2025年11月29日

第1235回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ラニチジンが帰ってきた 
  • 有力議員がCNPV決定プロセスの詳細開示を要求 
  • バイエル、XIa阻害剤の脳梗塞再発予防試験が成功 
  • ノボ、semagutideの早期アルツハイマー病試験はフェール 
  • ビーワン、BCL2阻害剤をMCLに承認申請 
  • ノボ、高量ウゴービを光速承認申請 
  • 大塚、トリプル・アップテイク・インヒビターをADHDに承認申請
  • 軟骨無形成症用薬の承認審査が長引く 
  • イミフィンジが胃・GEJ癌の術前術後療法に適応拡大 
  • 大塚のIgAN用薬が加速承認 
  • ノバルティスの遺伝子療法、2歳以上のSMAに適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


ラニチジンが帰ってきた
(2025年11月25日発表)

FDAは、ranitidineを5年ぶりに承認したと発表した。日本時間26日朝に読んだ25日現在のプレスリリースにはメーカー名が記されていないが、VKT Pharmaの製品と報じられている。前日の当初発表には明記されていたのかもしれない。

このH2ブロッカーはGSKが開発し1981年に発売、GERD(胃食道逆流症)や消化器潰瘍、ゾリンジャー・エリソン症候群の治療に用いられてきたが、2019年にValisureが癌原性にを持ちうるN-nitrosodimethylamine(NDMA)を検出、FDAに対応を市民請願し、GE品も含めて多くのメーカーが販売停止・自主回収、FDAも20年4月に自主回収を要請した。NDMAが厄介なのは、出荷後も経時的に含有量が増加するため、工場検査では微量でも将来的に人体に有害な量に達するリスクがあること。EUも承認を一時停止した。米国ではクラス・アクションが提訴され、請求が認められなかった判例もあるが、和解に至ったものもあるようだ。

FDAによると、今回承認された新製剤は薬効は従来通り、懸念には対処した。具体的な数値は下記プレスリリースには記されていない。注意事項として、湿気の影響を避けるべく、保存や開封時に配慮し、開封後は3ヶ月内に(有効期限到来ならそれまでに)使用すること、乾燥剤を入れたままにすることなどを推奨している。

リンク: FDAのプレスリリース


有力議員がCNPV決定プロセスの詳細開示を要求
(2025年11月20日発表)

米国連邦議会のバーニー・サンダース上院議員とフランク・パロン下院議員は、FDAのMakary委員長に書簡を送付し、CNPV(委員長の国家的優先バウチャ)に関する情報開示を求めた。10月に9品目、11月にも6品目に関して供与する旨、発表されたが、10月の9社中4社は選ばれたこと自体がサプライズだったという。トランプ米国連邦大統領がお気に入りに贈り物をしたのではないかという疑念や、短期間に適切な審査を行うのはひずみを生まないかという懸念を解決するために、選択基準や選考プロセス、承認後の副作用や禁忌の監視手段、CNPV受領者との年初来の通信記録、他社の申請応募状況などを質した。

参考:CNPVプログラム
CNPVは、国家の重要課題に資する医薬品について、承認審査期間を1~2ヶ月に短縮するもの。重要課題は、アメリカの公衆衛生上の危機に対応、革新的な治療をアメリカ人に提供、充足されない医療ニーズに対処、そして国内自給体制の強化。申請者は承認申請の60日以上前にCMC(化学、製造、管理)に関する申請資料を提出しなければならない。CNPVは別の開発品の承認申請に用いることも可能。但し、希少疾患用薬等に関する優先審査バウチャと異なり、他社に売却して換金することはできない。

第一報の後に明らかになった事項もあるので再掲すると、10月に発表された9品目は、
  • Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin):グリシン・トランスポータ1阻害剤。9月30日に12歳以上のEP赤芽球性プロトポルフィリン症(X染色体関連のものも含む)に加速承認申請された。
  • EMD Serono(ドイツのメルクの子会社)のPergoveris(follitropin alfa、lutropin alfa):LH/FSH欠乏症による不妊症の治療。EUでは07年に承認されているが米国はこれから承認申請する。
  • サノフィのTzield(teplizumab-mzwv):抗CD3エプシロン鎖抗体。10月に8歳以上の最近診断されたステージ3一型糖尿病に適応拡大申請された。
  • Achieve Life Sciencesのcytisinicline:アルファ4ベータ2ニコチン・アセチルコリン受容体部分作動剤。25年6月に禁煙補助薬として承認申請されているが、CNPVの対象はEシガレット依存症。
  • Regeneron PharmaceuticalsのDB-OTO:otoferlin関連難聴の遺伝子療法。25年末までに承認申請される見込み。FDA側は無償・低価格供給に期待しているようだ。
  • イタリアのDompé farmaceuticiのcenegermin:遺伝子組換え型神経成長因子。点眼用製品が18年に神経栄養性角膜炎用薬として承認されているが、NAION(非動脈炎性前部虚血性視神経症)治療薬として開発中の点鼻用製品に利用する考え。
  • Revolution MedicinesのRMC-6236(daraxonrasib):癌原性変異を生じたRASの阻害剤。日本も参加する転移性膵管腺癌の第3相などが進行中で、26年に成功すれば承認申請に向かうことになる
  • GSKのAugmentin XR(amoxicillin、clavulanate potassium):2002年に承認された抗菌剤。米国生産投資に報いる趣旨のようだ。
  • 全身麻酔用ketamine:メーカーは不明。米国生産投資に報いる趣旨。

11月発表分は、
  • ベーリンガー・インゲルハイムのzongertinib(HER2肺癌):8~9月に米日でher2陽性切除不能/転移非小細胞性肺癌の再発治療薬Hernexeosとして承認されたher2チロシン・キナーゼ阻害剤。一次治療適応拡大申請に用いる考えのようだ。
  • ジョンソン エンド ジョンソンのbedaquiline(ヤング・チルドレンの薬物耐性肺炎):12~18年に米欧日で多剤耐性菌による肺結核の最後の治療手段、Sirturoとして承認。ヤング・チルドレンは1~4歳を指すことが多いようなので、7月に米国で承認された2~4歳向けより低年齢が対象なのだろうか?
  • GSKのdostarlimab(直腸癌):Jemperli名で欧米で内膜腫などの治療に承認されている抗PD-1抗体。ミスマッチ修復不全/高マイクロサテライト不安定性の局所進行未治療直腸癌の第2相単群試験の結果が26年に見込まれている。23年の腫瘍学諮問委員会で、この疾患の薬を、この試験の主評価項目のような第12月臨床的完全反応率に基づいて加速承認することを、13人の委員中8人が支持している。
  • Vertex PharmaceuticalsがCRISPER Therapeuticsからライセンスして開発販売しているCasgevy(exagamglogene autotemcel):23~24年に米欧である種の鎌状赤血球病やベータ・サラセミアの治療に承認された、ex vivo遺伝子編集薬。CNPV対象疾患/年齢は不明。
  • イーライリリーのorforglipron(肥満症と関連疾患):中外製薬からライセンスした経口GLP-1作用剤。年内に肥満症/高リスク・オーバーウェイト用薬として日本も含めグローバル承認申請の予定。
  • ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide、肥満症と関連疾患):21~23年に米欧日で肥満症/高リスクオーバーウェイト用薬として承認されたGLP-1作用剤。米国では5月に経口剤を肥満症に承認申請し、8月には既存の皮下注用製剤がMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)に適応拡大するなど、ライフサイクル・マネジメントが活発。その分、CNPVの対象が何なのか想像がつかないが、orfprglipronが選定されたのだからWegovyも経口剤かもしれない。

リンク: Makary委員長あて書簡

【新薬開発】


バイエル、XIa阻害剤の脳梗塞再発予防試験が成功
(2025年11月23日発表)

バイエルは、経口血液凝固第XIa因子阻害剤BAY 2433334(asundexian)が第3相OCEANIC-STROKE試験で薬効と安全性の主目的を達成したと発表した。同社のrivaroxabanなどの第Xa因子阻害剤が承認されている心房細動患者の虚血性脳卒中初発予防試験は非劣性解析がフェールしたが、承認されていない非心原性虚血性脳卒中において、再発予防効果が偽薬を上回り、出血リスクは大きく高まらなかった。各地の承認審査機関と承認申請に向け相談する考え。

この試験は、急性非心原性虚血性脳卒中または高リスクのTIA(一過性脳虚血発作)を発症してから72時間以内の、全身性/脳血管性アテローム硬化又は急性非ラクナ梗塞を伴う成人12300人超を偽薬群と試験薬群(50mg一日一回)に無作為化割付けして抗血小板薬と共に投与し、虚血性脳卒中と大出血(ISTH基準)のリスクを比較した。データは未発表。第2相試験では50mg群の副次的評価項目の症候性虚血性脳卒中/TIA発生率が偽薬群を3~4割下回った。

先陣争いをしているブリストル マイヤーズ スクイブ/ジョンソン エンド ジョンソンの第XIa因子阻害剤、BMS-986177/JNJ-70033093(milvexian)も、発症48時間以内の患者に25mgを一日二回投与するLibrexia STROKE試験が進行中。

日本人や中国人は抗凝固剤による出血リスクが西洋人より高いのではないかともいわれている。上記二本は日中の施設も参加しているので、少なくともXIa阻害剤に関しては、答えが得られそうだ。

リンク: バイエルのプレスリリース


ノボ、semagutideの早期アルツハイマー病試験はフェール
(2025年11月24日発表)

ノボ ノルディスクは今をときめくGLP-1作用剤、semaglutideを早期アルツハイマー病の進行抑制に用いた第3相試験2本がフェールしたと発表した。日本も含む世界の施設でアミロイド病変のあるアルツハイマー性MCI(軽度認知障害)や軽度アルツハイマー病患者を各試験1900人前後組入れて、第104週のCDR-SBを偽薬群と比較したが、有意差を検出できなかった。

結果は12月3日にCTAD(Clinical Trials in Alzheimer's Disease)でトップラインを、来年3月のAD/PD(Alzheimer's and Parkinson's Diseases Conferences)で全体像を、発表する考え。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


ビーワン、BCL2阻害剤をMCLに承認申請
(2025年11月26日発表)

ビーワン・メディシンズは米国でBGB-11417(sonrotoclax)を承認申請し受理されたと発表した。高親和性BCL2阻害剤で、BTK阻害剤歴のある成人の再発難治マントル細胞腫に用いることを想定している。米州欧中の施設で実施した第1/2相試験で125人に投与したところ、臨床的に意味のあるORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が得られたとのこと。データは12月7日のASH(米国血液学会)で口頭発表する予定。中国でも承認申請済み。第3相CELESTIAL-RR MCL試験は日本も参加している。

リンク: 同社のプレスリリース


ノボ、高量ウゴービを光速承認申請
(2025年11月26日発表)

ノボ ノルディスクは米国でGLP-1作用剤Wegovy(semaglutide)の最大用量を現行の3倍に引き上げるべく承認申請したと発表した。CNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)を利用して1~2ヶ月の承認を狙う。

第3相STEP UP試験で成人の肥満症における7.2mg週一回皮下注群の72週体重減少率を偽薬群や現行の最大承認用量である2.4mg群と比較したところ、trial product estimandアプローチによる解析では各群20.7%、2.4%、17.5%となり、偽薬を有意に上回った。米国のレーベルに記載されるであろうtreatment polict estimandベースでは各群18.7%、3.9%、15.6%となった。2.4mgと見比べると若干パワーアップしているので、競合他社の製品との差を縮めることができる。

同社はSTEP UP T2D試験で肥満症を合併する二型糖尿病における効果も確認したが、下記プレスリリースには言及されていない。HbA1c低下作用は両用量大差ないので、敢えて言及する必要はないということなのかもしれない。また、Wegovyはリスク因子を持つオーバーウェイト(BMIが27kg/m2以上、30kg/m2未満)にも承認されているが、プレスリリースは肥満症にしか言及していない。

リンク: 同社のプレスリリース


大塚、トリプル・アップテイク・インヒビターをADHDに承認申請
(2025年11月25日発表)

大塚製薬は、centanafadineをADHD用薬として米国で承認申請したと発表した。17年にNeurovanceを買収して入手したノルエピネフィリン、ドパミン、セロトニンの再取込阻害剤。第3相は成人患者ではSR錠100mgまたは200mgを1日2回投与した二本の試験で2用量とも第42日AISRS症状評価尺度が偽薬を有意に上回る改善を示した。更に、13~17歳にXRカプセル164.4mgまたは328.8mgを1日1回投与した試験で高用量群のADHD-RS-52評価尺度が偽薬を上回り、4~12歳を組入れたXRカプセルの試験も高用量群が同評価尺度で偽薬を上回った。承認申請は成人もXRカプセルのようだ。有害事象は食欲減退など。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)

【承認審査・委員会】


軟骨無形成症用薬の承認審査が長引く
(2025年11月25日発表)

アセンディス・ファーマは米国でTransCon CNP(navepegritide)を小児軟骨無形成症用薬として承認申請しているが、審査期限が11月30日から26年2月28日に3ヶ月延期されたと発表した。市販後に完了すべき試験に関連して追加情報を提出したことが申請内容の主要な変更と見做された。それ以外の指摘は無かった由なので、薬効や安全性には問題ないのだろう。

C型ナトリウム利尿ペプチドのプロドラッグ。2~11歳の患者に100mcg/kgを週一回皮下注した試験で身長の成長ベロシティが偽薬群を有意に上回った、

リンク: 同社のプレスリリース


【承認】


イミフィンジが胃・GEJ癌の術前術後療法に適応拡大
(2025年11月25日発表)

FDAはアストラゼネカの抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)を切除可能なステージIIからIVAの胃・胃食道接合部(GEJ)腫瘍の周術期療法として適応拡大を認めた。FLOTレジメン(fluorouracil、leucovorin、oxaliplatin、docetaxel)に追加して、術前2サイクル、術後2サイクル施行し、その後はImfinziだけを4週毎10回投与するもの。FLOTレジメンと比較した第3相MATTERHORN試験で術前のpCR(病理学的完全反応率)が19%対7%と上回り、EFS(無イベント生存期間、盲検独立中央評価)のハザード・レシオは0.71だった。全生存期間のハザードレシオも0.78で有意、3年生存率は69%対62%だった。TAP(Tumour Area Positivity、PD-L1発現度の指標)が1%のサブグループでも、1%未満でも、全生存期間のハザードレシオは0.79と大差なかった(但し後者は症例数が100人足らずで統計的に有意ではない)。欧州や日本でも申請中。

リンク: FDAのプレスリリース


大塚のIgAN用薬が加速承認
(2025年11月25日発表)

FDAは大塚製薬のVoyxact(sibeprenlimab-szsi)を成人の原発性IgA腎症の治療薬として承認した。400mgを4週毎に皮下注射する。第3相VISIONARY試験の第9月uPCR(尿蛋白クレアチニン比)改善作用に基づく加速承認。同試験で第24月eGFR(推算糸球体濾過率)の改善が確認されたら本承認切替の道が開ける。免疫抑制作用を持つため、感染症やワクチン接種に関する警告・事前注意が記されている。

18年にVisterra社を買収して入手した抗APRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)抗体。B細胞のサバイバルを増強しないよう羽交い絞めにする。IgA腎症では異なった作用機序の新薬が続々と承認されている。嬉しい悲鳴という奴だが、どの薬がどのような患者に最も適しているのか、選択指針があると良いのだが...

リンク: FDAのプレスリリース


ノバルティスの遺伝子療法、2歳以上のSMAに適応拡大
(2025年11月24日発表)

ノバルティスは、FDAがItvisma(onasemnogene abeparvovec-brve)を2歳以上の小児や成人のSMN1変異が確認されたSMA(脊髄性筋萎縮症)用薬として承認したと発表した。臨床試験で症状評価尺度が有意に改善した。患者で欠乏するSMN1遺伝子をrAAV9をベクターとして導入する。同じ活性成分を持ち19~20年に米日欧でSMA用薬として承認されたZolgensma(onasemnogene abeparvovec-xioi)は2歳未満の患者に点滴静注する(但し、EUでは年齢ではなく体重21kg以下が適応)が、Itvismaは2歳以上に髄腔内投与する。2歳以降に発症する患者も多いので、Itvismaの需要のほうが大きくなりそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
25/11推Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群)
25/11推ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹)
25/11推ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加)
25/11推ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加)
25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
25/12/5BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加)
25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
25/12/30Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)
25/12/31Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性)
26/1/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
26/1/23第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、her2乳癌一次治療を追加)
26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)


今週は以上です。

2025年11月22日

第1234回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • MSD、NRTTI配合剤がナイーブ試験も成功 
  • ロシュ、ER零落剤の2本目の第3相が成功 
  • MSD、エアウィンが第2群肺高血圧症にも良績 
  • Nuvalent社、新規ALK阻害剤を承認申請へ 
  • Jazz、her2二重特異性抗体の胃・食道腺腫試験が成功 
  • Agios社、mitapivatの適応拡大申請を強行する意向 
  • PI3K/mTOR阻害剤を承認申請 
  • 切除可能膀胱癌のパドセブ・キートルーダ併用がスピード承認 
  • コセルゴが米国でも成人に承認 
  • バイエルもher2陽性肺癌用薬が承認 
  • アイリーアの適応拡大などがやっと承認 
  • ダラキューロ配合が本承認に切替 
  • イムデトラが本承認に切替 
  • 第2の家族性カイロミクロン症候群用薬が承認 
  • エプキンリが濾胞性リンパ腫に適応拡大 
  • アジンマで死亡例 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


MSD、NRTTI配合剤がナイーブ試験も成功
(2025年11月19日発表)

MSDは新開発のヌクレオシド逆転写酵素トランスロケーション阻害剤、MK-8591(islatravir)と非核酸系逆転写阻害剤Pifeltroの活性成分であるdoravirineの固定用量合剤が、抗レトロウイルス治療を受けていないナイーブHIV/AIDS患者を組入れた第3相で主目的を達成したと発表した。他剤服用者がスイッチする用法で日米で承認申請中だが、ナイーブ向けも申請する考え。

日本の研究者が創製した画期的作用機序の抗レトロウイルス薬。HIVのDNA鎖に組み込まれて伸長の妨げになる。21年に上記合剤の第3相スイッチ試験2本が成功したが、islatravirを別の非核酸系逆転写阻害剤、MK-8507(ulonivirine)と併用した試験でCD4を含むリンパ球減少リスクが見られたため、MK-8507は開発ストップ。islatravirは上記合剤の用量を0.25mgと1/3に減らすことで安全性を向上、再第3相試験が奏功し、今年7月に米国で、抗レトロウイルス療法によりウイルスを抑制できている成人のHIV-1感染症患者がスイッチする用途で、承認申請が受理されたところ。

今回のナイーブ試験もギリアド・サイエンシズの Bictarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir alafenamide)を対照薬とする非劣性試験。スイッチ試験の主評価項目はフェール率だったが今回は、元々奏功していない患者が対象なので、奏効率。閾値はRNAが50コピー/mL。数値は未発表。

リンク: MSDのプレスリリース


ロシュ、ER零落剤の2本目の第3相が成功
(2025年11月18日発表)

ロシュはRG6171(giredestrant)が第3相lidERA Breast Cancer試験で主目的を達成したと発表した。日本も参加してエストロゲン受容体陽性、her2陰性の中・高リスク、ステージI-III乳癌の的手術を受けた患者4100人以上を組入れて、30mg一日一回経口投与5年コースの便益を医師が選んだ内分泌療法薬と比較したところ、中間解析でiDFS(無侵襲性疾患生存期間)が統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を果たした。数値は未発表。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だがポジティブなトレンドを示している由。

RG6171はエストロゲン受容体の零落剤/アンタゴニスト。複数の第3相のうち、日本も参加したevERA試験が既に成功済み。内分泌療法薬及びCDK4/6阻害剤歴を持つエストロゲン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌における便益を内分泌療法薬と比較したもので(両群ともeverolimusを併用)、PFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザード・レシオが0.56、メジアン値の群間差3ヶ月程度、全生存期間は未成熟だがハザード・レシオは0.69と、良好な成果を上げている。発表当時、いち早く実用化すべく当局と相談する考えを示したので、年内に承認申請されるかもしれない。

リンク: ロシュのプレスリリース


MSD、エアウィンが第2群肺高血圧症にも良績
(2025年11月18日発表)

MSDはactivin受容体IIa融合蛋白Winrevair(sotatercept-csrk)が第2相CADENCE試験で主目的を達成したと発表した。成人の心不全治療薬を服用しているHFpEF(駆出率保持心不全)におけるCpcPH(肺血管抵抗も肺動脈楔入圧も高い、前後毛細血管複合型肺高血圧症)の治療効果を図ったもので、主評価項目は24週PVR(肺血管抵抗)。データは未発表。治験登録によると承認用途と同様に0.3mg/kgから0.7mg/kgに漸増する群のほかに0.3mg/kgのままの群も設定されているようだが、用量毎の成否は明らかではない。

Winrevairは24~25年に米欧日で成人の肺動脈高血圧症用薬として承認された。様々な重篤度のサブグループを対象とした試験が成功している。肺動脈高血圧症は肺高血圧症のWHO分類で第1群に当たるが、今回のHFpEFによるものは第2群に属する。

リンク: 同社のプレスリリース


Nuvalent社、新規ALK阻害剤を承認申請へ
(2025年11月17日発表)

米国マサチューセッツ州ケンブリッジの新興医薬品開発会社、Nuvalent(Nasdaq:NUVL)は、NVL-655(neladalkib)がチロシン・キナーゼ阻害剤(TKI)歴のあるALK陽性進行非小細胞性肺癌に効果を示したと発表した。FDAと承認申請前会議を行う考え。

中枢神経浸透性を持ち、crizotinibやalectinibに抵抗性を示すG1202R変異にも活性のある示すALK-TKI。最初の臨床試験であるALKOVE-1試験のpivotalポーションの解析は、TKI歴のあるALK陽性進行非小細胞性肺癌で、24年9月までに第2相推奨用量である150mgを一日一回経口投与した253人が対象。患者背景は、メジアン3治療歴、78%が2剤以上のALK-TKI歴を持ち、その91%がファイザーのLorbrena(lorlatinib)歴あり。51%が化学療法歴あり。40%で活性期中枢神経疾患。

このユニバースにおけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)は31%、その64%は反応が12ヶ月以上持続した。G1202R変異のある47例では各68%と80%、中枢神経疾患のある92例では32%と71%だった。想定適応範囲はlorlatinib歴を持つ患者と推測されるが、このサブグループ190人におけるORRは26%、メジアン反応持続期間は17.6ヶ月だった。

7月に第3相試験を開始、初めてTKI治療を受けるALK陽性非小細胞性肺癌450人を組入れて、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)をロシュのAlecensa(alectinib)と比較する。治験登録によると結果が判明するのは29年12月の見込み。

リンク: 同社のプレスリリース


Jazz、her2二重特異性抗体の胃・食道腺腫試験が成功
(2025年11月17日発表)

Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)はZiihera(zanidatamab-hrii)が第3相HERIZON-GEA-01試験で主目的を達成したと発表した。26年上期に適応拡大申請する考え。全部乗せ試験なのでサブグループ分析の結果も気になるところだ。

Ziiheraはher2の二つのエピトープに結合する二重特性抗体。一つはロシュのHerceptin(trastuzumab)、もう一つは同じくPerjeta(pertuzumab)の標的と同じだ。Zymeworks(NYSE:ZYME)からライセンス、ビーワン・メディシンズ(Nasdaq:ONC)と共同開発している。24~25年に米中EUで治療歴のあるher2陽性胆道癌に承認された。

今回の、日本も参加した試験は、切除不能局所再発、難治、または転移性のher2陽性GEA(胃、食道、または食道胃接合部(GEJ)の腺腫)の一次治療を受ける914人を組入れて、化学療法(APOXまたは5-FU・cisplatin)をベースにZiihera単剤、またはZiiheraとビーワン社の抗PD-1抗体Tevimbra(tislelizumab-jsgr)と2剤を、追加する便益をtrastuzumab追加群と比較した。主評価項目は全生存期間とPFS。2剤追加群はどちらも統計的に有意且つ臨床的に意味のある差があった。Ziiheraだけ追加した群はPFSを達成、全生存期間は強いトレンドが示されているが中間解析であり有意水準には達していないようだ。データは未発表。

ここ数年の第3相は、胃及びGEJの試験と、食道及びGEJの試験を別々に行うことが多いように感じられる。対照群のHerceptin・化学療法併用は胃・GEJ腺腫にしか承認されていない。また、PD-L1陽性胃・GEJ腺腫ではTevimbraも化学療法併用が承認されている。従って、PD-L1陽性の胃・GEJ腺腫サブグループに関しては、Ziihera・Tevimbra・化学療法の併用がTevimbra・化学療法併用よりも良いのかどうかが重要なポイントだ。一方、食道・GEJ腺腫サブグループに関しては、対照群の選択が妥当なのか、それとも、承認されている薬がないから保守的に偽薬群を上回ったと考えるべきなのか、ただそれにしても、偽薬を上回るだけなら何剤も併用する必要があるのか、様々な疑問がわく。

リンク: Jazzのプレスリリース


Agios社、mitapivatの適応拡大申請を強行する意向
(2025年11月19日発表)

Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)はmitapivatが鎌状赤血球症の第3相試験で共同主評価項目の一つを達成したと発表した。臨床作用を検討したもう一つの主評価項目はフェールしたが、トレンドは見られたことなどから、26年第1四半期にFDAと適応拡大申請に向けて相談する考え。合わせて経費節減も発表した。株価は半減した。

このPKR(ピルビン酸キナーゼR)アロステリック・アクティベータは22年に米欧でPK欠乏症における溶血性貧血症の治療薬として承認された。サラセミアに適応拡大申請中で、EUでは10月にCHMPが肯定的意見をまとめ、米国は審査期限が延長され12月7日となった。輸血依存に至っていない患者ではヘモグロビン応答率(1g/dL以上増加)が偽薬を上回り、輸血依存患者では輸血量抑制奏効率が偽薬を上回った。

今回のRISE UP試験は16歳以上の鎌状赤血球症207人を、100mg一日2回経口投与群と偽薬群に2対1割付けして52週間治療したところ、ヘモグロビン応答率(1g/dL以上増加)が40.6%と偽薬群の2.9%を大きく上回った。ところが、重大な増悪である鎌状赤血球症疼痛クリーゼの発生率は年率2.62で偽薬群の3.05よりは低かったもののp=0.1213だった。副次的評価項目も臨床検査値関連の二つは達成したが、シーケンスが3番目の疲労スコア(患者評価)はフェールした。治療時発現有害事象による治験離脱率は4.3%と偽薬群の2.9%を少し上回った程度だった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


PI3K/mTOR阻害剤を承認申請
(2025年11月17日発表)

米国ミネソタ州ミネアポリスの医薬品開発会社、Celcuityは、gedatolisibをホルモン受容体陽性、her2陰性の進行乳癌の治療薬としてFDAに承認申請したと発表した。第3相VIKTORIA-1試験でアロマターゼ阻害剤及びCDK4/6阻害剤歴を持つ患者を組入れてfulvestrantに追加する便益を検討したところ、2剤併用群も、ファイザーのCDK4/6阻害剤Ibrance(palbociclib)と3剤併用した群も、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が有意に改善した。

21年にファイザーから世界開発販売権を取得した点滴静注用薬。PAM(PI3K~Akt~mTOR)パスウェイにおけるPI3Kクラス1の4種類のアイソフォームすべてとmTOR C1、mTOR C2を阻害するため、エスケープ変異を招き難いことが期待されている。一次治療試験も進行中。

リンク: Celcuityのプレスリリース(Globe Newswire)

【承認】


切除可能膀胱癌のパドセブ・キートルーダ併用がスピード承認
(2025年11月21日発表)

FDAは、筋層浸潤膀胱癌の骨盤リンパ節郭清(PLND)を含む全摘手術を受ける患者の周術期療法として、アステラス製薬の抗Nectin-4抗体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)とMSDのKeytruda(pembrolizumab)の併用を承認した。白金薬レジメンに適さない、または、拒否する患者が適応になる。cisplatinとgemcitabineによる術前療法が適応になる患者は、別途、第3相試験中。

エビデンスとなったのは日本も参加した第3相KeyNote-905/EV-303試験。上記2剤を術前に3サイクル(1サイクルは3週間)、術後に6サイクル、更にKeytrudaのみ8サイクル、施行する便益を検討したところ、施行しなかった患者と比べたEFS(無イベント生存期間)のハザードレシオが0.40、全生存期間のそれは0.50と、大きな治療効果を示した。尚、Keytrudaだけ術前術後に投与する群も設定されているが、まだ成熟していないようだ。

審査期限は来年4月なので、申請から3ヶ月のスピード承認となった。良く分からないのは、Keytrudaだけでは足りないのだろうか?併用群のほうが先に成否が判明したのだから、効果がより大きいのだろうが、データのばらつきが大きいとかそれ以外の可能性も考えられなくはない。また、他の腫瘍の臨床試験でも指摘されていることだが、術前だけ、術後だけでは足りないのだろうか?化学療法と比べれば忍容性が高いので長期投与のハードルは低くなるが、免疫療法や分子標的薬が全盛となり忍容性自体のハードルも低くなっているはずだ。

リンク: FDAのプレスリリース


コセルゴが米国でも成人に承認
(2025年11月20日発表)

アストラゼネカはFDAがKoselugo(selumetinib)を成人の神経線維腫に適応拡大したと発表した。03年にArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)からライセンスしたMEK1/2阻害剤。20年に2歳以上の小児NF1(神経線維腫1型)における症候性、切除不能な叢状神経線維腫の治療薬として承認されたが、成人にも使えるようになった。NF1は小児が発症するが悪性ではなく、患者の7割が成人。小児承認は米国が早かったが成人は日本が8月、EUも10月と先んじた。

リンク: 同社のプレスリリース


バイエルもher2陽性肺癌用薬が承認
(2025年11月19日発表)

FDAはバイエルのHyrnuo(sevabertinib)を成人のher2チロシン・キナーゼ・ドメインに活性化変異のある局所進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌の二次治療薬として承認した。20mgを一日2回、食事と共に服用する。第1/2相SOHO-01試験試験でher2標的薬未経験の70人におけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が71%、メジアン反応持続期間9.2ヶ月、抗her2抗体薬物複合体歴のある52人では同38%と7.0ヶ月だった。警告注意事項は下痢、肝毒性、間質性肺疾患/肺臓炎、眼毒性、膵臓酵素上昇、胚胎毒性。Life TechnologiesのOncomine Dx Target Testをコンパニオン診断薬として承認した。

her2チロシン・キナーゼ阻害剤。類薬ではベーリンガー・インゲルハイムのHernexeos(zongertinib)が8月に米国で加速承認、9月には日本でも承認された。適応はHyrnuoと同じ、臨床成績も大きな差はない。一日1回、食事不問で服用できる点は異なる。警告注意事項は左室機能不全があり、下痢や眼毒性、膵臓酵素上昇はない。

第一三共の抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)も22年に類似した適応で承認されている。違いは、her2の活性化変異箇所がチロシン・キナーゼ・ドメインに限定されておらず、扁平上皮腫が適応外になっていないこと。ベーリンガーとバイエルの承認申請は、扁平上皮腫を除外していなかったはずだが、FDAは承認しなかった。FDAの方針が変わったのかもしれない。いずれにせよ、her2活性化変異は専ら腺腫で発生する模様であり、実際に、EnhertuのDestiny-Lung02試験の被験者の96%が該当した。活性化変異の多くはチロシン・キナーゼ・ドメインに発生するようなので、限定があろうがなかろうが需要に大きな影響はないことになる。

余談:製品名が難解で、最初にFDAのサイトで読んだときはHymuoと誤解した。一部専門紙もHyrunoと誤記している。まあ、製品パッケージにはArialのような紛らわしいフォントは使われていないだろうから、取違え事故にはつながらないだろうが。

リンク: FDAのプレスリリース


アイリーアの適応拡大などがやっと承認
(2025年11月19日発表)

Regeneron Pharmaceuticalsは、硝子体注射用VEGFR融合蛋白、Eylea HD(aflibercept 8mg)の適応拡大と用法追加がFDAに承認されたと発表した。一部工程を委託しているCatalent IndianaがFDAの査察で指摘事項を受け、承認が遅延していた。適応拡大は網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の治療。2mgの従来規格と比較した試験でBCVA視力改善が非劣性だった。用法追加は、湿潤性加齢性黄斑変性や糖尿病性網膜浮腫、糖尿病性網膜症を含むすべての適応で、2~4ヶ月毎投与に移行した後に、状態に応じて、治療開始当初と同じ4週毎に戻すことが認められた。

リンク: 同社のプレスリリース


ダラキューロ配合が本承認に切替
(2025年11月19日発表)

FDAはJanssen Biotech(ジョンソン エンド ジョンソンの子会社)のDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)の新患ALアミロイドーシスにおける承認を本承認に切替えた。Velcade(bortezomib)、dexamethasone、及びcyclophosphamideの3剤併用レジメンに追加する便益を検討したANDROMEDA試験の血液学的完全反応率や主要臓器の増悪抑制作用に基づき21年に加速承認したが、継続追跡で全生存期間のハザード・レシオが0.62、p=0.0121となり延命効果が示されたため。日本のインタビュー・フォームに掲載されているカプラン・マイヤー曲線は殆どオーバーラップしているが、その後に分離したのだろう。

リンク: FDAのプレスリリース


イムデトラが本承認に切替
(2025年11月19日発表)

FDAはアムジェンのImdelltra(tarlatamab-dlle)の承認を本承認に切替えた。小細胞肺癌に特異的に発現するDLL3とCD3に結合する二重特性抗体で、第2相DeLLphi-301試験のORR(客観的反応率)に基づき24年に白金ベース化学療法中/後に進行した進展型小細胞肺癌用薬として加速承認したが、第3相DeLLphi-304試験で全生存期間が各地域の標準療法薬(日本はamrubicin、他の地域はtopotecanなど)を投与した群を有意に上回った(ハザード・レシオ0.60、メジアン13.6ヶ月対8.3ヶ月)。

リンク: FDAのプレスリリース


第2の家族性カイロミクロン症候群用薬が承認
(2025年11月18日発表)

FDAはArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)のRedemplo(plozasiran)を成人の家族性カイロミクロン血症候群(FCS)におけるTG(トリグリセライド)値の抑制剤として承認した。食事療法と併用で、3ヶ月毎に、自己注する場合は大腿や腹部に25mgを皮下注する。脂肪摂取を一日30g以下に抑えている患者に投与したところ、第10月空腹時TG値が偽薬比59%低下した。重度高TG血症試験も進行中。

競合薬はIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のTryngolza(olezarsen)が24~25年に米欧でFCSに承認、重度高TG症の第3相も既に成功した。両薬のプロファイルを比較すると、Redemploの作用機序はアポリポ蛋白C-IIIのRNA介入(Tryngolzaは同アンチセンス)、分子量は約16,50Da(9,100Da)、用量用法は25mg3ヶ月毎皮下注(80mg月一回皮下注)、剤形はプリフィルド・シリンジ(オート・インジェクター)、どちらもN-アセチルガラクトサミンを結合し肝臓選択性を向上。各剤の臨床試験におけるTG低下を見比べるとRedemploのほうがやや効果が高そう。Redemploのレーベルには警告・注意事項や禁忌は無く、Tryngolzaも過敏反応だけ。

リンク: FDAのプレスリリース


エプキンリが濾胞性リンパ腫に適応拡大
(2025年11月18日発表)

FDAはジェンマブがアッヴィと共同開発販売している米Epkinly(epcoritamab-bysp)の適応拡大を承認したと発表した。CD3とCD20に結合する二重特性抗体で、23年に成人の再発・難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として、24年には成人の再発・難治濾胞性リンパ腫の3次治療薬として、どちらも単剤投与が承認されているが、今回、再発・難治濾胞性リンパ腫にlenalidomide(BMSのRevlimid)及びrituzimabと併用することが認められた。メジアンで1治療歴を持つ患者を組入れた第3相EPCORE FL-1試験でこの2剤に追加したところ、ORR(客観的反応率)とPFS(無進行生存期間)が有意に向上した。枠付き警告はサイトカイン放出症候群(深刻例発生率12%)とICAN(免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群、発生率0.8%)。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


アジンマで死亡例
(2025年11月21日発表)

FDAは、武田薬品のAdzynma(ADAMTS13, recombinant-krhn)の投与を受けた小児患者が一名、死亡したことを明らかにした。中和抗体(インヒビター)が原因の可能性もあるので検討する。

米国の患者数300~400名という超希少疾患であるcTTP(先天的血栓性血小板減少性紫斑症)の治療薬。患者が欠乏するADAMTS13(apadamtase alfa)とアミノ酸を一つ置換したrADAMTS13.R97(cinaxadamtase alfa)を補充して、フォン・ウィルブランド因子重合体を切断して機能させると共に、血栓や溶血性貧血、血小板減少症などを抑制する。血漿由来の製品と比べてADAMTS13活性が4~5倍高いとされる。23~24年に米日で承認、EUでも例外的条項に基づき24年に承認された。

今回の患者はFFP(新鮮凍結血漿)に重度アレルギー反応を示し、Adzynmaによる治療を開始したところ、進行性の神経学的症状が発現。予防的投与を開始した10ヶ月後にADAMTS13に対する中和抗体が検出された。天然のADAMTS13に対する中和抗体と識別することはできないため、薬との因果関係は明らかではない。cTTPの臨床試験は中和抗体例は報告されていない由。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



PDUFA
25/11推Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群)
25/11推ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹)
25/11推ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加)
25/11推ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加)
25/11推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・食道胃接合部腫瘍における周術期療法を追加)
25/11/28ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症)
25/11/30Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
25/12推ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症)
25/12/5BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加)
25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
25/12/30Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)
25/12/31Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性)
26/1/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
26/1/23第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、her2乳癌一次治療を追加)
26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)



今週は以上です。

2025年11月15日

第1233回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA、閉経期ホルモン療法の警告を緩和へ 
  • 買収合戦はファイザーに軍配 
  • ギリアド、HIV/AIDsの2剤合剤が主目的達成 
  • ノバルティス、新クラスのマラリア治療薬を承認申請へ 
  • AHA:STEMIのつなぎ治療試験が成功 
  • 新規cKIT阻害剤のGIST2次治療試験が成功 
  • ロシュ、多発硬化症用BTK阻害剤の第3相が成功 
  • AHA:アストラゼネカ、新規降圧剤の第3相が成功 
  • AHA:MSD、経口PCSK9阻害剤の第3相が成功 
  • XIa阻害剤のRecent ACS試験が無益中止に 
  • ITM、GEP-NETsの放射性医薬を承認申請 
  • TACI融合蛋白をIgA腎症に承認申請 
  • MC4Rアゴニストの適応拡大申請は審査期間延長に 
  • CHMP、遺伝性血管浮腫のアンチセンス薬などを支持 
  • Kuraのmenin阻害剤も承認 
  • エレビジスのレーベルが一部変更 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


FDA、閉経期ホルモン療法の警告を緩和へ
(2025年11月10日発表)

FDAは閉経期ホルモン療法(MHT)に関する警告を緩和すると発表した。第2次トランプ政権下の方針転換の一例だ。

ERT(エストロゲン補充療法、プロゲスチン併用法も含む)は閉経期症状の緩和や骨粗鬆症の治療などに用いられている。ワイス(現ファイザー)のPremarinなどが人気を集めたが、Women's Health Initiative Study(以下、WHI試験)で深刻な副作用が散見され、FDAは2003年にレーベル見直しを開始、最終的に心血管疾患、侵襲性乳癌、認知症(疑い例)が枠付き警告されることになった。米国は処方薬のTVコマーシャルが盛んで啓蒙に役立っているが、枠付き警告は、CMの最後に小さい字で数十行分を数秒表示するのではなく、読めるように表示しなければならない。TVCMで人気を集めた治療法が、一転して、新聞週刊誌で副作用を喧伝されるようになったため、需要が大きく落ち込んだ。一方で、治療を受けるべき患者が怖気づいて拒否する現象を行き過ぎと批判する医療従事者も多かった。

プレスリリースによると、方針転換の理由は、WHI試験論文後に刊行された文献や公衆意見など。FDAは医薬品諮問委員会をあまり招集しなくなった一方で、委員長らが以前から一家言持っている問題に関してエキスパート・ミーティングを開催することが増えた。出来レースに感じられるため当方はネグレクトしているが、今回の件は7月のエキスパート・ミーティングで見直すべきという意見が多かったようだ。

FDAは、WHI試験の被験者とMHT患者の違いを強調した。WHI試験はERTの心血管疾患予防効果を検討したもので、被験者の平均年齢は65歳と、閉経の平均年齢である51歳よりだいぶ高く、それだけ、心血管疾患や乳癌、認知症を発現するリスクも高いことになる。リスクが低ければ、そこから高まったとしても罹患するリスクはそれなりに低くなる、という考え方のようだ。

FDAは、レーベルの一部変更を容認する考え。まず、経口剤など全身性治療薬に関しては、認知症に関する文言を除去、内膜腫のリスクは枠付き警告を解除、心血管疾患と乳癌は枠付き警告から警告に格下げする。WHI試験関連では50-59歳のデータだけを収載する。また、60歳未満、閉経後10年以内の中重度VMS(血管運動性症状)に治療を開始することを考慮するよう促す。

局所性製剤のレーベルは局所性製剤に重要性を持つ情報を中心にして簡潔化する考え。具体的な内容は明らかではない。

FDA委員長らはプレス・カンファレンスでホルモン療法は心血管疾患や死亡、骨折を半減しアルツハイマーのリスクを35%抑制すると発言したようだ。どのようなエビデンスを持っているのだろうか?

リンク: FDAのプレスリリース


買収合戦はファイザーに軍配
(2025年11月7日発表)

米国ニューヨーク州の医薬品開発会社、Metsera(Nasdaq:MTSR)は、合併相手としてファイザーを選んだと発表した。ノボ ノルディスクが対抗オファーを出し注目されたが、ファイザーが当初オファーを引き上げてノボのオファーを少し上回ったことや、連邦取引委員会から電話連絡を受けたことから、取締役会の判断が二転三転し、結局、ファイザーに戻った。

MetseraはGLP-1作用剤を単剤やアミリン作用剤併用で肥満症治療薬として開発している。ファイザーは9月に一株当たりで現金47.5ドル及びCVR(後発権利証書:新薬承認などの条件が満たされた時に受け取る権利)22.5ドル相当で買収することでMetseraと合意したが、10月にノボが各56.5ドルと21.25ドルをオファーしたため、Metseraが乗り換えた。ファイザーが提訴すると共に各60ドル+10ドル(合計額は同じだが支払いを前倒し)に変更すると、ノボは62.2ドル+24ドルに引き上げたが、ファイザーは65.6ドル+20.65ドルと、総額でノボを0.05ドル上回るオファーを行い、最終合意にこぎつけた。

連邦取引委員会が事前相談がなかったことを違反と指摘する通知を発出したことが報じられているが、反トラスト法上の潜在的な危険性を伝えた電話連絡が、同じ理由なのか、もっと本質的な指摘なのかは明らかではない。

リンク: Metseraのプレスリリース

【新薬開発】


ギリアド、HIV/AIDsの2剤合剤が主目的達成
(2025年11月13日発表)

ギリアド・サイエンシズは、インテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビターbictegravirと長期作用性カプシド阻害剤lenacapavirの配合錠が第3相Artistry-1試験で主目的を達成したと発表した。複雑な治療を施行してHIVを抑え込んでいる患者を組入れて、合剤群と従来治療継続群に2対1割付けして48週間治療し、フェール率(HIV-1 RNAが50コピー/mL以上に増加してしまった患者の比率)を比較したところ、非劣性だった。もう一本、同社のBiktarvy(bictegravir, emtricitabine, tenofovir alafenamide fumarateの合剤)による治療が成功した患者がスイッチする便益を検討するArtistry-2試験の結果が年内に判明する見込みで、来年には承認申請に向かうのではないか。

ウイルス抑制に成功しているなら他の作用機序の薬は将来抵抗性が生じた時のために取って置いた方が良いような気がする。今回の試験の参加者のように、最大で11剤も服用しているなら飲むのを止めないようにスイッチする意味もあるかもしれないが、同じ配合剤であるBiktarvyを服用している患者にとっては、効果が非劣性だけでは足りないのではないか?それとも、Artistry-2試験は優越性試験なのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


ノバルティス、新クラスのマラリア治療薬を承認申請へ
(2025年11月12日発表)

ノバルティスはKLU156(ganaplacideとlumefantrineの合剤)が第3相マラリア治療試験で主目的を達成したと発表した。速やかに承認申請に向かう考え。承認なら1999年以来の革新的新薬になる。

前者の活性成分は同社が230万超の分子からスクリーニングした新クラスの抗マラリア薬。Medicines for Malaria Ventureと共同開発している。赤血球内で生存する上で重要な、寄生虫内の蛋白輸送システムを崩壊する作用を持つようだ。後者は同社のCoartem(artemether、lumefantrine)にも配合されているが、一日一回投与用に改良した。

今回の第3相試験、KALUMAは、サブサハラ・アフリカの12ヶ国で、熱帯熱マラリア原虫による急性非複雑性マラリアに罹患した成人と体重10kg以上の小児1688人を組入れて、顆粒分包を一日一回、3日間経口投与した。主目的は第29日PCR矯正治癒率(臨床的かつ寄生虫学的に治癒、但し新規感染例は矯正)。承認審査用のestimand法の解析(中止例やPCRデータ逸失例はフェールと見做す)では97.4%で、Coartem投与群の94.0%と非劣性だった。過去の抗マラリア薬の試験と同様なper protocol法に基づく解析では99.2%対96.7%だった。一部の薬物に耐性を持つ変異マラリア原虫にも有効だった。

Coartemのオリジンとなった薬が中国で承認されたのは1992年、Coartemがスイスや英国で承認されたのは99年、米国は2009年、日本は2016年で、長い間第一線で活躍してきたが、いよいよ次期主力品候補が誕生することになる。抗マラリア薬は利益貢献が小さいだけに、社会貢献の大きさを称賛したい。

リンク: 同社のプレスリリース


AHA:STEMIのつなぎ治療試験が成功
(2025年11月10日発表)

米国カリフォルニア州のCelecor Therapeuticsは、Disaggpro(zalunfiban)の第3相CeleBrate試験の成果をAHA(米国心臓協会)科学部会で発表した。欧州や米州の施設でSTEMI(ST上昇型心筋梗塞)を発症しPCI(経皮的冠介入術)が可能な医療施設に移送される前の患者2467人を偽薬、0.11mg/kg、0.13mg/kgの3群に無作為化割付けして一回皮下注する便益を比較したもの。主目的を達成したため26年初めに米国で承認申請する考え。

オートインジェクター用GPIIb/IIIa阻害剤。共同創業者であるRockefeller大学のBarry S. Coller, M.D.が創製した。投与後15分で作用がピークに達し2時間で消失する。STEMIを発症したら急いで施術可能な施設に運ぶことが必要だが、近くにない場合はつなぎの措置が必要だ。本試験は家庭や救急施設、ERで投与した上でPCI施設に向かった。主評価項目は、30日間の死亡から梗塞拡大までの6イベントの複合評価項目。修正比例オッズは0.79、p=0.028だった。共同主評価項目であるGUSTO基準での重度出血発生率は1.2%で偽薬群の0.8%をやや上回る程度だった。

評価対象イベントのうち発生率が高かったのは梗塞拡大(試験薬群85.4%、偽薬群88.5%)。心不全(6.5%対8.1%)やステント血栓(0.2%対1.1%)も比較的大きな群間の偏りが見られた。

GPIIb/IIIa阻害剤というと前世紀の新薬というイメージだが、投与後15分で効果がピークに達し2時間で消失という短めの作用時間を生かして、新しい用法で復活しようとしている。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: A.W.J. van't Hofらの治験論文抄録(NEJM Evidence)


新規cKIT阻害剤のGIST2次治療試験が成功
(2025年11月10日発表)

Cogent Biosciences(Nasdaq:COGT)はCGT9486(bezuclastinib)が第3相PEAK試験で主目的を達成したと発表した。26年上期に米国で承認申請する考え。

後に第一三共が子会社化したPlexxikonからライセンスしたc-KIT阻害剤。ライセンスしたKiq社が2020年にUnum Therapeutics(Nasdaq:UMRX)を株式交換方式で逆買収し、Cogent Biosciencesに社名変更したもの。7月に非進行性全身性肥満細胞腫の承認申請用偽薬対照試験、SUMMITが成功、症状改善作用や肥満細胞活性化のバイオマーカーである血清トリプターゼ半減作用が認められた。年内に米国で承認申請する予定。

今回の試験はimatinibに不応/不耐なGIST(消化管間質腫瘍)を組入れて、sunitinibに追加する便益を検討した。PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が16.5ヶ月とsunitinib単剤群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.50。ORR(客観的反応率)も46%対26%でかなり上回った。治療関連投与中止発生率は7.4%対3.8%。今回も肝臓酵素上昇リスクが見られたようだ。

リンク: 同社のプレスリリース


ロシュ、多発硬化症用BTK阻害剤の第3相が成功
(2025年11月10日発表)

ロシュはRG7845(fenebrutinib)の第3相多発硬化症試験が二本成功したと発表した。データは未発表。もう一本の結果を待って、26年上期に承認申請を検討する考え。

中枢神経浸透性、高度選択的、可逆的なBTK阻害剤。BTK阻害剤は血液癌で複数が承認されているが、自己免疫疾患では薬物誘導性肝障害による開発中止・中断が相次いだ。ロシュは本剤が共有結合せず選択性が高いことに期待している。一日二回経口投与する。再発型多発硬化症における再発抑制作用をサノフィのteriflunomideと比較した第3相2本、FENhance1と同2のうち、後者が主目的を達成した。前者の結果は未だ。一次進行性多発硬化症のFENtrepidでは、疾病進行リスクが同社の既承認薬、Ocrevus(ocrelizumab)と非劣性だった。データは学会で発表する予定。肝安全性は過去の試験と同様とのこと。

リンク: 同社のプレスリリース


AHA:アストラゼネカ、新規降圧剤の第3相が成功
(2025年11月9日発表)

アストラゼネカは10月にbaxdrostatが第3相治療抵抗性高血圧試験、Bax24で主目的達成と公表したが、データをAHAで明らかにした。利尿剤を含む3種類の降圧剤を服用してもASBP(24時間血圧計に基づく収縮時血圧)が130mmHgを上回る患者218人を組入れて、2mgを一日一回、12週間経口投与したところ、ベースライン比16.6mmHg低下し、偽薬追加群の2.6mmHg低下を修正後で14.0mmHgの治療効果があった。尚、解析対象は184人で組入れ数218人より少ない。座位SBPは偽薬修正後10.3mmHg低下した。

19年にロシュのアルドステロン合成酵素阻害剤RO6836191をライセンスしたCinCor Pharmaを23年に買収して入手したもの。コルチゾールの合成に関わる11ベータ水酸化酵素に対する選択性が高い。アウトカム試験や心不全治療試験など複数の第3相が進行している。日本も参加したBaxHTNでは管理不良/治療抵抗性高血圧に追加投与したところ、1mg群と2mg群の座位SBPが偽薬比9mmHgと10mmHg低下した。今回も同程度の治療効果が示されたことになる。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


AHA:MSD、経口PCSK9阻害剤の第3相が成功
(2025年11月8日発表)

MSDはAHAでMK-0616(enlicitide decanoate)が二本の第3相試験で主目的を達成したと発表した。アムジェンの抗体医薬Repatha(evolocumab)と同様に、LDL-C受容体の零落を齎すPCSK9(プロタンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)を標的とするが、大環状ペプチドで経口投与できることが長所。複数の第3相が進行中。

CORALreef Lipids試験は、スタチンを服用してもLDL-C値が大きく低下しない、または不耐の高脂血症で、アテローム硬化性心血管疾患歴または高リスクの2912人を20mg一日一回投与群と偽薬群に2対1割付けして追加投与した。主評価項目のLDL-C値は、ベースライン値平均96mg/dLから、偽薬調整後で55.8%低下した。一部の症例でベースライン値の異常値が見られたため事後的に修正解析したところ、同59.7%となった。本剤は食物相互作用がある模様で、食後6~8時間経ってから服用し、その後30分は摂食しない用法になっているが、97%が順守できた。深刻有害事象発生率は10%で偽薬群の12%と大きな差はなかった。

CORAL reef HeFH試験ではスタチン治療を受けているヘテロ接合型家族性高血圧に同用量を投与したところ、24週LDL-C値が偽薬調整後59%低下した。有害事象治験離脱率に群間の偏りは発生しなかった。

このほかに二本の第3相試験の成功が6月に発表されている。

リンク: MSDのプレスリリース


XIa阻害剤のRecent ACS試験が無益中止に
(2025年11月14日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、Janssen Pharmaceuticalと共同開発している血液凝固第XIa因子阻害剤の第3相試験3本のうち、Librexia-ACS試験を中止すると発表した。他の二本は続行する考え。

BMS-986177/JNJ-70033093(milvexian)は、第XI因子を欠乏する人種は脳卒中も特発的出血も少ないという疫学研究を受けて複数の製薬会社が開発を進めているXIa阻害剤の一つ。今回の日本も参加している試験は、急性冠症候群(ACS)を発症して7日以内の、PCIや保存的治療を受けた、高再発リスクの患者16000人を組入れて、抗血小板治療に追加する便益を偽薬追加と比較したもの。試験薬は25mgを一日二回経口投与した。主評価項目はMACE(主要有害心血管事象)。中間解析に基づき独立データ監視委員会が試験を続行しても成功する確率は低いと判断、両社が中止を決めた。

独立データ監視委員会は他の2本は続行するよう推奨した。Librexia STROKE試験は40歳以上の急性虚血性脳卒中または脳虚血発作を発症してから48時間以内で高リスクの患者15000人を組入れて、アスピリン且つ又抗血小板薬に25mg一日二回を追加する便益を偽薬と比較している。主評価項目は虚血性脳卒中の再発リスク。一方、Librexia-AF試験は成人の抗血栓薬治療を受けている高リスク心房細動20296人を組入れて、100mg一日二回投与の便益を両社のXa阻害剤apixabanを一日二回投与する群と比較している。主評価項目は脳卒中または中枢神経以外での全身性塞栓のリスク。どちらも日本も参加。26年に結果が出る見込み。

亜急性期急性冠症候群は抗血栓薬の難関で、apixabanの第3相はフェール、バイエルのrivaroxabanは成功しEUでは適応拡大したが米国では用量反応相関が見られないことなどから承認されなかった。バイエルのXIa阻害剤asundexianは第2相で効果が見られず第3相にステージアップはしていない。milvexianは、ClinicalTrials.govで調べてもヒットしないので、ACSの第2相は割愛したのだろう。

リンク: BMSのプレスリリース

【承認申請】


ITM、GEP-NETsの放射性医薬を承認申請
(2025年11月13日発表)

ドイツのITM Isotope Technologies Munich SEは、ITM-11(n.c.a. 177Lu-edotreotide)を膵消化管神経内分泌腫(GEP-NETs)用薬として米国で承認申請し受理されたことを明らかにした。審査期限は26年8月28日。

ベータ線を放出する無担体核種とソマトスタチン受容体アゴニストの複合体。第3相COMPETE試験でグレード1/2の切除不能、進行性、そしてソマトスタチン受容体陽性のGEP-NETsの1~2次治療を受ける309人を組入れてPFS(無進行生存期間)をmTOR阻害剤everolimusと比較したところ、ハザード・レシオは0.67、p=0.022、メジアン値は各群23.9ヶ月と14.1ヶ月と、p値はそれほどではないが点推定値は大きな差が見られた。副次的評価項目の全生存期間は未だ中間解析段階で、ハザード・レシオは0.78(95%信頼区間0.5-1.1)、メジアン値は63.4ヶ月と58.7ヶ月と、点推定値は良いが信頼区間は未だ広い。

リンク: 同社のプレスリリース


TACI融合蛋白をIgA腎症に承認申請
(2025年11月7日発表)

米国カリフォルニア州の医薬品開発会社、Vera Therapeutics(Nasdaq:VERA)は、ataciceptをIgA腎症用薬として米国で承認申請したと発表した。

自己抗体の産生に関わるB細胞のBLySやAPRILの受容体であるTACI(transmembrane activator and calcium modulator cyclophilin ligand interactor)の可変領域とIgG1の固定領域の融合蛋白。2001年にセロノがZymoGeneticsからライセンスしリウマチなのの自己免疫疾患に開発したが、セロノは若き家督相続者がドイツのメルクに企業売却し巨額の利益を獲得、一方のZymoGeneticsも2010年にブリストル マイヤーズ スクイブが買収と姿を変えた。Veraは2020年にメルクからライセンスを取得した。

第3相ORIGIN 3試験で150mgを週一回自己皮下注する効果を検討したところ、26週の24時間平均UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が46%低下し、偽薬比で42%低下した。このデータで加速承認を取得し、27年に2年eGFR(推算糸球体濾過率)解析を行って本承認切替を狙う。

リンク: Vera社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


MC4Rアゴニストの適応拡大申請は審査期間延長に
(2025年11月7日発表)

Rhythm Pharmaceuticals(Nasdaq:RYTM)はImcivree(setmelanotide)を特殊な肥満症の治療薬として開発し、20~21年に米欧でPOMC(proopiomelanocortin)、PCSK1(proprotein convertase subtilisin/kexin type 1)、またはLEPR(leptin receptor)欠乏症に伴う肥満症の体重管理薬として承認を取得した。米国で4歳以上の後天性視床下部性肥満症(空腹や体重を管理する部位に腫瘍が発生するなどが原因)に適応拡大申請しているが、第3相TRANSCEND試験の感受性分析を要求され追加提出したため、今回、審査期限が26年3月20日に3ヶ月延長された。

日本人12人の補完的コフォートも設定されており、審査期限と前後して結果が判明するのではないか。

リンク: 同社のプレスリリース


CHMP、遺伝性血管浮腫のアンチセンス薬などを支持
(2025年11月14日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

大塚製薬がIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からEUにおける権利を取得して承認申請したDawnzera(donidalorsen)はPKK(prekallikrein)の発現を抑制するアンチセンス・オリゴヌクレオチド。12歳以上の遺伝性血管浮腫の発作傾向を抑制する。4週又は8週毎に皮下注する。臨床試験では発作を8割抑制した。米国では8月に承認。

リンク: EMAのプレスリリース

Curium Romania SRLのGalenVita(germanium (68Ge) chloride/gallium (68Ga) chloride)は放射性標識。PET造影剤の標識に用いる。

リンク: EMAのプレスリリース

イーライリリーのInluriyo(imlunestrant)は経口選択的エストロゲン受容体アルファ零落剤。成人男女の、内分泌療法後に進行したホルモン受容体陽性her2陰性局所進行/転移乳癌で、ESR1変異を持つ場合に適応になる。閉経後女性以外はLHRHアナログと併用する。米国では9月に承認。ESR1変異は内分泌療法後にしばしば見られ、抵抗性の原因になる。Inluriyoは第3相試験でPFS(無進行生存期間、担当医評価)がメジアン5.5ヶ月と標準的内分泌療法群の3.8ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.62だった。

リンク: EMAのプレスリリース

サノフィのTeizeild(teplizumab)は抗CD3エプシロン鎖抗体。8歳以上のステージ2一型糖尿病に、一日一回点滴静注を14日間反復する。ステージ2は高血糖ではないが高い。ステージ3は症状が現れてインスリン治療が必要になる。臨床試験でステージ3と診断されるまでのメジアン期間が50ヶ月と偽薬群の25ヶ月を大きく上回った。Ala-Alaのニックネームで注目されたが中々第3相が成功せず、1987年と言われる創製から35年後に米国でTzield名で初承認された。サノフィは米国で最近診断されたステージ3患者に適応拡大申請した。その直前にFDA委員長の国家的優先バウチャを受領している。

リンク: EMAのプレスリリース

BioNet EuropeのVacPertagenは百日咳の遺伝子組換え、無細胞性、コンポーネント・ワクチン(吸着)。百日咳毒素と百日咳菌が産生するFHA(繊維状赤血球凝集素)を精製し抗原化したもの。12歳以上のブースター接種、または妊婦と出生後乳児に用いる。百日咳だけのワクチンの需要もあるようで、2月にタイで接種キャンペーンが決定した模様だ。

リンク: EMAのプレスリリース

イタリアのFondazione TelethonのWaskyra(etuvetidigene autotemcel)は希少遺伝子疾患であるWiskott-Aldrich症候群のex vivo遺伝子療法。自家CD34陽性幹細胞/前駆細胞にex vivoでレンチ・ウイルスをベクターとしてWASのcDNAを導入し、患者に戻す。造血幹細胞移植が望まれるが適切な近親者ドナーが見つからない、生後6ヶ月以上の患者が適応になる。臨床試験で施術前と比べて重度感染症や中重度出血が大きく減少した。米国では3月に承認申請。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大で肯定的意見を得たのは、インサイト(Nasdaq:INCY)のFc装飾抗CD19抗体、Minjuvi(tafasitamab)。成人の難治/再発濾胞性リンパ腫の2次治療としてlenalidomide及びrituximabと併用することが支持された。第3相試験でMinjuviを併用しなかった群比ハザード・レシオが0.41だった。Monjuvi名で販売されている米国では6月に適応拡大済。

新薬承認申請が撤回されたのは、Verona Pharma(Nasdaq:VRNA)のOhtuvayre(ensifentrine)。COPD維持療法としてジェット・ネブライザで吸入するPDE3/4阻害剤で米国では24年6月に承認された。同社は今年10月にMSDが100億ドルで買収しており、期待の新薬なのかと思われたが、今回の撤回は、申請者側の優先順位の問題であるようだ。

リンク: EMAのプレスリリース

悩ましい状態になったのはIntraBioのAqneursa(levacetylleucine)。24年に米国でNiemann-Pick病C型用薬として承認され、EUでもCHMPが7月に肯定的意見を纏めたが、眩暈などの治療に用いられるラセミ体、acetylleucineとの便益の違いが確立していないとして新規活性成分とは認めなかった(新薬排他権が供与されない)。会社側の請求により再審査したが、結論は変わらなかった。

一方、10月のCHMPで否定的意見となったKadmon(Nasdaq:KDMN)のRezurock(belumosudil)は再審請求に応じることが決まった。米国では21年に、Meiji Seikaファルマがライセンスした日本でも24年に、造血幹細胞移植後の慢性移植片宿主病の3次治療(日本は2次治療)に承認されたが、CHMPは、臨床試験のデザインや実施状況に難があることや、審査中に一次治療試験が無益中止と報告されたことなどから、承認を躊躇していた。

【承認】


Kuraのmenin阻害剤も承認
(2025年11月13日発表)

FDAはKura Oncology(Nasdaq:KURA)のKomzifti(ziftomenib)を成人のNPM1変異型再発/難治急性骨髄性白血病(AML)向けに承認した。AMLの3割程度はNPM1に変異があり細胞の分化抑制機能が十分に発揮されていない。様々な変異がある模様だが、A型、B型、D型など本剤に感受するサブタイプで、治療歴を持ち、他に満足できる治療オプションがない患者が適応になる。600mgを一日一回経口投与したKOMET-001試験(FDAのプレス・リリースやパッケージ・インサートではKO-MEN-001試験と記載)で21%の患者が完解または血液学的指標以外は完解を達成し、メジアン維持期間は5ヶ月だった。

本剤と同じメニン阻害剤はSyndax Pharmaceuticals(Nasdaq:SNDX)のRevuforj(revumenib)が24年11月にKMT2A転座型再発/難治急性白血病に、今年10月には今回と同じ疾患に、承認されている。こちらは1歳以上の小児も適応。完解率は大差ないように見える。重要な警告事前注意はどちらも分化症候群、QTc延長、胚胎毒性だが、Komziftiの枠付き警告は分化症候群だけ、RevuforjはQTc延長も記載されている。

Komziftiは米国では協和キリンと共同開発販売、米国外は協和キリンが担当する。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


エレビジスのレーベルが一部変更
(2025年11月14日発表)

FDAはSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬、Elevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)のレーベルの一部変更を発表した。23年に米国で承認、今年5月には日本でも承認されたが、その2ヶ月前に日本では適応外になる歩行不能な16歳の患者が急性肝障害で死亡、6月には同様な15歳の患者も死亡し、同社は一時、販売を停止。米国外で販売するロシュも日本以外の市場で販売中止した。

新しいレーベルでは、歩行不能な患者は適応外、深刻な肝障害/肝不全が枠付き警告、肝臓障害やワクチン接種/感染症から4週以内の患者には投与しないことを推奨した。死亡2例は2ヶ月以内に発症したため、投与後2ヶ月間は適切な医療施設の近くに留まること、3ヶ月間は毎週肝機能検査を施行することなどを推奨した。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



PDUFA
25/11推Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群)
25/11推ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹)
25/11推ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加)
25/11推ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加)
25/11推バイエルのBAY 2927088(sevabertinib、her2変異非小細胞性肺癌)
25/11推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・食道胃接合部腫瘍における周術期療法を追加)
25/11/18Arrowhead PharmaceuticalsのARO-APOC3(plozasiran、家族性カイロミクロン血症)
25/11/28ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症)
25/11/30Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
25/11/30ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-bysp、濾胞性リンパ腫2次治療を追加)
25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
25/12推ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症)
25/12/5BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加)
25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
25/12/30Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)




今週は以上です。

2025年11月8日

第1232回

【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA、CNPV供与第2弾を発表 
  • ノボとリリーもトランプ大統領の要請に応えた 
  • He is not what he was 
  • ファセンラの好酸球増多症候群試験が成功 
  • ケレンディアは1型糖尿病のCKDにも有効 
  • ガザイバのSLE試験が成功 
  • トロデルビの転移乳癌一次治療試験がフェール 
  • アムジェン、抗FGFR2b抗体は二本目も残念な結果に 
  • 抗IGF-1R抗体を甲状腺眼症に承認申請 
  • デュピクセントを真菌性鼻副鼻腔炎に適応拡大申請 
  • Biohaven、SCA用薬が審査完了に 
  • ダラキューロがくすぶり型多発骨髄腫に適応拡大 
  • JNJ、Caplytaが鬱病の付随療法として適応拡大 
  • ホスホマイシンの静注用製剤が初承認
  • チミジン・キナーゼ2欠乏症用薬が承認 
  • PRAC、トラネキサム酸の取違えに注意喚起 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


FDA、CNPV供与第2弾を発表
(2025年11月6日発表)

FDAはCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)第2弾を発表した。国家的課題に対処しうる医薬品に関して、承認申請後1~2ヶ月で審査を完了する。既存の優先審査バウチャと同様に他の開発品の承認申請に用いることも可能。違いは、他社に売却することはできない。

対象は以下の6品目。前回同様、発表内容が漠然としていて具体的な内容が不明なものもある。

  • ベーリンガー・インゲルハイムのzongertinib(HER2肺癌):8~9月に米日でher2陽性切除不能/転移非小細胞性肺癌の再発治療薬Hernexeosとして承認されたher2チロシン・キナーゼ阻害剤。26年にBEAMION Lung-2試験の結果が判明する見込みなので、一次治療適応拡大が対象なのかもしれない。
  • ジョンソン エンド ジョンソンのbedaquiline(ヤング・チルドレンの薬物耐性肺炎):12~18年に米欧日で多剤耐性菌による肺結核の最後の治療手段、Sirturoとして承認。ヤング・チルドレンは1~4歳を指すことが多いようなので、7月に米国で承認された2~4歳向けか、そうでなければ2歳未満を申請する計画があるのかもしれない。
  • GSKのdostarlimab(直腸癌):Jemperli名で欧米で内膜腫などの治療に承認されている抗PD-1抗体。ミスマッチ修復不全/高マイクロサテライト不安定性の局所進行未治療直腸癌の第2相単群試験の結果が26年に見込まれている。23年の腫瘍学諮問委員会で第12月臨床的完全反応率に基づく加速承認を13人の委員中8人が支持している。
  • Vertex PharmaceuticalsがCRISPER Therapeuticsからライセンスして開発販売しているCasgevy(exagamglogene autotemcel):23~24年に米欧である種の鎌状赤血球病やベータ・サラセミアの治療に承認された、ex vivo遺伝子編集薬。CNPV対象疾患/年齢は不明。
  • イーライリリーのorforglipron(肥満症と関連疾患):中外製薬からライセンスした経口GLP-1作用剤。年内に肥満症/高リスク・オーバーウェイト用薬として日本も含めグローバル承認申請の予定。
  • ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide、肥満症と関連疾患):21~23年に米欧日で肥満症/高リスクオーバーウェイト用薬として承認されたGLP-1作用剤。米国では5月に経口剤を肥満症に承認申請し、8月には既存の皮下注用製剤がMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)に適応拡大するなど、ライフサイクル・マネジメントが活発。その分、CNPVの対象が何なのか想像がつかないが、orfprglipronが選定されたのだからWegovyも経口剤なのではないか。

  • リンク: FDAのプレスリリース


    ノボとリリーもトランプ大統領の要請に応えた
    (2025年11月6日発表)

    ノボ ノルディスクとイーライリリーは、夫々、トランプ米国大統領の要請に応えて医薬品の米国価格の一部を引き下げたり製造施設に100億ドル超の投資を行うことなどを発表した。代わりに、大統領が打ち出した医薬品輸入に対する上乗せ関税を3年間猶予してもらうことで合意した。

    値下げ対象は、高齢者医療制度の外来薬保険プログラムであるメディケア パートDや低所得者や糖尿病患者向けのメディケイドの加入者と、民間保険に加入せず全額自腹の人。ホワイトハウスの発表によると、トランプ大統領の名を冠したウェブサイトで購入すれば1ヶ月分が1000ドルのOzenpicは350ドル、1350ドルのWegovyも350ドル、イーライリリーのZepboundとorforglipronは1086ドルではなく346ドルと、安く買える。

    ノボは26年1月に、イーライリリーは26年4月に開始する予定。ノボは、26年のグローバル売上成長に一桁台前半の悪影響を与えると推測している。

    リンク: ホワイトハウスのファクト・シート
    リンク: イーライリリーのプレスリリース
    リンク: ノボ ノルディスクのプレスリリース


    He is not what he was
    (2025年11月3日発表)

    アムステルダム大学発ベンチャーのuniQure(Nasdaq:QURE)は2026年に米国でAMT-130をハンチントン病の遺伝子療法として承認申請する考えだったが、遅れる可能性が高まった。24年12月に、FDAとの相談を踏まえて、自然歴対照試験や脳脊髄液ニューロフィラメント軽鎖(NfL)抑制作用などに基づいて加速承認を求める計画を公表したが、申請前会議でFDAが翻意し、不十分とアドバイスしたため。同社は、申請前会議の議事録を受け取り次第、加速承認申請に向けた道筋を相談する考え。

    変異ハンチントン遺伝子を沈黙させるマイクロRNAをアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして脳に導入する遺伝子療法。第1/2相試験で高用量群(12人)の3年後のcUHDRS疾病評価尺度が0.38点の低下に留まり、傾向加重自然歴(940人)の1.52点低下と比べて75%小さかった(p=0.003)。副次的評価項目のTFC(合計機能評価)なども有意な差があった。NfLはベースライン比8%低下した。

    現在のFDAは上層部が個人的な価値観に基づき積極的に現場に介入している。前政権下でも抗アミロイド・ベータ抗体やデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬などで部門長が現場や諮問委員会の評価をオーバーライドする事例が見られたが、現在はFDA長官まで介入しているらしい点が特徴的だ。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【新薬開発】


    ファセンラの好酸球増多症候群試験が成功
    (2025年11月7日発表)

    アストラゼネカはFasenra(benralizumab)が第3相NATRON試験で主目的を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。

    協和キリンからライセンスしたIL-5受容体アルファ鎖を標的とするポテリジェント抗体。17~18年に米欧日で重度管理不良好酸球性喘息症用薬として承認された。今回の試験は標準治療を受けている好酸球増多症候群(HES)患者133人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして24週間追加投与し、HESの悪化や増悪のリスクを比較したもの。各群42.5%と19.4%の患者で悪化/増悪し、ハザード・レシオは0.35だった。

    リンク: 同社のプレスリリース(Business Wire)


    ケレンディアは1型糖尿病のCKDにも有効
    (2025年11月6日発表)

    バイエルはKerendia(finerenone)が第3相FINE-ONE試験で主目的などを達成したと発表した。適応拡大申請に向かう予定。

    21~22年に米欧日で二型糖尿病性慢性腎疾患の腎機能悪化や心血管合併症を抑制する薬として承認された、非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗剤。米国では左心駆出率が軽度に低下または保持された心不全の心血管転帰を改善する適応効能も承認されている。今回の試験は一型糖尿病で慢性腎疾患を合併したリスク因子を持つ成人242人を組入れて標準治療に追加する便益を偽薬と比較した。第6月の尿アルブミン・クレアチニン比が偽薬比25%低下し、副次的評価項目の30%低下奏効率も68.1%と偽薬群の46.6%を上回った。治療時発現深刻有害事象の発生率は両群11%強で大差なかった。過去の試験と同様に高カリウム血症の発生率が偽薬群を上回った。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ガザイバのSLE試験が成功
    (2025年11月3日発表)

    ロシュは抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab)が第3相ALLEGORY試験で主目的等を達成したと発表した。成人の全身性エリテマトーデス患者を組入れて52週間治療したところ、SLI-4疾病評価スコアが標準療法を有意に上回った。データは今後発表する。欧米で適応拡大申請する考え。

    リンク: 同社のプレスリリース


    トロデルビの転移乳癌一次治療試験がフェール
    (2025年11月7日発表)

    ギリアド・サイエンシズはTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)が第3相Ascent-07試験で主目的を達成できなかったと発表した。

    EGP-1(別名TROP-2)を標的とする抗体医薬。20~24年に米欧日でトリプル・ネガティブ乳癌の再発治療薬として承認された。ホルモン受容体陽性、her2陰性転移性乳癌でも内分泌療法に応答せず転移後に2次以上の全身性治療を受けた患者に米国で適応拡大、日本でも申請中だが、今回の試験は数歩早い段階における便益を検討したもの。日本も含む世界の施設で、ホルモン受容体陽性、her2陰性の転移性乳癌で、転移後内分泌療法歴を持ち、化学療法が適応になる患者654人を試験薬(10mg/kgを3週サイクルで第1日と8日に投与)または化学療法群(paclitaxelなどから医師が選択)に2対1割付けして、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較した。副次的評価項目は未成熟だが上回る傾向が見られた模様。

    リンク: 同社のプレスリリース


    Sarepta社が二つの失望的発表
    (2025年11月3日発表)

    Sarepta Therapeutics(Nadaq:SRPT)は、25年第3四半期決算発表に合わせて、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬3品に関する失望的な発表を行った。同社は米国で16年にエクソン51スキップに応答するDMD向けのExondys 51(eteplirsen)が、19年にエクソン53スキップに応答しうる患者向けのVyondys 53(golodirsen)が、そして21年にはエクソン45スキップに応答しうる患者向けのAmondys 45(casimersen)が加速承認され、23年には遺伝子療法のElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)も加速承認された。

    このうち、Elevidysは市販後薬効確認試験がフェールしたが24年に米国で本承認に切替、同時に歩行不能な患者にも加速承認された。しかし、今年に入って致死的な急性肝障害が2例続き、一時期、出荷停止した。FDAと対応を協議しているが、今回、枠付き警告付与と、歩行不能患者の適応除外を検討していることが明らかにされた。同社は歩行不能患者には免疫抑制レジメンを強化する対処を検討しているが、まだFDAの同意は得られていないようだ。

    上記2例は何れも日本では適応にならない歩行不能患者。Elevidysの投与実績は900人超、うち歩行不能は140人とのことなので発生率は1%と高い。尤も、歩行可能患者にリスクがないとは考えにくく、便益が確立していないのだからリスクを許容できないという考え方だろう。従って、免疫抑制を強化することでリスクを抑制するだけでなく、改めて便益を確認することにも注力すべきだろう。

    一方、Vyondys 53とAmondys 45を一本の試験で市販後薬効確認するための、ESSENCE試験のフェールが公表された。欧米豪韓などの施設で200人超のエクソン53スキップ又はエクソン45スキップに応答しうるDMD患者をVyondys 53またはAmondys 45を投与する群と偽薬群に2対1割付けして96週の4段登段ベロシティを比較したところ、群間差は0.05歩/秒と僅少に留まり、p=0.309だった。一方で、無作為化割付け期間がCOVID-19流行期と重なる患者を除外した168人の解析では0.11歩/秒、p=0.09、低下を30%抑制と、同社によると臨床的に意味のある効果が見られた。本承認に向けFDAと相談する考え。

    Eledivysの前例があるので薬効が確認できなくても販売することは可能かもしれないが、第2次トランプ政権下のFDAでは前例が通用するとは限らないだろう。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アムジェン、抗FGFR2b抗体は二本目も残念な結果に
    (2025年11月2日発表)

    アムジェンは、25年第3四半期決算発表時のパイプライン・アップデートの中で、AMG552(bemarituzumab)の後期第1相/第3相胃・食道胃接合部癌試験を途中で打ち切ると発表した。最初の第3相試験は中間解析に基づき成功認定されたがその後の追跡解析でデータが悪化してしまい、今回の試験の成功が期待されていた。

    21年にFive Prime Therapeuticsを19億ドルで買収して入手した、ADCC増強型抗FGF受容体2b抗体。FGFR2bを過剰発現するher2陰性の胃・食道胃接合部の一次治療としてmFOLFOX6レジメンに追加する便益を検討した、日本も参加した第3相FORTITUDE-101の中間解析で全生存期間のハザード・レシオが0.61、p=0.005、メジアン生存期間は17.9ヶ月と偽薬追加群の12.5ヶ月を上回った。かなり良い数値だが、意外なことに、記述的フォロー・アップ解析でハザード・レシオ0.82(95%信頼区間0.62-1.08)、メジアン値は14.5ヶ月と13.2ヶ月と、統計的にも臨床的にも期待外れの水準に低下してしまった。

    今回の日本も参加したFORTITUDE-102試験は、同じ一次治療において、nivolimabと化学療法(mFOLFOX6またはCAPOX)の併用に追加する便益を検討したが、中間解析に基づき打ち切りが決まった。限界効用逓減の法則から言えばこっちのほうがハードルが高いとはいえ、残念なことだ。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認申請】


    抗IGF-1R抗体を甲状腺眼症に承認申請
    (2025年11月5日発表)

    米国マサチューセッツ州の新興医薬品開発会社、Viridian Therapeutics(Nasdaq:VRDN)は、25年第3四半期決算発表に合わせて、10月に米国でVRDN-001(veligrotug)を甲状腺眼症用薬として承認申請したことを明らかにした。IGF-1受容体に対する抗体医薬で、優先審査を求めている。26年第1四半期にEUにも承認申請する考え。日本は7月にキッセイ薬品が皮下注用も含めて権利を取得している。

    第3相は二本。THRIVE試験は発症から15ヶ月以内でCAS(臨床的活動性スコア)が3以上の患者を組入れて10mg/kgを3週毎に5回、点滴静注する便益を検討した。PRR(眼球突出が2mm以上改善し反対側の目は2mm以上突出しなかった患者の比率)が70%と偽薬群の5%を大きく上回った。THRIVE-2試験は発症から15ヶ月以上経った患者をCAS不問で組入れ、同様な群間比較を行ったところ、PPRが56%と偽薬群の8%を上回った。有害事象は聴力障害など。

    リンク: 同社のプレスリリース


    デュピクセントを真菌性鼻副鼻腔炎に適応拡大申請
    (2025年11月7日公表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、抗IL-4Rアルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)が第3相LIBERTY-AFRS-AIMS試験で主目的等を達成したと学会発表すると共に、既に承認申請済みであることを明らかにした。

    6歳以上のアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS)患者約60人を組入れて効果を偽薬と比較したもの。第52週の副鼻腔不透明度スコアが試験薬群は50%改善したのに対し偽薬群は10%に留まり、副次的評価項目の患者評価やポリープ・サイズも有意に改善した。

    AFRSはアスペルギルス菌などによる疾患で標準療法は外科手術や全身性ステロイド投与。Dupixentは鼻ポリープを伴う副鼻腔炎でも承認されていて、こちらの試験でも本試験の主評価項目と同じ副鼻腔のCT画像に基づく薬効解析が成功しているが、二つは異なった疾患と認知されているようだ。

    適応拡大申請の審査期限は26年2月28日。優先審査なので申請したは今年6月か8月と推測される。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    Biohaven、SCA用薬が審査完了に
    (2025年11月4日発表)

    Biohaven(NYSE:BHVN)はtroriluzolを脊髄小脳失調症(SCA)治療薬として欧米で承認申請していたが、3月にEUで申請撤回したのに続き、米国で審査完了通知(CRL)を受領した。

    ALS治療薬Rilutek(riluzole)の活性成分のプロドラッグ。一日2回経口投与ではなく1回で足り、食物影響が小さいようだ。グルタミン酸の再取込を増強・放出を阻害する作用を持つ。SCAでは218人の患者を200mg/日群と偽薬群に無作為化割付けして48週のf-SARA(functional Scale for the Assessment and Rating of Ataxia、改訂版)の変化を比較したところ、ベースラインの4.9から各群5.1と5.2に上昇、フェールした。同社はSCA3型サブグループのデータに注目し23年に承認申請したが受理されなかった。FDAと相談の上、自然歴データ対照試験を実施し再申請したところ、今年2月に受理され、優先審査指定を受けたが、諮問委員会上程の可能性が生じたようで審査期限が3ヶ月延長された。結局、招集されなかったが、そもそも最近は全く開催されていないので、固有の問題かFDA上層部の方針か、判然としない。

    FDAはopenFDAウェブサイトで承認通知やCRLの公開を始めた。9月22日分が公開されて以降、しばらく無かったが、途中の案件を飛ばしていきなり本件のCRLが公開された。デザイン面、実践面で多くの欠陥を指摘しており、上記の『FDAと相談の上』が『FDAの同意を得て』では無いことがはっきりした。

    リンク: 同社のプレスリリース
    リンク: openFDAサイト
    リンク: FDAのComplete Response Letter

    【承認】


    ダラキューロがくすぶり型多発骨髄腫に適応拡大
    (2025年11月6日発表)

    FDAはJanssen BiotechのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj;和名ダラキューロ配合)を成人の高リスクくすぶり型多発骨髄腫に適応拡大した。EUでは7月に承認、日本も10月に第2部会を通過したところ。

    抗CD38抗体daratumumabを投与する前にヒアルロン酸分解酵素を投与することにより皮下注を可能にした製品。日本も参加した第3相AQUILA試験で、積極的経過観察群のメジアンPFS(無進行生存期間)が41.5ヶ月だったのに対して試験薬群はメジアン未達、ハザード・レシオは0.49だった。

    くすぶり型はM蛋白や単クローン性形質細胞の増加などの兆候が見られ、多発骨髄腫に進展するリスクがある。米国の推定新患数(24年)35000人超のうち、くすぶり型は15%を占めると推測されている。今日では定義が変わっている模様で、AQUILA試験の被験者の半分程度は今日の基準では多発骨髄腫に分類されるようだ。

    リンク: FDAのプレスリリース


    JNJ、Caplytaが鬱病の付随療法として適応拡大
    (2025年11月6日発表)

    ジョンソン エンド ジョンソンはFDAがCaplyta(lumateperone)を成人の大鬱病のアジャンクティブ用薬として承認したと発表した。抗鬱剤に十分応答しない患者などに追加投与する。

    5-HT2A受容体とドパミンD2受容体の拮抗剤。19年に米国で初承認され、これまでに統合失調症の急性期治療や双極障害I型やII型における鬱症状の治療に用いることが承認されている。統合失調症では7月に維持療法も適応拡大申請された。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ホスホマイシンの静注用製剤が初承認
    (2025年11月4日発表)

    米国シカゴのMeitheal Pharmaceuticalsは、FDAがContepo(fosfomycin)を複雑性尿路感染症(激性腎盂腎炎を含む)の点滴静注用薬として承認したと発表した。18歳以上の、本剤に感受する大腸菌や肺炎桿菌に感染した患者に用いる。第2/3相試験で6g(腎機能低下は減量)1時間点滴を8時間おきに最大14日間、反復したところ、全般的奏効率(第19日に臨床的治癒且つ微生物学的駆除)が63.5%(170人中108人)となり、piperacillin・tazobactam群の55.6%比で非劣性だった。警告注意事項は電解質異常(日本の製品と同様にナトリウムを多く含有している)、QT延長など。

    fomfomycinは経口剤が30年近い市販歴を持つが米国で静注用が承認されたのは初めて。ノバルティスのスピンアウトであるNabriva Therapeuticsが18年に承認申請し優先審査指定を受けたが、生産委託先におけるcGMP問題や、COVID-19流行時に連邦政府職員に課された渡航制限などがネックで19年と20年に審査完了通知を受領した。

    Meitheal社は中国の南京健友生化制葯の子会社。当方は見落としていたが、24年7月にNabriva社から北米の資産や権利を取得、早期の承認を期待していたようだが24年12月にまたまた審査完了通知を受領した。今年4月に申請者側が完全回答し、今回、承認に至った。

    Nabrivaは19~20年にXenleta(lefamulin)の経口剤が地域感染細菌性肺炎用薬として米欧で承認されたが、その資産権利も南京健友に売却してしまった。5年ぶりに社名をネット検索したがヒットしなかった。

    リンク: Meitheal社のプレスリリース(Business Wire)


    チミジン・キナーゼ2欠乏症用薬が承認
    (2025年11月3日発表)

    FDAはUCBのKygevvi(doxecitine、doxribtimine)をチミジン・キナーゼ2欠乏症(TK2d)用薬として承認した。12歳以前に発症した成人・小児患者が適応になる。

    TK2d欠乏症は常染色体性劣性遺伝子疾患で、ミトコンドリアのTK2d欠乏によりDNA合成が滞り、細胞がエネルギー不足に陥る。Kygevviは22年にZogenixを買収した時に入手したヌクレオチド補充療法。各種試験のプール分析で、12歳以下発症コフォートではこの2活性物質による治療を受けなかった患者は78人中28人、36%が死亡したが、受けた患者は78人中3人、4%に留まった(ハザード・レシオ0.14、95%信頼区間0.04-0.39)。歩けなかった患者が歩けるようになったり、人工呼吸器を外せた症例報告もあるようだ。治療時発現有害事象は下痢など。尚、12歳過ぎて発症したコフォートでは治療効果が見られなかったが、両群とも進行が遅かったようだ。

    リンク: FDAのプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    PRAC、トラネキサム酸の取違えに注意喚起
    (2025年10月31日発表)

    EMA(欧州薬品庁)のPRAC(ファーマコビジランス・リスク評価委員会)は、全身性異常出血などの治療に用いられる抗プラスミン、tranexamic acidを局所麻酔薬と取り違えて髄腔内投与や硬膜外投与してしまったメディケーション・エラー事例が生じていることから、DHPC(医療従事者向け連絡)を発出する手続きを開始すると発表した。静注ではなく髄腔内投与すると激しい疼痛などの深刻な副作用が生じる。対策として、レーベルに静注のみと明記するよう製薬会社に求める考え。局所麻酔薬とは違う場所に保管することも推奨する。

    日本で70年以上前に発見された物質で、EUの中央手続きによる承認ではないため、最近の薬とは異なったプロセスを経て最終決定される。

    リンク: PRACのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



    PDUFA
    25/11推Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群)
    25/11推ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹)
    25/11推ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加)
    25/11推ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加)
    25/11推バイエルのBAY 2927088(sevabertinib、her2変異非小細胞性肺癌)
    25/11推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・食道胃接合部腫瘍における周術期療法を追加)
    25/11/18Arrowhead PharmaceuticalsのARO-APOC3(plozasiran、家族性カイロミクロン血症)
    25/11/28ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症)
    25/11/30Kura OncologyのKO-539(ziftomenib、急性骨髄性白血病)
    25/11/30Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    25/11/30ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-bysp、濾胞性リンパ腫2次治療を追加)
    25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
    25/12推ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症)
    25/12/5BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加)
    25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
    25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
    25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
    25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
    25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
    25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
    25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
    26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    25/12/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
    25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
    25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
    25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
    25/12/30Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
    25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)



    今週は以上です。

    2025年10月31日

    第1231回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • Metseraを巡り買収合戦が勃発 
    • Akebia社、HIF-PH阻害剤の透析期向け開発は見直し 
    • BridgeBio社、開発品2品の第3相が成功 
    • ACR:ノバルティスの新薬、シェーグレン試験が成功 
    • MSD、ウェリレグの適応拡大試験が二本成功 
    • ガザイバのネフローゼ症候群試験が成功 
    • レンビマとキートルーダの併用、TACEに追加しても寿命は延びず 
    • エアウィンのアウトカム試験データがレーベル収載 
    • 当面の主なFDA審査期限 


    【今週の話題】


    Metseraを巡り買収合戦が勃発
    (2025年10月30日発表)

    GLP-1作用剤など複数の肥満症用薬を開発しているMetsera(Nasdaq:MTSR)を巡り、突如、買収合戦が始まった。9月にファイザーと合併で合意し、後はMetsera株主の承認と反トラスト規制のクリアランスを待つだけかと思われたが、ノボ ノルディスクが1割以上、上回るオファーを提示したのだ。Metseraはファイザーに対抗オファーするか4日内に回答するよう求めたが、ファイザーは要求自体を認めない姿勢だ。

    Metseraは皮下注用GLP-1作用剤MET-097iが第3相入りを控え、アミリン類縁体MET-233iとの併用も検討するなど、超大型化したGLP-1作用剤市場で存在感を示し始めている。自社開発品がフェールしたファイザーは、同社を一株当たり47.5ドルの現金と、CVR(後発価値証書)同22.5ドル相当、合わせて最大70ドルで買収することで合意したが、ノボは、現金が一株当たり56.5ドル、CVRは同21.25ドル相当、合計で最大77.75ドル(9/19引け値比133%プレミアム)のオファーを出してきた。

    ファイザーは、GLP-1作用剤の大手による競争制限的行為とFTC(連邦取引委員会)に見なされる規制リスクがあることや、ノボのオファーは両社の合意文書で規定する、より優れたオファーに該当しないと主張している。

    ノボの提案は通常の企業買収手法とやや異なっている。二段階に分かれ、まず、買収に合意し調印した段階で、ノボがMetseraに一株当たり56.5ドルの現金を支払い、Metseraは資本金と同額の、普通株に転換可能な議決権のない優先株をノボに発行する。同時に、Metseraは普通株一株当たり56.5ドルの配当金を決議、10日後に株主に支払う。次に、Metseraの株主が合併を承認し当局が介入しないと決定した段階で、ノボは普通株株主にCVRを交付し、Metseraの残りの株式を取得する。

    CVRの支払い条件はファイザーのオファーと同じで、MET-097iが4週以上の投与間隔でFDAに承認、MET-233iと併用で4週以上の間隔で投与する第3相試験が開始、この併用がFDAに承認、の夫々が所定の期日前に達成されたら所定の額を支払う。

    FTCの前例を鑑みればノボ ノルディスクによる買収計画に介入する公算があると思われるが、第2次トランプ政権下では前例が通用するとは限らない。

    リンク: MetseraのSEC提出文書(Current Report)
    リンク: ノボ ノルディスクのプレスリリース
    リンク: ファイザーのプレスリリース


    Akebia社、HIF-PH阻害剤の透析期向け開発は見直し
    (2025年10月28日発表)

    Akebia Therapeutics(Nasdaq:AKBA)はVafseo(vadadustat)の適応を拡大すべく、透析前慢性腎疾患に伴う貧血治療の第3相を計画していたが、変更した。FDAに想定より多くの被験者を組入れるよう求められ、費用や期間が拡大する危惧が生じたため。適応範囲を狭めて小規模な試験で済ませる可能性については未だ断念していない様子だ。

    このHIF-PH(低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素)阻害剤は、20年に日本でライセンシーの田辺三菱製薬が保存期/透析期慢性腎疾患における腎性貧血症の治療薬バフセオとして承認を取得した。その後、Akebiaが米国で、そして欧米等における開発販売パートナーだった大塚製薬がEUで、承認申請したが、透析期腎性貧血にしか承認されなかった。HIF-PH阻害剤は経口剤なので、透析に合わせてEPOを投与することも可能な透析期患者よりも透析依存に至っていない患者のほうが適しているのだが、臨床試験で主要有害心血管事象の発生リスクがEPO製剤比非劣性でなかったことが響いた(ハザード・レシオ1.17、95%信頼区間1.01-1.36)。

    HIF-PH阻害剤は複数の企業が開発を競ったが、市販後の普及は遅い。GSKのJesduvroq(daprodustat)はVafseoと同様に日本でダーブロックとして世界初承認されたが、欧米ではVafseoと同様に透析前の患者向けは否定的評価を受け、EUは申請撤回、米国は23年に透析期限定で承認されたものの、ビジネス上の理由で販売中止となった。

    リンク: Akebia社のプレスリリース

    【新薬開発】


    アストラゼネカ、小型C5補体阻害剤の第3相が成功
    (2025年10月30日発表)

    アストラゼネカは7月にALXN1720(gefurulimab)が第3相PREVAIL試験で主目的を達成したと公表したが、今回、米国の学会で成績発表した。 欧米、中国、日本などの施設で成人の抗AChR抗体を持つ全身性重症筋無力症患者260人を組入れて、週一回皮下注する便益を偽薬と比較したところ、第26週疾病活動性尺度(MG-ADL合計スコア)の低下幅が偽薬を1.6点下回った(p<0.0001)。推移グラフから読み取ると、偽薬群はベースライン比3点弱低下、試験薬群は4点強低下となっている。忍容性は既存の抗C5抗体と同様とのこと。ClinicalTrials.govには他の第3相は小児向けしか登録されていないので、承認申請に向かうのではないか。

    C5補体とヒト・アルブミンに結合する二重特異性一本鎖抗体。アミノ酸数が264個と同社の抗C5抗体Ultomiris(ravulizumab-cwvz)の448個より少なく、自己注を想定した皮下注用薬として開発されている。Ultomirisの第3相抗AChR抗体陽性全身性筋無力症試験では26週MG-ADL合計スコアが3.1点低下し偽薬群の1.4点低下を有意に上回った。今回の試験のほうが偽薬群の低下が大きいが、複数の薬が承認されている中での偽薬対照試験なので、比較的軽い患者が組入れられたのかもしれない。何れにせよ、群間差は大きな差はない。

    リンク: 同社のプレスリリース


    BridgeBio社、開発品2品の第3相が成功
    (2025年10月27、29日発表)

    BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)は、今週、開発品2品の第3相試験成功を発表した。数値は未公表。どちらも26年上期に承認申請する考え。

    bbp-418(ribitol)はLGMD(肢帯型筋ジストロフィー)用薬。この常染色体劣性遺伝性疾患は、FKRP遺伝子の機能低下変異により筋細胞の構造安定化に関わるアルファ・ジストログリカン(アルファDG)のグリコシル化が妨げられることが原因で、四肢筋力が弱体化、やがて呼吸困難や心臓疾患を合併する。原因変異は様々で、本剤はLGMDR9型(旧称LGMD2I型)が対象。bbp-418は体内でアルファDGに変換される。

    FORTIFY試験は米欧豪の施設で12歳以上の患者81人を、体重に応じて9gまたは12gを一日2回経口投与する群と偽薬群に無作為化割付けして36ヶ月後の病状をNorth Star Assessment for Limb Girdle Muscular Dystrophyで評価するものだが、成功発表されたのは第12月バイオマーカー中間解析。試験薬群はアルファDGがベースラインの1.8倍に増加したが、偽薬群は第3月時点でほぼ変化はなく、有意な差が見られた。発症タイミングなどが異なるL276Iホモ接合型サブグループでも、その他のFKRP変異型でも効果が見られた。歩行機能や努力肺活量も有意差があった。

    リンク: 同社のプレスリリース(10/27付)

    encaleretはADH1(常染色体優性低カルシウム血症1型)の第3相試験で主目的を達成した。26年上期に米国で通常承認を申請し、その後に欧州でも申請する考え。

    日本たばこが創製したカルシウム感受受容体拮抗剤。08年にMSDがライセンスし骨粗鬆症用薬として開発したがBMD改善作用が見られず返還。その後、BridgeBioの子会社のCalcilytixが導入した。JTの組成物特許は日欧では24年、米国も25年失効とのことだが、Calcilytixは最長で44年までの特許を用意している。

    日本も参加したCALIBRATE試験は、16歳以上(ただし欧州では18歳以上)のADH1患者を組入れて、ラン・イン期間中に標準療法(カルシウム製剤と活性化ビタミンD)の滴定を行った上で、67人をencaleretにスイッチする群と継続群に2対1割付けし、用量滴定期20週と維持期4週を経て24週目標達成率を評価した。目標はアルブミン矯正カルシウム量が8.3-10.7md/dL、かつ、24時間尿カルシウム量が男は300mg未満、女は250mg未満。比較対象は偽薬群ではなく、試験薬に割付けられた患者のラン・イン期間終了時のデータ。

    結果は、各76%と4%となり、有意な差があった。深刻な治療関連有害事象が45人中1人で発生した(標準療法継続群ではゼロ)。治療時発現有害事象で多かったのは高カルシウム血症(各群22%とゼロ)。薬物関連有害事象による中止は発生しなかった。

    同社プレゼンテーション資料によるとADH1の原因になるカルシウム感受受容体遺伝子変異は様々で、第2相は4種類の変異例に限定されていたが、今回は46種類と多い。群間の違いがあるはずだが、治療成果に影響はないのだろうか?小規模な試験なので患者背景に偏りがあり、試験薬群のアルブミン矯正カルシウム量平均値はベースライン時点で8.3mg/dLを上回っていたが標準療法群は若干下回っていた。問題ないのだろうか?

    リンク: 同社のプレスリリース(10/29付)


    ACR:ノバルティスの新薬、シェーグレン試験が成功
    (2025年10月29日発表)

    ノバルティスはVAY736(ianalumab)を複数の自己免疫疾患に開発しているが、8月に成功発表したシェーグレン疾患の第3相試験二本のデータをACR(米国リウマチ学会)で発表した。夫々のp値は境界線近辺で疾病活動性に関する副次的評価項目はトレンドに留まった。26年上期に承認申請する考え。

    24年に買収したMorphoSysと共同創製した、BAFF(B-cell activating factor)受容体を標的とする抗体医薬。BAFF受容体が調停するB細胞の機能や生存に介入するとともに、抗体依存的細胞毒性によるB細胞枯渇を齎す。今回のNEPTUNUS-1試験とNEPTUNUS-2試験は、成人の活性期シェーグレン症候群を対象に、前者は275人を偽薬群と300mg月一回皮下注群に、日本も参加した後者の試験は504人を偽薬群、300mg月一回皮下注群、そして300mg3ヶ月毎皮下注群に無作為化割付けして、48週におけるESSDAI(EULAR Sjögren’s Syndrome Disease Activity Index)のベースライン比増減を比較した。

    結果は、前者の試験(ベースライン値は約12.7点)は各群5.1点と6.4点低下しp=0.0496とギリギリ有意、後者(同11.7点)は各群5.5点、6.5点、6.0点で月一回投与群はp=0.041とギリギリ有意、3ヶ月毎投与群はフェールした。

    有害事象による治験離脱率は前者が3.6%と3.6%、後者は3.6%、8.3%、6.6%。深刻有害事象発生率は前者が8.7%と3.6%、後者は10.7%、9.5%、7.8%。

    リンク: ノバルティスのプレスリリース
    リンク: Grader-Beckらの学会発表抄録(ACR 2025)


    MSD、ウェリレグの適応拡大試験が二本成功
    (2025年10月28日発表)

    MSDはWelireg(belzutifan)が第3相LITESPARK-022試験(以下、022試験)とLITESPARK-011(以下、011試験)で主目的を達成したと発表した。数値は未公表。適応拡大申請に向かうのではないか。

    腎細胞腫の殆どでは、VHL(フォン・ヒッペル・リンドウ)サプレッサー遺伝子が不活化し、VEGFなど腫瘍関連遺伝子の転写因子であるHIF-2が蓄積する。Weliregは経口HIF-2阻害剤で、21年に米国で、25年には日欧でも、ある種の腎細胞腫やVHL関連腫瘍の治療薬として承認された。

    今回の二本とも日本も参加した。022試験は腎臓手術を受けた淡明細胞型腎細胞腫の術後アジュバント療法としてKeytruda(pembrolizumab)に追加する便益を検討した。1841人を40mg錠3個を一日一回経口投与する群と偽薬群に無作為化割付けし、DFS(無病生存期間)を比較した。副次的評価項目の全生存期間は継続観察する。

    011試験は抗PD-(L)1抗体歴を持つ進行腎細胞腫708人をWelireg(用量は同じ)とMSDが共同開発販売しているエーザイのVEGFR阻害剤Lenvima(lenvatinib、10mg2カプセルを一日一回経口投与)の併用群と、Exelixis(Nasdaq:EXEL)のVEGFR阻害剤cabozantinib単剤群に無作為化割付けして、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較した。中間解析で達成、共同主評価項目の全生存期間は継続観察するが現状でも好ましい方向を向いているようだ。

    この二剤の併用試験はなかなか成功しないので朗報だ。

    リンク: 同社のプレスリリース(022試験)
    リンク: 同社とエーザイのプレスリリース(011試験)


    ガザイバのネフローゼ症候群試験が成功
    (2025年10月27日発表)

    ロシュの米国子会社であるジェネンテックは、Gazyva(obinutuzumab)が第3相INShore試験で主目的を達成したと発表した。数値は未公表。適応拡大申請に向かうだろう。

    糖鎖改変型抗CD20抗体。ある種の血液癌に承認され、米国では先日、活性期ループス腎炎にも承認された。今回の日本も参加した試験は、2~25歳の特発性ネフローゼ症候群患者85人を組入れて、2週おいて2回投与するコースを6ヶ月毎に反復する便益をIMPDH阻害剤mycophenolate mofetilと比較した。主目的の52週持続的完全寛解率が有意に上回った。データは未公表。

    ネフローゼ症候群というと将棋の故村山聖九段を思い出す。物故後に日本ではmycophenolate mofetilや抗CD20抗体rituximabが難治性患者に承認されているが、欧米患者にも新薬の採用が広がりそうだ。

    リンク: 同社のプレスリリース


    レンビマとキートルーダの併用、TACEに追加しても寿命は延びず
    (2025年10月29日発表)

    MSDとエーザイは前者の抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)と後者のVEGFR阻害剤Lenvima(lenvatinib)の併用法を様々な疾患でテストしているが、結果は区々だ。肝細胞腫では第3相LEAP-012試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を達成したが、共同主評価項目である全生存期間は、今回、中間解析がフェールした。両社は継続観察しても達成の可能性は低いと判断し、治験終了を決めた。

    この無作為化割付け二重盲検偽薬対照試験は、切除不能な非転移性幹細胞腫でTACE(経動脈化学塞栓術)を受ける患者に両剤を追加する便益を検討した。昨年のESMO(欧州臨床腫瘍学会)でPFSのハザード・レシオが0.66、メジアン値は14.6ヶ月対10.0ヶ月と良好な結果になったことが発表された。全生存期間は未成熟だが、ハザード・レシオ0.8(95%信頼区間0.57-1.11)、p=0.0867と好ましい方向を向いていた。一方で、G3以上の治療関連有害事象発生率は71.3%対31.1%、深刻有害事象発生率33.3%対12.4%、治療関連有害事象死亡率4人(1.7%)対1人(0.4%)と、一気に2剤追加するデメリットも発現した。

    この適応・用法は6月に中国で承認されているが、欧米では未承認。

    リンク: MSDのプレスリリース

    【承認】


    エアウィンのアウトカム試験データがレーベル収載
    (2025年10月27日発表)

    MSDはFDAがWinrevair(sotatercept-csrk)のレーベル一部変更を承認したと発表した。ZENITH試験に基づいて、肺高血圧症による入院や肺移植、死亡リスクを抑制する効能を認めた。

    この試験は標準療法を受けているWHO機能クラスIIIとIVの患者で死亡リスクが高いと推測される患者を組入れて、Winrevairを追加する便益を検討したもの。24年に米国で承認された時のエビデンスであるSTELLAR試験は6分歩行距離を主目的としたが、ZENITHでは全死亡/肺移植/PAHによる24時間以上の入院という臨床的に重大な転帰を評価したところ、メジアン10.6ヶ月追跡の中間解析で発生率が17.4%と偽薬群の54.7%を下回り、ハザードレシオ0.24と大きな抑制作用が見られた。副次的評価項目の全死亡も7人対13人、ハザードレシオ0.42となったが、成功認定の閾値には到達しなかった。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    25/11推Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群)
    25/11推ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹)
    25/11推ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加)
    25/11推ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加)
    25/11推Biohaven PharmaceuticalのBHV-4157(troriluzole、脊髄小脳失調症)
    25/11推Regeneron PharmaceuticalsのLibtayo(cemiplimab、皮膚扁平上皮腫追加)
    25/11推バイエルのBAY 2927088(sevabertinib、her2変異非小細胞性肺癌)
    25/11推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・食道胃接合部腫瘍における周術期療法を追加)
    25/11/18Arrowhead PharmaceuticalsのARO-APOC3(plozasiran、家族性カイロミクロン血症)
    25/11/28ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症)
    25/11/30Kura OncologyのKO-539(ziftomenib、急性骨髄性白血病)
    25/11/30Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    25/11/30ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-bysp、濾胞性リンパ腫2次治療を追加)
    25/12推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、鬱病アジュバントを追加)
    25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
    25/12推ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症)
    25/12/5BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加)
    25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
    25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
    25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
    25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
    25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
    25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
    25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
    26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    25/12/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
    25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
    25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
    25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
    25/12/30Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
    25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)




    今週は以上です。

    2025年10月24日

    第1230回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • EMA、SNSクリエイターとGLP-1作用剤の適正使用キャンペーン 
    • DR4アゴニスティック抗体を軟骨肉腫に承認申請へ 
    • コセンティクスのPMR試験が成功 
    • テビペネム新規塩の第3相成績を発表 
    • ESMO:Exelixisが新規VEGFR阻害剤の第3相成績を発表 
    • ESMO:ctDNAに基づくテセントリク早期介入は有効 
    • ESMO:抗TROP2 ADCのTNBC試験成功(ダトロウェイの巻) 
    • ESMO:抗TROP2 ADCのTNBC試験成功(トロデルビの巻) 
    • ESMO:ノバルティス、プルヴィクトのホルモン感受性前立腺癌試験が成功 
    • ESMO:ロシュ、新規乳癌用薬の第3相が成功 
    • ESMO:エンハーツの2試験のデータ発表 
    • ESMO:パドセブ・キートルーダ併用でMIBCの摘出術成績が向上が 
    • モデルナ、mRNA型CMVワクチンの第3相がフェール 
    • 前頭側頭型認知症の第3相がフェール 
    • ESMO:パドセブをMIBCの周術期補助療法として承認申請 
    • サノフィがあのTzieldを適応拡大申請 
    • Replimune社、黒色腫のウイルス療法を再承認申請 
    • ESMO:MSD、キートルーダの卵巣癌試験が成功、適応拡大を申請 
    • 田辺三菱のパーキンソン病用薬は今回も審査完了に 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 
    • ブーレンレップが米国でも復活 
    • ガザイバがループス腎炎に承認 


    【今週の話題】


    EMA、SNSクリエイターとGLP-1作用剤の適正使用キャンペーン
    (2025年10月21日発表)

    EMA(欧州薬品庁)は7ヶ国のインスタグラム・コンテント・クリエイターを通じてGLP-1作用剤の適正使用キャンペーンを開始すると発表した。SNSクリエイターやセレブの一部が適応やリスクに配慮しない情報を流布する事例があるため、1ヶ月に亘り、啓蒙を図る。

    インスタグラムを選んだのはGLP-1作用剤に関するエントリーや情報が特に多いため。選ばれたクリエイターの多くは医療従事者や栄養のエキスパート。ドイツ、イタリア、スペインなどから各国1名ずつ選んだ。各人のフォロワー数は3万人から86万人とのこと。

    リンク: EMAのプレスリリース

    【新薬開発】


    DR4アゴニスティック抗体を軟骨肉腫に承認申請へ
    (2025年10月23日発表)

    米国カリフォルニア州のInhibrx Biosciences(Nasdaq:INBX)は、INBRX-109(ozekibart)が軟骨肉腫試験で主目的を達成したと発表した。26年第2四半期に承認申請する考え。

    アポトーシス・シグナルを受け取るDR5に結合するシングル・ドメイン抗体鎖4個とイフェクター機能除去Fc領域を結合した106kDaのアゴニスティック抗体。TRAILより一度に結合するDR5の数を増やすことで力価を増強しオフ・ターゲット毒性を緩和した。今回のChonDRAgon試験は、G2/3(高悪性度)の進行/転移性、切除不能な通常型軟骨肉腫(conventional chondrosarcoma)の患者206人を試験薬群と偽薬群に2対1割付けして3週毎投与し、PFS(無進行生存期間、中央独立放射線学的評価)を比較したところ、階層化ハザード・レシオ0.479、p<0.0001、各群のメジアン値は5.52ヶ月と2.66ヶ月となった。軟骨肉腫の無作為化割付け試験でPFS延長効果を確認したのは初めてとのこと。野生型/変異型IDHなどのサブグループ分析も一貫した結果だった。疼痛や運動機能悪化抑制などの副次的評価項目も達成した。

    肝毒性により1名死亡したため重度肝障害を除外したり初期の監視強化などを導入、治療関連肝有害事象発生率を11.8%(大半はG1/2、偽薬群の発生率は4.5%)に抑制した。

    詳細は11月にCTOS(結合組織腫瘍学会)で発表する考え。

    同社は24年にInhibrxがサノフィに買収された時に次項の開発品以外の開発資産を持ってスピンアウトした会社。

    リンク: Inhibrx Biosciencesのプレスリリース


    サノフィ、AAT欠乏症性肺気腫の遺伝子組換え薬試験が成功
    (2025年10月22日発表)

    サノフィはSAR447537(efdoralprin alfa)が第2相試験で主目的などを達成したと発表した。ピボタルと呼ばれていた試験なので、承認申請に向かう可能性がありそうだ。

    24年5月にInhibrx社を買収して入手した、ヒト・アルファ1アンチトリプシン(AAT)とIgG4の融合蛋白。AAT欠乏症では好中球エステラーゼの制御が効かず肺気腫などの疾患を合併する。血漿由来AAT製品が実用化されているが効果が長期間持続せず、週一回投与しても2~3日で減衰するとのことだ。

    今回のElevAATe試験は97人の患者を3週毎投与群、4週毎投与群、そして血漿由来製品毎週投与群に2:2:1割付けして、32週のfAAT(機能性アルファ1アンチトリプシン)濃度を比較したところ、血漿由来品比で有意な差があった。数値は未公表。正常値下限を上回った日数比率などの主要副次的評価項目も達成した。有害事象は各群同程度だった。

    リンク: サノフィのプレスリリース


    コセンティクスのPMR試験が成功
    (2025年10月22日発表)

    ノバルティスは抗IL-17A抗体Cosentyx(secukinumab)のPMR(リウマチ性多発筋痛症)における便益を検討した第3相REPLENISH試験で主目的等を達成したと発表した。26年上期に適応追加申請する考え。

    成人患者を偽薬、150mg、300mgの各群に無作為化割付けして、最初の24週間はステロイド漸減も進めながら、52週における持続的寛解率を比較した。主評価項目である300mg群と偽薬群の比較で統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善が見られた。年間ステロイド投与量などの解析も成功した。データは未発表。

    リンク: 同社のプレスリリース


    テビペネム新規塩の第3相成績を発表
    (2025年10月21日発表)

    Spero Therapeutics(Nasdaq:SPRO)とGSKは、5月にSPR994(tebipenem pivoxil hydrobromide)が第3相複雑性尿路感染症試験の中間解析で主目的を達成と発表したが、ID Week 2025でデータを公表した。GSKが年内に米国で承認申請する考え。

    SperoがMeiji Seilaファルマからライセンスした、オラペネム(テビペネム ピボキシル)の新規塩。Speroが第3相複雑性尿路感染症実薬対照非劣性試験を実施して21年に米国で承認申請したが、審査完了通知を受領した。主評価項目で非劣性マージンをクリアしたが、支持的解析結果が思わしくなかったらしく、エビデンス不十分と見做されたようだ。同社は人員削減を断行するとともに、GSKと提携して今回の第3相を実施した。

    このPIVOT-PO試験は、成人の複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)の入院患者1690人を試験薬群(600mgを6時間毎経口投与)とimipenem及びcilastatinを用いる6時間毎静注群に無作為化割付けして7~10日間投与し、開始後17日前後にimipenem感受株感染者における有効性を判定した。主評価項目の全般的応答率は試験薬群が58.5%、対照群が60.2%、調整群間差は-1.3%(95%信頼区間-7.5,4.8)となり、95%下限が非劣性閾値の-10%をクリアした。全般的応答率の構成要素である臨床的治癒率は93.5%対95.2%、細菌学的有効率は60.3%対61.3%。非劣性試験が成功する事例では点推定値が対照群を上回ることが多いが、本剤は二本とも下回っているのが印象的だ。

    リンク: 両社のプレスリリース


    ESMO:Exelixisが新規VEGFR阻害剤の第3相成績を発表
    (2025年10月20日発表)

    Exelixis(Nasdaq:EXEL)は6月にXL092(zanzalintinib)が第3相STELLAR-303試験で主目的の一つを達成したと発表したが、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)でデータを公表した。標準療法不応、抵抗、不耐の転移結腸直腸癌(マイクロサテライト高度不安定性は除外)において、100mg一日一回経口投与をロシュの抗PD-L1抗体atezolizumabと併用する群の便益を先輩VEGFR阻害剤であるバイエルのregorafenib単剤と比べたもので、メジアン生存期間は10.9ヶ月対9.4ヶ月、ハザード・レシオは0.80、p=0.0045だった。サブグループ分析も整合的とのこと。1年生存率は各群46%と38%だった。

    共同主評価項目の肝転移のないサブグループの解析は未成熟だがハザード・レシオ0.79、p=0.0875と好ましい方向を向いている。G3/4治療時発現有害事象発生率は59%対37%で上回った。

    atezolizumabは転移結腸直腸癌の3次治療試験、IMblaze 370で、単剤投与群のメジアン生存期間が7.1ヶ月とregorafenib群の8.51ヶ月を下回り、ハザード・レシオは1.19だった。異なった試験のデータなので比較できるとは限らないが、単剤では上回らず、二剤併用してもメジアン1ヶ月強の延命というのは残念だ。

    リンク: Exelixisのプレスリリース


    ESMO:ctDNAに基づくテセントリク早期介入は有効
    (2025年10月20日発表)

    ロシュは、ESMOで、Tecentriq(atezolizumab)が第3相IMvigor011試験で主評価項目のDFS(再発転移または死亡までの期間、治験医評価)を達成したと発表した。この日本も参加した試験は、筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の切除術を受けた高リスク患者を頻繁に血液検査してシグナルが出たら画像診断で再発と認められなくても投与を開始する便益を検討したもの。検査はNatera社のSignatera ctDNAテストを用いた。ctDNA検出可能例761人のうち、1年内に陽転したが無再発の250人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして追跡したところ、DFSのハザード・レシオが0.64、統計的に有意な差があった。メジアン値は各群21.1ヶ月と32.8ヶ月。副次的評価項目の全生存期間のハザード・レシオも0.59で有意、メジアンは4.8ヶ月と9.9ヶ月だった。

    8月にNatera社が成功発表しているが、ロシュは、おそらくESMOに配慮して、プレス・リリースを出していなかった。決算発表資料によると、25年内にctDNA陽性高リスクMIBCに適応拡大申請の予定。

    リンク: ロシュのプレスリリース


    ESMO:抗TROP2 ADCのTNBC試験成功(ダトロウェイの巻)
    (2025年10月20日発表)

    第一三共はアストラゼネカと共同開発販売している抗TROP2抗体薬物複合体、Datroway(datopotamab deruxtecan)が第3相TROPION-Breast02試験で主目的を達成したとESMOで発表した。局所再発切除不能/転移性のトリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)で、このステージにおける初治療を受ける、抗PD-(L)1抗体不適又は経験済みの患者644人を組入れて効果を化学療法群と比較したところ、メジアン生存期間は23.7ヶ月対18.7ヶ月、ハザード・レシオ0.79、共同主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)は各10.8ヶ月、5.6ヶ月、0.57となり、有意な差があった。

    G3以上の有害事象発現率は33%対29%で上回った。Datroway群は間質性肺疾患による死亡が1例発生し、独立評価委員会によって試験薬関連と判定された。

    Datrowayは切除不能/転移ホルモン受容体陽性her2陰性乳癌で上記と同じステージにおける1次以上の化学療法歴を持つ患者などに24~25年に日米欧で承認されている。今回の成功を受けて適応追加申請に向かう考え。

    リンク: 第一三共のプレスリリース


    ESMO:抗TROP2 ADCのTNBC試験成功(トロデルビの巻)
    (2025年10月19日発表)

    ギリアド・サイエンシズは5月に抗EGP1(別名TROP2)抗体薬物複合体Trodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)が第3相Ascent-03試験で主目的を達成したと発表したが、データをESMOで明らかにした。局所進行切除不能/転移トリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)で抗PD-(L)1抗体不適な患者の転移後一次治療における便益を化学療法(gemcitabine、carboplatin、(nab)-paclitaxelの併用)と比較したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン9.7ヶ月対6.9ヶ月、ハザードレシオ0.62と、統計的に有意な差が見られた。副次的評価項目の全生存期間は未成熟。

    この試験と対になるASCENT-04/KeyNote-D19試験も5月にASCO(米国臨床腫瘍学会)で成功発表されている。局所進行切除不能/転移TNBCでこちらは抗PD-(L)1抗体が適応になる(CPS≧10)一次治療患者を組入れて、Keytruda(pembrolizumab)と併用する効果をKeytruda・化学療法薬一剤併用と比較したもので、PFSのハザード・レシオは0.65、統計的に有意だった。副次的評価項目の全生存期間はハザード・レシオ0.89と案外で未だ有意差が出ていないが、進捗率26%程度、対照群の4割が進行後にクロス・オーバーしたことなどが影響したのかもしれない。

    同社はこの二つの適応拡大を当局と相談する考え。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ESMO:ノバルティス、プルヴィクトのホルモン感受性前立腺癌試験が成功
    (2025年10月19日発表)

    ノバルティスは6月にPluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)が第3相PSMAddition試験で主目的を達成したことを明らかにしたが、ESMOでデータを発表した。PSMA陽性転移ホルモン感受性前立腺癌を対象に、ARPI(enzalutamideなどのアンドロゲン受容体回路阻害剤)とADT(アンドロゲン枯渇薬)の併用に更に追加する便益を検討したところ、PFS(放射線学的評価)のハザードレシオが0.72となり、統計的に有意だった。副次的評価項目の全生存期間は同0.84、有意水準には届いていないがクロス・オーバーの影響かもしれない。G3以上の有害事象発生率は50.7%で対照群の43%を上回った。年内に適応拡大申請する考え。

    PluvictoはPSMAに結合するライガンドとベータ線を放出する放射性核種Lu 177を結合した放射性医薬品。22~25年に米欧日でARPIなどの治療歴を持つ転移ホルモン抵抗前立腺癌に承認された。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ESMO:ロシュ、新規乳癌用薬の第3相が成功
    (2025年10月18日発表)

    ロシュはRG6171(RO7197597またはGDC-9545とも、giredestrant)の第3相evERA試験の成績をESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表した。mTOR阻害剤everolimusと併用で、PFS(無進行生存期間、治験医評価)が標準療法を上回った。患者にいち早く提供するため当局にデータを提示する考え。

    経口選択的エストロゲン受容体零落剤、かつエストロゲン受容体アンタゴニストで、5本の第3相試験が進行中。日本も参加した今回の試験は、術後アジュバント又は局所進行/転移後に内分泌療法及びCDK4/6阻害剤による治療を受けたことのある、エストロゲン受容体陽性、her2陰性の、局所進行/転移乳癌が対象。30mg(一日一回経口投与)とeverolimusの併用を標準療法(exemestane、fulvestrant、またはtamoxifenをeverolimusと併用)と比較した。

    共同主評価項目のうち、ESR1変異型サブグループの解析はPFSハザードレシオが0.56(95%信頼区間0.44-0.71)、メジアン値は8.77ヶ月対5.49ヶ月、intent-to-treatでは各0.56(0.44-0.71)、8.77ヶ月対5.49ヶ月だった。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だが夫々ハザード・レシオ0.62(0.38-1.02)と0.69(0.47-1.00)と、好ましい方向を向いている。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ESMO:エンハーツの2試験のデータ発表
    (2025年10月18日発表)

    アストラゼネカは、第一三共から共同開発販売権を得ている抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)の日本も参加した第3相試験二本の成績をESMOで発表したと、プレスリリースを出した。成功したこと自体は公表済み。

    DESTINY-Breast11試験は、局所進行性/炎症性でher2陽性の高リスク早期非転移乳癌の術前療法として、Enhertuを4サイクル投与してからTHPレジメン(paclitaxel、trastuzumab、pertuzumabを併用)を施行する便益をddAC-THPレジメン(高強度doxorubicinとcyclophosphamideを投与してからTHPを施行)と比較した。尚、Enhertuだけを投与する群も設定されたが、独立データ監視委員会の勧告を受けて中途で組入れ中止となった。

    主評価項目はpCR(病理学的完全反応率:切除した組織とリンパ節に浸潤腫瘍がない)。67.3%対56.3%で有意に上回った。ホルモン受容体陽性にも陰性にも便益があった。副次的評価項目のEFS(無イベント生存率)は4.5%しか成熟していないが、ハザード・レシオ0.56(95%信頼区間0.26-1.17)と好ましい方向を向いている。安全性プロファイルは上回り、間質性肺疾患の発生率は特に増加はしなかった。

    第一三共は10月2日に米国で適応拡大申請したことを発表している。審査期限は26年5月18日。

    もう一本のDESTINY-Breast05試験は、ポスト・ネオアジュバントという聞き慣れないセッティングにおける便益を検討した。術前療法後に乳房又は腋窩リンパ節に侵襲性残存病変があり、高リスク(治験登録によると、術前治療前に切除不能と診断された、または、術後に腋窩リンパ節が病理学的陽性)のher2陽性早期乳癌を組入れて、Enhertu(5.4mg/kgを3週毎点滴静注)とロシュのKadcyla(trastuzumab emtansine、3.6mg/kg3週毎点滴静注)の二つの抗her2抗体薬物複合体の便益を比較した。試験に参加したドイツの共同治験グループのスライドによると、両群とも最大14サイクル施行した。

    主評価項目であるIDFS(無浸潤疾患生存率、担当医評価)を中間解析で達成、ハザード・レシオは0.47、3年IDFS率は92.4%対83.7%、副次的評価項目の全生存期間はまだ2.9%しか成熟していないがハザード・レシオ0.61(95%信頼区間0.34-1.10)と好ましい方向を向いている。G3以上の治療時発現有害事象発生率は50.6%対51.9%で同程度。間質性肺疾患は、Enhertu群はG3が0.9%、第一三共のリリースによると致死的なものが0.2%で発生した。Kadcyla群はG3以上はゼロだった。

    リンク: アストラゼネカのプレスリリース(DESTINY-Breast11試験)
    リンク: 同(DESTINY-Breast05試験)
    リンク: 第一三共のプレスリリース(DESTINY-Breast05試験、10/20付け)


    モデルナ、mRNA型CMVワクチンの第3相がフェール
    (2025年10月22日発表)

    モデルナはmRNA-1647の第3相試験がフェールしたと発表した。妊娠前に潜在的CMV感染を治療できれば胎児の感染を防ぐことができるが、実現しなかった。同社CEOはブログで元々チャレンジングな試験であったことを指摘している。別用途の第2相が進行中。

    CMV(サイトメガロウイルス)の膜結合Bタンパクやペンタマー(5種類の蛋白からなる抗原複合体)のmRNAを活性成分とするワクチン。今回の日本も参加した第3相は、16~40歳のこれから妊娠する可能性がある女性や、5歳以上の子供に接する予定の母親など7500人を組入れて、3ヶ月間に3回筋注する効果を偽薬と比較した。主評価項目はCMV血清陰性者の抗原検査陽転リスク(接種完了後2年間追跡)。複数の薬効解析でワクチン効率(陽転予防率)は6~23%に留まった。データ安全性監視委員会は安全性に関する懸念は指摘していない。

    第2相幹細胞移植関連CMV感染症試験も進行中。移植後は抗ウイルス薬の予防的投与を施行するが、ワクチンを3回接種した上で抗ウイルス薬を中止、ブースター接種も行うことで、臨床的に顕著なCMV感染症(CS-CMVi)の抑制を図るもの。

    リンク: 同社のプレスリリース
    リンク: 同社CEOのブログ・ポスト


    前頭側頭型認知症の第3相がフェール
    (2025年10月21日発表)

    Alector(Nasdaq: ALEC)は、AL001(latozinemab)の第3相FTD-GRN(プログラニュリン遺伝子変異型前頭側頭型認知症)試験で臨床的主評価項目がフェールしたと発表した。開発を中止する。社員数半減とプレジデント兼研究開発ヘッドの退任も決定した。

    FTD-GRNは前頭側頭型認知症の5~10%を占め、欧米で1万人程度の希少疾患。AL001はプログラニュリンの分解に関わるsortilinを標的とする抗体。GSK提携の対象品目の一つ。INFRONT-3試験に119人を組入れて60mg/kgを4週毎投与する効果を96週間観察したが、症候性103人における臨床評価(CDR+NACC FTLD-SBベース)の解析がフェールした。FDA推奨により主評価項目に追加した血漿プログラニュリン濃度の解析は成功したが、症状悪化を抑えることはできなかった。

    リンク: Alectorのプレスリリース

    【承認申請】


    ESMO:パドセブをMIBCの周術期補助療法として承認申請
    (2025年10月22日発表)

    ESMO:パドセブ・キートルーダ併用でMIBCの摘出術成績が向上が
    (2025年10月18日発表)

    アステラス製薬とファイザーは、ESMOで抗ネクチン-4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)とMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の周術期付随療法に併用した第3相EV-303/KeyNote-905試験の成績を発表した。数日後、アステラスは米国で適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限は26年4月7日。MSD側も学会発表プレスリリースを出しているが申請には言及していない。

    この、日本も参加した試験は、白金薬不適/拒否の筋層浸潤膀胱癌の術前術後補助療法としての便益を検討したもの。KeytrudaとPadcevを術前に3サイクル、術後に6サイクル、Keytrudaは更に8サイクル投与する群と、Keytrudaだけを上記のサイクル数投与する群、そして、摘出術だけの群が設定されているが、最初の中間解析で併用群が主目的のEFS(無イベント生存期間)を達成した。ハザード・レシオ0.40、p<0.0001、2年EFS率74.7%(手術だけの群は39.4%)と中々の数値だ。副次的評価項目の全生存期間も各0.50、p<0.0002、79.7%対63.1%と比較的大きな差がある。PD-L1発現の有無など、事前に設定されていたサブグループ分析も良好な結果だった。G3以上の有害事象発生率は71.3%対45.9%とこちらの差も大きい。

    残念なことに、Keytruda単剤群の解析は未成熟で公表されていないため、本当に2剤併用が必要なのか良く分からない。第1/2相EV-103試験などの、様々な用法を探索した試験をエビデンスにできるのかもしれないが、MSDが申請に言及していないのは、おそらく、この理由なのではないだろうか。

    また、術前だけ、術後だけでは足りないのかも、副作用や費用という足かせがある以上、重要な点だ(他の癌や薬と同様に、倫理面の配慮から検討されないままになってしまうかもしれないが)。

    リンク: アステラスとファイザーのプレスリリース(10/18付)
    リンク: MSDのプレスリリース(同)
    リンク: アステラス製薬のプレスリリース(承認申請受理について、10/22付、和文)


    サノフィがあのTzieldを適応拡大申請
    (2025年10月20日発表)

    サノフィは抗CD3エプシロン鎖抗体Tzield(teplizumab-mzwv)を8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病の進行を抑制する薬として適応拡大申請し受理されたと発表した。先日、FDAがCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)プログラムに指定したことを発表しており、本当に1~2ヶ月で承認されるのか、注目される。

    一型糖尿病においてインスリン分泌細胞を攻撃してしまう免疫細胞を抑制する抗体医薬。臨床成績も開発主体も変遷したが、22年に米国で8歳以上のステージ2の一型糖尿病用薬として承認された。血糖値が高めで症状はまだ出ていないステージ2段階の患者が、口渇や排尿増、体重減、霞目、疲労を伴う症候性疾患のステージ3に進行するリスクを抑制する。今回は、症候性に進行した患者のベータ細胞機能の悪化を抑制するもの。23年にNew England Journal of Medicine誌に刊行された治験論文によると、第3相PROTECT試験で78週の負荷後Cペプチド水準が偽薬群を有意に上回った。

    リンク: サノフィのプレスリリース
    リンク: Ramosらの治験論文(New England Journal of Medicine)


    Replimune社、黒色腫のウイルス療法を再承認申請
    (2025年10月20日発表)

    Replimune Group(Nasdaq:REPL)はRP1(vusolimogene oderparepvec)をFDAに再申請し受理されたと発表した。審査期限は26年4月10日。

    殺腫瘍力や免疫刺激性を増強した遺伝子組換えHSV-1療法。24年に140人を組入れた第2相単群試験に基づき、成人の抗PD-1抗体歴を持つ進行黒色腫にnivolumabと併用する用途用法で加速承認を申請したが、治験の実施状況や被験者の不均質性などを理由に、審査完了通知を受領した。何れも審査中の面談では指摘されなかった由なので、もしかしたら、FDA上層部の介入があったのかもしれない。追加試験のデザインについても言及されていたようなので、再申請には時間がかかるだろうと思っていたが、今回、追加情報を提出するだけで受理されるとは、意外な展開だ。

    リンク: Replimuneのプレスリリース
    リンク: 同(9/18付、タイプA会議の結果について)


    ESMO:MSD、キートルーダの卵巣癌試験が成功、適応拡大を申請
    (2025年10月18日発表)

    抗PD-(L)1抗体は卵巣癌では苦戦しているが、5月にMSDのKeytruda(pembrolizumab)が第3相KeyNote-B96/ENGOT-ov65試験の第1次中間解析で主目的を達成したことが公表され、今回、ESMOで詳細発表された。更に、米国で承認申請が受理されたことも公表された。優先審査を受け、審査期限は26年2月20日。

    白金抵抗性卵巣癌を組入れてpaclitaxelに追加する便益を検討したもの。共同主評価項目のうち全被験者のPFS(独立データ監視委員会評価)はハザード・レシオ0.70、12ヶ月PFS率はKeytruda併用群が33.1%、偽薬併用群は21.3%。PD-L1陽性(CPSが1以上)のサブグループでは各0.72、35.2%、22.6%だった。被験者の3/4がbevacizumabを併用したが、その有無を問わず効果があった。副次的評価項目の全生存期間は第2次中間解析時点でPD-L1陽性サブグループがハザード・レシオ0.76、p=0.0053、12ヶ月生存率69.1%対59.3%となり達成。全被験者ベースは、先日、最終解析で達成した旨発表されたが、数値はESMOでも発表されなかった。G3-5治療関連有害事象発生率は67.5%対55.3%で上回った。

    リンク: MSDのプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    田辺三菱のパーキンソン病用薬は今回も審査完了に
    (2025年10月23日発表)

    田辺三菱製薬の子会社であるNeuroDermはND0612(levodopaとcarbidopaの24時間持続皮下注用製剤)を運動症状の日内変動を有するパーキンソン病用薬として米国で承認申請していたが、24年6月に続き、2回目の審査完了通知を受領した。プレスリリースによると、製剤の製造所と非臨床情報に関する指摘事項があった。前回より指摘事項数が減少したようだが、この二点に関しては問題解決が遅れているのかもしれない。協議を進める考え。

    NeuroDermは世界で初めて、levodopaとcarbidopaの液剤化に成功、小型携帯ポンプで24時間供給するシステムを開発した。levodopaの作用時間が短くなり症状を十分抑制できなくなった患者に適している。欧州でも今年2月に承認申請された。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認】


    ブーレンレップが米国でも復活
    (2025年10月23日発表)

    FDAはGSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf)を成人のプロテアソム阻害剤と免疫調停薬を含む2次以上の治療歴を持つ再発・難治多発骨髄腫にbortezomibおよびdexamethasoneと併用することを承認した。5年ぶりの復活だが、先に承認されたEUや日本より適応・用法が限定された。臨床試験でG3/4眼有害事象の発生率が77%と高く、枠付き警告/REMS(リスク評価緩和戦略)の対象となった。

    多発骨髄腫で高発現するBCMAを標的とする抗体薬物複合体。20年に米欧で再発・難治多発骨髄腫の5次治療に単剤投与することが加速/条件付き委承認されたが、市販後薬効確認試験がフェール、承認取消となった。ところが、前後して2次治療の3剤併用実薬対照試験二本で優越性を確認、、復活に成功した。

    FDAは7月にODAC(腫瘍学薬諮問委員会)を招集し意見を求めたところ、bortezomib及びdexathoneとの併用法は賛成3人反対5人、pomalidomide及びdexathoneとの併用法は賛成1人、反対7人と、寂しい結果となった。PFSは実薬対照群を有意に上回ったが、延命効果は一部しか成熟していないことや、多くの患者で角膜上皮有害事象が発生し、片目だけだと気付くのが遅れ潰瘍などを合併するリスクも高まることなどがボトルネックとなった様子だ。当方は承認されないと予想していたが、FDAは適応や用法を絞り込んで承認した。

    GSKのプレスリリースによると、26年に2次治療患者の全生存解析結果が判明するとのことなので、成功なら2次治療やpomalidomide・dexamethasone併用も承認される可能性があるのかもしれない。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: GSKのプレスリリース


    ガザイバがループス腎炎に承認
    (2025年10月20日発表)

    ロシュはFDAがGazyva(obinutuzumab)の活性期ループス腎炎適応拡大を承認したと発表した。成人の標準治療を受けている患者に追加投与する。第3相REGENCY試験で第76週完全腎反応率が46.4%と標準療法だけの群の33.1%を有意に上回った。EUでも今月、CHMPが肯定的意見を出している。

    リンク: ロシュのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限】


    PDUFA
    25/10推バイエルのBAY3427080(elinzanetant、血管運動神経症状)
    25/10/23SydnexisのRyjunea(atropine sulfate点眼、進行性近視)
    25/10/25MSDのWinrevair(sotatercept-csrk、アウトカム試験データ)
    25/11推Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群)
    25/11推ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹)
    25/11推ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加)
    25/11推ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加)
    25/11推Biohaven PharmaceuticalのBHV-4157(troriluzole、脊髄小脳失調症)
    25/11推Regeneron PharmaceuticalsのLibtayo(cemiplimab、皮膚扁平上皮腫追加)
    25/11推バイエルのBAY 2927088(sevabertinib、her2変異非小細胞性肺癌)
    25/11推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・食道胃接合部腫瘍における周術期療法を追加)
    25/11/18Arrowhead PharmaceuticalsのARO-APOC3(plozasiran、家族性カイロミクロン血症)
    25/11/28ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症)
    25/11/30Kura OncologyのKO-539(ziftomenib、急性骨髄性白血病)
    25/11/30Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    25/11/30ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-bysp、濾胞性リンパ腫2次治療を追加)
    25/12推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、鬱病アジュバントを追加)
    25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
    25/12推ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症)
    25/12/5BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加)
    25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
    25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
    25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
    25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
    25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
    25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
    25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
    26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    25/12/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
    25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
    25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
    25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
    25/12/30Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
    25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)



    今週は以上です。