2026年3月28日

第1252号

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 抗IL-33抗体のCOPD試験が遂に成功 
  • 抗VEGF抗体バイオポリマー複合体の二本目の第3相が成功 
  • アリケイスのMAC一次治療試験が成功 
  • ライム病ワクチンを承認申請へ 
  • Dizal社、ex20挿入変異肺癌の単剤一次治療試験が成功 
  • アレキサンダー病のアンチセンス薬を承認申請 
  • 遅報:kit阻害剤を全身性肥満細胞症に承認申請 
  • 遅報:田辺三菱由来の降圧剤を承認申請 
  • 3月のCHMP決定 
  • 白血球接着不全症1型用薬が承認 
  • アウィクリが米国でも承認 
  • ハンター症候群のBBB通過性酵素補充療法が承認 
  • グルココルチコイド受容体拮抗剤が卵巣癌に承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


抗IL-33抗体のCOPD試験が遂に成功
(2026年3月27日発表)

アストラゼネカはMEDI3506(tozorakimab)の第3相難治COPD維持療法試験二本で主目的等を達成したと発表した。今上期中に投与頻度を増やした第3相の結果も判明する見込みで、承認申請に向かうのではないか。

IL-33に結合する抗体医薬。今回のOBERON試験とTITANIA試験は、成人の10箱年以上の喫煙歴を持つ症候性COPDで、維持療法用薬を2剤以上併用しても過去12ヶ月間に中程度以上の増悪を2回、あるいは重度増悪を1回、経験した患者を2本合計で2306人組入れて、300mg4週毎皮下注を追加する便益を偽薬追加と1年間、比較した。主評価項目は煙草を止めた患者における中重度COPD増悪年率。副次的評価項目である喫煙者も含めた全体の解析も成功した。データは未発表。この二本の延長試験として、2年目以降の治療法を探る2用量群の偽薬対照試験も進行中。更に、上記2本と類似した内容だが300mgを2週毎投与する第3相MIRANDA試験も進行中。

他の用途では、第3相TILIA試験でウイルス性肺感染症により入院酸素補給を受けている患者を組入れて死亡や侵襲的人工呼吸器/ECMO(体外式膜型人工肺)装着リスクを偽薬と比較しており、治験登録によると、26年6月に成否判明する見込み。尚、上記はすべて日本の施設も参加している。

抗IL-33抗体によるCOPD増悪予防試験は、昨年、アムジェンのAMG 282(astegolimab)の第3相ARNASA試験がフェール。Regeneron PharmaceuticalsのREGN3500(itepekimab)は一勝一敗だった。増悪リスク削減率を見ると前者は2週毎投与群で14%、後者は4週毎群が21%と12%、2週毎群は27%と2%で、2本の試験の平均で見るとアムジェンの数値と大差ない。アストラゼネカの数値がどの程度なのか、注目される。

リンク: プレス・リリース


抗VEGF抗体バイオポリマー複合体の二本目の第3相が成功
(2026年3月26日発表)

米国のKodiak Sciences(Nasdaq:KOD)は、Zenkuda(tarcocimab tedromer)が第3相糖尿病網膜症試験で主評価項目と主要副次的評価項目を達成したと発表した。第3四半期に新生血管加齢黄斑変性用途で米国で承認申請する計画だが、DRの承認申請も前倒しする可能性があるようだ。

抗VEGF抗体(150kDa)とバイオポリマー結合体(950kDa)を1:4で混合した硝子体注射用製剤。半減期が20日と長い。22~23年に旧製剤の第3相aflibercept対照試験が開票したが、新生血管加齢性黄斑変性のP2/3DAZZLE試験も、糖尿病性黄斑浮腫の第3相GLEAM試験と同GLIMMER試験も非劣性解析がフェールした。これらの試験で白内障が増加する懸念が浮上、一旦は開発中止を決めたものの、新生血管加齢性黄斑変性は第3相DAYLIGHT試験が成功していたことに加え、新たに網膜静脈閉塞症による網膜浮腫の第3相BEACON試験も非劣性解析が成功したため、糖尿病性網膜症の第3相GROW1シャム対照試験を実施したとことろ、奏効率(DRSS評価尺度が48週後に2段階以上改善)が41.1%(シャム群は1.4%)と有意に上回った。そこで、更に実施したのが今回のGROW2試験だ。

GROW1試験は欧米の施設で中程度重度または重度の患者253人を組入れて第0、8、20、44週に投与した。GROW2試験は更に糖尿病性黄斑浮腫や増殖性糖尿病性網膜症も含む255人を組入れて、第0、4、8、20、44週に投与し、48週奏効率(前回と同様)をシャム群と比較したところ、62.5%とシャム群の3.3%を有意に上回った。被験者の半分弱はGLP-1作用剤を同時使用していたが、効果は大差なかった。副次的評価項目の、視力を脅かす合併症(増殖性糖尿病性網膜症を合併/悪化など)の発生率も2.4%対15.8%で有意だった(アルファ調整後)。

既存薬では眼内炎症性疾患が見られたものもあるが、この試験では網膜血管炎や閉塞性網膜血管炎を含め発生しなかった。白内障発生率は2.3%(シャム群は1.6%)でこの疾患における自然発生率と大差無かった。尚、視力は両群とも安定的に推移したようだ。

同社は抗IL-6抗体とVEGFトラップを組み合わせた二重特異性蛋白バイオポリマー複合体であるKSI-501(tabirafusp tedromer)も新生血管加齢性黄斑変性の第3相DAYBREAK試験中で、第3四半期に48週BCVA(最良矯正視力)がaflibercept比非劣性かどうか、判明する見込み。KSI-101(二重特異性蛋白)の第3相MESI(炎症後黄斑浮腫)試験二本も第4四半期に開票予定。

風前の灯火から復活できるか、詳細発表が待望される。

リンク: プレス・リリース


アリケイスのMAC一次治療試験が成功
(2026年3月23日発表)

Insmed(Nasdaq:INSM)は吸入用抗菌剤Arikayce(amikacin)の後期第3相新患MAC(マイコバクテリウム・アビウム・コンプレックス)肺炎一次治療試験、ENCOREで主目的等を達成したと発表した。18~21年に米欧日で難治性のMAC肺炎の治療薬として承認されたが、26年下期に米日などで適応拡大申請する考え。承認なら対象患者が現行の3万人から20万人に増加する見込み。

この試験は、425人の患者を組入れて、azithromycinとethambutolの併用法にArikayce 590mg一日一回吸入を追加する便益を偽薬追加と比較した。主評価項目は12ヶ月の治療を終えた第13月における呼吸器症状スコア(Quality of Life-Bronchiectasis Respiratory Domainの37項目中8項目を利用)。17.77点となり、偽薬群の14.66点を有意に上回った(p=0.0299)。副次的評価項目の第6月や第12月などの培養検査陰転率も多重性補正後で有意だった。

有害事象は深刻TEAE(療時発現有害事象)の発生率が14.1%(偽薬追加群は11.3%)、TEAEによる投与中止は14.6%(同8.5%)、致死的TEAEは両群0.5%(1名)だった。特別関心TEAEは気管支痙攣が23%(同11.8%)、過敏性肺臓炎が2.3%(同ゼロ)で発生したが他の評価項目は両群大差なかったようだ。

米国の承認は持続的陰転率というサロゲート・マーカーに基づく加速承認だが、市販後薬効確認試験に位置付けられた今回の試験成功により本承認に切替えられるだろう。

リンク: プレス・リリース


ライム病ワクチンを承認申請へ
(2026年3月23日発表)

ファイザーとフランスのValneva(Nasdaq:VALN)は、ライム病ワクチンPF-07307405/VLA15の第3相試験のトップラインを発表すると共に、欧米で承認申請する考えを明らかにした。この試験は数奇な経緯を持っており組入れ数や薬効評価期間などが変更になっている。主評価項目が僅かにフェールしたこともあり、承認されるかどうか、予断を許さないだろう。

ライム病はマダニが媒介するボレリア・ブルグドルフェリ菌の感染症。米国では年50万人近くが感染と推定されている。1998年にスミスクライン・ビーチャム(当時)のLYMErixが米国で承認されたが、全米で見ると罹患率は高くなく深刻感染症も多くはないことに加えて、臨床試験の主任研究員が交差耐性や自己免疫疾患のリスクに懸念を表明したり、多数のPL訴訟が提起されたりしたことなどから、需要が低迷し2002年に自主的販売中止となり、ワクチン無しの時代に戻った。尚、FDAはLYMErixの副作用懸念を支持してはいないようである。

PF-07307405はファイザーがValnevaから共同開発・単独製造商業化権を取得した、6価OspAアルミ・アジュバント・ワクチン。第3相のVALOR試験は米国と北中欧の数ヶ国の施設で5歳以上を対象として180mcgの予防効果を偽薬と比較した。初回免疫はライム病シーズンが始まる4月までに完了できるよう見計らって、第0月、2月、5~9月に合計3回接種した。完了の1年後に追加接種した。当初の組入れ目標は18000人、薬効面の主評価項目は初回免疫完了の28日後から10月末までのライム病相対リスク削減率と、追加免疫の28日後以降の同様なリスク削減率だった。

ところが、両社は23年2月に複数の米国施設でGCP(臨床試験実施基準)違反があったとして、これらの施設を除外すると発表した。同日、これらの施設を担当するCROのCare Accessが反論し、同年10月にはFDAのGCP査察で指摘事項(form 483)がなかったことを公表したが、その後は両社からは音沙汰ないようである。

両社はこの件を踏まえて組入れ数を見直すと共に、初回免疫後の相対リスク削減率を主評価項目から除外した。今回発表された追加接種後の相対リスク削減率は73.2%、95%信頼区間は15.8-93.5で、下限は成否判定の閾値である20%を上回らなかった。副次的評価項目である追加接種翌日から起算すると74.8%(21.7-93.9)だった。

不透明要素は、まず、20%という閾値をクリアできなかったことがどれほどの重大性を持つか。報道によると感染数が前提を下回ったようなので、ある程度斟酌されるかもしれない。よく分からないのが、初回免疫のデータが無くても良いのか、ということ。Care Accessの担当施設を除外したデータはあるのだろうから、支持的証跡として審査対象になるのだろう。LYMErixの経験を踏まえると、安全性や感染者の再感染時の転帰なども気になるところだ。

リンク: 両社のプレス・リリース
リンク: VALOR試験の登録内容更改履歴(ClinicalTrials.gov)
リンク: 両社のプレス・リリース(23年2月17日付、治験デザイン変更について)
リンク: Care Accessのプレス・リリース(23年2月17日付、ファイザーの決定に関して)
リンク: Care Accessのプレス・リリース(23年10月11日付、FDAのGCP立入り調査でform 483指摘がなかった件)


Dizal社、ex20挿入変異肺癌の単剤一次治療試験が成功
(2026年3月21日発表)

Dizal(SHEX:688192、迪哲医药) はZegfrovy(sunvozertinib)が第3相WU-KONG28試験で主評価項目等を達成したと発表した。適応拡大申請に向かう考え。

選択的、不可逆的EGFR阻害剤。23年に中国で承認され、25年7月には米国でも、白金ベース化学療法中または後に進行したEGFRにエクソン20挿入変異を持つ成人の局所進行/転移非小細胞性肺癌に用いることが加速承認された。今回の試験は米中欧亜の施設で、再発治療ではなく一次治療としての便益を白金ベース化学療法と比較した。主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)や副次的な確認ORR(客観的反応率)なども有意に上回った。数値は未公表。

エクソン20挿入変異を標的とする治療薬は、ジョンソン エンド ジョンソンのRybrevant(amivantamab-vmjw)をcarboplatin及びpemetrexedと併用することが24年に米欧日で承認されている。シェア争いをしていた武田薬品のExkivity(mobocertinib)は今回と同様な単剤投与による市販後薬効確認試験がフェールし承認返上となった。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


アレキサンダー病のアンチセンス薬を承認申請
(2026年3月23日発表)

Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)はION373(zilganersen)を米国でアレキサンダー病用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年9月22日。

アレキサンダー病は運動機能や認知機能などに影響する100~300万人に一人の超希少難病。患者の9割でアストロサイトを支えるグリア線維性酸性蛋白質(GFAP)の遺伝子変異が見られる。ION373はGFAPのアンチセンス薬。日本を含む8ヶ国の施設で1歳半から53歳の患者54人を組入れて髄腔内投与したピボタル試験(第1~3相用量漸増試験)で主評価項目である50mg投与例の61週10メートル歩行テストの成績が偽薬群比33%上回った(p=0.0412)。副次的評価項目の進行遅延なども好ましい傾向が見られた模様。忍容性は良好だった模様。

リンク: プレス・リリース


遅報:kit阻害剤を全身性肥満細胞症に承認申請
(2026年3月16日発表)

Cogent Biosciences(Nasdaq:COGT)は米国でCGT9486(bezuclastinib)を非進行全身性肥満細胞症用薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は26年12月30日。Plexxikon社(後に第一三共が買収)からライセンスしたc-kit阻害剤で、承認申請を意図したSUMMIT試験のパート2で全般症状尺度の改善が偽薬を有意に上回り、より多くの患者が肥満細胞活性のバイオマーカーである血清トリプターゼの半減を達成した。有害事象は毛髪変色や味覚異常、悪心、ALT/AST上昇など。

進行した全身性肥満細胞腫の承認申請用試験も主目的(客観的反応率)を達成しており今上期中に承認申請する考え。また、c-kit阻害剤imatinib不応不耐のGIST(消化管間質腫瘍)にVEGFR阻害剤sunitinibと併用した第3相PEAK試験もPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン16.5ヶ月とsunitinibだけの群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオ0.50と良好な結果が出ており、4月にローリング承認申請を完了する計画だ。

リンク: プレス・リリース


遅報:田辺三菱由来の降圧剤を承認申請
(2026年3月9日発表)

米国フィラデルフィア州のMineralys Therapeutics(Nasdaq:MLYS)は米国でMLS-101(lorundrostat)を高血圧治療薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は26年12月22日。

21年に田辺三菱製薬(当時)からライセンスしたCYO11B2阻害剤で、コルチゾールなどに影響せずにアルドステロンの合成を阻害できる。2~5剤服用しても管理不良な高血圧症患者に追加投与した第3相Launch-HTN試験で第6週最大高血圧(自動測定器を用いて医療施設で測定)が偽薬比9.1mmHg低下した。有害事象は高カリウム血症など。

尚、同剤の睡眠時無呼吸における症状改善作用を探索した第2相がフェールしたことも公表された。

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


3月のCHMP決定
(2026年3月27日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: プレス・リリース

フェリング・ファーマシューティカルズのAdstiladrin(nadofaragene firadenovec) は成人のBCG不応筋層非浸潤膀胱癌(CIS w/wo乳頭腫)用薬。遺伝子組換え型アデノウイルス5型をベクターとして、インターフェロン・アルファ2bの遺伝子を導入する。3ヶ月毎膀胱内注入。米国では22年に承認、日本でも昨年9月、承認申請された。

アムジェンのImdylltra(米国ではImdelltra、日本はイムデトラ、tarlatamab)は進展型小細胞性肺癌の二次治療薬。小細胞性肺癌の8割が発現するDLL3とTCRのCD3を架橋するTセル・エンゲイジャーで、24年に三次治療薬として米国で加速承認、日本で承認、されている。今回のエビデンスである第3相DeLLphi-304試験では死亡リスクが各地の標準療法薬と比較して有意に低下した。

オランダのPharming(Euronext Amsterdam:PHARM)のJoenja(leniolisib)は活性化PI3Kデルタ症候群(APDS)用薬。米国では23年に承認されたが、EUは22年の申請から3年半経ち、今月承認の日本にも後れを取った。例外的環境下承認で、12歳45kg以上の未成年と成人が適応になる。31人の単群試験でリンパ節腫脹が改善したが、この疾患の主要な合併症である感染症の頻度を抑制する作用は示されていない。尚、4~11歳は日本では適応追加されたが米国は審査完了となっている。

スペインのPharma MarのZepsyre(米ではZepzelca、lurbinectedin)は進展期小細胞性肺癌の維持療法用薬。atezolizumab、carboplatin、etoposideによる一次治療導入療法後にatezolizumabと共に投与する。IMforte試験で全生存期間のハザード・レシオがatezolizumabだけの群比0.73だった。米国では導出先のJazz Pharmaceuticalsが20年6月に単剤で再発治療に加速承認を取得、昨年10月に今回の用途で適応拡大している。

ダブリン籍の小児用薬会社、Proveca Pharmaが申請したBopediat(furosemide)は、フランスでは49年前に承認されたループ利尿薬、Lasilixの活性成分を用いた口内分散性新製剤。新生児から17歳までの小児の心臓や腎臓を起源とする浮腫、肝原性浮腫、そして慢性腎疾患患者の高血圧治療に用いる。

適応拡大が支持されたのは以下の通り。

  • MSDのCapvaxive:肺炎球菌ワクチンによる初回免疫を受けた2~17歳における追加免疫。日本でも高リスク小児に一変申請中。
  • Accord HealthcareのHetronifly(serplulimab):成人のPD-L1陽性(CPS≧5)の切除不能/局所進行/難治/転移食道扁平上皮腫の一次治療(5-FUや白金薬ベースの化学療法と併用)と、成人の分子標的薬が適応にならない手術/放射線療法不適な局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌(pemetrexed及びcarboplatinと併用)。Shanghai Henlius Biotech(2696.HK、上海復宏漢霖生物技術)から導入した抗PD-1抗体。日本は25年にエーザイがライセンスした。
  • モデルナのmResvia:18~59歳における、RSV感染による下部気道疾患のリスクが高い患者という限定を解除。
  • ブリストル マイヤーズ スクイブのSotyktu(deucravacitinib):DMARDに応答不十分/不耐の成人の活性期乾癬性関節炎に単剤またはMTXと併用。米国は今月承認、日本で一変申請中。

  • 承認申請が撤回されたのはNYのAnavex Life Sciences(Nasdaq:AVXL)のANAVEX2-73(blarcamesine)。sigma-1受容体アゴニストで、会社側は22年12月に後期第2相/第3相AD-004試験が成功と発表したが、CHMPによると共同主評価項目がどちらもフェールした。同社は25年12月の否定的意見を再検討するよう請求したが、結果を待たず撤回した。

    適応範囲縮小が推奨されたのは、SIGA Technologies(Nasdaq:SIGA)のTecovirimat SIGA(米国製品名はTOPX)X。22年1月に例外的環境下承認を取得したが、適応となる体重13kg以上の小児と成人のオルソポックスウイルス疾患のうち、エムポックスを除外し天然痘などに限定するよう欧州委員会に推奨した。散発的にしか流行しないことなどの理由で、霊長類における死亡抑制作用に基づき承認したが、その後に実施された大規模な試験4本の何れでも罹患期間を短縮できなかった。米国では霊長類試験に基づき18年に体重3kg以上の小児と成人の天然痘薬として承認。日本では日本バイオテクノファーマが承認申請し、24年12月に痘そうやエムポックスなどの治療薬として承認された。

    リンク: プレス・リリース

    【承認】


    白血球接着不全症1型用薬が承認
    (2026年3月27日発表)

    Rocket Pharmaceuticals(Nasdaq:RCKT)は、FDAがKresladi(marnetegragene autotemcel)を小児の重度LAD-1(白血球接着不全症1型)用薬として加速承認したと発表した。HLA適合近親ドナーがいない、ITGB2遺伝子に両アレル変異を持つ患者が適応になる。LAD-1は常染色体性劣性遺伝性小児疾患で、白血球が血管に接着し組織移行するのを助けるベータ2インテグリンのCD18サブユニットをエンコードするITGB2遺伝子に変異があり、命に係わる感染症を繰り返す。米国の新生児の10~20万人に一人が罹患する希少疾患で、この2/3が重度とのこと。Kresladiは自家造血幹細胞にex vivoでレンチウイルス・ベクターを用いてITGB2遺伝子を導入する遺伝子療法。スペインのCIEMAT(エネルギー環境技術研究センター)などからライセンスした。

    9人の第1/2相試験で重度感染症や全入院が治療前より大きく減少した。23年10月に承認申請されたが、製造関連の理由で審査完了通知を受領するなどして承認まで2年半かかり、好中球のCD185やCD11aの発現増というサロゲート・マーカーに基づく加速承認に留まりった。市販後コミットメントは被験者の長期追跡と市販後レジストリー調査。

    取得した希少小児疾患優先バウチャは売却する考え。想定施術数は年数件とのこと。

    リンク: プレス・リリース


    アウィクリが米国でも承認
    (2026年3月26日発表)

    ノボ ノルディスクはFDAがAwiqli(insulin icodec-abae)を成人の二型糖尿病の治療薬として承認したと発表した。ヒト・インスリンのアミノ酸配列を一部置換・除去して週一回の投与で足りるようにした長期作用性製品で、欧州と日本では夫々24年5月と6月に一型糖尿病を含め承認されたが、米国は製造に関する問題と一型糖尿病におけるリスクがネックとなり、24年7月に審査完了通知を受領、25年に二型糖尿病限定で再申請していた。

    一日一回投与型インスリンと比較した第3相試験では低血糖症の発生率が上回り、特に一型糖尿病で顕著だった。このため、一型糖尿病が適応になる欧州でも便益が明白な場合だけに用いるよう釘を刺しており、日本でも一型には慎重投与、二型は一型ほどの発生頻度ではないものの同様な傾向にあることを考慮するよう、推奨している。

    リンク: プレス・リリース


    ハンター症候群のBBB通過性酵素補充療法が承認
    (2026年3月25日発表)

    FDAはDenali Therapeutics(Nasdaq:DNLI)のAvlayah(tividenofusp alfa-eknm)を体重5kg以上のハンター症候群の治療薬として加速承認した。神経性疾患が未だ進行していない段階で治療を開始する。FDAや同社のプレス・リリースによるとハンター症候群の神経症状治療薬が承認されたのは初。しかし、脳脊髄液ヘパラン硫酸というサロゲート・マーカーに基づく承認なので、進行中の第2/3相COMPASS試験でVineland Adaptive Behavior Scale改善作用を確認するまで神経症状治療薬とは呼べないのではないか?

    日本で21年に承認されたJCRファーマのイズカーゴ(pabinafusp alfa)と同様なアイディアで、ハンター症候群で欠如するライソゾーム酵素、iduronate-2-sulfataseをトランスフェリン受容体に結合するFc領域と融合することにより中枢神経通過性を持たせた。週一回、3mg/kg点滴静注で開始し15mg/kg(4時間点滴静注)を目標に漸増する。枠付き警告はアナフィラキシーを含むアレルギー反応。所定の頻度でヘモグロビン値や腎機能、尿蛋白を検査する。報道によると150mgバイアルのWAC(問屋取得価格)は5200ドル。同社は希少小児疾患優先審査バウチャを取得した。

    ハンター症候群用薬といえば、Regenxbio(Nasdaq:RGNX)がRGX-121(clemidsogene lanparvovec)を脳脊髄液ヘパラン硫酸のD2S6コンポ―ネント抑制作用に基づき承認申請したが、2月に審査完了通知を受領した。臨床試験の組入れ基準や自然歴対照試験の妥当性に加えて、D2S6のサロゲート・マーカーとしての妥当性などにFDAは疑問を呈していた。今回の判断と一貫性があるのか、部外者にはよく分からないが、RGX-121は遺伝子療法なので審査はCDER(小分子薬や抗体医薬を所管)ではなくCBER(生物学的製剤を所管)が担当したこと、そして4月に退任するCBERのヘッドはサロゲート・マーカーに基づく加速承認に慎重な傾向が見られることが関連している可能性もあるだろう。

    リンク: プレス・リリース


    グルココルチコイド受容体拮抗剤が卵巣癌に承認
    (2026年3月25日発表)

    FDAはCorcept Therapeutics(Nasdaq:CORT)のLifyorli(relacorilant)を成人の、bevacizumabを含む1~3次全身性治療歴を持つ、白金抵抗性上皮性卵巣癌、卵管癌、原発性腹膜癌向けに承認した。nab-paclitaxelと併用する。グルココルチコイド受容体拮抗剤で、nab-paclitaxelを投与する前日、当日、翌日に150mgを経口投与して、コルチゾールがpaclitaxelの作用を妨げないよう抑制する。第3相ROSELLA試験でメジアン生存期間が16.0ヶ月とnab-paxlitaxelだけの群の11.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.65、p=0.0004だった。

    命に係わる症状に対処するためにコルチコステロイド治療が必要な患者は禁忌。警告注意は好中球減少症、重度感染症、副腎不全など。添付文書には低血圧や血圧低下は言及されていない。

    審査期限より3ヶ月半早く承認された。報道によると28日サイクル分のWACは37900ドル。欧州でも昨年10月に承認申請された。

    このグルココルチコイド受容体拮抗剤は、今回の適応より先に、副腎皮質ホルモン過剰症による高血圧症の治療薬として承認申請されたが、用途が異なるせいか、第3相試験の高血圧サブグループのデータに基づいているせいか、便益が危険を上回るとは確立していないとして昨年12月に審査完了通知を受領していた。この第3相では100mg一日一回経口投与で開始し400mgに漸増しており、卵巣癌試験とは用量や投与頻度が異なる。

    リンク: プレス・リリース


    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/3推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/3推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/3バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加)
    26/4/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
    26/4/10ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    諮問委員会
    26/4/3腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)


    今週は以上です。

    2026年3月21日

    第1251回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • リリーのトリプルG、A1c低下作用は偽薬比1%余 
    • ターゼナのmCSPC試験が成功 
    • 遅報:ミクロシスティックリンパ管奇形の初の治療薬を承認申請へ 
    • ロシュは抗ミオスタチン抗体のSMAとFSHD向け開発を中止 
    • Imcivreeの対象患者拡大試験がフェール 
    • LAG-3経路阻害剤の第3相肺癌試験がフェール 
    • イルミアを乾癬性関節炎に適応拡大申請 
    • 26年1~2月の欧州承認申請受理状況 
    • Aldeyra、ドライアイ用薬で3度目の審査完了通知 
    • CHMP、tasimelteonのSMS適応拡大に再び否定的意見 
    • オプジーボが未治療ホジキンリンパ腫に適応拡大 
    • ウゴービHDが光速承認 
    • MC4Rアゴニストが後天性視床下部性肥満症に適応拡大 
    • GSK、胆汁鬱滞性掻痒症の治療薬が承認 
    • 経口IL-23受容体拮抗剤がプラク乾癬に承認 
    • パーキンソン病薬の警告にビタミンB6欠乏症を追加へ
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    リリーのトリプルG、A1c低下作用は偽薬比1%余
    (2026年3月19日発表)

    イーライリリーはGLP-1、GIP、そしてグルカゴンの受容体を作動するLY3437943(retatrutide)、通称トリプルGを肥満症や二型糖尿病の治療薬として開発している。昨年12月に膝関節痛を伴う肥満/オーバーウェイトの第3相が成功したのに続き、今回、二型糖尿病の第3相、TRANSCEND-T2D-1で主目的などを達成したことが発表された。食事・運動療法だけでは管理不良な成人患者537人を偽薬、4mg、9mg、または12mgを週一回皮下注する群に無作為化割付けして40週間治療したところ、HbA1cがベースライン(7.9%)と比べて各群0.8%、1.7%、1.9%、1.9%低下した(米国の添付文書に掲載されるであろうtreatment-regimen estimandベース)。副次的評価項目の体重(ベースライン値は96.9kg)は各群2.6%、11.5%、13.9%、15.3%低下(同)。試験薬群は非HDL-Cや収縮時血圧も改善した。

    偽薬調整値を見ると大したことないが、偽薬群のA1c低下がやけに大きく、少なくともこの試験の被験者に関しては、トリプルGというアグレッシブな治療に挑戦する前に生活習慣改善を努力する余地が大きかったということなのだろう。GLP-1作用剤やGLP-1/GIP作用剤のデータを見ても二型糖尿病の血糖管理において用量を増やす便益は顕著ではない。トリプルGも同様に、二型糖尿病における体重管理の便益のほうが訴求点になるのだろう。ということは、この試験の主評価項目と副次的評価項目は逆だ。

    リンク: プレス・リリース


    ターゼナのmCSPC試験が成功
    (2026年3月19日発表)

    ファイザーは、PARP2阻害剤Talzenna(talazoparib)が相同組換修復不全のある転移去勢感受性前立腺癌(mCSPC)の第3相試験で主目的を達成したと発表した。数値は未発表。適応拡大申請することになりそうだ。

    この日本も参加したTALAPRO-3試験は、アンドロゲン除去療法を開始してから3ヶ月以内で相同組換え修復に関わる遺伝子に変異を持つmCSPC患者599人を組入れて、偽薬またはTalzennaを同社のXtandi(enzalutamide)と共に追加投与する便益を検討した。主評価項目のPFS(無進行生存期間、治験医による放射線学的評価)は事前に設定された目標(ハザード・レシオ0.63)よりかなり良かった。相同組換え修復不全のうちBRCA変異サブグループにも、それ以外にも、便益が見られた。副次的評価項目の全生存期間も改善のトレンドが見られたとのこと。

    この二剤と競合する製品を持つジョンソン エンド ジョンソンも、PARP阻害剤niraparibとCYP17阻害剤abiraterone acetateの合剤であるAkeegaが類似した内容の第3相AMPLITUDE試験で主目的のPFSを達成したが、25~26年に承認されたのはBRCA2有害変異型だけだった。PARP阻害剤の臨床試験は『悪魔は細部に潜む』という警句が当て嵌まることがしばしばあるので、油断できない。

    リンク: プレス・リリース


    遅報:ミクロシスティックリンパ管奇形の初の治療薬を承認申請へ
    (2026年2月24日発表)

    米国のPalvella Therapeutics(Nasdaq:PVLA)はQTORIN rapamycin(rapamycin 3.9%無水ゲル)が第3相ミクロシスティックリンパ管奇形試験で主目的等を達成したと発表した。26年下期に米国で承認申請する考え。承認されればこの小さい膿疱を伴うリンパ管奇形の初の治療薬になる。

    今回のSELVA試験は米国の6歳以上の患者49人と参考例として3~5歳の患者1人を組入れた単群試験。一日一回、24週間投与して、mLM-IGA(Microcystic Lymphatic Malformation Investigator Global Assessment:-3(大変悪化)から+3(大変改善)まで7段階の評価)を実施したところ、2.13、p<0.001となった。主要副次的評価項目とされるmLM-MCSS(多要素静的尺度)は-3.36、他の副次的評価項目もp<0.001。3-5歳の患者はmLM-IGAが3だった。

    治療関連有害事象が17人で報告され、うち塗布箇所の挫創、変色、掻痒が各3人だった。有害事象による治験離脱は2人。mTOR阻害剤rapamycinは経口剤が免疫抑制剤として用いられているが、本剤の全身循環水準は全被験者、全期間において2ng/mL未満だった。

    この疾患はPI3K/mTOR経路の制御不良による遺伝性疾患。リンパ管の突出やリンパ液漏出、出血などを伴い、難治性深刻感染症や蜂巣炎による入院がしばしば起きる。米国の診断された患者数は3万人超と推定されている。

    リンク: プレス・リリース


    ロシュは抗ミオスタチン抗体のSMAとFSHD向け開発を中止
    (2026年3月19日発表)

    ロシュは、中外製薬から導入した潜在型ミオスタチンに結合するリサイクリングandスイーピング抗体、RG6237(別称GYM329、emugrobart)で顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と脊髄性筋萎縮症(SMA)の臨床試験を行ってきたが、中止を決定した。両疾患の支援団体が公表したもの。

    FSHDは欧米の施設で第2相MANOEUVRE試験に51人の患者を組入れて4週毎皮下注する便益を検討したが、52週経っても筋肉の量や機能がコンスタントには改善しなかった。データはFSHD Societyが6月に開催する国際学会で発表される予定。この協会の発表文によると、ミオスタチンの抑制には成功した由。SMAは日本も参加した第2/3相MANATEE試験で同社のSMA治療薬Evrysdi(Risdiplam)に追加する便益を検討してきたが、パート1(用量決定段階)で筋成長や運動機能がコンスタントに改善せず、パート2に進むのを断念した。

    イーライリリーのGLP-1/GIP作用剤Zepbound(tirzepatide)の除脂肪体重抑制作用を緩和する用途の第2相試験は続行する。数ヶ月内に結果が判明するだろうから、それまで待つ考えなのだろう。

    類薬ではScholar Rock(Nasdaq:SRRK)が抗潜在型ミオスタチン抗体SRK-015(apitegromab)を25年に欧米でSMA治療薬として承認申請した。米国はノボ ノルディスクの工場問題の道連れで9月に審査完了通知を受領したが、EUは今年、審査結果が出るだろう。

    リンク: FSHD Societyの発表文
    リンク: FSHD Societyが公開した、ロシュのFSHDコミュニティー向け書簡
    リンク: Cure SMAが公開した、ジェネンテックのSMAコミュニティー向け書簡


    Imcivreeの対象患者拡大試験がフェール
    (2026年3月16日発表)

    Rhythm Pharmaceuticals(Nasdaq:RYTM)はImcivree(setmelanotide)の第3相EMANATE試験がフェールしたと発表した。サブグループ分析を行って有望なサブタイプを探索し、バックアップ・コンパウンドを用いて再挑戦する考え。

    Imcivreeはメラノコルチン4受容体アゴニスト。20年に米国で、21年にはEUでも、POMC欠乏症、PCSK1欠乏症、またはLEPR欠乏症の成人と6歳以上の小児の体重管理薬として承認され、22年には米欧でバルデー・ビードル症候群に適応拡大した。何れも超希少疾患。今回の試験はPOMC/PCSK1ヘテロ変異型、LEPRヘテロ変異型、SRC1ホモ/ヘテロ変異型、SH2B1ホモ/ヘテロ変異型のサブグループ夫々における52週BMI変化を偽薬群と比較した。偽薬調整後で1~4%低下したがp値は0.12~0.94と悪かった。偽薬群を含め、被験者の20~60%が期中にドロップアウトしてしまったことが響いた。

    リンク: プレス・リリース


    LAG-3経路阻害剤の第3相肺癌試験がフェール
    (2026年3月13日発表)

    オーストラリアのImmutep(ASX:IMM)はIMP321(eftilagimod alpha)の第3相TACTI-004試験の独立データ監視委員会が中間解析に基づき無益中止を勧告したと発表した。終了手続きを開始する考え。

    LAG3の4種類の細胞外ドメインと免疫グロブリンG1のFc領域を融合した遺伝子組換え薬。抗原提示細胞のMHCクラスIIの一部に結合して、LAG-3による免疫抑制刺激を受けないよう仕向ける。今回の試験は、EGFRやALK、ROS1などの分子標的を持たない転移非小細胞性肺癌の1次治療として、pembrolizumabと白金ベース化学療法を併用する標準療法に追加する便益を検討した。主評価項目はPFSと全生存期間。

    IMP321は難治/転移頭頚部扁平上皮腫の一次治療としてpembrolizumabと併用した後期第2相でPD-L1陰性にも良好なORR(客観的反応率)を示すなど、複数の癌腫で有望な成果を上げてきた。LAG-3の遺伝子や機能を同定した研究者が創立し現在もCSOを務める会社だが、残念な結果になった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    イルミアを乾癬性関節炎に適応拡大申請
    (2026年3月16日発表)

    インドのSun Pharmaceuticalは米国でIlumya(tildrakizumab-asmn)を活性期乾癬性関節炎に適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限は26年10月29日。14年にMSDからライセンスした、IL-23p19に結合する抗体医薬。18~20年に米欧日でプラク乾癬に承認された。乾癬性関節炎ではTNFアルファ阻害剤歴を持つ患者を組入れた第3相と、持たない患者を組入れた日本も参加した試験でACR20が偽薬比有意に改善した。

    リンク: プレス・リリース


    26年1~2月の欧州承認申請受理状況

    今回から、EMA(欧州薬品庁)が月次公表している医薬品承認審査開始状況から新規案件を掲載する。開示されているのは一般名と申請された適応症、各種分類だけなので、申請者名と開発コード、米国審査状況などは当方が推定/補足した。今回は26年1~2月に受理された案件を示す。

    図表:EMAが審査を開始した新薬販売承認申請(26年1~2月分)
    審査開始申請者名称一般名種類適応症米国
    26/1アストラゼネカCIN-107baxdrostatアルドステロン合成酵素阻害剤管理不良高血圧症25/12申請受理
    26/1SOBIGamifantemapalumab抗インターフェロン・ガンマ抗体6ヶ月児以上の小児と成人の
    急性/難治性二次性血球貪食リンパ組織球症
    18/11承認
    26/1Regeneron PharmaceuticalsREGN2477garetosmab抗Activin A抗体成人の進行性骨化性線維異形成症25/12承認申請
    26/1モデルナmRNA-1010-mRNAワクチン成人の季節性インフルエンザ予防26/2申請受理
    26/1イーライリリーLY3502970orforglipron経口GLP-1作用剤成人の肥満症と二型糖尿病25/12承認申請
    26/1BeOne MedicinesBGB-11417sonrotoclaxbcl-2阻害剤成人の再発/難治マントル細胞腫25/1申請受理
    26/1Annexon BiosciencesANX005tanruprubart抗C1q抗体成人小児のギラン・バレー症候群の治療相談中
    26/2WockhardtWCK 5222cefepime / zidebactam複合セファロスポリングラム陰性菌感染症25/9承認申請
    26/2Sun Pharmaceutical推CTP-543deuruxolitinibJAK阻害剤成人の円形脱毛症の治療24/7承認
    26/2Asieris PharmaceuticalsCevirahexaminolevulinate光力学療法成人の子宮ハイ・グレード扁平上皮内病変の治療計画中
    26/2ノバルティスVAY736ianalumab抗BAFF受容体抗体成人のシェーグレン疾患承認申請予
    26/2Viridian TherapeuticsVRDN-001veligrotug抗IGF-1R抗体甲状腺眼症25/10承認申請
    出所:EMA資料等を基に作成

    【承認審査・委員会】


    Aldeyra、ドライアイ用薬で3度目の審査完了通知
    (2026年3月17日発表)

    Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)はADX 102(reproxalap 0.25%点眼液)をドライアイの兆候・症状治療薬として22年11月に承認申請したが、23年11月と25年4月に続き、3度目の審査完了通知(CRL)を受領した。薬効のエビデンスが不十分と見做されたようだ。

    RASP(反応性アルデヒド種)調節剤と呼ばれる新しいタイプの点眼薬。免疫原となる有機アルデヒド遊離体に結合し炎症推進作用を妨げる。23年の初申請時はエビデンスとして兆候(目の赤さなど)を改善する作用を確認した試験2本と症状改善作用を確認した試験1本を提出したが、FDAはガイドラインで各2本ずつを推奨していることなどからCRLを受領。チャンバー試験(眼に風を当てて人為的に症状を発生させる)を実施して再申請したがベースライン値の偏りなどを指摘するCRLを受領した。チャンバー試験とフィールド試験を実施し、FDAとの相談を踏まえて前者を追加して再申請したが、上位組織であるOCM(特殊薬オフィス)が後者も必要と判定、追加提出した経緯がある。

    今回、FDAは試験結果が区々であることから信頼性を懸念。敗因を検討し、効果のありそうなサブグループを探索することを推奨している由。同社はFDA会議を経て今後を決定する考え。

    リンク: プレス・リリース


    CHMP、tasimelteonのSMS適応拡大に再び否定的意見
    (2026年3月17日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、来週の定期会合を前に臨時会合を行って、Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq: VNDA)のHetlioz(tasimelteon)を3~15歳のスミス・マギニス症候群(SMS)における夜間睡眠障害に適応拡大する件を再検討し、昨年12月と同様に、否定的意見をまとめた。臨床試験のデザインや実施状況、解析が不適切とされた。

    Hetliozはブリストル マイヤーズ スクイブからライセンスしたMT1/2受容体作動剤。14~15年に米欧で非24時間障害(全盲患者の多くで発現する睡眠障害)の治療薬として承認された。SMSは染色体17p11.2における遺伝子欠失による発達障害で、重度睡眠障害を伴う。25人を組入れた臨床試験で総睡眠時間がベースライン比41分間改善し、偽薬群の20分改善を上回り、米国では20年に16歳以上の患者に用いる適応拡大が承認されたがEUでは未承認。今回の3~15歳に関する開発状況は、当方は聞いたことはないし年次報告書などにも記されていない。

    リンク: EMAプレス・リリース

    【承認】


    オプジーボが未治療ホジキンリンパ腫に適応拡大
    (2026年3月20日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブは抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)をある種の古典的ホジキンリンパ腫(cHL)に用いることが欧米で承認されたと発表した。内容は異なり、米国は12歳以上の未治療ステージIII/IVのcHLに、AVDレジメン(doxorubicin、vinblastine、dacarbazineの併用)と併用するもの。ファイザーの抗CD30抗体薬物複合体、Adcetris(brentuximab vedotin)とAVDレジメンの併用法と比較したSWOG 1826試験でPFS(無進行生存期間)のハザード・レシオが0.42だった。全生存期間は未成熟だが死亡率は下回っている。EUでも承認審査中。尚、米国では今回の承認に基づき、10年前と9年前の類似した適応・用法の仮承認が本承認に切替えられた(自家HSCT後にAdcetrisと併用と、自家HSCTを含む3次以上の全身性治療歴を持つ患者)。

    EUでは、1月のCHMPで肯定的意見を得た、5~30歳の一次治療歴のある再発/難治古典的ホジキンリンパ腫にAdcetrisと併用することが承認された。エビデンスとなった第2相CheckMate-744試験は、造血幹細胞移植や強化化学療法を施行するほどではない患者の代替的な治療プロトコルを検討したもので、この2剤で開始し、応答に応じて次のレジメンに移行した。

    リンク: BMSのプレス・リリース
    リンク: FDAのプレス・リリース


    ウゴービHDが光速承認
    (2026年3月20日発表)

    ノボ ノルディスクのGLP-1作用剤、Wegovy(semaglutide)の高量版であるWegovy HDが米国で成人の体重管理薬として承認された。従来の最大用量である2.4mgの3倍に当たる7.2mgまで用量漸増するもので、肥満症試験では72週間の体重減少が18.7%と偽薬群の3.9%や2.4mg群の15.6%を上回り、二型糖尿病を合併する患者を組入れた試験でも各群14.1%、3.6%、10.7%だった。後者の試験でHbA1c治療効果は2.4mgとそれほど変わらなかった。

    高用量はジセステジア(異常皮膚感覚)の発現率が2.4mgより高かった。FDAによると投与を継続した症例でも減量した症例でも多くは軽快したが、現在も検討を継続しているとのこと。

    欧州では2月にWegovyの用量追加という形で2.4mgを一度に3回皮下注することが承認された。米国では7.2mgペンとして4月に発売する計画。

    Wgovy HDの承認はCNPV(FDA長官の国家的優先バウチャ)が供与された新薬として3件目。承認申請受理から54日後に承認された。このプログラムには様々な批判があるが、FDAは6月に公聴会を開催する考えを明らかにした。まあ、現行のFDAは賛成しそうな人ばかり集めるようなこともやりかねないので、『世界中の患者に健康と平穏をもたらせるのはマーチンだけだ』みたいな無知なおべっかは言わないほうが良いだろう。


    図表:CNPV案件
    発表企業対象疾患など進捗
    25年10月Disc MedicineDISC-0974(bitopertin)赤芽球性プロトポルフィリン症CRL(26/2)
    EMD SeronoPergoveris(follitropin alfa、lutropin alfa)LH/FSH欠乏性不妊症ローリング申請開始(25/11)
    サノフィTzield(teplizumab-mzwv)一型糖尿病ステージ3申請受理(25/10)
    Achieve Life SciencescytisiniclineEシガレット依存症PDUFA26/6/20
    Regeneron PharmaceuticalsDB-OTOotoferlin関連難聴承認申請(25/12)
    Dompe farmaceuticicenegermin非動脈炎性前部虚血性視神経症の
    点鼻用新製剤
    不明
    Revolution MedicinesRMC-6236(daraxonrasib)膵癌第3相
    USAntibioticsAugmentin XR(amoxicillin、
    clavulanate potassium)
    重要な抗菌剤の国内生産承認(25/12)
    不明ketamine全身麻酔不詳
    25年11月ベーリンガー・インゲルハイムHernexeos(zongertinib)her2陽性肺癌承認(26/2、44日審査)
    ジョンソン エンド ジョンソンSirturo(bedaquiline)幼児の薬物耐性肺炎承認(26/3)
    GSKJemperli(dostarlimab)直腸癌不明
    Vertex PharmaceuticalsCasgevy(exagamglogene autotemcel)鎌状赤血球病不明
    イーライリリーorforglipron肥満症承認申請(25/12)
    ノボ ノルディスクWegovy 7.2mg(semaglutide)肥満症承認(26/3、54日審査)
    25年12月ジョンソン エンド ジョンソンTecvayli(teclistamab-cqyv)・Darzalex Faspro
    (daratumumab、hyaluronidase-fihj)併用
    多発骨髄腫承認(26/3、55日審査)
    MSDMK-0616(enlicitide decanoate)高脂血症不透明
    MSD推MK-2870(sacituzumab tirumotecan)不明不明
    出所:FDA発表などを基に作成

    リンク: プレス・リリース
    リンク: FDAのプレス・リリース(3/19付)


    MC4Rアゴニストが後天性視床下部性肥満症に適応拡大
    (2026年3月19日発表)

    Rhythm Pharmaceuticals(Nasdaq:RYTM)は、FDAがImcivree(setmelanotide)を4歳以上の後天性視床下部性肥満症の体重管理に用いる適応拡大を承認したと発表した。視床下部の空腹感や体重管理に関わる部位が腫瘍や傷害などにより適切に機能しなくなる疾患で、米国の推定患者数は1万人。第3相TRANSCEND試験でBMIが偽薬調整後で18.4%低下した。欧州などでも申請中。この試験は日本人12人を組入れるコフォートも設定されており、今四半期に結果が判明する見込み。

    Imcivreeはメラノコルチン4受容体のアゴニスト。一日一回皮下注する。20~21年に米欧でPOMC、PCSK1、またはLEPRの欠乏による遺伝子性肥満症(米国の推定患者数2500人)の治療薬として承認され、22年には米欧でバルデー・ビードル症候群(同5000人)に適応拡大した。

    リンク: プレス・リリース


    GSK、胆汁鬱滞性掻痒症の治療薬が承認
    (2026年3月19日発表)

    GSKはFDAがLynavoy(linerixibat)を成人の原発性胆汁性胆管症(PBC)における胆汁鬱滞性掻痒症の治療薬として承認したと発表した。欧米中日などの施設で標準療法を受けている中重度患者を偽薬群と40mgを1日2回経口投与する群に無作為化割付けした第3相GLISTEN試験で、第24週月間掻痒尺度が偽薬群を有意に改善した。主な有害事象は下痢(発生率61%、偽薬群は18%)。胃腸有害事象による離脱率は4%(偽薬群は1%未満)。

    PBC治療薬としては24~25年にギリアド・サイエンシズのLivdelzi(seladelpar)とイプセンのIgirvo(elafibranor)が米国で加速承認、EUでは条件付き承認されている。どちらもPPAR作動剤で、第3相の主目的はアルカリフォスフォターゼ抑制作用。但し、Livdelziは被験者の1/3を占めた掻痒スコア高値サブグループにおける掻痒改善も偽薬比有意だった。一方、Lynavoyは回腸胆汁酸輸送体(iBAT)阻害剤で、掻痒改善作用に基づき通常承認された点が異なる。

    GSKはイタリアのAlfasigmaに全世界独占開発製造販売権を供与することで合意している。AlfasigmaはIntercept Pharmaceuticalsを買収しPBC治療薬Ocaliva(obeticholic acid)を入手したが、市販後薬効確認試験がフェールし肝毒性が見られることからEMAは24年に条件付き承認を取消し、米国でも加速承認取消の危機に瀕し25年9月に自発的に販売を中止した経緯を持つ。

    リンク: プレス・リリース


    経口IL-23受容体拮抗剤がプラク乾癬に承認
    (2026年3月18日発表)

    ジョンソン エンド ジョンソンはFDAがIcotyde(icotrokinra)を全身性治療又は光学療法の候補となる成人と12歳以上で体重40kg以上の小児の中重度プラク乾癬の治療薬として承認したと発表した。200mg錠を一日一回、食事の30分以上前に水と共に服用する。欧州や日本でも承認申請中。

    IL-23を標的とする抗体医薬は同社のTremfya(guselkumab)など複数市販されているが、受容体を阻害する経口剤は初めて。アミノ酸13個のペプチド薬で利用率は低く、投与量の99%以上は胃腸で分解される。20年にJanssen BiotechがProtagonist Therapeutics(Nasdaq:PTGX)から開発商業化権を取得した。複数の薬効確認試験が成功しているが、副次的評価項目としてブリストル マイヤーズ スクイブのTYK阻害剤Sotyktu(deucravacitinib)と比較した2本の試験で16週奏効率(IGA 0/1かつ2段階以上改善)とPASI75が有意に上回った。

    リンク: プレス・リリース

    【医薬品の安全性】


    パーキンソン病薬の警告にビタミンB6欠乏症を追加へ
    (2026年3月20日発表)

    FDAは、パーキンソン病の代表的な治療薬であるcarbidopaやlevodopaを販売している製薬会社に、添付文書を改訂してビタミンB6欠乏症リスクの警告と対策を追加するよう求めた。投与開始前と開始後は定期的に検査を行う。発生頻度は低いが致死例も出ているようだ。

    levodopaは体内で活性代謝物のdopaminに変換され作用を発揮するが、その過程でビタミンB6が消費される。carbidopaはlevodopaの代謝を遅らせ中枢神経における作用を強化するが、それ自体がB6に結合する。このため、ビタミンB6欠乏症が生じて癲癇発作や鬱病、混乱などの症状が表れることがある。但し、FDAに報告された癲癇発作報告は13件、文献を合わせても14件のことで、氷山の一角に過ぎないとしても、発生頻度は低そうだ。この14件は全て1000mg/日以上のlevodopaを服用していた。治療開始から発症までの期間は23~132ヶ月となっており厄介。転帰は2名が死亡した。ビタミンB6補給例は9例とも回復したが、これらの患者は抗癲癇薬には応答しなかった。

    ノバルティスのStalevo(carbidopa、levodopa、entacaponeの3剤合剤)やアッヴィのVyalev(foslevodopa、foscarbidopa)持続皮下注システムでは報告されていないが、リスクがないとは考えられないとのこと。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/3推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/3推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/3バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加)
    26/4/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
    26/4/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
    26/4/10ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5推WockhardtのZaynich(zidebactamとcefepime、グラム耐性菌感染症)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    諮問委員会
    26/4/3腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)



    今週は以上です。

    2026年3月13日

    第1250回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • FDA、ノボに有害事象報告関連の警告状 
    • オルニチントランスカルバミラーゼ欠乏症試験の中間解析が成功 
    • 肢体型筋ジストロフィー用薬を承認申請へ 
    • ビンゼレックスがPsAでスキリージに勝つ 
    • Vertex社、IgA腎症用薬を承認申請へ 
    • BMS、第2のCELMoDの第3相が成功 
    • 新規作用機序の抗癲癇薬の第3相が成功 
    • ロシュ、giredestrantの今度の第3相はフェール 
    • Capricor、他家細胞療法をDMDにまた申請 
    • 第一三共、エンハーツの術後療法を米国でも申請 
    • 欧州でテクベイリを多発骨髄腫二次治療に承認申請 
    • ジニイズの肺癌適応、ノボの道連れで承認されず 
    • イデベノンは米国では今回も承認されず 
    • イプセン、タゼメトスタットの自主的販売中止を決定 
    • ロイコボリンを脳葉酸欠乏症に承認 
    • ソーティクツが乾癬性関節炎に適応拡大 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    FDA、ノボに有害事象報告関連の警告状
    (2026年3月10日発表)

    FDAはノボ ノルディスクに送付した警告状を公表した。25年1月と2月の査察で発見された市販後有害薬品経験(PADE)報告義務に関わるもので、その後数回の照会や回答を経て、3月5日付で発出した。ノボは15日以内に対策を開始し報告しなければならない。ノボは迅速かつ全面的に対応する旨のプレス・リリースを出した。

    ヒット商品が出ると法令順守関連の業務も多忙を極めるだろうし、ライフスタイルに関わる製品はマスメディアやSNSで好悪様々な、信頼性も玉石混交の情報や意見が乱れ飛び、医師や患者の考え方も様々なので、報告される症例の評価集計作業は大変だろう。患者側が報告を望まないケースもあるだろう。だが、それは競合他社も同じ。知識集約産業なのだから、情報処理能力も競争力の一つであることを社内に周知徹底すべきだろう。

    リンク: FDAの警告状
    リンク: ノボのプレス・リリース

    【新薬開発】


    オルニチントランスカルバミラーゼ欠乏症試験の中間解析が成功
    (2026年3月12日発表)

    Ultragenyx Pharmaceutical(Nasdaq:RARE)はDTX301(avalotcagene ontaparvovec)がオルニチン・トランスカルバミラーゼ(OTC)欠乏症の第3相試験の中間解析で主目的の一つを達成したと発表した。もう一つの主目的は最終解析時に行うので、27年には結果が判明するのではないか。プレス・リリースは承認申請のタイミングについては触れていない。

    OTC欠乏症は尿素サイクル異常症の一つ。アンモニアを分解する肝臓酵素の一つであるOTCが欠乏し、様々な障害が発生しうる。罹患率は数万人に一人と言われている。治療はタンパク抑制食や安息香酸ナトリウムなどのアンモニア・スカベンジャー薬など。DTX301はOTCの発現を促すAAV8遺伝子療法。今回の第3相Enh3ance試験は37人の患者を偽薬群と無作為化割付けして一回点滴静注した。今回達成したのは36週血漿アンモニア量。24時間曲線下面積が偽薬比18%低下、p=0.018だった。もう一つは64週完全応答率(タンパク制限食とアンモニア・スカベンジャー薬を中止)。偽薬群は36週後にクロスオーバーして更に64週追跡する。36週時点では試験薬群はタンパク摂取が13%増加しアンモニア・スカベンジャー薬は27%減らすことができた。

    様々な患者評価指標も改善が見られたようだ。有害事象は軽中度の肝反応が一番多く、ステロイド治療を受けた。深刻有害事象は急性肝炎が1例発生したがステロイド治療で解消した。

    リンク: プレス・リリース


    肢体型筋ジストロフィー用薬を承認申請へ
    (2026年3月11日発表)

    BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)は、MDA(筋ジストロフィー協会)の学会で、ある種の肢体型筋ジストロフィー(LGMD)の治療薬として開発しているBBP-418の第3相試験の12ヶ月中間解析結果を発表した。プレス発表は昨年の成功発表時のものとほぼ同じだが、忍容性の指標なども公表された。今年上期中に米国で承認申請し、年内承認を目指す。主評価項目である36ヶ月臨床評価(North Star Assessment for Limb Girdle Muscular Dystrophyに基づく)は未成熟だが、加速承認ではなく通常承認を狙っている。

    LGMDは下肢などの筋力が低下し歩行能力低下などの症状が現れる。遺伝子疾患だが原因遺伝子は様々。BBP-418は糖アルコールの一種であるリビトールの経口液用顆粒製剤。体内で患者で欠乏するアルファ・ジストログリカンに返還される。今回の第3相FORTIFY試験は、旧分類では2I型、新分類ではR9 FKRP関連型と呼ばれる、fukutin関連蛋白の遺伝子であるFKRPの機能低下変異が関わるサブタイプの一つに該当する、12歳以上の患者を米欧豪の施設で組入れて、体重に応じて9gまたは12gを1日2回投与した。このタイプは血清クレアチン・キナーゼが高値であることが多いが、12ヶ月の治療で38%が正常化した。100メートル歩行テストは偽薬比31秒早く完了、10メートル歩行テストはベースライン比0.13メートル/秒改善し偽薬群の0.10メートル/秒を上回った。プレス・リリースにはp値などは記されていない。

    安全性はG3以上の治療時発現有害事象発生率が5.4%(偽薬群5.3%)、深刻治療時発現有害事象は5.4%(7.9%)と両群大差なかったようだ。

    リンク: プレス・リリース


    ビンゼレックスがPsAでスキリージに勝つ
    (2026年3月11日発表)

    UCBはBimzelx(bimekizumab-bkzx)が乾癬性関節炎の実薬対照試験でアッヴィのSkyrizi(risankizumab)を有意に上回る奏効率を示したと発表した。データは学会発表する考え。

    21~23年に欧日米でプラク乾癬治療薬として承認された抗IL-17A・IL-17F二重特異性抗体。23~24年には欧日米で活性期乾癬性関節炎(PsA)に適応拡大した。今回の日本も参加したBE BOLD試験はバイオ薬未経験またはTNFアルファ阻害剤不十分応答/不耐の成人の活性期PsA患者553人を組入れた無作為化割付け二重盲検ダブル・ダミー試験。主評価項目の16週ACR50奏効率が有意に上回った。数値は未公表。

    各剤の偽薬対照試験の成績を見ると、バイオ薬未経験の患者を組入れた第3相の16週ACR50はBimzelxが43.9%(偽薬群は10.0%)、抗IL-23p19抗体Skyriziは26.4%(同11.1%)。BimzelxはTNFアルファ阻害剤歴を持つ患者の試験で43.4%(同6.8%)、Skyriziはバイオ・ナイーブとTNFアルファ阻害剤1剤だけ経験をほぼ半々で組入れた試験で20.3%(6.8%)となっている。異なった試験のデータを比較するのは禁じ手だが、UCBが直接比較試験に踏み切ったのが頷ける。

    リンク: プレス・リリース


    Vertex社、IgA腎症用薬を承認申請へ
    (2026年3月9日発表)

    Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)はpovetaciceptがIgA腎症の第3相試験で中間主評価項目を達成したと発表した。3月中に、優先審査バウチャも用いて、加速承認を申請する考え。

    IgA腎症は自己の免疫グロブリンA(IgA)に対する抗体が生じて複合体が腎臓の糸球体に蓄積する。治療はACE阻害剤/ARBやステロイド製剤などが承認されているが、B細胞の活性化等に関わるAPRILとTACIの相互作用を妨げる新薬が米国で続々と浮上している。25年11月には大塚ホールディングスの子会社のVisterraが抗APRIL抗体Voyxact(sibeprenlimab-szsi)の承認を取得。同月、Vera Therapeutics(Nasdaq:VERA)がTACI・IgG1融合蛋白ataciceptの加速承認を申請し、審査期限は26年7月7日と決まった。povetaciceptは、24年に49億ドルで買収したAlpine Immune Sciencesが開発した、APRILとBAFFを高力価阻害する融合蛋白。何れも自己皮下注用で、投与頻度はVoyxactとpovetaciceptが4週毎、ataciceptは毎週。

    今回の日本も参加したRAINIER試験は、成人のIgA腎症患者480人を組入れて80mgを4週毎皮下注する便益と安全性を検討した。IgA腎症の他の承認申請用試験と同様に、共同主評価項目である36週時点の24時間uPCR(尿蛋白クレアチニン比)の中間解析が成功したら加速承認を申請し、もう一つのeGFR(推算糸球体濾過率)スロープを達成したら本承認切替申請する計画だ。前者は偽薬比49.8%低下と、Voyxactと概ね同じような成績になった。アジア太平洋地域などのサブグループも、それ以外の地域のサブグループも、良好な結果が出ている。深刻有害事象発生率は3.0%と偽薬群の4.3%と大差なかった。

    リンク: プレス・リリース


    BMS、第2のCELMoDの第3相が成功
    (2026年3月9日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブはmezigdomideが第3相SUCCESSOR-2試験で主目的を達成したと発表した。もう一本進行中だが、データを学会発表すると共に当局に通知すると記しているので、承認申請に向かうのかもしれない。

    この日本も参加した試験は同社のRevlimid(lenalidomide)と抗CD38抗体による一次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発/難治多発骨髄腫525人を組入れて、標準療法の一つであるアムジェンのプロテアソーム阻害剤Kyprolis(carfilzomib)をdexamethasoneと併用するレジメンに追加する便益をオープン・レーベルで検討した。主評価項目はPFS(無進行生存期間)。数値は未発表。

    もう一本のSUCCESSOR-1試験は1~3次治療歴を持つ再発/難治多発骨髄腫を対象に、武田ミレニアムのプロテアソーム阻害剤Velcade(bortezomib)及びdexamethasoneと3剤併用する便益をmezigdomideではなく同社のPomalyst(pomalidomide)を併用する標準療法と比較する。主評価項目はPFS。始まったのはこっちが先で、ClinicalTrials.govでは主目的完了が前回アクセスした時の25年11月から27年1月に変更されている。

    mezigdomideは同社がCELMoD(セレブロンE3リガーゼ・モジュレーター)と呼ぶ小分子薬の第2号。第1号のiberdomideは、1~2次治療歴を持ち最終治療抵抗性の再発/難治多発骨髄腫にジェンマブ/JNJの抗CD38抗体Darzalex(daratumumab)及びdexamethasoneと併用する便益をiberdomideではなくVelcadeを併用する標準療法と比較した第3相EXCALIBER-RRMM試験の中間解析で共同主評価項目のMRD(微小残存病変陰性率)を達成、今年2月にFDAが新薬承認申請を優先審査で受理したところだ。

    上記2剤はどう棲み分けるのだろう?多発骨髄腫は過去30年間に新薬が輩出し、最初から3剤、4剤併用する30年前には信じられなかったような贅沢な治療が可能になった。選択肢が増えて複雑になった面もあり、BMSのように複数の開発品を持っている会社は何をどう使い分けるか、贅沢な悩みに直面し、市販後は、医師や患者も巻き込まれることになる。

    リンク: プレス・リリース


    新規作用機序の抗癲癇薬の第3相が成功
    (2026年3月9日発表)

    Xenon Pharmaceuticals(Nasdaq:XENE)はXEN1101(azetukalner)が第3相焦点起始発作治療試験で主目的を達成したと発表した。もう一本進行しており今年第3四半期に米国で承認申請する考え。

    Kv7カリウム・チャネル・オープナーという新規作用機序の抗癲癇薬。欧州と米州の施設で360人を第3相X-TOLE2試験に組入れ、偽薬、15mg、または25mgを一日一回、経口で食事と共に、12週間、追加投与する便益を検討したところ、月間焦点発作頻度がベースライン比で各群10.4%、34.5%、53.2%減少した。後期第2相試験でも偽薬、10mg、20mg、25mg群の焦点発作頻度が18.2%、33.2%、46.4%、52.8%低下しており、概ね似たような結果になっている。

    一方、治療時発現有害事象による投与中止が各群3.2%、4.8%、14.5%で発生し、深刻治療時発現有害事象も同2.4%、3.2%、5.6%となっており、25mgは効果が高いが忍容性もやや見劣りする。

    リンク: プレス・リリース


    ロシュ、giredestrantの今度の第3相はフェール
    (2026年3月9日発表)

    ロシュは選択的エストロゲン受容体零落剤RG6171(giredestrant)が第3相persevERA試験で主目的を達成せず、トレンドに留まったと発表した。内分泌療法に感受しているエストロゲン受容体陽性(ER+)、her2陰性(her2-)の局所進行/転移乳癌の一次治療としてCDK4/6阻害剤palbociclibと併用する便益をpalbociclibとファイザーのアロマターゼ阻害剤letrozpleを併用する群と比較したところ、主評価項目のPFS(無進行生存期間、治験医評価)が上回ったものの有意水準に達しなかった。

    giredestrantは第3相evERA試験で、術後アジュバントあるいは局所進行/転移後に内分泌療法療法とCKD4/6阻害剤治療を受けたことのあるER+her2-の局所進行/転移乳癌を対象に、mTOR阻害剤everolimusと併用する便益を標準療法(everolimusをexemestaneなど3剤の何れかと併用)と比較したところ、共同主評価項目である全集団のPFS(同上)とESR1変異型サブグループにおけるPFSが大きく上回り、米国でESR1変異型向けに承認申請された。更に、ER+her2-の中高リスク早期乳癌の術後アジュバント療法試験、第3相lidERA Breast Cancerも中間解析でIDFS(無侵襲性疾患生存期間)が内分泌療法群を上回り、米国などで承認申請される予定。ここまでは順調だったが、今回は取りこぼした。他にも複数のやや異なった患者層の第3相が進行中。尚、以上の試験には日本の施設も参加している。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    Capricor、他家細胞療法をDMDにまた申請
    (2026年3月10日発表)

    Capricor Therapeutics(Nasdaq:CAPR)は24年に米国でCAP-1002(deramiocel)を第2相試験に基づきデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬として承認申請し、25年7月にComplete Response Letter(審査完了通知)を受領したが、第3相の成功を踏まえてComplete Response(完全回答)した。これらのネーミングは元々、分かり難いが、同社は審査完了通知がキャンセルされたと言っているため、余計分かり難い。まあ、クラスII回答でPDUFA(処方薬ユーザー課金法に基づく審査完了目標日)は26年8月22日ということだけ記憶しておけばよいだろう。

    健常者の心筋などの心細胞塊を精製した細胞性医薬品。移植するとエクソソームを分泌し酸化ストレスや炎症、線維化を抑制、筋細胞の生成を促し運動機能や心機能の改善が期待される。日本新薬が米日欧の独占販売権を持っている。第2相HOPE-2試験で上腕機能の中度以上の低下を伴うDMD患者8人の上腕機能や心機能が偽薬群を上回った。しかし、FDAは保守的な統計解析手法に基づき有意な差はないと判定、諮問委員会が招集される予定だったが、官報の前刷りが公開された直後にキャンセルされた。一説によると、生物学的製剤の審査を担当するCBERの審査担当者らは承認に前向きだったが、センター長で、先日、退任が発表されたVinay Prasadが反対したのだという。

    米国で105人を組入れて12ヶ月追跡した第3相HOPE-3は、上腕機能総スコアの悪化が偽薬比54%小さかった(p=0.029)。左室駆出率(n=83)の低下も91%小さかった(p=0.041)。成功したはずの第2相がFDAの解釈ではフェール、という経緯があるので、この成績は議論の余地は無いのか、気になるところだ。p値は決して低くなく盤石と胸を晴れるほどでもない。

    リンク: プレス・リリース


    第一三共、エンハーツの術後療法を米国でも申請
    (2026年3月9日発表)

    第一三共は、アストラゼネカと共同開発販売している抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)の適応拡大を米国で申請し受理されたと発表した。術前療法を施行しても浸潤性残存病変が残ったher2陽性(IHC3+またはISH+)早期乳癌に術後薬物療法として単剤投与するもので、似たような薬であるロシュの Kadcyla(ado-trastuzumab emtansine)と比較した第3相DESTINY-Breast05試験でIDFS(無浸潤性疾患生存期間)が大きく上回った。優先審査を受け、審査期限は26年7月7日。

    リンク: プレス・リリース


    欧州でテクベイリを多発骨髄腫二次治療に承認申請
    (2026年3月10日発表)

    ジョンソン エンド ジョンソンはTecvayli(teclistamab)を再発/難治骨髄腫の2次治療に適応拡大すべくEUに申請した。第3相MajesTEC-9試験に基づくもの。lenalidomideと抗CD38抗体を含む1~3次治療歴のある患者に単剤する便益をPVdレジメン(pomalidomide、bortezomib、dexamethasoneの3剤併用;米国は未承認だが欧州では承認されている)またはKdレジメン(carfilzomibとdexamethasoneの2剤併用)を施行する群と比較したところ、中間解析でPFSのハザード・レシオが0.18、全生存期間は0.60となった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    ジニイズの肺癌適応、ノボの道連れで承認されず
    (2026年2月27日発表)

    インサイト(Nasdaq:INCY)は抗PD-1抗体Zynyz(retifanlimab-dlwr)を肛門管扁平上皮腫などの用途で米欧日で承認取得している。転移非小細胞性肺癌の1次治療白金レジメン併用も第3相POD1UM-304試験が成功し、米国で適応拡大申請していた模様だが、審査完了通知を受領した。プレス・リリースは出ていないが、2月にSEC(米国連邦証券取引委員会)に適宜開示資料として届出ていた。承認されなかったのはノボ ノルディスクのCatalent Indiana工場の製造問題だけが原因とのこと。製造受託の大手であるCatalentをノボが買収した時は他社から様々な懸念が表明されたが、買収後は今回のような思わぬトラブルが相次いでいる。

    リンク: インサイトのSEC提出資料(Form 8-K)


    イデベノンは米国では今回も承認されず
    (2026年2月27日付)

    Open FDAサイトで今年2月に送付された審査完了通知が数件、開示された。Chiesi FarmaceuticiがidebenoneをLHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)用薬として承認申請し審査完了通知を受領していたことが明らかになった。

    idebenoneは武田薬品が創製した合成コエンザイムQ10製剤。1986年に日本でアバン名で承認されたが市販後薬効確認試験がフェールし12年後に承認取消となった。ミトコンドリア機能改善作用に注目したスイスのSanthera Pharmaceuticalsが先天性ミトコンドリア疾患であるLHONに開発しEUで承認申請し、2015年に青少年向けに例外的条項に基づき承認を取得した。その後、Chiesiが欧米などの権利を取得した。

    FDAは、2本の薬効確認試験がフェールし自然歴対照試験は試験薬群の症例が2011~19年のデータであるのに対して自然歴は1959~2016年と期間が長く、標準療法や報告基準などが異なる可能性があり、また、ドロップアウトが多いことなどから、エビデンスが不十分と判定した。

    リンク: FDAのCRL


    イプセン、タゼメトスタットの自主的販売中止を決定
    (2026年3月9日発表)

    イプセンは、EZH2阻害剤Tazverik(tazemetostat)を根治手術不適転移/局所進行類上皮肉腫やある種の再発/難治濾胞性リンパ腫の治療薬として開発販売していたが、販売や臨床試験・早期アクセス・プログラムにおける投与を自主的に中止すると発表した。市販後薬効確認試験である後期第1相/第3相試験のSYMPHONY-1試験で再発/難治濾胞性リンパ腫の二次治療としてlenalidomide及びrituximabと3剤併用する便益を検討していたところ、血液系二次性悪性腫瘍が過去の試験より高頻度で発生し、独立データ監視委員会が危険が便益を上回ると判定したため。中国の販売権を持つHutchmedも自主回収と治験中止の手続き開始を発表した。

    承認用法は単剤投与なので、販売を中止するほどでもないように見えるが、加速承認を維持するためには別途、薬効確認試験を実施する必要がある。商業的な要素も考慮したのかもしれない。一部報道によると、21年に日本で承認取得したエーザイは、現時点で二次性悪性腫瘍が添付文書記載の範囲を超えて増加という報告はない、と回答している模様。

    リンク: イプセンのプレス・リリース
    リンク: Hutchmedのプレスリリース(GLOBE NEWSWIRE)

    【承認】


    ロイコボリンを脳葉酸欠乏症に承認
    (2026年3月10日発表)

    FDAはGSKのWellcovorin(leucovorin calcium)の適応拡大を承認した。葉酸受容体1の遺伝子であるCFD-FOLR1遺伝子に変異が確認されたCFD(脳葉酸欠乏症)の成人小児に、体重40kg以上の患者の場合で1~2mg/kg/日かつ最大330mg/日を1日1~6回に分けて経口投与する。一回投与量は25mg以下が望ましく、75mgを超えてはいけない。代謝酵素であるMTHFSを欠乏する患者には推奨しない。

    CFD用薬が承認されたのは初めてだが、それ以上に画期的なのは、GSKが既に販売を中心している製品に関して、FDAが各種症例報告に基づいて評価しGSKに適応拡大申請を求めたこと。医師はGSK品のレーベルに基づきGE薬を処方することになる。

    CFDは100万人当り1人以下の超希少疾患。発達遅延や運動障害、癲癇などを発現する。leucovorinは葉酸誘導体で、癌やリウマチの治療に用いられる葉酸代謝拮抗剤の副作用を緩和する。FDAによる症例報告の集計分析によると、生後2ヶ月から33歳の評価対象患者27人のうち24人で神経症状などが程度は区々だが改善し、残りの3人も、CFDは進行性疾患であるにも関わらず、進行が見られなかった。5-MTHF量は評価対象7人の全員で増加し、5人は正常水準(40nmol/L以上)に達した。

    FDAのMakary長官は自閉症にも有効と考えているようだが今回の適応拡大には含まれていない。その代わりに、下記プレス・リリースの中で、自閉症状を伴うCFD患者にもメリットがありうることに言及している。

    リンク: プレス・リリース
    リンク: Wellcovorinのレーベル


    ソーティクツが乾癬性関節炎に適応拡大
    (2026年3月6日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブはFDAがSotyktu(deucravacitinib)を成人の活性期乾癬性関節炎に適応拡大することを承認したと発表した。日欧などでも申請中。

    22~23年に米日欧で中重度プラク乾癬症治療薬として承認された選択的アロステリックTYK(チロシン・キナーゼ)2阻害剤。バイオ薬未経験やTNF阻害剤歴を持つ患者を組入れて6mgを一日一回経口投与した試験で、第16週ACR20などが偽薬群を有意に上回った。

    リンク: プレス・リリース

    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/3推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/3推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/3バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加)
    26/4/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
    26/4/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
    26/4/8BMSのOpdivo(nivolumab、未治療の進行性古典的ホジキンリンパ腫)
    26/4/10ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    諮問委員会
    26/4/3腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib)



    今週は以上です。

    2026年3月7日

    第1249回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • FDA、9ヶ月ぶりの新薬諮問委員会を招集へ 
    • モデルナ、LNP特許紛争で和解 
    • ガザイバがSLE試験で好成績 
    • 慢性肉芽腫症の遺伝子治療を承認申請すべく検討 
    • ロシュ、BTK阻害剤を多発硬化症に承認申請へ 
    • UTHR、新規プロスタグランディンのの第3相が成功 
    • 協和の抗OX40抗体は開発中止の公算 
    • ウェリレグの2種類の適応・併用法を承認申請 
    • テクベイリが二次治療に国家的優先承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    FDA、9ヶ月ぶりの新薬諮問委員会を招集へ
    (2026年3月6日発表)

    3月6日付の連邦広報が広聴のために事前公表され、FDAが4月3日に腫瘍学薬諮問委員会を招集する計画であることが明らかになった。新薬承認に関わる諮問委員会は昨年7月以来、ストップしていたので久方ぶりになる。再開する考えなのか、あるいは、センター長の退職が明らかになったCBER(生物学的製剤評価研究センター)が担当する画期的ワクチンなどの諮問委員会はどうなのか、注目される。

    4月3日の午前の議題はアストラゼネカの抗癌剤2剤。次世代経口SERM(選択的エストロゲン受容体調節剤)、AZD9833(camizestrant)は成人のホルモン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌で内分泌療法による一次治療中にESR1変異が探知された患者に、CDK4/6阻害剤と併用する適応・用法。承認申請しているとは知らなかったし2月の25年決算発表でも言及されていない。エビデンスは日本も参加した第3相SERENA-6試験だろう。中間解析でcamizestrantにスイッチした群のメジアンPFS(無進行生存期間、治験医評価)が16.0ヶ月と従来治療継続群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.44だった。昨年のASCO(米国臨床腫瘍学会)発表時点では副次的評価項目である全生存期間の解析は未成熟とのことだった。G3以上の有害事象発現率は60%対46%と上回った。

    この試験は、内分泌療法を受けている患者に定期的にctDNA検査を行って、内分泌療法抵抗性を生じるとされるESR1変異が検知されたら当該腫瘍に有効とされる新薬にスイッチするという、斬新な治療アルゴリズムをテストしている。患者を新たな副作用リスクに曝す面もあるので、このような治療方針自体の妥当性も議題になるかもしれない。

    午後は23~24年に米日欧である種の変異を持つ乳癌に承認されたAKT阻害剤、Truqap(capivasertib)の、成人のPTEN欠乏転移ホルモン感受性前立腺癌にabirateroneと併用する適応拡大を検討する。これも25年決算発表時も含め承認申請は発表されていない。第3相CAPItello-281試験に基づくものと推測される。24年に主目的のPFS(放射線学的評価)がTruqapの代わりに偽薬を併用した群比で統計的に有意且つ臨床的に意味のある優越性を示したことが発表された。その時点では副次的評価項目の全生存期間は未成熟でトレンドに留まっていた。

    リンク: 本件に関するFederal Register(広聴用事前公表)


    モデルナ、LNP特許紛争で和解
    (2026年3月3日発表)

    カナダのArbutus Biopharma(Nasdaq:ABUS)と便宜置籍企業Roivant Sciences(Nasdaq:ROIV)の子会社であるGenevant Sciencesの二社はモデルナを脂質ナノ粒子(LNP)特許侵害で提訴していたが、和解で合意したと発表した。モデルナは26年7月に2社に対して9.5億ドルを支払う。争点の一つである連邦法第28編第1498条違反はモデルナが控訴する予定だが、もし控訴審が連邦デラウェア地裁の決定を支持した場合は更に最大で13億ドルを支払う。但し、その後に最高裁などが決定を覆した場合は返還される。一方、モデルナはCOVID-19ワクチンやインフルエンザ・ワクチンなど感染症領域で2社の技術をロイヤルティなどの負担なしに利用することができる。

    発表後、モデルナの株価は上昇した。もし22.5億ドル払うことになった場合、特許紛争の和解額としては薬品業界で史上最大、全産業でも第2位になるとのことだが、モデルナは上記後発債務は実現しないと考えている模様だ。今回の和解を受けて、同社は26年末の現金・現金等価物が45~50億ドルという見通しを公表している。パイプラインが豊富で赤字が続いているため手元流動性を確保している。

    モデルナのSpikevaxの売上高は21~25年の5年間で476億ドルに達しており、必然的に、和解金の規模も巨大化した。トップブランドであるBioNTech/ファイザーのComirnatyは同期間の売上高がファイザー計上分だけでも955億ドルと2倍。2社との特許紛争はまだ決着していないが、もし和解することになったら更に大きな和解金になりそうだ。

    尚、第28編第1498条云々は、政府が民間から調達した品で権利侵害した場合は政府が責任を負うという規定を巡るもの。第一次世界大戦の武器調達で前例がある模様だが、連邦地裁は当該条項が当てはまるのは連邦職員が接種した分だけと判定した。この場合、モデルナが責めを負うべきは全売上高の1~2%と些少になる。

    Arbutus社らは日本など30ヶ国でも提訴している。

    リンク: Arbutus・Genevantのプレス・リリース
    リンク: モデルナのプレス・リリース

    【新薬開発】


    ガザイバがSLE試験で好成績
    (2026年3月6日発表)

    ロシュは25年11月に抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab)が活性期SLE(全身性エリテマトーデス)の第3相ALLEGORY試験で主目的と全ての副次的目的を達成したと発表したが、New England Journal of Medicine誌に治験論文が電子刊行され、データが明らかになった。標準療法を受けても活性期の成人患者303人を組入れて52週時点のSLI-4を偽薬群と比較したところ、76.7%対53.5%で有意に上回った。感染症など深刻な有害事象の発生率は15.9%対11.9%で上回った。適応拡大申請に向かっているのではないか。

    リンク: Furieらの治験論文抄録(NEJM)


    慢性肉芽腫症の遺伝子治療を承認申請すべく検討
    (2026年3月3日発表)

    米国マサチューセッツ州ケンブリッジのPrime Medicine(Nasdaq:PRME)は、PM359の加速承認申請に向けてFDAと相談していることを明らかにした。昨年5月に1例目の成功を発表した時点では自社だけで開発を続行することに否定的だったが、一転した。FDA上層部が超希少疾患用薬の早期承認に前向きな姿勢を見せていることに後押しされたのかもしれないが、その裏で、臨床的な便益の兆しが見られないとして承認されなかった案件が増えており、不透明感が強い。生物学的製剤を担当するCBERのセンター長が4月に退任するが、後任は未定なので、環境が好転するかどうか、これも不透明だ。

    同社はプライム・エディティングという次世代の遺伝子編集技術に基づく新薬開発を進めている。PM359は、米国の罹患率が10~20万人に一人とされる常染色体性劣性遺伝性免疫低下疾患、慢性肉芽腫症(CGD)の ex vivoプライム・エディティング療法。CGD患者の25%程度では、好中球のNADPH酸化酵素の活性化に必要なp47^蛋白をコードするNCF1遺伝子にGT欠損が見られる。プライム・エディティングならこの二つの塩基を二本鎖切断なしで導入できるようだ。

    First in humanのP1/2試験中。計画では米加英の施設で12人の患者を組入れる。昨年12月にNew England Journal of Medicineに2例の報告が掲載された。NADPH酸化酵素が持続的に再構築され、臨床的に意味のある閾値(好中球の20%で完全再建)を上回ったという。

    リンク: プレス・リリース


    ロシュ、BTK阻害剤を多発硬化症に承認申請へ
    (2026年3月2日発表)

    ロシュはRG7845(fenebrutinib)の第3相試験として再発性多発硬化症(RMS)で2本、一次進行性多発硬化症(PPMS)で1本、実施している。昨年11月に二本成功したのに続き、今回、RMSのFENhance 1試験も成功発表された。承認申請に向かう考え。肝毒性懸念がどのように評価されるか、注目される。

    中枢神経浸透性の高度選択的可逆的BTK阻害剤。RMSの第3相は一日二回経口投与群と既承認薬であるサノフィの経口剤、Aubagio(teriflunomide)の再発リスクを比較した。FENhance 2が成功した時は数値には言及されなかったが、今回、FENhance 1では再発率年率が51%低かったことが明らかにされた。二本の成績は学会で発表される予定。

    PPMSのFENtrepidは進行抑制作用を同社の抗CD20抗体Ocrevus(ocrelizumab)と比較した。ハザード・レシオ0.88で非劣性解析が成功した。

    同時期に開始されたRMS試験のうち一本の結果が遅れたのは、23年12月にFDAがFENhance 1試験の部分停止を命じたためだろう。fenebrutinib群約750人のうち1名が、FDAが薬物誘導性肝障害リスクを早期探知するために用いているHyの法則に該当した。もう一人はteriflunomide群であった模様であり、どちらも症状は伴わず投与中止後に解消したとのこと。他の2本では発生しなかった模様なので、発生頻度は約2000人に一人ということになる。頻度も転帰もレッドゾーンと呼べるほどではないので、穏やかな肝臓酵素上昇例を含めた全般的評価や便益との天秤比較が必要になりそうだ。尚、BTK阻害剤は他に少なくとも3品が可逆的薬物誘導性肝障害により部分停止命令を受けており、アキレス腱状態だ。

    意外だったのは、RMS試験二本における死亡例が試験薬群8人、対照群1人とかなり差があること。こちらも精査の対象になるはずだ。

    リンク: プレス・リリース


    UTHR、新規プロスタグランディンのの第3相が成功
    (2026年3月2日発表)

    United Therapeutics(Nasdaq:UTHR)はralinepagが第3相ADVANCE OUTCOMES試験で主目的を達成したと発表した。26年下期に承認申請する考え。肺動脈高血圧症(PAH)の標準療法アドオン試験で、試験薬を一日一回、経口投与した群は、偽薬比増悪ハザード・レシオが0.45、p<0.0001だった。主評価項目は死亡、PAHによる入院、臨床的悪化の複合評価項目で、査読を受けており、time to event分析。増悪発生率は偽薬群が35.9%、試験薬群は18.3%で、内訳で一番多かったのは疾病進行(28週6分歩行テストの15%以上悪化など)が10.7%対2.9%、次に長期的応答不十分(28週前に中止、6分歩行テスト悪化など)が9.8%対4.0%、吸入/点滴用プロスタグランディンによる治療が6.5%対2.9%だった。入院や死亡は大差なかった。

    Arena Pharmaceuticals(ファイザーが22年に買収)のプロスタグランディンI2アゴニスト、APD811を18年にインライセンスしたもの。上記のように複合評価項目の中身は区々だが、副次的評価項目の6分歩行テスト自体も偽薬を上回ったとのことだ。

    リンク: プレス・リリース


    協和の抗OX40抗体は開発中止の公算
    (2026年3月3日発表)

    協和キリンは活性化T細胞が発現し抗原提示細胞の活性化刺激を受領するOX40を標的とするポテリジェント抗体、KHK4083(rocatinlimab)の第3相アトピー性皮膚炎試験が成功し、26年上期に承認申請する考えだったが、1月にアムジェンが共同開発権返上を決定したのに続き、安全性懸念が浮上した。臨床試験の中止を決め、開発継続または試験再開の見込みは極めて低いと考えている由。

    自己免疫疾患の治療薬なので感染症や腫瘍のリスクに注意しなければならない。KHK4083は以前にも免疫低下者でしばしば発生するカポジ肉腫が1例、観察されていたようだが、今回、確認例と疑い例が1例ずつ、発生した。但し、これまでの臨床試験全体における腫瘍の発生率は自然発現率を下回っている由。

    アムジェンが離脱した具体的な理由は不明だが、第3相試験で示された便益が凄く魅力的なものではなかったことも一因だろう。今回の決断もこのことと無関係ではないだろう。

    サノフィは抗原提示細胞などが発現するOX40のレガンドを標的とする抗体、SAR445229(amlitelimab)をアトピー性皮膚炎に開発し、26年下期に承認申請する考え。こちらも第3相で示された薬効は既存薬が見劣りするようなものではなかった。安全性はプレス・リリースで網羅されるものではなく、第3相段階のパイプラインは、今回のように、稀だが深刻な症例が決定的な影響を及ぼすことが少なくないので、現段階では何とも言えない。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    ウェリレグの2種類の適応・併用法を承認申請
    (2026年2月28日発表)

    MSDはHIF-2アルファ阻害剤Welireg(belzutifan)など2剤を併用する便益を検討した第3相試験2本の成績をASCO GU(米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム)で発表する共に、米国で適応拡大申請が既に受理されたことを明らかにした。どちらも日本の施設も参加しているので厚労省にも申請されるのではないか。

    一本はLITESPARK-022試験。淡明細胞型腎細胞腫の切除後補助療法を受ける患者1841人を組入れて、承認薬であるKeytruda(pembrolizumab)にWeliregを追加する便益を偽薬追加と比較したもので、中間解析で主目的のDFS(無病生存期間)を達成した。ハザード・レシオ0.72(95%信頼区間0.59-0.87)、24ヶ月DFS率は各群80.7%と73.7%だった。副次的評価項目の全生存期間は到達率が未だ3割程度と未成熟だが、ハザード・レシオ0.78と好ましい点推定値が出ている。一方、G3以上の治療時発現有害事象発生率は各群52%と30%、併用群は貧血やATL上昇、低酸素症などが増加した。致死的なものの発生率は大差なく、1.1%と1.2%だった。FDAに優先審査指定され、審査期限は26年6月19日。昨年10月に試験が成功したことだけ発表した後、迅速に申請した勘定になる。

    もう一つはLITESPARK-011試験。抗PD-(L)1抗体による治療中/後に進行した進行淡明細胞型腎細胞腫741人を組入れて、同社が共同開発販売しているエーザイのVEGFR阻害剤、Lenvima(lenvatinib、20mg一日一回)と併用する便益をExelixis(Nasdaq:EXEL)のVEGFR阻害剤Cabometyx(cabozantinib)単剤と比較したもの。中間解析で共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を達成した。ハザード・レシオ0.70(95%信頼区間0.59-0.84)、メジアン値は各群14.8ヶ月と10.7ヶ月だった。一方、共同主評価項目の全生存期間は未だトレンドに留まっている。第2次中間解析でハザード・レシオ0.85(95%信頼区間0.68-1.05)、メジアン値は各群34.9ヶ月と27.6ヶ月だった。メジアン値の差は大きいが、2群のカプラン・マイヤー・カーブが分かれたのは16ヶ月辺りと遅く、おそらくそのせいでハザード・レシオの点推定値が案外なのだろう。

    深刻有害事象の発生率は各群51.6%と43.9%、致死的だったものは5.4%と3.2%で、試験薬群は血栓性微小血管症と肺臓炎の各1例が治療関連と見做された。対照群は喀血が1例あった。

    こちらは優先審査指定されなかった模様で、審査期限は26年10月4日となっている。

    リンク: プレス・リリース(LITESPARK-022試験)
    リンク: プレス・リリース(LITEPARK-011試験)

    【承認】


    テクベイリが二次治療に国家的優先承認
    (2026年3月5日発表)

    FDAはジョンソン エンド ジョンソン・グループのJanssen Biotechの抗BCMAxCD3二重特異性抗体Tecvayli(teclistamab-cqyv)を同社の皮下注用抗CD38抗体Darzalex Faspro(daratumumab hyaluronidase-fihj)と併用で、プロテアソム阻害剤及び免疫調停薬による治療歴を持つ再発/難治多発骨髄腫に用いる適応拡大を承認した。1~3次治療歴を持つ患者を組入れた第3相MajesTEC-3試験で、効果をDarzalex Faspro、dexamethasone、そしてpomalidomideまたはbortezomibを3剤併用する群と比較したところ、PFS(無進行生存期間)のハザード・レシオが0.17、副次的評価項目の全生存期間も中間解析で0.46と、有意な差があった。致死的な治療時発現有害事象発生率は各群7.1%と5.9%だった。

    本件は、FDAのリーダーがASH(米国血液学会)抄録を読んで会社側に連絡を取り、CNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)の交付について協議するという異例の経緯を持つ。現時点では申請時期は不明だが、欧州では今年1月、日本では2月の申請なので、米国も12月か1月だろう。1~2ヶ月という前宣伝通りかどうかは不明だが、只の優先審査案件よりはかなり早い。

    Tecvayliは米国で22年に再発/難治多発骨髄腫の5次治療に単剤投与することが加速承認されたが、今回、通常承認に切替えられた。

    リンク: プレス・リリース


    参考:CNPV案件の進捗
    発表企業対象疾患など進捗
    25年10月Disc MedicineDISC-0974(bitopertin)赤芽球性プロトポルフィリン症CRL(26/2)
    EMD SeronoPergoveris(follitropin alfa、lutropin alfa)LH/FSH欠乏性不妊症ローリング申請開始(25/11)
    サノフィTzield(teplizumab-mzwv)一型糖尿病ステージ3申請受理(25/10)
    Achieve Life SciencescytisiniclineEシガレット依存症PDUFA26/6/20
    Regeneron PharmaceuticalsDB-OTOotoferlin関連難聴承認申請(25/12)
    Dompe farmaceuticicenegermin非動脈炎性前部虚血性視神経症の
    点鼻用新製剤
    不明
    Revolution MedicinesRMC-6236(daraxonrasib)膵癌第3相
    USAntibioticsAugmentin XR(amoxicillin、clavulanate potassium)重要な抗菌剤の国内生産承認(25/12)
    不明ketamine全身麻酔不詳
    25年11月ベーリンガー・インゲルハイムHernexeos(zongertinib)her2陽性肺癌承認(26/2、44日審査)
    ジョンソン エンド ジョンソンSirturo(bedaquiline)幼児の薬物耐性肺炎承認(26/3)
    GSKJemperli(dostarlimab)直腸癌不明
    Vertex PharmaceuticalsCasgevy(exagamglogene autotemcel)鎌状赤血球病不明
    イーライリリーorforglipron肥満症承認申請(25/12)
    ノボ ノルディスクWegovy(semaglutide)肥満症承認申請(7.2mg皮下注、25/11)
    25年12月ジョンソン エンド ジョンソンTecvayli(teclistamab-cqyv)・Darzalex
    Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)併用
    多発骨髄腫承認(26/3)
    MSDMK-0616(enlicitide decanoate)高脂血症不透明
    MSD推MK-2870(sacituzumab tirumotecan)不明不明
    注:CNPV=Commissioner's National Priority Voucher(FDA長官の国家的優先バウチャ)。承認審査の大幅な短縮化(1~2ヶ月)を求めることができる。公衆衛生危機に対応、革新的な治療、充足されない医療ニーズに対処、または国内生産体制を増強する案件に供与される。同一企業の他の承認申請に用いることも可能。


    【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


    PDUFA
    26/3推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/3推Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO(otoferlin変異による小児難聴、CNPV案件)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/3バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加)
    26/4/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
    26/4/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
    26/4/8BMSのOpdivo(nivolumab、未治療の進行性古典的ホジキンリンパ腫)
    26/4/10ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)
    26/5推GSKのArexvy(高リスク18-49歳のRSV性下部気道疾患予防)
    26/5推ビーワン・メディシンズのBGB-11417(sonrotoclax、マントル細胞腫)
    26/5/10argenxのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab、抗体陰性全身性重症筋無力症)
    26/5/18第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、早期乳癌術前療法)
    26/5/24エーザイのLeqembi皮下注(lecanemab-irmb、早期AD、維持療法限定解除)
    諮問委員会
    26/4/3腫瘍学諮問委員会(アストラゼネカのcamizestrantとcapivasertib



    今週は以上です。

    2026年2月28日

    第1248回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • バイエル、JNJの優越性アピールに抗議の提訴 
    • 重症A型血友病の遺伝子療法が販売中止に 
    • パドセブとキートルーダの併用、白金適応のNIMCにも有効 
    • 経口GLP-1作用剤の直接比較試験もイーライリリーに軍配 
    • アルジェニクス、ヒフデュラの眼筋重症筋無力症試験が成功 
    • MSD、抗HIV新薬がナイーブ試験も成功 
    • BMS、中国でレブロジルをアルファ・サラセミアに承認申請へ 
    • ノボ、新規体重管理薬がライバル比較試験で見劣り 
    • Gossamer社、PAHの第3相がフェール 
    • ニーマン・ピック病C型用薬を承認申請 
    • 抗胎児性FcR抗体を温式自己免疫性溶血性貧血症に適応拡大申請 
    • ギリアド、BCMA型CAR-Tを承認申請 
    • CHMPがコロナ・インフルエンザ2価ワクチンなどの承認を支持 
    • 週一回皮下注用軟骨無形成症用薬が承認 
    • ソグルーヤが3希少疾患に適応拡大 
    • ヘルネクシオスが一次治療でも承認 
    • デュピクセントが真菌性副鼻腔炎に適応拡大 
    • ビラフトビが本承認 
    • アルギナーゼ1欠乏症の酵素補充療法が米国でも承認
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    バイエル、JNJの優越性アピールに抗議の提訴
    (2026年2月13日発表)

    バイエルは、ジョンソン エンド ジョンソンとJanssen Biotech(以下、JNJ)を米国連邦ニューヨーク南部地域裁判所に提訴した。JNJの抗癌剤の効果がバイエルの競合薬より大きく上回るという内容のプレス・リリースなどについて、安全性や効果に関する誤ったまたは誤解を招く商業的表示を禁じるLanham法違反と主張、裁判所に差止命令を求めた。

    発端は、JNJが実施して2月上旬の第36回IPCU(International Prostate Cancer Update)学会で発表した、同社のアンドロゲン伝達阻害剤Erleada(apalutamide)とバイエルのアンドロゲン受容体拮抗剤Nubeqa(darolutamide)の後顧的疫学研究。22年8月から25年6月までの期間にErleada(1460例)またはNubeqa(287例)による治療をdocetaxelを併用せずに開始した転移性去勢感受前立腺癌患者の転帰を24ヶ月追跡したところ、全死亡のハザード・レシオが0.49(95%信頼区間0.330-0.83)、p=0.007だった。JNJ側はFDAのリアル・ワールド・スタディに関するガイドラインに即して実施したと傍記している。

    一方、バイエル側は、優越性を主張する根拠としてFDAが求める、よくデザインされた直接比較試験ではなく、誤った後顧的分析に基づく不適切な研究と主張している。また、分析対象期間の殆どにおいてNubeqaはdocetaxel併用でしか承認されていなかったことや、そのため症例数に大きな偏りがあること、24ヶ月追跡と記しているが解析時点で24か月到達していた症例は半分以下と推定されることなどを指摘している。

    A社がB社の製品より良いというデータを発表し、B社はA社の製品より良いことを示す別のデータを発表するというのは生き馬の目を抜く製薬業界では日常茶飯事だが、大手が司法に訴える事例は、少なくとも当方はあまり知らないので、どのような結果になるのか、それとも和解で有耶無耶なまま決着するのか、気になるところだ。

    リンク: バイエルのプレス・リリース(26年2月13日付)
    リンク: JNJのプレス・リリース(26年2月2日付)


    重症A型血友病の遺伝子療法が販売中止に
    (2026年2月23日発表)

    バイオマリンファーマシューティカルはA型血友病用薬Roctavian(valoctocogene roxaparvovec-rvox)の販売を中止することを25年決算発表に合わせて公表した。22年にEUで条件付き承認され、23年には米国でも承認されたが、需要は小さく、売上高が23年は350万ドル、24年は2600万ドル、25年は3600万ドルと、推定で年数十人程度の施行実績に留まっている。同社は事業譲渡先も探したが見つからず、販売中止を決定した。

    AAV5ベクターを用いて血液凝固第8因子を肝臓特異的に発現させる遺伝子療法。A型血友病の6割を占めるとも言われる重度血友病で、インヒビターや抗AAV5抗体を持たない患者が適応になる。価格は米国の場合で1億ドル前後と高価だが、血友病治療は元々高額なので、需要低迷はそれだけが原因ではないだろう。近年、多くの遺伝子療法薬が実用化されたが、曲がりなりにも既存薬が存在する疾患では需要が盛り上がらない事例も散見される。

    リンク: 25年決算発表リリース

    【新薬開発】


    パドセブとキートルーダの併用、白金適応のNIMCにも有効
    (2026年2月27日発表)

    ファイザーとアステラス製薬は、共同開発販売している抗ネクチン4抗体薬物複合体、Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)をMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)と併用で筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の周術期療法に用いた第3相EV-304(KeyNote-B15)試験で主目的を達成したと発表した。ASCO GU(米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム)で学会発表する。

    この日本も参加した試験は、治癒的膀胱全摘術などを予定する、かつ、白金薬術前療法が適応になるMIBC患者を組入れて、gemcitabineとcisplatinによる術前療法と、上記2剤による術前術後療法の便益を比較した。主評価項目のEFS(無イベント生存期間)のハザード・レシオは0.53(95%信頼区間0.41-0.70)となり、2年EFS率は各群79.4%と66.2%だった。副次的評価項目も全生存期間のハザード・レシオが0.65(同0.48、0.89)、病理学的完全反応率は各群55.8%と32.5%と良好。G3以上の有害事象発生率は75.7%対67.2%だった。適応拡大申請に向かうだろう。

    他の抗PD-(L)1抗体ではブリストル マイヤーズ スクイブのOpdivo(nivolumab)が単剤で高リスクNIBCの術後療法として21年に欧米で承認されている。cisplatinによる術前療法併用も可とされたCheckMate-274試験でDFS(無病生存)のハザード・レシオが偽薬比0.70、p<0.001だった。アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)も25年にgemcitabine・cisplatinによる術前療法と併用でNIBCに用いることが米欧日で承認された。gemcitabine・cisplatinの術前療法に追加したNIAGARA試験でEFSのハザード・レシオが0.68、全生存期間も0.75だった。

    Padcev・Keytruda併用が承認されたら患者はこの中から選択することになる。

    尚、この二剤併用は白金薬が適応にならないNIBCでも切除術周術期試験が成功、昨年11月に米国で承認され、日本でも一変申請中。

    リンク: プレス・リリース


    経口GLP-1作用剤の直接比較試験もイーライリリーに軍配
    (2026年2月26日発表)

    イーライリリーは中外製薬からライセンスした経口GLP-1受容体作動薬、orforglipronを昨年12月にまず肥満症薬として米国で承認申請した。CNPV(FDA院長の国家優先バウチャ)を獲得したため、もしこの薬自体の申請に用いられたのならば、2~3月にも承認される可能性がある。二型糖尿病用途は今年、適応拡大申請する予定だが、この用途の競合薬であるノボ ノルディスクのRybelsus(semaglutide)との直接比較試験の結果がプレス・リリースやLancet誌で公表された。HbA1c低下が有意に優れる一方、有害事象は若干増加した。

    この、日本も参加した第3相ACHIEVE-3試験は、metforminだけではHbA1cを十分に管理できない患者1698人をorforglipronの12mg群、同36mg、Rybelsusの7mg群、または同14mgに無作為化割付けして52週間治療し、HbA1cのベースライン比増減を比較した。treatment regimen estimandベースで各群1.71%、1.91%、1.23%、1.47%低下し、高用量同士の比較も、低用量同士の比較も、非劣性解析が成功し優越性解析も成功した(p<0.005)。

    有害事象による治験離脱率は各群9%、10%、4%、5%。有害事象のうち、心拍数は各群平均で3.7、4.7、1.1、1.5bpm上昇した。

    尚、ノボ ノルディスクはRybelsusより生物学的利用率が高く少量で済むsemaglutide新製剤、Wegovy錠(体重管理用)とOzempic錠(血糖管理用)が過去4ヶ月に米国で承認されている。

    リンク: Rosenstockらの治験論文抄録(Lancet)


    アルジェニクス、ヒフデュラの眼筋重症筋無力症試験が成功
    (2026年2月26日発表)

    オランダのアルジェニクスは、Vyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa and hyaluronidase-qvfc)が眼筋重症筋無力症試験で主目的などを達成したと発表した。適応拡大申請する考え。

    この皮下注用抗FcRn抗体は重症筋無力症などの治療薬として米日欧などで承認されている。今回の第3相ADAPT OCULUS試験は、欧米アジアのクラス1(軽症)眼筋重症筋無力症患者141人を組入れて、週一回皮下注する便益を偽薬と比較した。主評価項目は第4週のMyasthenia Impairment Indexに基づく眼症状患者評価。試験薬群は4.04点改善、偽薬群は1.99点改善で群間差はp=0.012だった。二重視や眼瞼下垂も改善した。

    リンク: プレス・リリース


    MSD、抗HIV新薬がナイーブ試験も成功
    (2026年2月25日発表)

    MSDは、CROI(Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections )で、MK-8591A(doravirine、islatravir)の第3相未治療HIV試験の成績を発表した。既に昨年7月に日米でスイッチ用に承認申請済みだが、初めて治療を受けるナイーブ患者向けも申請する考え。

    既承認の非ヌクレオシド逆転写阻害剤と、日本で発見されたヌクレオシド系逆転写酵素トランスロケーション阻害剤、islatravirの固定用量合剤。今回の053試験は成人の未治療HIV-1感染者を組入れてdoravirine 100mgとislatravir 0.25mgの合剤を一日一回経口投与する便益を、ギリアド・サイエンシズのBictarvy(bictegravir 50mg + emtricitabine 200mg + tenofovir alafenamide 25mg)と比較した。48週応答率(HIV-1 RNA数が50コピー/mL未満)が各群91.8%と90.6%となり、非劣性認定された。高ウイルス量サブグループ(50万コピー/mL超)では90.3%対84.4%となり、2剤合剤ながら3剤合剤を数値上は上回った。薬物関連有害事象発生率は各群14%と18%、有害事象治験離脱率は1.1%と2.2%だった。

    現在申請している用途は、抗レトロウイルス療法によりウイルス量を抑制できている成人患者のスイッチ。臨床試験で治療フェール率が継続投与群と非劣性だったが、優越性解析はフェールしており、敢えてスイッチする必要はあるのか素朴な疑問を感じる。今回の用途のほうが重要なのではないか。

    MK-8591Aはislatravir 0.75mgを配合した製剤の第3相試験が成功したが、islatravir 20mgを非核酸系逆転写阻害剤MK-8507(ulonivirine)と併用で週一回投与した第2相試験で総リンパ球数やCD4陽性T細胞数の減少という治療目的と真逆な現象が散見されたことから、用量を3分の1に減らして改めて第3相試験を実施した経緯がある。その後、islatravir 60mgを月一回投与する曝露後予防試験は中止されたが、ulonivirine併用はislatravirを2mgに減らして週一回投与する第2/3相ナイーブ試験が昨年12月の開始されている。

    リンク: プレス・リリース


    BMS、中国でレブロジルをアルファ・サラセミアに承認申請へ
    (2026年2月23日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブはluspaterceptが承認申請用第2相アルファ・サラセミア試験で主目的を達成したと発表した。中国で承認申請する考え。

    activinタイプIIB受容体ベースの融合蛋白で、赤血球の成熟が妨げられないよう仕向ける。19~20年に米欧でReblozyl名でMDS(骨髄異形成症候群)に伴う貧血症やベータ・サラセミアの治療薬として承認され、日本でも24年にMDSに承認された。今回の試験は、中国周辺や地中海周辺などの国で成人のアルファ鎖グロビンに異常を持つサラセミアを罹患し貧血治療が必要な患者を組入れて、標準的治療に追加する便益を検討した。輸血依存コフォートでは主評価項目の輸血抑制奏効率が、非依存コフォートでは同じくヘモグロビン上昇奏効率が、偽薬比有意且つ臨床的に意味のある改善を達成した。

    他の地域における申請方針は記されていない。小児慢性特定疾病情報センターのHPによると、日本人における罹患率は3500人に一人とベータ・サラセミアの1000人に一人と大差ないが、治療の必要がない軽症が多いとのこと。

    リンク: プレス・リリース
    リンク: サラセミア概要(小児慢性特定疾病情報センター)


    ノボ、新規体重管理薬がライバル比較試験で見劣り
    (2026年2月23日発表)

    ノボ ノルディスクは25年12月に米国でGLP-1作用剤semaglutideと新開発のアミリン類縁体cagrilintideの合剤であるCagriSemaを体重管理薬として承認申請した。糖尿病を合併していない患者を組入れた偽薬対照試験、REDEFINE 1では、ライバルであるイーライリリーのGLP-1/GIP作用剤、Zepbound(tirzepatide)の試験成績と遜色のない体重減少作用を示したが、今回、直接比較試験で非劣性検定がフェールしたことが発表された。

    この第3相REDEFINE 4試験は米国の糖尿病ではない肥満症患者809人をCagriSema群(16週漸増を経て目標用量の2.4mg/2.4mgに)とtirzepatide群(20週漸増を経て目標用量の15mgに)に無作為化割付けして84週間治療した。体重のベースライン値は114.2kg。各群の体重減少率は、treatment-regimen estimandベースでは20.2%対23.6%、efficacy estimandベースでは23.0%対25.5%だった。

    各剤の偽薬対照試験の成績は以下の通りで、違いがあるようには見えなかった。今回の試験はオーバーウェイトは対象外で追跡期間も10週以上長い。そもそも、2~3%なら大きく違うわけでもない。それでも、不思議な結果だ。ノボは年内に高用量の第3相試験を開始する予定。

    図表:体重管理試験3本の結果
    試験名体重減少率(TRE)同(EE)
    REDEFINE 4CagriSema20.2%23.0%
    tirzepatide23.6%25.5%
    REDEFINE 1CagriSema20.4%22.7%
    偽薬3.0%2.3%
    SOURMOUNT 1tirzepatide20.9%22.5%
    偽薬3.1%2.4%
    注:TRE=treatment regimen estimandベース、EE=efficacy estimandベース。
    出所:両社のプレス・リリースより作成

    リンク: プレス・リリース


    Gossamer社、PAHの第3相がフェール
    (2026年2月23日発表)

    米国カリフォルニア州のGossamer Bio(Nasdaq:GOSS)は、GB002(seralutinib)の第3相肺動脈高血圧症(PAH)試験がフェールしたことを明らかにした。間質性肺疾患型肺高血圧症試験の新規組入れ中断も発表した。

    PDGFRやCSF1R、c-KITなどを阻害する、DPI吸入用製剤。今回のPROSERA試験はWHO機能クラスがIIまたはIIIで標準療法を受けている患者390人を組入れて、24週6分歩行テストの成績を偽薬と比較した。結果は28.2メートル対13.5メートル、治療効果13.3メートル、p=0.0320となり、閾値である0.025をクリアできなかった。中高リスク・サブグループや北米施設における成績はもっと良かったようだ。治療時発現有害事象の発生率は16.0%と偽薬群の18.9%と大差なかった由だが、症状兆候ごとの内訳は不明。肝機能検査値異常上昇(正常値上限の3倍以上に)が13%で見られた(偽薬群は1%)。

    Chiesiと開発販売提携しており、米国は共同、海外はChiesiが販売する計画だが、どうなるか。

    リンク: プレス・リリース

    【承認申請】


    ニーマン・ピック病C型用薬を承認申請
    (2026年2月23日発表)

    米国カリフォルニア州のBeren Therapeutics P.B.C.(パブリック・ベネフィット・コーポレーション)は、子会社のMandos LLCが米国でVTS-270(adrabetadex)を幼児発症型NPC(ニーマン・ピック病C型)用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年8月17日。

    2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのアイソマーの混合物。Mallinchrodtが17年にVtesseを買収して入手したが、オピオイド訴訟に破れ経営破綻、21年にMandosがVtesseからインライセンスした。未上場企業であるため情報が極めて限られているが、NPCにおけるエビデンスは外部対照試験で全生存のハザード・レシオが0.289(95%信頼区間0.141-0.593)と大変良い数値であったこと。主な有害事象は難聴、疲労、運動失調。

    ClinicalTrials.govに掲載されている後期第2/3相試験(NCT02534844)のデータを見ると、欧米太平洋地域の施設で56人をシャム群と2対1割付けして、2週毎に52週間、髄腔内投与する便益を検討したが、共同主評価項目のうち、NPC-SS(Niemann Pick Type C Severity Scale)は両群とも大きくは変化せず、CGIC(Clinician Global Impression Change)は判然としない結果になっている。希少疾患の開発でしばしば見られる、無作為化割付け試験がフェールしたため比較的費用の掛からない外部対照試験を実施して代用するパターンだとしたら、承認されるかどうか、不透明だ。NPC薬は既に存在するので尚更だ。

    リンク: 同社プレス・リリース
    リンク: NCT02534844試験の概要(ClinicalTrials.gov)


    抗胎児性FcR抗体を温式自己免疫性溶血性貧血症に適応拡大申請
    (2026年2月24日発表)

    ジョンソン エンド ジョンソンは米国でnipocalimabをwAIHA(温式自己免疫性溶血性貧血症)治療薬として承認申請し受理されたと発表した。PDUFA(処方薬ユーザー課金法)に基づく審査終了目標日は記されていない。

    wAIHAは免疫グロブリンG(IgG)が赤血球を破壊してしまう、米国では8000人に一人の自己免疫性疾患。承認されている治療薬はない。本薬はIgGのリサイクリングに関わるFcRNをブロックする抗体医薬。25年に米日欧で全身型筋無力症治療薬Imaavyとして承認された。wAIHAでは第2/3相Energy試験でヘモグロビン値の改善が偽薬群を上回った。

    リンク: プレス・リリース


    ギリアド、BCMA型CAR-Tを承認申請
    (2026年2月23日発表)

    ギリアド・サイエンシズは、Arcellx(Nasdaq:ACLX)と完全子会社化で合意したことを発表すると共に、共同開発しているArcellxのCART-ddBCMA(anitocabtagene autoleucel)を米国で難治/再発多発骨髄腫の4次治療薬として承認申請し受理されたことを明らかにした。審査期限は26年12月23日。

    BCMAを標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)で、BCMA結合部位が抗体の短鎖可変領域ではなく、ArcellxがDドメインと呼ぶ8kDaの合成タンパクであることが特徴。結合が持続的でないため免疫毒性を抑制できることが期待されている。12月のASH(米国血液学会)における発表によると、承認申請用第2相試験のiMMAGINE-1で、ORR(全般的反応率、独立委員会評価)が96%だった。

    リンク: プレス・リリース

    【承認審査・委員会】


    CHMPがコロナ・インフルエンザ2価ワクチンなどの承認を支持
    (2026年2月27日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

    リンク: EMAのプレス・リリース

    モデルナのmCOMBRIAXは新開発の3価季節性インフルエンザmRNAワクチンと米日欧で25~26年に承認された軽量COVID-19 mRNAワクチン、mNEXSPIKEを一度に接種できるようにしたもの。GSKのFluarixまたはサノフィのFluzone高量版をモデルナのCOVID-19ワクチンSpikevaxと同時接種する手法と免疫原性を比較した試験で非劣性だった。50歳以上向け。インフルエンザ・ワクチンのほうが米国で承認申請が突き返されたばかりなので、少しは溜飲が下がったか。

    リンク: EMAのプレス・リリース

    Ipsen PharmaのOjemda(tovorafenib)は中枢神経浸透性RAF阻害剤。6ヶ月児以上のBRAF融合/再編成/V600変異などがあるpLGG(小児低グレード・グリオーマ)で1次以上の全身性治療歴を持つ患者に条件付き承認することが支持された。週一回、経口投与した第2相試験でORR(客観的反応率)が77人中52.6%、平均で18ヶ月、反応が持続した。

    2011年に権利を取得した武田ミレニアムやそのライセンス元から19年にDay One Pharmaceuticals(Nasdaq:DAWN)がライセンスして開発、24年に米国で加速承認を取得した。イプセンは同年にDay Oneから米国外の権利を取得した。

    リンク: EMAプレス・リリース

    田辺ファーマのOnerji(levodopa、carbidopa)は抗パーキンソン薬で症状を十分に管理できなくなった進行性パーキンソン病用薬。専用機器を用いてlevodopaとcarbidopaを連続皮下点滴投与する。この2剤の液剤化に世界で初めて成功したイスラエルのNeuroDermを17年に買収して取得したもの。米国では23年に承認申請されたが、製造施設や非臨床の追加情報を求められ、24年6月と25年10月に審査完了通知を受領した。

    リンク: EMAプレス・リリース

    米国のCrinetics Pharmaceuticals(Nasdaq:CRNX)のPalsonify(paltusotine)は経口非ペプチド系ソマトスタチン受容体2型アゴニスト。成人の先端巨大の治療に一日一回経口投与する。日本は三和化学が22年にライセンスした。

    リンク: EMAプレス・リリース

    ノバルティスのRhapsido(remibrutinib)は選択的btk阻害剤。成人のH1抗ヒスタミンに十分応答しない慢性特発性蕁麻疹に経口投与する。2本の第3相で疾病活動尺度が有意に改善した。米国は優先審査バウチャを用いて昨年9月に承認取得、日本でも承認申請中。

    リンク: EMAプレス・リリース

    X4 Pharmaceuticals(Nasdaq:XFOR)のXolremdi(mavorixafor)はCXCR4受容体アンタゴニスト。この受容体の機能獲得変異により引き起こされる常染色体優性遺伝性超希少疾患、WHIM症候群を罹患する12歳以上の患者向けに例外的環境下承認することが支持された。因みにWはヒトパピローマウイルスによる疣贅、Hは低ガンマグロブリン血症、Iは再発性細菌感染症、Mは骨髄性細胞貯留症候群を表す。臨床試験では疣贅や腫瘍を抑制する効果は確認されなかったとのこと。オリジンはCXCR4受容体アンタゴニストのスペシャリストだったAnorMedのようだ。

    リンク: EMAプレス・リリース

    EUは、WHOに協力して、十分な承認審査体制を持たない国に代わって承認審査するEU-M4allという制度を持っている。今回、EU域外限定でCHMPの肯定的意見を得たのはSanofi Winthrop IndustrieのAcoziborole Winthrop(acoziborole)。12歳体重40kg以上の小児と成人のTrypanosoma brucei gambienseによるヒト・アフリカ・トリパノソーマの治療に、320mg錠を一回投与する。発熱などの症状が表れ始める第1ステージ、不眠や行動異常などの神経症状が発現する第2ステージ、そしてその中間期の患者が適応になる。臨床試験では第1ステージの患者41人における奏効率が100%、第2ステージ167人では95%だった。

    罹患数はアフリカ大陸で年1000例足らずと減少したが致死率は依然として高い。既存薬は腰椎穿刺や入院など患者や医療施設の負担が大きく、一回一錠で済めばコンプライアンスも向上しそうだ。

    リンク: EMAプレス・リリース

    適応拡大では以下が支持された。

    • Dr. Falk Pharma GmbHのJorveza (budesonide):2~11歳の好酸球性食道炎。初の小児向け経口懸濁液製剤。当方は初めて聞く会社/製剤。
    • MSDのKeytruda(pembrolizumab):成人のPD-L1陽性(CPS≧1)白金抵抗性再発卵巣癌の2/3次治療。
    • ノバルティスのScemblix(asciminib):成人の慢性期フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(CML-CP)で、T315変異を持ち、欧州ではインサイトが開発販売している競合薬、Iclusig(ponatinib)に抵抗/不耐/不適な患者。この適応の臨床試験は始まったばかりのように思われるが、どのようなエビデンスなのだろうか?

    一方、否定的意見となったのは、まず、ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)のIGF-1類縁体、Daybu(trofinetide)。2歳以上のRett症候群用薬として開発され、米国では23年にDaybue名で承認されたが、CHMPは、治療効果が小さく、エビデンスとなるべき臨床試験に参加した患者の類型が網羅的でないことを指摘した。

    リンク: EMAプレス・リリース

    Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq: VNDA)のIloperidone Vanda Pharmaceuticalsは、9年前と同じような評価を受けた。統合失調症と双極障害I型における躁症状/混合症状の急性期治療薬として米国では17年前に承認されたが、CHMPは、QT延長リスクを許容できるほど効果が高いわけではないこと、効果のない少量から漸増していくため急性期治療には適さないこと、双極障害の対照試験が4週間しか実施されていないことなどを難点とした。

    リンク: EMAプレス・リリース

    申請撤回となったのは、ファイザーの抗PD-1抗体、Zumrad(sasanlimab)。成人のBCG未施行の高リスク筋層非浸潤膀胱癌にBCGと併用で承認申請されたが、CHMPは治験中に統計解析方法が変更されたことや、盲検試験ではないのに治験医が薬効を評価していること、便益の大きさ、全生存期間など副次的評価項目の結果が整合的でないことなどを指摘している。欧米中日などで実施された第3相CREST試験に基づく申請と推測されるが、25年のAUA(米国泌尿器学会)でEFS(無イベント生存期間)がBCGだけの群より有意に伸びた(ハザード・レシオ0.68、両側p=0.019)と発表されており、意外な展開になった。

    リンク: EMAプレス・リリース

    【承認】


    週一回皮下注用軟骨無形成症用薬が承認
    (2026年2月27日発表)

    アセンディス・ファーマはYuviwel(navepegritide、旧称TransCon CNP)がFDAに加速承認されたと発表した。2歳以上の骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症の小児に週一回、皮下注する。ApproaCH試験で成長ベロシティ年率が5.89cm/年と偽薬群の4.41cm/年を有意に上回った。低血圧は見られなかった由だがレーベルでは警告注意事項に上がっている。4月頃に発売の予定。希少小児疾患優先審査バウチャを取得した。

    C型ナトリウム利尿ペプチドのプロドラッグ。20kDaのmethoxy polyethylene glycolを結合し半減期を延長、バイオマリンのVoxzogo(vosoritide)の一日一回皮下注より少ない投与頻度を実現した。但し、Voxzogoは適応年齢に下限がなく、レーベルには体重3kgの場合の用量も記載されている。

    リンク: プレス・リリース


    ソグルーヤが3希少疾患に適応拡大
    (2026年2月27日発表)

    ノボ ノルディスクは、週一回皮下注用遺伝子組換え型成長ホルモン製剤、Sogroya(somapacitan)の適応拡大がFDAに承認された。ISS(特発性低身長症)、2歳までにキャッチアップしなかったSGA(低出生体重児)、またはヌーナン症候群に伴う成長不全の、2.5歳以上の小児に用いる。一日一回皮下注用製剤と比較した臨床試験で成長ベロシティが非劣性だった。日本でもSGAとヌーナン症候群に適応拡大申請中。

    第3相REAL8バスケット試験に基づくもの。ターナー症候群のコフォートも成功した模様で、承認申請中とのこと。

    リンク: プレス・リリース


    ヘルネクシオスが一次治療でも承認
    (2026年2月26日発表)

    FDAはベーリンガーインゲルハイムのHernexeos(zongertinib)の適応拡大を加速承認した。初承認は25年8月、11月にCNPV(FDA長官の国家的優先バウチャ)を取得、今年1月13日に適応拡大申請が完了、44日後に承認と、1年足らずで大きく進捗した。

    her2チロシン・キナーゼ阻害剤だが、her2陽性の乳癌や胃癌ではなく、her2チロシン・キナーゼ・ドメインに活性化変異のある切除不能/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌に用いる。初承認も加速承認で、エビデンスは後期第1相Beamion LUNG-1試験の化学療法歴コフォート。ORR(客観的反応率)は71人中75%、その58%が6ヶ月以上持続した。今回のエビデンスは同試験の一次治療コフォート。ORRは72人中76%、その64%が6ヶ月以上持続した。

    市販後薬効確認試験は一次治療が対象の第3相BEAMION LUNG-2試験。ClinicalTrials.govによると今年11月にも結果判明の見込み。

    競合薬はバイエルの類薬、Hyrnuo(sevabertinib)。米国で昨年11月に同じ適応症で加速承認され、一次治療の市販後薬効確認試験が進行中。初承認は3ヶ月遅れただけだったが一次治療で差が広がった。

    CNPV案件のうち、新薬に関わる承認は初めて。報道によるとローリング承認申請だったので、臨床成績以外の情報を2ヶ月以上前に提出という、審査期間大幅短縮の前提条件を満たしていたのだろう(ベーリンガーがCNPVをこの承認申請に用いたとは限らないが・・・何か確認する方法はあるのだろうか?それとも、徹頭徹尾、藪の中なのだろうか?)。

    リンク: 承認に関するFDAプレス・リリース
    リンク: CNPV案件承認に関するFDAプレス・リリース


    デュピクセントが真菌性副鼻腔炎に適応拡大
    (2026年2月24日発表)

    FDAはRegeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)のDupixent(dupilumab)を6歳以上の小児成人におけるAFRS(アレルギー性真菌性副鼻腔炎)に適応拡大することを承認した。手術歴を持つ、あるいは手術不適な患者が適応になる。第3相LIBERTY-AFRS-AIMS試験で体重に応じて200mgまたは300mgを2週毎または4週毎に52週間投与したところ、CTスキャンによる副鼻腔透明度評価(Lund-Mackayスコア)が50%改善し、偽薬群の10%改善を有意に上回った。患者評価やポリープ・サイズも改善した。

    IL-4Rアルファ・サブユニットに結合する抗体医薬。アトピー性皮膚炎など多くの免疫性疾患に承認されている。

    リンク: プレス・リリース


    ビラフトビが本承認
    (2026年2月24日発表)

    FDAはファイザーのBRAF阻害剤Braftovi(encorafenib)のBRAF-V600E変異型転移性結腸直腸癌における加速承認を本承認に切替えた。一次治療を受ける患者にmFOLFOX6レジメン及びcetuximabと併用する便益を検討したBREAKWATER試験のORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)と反応持続期間に基づき24年に加速承認したが、同試験のその後の解析でPFSや全生存期間も改善したため、切り替えた。

    同時に、FOLFIRIレジメン及びcetuximabと併用した同試験のコフォート3におけるORRと反応持続期間もレーベル収載された。このデータは1月のASCO GI学会で発表されたばかり。Braftovi追加群はORRが64%と追加しなかった群の39%を大きく上回った。尚、ファイザーは2月にPFSも統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を果たしたと発表しているが、今回のレーベルには記されていない。

    リンク: プレス・リリース


    アルギナーゼ1欠乏症の酵素補充療法が米国でも承認
    (2026年2月23日発表)

    スウェーデンのImmedica Pharma ABは、FDAがLoargys(pegzilarginase-nbln)を2歳以上のアルギナーゼ1欠乏症における高アルギニン血症の治療薬として承認したと発表した。蛋白抑制食と併用する。

    この疾患は米国の推定患者数が250人という超希少な常染色体劣性遺伝性疾患疾患。L-アルギニンを分解する、尿素サイクルの最終段階の酵素が欠乏し、アンモニアの分解・排出が進まない。治療はフェニル酪酸ナトリウムが利用されているようだが正式に承認された薬は初めて。臨床試験で被験者の9割で血漿アルギニン量が正常化した(偽薬群はゼロ)。

    22年にAeglea BioTherapeuticsが米国で、ImmedicaがEUで承認申請し、23年12月にEUで条件付き承認されたが、米国は申請が受理されなかった。上記試験で運動機能などの副次的評価項目の有意な改善が見られなかったため。その後の経緯は見落としていたが、Immedicaが23年に欧州中東以外の権利も取得し米国で24年に再申請し、25年8月に審査完了通知を受領していた。その翌月、同社は修正申請し今回の承認に繋がった。OpenFDAサイトで審査完了通知を読んでみたところ、FDAは市販後に臨床的便益を確認することを前提に加速承認を申請する選択肢を提示しており、これが今回の承認に繋がったものと推測される。会社側プレスリリースには記されていないが、加速承認で、35年までに市販後薬効確認試験の結果をFDAに報告する必要がある。同社は希少小児疾患優先審査バウチャを取得した。

    リンク: プレス・リリース
    リンク: OpenFDAサイト
    リンク: FDA承認通知

    【当面の主なFDA審査期限】


    PDUFA
    26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
    26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
    26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
    26/3推Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
    26/3推Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌)
    26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
    26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
    26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
    26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
    26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    26/3/29LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤)
    26/4推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
    26/4/3バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加)
    26/4/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
    26/4/6Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植)
    26/4/8BMSのOpdivo(nivolumab、未治療の進行性古典的ホジキンリンパ腫)
    26/4/10ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫)
    26/4/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
    26/4/23サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤)
    26/4/23Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血)
    26/4/28MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症)
    26/4/29サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病)
    26/4/30Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂)


    今週は以上です。