、自家幹細胞移植がフェール、再発、または不適でCAR-T療法が不可能な再発/難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫360人を組入れて、Epkimly(28日サイクルで第1-3サイクルは毎週、第4サイクル以降は4週毎投与)とRevlimid(lenalidomide、28日サイクルで21日間反復投与)を最大12サイクル施行する群と、R-GemOXレジメン(rituximab、gemcitabine、oxaliplatinの併用、4サイクル)をオープン・レーベルで比較した。主評価項目はPFS(無進行生存期間)。追跡打切り例の処理に関してFDAと海外規制機関が異なった方法を示唆した模様だが、米国向けハザード・レシオは0.40、海外向けでも0.44と、似たような結果になった。

主解析や副次的解析の対象ではないが、おそらく参考群として、Epkinlyだけ12サイクル投与する群も設定されているが、プレス・リリースには言及されていない。

Epkinlyはジェンマブが創製した抗CD3xCD20二重特異性抗体。日米では共同で、、それ以外の地域ではアッヴィが、開発販売している。23年に米欧日で再発性DLBCLに単剤投与が承認され、ある種の濾胞性リンパ腫にも3次治療単剤投与が承認、再発治療Revlimid及びrituximab併用が米国で承認、日欧でも申請中。

リンク: プレス・リリース


フリードライヒ運動失調症用薬のローリング申請に着手
(2026年6月29日発表)

米国のLarimar Therapeutics(Nasdaq:LRMR)は米国でCTI-1601(nomlabofusp)のローリング承認申請に着手したことを明らかにした。フリードライヒ運動失調症の治療薬で、患者で欠乏しているフラタキシン(FXN)の前駆体を一日一回皮下注するもの。40人程度の小規模な試験の、皮膚FXN量に基づき、加速承認を求める。

このサロゲート・マーカーは、FXN変異を持つが無症状の患者では正常値(8.2pg/mcg)の50%以上を維持している。1年間の治療で9人中9人の数値が正常値の50%超に達した。mFARS(修正フリードライヒ運動失調症評価尺度、n=13)は1.0点改善、自然歴データの1.6点悪化を上回った。事前相談でFDAはこれらのデータに基づく申請を許容したとのこと。但し、安全性データベースが少ないことは要検討事項と回答した。

米国のフリードライヒ運動失調症患者数は推定5000人。フラタキシン欠乏を改善する薬はまだない。酸化ストレスに対応するパスウェイを活性化すべきNrf2の発現低下が見られ、バイオジェンのNrf2活性化剤、Skyclarys(omaveloxolone)が23~24年に米欧で承認されている。臨床試験(n=82)で48週mFARSが1.55点改善し、偽薬群の0.85点悪化を有意に上回った。これと比べると、nomlabofuspの開発プログラムは規模の面でも、対照試験でない点でも、見劣りする。

リンク: プレス・リリース


VistaGen、点鼻ステロイドの第3相社交不安障害試験がまたフェール
(2026年6月30日発表)

米国カリフォルニア州のVistaGen(Nasdaq:VTGN)は、PH94B(fasedienol)点鼻スプレーの第3相PALISADE-4試験がフェールしたと発表した。SAD(社交不安障害)の患者238人を組入れて聴衆の前でスピーチさせて人為的に発症させ、治療効果を検討したが、SUDS(Subjective Units of Distress Scale)の低下が9.5点と偽薬群の11.4点を下回り、副次的評価項目もフェールした。

このような場合のベンチャー企業の恒例である事後的サブグループ分析で、被験者の過半を占める123人の大変重い(LSAS(Liebowitz Social Anxiety Scale)が95以上)患者群では12.8点対3.7点、群間差9.1点、名目p=0.036と好都合な数値が出た。同社は、このLSASを主評価項目とする試験を実施して、第3相を4本実施して唯一成功したPALISADE-2試験と合わせて、承認申請する方向でFDAと相談する考え。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


ロシュ、エンスプリングを甲状腺眼症に適応拡大申請
(2026年6月30日発表)

ロシュは米国でEnspryng(satralizumab-mwge)を甲状腺眼症に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年10月15日。二本の第3相試験(一本は日本も参加)で4週毎皮下注する便益を偽薬と比較したところ、24週奏効率(眼球突出が2mm以上減少し、反対側の眼球は2mm以上突出しない)が一本は49%対31%、もう一本は53%対23%だった。

グループの中外製薬が創製した抗IL-6受容体リサイクリング抗体。20~21年に日米欧でNMOSD(視神経脊髄炎スペクトラム障害)に承認され、適応拡大も進展している。

リンク: プレス・リリース


Sarepta、二種類のDMD用薬の本承認切替を申請
(2026年6月30日発表)

Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)はデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)治療薬として米国で加速承認された2種類のエクソン・スキップ薬の本承認切替を申請し受理されたと発表した。審査期限は27年2月28日。

同社のエクソン・スキップ薬はExondys 51(eteplirsen)、Amondys 45(casimersen)、Vyondys 53(golodirsen) が、ジストロフィンのmRNAの、夫々、エクソン51、45、53の発現を止めることで治療可能なDMDの治療薬として承認されている。いずれも加速承認なので市販後薬効確認試験を成功させ本承認に切替える必要がある。

今回、切替申請されたのはAmondys 45とVyondys 53。第3相ESSENCE試験に6~13歳の患者225人を組入れて、患者のタイプに応じてどちらかの薬または偽薬に2対1割付けして96週間治療し、4段昇段速度のベロシティを比較した。群間差は0.06歩/秒、p=0.309とフェールしたが、COVID-19流行期に治療した患者57人を除外した解析では、0.11歩/秒、p=0.09と上向いた。同社はFDAとの相談を踏まえて、リアル・ワールド・スタディのデータと共に提出し、本承認を求めた。

同社のExondys 51(eteplirsen)はCDER(小分子薬等の承認審査を担当)のヘッドであったJanet Woodcockの後押しで承認されたが、承認に批判的だったVinay Prasadが25年にCBERのディレクターに就任したことで緊張が走った。しかし、今年4月にPrasadが退任、後任に指名されたKatherine Szarama代行もFDA長官の交代後に短期間で退任と、上層部の人員が一新されたことで、賛否両論ありそうな新薬の見通しがもう一層不透明を上塗りしたような状況にある。今回も、フェールはフェールなので、見通しは難しい。当局は希少難病であることを考慮するだろうが、患者や医療保険は、便益が明確でない薬に数十万ドルを払うことを止む無しと受け止めるだろうか?

リンク: プレス・リリース


Replimune、rHSV-1療法を再申請
(2026年6月26日発表)

米国のReplimune Group(Nasdaq:REPL)はRP1(vusolimogene oderparepvec)の承認申請を再提出し受理されたと発表した。クラス1審査で、審査期限は26年8月2日。FDAは7月に諮問委員会に上程する考え。昨年7月に審査完了通知を受領したが、FDA上層部が次々と退任したことで命運が変わるかどうか、注目される。

HSV-1(単純ヘルペスウイルス1型)の遺伝子にGALV(テナガザル白血病ウイルス)由来の遺伝子やGM-CSFの遺伝子を導入して殺腫瘍力や免疫原性を増強した、ウイルス療法。抗PD-1抗体に応答しなかった黒色腫患者140人を組入れてOpdivo(nivolumab)と併用する効果を検討した第2相IGNYTE試験でORR(客観的反応率、RECIST 1.1ベース独立中央評価)が33%、メジアン反応持続期間は35ヶ月超だった。市販後薬効確認となるべき第3相IGNYTE-3試験が進行中で、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の併用/順次投与に不応または抗CTLA-4抗体不適なステージIIIb/IV黒色腫を組入れて、Opdivo(nivolumab)と併用する便益をOpdualag(nivolumabと抗LAG3抗体relatlimab-rmbwの合剤品)など医師が選んだ治療法と比較している。

24年に第2相のデータで加速承認を申請したが、デザインが不適切などの理由で審査完了通知を受領した。申請前や申請中の会議では議論に上がらなかった事項も指摘されたもようであり、一説によると、審査担当者等は前向きだったが上層部が反対した。同社は25年10月に第3相の一部データなどを提出して再申請し、FDA側は最初の審査と異なるメンバーが担当したが、結論は変わらなかった。Opdivo単剤投与とどの程度違うのか、対照試験が実施されていないため評価できないこと、PFS(無進行生存期間、治験医評価)は事前に設定された評価項目ではないことなどの指摘を受けた。

連邦政府が議会の承認を得て任命するFDAの上層部は、25年12月以降、CDER(小分子薬担当)のヘッドであるRichard PazdurやCBER(生物学的製剤棟を担当)ヘッドのVinay Prasad、そして今年5月にはMarty MakaryFDA長官まで、退任した。HHS(米国連邦保健福祉省)長官のRobert F. Kennedyやトランプ大統領の不興を買ったためと報じられている。RP1の承認に反対した権力者たちの退任は当社に幸いするかもしれない。

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


SOBIの新規痛風薬は審査完了に
(2026年6月26日発表)

SOBI(STO: SOBI)は米国でNASP(nanoecapsulated sirolimus plus pegadricase)を成人の管理不良痛風用薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。生物学的成分の生産管理戦略や生産委託先の問題が原因で、薬効や安全性に関する言及はなかった由。

mTOR阻害剤を投与した後にPEG化ウリカーゼを投与することで後者に対する抗体が生成されるのを抑制し、作用期間延長を実現するもの。第3相では28日毎に投与した。米国のSelecta Biosciences(Nasdaq:SELB)から中国外の製造開発商業化権をライセンスした。

リンク: プレス・リリース


Lantheusの新規造影剤も審査完了に
(2026年6月26日発表)

米国のLantheus Holdings(Nasdaq:LNTH)はLNTH-2501(Gallium-68 edotreotide)を成人小児のソマトスタチン受容体陽性神経内分泌腫瘍におけるPET造影診断剤として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。生産委託先におけるunresolved conditionを指摘された。良く分からない表現だが、もしかしたら、査察時観察事項があったがまだ正式な書簡を送付していないため製造施設の欠陥が理由とは書けないとか、あるいは、第2次トランプ政権による政府職員リストラの影響で査察が遅れているとか、いう話かもしれない。

リンク: プレス・リリース


FDA、Capricor社のDMD用薬を諮問委員会に上程へ
(2026年6月29日発表)

FDAは今年7月29日にCTGTAC(細胞、組織、及び遺伝子療法諮問委員会)を招集し、Capricor Therapeutics(Nasdaq:CAPR)のCAP-1002(deramiocel)について意見を聞くことを発表した。

本件は、昨年6月に諮問委員会招集予定が事前縦覧項目として連邦官報に掲載されたことがあるが、実現せず、翌月、審査期限の1ヶ月以上前に、審査完了通知が送付された。当時のCBER(生物学的製剤などを担当)のヘッドであったVinay Prasadが承認に反対したのではないかと報じられている。その後、第2次トランプ政権下でコンセンサスや担当審査官と異なる判断を乱発した政治的任命者が次々と退任し、評価が一変する可能性が生じた。とはいえ、組織としての連続性の建前を守るためには、それなりに大きな根拠を用意する必要がある。今回の諮問委員会も、デュー・プロセス的な手段に過ぎないのかもしれない。あるいは、旧上層部の下、殆どストップしていた諮問委員会が増え始めており、前回、上層部に握り潰された諮問委員会を蘇らせただけかもしれない。

CAP-1002は他家心臓球由来細胞療法。同社は第2相HOPE-2試験で第12月PULが偽薬比有意に改善したと発表したが、FDAの25年7月の審査完了通知によると、計画通りの解析はフェールしており、同社は正規分布などを前提としないノンパラメトリック検定に基づき統計的に有意と主張していた。今回の主エビデンスは第3相で第12月PUL(Performance of the Upper Limb)総スコアの進行が偽薬比54%小さく、p=0.029だったことなので展望は改善しているはずだが、会社側の発表を鵜呑みにしてよいものか、躊躇もある。

リンク: プレス・リリース


Praxis社、抗癲癇薬の審査期限が延期に
(2026年6月29日発表)

米国のPraxis Precision Medicines(Nasdaq:PRAX)はPRAX-562(relutrigine)を変異SCN2A/SCN8A型のDEEs(発達性およびてんかん性脳症)の治療薬としてFDAに承認申請し優先審査を受けているが、審査期限が9月27日から12月27日に延期された。既存の臨床試験データの追加的感度分析を提出したことが申請内容の重大な変更と見做されたため。追加的臨床試験の必要性や、安全性や製造に関する懸念は言及されていない由。

持続性ナトリウム電流阻害剤。SCN2A(電位依存性ナトリウム・チャネルNaV1.2をコード)やSCN8A(同NaV1.6をコード)に変異を持つ2歳以上の患者を組入れたEMBOLD試験の仮説検証的コフォート(76例)の中間解析で第16週の癲癇頻度が偽薬比大きく低下したためデータ監視委員会が中止を勧告した。偽薬比53%低下、どちらの変異型にも同様な成果を示した由。

米国のSCN2A/8A型DEEs患者数は推定5000人。第3相は他のタイプも含めたEMERALD試験が進行中。

リンク: プレス・リリース

【承認】


CRISPR技術を用いた薬が5~11歳も利用可能に
(2026年7月1日発表)

Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)はFDAがCasgevy(exagamglogene autotemcel)の適応年齢下限をこれまでの12歳から5歳に引き下げたと発表した。血管閉塞クリーゼを繰り返す鎌状赤血球病と輸血依存ベータ・サラセミアを治療する世界初のCRISPR/Cas9療法薬で、患者から採取したCD34陽性細胞の遺伝子を編集し、本来なら胎児期や新生児期にしか発現しない胎生ヘモグロビン(HbF)などが発現されるように改変した上で患者に戻すもの。23~24年に英米欧で承認された。オリジンはCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)で、Vertexは15年に6品に関する共同研究を開始し、2年後に本剤をライセンスした。

Casgevyは25年11月にCNPV(FDA長官の国家的優先バウチャ)の対象に選定された。元々、不透明なプログラムが、立ち上げた人たちの退任で更に不透明になっており、もしかしたら、今回の件が対象だったのかもしれないが、FDA側からは特に発表もないので藪の中だ。

リンク: プレス・リリース


GvHDが起き難い造血幹細胞移植用薬が承認
(2026年6月30日発表)

FDAはOrca Bio(未上場)のTregzi(allogeneic regulatory T cell immunotherapy with HSPC and T cells-vldq)を成人血液癌のHSPC(造血幹・前駆細胞)移植用薬として承認した。通常のHSPCを移植する前に制御的T細胞を投与することで、深刻な合併症である慢性移植片宿主病(cGvHD)や死亡のリスクを抑制する。警告注意事項は移植不全、GvHD、点滴反応など。

近親など適合ドナーの末梢血由来のHSPCと、制御的T細胞、そして通常のT細胞を順に投与し、2日後と3日後に通常T細胞を再投与するもの。第3相Precition-T試験で急性骨髄性白血病などの患者187人を組入れて、骨髄破壊的前処理後にTregzoまたはmethotrexateをtacrolimusと共に投与したところ、cGVHDなき生存のハザード・レシオが0.26、12ヶ月無cGVHD生存率が78%対38%と、大変良い結果が出た。副次的評価項目の全生存は未成熟だがハザード・レシオ0.49、p=0.11823、1年生存率94%対83%だった。

報道によるとWAC(問屋取得価格)は42.8万ドル。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: Orca Bioのプレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】



PDUFA
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/7推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/7/3Ascelia Pharma ABのOrviglance(manganese chloride tetrahydrate、重度腎障害患者の肝MRI造影剤)
26/7/7Vera Therapeuticsのatacicept(IgA腎症)
26/7/17Celcuityのgedatolisib(HR+her2-進行乳癌)
26/7/23Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
26/7/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
26/7/24大塚製薬のcentanafadine(ADHD)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推武田薬品のTAK-861(oveporexton、ナルコレプシータイプ1)
26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/2ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
26/8/5モデルナのmRNA-1010(季節性インフルエンザ・ワクチン)
26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
26/8/17ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv、筋層浸潤膀胱癌術前術後、pembrolizumab併用)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
諮問委員会
26/7/23-24薬局調剤諮問委員会(PCAC):7種類のペプチド薬について薬局調剤を合法化する件
26/7/29CTGTAC:Capricorのderamiocel(デュシェンヌ型筋ジストロフィーにおける心筋症の治療)


今週は以上です。

2026年6月27日

第1265回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 欧州でもタブネオスの承認取消勧告 
  • 欧州委員会がインフルエンザ・ワクチンの情報提供活動に捜査開始 
  • MSD、抗TL1A抗体の第3相が成功 
  • LSD類薬の第3相鬱病試験が成功 
  • Exelixis、承認申請中の新規VEGF阻害剤は一部患者に効果が弱い 
  • Regenxbio、FDAの姿勢軟化を受けて再申請へ 
  • ファイザー、抗インテグリン抗体薬物複合体の第3相がフェール 
  • 新規禁煙補助薬は承認されず 
  • CHMP、アジュバント型インフルエンザ・ワクチンなどの承認を支持 
  • 甲状腺眼症の治療薬が承認
  • イブランスがHR+her2+乳癌の維持療法に承認 
  • ApoC-IIIアンチセンス薬が高TG血症に適応拡大 
  • ギリアドの抗TROP-2抗体薬物複合体、PD-L1不問でTNBC一次治療に適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


欧州でもタブネオスの承認取消勧告
(2026年6月26日発表)

EUの医薬品審査委員会、CHMPは、MPA(顕微鏡的多発血管炎)やGPA(多発血管炎性肉芽腫症)の治療薬として承認されているTavneos(avacopan)の承認を取り消すよう勧告した。承認の根拠となった臨床試験にGCP(実施基準)違反などが発覚したため。欧州委員会が最終決定する。

このC5a受容体阻害剤はChemoCentryx(22年にアムジェンが子会社化)が開発し21年9月に日本でライセンシーのキッセイ薬品が世界に先駆けて承認を取得、翌月にはChemoCentryxが米国で、22年1月にはライセンシーのVifor Fresenius Medical Care Renal PharmaがEUで、承認を得た。しかし、ChemoCentryxの株主が提訴した代表訴訟で、プロトコルに即した解析が両側p=0.1025とフェールしていたこと、そして、データが疑わしい症例を査読させポジティブなデータに変更されていたことが判明、CHMPやFDAが精査を開始した。FDAはアムジェンに自主回収を打診したが断られ、承認取消に向けた時間のかかる公的手続きを開始している。

安全性に関しても、既知のリスクである薬物誘導性肝障害に加えて、市販後に多くの胆管消失症候群が報告されるようになった。FDAによると薬物との関連に関する合理的なエビデンスのある症例が24年10月時点で76例(うち8人死亡)、うち日本が66例を占めた。キッセイ薬品の発表によると、22年から26年4月までに日本で重篤胆管消失症候群が22例発生、13人が死亡した。投与実績は年8500人程度。このため、日本でも新患投与差控え等の措置が取られたが、ブルーレター発出により終了した。

リンク: EMAのプレス・リリース


欧州委員会がインフルエンザ・ワクチンの情報提供活動に捜査開始
(2026年6月26日発表)

欧州委員会は、非競争的行為の容疑でサノフィの捜査を開始したと発表した。高齢者向けインフルエンザ・ワクチンEflueldaの情報提供活動の過程で、主としてドイツとフランスにおいて、競合するCSL Seqirus社のFluadより効果が高いとするキャンペーンを行ったことが、EU疾病管理予防センターや加盟国政府の推奨と異なり、ミスリーディングな行為との疑いが浮上したもの。

インフルエンザ・ワクチンは配合されている株と流行株のミスマッチが毎年のように発生するため、臨床試験の実施時期により感染予防効果が変動してしまうリスクがある。15年にFluadが加速承認された時の市販後コミットメントである市販後薬効確認試験では、ワクチン効率が19.8%と成功判定の閾値である40%を大きく下回った。サノフィは22年にFDAに対してこのデータをレーベルに記載するよう市民請願したことがある。おそらく、今回も、この試験成績の評価が論点だろう。サノフィの問題提起は無視すべきではないだろうから、接種希望者にとって最も望ましい解決方法は、司法捜査ではなく、疫学試験を行って各種インフルエンザ・ワクチンの効果を比較検討することだろう。

リンク: 欧州委員会のプレス・リリース

【新薬開発】


MSD、抗TL1A抗体の第3相が成功
(2026年6月22日発表)

MSDはMK-7240(tulisokibart)が第3相ATLAS-UC試験の一つで主目的などを達成したと発表した。データは未公表。もう一本、成功させて承認申請に向かうだろう。

Th1やTh17などが調停する炎症や線維化に関わるTL1A(TNF-like cytokine 1A)に結合する抗体医薬。TL1Aの発見者が設立したPrometheus Biosciencesを23年に買収して入手した。日本も参加したATLAS-UC試験は、既存治療不応不耐などの中重度活性期潰瘍性大腸炎を組入れて2種類の用量を偽薬と比較した。導入期と維持期における便益を検討するスタディ1と導入期だけのスタディ2から成り、今回、後者で12週臨床的寛解率(修正Mayo Scoreベース)が偽薬群を上回った。両用量群とも達成したかどうかは不明。第2相試験では1000mg点滴静注で開始、2、6、10週後に500mgを投与したところ、臨床的寛解率が26.5%と偽薬群の1.5%を上回った。

治験登録によるとスタディ1の結果判明は8月と推測されている。他の疾患では中重度活性期クローン病も第3相試験中。

リンク: プレス・リリース


LSD類薬の第3相鬱病試験が成功
(2026年6月22日発表)

米国ニュー・ヨーク州のDefinium Therapeutics(Nasdaq:DFTX)はDT120(lysergide d-tartrate)が第3相鬱病試験で主目的等を達成したと発表した。年内に鬱病でもう一本、全般不安障害で2本の結果が出そうなので、承認申請が近付いている。

lysergideはロシュではなくサンドの研究者だったAlbert Hofmannが1938年に合成、試験中に誤って皮膚吸収してしまったことが切っ掛けで幻覚作用を発見した。医薬品としての開発は難航し、むしろ乱用による被害が衆目を浴びるようになったが、ここにきて、サイケデリック系コンパウンドの医療開発が成果を上げ始めた。4月にはトランプ米国連邦大統領が、充足されない医療ニーズに応え得るサイケデリックの開発を後押しするプログラムを発表し、その一つを担うCNPV(FDA委員長の国家優先バウチャ)が英国のCompass Pathways(Nasdaq:CMPS)、米国の非営利医療研究組織であるUsona Institute、大塚ホールディングスが買収予定のTranscend Therapeuticsの3社に供与された。尚、Definiumは受領していない(大統領献金が足りないのだろうか?)

今回のEmerge試験は米国の大鬱病の成人149人を100mcg一回投与群と偽薬群に無作為化割付けした二重盲検試験。他社の臨床試験は精神療法の補助療法としての便益を検討しているが、本剤は薬物療法だけ施行している。被験者の過半は2剤以上の抗鬱剤治療歴を持っていた。幻覚症状などに対処するため、投与後はチェックリストに即して症状が治まるまで5~8時間観察を続け、1時間毎に終了の適否を判定した。

主評価項目の第6週MADRS総スコア(ベースライン値は35点)は、試験薬群が13.3点低下、偽薬群は5.2点低下、最小二乗平均差は-8.1、p<0.0001だった。第1週から-14.2点の差が見られ、第12週でも-7.3点と維持された。承認されている抗鬱剤のデータより良いが、比較可能性は不明。投与日に観察された有害事象は幻覚や多幸感など。自殺思慮・行動は発生しなかった。チェックリストをクリアするまでの時間は平均で5.8時間、最長でも8時間以内だった。

試験薬群の過半が幻覚を経験しており、盲検がちゃんと機能したか疑うことが可能。もう一本のAscend試験では一部の被験者を50mcg群に割付けて、影響を評価できるようにしている。

同社は今年1月にMind MedicineからDefinium Therapeuticsにリブランドした。

リンク: プレス・リリース


Exelixis、承認申請中の新規VEGF受容体拮抗剤は一部患者に効果が弱い
(2026年6月22日発表)

Exelixis(Nasdaq:EXEL)は2月に米国でXL092(zanzalintinib)を成人の転移結腸直腸癌用薬として承認申請したが、エビデンスとなる第3相STELLAR-303試験で、共同主評価項目である肝転移の無いサブグループの全生存期間解析が有意水準に達しなかったと発表した。先に開票したintent-to-treat(ITT)ベースの解析は成功しており、解析計画では一方がフェールしても有意判定に影響はないが、適応範囲が縮小されたり、治療の意義が再検討されたりする可能性がありそうだ。

同社のcabozantinibの後継となるべきVEGF受容体拮抗剤。上記試験は標準療法不応不耐でMSI-H(高マイクロサテライト不安定性)ではない患者901人を組入れて、ロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)と併用で100mgを一日一回経口投与する群と、バイエルのVEGF受容体拮抗剤Stivarga(regorafenib)群の全生存期間を比較した。主解析対象は変遷しており、当初はITTベースの予定だったが、MSDの抗PD-1抗体とエーザイのVEGF受容体拮抗剤の併用効果を検討したLEAP-017試験がフェールしたことを受けて、過去の試験で効果が比較的大きかった、肝転移の無いサブグル-プに限定され、さらにその後、ITTとサブグループのどちらも主評価項目とするよう変更された。

ITTの解析はハザード・レシオ0.80、p=0.0045と良好だった。但し、メジアン生存期間は10.9ヶ月対9.4ヶ月と、2剤併用の割には差が小さい。昨年10月の学会発表時点では肝転移の無いサブグループのハザード・レシオは未成熟でp=0.0875に留まっていたが点推定値自体は0.79とITTと大差なかった。ところが、最終解析では0.83(95%信頼区間0.66-1.05)、p=0.118と好ましくない方向にドリフトしてしまった。悩ましいのは、メジアン生存期間は15.9ヶ月対12.7ヶ月と、こちらのサブグループのほうが延命月数が大きいこと。ハザード・レシオの点推定値には大きな違いがないので、こちらのデータのほうが重要かもしれないのだ。

もう一つ悩ましいのは、サブグループのデータが悪化したのなら、ITTの解析もアップデートすれば悪化するのではないか、と疑ってしまうことだ。FDAは、LEAP-017試験の成績との違いも検討するだろう。

審査期限は12月3日。成否が注目される。

リンク: プレス・リリース


Regenxbio、FDAの姿勢軟化を受けて再申請へ
(2026年6月22日発表)

Regenxbio(Nasdaq:RGNX)は昨年3月に米国でNavsunli(RGX-121:clemidsogene lanparvovec-sngl)をムコ多糖症II型(ハンター症候群)の遺伝子療法として承認申請したが、臨床試験の対象や評価項目、外部自然歴対照などデザイン面が不適切として、今年2月に審査可能通知を受領した。FDAは対照試験を行うよう助言したが、現実的でないとの反論が奏功したのか、FDA上層部の総入替えが幸いしたのか、追加試験は行わずに、7月にType A会議(意見対立や治験停止、特別プロトコル評価などに関する会議)で長期追跡データなどを説明した上で、第3四半期に承認申請することでFDA側と同調(align)した。

アデノ随伴ウイルスを用いてハンター症候群で欠乏するiduronate-2-sulfataseの遺伝子を導入するもの。5歳以上の患者10人に脳室内投与したところ、脳脊髄液中のヘパラン硫酸のD2S6コンポーネントが16週で86%減少し、8人では正常水準に達した。12ヶ月追跡データでも82%減だった。ところが、FDAは、外部自然歴対照群との比較可能性やD2S6のサロゲート・マーカーとしての妥当性などに疑問を呈した。また、本件とは話が別に、今年1月にRGX-111のムコ多糖症I型試験で脳室内腫瘍が発生した時にはFDAがRGX-121も治験停止命令を発出した(5月にRGX-121だけ解除)。暗雲が立ち込めていたので、取り敢えず、日が射してきたと言えるだろう。

Regenxbioが梃子摺る内に、Denali Therapeutics(Nasdaq:DNLI)もiduronate-2-sulfatase補充療法のAvlayah(tividenofusp alfa-eknm)を承認申請し、今年3月にFDA承認を取得した。エビデンスは47人に週一回反復投与した第1/2相単群試験。RGX-121のエビデンスとの違いは、投与実績が多く、類似疾患を含めて多くの医薬品が承認されている酵素補充療法であること、そして主評価項目が、類薬と同じ、脳脊髄液中のヘパラン硫酸であること。

RGX-121とRGX-111は25年1月に日本新薬が米国における独占販売権と日本を含むアジアでの独占開発販売権などを取得している。

リンク: プレス・リリース


ファイザー、抗インテグリン抗体薬物複合体の第3相がフェール
(2026年6月22日発表)

ファイザーは、PF-08046047(sigvotatug vedotin、Seagen時代の開発コードはSGN-B6A)の第3相SigVie-002試験がフェールしたと発表した。米欧日本などの施設で、白金薬と抗PD-(L)1抗体(分子標的薬適応なら対応薬も)による治療歴を持つ局所進行/切除不能または転移性の非扁平上皮非小細胞性肺癌の703人を試験薬群とdocetaxel群に無作為化割付けして延命効果を比較したもので、この抗インテグリン・ベータ6抗体・MMAE結合体の最初の第3相試験だったが、目標に届かなかった。但し、被験者の2/3を占めた一次治療歴だけの患者では全生存期間もPFS(無進行生存期間)もトレンドが見られた模様。一方、探索的解析で、インテグリン・ベータ6の発現と応答性の関連性は見られなかった由。

本剤は第3相Be6A Lung-02も進行中。PD-L1著高発現(TPS≧50%)の局所進行切除不能/転移非小細胞性肺癌の一次治療としてMSDのKeytruda(pembrolizumab)に追加する便益を検討するもので、ClinicalTrials.govによると、結果判明は28年の見込み。

同社は、100人以上の第1相試験の後、第2相をスキップして上記第3相に進んでいる。

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


新規禁煙補助薬は承認されず
(2026年6月22日発表)

Achieve Life Sciences(Nasdaq:ACHV)は昨年6月に米国でcytisiniclineを禁煙補助薬として承認申請したが、審査完了通知を受領した。4月に公表したように、生産委託先がFDA査察後に指摘事項を受領したことやレーベル審査が未了であるため。同社は委託先をAdare Pharma Solutionsに変更した上で、今年第4四半期にFDAに完全回答して27年上期中の承認を目指す。

cytisinicleは植物アルカロイド。アルファ4ベータ2ニコチン・アセチルコリン受容体を部分作動して、離脱症状を緩和し、喫煙がもたらす報酬を抑制する。ブルガリアのSopharmaが中東欧などで実用化している。Achieve社は10年以上前にそれ以外の地域での開発販売権を取得した。米国の第3相試験二本で3mgを一日3回投与したところ、12週コース群は3割強が最後の4週間に禁煙を維持できた。偽薬群は7-9%だった。

米国では燃焼式たばこの成人喫煙者が2500万人、eシガレットなどの吸入式たばこの使用者が1800万人いる。FDAは、昨年10月、後者の用途で同社にCNPV(FDA委員長の優先バウチャ)を供与した。

リンク: プレス・リリース


CHMP、アジュバント型インフルエンザ・ワクチンなどの承認を支持
(2026年6月26日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら1~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレス・リリース

CSL SeqirusのAujemfluは50歳以上向けの3価インフルエンザ・ワクチン。細胞培養した抗原とアジュバント(免疫刺激物質)を含有している。今月上旬に承認した英国のMHRAによると、50歳以上の7699人を組入れた臨床試験で、接種4週後の免疫原性が鶏卵ベースのアジュバント添付ワクチンを上回り、遺伝子組換え型ワクチンと同程度だった。

リンク: EMAのプレス・リリース

イーライリリーのOnswik(insulin efsitora alfa)は週一回投与型の基礎インスリン。二型糖尿病の治療に用いる。臨床試験で効果が一日一回投与型のインスリンと非劣性だった。類薬としてはノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec)が欧日では24年に、米国でも26年に、承認されている。

リンク: EMAのプレス・リリース

ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)のDaybu(trofinetide)はレット症候群の初の治療薬。IGF-1類縁体で、神経炎症を抑制しシナプス機能を支持すると考えられている。効果が小さいためCHMPは2月に否定的意見を纏めたが、メーカーから再審請求を受け、総合的な評価に基づき効果は許容範囲と見直した。米国では23年3月に承認、25年の純売上高は3.9億ドルに達しており、ワールド・カップで日本のサッカー・チームが予選通過したが、『Daubuの1ミリ』も大きかった。

リンク: EMAのプレス・リリース

適応拡大で肯定的意見を得たのは、

  • 第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan):PD-(L)1阻害剤が適応にならない成人の切除不能/転移トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療として単剤投与。米国では5月に承認、日本でも申請中。
  • イーライリリーのJaypirca(pirtobrutinib):成人の慢性リンパ性白血病における、BTK阻害剤歴のある患者限定を解除。グローバルに適応拡大申請中。
  • IncyteのOpzelura(ruxolitinibクリーム):成人の局所性のステロイド及びカルシニューリン阻害剤に応答不十分/不適の中等度アトピー性皮膚炎。短期間又は間歇的に塗布する。米国では2歳以上の小児や軽症患者にも承認されている。
  • アッヴィのRinvoq(upadacitinib):12歳以上の重度円形脱毛症と、全身性治療が選択肢となる12歳以上の非分節型白斑。何れも米国や日本でも申請中。
  • ジョンソン エンド ジョンソングループの抗BCMAxCD3二重特異性抗体Tecvayli(teclistamab):治療歴のある難治/再発多発骨髄腫にdaratumumabと併用。米国では3月に承認、日本でも一変申請中。

一方、3剤が否定的意見となった。Netherlands Cancer Instituteの自家黒色腫由来TIL(腫瘍浸潤性リンパ球)製剤、Tacquellは、デンマークとオランダでPD-1標的薬歴を持つ切除不能進行黒色腫患者168人を組入れたM14TIL試験でPFS(無進行生存期間)が7.2ヶ月とipilimumab群の3.1ヶ月を上回り、ハザード・レシオ0.50、p<0.001となった。メジアン生存期間も25.8ヶ月対18.9ヶ月で数値上上回った。しかし、CHMPは、臨床試験のGCP順守問題に加えや、デザインや解析方法、品質管理面にも問題があると結論した。

リンク: EMAのプレス・リリース

Omeros (Nasdaq:OMER)のYartemlea(narsoplimab)は抗MASP-2(mannan-binding lectin-associated serine protease-2)抗体。2歳以上の造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)の治療薬として承認申請されたが、主臨床試験が対照試験ではないことや、他剤同時使用が可能など実施方法が不適切であること、小児のエビデンスが不十分であることなどを指摘した。米国でも初回は審査完了に終わったが、主臨床試験に参加した28人の全生存期間を患者登録データと比較した研究に基づき昨年12月に2歳以上を適応として承認された。しかし、CHMPは、この比較も不適切と判定した。

リンク: EMAのプレス・リリース

フランスのMaaT Pharma(EURONEXT:MAAT)のXervyteg(MaaT013)は同種便由来マイクロバイオーム療法。欧州の施設でステロイドやruxolitinibに十分応答しない胃腸症状を伴う急性移植片対宿主病患者66人を組入れて実施した第3相ARES試験で28日胃腸総合応答率が62%と、想定の38%を大きく上回り、感染症リスクは高まらなかった。しかし、CHMPは、対照群が設定されていないこと、他剤同時使用が可能であったこと、発生した感染症が病気によるものなのか薬によるものなのか判別できないことなどから、効果や安全性のエビデンスが不足と判定した。

リンク: EMAのプレス・リリース

【承認】


甲状腺眼症の治療薬が承認
(2026年6月26日発表)

Viridian Therapeutics(Nasdaq:VRDN)は、FDAがLumvoa(veligrotug-vvze)を甲状腺眼症の治療薬として承認したと発表した。アムジェンのTepezza(teprotumumab)と類似した抗IGF-1R抗体で、臨床成績を見比べると効果が上回るようには感じられないが、1回のコースにおける投与回数(どちらも3週毎)が5回対8回で少なく、点滴静注時間が30~45分対60~90分と短い。同社は皮下注用のVRDN-003(elegrobart)を27年第1四半期に承認申請することで差別化を進める考えだったがアムジェンも今年4月にオン・ボード・インジェクター型開発品の第3相を開始した。

リンク: プレス・リリース


イブランスがHR+her2+乳癌の維持療法に承認
(2026年6月24日発表)

FDAはファイザーのCDK4/6阻害剤Ibrance(palbociclib)の適応拡大を承認した。成人のホルモン受容体陽性かつher2陽性(乳癌の1割を占める)の局所進行/転移乳癌で、一次治療(taxane系抗癌剤とtrastuzumabの併用、更にpertuzumab併用も可)により進行しなくなった患者の維持療法として、trastuzumab(pertuzumab追加可)および内分泌療法と併用する。エビデンスとなるPATINA試験では、trastuzumab(pertuzumab追加可)および内分泌療法だけを施行した群と比べて、PFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザード・レシオが0.76(95%信頼区間0.59-0.97)、片側p=0.0134だった。FDAによると、追跡打切り例の影響でメジアン値の適切な推定はできない(ハザード・レシオの数値とともに、24年12月の学会発表とは異なっている)。全生存期間の解析は未成熟。

Ibranceは切除不能/転移ホルモン受容体陽性her2陰性乳癌の一次療法などに承認されている。

リンク: プレス・リリース


ApoC-IIIアンチセンス薬が高TG血症に適応拡大
(2026年6月24日発表)

FDAはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のTryngolza(olezarsen)を重度高トリグリセライド(TG)血症の治療に用いる適応拡大を承認した。ApoC-IIIのmRNAを妨げるアンチセンス薬で、24~25年に米欧で家族性カイロミクロン血症候群の治療薬として承認された。適応拡大のエビデンスとなる二本の第3相では、50mg群と80mg群のTG値が6ヶ月後に一本では偽薬比各63%と73%、もう一本では49%と54%、低下した。二本のプール分析で、急性膵炎(査読)の率比が50mg群は偽薬比0.09、80mg群は0.24となり、重度TG血症治療薬で初めて、急性膵炎抑制作用が確認された。NNT(急性膵炎を年1例減らすために投与すべき人数)は20と大変良好だ。

リンク: プレス・リリース


ギリアドの抗TROP-2抗体薬物複合体、PD-L1不問でTNBC一次治療に適応拡大
(2026年6月24日発表)

FDAはギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)を成人の切除不能局所進行/転移トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療に適応拡大を認めた。PD-L1陽性(CPS≧10)の場合はMSDのKeytruda(pembrolizumab)の静注用または皮下注用製剤と併用、適応にならない場合は単剤投与する。

前者はASCENT-04/KEYNOTE-D196試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が11.2ヶ月とKeytruda・化学療法併用群の7.8ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.65だった。昨年のASCO(米国臨床腫瘍学会)での発表によると全生存期間のハザード・レシオは0.89と今一つだが、未成熟であることや対照群の4割が進行後にクロスオーバーしたことが影響している可能性がある。

後者はASCENT-03試験でメジアンPFSが9.7ヶ月と化学療法群の6.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.62だった。全生存期間の解析は未成熟。

日本でも適応拡大申請中。EUでは今月、後者の適応が承認された。

Trodelvyは、同じ抗TROP-2抗体薬物複合体である第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk)の追い上げを受けていて、後者の適応では先んじられたが、前者では先んじた。MSDはKelun Pharmaceutical(002422.SZ)グループのSichuan Kelun-Biotech Biopharmaceutical(6990.HK)から中国外の市場で導入した類薬、sacituzumab tirumotecanで様々な癌の第3相を開始しており、3社の適応拡大競争はますます激化していくだろう。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/7推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/7/3Ascelia Pharma ABのOrviglance(manganese chloride tetrahydrate、重度腎障害患者の肝MRI造影剤)
26/7/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
26/7/7Vera Therapeuticsのatacicept(IgA腎症)
26/7/17Celcuityのgedatolisib(HR+her2-進行乳癌)
26/7/23Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
26/7/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
26/7/24大塚製薬のcentanafadine(ADHD)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推武田薬品のTAK-861(oveporexton、ナルコレプシータイプ1)
26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/5モデルナのmRNA-1010(季節性インフルエンザ・ワクチン)
26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
26/8/17ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv、筋層浸潤膀胱癌術前術後、pembrolizumab併用)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)



今週は以上です。

2026年6月20日

第1264回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • FDAのスタンス転換を受けて、ハンチントン病の遺伝子療法を承認申請へ 
  • 新規作用機序の抗菌薬が第3相通過 
  • ジャイパーカを含む3剤併用試験が成功 
  • タービーとダラキューロの併用も有効 
  • テバ、トゥレット症候群用薬を承認申請 
  • ロシュ、LCBCLの二剤併用を承認申請 
  • ユルトミリスをIgA腎症に適応拡大申請 
  • ALK2阻害剤をFOPに承認申請 
  • FDA諮問委員会がインフルエンザ予防用mRNAワクチンを支持 
  • テビペネムが17年遅れで米国でも承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


FDAのスタンス転換を受けて、ハンチントン病の遺伝子療法を承認申請へ
(2026年6月17日発表)

オランダのuniQure biopharma(Nasdaq:QURE)は、開発中のハンチントン病遺伝子療法、AMT-130(rAAV5-miHTT)を元々の計画通り26年第3四半期に米国で承認申請すると発表した。一転、二転したが、FDAが最近のタイプB会合で外部対照試験に基づく承認申請を受け入れる姿勢を示したとのこと。昨年12月以降、FDA長官など上層部が次々と更迭されたことが製薬会社に良い方向に働き始めたのかもしれない。

ハンチントン病はHTT遺伝子の変異による常染色体性優性遺伝子疾患。舞踏運動などの運動症状や精神症状を伴う。AMT-130は遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして変異HTTを黙らせるマイクロRNAを導入する。MRIで薬剤分布を確認しながら定位脳手術により線条体に導入する。米国の第1/2相試験で早期ハンチントン病患者を低量群(6人)、高量群(10人)、そしてシャム群(偽施術)に割付けて安全性やcUHDRS(複合統一ハンチントン病評価尺度)の変化を比較したが、1年と短期であったせいか、シャム群と大差なかった。欧州でも後期第1相/2相試験が実施されたが、こちらは低量と高量の二群オープン・レーベル試験だ。

同社は、代案として欧米試験の3年追跡データとEnroll-HD患者登録データの傾向マッチング外部対照試験を実施したところ、高用量群(6x10^13vg、12人)のcUHDRSの悪化が0.38と、対照群940例の1.52より75%小さかった(p=0.003)。副次的評価項目である各種運動機能尺度や認知機能尺度の一部でもp値が0.05を下回った。FDA側の感触も良かったため26年第3四半期に加速承認を申請する計画を立てた。

しかし、25年11月の承認申請前会議でFDA側がスタンスを一変、改めて対照試験を実施するよう求めた。26年1月のタイプA会合でも覆すことはできなかった。

今回、前言が覆された理由は明らかではないが、25年12月にCDER(小分子薬や一部のバイオ薬を担当)のヘッドが、今年4月にはCBER(生物学的製剤を担当)のヘッドが、5月にはFDA長官のMarty Makaryが、HHS(米国保健福祉省)のRobert Kennedy長官の不興を買ったらしく退任したことが関係していると見る向きが多いようだ。

大統領が指名し議会の承認を受ける、政治的任命者と呼ばれる人たちは、個別案件の承認審査には関与しないのが通例だったが、第2次トランプ政権下のFDAは上層部が現場の判定を覆したとされる事例が散見された。コンセンサスと異なる見解を持つ人々が決定権を握る、反動の時代が終わったのか、注目される。

リンク: プレス・リリース

【新薬開発】


新規作用機序の抗菌薬が第3相通過
(2026年6月18日発表)

英国のF2G社と塩野義製薬は、F901318(olorofim)が第3相アスペルギルス感染症試験で主目的を達成したと発表した。22年の米国申請は審査完了となったが、再申請に向かうだろう。承認されれば20年ぶりの新クラスの抗菌剤となる。

ピリミジン合成経路のdihydroorotate dehydrogenaseを阻害する殺真菌薬。今回のOASIS試験は、アゾール系抗菌剤に不応/不適の患者を試験薬群(30mg錠を初日は5錠、その後は3錠ずつ、12時間毎に経口投与)または実薬群(amphotericin Bリボゾーム製剤)に無作為化割付けして転帰を比較した、標準療法アドオン試験。主評価項目の42日全死亡率は各群23.8%と24.3%、群間差-0.5%(95%信頼区間-13.1、10.8)となり、両社によると、非劣性解析が成功した。薬物関連治療時発現有害事象の発生率は各群35.8%と63.9%でかなり違った。

新規抗生物質の第3相で良く採用される実薬対照非劣性解析は、優越性解析よりハードルが低そうに見えるが、実際には色々な落とし穴があるようだ。今回、95%下限は-10%より低い。成否認定の閾値は-10%に設定されることが多いように感じられるが、大丈夫なのだろうか?そういえば塩野義製薬がDoribax(doripenem、和名フィニバックス)を院内感染肺炎などに適応拡大申請した時も、非劣性マージンがFDA推奨の-10%と異なる-20%であったことや有害事象などから、米国では承認されなかった。諮問委員会でも大多数が非劣性マージンが不適切と判定した。尤も、EUでは適応拡大が認められたので、疾病の深刻さなどを考慮する余地はあるのだろうが。

リンク: プレス・リリース


ジャイパーカを含む3剤併用試験が成功
(2026年6月14日発表)

イーライリリーは、非共有結合性BTK阻害剤Jaypirca(pirtobrutinib)の3剤併用試験、第3相Bruin CLL-322試験で主目的を達成したと発表した。用法追加申請を行う考え。

この試験は再発/難治CLL(慢性リンパ性白血病)/SLL(小リンパ球性リンパ腫)639人を組入れて、アッヴィ/ジェネンテックのbcl-2阻害剤Venclexta(venetoclax)とジェネンテックが創製した抗CD20抗体rituximabのレジメンに200mg一日一回経口投与を追加する便益をオープン・レーベルで検討したもの。3剤とも、最大2年間投与して終了する、近年注目されている固定期間レジメンだ。主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立評価委員会方式)のハザード・レシオは0.547、メジアン値は未達(2剤併用群は39.7ヶ月)、2年PFS率は86.9%(同71.8%)となった。一次治療で共有結合性BTK阻害剤が用いられたサブグループでも整合的な結果だった。全生存期間の解析は未成熟だがハザード・レシオの点推定値は0.89とそれほどでもない。後日、優越性解析を行う計画。G3以上の有害事象発生率は78.8%(同73.0%)で若干高まった。

Jaypircaは23年に米国でBTK阻害剤を含む二次以上の治療歴を持つ成人の再発/難治CLL/SLLに加速承認され、対象範囲や文言は若干異なるが欧州でも同年、条件付き承認、24年には日本でも通常承認された。

リンク: プレス・リリース


タービーとダラキューロの併用も有効
(2026年6月13日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは、抗GPRC5DxCD3二重特異性抗体Talvey(talquetamab-tgvs)と抗CD38抗体Darzalex Faspro(daratumumab, hyaluronidase-fihj)を併用で再発/難治多発骨髄腫の二次治療に用いた第3相MonumenTAL-3試験の結果をEHA(欧州血液学会)やNew England Journal of Medicine誌で発表した。PFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)が大きく改善した。欧米で適応拡大申請済みであることも公表された。

約870人を組入れてTal-DP群(アムジェンのPomalyst(pomalidomide)を含む3剤併用)とTal-D群(上記2剤を併用)のPFSをDPd群(Talveyに代えてdexamethasoneを3剤併用)と比較したところ、前者はハザード・レシオが0.28、後者は0.33となり、どちらも有意差があった。24ヶ月DFS率は各群81.3%、77.6%、51.2%だった。全生存期間のハザード・レシオは0.47と0.51、24ヶ月生存率は89.2%、87.9%、79.1%と、こちらは2剤併用でも十分という印象。深刻有害事象発生率は各群63%、53%、54%、致死的有害事象発生率は1.8%、4.0%、4.6%だった。

Talveyは23~25年に米国で5次治療に加速承認、EUで4次治療に条件付き承認、そして日本で標準療法が困難な患者に通常承認された。Darzalex FasproはDarzalexの皮下注用製品で和名はダラキューロ。多発骨髄腫の様々な段階に様々な用法で承認されている。

リンク: プレス・リリース
リンク: Minaらの治験論文(NEJM)

【承認申請】


テバ、トゥレット症候群用薬を承認申請
(2026年6月18日発表)

イスラエルのTeva Pharmaceutical(NYSE:TEVA)は、米国でecopipamを小児トゥレット症候群用薬として承認申請したと発表した。ドパミンD1受容体選択的なアンタゴニスト。オリジンはシェリング・プラウの模様だが、テバは、今月、Paragon Biosciencesが本薬の取得・開発のために設立したEmalex Biosciencesを頭金7億ドル、目標達成時報奨金2億ドルで買収して、入手した。

後期第2相試験では6歳以上18歳未満の153人を偽薬群と試験薬群(2mg/lg/日を目標に滴定)に無作為化割付けして12週間投与したところ、主評価項目の YGTSS-TTS(Yale Global Tic Severity Score-Total Tic Score、レンジは0-50点、ベースライン値は34.6点)が各群6.42点と9.87点低下し、群間差は3.44、p=0.011だった。第3相は離脱試験で、6歳以上体重18kg以上の患者216人(うち小児は167人)を組入れて全員に12週間投与し、第8週と12週のYGTSS-TTSがベースライン比25%以上改善した応答者を偽薬スイッチ群と試験薬継続群に無作為化割付けして、症状が再発(オープン・レーベル期のYGTSS-TTS改善幅の半分以上を喪失)するまでの期間を比較した。

オープン・レーベル期を完了した患者は126人。42%がドロップ・アウトしたが、主因は25%改善未達(18%)、有害事象(15%)、ストップ・ルール到達(10%)など。無作為化割付け試験の結果は、主評価項目である小児90人における再発リスクのハザード・レシオが0.47、p=0.008だった。再発率は偽薬群68.1%、試験薬群は41.9%。成人14人のハザード・レシオも0.51だったが症例数が少ないため有意性は出ていない。有害事象は傾眠、不眠、不安など。

リンク: プレス・リリース
リンク: Gilbertらの第3相試験論文(JAMA Neurology、オープン・アクセス)


ロシュ、LCBCLの二剤併用を承認申請
(2026年6月18日発表)

ロシュは、米国で抗CD79b抗体薬物複合体Polivy(polatuzumab vedotin-piiq)と皮下注用抗CD20/CD3二重特異性抗体Lunsumio VELO(mosunetuzumab-axgb)の併用を難治/再発大細胞型B細胞リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫を含む)に適応拡大申請し、受理されたと発表した。審査期限は27年2月9日。第3相SUNMO試験に基づくもので、R-GemOxレジメンと比べてPFSのハザード・レシオが0.41、全生存期間は未成熟だが改善トレンドが見られた。日本では3月に承認されている。

リンク: プレス・リリース


ユルトミリスをIgA腎症に適応拡大申請
(2026年6月15日発表)

アストラゼネカは、子会社のAlexionが米国でUltomiris(ravulizumab-cwvz)をIgA腎症に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は第4四半期。 日本も参加した第3相I CAN試験で成人の腎障害進行リスクのあるIgA腎症患者に追加投与したところ、主評価項目の一つである34週UPCR(尿蛋白クレアチニン比、24時間)が46.6%低下し、偽薬群の5.6%低下を上回った。106週の推算糸球体濾過率(eGFR)も評価する計画で、通常ならUPCRで加速承認を取りeGFRで本承認に切替えることになる。

Ultomirisは補体系C5に結合する抗体。18~19年以降、米日欧で発作性夜間ヘモグロビン尿症などに承認されている。

リンク: プレス・リリース


ALK2阻害剤をFOPに承認申請
(2026年6月12日発表)

Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)とIncyte(Nasdaq:INCY)は、INCB000928(zilurgisertib)をFOP(進行性骨化性線維異形成症)の治療に用いた第2相試験の成績を米国のENDO(内分泌学会)で発表すると共に、米国承認申請していたことを明らかにした。優先審査を受け、審査期限は26年9月26日。

FOPは骨形成因子の受容体であるALK2(activin receptor-like kinase 2)の変異が原因で筋細胞などの骨化が進行する。患者は米国で300人、世界で900人と推測されている超希少疾患だ。Ipsenグループのレチノイン酸受容体ガンマ・アゴニストのSohonos(palovarotene)が22~26年に米日などで承認され、25年にはRegeneron Pharmaceuticalsが欧米で抗Activin-A抗体REGN2477(garetosmab)を承認申請した。

zilurgisertibは12歳以上の青少年と成人を組入れた第2相PROGRESS試験のコフォート1で平均21歳の患者63人を偽薬群と100mg一日一回経口投与群に無作為化割付けして24週間追跡したところ、新規異所性骨化病変が発生した患者数が一人(3.1%)に留まり、偽薬群の5人(16.7%)を大きく下回った。サンプル数が少ないせいか、p=0.0986。新規病変数ベースでは平均0.06対0.23と大きく抑制され、名目p値が0.0001未満となっている。治療関連深刻有害事象の発生率は3.1%、治療時発現有害事象の発生率が高かったのはFOPの増悪(25%、偽薬群は54%)、頭痛、尿路感染症、関節炎、鼻血、悪心など。

Mirum Pharmaceuticalsは5月にIncyteから世界開発商業化権を取得した。

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がインフルエンザ予防用mRNAワクチンを支持
(2026年6月18日発表)

FDAはVRBPAC(ワクチン生物学的製剤諮問委員会)を招集し、モデルナのmFlusivaについて意見を聞いた。50~64歳についても、65歳以上に関しても、9人の委員全員が便益が棄権を上回ると評価した。

26年1月に米欧カナダ豪州で50歳以上向けに承認申請された、インフルエンザ予防用mRNAワクチン。最初に第3相に進んだ製剤はB型ウイルスに対する抗体陽転率が既存のワクチンに見劣りしたが、改良製剤は第3相IGNITE P303試験でGSKの鶏卵培養ワクチン、Fluarixを上回る免疫原性を示した。

製剤見直しがあったためか、やや駆け足的なところがあり、FDAは、①CDC(米国連邦疾病管理予防センター)が65歳以上の高齢者に接種推奨している、4倍量の抗原を配合したHD(高量)ワクチンと比較していない、②免疫低下者や脆弱高齢者のデータがない、③B型ビクトリア株が流行せず十分なエビデンスが取得できていない、などを指摘した上で、便益を十分に検討したと言えるか、意見を聞いた。

駆け足勇み足は承認審査側にもあり、モデルナは承認申請前会合を踏まえて優先審査バウチャを添えて申請したが、上記①を理由に、受理されなかった。審査拒否通知の署名者はCBER(生物学的製品評価研究センター)のヘッドである、Vinayak Prasadだった。その後、65歳以上に関しては加速承認を申請する建付けに代えて再申請したが、反対の急先鋒と目されたPrasad氏が4月に退任したため、結局、振り回されただけのような格好になっている。

鶏卵法ワクチンがあるのだから画期的ワクチンは要らない、という意見も一理あるが、mRNAワクチンの長所は開発期間の短さ。近年、ワクチン配合株とかなり異なる株が流行する現象が頻繁にみられるが、南半球の流行などを見ながら株を選択できれば、根絶は無理にしてもマッチ率を向上できるだろ。

価格は高くなるのだろう。近年のインフルエンザ・ワクチンは在来品よりかなり値上がりしている。COVID-19ワクチンは140~170ドルともっと高いので、ワクチンが安価だった時代の代表格であるインフルエンザ・ワクチンにも逆価格破壊の時が来ているのだろう。

参考:米国のインフルエンザ・ワクチン価格
製品名メーカー価格($)対象年齢等
Fluzone TIVサノフィ20.8786ヶ月児以上
Fluarix TIVGSK21.086ヶ月児以上
FluLaval TIVGSK21.086ヶ月児以上
FluMist TIVアストラゼネカ26.202-49歳。弱毒生。点鼻用
Flucelvax TIVSeqirus43.5426ヶ月児以上。犬細胞培養
Fluzone HD TIVサノフィ86.2365歳以上。抗原量が4倍
Flublok TIVサノフィ86.239歳以上。昆虫細胞培養
Fluad TIVSeqirus86.2365歳以上、アジュバント添加
注:26/27シーズンの民間価格(CDC調べ)。

リンク: プレス・リリース

【承認】


テビペネムが17年遅れで米国でも承認
(2026年6月17日発表)

FDAはGSKのUtebzi(tebipenem pivoxil)を成人の複雑尿路感染症(腎盂腎炎を含む)の治療薬として承認した。大腸菌、肺炎桿菌、エンテロバクター・クロアカ複合体、クレブシエラ・オキシトカ、大便連鎖球菌による感染が対象で、経口治療薬の選択肢が限られている、あるいは他に無い場合に適応になる。第3相PIVOT-PO試験で600mgを6時間おきに7~10日間投与する便益をimipenem・cilastatin(MSDのPrimaxin合剤など)と比較したところ、17日前後における全般的応答率(臨床的治癒且つ細菌学的駆除)が58.5%対60.2%となり、修正群間差-1.3、95%下限-7.5%となり、非劣性解析(閾値は10%)をクリアした。治療関連治療時発現有害事象が各群12.5%と9.4%の患者で発生した。

2009年に日本で承認されたカルバペネム系で初の経口剤、Meiji Seikaファルマのオラペネムを導入したもの。オリジンはワイスと言われているが、2017年に欧米権を取得したSpero Therapeutics(Nasdaq:SPRO)の年次報告書では匿名に付されている。第3相試験を一本実施して21年に承認申請したが、臨床成績が不十分と見なされ、22年6月に審査完了通知を受領した。GSKはその3ヶ月後にライセンスし、上記試験を中間解析で成功させ、FDA指摘事項について25年12月に完全回答したもの。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26下ギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy、laur/mTNBC1L PD-L1阻害剤不適向けと併用)
26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/7推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/7/3Ascelia Pharma ABのOrviglance(manganese chloride tetrahydrate、重度腎障害患者の肝MRI造影剤)
26/7/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
26/7/7Vera Therapeuticsのatacicept(IgA腎症)
26/7/17Celcuityのgedatolisib(HR+her2-進行乳癌)
26/7/23Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
26/7/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
26/7/24大塚製薬のcentanafadine(ADHD)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推武田薬品のTAK-861(oveporexton、ナルコレプシータイプ1)
26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/5モデルナのmRNA-1010(季節性インフルエンザ・ワクチン)
26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
26/8/17ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv、筋層浸潤膀胱癌術前術後、pembrolizumab併用)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi’ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)


今週は以上です。

2026年6月13日

第1263回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ノバルティス、BTK阻害剤の慢性誘発性蕁麻疹試験データを発表 
  • TYK2阻害剤の直接比較試験で武田に軍配 
  • 顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーのAOCがバイオマーカーを改善 
  • ギリアドとMSD、HIV配合剤の第3相が成功 
  • MSDとギリアド、肺癌一次治療の併用試験がフェール 
  • サノフィ、CIDPの第3相一本がフェール 
  • Jazz/PharmaMar、lurbinectedinの市販後薬効確認試験がまたフェール
  • テセントリクを結腸癌術後療法として承認申請 
  • 5月のEU承認申請 
  • ウェリレグ・キイトルーダ併用が腎細胞腫術後療法に承認 
  • トルカプがPTEN欠乏前立腺癌に適応拡大 
  • CNVP案件が8ヶ月審査で承認 
  • ヒムペブジがインヒビター保有血友病などに適応拡大 
  • FDA、アライの稀な腎障害を通知 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


ノバルティス、BTK阻害剤の慢性誘発性蕁麻疹試験データを発表
(2026年6月12日発表)

ノバルティスは2月に米国でBTK阻害剤Rhapsido(remibrutinib)を慢性誘発性蕁麻疹に適応拡大申請したことを明らかにしたが、治験成績をEuropean Academy of Allergy and Clinical Immunology(欧州アレルギー・臨床免疫学学会)で発表した。この、日本も参加した第3相RemIND試験は、H1ブロッカーに十分応答しない慢性誘発性蕁麻疹に25mgを一日二回経口投与して、12週時点の応答率を偽薬と比較したもの。症候性皮膚描記症(SD:引っかいたり擦れたりすることがトリガー)コフォートでは29.3%がFricスコアがゼロとなり、偽薬群の14.0%を上回った。寒冷蕁麻疹コフォートでは4℃未満の低温に暴露しても56.3%は発症しなかった(偽薬群は14.6%)。コリン性蕁麻疹コフォートでは29.3%が運動後でも数値評価尺度がゼロだった(偽薬群は15.8%)。

Rhapsidoは25~26年に抗ヒスタミンに応答不十分な特発性慢性蕁麻疹を適応として米欧で承認、日本でも第2部会を通過したところ。活性化したブロトン型チロシン・キナーゼがヒスタミンなどの炎症性物質の放出を刺激しないよう抑制する。

リンク: プレス・リリース


TYK2阻害剤の直接比較試験で武田に軍配
(2026年6月12日発表)

武田薬品は、TAK-279(zasocitinib)が第3相尋常性乾癬試験で類薬であるBMSのSotyktu(deucravacitinib)を上回る治療効果を挙げたと発表した。既に偽薬対照試験が二本成功しており、予定通り27年3月期中にグローバルな承認申請を開始する考え。

22年にNimbus Lakshmiを40億ドル+売上目標達成報奨金20億ドルで買収して入手したアロステリックTYK2阻害剤。上記の偽薬対照試験ではアムジェンのPDE4阻害剤Otezla(apremilast)を投与した参考群と見比べても大きく上回る奏効率を示したが、今回の3004試験は直接比較試験なのでエビデンスとしての質が高い。主評価項目の16週PASI100奏効率が35%超となり、Sotyktu群の2.5倍だった。

OtezlaはBMSが買収したセルジーンの製品だったが、市場がdeucravacitinibとバッティングするため米国連邦取引委員会に反トラスト法上の懸念を指摘され、アムジェンに売却した。その割にはSotyktuの効果は案外で、売上高も期待を下回っている。咬ませ犬化しつつあるのか、3月に米国で承認されたジョンソン エンド ジョンソンの経口IL-23受容体拮抗剤、Icotyde(icotrokinra)も、二本の第3相試験で奏効率が有意に上回った。16週PASI100奏効率は一本では31%対11%、もう一本は32%対14%だったので、今回のzasocitinibと似たような結果になっている。

リンク: プレス・リリース


顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーのAOCがバイオマーカーを改善
(2026年6月11日発表)

ノバルティスは、26年に110億ドルで買収したAvidity Biosciencesの抗体オリゴヌクレオチド結合体(AOC)がFSHD(顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー)に伴うバイオマーカー値を改善したと発表した。当局と相談する考え。加速承認申請の可能性を探るのだろう。

Avidityはオリゴヌクレオチドを抗トランスフェリン受容体1(TfR1)抗体と結合して標的細胞選択的に取り込ませる技術を持ち、複数のパイプラインを臨床段階に進めている。今回のAOC 1020(delpacibart braxlosiran)は、FSHDの原因となるDUX4(double homeobox 4)の異常発現を抑制するsiRNAを抗TfR1抗体と結合したもの。第1/2相FORTITUDE試験のコフォートAとBで用量漸増しながら10メートル歩行走行テスト成績などが偽薬群ほど悪化しないことなどを確かめた上で、今回のバイオマーカー・コフォートCに16~70歳の患者51人を2mg/kg 6週毎投与群と偽薬群に2対1割付けして12ヶ月間反復し、DUX4の異常発現により増加するRNA結合蛋白、KHDC1L(K-homology domain-containing 1 like)の血漿濃度抑制作用を検討した。副次的評価項目としてクレアチニン・キナーゼなどの低下も評価した。

ノバルティスに買収される前、同社はAOC 1044(delpacibart zotadirsen)をエクソン44スキップに応答するデュシェンヌ型筋ジストロフィーに承認申請する考えを示していたが、今回のプレス・リリースには第2相段階としか記されていない。新興企業はトップ・スピードで走り続けないとガソリン補給が受けられなくなるが、大手の傘下なら一般投資家に媚を売る必要もないので現実的な線で経営を進めることができる、この、よく見られる現象が同社にも起きたのかもしれない。だとしたら、AOC 1020に対する姿勢も変わるのだろうか?

リンク: プレス・リリース


ギリアドとMSD、HIV配合剤の第3相が成功
(2026年6月8日発表)

ギリアド・サイエンシズとMSDは、前者のlenacapavirと後者のislatravirの合剤をテストした二本のスイッチ試験で非劣性解析を達成したと発表した。承認申請する考え。

lenacapavirは長期作用性カプシド阻害剤。欧米日でHIV/AIDS治療薬Sunlencaとして承認されているほか、米国ではYeztugo、欧州ではYeytuo名でHIV/AIDSの曝露前予防薬としても承認されている。作用機序の独自さと半年に一回の投与で足りる点が特徴。今年4月にギリアドのインテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビターbictegravirとの合剤の承認申請が日米で受理された。

islatravirは日本で創製されたヌクレオシド逆転写トランスロケーション阻害剤。0.25mgをジョンソン エンド ジョンソンの非ヌクレオシド逆転写阻害剤doravirine 100mgと合剤にしたIdvynsoが3月に日本で、4月には米国でも、他の抗HIV薬でウイルス抑制に成功している患者がスイッチする用途で承認されたところ。

Idvynsoは一日一回経口投与だが、islatravir自体は半減期が長く、今回の合剤はislatravir 2mgとlenacapavir 300mgを週一回投与する。第3相ISLEND試験二本は、一本はギリアドのBiktarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide)による治療で、もう一本は他製品も含む抗HIV/AIDS薬治療で、HIV-1 RNAを50コピー/mL未満に抑制できている患者を組入れて、スイッチする群と従来薬継続群のフェール率(48週HIV-1 RNAが50コピー/mL以上に上昇)を比較した。Biktarvy対照試験はオープン・レーベル、もう一本のオールカマー試験は二重盲検。どちらも非劣性解析に成功した。

islatravirは20mgを他の薬と併用した週一回投与試験で総リンパ球数やCD4カウントが低下する現象が発生し、低用量一日一回投与の開発が先行した経緯を持つ。

リンク: 両社のプレス・リリース(当試験のスポンサーであるギリアドのサイト)


MSDとギリアド、肺癌一次治療の併用試験がフェール
(2026年6月8日発表)

一方、MSDのKeytruda(pembrolizumab)とギリアドの抗EGP-1(TROP-2)抗体Trodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)を併用する便益を検討した第3相EVOKE-3/KEYNOTE D46試験は中止が決定した。この日本も参加したオープン・レーベル試験は、PD-L1高発現(TPS≧50%)の転移非小細胞性肺癌の一次治療薬として承認されているKeytrudaにTrodelvyを追加することでPFS(無進行生存期間)と全生存期間の延長を図った。しかし、PFSは最終解析でも改善トレンドに留まり、共同主評価項目の全生存期間はeDMC(外部データ監視委員会)が中間解析に基づき改善の見込み薄と判定、中止を勧告したもの。

両社は提携で両剤の様々な併用試験を行っている。トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療試験はPFSが化学療法群を有意に上回り日本で適応拡大申請されたが、非小細胞性肺癌は化学療法歴と抗PD-(L)1抗体歴を持つ患者を組入れたdocetaxel併用試験がフェールし、ギリアドがImmunomedicsを買収してTrodelvyを入手した時の暖簾59億ドルのうち24億ドルを減損計上した。その時点ではEVOKE-03/KEYNOTE D46試験には自信を表明していたが、今回もあと一歩届かなかった。

リンク: 両社のプレス・リリース(当試験のスポンサーであるMSDのサイト)


サノフィ、CIDPの第3相一本がフェール
(2026年6月10日発表)

サノフィはSAR 445088(riliprubart)の第3相CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)試験のうち一本が中間解析で無益認定されたと発表した。この日本も参加したMOBILIZE試験は、免疫グロブリン点滴(IVIg)などによる標準療法に不応/不十分応答の患者140人を組入れて、上肢・下肢運動機能の改善作用を偽薬と評価するもの。主評価項目は24週のINCAT(Inflammatory Neuropathy Cause and Treatment)スコアがベースライン比1点以上低下(改善)した患者の比率。

もう一本のVITALIZE試験は続行する。こちらはIVIgに応答しているが障害が残るCIDP患者160人を組入れて、riliprubartにスイッチする群とIVIgを続ける群のINCAT1点改善奏効率を比較する。

riliprubartは補体C1複合体のC1セリンプロテアーゼ(C1s)に結合する抗体医薬。寒冷凝集素症用薬Enjaymo(sutimlimab-jome)と異なり活性化したC1sに選択的に結合する。この2剤は18年に買収したBioverativの開発品で、Enjaymoと同様にBioverativが17年に買収したTrue North Therapeuticsがオリジンと推測される。

尚、Enjaymoはサノフィが22年に米日欧で承認取得したが24年にRecordatiに事業譲渡している。

リンク: プレス・リリース


Jazz/PharmaMar、lurbinectedinの市販後薬効確認試験がまたフェール
(2026年6月12日発表)

Jazz Pharmaceuticalsは、PharmaMarが実施したポリメラーゼII阻害剤Zepzelca(lurbinectedin、欧州の製品名はZepsyre)の第3相LAGOON試験がフェールしたことを明らかにした。20年6月に米国で加速承認された時の市販後コミットメント試験が同年12月にフェールし、代替的位置付けであった当試験もフェールしたことで、加速承認取消の可能性が高まった。但し、別用途で本承認されている。

同薬は白金薬に不応/再発の小細胞性肺癌に単剤投与する用途用法で加速承認されたが、低量をdoxorubicinと併用する便益を検討した二次治療実薬対照試験で全生存期間のハザード・レシオが0.967となり、フェールした。代替的な市販後薬効確認試験としてIMforte試験とLAGOON試験の成否が注目され、前者は成功し25年に米国で本承認されたが、進展型小細胞肺癌の化学療法後地固め療法としてTecentriq(atezolizumab)と併用というかなり異なった内容であったためか、二次治療の本承認切替には至らなかった。

今回のLAGOON試験は小細胞性肺癌の二次治療実薬対照試験。メジアン生存期間はモノセラピー群が8.7ヶ月、低量をirinotecanと併用した群は10.9ヶ月、topotecanまたはCAV併用レジメンを用いた対照群は10.7ヶ月となり、モノセラピー群のハザード・レシオは1.190(95%信頼区間0.959-1.476)、併用群は0.902(同0.729-1.115)だった。後者は実薬と大差ない結果だが、実薬も試験薬も信頼区間で見ればレンジが広く、本当は実薬はちょっとしか効かず試験薬はそれよりかなり悪いかもしれない、という帰無仮説を否定することができない。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


テセントリクを結腸癌術後療法として承認申請
(2026年6月11日発表)

ロシュは米国で抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)を結腸癌の術後療法として適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年10月9日。

ステージIIIの、dMMR/MSI-H(ミスマッチ修復不全/高マイクロサテライト不安定性)を持つ結腸癌を摘出した後に、化学療法と併用するもの。エビデンスとなる第3相ATOMIC試験でmFOLFOX6レジメンに追加する便益を検討したところ、DFS(無病生存期間)のハザード・レシオが0.50、p<0.001と大変良い結果になった。3年DFS率は86%対76%。G3以上の有害事象発生率は71%対62%で上回った。

リンク: プレス・リリース


5月のEU承認申請
(2026年6月9日発表)

EMAによると、5月に新薬承認申請を開始した品目は以下の通り。

申請者開発名など一般名種類適応症米国日本
バイエルBAY 2433334asundexianFXIa阻害剤虚血性脳卒中予防26/5申請受理26/5申請受理
Sun PharmaUnloxcytcosibelimab抗PD-L1抗体皮膚扁平上皮腫24/12承認不詳
MSDIdvynsodoravirine、islatravirNNRTI、NRTTIHIV/AIDS26/4承認26/3承認
SustipharmaIMOJEV-日本脳炎ワクチン、生日本脳炎の予防不詳不詳
Regeneron PharmaceuticalsOtarmenilunsotogene parvec遺伝子療法otoferlin関連難聴26/4承認不詳
サノフィ(ジェンザイム)SAR402671venglustatGCS阻害剤III型ゴーシェ病26/5申請受理不詳
出所:EMAなど。一般名と適応以外は主として会社側発表や当方の推測による。

【承認】


ウェリレグ・キイトルーダ併用が腎細胞腫術後療法に承認
(2026年6月12日発表)

FDAはMSDのHIF-2アルファ阻害剤Welireg(belzutifan)と抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を併用で淡明細胞腎細胞腫の切除術後アジュバント療法に用いる適応拡大を承認した。EUでも審査中。日本も参加した第3相LITESPARK-022試験に1841人の患者を組入れて、Keytrudaに加えて、Welireg 120mgまたは偽薬を一日一回、52週に亘り経口投与したところ、中間解析でDFS(無病生存期間)のハザード・レシオが0.72(95%信頼区間0.59-0.87)となった、24ヶ月DFS率は各群80.7%と73.7%。副次的評価項目である全生存期間の解析は未成熟で有意差は出ていないが、昨年10月のMSDのプレス・リリースによると、ハザード・レシオは0.78と好ましい方向を指している。G3以上の治療時発現有害事象発生率は52%対30%で増加した。

Weliregはフォン・ヒッペル・リンドウ病関連腫瘍や腎細胞腫向けに米欧日で承認されている。

リンク: プレス・リリース


トルカプがPTEN欠乏前立腺癌に適応拡大
(2026年6月12日発表)

FDAはアストラゼネカのAKT阻害剤Truqap(capivasertib)を成人のPTEN欠乏型でアンドロゲン経路調節剤が未経験、または感受性の転移前立腺癌に適応拡大した。中段は聴き慣れない文言だが、従来は転移性ホルモン感受性前立腺癌と呼んでいたものを変更したようだ。abiraterone及びprednisoneと併用で、400mg一日二回経口投与を4日服用、3日休薬のペースで反復する。第3相CAPItello-281試験でPFS(治験医による放射線学的評価による無進行生存期間)がメジアン33.2ヶ月と、偽薬・abiraterone・prednisone併用群の25.7ヶ月を上回った。但し、ハザード・レシオは0.81(95%信頼区間0.66-0.98)、両側p=0.034とそれほどでもなかった。

原因を推測するためにカプラン・マイヤー曲線を見たところ、定期評価のタイミングと推測される時期の落ち込み(進行認定)が試験薬群のほうが大きい。PFS解析には付き物の現象だが、この試験では特に大きいように感じられる。FDAは、第2次トランプ政権では珍しく諮問委員会を招集し意見を求めたが、支持7人、反対1人、棄権1人で過半が承認に賛成した。メジアン値で半年以上の差であることを軽視できなかったのだろう。

Truqapは23~24年に米日欧である種の局所進行/転移乳癌に承認されている。

リンク: プレス・リリース


CNVP案件が8ヶ月審査で承認
(2026年6月12日発表)

FDAはサノフィのTzield(teplizumab-mzwv)を8~17歳のステージIIIの一型糖尿病用薬として加速承認した。CD3エプシロン鎖に結合する抗体医薬で、22年に8歳以上のステージII一型糖尿病に承認され、今年4月には1~7歳に適応年齢拡大している。

ステージIIは膵島細胞自己抗体を持つが血糖値は糖尿病ほどではなく症状もない。血糖値が更に上昇し頻尿や口渇などの症状が現れるとステージIIIと診断される。TzeieldはステージIIからIIIに進展するのを遅らせる効果が確認されているが、今回の承認は負荷テストにおけるCペプチド濃度というサロゲート・マーカーに基づくもの。

市販後薬効確認検査として欧米中日などの施設で第3相BETA-PRESERVE試験を行い、点滴静注を12日間連続で反復し、26週後にもう一回施行する便益を偽薬と比較する。サノフィのプレス・リリースによると8~17歳の328人を組入れる予定だが、治験登録には8~25歳の723人と記されており、主解析対象は17歳以下だが25歳まで症例を得る考えなのだろう。主評価項目は52週のHbA1cとミール・タイム・インスリン不使用日数。更に、EMA向けの主評価項目として、5歳以上を対象として食事負荷試験におけるCペプチド濃度も検討する。ということは、本試験は今後、5~7歳も組入れ対象になるのだろうか?

さて、ステージIII適応拡大はFDAがCNPV(委員長国家的優先バウチャ)を供与しており、早ければ25年12月にも承認される可能性があったが、だいぶ遅れた。癲癇や血栓のリスク、死亡例などがボトルネックという報道や、担当部署であるCDERの上層部が否定的であるためにサノフィがCNPV指定解除を求めたという報道が出たこともあった。

今週、一日に3件の承認が発表されたのは感慨深い。第2次トランプ政権におけるFDA上層部のドタバタがひと段落し、あるべき姿に戻る兆しなのだと良いのだが。

リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: サノフィのプレス・リリース(6/13付)
リンク: BETA-PRESERVE試験の概要(ClinicalTrials.gov)

ヒムペブジがインヒビター保有血友病などに適応拡大
(2026年6月8日発表)

ファイザーはFDAが抗TFPI抗体Hympavzi(marstacimab-hncq)の適応拡大を承認したと発表した。24年に米欧日でインヒビター保有性のないA型/B型血友病の出血抑制薬として承認されたが、今回、年齢下限が12歳から6歳に引き下げられ、また、6歳以上のインヒビター保有者も適応となった。

12歳以上のインヒビター保有者を組入れた第3相BASIS試験では、出血事象発生率年率が出血時治療群と比べて93%低かった。12歳未満は外部対照試験に基づく。

リンク: プレス・リリース

【医薬品の安全性】


FDA、アライの稀な腎障害を通知
(2026年6月10日発表)

FDAはOTC体重管理薬alli(orlistat)のレーベルを改訂し稀な有害事象に急性腎障害等を追加することを承認した。高量の処方薬であるXenicalやそのGE品も対象。用量依存性は考え難いと判断しているようだ。

ロシュが米国では1999年に承認取得したリパーゼ阻害剤。alliはGSKが開発販売権を取得し、米国で2007年に承認取得した。急性腎障害等は2007~2023年に12例が報告され、うち8人が入院、5人が透析治療を受けた。7人はその後回復、1人は改善せず、他の4人は転帰不明。症状は急性腎障害、高シュウ酸尿症、シュウ酸カルシウム結石、シュウ酸腎症。このような症状が表れたら服用を止め、医師に相談する。腎臓疾患歴を持つ患者は事前に医療従事者に意見を求める。

Xenicalは2011年にEMAのCHMPがごく稀な肝障害について検討したことがあるが、便益が上回ると判定した。197~2011年に重度肝障害の薬物関連可能例が21例報告され、alliでも2007~2011年に9例の肝不全が報告された。その時点で累積服用者は数千万人に達していたので、頻度は低い。

リンク: FDAの安全性通知

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26下ギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy、laur/mTNBC1L PD-L1阻害剤不適向けと併用)
26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/7推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/7/3Ascelia Pharma ABのOrviglance(manganese chloride tetrahydrate、重度腎障害患者の肝MRI造影剤)
26/7/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
26/7/7Vera Therapeuticsのatacicept(IgA腎症)
26/7/17Celcuityのgedatolisib(HR+her2-進行乳癌)
26/7/23Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
26/7/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
26/7/24大塚製薬のcentanafadine(ADHD)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推武田薬品のTAK-861(oveporexton、ナルコレプシータイプ1)
26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/5モデルナのmRNA-1010(季節性インフルエンザ・ワクチン)
26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
26/8/17ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv、筋層浸潤膀胱癌術前術後、pembrolizumab併用)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi’ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
諮問委員会
26/6/18VRBPAC:モデルナのmFLUSIVA(季節性インフルエンザmRNAワクチン)


今週は以上です。

2026年6月6日

第1262回

【ニュース・ヘッドライン】

  • ガザイバが原発性膜性腎症の蛋白尿を抑制 
  • ケレンディアは糖尿病性ではないCKDにも有効 
  • Innovent、武田と提携したADCが第3相達成、中国で承認申請 
  • ADC社、市販後薬効確認に成功も安全性に?
  • PAM阻害剤、PIK3CA変異型の試験も成功 
  • miR-124エンハンサーが潰瘍性大腸炎の維持療法試験も成功 
  • イミフィンジなど3剤のTACE付随試験、PFSは達成 
  • レットヴィモの術後アジュバント試験が成功 
  • TALAPRO-3試験:HRR変異ならターゼナは早く使った方がよい 
  • PROTEUS試験:アーリーダも早い段階で使った方がよい 
  • コセンティクスを日米欧でリウマチ性多発筋痛症に適応拡大申請 
  • ロシュ、経口SERDを早期乳癌にも承認申請 
  • Vertex社、IgA腎症用薬を承認申請
  • リブロファズをある種の頭頚部癌に適応拡大申請 
  • Zenas社、二重特異性抗体をIgG4関連疾患に承認申請 
  • Cogent社、c-KIT阻害剤がGISTにも承認申請受理 
  • Zydus社、PPARアゴニストが原発性胆汁性胆管炎に承認申請受理 
  • ゾコーバが米国で曝露後発症予防に初承認 
  • インド発の新規抗生剤が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


ガザイバが原発性膜性腎症の蛋白尿を抑制
(2026年6月5日発表)

ロシュは2月に抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab)の第3相原発性膜性腎症試験が成功と発表したが、ERS学会とNew England Journal of Medicine誌で結果が発表された。142人を組入れて完解率(uPCRが0.3以下、かつeGFRは安定的)をtacrolimus群と比較したところ、37%対6%で有意に上回った。rituximabのMENTOR試験では抗PLA2R自己抗体高値のサブグループにおける効果が小さかったが、今回のMAJESTY試験における探索的解析では効果が見られた。副次的評価項目の持続的eGFR低下はフェールした。G3以上の有害事象発生率も、感染症リスクも、両群同程度だった。ロシュは欧米当局と相談する考えで、承認されれば欧米で初の原発性膜性腎症用薬となる。

リンク: Fervenzaらの治験論文抄録(NEJM)


ケレンディアは糖尿病性ではないCKDにも有効
(2026年6月4日発表)

バイエルは3月に非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗剤Kerendia(finerenone)が第3相FIND-CKD試験で主目的を達成したと発表したが、詳細がERS学会とNEJM誌で公表された。レニン・アンジオテンシン系薬による治療を受けている、糖尿病を伴わない慢性腎疾患の成人1584人を組入れて、eGFR(推算糸球体濾過率)の変化を偽薬と比較したところ、32ヶ月間の年率スローブ分析で3.3mL/分/1.73m2低下と偽薬群の4.0mL/分1.73m2低下を有意に下回った。糸球体疾患(IgA腎症など)に伴う腎症や、SGLT2阻害剤同時使用患者においても効果が見られた。

副次的評価項目である腎心血管複合アウトカム(eGFRが57%以上低下、腎不全、心不全入院、心血管死)のハザード・レシオも0.77、p=0.04と、高度ではないが有意差があった。有害事象では高カリウム血症の発生率が17%対13%で上回った。同社は適応拡大申請する考え。

Karendiaは米国では成人の二型糖尿病関連慢性腎疾患と成人のLVEFが40%以上の心不全に承認されている。5月に一型糖尿病関連慢性腎疾患にも適応拡大申請された。

リンク: プレス・リリース
リンク: Heerspinkらの治験論文抄録(NEJM)


Innovent、武田と提携したADCが第3相達成、中国で承認申請
(2026年6月4日発表)

中国のInnovent Biologics(HKEX:01801)はIBI343(arcotatug tavatecan)が中国と日本で実施した第3相CLDN18.2陽性胃/食道胃接合部腺腫試験で主目的を達成したと発表した。中国で承認申請が受理されたことも明らかにした。提携先の武田薬品も日本で承認申請するのではないか。

胃腺腫などで高発現するClaudin 18.2を標的とする抗体とトポイソメラーゼI阻害剤を結合したADC(抗体薬物複合体)。25年10月に大中国圏以外の単独販売権を武田薬品に供与した。今回のG-HOPE-001試験は、治療歴のあるCLDN18.2陽性、her2陰性の局所進行切除不能/転移胃・食道胃接合部腺腫を対象に、6mgを3週毎投与する便益を医師が選んだ薬(irinotecanなど)と比較した。最初の中間解析で共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)を達成した。データは未公表。全生存期間のほうには言及していないので、未成熟なのだろう。

リンク: プレス・リリース


ADC社、市販後薬効確認に成功も安全性に?
(2026年6月3日発表)

ADC Therapeutics(NYSE:ADCT)はZynlonta(loncastuximab tesirine-lpyl)が第3相LOTIS-5試験で主目的などを達成したと発表した。21~22年に米欧で再発/難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の単剤3次治療薬として加速/条件付き承認されたが、2次治療併用試験が成功したため第4四半期に米国で適応追加・本承認切替申請を行う考え。株価は下落した。死亡が対照群より多かったため。

抗CD19抗体とアルキル化剤の抗体薬物複合体。日本は22年に田辺ファーマが導入した。日本も参加した今回の試験は、440人の患者をZynlontaを抗CD19抗体rituximabと併用する便益をR-GemOX群(rituximab、gemcitabine、oxaliplatinの併用)と比較した。共同主評価項目のうちPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)はメジアン値が6.1ヶ月対4.7ヶ月と若干上回り、ハザード・レシオは0.73、p=0.008だった。副次的評価項目の完全反応率なども上回った。一方、共同主評価項目の全生存期間は両群とも12.2ヶ月、ハザード・レシオは0.96だった。75歳未満のサブグループでは0.72、メジアン値は13.47ヶ月対10.97ヶ月だったが、75歳以上では1.38、9.86ヶ月対13.9ヶ月とだいぶ悪化している。

一因は、治療時発現有害事象による死亡が27人、13.2%と対照群の9人、4.6%を大きく上回ったこと。その多くは75歳以上で、原因別では肺炎など感染症による死亡が15人対5人と3倍だった。深刻有害事象発生率は何れかの薬の投与中止も上回った。

Zynlontaは一次治療の第2相rituximab併用試験で40人中7人が死亡し、中止に至ったことがある。この時点では1名以外は薬物関連ではなさそうという話だったが、全員が80歳以上と高齢だったことが思い起こされる。

リンク: プレス・リリース


PAM阻害剤、PIK3CA変異型の試験も成功
(2026年6月2日発表)

米国ミネソタ州ミネアポリスのCelcuity(Nasdaq:CELC)は、gedatolisibが第3相VIKTORIA-1試験のPIK3CA変異型乳癌コフォートで主目的を達成したと発表した。PIK3CA野生型コフォートは既に成功、25年11月に米国で承認申請したが、変異型にも申請する考え。

PI3K阻害剤やmTOR阻害剤と異なり、PI3K-Akt-mTORのPAM経路のPとMを阻害するPAM阻害剤。かってのワイスの開発品で、21年にファイザーから世界開発販売権を取得した。VIKTORIA-1試験は欧米アジアの施設で、成人のホルモン受容体陽性、her2陰性局所進行/転移乳癌でアロマターゼ阻害剤とCDK4/6阻害剤を投与中/後に進行した患者が対象。PIK3CA変異コフォートは、fulvestrant及びpalbociclibと3剤併用する便益をfulvestrant・alpelisib併用群と比較した。fulvestrantと2剤併用する群にも3:3:1と少ないが割付けている。

ASCO(米国臨床腫瘍学会)での発表によると、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)はメジアン11.1ヶ月と、対照群の5.6ヶ月を大きく上回り、ハザード・レシオは0.50(95%信頼区間0.37-0.68)となった。治療関連有害事象による試験薬投与中止が各群2.6%と7.1%で発生した。

副次的評価項目だが2剤併用群も好成績で、PFSはメジアン11.3ヶ月、対照群比ハザード・レシオは0.51(0.33-0.79)だった。治療時発現有害事象の発生率は3.8%。

全生存期間は両群とも未成熟だが好ましいトレンドが見られる由。

リンク: プレス・リリース


miR-124エンハンサーが潰瘍性大腸炎の維持療法試験も成功
(2026年6月1日発表)

フランスのAbivax(Euronext Paris:ABVX)はABX464(obefazimod)が第3相ABTECTメンテナンス試験で主評価項目を達成したと発表した。インダクション試験と合わせて26年第4四半期に米国で承認申請する考え。

炎症促進的サイトカインやキモカインの発現をダウンレギュレートするマイクロRNA、miR-124の発現を増強するmiR-124エンハンサー。第3相では25mgまたは50mgを一日一回経口投与する便益を検討している。成人の中重度活性期潰瘍性大腸炎を組入れて寛解導入を図った第3相ABTECT-1試験と同2試験で、50mg群はどちらも臨床的寛解率が偽薬群を有意に上回り、25mg群は一勝一敗だった。EU向けの主評価項目である内視鏡的改善達成率は両試験、両用量とも有意に上回った。

今回の維持療法試験はこれらの試験の応答者のうち580人を偽薬群、25mg群、50mg群に無作為化割付けして44週間治療したもの。臨床的寛解率は各群10.4%、50.8%、51.3%と両用量群とも有意差があった。

リンク: プレス・リリース


イミフィンジなど3剤のTACE付随試験、PFSは達成
(2026年6月1日発表)

アストラゼネカはASCO(米国臨床腫瘍学会)で切除不能肝細胞腫のTACE(肝動脈化学塞栓術)付随療法試験、第3相EMERALD-3試験の成績を公表した。抗PD-1抗体Imfinzi(durvalumab)、抗CTLA4抗体Imjudo(tremelimumab-actl)、そしてエーザイのVEGFR阻害剤Lenvima(lenvatinib)の3剤を併用することでPFS(無進行生存期間)の延長に成功したが、副次的評価項目である全生存期間の延長はそれほどでもなかった。また、Lenvimaを併用しなかった2剤併用群の成績のほうが見栄えした。

類似した試験では、MSDのKeytruda(pembrolizumab)とエーザイのLenvimaを併用した第3相LEAP-012試験もPFSは延長したが共同主評価項目の全生存期間はデータが成熟するにつれ悪化した模様で、中間解析で追跡が打ち切られた。あれこれ考えると、解釈が難しい。

今回の日本も参加した試験は、Imfinziは1500mgを4週毎点滴静注、Imjudoは初回だけ300mgを点滴静注するSTRANDレジメンとLenvima(用量は不明)を3剤併用する便益をTACEだけの群と比較した。中間解析でPFSのハザード・レシオが0.70、メジアン値は各群13.0ヶ月と9.8ヶ月となり、成功認定された。サブグループ分析も概ね同様であるようだ。副次的評価項目の全生存期間はハザード・レシオ0.84、p=0.1814と、どちらも今一つだった。

一方、ImfinziとImjudoの2剤だけを併用した群はPFSのハザード・レシオが0.71、名目p=0.006、全生存期間は同0.70、名目p=0.023と、2剤で十分ではないかと感じられる成績だった。但し、この解析は正式なものではない模様だ。

3剤併用と2剤併用の探索的比較では、ウイルス関連ではない症例においてはPFSのハザード・レシオが0.70(95%信頼区間0.44-1.09)だった。

もう一つの要チェック・ポイントであるG3以上の有害事象の発生率は、TACE群が28.6%、2剤併用群は64%、3剤併用群は71%だった。

LEAP-012試験は24年にESMO(欧州臨床腫瘍学会)でPFSデータが公表された段階では全生存期間のハザード・レシオは0.8(95%信頼区間0.57-1.11)、p=0.0867と、未成熟だが好ましい方向を向いていた。しかし、その後の中間解析で目標達成は見込み薄と判定され、打ち切られた。PFSは偽薬2剤を用いた盲検なので、今回の解析より信頼性は高いはずだが、意外な結果だ。理由は分からないが、この用途では、あるいはVEGFR阻害剤の真価を図るには、全生存期間をもっと長期追跡する必要があるのかもしれない。

アストラゼネカは適応拡大申請するのだろうか?それとも、全生存期間のデータがもっと成熟するのを待つのだろうか?


図表:EMERALD-3試験とLEAP-012試験
EMERALD-3:TACE+3剤TACETACE+2剤TACE
n293292175175
メジアンPFS(月)13.09.812.98.1
  95%CI12.2-16.78.0-11.410.2-15.96.5-10.2
HR(95%CI)0.70(0.57-0.86)0.71(0.56-0.91)
メジアン生存期間(月)39.534.7未達32.9
HR(95%CI)0.84(0.65-1.09)0.70(0.51-0.95)
LEAP-012試験:TACE+2剤TACE+偽薬
n237243
メジアンPFS(月)14.610.0
  95%CI12.6-16.78.1-12.2
HR(95%CI)0.66(0.51-0.84)
メジアン生存期間
HR中間解析(95%CI)0.80(0.57-1.11)
HR直近無益中止
注:EMERALD-3試験の2剤群はtremelimumab 300mg(初回のみ)とdurvalumab 1500mg4週毎反復投与、3剤群は更にlenvatinibを併用。LEAP-012試験の2剤はlenvatinib 12mg(体重60kg未満は8mg)一日一回とKeytruda 400mg 6週毎を原則的に最大2年間反復。EMERALD-3試験の3剤との比較は25/9時点、2剤との比較は26/2時点の非公式解析。
出所:両社の発表や治験論文などから作成

リンク: プレス・リリース


レットヴィモの術後アジュバント試験が成功
(2026年5月31日発表)

イーライリリーは2月にRET阻害剤Retevmo(selpercatinib)がRET融合変異を持つステージIB~IIIAの非小細胞性肺癌(RETf+NSCLC)の治癒的放射線療法/摘出術後付随療法試験で主目的を達成したことを公表したが、ASCOでデータ発表した。医療に直ちに採用すべきと高評価を得ている。適応拡大申請する考え。

この第3相LIBRETTO-432試験は151人の患者を偽薬群と160mg群に無作為化割付けして一日2回、最長3年間、経口投与したもの。主評価項目はステージIIまたはIIIAのサブグループ109人のEFS(無イベント生存期間、治験医評価)。ハザード・レシオが0.17、2年EFSは各群61%と92%、メジアン値は31.8ヶ月と未到達と、大変良い結果だった。全生存期間は未成熟だが好ましいトレンドが見られたとのこと。

副次的評価項目である全被験者のEFSもハザード・レシオが0.17、2年EFS70%と94%と、似たような結果になっている。

リンク: プレス・リリース


TALAPRO-3試験:HRR変異ならターゼナは早く使った方がよい
(2026年5月30日発表)

ファイザーは3月にPARP-2阻害剤Talzenna(talazoparib)が第3相TALAPRO-3試験で主目的を達成したと発表したが、ASCOで学会発表した。この日本も参加した試験は、転移去勢感受性前立腺癌のアンドロゲン枯渇療法を開始してから3ヶ月以内の、HRR(相同組換え修復)遺伝子変異が見られる患者599人を組入れて、偽薬または0.5mg/日を同社のXtandi(enzalutamide)160mg/日と共に投与して、rPFS(放射線学的無進行生存期間、治験医評価)を比較した。結果は、ハザード・レシオが0.48、メジアン値は各群46ヶ月と未到達だった。3年rPFS率は56%と77%、うちBRCA変異型では49%対77%、その他の変異型では60%対76%だった。副次的評価項目である全生存期間の中間解析はハザード・レシオ0.77、p=0.09、両群ともメジアン未達となっており、今後も追跡する。同社は当局と協議する考え。

転移去勢感受前立腺癌の5~6割は2年内に転移去勢抵抗性前立腺癌に進行する、25%を占めるHRR型ではリスクが高い、とのこと。この試験はHRR検査を梃子にして早期に治療をステップアップする手法の有効性を示唆した。

リンク: プレス・リリース


PROTEUS試験:アーリーダも早い段階で使った方がよい
(2026年5月30日発表)

ASCOでは、ファイザーの第2世代アンドロゲン伝達阻害剤、Erleada(apalutamide)の第3相PROTEUS試験の結果も発表された。この日本も参加した試験は、治癒的摘出術/放射線療法を受ける高リスクの限局性/局所進行性前立腺癌2109人を対象に、術前術後に6ヶ月間ずつ、偽薬または240mg一日一回経口投与をアンドロゲン枯渇療法と共に施行した。主評価項目のpCR(病理学的完全反応率)は各群1.0%と8.9%となり、オッズ比は10だった。共同主評価項目のMFS(無転移生存期間、盲検独立中央評価)はハザード・レシオが0.80、p=0.02、メジアン値は両群未達、5年MFS率は73.5%と78.2%と、5ポイント弱の差があった。G3/4有害事象発生率は各群31.0%と39.6%で、試験薬群はラッシュなどが増加した。

リンク: Taplinらの治験論文抄録(NEJM)

【承認申請】


コセンティクスを日米欧でリウマチ性多発筋痛症に適応拡大申請
(2026年6月3日発表)

ノバルティスは、抗IL-17A抗体Cosentyx(secukinumab)をリウマチ性多発筋痛症(PMR)の治療に用いた第3相試験の学会・論文発表に際して、既に日米欧で適応拡大申請済みであることを明らかにした。欧州ではEMAが2月に審査開始している。

エビデンスとなる第3相REPLENISH試験は、成人患者381人を偽薬群、150mg群、300mg群に無作為化割付けして52週間治療した。当初はステロイドを併用したが24週かけて漸減した。主評価項目は第12週から52週にかけての持続的寛解率。昨年10月に300mg群が達成したことだけ公表されたが、今回、各群20.4%、40.6%、41.2%と2用量群とも偽薬を有意に上回ったことが判明した。副次的評価項目のステロイド累積投与量(年率、調整値)も各群2093mg、1683mg、1604mgとなり、ある程度の抑制に成功した。

Cosentyxは乾癬性関節炎やプラク乾癬、強直性脊椎炎、nr-axSpA(X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎)、化膿性汗腺炎に承認されている。

リンク: プレス・リリース
リンク: Stoneらの治験論文(NEJM)


ロシュ、経口SERDを早期乳癌にも承認申請
(2026年6月2日発表)

ロシュはRG6171(giredestrant)を米国で成人のエストロゲン受容体陽性、her2陰性のステージI/II/III乳癌の術後補助療法として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年11月30日。日本も参加した第3相lidERA Breast Cancer試験の中間解析で、IDFS(無侵襲性疾患生存)率が3年時点で92.4%と、医師が選んだ内分泌療法を施行した群の89.6%を上回り、ハザード・レシオは0.70、p=0.001だった。全生存期間の解析は熟していないが改善のトレンドが見られる由。

この経口SERD(選択的エストロゲン受容体零落剤)は局所進行/転移段階の患者を組入れてeverolimusと共に投与したevERA試験で、特にESR1変異型サブグループで良績を上げ、先に承認申請された。審査期限は26年12月18日なので、順調なら今回の適応のほうが先に承認されることになる。

リンク: プレス・リリース


Vertex社、IgA腎症用薬を承認申請
(2026年6月1日発表)

Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は米国でpovetaciceptをIgA腎症用薬として承認申請し受理されたと発表した。予定通り優先審査バウチャを用いた模様で、審査期限は26年11月30日となった。

24年にAlpine Immune Sciencesを49億ドルで買収して入手した、TACIのCRD2ドメインとFcドメインの融合蛋白。BAFF(B cell activating factor)とAPRIL(a proliferation inducing ligand)に結合・阻害する。小野薬品が日本と韓国の権利をライセンスしている。

日本も参加した第3相RAINIER試験で80mgを4週毎皮下注したところ、中間解析で共同主評価項目の一つ、36週uPCR(尿蛋白クレアチニン比、24時間)が偽薬調整後で50%低下した。有害事象は尿路感染症や注射箇所反応など。自己抗体が見られたが効果や安全性に関する懸念は生じなかった。

リンク: プレス・リリース


リブロファズをある種の頭頚部癌に適応拡大申請
(2026年5月31日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは、Rybrevant Faspro(amivantamab and hyaluronidase-lpuj、和名リブロファズ)の頭頚部癌に関するデータをASCOで発表すると共に、既に米国で適応拡大申請していることを明らかにした。

EGFRとMETに結合する二重特性抗体で、米欧日でEGFR変異型非小細胞性肺癌に承認されている。今回は、免疫療法と白金化学療法歴のある難治/転移頭頚部癌(但し、HPV陽性の中咽頭扁平上皮腫やEGFR阻害剤歴のある患者は除外)102人に投与した後期第1相/第2相OrigAMI-4試験のコフォート1に基づくもの。確認ORR(客観的反応率)が42%(完全反応率15%、部分反応率27%)、メジアン11.8ヶ月追跡時点で反応持続期間はメジアン値未達、メジアン生存期間は12.5ヶ月だった。

リンク: プレス・リリース


Zenas社、二重特異性抗体をIgG4関連疾患に承認申請
(2026年5月28日発表)

米国マサチューセッツ州のZenas BioPharma(Nasdaq:ZBIO)は、米国でZB012(obexelimab)をIgG4関連疾患用薬として承認申請した。下期に欧州でも申請する考え。日本周辺やオーストラリアは権利をブリストル マイヤーズ スクイブに導出したせいか言及されていないが、第3相試験の被験者の3割弱を組入れた日本でも申請されるのではないか。

21年にXencor(Nasdaq:XNCR)からライセンスした、CD19とFcガンマ受容体IIbに結合する抗体。第3相INDIGO試験で194人の患者を偽薬群と250mg群に無作為化割付けして週一回皮下注を1年間反復してフレアの発生状況をモニターしたところ、各群54.6%と26.8%、ハザード・レシオ(time to event分析)は0.44、p=0.0005だった。深刻有害事象の発生率は19%と10%だった。

リンク: プレス・リリース


Cogent社、c-KIT阻害剤がGISTにも承認申請受理
(2026年5月28日発表)

Cogent Biosciences(Nasdaq:COGT)は米国でCGT9486(bezuclastinib)をimatinib歴のある消化管間質腫瘍(GIST)に承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年11月30日。本剤は先に非進行性全身性肥満細胞腫に承認申請されたが、審査期限は12月30日なので、GISTが第一適応症になりそうだ。今上期中に進行性全身性肥満細胞腫にも申請する予定。

第一三共の子会社だったPlexxikonが事業終了の2年前に導出した、c-KIT阻害剤。導出先の企業がUnum Therapeutics(Nasdaq:UMRX)を株式交換方式で逆買収して裏口上場し、上記社名に変更した。GISTにおけるエビデンスは第3相PEAK試験。sunitinibと併用した群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン16.5ヶ月とsunitinibだけの群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.50だった。有害事象は肝臓酵素上昇や貧血症が増加した。非進行性全身性肥満細胞腫はSUMMIT試験のパート2で24週TSS(Mastocytosis Symptom Severity Daily Diaryに基づく全般症状尺度)の低下が24.3点と、偽薬群の15.4点を上回った。進行性全身性肥満細胞腫ではAPEX試験のパート2で全般的反応率(部分反応以上)が49%だった。

リンク: プレス・リリース


Zydus社、PPARアゴニストが原発性胆汁性胆管炎に承認申請受理
(2026年5月28日発表)

インドのZydus Lifesciencesは、米国で完全子会社のZydus Therapeuticsがsaroglitazarを成人の原発性胆汁性胆管炎(PBC)用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年11月27日。承認なら27年3月にロンチする考え。

PPARアルファとガンマのアンタゴニストで、13年にインドで糖尿病性異脂血症用薬Lipaglynとして発売した。PBCではEPICS-III試験の第3相部分で第1選択薬であるUDCA(ursodeoxycholic acid)に不応/不耐の成人患者148人を1mg一日一回群と偽薬群に2対1割付けして52週間投与した。主評価項目は生化学的複合応答率(アルカリフォスフォターゼや総ビリルビンで評価)。56.7%と偽薬群の9.8%を有意に上回った。有害事象発生率は両群大差なかった。

リンク: プレス・リリース

【承認】


ゾコーバが米国で曝露後発症予防に初承認
(2026年6月1日発表)

塩野義製薬は、Xocova(ensitrelvir)が米国で12歳以上の曝露後発症予防薬として承認されたと発表した。感染者に濃厚接触した12歳以上の青少年・成人に、曝露後できるだけ早く、72時間以内に、投与を開始する。125mg錠を初回は3錠、その後は一日1錠、全部で5日間服用する。禁忌は重大な過敏反応歴や、代謝をCYP3A4酵素に依存する薬(その薬の副作用リスクが高まる)あるいはCYP3A4誘導作用のある薬(Xocovaの効果が薄れる)の同時使用。日本でも3月に適応拡大が承認されている。どちらもSCORPIO-PEP試験に基づくもの。ベースライン時点のPCR検査で陰性だった2041人のうち、偽薬群は9.0%が10日以内に発症したが、試験薬群は2.9%に留まり、リスク比は0.33(95%信頼区間0.22-0.49)だった。

リンク: プレス・リリース


インド発の新規抗生剤が承認
(2026年5月30日発表)

インドのWockhardtはFDAがZaynich(zidebactam、cefepime)を成人の感受グラム陰性菌による複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)に承認したと発表した。インドの製薬会社のNCE(新規化学物質)が米国で承認されたのは初めて。欧州でも承認申請中。

第4世代セファロスポリンのcafepimeを2g、ベータ・ラクタマーゼとペニシリン結合蛋白2を阻害する新開発のzidebactamを1g、配合した合剤。8時間おきに1時間点滴静注を7-10日間反復する。530人を組入れた第3相試験で奏効率(投与完了の7-10日後における臨床的治癒かつ微生物学的応答)が89.0%と、meropenem群の68.4%を有意に上回った。有害事象発生率は両群大差なかった。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
26/6/18アストラゼネカのTruqap(capivasertib、PTEN欠乏HSPC)
26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26下ギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy、laur/mTNBC1L PD-L1阻害剤不適向けと併用)
26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/7推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/7/3Ascelia Pharma ABのOrviglance(manganese chloride tetrahydrate、重度腎障害患者の肝MRI造影剤)
26/7/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
26/7/7Vera Therapeuticsのatacicept(IgA腎症)
26/7/17Celcuityのgedatolisib(HR+her2-進行乳癌)
26/7/23Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
26/7/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
26/7/24大塚製薬のcentanafadine(ADHD)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推武田薬品のTAK-861(oveporexton、ナルコレプシータイプ1)
26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/5モデルナのmRNA-1010(季節性インフルエンザ・ワクチン)
26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
26/8/17ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv、筋層浸潤膀胱癌術前術後、pembrolizumab併用)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi’ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
諮問委員会
26/6/18VRBPAC:モデルナのmFLUSIVA(季節性インフルエンザmRNAワクチン)


今週は以上です。

2026年5月30日

第1261回

【ニュース・ヘッドライン】

  • Regeneron、WHOがmaftivimabをブンディブギョ株エボラの優先候補に 
  • アストラゼネカ、ALアミロイドーシス用抗体がサブグループに便益 
  • BMS、第2のCELMoDの第3相が成功 
  • 慢性B型肝炎でも完治が視野に 
  • Hansa Biopharma、拒絶反応予防薬の欧州承認後薬効確認試験が成功 
  • 迪哲医药、Zegfrovyの適応拡大を米中で申請 
  • テクベイリを単剤で適応拡大申請 
  • サノフィ、III型ガウシェ病用薬を承認申請 
  • 肢帯型筋ジストロフィー用薬を承認申請 
  • DMDのエクソン51スキップ薬を承認申請 
  • 睡眠時無呼吸の配合剤を承認申請 
  • ADH1用薬を承認申請 
  • Agios社、mitapivatを鎌状赤血球症に申請断行 
  • イミフィンジが筋層非浸潤膀胱癌に適応拡大 
  • アッヴィのADCがBPDCNに承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


Regeneron、WHOがmaftivimabをブンディブギョ株エボラの優先候補に
(2026年5月28日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、WHOの諮問グループがBundibugyo株によるエボラウイルス疾患における効果を探索する上で、同社のmaftivimabを最優先とするよう推奨したと発表した。20年に米国で承認されたザイール株エボラウイルス疾患用薬、Inmazeb(atoltivimab、maftivimab、odesivimab-ebgn)の配合成分の一つで、in vitroでBundibugyo株を含む様々な株に中和作用を示した。INMAZEBはこれまでに数百人の投与実績がある。

エボラウイルス疾患はフィロウイルス科のRNAウイルスによる感染症。1976年にザイール(現コンゴ民主共和国)のエボラ川周辺地域で発見された。死亡者数百人規模の流行が散発的に発生しており、18~20年の大流行では3000人以上が感染、2000人以上が死亡した。Inmazebはこのザイール株が流行した時期の臨床試験で28日死亡率が33%と、他の開発品を投与した群の35~51%を凌ぐ成績を上げた。配合成分のうち、maftivimabはウイルスが細胞に侵入するのを妨げ、atoltivimabとodesivimabはイフェクター機能を増強する作用を持つようだ。

コンゴ民主共和国では第17波の流行が発生、5月にWHOがPHEIC(国際的に懸念すべき公衆衛生危機)宣言を発出した。5月19日時点で疑い例543人、確定例33人、死亡131人が報告され、ウガンダでも確定例2人とのこと。死亡リスクはザイール株よりは小さいようだ。米国連邦政府が過去21日間にコンゴ民主共和国、ウガンダ、または南スーダンに滞在した米国パスポートを持たない人の入国制限を予定するなど、渡航制限の動きも出ている。

尚、MedPageTodayやロイターの報道によれば、この諮問グループは他の開発品についても優先開発候補に挙げている模様だ。一つは、Mapp Biopharmaceuticalの、上記ザイール株エボラウイルスの臨床試験でテストされたZMappではなくMBP134(2種類の抗体のカクテル、in vitroでBundibugyo株にも活性)。Gilead Sciencesの抗ウイルス薬remdesivir(COVID-19治療薬Vekluryの活性成分)も感染者の濃厚接触者向けとして。そして、MSDが商業化したザイール株ワクチンErveboのBundibugyo株対応版や、オックスフォード大学/Serum Institute of Indiaの、COVID-19感染予防用抗体Vaxzevriaのエボラ版だ。

リンク: プレス・リリース

【新薬開発】


アストラゼネカ、ALアミロイドーシス用抗体がサブグループに便益
(2026年5月29日発表)

アストラゼネカは昨年7月に抗フィブリル抗体anselamimabの第3相CARES試験がフェールしたこと、しかし事前に設定されたサブグループ分析は良好な結果になったことを明らかにしたが、今回、Journal of Clinical OncologyとASCO(米国臨床腫瘍学会)で詳細を発表した。メカニズム的な説明は納得のいくものだが、承認されるかどうか不透明だろう。

21年にCaelum Biosciencesを買収して入手したキメラ抗体で、AL(アミロイド軽鎖)アミロイドーシスの原因となる、折り畳み異常の軽鎖アミロイド・フィブリルに結合する。今回の試験は、北米欧州イスラエル日本オーストラリアなどの施設で、ALアミロイドーシスを発症し心臓影響もみられる未治療形質細胞疾患の患者406人を、MayoステージIIIa群の試験とIIIb群の試験に分けて組入れて、標準療法(cyclophosphamide、bortezomib、dexamethasoneの3剤併用)に追加する便益を偽薬追加(2対1割付け)と比較した。当初の主評価項目は全生存期間だったが、イベント数が想定を下回って推移したため全死亡(ACM、time to event分析)と心血管入院(CVH、年率頻度を比較)のWin ratioに変更された。各群一人ずつデータを抜き出し全生存期間を比較し、同じだったらCVHを比較する方法で勝ち負けを判定し、試験薬群の勝利数を対照群の勝利数で割ることでWin ratioを算出するもの。

結果は1.11と勝ち越したがp=0.33だった。ACMのハザード・レシオは0.80、死亡率は33%対偽薬群の38%、CVHの発生リスク比(incidence risk ratio)は0.67、年率0.59対0.89と、数値上は悪くなかったが、何れも有意水準ではなかった。

一方、事前に設定されたサブグループ分析であるカッパ型アイソタイプ72人ではWin ratioが2.06、p=0.10、ACMは0.38、名目p=0.012、CVHは0.29、名目p=0.028だった。ラムダ型アイソタイプにおける成績は両群、大差なかった。

ALアミロイドーシスは免疫グロブリン軽鎖のカッパ鎖における変異が主導するものとラムダ鎖変異によるものがあるようだ。anselamimabは前者を抗原として創製されたため、in vitroの親和性もカッパ型の方が高かった。従って、今回のような結果になったのは生物学的なもっともらしさがある。とは言え、本稿でも何度が書いたが、サブグループ分析には悪魔が潜む。名目p値は正式な仮説検定ではないことを忘れても一本の試験で承認を得るためには十分に低いとは言えないだろう。

EMAは、昨年12月にanselamimabの承認審査を開始したことを公表している。米国の申請状況は不明。

リンク: プレス・リリース
リンク: Wechalekarらの治験論文(Journal of Clinical Oncology、オープン・アクセス)


BMS、第2のCELMoDの第3相が成功
(2026年5月29日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、ASCO(米国臨床腫瘍学会)でmezigdomideの第2/3相SUCCESSOR-2試験の成績を発表した。承認申請に向かうのではないか。

セルジーンを買収して入手した、同社がCELMoD(セレブロンE3リガーゼ・モジュレーター)と呼ぶ新しいクラスの免疫調停薬。Revlimid(lenalidomide)などの免疫調停薬よりアポトーシス誘導性などが高い模様だ。今回の日本も参加した試験は、lenalidomideと抗CD38抗体による一次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発/難治多発骨髄腫500人超を組入れて、Kdレジメン(carfilzomibとdexamethasoneを併用)に追加するMeziKdレジメンのPFS(無進行生存期間)を検討した。第3相ポーションの中間解析でハザード・レシオ0.48、p<0.0001、メジアン値は18ヶ月(Kd群は8.3ヶ月)と大きな差が出た。全生存期間は未成熟。G3/4治療時発現有害事象は各群83.7%と56.5%で発生し、特に好中球減少症が大きく増加、感染症も倍増した。

もう一本の第3相SUCCESSOR-1試験は1-3次治療歴を持つ患者を対象に、bortezomib及びdexamethazoneと併用する便益をbortezomib、dexamethazone、及びpomalidomideと併用する群と比較しており、新旧対抗戦の様相を呈している。

同社はもう一つのCELMoDであるiberdomideを米国で承認申請し受理された。1~2次治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発/難治多発骨髄腫に、抗CD38抗体daratumumab及びdexamethasoneと併用する。多発骨髄腫は複数の治療シーケンスがあるので、やがて、CELMoD2剤の同じTPOにおける優越が明らかになるだろう。

リンク: プレス・リリース
リンク: ASCO抄録(LBA7506)


慢性B型肝炎でも完治が視野に
(2026年5月28日発表)

GSKは慢性B型肝炎の治療薬としてグローバル承認申請中のアンチセンス薬、GSK3228836(bepirovirsen)の第3相試験成績をNew England Journal of Medicine誌や学会で公表した。被験者の2割程度だが薬物療法を止めてもウイルスが再燃しない、ファンクショナル・キュアを達成できる可能性が示された。

Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスしたオリゴヌクレオチド。26年2月の日本を皮切りに、欧州、中国、そして5月には米国でも承認申請が受理された。日本も参加した第3相B-Well試験は、安定した量のヌクレオチド/ヌクレオシド(N薬A)治療を受けている慢性B型患者を二本の試験に約900人ずつ組入れて、300mg週一回皮下注を追加する群と偽薬追加群に2対1割付けして24週間投与し、その後更に24週間、NA薬だけを投与して、ウイルスRNA量やHBsAg抗原量が一定以下になった患者はNA薬の投与も中止した上でさらに24週間、継続追跡した。主評価項目は継続追跡後も一定水準以下だった患者の比率(ファンクショナル・キュア奏効率)。一本は20%、もう一本は19%となり、偽薬群のゼロを有意に上回った。尚、48週時点で一定水準以下だった患者の比率は両試験とも24%だったので、その1~2割が投与中止後に再燃したことになる。

bepirovirsen投与期間中のG3以上の有害事象発生率は16%(偽薬群は3%)。一番多かったのはALT上昇だが、発生した患者のほうが奏効率が高く、薬効の裏返しである可能性もあるようだ。

リンク: GSKのプレス・リリース
リンク: Houらの治験論文抄録(New England Journal of Medicine)


Hansa Biopharma、拒絶反応予防薬の欧州PMSが成功
(2026年5月27日発表)

スウェーデンのHansa Biopharma(Nasdaq Stockholm:HNSA)は、20年にEUで腎移植後拒絶反応予防薬として条件付き承認されたIdefirix(imlifidase)の市販後薬効確認試験(PMS)の結果を公表し、第4四半期に本承認切替申請を行う考えを明らかにした。

化膿レンサ球菌由来の抗体開裂酵素。抗ドナー抗体を持ち高度感作の腎臓、又はクロスマッチ陽性の死体腎の移植を受ける成人が適応になる。米国でも承認申請中で、審査期限は26年12月19日。今回の20-HMedIdeS-19試験は、HLA不一致の死体腎移植を受ける高度感作患者51人を組入れてIdefirixによる脱感作処理を行いクロスマッチ陽性から陰転させてから移植し、その後1年間のグラフト・フェールなき生存率を評価した。被験者の90%が達成、グラフト・サバイバルは92%、生存率は98%と、適合腎移植の文献データと比較しても大きな差はない結果となった。

米国申請のエビデンスとなる第3相ConfIdeS試験では腎機能が標準的療法(血漿交換や抗CD20抗体、適合腎入手まで待機など)を有意に上回った。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


迪哲医药、Zegfrovyの適応拡大を米中で申請
(2026年5月27日発表)

Dizal (Jiangsu) Pharmaceutical(SHEX:688192、迪哲医药)は、米中でZegfrovy(sunvozertinib)の適応拡大を申請し受理されたと発表した。EGFRにエクソン20挿入(ex20ins)変異を持つ進行非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療に単剤投与するもの。ASCOとNew England Journal of Medicine誌でエビデンスとなる第3相WU-KONG28試験の成績も発表された。

第2相成績に基づき、23年に中国で条件付き承認、25年には米国でも加速承認されたEGFR阻害剤。適応は、白金ベース化学療法中/後に進行したEGFR es20ins変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌。今回の第3相は300mgを1日一回経口投与する群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)をcarboplatin・pemetrexed併用群と比較した。結果はハザード・レシオ0.65、p<0.001、メジアン値は10.3ヶ月対7.5ヶ月だった。地域別サブグループ分析で、6割超を占めたアジアの施設では0.56、それ以外は0.93と比較的大きな解離が見られた。全生存期間は両群29ヶ月前後。化学療法群の3分の2が進行後にクロス・オーバーした影響があるのかもしれないが、案外だ。カプラン・マイヤー・カーブでは最初の15ヶ月間は試験薬群のほうが下回っている。G3以上の有害事象発生率は75.5%対56.7%で、血清クレアチニン・キナーゼの上昇や下痢、貧血症が増加した。

競合ではジョンソン エンド ジョンソン・グループの抗EGFR・MET二重特異性抗体、Rybrevant(amivantamab-vmjw)が米欧日で承認されている。化学療法併用でPFSのメジアン値は11.4ヶ月、化学療法だけの群は6.7ヶ月となっており、3剤併用の割にはZegfrovy単剤の数値とそれほど変わらない。但し、全生存期間は、クロス・オーバーの影響か有意差は出ていないものの、ハザード・レシオ0.67と点推定値は良好だ。

リンク: 承認申請プレス・リリース
リンク: Zhouらの治験論文抄録(NEJM、5/29/2026)


テクベイリを単剤で適応拡大申請
(2026年5月29日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは、Tecvayli(teclistamab-cqyv)を米国でも単剤で再発/難治多発骨髄腫に適応拡大申請したことを明らかにした。3月に欧州でも二次治療に申請されている。

22年に再発/難治多発骨髄腫の米国では5次治療、EUでは4次治療に承認され、日本でも24年に初承認された、抗BCMA x CD3二重特異性抗体。今回のエビデンスとなるのは第3相MajesTEC-9試験。lenalidomideと抗CD38抗体を含む1~3次治療歴のある患者を組入れて、PFSなどを標準療法(pomalidomide、bortezomib、dexamethasone併用またはcarfilzomibとdexamethasone併用)と比較した。中間解析でハザード・レシオが0.29、全生存期間のハザード・レシオは0.60と、大変良い結果になった。但し、致死的な治療時発現有害事象の発生率は6.5%対3.5%と若干上回った。

類似した患者層に同社のDarzalex Fasproと併用した第3相MajesTEC-3試験もPFS、全生存期間共に良好な成果を上げ、米国では3月に承認、欧日で適応拡大申請中。過去治療や忍容性を踏まえて使い分けるのだろうか?

リンク: プレス・リリース
リンク: Touzeauらの治験論文抄録(NEJM)


サノフィ、III型ガウシェ病用薬を承認申請
(2026年5月28日発表)

サノフィはSAR402671(venglustat)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年11月25日。同社のCerdelga(eliglustat tartrate)と同様なグルコシルセラミド合成酵素阻害剤だが、中枢神経浸透性が高く、非中枢神経症状が中心のI型ではなく中枢神経症状が多いIII型のガウシェ病用薬として開発された。3年以上の酵素補充療法を受けて安定的な状態にある12歳以上の患者43人を組入れて、venglustatにスイッチする便益を検討したところ、二種類の神経学的症状評価尺度が何れも酵素補充療法比有意に改善した。

リンク: プレス・リリース


肢帯型筋ジストロフィー用薬を承認申請
(2026年5月27日発表)

BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)はBBP-418(ribitol)をLGMD2I/R9(肢帯型筋ジストロフィー2I/R9型)の治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年11月27日。

この疾患はfukutin関連蛋白の遺伝子の機能低下変異による常染色体性遺伝子疾患。四肢筋力が低下し、呼吸器疾患や心臓疾患を合併することもある。欧米の推定患者数は7000人程度の希少疾患。BBP-418はリビトールの経口液用顆粒製剤で、体重に応じて9gまたは12gを一日2回、経口投与すると、欠乏するアルファ・ジストログリカンに体内で変換される。12歳以上の患者を組入れた試験の12ヶ月中間解析でNorth Star Assessment for Limb Girdle Muscular Dystrophyが偽薬比有意に改善した。歩行機能なども有意差があった。G3以上の治療時発現有害事象が5.4%で見られた(偽薬群は5.3%)。

リンク: プレス・リリース


DMDのエクソン51スキップ薬を承認申請
(2026年5月26日発表)

米国マサチューセッツ州の医薬品開発会社、Dyne Therapeutics(Nasdaq:DYN)は、DYNE-251(zeleciment rostudirsen)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)のエクソン51スキップ薬としてFDAに承認申請した。PMO(フォスフォロジアミデート・モルフォリノ・オリゴマー)をトランスフェリン受容体(TfR1)に結合する抗体フラグメントと結合して作用の増強を図ったもので、第1/2相試験の承認申請用拡大コフォートに4~16歳の患者32人を組入れて20mg/kgを4週毎静注する便益を検討したところ、第6月修正ジストロフィン発現量が既承認薬のデータより大きく改善した。time to rise from floorも偽薬群を0.04起立/秒上回った(p<0.05)。

リンク: プレス・リリース


睡眠時無呼吸の合剤を承認申請
(2026年5月18日発表)

米国マサチューセッツ州の未上場医薬品開発会社、Apnimedは、AD109(aroxybutynin、atomoxetine)の第3相睡眠時無呼吸試験の論文がAmerican Journal of Respiratory and Critical Care Medicineで刊行されたことを発表すると共に、すでに米国で承認申請していることを明らかにした。受理されれば審査期限は27年第1四半期とのこと。

ムスカリン受容体拮抗剤とノルエピネフィリン再取込阻害剤の合剤。PAP(持続陽圧呼吸)療法に不適/拒否の患者を組入れた第3相LunAIRo試験で26週AHI(無呼吸低呼吸インデックス)が46%低下(偽薬群は6%低下)、SynAIRgy試験でも55%低下(同19%低下)した。これらの会社発表数値はon treatment基準で合った模様で、後者の試験成績は上記論文抄録によると44%(同18%)となっている。主な有害事象はドライマウス、不眠、排尿開始困難、悪心など。後者の試験における有害事象による治験離脱率は21%だった(偽薬群は3%)。

リンク: プレス・リリース


ADH1用薬を承認申請
(2026年5月12日発表)

BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)はBBP-305(encaleret)をADH1(常染色体性優性遺伝性低カルシウム血症1型)の治療薬としてFDAに承認申請した。27年初めの承認を見込んでいる。

ADH1はカルシウム感受受容体の機能獲得変異による疾患で、米国では12000人がキャリアと推定されている。encaleretはカルシウム感受受容体のネガティブ・アロステリック・モジュレータ。元々はJTがMSDと共に骨粗鬆症用薬として開発したがフェールした。NIH(米国立医療研究所)の研究員がADH1における作用を発見、BridgeBioの子会社であるCalcilytixが開発を進めた。

リンク: プレス・リリース


Agios社、mitapivatを鎌状赤血球症に申請断行
(2026年5月12日発表)

Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)はPKR(ピルビン酸キナーゼR)のアロステリック・アクティベイターであるmitapivatを鎌状赤血球症に用いる適応拡大をFDAに申請した。事前相談を踏まえて加速承認を求めたとのことだが、第3相は主評価項目の一つがフェールしており、見通しは難しい。

PKR(ピルビン酸キナーゼR)のアロステリック・アクティベイター。22年に米欧でPK欠乏性の成人における溶血性貧血症の治療薬Pyrukyndとして承認され、アルファ/ベータ・サラセミアにも米国では25年にAqvesme名で、EUではPyrukynd名で今月、適応拡大した。

鎌状赤血球症用途は第2相で被験者の5割前後がヘモグロビンの1g/dL増加を達成、第3相RISE UP試験でも100mg一日2回経口投与群の40.6%が達成(偽薬群は2.9%)したが、鎌状赤血球症の急性合併症である疼痛クリーゼのリスクは年率2.62、偽薬群(3.05)比p=0.12とフェールし、株価が半減した。

リンク: プレス・リリース

【承認】


イミフィンジが筋層非浸潤膀胱癌に適応拡大
(2026年5月28日発表)

FDAはアストラゼネカの抗PD-1抗体Imfinzi(durvalumab)を成人のBCG未施行の筋層非浸潤膀胱癌(NMIBC)に用いる適応拡大を承認した。TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)を受けた患者1018人を組入れた第3相POTOMAC試験でBCGと併用で1年間投与したところ、DFS(高リスクNMIBCの再発などがなく生存)のハザード・レシオがBCGだけの群比0.68、p=0.0154だった。メジアン値は未達、2年DFS率は各群87%と82%だった。G3/4有害事象発現率は34%と17%だった。

BCGは供給がタイトである模様で、本試験ではBCGの併用を導入期だけに限定する群も設定されたが、フェールした。

この適応拡大は欧州や日本でも申請中。

リンク: プレス・リリース


アッヴィのADCがBPDCNに承認
(2026年5月27日発表)

FDAはアッヴィのDecnupaz(pivekimab sunirine-pvzy)をBPDCN(芽球性形質細胞様樹状細胞腫瘍)用薬として承認した。この希少疾患は急性骨髄性白血病の一種で、形質細胞様樹状細胞が増加、骨髄に蓄積し皮膚にも浸潤し、脾臓や肝臓の肥大、循環血球細胞の減少を伴うこともある。米国の患者数は推定350人。本剤はBPDCNで過剰発現するCD123(IL-3受容体)を標的とする抗体とアルキル化剤のADC(抗体薬物複合体)。成人の中枢神経系活性期疾患の証跡が見られない患者84人を組入れたCADENZA試験で未治療33人におけるCR/CRc(寛解/臨床的寛解)率が69%、メジアン持続期間は9.7ヶ月、難治/再発51人では15%、9.2ヶ月だった。肝静脈閉塞症が枠付き警告されている。

BPDCNではメナリーニのIL-3・ジフテリア毒素融合蛋白、Elzonris(tagraxofusp-erzs)が18~25年に米欧日で承認されている。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】



PDUFA
26/4推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
26/6推GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症)
26/6推ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病)
26/6/16塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防)
26/6/18アストラゼネカのTruqap(capivasertib、PTEN欠乏HSPC)
26/6/19MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法
26/6/20Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助、CNPV案件)
26/6/27SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風)
26/6/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
26/6/30Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症)
26/6/30Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症)
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26下ギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy、laur/mTNBC1L PD-L1阻害剤不適向けと併用)
26/7推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/7推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/7/3Ascelia Pharma ABのOrviglance(manganese chloride tetrahydrate、重度腎障害患者の肝MRI造影剤)
26/7/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
26/7/7Vera Therapeuticsのatacicept(IgA腎症)
26/7/17Celcuityのgedatolisib(HR+her2-進行乳癌)
26/7/23Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫)
26/7/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
26/7/24大塚製薬のcentanafadine(ADHD)
諮問委員会
26/6/18VRBPAC:モデルナのmFLUSIVA(季節性インフルエンザmRNAワクチン)
注:アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)の審査期間は3ヶ月延長された(推定26年8月に)

今週は以上です。