2024年2月25日

第1143回

【ニュース・ヘッドライン】

  • HIV治療薬を飲みたがらない患者には持効性注射薬 
  • タグリッソ、肺癌CRT後維持療法試験が成功 
  • デュピクセントを好酸球性COPDにも申請 
  • セルヴィエ、IDH阻害剤を欧米申請 
  • BMS、KRAS阻害剤を大腸癌に適応拡大申請 
  • 第一三共、第3の抗体医薬を承認申請 
  • 遅報:ネモリズマブが欧米でも承認申請 
  • 遅報:デニロイキンを米国で再申請 
  • 複雑性尿路感染症の複合セフェム、承認がお預けに 
  • FDA、Pepaxtoの承認取消しを遂に決定 
  • CHMP、ALS用薬などの承認に肯定的意見 
  • ESBL産生菌にも強い複合セフェムが承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


HIV治療薬を飲みたがらない患者には持効性注射薬
(2024年2月21日発表)

NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)は、第3相LATITUDE試験の盲検を解除し、経口標準療法群の患者にViiVヘルスケアの持効性注射用薬、Cabenuva(cabotegravir、rilpivirine)にスイッチするよう提案することを決定した。中間解析で全ての評価項目における優越性が見られたため。アドヒアランス(指示通り服薬)に難のあるHIV/AIDS患者にはCabenuvaのほうが良いことが示唆された。但し、データは未公表なので不透明な点が多々ある。

この試験は、共同治験グループのACTGが米国の施設でアドヒアランスに難のあるHIV/AIDS患者を組入れて実施した。ロンチは2019年で、Cabenuvaの承認の2年前。最初にSOC(経口剤3剤による標準療法)を24週間施行してウイルスを抑制してから、継続投与する群とCabenuvaにスイッチする群に無作為化割付けして48週間投与し、治療フェール率(HIV-1 RNAが200c/mL以上に増加、または試験薬の永続的中止)を比較した。

良く分からないのは、アドヒアランスに難がある人がなぜ当初の24週間の治療でウイルス抑制できたのか?おそらく、200c/mLまたは50c/mLの閾値を下回った患者だけを無作為化割付けしたのだろうが、何れにせよ、アドヒアランスに難のある人の中で比較的悪くない人だけをスクリーニングすることにならなかっただろうか?治験登録によると、当初治療段階では目標を達成した被験者に経済的インセンティブを与えたとのことなので、無作為化割付け期間に入った途端、アドヒアランスが本来の姿に戻って急悪化したということなのだろうか?

もう一つの疑問は、前後して実施された承認申請用第3相試験で優越性が見られなかったこととの整合性。初めて治療を受ける患者と、治療歴のある患者の二本の試験とも、48週フェール率(HIV-1 RNAが5c/mL超に増加)が2%となり、SOC継続投与群の各2%と1%と比べて劣っていなかった。
投与中止・追跡不能率はCabenuva群は4%と6%、SOC群は二本とも4%だった。おそらく、LATITUDE試験はこの指標の群間差が大きかったのだろう。

リンク: NIAIDのプレスリリース
リンク: 治験登録(ClinicalTrials.gov)
リンク: ViiVのプレスリリース


タグリッソ、肺癌CRT後維持療法試験が成功
(2024年2月19日発表)

アストラゼネカは、EGFR阻害剤Tagrisso(osimertinib)の第3相LAURA試験で主目的を達成したと発表した。データは学会発表する考え。適応拡大申請も計画している。

切除不能なステージIII非小細胞性肺癌でEGFRに変異を持つ患者216人を組入れて、治癒的化学放射線療法後の維持療法として80mgを一日一回投与したところ、PFS(無進行生存期間)が偽薬比統計的有意な、かつ臨床的に意味のある、改善を見た。副次的評価項目の全生存期間は未成熟で今後も継続するが、改善のトレンドが示された。

Tagrissoはある種のEGFR変異を持つ成人の非小細胞性肺癌のうち、以下のセッティングで使用することが米国などで承認されている:切除可能癌では摘出術後付随療法として単剤投与、局所進行癌では化学療法併用、転移癌では化学療法併用または単剤投与、そしてEGFRチロシン・キナーゼ阻害による治療歴を持つ癌に単剤投与だ。パズルの残ったマス目がまた一つ埋まりそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


デュピクセントを好酸球性COPDにも申請
(2024年2月23日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)と開発販売パートナーのサノフィは、Dupixent(dupilumab)を成人の二型炎症を伴うCOPD(慢性閉塞性肺疾患)に用いる適応拡大を米国で承認申請し受理された。既存薬で治療しても増悪を十分に防げない、管理不良患者に追加投与する。第3相試験では中重度急性増悪頻度が偽薬群より一本では30%、もう一本では34%、少なかった。優先審査を受け、審査期限は24年6月27日。承認されたら米国で30万人程度が適応になると推定されている。

リンク: 両社のプレスリリース


セルヴィエ、IDH阻害剤を欧米申請
(2024年2月20日発表)

セルヴィエは欧米でvorasidenibをIDH変異のあるびまん性グリオーマ用薬として承認申請し受理された。米国は優先審査を受け審査期限は8月20日。EUでも加速審査を受け、年後半に結果が出る見込み。

成人型びまん性グリオーマの2割、ステージ2や3では100%で見られるIDH1/2変異を標的とする経口剤。20年にAgios Pharmaceuticalsから腫瘍学事業を買収して入手した。IDH変異陽性グレード2グリオーマで切除術後に病変が残存または再発し初めて薬物治療を受ける患者を組入れた第3相試験で、PFS(無進行生存期間、盲検独立評価委員会による放射線学的評価)の偽薬比ハザードレシオが0.39、メジアン値は27.7ヶ月と11.1ヶ月だった。G3以上の有害事象発生率は22.8%(偽薬群は13.5%)、G3以上のALT上昇が9.6%(同0%)で発生した。

リンク: セルヴィエのプレスリリース


BMS、KRAS阻害剤を大腸癌に適応拡大申請
(2024年2月20日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブはKrazati(adagrasib)をKRASにG12C変異を持つ局所進行/転移結腸直腸癌に適応拡大申請し受理された。cetuximabと併用する。優先審査を受け、審査期限は6月21日。

エビデンスは、様々な腫瘍に様々な薬と併用または単剤投与する便益を検討しているKRYSTAL-1試験におけるORR(客観的反応率)とのこと。

1月に48億ドルで買収したMirati TherapeuticsのKRAS-G12C阻害剤で、22年に米国でKRAS-G12C変異陽性の局所進行/転移非小細胞性肺癌の2次治療薬として加速承認、先月にはEUでも条件付き承認された。

リンク: BMSのプレスリリース


第一三共、第3のADCを承認申請
(2024年2月19日発表)

第一三共は、アストラゼネカと共同開発している抗体薬物複合体(ADC)、DS-1062(datopotamab deruxtecan、通称Dato-DXd)を米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は12月20日。

非小細胞性肺癌などで発現するTROP2(別名EGP-1)を標的とする抗体とトポイソメラーゼ阻害剤を1対4の比率で結合したもの。非扁平上皮非小細胞性肺癌の2/3次治療に用いることを想定している。

第3相TROPION-Lung01試験で、白金薬、及び、分子標的薬が適応になる場合は当該薬、それ以外は抗PD-1/L1抗体による治療歴を持つ進行/転移非小細胞性肺癌約600人を組入れて6mgを3週毎点滴静注する効果を実薬であるdocetaxelと比較したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.75と統計的に有意な改善を見た。メジアン値は4.4ヶ月対3.7ヶ月とあまり大きな差がない一方で、12ヶ月無進行生存率は30%対18%と比較的大きな差が出ている。共同主評価項目である全生存期間は未だ成熟していないが、昨年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)での発表によると、ハザードレシオ0.90、メジアン値は12.4ヶ月対11.0ヶ月と、あまり大きな差は出ていない。有害事象面ではG3以上の間質性肺疾患(査読後)の発生率が3.4%対1.4%と上回り、過半は死亡した。その過半は病気の進行が原因と見なされているが、気になるところではある。実薬対照試験なので満足すべき、副作用で一人死んでも50人の寿命が1ヶ月延びるなら受け入れるべき、と考えることもできるが、shouldではないだろうから、難しい所だ。

会社側も悩んだのだろう、数値が良好な非扁平上皮サブグループに限定して申請した。PFSのハザードレシオは0.63、メジアン5.6ヶ月対3.7ヶ月、全生存でもハザードレシオ0.77と、臨床的に意味のある差が示唆されている。一方で、扁平上皮肺癌サブグループの全生存期間はdocetaxelより数値上短いことになり、その原因分析も並行して行う必要があるだろう。

悩ましさを一層高めるのは、ギリアド・サイエンシズの抗EGP-1抗体Trodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)の類似した内容・規模の第3相、EVOKE-01試験がフェールしたことだ。全生存期間がdocetaxelを有意に上回らず、扁平上皮腫でも、それ以外でも、数値上上回るだけだった。完全に同じ薬の完全に同じ試験ではないので比較検討できない可能性もあるし、この種の食い違いは特に珍しくもないが、検討課題にはなりうる。

非扁平上皮腫限定でも優先審査指定されなかったところを見ると、FDA側も念入りな検討が必要と考えているのではないか。

リンク: 同社ののプレスリリース(和文、pdfファイル)


遅報:ネモリズマブが欧米でも承認申請
(2024年2月14日発表)

スイスのガルデルマは欧米でnemolizumabを結節性掻痒と青年成人の中度アトピー性皮膚炎の治療薬として承認申請し受理されたと発表した。米国は優先審査を受ける。

中外製薬から日本と台湾以外の市場でライセンスした皮下注用抗IL-31受容体A抗体。日本はマルホが皮膚科領域における開発販売権を取得、22年にアトピー性皮膚炎用薬ミチーガとして承認取得した。

ガルデルマが実施した第3相では、奏効率(IGAが0または1に改善)が結節性掻痒試験では一本が26%(偽薬群は7%)、もう一本は36%(同11%)、アトピー試験では36%(同25%)と38%(同26%)だった。

リンク: ガルデルマのプレスリリース


遅報:デニロイキンを米国で再申請
(2024年2月13日発表)

米国ニュージャージー州のCitius Pharmaceuticals(Nasdaq:CTXR)は、Lymphir(denileukin diftitox)を米国で再承認申請したと発表した。全身性治療歴を持つ成人の難治/再発皮膚T細胞リンパ腫用薬として承認申請したが、23年に審査完了通知を受領したため、製造過程における検査や管理に関する指摘事項に対応・回答したもの。

99年に米国で承認されたONTAK(denileukin diftitox)の高純度新製剤。16年にエーザイから日亜以外での開発販売権を取得したDr. Reddy'sから21年に権利を取得したもの。臨床試験ではステージI~IIIサブグループにおけるORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が36.2%で、95%信頼区間の下限は成否判定閾値である25%と同じだった。メジアン反応持続期間は6.5ヶ月。

Citiusは承認取得後に事業をスピンアウトする考えである模様。

リンク: Citiusのプレスリリース

【承認審査・委員会】


複雑性尿路感染症の複合セフェム、承認がお預けに
(2024年2月23日発表)

米国ペンシルバニア州の未上場新興製薬会社、Venatorx Pharmaceuticalsは、cefepimeと新開発のベータ・ラクタマーゼ阻害剤taniborbactamを感受する微生物による複雑性尿路感染症の治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。CMC(化学、製造、管理)に関わる指摘事項があった模様。薬効や安全性に関する問題は指摘されていない由。

第3相試験では、meropenemを投与した群と比べて奏効率の非劣性検定が成功し、シーケンシャルに実施された優越性検定も成功した。米国ニュージャージー州の未上場製薬会社、Melinta Therapeuticsが米国の開発商業化権を保有している。

リンク: Venatorxのプレスリリース


FDA、Pepaxtoの承認取消しを遂に決定
(2024年2月23日発表)

FDAは3年前に多発骨髄腫のサルベージ療法として加速承認したOncopeptides(Nasdaq Stockholm:ONCO)のPepaxto(melphalan flufenamide)に関して、承認取消しを決定した。市販後薬効確認pomalidomide対照試験がフェールし、PFS(無進行生存期間、治験医評価)が有意に伸びなかっただけでなく、全生存期間のハザードレシオが1.10、メジアン値は19.7ヶ月対25ヶ月と、死亡リスクが高まる可能性が浮上。2023年の法改正を生かして、迅速承認取消に動いた。

欧州では昨年12月に3次治療薬として承認された。同社は承認撤回を示唆したことがあるが、決定ではないようだ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Oncopeptidesのプレスリリース


CHMP、ALS用薬などの承認に肯定的意見
(2024年2月23日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

バイオジェンのQalsody(tofersen)は成人のSOD1(スーパーオキシドディスムターゼ1) 変異型ALS(筋委縮性側索硬化症)のアンチセンス薬。ALSの2%程度、家族性ALSの10%程度が該当する。米国で昨年4月に加速承認、CHMPは例外的環境条項に基づく承認を是認した。臨床試験で脳脊髄液中のSOD1や血漿中のニューロフィラメント軽鎖(神経損傷のマーカー)が減少した。ALSFRS-R機能評価尺度の改善は有意ではなかったが好ましい影響があった。ALSの平均生存期間は2~5年とされるので延命効果が望まれるが、確認されてはいない。

リンク: EMAのプレスリリース

Filspari(sparsentan)はアンジオテンシンIIタイプ1受容体とエンドテリンA受容体のアンタゴニスト。成人の原発性IgA腎症の治療に用いる。昨年2月に米国で加速承認、CHMPも条件付き承認に肯定的意見をまとめた。蛋白尿減少や、腎疾患の進行遅延の便益を持つ。深刻副作用は急性腎障害など。催奇性がある。CSLグループのVifor PharmaがTravere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)から欧州などにおける権利を取得したもの。オリジンはブリストル マイヤーズ スクイブのようだ(BMS-346567)。

腎症治療薬の開発は第3相の中間解析で尿蛋白クレアチニン比の改善作用を確認して加速/条件付き承認を申請し、最終解析でeGFR改善作用を確認して本承認に切替えるのが一般的な手順のようだが、Filspariは最終解析でFDAが推奨する解析方法による主評価項目がフェールした。EU推奨方法による副次的評価は高度ではないものの有意だったので、両機関の評価が注目されたが、CHMPは腎疾患の進行遅延と明記しており、試験成功と受け止めたのだろう。

リンク: EMAのプレスリリース

アストラゼネカ・グループのAlexionのVoydeya(danicopan)は補体D因子を阻害する経口剤。成人のPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)で、同社の補体C5因子阻害剤Soliris(eculizumab)やUltomiris(ravulizumab)による治療を受けても残余溶血性貧血症のある患者に追加投与する。肝機能検査値異常やブレークスリー溶血が生じることがある。他の補体阻害剤と同様に、癌や血液異常の潜在的リスクを否定することができないため監視が必要。1月に日本で承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE、HKEX:6160)のTizveni(tislelizumab)は抗PD-1抗体。成人の局所進行切除不能/転移NSCLC(非小細胞性肺癌)に関する3適応・用法が支持された(腫瘍細胞の50%以上でPD-L1陽性かつEGFR/ALK変異の無い非扁平上皮NSCLCの一次治療にpemetrexed及び白金薬と併用、扁平上皮NSCLCの一次治療にcarboplatin及び(nab-)paclitaxelと併用、そして、白金薬と、もし適応になるならEGFRやALKの分子標的薬による治療歴のあるNSCLCにモノセラピー)。

この活性成分は食道扁平上皮腫の二次治療薬Tevimbraとして昨年9月にEUで承認されているが、NSCLC用途は別製品という扱いのようだ。

21年にノバルティスが欧米日本などの権利をライセンスしたが、FDAが中国だけで実施された試験に疑問を呈したためか、23年9月に返還した。今回の適応のうち、一次治療は中国試験に基づくものと推測される。

リンク: EMAのプレスリリース

インサイトのZynyz(retifanlimab)も抗PD-1抗体。成人の治癒的手術や放射線療法の対象にならない転移/難治局所進行メルケル細胞腫に単剤投与する。条件付き承認ではない。米国では昨年3月に加速承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

CSL SeqirusのA(H5N1)インフルエンザ・ワクチン二品も肯定的意見を得た。一つはzoonotic(人獣共通感染症)ワクチンCelldemic。動物由来の感染症が流行した時に用いる。もう一つはパンデミック・ワクチンIncellipan。条件付き承認で、A(H5N1)型インフルエンザの流行時にパンデミック・ワクチンとして最終承認を申請する。どちらも弱毒化A/turkey/Turkey/1/2005 (H5N1)株 (NIBRG 23)から精製したヘマグルチニンとノイラミニダーゼ表面抗原を配合、MDCK細胞で培養、M59C.1アジュバントを添加、7.5mcg/0.5mL懸濁液。中身は同じようなもので薬事法上の取り扱いが異なるだけなのではないかと感じられる。米国でも20年に同社のAudenzaというパンデミック・ワクチンが承認されている。

リンク: EMAのプレスリリース(Celldemic)
リンク: EMAのプレスリリース(Incellipan)

以下の適応拡大も肯定的意見を得た。

  • JNJグループのJanssen-Cilag InternationalのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel):成人の難治/再発多発骨髄腫における適応範囲が拡大(各種限定のうち、抗CD38抗体歴が削除、lenalidomide抵抗性が追加、前治療歴が3レジメンから1レジメンに緩和)。米国は3月に諮問委員会上程予定。

  • MSDのKeytruda(pembrolizumab):切除可能非小細胞性肺癌で再発リスクが高い患者の術前、術後アジュバント。米国は昨年10月に承認。

  • ブリストル マイヤーズ スクイブのReblozyl(luspatercept):骨髄異形成症候群における赤血球生成刺激剤不応という限定を解除。

  • 【承認】


    ESBL産生菌にも強い複合セフェムが承認
    (2024年2月22日発表)

    FDAはフランスのAllecra Therapeuticsが承認申請したExblifep(cefepime、enmetazobactam)を成人の感受する微生物による複雑尿路感染症(腎盂腎炎を含む)の治療薬として承認した。前者は第4世代セファロスポリン、後者は新開発のベータ・ラクタマーゼ阻害剤。第3相試験では総合的奏効率が79.1%とpiperacillin及びtazobactam(Zosynの配合成分)を投与した群の58.9%を上回り、非劣性解析だけでなく優越性解析も成功した。ESBL(基質特異性拡張型ベータ・ラクタマーゼ)産生菌サブグループにも73.7%対51.5%と良好な成果を上げた。治療時発現深刻有害事象の発生率は各群4.3%と3.7%だった。

    EUでは1月に成人の複雑尿路感染症、院内感染肺炎、これらの感染に伴う菌血症の治療薬としてCHMPの肯定的意見を受けている。

    Allecraは未上場のベンチャー系企業であるためか、承認に関するプレスリリースは発出していない(2月25日時点)。

    リンク: FDAのAllecra社宛て承認通知(pdfファイル)
    リンク: Exblifepの処方情報(FDAサイト、pdfファイル)

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)
    24/2/26 Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)
    24年3月推BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)
    24年3月推BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24/3/4Vanda PharmaceuticalsのHetlioz(tasimelteon、入眠障害追加)
    24/3/13Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)
    24/3/14 Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)
    24/3/14 BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)
    24/3/18 Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)
    24/3/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
    24/3/26MSDのMK-7962(sotatercept、肺動脈高血圧症)
    24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
    24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
    諮問委員会
    24/3/5MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)
    24/3/14ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)
    24/3/15ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)



    今週は以上です。

    2024年2月17日

    第1142回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • ソルビトール脱水素酵素欠乏症の第3相中間解析が成功 
    • 経口遺伝性血管浮腫発作治療薬の第3相が成功 
    • 大塚、アルツハイマー性アジテーションの第3相がフェール 
    • CSLもapoA-Iの心筋梗塞再発予防試験がフェール 
    • サレプタ、DMD用薬の対象年齢拡大を申請 
    • タピナロフをアトピーに適応追加申請 
    • BMS、AugtyroをNTRK融合型固形癌に適応拡大申請 
    • PPARデルタ・アゴニストを原発性胆管炎に承認申請 
    • BridgeBio、ATTR-CM用薬を承認申請 
    • タグリッソを一次治療にも承認 
    • ゾレアを突発的食物アレルギー抑制に適応拡大 
    • T細胞療法を悪性黒色腫に加速承認 
    • メルクのc-MET阻害剤、米国で本承認に切替 
    • 初の凍傷治療薬が承認 
    • FDA、オニバイドを一次治療にも承認 
    • 武田、budesonideの粘性懸濁液が好酸球性食道炎に承認
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    ソルビトール脱水素酵素欠乏症の第3相中間解析が成功
    (2024年2月15日発表)

    Applied Therapeutics(Nasdaq:APLT)はアルドース還元酵素阻害剤AT-007(govorestat)をガラクトース血症やSORD(ソルビトール脱酸素酵素)欠乏症などに開発し、前者は昨年12月に欧米で承認申請したばかりだが、後者も第2/3相の中間解析で主評価項目を達成した。FDAと承認申請に向けて相談する考え。複雑な試験で良く分からないところが多々あるが、酵素欠乏による希少疾患用なので容認されるかもしれない。

    この第2/3相試験は複数回の中間解析で様々な便益を評価していることが印象的。昨年2月には、50人の中間解析で血漿sorbitol水準が90日間の治療により平均52%低下したことが発表された。今回は56人の12ヶ月解析で、共同主評価項目のうち、ソルビトール水準の低下はp<0.001、ソルビトール水準と複合臨床的評価項目(10メートル歩行走行テスト、4段昇段テスト、座位起立テスト、6分歩行テスト、背屈テストに基づく)の相関性はp=0.05となった。

    この試験の最終的な主評価項目は24ヶ月時点の10メートル歩行走行テストとなっており、同社は引き続き追跡する予定。

    SORD欠乏症は遺伝性疾患でCharcot-Marie-Tooth病の一形態。米国の罹患者数は3300人、欧州は4000人と推定されている。

    古典的ガラクトース血症の第3相は主評価項目はフェールしたが複合評価指標における幾つかの症状は改善が見られたため承認申請した。EMAは承認申請を受理、FDAが受理するかどうかはもうそろそろ明らかになるだろう。SORD欠乏症も酵素欠乏による希少遺伝性疾患なので、有害代謝物であるガラクチトールが減少し、臨床的な便益を支持するある程度のエビデンスを収集できれば、承認される可能性がありそうだ。

    リンク: 同社のプレスリリース


    経口遺伝性血管浮腫発作治療薬の第3相が成功
    (2024年2月13日発表)

    KalVista Pharmaceuticals(Nasdaq:KALV)は、KVD900(sebetralstat)の第3相遺伝性血管浮腫(HAE)発作治療試験が良好な結果になったと発表した。24年上期に米国で、下期までに欧日でも、承認申請する考え。初めての経口剤なので、発作後に注射用薬より早い段階で服用される可能性があり、更に早く症状緩和できるようになるかもしれない。

    血漿カリクレイン阻害剤。第2相試験で服用後12時間以内にレスキュー治療が必要になった患者が15%と偽薬群の半分に留まり、副次的評価項目である症状改善までの時間も1.6時間と偽薬群の9時間より大きく短縮された。第3相のKONFIDENT試験では12歳以上の小児成人患者136人を偽薬群、新たに設定された300mg群、そして600mg群に無作為化割付けした。110人で264回発作が起き、症状改善が始まるまでのメジアン時間は各群6.72時間、1.61時間、1.79時間で、両用量とも偽薬比有意な違いがあった。シーケンシャルに実施された副次的評価項目の解析は、重症度緩和奏効率も、完解までの時間も、両用量とも有意な差があった。24時間完解率は各群28%、44%、52%。

    この試験は発作予防薬を用いている患者も組み入れており、両群合わせて24人で58回の発作が起きたが、このような患者にも効果が見られた。

    治療関連有害事象の発生率は各群4.8%、2.3%、2.2%と大差なく、深刻例はなかった。有害事象による治験離脱もなかった。

    リンク: 同社のプレスリリース


    大塚、アルツハイマー性アジテーションの第3相がフェール
    (2024年2月13日発表)

    大塚製薬は、AVP-786(deudextromethorphan hydrobromide, quinidine sulfate)の第3相試験がフェ-ルしたと発表した。アルツハイマー型認知症における攻撃的言動などのアジテーション症状を改善する効果を検討したが、2用量群共に偽薬比有意な差がなかった。有害事象は転倒が増加した。

    15年に買収したAvanir Pharmaceuticalsが12年にConcert Pharmaceuticalsからライセンスしたもの。10年に米国で情動調節障害治療薬として承認されたNuedexta(dextromethorphan、quinidine sulfate)の類似品で、NMDA受容体拮抗・シグマ-1作動剤dextromethorphanの水素を重水素に置換することでCYP2D6による代謝を抑制、2D6を阻害するために併用するquinidineの用量を減らすことを可能にした。

    Nuedextaはアルツハイマー病患者などのアジテーションに流用されることがあり、19年には介護施設の認知症患者に投与した医師にAvanirがキックバックを払っていたとされる件で米国司法省と1.16億ドルの司法和解を結んでいる。Nuedextaが果たせなかった治験成功をAVP-786が達成できれば良かったが、実現しなかった。

    リンク: 大塚のプレスリリース(和文、pdfファイル)


    CSLもapoA-Iの心筋梗塞再発予防試験がフェール
    (2024年2月11日発表)

    CSL(ASX:CSL)はヒト由来アポリポプロテインA-Iの第3相AEGIS-II試験がフェールしたと発表した。急性心筋梗塞の診断から5日以内で、PCI/薬物治療後の再発リスクが高い18200人を、試験薬と偽薬に2対1割付けして週一回、4回静注し、90日間のMACE(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)を追跡したもの。データは4月6日にACC(米国心臓学会)で発表する考え。

    後期第2相試験でも30日MACEを改善する作用は見られなかったが、検出力不足だったので結論が出せなかった。

    HDLの主構成物質であるアポA-Iは、Medicine CompanyもA-Iミラノという心血管疾患リスクの低さと関連する多型の遺伝子組換え版を用いてIVUS(血管内超音波)試験を行ったが、16年にフェールした。

    リンク: CSLのプレスリリース

    【承認申請】


    サレプタ、DMD用薬の対象年齢拡大を申請
    (2024年2月16日発表)

    サレプタ・セラピューティックスはElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)の加速承認を本承認に切替えるとともに、歩行可能な4~5才児という限定を解除すべく、FDAに追加申請し受理された。審査期限は6月21日。

    第3相EMBARK試験に基づく。主評価項目の52週North Star Ambulatory Assessment総合スコアは偽薬比有意に改善しなかったものの、副次的評価項目のうつ伏せから起立までの時間(ベースラインの3.5秒から偽薬調整後0.67秒低下)や10メートル歩行走行テスト(4.8秒から同0.42秒低下)が有意に改善した。治療関連深刻有害事象の発生率は11%(偽薬群は0%)だった。

    Elevidysはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子療法。ある程度機能するマイクロジストロフィンの遺伝子をアデノ随伴ウイルスベクターで導入する。

    リンク: 同社のプレスリリース


    タピナロフをアトピーに適応追加申請
    (2024年2月14日発表)

    Roivant Sciences(Nasdaq:ROIV)の皮膚病領域における子会社であるDermavant Sciencesは、Vtama(tapinarof 1%クリーム)を2歳以上のアトピー性皮膚炎の治療薬としてFDAに適応追加申請した。2歳以上の中重度アトピー性皮膚炎を組入れた二本の試験で、奏効率(Validated Investigator Global Assessment for Atopic Dermatitisで評価)が一本は46%(偽薬群は18%)、もう一本は45%(同14%)だった。有害事象は、乾癬試験と同様に、毛包炎などの発生率が偽薬群を上回った。

    アリル炭化水素受容体調節剤で、表皮細胞の新陳代謝やバリア形成にかかわる遺伝子の発現を促す。22年に米国で乾癬治療薬として承認され、日本でもJTが乾癬に承認申請中。

    リンク: 同社のプレスリリース


    BMS、AugtyroをNTRK融合型固形癌に適応拡大申請
    (2024年2月14日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブは、Augtyro(repotrectinib)を12歳以上のNTRK(Neurotrophic tropomyosin kinase receptors)遺伝子融合のある局所進行/転移/切除不適な固形癌に米国で適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は6月15日。

    ROS1やTRK、ALKを阻害する経口剤で、昨年11月に米国で成人のROS1再編成のある局所進行/転移非小細胞性肺癌に承認された。日欧でも承認審査中だが、EUでは今回の適応も申請している。22年に74億ドルで買収したTurning Point Therapeuticsの開発品。

    リンク: BMSのプレスリリース


    PPARデルタ・アゴニストを原発性胆管炎に承認申請
    (2024年2月12日発表)

    CymaBay Therapeutics(Nasdaq:CBAY)はseladelparを原発性胆管炎の管理薬としてFDAに承認申請し、受理された。優先審査を受け、審査期限は8月14日。EUでも上期中に承認申請する考え。日本は昨年、科研製薬が開発商業化権を取得した。

    18年前にJohnson and JohnsonからライセンスしたPPARデルタ・アゴニスト。類薬はイプセンがGenfit(Nasdaq:GNFT)からライセンスしたelafibranorを一足先に欧米で承認申請し、米国の審査期限は6月10日となっている。どちらも成人の、UDCA(ursodeoxycholic acid)に十分応答しないまたは不耐の患者が対象。第3相は主評価項目の定義が異なるのか偽薬群の奏効率がかなり異なっており、効果を比較するのは現時点では難しそうだ。

    同日、ギリアド・サイエンシズによる企業買収で合意したことも発表した。一株当たり32.5ドル、先週末の株価比27%のプレミアム、総額はエクイティ・バリュー・ベースで43億ドル。

    リンク: CymaBay のプレスリリース(NDA)
    リンク: ギリアドとCymaBayのプレスリリース(買収合意)


    BridgeBio、ATTR-CM用薬を承認申請
    (2024年2月5日発表)

    BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)はacoramidisをATTR心筋症(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)用薬として欧米で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は11月29日。

    スタンフォード大学発のコンパウンドで、トランスサイレチンの4量体構造に結合し安定化させ、アミロイドーシスに至るプロセスを妨げる。第3相ATTRibute-CM試験でNYHAクラスIとIIの患者632人を800mgを一日二回経口投与する群と偽薬群に2対1割付けして転帰を比較したところ、パートAの主評価項目である12ヶ月後の6分歩行テストはフェールしたが、パートBの30ヶ月複合評価項目のWin Ratioが1.8、p<0.0001となり、成功した。構成項目のうち全死亡だけの副次的評価はp=0.057と有意ではなかったが、心血管入院が50%少なかったことなどが寄与した模様だ。

    Win Ratio法は、各群1例ずつをランダムに選択して優先順位に即して勝ち負けを決める。例えば、投与開始の半年後に各群1人ずつ心筋梗塞を発症し、偽薬群は即死、試験薬群はその半年後に死亡したようなケースでは、一般的な解析法であるtime-to-event法では優劣無しと評価されるが、Win Ratio法では最優先となる全死亡時期に半年の違いがあるため試験薬の勝ちとなる。Win Ratio法を採用したのは、主評価項目の構成が全死亡、心血管関連入院、NT-proBNPの変化、6分歩行距離となっており重要性がかなり異なるためだ。

    日本の権利はアクテリオンが取得、先日、ブリッジング・スタディの30ヶ月生存率が対照群より高かった旨を発表している。

    リンク: BridgeBioのプレスリリース

    【承認】


    タグリッソを一次治療にも承認
    (2024年2月16日発表)

    FDAはアストラゼネカのTagrisso(osimertinib)を一次治療に使うことを認めた。EGFRの遺伝子にエクソン19欠損又はエクソン21のL878R変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌における、再発治療限定を解除するもの。白金薬ベースの化学療法と併用する。FLAURA2試験でPFS(無進行生存期間)のメジアン値が25.5ヶ月とTagrissoだけを投与した群の16.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62だった。副次的評価項目の全生存期間については、目標進捗率が45%と未成熟だが損なわれるようなトレンドは観察されていない、という文言がレーベルに記載された。G3以上の有害事象の発生率は64%とTagresso単剤群の27%を上回った。骨髄抑制などにより被験者の半数近くが何れかの薬を中止した。

    FDAは今回の申請を、優先審査、ファースト・トラック、再生医療先端治療、そして希少疾患として指定し審査した。

    リンク: FDAのプレスリリース


    ゾレアを突発的食物アレルギー抑制に適応拡大
    (2024年2月16日発表)

    FDAはジェネンテックのXolair(omalizumab)を1歳以上の免疫グロブリンE(IgE)調停性食物アレルギーを抑制する目的で使用することを認めた。突発的な曝露に備える趣旨であり、少数だが応答しない患者もいるため、アレルゲンを回避する努力は続ける必要がある。

    抗IgE抗体で、米国では03年に管理不良喘息症用薬として承認され、その後、ある種の慢性副鼻腔炎や蕁麻疹に適応拡大した。今回のエビデンスとなったのはNIH(米国立医療研究所)が主導したアレルゲン・チャレンジ試験。ピーナツに加えてもう一つの食品にアレルギーを持つ1~17歳の168人を組入れて16~20週間治療したところ、68%の患者が600mg以上のピーナツ蛋白(約2.5個分)を摂取しても中等度以上のアレルギー症状を起こさなかった(偽薬群は6%)。一方で、17%の患者は耐容量が増えなかった。

    カシューナッツでは42%、牛乳は66%、卵は67%が中等度以上のアレルギー症状を起こさなかった。

    Xolairはアナフィラキシーのリスクが枠付き警告されている。

    リンク: FDAのプレスリリース


    T細胞療法を悪性黒色腫に加速承認
    (2024年2月16日発表)

    FDAはIovance Biotherapeutics(Nasdaq:IOVA)のAmtagvi(lifileucel)を成人の切除不能/転移黒色腫用薬として加速承認した。PD-1標的抗体医薬(BRAFにV600変異を持つ場合はBRAF阻害剤も)による治療歴を持つ患者が適応になる。臨床試験におけるORR(客観的反応率、解析対象73人)は31.5%、反応持続期間のメジアン値は未達、反応者の43.5%は12ヶ月以上持続した。枠付き警告は、治療関連死(160人中12人)、重度の血球減少(G3以上の熱性好中球減少症発生率47%)、感染症、心肺症、腎障害。

    切除した腫瘍細胞から採取し培養した腫瘍浸潤リンパ球(主としてCD4/CD8陽性T細胞)の細胞療法。リンパ枯渇療法を7日間施行した後に投与し、その後2~4日間、遺伝子組換えIL-2製剤を12時間おきに投与して増殖を促す。

    当初は20年に承認申請の予定だったが、腫瘍抗原を認識するT細胞がどの程度あるのか測定することが難しいため、FDAが力価アッセイに関して様々な追加データを要求、承認申請が23年3月に遅れ、審査期間も延長された。

    リンク: FDAのプレスリリース


    メルクのc-MET阻害剤、米国で本承認に切替
    (2024年2月15日発表)

    FDAはメルクの米国子会社であるEMDセラノのTepmetko(tepotinib)をMET遺伝子にエクソン14スキップのある転移非小細胞性肺癌に承認した。この適応は21年に加速承認した時と同じ。薬効評価方法もORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)と反応持続期間で同じ。臨床試験が進捗し、症例数が約310人とほぼ倍増、反応持続期間の追跡期間も増加したため、本承認に切り替えた。通常は無作為化割付け対照試験で延命またはそれに準じる効果を確認する必要があるが、希少疾患用の分子標的薬ではFDAがフレキシブルな対応を行うことがある。

    リンク: FDAのプレスリリース


    初の凍傷治療薬が承認
    (2024年2月14日発表)

    FDAは、Eicos SciencesのAurlumyn(iloprost)を成人の重度凍傷の治療薬として承認した。指切除のリスクを抑制する。有害事象は頭痛、紅潮、動悸、悪心嘔吐などで、症候性低血圧のリスクが警告注意されている。

    プロスタグランディンI2の類縁体で、他社の吸入用製剤が肺高血圧症治療薬として欧米日で承認されている。Aurlumynは静注点滴用製剤で、臨床試験では一日6時間、最大8日間投与した。パッケージ・インサートが未公開なのでエビデンスは明らかではないが、FDAのリリースで参照されている、フランスで行われた治験研究と推測される。スキー・リゾートとして有名なシャモニーの医師が2011年にNew England Journal of Medicine誌に寄稿した治験報告によると、96年から08年に山岳救助隊に運ばれてきた重度凍傷患者47人に、復温に加えてアスピリンと血管拡張剤buflomedilの静注を施行した上で3群に割付けて最大8日間治療し、骨スキャンで指切断が必要と判定されるリスクを比較した。アスピリン・buflomedil継続投与群は60%が指切断判定されたのに対して、アスピリン・iloprost併用群は0%、アスピリン・iloprostに加えて初日だけrTPAを投与した群は19%だった。

    尚、buflomedilは欧州の一部国で末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)の治療に長年用いられていたが、安全域が狭く、PAOD患者がしばしば合併する腎障害で曝露が増加することなどが響き、痙攣や癲癇重積症の副作用が報告され、2011年にフランスが承認停止、翌年、欧州委員会も承認停止を勧告した。

    EicosはCiVi Biopharmaの子会社で、どちらも未上場。設立は上記論文の刊行より後なので、既存の活性成分と既存の治験記録を活用して承認を取得する企業戦略なのかもしれない。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: Cauchyらの治験報告書簡(N Engl J Med 2011; 364:189-190)
    リンク: Wilderness Medical Societyの凍傷予防治療ガイドライン


    FDA、オニバイドを一次治療にも承認
    (2024年月日発表)

    FDAはイプセンのOnivyde(irinotecanリポソーム製剤)を転移膵臓腺腫の一次治療に用いる適応拡大を承認した。50mg/m2を90分点滴静注、oxaliplatinを120分点滴静注、leucovorin30分点滴静注、fluorouracil46時間点滴静注という順番のコースを2週毎に施行する。

    未治療の転移膵管腺腫を組入れた第3相NAPOLI 3試験で、メジアン生存期間が11.1ヶ月と、nab-paclitaxelとgemcitabineを併用した群の9.2ヶ月を僅かに上回り、ハザードレシオは0.83、p=0.04だった。副次的評価項目のPFS(無進行生存期間)はメジアン7.4ヶ月対5.6ヶ月、ハザードレシオは0.69。G3/4の治療時発現有害事象は下痢や悪心、疲労が低カリウム血症の発生率が上回った一方、骨髄抑制は下回った。

    Onivydeは15~16年に米欧で、20年には日本でも、二次治療に承認された。17年にMerrimack Pharmaceuticalsから関連資産を取得したもの。今回の承認に伴い225百万ドルの目標達成金を貰えるMerrimackは、5月に特別株主総会を招集し、会社清算の承認を得る考え。

    リンク: FDAのプレスリリース


    武田、budesonideの粘性懸濁液が好酸球性食道炎に承認
    (2024年2月12日発表)

    武田薬品は、FDAがEohilia(budesonide)を11歳以上の小児・成人の好酸球性食道炎の治療薬として承認したと発表した。一巡目の審査は期限超過の末に審査完了となり、追加試験を推奨されたことから一時は開発中止となったが、何とかゴールにたどり着いた。

    budesonideの粘着付着性局所性経口剤。2mg/10mLを一日二回、経口投与する。ゲル・ボールペンのインクはフリクション・ボールが紙の上で転がると液状化し、紙の上で再び固形化する。Eohiliaも同様なメカニズムを利用しており、10秒以上シェイクして粘度を落としてから服用する。

    当方が把握している範囲では、08年にVerus PharmaceuticalsがMeritage Pharmaに権利を譲渡、11年にViroPharmaがMeritage買収オプションを取得、13年にViroPharmaを買収したShireが15年にオプション行使、19年に武田がShireを買収という経緯。

    好酸球性食道炎では22~23年にRegeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab)が米欧で適応拡大した。皮下注用で、従来治療法に不応不適な患者に限定されている。年齢下限は昨年、米国で、1歳に引き下げられた。もう一つの違いは、Eohiliaは12週を超える投与の有効性や安全性が確認されていない。最初にEohiliaの12週コースを施行し、不十分/不耐ならDupixentにスイッチするイメージだろう。

    リンク: 武田薬品のプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)
    24/2/22 Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)
    24/2/26 Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)
    24年3月推BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)
    24年3月推BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24/3/13Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)
    24/3/14 Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)
    24/3/14 BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)
    24/3/18 Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)
    24/3/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
    24/3/26MSDのMK-7962( sotatercept、肺動脈高血圧症)
    24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
    24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
    諮問委員会
    24/3/5MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)
    24/3/14ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)
    24/3/15ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)



    今週は以上です。

    2024年2月10日

    第1141回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • ハンター症候群の遺伝子療法試験が成功 
    • リリー、デュラグルチドの第2相脂肪性肝炎試験が成功 
    • Vertex、膿疱性線維症新薬の第3相がポジティブな結果に 
    • JNJの抗FcR抗体も筋無力症試験が成功 
    • Blenrep shall return 
    • ギリアド、二剤の第3相がフェール 
    • BMS、オプジーボを肺癌術前術後補助療法として承認申請 
    • PRAC、パキロビッドと一部の免疫抑制剤の併用注意喚起 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    ハンター症候群の遺伝子療法試験が成功
    (2024年2月7日発表)

    米国のRegenxbio(Nasdaq:RGNX)は、RGX-121のハンター症候群(別名ムコ多糖症II型)におけるpivotal試験で主目的を達成したと発表した。24年下期にFDAに加速承認を申請する考え。

    ハンター症候群はX染色体劣性遺伝性疾患。ライソソームのI2S(iduronate-2-sulfatase)遺伝子が欠乏し、ヘパラン硫酸などが分解されずに蓄積、発達障害をもたらす。米国では年30~40人の新生児が診断される。治療は週一回、まる一日をかけて酵素補充療法(ERT)を受ける。RGX-121はヒトI2Sの遺伝子をAAV9ベクターを用いて中枢神経系に導入する。第1/2/3相CAMPSIITE試験では5歳までの神経障害性ハンター症候群患者に脳の大槽(一部の患者は脳室内)に一回投与し、その後の48週間、免疫抑制療法を施行した。薬効は、疾病活動性のサロゲート・マーカーとされるヘパラン硫酸のD2S6コンポーネントの脳脊髄液における水準の変化で評価した

    用量変動パートでは15人の第16週D2S6が用量に応じて30~78%低下した。追跡期間が長い、最低用量を投与した3人は4年後も低水準を維持した。最大用量の2.9x10^11gc/gを投与した5人中4人はERTが不要になった。最大用量をpivotalパートで10人に投与したところ、第16週D2S6が86%低下し、8人は正常水準に達した。

    有害事象はウイルスや細菌の感染症が見られるが、薬物や免疫抑制との関連性は否定されたようだ。pivotalパートでは肝機能検査値異常の深刻有害事象が1例発生したが、ステロイド治療で解消した。

    ヘパラン硫酸削減効果に基づく承認は、日本ではJCRファーマの遺伝子組換え酵素補充療法イズカーゴ(パビナフスプアルファ)が21年に承認されているが、米国では本剤が初となる見込み。

    リンク: 同社のプレスリリース


    リリー、デュラグルチドの第2相脂肪性肝炎試験が成功
    (2024年2月6日発表)

    イーライリリーは2023年決算発表に合わせてパイプライン・アップデートを行った。GLP-1/GIP受容体アゴニストtirzepatideの第2相MASH(代謝障害関連脂肪性肝炎、旧NASH)試験が主目的を達成し、CDK4/6阻害剤Verzenio(abemaciclib)の第3相前立腺癌試験はフェールした。

    tirzepatideは二型糖尿病薬Mounjaroや体重管理薬Zepboundの活性成分で、MASH領域でも期待の新薬だ。第2相SYNERGY-NASH試験ではステージ2と3の患者を偽薬、5mg、10mg、15mgに無作為化割付けして52週間治療し、奏効率を比較した。奏功の定義は、主評価項目ではMASHが解消し線維症が悪化しないこと。副次的評価項目では線維症が1段階以上改善しMASHが悪化しないこと。前者は各群12.6%、51.8%、63.1%、73.9%となり、3用量とも偽薬比統計的に有意だった。MASH領域の他の開発品の数値と見比べても良さそうだ(比較可能性があるとは限らないが)。後者は全用量とも臨床的に意味のある数値が出たとのことだが、統計的に有意とは記されていない(第2相なので検出力がないのかもしれないが)。

    同社とノボ ノルディスクのGLP-1作用剤はスタチンや抗PD-1抗体に続く超大型製品に育っている。リリーのTrulicityとMounjaro、Zepboundの合計売上高は22年の79億ドルが23年には124億ドルに増加、同年第4四半期だけ見ると年率160億ドルに膨れ上がり、それでも、(二社とも)供給が需要に追い付かない状態だ。

    リンク: 同社の23Q4決算プレゼン用スライド(P.17に関連図表)

    一方、Verzenioは第3相CYCLONE-2試験で転移去勢抵抗性前立腺癌にabirateroneと併用する便益を検討したが、PFS(無進行生存期間、放射線学的評価)がabiraterone・偽薬併用群を有意に上回らなかった。

    リンク: 同社の23Q4決算リリース


    Vertex、膿疱性線維症新薬の第3相がポジティブな結果に
    (2024年2月5日発表)

    Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)は膿疱性線維症薬として開発しているトリプル・コンビ・レジメンの第3相試験がポジティブな結果になったと発表した。24年央までにグローバルな承認申請を行う予定。米国では優先審査バウチャを用いて審査期間短縮を図る。

    vanza tripleと通称される開発品は、CFTRコレクターのVX-121(vanzacaftor)とVX-661(tezacaftor)及びCFTRポテンシエーターVX-561(deutivacaftor)の配合剤。第3相は、二本の試験に12歳以上のこれらの薬剤に感受する変異型を持つ膿疱性線維症患者を組入れて、一日一回経口投与する便益を、同社の既存製品であるTrikafta(elexacaftor、tezacaftor、ivacaftorの配合剤)を朝に、Kalydeco(ivacaftor)を夕に、経口投与する群と比較した。ラン・イン期間に全員にTrikaftaレジメンによる治療を施行した後の数値との比較なので、新製品にスイッチする当否を検討したわけだ。三剤の用量は、新製品が各20mg、100mg、250mg、Trikaftaレジメンは朝は各100mg、50mg、75mg、夕はivacaftorだけ75mgとなっており、共通成分であるtezacaftorの用量も異なっている。

    主目的である第24週のppFEV1(一秒量の予測値比パーセント)は二本とも非劣性解析が成功した。ベースライン値比増減の群間差は二本とも0.2%だった。副次的評価項目である汗中塩化物奏効率(汗中塩化物検査値が膿疱性線維症の診断基準である60mmol/Lを下回った患者の比率)はスイッチ群ではベースライン値の76%から86%に10%改善したのに対して、継続群では74%から76%に微増に留まり、有意な差があった。安全性は大きな群間差はなかった。

    もう一本のRIDGELINE 105試験は6~11歳の感受変異型を持つ膿疱性線維症を組入れた単群試験。主目的は安全性だが、副次的評価項目の第24週汗中塩化物はTrikaftaラン・イン後のベースライン値と比べて8.6mmol/L改善。汗中塩化物奏効率はベースラインの84%から95%に改善した。

    Trikaftaからスイッチさせるには患者や医師、保健機関などにメリットをアピールする必要がある。塩化物の汗中浸出が減少する意義をどれだけアピールできるか、且つ又、価格でどれだけアピールできるかが課題になりそうだ。同社にとっては、第3者に支払うべき売上ロイヤルティ率が既存製品より低いことに加えて、おそらく知的所有権の有効期間も長いのだろう。

    リンク: 同社のプレスリリース


    JNJの抗FcR抗体も筋無力症試験が成功
    (2024年2月5日発表)

    ジョンソン・エンド・ジョンソンはJNJ-80202135(nipocalimab)の第3相重症筋無力症(gMG)試験が成功したと発表した。当局と相談する考え。シェーグレン症候群の第2相用量変動試験が良好な結果になったことも明らかにした。

    20年にMomenta Pharmaceuticalsを買収して入手した、胎児性Fc受容体(FcRn)に結合するアグリコシル化抗体。抗FcRn抗体は21~22年にargenx(Nasdaq:ARGX)の抗体フラグメント、Vyvgart(efgartigimod alfa-fcab)が、23~24年にはUCBのIgG4型抗体、Rystiggo(rozanolixizumab-noli)も、米日欧で抗アセチルコリン受容体抗体陽性のgMGなどに承認されている。JNJの開発の特徴は様々な用途にテストしていることで、23年に早発性重度胎児新生児溶血性疾患(EOS-HDFN)の第2相が成功、CIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経炎)の第2/3相試験も進行中だ。

    第3相gMG試験、VIVACITYは標準療法の効果が不十分な成人の中重度gMG患者を組入れて2週毎静注し、第22~24週のMG-ADLを偽薬群と比較した。データは未発表。第2相では4用量・用法群ともMG-ADL2ポイント低下奏効率が52%と偽薬群の15%を有意に上回った。

    リンク: JNJのプレスリリース


    Blenrep shall return
    (2024年2月5日発表)

    GSKは、昨年11月、Blenrep(belantamab mafodotin-blmf)の第3相多発骨髄腫試験、DREAMM-7で主目的を達成したと発表したが、2月のASCO(米国臨床腫瘍学会)Plenary Seriesでデータが発表された。全生存期間のデータが成熟するのを待って承認申請に向かうのでないか。

    Blenrepは、協和キリン・グループのBioWaが創製した、骨髄腫細胞のサバイバルを促すBCMAをブロックする抗体と細胞毒を結合した抗体薬物複合体。主要4剤を使い果たした再発/難治多発骨髄腫を組入れた第2相で良績を上げス20年に米欧で加速承認/条件付き承認されたが、市販後薬効確認試験である第3相DREAMM-3が22年にフェールし、3次治療におけるPFS(無進行生存期間)がpomalidomide・dexamethasoneを有意に上回るといいう仮説を立証できなかった。全生存期間の解析は未成熟だったがハザードレシオ1.14と数値上、見劣りした。このため、米国では23年2月に加速承認が取り消された。EUでもCHMPが昨年12月に条件付き承認を更新すべきでないという勧告を再確認したため、早晩、取り消されるだろう。

    このような経緯があるため今回の試験成功はサプライズだ。難治/再発骨髄腫の二次治療試験で、Velcade(bortezomib)、低量dexamethasone、そしてDarzalex(daratumumab)を併用する標準療法の、daratumumabに代えてBlenrepを併用する効用を検討したところ、中間解析で主評価項目のPFSを達成した。ハザードレシオ0.41、p<0.00001、メジアン期間は36.6ヶ月対13.4ヶ月と、かなり良い。副次的評価項目である全生存期間もハザードレシオ0.57、p=0.00049と大変良い数値が出ているが、中間解析の成功認定基準はp<0.00037と厳しく設定されていたため、統計的に有意とは言えず、引き続き追跡する。

    有害事象は血小板減少症や好中球減少症、肺炎などの発生率が対照群を上回った。G3以上の視覚有害事象(霞目やドライアイ、視力低下など)が34%の患者で発生したが、多くは回復した。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ギリアド、二剤の第3相がフェール
    (2024年2月6日発表)

    ギリアド・サイエンシズは23年第4四半期の決算発表に際して、GS-5245(obeldesivir)の第3相COVID-19試験とGS-4721(magrolimab)の第3相急性骨髄性白血病(AML)試験がフェールしたことを明らかにした。どちらも他の第3相がパッとしない結果だったのでサプライズ感は小さい。

    obeldesivirはCOVID-19治療薬Veklury(remdesivir)の類縁体で、肝臓以外にも分布する酵素によって活性化されることから、経口剤として開発されている。第3相OAKTREE試験は米国と日本の施設で陽性判定から3日以内の、重症化リスクが高くなく入院もしていないCOVID-19感染者に350mgを一日2回、5日間投与し、症状改善までの期間を偽薬と比較したが、有意な改善が見られなかった。ウイルスや免疫の変化により流行のピーク時には最大2週間あった罹患期間が1週間足らずになったことも一因と見なされている。

    昨年9月には、米国以外の施設で陽性判定から5日以内の重症化リスクが高い非入院COVID-19感染者を対象とする第3相BIRCH試験が組入れ中止になった。感染者数が減少、重症化や死亡例も減少し、組入れが順調に進まなかったことが原因のようだ。

    Vekluryも23年の売上高が前年比でほぼ半減、前々年比では6割減の21億ドルに留まっており、経口剤の試験フェールは効果というよりは治療の必要性の問題なのだろう。

    GS-4271は抗CD47抗体。マクロファージのSIRPアルファ受容体に結合して免疫抑制するのを妨げる。複数の第3相がロンチされたが、23年に高リスクMDS(骨髄異形成症候群)の一次治療azacitidine併用試験とTP53変異AMLのazacitidine併用試験が無益中止となったのに続いて、今回、集中的治療不適なAMLのvenetoclax・azacitidine併用一次治療試験、ENHANCE-3が、中間解析で死亡リスクが見られたことから、中止となった。FDAは治験の完全停止命令を発出、過去にも部分停止命令を出したことがあり、同社は、血液癌における開発を中止する考えだ。

    20年にForty Seven社を49億ドルで買収して入手したコンパウンド。その前年に小野薬品が日本などの開発商業化権を取得し、日本で第1相、韓国台湾でAMLの第3相試験中。

    リンク: ギリアドの23Q4決算プレゼン用資料(pdfファイル)

    【承認申請】


    BMS、オプジーボを肺癌術前術後補助療法として承認申請
    (2024年2月7日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブはOpdivo(nivolumab)をステージIIAからIIIBの非小細胞性肺癌の切除術前と後のアジュバント療法に米国で適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限は10月8日。EUでは1月に受理されていたことも明らかにした。

    CheckMate-77T試験に基づくもの。術前に化学療法と共に360mgを3週毎に4サイクル投与し、術後は480mgを4週毎に1年間投与したところ、Opdivoの代わりに偽薬を投与した群と比べて、EFS(無イベント生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.58と、有意な改善が見られた。副次的評価項目の全生存期間は未成熟。G3/4治療関連有害事象の発生率は試験薬群が32%、偽薬群は25%だった。

    昨年10月に米国で適応拡大が承認されたMSDのKeytruda(pembrolizumab)のKeyNote-671試験の成績と見比べると、EFSのハザードレシオは0.58で、こちらは治験医評価なので単純には比較できないものの、まあ似たようなもの。違いはKeytrudaは共同主評価項目である全生存期間のハザードレシオが0.72、p=0.0103と、この中間解析に割当てられたアルファの0.0109と比べると高度に有意とは言い難いものの、効果が確認されていること。

    リンク: BMSのプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    PRAC、パキロビッドと一部の免疫抑制剤の併用注意喚起
    (2024年2月9日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAのファーマコビジランス・リスク評価委員会、PRACは、ファイザーのCOVID-19治療薬Paxlovid(nirmatrelvir、ritonavir)と狭安全域の免疫抑制剤に関する併用注意/禁忌を再喚起した。致死例を含む深刻な有害事象が報告されているため。医療従事者向けの直接通知(DHCP)を発出する予定。

    PaxlovidはnirmatrelvirのCYP3A4による代謝を遅らせる目的でritonavirを配合しているため、この酵素に影響される薬を同時服用すると、安全性や効果が変わってしまう可能性がある。曝露が少し増えるだけでも深刻有害事象のリスクが高まる、安全域の狭い薬は特に注意が必要だ。PRACは、プレスリリースの中で、併用する場合は血中濃度を密接且つ定期的に監視すべき薬としてカルシニューリン阻害剤(tacrolimusやciclosporin)やmTOR阻害剤(everolimusやsirolimus)を挙げている。監視できない場合は併用してはいけない。更に、voclosporinが併用禁忌であることも再喚起した。

    これらの薬は代表的な3A4阻害剤であり、順守されない症例があるのは意外だが、Paxlovidはチェックすべき薬が多すぎるので使い難いという日本の一部医師の声の裏返しなのだろう。

    リンク: EMAのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)
    24/2/13 イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)
    24/2/22 Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)
    24/2/24 Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)
    24/2/26 Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)
    24年1QロシュのXolair(omalizumab、食物アレルギー適応拡大)
    24年1QアストラゼネカのTagrisso(osimertinib、未治療EGFRm+NSCLC)
    24年3月推BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)
    24年3月推BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24/3/13Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)
    24/3/14 Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)
    24/3/14 BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)
    24/3/18 Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)
    24/3/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
    24/3/26MSDのMK-7962( sotatercept、肺動脈高血圧症)
    24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
    24/3/31Rocket PharmaceuticalsのRP-L201(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
    諮問委員会
    24/3/5MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)
    24/3/14ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)
    24/3/15ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)



    今週は以上です。

    2024年2月3日

    第1140回

    【ニュース・ヘッドライン】

    • Vertex、画期的鎮痛剤の第3相が成功 
    • 抗PD-1抗体の腎細胞腫術後補助療法試験が遂に成功 
    • リジェネロン、抗BCMAxCD3抗体を承認申請 
    • MAGE標的T細胞療法を滑膜肉腫に承認申請 
    • ダラキューロ配合剤を新患に適応拡大申請 
    • BMS、プレヤンジを濾胞性リンパ腫などに効能追加申請 
    • エンハーツをher2陽性固形癌に適応拡大申請 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    Vertex、画期的鎮痛剤の第3相が成功
    (2024年1月30日発表)

    Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)はVX-548の第3相中重度疼痛治療試験が良好な結果になったと発表した。年央に承認申請する考え。作用機序は斬新だが効果はオピオイド系合剤と同程度またはそれ以下のようなので、オピオイド不適/嫌悪患者向きというイメージだ。

    末梢性疼痛のシグナル伝達に関わる電位依存性ナトリウム・チャネル、NaV1.8チャネルを選択的に阻害する経口剤。オピオイドと異なり中枢神経作用がない。第3相試験は、腹壁形成術後の患者1100人超を組入れた偽薬・実薬対照試験、バニオン切除後の1000人超を組入た偽薬・実薬対照試験、そして様々な術後疼痛患者と少数だが手術関連ではない疼痛患者も組入れた、様々な急性疼痛用途で承認を得るための単群試験の3本。試験薬は最初は100mg、その後は50mgを12時間おきに3回、経口投与した。対照試験二本の主評価項目はSPID48という、術後48時間に亘り一定の間隔でNumeric Pain Rating Scale (NPRS) を評価し、時間加重和を求め、偽薬群と比較したもの。最小二乗平均差は腹壁形成術試験が48.4、バニオン切除術試験が29.3となり、どちらも統計的に有意だった。

    一方、hydrocodone bitartrate(5mg)とacetaminophen(325mg)の両方を6時間おきに7回投与した群と試験薬のSPID48を比較した副次的評価は、最小二乗平均差が各6.6(95%信頼区間-5.4, 18.7)と-20.2(同-32.7, -7.7)となり、どちらもフェールしただけでなく、後者は有意に劣る可能性を示した。

    話が分かりやすいNPRS自体のベースライン比変化に注目すると、腹壁形成術試験では改善(低下幅)が偽薬群は2.3、試験薬群は3.4、実薬対照群は3.2、バニオン切除術試験では各2.6、3.4、3.6だった。

    第2相試験の学会発表時に指摘された、偽薬よりは有効だが実薬より優れているようには見えないという評価が裏打ちされた格好だ。

    リード・インディケーションは急性疼痛のようだが、非オピオイド系鎮痛剤ということなら慢性疼痛のほうが名実ともに需要が大きいかもしれない。糖尿病性末梢神経痛のPOC試験などが既に成功している。

    リンク: 同社のプレスリリース


    抗PD-1抗体の腎細胞腫術後補助療法試験が遂に成功
    (2024年1月27日発表)

    MSDはASCO GU(米国臨床腫瘍学会泌尿生殖器癌シンポジウム)でKeytruda(pembrolizumab)の第3相腎細胞腫術後アジュバント試験の全生存期間の解析結果を発表した。これまで多くの抗PD-1/PD-L1抗体がフェールした鬼門だったが、ついに改善に成功した。

    このKeyNote-564試験は、腎淡明細胞腫の摘出術を受けたが再発リスクが中程度高度または高度と推定される患者を組入れて、200mgを3週毎に最大17回、投与する効果を偽薬と比較した。主目的のDFS(無病生存期間)は中間解析でハザードレシオ(HR)0.68、p=0.001と成功した。この時点では全生存期間はHR0.54、p=0.0164と好ましい方向を指していたものの成功判定基準には達していなかったが、昨年11月の中間解析が成功、今回、HRが0.72であったことが公表された。48ヶ月生存率(推定値)は91.2%と偽薬群の86.0%を上回った。PD-L1陽性(CPS≧1)にも陰性にも好ましい数値が出た。

    この発表(LBA359)の直前にはBMSのOpdivo(nivolumab)のCheckMate-914試験がフェールしたことが発表された(LBA358)。腎細胞腫を完全/部分切除したが再発リスクが中程度以上と推定された患者を組入れてDFSを偽薬二剤を投与する群と比較したもので、Yervoy(ipilimumab)と併用する便益を検討したパートAは22年にフェールが公表されたが、今回、OpdivoとYervoy偽薬を投与したパートBも偽薬二剤群と大差なかったことが公表された。パートAのHRは0.92、パートBは0.87だった。

    この二つの試験は患者層も試験薬も類似しており、なぜKeytrudaはDFSも全生存期間も成功し、OpdivoはDFSすらダメだったのか、理解に苦しむ。Opdivoの用法は2週毎に最大12回投与と、投与回数や期間が短いことや、組み入れ条件が若干異なることなどが響いたのかもしれない。

    Opdivoは腎細胞腫摘出術の前に1回、後に4週毎に9回投与したPROSPER非盲検試験もフェールした。類薬の類似試験ではロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)のIMmotion010試験(3週毎1年間投与)もDFSのHRが0.93、全生存期間は0.97となり、フェールした。こうして見ると、Keytrudaの成功のほうが例外的と言えそうだ。DFSだけでなく全生存期間の解析も成功したことで、採用が増加するかもしれない。

    リンク: 2024 ASCO GU抄録ダウンロード頁

    【承認申請】


    リジェネロン、抗BCMAxCD3抗体を承認申請
    (2024年2月2日発表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、REGN5458(linvoseltamab)をEUに承認申請し受理されたと発表した。米国でも昨年12月に承認申請していた。BCMAとCD3を架橋する二重特異性抗体で、成人の3種類以上の治療歴を持つ難治/再発多発骨髄腫に用いる。3次以上の治療歴を持つ、または主要三剤に難治の難治/再発多発骨髄腫を組入れた第1/2相のLINKER-MM1試験で、ORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が71%、完全反応率は46%だった。G3以上の有害事象発現率は85%で、サイトカイン放出症候群や免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群は少なかったが、感染症などが多く、12%の患者が主として治療時発現感染症により死亡した。

    第3相は昨年9月にLINKER-MM3試験を開始、やや早期段階の患者におけるPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)を EPdレジメン(elotuzumab、pomalidomide、dexamethasoneの3剤併用)と比較する。成否判明は32年と、かなり遅くなる予定。

    リンク: 同社のプレスリリース


    MAGE標的T細胞療法を滑膜肉腫に承認申請
    (2024年1月31日発表)

    Adaptimmune(Nasdaq:ADAP)は、FDAがADP-A2M4(afamitresgene autolecel、略称afami-cel)の承認申請を受理したと発表した。優先審査を受け、審査期限は8月4日。

    MAGE-A4を標的とする高親和性、特異的TCRを患者から採取したT細胞に導入した、T細胞療法。MAGE-A4を発現(腫瘍細胞の30%以上でIHC法2+以上)する進行滑膜肉腫で治療歴のあるHLA-A*02型患者に用いる。MRCL(粘液/円形細胞型脂肪肉腫)も組入れた第2相SPEARHEAD-1試験で一回投与したところ、47人中34%がORR(客観的反応率、独立評価)、太宗を占めた滑膜肉腫では36%だった。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ダラキューロ配合剤を新患に適応拡大申請
    (2024年1月30日発表)

    ジョンソン・エンド・ジョンソンはDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)を自家造血幹細胞移植(HSCT)が適応になる新患多発骨髄腫の薬物補助療法に用いる用法追加をFDAに承認申請した。第3相PERSEUS試験に基づくもので、VRdレジメン(Velcade、Revlimid、dexamethasoneの3剤併用)による導入療法の後にHSCTを行い、その後にRevlimidによる維持療法を施行する標準療法群と比べて、導入療法と維持療法にDarzalexを追加した群のPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが中間解析で0.42となり、p値は中間解析に配賦されたアルファの0.0126を下回る、0.0001未満となった。48ヶ月無進行生存率は84.3%対67.7%と大きく上回った。維持療法期に入った試験薬群の患者の64%は、維持療法を24ヶ月以上施行し、完全反応を達成し、且つ12ヶ月以上MRD(微小残存疾患)が検出不能という条件を充足し、Darzalexによる治療を中止した。

    G3/4の有害事象は好中球減少症や肺臓炎、下痢などが増加した。

    Darzalexはジェンマブからライセンスした抗CD38抗体。様々なステージの多発骨髄腫に様々な薬と併用することが米欧日などで承認されている。オリジナルの製剤は点滴静注用だったが、皮下注できるようにしたのがFaspro。

    リンク: 同社のプレスリリース


    BMS、プレヤンジを濾胞性リンパ腫などに効能追加申請
    (2024年1月30日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブは、Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)の適応拡大を米国と日本で申請し受理されたと発表した。米国の予定適応症は第2相TRANSCEND FL試験に基づき成人の再発/難治濾胞性リンパ腫、そして、第1相TRANSCEND NHL 001試験に基づき成人のBTK阻害剤による治療歴を持つ再発/難治マントル細胞腫。どちらも優先審査指定を受け、審査期限は前者は24年5月23日、後者は同月31日。日本は前者の適応を申請した。

    CD19を標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫に米日欧で承認されている。

    リンク: 同社のプレスリリース


    エンハーツをher2陽性固形癌に適応拡大申請
    (2024年1月29日発表)

    第一三共とアストラゼネカは、米国でEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を成人の切除不能/転移her2陽性固形癌に適応拡大申請し受理されたと発表した。前治療歴を持つ、あるいは他に妥当な治療オプションがない患者に用いることを予定している。優先審査を受け、審査期限は第一三共によると5月30日、アストラゼネカのホームページに掲載されている両社の英文プレスリリースによると24年第2四半期。

    エビデンスは第2相DESTINY-PanTumor02試験など。この試験はIHC(免疫組織化学染色)法で2+以上の患者を癌種毎に40人程度組入れてORR(客観的反応率、反応が一定期間持続した確認例のみ)を評価したが、承認申請は3+だけだった。2+以上と3+のみのデータを比較すると、子宮内膜腫では57.5%と84.6%、子宮頸癌は50%と75%、卵巣癌は45%と63%、膀胱癌では39%と56%となっており、2+だけのORRはそれほど良くなかったのかもしれない。

    リンク: 両社のプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)
    24/1/31 Vylumaのatropine点眼(小児近視)
    24/2/13 イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)
    24/2/22 Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)
    24/2/24 Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)
    24/2/26 Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)
    24年1QロシュのXolair(omalizumab、食物アレルギー適応拡大)
    24年1QアストラゼネカのTagrisso(osimertinib、未治療EGFRm+NSCLC)
    24年3月推BeiGeneのBrukinsa(zanubrutinib、FL obinutuzumab併用)
    24年3月推BeiGeneのtislelizumab(未治療食道扁平上皮腫)
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24/3/13Mirum社のLivmarli(maralixibat、進行性家族性管内胆汁鬱滞症に一変)
    24/3/14 Madrigal社のMGL-3196(resmetirom、NASH/MASH)
    24/3/14 BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、CLL追加)
    24/3/18 Orchard TherapeuticsのOTL-200(atidarsagene autotemcel、異染性白質ジストロフィー)
    24/3/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
    24/3/26MSDのMK-7962( sotatercept、肺動脈高血圧症)
    24/3/27 AkebiaのVafseo(vadadustat、透析期CKDの貧血症)
    24/3/31Rocket PharmaceuticalsのRP-L201(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
    24/3/31Regeneron社のREGN1979(odronextamab 、一部のリンパ腫)
    諮問委員会
    24/3/5MIDAC:Lumicellのpegulicianine(乳腺腫瘍摘出後の残存腫瘍造影)
    24/3/14ODAC:Geronのimetelstat sodium(骨髄異形成症候群)
    24/3/15ODAC:Legend/JNJのCarvyktiとBMSのAbecma(多発骨髄腫)



    今週は以上です。