【ニュース・ヘッドライン】
- FDA:多発性骨髄腫用薬はMRDに基づき加速承認申請できる
- 抗OX40L抗体のアトピー試験が成功
- Corcept社、relacorilantが全生存期間も達成
- 毛細血管拡張性運動失調症のロイシン補充療法試験が成功
- ボッシュ、リファキシミン新製剤の肝性脳症一次予防試験がフェール
- 疾病装飾ポテンシャルを持つ変形性膝関節症用薬を承認申請
- Valneva、チクングニア熱ワクチンの米国販売を断念
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
FDA:多発性骨髄腫用薬はMRDに基づき加速承認申請できる
(2026年1月20日発表)
FDAは多発性骨髄腫用薬に関するガイダンス資料を公表した。MRD(微小残存病変)に基づく加速承認申請を容認するもので、開発期間短縮に資するだろう。
多発性骨髄腫は過去20年間に新薬が続々と登場し、かっては贅沢過ぎた3剤、4剤併用が今日では標準療法になっている。効果が高まる一方で、新薬開発のハードルも上がった。新患の場合で完全反応率90%、メジアン生存期間7~10年という標準療法を有意に上回るためには多くの患者を長期間追跡する必要があり、開発期間の長期化を招きかねない。
対応策として、FDAはMRDに基づく加速承認申請を認めた。複数の試験でPFS(無進行生存期間)や全生存期間との相関性が示されているからだ。24年の腫瘍学諮問委員会でも支持された。MRD陰転の閾値は、最低でも、骨髄穿刺液のシーケンサーまたはフローサイトメトリー検査により正常細胞10万個当たりの腫瘍細胞数が1個未満、となる。逸失例は非達成例とカウントする。一時的な偏りの検出を回避するために、MRD解析時点で患者組入れを完了している必要がある。同じ臨床試験、または別の臨床試験でPFS(無進行生存期間)や全生存期間の延長作用を確認して本承認を取得する必要がある。
寛解導入期、地固め期、維持療法期など複数のフェーズを跨ぐ試験を行う場合は、夫々のフェーズの寄与を評価できるようデザインすべき。多発性骨髄腫に進展する可能性のある、くすぶり型多発性骨髄腫やMGUS(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症)は、MRDの有用性が確立していないため、対象外。
24年の諮問委員会ではサノフィの抗CD38抗体Sarclisa(isatuximab-irfc)の第3相IsKia試験のデータも参照されたが、未だ承認されていない(申請されているのかも明らかではない)。ブリストル マイヤーズ スクイブはCC-220(iberdomide)が2~3次治療の第3相EXCALIBER-RRMM試験の中間解析で共同主評価項目であるMRD陰転率を達成したと昨年9月に発表したが、その後に承認申請したかどうか、明らかではない。もう一つの主評価項目であるPFSが26年にも開票するのを待つ考えかもしれない。
リンク: FDAの関連頁
【新薬開発】
抗OX40L抗体のアトピー試験が成功
(2026年1月23日発表)
サノフィはSAR445229(amlitelimab)のアトピー性皮膚炎における第3相試験が更に2本成功したと発表した。但し、一本は一部の重要なな評価項目がフェールしており、満点の結果とは言えなそうだ。同社は承認申請する考え。
抗原提示細胞などが発現するOX40レガンドに対する抗体。T細胞のOX40に結合するのを妨げることで、イフェクターT細胞と制御的T細胞のバランスを調整する。第3相は体重40kg以上の患者の場合で250mg(初回は倍量)を12週毎または4週毎に皮下注する便益を検討した。主評価項目は複雑で、FDA向けは24週vIGA-AD奏効率。医師の全般的評価が0(寛解)または1(ほぼ寛解)、且つ、ベースライン比2段階以上改善を奏効とした。解析対象はnon-responder imputation(以下、NRI)方式で、24週までにレスキュー治療を受けたり、24週時点のデータが逸失している症例は非奏効例と分類した。EUや日本向けの主評価項目は、24週vIGA-AD奏効率と、EASI-75奏効率。どちらもTreatment policy(以下、TP)方式で、レスキュー治療を受けた患者に関しては24週時点の奏効評価があればそれを採用した。一般的に、intent-to-treatに近いとされる評価方法だ。
組入れ対象は3本とも12歳以上の小児・成人における既存療法不応不適の中重度アトピー性皮膚炎。COAST 1と2は単剤投与、SHORE試験は中力価局所性ステロイドかつまた局所性カルシニューリン阻害剤に追加投与する便益を検討した。2種類の用法を検討しているため閾値は偽薬比p値が0.025未満。結果は下表のとおりで、COAST 1試験とSHORE試験は米向けも欧日向けも達成したが、COAST 2試験は欧日向けはフェール、米向けも主要な副次的評価項目である、vIGA-AD 0/1かつ紅斑殆ど消失と定義された奏効率はフェールした。
忍容性は大きな問題はなさそうだ。皮膚アトピーという治療時発現有害事象の発生率が、SHORE試験では偽薬群5.6%、試験薬2群合計は2.7%と好ましい結果になっているが、COAST 2試験では各2.7%と5.3%と、逆になっている。
| Non-responder imputation | Treatment policy | |||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 偽薬 | 12週毎投与 | 4週毎投与 | 偽薬 | 12週毎投与 | 4週毎投与 | |
| COAST 1 | ||||||
| vIGA-AD 0/1 | 9.2% | 22.5%
p<0.01 | 21.1%
p<0.01 | 10.5% | 29.1%
p<0.001 | 26.5%
p<0.001 |
| EASI-75 | 19.1% | 39.1%
p<0.001 | 35.9%
p<0.001 | 27.6% | 50.3%
p<0.001 | 46.0%
p<0.001 |
| COAST 2 | ||||||
| GA-AD 0/1 | 14.8% | 25.7%
p≦0.025 | 25.3%
p≦0.025 | 18.8% | 27.7%
p=0.068 | 28.8%
p=0.031 |
| EASI-75 | 24.2% | 40.5%
p≦0.01 | 41.8%
p≦0.001 | 30.2% | 45.9%
p≦0.01 | 49.7%
p≦0.001 |
| SHORE | ||||||
| vIGA-AD 0/1 | 16.8% | 32.3%
p≦0.01 | 28.7%
p≦0.01 | 16.8% | 32.9%
p≦0.01 | 29.9%
p≦0.01 |
| EASI-75 | 32.3% | 46.8%
p≦0.025 | 48.1%
p≦0.01 | 34.2% | 48.1%
p≦0.025 | 50.9%
p≦0.001 |
リンク: プレス・リリース
Corcept社、relacorilantが全生存期間も達成
(2026年1月22日発表)
米国カリフォルニア州の新興製薬会社、Corcept Therapeutics(Nasdaq:CORT)は、CORT-125134(relacorilant)が第3相白金抵抗性卵巣癌試験で共同主評価項目の全生存期間を達成したと発表した。昨年7月にPFS(無進行生存期間)データに基づき米国で承認申請したが、26年7月11日の審査期限に向けて、追い風になりそうだ。
経口選択的グルココルチコイド受容体拮抗剤。プロゲステロン受容体作動に伴う副作用が起きにくい。24年に副腎皮質ホルモン過剰症における高血圧または高血糖を治療する試験が成功し年末にFDAに承認申請したが、危険便益バランスが不十分とする審査完了通知を受領した。
今回のROSELLA試験は米欧韓などの施設で白金抵抗性卵巣癌の患者381人をnab-paclitaxel単剤投与群とrelacorilant併用群(nab-paclitaxelの用量は8掛けに抑制)に無作為化割付けした。盲検独立中央評価によるメジアンPFSは各群5.5ヶ月と6.5ヶ月、ハザード・レシオ0.70。今回判明した全生存期間は中間解析と大差なく、メジアン値が各群11.9ヶ月と16.0ヶ月、ハザード・レシオは0.65、p=0.0004だった。PFSの群間差は1ヶ月程度と小さく、中央評価は盲検だが対象となるのは割付けを知っている医師が進行と判定した症例だけであることも考慮すると万全とは言い難いが、メジアン生存期間の群間差は承認されている抗癌剤と遜色ない。
同社は欧州でも承認申請中。
リンク: プレス・リリース
毛細血管拡張性運動失調症のロイシン補充療法試験が成功
(2026年1月21日発表)
米国テキサス州の未上場製薬会社、IntraBioは、Aqneursa(levacetylleucine) が第3相毛細血管拡張性運動失調症試験で主目的などを達成したと発表した。速やかに欧米などで適応拡大申請する考え。
アミノ酸の一つであるロイシンの懸濁液用顆粒。24年に米国でニーマン・ピック病C型に承認され、今回、EUでも承認されたことが公表された(但し、EUは新規活性成分とは認めていない)。この疾患では体重35kg以上の場合で一日三回、合計4gを水やオレンジジュース、牛乳などに混ぜて経口投与する。
毛細血管拡張性運動失調症は7万人に一人の進行性常染色体劣性遺伝疾患。DNA損傷時の修復応答に関わるATM(Ataxia telangiectasia mutated)というキナーゼの遺伝子変異により、名前に含まれる2症状や免疫不全などを発現する。今回の303試験は小児と成人の患者を組入れて12週間投与する効果を偽薬と比較した。主評価項目のSARA(Scale for the Assessment and Rating of Ataxia)は1.92点低下(改善)、偽薬群は0.14低下、p<0.001。副次的評価項目のICARS(International Cooperative Ataxia Rating Scale)も-4.22対-1.69、p=0.003、CGI-I(Investigator’s Clinical Global Impression of Improvement)も-0.6対-0.2、p=0.02と有意な差があった。試験薬関連深刻有害事象は見られなかった。
リンク: プレス・リリース(Business Wire)
ボッシュ、リファキシミン新製剤の肝性脳症一次予防試験がフェール
(2026年1月23日発表)
カナダのBausch Health Companies(NYSE:BHC)は、Xifaxan(rifaximin)のamorphous solid soluble dispersion新製剤の第3相試験二本がフェールしたと発表した。
抗生物質のrifampinの誘導体で、米国で2004年に12歳以上の旅行者の下痢に、2010年に顕性肝性脳症に、2015年には下痢型過敏性腸症候群に、承認された。日本では2016年にあすか製薬が肝性脳症に伴う高アンモニア血症の治療薬として承認を取得している。米国で肝性脳症の用法特許切れが近づいており、更なるライフ・サイクル・マネジメントを狙って、薬物動態に優れる新製剤を用いて成人の肝硬変患者における肝性脳症の一次予防試験を実施したのだが、結実しなかった。
リンク: プレス・リリース
【承認申請】
疾病装飾ポテンシャルを持つ変形性膝関節症用薬を承認申請
(2026年1月6日発表)
米国カリフォルニア州の未上場医薬品開発会社、Biosplice Therapeuticsは、米国でSM04690(lorecivivint)を変形性膝関節症用薬として承認申請したと発表した。第3相試験で関節幅拡大を抑制する作用が窺われたことから、疼痛管理だけでなく進行を抑制する可能性があると期待しているようだ。但し、第3相二本はフェールし元々は延長試験の位置付けだったものが主エビデンスなので、受理されるか一抹の不安を感じる。
DYRK1A(dual-specificity tyrosine phosphorylation-regulated kinase 1A)とCLK2(CDC-like kinase 2)を阻害する膝関節内投与用懸濁液。中重度症候性変形性膝関節症に0.07mgを一回投与する第3相OA-10試験とOA-11試験が実施されたが、主評価項目である12週間の疼痛NRSの変化は偽薬群と大差なかった。偽薬対照期間の有害事象発生率は両群同程度だった。
ところが、52週間のOA-11試験を終えた患者(被験者の半分程度に当たる約270人)を偽薬と0.07mg群に無作為化割付けして一回投与したOA-07試験で、24週WOMAC(Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index)疼痛尺度の群間差がp=0.044、48週時点では0.029とある程度の有意性が示された。48週WOMAC機能尺度もp=0.035だった。偽薬群から試験薬にクロスオーバーした患者では、48週後のmJSW(medial joint space width:X線画像上の関節幅)が、試験薬継続投与群の数値より有意に劣っていた。
二本の試験がフェール、もう一本はデザイン上の不透明さがありp値も一本で承認を取る時の一般的な要求水準(0.05x0.05=0.0025)をクリアしていないことなどを考えると、高リスク承認申請だろう。
尚、ClinicalTrials.govによると、これら3本の試験の結果を受領したがクオリティ・コントロール審査で照会すべき事項が浮上したためまだ掲載していない由。エビデンスの頑強性に不安を感じさせる。
リンク: プレス・リリース(GlobeNewswire)
【医薬品の安全性】
Valneva、チクングニア熱ワクチンの米国販売を断念
(2026年1月19日発表)
フランスのワクチン企業、Valneva SE(Euronext Paris:VLA)は、Ixchiqの米国における承認申請とIND(治験届)を撤回すると発表した。チクングニア熱の不活化生ワクチンで、23年に加速承認されたが、発売後もチクングニア熱様有害事象が散見され、昨年8月にFDAが承認停止した。チクングニア熱様深刻有害事象による入院が21件、死亡が3件報告されており、市販後薬効確認試験で臨床的な便益が未だ確認されていないため便益が危険を上回るとは断定できないことが理由。その後、FDAは、3種類のワクチンを同時接種した海外のヤング・アダルトに関する報告を受けて、INDもクリニカル・ホールドを命じた由。
Ixchiqは欧州やカナダ、ブラジルなどでも承認されており、EUは、24年の承認後に同様な理由で65歳以上の接種を一時的に禁止したものの、解除した。Valnevaはこれらの地域では販売を継続すると共に、市販後試験を継続する考え。
リンク: プレス・リリース
【当面の主なFDA審査期限】
| PDUFA | |
|---|---|
| 26/1推 | Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件) |
| 26/1/28 | Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視) |
| 26/1/31 | Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等) |
| 26/1/31 | Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大) |
| 26/2推 | サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件) |
| 26/2推 | JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件) |
| 26/2/8 | RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型) |
| 26/2/20 | MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌) |
| 26/2/21 | Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型) |
| 26/2/25 | 大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療) |
| 26/2/28 | Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎) |
| 25/2/28 | Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症) |
| 26/3推 | Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患) |
| 26/3推 | Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌) |
| 26/3推 | ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病) |
| 26/3推 | ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件) |
| 26/3推 | アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症) |
| 26/3/6 | BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大) |
| 26/3/16 | Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ) |
| 26/3/20 | Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症) |
| 26/3/24 | GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎) |
| 26/3/28 | Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型) |
| 26/3/29 | LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤) |
今週は以上です。
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