2026年2月7日

第1245回

 

【ニュース・ヘッドライン】


  • TrumpRxがロンチ 
  • アムジェン、タブネオスの自主回収要請を拒否 
  • バイエル、抗血栓薬の脳梗塞再発予防試験が成功 
  • ノボ、CagriSemaがT2D肥満試験で主目的達成 
  • サノフィ、III型ゴーシェ病用薬を承認申請へ 
  • 皮膚筋炎用薬を承認申請 
  • ヒムペブジをインヒビター持ち血友病に適応拡大申請 
  • ノバルティス、二剤の適応拡大を申請 
  • リンヴォックを白斑に適応拡大申請 
  • ダトロウェイをTNBC1Lに適応拡大申請 
  • サフネロー皮下注、米国では審査完了に 
  • エピネフリン系舌下フィルムの承認はお預け 
  • APDS用薬の11歳以下適応が遅延 
  • ノボ ノルディスク、二型糖尿病用のオゼンピック錠も承認 
  • FDA、フルオロウラシル系抗がん剤のDPD関連リスクを枠付き警告 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 

  • 【今週の話題】


    TrumpRxがロンチ
    (2026年2月5日ロンチ)

    トランプ米国大統領の名前を冠した医薬品情報サイトがやっと公開された。昨年、米国の大手製薬会社十数社と結んだ最恵国価格ディールに基づくもので、公式価格より安く買えるようになった製品とその価格を紹介している。保険還付を望む公的私的医療保険加入者は対象外。購入希望者は、製品により、製薬会社/EC企業のウェブサイトで購入するか、クーポンを取得してこの制度に参加している薬局で購入する。質疑集によると、薬局は通常価格で仕入れた製品を安売りすることになるので、拒否することができるようだ。

    製薬会社は従来から保険非加入者向けの値引き販売プランを提供しており、どの程度お買い得なのかは明らかではない。ただ、ノボ ノルディスクなど、最恵国価格ディールなどの影響で26年の実現価格が低下すると予想する会社もあるので、ケース・バイ・ケースなのだろう。

    もう一つ、良く分からないのは、トランプ大統領が昨年7月に値下げ要請の書簡を出した17社以外の動向。JAK阻害剤のように複数のブランドが競争している領域では、参加したほうがより多くのオーディエンスにお得価格をアピールできるのではないか。

    参考:TrumpRxの価格例


    オリジナルの価格TrumpRx価格割引率
    Wegovyピル1.5mg錠、4mg錠$1,349.02$149.0089%
    9mg錠、25mg錠$1349.02$299.0078%
    Xeljanz XR11mg錠$6,407.10$3,204.0050%
    Xeljanz XR(ファイザー)11mg錠$9,134$3,20467%
    注:価格は30日分。ファイザーのJAK阻害剤Xeljanz(tofacitinib)はTrumpRxで記されているオリジナル価格と、ファイザーがTrumpRx価格の参照先と示す、GoodRxで記されている割引前の価格が異なっており、こんな所にも米国の医薬品価格の複雑さが垣間見える。

    リンク: TrumpRxサイト


    アムジェン、タブネオスの自主回収要請を拒否
    (2026年2月3日発表)

    アムジェンは2025年決算発表に際して、Tavneos(avacopan)の販売を自発的に中止するようFDAに求められたが拒否したと発表した。ANCA(anti-neutrophil cytoplasmic antibody)関連血管炎の治療に用いる補体C5a受容体阻害剤で、22年に子会社化したChemoCentryxが21年10月に米国で承認を取得したもの。尚、日本ではライセンシーのキッセイ薬品が世界に先駆けて21年9月に承認を取得している。

    ライセンシーのVifor Fresenius Medical Care Renal Pharma France(VFMCRPフランス)が22年に承認取得したEUでも、今年1月にEMAのCHMPが審査を開始している。なぜ今になって、何を問題にしているのかは明らかではないが、EMAは承認の根拠となったAdvocate試験のデータの取り扱いについて新しい情報があったためとしている。FDAは、アムジェンによると、全被験者331人中9人の主評価項目データを再査読するプロセスに関して懸念を表明したという。同社は、問題があるとは認められないとして、販売を継続する考え。

    VFMCRPは17年にEUに条件付き承認を申請したが、CHMPが治験のデザインや効果の程度などに疑問を示し、一旦、撤回となった。20年に再申請して、ANCA関連血管炎の主なサブタイプであるMPA(顕微鏡的多発血管炎)とGPA(多発血管炎性肉芽腫症)の治療薬として承認された。

    米国では21年5月に関節炎諮問委員会で検討された。なぜか、FDAの諮問委員会ページで検索しても当時の資料がヒットしないが、当方のメモによると、FDAは臨床試験のデザインなどに疑問を呈しており、26週ステロイド対照非劣性解析結果に関してはrituximabやcyclophosphamideなどによる治療を受けている患者にステロイドを追加する便益は確立していないので比較対象として適切でない、従って非劣性とは言えないと判定した。全員に投与した26週延長フェーズを含めた52週優越性解析については、このような解析の意義や、査読委員会による正式な寛解判定と治験医のそれが両群とも異なり、寛解判定方法の妥当性に疑問が残ることを指摘していた。

    諮問委員会を受けて株価が半減したため株主代表訴訟が起こされたがたが、一部報道によると、今回の問題の発端は裁判で提示された資料。訴えは認められなかったのだが、何らかの新情報があった模様だ。

    リンク: プレス・リリース

    【新薬開発】


    バイエル、抗血栓薬の脳梗塞再発予防試験が成功
    (2026年2月5日発表)

    バイエルは、昨年11月、活性化血液凝固第XI因子(XIa)阻害剤BAY 2433334(asundexian)が第3相OCEANIC-STROKE試験で薬効と安全性の主目的等を達成したことを明らかにしたが、データをISC(国際卒中学会)のlate-breakerセッションで発表した。なかなか良い結果で、グローバル承認申請に向かうのではないか。フェールした心房細動試験との整合性も気になるところだ。

    この日本も参加した試験は、非心原性の虚血性脳卒中または高リスクTIA(一過性脳虚血発作)を発症してから72時間以内の患者12327人(平均年齢68歳)を50mgまたは偽薬を一日一回経口投与する群に無作為化割付けして虚血性卒中と大出血(ISTH基準)のリスクを比較した。両群とも抗血小板薬を同時使用しており、その多くはDAT(アスピリンとclopidogrelなどの併用)を採用していた。解析はtime-to-eventベース、メジアン追跡期間は今のところ当方は把握できていない。

    虚血性卒中の発生率は試験薬群が6.6%、偽薬群は8.8%で、ハザード・レシオ(csHR)は0.74、p<0.0001だった。脳卒中の種類や重症度、抗血小板薬の併用の有無などによるサブグループ分析の結果も整合的だった。共同主評価項目のISTH大出血の発生率は1.9%対1.7%、ハザード・レシオ1.10で有意な差はなかった。副次的評価項目の心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中の複合評価項目なども達成した。

    本剤は第3相心房細動患者の脳卒中/全身性塞栓症予防試験、OCEANIC-AF試験で効果がXa阻害剤apixabanと非劣性という仮説が立証されず、むしろ、発生率1.3%対0.4%、ハザード・レシオ3.79と残念な結果になった。病態の違いや実薬対照試験であることなどを考えれば必ずしも整合性がないとは言えないが、気になるところである。

    ライバルは、ブリストル マイヤーズ スクイブがジョンソン エンド ジョンソンと共同開発しているXIa阻害剤、JNJ-70033093/BMS-986177(milvexian)。第3相Librexia STROKE試験が進行中。治験デザインは似ているが、発症後48時間以内の患者が対象であることや、こちらは25mg一日二回投与であることが異なる。急性心筋梗塞から7日経った患者の第3相Librexia-ACS試験は昨年、中間解析で無益認定された。心房細動患者の卒中/全身性塞栓予防Xa阻害剤対照試験は今年中にも開票しそうだ。

    XIa阻害剤を理解する上で二剤のエビデンスが相互補完する展開が期待される。

    リンク: バイエルのプレス・リリース
    リンク: American Heart Associationの関連プレス・リリース


    ノボ、CagriSemaがT2D肥満試験で主目的達成
    (2026年2月3日発表)

    ノボ ノルディスクはCagriSemaが第3相REIMGINE 2試験で主目的を達成したと発表した。さらに2本の成功を待って承認申請する考え。

    新開発のアミリン類縁体cagrilintideと既承認のGLP-1作用剤semaglutideの合剤。週一回皮下注する。昨年12月に米国で肥満/リスク因子を持つオーバーウェイトを目標適応として承認申請された。今回の試験はmetformin(SGLT2阻害剤併用可)を服用しても血糖値を十分管理できない二型糖尿病でBMIが25kg/m2以上の患者2728人を組入れて、各剤2.4mgずつと各剤1.0mgずつの2種類の用量について、HbA1c低下作用と体重減少作用をsemaglutideだけ同量投与する群と比較した。尚、cagrilintideのみ投与する群や偽薬群も設定されている。

    結果は、2.4mg/2.4mg群は68週間でHbA1c(ベースライン値は8.2%)が1.91%低下、semaglutide 2.4mg群は1.76%低下となり、少なくとも統計学的には有意な差があった。体重(ベースライン値は101kg)は各群14.2%低下と10.2%低下で有意差があった。以上は指示通りに投与できた患者の成績に基づくefficacy etimandベースの数値。投与を止めた患者やレスキュー薬を追加した患者も追跡する、intent-to-treatに近いためFDAや医師、患者が重視するtreatment regimen estimandベースではHbA1c低下が1.80%と1.67%低下、体重は12.9%と9.2%低下した。1.0mg/1.0mg群などのデータは未公表。

    二型糖尿病ではない肥満/有リスク因子オーバーウェイトを組入れた第3相では、例えばREDEFINE 1試験では体重はtrial product estimandベースで22.7%低下、semaglutideだけの群は16.1%低下、treatment policy estimandベースでは各20.4%と14.9%だった。この種の薬のこの種の試験ではよく見られることだが、同じ肥満/オーバーウェイトでも二型糖尿病合併患者に対する効果の方が若干小さく見える。

    尚、〇〇ベースの表記は会社側発表に従った。efficacy estimandとtraial product estimandは違うのか、イーライリリーなど他社が採用している表記も含めて、誰か整理してくれないだろうか。

    リンク: プレス・リリース


    サノフィ、III型ゴーシェ病用薬を承認申請へ
    (2026年2月2日発表)

    サノフィはSAR402671(venglustat)が第3相III型ゴーシェ病試験で共同主評価項目等を達成したと発表した。承認申請へ向かう考え。一方、ファブリー病における症状改善作用を検討した第3相Peridot試験はフェールした。

    ゴーシェ病はグルコセレブロシドが分解されず組織に蓄積する常染色体劣性遺伝子疾患。乳児期に発症するI型と、乳児期以降に発症する、精神発達遅延や痙攣など神経症状を発現するII型(急性神経型)およびIII型(亜急性神経型)に分類される。本剤はグルコシルセラミド合成酵素阻害剤。同社のI型ゴーシェ病用薬、Cerdelga(eliglustat tartrate)と作用機序が同じだが、中枢神経浸透性が見られるため、神経症状を伴うIII型に適している可能性がある。今回のLEAP2MONO試験は酵素補充療法を3年以上施行して安定した状態にある12歳以上の患者43人を組入れて、一日一回投与する便益を酵素補充療法と比較した。主評価項目の52週SARA(Scale for Assessment and Rating of Ataxia)調整総合スコアと、RBANS(Repeatable Battery for the Assessment of Neuropsychological Status)の両方とも有意に上回った。副次的評価項目に設定された非神経症状4項目のうち、脾臓量と肝臓量、ヘモグロビン水準は同程度だった。データは未発表。

    ファブリー病試験は16歳以上の患者122人を組入れて、各被験者にとって最も煩わしい症状が半年後、および1年後の改善を偽薬と比較したが、成功しなかった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    皮膚筋炎用薬を承認申請
    (2026年2月6日発表)

    Roivant(Nasdaq:ROIV)は、26年3月期第3四半期決算発表に合わせて、子会社の Priovant Therapeuticsが開発しているJAK1/TYK2阻害剤、brepocitinibを米国で皮膚筋炎治療薬として承認申請したことを明らかにした。ファイザーから米日における商業化権を取得したもので、他に非感染性ブドウ膜炎や皮膚サルコイドーシスなどの臨床試験が進行中。

    今回のBeacon試験は30人の患者を偽薬、15mg、45mgの何れかを一日一回経口投与する群に無作為化割付けして16週間投与した。CSAMI-A(Cutaneous Sarcoidosis Activity and Morphology Instrument Activity)が各群0.7、22.2、22.3点低下し、45mg群は偽薬比統計的に有意、15mg群はp値は同程度だがアルファの割当が少ないのか、有意ではなかったようだ。IGA 0/1達成率は各群0、不明、69%だった。重度以上の有害事象は見られなかった。

    リンク: Roivantのプレス・リリース


    ヒムペブジをインヒビター持ち血友病に適応拡大申請
    (2026年2月6日発表)

    ファイザーは抗TFPI抗体Hympavzi(marstacimab-hncq)の適応拡大をFDAに申請し受理されたと発表した。審査期限は26年第2四半期とのこと。

    24年に12歳以上のインヒビターを持たないA型またはB型血友病の治療薬として米欧日で承認されているが、今回は、12歳以上のインヒビターを持つA型/B型血友病と、6~11歳のインヒビターを持たないA型/B型血友病の適応を求めている。

    リンク: プレス・リリース


    ノバルティス、二剤の適応拡大を申請
    (2026年2月4日発表)

    ノバルティスは25年決算発表に際して、二件の適応拡大申請を行っていたことを明らかにした。ひとつは、Pluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)。放射性医薬品で、米欧日でPSMA陽性の去勢抵抗性前立腺癌に承認されているが、まだホルモン療法感受性を失っていないが転移が見られる患者向けに申請された。第3相PSMAddition試験で標準療法に追加する便益を検討したところ、PFS(放射線学的評価)のハザード・レシオが0.72、副次的評価項目の全生存期間はクロスオーバーの影響か有意ではないが0.84と悪くない結果になっている。

    もう一つはBTK阻害剤のremibrutinib。25年9月に米国で成人の抗ヒスタミンに応答不十分な慢性特発性蕁麻疹用薬Rhapsidoとして承認された。今回の目標適応は、抗ヒスタミンに応答不十分な症候性皮膚描記症型慢性誘発性蕁麻疹。日本も参加している第3相REMIND試験の該当するコフォートに基づくもの。治験登録によると、主評価項目は12週総合Fricスコア。この試験は寒冷蕁麻疹コフォートやコリン性蕁麻疹コフォートも設定されているが、結果が出るのは26年の見込み。

    リンク: プレス・リリース


    リンヴォックを白斑に適応拡大申請
    (2026年2月3日発表)

    アッヴィはJAK1阻害剤Rinvoq(upadacitinib)を成人青年の非分節型白斑に適応拡大すべく欧米で承認申請した。12歳以上の患者を組入れた第3相Viti-Up試験で48週時点の奏効率が、F-VASI 75(顔面の白斑領域評価スコアが75%以上改善)でも、T-VASI 50(全身の評価スコアが50%以上改善)でも、偽薬を有意に上回った。

    非分節型白斑は皮膚の脱色範囲が左右対称に全身に広がっていく。類薬ではインサイトのJAK1/2阻害剤Opzelura(ruxolitinib)クリームが22年に米国で、23年にはEUでも承認されている。こちらの試験は偽薬対照期間が24週とRinvoqの48週より短いが2対1割付けとなっている。観察期間が異なるものの、Opzeluraの48週時点のデータなどと見比べると、どちらも似たような成果を挙げている。

    リンク: プレス・リリース


    ダトロウェイをTNBC1Lに適応拡大申請
    (2026年2月3日発表)

    第一三共と開発販売パートナーのアストラゼネカは、夫々、米国でDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk)を抗PD-(L)1抗体による治療が選択肢にならない切除不能/転移トリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)の一次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は、第一三共によると26年6月2日、アストラゼネカによると26年第2四半期。

    Datrowayは抗TROP-2抗体薬物複合体。644人を組入れた第3相TROPION-Breast02試験で全生存期間を医師が選んだ化学療法を施行した群と比較したところ、メジアン値は23.7ヶ月と18.7ヶ月、ハザード・レシオは0.79で統計的に有意だった。共同主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)はメジアン10.8ヶ月と5.6ヶ月、ハザード・レシオ0.57で有意。G3以上の有害事象発現率は29%対33%で若干少なかった。Datroway群では薬物関連の可能性のある間質性肺疾患で1名が死亡した。

    抗TROP-2(別名EGP-1)抗体薬物複合体はギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)も第3相Ascent-03試験でメジアンPFSが9.7ヶ月と化学療法群の6.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオ0.62で有意だった。学会/論文発表時点では副次的評価項目である全生存期間の解析は未成熟とのことだった。クロス・オーバーが可能なので有意差が出るかどうか良く分からない面がある。

    この二本の試験は細かい所が異なっている模様なので比較可能ではないかもしれないが、概ね似た内容でPFSに関しては概ね似たような結果になっている。延命効果が確立している分、前者の方が重要にも感じられるが、NCCT(National Comprehensive Cancer Network)の最新のガイドラインは、Trodelvyをカテゴリー1のpreferred regimen、Datrowayはother recommendedに、位置付けている。昨年10月にNew England Journal of MedicineでAscent-03試験論文が刊行されたことも評価の違いに繋がっているのかもしれない。。

    ギリアドは適応拡大申請したか公表していないが、昨年5月に第3相成功を発表、26年下期のロンチを計画しているようなので、2月10日の決算発表時にアップデートがあるのではないか。

    リンク: 第一三共のプレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    サフネロー皮下注、米国では審査完了に
    (2026年2月3日発表)

    アストラゼネカはSaphnelo(anifrolumab-fnia)の皮下注版を開発し、EUで25年12月に承認取得、日本でも今年1月に第二部会を通過したが、米国は審査完了通知を受領した。詳細は不明だが、請求された追加情報を既に提出したとのこと。FDAが上期中に回答することを予想している。

    アルファ、ベータなど1型のインターフェロンのサブユニット1に結合する抗体医薬。点滴静注用製剤が米日欧で中重度SLE(全身性エリテマトーデス)用薬として承認されている。

    リンク: プレス・リリース


    エピネフリン系舌下フィルムの承認はお預け
    (2026年2月2日発表)

    米国ニュー・ジャージー州のAquestive Therapeutics(Nasdaq:AQST)はAnaphylm(dibutepinephrine)をアナフィラキシーを含む一型アレルギー反応の治療薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。誤用誤認リスクなどヒューマン・ファクターに関する指摘を受けた。第3四半期に回答する考え。

    エピネフリンのプロドラッグを含有する舌下フィルム製剤。昨年4月に承認申請、今年1月にFDAから欠陥があるためレーベルなどに関する協議に進めない旨の連絡を受けていた。FDAは、パウチが開けにくく、アナフィラキシーのような緊急事態では安全性問題が生じる可能性があることなどを指摘した模様。同社は既に対応法を決定しており、バリデーション試験を実施する考え。米国外では第1四半期中に英国で、下期にはEUやカナダでも、承認申請する考え。

    リンク: プレス・リリース


    APDS用薬の11歳以下適応が遅延
    (2026年2月1日発表)

    オランダのPharming(Euronext Amsterdam:PHARM)は米国でJoenja(leniolisib)の適応を4~11歳に広げるべく申請していたが、審査完了通知を受領した。

    PI3Kデルタ阻害剤。23年に米国で、PI3Kデルタが異常活性化し免疫細胞が正常に成熟しない超希少原発性免疫不全であるAPDS(活性化PI3Kデルタ症候群)の12歳以上の患者向けに承認された。。4~11歳の追加申請は優先審査指定を受けたが、低体重児用の用量が足りない恐れや、バッチ検査手法の一つに関する疑義などの指摘を受けた由。

    リンク: プレス・リリース

    【承認】


    ノボ ノルディスク、二型糖尿病用のオゼンピック錠も承認
    (2026年2月4日発表)

    ノボ ノルディスクはOzempic錠(semaglutide)が米国で承認されたと発表した。成人の二型糖尿病における血糖管理と、高リスク患者における主要有害心血管イベントの抑制に用いる。GLP-1作用剤semaglutideの経口剤は19~20年に米欧日で二型糖尿病用薬Rybelsus/リベルサスとして承認され、25年12月には米国で体重管理薬Wegovy錠も承認されたが、どちらもSNAC(サルカプロザートナトリウム)を結合することで注射用薬を経口投与化したもので、同じ薬の別ブランドと勘違いしていたが、Ozempic錠とRybelsus錠の共同添付文書によると、OzempicはRybelsusより生物学的利用率が高く、用量が異なる。どちらも一日一回経口投与で、Rybelsusは3mgで開始し31日目から血糖管理効果のある7mgに増量、不十分なら61日目から14mgに増量可能。一方、Ozempic錠は1.5mgで開始し31日目から効果のある4mgに増量、不十分なら61日目から9mgに増量可となっている。

    Wegovy錠も1.5mg一日一回で開始、以降30日毎に4mg、9mg、25mgと漸増するので、目標用量は異なるもののOzempic錠と似ている。

    リンク: プレス・リリース

    【医薬品の安全性】


    FDA、フルオロウラシル系抗がん剤のDPD関連リスクを枠付き警告
    (2026年2月5日発表)

    FDAは抗癌剤fluorouracil(5-FU)とその経口プロドラッグであるcapecitabineのレーベルを改訂し、ジヒドロピリミジン脱水素酵素(DPD)の遺伝子変異に関わるリスクを枠付き警告したと発表した。DPDは5-FUの不活化酵素。白人の3-5%が部分的欠損、0.2%は完全欠損と推定されており、5-FUの作用が累積して深刻な有害事象をもたらすリスクがある。このため、迅速な投与が必要な場合を除いて、事前に検査して完全欠損の場合は投与せず、部分欠損の場合は患者毎に適否や用量を検討するよう推奨した。

    欧州でもEMAが20年に事前DPD検査を推奨した。カフカス系の最大9%が部分欠損、0.5%は完全欠損とのことだ。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限】


    PDUFA
    26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
    26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
    26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
    26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
    26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
    26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
    25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    26/3推Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
    26/3推Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/3バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加)
    26/4/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
    26/4/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
    26/4/8BMSのOpdivo(nivolumab、未治療の進行性古典的ホジキンリンパ腫)
    26/4/10ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    注:Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症)は委員長国家的優先バウチャ案件なので26年1月にも承認される可能性があったが、この未上場企業は今のところ、何も発表していない。

    今週は以上です。

    2026年2月1日

    第1244回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • ステロイド封入赤血球の毛細血管拡張性運動失調症試験がフェール 
    • Ultragenyx、MPS IIIA遺伝子療法を再申請 
    • ロシュ、乳癌用新薬を承認申請 
    • Summit、抗PD-1xVEGF二重特異性抗体の承認申請を断行 
    • 日本新薬が販売権を持つMPS遺伝子療法に治験停止命令 
    • CHMP、TK2d用薬などの承認を支持 
    • 老視の配合剤が承認 
    • ダラキューロのD-VRdレジメンがASCT見送り多発骨髄腫に適応拡大 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    ステロイド封入赤血球の毛細血管拡張性運動失調症試験がフェール
    (2026年1月29日発表)

    米国カリフォルニア州のQuince Therapeutics(Nasdaq:QNCX)は、eDSP(encapsulated dexamethasone sodium phosphate)が第3相NEAT試験で主目的などを達成しなかったと発表した。常染色体劣性遺伝性疾患である毛細血管拡張性運動失調症(Louis-Bar症候群)の6-9歳の患者83人と参考群として10歳以上も22人を組入れて、3~4週毎に6回点滴投与して症状スコア(International Cooperative Ataxia Rating Scaleを本疾患に合わせて調整したもの)の6ヶ月間の変化を偽薬と比較したところ、0.94対2.24と上昇が少なかったもののp=0.0851でフェールした。副次的評価項目のCGI-S(重症度を評価)はp=0.522だった。

    eDSPは患者から採取した赤血球にデキサメタゾンのプロドラッグを封入して患者にもどし、数週間に亘り緩徐放出させるもの。最初の第3相も類似した評価尺度でp=0.085だったが。高量群の6~9歳における数値が比較的良かったため再試験に進んだが、フェールした試験の事後的サブグループ分析を過信してはいけないという定石どおりの結果になった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    Ultragenyx、MPS IIIA遺伝子療法を再申請
    (2026年1月30日発表)

    Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)はUX111(rebisufligene etisparvovec)をFDAに再承認申請したと発表した。24年12月にムコ多糖症IIIA型(サンフィリッポ症候群A型)用薬として加速承認を申請したが、化学製造管理に関する指摘を受けた模様で、昨年7月に審査完了通知を受領していた。今回、CMC問題について回答すると共に、臨床試験の長期追跡データも提出した。会社側は6ヶ月審査を予想している。

    ムコ多糖症III型はグリコサミノグリカンの分解に必要なライソゾーム酵素の欠損による常染色体劣性遺伝性疾患。UX111はAAV9ベクターを用いてSGSH(N-sulfoglucosamine sulfohydrolase)の遺伝子を導入する。クリーブランドのAbeona Therapeutics(Nasdaq:ABEO)からライセンスした。pivotal試験で脳脊髄液におけるヘパラン硫酸が用量依存的に、最大で65%低下した。ムコ多糖症III型はI型やII型と比べて知的障害や肝臓腫大が多い模様だが、被験者では神経認知発達が改善したり肝臓量が減少する様子も見られた模様だ。

    リンク: プレス・リリース


    ロシュ、乳癌用新薬を承認申請
    (2026年1月29日発表)

    ロシュはRG6171(giredestrant)を米国で承認申請していたことを25年決算発表会で公表した。欧州でも26年内に承認申請する考え。新開発の経口選択的エストロゲン受容体零落拮抗剤。日本も参加した第3相evERA試験で内分泌療法歴とCDK4/6阻害剤歴のあるエストロゲン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌にmTOR阻害剤everolimusと併用するレジメンを標準療法と比較したところ、PFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザード・レシオが0.56(95%信頼区間0.44-0.71)だった。全生存期間は未成熟だが、昨年10月のESMO(欧州臨床腫瘍学会)発表によると、ハザード・レシオは0.69(同0.47-1.00)と良い方向を指しているようだ。

    本剤は日本も参加した第3相lidERA Breast Cancer試験も成功しており、26年に欧米でエストロゲン受容体陽性、her2陰性の中高リスクステージI/II/III早期乳癌のアジュバント療法として承認申請する予定。

    リンク: 25年決算プレゼン資料(6頁に記載あり)


    Summit、抗PD-1xVEGF二重特異性抗体の承認申請を断行
    (2026年1月29日発表)

    米国フロリダ州マイアミのSummit Therapeutics(Nasdaq:SMMT)はSMT112(ivonescimab)を米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は26年11月14日。Akeso(康方生物、HKEX:9926.HK)から欧米日本などの市場でライセンスしたPD-1とVEGFの二重特異性抗体で、中国では24年にEGFR阻害剤歴を持つEGFR変異局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌に化学療法と併用することが承認されるなど、複数の用途で承認・開発されている。

    Summitのエビデンスは、中国承認のエビデンスとなったHARMONi試験と欧米アジアで実施された試験の統合分析。第3世代EGFRチロシン・キナーゼ阻害剤による治療後に進行した、EGFR変異局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌を対象に、化学療法に追加する便益を検討したところ、主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザード・レシオが0.52、p<0.00001だった。一方、共同主評価項目である全生存期間のハザード・レシオは0.79、p=0.057と、閾値の0.0448を上回らなかった。中国以外の患者のメジアン追跡期間が短いことが影響した可能性があるため、中国外症例だけ延長追跡したところ、ハザード・レシオ0.78、名目p値0.0332と改善したが、中国サブグループの0.76と比べて、中国外は0.84と一般的な承認水準に見劣りした。

    FDAは中国だけで実施された臨床試験に基づいて承認することに否定的であり、中国の成績に牽引されたデータセットにも慎重だろう。また、肺癌一次治療薬の承認に際しては全生存期間の延長を求めることが多い。ハイリスク承認申請と考えた方がよさそうだ。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    日本新薬が販売権を持つMPS遺伝子療法に治験停止命令
    (2026年1月28日発表)

    Regenxbio(Nasdaq:RGNX)はRGX-121(clemidsogene lanparvovec)をムコ多糖症II型(Hunter症候群)の遺伝子療法として米国で承認申請しているが、2月8日の審査期限を目の前に、FDAからクリニカル・ホールド(治験許可停止)を通知された。類似した開発品であるRGX-111で脳室腫瘍例が発生し、道連れになったようだ。

    RGX-121はヒトiduronate-2-sulfatas遺伝子をAAV9ベクターを用いて脳室内に投与するもの。この疾患は酵素補充療法が有効だが中枢神経症状に対する効果は限定的(但し、脳血管関門通過性のDenali TherapeuticsのDNL310が承認申請中、日本ではJCRのイズカーゴが承認)。RGX-121は脳脊髄液中のヘパラン硫酸のD2S6コンポーネントというサロゲート・マーカーを86%削減することに成功、加速承認申請され、優先審査指定を受けた。審査期限は昨年11月だったが延長追跡データの提出に伴い、延期された。

    RGX-111はムコ多糖症I型で欠乏するIDUA(アルファ-L-iduronidase)の遺伝子をAAV9ベクターで脳室内投与するもの。第1/2相段階だが、4年前に施術した5歳児の定期MRI検査で無症候性脳室内中枢神経系腫瘍が発見された。切除腫瘍ではAAVベクター・ゲノムの統合が見られ、癌原遺伝子であるPLAG1の過剰発現も見られるため、試験薬と関連する可能性があるが、確立はしていない由。

    投与を受けた他の9人や、RGX-121の試験参加者32人では発生していないとのこと。

    同社は一年前に日本新薬と提携、RGX-121の米国における独占販売権と日本などアジアにおける独占開発販売権、そしてRGX-111の米国販売権を供与している。

    リンク: プレス・リリース


    CHMP、TK2d用薬などの承認を支持
    (2026年1月30日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

    リンク: EMAプレス・リリース

    Gedeon RichterのFylrevy(estetrol monohydrate)はホルモン補充療法薬。子宮摘出後または閉経から12ヶ月以上経過した女性の血管運動症状に用いる。活性成分はヒト由来のエストロゲンを植物培養したもの。drospirenoneと配合したDrovelis(米名Nextstellis)が欧米で経口避妊薬として、日本では富士製薬の月経困難症治療薬アリッサ配合錠として、承認されている。

    リンク: EMAプレス・リリース

    SHINE Europe B.V.のIlumira(lutetium (177Lu) chloride)は放射性医薬品前駆体。半減期の長い不純物(Lu-177mなど)を含まないため効果や安全性、使用後の廃棄などの点で優れるとされる。同社は米国のSHINE Medical Technologies LLCのオランダ子会社。

    リンク: EMAプレス・リリース

    UCBのKygevvi(doxecitine、doxribtimine)は2種類のピリミジン・ヌクレオチドの合剤。12歳以下で発症した成人小児のチミジン・キナーゼ2欠乏症(TK2d)の治療薬として例外的環境下承認することが支持された。この疾患は100万人に一人程度の常染色体劣性ミトコンドリア遺伝子疾患。ミトコンドリアDNAの不足により進行性の筋脱力が生じる。エビデンスは過去に実施された様々な臨床研究やEAP(拡大アクセス・プログラム)のプール分析。12歳以下で発症したコフォートは治療を受けなかったコフォートより運動機能喪失が小さく、達成できなくなっていた運動目標を再び達成できるようになった患者も多かった。昨年10月のNeurology論文によると死亡リスクを抑制する可能性もあるようだ。

    EMAは承認後に改めて薬効安全性確認試験を実施するよう要請する考え。米国では昨年11月に承認されている(加速承認ではない)。

    リンク: EMAプレス・リリース

    Sanofi WinthropのRezurock(belumosudil mesylate)は成人と年齢12歳以上、体重40kg以上の小児の慢性移植片宿主病のサルベージ療法薬。条件付き承認が支持された。第2相アドオン試験で被験者の73%が反応を示し、第6月時点での持続反応率は44%、メジアン反応持続期間は24週間だった。CHMPは昨年10月に一旦は否定的意見をまとめたが、再審を経て覆した。

    Imcloneの創業者であるSamuel Waksalがインサイダー取引に係る懲役を終えた後に設立したKadmon社を買収して入手した経口ROCK2阻害剤。米国では21年に3次治療として承認、日本も24年にMeiji Seikaファルマのレズロック錠として承認されている。

    リンク: EMAプレス・リリース

    ノボ ノルディスクのKayshild(semaglutide)はMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)用薬。条件付き承認が支持された。成人の、肝線維症ステージがF2~F3で硬化症には達していない患者に、食事・運動療法と共に投与する。第3相で脂肪性肝疾患が改善し肝線維化は悪化しなかった患者の比率や、肝線維化改善・脂肪性肝疾患非悪化の患者比率が、偽薬を上回った。米国では昨年8月に肥満症用途と同じWegovy名で加速承認された。日本でも承認申請中。

    リンク: EMAプレス・リリース

    Sanofi WinthropのSupemtekは昆虫細胞培養型遺伝子組換えインフルエンザ・ワクチン。4価ワクチンがEUでは20年にSupemtek名で承認されたが25年にSupemtek Tetraと改名されており、3価版がSupemtekの名を継承することになる。9歳以上の小児と成人が適応になる。17年に買収したProtein Sciencesがその4年前に米国で初承認を取得したもの。

    リンク: EMAプレス・リリース

    以下の適応拡大も支持された。

    • Janssen Cilag InternationalのAkeega(niraparib、abiraterone acetate):成人の生殖細胞性/体細胞性BRCA1/2変異のある転移性ホルモン感受性前立腺癌。米国では昨年12月に承認。
    • Neurocrine Netherlands B.V.のEfmody(hydrocortisone):12歳以上の副腎不全。欧州で21年に先天性副腎皮質過形成症用薬として承認された、調整放出型ハードカプセル製剤。米国のNeurocrine Biosciencesが22年にDiurnal Groupを買収して入手した製品だが、今年1月、ストックホルムのImmedica PharmaがDiurnal Groupの事業を引き継いだ会社を買収しており、承認取得者名が変更されるものと推測される。
    • IncyteのIclusig(ponatinib):成人の新患フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病に強度抑制化学療法と併用。米国では24年3月に加速承認された。
    • アストラゼネカのImfinzi(durvalumab):切除可能胃癌・胃食道接合部癌の周術期療法。FLOTレジメン(fluorouracil、leucovorin、oxaliplatin、docetaxel)と共に施行する。米国では昨年11月に承認、日本でも申請中。
    • バイエルのKerendia(finerenone):成人のLVEF(駆出率)が40%以上の症候性慢性腎不全。FINEARTS-HF試験で心不全悪化事象などを有意に抑制した。米国では昨年7月、日本でも12月に適応拡大済み。
    • ブリストル マイヤーズ スクイブのOpdivo(nivolumab):5~30歳の再発/難治古典的ホジキンリンパ腫にファイザーのAdcetris(brentuximab vedotin)と併用とのことだが、エビデンス等は思い当たるものがない。米国では12歳以上の未治療のステージIII/IV古典的ホジキンリンパ腫にdoxorubicin、vinblastine、dacarbazineと併用が、SWOG S1826試験に基づき、承認申請中。
    • IncyteのZynyz(retifanlimab):成人の切除不能局所再発/転移肛門管扁平上皮腫一次治療として、carboplatin及びpaclitaxelと併用。米国では昨年5月、日本では12月に適応拡大した。

    一方、イーライリリーは肥満症用GIP/GLP-1作用剤Mounjaro(tirzepatide、尚、米国では肥満症用はZepbound名)を駆出率保持型心不全を合併する肥満症に適応拡大申請していたが、肯定的意見を得られなかった。肥満症は適応内であり、エビデンスとなるSUMMIT試験で心不全悪化が抑制されたのは体重減に伴う効果以上の上乗せ作用があるからかどうか、明らかではないため。データを添付文書に収載することは認められた。米国でも申請したが、追加情報を求められ、一旦撤回している。

    リンク: EMAのQandA文書

    以上のほかに、欧州委員会の要請によりVifor Fresenius Medical Care Renal Pharma(VFMCRP)のTavneos(avacopan)について審査を開始したことも公表した。EUでは22年に多発血管炎または顕微鏡的多発血管炎に伴う重度活動期肉芽腫症の治療薬として承認されたが、エビデンスとなったAdvocate試験のデータの取り扱いについて新情報が浮上したため。詳細は不明。

    ChemoCentryxが開発した補体C5a受容体阻害剤。日本はVFMCRPからサブライセンスしたキッセイ薬品が21年9月に承認を取得した。ChemoCentryxはその翌月に米国で承認を取得した後、22年にアムジェンに買収されている。。

    リンク: EMAプレス・リリース


    【承認】


    老視の配合剤が承認
    (2026年1月28日発表)

    英国のTenpoint Therapeuticsは、FDAがYuvezzi(carbachol 2.75%、brimonidine tartrate 0.1%)を老視の点眼薬として承認したと発表した。遠見視力を損なわずに近見視力を改善する。第2四半期に上市する予定。

    carbacholは1972年に白内障手術用薬として承認されたコリン作用剤。虹彩括約筋と毛様体を収縮させピンホール効果により近くのものにピントを合わせやすくする。brimonidineは1996年に緑内障用薬として承認されたアドレナリン・アルファ受容体作動剤。虹彩散大筋の収縮を妨げ、毛様体筋の緊張性収縮を弛緩させ、房水におけるcarbacholの生物的利用を向上する。第3相試験で奏効率(点眼後6時間に亘り、薄明下の両眼非矯正近見視力がETDRS視力表で15字以上改善、かつ、遠見視力は5字以上悪化しない)が一本では各成分単剤を有意に上回り、もう一本では対照群を有意に上回った。前者の試験では30分経過後の奏効率が27%、carbachol群は25%、brimanidine群は11%とそれほどでもないが、1時間後では各群49%、35%、23%と群間差が開いた。

    臨床試験では重度以上の有害事象は少なかった模様。警告・注意事項は霞目、網膜剥離、虹彩炎、鬱病などの中枢神経抑制性副作用。

    老眼の薬が次々と登場しているが、例えば21年に米国で承認されたアッヴィのコリン作用剤、Vuity(pilocarpine)の売上はそれほどでもなく、同社は発売1年後に無形資産7.7億ドルの減損処理やプロモーション抑制などを決定している。

    連想で改めて調べたところ、テンポイントが死亡してからもう半世紀近く経っていた。

    リンク: プレス・リリース


    ダラキューロのD-VRdレジメンがASCT見送り多発骨髄腫に適応拡大
    (2026年1月27日発表)

    FDAはJanssen BiotechのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj、和名ダラキューロ)を自家造血幹細胞移植(ASCT)が適さない新患多発骨髄腫に適応拡大した。bortezomib、lenalidomide、及びdexamethasoneと併用する(D-VRdレジメン)。第3相CEPHEUS試験でMRD(微小残存病変)陰転奏効率が52.3%と、VRdレジメン群の34.8%を上回った(22ヶ月追跡時点、100000セル当り1セル基準)。PFS(無進行生存期間)のハザード・レシオは0.60、p<0.0078だった。

    EUでは昨年4月に承認されたが、米国は工場査察時の所見により8月に審査完了通知を受領し、遅れていた。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限】


    PDUFA
    26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
    26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
    26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
    26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
    26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
    26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
    26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
    26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
    26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
    25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    26/3推Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
    26/3推Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)


    今週は以上です。

    2026年1月24日

    第1243回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • FDA:多発性骨髄腫用薬はMRDに基づき加速承認申請できる 
    • 抗OX40L抗体のアトピー試験が成功 
    • Corcept社、relacorilantが全生存期間も達成 
    • 毛細血管拡張性運動失調症のロイシン補充療法試験が成功 
    • ボッシュ、リファキシミン新製剤の肝性脳症一次予防試験がフェール 
    • 疾病装飾ポテンシャルを持つ変形性膝関節症用薬を承認申請 
    • Valneva、チクングニア熱ワクチンの米国販売を断念 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    FDA:多発性骨髄腫用薬はMRDに基づき加速承認申請できる
    (2026年1月20日発表)

    FDAは多発性骨髄腫用薬に関するガイダンス資料を公表した。MRD(微小残存病変)に基づく加速承認申請を容認するもので、開発期間短縮に資するだろう。

    多発性骨髄腫は過去20年間に新薬が続々と登場し、かっては贅沢過ぎた3剤、4剤併用が今日では標準療法になっている。効果が高まる一方で、新薬開発のハードルも上がった。新患の場合で完全反応率90%、メジアン生存期間7~10年という標準療法を有意に上回るためには多くの患者を長期間追跡する必要があり、開発期間の長期化を招きかねない。

    対応策として、FDAはMRDに基づく加速承認申請を認めた。複数の試験でPFS(無進行生存期間)や全生存期間との相関性が示されているからだ。24年の腫瘍学諮問委員会でも支持された。MRD陰転の閾値は、最低でも、骨髄穿刺液のシーケンサーまたはフローサイトメトリー検査により正常細胞10万個当たりの腫瘍細胞数が1個未満、となる。逸失例は非達成例とカウントする。一時的な偏りの検出を回避するために、MRD解析時点で患者組入れを完了している必要がある。同じ臨床試験、または別の臨床試験でPFS(無進行生存期間)や全生存期間の延長作用を確認して本承認を取得する必要がある。

    寛解導入期、地固め期、維持療法期など複数のフェーズを跨ぐ試験を行う場合は、夫々のフェーズの寄与を評価できるようデザインすべき。多発性骨髄腫に進展する可能性のある、くすぶり型多発性骨髄腫やMGUS(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症)は、MRDの有用性が確立していないため、対象外。

    24年の諮問委員会ではサノフィの抗CD38抗体Sarclisa(isatuximab-irfc)の第3相IsKia試験のデータも参照されたが、未だ承認されていない(申請されているのかも明らかではない)。ブリストル マイヤーズ スクイブはCC-220(iberdomide)が2~3次治療の第3相EXCALIBER-RRMM試験の中間解析で共同主評価項目であるMRD陰転率を達成したと昨年9月に発表したが、その後に承認申請したかどうか、明らかではない。もう一つの主評価項目であるPFSが26年にも開票するのを待つ考えかもしれない。

    リンク: FDAの関連頁

    【新薬開発】


    抗OX40L抗体のアトピー試験が成功
    (2026年1月23日発表)

    サノフィはSAR445229(amlitelimab)のアトピー性皮膚炎における第3相試験が更に2本成功したと発表した。但し、一本は一部の重要なな評価項目がフェールしており、満点の結果とは言えなそうだ。同社は承認申請する考え。

    抗原提示細胞などが発現するOX40レガンドに対する抗体。T細胞のOX40に結合するのを妨げることで、イフェクターT細胞と制御的T細胞のバランスを調整する。第3相は体重40kg以上の患者の場合で250mg(初回は倍量)を12週毎または4週毎に皮下注する便益を検討した。主評価項目は複雑で、FDA向けは24週vIGA-AD奏効率。医師の全般的評価が0(寛解)または1(ほぼ寛解)、且つ、ベースライン比2段階以上改善を奏効とした。解析対象はnon-responder imputation(以下、NRI)方式で、24週までにレスキュー治療を受けたり、24週時点のデータが逸失している症例は非奏効例と分類した。EUや日本向けの主評価項目は、24週vIGA-AD奏効率と、EASI-75奏効率。どちらもTreatment policy(以下、TP)方式で、レスキュー治療を受けた患者に関しては24週時点の奏効評価があればそれを採用した。一般的に、intent-to-treatに近いとされる評価方法だ。

    組入れ対象は3本とも12歳以上の小児・成人における既存療法不応不適の中重度アトピー性皮膚炎。COAST 1と2は単剤投与、SHORE試験は中力価局所性ステロイドかつまた局所性カルシニューリン阻害剤に追加投与する便益を検討した。2種類の用法を検討しているため閾値は偽薬比p値が0.025未満。結果は下表のとおりで、COAST 1試験とSHORE試験は米向けも欧日向けも達成したが、COAST 2試験は欧日向けはフェール、米向けも主要な副次的評価項目である、vIGA-AD 0/1かつ紅斑殆ど消失と定義された奏効率はフェールした。

    忍容性は大きな問題はなさそうだ。皮膚アトピーという治療時発現有害事象の発生率が、SHORE試験では偽薬群5.6%、試験薬2群合計は2.7%と好ましい結果になっているが、COAST 2試験では各2.7%と5.3%と、逆になっている。


    図表:amlitelimabの第3相成績

    Non-responder imputationTreatment policy
    偽薬12週毎投与4週毎投与偽薬12週毎投与4週毎投与
    COAST 1
    vIGA-AD 0/19.2%22.5%
    p<0.01
    21.1%
    p<0.01
    10.5%29.1%
    p<0.001
    26.5%
    p<0.001
    EASI-7519.1%39.1%
    p<0.001
    35.9%
    p<0.001
    27.6%50.3%
    p<0.001
    46.0%
    p<0.001
    COAST 2
    GA-AD 0/114.8%25.7%
    p≦0.025
    25.3%
    p≦0.025
    18.8%27.7%
    p=0.068
    28.8%
    p=0.031
    EASI-7524.2%40.5%
    p≦0.01
    41.8%
    p≦0.001
    30.2%45.9%
    p≦0.01
    49.7%
    p≦0.001
    SHORE
    vIGA-AD 0/116.8%32.3%
    p≦0.01
    28.7%
    p≦0.01
    16.8%32.9%
    p≦0.01
    29.9%
    p≦0.01
    EASI-7532.3%46.8%
    p≦0.025
    48.1%
    p≦0.01
    34.2%48.1%
    p≦0.025
    50.9%
    p≦0.001
    注:COAST 試験におけるEASI-75のp値は名目値

    リンク: プレス・リリース


    Corcept社、relacorilantが全生存期間も達成
    (2026年1月22日発表)

    米国カリフォルニア州の新興製薬会社、Corcept Therapeutics(Nasdaq:CORT)は、CORT-125134(relacorilant)が第3相白金抵抗性卵巣癌試験で共同主評価項目の全生存期間を達成したと発表した。昨年7月にPFS(無進行生存期間)データに基づき米国で承認申請したが、26年7月11日の審査期限に向けて、追い風になりそうだ。

    経口選択的グルココルチコイド受容体拮抗剤。プロゲステロン受容体作動に伴う副作用が起きにくい。24年に副腎皮質ホルモン過剰症における高血圧または高血糖を治療する試験が成功し年末にFDAに承認申請したが、危険便益バランスが不十分とする審査完了通知を受領した。

    今回のROSELLA試験は米欧韓などの施設で白金抵抗性卵巣癌の患者381人をnab-paclitaxel単剤投与群とrelacorilant併用群(nab-paclitaxelの用量は8掛けに抑制)に無作為化割付けした。盲検独立中央評価によるメジアンPFSは各群5.5ヶ月と6.5ヶ月、ハザード・レシオ0.70。今回判明した全生存期間は中間解析と大差なく、メジアン値が各群11.9ヶ月と16.0ヶ月、ハザード・レシオは0.65、p=0.0004だった。PFSの群間差は1ヶ月程度と小さく、中央評価は盲検だが対象となるのは割付けを知っている医師が進行と判定した症例だけであることも考慮すると万全とは言い難いが、メジアン生存期間の群間差は承認されている抗癌剤と遜色ない。

    同社は欧州でも承認申請中。

    リンク: プレス・リリース


    毛細血管拡張性運動失調症のロイシン補充療法試験が成功
    (2026年1月21日発表)

    米国テキサス州の未上場製薬会社、IntraBioは、Aqneursa(levacetylleucine) が第3相毛細血管拡張性運動失調症試験で主目的などを達成したと発表した。速やかに欧米などで適応拡大申請する考え。

    アミノ酸の一つであるロイシンの懸濁液用顆粒。24年に米国でニーマン・ピック病C型に承認され、今回、EUでも承認されたことが公表された(但し、EUは新規活性成分とは認めていない)。この疾患では体重35kg以上の場合で一日三回、合計4gを水やオレンジジュース、牛乳などに混ぜて経口投与する。

    毛細血管拡張性運動失調症は7万人に一人の進行性常染色体劣性遺伝疾患。DNA損傷時の修復応答に関わるATM(Ataxia telangiectasia mutated)というキナーゼの遺伝子変異により、名前に含まれる2症状や免疫不全などを発現する。今回の303試験は小児と成人の患者を組入れて12週間投与する効果を偽薬と比較した。主評価項目のSARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)は1.92点低下(改善)、偽薬群は0.14低下、p<0.001。副次的評価項目のICARS(International Cooperative Ataxia Rating Scale)も-4.22対-1.69、p=0.003、CGI-I(Investigator’s Clinical Global Impression of Improvement)も-0.6対-0.2、p=0.02と有意な差があった。試験薬関連深刻有害事象は見られなかった。

    リンク: プレス・リリース(Business Wire)


    ボッシュ、リファキシミン新製剤の肝性脳症一次予防試験がフェール
    (2026年1月23日発表)

    カナダのBausch Health Companies(NYSE:BHC)は、Xifaxan(rifaximin)のamorphous solid soluble dispersion新製剤の第3相試験二本がフェールしたと発表した。

    抗生物質のrifampinの誘導体で、米国で2004年に12歳以上の旅行者の下痢に、2010年に顕性肝性脳症に、2015年には下痢型過敏性腸症候群に、承認された。日本では2016年にあすか製薬が肝性脳症に伴う高アンモニア血症の治療薬として承認を取得している。米国で肝性脳症の用法特許切れが近づいており、更なるライフ・サイクル・マネジメントを狙って、薬物動態に優れる新製剤を用いて成人の肝硬変患者における肝性脳症の一次予防試験を実施したのだが、結実しなかった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    疾病装飾ポテンシャルを持つ変形性膝関節症用薬を承認申請
    (2026年1月6日発表)

    米国カリフォルニア州の未上場医薬品開発会社、Biosplice Therapeuticsは、米国でSM04690(lorecivivint)を変形性膝関節症用薬として承認申請したと発表した。第3相試験で関節幅拡大を抑制する作用が窺われたことから、疼痛管理だけでなく進行を抑制する可能性があると期待しているようだ。但し、第3相二本はフェールし元々は延長試験の位置付けだったものが主エビデンスなので、受理されるか一抹の不安を感じる。

    DYRK1A(dual-specificity tyrosine phosphorylation-regulated kinase 1A)とCLK2(CDC-like kinase 2)を阻害する膝関節内投与用懸濁液。中重度症候性変形性膝関節症に0.07mgを一回投与する第3相OA-10試験とOA-11試験が実施されたが、主評価項目である12週間の疼痛NRSの変化は偽薬群と大差なかった。偽薬対照期間の有害事象発生率は両群同程度だった。

    ところが、52週間のOA-11試験を終えた患者(被験者の半分程度に当たる約270人)を偽薬と0.07mg群に無作為化割付けして一回投与したOA-07試験で、24週WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)疼痛尺度の群間差がp=0.044、48週時点では0.029とある程度の有意性が示された。48週WOMAC機能尺度もp=0.035だった。偽薬群から試験薬にクロスオーバーした患者では、48週後のmJSW(medial joint space width:X線画像上の関節幅)が、試験薬継続投与群の数値より有意に劣っていた。

    二本の試験がフェール、もう一本はデザイン上の不透明さがありp値も一本で承認を取る時の一般的な要求水準(0.05x0.05=0.0025)をクリアしていないことなどを考えると、高リスク承認申請だろう。

    尚、ClinicalTrials.govによると、これら3本の試験の結果を受領したがクオリティ・コントロール審査で照会すべき事項が浮上したためまだ掲載していない由。エビデンスの頑強性に不安を感じさせる。

    リンク: プレス・リリース(GlobeNewswire)

    【医薬品の安全性】


    Valneva、チクングニア熱ワクチンの米国販売を断念
    (2026年1月19日発表)

    フランスのワクチン企業、Valneva SE(Euronext Paris:VLA)は、Ixchiqの米国における承認申請とIND(治験届)を撤回すると発表した。チクングニア熱の不活化生ワクチンで、23年に加速承認されたが、発売後もチクングニア熱様有害事象が散見され、昨年8月にFDAが承認停止した。チクングニア熱様深刻有害事象による入院が21件、死亡が3件報告されており、市販後薬効確認試験で臨床的な便益が未だ確認されていないため便益が危険を上回るとは断定できないことが理由。その後、FDAは、3種類のワクチンを同時接種した海外のヤング・アダルトに関する報告を受けて、INDもクリニカル・ホールドを命じた由。

    Ixchiqは欧州やカナダ、ブラジルなどでも承認されており、EUは、24年の承認後に同様な理由で65歳以上の接種を一時的に禁止したものの、解除した。Valnevaはこれらの地域では販売を継続すると共に、市販後試験を継続する考え。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限】


    PDUFA
    26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
    26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
    26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
    26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
    26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
    26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
    26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
    26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
    26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
    26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
    25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    26/3推Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
    26/3推Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)


    今週は以上です。

    2026年1月17日

    第1242回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • 田辺ファーマ、プロトポルフィリン症用薬の第3相が成功 
    • JNJ、テクベイリの第3相多発骨髄腫単剤投与試験が成功 
    • エプキンリのDLBCL市販後薬効確認試験がフェール 
    • ウィフガートを抗AChR抗体陰性gMGに適応拡大申請
    • ベスレミを本態性血小板血症に承認申請 
    • メルク、TGCT用薬を承認申請 
    • ラクオリア創薬導出品が米国で承認申請 
    • Travere社、FSGS適応拡大審査が3ヶ月延長 
    • ESV細胞療法は審査完了に 
    • メンケス病薬が承認 
    • FDA、GLP-1作用剤の自殺リスクをシロ判定 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    田辺ファーマ、プロトポルフィリン症用薬の第3相が成功
    (2026年1月15日発表)

    田辺ファーマはdersimelagonが第3相INSPIRE試験で赤芽球性プロトポルフィリン症(EPP)やX連鎖性プロトポルフィリン症(XLP)患者の光線過敏症状を抑制したと発表した。承認申請に向かおう。

    EPPはフェロケラターゼの、XLPはデルタ-アミノレブリン酸合成酵素の、遺伝子変異が関わる疾患で、ヘム合成が妨げられ血中や組織にプロトポルフィリンが蓄積、日光に曝露すると疼痛などが発現する。7.5~20万人に一人の希少疾患。

    dersimelagonは選択的メラノコルチン1受容体作動剤。eumelaninの分泌を促し皮膚を光線から防御する。EPPを対象としたPOC試験では、日光曝露下において光線過敏症の前駆症状が発現するまでの時間が100mg群は偽薬比53分、300mgは同62分、長かった。第3相は200mgを一日一回、16週間に亘り経口投与した。主評価項目は、日光曝露に伴う最初の前駆症状(灼熱感、ピリピリ感、そう痒感又は刺痛感)発現までの時間。データは今後、発表する。

    EPPではオーストラリアのClinuvel Pharmaceuticals(ASX:CUV)の皮下インプラント用メラノコルチン1受容体作動剤Scenesse(afamelanotide)がEUでは14年に、米国では19年に承認されている。昨年9月にはDisc Medicine(Nasdaq:IRON)が米国でGlyT1阻害剤DISC-0974(bitopertin)を12歳以上のEPP/XLPに加速承認申請し、10月にCNPV(FDA委員長国家的優先バウチャ)を取得している。

    リンク: プレス・リリース


    JNJ、テクベイリの第3相多発骨髄腫単剤投与試験が成功
    (2026年1月14日発表)

    ジョンソン エンド ジョンソンは、Tecvayli(teclistamab-cqyv)が第3相MajesTEC-9実薬対照試験の中間解析でPFS(無進行生存期間、治験登録によると主評価項目)や全生存期間(副次的評価項目)を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。

    BCMAとCD3に結合する二重特異性抗体。22~24年に欧米日で再発/難治多発骨髄腫用薬として承認された。米国は代表的な3クラスを含む4次以上の治療歴、EUは同じく3次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性、日本は標準治療不適を適応とした。

    今回の日本も参加した試験はlenalidomide(Revlimid)と抗CD38抗体を含む1~3次治療歴を持つ再発/難治多発骨髄腫患者にTecvayliを単剤投与する便益を検討した。対照群は標準的療法であるPVdレジメン(pomalidomide、bortezomib、dexamethasoneの併用)またはKdレジメン(carfilzomibとdexamethasoneの併用)を施行した。PVdレジメンは米国ではなぜか未承認だが欧日では19年に承認されており、米国でもNCCTガイドラインが優先的、カテゴリー1の選択肢として推奨しているのでオフレーベル使用されている。

    結果は、PFSのハザード・レシオが0.18、全生存期間は0.60と、大変良い数値が出た。独立データ監視委員会が盲検解除を推奨し、今回の発表が可能になった。

    Tecvayliは先般、1~3次治療歴を持つ再発・難治多発骨髄腫に同社の抗CD38抗体であるDarzalex Faspro(daratumumab)と併用する用途用法で適応拡大申請された。第3相MajesTEC-3試験でpomalidomideまたはbortezomibをDarzalex Faspro及びdexamethasoneと併用した群に対するハザード・レシオがPFSは0.17、全生存期間も0.46と大変良い数値を出し、CNPV(FDA委員長の国家優先バウチャ)を受領している。

    多発骨髄腫は1998年のthalidomideを皮切りに続々と新薬が投入され、IMiDs(免疫調停薬)、プロテアソム阻害剤、dexamethasone、抗CD38抗体、そして抗BCMAxCD3抗体やBCMA標的CAR-Tなど選択肢が増えると共に、併用の選択肢も増加して、何を一次治療に選び何を二次以降に用いるか、フロー・チャートが複雑化している。

    リンク: プレス・リリース


    エプキンリのDLBCL市販後薬効確認試験がフェール
    (2026年1月16日発表)

    ジェンマブは、アッヴィと共同開発販売しているCD3/CD20二重特異性抗体Epkinly(epcoritamab-bysp)が第3相EPCORE DLBCL-1実薬対照試験で副次的評価項目に良績を上げたが主評価項目の全生存期間は達成できなかったと発表した。COVID-19大流行の影響を受けた可能性があるようだが、DLBCLや試験薬以外の理由で死亡する被験者が多すぎて治療効果が目立たなかったのか、それとも試験薬の影響で免疫力が低下したことが響いたのかによっても、受け止め方が変わってくるだろう。

    他の第3相DLBCL(大細胞型B細胞リンパ腫)試験二本が26年中に開票する見込みなので、名誉挽回し本承認切替の道が開けるか、注目される。

    Epkinlyは23年に米欧日で再発/難治大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として承認された。米国は加速承認、EUは条件付き承認なので、市販後薬効確認試験でORR(客観的反応率)より臨床的に意味のある便益を確認する責務がある。24~25年に米欧日で承認された再発/難治濾胞性リンパ腫の3次治療ではFDAが課した市販後薬効確認試験が成功、昨年11月に加速承認が通常承認に切替えられた。

    今回の日本も参加した試験は、高量化学療法や自家幹細胞移植に適さない成人の再発/難治DLBCL483人を組入れて、Epkinly単剤投与群と標準療法群(R-GemOxレジメン又はBRレジメンから医師が選択)の全生存期間を比較した。ハザード・レシオは0.96(95%信頼区間は0.77-1.20)となり、大差なかった。一方、副次的評価項目のPFS(無進行生存期間)はハザード・レシオ0.74(同0.60-0.92)と上回った。

    ジェンマブは、昨年1月、COVID-19などの影響を軽減するために目標死亡数を増やしたので市販後薬効確認試験の結果報告が当初の計画より遅延する旨をFDAに通知している。FDAの加速承認通知や市販後コミットメント一覧サイトには試験名は記されていないが、おそらく今回の試験のことだろう。1年待っても改善しなかったことになる。

    今年開票する二本はEpcore DLBCL-2と同-4。前者は新患900人を組入れて、R-CHOPレジメンに追加する便益を検討する。主評価項目はPFS。後者は再発/難治DLBCL360人を組入れて、lenalidomideと併用で最大48週間投与する便益をR-GemOX4と比較する。こちらも主評価項目はPFS。尚、Epkinlyだけ投与する群も設定されているが主/副次的評価項目の解析対象ではないようだ。

    リンク: プレス・リリース


    【承認申請】


    ウィフガートを抗AChR抗体陰性gMGに適応拡大申請
    (2026年1月13日発表)

    argenx SE(Euronext/Nasdaq:ARGX)は、米国で抗FcRn抗体Vyvgart(efgartigimod alfa-fcab)をアセチルコリン受容体に対する自己抗体を持たないgMG(全身性重症筋無力症)に適応拡大し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年5月10日。

    gMGの多くは抗AChR抗体を持つが2割程度は陰性。VyvgartはADAPT SERON試験で4週間投与したところ、MG-ADL日常生活スコア3.35点改善し、偽薬群の1.9点を有意に上回った。

    リンク: プレス・リリース


    ベスレミを本態性血小板血症に承認申請
    (2026年1月13日発表)

    ファーマエッセンシアはBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft)を米国で本態性血小板血症(ET)に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年8月30日。日本でも昨年9月に一変申請している。

    19~23年に欧米日で真性多血症用薬として承認されたPEG化アルファ・インターフェロン。ETにおけるエビデンスである第3相SURPASS-ET試験で、hydroxyureaに不応不耐の患者74人を組入れて持続的応答率をanagrelideと比較したところ、各群43%と6%となった。治療関連深刻有害事象の発生率は各群2%と10%。この試験は中国や日本などアジアの施設が多く参加し北米の施設は少なかったが、同社はhydroxyurea歴のない患者も組み入れた北米だけの後期第2相試験も実施している。

    リンク: プレス・リリース(Business Wire)


    メルク、TGCT用薬を承認申請
    (2026年1月12日発表)

    Merck KGaAは米国でpimicotinibを腱滑膜巨細胞腫(TGCT)の全身性治療薬として承認申請し受理されたと発表した。上海のAbbisko Therapeuticsからグローバルにライセンスした経口CSF-1R阻害剤で、25年12月に中国で成人の摘出術不適な症候性TGCT用薬として承認されている。中国、欧州、北米で100人弱の患者を組入れた第3相MANEUVER試験で50mgを一日一回、経口投与する便益を検討したところ、客観的反応率や、副次的評価項目である疼痛や凝りなどの患者評価が、偽薬比有意に改善した。

    類薬は第一三共のTuralio(pexidartinib)が19年に米国で承認されたがEUでは安全性や限定的な便益により承認されなかった。昨年、デシフェラ・ファーマシューティカルズのRomvimza(vimseltinib dihydrate)が欧米で承認された。pimicotinibが承認されれば肝毒性が比較的小さいCSF-1R阻害剤としては第2号になる。

    リンク: プレス・リリース


    ラクオリア創薬導出品が米国で承認申請
    (2026年1月12日発表)

    米国のSebela Pharmaceuticalsの胃食道薬部門であるBraintree Laboratoriesは米国でtegoprazanをびらん性食道炎や非びらん性逆流症(NERD)の治療薬として承認申請したと発表した。ラクオリア創薬から導入して韓国などで上市した韓国のHK inno.N社からサブライセンスしたP-Cab(カリウムイオン競合的アシッドブロッカー)で、NERDでは胸やけを偽薬比抑制し、びらん性食道炎の治療試験では奏効率がプロトン・ポンプ阻害剤のlansoprazoleを上回り、同寛解維持試験では奏効率がプロトン・ポンプ阻害剤を上回った。

    リンク: プレス・リリース(PR Newswire)

    【承認審査・委員会】


    Travere社、FSGS適応拡大審査が3ヶ月延長
    (2026年1月13日発表)

    Travere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)はFilspari(sparsentan)をFSGS(巣状分節状糸球体硬化症)用薬として米国で適応拡大申請しているが、PDUFA(処方薬ユーザー・フィー法)に基づく審査完了目標日が直前になって4月13日に延長された。FDAの要請に基づき便益に関する追加情報を提供したことが申請内容の主要な変更と見なされたようだ。

    アンジオテンシンIIタイプ1(AT1)受容体とエンドテリンA受容体のアンタゴニストで、IgA腎症の治療薬として23~24年に米欧で承認された。FSGSはネフローゼ症候群の一つで、腎臓の糸球体が降下して進行性腎機能低下を発現する。8歳以上の原発性FSGSを組入れた第3相DUPLEX試験の中間解析で尿蛋白クレアチニン比の改善がirbesartan群を大きく上回った。同社は加速承認申請する道を探ったがFDAは否定的だったため、同試験の最終主評価項目であるeGFR(推算糸球体濾過率)のデータを待つことにしたが、結局、フェールした、投与開始当初はむしろ悪化してしまう傾向が見られ、足を引っ張った模様だ。FDAは適応拡大申請前の相談で否定的だった由であり、ハイ・リスク・プロジェクトだ。

    リンク: プレス・リリース


    ESV細胞療法は審査完了に
    (2026年1月12日発表)

    Atara Biotherapeutics(Nasdaq:ATRA)とPierre Fabre Laboratoriesは、夫々、FDAからtabelecleucelに関する審査完了通知を受領したと発表した。一回目の審査完了通知では触れられずその後のやり取りでも特別な指摘はなかった、臨床試験のエビデンス性に関して指摘を受けたとのことで、同社も、他の数社と同様に、FDAが前言を覆したと不満を表明した。

    ドナー由来のT細胞をESV(エプスタイン・バー・ウイルス)で感作したB細胞と会合させた上で培養した細胞療法。同社は22年にEUで2歳以上のEBV陽性移植後リンパ増殖疾患患者の二次治療薬として例外的環境下承認を取得、24年には米国でも承認申請したが、材料調達先における製造問題により審査完了通知を受領した。Ataraは対策として人員の9割削減、EUなどでの開発販売権を供与したPierre Fabreに他の市場での権利も供与するとともに欧米における承認/申請を移管、などの戦略見直しを余儀なくされた。

    アカデミアが主導した第3相試験では38人に投与したところ、ORR(客観的反応率、独立評価)が50%、反応した19人中11人が反応持続した。今回、FDAから、この試験のデザインや実施状況、解析方法が不適切との指摘を受けたようだ。両社は、事前の相談でも承認申請後でもこのような指摘はなかったと主張している。

    他社事例を見ると、この種の青天の霹靂の原因は二種類あると推測される。一つはFDAがデータの分析中に何らかの発見をした場合。もう一つは、審査担当者や担当部署は承認するよう建議したが上層部が覆す場合。バイデン政権下のFDA委員長だったRobert Califf博士は心臓学の権威だが、医薬品担当部門の評価を重んじ自ら介入することは無かったように感じられる。一方、コンセンサスとは必ずしも合致しない見解を持つ現長官や小分子薬担当部署のトップはしばしば現場の評価に介入しており、もしかしたら、今回もこのパターンかもしれない。

    リンク: プレス・リリース

    【承認】


    メンケス病薬が承認
    (2026年1月12日発表)

    FDAはZycubo(copper histidinate)を小児メンケス病用薬として承認した。メンケス病は銅を輸送するATPaseの遺伝子の一つであるATP7Aに異常があり、銅が腸管で吸収されず体内で欠乏、中心神経障害などを発現する。その9割を占める古典的メンケス病は10~25万出生に一人の希少疾患で男性が多く、乳児期に発症し典型的には3歳以上生存しない。Zycuboは銅の補充療法で1450mcg(銅換算で250mcg)を1歳未満の患者は一日2回、以上は1回、皮下注する。Nationwide Children's Hospitalの医師が主導した試験で、生後4週までに投与を開始した31人は、投与を受けていない外部対照群17人と比べた全生存ハザード・レシオが0.22、メジアン生存期間は各群14年と1.5年だった。生後4週以降に開始した35人と外部対照群16人の比較もハザード・レシオ0.27、5年体1.7年だった。

    今回のFDAプレス・リリースは承認申請者の名前が記されている。Zydus Lifesciencesの米国子会社であるSentynl Therapeuticsだ。

    リンク: FDAのプレス・リリース

    【医薬品の安全性】


    FDA、GLP-1作用剤の自殺リスクをシロ判定
    (2026年1月13日発表)

    米国の肥満症用GLP-1作用剤のレーベルには自殺思慮・行為リスクに関する情報が掲載されているが、FDAはメーカー側に削除するよう要請した。ノボ ノルディスクのSaxenda(liraglutide)とWegovy(semaglutide)と、イーライリリーのZepbound(tirzepatide)が対象。

    この問題はノボの2製品の市販後有害事象報告で自傷/自殺思慮が2000万人年超当たり150例と目立ったことが契機。その後、FDAは24年1月に、EMAの薬物監視委員会も24年4月に、予備的評価でリスクが見られなかったことを発表しているが、後顧的コフォート研究などでも懸念は浮上しなかったとのこと。

    リンク: FDAのプレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限】


    PDUFA
    26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
    26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
    26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
    26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
    26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
    26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
    26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
    26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
    26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
    26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
    25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    26/3推Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
    26/3推Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)



    今週は以上です。

    2026年1月10日

    第1241回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • インクレチン系薬は乾癬性関節炎にも有効 
    • HBVアンチセンス薬で持続的陰性化を達成 
    • Ziiheraが先輩抗her2抗体に勝つ 
    • 次世代TYK2阻害剤の第3相乾癬試験が成功 
    • インサイト、ミンジュビの一次治療試験が成功 
    • CD19系二重特異性抗体の第3相IgG4関連疾患試験が成功したが... 
    • 真性多血症治療薬を承認申請 
    • モデルナ、インフルエンザのmRNAワクチンを承認申請 
    • アラアラを7歳以下にも承認申請 
    • Vanda、メラトニン作用剤を時差ボケに適応拡大できず 
    • 当面の主なFDA審査期限 


    【新薬開発】


    インクレチン系薬は乾癬性関節炎にも有効
    (2026年1月8日発表)

    イーライリリーはGIP/GLP-1作用剤Zepbound(tirzepatide)が後期第3相TOGETHER-PsA試験でポジティブな成績を上げたと発表した。肥満またはリスク因子を持つオーバーウェイト(mow)を併発する乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の患者を組入れて、同社の抗IL-17A抗体Taltz(ixekizumab)と併用する便益をTaltz単剤群と36週間比較したところ、主評価項目であるACR50と体重の複合評価項目だけでなく、ACR50奏効率だけの副次的評価項目も33.5%対20.4%、p<0.05と、高度に有意ではないものの、好ましい点推定値が出た。Taltzの承認申請用試験では24週ACR50が抗TNFアルファ抗体歴のある患者で35%、ない患者で40%ともっと高かったので、今回の試験のほうが治療抵抗性の高い患者を組入れたことになる。

    肥満やmowは多くの疾病と関連性が見られ、米国は有病率が高いこともあり乾癬性関節炎の65%が該当するとされる。肥満/mowならどっちにせよZepboundが適応になるが、他の持病にも有益であることを明確にしたのは価値がありそうだ。体重管理薬の保険適応は以前より進捗しているように感じられるが、便益が拡大すれば費用対効果も改善するので、追い風になりうる。

    肥満/mowを伴う尋常性乾癬を組入れたTOGETHER-PsO試験も進行中で今上期中に成否判明する見込み。

    同社は中重度閉塞性睡眠時無呼吸を併発する肥満症を組入れたSURMOUNT-OSA試験でAHI(無呼吸低呼吸指数)改善作用を確認、米国で適応拡大・効能追加に成功した。EUは既存の承認の範囲内として適応追加を認めなかったものの、治験成績のレーベル収載は認めた。

    リンク: プレス・リリース


    HBVアンチセンス薬で持続的陰性化を達成
    (2026年1月7日発表)

    GSKはGSK3228836(bepirovirsen)が日本も参加した第3相慢性B型肝炎試験2本で主目的を達成したと発表した。既存のB型肝炎薬は投与を止めるとやがて再燃するが、本試験では止めてから24週経ってもウイルスのDNAや表面抗原が検出されない、「ファンクショナル・キュア」達成率がが偽薬群を有意に上回った。尤も、本試験の対象はウイルス量が諸低水準より少ない患者だけで、後期第2相試験では第3相のデザインに対応するサブグループにおける奏効率は1~2割だったので、慢性C型肝炎の治療レジメンほどの成果は上がらなそうだ。データ発表を注目したい。

    Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスした第2世代アンチセンス薬で、B型肝炎ウイルスの表面抗原などのmRNAに結合、発現を阻害する。第3相のB-Well 1試験と同2試験は、ヌクレオチド/ヌクレオシド(NA)薬による慢性B型肝炎の治療を受けている、スクリーニング段階でHBsAg量が3000IU/mL以下の患者を夫々900人程度組入れて、24週間の偽薬対照試験を行った後、試験薬群はNAだけを24週間投与、その後NAも中止して、更に24週経ってもHBsAgとHBV DNAが陰性の患者をファンクショナル・キュアと判定した。試験薬は300mg(負荷用量あり)を週一回皮下注した。

    後期第2相のB-Clear試験では全被験者の奏効率(ファンクショナル・キュアと定義は同じと推測)がNA併用患者では9%、非併用者では10%だった。このうち、ベースライン時点のHBsAg量が3000IU/mL以下のサブグループではNA併用43人中5人、非併用24人中6人と若干上向いていた。

    リンク: プレス・リリース
    リンク: P2b治験論文(Yuenら、NEJM)


    Ziiheraが先輩抗her2抗体に勝つ
    (2026年1月6日発表)

    Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)は抗her2二重特異性抗体Ziihera(zanidatamab-hrii)が第3相HERIZON-GEA-01試験でtrastuzumabを上回るPFS(無進行生存期間)を達成したと発表した。適応拡大申請に向かう考え。

    抗her2抗体はロシュのHerceptin(trastuzumab)やPerjeta(pertuzumab)が代表的だが、ZiiheraはHerceptinが結合するエピトープとPerjetaが結合するエピトープの両方に結合・ブロックする。同社はZymeworks(NYSE:ZYME)から米欧日などの独占開発商業化権を取得しビーワン・メディシンズと共同開発、24~25年に米中欧でher2陽性の切除不能/転移胆道癌の二次治療薬として承認を取得した。

    今回の日本も参加した試験は、her2陽性の切除不能局所進行/難治/転移性GEA(胃食道腺腫)の一次治療を受ける患者914人を組入れて、CAPOXレジメンあるいは5-FUとcisplatinの併用に、trastuzumab、Ziihera、またはZiiheraとビーワンの抗PD-1抗体Tevimbra(tislelizumab-jsgr)の二剤を追加する便益を検討した。共同主評価項目のうちメジアンPFSは各群8.1ヶ月、12.4ヶ月(trastuzumab群比ハザード・レシオ0.65)、12.4ヶ月(同0.63)となり、二試験薬群ともに標準療法を有意に上回った。

    メジアン生存期間の中間解析は各群19.2ヶ月、24.4ヶ月(同0.80、但しp=0.0564)、26.4ヶ月(同0.72、p=0.0043)となった。

    PFS面ではTevimbraを追加する必要はないように感じられ、メジアン生存期間の差も2ヶ月程度とすごく大きいわけではないので、26年央に予定される次の全生存期間中間解析が注目される。

    G3以上の治療関連有害事象発生率は各群59.6%、59.0%、71.8%だった。

    リンク: プレス・リリース


    次世代TYK2阻害剤の第3相乾癬試験が成功
    (2026年1月6日発表)

    米国カリフォルニア州のAlumis(Nasdaq:ALMS)は高度選択的次世代TYK2アロステリック阻害剤とされるESK-001が第3相中重度尋常性乾癬試験二本で主目的を達成したと発表した。26年下期に承認申請する考え。

    このONWARDS1とONWARDS2の両試験は約800人の患者を40mg一日二回経口投与群、偽薬群、apremilast(アムジェンのPDE-4阻害剤Otezla)一日二回経口投与群に2対1対1割付けして16週間投与し、試験薬群と偽薬群のPASI75とsPGAを比較した。結果発表は断片的で、二本の試験合計で試験薬群のPASI75達成率は74%、sPGA 0/1達成率は59%だったことだけ公表された。夫々の偽薬修正値は二本の試験で整合的だった由。副次的評価項目も達成した由なので、第24週におけるapremilast群との比較も達成したのだろう。

    この試験は日本も参加した。昨年3月に科研製薬が日本で皮膚科領域に開発製造商業化する権利を取得している。

    リンク: プレス・リリース


    インサイト、ミンジュビの一次治療試験が成功
    (2026年1月5日発表)

    インサイト(Nasdaq:INCY)はMonjuvi(tafasitamab-cxix)が第3相frontMIND試験で主目的を達成したと発表した。今上期中に適応拡大申請する考え。

    Fc装飾によりADCC(抗体依存的細胞毒性)を増強した抗CD19抗体。20~25年に米欧日で再発/難治DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)や難治再発濾胞性リンパ腫などに承認された。今回の試験はDLBCLの新患でリスク評価が高中間または高である患者を組入れて、R-CHOP(rituximab、cyclophosphamide、doxorubicin、vincristine、prednisoneの併用レジメン)にMonjuviとlenalidomide(BMSのRevlimid)の二剤を追加する便益を検討した。PFS(無進行生存期間、治験医がLugano 2014基準に基づき評価)のハザード・レシオが0.75、p=0.019と有意に上回った。

    リンク: プレス・リリース


    CD19系二重特異性抗体の第3相IgG4関連疾患試験が成功したが...
    (2026年1月5日発表)

    Zenas BioPharma(Nasdaq:ZBIO)はZB012(obexelimab)が第3相IgG4関連疾患試験で主目的を達成したと発表した。数値がアムジェンの抗CD19抗体Uplizna(inebilizumab-cdon)と見比べて低いため株価が半減した。

    CD19とFcガンマRIIbに結合するバイファンクショナル・モノクローナル抗体。ブリストル マイヤーズ スクイブが日本周辺や豪州における自己免疫疾患領域での権利を保有している。

    今回のINDIGO試験はグローバル試験には珍しく、被験者194人のうち日本が54人と、欧州地域や米国地域を上回る患者を組入れている。試験薬は250mgを週一回皮下注。52週間追跡し、IgG4関連疾患のフレアが発生するリスクを比較したところ、発生率は26.8%と偽薬群の54.6%を大きく下回り、time to event解析のハザード・レシオは0.44、p=0.0005となった。深刻有害事象の発生率は、治療効果を反映したのか、偽薬群より少なかった。

    IgG4関連疾患の適応を持つUpliznaはMITIGATE試験で52週間のフレア発生率が10.3%と偽薬群の59.7%を下回り、ハザード・レシオは0.13だった。この二つの試験は主評価イベントの定義や被験者の患者背景などが異なっているかもしれないので比較できるとは限らない。例えば、MITOGATE試験は被験者153人のうち日本人が27人と、日本で特定された疾患だけに比較的多いがINDIGO試験ほどではない。また、Upliznaは点滴静注用だがZB012は自己皮下注が想定されているので利便性は軍配が上がる。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    真性多血症治療薬を承認申請
    (2026年1月5日発表)

    武田薬品とProtagonist Therapeutics(Nasdaq:PTGX)は、TAK-121/PTG-300(rusfertide)を真性多血症用薬として米国で承認申請したと発表した。hepcidin類縁体で、鉄が細胞外にエキスポートされるのを妨げ、真性多血症に伴う赤血球の過剰生成を抑制する。伝統的な治療法である瀉血に依存している患者250人を組入れた試験で、rusfertideを週一回皮下注したところ、第20-32週に瀉血が適応にならなかった患者の比率が77%と偽薬群の33%を有意に上回った。EMA向け主評価項目である第0-32週の平均瀉血回数も0.5回対18回と大きく抑制された。

    トランスジェニック・マウスの試験で良性/悪性の皮下腫瘍が見られFDAが臨床試験の完全停止を命じたことがあり、上記試験でも腫瘍の発現率が4.8%と偽薬群の0.7%を上回ったが、下記プレスリリースによるとリスクを示すエビデンスはなかった。

    Protagonistは24年に武田薬品に共同開発商業化権を供与したが、オプト・アウト・オプションを持っており、承認申請の4~7ヶ月後の期間に、当初金最大4億ドルとマイルストーン金、そして14~29%の売上ロイヤルティの支払いと引き換えで提携を解消することができる。一部報道によると行使を考えているようだ。

    リンク: プレス・リリース


    モデルナ、インフルエンザのmRNAワクチンを承認申請
    (2026年1月5日発表)

    モデルナは50歳以上用の季節性インフルエンザ・ワクチン、mRNA-1010を欧米加豪で承認申請したと発表した。欧米韓台で実施した第3相実薬対照試験で相対的ワクチン効率(rVE)が26.6%(95%信頼区間16.7-35.4%)と既存のワクチンを凌ぐ感染予防効果を示した。A/H1N1型、A/H3N2型、B/Victoria型、65歳以上の各サブグループでも20~30%と上回った。

    ヘマグルチニンをエンコードするmRNAワクチン。50mcgを一回、筋注する。季節性インフルエンザワクチンの既存製品の一部は、免疫力が低下している65歳以上に適した高量版も用意されているが、上記試験は標準用量版と比較しているため、高齢者にとってどちらが最適なのかは分からない。

    リンク: プレス・リリース


    アラアラを7歳以下にも承認申請
    (2026年1月5日発表)

    サノフィは米国でTzield(teplizumab-mzwv)を1~7歳のステージ2一型糖尿病薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は4月29日。

    CD3エプシロン鎖に結合する抗体医薬で、開発段階ではAla-Alaの愛称で呼ばれた。Provention Bioが開発し、22年に米国で8歳以上のステージ2一型糖尿病薬として承認を取得、その翌年にサノフィに買収された。一型糖尿病のステージ2は血糖値が閾値に達しておらず目立った症状もないが、症候性のステージ3に進行するリスクがある。Tzieldはステージ3までの期間を延長する。昨年10月に、8歳以上の最近診断されたステージ3一型糖尿病にも適応拡大申請しており、FDAから委員長国家的優先バウチャ(CNPV)を獲得した。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    Vanda、メラトニン作用剤を時差ボケに適応拡大できず
    (2026年1月8日発表)

    Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq: VNDA)は2018年にHetlioz(tasimelteon)をジェット・ラグ障害(時差ぼけ)の治療薬として米国で適応拡大申請したが、中々承認されない。23年にはVandaの請求を受けた連邦コロンビア特別区地方裁判所がFDAに承認しない理由をもっと説明するよう求め、昨年10月にFDAが再々審査を開始したが、今回も承認されなかった。

    HetliozはメラトニンのMT1/2受容体の作動剤。14~15年に米欧で非24時間障害(光を感受しない全盲者の睡眠障害)治療薬として承認された。20年に米国でスミス・マギニス症候群(17p11.2における遺伝子欠失に伴い睡眠障害を発現)に適応拡大したが、EUはCHMPが薬効確認試験の内容に疑問を呈し、否定的意見を出した。

    ジェット・ラグ障害は普段より5時間早く寝るフェーズ・アドバンス・モデルによる第3相試験で睡眠潜時が偽薬比20分程度改善。7時間早く寝る同様な試験でも総睡眠時間が偽薬比60分程度増加、睡眠潜時が同15分減少、WASO(就寝後に覚醒していた時間)が70分程度減少した。

    しかし、FDAは、飛行機で旅行する時の気圧の変化や身体的制約、騒音、明るさの変化など、ジェット・ラグ障害に関わる他の因子を考慮していないと評価。詳細は不明だが、19年の審査完了通知における指摘事項とそれほど変わっていないのではないかと感じられる。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限】


    PDUFA
    26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
    26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
    26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/1/14Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病)
    26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
    26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
    26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
    26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
    26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
    26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
    26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
    26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
    26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
    26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
    25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    26/3推Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
    26/3推Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)




    今週は以上です。

    2026年1月3日

    第1240回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • 抗sclerostin抗体の骨形成不全症試験が二本ともフェール 
    • 糖原病Ia型の遺伝子療法を承認申請 
    • Inovio、承認申請は受理されたが... 
    • 眼科用ベバシズマブは承認されず 
    • relacorilantの副腎皮質ホルモン過剰症用途は審査完了 
    • 乗り物酔いの新薬が承認 
    • 当面の主なFDA審査期限 


    【新薬開発】


    抗sclerostin抗体の骨形成不全症試験が二本ともフェール
    (2025年12月29日発表)

    Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)はUX143(setrusumab)が第3相骨形成不全症試験二本で主目的を達成できなかったと発表した。経費抑制策を始める考え。

    sclerostinを標的とする完全ヒト化抗体。ノバルティスからパイプラインを取得して設立された英国のMereo BioPhrma(Nasdaq:MREO)から欧州以外の地域での開発販売権を取得した。第2/3相Orbito試験の第3相ポーションで5~25歳の患者159人を組入れて臨床的骨折頻度を偽薬と比較したが、大差なかったようだ。第3相Cosmic試験で2~6歳の患者69人を組入れてこちらは静注ビスフォスフォン酸と比較したところ、点推定値は良かったが有意ではなかった。副次的評価項目のBMD(骨塩密度)は第2相同様、有意に改善した。

    FDAは、先般、骨粗鬆症用薬の開発に際して2年間の全腰BMDをサロゲート・マーカーとすることを認める旨、発表している。骨形成不全症は約9割の患者でコラーゲンに関わる遺伝子変異が見られるなど病因病態が異なり、また、臨床試験のフェールは厳密にいえば薬が敗因とは限らないが、皮肉なタイミングのようにも感じられる。

    リンク: プレスリリース

    【承認申請】


    糖原病Ia型の遺伝子療法を承認申請
    (2025年12月30日発表)

    Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)はDTX401(pariglasgene brecaparvovec)を糖原病Ia型の治療薬として米国で承認申請したと発表した。この疾患はG6Pase(グルコース-6-ホスファターゼ)の遺伝子変異によりグリコーゲンが臓器に蓄積、命に係わる低血糖や肝腫大が発現する。治療は成人の場合は一日300mg以上のコーンスターチを夜間を含め3~4時間毎に摂取する必要がある。推定患者数は世界で6000人。DTX401はG6Paseの遺伝子をアデノ随伴ウイルス8型を用いて患者に導入する。8歳以上の患者46人を組入れて一回投与した第3相試験で、血糖管理を損なわずにコーンスターチ摂取量を41%抑制できた(偽薬群は10%)。有害事象は多くの患者で肝臓関連事象が発生したがコルチコステロイド事前投与で抑制でき、G3は1例だけだった。

    リンク: プレスリリース


    Inovio、承認申請は受理されたが...
    (2025年12月29日発表)

    Inovio Pharmaceuticals(Nasdaq:INO)は米国でINO-3107を難治呼吸器乳頭腫(RRP)用薬をして加速承認するよう申請し受理されたと発表した。審査期限は2026年10月30日。朗報に聞こえるが、受理通知には、加速承認に値することを示す十分な情報は提出されていないとの予備的結論に至った旨、記されている由。第2次トランプ政権下のFDAは審査担当部署の評価を上役が覆す事例が散見されるため、即断はできないが、ハイリスクと受け止めた方がよさそうだ。

    INO-3107はRRPを齎す6型と11型のヒト・パピローマ・ウイルスのタンパクをエンコードするDNAプラスミドを電気穿孔法で細胞内に送り込む、T細胞免疫刺激的遺伝子療法。第1/2相試験(32人)で72%が投与開始後1年間の切除術回数半減を達成した。

    リンク: プレスリリース

    【承認審査・委員会】


    眼科用ベバシズマブは承認されず
    (2026年12月31日発表)

    Outlook Therapeutics(Nasdaq:OTLK)はONS-5010(bevacizumab-vikg)を新生血管加齢性黄斑変性の治療薬として開発し24年にEUと英国でLytenava(bavacizumab gammma)名で承認を取得、25年に独英でロンチしたが、米国は梃子摺っている。22年に申請したが情報不足を指摘され撤回、同年に再び申請したが臨床成績や生産体制面の理由で審査完了となり、追加的ranibizumab対照試験がフェールした後の再申請も審査完了、追加情報を提出したが、今回、3度目の審査完了通知を受領した。追加情報がメカニカルな情報や自然歴データなどであったことが明らかにされたが、もっと早くディスクローズすべきだったのではないか?それはそれとして、米欧で判断が分かれたのはなぜだろう?

    リンク: プレスリリース


    relacorilantの副腎皮質ホルモン過剰症用途は審査完了
    (2026年12月31日発表)

    Corcept Therapeutics(Nasdaq:CORT)はCORT-125134(relacorilant)を24年に副腎皮質ホルモン過剰症用薬として、25年7月には白金抵抗性卵巣癌用薬としても、承認申請しているが、前者は審査完了通知を受領した。中々のサプライズで株価は半減した。GRADIENT試験では最大血圧がベースライン値の139mmHgから22週で6.6mmHg低下し、偽薬群の136mmHgから2.1mmHg低下を有意に上回ったが、高血圧治療薬として考えるならば、5mmHg位の治療効果があってもよかったのではないか。有害事象では、腰や腹部、四肢など様々な部位での疼痛発生率が偽薬を上回っている点も気になるところだ。そもそも、申請当時のプレス・リリースでは目標適応症が副腎皮質ホルモン過剰症だったが、今回、この疾患における高血圧に変わっている。上記2試験は高血糖の患者も組入れており、血糖降下作用も確認されているはずなので、申請途中で効能を減らしたのではないかとも疑われる。

    白金抵抗性卵巣癌はnab-paclitaxelに追加する便益を検討したROSELLA試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が有意に改善した。但し、ハザード・レシオの0.70と比べて、メジアン値は6.5ヶ月対5.5ヶ月と差がそれほどでもない。共同主評価項目である全生存期間の数値は夫々0.69、16.0ヶ月、11.5ヶ月と良好でp=0.012だが閾値はクリアできなかった模様だ。審査期限は26年7月11日、欧州では25年10月に承認申請された。

    リンク: プレスリリース

    【承認】


    乗り物酔いの新薬が承認
    (2026年12月30日発表)

    戦う製薬会社、Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq: VNDA)は、FDAがNereus(tradipitant)を乗り物酔いの治療薬として承認したと発表した。13年前にイーライリリーからライセンスした NK1阻害剤。乗船前に85mgまたは170mgを一回投与した第3相試験二本で、一本は嘔吐率が偽薬比半減、もう一本では5~7割低かった。主な有害事象は傾眠や疲労。CYP3A4相互作用に注意要。妊婦や授乳婦、小児、重度腎障害、軽度以上の肝障害に関する十分な試験は実施されていない。

    開発は胃麻痺用途が先行したが、FDAが12週以上の投与を行う前に犬などの毒性試験を実施するよう求め部分的治験停止命令を出したため、連邦ワシントンDC地裁に提訴したものの認められず、生体模倣システムで代用した。12週治療する試験が二本フェールした後に承認申請してみたが承認されなかった。乗り物酔い用途でも不服申立てや提訴を繰り返し、遂にFDAから承認を勝ち取った。

    リンク: プレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限】


    PDUFA
    26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
    26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
    26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/1/14Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病)
    26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
    26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
    26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
    26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
    26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
    26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
    26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
    26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
    26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
    26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
    25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    26/3推Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
    26/3推Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)



    今週は以上です。

    2025年12月27日

    第1239回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • 新生児接種型vs.妊婦接種型RSVワクチン 
    • MSDがCNPVを取得 
    • 新たに9社がトランプ大統領の呼びかけに呼応 
    • アテトーゼ型脳性まひ試験がフェール 
    • アストラゼネカ、ATRキナーゼ阻害剤がまたフェール 
    • サノフィの多発性硬化症薬が一転して審査完了に 
    • 初のHSCT-TMA用薬が承認 
    • mitapivatがサラセミアに適応拡大 
    • 経口セマグルチドの体重管理用が承認 
    • 皮下注用ルンスミオが米国でも承認 
    • 小児用の経口鉄製剤が初承認 
    • BIのPDE4B阻害剤が進行性肺線維症に適応拡大 
    • 第2の心ミオシン阻害剤が承認 
    • ファイザー、ヒムペブジの死亡例を検討 
    • アストラゼネカ、米国でオンデキサの販売を中止 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    新生児接種型vs.妊婦接種型
    (2025年12月22日オンライン刊行)

    乳幼児のRSV感染症を予防する方法は、妊婦が接種するワクチンと新生児に筋注する抗体医薬の二種類あり、どちらも呼吸器疾患の発症を予防する十分な効果を持つが、直接比較試験は実施されていないため、どちらがより有効なのかは分からない。フランスで実施された疫学研究では後者に軍配が上がった。フランスのASSM(国立医薬品・保健製品安全庁)とCNAM(国立健康保険機構)の疫学研究グループであるEPI-PHAREのJabagiらが実施したもので、Journal of American Medical Association誌で電子刊行された。

    フランスで24年9月から12月に生まれた107,778人のうち、出生後、退院前にアストラゼネカの抗RSV抗体Beyfortusを筋注した、または、母親が妊娠32~36週にファイザーのRSVワクチンAbrysvoを筋注した、合わせて42,560人の乳児を対象に、25年2月末まで追跡して、RSV関連気道感染症により入院するリスクを比較したもの。接種シェアはAbrysvoが27%と低いため、Abrysvo群の新生児とマッチするBeyfortus症例を同数選択した。ほとんどが正期産。メジアン84日の追跡期間中にBeyfortus群は212人、Abrysvo群は269人がヒットし、ハザードレシオは0.74(95%信頼区間0.61-0.88)と、比較的大きな差が見られた。PICU入室など重篤例に限定しても、サブグループ分析でも、整合的な結果になった。

    安全性やフィージビリティの比較も必要だが、予防効果に関してはBeyfortusのほうが良いことになる。但し、疫学研究の成果が確立するためにはもう一つの試験で再現されることが重要である。

    リンク: Jabagiらの疫学試験論文(JAMA)


    MSDがCNPVを取得
    (2025年12月19日発表)

    FDAは二種類の医薬品候補に関してCNPV(FDA委員長の国家的優先事項バウチャ)を供与したと発表した。一つはMSDのMK-0616(enlicitide decanoate)。PCSK9阻害剤で、類似した作用機序を持つ既承認品と異なり経口投与が可能であることが最大の特徴。複数の第3相が進行中だが、LDL-C低下作用を主評価項目とする4本が既に成功しているので、2029年に心血管アウトカム試験の結果が判明する前に承認申請される可能性もあるのではないか。

    もう一つはMK-2870/SKB264(sacituzumab tirumotecan)。TROP2を標的とする抗体医薬複合体で、中国のKelun-Biotech(Sichuan Kelun Pharmaceuticalの子会社)が中国で24年に承認を取得した。MSDが22年に中国外の権利を取得、数多くの第3相試験を実施中で、27年頃から結果が出る見込みだ。

    後者が選定されたのは意外感がある。類薬であるギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)や第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk)が既に承認されているからだ。もしかしたら、抗菌剤Augmentin XR(amoxicillin、clavulanate potassium)の国内生産体制増強と同じような意味合いで、外国企業の開発品を米国企業が米国で開発すること自体を評価したのかもしれない。FDAは中国だけで実施された臨床試験の成績をエビデンスとして認めないスタンスを取っているからだ。

    あるいは、もしかしたら、トランプ大統領の要請に応じて値下げや国産・国内研究開発体制の増強を発表したことも寄与したのかもしれない(次項参照)。イーライリリーやノボ ノルディスクなどもCNPV取得と要請応諾が相次いで公表された。

    実際、FDAのプレスリリースは、この2製品は米国における医療のアクセサビリティやアフォーダビリティという政策目標に大きく貢献する可能性があると記している。

    もしこれらが理由ならば、トランプ大統領の呼びかけに応えたり、中国企業から導入すれば、CNPVがもらえるのだろうか?CNPV制度は不透明感が高まるばかりだ。


    図表:CNPV案件一覧
    発表企業対象
    25年10月Disc MedicineDISC-0974(bitopertin)、赤芽球性プロトポルフィリン症
    EMD SeronoPergoveris(follitropin alfa、lutropin alfa)、LH/FSH欠乏性不妊症
    サノフィTzield(teplizumab-mzwv)、一型糖尿病
    Achieve Life Sciencescytisinicline、Eシガレット依存症
    Regeneron PharmaceuticalsDB-OTO、otoferlin関連難聴
    Dompé farmaceuticicenegermin、非動脈炎性前部虚血性視神経症の点鼻用新製剤
    Revolution MedicinesRMC-6236(daraxonrasib)、膵癌
    USAntibioticsAugmentin XR(amoxicillin、clavulanate potassium)、抗菌剤
    不明全身麻酔用ketamine
    25年11月ベーリンガー・インゲルハイムHernexeos(zongertinib)、her2陽性肺癌
    ジョンソン エンド ジョンソンSirturo(bedaquiline)、幼児の薬物耐性肺炎
    GSKJemperli(dostarlimab)、直腸癌
    Vertex PharmaceuticalsCasgevy(exagamglogene autotemcel)、鎌状赤血球病
    イーライリリーorforglipron、肥満症
    ノボ ノルディスクWegovy(semaglutide)、肥満症
    25年12月ジョンソン エンド ジョンソンTecvayli(teclistamab-cqyv)・Darzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)併用、多発骨髄腫
    MSDMK-0616(enlicitide decanoate)、高脂血症用経口PCSK9阻害剤
    MSD推MK-2870(sacituzumab tirumotecan)、MK-2870(sacituzumab tirumotecan)、中国のKelun-Biotechから導入した抗TROP2抗体薬物複合体


    リンク: FDAのプレスリリース


    新たに9社がトランプ大統領の呼びかけに呼応
    (2025年12月19日発表)

    トランプ米国大統領は製薬会社に米国の医薬品価格を他の高所得国(先進国)並みに引き下げることなどを呼びかけ、7月には大手17社に書面で要請した。先月までにファイザー、アストラゼネカ、セラノ、ノボ ノルディスク、イーライリリーが同意し大統領と共同会見を行ったが、今回、更に、アムジェン、ベーリンガー・インゲルハイム、ブリストル マイヤーズ スクイブ、ジェネンテック(ロシュの米国子会社)、ギリアド・サイエンシズ、GSK、メルク(北米外ではMSD)、ノバルティス、サノフィの9社が同意した。残りはアッヴィ、ジョンソン エンド ジョンソン、そしてRegeneron Pharmaceuticals。

    内容は区々だが、低所得者向け医療制度メディケイドや高齢者・透析患者向けのメディケアの外来薬カバレッジにおける一部製品の価格を標準的な価格から大きく値引きする。政府が立ち上げる医薬品ECサイト、TrumpRx.comにも出品する。更に、向こう数年間、米国で製造設備と研究開発活動に巨額の投資を行う。見返りとして、政府が検討している、ブランド薬あるいは特許性薬の輸入に課す100%の関税を3年間、免除される。

    良く分からないのはTrumpRx.comだ。大統領個人に出品料の一部が分配されるなどということは流石に無いだろうが、元々がビジネスマンで、ツイッター("X")などから出禁にされた時は自分でSNSサイトを立ち上げたこともある(後に譲渡したようだ)ので、油断はできない。

    リンク: ホワイト・ハウスのファクト・シート


    【新薬開発】


    アテトーゼ型脳性まひ試験がフェール
    (2025年12月22日発表)

    Neurocrine Biosciences(Nasdaq:NBIX)はvalbenazineの第3相DCP(ジスキネジア型<別称アテトーゼ型>脳性まひ)試験がフェールしたと発表した。第14週のコレア(舞踏運動)を偽薬と比較した主評価項目も、副次的評価項目も、達成できなかった。

    脳性まひの罹患率は小児1000人当り3人、うち15%がコレアを伴うDCPと推定されている。valbenazineはVMAT-2(小胞モノアミントランスポーター2阻害剤)阻害剤で、遅発性ジスキネジア用薬Ingrezza(日本ではジスバル)として日米で承認され、米国ではハンチントン病にも承認されている。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アストラゼネカ、ATRキナーゼ阻害剤がまた中途で打切り
    (2025年12月22日発表)

    アストラゼネカはAZD6738(ceralasertib)の第3相非小細胞性肺癌試験が中間で無益認定されたと発表した。

    遺伝子修復や細胞の生存に関わるATR(ataxia telangiectasia and rad3 related)キナーゼが誘導するシグナル伝達を阻害するATR阻害剤。今回のLATIFY試験はEGFR阻害剤やALK阻害剤などの分子標的薬が適応にならない、局所進行/転移後に抗PD-(L)1抗体と白金化学療法歴を持つ非小細胞性肺癌の患者を組入れて、同社の抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)と併用する便益をImfinziだけの群と比較した。主評価項目は全生存期間。

    AZD6738は第2相の転移トリプル・ネガティブ乳癌Lynparza(olaparib)併用試験や抗PD-(L)1抗体抵抗性黒色腫のImfinzi併用試験も無益中止されている。残る第3相は今年ロンチされたNCI(米国立がんセンター)のアジュバント試験だけ。ステージII~IIIBの非小細胞性肺癌で術前療法でpCRを達成しなかった630人を組入れて、Imfinziによる術後療法に追加する便益を検討するもの。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    サノフィの多発性硬化症薬が一転して審査完了に
    (2025年12月24日発表)

    サノフィはSAR442168(tolebrutinib)を無再発二次性多発性硬化症(nrSPMS)の治療薬として欧米で承認申請したが、米国は審査完了通知を受領した。経緯が異常だ。優先審査を受け、当初の審査期限は9月28日だったが追加データ提出により12月28日に延期され、更に、期限の2週間ほど前になって、FDAから、更に遅延する、26年第1四半期中に今後のガイダンスを連絡する、という連絡を受けた。どたばたもいいところだ。おそらく、今回も、上役が介入したのだろう。

    下記プレス・リリースはFDAに振り回されたことに対する不満は記されているものの審査完了の理由については記されていない。おそらく、肝障害懸念だろう。

    nrSPMSは、再発寛解型多発性硬化症の次のステージで、症状の大きな増悪はなくなるが徐々に障害が進行していく。tolebrutinibは炎症を抑制するブルトン型チロシン・キナーゼ阻害剤。既存薬と異なり中枢神経系に作用することができる。第3相HERCULES試験でEDSS(障害評価尺度)の悪化を3割ほど遅らせる効果を示した。可逆的な薬物誘導性肝障害疑い例が発生し臨床試験の新規組入れ中断したが、この試験は既に組入れを完了しており影響を受けなかった。

    奇妙なのは、再発寛解型多発硬化症の第3相二本はフェールしたこと。主評価項目は再発頻度、対照群は偽薬ではなく同社のAubagio(teriflunomide)であることなど、対象疾患だけでなくデザインも異なるため整合性がないとは言えないが、数多くの直接比較試験で負けた実績を持つAubagioに勝てなかったことや、二本の試験のプール分析でEDSSが悪化していることなど、案外な点もある。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認】


    初のHSCT-TMA用薬が承認
    (2025年12月24日発表)

    米国ワシントン州シアトルの新興医薬品会社、Omeros (Nasdaq:OMER)は、FDAがYartemlea(narsoplimab-wuug)を造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)の治療薬として承認したと発表した。この疾患の治療は補体阻害剤などがオフレーベルで使用されているが正式に承認された薬は初めて。成人と2歳以上の小児が適応になる。体重50kg以上の患者の場合、370mg30分点滴静注を週一回施行し、改善が不十分なら週二回に増やす。

    単群試験で完全反応率(検査値と臨床評価値が改善)が61%、100日生存率は73%だった。深刻有害事象の発生率は61%、致死的有害事象発生率は7%だった。警告事前注意事項は感染症。

    HSCT-TMAは補体系活性化経路のうちレクチン経路が亢進する。重症例は命に係わる。Yartemleaはレクチン経路のイフェクター酵素であるMASP-2(mannan-binding lectin-associated serine protease-2)に結合する抗体。米国では20年に承認申請が完了したが、対照試験が実施されていないことがボトル・ネックとなり審査完了通知を受領した。同社は自然歴対照試験を実施して追加提出し、今回も審査期間が3ヶ月延長されたが、5年かけてゴールインした。

    リンク: 同社のプレスリリース


    mitapivatがサラセミアに適応拡大
    (2025年12月23日発表)

    Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)はFDAがAqvesme(mitapivat)を成人の輸血依存性/非依存性のアルファ/ベータ・サラセミア用薬として承認したと発表した。100mgを一日二回、服用する。輸血に依存する患者を組入れた第3相で輸血必要量を抑制し、依存しない患者の第3相でヘモグロビン値を改善した。

    活性成分はPKR(ピルビン酸キナーゼR)のアロステリック・アクティベイター。22年に米欧でピルビン酸キナーゼ欠乏症における溶血性貧血症の治療薬Pyrukyndとして承認された。今回、製品名を変更したのは、薬物誘導性肝障害が見られREMS(リスク評価管理戦略)が導入されたため。ピルビン酸キナーゼ欠乏症では5mg一日二回経口投与で治療を開始しヘモグロビン値の改善が不十分なら最大で50mg一日二回まで漸増するが、サラセミアでは100mg一日二回と最初からもっと高量を投与する。そのせいか、第3相試験の偽薬対照期間中に301人中2人で可逆的な肝細胞障害疑い例が発生し、オープン・レーベル延長試験期間中にも偽薬から以降した患者3人で発生した。対策として、投与開始前と開始後も最初の24週間は4週毎に、その後は臨床評価に基づき、ALT/AST、ALP、総ビリルビン分画を検査する。肝障害の警告や検査はピルビン酸キナーゼ欠乏症用途でも今年1月に導入されている。

    審査期限は12月7日だったが期日になっても音沙汰なく、2週間ほど遅延した。上記のtolebrutinibと共通するのは肝毒性懸念が絡む遅延であること。FDAのガイダンス資料によると慢性疾患病薬に求められるHyの法則該当例の発生頻度は3000人に一人未満だが、少なくとも本件は上回っている。高血圧薬やコレステロール治療薬と比べれば重篤な疾患の治療薬なので、リスク許容度は高いのだろうが、悩みどころにはなりうる。

    リンク: 同社のプレスリリース


    経口セマグルチドの体重管理用が承認
    (2025年12月22日発表)

    ノボ ノルディスクはFDAがWegovy(semaglutide)錠を肥満またはリスク因子を持つオーバーウェイトの体重管理として承認したと発表した。心血管疾患を併発する患者では主要有害心血管イベントのリスクも抑制する。第3相OASIS 4試験で体重が64週間に13.6%低下し、偽薬群の2.2%減を有意に凌いだ。

    GLP-1作用剤semaglutideは皮下注用が体重管理薬Wegovyや二型糖尿病薬Ozempicとして販売され、サルカプロザート・ナトリウムをキャリアにして胃で吸収されるようにした経口剤も二型糖尿病薬Rybelsusとして承認されている。Rybelsusは3mg一日一回で開始、30日毎に7mgに増量し、必要に応じて14mgまで漸増できる。Wegovy錠は1.5mg一日一回で開始し、30日毎に4mg、9mg、25mgと漸増する。ドロップ・アウトが起きがちな疾患であるためか、目標最大用量が大きいせいか、漸増のペースが抑えめになっている。

    リンク: 同社のプレスリリース


    皮下注用ルンスミオが米国でも承認
    (2025年12月22日発表)

    ロシュはFDAがLunsumio VELO(mosunetuzumab-axgb)を承認したと発表した。抗CD20xCD3二重特異性抗体Lunsumioの皮下注用新製剤で、注射時間が1分と点滴静注用製剤の2~4時間から大幅に短縮される。適応は成人の再発性/難治性濾胞性リンパ腫の3次治療で静注用と同じ、加速承認である点も同じ。EUでは25年11月に条件付き承認、日本でも今月、承認された。

    リンク: ロシュのプレスリリース


    小児用の経口鉄製剤が初承認
    (2025年12月22日発表)

    FDAはAccrufer(ferric maltol)を10歳以上の小児鉄欠乏性貧血症用薬として承認したと発表した。この適応を持つ経口剤は初めて。最近のFDAのプレス・リリースはメーカー名が書いていないことが多いが、英国のShield Therapeutics(LSE:STX)の製品。1ヶ月児以上の患者を組入れた臨床試験でヘモグロビン値が回復した。9歳以下は適応になっていないが、同社は新開発の懸濁液製剤で適応拡大申請する考え。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: Shield Therapeuticsのプレスリリース


    BIのPDE4B阻害剤が進行性肺線維症に適応拡大
    (2025年12月19日発表)

    FDAはベーリンガー・インゲルハイムのJascayd(nerandomilast)を成人の進行性肺線維症(PPF)に適応拡大したと発表した。昨年4月に承認申請され、優先審査指定された成人の特発性肺線維症の適応は10月に承認されている。

    ホスホジエステラーゼ4B阻害剤。忍容性や薬物相互作用に問題がなければ18mgを12時間おきに経口投与する。第3相試験では偽薬、9mg、または18mgを52週間投与したところ、試験薬群のFVC(努力性肺活量)低下が偽薬比有意に小さかった。

    第2次トランプ政権下の迷走ぶりがよく表れているのが、下記プレス・リリースと添付文書の数値の違い。製薬会社は言論の自由があるのでFDAが承認していない効能などを医療従事者に伝えることができるが、プレス・リリース作成者にも言論の自由があるのだろう。各群のFVC平均低下幅は処方情報(添付文書に相当)やBIのプレス・リリースによると152mL、69mL、86mLだがFDAのリリースでは151mL、85mL、72mL。因みに、New England Journal of Medicine誌に刊行された治験論文では165.8mL、84.6mL、98.6mLとなっている。

    また、副次的評価項目である疾病増悪、呼吸器因入院、死亡の何れかが発生するまでの期間は処方情報によると9mg群のハザード・レシオが0.88、18mg群は0.77だが統計的に有意ではなかった。3項目夫々の解析でも有意水準には達していない。にもかかわらず、プレス・リリースには増悪や呼吸器因入院、死亡も少なかったと記されている。今までのFDAなら、せいぜい、悪化するトレンドは見られなかったと書くところだろう。

    医師が頼るべきは処方情報でFDAのプレス・リリースなどどうでも良いのだが、なんとなく、FDAの首脳陣が原稿に手を入れたのかなー、と思ってしまう。

    リンク: FDAのプレスリリース


    第2の心ミオシン阻害剤が承認
    (2025年12月19日発表)

    Cytokinetics(Nasdaq: CYTK)はFDAがMyqorzo(aficamten)を成人の症候性閉塞性心筋症用薬として承認したと発表した。今月は中国で承認、欧州でCHMPが肯定的意見と大きく前進した。

    心ミオシンをアロステリックに、そして可逆的に阻害して心臓の収縮性を抑え、左室流出路閉塞を緩和する。臨床試験でpVO2(最高酸素摂取量)が偽薬比有意に向上した。枠付き警告はLVEF(駆出率)の低下による心不全でREMS(リスク評価管理戦略)が義務付けられた。LVEFが55%未満には推奨しない、治療中に低下したり症状が表れたら程度に応じて減量・中止する。欧州では今月、CHMPが肯定的意見を出したところ。

    類薬はブリストル マイヤーズ スクイブのCamzyos(mavacamten)が22~25年に米欧日で同じ適応症に承認されている。どちらもLVEFとバルサバLVOT-G(左室流出路圧較差)の検査値に応じて漸増、減量、または一時停止する必要があるがMyqorzoのアルゴリズムのほうがやや簡便。どちらも薬物相互作用リスクがあるが、Myqorzoの併用禁忌はrifampinのみ。

    リンク: Cytokineticsのプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    ファイザー、ヒムペブジの死亡例を検討
    (2025年12月22日発表)

    World Federation of Hemophilia(WFH)とNational Bleeding Disorders Foundation(NBDF)の共同声明によると、ファイザーの血友病薬Hympavzi(marstacimab-hncq)による出血のルーチン予防を受けていた患者が死亡し、同社が詳細を検討している由。TFPI(組織因子経路阻害剤)で、24年に米欧日でインヒビターを持たないA型やB型の血友病向けに承認され、インヒビター保有者向けにも米欧日で承認申請中。今回の患者はインヒビター保有のA型血友病で、2022年に臨床試験に参加した。用量は150mg週一回皮下注で、承認/適応拡大申請下の維持用量と同じ。軽微な手術後に血栓性脳卒中を発症、脳内出血を経て死去した。他の疾患や同時使用薬もあったようで、複雑な症例とされる。

    リンク: WFHとNBDFの共同声明


    アストラゼネカ、米国でオンデキサの販売を中止
    (2025年12月18日発表)

    FDAはアストラゼネカが米国でAndexXa(coagulation factor Xa (recombinant), inactivated-zhzo)の販売を終了したと発表した。市販後薬効確認試験で深刻な出血リスクが浮上したため、危険が便益を上回るとの評価を同社に通知したところ、商業的な理由により販売中止する旨の連絡があった。商業的な理由による自主的販売中止の前にFDAが安全性懸念を表明した事例は多いと推測されるが、明記されたのは今回が初めてではないか。これも今のFDAの方針と推測される。

    同薬は遺伝子組換え型血液凝固第Xa因子。抗凝固薬の一種であるXa阻害剤の活性を中和する作用に基づき、18年に米国で加速承認、19年にEUでOndexxya名で条件付き承認、22年には日本でオンデキサ名で通常承認された。

    市販後薬効確認試験となるANNEXA-I試験では、apixabanまたはrivaroxabanを服用後15時間以内に脳内出血を発症した成人に投与し、血腫の拡大やNIHSS(神経学的重症度を評価する尺度)の悪化を抑制する作用を複合評価したところ、奏効率が67%と通常医療群(プロトロンビン複合体濃縮製剤などを使用)の53.1%を有意に上回った。しかし、副次的評価項目のmRS(機能性の評価尺度)は数値がやや悪く、虚血性脳卒中の発生率が6.5%(対照群は1.5%)、血栓関連死亡率が2.5%(同0.9%)と、血栓形成に影響する薬の泣き所が表面化してしまった。

    リンク: FDAのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
    25/12/30Corcept TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
    25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)
    25/12/31Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性)
    26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
    26/1/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
    26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
    26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/1/14Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病)
    26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
    26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
    26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
    26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
    26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
    26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
    26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
    26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
    26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
    26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
    25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)


    今週は以上です。