【ニュース・ヘッドライン】
- MeiraGTx、網膜色素変性症の遺伝子療法を日米欧で承認申請へ
- リリーの経口GLP-1受容体アゴニスト、二型糖尿病安全性試験が無事完了
- リリー、ジャイパーカの3剤併用試験が成功
- 抗CSF-1R抗体のTGCT試験が成功
- CNPV案件の第3相膵管腺腫試験が成功
- PKC阻害剤のブドウ膜黒色腫試験が成功
- BioNTech、中華ADCを承認申請へ
- 第一三共、B7-H3標的ADCの承認申請が受理
- 初の巣状分節性糸球体硬化症用薬が承認
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
MeiraGTx、網膜色素変性症の遺伝子療法を日米欧で承認申請へ
(2026年4月16日発表)
MeiraGTx(Nasdaq:MGTX)はX連鎖性網膜色素変性症(XLRP)の遺伝子療法薬、AAV5-hRKp.RPGR(botaretigene sparoparvovec)の関連資産をジョンソン エンド ジョンソンから買戻したことを発表した。Janssen Pharmaceuticalsが実施した第3相LUMEOS試験は昨年5月にフェールしたが、一部の評価項目で良好な成果を挙げたことなどから、患者支援財団のFFB(Foundation Fighting Blindness)やLUMEOS試験の研究員が連名で承認申請するよう声明を出していた。
XLRPは、主としてRPGR(retinitis pigmentosa GTPase regulator)遺伝子の変異により光受容体の機能不全を生じ、視力が低下する。欧米の推定患者数は2万人超。本剤はRPGRの遺伝子をアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして患者に導入する。LUMEOS試験で95人を中量群、低量群、対照群(対照期間終了後に試験薬にクロスオーバー可)に無作為化割付けして、52週後のVMA(視認に基づく移動性の評価:低輝度迷路でテスト)を比較した。フェールしたが、改善傾向は見られた模様だ。
FFBが25年に主催した学会の主要発表に関するプレス・リリースや、上記開発要請リリースによると、試験薬群の45%でLLVA(低輝度視力)が10字(2行)以上改善した。対照群は7%だった。試験薬群は15字以上改善も20%が達成した。更に、40%が2種類以上の評価項目で改善を示した。
XLRP用薬は25年7月に米国テキサス州のNanoscope Therapeuticsが光受容体蛋白であるオプシンを導入する遺伝子療法薬、MCO-010(sonpiretigene isteparvovec)のローリング承認申請に着手した。約30人の後期第2相RESTORE試験で52週BCVA(最高矯正視力)が偽薬比有意に改善した。26年初めに申請を完了する見込みだったが、今のところ、完了したという発表はしていない。
リンク: MeiraGTxのプレス・リリース
リンク: Foundation Fighting BlindnessなどによるRetinal Therapy Innovation Summit報告(25年6月4日付、SESSION 5に関連記述)
リンク: 同財団とLUMEOS研究員による承認申請要請
【新薬開発】
リリーの経口GLP-1受容体アゴニスト、二型糖尿病安全性試験が無事完了
(2026年4月16日発表)
イーライリリーはFoundayo(orforglipron)が第3相ACHIEVE-4試験で良好な成績を上げたと発表した。予定通り、米国で二型糖尿病に適応拡大申請する考え。
中外製薬からライセンスした非ペプチド型経口GLP-1受容体作動薬。今月、肥満症や体重関連医療問題を伴うオーバーウェイト(OW)の成人の体重管理薬として米国で承認されたところ。今回の試験は肥満または高リスクOWの二型糖尿病成人2700人超を組入れて心血管安全性をinsulin glargine(サノフィのLantusなど)と比較した。主評価項目であるMACE-4(心血管死、心臓発作、卒中、または非安定性突発性胸痛による入院)はハザード・レシオが0.84(95%信頼区間0.59-1.20)となり、95%上限が1.8(!)を上回らなかったため、非劣性解析が成功した。
3点MACEもハザード・レシオ0.77(同0.52-1.13)と良好。52週A1cは各群1.6%と1.0%低下し、有意な差があった(efficacy estimandベース。ベースライン値は8.22%)。アルファは配分されていないが事前に設定されていた全生存期間の解析も、ハザード・レシオ0.43(同0.25-0.75)、名目p=0.002と好ましい結果になった。
試験薬群の当初52週間における有害事象による投与中止率は10.6%だった。重点監視項目である薬物誘導性肝障害のシグナルは見られたかった。
同社は本剤に関してCNPV(委員長国家的優先バウチャ)を受領しており、初承認時の審査期間は50日だった。同社は二型糖尿病の適応拡大申請にもCNPVを用いる考え。FDAはCNPV供与時に本剤の用途を肥満症及び肥満関連健康状態と描写しており、二型糖尿病はしばしば肥満/OWを伴うので、一粒で二度おいしい使いまわしが可能なのだろうか?CNPVプログラムは本当に不透明感が強い。
リンク: プレス・リリース
リリー、ジャイパーカの3剤併用試験が成功
(2026年4月13日発表)
イーライリリーはJaypirca(pirtobrutinib)が第3相Bruin CLL-323試験で主目的を達成したと発表した。データは未公表。適応拡大申請に向かうのではないか。
米欧日である種のマントル細胞腫やCLL/SLL(慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫)に承認されている、非共有結合性BTK阻害剤。今回の試験は共有結合性BTK阻害剤歴を持つ再発/難治CLL/SLL患者639人を組入れて、bcl-2阻害剤venetoclaxと抗CD20抗体rituximabの併用レジメンに追加する便益を検討した。3剤とも2年経ったら投与を中止する用法。主評価項目はPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だがトレンドが見られる由。
この用途では単剤投与が承認されているが、3剤併用が承認されればもう少し早い段階で使えるようになる。
リンク: プレス・リリース
抗CSF-1R抗体のTGCT試験が成功
(2026年4月13日発表)
SynOx Therapeuticsはemactuzumabが第3相試験で主目的などを達成したと発表した。データは未公表。26年下期に米国で、次いでEUでも、承認申請する考え。
同社は、オックスフォード大学発ベンチャーのCelleron Therapeutics(合併を経て現在の社名はIngenOx Therapeutics)が、ロシュからライセンスした抗CSF-1R抗体、RG-7155/RO-5509554を開発するために設立した。今回のTANGENT試験はTGCT(腱滑膜巨細胞腫瘍)患者に1000mgを2週毎に5回投与し、6ヶ月後にORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)を判定した。腫瘍量の減少に加えて、患者評価や機能的評価も改善した由。
類薬は第一三共のTuralio(pexidartinib)が19年に米国でTGCTに承認されたが、EUでは肝毒性リスクから承認されなかった。SynOxは忍容性改善を企図して上記のように累積投与量を抑制する工夫を採用している。
リンク: プレス・リリース
CNPV案件の第3相膵管腺腫試験が成功
(2026年4月13日発表)
米国のRevolution Medicines(Nasdaq:RVMD)はRMC-6236(daraxonrasib)が第3相試験で主目的を達成したと発表した。承認申請する考え。CNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)を取得しており、2~3ヶ月の審査で承認される可能性がる。
同社はこの薬をRAS(ON)阻害剤と呼んでいる。シャペロン蛋白であるcyclophilin Aに結合し変形させることによって、活性化RASの癌原性変異体と三重複合体を形成し活性を阻害できるように仕向けるもの。今回の日本も参加したRASolute 302試験は、転移膵管腺腫の2次治療を受ける510人を300mg一日一回経口投与する群と化学療法群に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間を比較した。主評価項目はRASのG12変異型サブグループだけが対象だが、最初の中間解析で全集団の解析も成功した。数値が公表されたのは全集団の全生存期間だけで、メジアン値は13.2ヶ月対6.7ヶ月、ハザード・レシオは0.40だった。詳細はASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表される予定。
このほかに、転移膵管腺腫の一次治療や術前術後療法、そしてRAS変異型非小細胞性肺癌の2~3次治療における第3相が進行中。
リンク: プレス・リリース
PKC阻害剤のブドウ膜黒色腫試験が成功
(2026年4月13日発表)
米国のIDEAYA Biosciences(Nasdaq:IDYA)とセルビエは、IDE-196(darovasertib)が第2/3相ブドウ膜黒色腫試験で主目的等を達成したと発表した。26年下期に加速承認を申請する考え。
汎PKC阻害剤。18年にIDEAYAがノバルティスからライセンスし、25年9月に米国外の権利を供与したセルビエと共同開発している。今回の承認申請用試験、OptimUM-02は、HLA-A*A2:01型ではない転移ブドウ膜黒色腫の一次治療を受ける432人を組入れて、300mgをファイザーのcMET阻害剤Xalkori(crizotinib)200mgとともに一日二回経口投与する群と、医師が選んだオフレーベル療法を施行する群(8割はnivolumabとipilimumabの併用、残りはpembrolizumabを選択)に2対1割付けして、転帰を比較した。主評価項目のPFS(無進行生存期間、独立中央評価)は各群6.9ヶ月と3.1ヶ月、ハザード・レシオは0.42、p<0.0001となった。共同主評価項目である全生存期間は未成熟だが改善傾向が見られる由で、継続追跡して延命効果を確認し、加速承認を本承認に切替える狙い。G3以上の治療時発現有害事象は下痢や失神、低血圧など。治療関連深刻有害事象の発生率は一桁とのこと。
ブドウ膜黒色腫の罹患数は米国で年3000人以上、欧加豪を含めると1万人以上で、その半分は転移癌に進行する。転移患者の5~7割はHLA型がA*02:01ではない。尚、A*02:01型にはImmunocore(Nasdaq:IMCR)のGP100・CD3二重特異性T細胞受容体、Kimmtrak(tebentafusp-tebn)が22年に米欧で承認されている。
リンク: プレス・リリース
BioNTech、中華ADCを承認申請へ
(2026年4月11日発表)
BioNTech(Nasdaq:BNTX)はBNT323(trastuzumab pamirtecan)が、第1相/前期第2相試験の治療歴のあるher2陽性進行内膜腫コフォートで良績を挙げたと発表した。年内の承認申請に向けてFDAと相談する考え。
中国のDualityBio(映恩生物、HK:9606)から中国外の権利を取得した、抗her2抗体とトポイソメラーゼI阻害剤の抗体薬物複合体。中国では第3相が成功、ある種のher2陽性転移乳癌に承認申請され、今月、受理された。今回の米中豪韓などで実施された試験では、当該コフォートのうちher2発現がセントラルラボで確認されていて免疫チェックポイント阻害剤(ICI)歴を持つ73人における確認ORR(客観的反応率)が49.3%(95%信頼区間37.4-61.3)だった。ICI歴のない患者も含むセントラルラボ確認96人では同47.9%、PFS(無進行生存期間)はメジアンは8.1ヶ月だった。
G3以上の治療関連有害事象発現率は46.9%、ADCの泣き所であるILD(間質性肺疾患、第3者査読後)はG3以上の発生率が4.8%だった。
リンク: プレス・リリース
【承認申請】
第一三共、B7-H3標的ADCの承認申請が受理
(2026年4月14日発表)
第一三共はDS-7300(ifinatamab deruxtecan)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年10月10日。
B7-H3に結合する抗体医薬複合体で、MSD提携の対象。1~3次治療歴のある進展型小細胞肺癌を組入れた第2相IDeate-Lung01試験で、12mg/kgコフォート137人におけるORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が48.2%(95%信頼区間39.6-56.9)、メジアン反応持続期間は5.3ヶ月だった。脳転移のある65人では頭蓋内ORRが46%だった。G3以上の治療関連有害事象発生率は36.5%、治療関連間質性肺疾患/肺臓炎は12.4%でうち2人(1.5%)は致死的だった。
リンク: プレス・リリース
【承認】
初の巣状分節性糸球体硬化症用薬が承認
(2026年4月13日発表)
Travere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)はFDAがFilspari(sparsentan)をFSGS(巣状分節性糸球体硬化症)に適応拡大したと発表した。第3相がフェールしたためハイリスクと考えていたが、主評価項目の事後的見直しや進行した患者を適応外とする措置が承認につながったように思われる。
アンジオテンシンIIタイプ1受容体とエンドテリンA受容体のアンタゴニスト。オリジンはブリストル マイヤーズ スクイブのようだ。23~24年に米欧でIgA腎症の治療薬として承認された。FSGSでは第3相DUPLEX試験に8歳以上の原発性FSGS患者371人を組入れて、800mgまで用量漸増する群とirbesartan 300mg群の36週蛋白尿部分寛解率や108週eGFR(推算糸球体濾過量)を比較した。同社はIgA腎症と同様に前者で加速承認を申請し後者で加速承認を本承認に切り変える方針だったが、FDAが蛋白尿をサロゲート・マーカーと認めることに後ろ向きであったため、見送った。後者の解析は23年にフェールし、やっぱり蛋白尿はアテにならないのかと思われたが、今回、コペルニクス的転回が顕現した。
一因は、患者支援団体が関連学会やFDAと共に実施したカンファレンスで、FSGSの患者は多様であるためeGFRによる薬効評価はミスリーディングであり蛋白尿のほうが適切、という意見が多かったことのようだ。その蛋白尿抑制作用も、被験者の1/3を占めた活性期ネフローゼ症候群を合併するサブグループでは小さかったためか、適応外となった。それ以外の患者では108週UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が44.8%低下しirbesartan群の18.5%低下を上回った。
Filspariは肝障害懸念に関するREMS(リスク評価緩和戦略)が付されている。FSGS試験における主な有害事象は末梢浮腫、起立性を含む低血圧症、高カリウム血症、眩暈、貧血症。
リンク: プレス・リリース
【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】
| PDUFA | |
|---|---|
| 26/4推 | サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件) |
| 26/4推 | Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件) |
| 26/4推 | アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症) |
| 26/4/23 | サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤) |
| 26/4/23 | Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血) |
| 26/4/28 | MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症) |
| 26/4/29 | サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病) |
| 26/4/30 | Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂) |
| 26/5推 | GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防) |
| 26/5推 | ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫) |
| 26/5推 | WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症) |
| 26/5/10 | argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症) |
| 26/5/18 | 第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法) |
| 26/5/24 | エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除) |
| 26/6推 | ギリアド・サイエンシズのHepcludex(bulevirtide、D型肝炎) |
| 26/6推 | GSKのtebipenem pivoxil hydrobromide (複雑性尿路感染症) |
| 26/6推 | ファイザーのHympavzi(marstacimab-hncq、インヒビターを持つA/B型血友病) |
| 26/6/2 | 第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk、mTNBC1L) |
| 26/6/5 | ArvinasのARV-471(vepdegestrant、ER1陽性乳癌) |
| 26/6/16 | 塩野義製薬のensitrelvir(COVID-19曝露後発症予防) |
| 26/6/19 | MSDのWelireg(belzutifan)とKeytruda(pembrolizumab)、併用で腎細胞腫術後療法 |
| 26/6/20 | Achieve Life Sciencesのcytisinicline(禁煙補助) |
| 26/6/27 | SobiのNASP(Nanoecapsulated Sirolimus plus Pegadricase、管理不良痛風) |
| 26/6/29 | LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤) |
| 26/6/30 | Ionis PharmaceuticalsのTryngolza(olezarsen、重度高トリグリセライド血症) |
| 26/6/30 | Viridian TherapeuticsのVRDN-001(veligrotug、甲状腺眼症) |
| 諮問委員会 | |
| 26/4/30 | 腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib) |
今週は以上です。