【ニュース・ヘッドライン】
- トランプ大統領、更に9社と薬価抑制ディール
- 英国もタブネオスの承認取消を決定
- アッヴィの抗BCMA・CD3二重特異性抗体も第3相が成功
- ノバルティス、レミブルチニブの多発硬化症試験が成功
- ノバルティス、APO(a)アンチセンス薬のアウトカム試験がフェール
- Ultragenyx、アンジェルマン症候群用薬の第3相がフェール
- milvexianのACS試験成績が発表
- Wainuaの敗因はスタビライザー併用か
- ハンチントン病の遺伝子療法を承認申請
- アストラゼネカのエトカマが米国でも承認
- アレキサンダー病のアンチセンス薬が承認
- インターフェロン製剤が米国でも本態性血小板血症に適応拡大
- FDAが静注用鉄の低リン血症リスクを枠付き警告に、EMAも検討開始
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
トランプ大統領、更に9社と薬価抑制ディール
(2026年8月31日発表)
トランプ米大統領は、処方薬の価格を他の先進国並みに引き下げる最恵国価格ディールなどについて、製薬会社9社と合意したと発表した。昨年も同様なディールを17社に要求し実現している。米国の医薬品価格は購入者により区々なのでどの程度割安になるのかは明らかではない。ディールの内容は企業毎に異なる模様だが、米国内の工場・研究所投資や戦略的備蓄に無償供与なども盛り込まれているようだ。見返りとして、製薬会社は将来導入が見込まれる追加課税から免除される。
昨年の17社はアッヴィ、アムジェン、アストラゼネカ、ベーリンガー・インゲルハイム、ブリストル マイヤーズ スクイブ、イーライリリー、EMDセラノ、ジェネンテック、ギリアド・サイエンシズ、GSK、ジョンソン エンド ジョンソン、メルク(北米外ではMSD)、ノバルティス、ノボ ノルディスク、ファイザー、Regeneron Pharmaceuticals、そしてサノフィ。今回の7社はアルコン、アステラス製薬、協和キリン、サンファーマ、CSL、Teva Pharmaceuticals、USB、ビーワン・メディシンズ、BridgeBio Pharma。先行17社と異なり、ホワイトハウスから事前の発表がなかったため、サプライズとなった。追加課税の実現性ははっきりしないが、もし導入されるなら業界全体に影響するので、おそらく、他にも通知を受け検討している会社があるだろう。
リンク: ホワイトハウスのプレス・リリース
英国もタブネオスの承認取消を決定
(2026年9月1日発表)
英国のMHRA(医薬品・医療製品規制庁)は、CSL Vifor社のMPA(顕微鏡的多発血管炎)やGPA(多発血管炎性肉芽腫症)の治療薬、Avacopan Vifor(旧称Tavneos)の承認を取消すことを決定した。9月1日を以て新患向けを停止、既に治療を受けている患者は承認取消となる27年3月1日までに他の治療法に移行する。EUや米国でも承認取消に向けた手続きが進行中。オーストラリアも8月に再評価を開始した。
この選択的補体C5a受容体阻害剤はChemoCentryxが開発、21年9月にライセンシーのキッセイ薬品が日本で、10月にChemoCentryxが米国で、翌年1月と5月には欧州のライセンシーであるVifor Fresenius Medical Care Renal PharmaがEUと英国で、承認を取得した。その後、ChemoCentryxはアムジェンに買収され、ViforグループはCSLの子会社となっている。
承認のエビデンスとなった第3相試験では、持続的寛解率が経験的薬物療法群比で非劣性であることが示された。しかし、ChemoCentryxの株主が同社を提訴した代表訴訟で、当初の解析はフェールしていたことが曝露された(p=0.1025)。フェール症例の担当医評価を再検討した結果、試験薬群166人中5人の判定が持続的寛解達成に変更され、p=0.013、治験成功に変貌したのだ。このようなことは前例が無いではないが、問題は、この経緯を規制当局に報告していなかったこと。この薬には薬物誘導性肝障害のリスクがあるので、それを上回る便益が求められるが、薬効が確立したとは言えなくなった。尤も、アムジェンがDuke大学に依頼した事後的盲検査読でも似たような結果になった模様であり、薬効に対する疑いというよりは、不適切な承認申請を許容すると悪い前例になりかねないことを懸念したものと推察される。肝障害例の殆どを占める日本における対応とは対照的だ。
リンク: プレス・リリース
【新薬開発】
アッヴィの抗BCMA・CD3二重特異性抗体も第3相が成功
(2026年9月3日発表)
アッヴィはAbbVie-383(etentamig)が第3相再発/難治多発骨髄腫試験の中間解析で二つの主評価項目を達成したと発表した。当局と次のステップを相談する考え。
21年にTeneobioから関連会社買収という形で取得した、BCMAとCD3に結合する二重特異性抗体。類薬は22~24年に米欧日でジョンソン エンド ジョンソンのTecvayli(teclistamab-cqyv)が、23~24年にはファイザーのElrexfio(elranatamab-bcmm)も、承認されているが、同社はCD3に対する結合性を抑制してサイトカイン放出症候群(CRS)や感染症のリスクを抑制し、BCMAは2ヶ所に結合させてアビディティー(合計結合性)を高める工夫をしている。
今回の日本も参加したCERVINO試験は、代表的な3種類の薬品(プロテアソム阻害剤、免疫調停剤、抗CD38抗体)による2次以上(米国は1次以上)の治療歴を持つ患者を組入れて、4週毎に点滴静注する便益を医師が選んだ標準療法(carfilzomib、elotuzumab及びpomalidomide、またはselinexor及びbortezomibを、dexamethasoneと併用)と比較した。中間解析対象は393人(メジアンで3次治療歴)。主評価項目のうちORR(客観的反応率、盲検独立評価)は74.0%対45.7%。PFS(無進行生存期間、盲検独立評価)のハザード・レシオは0.40で事前に特定されたサブグループの分析も整合的な結果になった。1年生存率は87.9%対72.0%、ハザード・レシオ0.48、名目p=0.0012と良さそうな結果だが、未だ成功認定の閾値はクリアしていない。
1回漸増だけだった患者におけるG3以上のCRSやG2以上のICANS(免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群)は見られなかった。尚、この試験は初回だけ低量を投与する用法が採用されたが、書きぶりから見ると、条件に適合したら2回目からフル投与するプロトコルだったのかもしれない。
治療時発現有害事象の発生率は各群3.6%と9.6%だった。治験の詳細は今月23日からスコットランドで開催されるIMS(国際骨髄腫学会)で発表される予定。
リンク: プレス・リリース
ノバルティス、レミブルチニブの多発硬化症試験が成功
(2026年9月1日発表)
ノバルティスはremibrutinibが再発性多発硬化症の第3相試験二本で主目的等を達成したと発表した。10月のMSToronto2026(欧米の多発硬化症学会が3年毎に共催する学会)でデータを発表する。承認申請する考え。
共有結合性BTK阻害剤。25mgを一日2回、経口投与する用法で25~26年に米欧日で抗ヒスタミンに応答不十分な慢性特発性蕁麻疹用薬Rhapsidoとして承認された。慢性誘発性蕁麻疹の試験も成功し米国で適応拡大申請中。今回のREMODEL-1/-2試験(日本は後者に参加)は10mg(投与頻度は不明)の再発率年率をサノフィのAubagio(teriflunomide)と盲検下で比較した(偽カプセル剤と偽錠剤を使用)。teriflunomideは咬ませ犬化しているため他の新薬の試験データと間接的に比較して競争力を判断する必要がある。
リンク: プレス・リリース
ノバルティス、APO(a)アンチセンス薬のアウトカム試験がフェール
(2026年9月4日発表)
ノバルティスは、TQJ230(pelacarsen)の第3相心血管アウトカム試験がフェールしたと発表した。APO(a)標的薬の臨床的便益を検討する画期的な試験だが、残念な結果になった。アムジェンもAPO(a)標的siRNA薬の第3相を実施中だが、結果判明見込み時期は当初の26年から28年にアップデートされている。
第2相試験後にIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスした、リポ蛋白(a)の構成要素であるAPO(a)の発現を阻害するアンチセンス・オリゴヌクレオタイド。80mgを月一回、皮下注する。様々な第3相が進行中だが、Lp(a)濃度抑制作用を検討するものが多く、心血管アウトカムを検討しているのは今回の、日本も参加したLp(a)HORIZON試験だけ。Lp(a)が70mg/dL以上で、心筋梗塞や虚血性脳卒中から3ヶ月以上経った、あるいは症候性末梢動脈疾患の、8323人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして、主要有害心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、または入院を必要とする緊急冠再建術)のリスクを比較した(time-to-event分析)。主評価項目は全集団と、Lp(a)≧90mgサブグループの二種類。当初は25年の結果判明が見込まれていたがイベント数が予想を下回って推移したため1年強、遅れた。
アムジェンがArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)からライセンスして開発しているAMG 890(olpasiran)は22年に日本も参加する7000人規模のOCEAN(a)心血管アウトカム試験に進んだ。当初は26年に結果判明の見込みだったが28年にアップデートされた。25年には米豪加の施設でアテローム硬化性心血管疾患のリスクを持つ1万人規模の一次予防試験も始まった。
リポ蛋白(a)は、疫学研究で心血管リスクとの関連性が指摘されているLp(a)の構成要素。上記2剤は第2相試験でLp(a)濃度を用量依存的に低下させたが、臨床的転帰を改善する作用はまだ確立していない。ノバルティスは治験の組入れ基準にmg/dLベースのレンジを示しているが、アムジェンはnmol/Lベース。70mg/dLは175nmol/Lに相当するようだが、異なった文献もあり、そもそも、検査アッセイにより数値にムラがあるようでもある。ノバルティスの試験は主評価項目で2種類の閾値を採用しており、アムジェンの試験は組入れ基準が200nmol/L以上と、おそらくノバルティスの試験より高い下限を採用している。これらは、閾値がまだ手探り状態であることを示唆している。
リンク: プレス・リリース
Ultragenyx、アンジェルマン症候群用薬の第3相がフェール
(2026年9月2日発表)
Ultragenyx(Nasdaq:RARE)はGTX-102(apazunersen)の第3相アンジェルマン症候群試験がフェールしたことを公表した。主評価項目も、主要副次的評価項目やその個々の構成要素でも、効果が見られなかった。株価は急落した。
アンジェルマン症候群は神経発達障害を示す、1~2万人に一人の希少疾患。殆どの患者で経験依存的シナプス可塑性に必要な蛋白、UBE3Aの特発的欠落/機能喪失変異が見られる。父親由来のUBE3Aは元々、UBE3A-AS(UBE3Aアンチセンス・トランスクリプト)により発現を抑制されているが、GTX-102はこのUBE3A-ASの発現を妨げるアンチセンス・オリゴヌクレオタイド。寝ている父を起こして働かせるアイディアだ。腰椎穿刺により髄腔内投与する。患者支援団体が設立しテキサス州立大学群からライセンスを取得した、GeneTxを22年に買収して入手したもの。
日本も参加した第3相Aspire試験は、UBE3A欠乏を伴う患者129人を組入れて、第338日のBayley-4 cognitive raw score(発達評価)をシャム群と比較した。主要副次的評価項目の、net response on the Multidomain Responder Indexもフェールし、この様々な希少疾患の試験で用いられる評価指標を構成する夫々の評価項目でも効果は見られなかったようだ。
前者は第1/2相試験ではコフォートにより5点又は8点改善し、自然歴の各1点を上回ったと24年のANN(米国神経学会)で発表されており、意外な結果になった。
リンク: プレス・リリース
milvexianのACS試験成績が発表
(2026年8月29日発表)
ジョンソン エンド ジョンソンは昨年11月にXIa阻害剤milvexianの第3相急性冠症候群後心血管アウトカム試験で独立データ監視委員会が無益認定したことを明らかにしたが、データをESC/NEJMで発表した。この日本も参加したLibrexia-ACS試験は、急性冠症候群を発症してから7日以内で、PCI(経皮的冠介入術)や保存的療法を受けた再発リスクの高い患者14194人を組入れて、抗血小板薬治療に加えて偽薬または25mgを一日2回、経口投与する便益を比較した。主評価項目である心血管死。心筋梗塞、または虚血性脳卒中のハザード・レシオ(time to event分析)は1.05、メジアン12ヶ月追跡時点の発生率は各群5.4%と5.1%だった。重大な出血(頭蓋内出血、視力に影響する眼内出血、または致死的出血)の発生率は両群0.3%だった。
第3相は急性虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作の再発予防試験や、心房細動の脳卒中予防試験も進行中。
ライバルであるバイエルのXIa阻害剤、BAY 2433334(asundexian)は、第3相OCEANIC-STROKE試験で虚血性脳卒中の再発や心血管イベントを偽薬比抑制することに成功、5月に日米欧で新薬承認申請が受理された。この試験に先立つ第3相OCEANIC-AF(心房細動の脳卒中予防試験、Xa阻害剤apixaban対照)は非劣性解析がフェールしている。XIa阻害剤も用途毎に一つ一つ、有効性を確認していくパターンになっている。
リンク: Gibsonらの治験論文抄録(NEJM)
Wainuaの敗因はスタビライザー併用か
(2026年8月28日発表)
アストラゼネカは遺伝性トランスサイレチン調停アミロイドーシスにおけるポリニューロパシーの治療薬として承認されているアンチセンス薬、Wainua(eplontersen)のトランスサイレチン・アミロイドーシス調停心筋症治療試験がフェールしたことを7月に公表したが、データをESC(欧州心臓学会)やNew England Journal Medicine誌で発表した。Nature誌のサイトで暫定公開されたサブスタディによると、既承認のトランスサイレチン・スタビライザー(ファイザーのtafamidisなど)を同時使用していた患者の成績が良くなかったようだ。
この日本も参加した第3相CARDIO-TTRansformは45mgを4週毎皮下注する便益を偽薬と比較した。主評価項目は心血管死や再発性心血管イベント(心不全増悪や主要有害心血管イベントによる入院など)のリスク。当初の組入れ予定は750人、盲検期間120週だったが、イベント発生率が計画を下回って推移したため、1000人140週に拡大され、組入れ実績は1432人と更に上回った。試験薬群は210人で381イベントが発生、偽薬群は231人392人イベントで、率比は0.89(95%信頼区間0.73-1.09)、p=0.277だった。被験者の57%がベースライン時点でスタビライザー薬を併用しており、期中には80%を超えた。ベースライン時点で併用していた患者では率比1.14(同0.85-1.53)だったが、していなかった患者では0.71(0.54-0.93)だった。安全性はどちらのサブグループでも大差なかった。
ライバルであるAlnylam PharmaceuticalsのAmvuttra(vutrisiran)は第3相HELIOS-B試験で全死亡/心血管イベントのハザード・レシオが0.72となり、25年に米日欧で適応拡大が承認された。24年に主評価項目にモノセラピー(tafamidias併用せず)サブグループの解析を追加するデザイン変更が行われたので、途中経過ベースでは併用者のデータが今一つだったのかもしれないが、少なくとも出来上がりでは、併用サブグループのハザード・レシオは0.79、モノセラピー・サブグループは0.67と、どちらも好ましい方向を向いていた。2剤の治験成績の違いが、アンチセンスとRNA介入というモダリティの違いに起因するものなのか、トランスサイレチンの発現を阻害する力価の違いが響いたのか、はたまた臨床試験のデザインや患者背景が異なるのか、それともデータのブレに過ぎないのか、今後も議論が続きそうだ。
それはそれとして、アストラゼネカとライセンス元であるIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)には残念な結果になった。
リンク: Fontanaらの治験論文抄録(NEJM)
リンク: Garcia-paviaらの治験論文抄録(Nature誌、本文もオープン・アクセス)
【承認申請】
ハンチントン病の遺伝子療法を承認申請
(2026年9月2日発表)
アムステルダム大学発ベンチャーであるuniQure N.V.(Nasdaq:QURE)は米国と英国でAMT-130(ifezuntirgene inilparvovec)をハンチントン病治療薬として承認申請したと発表した。米国は加速承認申請で、優先審査を求めている。事前相談でFDA側の意見が二転三転しており、高リスク案件と思われる。
ハンチントン病の原因と目される変異ハンチントン遺伝子を沈黙させるマイクロRNAをアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして送り込む遺伝子療法。MRIでモニタリングしながら線条体に持続陽圧下定位脳手術で一回、投与する。第1/2相米国試験(26人、低量/高量/シャムの3群)、欧州試験(13人、低量/高量群)、免疫抑制剤併用試験(12人)、線条体低量患者試験(6人、高量群のみ)の4本が施行されたが、シャム対照試験はフェールした模様で、薬効の主エビデンスは症状評価スコア(cUHDTS)の変化を傾向加重自然歴と比較した外部対照試験のようだ。
同社は24年12月にこのデータなどに基づき加速承認申請することでFDAと事前合意したと発表したが、翌年11月、申請前会議で外部対照試験だけでは不十分と告げられたことを公表、株価が暴落した。26年1月のタイプA会議でもFDA側のスタンスは変わらなかったが、6月のタイプB会議でFDAが譲歩、当初の計画通り、米国試験と英国試験の3年追跡データと自然歴対照試験などに基づき加速承認申請する方針を受け入れたという経緯だ。
FDA長官など上層部が入れ替わったことでこれまで冷遇されていた案件の展望が改善したと言われているが、少なくともこれまでのところは軒並み承認とはなっていない。
リンク: プレス・リリース
【承認】
アストラゼネカのエトカマが米国でも承認
(2026年9月4日発表)
FDAはアストラゼネカのEtcamah(camizestrant)を加速承認した。次世代経口選択的エストロゲン受容体零落剤で、成人のホルモン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌で、アロマターゼ阻害剤とCDK4/6阻害剤の併用による一次治療中にESR1(エストロゲン受容体アルファの遺伝子)に変異が検出された患者が、アロマターゼ阻害剤からスイッチする。4月の腫瘍学諮問委員会では反対が6名と賛成の3名を上回ったため危惧されたが、6月の日本、7月のEUに続き、承認された。Guardant360 CDxがESR1変異のctDNA(血中腫瘍DNA)のコンパニオン診断薬として承認された。
日本も参加した第3相SERENA-6試験にアロマターゼ阻害剤とCDK4/6阻害剤による一次治療を受け進行が抑制されている患者3050人を登録して2~3ヶ月毎にctDNA検査を実施し、変異が検出された、そして未だ進行していない患者315人を、75mg一日一回投与群と偽薬群に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間、治験医評価、PFSの起算はESR1変異陽転時)を比較した。結果はメジアン値が各群16.0ヶ月と9.2ヶ月、ハザード・レシオは0.44と大変良い結果が出た。サブグループ分析も整合的だった。
この治療手法のコンセプトは、薬の効果が薄れたことをいち早く発見し次の治療に移行するというもの。早く移行すると次の治療オプションが一つ減ってしまうのが痛し痒しだ。懸念を払拭するには全生存期間が延びることを挙証するのが一番だが、残念ながら、この試験は十分な検出力を持たない。それどころか、ごく初期の数値とは言え諮問委員会で示されたハザード・レシオは0.90、メジアン生存期間は41.2ヶ月対40.2ヶ月だった。今回、アストラゼネカがプレス・リリースで公表したアップデート値も0.87(95%信頼区間0.57-1.30)と、点推定値は一般的な閾値である0.8を上回っている。実薬対照試験なので必ずしも有意に上回っている必要はないが、PFSの数値からは想像もできない水準だ。諮問委員会で否定的意見が多かったのはこれが主因。今後の追跡で点推定値の改善が期待される。
枠対警告はQTc延長作用を持つ薬との同時使用。ribociclib(日本では未承認のCDK4/6阻害剤)以外は同時使用禁忌。警告注意は徐脈や胚胎毒性、CYP3A阻害剤などとの相互作用リスク。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: FDAのCDER(小分子薬審査部門)のプレス・リリース
リンク: アストラゼネカのプレス・リリース
アレキサンダー病のアンチセンス薬が承認
(2026年9月3日発表)
FDAはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のZanvastro(zilganersen)を小児と成人のアレキサンダー病用薬として承認した。この疾患の承認薬は初めて。同社は希少小児疾患優先審査バウチャを取得した。報道によると価格は一回28.5万ドル。27年に欧州や日本でも承認申請される予定(米国外の権利はレコルダティがライセンス)。
アレクサンダー病は100~300万人に一人の超希少精神運動発達障害。9割の患者でアストロサイトを支えるGFAP(グリア線維性酸性蛋白)の遺伝子に変異が見られる。ZanvastroはこのGFAPをアンチセンスするオリゴヌクレオタイド。50mgを12週毎に髄腔内投与する。日本も参加したpivotal試験で50mg群の61週10メートル歩行テスト成績は安定的だったが、シャム群は悪化した(p=0.04)。FDAは5歳以上の患者に関してはこの試験の歩行障害サブグループにおけるデータ、2~4歳では粗大運動機能データ(試験薬群は改善、シャム群は悪化)、2歳未満は薬物動態や4例の安全性評価をエビデンスとした。有害事象は嘔吐など。無菌性髄膜炎の発生が報告されており、症状に注意する。
リンク: プレス・リリース
インターフェロン製剤が米国でも本態性血小板血症に適応拡大
(2026年8月31日発表)
台湾のPharmaEssentia(TPEx:6446、薬華医薬)はFDAがBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft)を本態性血小板血症に適応拡大を承認したと発表した。第3相はhydroxyurea不応不耐患者を中国や日本などの施設で組入れたが、後期第2相のサブグループ分析で未治療サブグループでも高い客観的反応率が見られたせいか、適応は二次治療に限定されていない。日本でも8月に適応拡大が認められた。
ポリエチレン・グリコールを同社独自の技術でベータ・インターフェロンと結合したもの。19年にEUで、21年に米国で、23年には日本でも、真性多血症の治療薬として承認された。今回の用途はSURPASS-ET試験で持続的応答率が37.4%とanagrelide(武田薬品のAgrylin)群の3.6%を有意に上回った(レーベルによる。25年の同社発表やLancet論文では各群43%と6%)。
リンク: プレス・リリース
【医薬品の安全性】
FDAが静注用鉄の低リン血症リスクを枠付き警告に、EMAも検討開始
(2026年9月1、4日発表)
FDAはInjectafer(ferric carboxymaltose)のレーベルに枠付き警告を追加するレーベル変更を承認したと発表した。度重なるレーベル変更を経ても医療従事者の認知を得られず業を煮やした格好だ。GE品のレーベル変更も行う予定。
Injectaferは第一三共の子会社であるルイトポルド・ファーマシューティカルズ(19年にアメリカン・リージェントに社名変更)が鉄欠乏性貧血症の鉄補充療法として13年にFDAの承認を取得したもの。経口鉄製剤に不耐不応な患者に静注する。症候性低リン血症のリスクがあり、高リスク患者や、コースを完了後3ヶ月以内に再試行する場合は、リン酸値のモニタリングが勧奨されている。FDAは19年、20年、23年、25年と、このリスクに関連するレーベル変更を逐次承認してきたが、近年に至っても有害事象が報告され、モニタリングの実施率は2割以下と周知徹底されていないため、警告強化を決めた。レーベルの逐次変更は戦力の逐次投入と同様な愚策ということを示す事例がまた一つ積み重なった。
InjectaferはVifor(現CSL Vifor)からの導入品のようだ。Viforグループの企業が各国で承認を取得している欧州でも、EMA(欧州薬品庁)のPRAC(ファーマコビジランス・リスク評価委員会)が検討を開始した。骨軟化症合併例を含む深刻な低リン血症が報告されていて、リスク因子を持たない患者に1~2回投与しただけで発生した症例も見られるとのこと。低リン血症の症状は鉄欠乏症のそれと似ているため診断が遅れた症例も散見される。当初のX線検査では骨軟化症が探知できなかった症例もあった。
他の製品でも同様なリスクが見られることからPRACは注射用鉄製品全体の検討を開始した。
リンク: FDAのプレス・リリース(9/1付)
リンク: EMAのプレス・リリース(9/4付)
【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】
| PDUFA | |
|---|---|
| 26/9推 | アッヴィのtavapadon(パーキンソン病) |
| 26/9推 | ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病) |
| 26/9推 | ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大) |
| 26/9/11 | TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤) |
| 26/9/19 | UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型) |
| 26/9/21 | Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績) |
| 26/9/26 | IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症) |
| 26/9/27 | Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌) |
| 26/9/28 | Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症) |
| 26/9/30 | BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大) |
| 26/9/30 | Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症) |
| 26/10推 | アッヴィのRinvoq(upadacitinib、非分節型白癬) |
| 26/10推 | GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、dMMR/MSI-H結腸癌、CNPV案件) |
| 26/10/4 | MSDのWelireg(belzutifan)とエーザイのLenvima(lenvatinib)、併用で進行腎細胞腫 |
| 26/10/9 | ロシュのTecentriq(atezolizumab、dMMR/MSI-HステージIII結腸癌の術後療法) |
| 26/10/10 | 第一三共のDS-7300(ifinatamab deruxtecan、進展型小細胞性肺癌) |
| 26/10/15 | ロシュのEnspryng(satralizumab-mwge、甲状腺眼症) |
| 26/10/26 | GSKのbepirovirsen(慢性B型肝炎) |
| 26/10/29 | Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎) |
| 26/10/30 | Inovio PharmaceuticalsのINO-3107(難治呼吸器乳頭腫) |
| 諮問委員会 | |
| 26/9/23 | MCGP:Grail社のGalleri多癌種早期探知血液検査 |
今週は以上です。