2024年3月30日

第1148回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • BMS、KRAS G12C標的薬の市販後薬効確認試験が成功 
  • 網膜色素変性症の遺伝子療法を承認申請へ 
  • SNRIの第3相ナルコレプシー試験が成功 
  • S1PR調節剤のクローン病試験がまたフェール 
  • 発作性上室性頻拍治療薬を改めて承認申請 
  • リジェネロンの二重特異性抗体は審査完了に 
  • CHMP、週一回投与型インスリンなどの承認を支持 
  • CHMP、レケンビの討議をドタキャン 
  • バフセオが米国でやっと承認 
  • MSD、肺動脈高血圧用新薬が承認 
  • ユルトミリスがAQP4自己抗体陽性NMOSDに適応拡大 
  • COVID-19感染予防用抗体医薬がEUA 
  • 高脂血症薬の心血管リスク削減効果が承認 
  • 肺動脈高血圧の合剤が承認 
  • アッヴィのADCが本承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


BMS、KRAS G12C標的薬の市販後薬効確認試験が成功
(2024年3月28日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、KRAS G12C阻害剤Krazati(adagrasib)の第3相KRYSTAL-12試験で主目的を達成したと発表した。第2相試験の反応率データに基づき22年に米国で、今年1月にはEUでも、成人のKRAS G12C変異のある局所進行/転移非小細胞性肺癌の二次治療薬として加速/条件付き承認されているが、本承認切替申請に向かうのではないか。

この試験は承認用途におけるPFS(無進行生存期間)をdocetaxelと比較した。副次的評価項目であるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)とともに、統計的有意かつ臨床的に意味のある差があった。

1月にMirati Therapeuticsを約48億ドルで買収して入手したコンパウンド。類薬であるアムジェンのLumakras(sotorasib)は同様なデザインの第3相でPFSがdocetaxelを有意に上回ったが、メジアン値の差は1ヶ月程度、全生存期間の解析は検出力不足やクロスオーバーの影響もあり大差なかったため、加速承認から本承認への切替は成就しなかった。Krazatiの治療効果はどの程度なものか、数値の公表が待たれる。

リンク: 同社のプレスリリース


網膜色素変性症の遺伝子療法を承認申請へ
(2024年3月26日発表)

米国テキサス州ダラスのナノスコープ・セラピューティクスは、MCO-010(sonpiretigene isteparvovec)の後期第2相進行網膜色素変性症試験で主評価項目と主要な副次的評価項目を達成したと発表した。FDAと相談し、下期に承認申請する考え。

同社は多特性オプシン (MCO) を用いた遺伝子療法技術を持ってる。MCO-010はAAV2ベクターとmGluR6プロモータ・エンハンサーを用いて網膜双極細胞において青、緑、赤を感受するオプシンを発現させ、低光感受性を誘導する。硝子体注射。

今回のRESTORE試験は進行網膜色素変性症で法的に盲人と見做される患者28人をシャム、低用量(0.9e11 gc/眼)、高用量(1.2E11 gc/眼)の3群に無作為化割付けして一回施行し、第52週のBCVA(最高矯正視力)をベースライン値と比較したところ、各群0.050、0.382、0.337 LogMAR改善した。各用量の偽薬比p値は0.029と0.021。副次的項目である第76週時点におけるBCVA改善は各群0.078、0.374、0.539 LogMAR改善となり、高用量だけp=0.0014と有意水準だった。同社は高用量を承認申請する考え。

尚、LogMARは少数視力値をLog変換して等差性を持たせたもので、数値が大きいほど視力が低い。EDTRS視力表の各行の文字は0.1LogMARだけ異なっている。

有害事象は軽中度の前房内細胞や高眼圧症など。治療関連深刻有害事象は発生しなかった。

5月のARVO(視覚と眼科学研究協会)で学会発表する考え。

リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)


SNRIの第3相ナルコレプシー試験が成功
(2024年3月25日発表)

米国ニューヨークの新興製薬会社、Axsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、AXS-12(reboxetine)の第3相ナルコレプシー試験が成功したと発表した。プレスリリースには明記されていないが、おそらく、もう一本実施してから米国で承認申請するのではないか。

ファルマシアが鬱病治療薬として開発した選択的ノルエピネフィリン再取込阻害剤で、欧州で97年に承認されたが米国は承認されなかった。同社はファルマシアを買収したファイザーからS異性体のesreboxetine(AXS-14)とともにライセンス、ナルコレプシーの脱力発作を抑制する用途で開発している。権利取得前に実施された21人のクロスオーバー試験、CONCERTで、週間脱力発作回数がベースライン時点の30回から第2週に14.6回減少、偽薬の2.6回減少を上回った。

今回のSYMPHONY試験は脱力発作を伴うナルコレプシー患者90人を偽薬群と5mg一日二回投与群(但し第1週は一日一回)に無作為化割付けして5週間治療し、第5週の週間脱力発作回数をベースライン値(メジアン20回)と比較した。試験薬群は83%減少、偽薬群は66%減、率比0.49、p=0.018と、高度とは言えないが有意だった。脱力発作寛解率や日中の過剰な眠気などの指標でも有意な差があった。有害事象はドライマウス、悪心、便秘など。

同社の調査によるとナルコレプシーの患者の4割程度が抗鬱剤をこの病気を治療する目的で服用しているとのこと。reboxetineの特許は現時点でも2039年まで有効とのことだが、潜在的な競合は多そうだ。

第3相の結果は23年第2四半期に判明する見込みだったが、ほぼ一年遅れとなった。AXS-14の線維筋痛治療薬としての承認申請もかなり遅延しており、世の中は同社の思うようにはならないようだ。

リンク: 同社のプレスリリース


S1PR調節剤のクローン病試験がまたフェール
(2024年3月28日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、S1PR1/5調節剤Zeposia(ozanimod)の第3相中重度活性期クローン病臨床的寛解導入試験がフェールしたと発表した。12週の治療でCDAIが150未満に低下した患者の比率を偽薬と比較したが、有意な差はなかった。もう一本の導入試験と寛解維持試験などが進行中。

再発性多発硬化症と潰瘍性大腸炎の治療薬として欧米で承認され、日本でも2月に後者の適応症で承認申請されたところ。潰瘍性大腸炎に有効な免疫調節剤はクローン病でも有効という先入観があるが、S1PR調節剤は例外のようだ。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


発作性上室性頻拍治療薬を改めて承認申請
(2024年3月28日発表)

カナダのMilestone Pharmaceuticals(Nasdaq:MIST)は米国でMSP-2017(etripamil、点鼻用)を発作性上室性頻拍(PSVT)の治療薬として再承認申請した。昨年10月に申請したが、有害事象のタイミングが不明確と見なされ受理されなかったため、指摘事項に対応した。

etripamilは短期作用性カルシウム・チャネル・ブロッカー。一本目の第3相偽薬対照試験は洞調律達成期限を5時間とゆるゆるにしたためかメジアン値では25分対50分と大きな差があったがp=0.12だった。そこで二本目のRAPID試験では30分に短縮したところ、洞調律達成率が64%と偽薬群の31%を大きく上回り、ハザードレシオ2.62、統計的に有意だった。様々な症状も改善した。主な有害事象は鼻の不快感や鼻詰まりなど。薬物関連深刻有害事象は発生しなかった。

PSVTは珍しくない疾患で、不快・不安以外に異常はないことが多いが、米国ではPSVTによる入院が年5万件と推測されている。上記試験二本のプール分析ではER入室リスクが39%抑制された(p=0.035)。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


リジェネロンの二重特異性抗体は審査完了に
(2024年3月25日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はCD20とCD3に結合する二重特異性抗体、REGN1979(odronextamab)を成人の難治再発濾胞性リンパ腫と難治再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として欧米で承認申請しているが、米国は審査完了通知を受領した。薬効や忍容性の問題ではなく、市販後薬効確認試験の組入れが十分に進捗していないことが原因のようだ。

承認申請のエビデンスとなる二本の試験は第1相と第2相試験。FDAは、加速承認の食い逃げを防ぐために、加速承認の時点で市販後薬効確認試験の患者組入れがある程度進捗していることを要求している。REGN1979の場合、複数の試験が多くは昨年11月と12月に開始されたばかり。FDAとの相談を踏まえて併用試験では至適用量決定フェーズと仮説検証フェーズの二段階に分けて実施することになったため、従来より時間がかかることになる。現況では前者のフェーズの組入れ中だが、FDAは後者のフェーズの組入れがある程度進むことを求めており、今後のタイム・スケジュールを明確にした上で再承認申請するよう求めた。

FDAは抗体医薬の至適用量検討が十分ではないという問題意識を持っており、今回の承認遅延に影を落とした可能性がある。病気が進行し適切な薬が存在しないunmet medical needの段階の患者の最後の手段を最初の目標適応症にすることで素早く加速承認を取り、市販後薬効確認試験は早期段階の併用試験で代用するという開発方針はごく一般的なだけに、幅広いインプリケーションがありそうだ。

同社はREGN5458(linvoseltamab)を難治再発多発骨髄腫の4次治療薬として第1/2相試験のエビデンスに基づき承認申請しているが、一部報道によると、こちらの市販後薬効確認試験には同様な問題はない模様だ。

リンク: 同社のプレスリリース


CHMP、週一回投与型インスリンなどの承認を支持
(2024年3月22日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec)は成人の糖尿病に用いる週一回皮下注用インスリン。アルブミンに強力かつ可逆的に結合するため末端半減期が196時間と長く、注射頻度を大幅に減らすことができる。臨床試験でHbA1c管理が一日一回投与型インスリンを用いた群と非劣性だった。但し、一型糖尿病患者では低血糖が増加したため、便益が明白な場合にだけ用いる。米国でもEUと同時期に承認申請されたが、審査期限が7月頃に延長された模様だ。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーのEmblaveo(aztreonam、avibactam)は点滴静注用新規組み合わせ製品で、活性成分のうち前者は30年以上前に発売されたグラム陰性菌用モノバクタム、後者はベータ・ラクタマーゼ阻害剤でceftazidimeと組み合わせた製品が欧米で承認されている。Emblaveoの適応症は複雑性腹腔内感染症、複雑性尿路感染症、院内感染症、そして多剤抵抗性で治療手段が限定的な好気性グラム陰性菌感染症となる予定。

EMAのプレスリリースによると、承認のエビデンスは各剤の薬効・安全性データと第3相の安全性及び補完的データ。第3相実薬対照試験二本で治癒率が非劣性、死亡率は少なくとも数値上は低かったが、何かノイズが見つかったのだろうか?

リンク: EMAのプレスリリース

ノバルティスのFabhalta(iptacopan)は経口可逆的B因子阻害剤。成人のPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)における溶血性貧血症の治療に用いる。抗C5抗体に十分応答しない患者を組入れたスイッチ試験や、未治療患者を組入れた単群試験で良好な成果を挙げた。未治療患者における抗C5抗体との優劣は不明だが、経口投与できる点は便利。

リンク: EMAのプレスリリース

以下の適応拡大も肯定的意見を得た。

  • UCBのBimzelx(bimekizumab):成人の既存治療に応答不十分な活性期中重度化膿性汗腺炎。米国でも申請中。

  • 第一三共のNilemdo(bempedoic acid)とezetimibe配合剤のNustend:成人のアテローム性心血管疾患又はそのリスクが高い患者に、スタチン忍容なら最大忍容量と併用、不耐・禁忌の場合は単剤またはezetimibeと併用する。アウトカム試験の成果を反映。米国では3月に承認。

  • セルビエのOnivyde pegylated liposomal(irinotecan hydrochloride trihydrate):未治療の転移膵管腺腫に5-FU、leucovorin、oxaliplatinと併用する。

  • イーライリリーのRetsevmo(selpercatinib):RET融合陽性の進行固形癌。但し、多の薬を用いても臨床的便益が限られているであろう、あるいは、使い果たした患者に用いる。

  • アステラス製薬のXtandi(enzalutamide):サルベージ放射線療法が適応とならない、生化学的再発のリスクが高い、成人男子の非転移性ホルモン感受性前立腺癌。単剤、またはアンドロゲン枯渇療法と併用する。

  • 一方で、以下の適応拡大申請が撤回された。

  • 武田薬品のAdcetris(brentuximab vedotin):未治療CD30陽性末梢T細胞リンパ腫(PTCL)のうちNOS(他の分類に該当しない)型。様々なタイプのPTCL等を組入れた試験に基づく申請だが、CHMPはNOSの組入れ数が少なく、数や患者背景に群間の偏りがあり、他の型のPTCLにおける治験成績が外挿できるかどうか不確かであるため否定的に考えていた。米国では未分化大細胞リンパ腫などと共に18年に、適応拡大申請の11日後という光速審査で、承認された。

  • ポルトガルのBial-PortelaのOngentys(opicapone):オフタイムを伴わない早期パーキンソン病に申請したが、CHMPは臨床試験における効果が限定的であるため否定的に考えていた。

  • ブリストル マイヤーズ スクイブのOrencia(abatacept):他家造血幹細胞移植に伴う急性移植片宿主病の予防に申請したが、CHMPは、180日の試験中に効果が減衰していること、それ以上の期間の持続性が検討されていないこと、慢性移植片宿主病のリスクに悪影響を与える可能性があることから否定的に考えていた。米国では21年にHLA適合/1アレル不適合造血幹細胞移植を受ける2歳以上の患者に承認された。


  • CHMP、レケンビの討議をドタキャン
    (2024年3月22日発表)

    CHMPは3月の会合でエーザイが早期アルツハイマー病の治療薬として承認申請したLeqembi(lecanemab)に関する口頭説明を予定していたが、キャンセルした。3月11日に行われた『神経学における科学的諮問グループ(SAG)』での討議を踏まえて、3月19日にCHMPで検討という段取りだったが、ECJ(欧州司法裁判所)が3月14日に別の案件で示した判断の余波で、EMAがSAGの推奨を無効化、改めて招集することを決めたため。純粋に手続き上の問題のようだ。

    ECJの決定は、D and A Pharmaがアルコール依存治療薬としてsodium oxybateを承認申請したが肯定的意見を獲得できず、EMAを提訴した件に関わるもの。ECJはCHMPが諮問した専門家グループの一人における利益相反を認めるとともに、『精神疾患におけるSAG』に代えてアド・ホックな会議を開いて諮問することを審査手続き違反と認定した。具体的に何がLeqembiの審査手続きに影響したのかは不明。

    リンク: BioArcticとエーザイのプレスリリース
    リンク: 欧州司法裁判所の決定(3月14日付、pdfファイル)

    【承認】


    バフセオが米国でやっと承認
    (2024年3月27日発表)

    米国マサチューセッツ州ケンブリッジの新興医薬品開発会社、Akebia Therapeutics(Nasdaq:AKBA)は、FDAがVafseo(vadadustat)を3ヶ月以上透析を受けている慢性腎疾患の成人の貧血治療薬として承認したと発表した。承認申請から足掛け3年、EU承認から1年弱、日本での承認からだと4年近く遅れた。錠剤なのでESA(赤血球生成刺激剤)より簡便だが、この長所が最大に生きる保存期慢性腎疾患は、EUと同様、適応外とされた。1年早く承認されたGSKの競合品、Jesduvroq(daprodustat)も透析期限定で、死に至ることもある主要心血管イベントが枠付き警告されている点も同じだ。

    FDAは一巡目の審査で安全性に懸念を表明、追加試験を要求した。同社は透析前の患者も適応とする計画だったが心血管安全性試験でESA比非劣性ではなかった。薬物誘導性肝障害や高血圧、癲癇などのリスクが見られたこともネックになった。同社は公式紛争解決手続きの適用を請求し、却下されたものの、追加試験無しで再申請する道筋を示唆され、日本における数万人分の市販後安全性データなどを追加提出、ついに承認に漕ぎ着けた。

    米国ではCSLの子会社のVifor Pharmaが販売する。尚、日本では田辺三菱製薬が開発販売。

    リンク: Akebiaのプレスリリース


    MSD、肺動脈高血圧用新薬が承認
    (2024年3月26日発表)

    MSDはFDAがWinrevair(sotatercept-csrk)を成人の肺動脈高血圧症治療薬として承認したと発表した。activinの受容体を免疫グロブリンの固定領域と結合した融合蛋白で、血管の増殖に関わる促進シグナルと抑制シグナルのバランスを調停、血流を改善する。標準療法と併用で3週毎に皮下注する。

    WHO機能分類がII/III(通常/通常より軽い身体活動を行うと呼吸困難や疲労などの症状が発生)の患者324人を組入れて24週治療し効果を偽薬と比較した第3相で6分歩行距離が偽薬調整後で40メートル改善した。副次的評価項目である死亡/治療強化リスクが低下し(ハザードレシオ0.16)、主要な構成要素である増悪やそれによる入院、全死亡だけの解析でも、発生数が少なかった。WHO機能分類が一段階以上改善した患者数も偽薬群より多かった。有害事象は頭痛、鼻血、ラッシュ、毛細血管拡張症など。ヘモグロビンの増加や血小板の減少が見られるため少なくとも最初の5回は投与前に検査を行う。胚胎毒性あり、授乳は非推奨、男女とも妊娠能力に影響する可能性がある。

    21年に115億ドル(エクイティ・バリュー・ベース)で買収したAcceleron Pharmaの開発品。セルジーンと共同開発していた時期があり、セルジーンを買収したBMSが売上高の20%台前半の技術料を得る権利を持っている。

    企業買収や提携により入手した薬にはしばしば見られることだが、報道によると、Winrevairも年間の問屋取得価格が22~46万ドルと著しく高価に設定される。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ユルトミリスがAQP4自己抗体陽性NMOSDに適応拡大
    (2024年3月25日発表)

    アストラゼネカは、長期作用性抗C5抗体Ultomiris(ravulizumab-cwvz)を抗アクアポリン(AQP)4自己抗体陽性の視神経脊髄炎(NMOSD)に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。EUと日本では昨年5月に承認されたが、米国は副作用対策についてFDAが改善を求めたため周回遅れとなった。

    同日に類薬であるSoliris(eculizumab)のレーベルも変更されているが、変更点は、REMS(リスク評価・緩和戦略)の呼称がSoliris REMSからUltomiris and Soliris REMSに変わったことと、REMSの主要要件に、REMSで資格認定された薬局等は処方者が資格認定されていることを確認した上で交付するという項目が追加されたことくらいだ。Ultomirisの枠付き警告やREMS言及箇所はSolirisと同内容なので、おそらく、これが遅延の理由なのだろう。半年遅れても抵抗したいような変更ではないように感じられるので、FDAのほうが譲歩したのかもしれない。

    リンク: アストラゼネカのプレスリリース


    COVID-19感染予防用抗体医薬がEUA
    (2024年3月22日発表)

    米国マサチューセッツ州の新興医薬品開発会社、Invivyd(Nasdaq:IVVD)は、FDAがPemgarda(pemivibart)をCOVID-19の曝露前予防薬としてEUA(非常時使用認可)したと発表した。免疫力が低下する病気や治療を受けていて、ワクチンを接種しても十分な効果が期待できない、年齢12歳以上、体重40kg以上の人に4500mgを60分点滴静注する。効果は逓減していくので必要な場合は3ヶ月毎に反復投与する。アナフィラキシーが枠付き警告されている(臨床試験での発生率0.6%)。

    EUAの前提となる公衆衛生危機宣言は既に解除されたがEUAは未だ続いている。同社はADG20(adintrevimab)の第3相試験が成功、曝露前と後の発症リスク抑制に成功したが、流行株が同剤が苦手なBA.2にドリフトしたため、半減期の長いpemivibartにスイッチした。薬効のエビデンスは免疫ブリッジングで、pemivibartの中和抗体力価がadintrevimabと非劣性であることと、後者の感染・曝露前の人における臨床試験で発症リスク削減効果が見られたことから、薬効を認定した。比較はJN.1株に対する力価を用いた。

    リンク: 同社のプレスリリース


    高脂血症薬の心血管リスク削減効果が承認
    (2024年3月22日発表)

    Esperion Therapeutics(Nasdaq:ESPR)はFDAがNexletol(bempedoic acid)とNexlizet(ezetimibe配合錠)の適応・効能を追加したと発表した。CLEAR心血管アウトカム試験に基づくもので、米国の対象患者数が数倍に膨らんだ。

    コエンザイムAと結合してコレステロール生合成パスウェイのカギとなる酵素であるATP citrate lyase(ACL)を阻害する、新規作用機序のコレステロール治療薬。20年に欧米でヘテロ接合型高脂血症とアテローム硬化性心血管疾患の患者のLDL-C抑制薬として承認された。CLEAR試験では心血管疾患リスクを持ちLDL-Cが100mg/dL以上の、二種類以上のスタチンに不耐な患者13970人を組入れて、心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的卒中/冠再建術のリスクをメジアン40.6ヶ月追跡したところ、発生率が11.7%と偽薬群の13.3%より低く、ハザードレシオは0.87、p=0.004だった。

    FDAは、心血管疾患又は高リスク患者でスタチンの推奨用量を服用できない成人患者に用いることと、ヘテロ接合型以外の原発性高脂血症の成人に用いることを承認した。

    上記の通り、第一三共が販売するEUでもCHMPが効能追加に肯定的意見をまとめた。

    リンク: 同社のプレスリリース


    肺動脈高血圧の合剤が承認
    (2024年3月22日発表)

    ジョンソン・エンド・ジョンソンはFDAがOpsynvi(macitentan、tadalafil)を成人の肺動脈高血圧症の治療薬として承認したと発表した。エンドテリンA/B受容体拮抗剤Opsumitの活性成分と、イーライリリーのPDE5阻害剤Adcircaの活性成分を配合したもので、従来は前者を1錠、後者を2錠、一日一回服用する必要があったが、一錠で足りるようになる。カナダでは21年に承認、欧州や日本でも承認申請中。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アッヴィのADCが本承認
    (2024年3月22日発表)

    アッヴィは22年に米国で加速承認されたElahere(mirvetuximab soravtansine-gynx)が本承認されたと発表した。1~3剤までの治療歴のある葉酸受容体アルファ陽性白金抵抗性卵巣癌の治療薬で、第3相単剤投与試験で全生存期間のハザードレシオがpaclitaxelなどから医師が選んだ薬を投与した群と比べて0.67、メジアン生存期間は各16.4ヶ月と12.7ヶ月だった。

    2月に買収したImmunoGenの製品。

    リンク: アッヴィのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24年4-6月ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/2Vanda PharmaceuticalsのFanapt(iloperidone、双極障害一型追加)
    24/4/3Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)
    24/4/5 JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療)
    24/4/5 Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)
    24/4/30Neurocrine BiosciencesのIngrezza(valbenazine顆粒製剤、ジスキネジアなど




    今週は以上です。

    2024年3月22日

    第1147回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • 世界初、ブタ腎を人に移植 
    • SFTSの概要 
    • オプジーボとヤーボイの併用が肝細胞腫に有効 
    • 先端巨大用新薬、新患試験も成功 
    • GSKの抗PD-1抗体、内膜腫化学療法併用試験で良好な成績 
    • MSD、リムパーザのキイトルーダ併用試験がまたフェール 
    • エンスプリングの筋無力症における効果はそれほどでもない 
    • ALK阻害剤を米国でも承認申請 
    • HDAC阻害剤をデュシェンヌ型筋ジストロフィーに承認 
    • ETR阻害剤が難治高血圧症に承認 
    • アイクルシグが新患Ph+ALLに加速承認 
    • 異染性白質ジストロフィーの遺伝子治療が承認 
    • EMA、パキロビッドの薬物相互作用を改めて警告 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    世界初、ブタ腎を人に移植
    (2024年3月21日発表)

    マサチューセッツ総合病院は、世界で初めて、ブタの腎臓を末期腎不全の患者に移植したと発表した。異種移植に伴う強い拒絶反応を緩和するために、eGenesis社がCRISPR-Cas9技術で遺伝子編集したEGEN-2784腎臓を用い、術後の免疫抑制剤として抗C5抗体ravulizumab(アレクシオンのUltomiris)やEledon Pharmaceuticals(Nasdaq:ELDN)が開発している抗CD40リガンド抗体tegoprubart(USAN/INN)を用いている。EGEN-2784はグリカン抗原の生成に関わる3遺伝子をノックアウトし、拒絶反応の制御に関わる人の7誘導遺伝子を導入し、ブタ内在性レトロウイルスを不活化したもので、同社によると、これら三種類の改変は同社独自の技術とのことだ。

    ブタ臓器の異種移植は、昨年、University of Maryland Medical Centerで二件の心臓移植が施行されたが、1~2ヶ月後に一人はブタ・サイトメガロウイルス感染症で、もう一人は拒絶反応により、物故した。今回の患者は52歳の男性で、18年に死体腎移植を施行したが23年に透析を再開、バスキュラ・アクセスにおける血栓症などの治療が必要になっているとのこと。セカンド・チャンスがある分、心移植より条件がよさそうだ。

    eGenesisは日本企業とも協業している。

    リンク: マサチューセッツ総合病院のプレスリリース
    リンク: eGenesisのプレスリリース


    SFTSの概要
    (2024年3月21日作成)

    重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はフレボウイルス属のウイルスによる感染症。中国や日本など、東アジアで報告されている。マダニが媒介する。人から人へ感染するリスクが指摘されて来たが、今回、感染者から医療従事者への感染症例が報告された。国立感染症研究所の解説などに基づき疫学的な特徴をまとめた。

    2010年前後に中国で報告・同定され、日本では2013年に4類感染症指定され、全数報告されるようになった。感染症発生動向調査によると、今年1月末までの報告数は939症例、うち死亡例は104人(11%)だが、報告後の死亡は含まれていないのでもっと多い可能性がある。実際、人口動態調査によると13~22年のSFTSによる死亡者数は155人、感染症発生動向調査の1.6倍となっている。感染報告数に関しても漏れがあっても不思議ではない。

    国立感染症研究所が感染症発生動向調査を元にまとめた資料を見ると、感染者の性別は男女ほぼ同数、死亡数も大差ない。メジアン年齢は75歳、死亡例では80歳。年代別には70代以上が7割近くを占め、死亡率は11%、50~60代は3割弱、死亡率6%、40代以下は5%で死亡はゼロ。季節は3~9月、特に5~8月の報告数が多い。地域別には九州が4割を占め、以下、中国地方が3割弱、四国が2割弱、近畿1割、中部2%、関東は1%未満。

    2013~15年は161人中41人(25%)が死亡したが、21~23年は359人中29人(8%)と、報告数が倍増した一方で死亡率は低下している。しかし、人口動態調査による死亡数を分子として試算すると概ね2割前後で推移しており、改善しているようには見えない。

    抗ウイルス薬の便益は確立していないが、中国ではribavirinが治療ガイドラインに収載されているようだ。favipiravirは新型インフルエンザが流行した時に備えて日本で承認され、中国でも開発されているが、北京の施設で2名に5日間投与したところ寛解したという症例報告があり、臨床試験中である模様。

    エボラほどではないが致死率が高いようなので、誰か治療薬の開発に手を上げないものか。



    注:上記の報告数や死亡数は発病年が不明なものを除外している。
    データ出所:報告数と死亡数は感染症発生動向調査、発病年ベース。SFTS死亡数は人口動態調査、死亡年ベース。

    リンク: 国立感染症研究所の解説ページ

    【新薬開発】


    オプジーボとヤーボイの併用が肝細胞腫に有効
    (2024年3月20日発表)

    抗PD-(L)1抗体の進行肝細胞腫試験は成功したり失敗したり区々で、同じような薬がなぜ違った結果になるのか理解に苦しむ。今回は朗報で、ブリストル マイヤーズ スクイブは、Opdivo(nivolumab)を抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab)と併用する便益を検討したCheckMate-9WD試験が中間解析で主目的を達成したと発表した。全身性治療を初めて受ける患者を組入れて全生存期間をVEGFR阻害剤のsorafenibまたはlenvatinibを投与する群と比較したところ、統計的に有意なだけでなく臨床的に意味のある差があった由。数値は記されていない。

    sorafenib対照一次治療試験が成功した前例は、ロシュのTecentriq(atezolizumab)とAvastin(bevacizumab)の併用をテストしたIMbrave150試験が成功、全生存のハザードレシオは0.58だった。20年に米欧日で適応拡大が承認された。また、アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)と抗CTLA-4抗体Imjudo(tremelimumab-actl)の併用もHIMALAYA試験でハザードレシオ0.78だった。米日欧で22~23年に承認された。Imfinziだけを投与した群のハザードレシオは0.86で非劣性に留まっており薬効面では併用がよさそうだが、深刻有害事象発生率が41%、致死的有害事象発生率も8%と忍容性が厳しいので、どちらが良いかは悩ましいところではないか。

    リンク: 同社のプレスリリース


    先端巨大用新薬、新患試験も成功
    (2024年3月19日発表)

    米国カリフォルニア州のCrinetics Pharmaceuticals(Nasdaq:CRNX)は、CRN00808(paltusotine)の第3相PATHFNDR-2試験が成功としたと発表した。維持療法試験も成功しており、今年下期に承認申請する考え。

    非ペプチド系のソマトスタチン受容体2型アゴニストで一日一回経口投与型であることが長所。今回の試験は先端巨大症の治療を初めて受ける、または止めていた患者111人を組入れて奏効率(IGF-1水準がULN<正常範囲上限>の1倍以下に低下)を検討したところ、56%と偽薬群の5%を大きく上回った。PATHFNDR-1試験では注射用の既存薬であるoctreotideまたはlanreotideによる治療が奏功した患者58人を組入れてCRN00808にスイッチする群と偽薬にスイッチする群の奏効率を比較したところ、83%対4%とこちらも大きく上回った。

    日本では三和化学がライセンス開発している。

    リンク: Crineticsのプレスリリース


    GSKの抗PD-1抗体、内膜腫化学療法併用試験で良好な成績
    (2024年3月16日発表)

    GSKは抗PD-1抗体Jemperli(dostarlimab-gxly)を化学療法と併用で進行/難治内膜腫のフロントライン・セラピーに用いる第3相試験、RUBYの追加データを公表した。一つは、carboplatinとpaclitaxelのレジメンにJemperliによる導入療法と維持療法を追加したパート1における全生存期間の解析。偽薬を追加した群と比べてハザードレシオは0.69だった。22年に公表されたPFS(無進行生存期間、担当医評価)のハザードレシオである0.64と大差ない。腫瘍細胞の遺伝子変異が多いdMMR/MSI-H型のサブグループにおける探索的解析では0.32、少ないMMRp/MSS型サブグループでは0.79と数値は悪くないが95%上限が1.044とはみ出している。PFSの解析では夫々0.28と0.76だった。

    JemperliはPFSのデータに基づき適応拡大申請されたが、欧米とも、dMMR/MSI-H型の患者に限定承認された。dMMR/MSI-Hにおける便益は全生存期間を見てもそれほどでもないので、限定が維持されるのではないか。

    もう一つの発表は、維持療法にPARP阻害剤Zejulaも併用したパート2の成績。メジアンPFSは14.5ヶ月、carboplatin・paclitaxel・偽薬群は8.3ヶ月、ハザードレシオは0.60で統計的に有意。MMRp/MSSサブグループでは各14.3ヶ月、8.3ヶ月、ハザードレシオ0.63と似たような結果になった。

    dMMR/MSI-H型は変な蛋白が多く作られ免疫の注意を惹きやすいため、抗PD-(L)1抗体に応答しやすい傾向がある。MMRp/MSS型はその逆なので、PARP阻害剤も併用したほうが良いのかもしれないが、すごく変わるわけではなさそうだ。

    アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)とLynparza(olaparib)を併用したDUO-EでもMMRp相手には併用のほうが見栄えがしたが、dMMRが相手ならImfinziだけでもLynparza併用でも大差ないように見えた。

    リンク: GSKのプレスリリース


    MSD、リムパーザのキイトルーダ併用試験がまたフェール
    (2024年3月21日発表)

    MSDはアストラゼネカのPARP阻害剤Lynparza(olaparib)を同社の抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)や化学療法と併用した第3相KEYLYNK-006がフェールしたと発表した。両社は17年にLynparzaなどの共同開発販売で提携したが、既にKEYLINK-008試験と去勢抵抗性前立腺癌におけるKEYLINK-010試験がフェールしており、なかなか成果が出ない。

    今回の試験はEGFR/ALK/ROS1阻害剤が適応にならない転移非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療としてKeytrudaとpemetrexedおよびcarboplatin乃至はcisplatinによる導入療法を施行し、疾病安定化以上の反応があった672人をKeytruda・Lynparza併用群とKeytruda・pemetrexed併用群に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間をオープンレーベルで比較したもの。Keytrudaを使うことには変わりはない。本試験はMSDが主導したためか、アストラゼネカはプレスリリースを出していない。

    リンク: MSDのプレスリリース


    エンスプリングの筋無力症における効果はそれほどでもない
    (2024年3月21日発表)

    ロシュ・グループの中外製薬はEnspryng(satralizumab-mwge)の第3相LUMINESCE試験で主目的を達成したものの、期待ほどではなかった旨、明らかにした。4月にANN(米国神経学会)で詳細を発表する予定。

    Enspryngは同社のリサイクリング抗体技術を用いてIL-6受容体に結合・離散を繰り返すように改変した抗体医薬で、20~21年に日米欧で抗AQP4抗体を持つ視神経脊髄炎スペクトラム障害の再発リスク抑制薬として承認された。今回の試験は12歳以上の全身型筋無力症患者188人を組入れて標準療法に追加する便益を検討した。

    リンク: 同社のプレスリリース(和文)

    【承認申請】


    ALK阻害剤を米国でも承認申請
    (2024年3月18日発表)

    米国フロリダ州の未上場新興医薬品開発会社、Xcovery Holdingsは、X-396(ensartinib)を米国で成人のALK陽性転移非小細胞性肺癌に承認申請し受理されたと発表した。審査期限は24年12月28日。

    ALK阻害剤で、関連会社のBetta Pharmaceuticalsが中国で20年に承認を取得、今回の適応でも22年3月に承認された。第3相一次治療crizotinib対照試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.51、メジアン値は25.8ヶ月と12.7ヶ月だった。

    リンク: 同社のプレスリリース(Business Wire)

    【承認】


    HDAC阻害剤をデュシェンヌ型筋ジストロフィーに承認
    (2024年3月31日発表)

    FDAはイタリアのItalfarmaco GroupのDuvyzat(givinostat)を6歳以上のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬として承認した。HDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害剤で、HDACの過剰による神経再生の抑制や炎症のトリガーを緩和する。空腹時に経口液を一日二回、服用する。歩行可能で4段昇段テストの成績が8秒以内の、ステロイド治療を受けている患者179人を組入れた試験で、18ヶ月後の変化が1.25秒と偽薬群の3.03秒を下回った。有害事象は下痢や悪心嘔吐など。血小板減少やトリグリセライド上昇が見られるため治療開始前に検査する。QTc延長リスクがあるため同様な薬と併用すべきではない。欧州でも承認申請中。

    リンク: FDAのプレスリリース


    ETR阻害剤が難治高血圧症に承認
    (2024年3月20日発表)

    スイスのイドルシア(SIX:IDIA)はFDAがTryvio(aprocitentan)を成人の難治高血圧症に追加する薬として承認したと発表した。肺高血圧症治療薬Opsumit(macitentan)の類薬で、エンドテリン受容体AとBを阻害してアルドステロンの生成を抑制する、高血圧症治療では新規の作用機序を持つ。24年下期に発売する考え。

    3種類以上の降圧剤を服用しても血圧を十分に管理できない患者を組入れた第3相試験で4週後の最大血圧(医療施設の自動測定器で評価)が15.3mmHg低下、偽薬群の11.5mmHg低下を上回った。有害事象は浮腫や貧血症など。過敏反応やアレルギー性皮膚炎に注意する。Opsumitと同様に催奇性があるため妊婦は禁忌で、REMS(リスク評価・緩和戦略)が採用された。

    イドルシアはアクテリオン社が17年にジョンソン・エンド・ジョンソンに買収された時にスピンオフされた。JNJはTryvioを共同開発していたが承認申請後に解消、ライセンス収入や売上ロイヤルティの一部を取得する権利だけを保有している。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アイクルシグが新患Ph+ALLに加速承認
    (2024年3月19日発表)

    FDAは武田薬品のbcr-abl阻害剤、Iclusig(ponatinib)を成人の新患フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病に用いる適応拡大を加速承認した。imatinib対照化学療法併用試験で、完全反応率(微小残存病変も検出不能)が30%対12%で上回った。

    Iclusigは12年にチロシン・キナーゼ阻害剤抵抗性/不耐の慢性骨髄性白血病及びフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ芽球性白血病の治療薬として加速承認されたが、重篤な動脈静脈血栓症のリスクが顕在化したため、FDAが部分的治験停止命令を発出し販売が一時停止されたことがある。その後、幾つかの適応で応答後に用量を減らすスキームが導入された。今回の適応では45mgではなく30mg一日一回で開始し、化学療法と併用による導入療法に奏功したら15mgに減量する。

    リンク: FDAのプレスリリース


    異染性白質ジストロフィーの遺伝子治療が承認
    (2024年3月18日発表)

    Orchard Therapeutics(Nasdaq: ORTX)はFDAがLenmeldy(atidarsagene autotemcel)を早発性異染性白質ジストロフィーの治療薬として承認したと発表した。報道によるとWAC(卸向け価格)は425万ドルと、米国で最も高価に設定される予定。欧州ではLibmeldy名で20年に承認されている。

    異染性白質ジストロフィーはアリールスルファターゼAの遺伝子の変異による常染色体性劣性遺伝病。脳や末梢神経、腎臓などにスルファチドが蓄積し、中枢・末梢神経に障害をもたらす。Lenmeldyはex vivo遺伝子療法で、患者のCD34陽性造血幹細胞と前駆細胞を採取し、レンチウイルス・ベクターを用いて正常な遺伝子を導入、培養した上で患者に戻す。臨床試験では、PSLI型(未発症乳幼児遅発型・・・生後30ヶ月以内に発症が予想される)ではデータのある14人全員が6歳時点で生存していた。自然歴における生存率は58%だった。PSEJ型(未発症早期若年型、30ヶ月超、7歳未満に発症と予想)とESEJ型(早期症候性早期若年型、30ヶ月超7歳未満に発症した)では運動機能の低下が自然歴より小さかった。有害事象は過敏反応など。臨床試験では確認されていないが、レンチウイルスを用いているため血液癌のリスクを15年以上観察するよう推奨されている。

    希少遺伝子疾患の遺伝子療法で実績のあるSan Raffaele-Telethon Institute for Gene Therapyが創製、GSKが他の薬と共に共同開発販売権を取得したが18年にOrchard社に資産譲渡した。Orchard社は昨年10月に協和キリンが買収した。

    リンク: Orchard社のプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    EMA、パキロビッドの薬物相互作用を改めて警告
    (2024年3月21日発表)

    EMAはCOVID-19治療薬Paxlovid(nirmatrelvir、ritonavir)の薬物相互作用リスクに関するDHPC(直接的医療従事者向け通知)を発出した。カルシニューリン阻害剤(voclosporin、ciclosporin、tacrolimus)やmTOR阻害剤((everolimus、sirolimus)のような、Paxlovidと併用するとCYP3A相互作用リスクがあり、安全域が小さい薬と併用て、死亡を含む深刻な副作用に至った症例が報告されているため。

    Paxlovidがritonavirを同梱しているのは3A4阻害作用を通じて抗ウイルス剤nirmatrelvirの作用を長期化する目的であり、3A4で代謝される他の薬を同時使用するとそちらの曝露も増加してしまうリスクがある。初承認時から広く知られたリスクだが、患者がどのような薬を服用しているのか患者自身の記憶に頼らなくても知ることができるようなシステムの無い国では、このような事故が起きてしまうのだろう。

    リンク: EMAのDHPC(Paxlovid)

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24/3/26MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)
    24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
    24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
    24/3/31Esperion TherapeuticsのNexletolと配合錠(bempedoic acid、CVリスク抑制)
    24年4-6月ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/2Vanda PharmaceuticalsのFanapt(iloperidone、双極障害一型追加)
    24/4/3Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)
    24/4/5 JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療)
    24/4/5 Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)
    24/4/5ImmunoGenのElahere(mirvetuximab soravtansine-gynx、FRアルファ陽性白金抵抗性卵巣癌)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)
    24/4/30Neurocrine BiosciencesのIngrezza(valbenazine顆粒製剤、ジスキネジアなど



    今週は以上です。



    2024年3月16日

    第1146回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • アドセトリス、B細胞リンパ腫でも試験成功 
    • 抗IL-17A蛋白の乾癬性関節炎試験は結局、上手く行った? 
    • Nuplazid、最後の適応拡大試験もフェール 
    • トレムフィアを潰瘍性大腸炎にも申請 
    • FDA諮問委員会、BCMA標的CAR-Tの早期使用を支持 
    • FDA諮問委員会、テロメラーゼ阻害剤の承認を支持 
    • 初のNASH用薬が承認 
    • ブレヤンジがCLLに適応拡大 
    • 中華抗PD-1抗体が遂に米国で承認 
    • IBAT阻害剤が肝内胆汁鬱滞症に適応拡大 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    アドセトリス、B細胞リンパ腫でも試験成功
    (2024年3月12日発表)

    ファイザーはAdcetris(brentuximab vedotin)の第3相ECHELON-3試験が良好な結果になったと発表した。成人の2次または3次治療歴を持ち幹細胞移植/CAR-T治療に適さないびまん性大細胞型B細胞リンパ腫をCD30発現の有無を問わずに組み入れて、lenalidomideとrituximabのレジメンに追加する便益を偽薬追加群と比較したところ、統計的に有意な、そして臨床的に意味のある延命効果が見られた。副次的評価項目であるPFS(無進行生存期間)やORR(客観的反応率)の解析も成功した。適応拡大を申請する考え。数値は未発表。

    Adcetrisは武田薬品と共同開発販売している抗CD30抗体薬物複合体。古典的ホジキン型リンパ腫における様々な用法や、全身性未分化大細胞リンパ腫などCD30陽性T細胞系リンパ腫に承認されているが、遂にB細胞リンパ腫にも進出してきた。

    リンク: ファイザーのプレスリリース


    抗IL-17A蛋白の乾癬性関節炎試験は、結局、上手く行った?
    (2024年3月11日発表)

    米国ロサンジェルスの新興医薬品開発会社、ACELYRIN(Nasdaq:SLRN)は、ABY-035(izokibep)の後期第2相/第3相乾癬性関節炎試験で主目的を達成したと発表した。試験薬配布ミスをどうカバーしたのかは明らかではない。

    izokibepはIL-17Aに結合する、抗体医薬の10分の1と小さいドメインとアルブミン結合ドメインを持つ蛋白。今回の試験は一剤以上に十分応答しない乾癬性関節炎患者を偽薬群、80mg4週毎投与群、160mg隔週投与群、160mg毎週投与群に無作為化割付けして第16週のACR50奏効率を比較したもの。今回の発表によると、ACR50奏効率は160mg隔週群が43%、毎週群が40%となり、偽薬群の15%を有意に上回った。副次的評価項目のPASI90奏効率も各58%、64%、12%と良好な結果になった。忍容性はおおむね良好だった。治療関連深刻有害事象に大きな偏りは見られなかった。

    二重盲検試験なので4週毎群や隔週群は試験薬と偽薬を交互に投与することになるが、CRO等のプログラミング・ミスにより順番の間違いがランダムに発生してしまったことが昨年11月に公表されている。どのようにしてこの瑕疵に対応したのかは明らかではない。もう一本第3相試験を行うだろうから、結果が出てから考えれば十分だろう。

    同社は化膿性汗腺炎でも後期第2相/第3相試験を実施したがフェールした。偽薬群の奏効率が治験の前半と後半で大きく異なるなど奇妙な点があったため乾癬性関節炎試験の実施状況をチェックしたところ上記のミスが発覚したという経緯だが、化膿性汗腺炎試験に関しては、延長試験のデータが好調に推移している旨のアップデートを発表している。新興企業によくある、チェリーピックしがちなところがあるのだろうか?

    リンク: 同社のプレスリリース


    Nuplazid、最後の適応拡大試験もフェール
    (2024年3月11日発表)

    Acadia Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)はNuplazid(pimavanserin)の三本目の統合失調症試験がフェールしたと発表した。オレンジ・ブック収載特許は既に失効しており、これ以上の開発は行わない考え。

    2016年にパーキンソン病に伴う精神症状を治療する薬としてFDAに承認された選択的セロトニン・インバース・アゴニスト。アルツハイマー病などに伴う精神症状の治療にも開発・申請されたが承認されなかった。

    統合失調症用途は19年に第3相ENHANCE試験で陽性症状改善効果が見られなかったが、PANSS陰性症状サブスケールは名目p値が0.0474と、効かないとは結論できないものだった。向精神薬治療で陽性症状は管理できているが陰性症状が改善しない患者403人を組入れた第2相ADVANCE試験では26週間の治療でNSA-16(陰性症状評価-16)の低下が10.4となり、偽薬群の8.5を上回った(p=0.043)。20mgで開始、最初の8週間中に34mgまたは10mgに滴定可能という用法だが、34mgでフィニッシュした患者(被験者の54%)では11.6対8.5とさらに大きな治療効果が示唆された。

    今回の第3相ADVANCE-2も同様な患者454人を組入れて同様に26週間治療したが、NSA-16の低下は11.8対11.1で大差なかった。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認申請】


    トレムフィアを潰瘍性大腸炎にも申請
    (2024年3月11日発表)

    ジョンソン・エンド・ジョンソンは米国でTremfya(guselkumab) を成人の中重度活性期潰瘍性大腸炎の治療に適応拡大申請した。第3相のQUASAR試験でバイオ薬やJAK阻害剤にも十分応答しない患者に投与したところ、第12週時点の臨床的治癒率が22.6%と偽薬群の7.9%を上回った。深刻有害事象の発生率は各群2.9%と7.1%だった。下記プレスリリースによると第44週の臨床的寛解率も良好な結果になった様子だ。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    FDA諮問委員会、BCMA標的CAR-Tの早期使用を支持
    (2024年3月15日発表)

    FDAはODAC(腫瘍学薬諮問委員会)を招集し、ジョンソン・エンド・ジョンソンとブリストル マイヤーズ スクイブ/bluebird bio社が夫々に承認申請したBCMA(B細胞成熟抗原)を標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)の、現在承認されているより早い段階の多発骨髄腫における便益と危険について意見を聞いた。前者のCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)は11人の委員全員が、後者のAbecma(idecabtagene vicleucel)は8人が、便益が危険を上回ると判定した。前者の審査期限は4月5日と近いので、FDA内の手続きが間に合わない可能性がありそうだ。後者は昨年12月16日で、既に期限超過状態。

    CAR-Tは患者自身の免疫細胞に敵を教え込んで攻撃させる。理由は理解できていないが、反復投与の必要がないのが長所だ。新しい治療法にはありがちなことだが、市販後に様々なリスクが表面化してきた。例えば、23年12月にFDAが多くのCAR-T製品について二次性血液学的腫瘍のリスクを枠付き警告させた。

    今回の主題は、両剤の実薬対照試験でPFS延長効果が見られたものの、全死亡のカプラン・マイヤー・カーブ分析で最初の9~10ヶ月間の死亡率が実薬群を数値上、上回ったこと。Carvyktiは10ヶ月死亡率が14%、対照群は12%、Abecmaは9ヶ月死亡率が18%対11%となっている。メジアン生存期間はCarvyktiが未達対26.7ヶ月でハザードレシオは0.78、Abecmaは未だ目標死亡数の34%しか到来していない段階の解析だが32.8ヶ月対未達でハザードレシオ1.093と、PFSほど大きな差は出ていない。後者は対照群の患者の過半が進行後にCAR-T治療を受けたことで治療効果が希薄化されてしまった面もあるようだ。

    CAR-Tは投与前のプロセスに時間がかかり、製造が成功するとも限らないので、本試験でも薬が届けられる前に亡くなった患者がいたようだ。また、前措置に用いる化学療法薬も深刻な副作用を招くことがある。当初9~10ヶ月の死亡率上昇はこれらが原因と考えられているようだ。造血幹細胞移植と同様に、患者は、早死にする危険もあるが延命の便益のほうが超過する、という条件を受け入れざるを得ない。

    今回の適応拡大申請は、両剤ともEUでCHMPが肯定的意見をまとめ、Abecmaは日本とスイスで既に承認されている。

    リンク: JNJのプレスリリース
    リンク: BMSのプレスリリース

    FDA諮問委員会、テロメラーゼ阻害剤の承認を支持
    (2024年3月14日発表)

    米国カリフォルニア州のGeron(Nasdaq:GERN)は、多発骨髄腫に伴う貧血症の治療薬として承認申請したGRN163L(imetelstat)をFDA腫瘍学諮問委員会が検討し、14人の委員のうち12人が便益が危険を上回ると判定、2人が上回らないと判定したと発表した。FDAが用意したブリーフィング資料のトーンは警戒的だったが、承認に向けて一歩前進したのではないか。審査期限は6月16日。EUでも承認申請中。

    GRN163Lはテロメラーゼの活性部位を標的とするオリゴヌクレオチドにリピッドを結合したもの。第3相試験ではIPSS(国際予後予測スコアリングシステム)でlowまたはintermediate-1と判定された多発骨髄腫の成人で、赤血球生成因子による貧血治療に不応/不適であるため輸血に依存している178人を組入れて、8週間輸血不要奏効率を偽薬群と比較したところ、39.8%対15.0%と有意に上回った。24週輸血不要奏効率も28.0%対3.3%と有意差があった。安全性面ではG3/4の血小板減少症が61.9%対8.5%、同好中球減少症が67.8%対3.4%と上回り、輸血しなかったせいか貧血症も19.5%対6.8%で上回った。FDAは骨髄抑制副作用を特に懸念しているように見えるが、諮問委員は、多発骨髄腫に血球減少は付き物であり対処可能であること、多くは一時的・可逆的であることから、QOL改善の便益のほうが大きいと判断した。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認】


    初のNASH用薬が承認
    (2024年3月14日発表)

    FDAはMadrigal Pharmaceuticals(Nasdaq:MDGL)のRezdiffra(resmetirom)をNASH(非アルコール性脂肪肝炎;欧米の関連学会はMASHに呼称変更している)の治療薬として承認した。NASHの病状の解消や線維症の組織学的評価に基づく加速承認で、54ヶ月の試験で臨床的便益を確認する必要がある。NASHの治療薬が承認されたのは初めて。本剤はロシュからライセンスした甲状腺ホルモン受容体ベータのアゴニストだが、類薬や様々な作用機序の新薬が第3相段階にあり、今後、ライバルが増えるだろう。

    中重度の肝線維症を伴うが肝硬変には至っていない成人患者に、食事・運動療法と併用で、体重100kg以上は100mg、未満は80mgを一日一回、経口投与する。体重に関わらず80mg群と100mg群が設定された第3相試験では、52週間の治療後にNASH解消且つ線維症が悪化しなかった患者の比率が各群26~27%と24%~36%になり、偽薬群の9~13%を有意に上回った。幅があるのは二人の病理学者の評価を併記しているため。今回初めて見たが、10%強の違いを受け入れるべきだとしたら治療効果の10~20%をどう評価したらよいのか、悩むのは私だけだろうか。

    線維症が改善しNASHが悪化しなかった患者の比率も各群23%と24~28%で偽薬群の13~15%を有意に上回った。

    警告・注意事項は薬物誘導性肝毒性と胆嚢関連副作用。様々な代謝酵素やトランスポーターに関わる相互作用があり、また、LDL-C低下作用があるため一部のスタチンは用量を減らす必要がある。

    NASH/MASHの診断でネックとなるのが生検だが、FDAは生検による診断を要求しておらず、非侵襲的な検査で足りそうだ。

    同社は年47400ドルで発売する考え。米国の潜在患者数は600~800万人とも言われるが、同社は現在治療を受けている31万人を当初のターゲットとする考え。全員に普及すれば年商150億ドルの巨大市場になる。

    リンク: FDAのプレスリリース


    ブレヤンジがCLLに適応拡大
    (2024年3月14日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブはFDAがBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)を慢性リンパ性白血病(CLL)/小リンパ球性白血病(SLL)の治療に用いることを加速承認したと発表した。BTK阻害剤とBCL-2阻害剤を含む2次以上の治療歴を持つ成人の難治/再発CLL/SLLが適応になる。第2相試験で完全反応率が20%、反応持続期間はメジアン値未達(95%下限15ヶ月)だった。CAR-Tに付き物のG3サイトカイン放出症候群の発生率は9%でG4以上はなく、G3神経学的イベントは20%、G4は一人(1%未満)だった。

    BreyanziはCD19標的型のCAR-T。米欧日で難治/再発大細胞型B細胞リンパ腫に承認されており、米国で難治/再発性の濾胞性リンパ腫やマントル細胞腫に効能追加申請中。

    リンク: BMSのプレスリリース


    中華抗PD-1抗体が遂に米国で承認
    (2024年3月14日発表)

    BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE)はFDAがTevimbra(tislelizumab-jsgr)を成人のPD-(L)1阻害剤以外の全身性化学療法歴のある局所進行切除不能/転移食道扁平上皮腫用薬として承認したと発表した。米国のPD-(L)1阻害剤としては10番目。

    エビデンスは中国、米国、日本、欧州など11ヶ国で実施した第3相RATIONAL 302試験。200mgを3週毎点滴静注した群のメジアン生存期間が8.6ヶ月と、paclitaxelまたはdocetaxelなどを用いた対照群の6.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.70だった。中国では22年に、EUでも23年に承認されたが、米国はCOVID-19関連の渡航制限により現地査察ができなかったため遅れていた。

    FDAは中国だけで実施される臨床試験に疑義を抱いており、EUのCHMPが2月に肯定的意見をまとめた非小細胞性肺癌用途は米国では申請断念となった。一方、食道扁平上皮腫一次治療と胃・胃食道接合部腺腫一次治療化学療法併用はグローバル試験に基づき米国で申請中。

    リンク: 同社のプレスリリース


    IBAT阻害剤が肝内胆汁鬱滞症に適応拡大
    (2024年3月13日発表)

    Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)はFDAがLivmarli(maralixibat)を5歳以上のPFIC(進行性家族性肝内胆汁鬱滞症)における胆汁鬱滞性掻痒の治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。9.5mg/mLの経口液で、285mcg/kg一日一回で開始し、570mcg/kg一日二回を目標に漸増する(上限は一日38mg)。第3相MARCH試験でPFIC2型の31人における重度掻痒が偽薬比有意に改善、他の型も含む全64人の解析も成功した。深刻な治療時発現有害事象が10.6%の患者で発生した(偽薬群は6.5%)。

    同社は2ヶ月児以上を対象に申請したが5歳以上に限定された。高濃度製剤を追加申請し年内の承認取得を目指す。

    Livmarliは頂端側ナトリウム依存性回腸胆汁酸トランスポータ阻害剤。胆汁の排泄を促し、この薬自体も殆ど吸収されず排泄される。18年にシャイアからライセンス、21年に米国で1歳以上のアラジール症候群における胆汁鬱滞性掻痒の治療薬として承認され、22年にはEUでも承認された。日本はシャイアの親会社である武田薬品が21年にライセンスした。

    リンク: Mirum社のプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24/3/18 Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)
    24/3/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
    24/3/26MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)
    24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
    24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
    24年4-6月ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/3Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)
    24/4/5 JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療)
    24/4/5 Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)



    今週は以上です。

    2024年3月9日

    第1145回

    【ニュース・ヘッドライン】


  • ALS治療薬の薬効確認試験がフェール 
  • リリーの抗Abeta抗体は、急遽、諮問委員会上程へ 
  • GSKのADC、復活に向けて二の矢も構え 
  • テトラサイクリン系抗菌剤を肺炭疽に適応拡大申請へ 
  • セマグルチド、糖尿病性腎症の悪化を24%抑制 
  • ウコービの心血管リスク抑制作用が承認 
  • オプジーボが膀胱癌一次治療に適応拡大 
  • BTK阻害剤が適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 

  • 【今週の話題】


    ALS治療薬の薬効確認試験がフェール
    (2024年3月8日発表)

    Amylyx(Nasdaq:AMLX)は22年に米国とカナダで筋萎縮性側索硬化症(ALS)治療薬として承認されたRelyvrio(sodium phenylbutyrateとtaurursodiolの合剤、カナダでの製品名Albrioza)の第3相試験がフェールしたと発表した。発症24ヶ月以内のALS患者664人を組入れて48週間投与し、ALSFRS-R(機能評価尺度)の悪化を偽薬群と比較したが、p=0.667と酷い結果になった。副次的評価項目も全て有意な差がなかった。同社は承認審査機関や患者コミュニティに対して治験結果や今後の方針(販売中止を含む)を説明する考え。

    配合成分のうちフェニル酪酸ナトリウムは尿素サイクル異常症の治療に、タウロウルソデオキコール酸は原発性胆汁性肝硬変の治療に、用いられているが、ALSにおいては前者は小胞体、後者はミトコンドリアから始まる神経変性経路を阻害し、神経細胞死を抑制すると考えられている。第2相のCENTAUR試験ではALSFRS-Rがベースラインの36から24週後に29に低下したが偽薬群の26.7低下より少なかった(治療効果2.32、p=0.03)。審査担当者はプロトコルや追跡状況、edaravoneなどの承認薬の使用状況の偏りなどに疑問を呈し、22年に召集された諮問委員会では10人の委員中6人が薬効が確立したとは言えないと判定した。

    しかし、当時の神経科学部門のヘッドだったBilly Dunn氏が難病用薬の承認審査にはフレキシビリティが重要と主張、半年後に再び諮問委員会を招集する異例の事態になり、AmylyxのCEOが第3相フェールなら承認返上も含めて患者にとって最善な対応を行うと明言したことや患者支援団体等の後押しもあり、9人中7人が承認に賛成という「十二人の怒れる男」並みの逆転劇が具現、承認に至った。カナダでは第3相試験の成功を条件とする条件付き承認だったが、FDAは本承認という大盤振る舞いだった。

    Billy Dunn氏が去った後のFDAが変わるか、変わらないか、注目されるところだが、FDAがどう判断したとしても、効果のない薬に年17万ドルも払う患者はいないだろう。

    リンク: 同社のプレスリリース


    リリーの抗Abeta抗体は、急遽、諮問委員会上程へ
    (2024年3月8日発表)

    イーライリリーはアミロイド・ベータ(3-42)を標的とするIgG1型抗体医薬LY3002813(donanemab)を早期アルツハイマー病の治療薬として米国や日本で承認申請している。米国は今四半期中に審査結果が出るはずだったが、今になってFDAから諮問委員会召集を計画している旨の連絡を受けた。日程調整に1ヶ月以上、諮問委員会後の手続きに1ヶ月以上かかるだろうから、承認されるとしても5月以降に遅れるのではないか。

    同社は21年10月にローリング承認申請を開始、完了は22年第1四半期の予定だったが、一旦、年末に予定変更された後、同年8月に承認申請が受理された。優先審査指定されたが、12ヶ月曝露症例数の不足などから23年1月に審査完了通知を受領したため、同年第2四半期に第3相TRAILBLAZETR-ALZ2試験の継続追跡データを提出した。このような場合の審査期間は提出から半年だが3ヶ月延長され、今回、更に遅れることになった。

    イーライリリーのプレスリリースによると、FDAは、安全性や、上記試験のユニークなプロトコルと薬効の関係に関して理解を高めることを目的としている。前者は先に承認されたエーザイ/バイオジェンのLeqembi(lecanemab-irmb)と比べてARIA(アミロイド関連造影異常)という抗アミロイド・ベータ抗体に特徴的な副作用の発現率が高いことに配慮しているのではないかと思われるが、異なった試験のデータを比較する時は真の差との誤差範囲を大きめに考える必要があり、承認を拒否するほど明確な差とは言えないように思われる。便益が不確かでも安全性が高ければ承認する余地があるので、リスクが偽薬並みではないことを併記しておく必要があっただけのことではないだろうか。

    上記試験のユニークな試みは、第一に、アミロイド・プラクが消失したら投与を中止すること。アミロイド・プラクを除去する薬なのだからリーズナブルな治療方針であり、これまでアルツハイマー病薬製薬会社が目を瞑っていた、いつ止めたらいいのかというunmet medical needに応え得る。一方で、何年かしたらまたプラクが蓄積するだろうから、離脱試験(プラクが消失した患者を継続投与群と偽薬スイッチ群に無作為化割付けして転帰を比較する)を行って止めても大丈夫であることを確認すべきではないか、とも思われる。

    第二は、タウの凝集体蓄積量と薬効の関連性を意識していること。今回初めて気づいたが、治験論文の付表によると、スクリーニング対象8240人のうち1631人が基準より少ないという理由で除外されている。これは、アミロイド・プラクが基準以下で除外された患者数と大差ない。主評価項目は蓄積が軽中度である約1100人における症状評価尺度と、高度の患者も含む約1600人の同尺度。どちらも偽薬比有意な差があったが高度の患者だけ見ると大差なかったようだ。となると、医療現場でも、アミロイド・プラクだけでなくタウも事前に検査して軽中度の患者だけに使うほうが良いのかもしれない。一方で、もしそうなら、他の抗アミロイド・ベータ抗体は微小/高度タウ患者にも効くのか、という疑問がわく。

    FDAの側に注目すると、LeqembiやAduhelm(aducanumab-avwa)、そして上記Relyvrioの承認/加速承認を強力に後押ししたBilly Dunn氏がFDAを去ったのはネガティブな材料だ。

    リンク: イーライリリーのプレスリリース

    【新薬開発】


    GSKのADC、復活に向けて二の矢も構え
    (2024年3月7日発表)

    GSKはBlenrep(belantamab mafodotin-blmf)の多発骨髄腫二次治療試験、DREAMM-8が中間解析で主目的のPFS(無進行生存期間)を達成し、独立データ監視委員会の勧告に即して盲検解除したと発表した。データは未公表。再発売に向けて二つ目の良いニュースだ。

    多発骨髄腫の表面分子BCMAを標的とする抗体と細胞毒をリンカーで結合した抗体薬物複合体(ADC)。20年に米欧で主要4剤による治療歴を持つ再発/難治多発骨髄腫用薬として加速承認/条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験として位置付けられていたDREAMM-3試験がフェールしPFSがPdレジメン(pomalidomideと低量dexamethasoneの併用)に勝てなかったため、米国では23年2月に承認取消、EUでも承認が更新されない見込みだ。

    意外なことに、その後は朗報が続いた。昨年11月、二次治療のDREAMM-7試験が成功、Vdレジメン(bortezomibと低量dexamethasoneの併用)に追加する効果をdaratumumab追加と比較したところ、メジアンPFSが36.6ヶ月と対照群の13.4ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.41。全生存の中間解析はハザードレシオ0.57、p=0.00049と数値上は大変良い成績が出ているが、割り当てられたアルファが小さいため有意ではなく、継続追跡する。

    今回の試験も二次治療試験で、Pdレジメン(pomalidomideと低量dexamethasone)に追加する効果をbortezomibと比較した。比較するならBlenrep・bortezomib・低量dexamethasone vs. pomalidomide・bortezomib・低量dexamethasoneのほうが関心を呼ぶのではないかとも感じられるが、いずれにせよ、エビデンスは一本より二本のほうが良い。

    リンク: 同社のプレスリリース


    テトラサイクリン系抗菌剤を肺炭疽に適応拡大申請へ
    (2024年3月5日発表)

    米国ボストンのParatek PharmaceuticalsはNuzyra(omadacycline)の炭疽試験が良好な結果になり適応拡大申請に向けてFDAと相談する考えであることを発表した。肺炭疽は極めて稀だが致死性が高いためテロに用いられるリスクがある。治療はキノロン系抗菌剤のciprofloxacinや抗体医薬などが米国で承認されているが、バイオテロリストがこれらの薬に耐性を持つ細菌を開発するかもしれないので、複数の選択肢が必要だ。

    Nuzyraはテトラサイクリン系のaminomethylcyclineという新しいクラスに属し、テトラサイクリン抵抗菌にも活性を維持、グラム陽性、陰性、嫌気性菌など広いスペクトラムを持ち、経口剤と静注用がある。2018年に米国で本剤に感受する成人の地域感染細菌性肺炎と急性細菌性皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認された。

    今回の試験は炭疽菌に曝露させた非ヒト霊長類に投与する、曝露後予防試験。偽薬群は全頭が10時間以内に死亡したが、試験薬群は全頭が30日以上生存し、60日生存率も90%超だった。

    肺炭疽は十分な症例数の臨床試験を行うのが困難で、且つ、偽薬対照試験は非倫理的であるため、動物試験に基づく承認申請が認められている(『アニマル・ルール』)。欧州のように動物愛護の観点から非ヒト霊長類の試験を禁じている地域もあり、実薬が存在するのだから、今後は実薬対照試験にシフトして犠牲を減らすことを検討しても良いのではないか。

    リンク: 同社のプレスリリース


    セマグルチド、糖尿病性腎症の悪化を24%抑制
    (2024年3月5日発表)

    ノボ ノルディスクは、昨年10月、GLP-1作用剤semaglutideの後期第3相FLOW試験の独立データ監視委員会が目標達成を認定し繰上げ完了を推奨したことを公表したが、半年経って、ヘッドラインが判明した。

    この試験は慢性腎疾患を合併する二型糖尿病患者3533人を組入れて、標準療法にsemaglutide(1mgを週一回皮下注)を追加する便益を偽薬追加群と比較した。主評価項目は腎不全、eGFR半減、透析または腎移植、腎疾患死、心血管死の5項目の何れかが発生するリスク。同社のプレスリリースによると、リスクが24%小さかった。腎疾患関連の評価項目も心血管疾患関連もリスク抑制に貢献した。詳細は学会で発表する予定。

    報道によると、透析サービス大手のDaVitaは、昨年10月時点では、本試験の組み入れ条件に該当する患者は糖尿病性慢性腎疾患の1割足らずに過ぎず、上記5項目のうち一つだけでも事前に設定された条件を満たせば繰上げ中止するプロトコルであるため、詳細が判明するまで過大評価すべきではないとコメントしていた模様だ。他の糖尿病薬と同様にeGFRの悪化を抑制する効果が中心ならSGLT2阻害剤との比較も必要とのことだった。

    そこで、Farxiga(dapagliflozin)のDAPA-CKD試験のデータを見ると、主評価項目(eGFR半減、腎不全、心血管疾患死、または腎臓疾患死)のハザードレシオは0.61、eGFRだけでなく心血管疾患死でも0.81、腎臓疾患死は数が少なく解析不可能だが実数は2人対6人で1/3だった。こちらの試験は二型糖尿病以外の慢性腎疾患も組入れており、直接比較はできないが、結果が発表された当時、こんなに効くのかと驚いた覚えがある。

    リンク: ノボのプレスリリース

    【承認】


    ウコービの心血管リスク抑制作用が承認
    (2024年3月8日発表)

    FDAはノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide)の適応拡大を承認した。心血管疾患で肥満またはオーバーウェイトの成人の心血管死や心筋梗塞、脳卒中を抑制する。心血管アウトカム試験SELECTでは、2.4mgを週一回、皮下注した群が心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の何れかを罹患する偽薬比ハザードレシオは0.80だった。平均40ヶ月の追跡期間中における発生率は6.5%、偽薬群は8.0%なので、1000人に3年超投与すると15人程度を救う計算になる。標準的な治療を受けている患者が対象であるためか、偽薬群の発生率も治療効果もそんなに高くない印象だ。

    ノボ ノルディスクのプレスリリースには心血管死のハザードレシオは0.85、全死亡のハザードレシオは0.81だったと記されているが、その後の長い記述をスクロールして末尾の脚注を見ると、前者の信頼区間は0.71-1.01で優越性は確認されていないこと、全死亡は0.71-0.93だが事前に設定された先行解析である心血管死が有意でなかったのでこちらも有意とは言えないことが明らかにされている。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: ノボのプレスリリース


    オプジーボが膀胱癌一次治療に適応拡大
    (2024年3月7日発表)

    FDAはブリストル マイヤーズ スクイブのOpdivo(nivolumab)を切除不能/転移尿路上皮腫の一次治療に用いることを承認した。cisplatin及びgemcitabineと併用で、60mgを3週毎に最大6サイクル投与し、その後はOpdivoだけを240mg隔週または480mg4週毎のスケジュールで投与する。エビデンスとなるCheckMate-901試験のサブスタディでメジアン生存期間が21.7ヶ月とOpdivoを併用しなかった群の18.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.78だった。共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)も各7.9ヶ月、7.6ヶ月、0.72と有意に改善した。

    ライバルのKeytruda(pembrolizumab)は化学療法併用では承認されていないが、ファイザー/アステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv)との併用が23年12月に米国で承認、日欧で申請中。メジアン生存期間は31.5ヶ月とcisplatinまたはcarboplatinをgemcitabineと併用した群の16.1ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.47、PFSのハザードレシオも0.45で、こちらのレジメンのほうが目を惹く。但し、深刻有害反応の発生率が50%、致死的有害反応は4%となっている。テレビドラマとは異なり、治験薬で3人が死亡したとしても30人が延命するなら許容される。

    リンク: FDAのプレスリリース


    BTK阻害剤が適応拡大
    (2024年3月7日発表)

    FDAはBeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE、HKEX:6160)のBrukinsa(zanubrutinib)を成人の二次以上の治療歴を持つ難治/再発濾胞性リンパ腫にobinutuzumabと併用することを加速承認した。ワルデンシュトレーム・マクログロブリン血症、マントル細胞腫、辺縁帯リンパ腫、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫に次ぐ五つ目の適応になる。第2相ROSEWOOD試験でORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が69%、18ヶ月反応持続率は69%だった。obinutuzumabだけを投与した群のORRは45.8%だった。深刻有害事象発生率は35%。欧州でも1月に適応拡大が認められている。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: BeiGeneのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年3月推BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24/3/4Vanda PharmaceuticalsのHetlioz(tasimelteon、入眠障害追加)
    24/3/13Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)
    24/3/14 Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)
    24/3/14 BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)
    24/3/18 Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)
    24/3/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
    24/3/26MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)
    24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
    24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
    24年4-6月ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/3Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)
    24/4/5 JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療)
    24/4/5 Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)
    諮問委員会
    24/3/5MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)
    24/3/14ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)
    24/3/15ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)



    今週は以上です。

    2024年3月2日

    第1144回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • ACIP、RSVワクチンの有害事象報告を検討 
    • エボラ・ワクチンで濃厚接触者の死亡が半減 
    • Ironwood社、週一回投与型短腸症候群用薬の第3相が成功 
    • GSK、ナイセリア淋病治療試験が成功 
    • Palatinのドライアイ試験、今回も部分的には良績 
    • UCB、米国でもビンゼレックスを乾癬性関節炎などに適応拡大申請 
    • Minerva社のroluperidoneは案の定、承認されず 
    • 抗EGFRxMET抗体を一次治療に承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    ACIP、RSVワクチンの有害事象報告を検討
    (2024年月日発表)

    CDC(米国疾病管理予防センター)のACIP(予防接種の実施に関する諮問委員会)で、23年に初承認されたRSVワクチン2製品の有害事象に関する市販後アップデートがあった。承認時の懸案事項であったギランバレー症候群(GBS)などの深刻有害事象が報告されているものの、RSV感染による入院や死亡を抑制する便益のほうが大きいと結論された。

    VAERS(ワクチン有害事象報告システム)に届出された60歳以上における深刻有害事象はGSKのArexvyが169件(100万回接種当り25.6)、ファイザーのAbrysvoは91件(同29.7)だった。内容は呼吸困難、無力症、疲労、歩行障害など。GBSは30件あり、このうちCDCが確認した症例の100万回当り発生率は各製品1.2と4.6だった。バックグラウンド発生率は文献によると5.2で、ワクチン接種により大きく増加するようには見えなかった(何れも42日間の発生率)。

    一方、メディケアのデータを用いた65歳以上の分析ではArexvyが10、Abrysvoが25で、95%信頼区間はバックグラウンド・データとオーバーラップしているものの、数値上はワクチン接種後が上回った。

    便益は、RSV感染による入院が2年間にArexvyで2400件、Abrysvoも2700件減少すると推定された。入院後の死亡も各120人と140人、減少する見込み。感染後のリスクは年齢と共に上昇するので、便益もArexyの場合で60~64歳はRSV入院の減少が100万回当り1100件だが、65~69歳は1500件、70~74歳は1900人、75~79歳は3200人、80歳以上は6000人と増加していく。年齢以外にも慢性肺疾患や心不全、免疫低下、長期療養施設入居などに該当する人は便益が大きいと予想される。

    60歳以上におけるRSVワクチンの接種率は22%に留まっている。ACIPは接種勧奨を合併症リスクの高い人に限定しているが、懸案であった炎症性神経学的事象に関する市販後監視データが集積され大きな問題が浮上しなければ、限定を緩和するかもしれない。

    リンク: ACIP2月28-29日会議のプレゼン・スライドのリンク頁


    エボラ・ワクチンで濃厚接触者の死亡が半減
    (2024年2月7日発表)

    MSDが開発した弱毒化ザイール種エボラ・ウイルス・ワクチン、Ervebo(rVSV∆G-ZEBOV-GP)の後顧的疫学研究論文がLancet Infectious Diseases誌に刊行された。コンゴ民主共和国(旧ザイール)で流行した18年7月から20年4月に治療を受けた2279人の転帰を調べたところ、未接種者は1015人中570人、56%が死亡したのに対して、接種者は423人中106人、25%に留まった。接種から発症までの期間が長いほどハザードレシオが低かったが、2日以内のケースでも0.56と良好な成績が出た。年齢や性別による偏りは見られなかった。

    コンゴ民主共和国では、18年の再流行時にMSF(国境なき医師団)が上記ワクチンの接種を提案し、政府も反対しなかったことから、MSDが30万回分を備蓄する計画を立てた。しかし、その時点では未承認であったことから東部地域などで反対意見が広がり、政府が接種を終了した。これほど効果が高いのに上記のワクチン接種者数が驚くほど少ないのは、偏見や無理解だけが原因ではないにしても、残念なことだ。エボラの致死率の高さは周知であったのだから、そして、全国民ではなくリスクが特に高い、感染者の濃厚接触者に限定して接種する計画だったのだから、もう少し何とかならなかったのだろうか。

    今回の研究により、発症予防効果だけでなく大きな救命効果もあることが明らかになったので、次回の流行時には広く普及することが期待される。

    リンク: Luqueroらの疫学論文抄録(Lancet Infectious Diseases)

    【新薬開発】


    Ironwood社、週一回投与型短腸症候群用薬の第3相が成功
    (2024年2月29日発表)

    Ironwood Pharmaceuticals(Nasdaq:IRWD)はapraglutideの第3相短腸症候群試験で主目的を達成したと発表した。しかし、結腸の機能が比較的悪化していないサブグループにおける便益が明確でなかったため、株価は下落した。

    武田薬品のGattex(和名レベスティブ、teduglutide)と類似した皮下注用GLP-2類縁体。Gattexは投与頻度が一日一回、Zealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)が昨年12月に米国で承認申請したZP 1848(glepaglutide)は週二回であるのに対して週一回で足りる点が長所。

    第3相のSTARS試験は腸管不全を伴う短腸症候群の成人164人を組入れて経静脈栄養依存の改善を図った。週間経静脈栄養量が24週間で25.5%減少、偽薬群の12.5%減比で有意な差があった。主要な副次的評価項目のうち、経静脈栄養サポートが必要な日数が1日以上減少した患者の比率は43.0%対27.5%、ストーマを有するサブグループにおける経静脈栄養量の減少率は25.6%対7.8%で有意差があったが、colon-in-continuityサブグループにおいて経静脈栄養サポートが必要な日数が1日以上減少した患者の比率は51.8%対44.4%、48週時点で腸自立を達成した患者の比率は12.5%(56人中7人)対7.4%(27人中2人)でどちらもトレンドに留まった。

    評価項目が若干異なるので他の薬の成績と比較するのは難しいが、特に優れているようには見えない。

    23年に買収したスイスのVectivBioの開発品で、元々は実質的な前身企業であるTherachonが18年にカナダのGLyPharma Therapeuticsを買収して入手したもの。日本は旭化成ファーマが開発販売権を取得した。

    リンク: 同社のプレスリリース


    GSK、ナイセリア淋病治療試験が成功
    (2024年2月26日発表)

    GSKは新規作用機序の抗菌剤、GSK2140944(gepotidacin)の第3相非複雑性泌尿生殖器ナイセリア淋病試験で目的を達成した。600人の男女を組入れたEAGLE-1試験で750mg錠4錠を医療施設で一回、10~12時間後に自宅で一回、服用した群の微生物学的奏効率が標準療法群(ceftriaxone筋注とazithromycin経口投与)比で非劣性だった。

    nitrofurantoinに感受しそうな単純性尿路感染症の女性を組入れた第3相二本も750mg錠2錠を一日二回、5日間投与した群の臨床的・微生物学的奏効率がnitrofurantoin群(一日二回、5日コース)と非劣性で、一本では優越性解析も成功したことが昨年、学会発表されている。同社は今年下期に米国で承認申請する考え。

    リンク: 同社のプレスリリース


    Palatinのドライアイ試験、今回も部分的には良績
    (2024年2月28日発表)

    Palatin Technologies(NYSE American:PTN)は、メラノコルチン受容体汎アゴニストPL9643の第3相MELODY-1試験のトップラインを発表した。第2相試験の時と同様に好成績であったかのような書きぶりだが、第2相試験の時と同様に共同主評価項目はどちらもフェールした。何れにせよ承認申請前にもう一本実施するだろうから、有効なのか一歩届かないのか、結論は持ち越しだ。

    この試験は米国の施設でドライアイの患者575人を組入れて、一日3回点眼する効果を偽薬と比較した。主評価項目は12週間治療後の疼痛とリサミングリーン結膜染色。疼痛はp=0.03となったが閾値はクリアできなかった。年齢と性別の調整後では0.025を下回ったと記されているので、おそらく各主評価項目にアルファを0.025ずつ配分したのだろう。目の治療関連有害事象発生率は5.6%(偽薬群は6.3%)、治験中止率は7.0%(同11.1%)だった。

    データを精査してFDAと次の第3相試験について相談する考え。パートナー探しも続ける予定。

    リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)

    【承認申請】


    UCB、米国でもビンゼレックスを乾癬性関節炎などに適応拡大申請
    (2024年2月28日発表)

    UCBはBimzelx(bimekizumab-bkzx)を以下の4疾患に用いる適応拡大をFDAに申請した。この抗IL-17A・抗IL-17-F二重特異性抗体はEUでは21年に、日本でも22年にプラク乾癬など治療薬として承認されたが、米国はCOVID-19流行に伴う連邦政府の渡航制限の影響で工場査察などができなかったことなどから、23年10月に遅れた。そのせいか、適応拡大申請もEUと比べて遅れ気味だ。

    ・乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、X線基準を満たさない体軸性脊椎関節炎・・・EUでは23年6月、日本でも同年12月に承認
    ・化膿性汗腺炎・・・EUでは23年7月に、日本でも同年11月に適応追加申請受理

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    Minerva社のroluperidoneは案の定、承認されず
    (2024年2月27日発表)

    Minerva Neurosciences(Nasdaq:NERV)はroluperidoneを統合失調症の陰性症状治療薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。承認申請前のタイプCミーティングでエビデンス不足を指摘され、承認申請を強行したが受理されず、タイプAミーティングで説得したが受け入れられず、不服申立てしたところ、審査担当者の疑義は承認審査で検討すべきもので受理を拒否する理由にはならないと認められ、やっと受理された。このような経緯なので、門前払いは避けられたが玄関で追い返される結末になった。もしこの薬が本当に価値があるなら、再試験を実施せず3年間を徒に費やした罪は重い。

    roluperidoneは田辺三菱製薬からライセンスしたアルファ-1a、5-HT2A、そしてシグマ-2のアンタゴニスト。米国外で実施された後期第2相試験でPositive and Negative Syndrome Scaleの陰性症状に関わる二つのドメインが偽薬比有意に改善したが、米国の第3相はフェールした。専ら前者の試験に基づき申請したが、FDAはこの薬の治療効果の臨床的な重要性に疑問を呈し、また、モノセラピーとしての申請だがオフレーベルで使用される可能性があるため併用試験で安全性等を確認するよう求めた。更に、申請用量である64mgを12ヶ月以上投与した安全性症例数の不足も指摘した。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認】


    抗EGFRxMET抗体を一次治療に承認
    (2024年3月1日発表)

    FDAはJNJグループのJanssen BiotechのEGFRとMETを標的とする二重特異性抗体、Rybrevant(amivantamab-vmjw)の適応拡大を承認した。EGFR遺伝子にエクソン20欠損変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌の一次治療にcarboplatinおよびpemetrexedと併用するもの。第3相PAPILLON試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン11.4ヶ月とcarboplatin・pemetrexed群の6.7ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.395だった。全生存期間の解析は未成熟だがESMO(欧州臨床腫瘍学会)での発表によるとハザードレシオ0.67、p=0.106と、好ましい方向を指している。

    21年にEGFR遺伝子にエクソン20欠損変異を持ち白金薬レジメンによる治療歴を持つ転移非小細胞性肺癌に単剤投与する薬として加速承認されたが、市販後薬効確認試験を兼ねるPAPILLON試験が成功したため、本承認に切替えられた。

    ところで、carboplatinとpemetrexedの併用法は扁平上皮以外の非小細胞性肺癌に限定されているが、上記試験もRybrevantの適応も限定されていない。上記試験のデータは把握していないが、再発治療試験の患者背景を見ると95%が腺腫とのことなので、扁平上皮腫にはエクソン20欠損がほとんどなく改めて除外する必要がないのだろう。

    エクソン20欠損は非小細胞性肺癌の2~3%を占める希少変異で、初期のEGFR阻害剤に抵抗性を持つ。PAPILLON試験の被験者の約半分は喫煙歴がなく、また、約半分はアジア人種と、かなり偏りがある。

    リンク: FDAのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)
    24年3月推BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)
    24年3月推BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)
    24年3月推アストラゼネカのFluMist(インフルエンザワクチン、自己噴霧解禁)
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24/3/4Vanda PharmaceuticalsのHetlioz(tasimelteon、入眠障害追加)
    24/3/13Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)
    24/3/14 Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)
    24/3/14 BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)
    24/3/18 Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)
    24/3/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
    24/3/26MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)
    24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
    24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
    24年4-6月ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/3Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)
    24/4/5 JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療)
    24/4/5 Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)
    24/4/5BMSのOpdivo(nivolumab、尿路上皮腫化学療法併用一次治療)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)
    諮問委員会
    24/3/5MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)
    24/3/14ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)
    24/3/15ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)



    今週は以上です。