【ニュース・ヘッドライン】
- バイエル、JNJの優越性アピールに抗議の提訴
- 重症A型血友病の遺伝子療法が販売中止に
- パドセブとキートルーダの併用、白金適応のNIMCにも有効
- 経口GLP-1作用剤の直接比較試験もイーライリリーに軍配
- アルジェニクス、ヒフデュラの眼筋重症筋無力症試験が成功
- MSD、抗HIV新薬がナイーブ試験も成功
- BMS、中国でレブロジルをアルファ・サラセミアに承認申請へ
- ノボ、新規体重管理薬がライバル比較試験で見劣り
- Gossamer社、PAHの第3相がフェール
- ニーマン・ピック病C型用薬を承認申請
- 抗胎児性FcR抗体を温式自己免疫性溶血性貧血症に適応拡大申請
- ギリアド、BCMA型CAR-Tを承認申請
- CHMPがコロナ・インフルエンザ2価ワクチンなどの承認を支持
- 週一回皮下注用軟骨無形成症用薬が承認
- ソグルーヤが3希少疾患に適応拡大
- ヘルネクシオスが一次治療でも承認
- デュピクセントが真菌性副鼻腔炎に適応拡大
- ビラフトビが本承認
- アルギナーゼ1欠乏症の酵素補充療法が米国でも承認
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
バイエル、JNJの優越性アピールに抗議の提訴
(2026年2月13日発表)
バイエルは、ジョンソン エンド ジョンソンとJanssen Biotech(以下、JNJ)を米国連邦ニューヨーク南部地域裁判所に提訴した。JNJの抗癌剤の効果がバイエルの競合薬より大きく上回るという内容のプレス・リリースなどについて、安全性や効果に関する誤ったまたは誤解を招く商業的表示を禁じるLanham法違反と主張、裁判所に差止命令を求めた。
発端は、JNJが実施して2月上旬の第36回IPCU(International Prostate Cancer Update)学会で発表した、同社のアンドロゲン伝達阻害剤Erleada(apalutamide)とバイエルのアンドロゲン受容体拮抗剤Nubeqa(darolutamide)の後顧的疫学研究。22年8月から25年6月までの期間にErleada(1460例)またはNubeqa(287例)による治療をdocetaxelを併用せずに開始した転移性去勢感受前立腺癌患者の転帰を24ヶ月追跡したところ、全死亡のハザード・レシオが0.49(95%信頼区間0.330-0.83)、p=0.007だった。JNJ側はFDAのリアル・ワールド・スタディに関するガイドラインに即して実施したと傍記している。
一方、バイエル側は、優越性を主張する根拠としてFDAが求める、よくデザインされた直接比較試験ではなく、誤った後顧的分析に基づく不適切な研究と主張している。また、分析対象期間の殆どにおいてNubeqaはdocetaxel併用でしか承認されていなかったことや、そのため症例数に大きな偏りがあること、24ヶ月追跡と記しているが解析時点で24か月到達していた症例は半分以下と推定されることなどを指摘している。
A社がB社の製品より良いというデータを発表し、B社はA社の製品より良いことを示す別のデータを発表するというのは生き馬の目を抜く製薬業界では日常茶飯事だが、大手が司法に訴える事例は、少なくとも当方はあまり知らないので、どのような結果になるのか、それとも和解で有耶無耶なまま決着するのか、気になるところだ。
リンク: バイエルのプレス・リリース(26年2月13日付)
リンク: JNJのプレス・リリース(26年2月2日付)
重症A型血友病の遺伝子療法が販売中止に
(2026年2月23日発表)
バイオマリンファーマシューティカルはA型血友病用薬Roctavian(valoctocogene roxaparvovec-rvox)の販売を中止することを25年決算発表に合わせて公表した。22年にEUで条件付き承認され、23年には米国でも承認されたが、需要は小さく、売上高が23年は350万ドル、24年は2600万ドル、25年は3600万ドルと、推定で年数十人程度の施行実績に留まっている。同社は事業譲渡先も探したが見つからず、販売中止を決定した。
AAV5ベクターを用いて血液凝固第8因子を肝臓特異的に発現させる遺伝子療法。A型血友病の6割を占めるとも言われる重度血友病で、インヒビターや抗AAV5抗体を持たない患者が適応になる。価格は米国の場合で1億ドル前後と高価だが、血友病治療は元々高額なので、需要低迷はそれだけが原因ではないだろう。近年、多くの遺伝子療法薬が実用化されたが、曲がりなりにも既存薬が存在する疾患では需要が盛り上がらない事例も散見される。
リンク: 25年決算発表リリース
【新薬開発】
パドセブとキートルーダの併用、白金適応のNIMCにも有効
(2026年2月27日発表)
ファイザーとアステラス製薬は、共同開発販売している抗ネクチン4抗体薬物複合体、Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)をMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)と併用で筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の周術期療法に用いた第3相EV-304(KeyNote-B15)試験で主目的を達成したと発表した。ASCO GU(米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム)で学会発表する。
この日本も参加した試験は、治癒的膀胱全摘術などを予定する、かつ、白金薬術前療法が適応になるMIBC患者を組入れて、gemcitabineとcisplatinによる術前療法と、上記2剤による術前術後療法の便益を比較した。主評価項目のEFS(無イベント生存期間)のハザード・レシオは0.53(95%信頼区間0.41-0.70)となり、2年EFS率は各群79.4%と66.2%だった。副次的評価項目も全生存期間のハザード・レシオが0.65(同0.48、0.89)、病理学的完全反応率は各群55.8%と32.5%と良好。G3以上の有害事象発生率は75.7%対67.2%だった。適応拡大申請に向かうだろう。
他の抗PD-(L)1抗体ではブリストル マイヤーズ スクイブのOpdivo(nivolumab)が単剤で高リスクNIBCの術後療法として21年に欧米で承認されている。cisplatinによる術前療法併用も可とされたCheckMate-274試験でDFS(無病生存)のハザード・レシオが偽薬比0.70、p<0.001だった。アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)も25年にgemcitabine・cisplatinによる術前療法と併用でNIBCに用いることが米欧日で承認された。gemcitabine・cisplatinの術前療法に追加したNIAGARA試験でEFSのハザード・レシオが0.68、全生存期間も0.75だった。
Padcev・Keytruda併用が承認されたら患者はこの中から選択することになる。
尚、この二剤併用は白金薬が適応にならないNIBCでも切除術周術期試験が成功、昨年11月に米国で承認され、日本でも一変申請中。
リンク: プレス・リリース
経口GLP-1作用剤の直接比較試験もイーライリリーに軍配
(2026年2月26日発表)
イーライリリーは中外製薬からライセンスした経口GLP-1受容体作動薬、orforglipronを昨年12月にまず肥満症薬として米国で承認申請した。CNPV(FDA院長の国家優先バウチャ)を獲得したため、もしこの薬自体の申請に用いられたのならば、2~3月にも承認される可能性がある。二型糖尿病用途は今年、適応拡大申請する予定だが、この用途の競合薬であるノボ ノルディスクのRybelsus(semaglutide)との直接比較試験の結果がプレス・リリースやLancet誌で公表された。HbA1c低下が有意に優れる一方、有害事象は若干増加した。
この、日本も参加した第3相ACHIEVE-3試験は、metforminだけではHbA1cを十分に管理できない患者1698人をorforglipronの12mg群、同36mg、Rybelsusの7mg群、または同14mgに無作為化割付けして52週間治療し、HbA1cのベースライン比増減を比較した。treatment regimen estimandベースで各群1.71%、1.91%、1.23%、1.47%低下し、高用量同士の比較も、低用量同士の比較も、非劣性解析が成功し優越性解析も成功した(p<0.005)。
有害事象による治験離脱率は各群9%、10%、4%、5%。有害事象のうち、心拍数は各群平均で3.7、4.7、1.1、1.5bpm上昇した。
尚、ノボ ノルディスクはRybelsusより生物学的利用率が高く少量で済むsemaglutide新製剤、Wegovy錠(体重管理用)とOzempic錠(血糖管理用)が過去4ヶ月に米国で承認されている。
リンク: Rosenstockらの治験論文抄録(Lancet)
アルジェニクス、ヒフデュラの眼筋重症筋無力症試験が成功
(2026年2月26日発表)
オランダのアルジェニクスは、Vyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa and hyaluronidase-qvfc)が眼筋重症筋無力症試験で主目的などを達成したと発表した。適応拡大申請する考え。
この皮下注用抗FcRn抗体は重症筋無力症などの治療薬として米日欧などで承認されている。今回の第3相ADAPT OCULUS試験は、欧米アジアのクラス1(軽症)眼筋重症筋無力症患者141人を組入れて、週一回皮下注する便益を偽薬と比較した。主評価項目は第4週のMyasthenia Impairment Indexに基づく眼症状患者評価。試験薬群は4.04点改善、偽薬群は1.99点改善で群間差はp=0.012だった。二重視や眼瞼下垂も改善した。
リンク: プレス・リリース
MSD、抗HIV新薬がナイーブ試験も成功
(2026年2月25日発表)
MSDは、CROI(Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections )で、MK-8591A(doravirine、islatravir)の第3相未治療HIV試験の成績を発表した。既に昨年7月に日米でスイッチ用に承認申請済みだが、初めて治療を受けるナイーブ患者向けも申請する考え。
既承認の非ヌクレオシド逆転写阻害剤と、日本で発見されたヌクレオシド系逆転写酵素トランスロケーション阻害剤、islatravirの固定用量合剤。今回の053試験は成人の未治療HIV-1感染者を組入れてdoravirine 100mgとislatravir 0.25mgの合剤を一日一回経口投与する便益を、ギリアド・サイエンシズのBictarvy(bictegravir 50mg + emtricitabine 200mg + tenofovir alafenamide 25mg)と比較した。48週応答率(HIV-1 RNA数が50コピー/mL未満)が各群91.8%と90.6%となり、非劣性認定された。高ウイルス量サブグループ(50万コピー/mL超)では90.3%対84.4%となり、2剤合剤ながら3剤合剤を数値上は上回った。薬物関連有害事象発生率は各群14%と18%、有害事象治験離脱率は1.1%と2.2%だった。
現在申請している用途は、抗レトロウイルス療法によりウイルス量を抑制できている成人患者のスイッチ。臨床試験で治療フェール率が継続投与群と非劣性だったが、優越性解析はフェールしており、敢えてスイッチする必要はあるのか素朴な疑問を感じる。今回の用途のほうが重要なのではないか。
MK-8591Aはislatravir 0.75mgを配合した製剤の第3相試験が成功したが、islatravir 20mgを非核酸系逆転写阻害剤MK-8507(ulonivirine)と併用で週一回投与した第2相試験で総リンパ球数やCD4陽性T細胞数の減少という治療目的と真逆な現象が散見されたことから、用量を3分の1に減らして改めて第3相試験を実施した経緯がある。その後、islatravir 60mgを月一回投与する曝露後予防試験は中止されたが、ulonivirine併用はislatravirを2mgに減らして週一回投与する第2/3相ナイーブ試験が昨年12月の開始されている。
リンク: プレス・リリース
BMS、中国でレブロジルをアルファ・サラセミアに承認申請へ
(2026年2月23日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブはluspaterceptが承認申請用第2相アルファ・サラセミア試験で主目的を達成したと発表した。中国で承認申請する考え。
activinタイプIIB受容体ベースの融合蛋白で、赤血球の成熟が妨げられないよう仕向ける。19~20年に米欧でReblozyl名でMDS(骨髄異形成症候群)に伴う貧血症やベータ・サラセミアの治療薬として承認され、日本でも24年にMDSに承認された。今回の試験は、中国周辺や地中海周辺などの国で成人のアルファ鎖グロビンに異常を持つサラセミアを罹患し貧血治療が必要な患者を組入れて、標準的治療に追加する便益を検討した。輸血依存コフォートでは主評価項目の輸血抑制奏効率が、非依存コフォートでは同じくヘモグロビン上昇奏効率が、偽薬比有意且つ臨床的に意味のある改善を達成した。
他の地域における申請方針は記されていない。小児慢性特定疾病情報センターのHPによると、日本人における罹患率は3500人に一人とベータ・サラセミアの1000人に一人と大差ないが、治療の必要がない軽症が多いとのこと。
リンク: プレス・リリース
リンク: サラセミア概要(小児慢性特定疾病情報センター)
ノボ、新規体重管理薬がライバル比較試験で見劣り
(2026年2月23日発表)
ノボ ノルディスクは25年12月に米国でGLP-1作用剤semaglutideと新開発のアミリン類縁体cagrilintideの合剤であるCagriSemaを体重管理薬として承認申請した。糖尿病を合併していない患者を組入れた偽薬対照試験、REDEFINE 1では、ライバルであるイーライリリーのGLP-1/GIP作用剤、Zepbound(tirzepatide)の試験成績と遜色のない体重減少作用を示したが、今回、直接比較試験で非劣性検定がフェールしたことが発表された。
この第3相REDEFINE 4試験は米国の糖尿病ではない肥満症患者809人をCagriSema群(16週漸増を経て目標用量の2.4mg/2.4mgに)とtirzepatide群(20週漸増を経て目標用量の15mgに)に無作為化割付けして84週間治療した。体重のベースライン値は114.2kg。各群の体重減少率は、treatment-regimen estimandベースでは20.2%対23.6%、efficacy estimandベースでは23.0%対25.5%だった。
各剤の偽薬対照試験の成績は以下の通りで、違いがあるようには見えなかった。今回の試験はオーバーウェイトは対象外で追跡期間も10週以上長い。そもそも、2~3%なら大きく違うわけでもない。それでも、不思議な結果だ。ノボは年内に高用量の第3相試験を開始する予定。
図表:体重管理試験3本の結果
| 試験名 | 群 | 体重減少率(TRE) | 同(EE) |
|---|---|---|---|
| REDEFINE 4 | CagriSema | 20.2% | 23.0% |
| tirzepatide | 23.6% | 25.5% | |
| REDEFINE 1 | CagriSema | 20.4% | 22.7% |
| 偽薬 | 3.0% | 2.3% | |
| SOURMOUNT 1 | tirzepatide | 20.9% | 22.5% |
| 偽薬 | 3.1% | 2.4% |
出所:両社のプレス・リリースより作成
リンク: プレス・リリース
Gossamer社、PAHの第3相がフェール
(2026年2月23日発表)
米国カリフォルニア州のGossamer Bio(Nasdaq:GOSS)は、GB002(seralutinib)の第3相肺動脈高血圧症(PAH)試験がフェールしたことを明らかにした。間質性肺疾患型肺高血圧症試験の新規組入れ中断も発表した。
PDGFRやCSF1R、c-KITなどを阻害する、DPI吸入用製剤。今回のPROSERA試験はWHO機能クラスがIIまたはIIIで標準療法を受けている患者390人を組入れて、24週6分歩行テストの成績を偽薬と比較した。結果は28.2メートル対13.5メートル、治療効果13.3メートル、p=0.0320となり、閾値である0.025をクリアできなかった。中高リスク・サブグループや北米施設における成績はもっと良かったようだ。治療時発現有害事象の発生率は16.0%と偽薬群の18.9%と大差なかった由だが、症状兆候ごとの内訳は不明。肝機能検査値異常上昇(正常値上限の3倍以上に)が13%で見られた(偽薬群は1%)。
Chiesiと開発販売提携しており、米国は共同、海外はChiesiが販売する計画だが、どうなるか。
リンク: プレス・リリース
【承認申請】
ニーマン・ピック病C型用薬を承認申請
(2026年2月23日発表)
米国カリフォルニア州のBeren Therapeutics P.B.C.(パブリック・ベネフィット・コーポレーション)は、子会社のMandos LLCが米国でVTS-270(adrabetadex)を幼児発症型NPC(ニーマン・ピック病C型)用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年8月17日。
2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンのアイソマーの混合物。Mallinchrodtが17年にVtesseを買収して入手したが、オピオイド訴訟に破れ経営破綻、21年にMandosがVtesseからインライセンスした。未上場企業であるため情報が極めて限られているが、NPCにおけるエビデンスは外部対照試験で全生存のハザード・レシオが0.289(95%信頼区間0.141-0.593)と大変良い数値であったこと。主な有害事象は難聴、疲労、運動失調。
ClinicalTrials.govに掲載されている後期第2/3相試験(NCT02534844)のデータを見ると、欧米太平洋地域の施設で56人をシャム群と2対1割付けして、2週毎に52週間、髄腔内投与する便益を検討したが、共同主評価項目のうち、NPC-SS(Niemann Pick Type C Severity Scale)は両群とも大きくは変化せず、CGIC(Clinician Global Impression Change)は判然としない結果になっている。希少疾患の開発でしばしば見られる、無作為化割付け試験がフェールしたため比較的費用の掛からない外部対照試験を実施して代用するパターンだとしたら、承認されるかどうか、不透明だ。NPC薬は既に存在するので尚更だ。
リンク: 同社プレス・リリース
リンク: NCT02534844試験の概要(ClinicalTrials.gov)
抗胎児性FcR抗体を温式自己免疫性溶血性貧血症に適応拡大申請
(2026年2月24日発表)
ジョンソン エンド ジョンソンは米国でnipocalimabをwAIHA(温式自己免疫性溶血性貧血症)治療薬として承認申請し受理されたと発表した。PDUFA(処方薬ユーザー課金法)に基づく審査終了目標日は記されていない。
wAIHAは免疫グロブリンG(IgG)が赤血球を破壊してしまう、米国では8000人に一人の自己免疫性疾患。承認されている治療薬はない。本薬はIgGのリサイクリングに関わるFcRNをブロックする抗体医薬。25年に米日欧で全身型筋無力症治療薬Imaavyとして承認された。wAIHAでは第2/3相Energy試験でヘモグロビン値の改善が偽薬群を上回った。
リンク: プレス・リリース
ギリアド、BCMA型CAR-Tを承認申請
(2026年2月23日発表)
ギリアド・サイエンシズは、Arcellx(Nasdaq:ACLX)と完全子会社化で合意したことを発表すると共に、共同開発しているArcellxのCART-ddBCMA(anitocabtagene autoleucel)を米国で難治/再発多発骨髄腫の4次治療薬として承認申請し受理されたことを明らかにした。審査期限は26年12月23日。
BCMAを標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体T細胞)で、BCMA結合部位が抗体の短鎖可変領域ではなく、ArcellxがDドメインと呼ぶ8kDaの合成タンパクであることが特徴。結合が持続的でないため免疫毒性を抑制できることが期待されている。12月のASH(米国血液学会)における発表によると、承認申請用第2相試験のiMMAGINE-1で、ORR(全般的反応率、独立委員会評価)が96%だった。
リンク: プレス・リリース
【承認審査・委員会】
CHMPがコロナ・インフルエンザ2価ワクチンなどの承認を支持
(2026年2月27日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレス・リリース
モデルナのmCOMBRIAXは新開発の3価季節性インフルエンザmRNAワクチンと米日欧で25~26年に承認された軽量COVID-19 mRNAワクチン、mNEXSPIKEを一度に接種できるようにしたもの。GSKのFluarixまたはサノフィのFluzone高量版をモデルナのCOVID-19ワクチンSpikevaxと同時接種する手法と免疫原性を比較した試験で非劣性だった。50歳以上向け。インフルエンザ・ワクチンのほうが米国で承認申請が突き返されたばかりなので、少しは溜飲が下がったか。
リンク: EMAのプレス・リリース
Ipsen PharmaのOjemda(tovorafenib)は中枢神経浸透性RAF阻害剤。6ヶ月児以上のBRAF融合/再編成/V600変異などがあるpLGG(小児低グレード・グリオーマ)で1次以上の全身性治療歴を持つ患者に条件付き承認することが支持された。週一回、経口投与した第2相試験でORR(客観的反応率)が77人中52.6%、平均で18ヶ月、反応が持続した。
2011年に権利を取得した武田ミレニアムやそのライセンス元から19年にDay One Pharmaceuticals(Nasdaq:DAWN)がライセンスして開発、24年に米国で加速承認を取得した。イプセンは同年にDay Oneから米国外の権利を取得した。
リンク: EMAプレス・リリース
田辺ファーマのOnerji(levodopa、carbidopa)は抗パーキンソン薬で症状を十分に管理できなくなった進行性パーキンソン病用薬。専用機器を用いてlevodopaとcarbidopaを連続皮下点滴投与する。この2剤の液剤化に世界で初めて成功したイスラエルのNeuroDermを17年に買収して取得したもの。米国では23年に承認申請されたが、製造施設や非臨床の追加情報を求められ、24年6月と25年10月に審査完了通知を受領した。
リンク: EMAプレス・リリース
米国のCrinetics Pharmaceuticals(Nasdaq:CRNX)のPalsonify(paltusotine)は経口非ペプチド系ソマトスタチン受容体2型アゴニスト。成人の先端巨大の治療に一日一回経口投与する。日本は三和化学が22年にライセンスした。
リンク: EMAプレス・リリース
ノバルティスのRhapsido(remibrutinib)は選択的btk阻害剤。成人のH1抗ヒスタミンに十分応答しない慢性特発性蕁麻疹に経口投与する。2本の第3相で疾病活動尺度が有意に改善した。米国は優先審査バウチャを用いて昨年9月に承認取得、日本でも承認申請中。
リンク: EMAプレス・リリース
X4 Pharmaceuticals(Nasdaq:XFOR)のXolremdi(mavorixafor)はCXCR4受容体アンタゴニスト。この受容体の機能獲得変異により引き起こされる常染色体優性遺伝性超希少疾患、WHIM症候群を罹患する12歳以上の患者向けに例外的環境下承認することが支持された。因みにWはヒトパピローマウイルスによる疣贅、Hは低ガンマグロブリン血症、Iは再発性細菌感染症、Mは骨髄性細胞貯留症候群を表す。臨床試験では疣贅や腫瘍を抑制する効果は確認されなかったとのこと。オリジンはCXCR4受容体アンタゴニストのスペシャリストだったAnorMedのようだ。
リンク: EMAプレス・リリース
EUは、WHOに協力して、十分な承認審査体制を持たない国に代わって承認審査するEU-M4allという制度を持っている。今回、EU域外限定でCHMPの肯定的意見を得たのはSanofi Winthrop IndustrieのAcoziborole Winthrop(acoziborole)。12歳体重40kg以上の小児と成人のTrypanosoma brucei gambienseによるヒト・アフリカ・トリパノソーマの治療に、320mg錠を一回投与する。発熱などの症状が表れ始める第1ステージ、不眠や行動異常などの神経症状が発現する第2ステージ、そしてその中間期の患者が適応になる。臨床試験では第1ステージの患者41人における奏効率が100%、第2ステージ167人では95%だった。
罹患数はアフリカ大陸で年1000例足らずと減少したが致死率は依然として高い。既存薬は腰椎穿刺や入院など患者や医療施設の負担が大きく、一回一錠で済めばコンプライアンスも向上しそうだ。
リンク: EMAプレス・リリース
適応拡大では以下が支持された。
- Dr. Falk Pharma GmbHのJorveza (budesonide):2~11歳の好酸球性食道炎。初の小児向け経口懸濁液製剤。当方は初めて聞く会社/製剤。
- MSDのKeytruda(pembrolizumab):成人のPD-L1陽性(CPS≧1)白金抵抗性再発卵巣癌の2/3次治療。
- ノバルティスのScemblix(asciminib):成人の慢性期フィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病(CML-CP)で、T315変異を持ち、欧州ではインサイトが開発販売している競合薬、Iclusig(ponatinib)に抵抗/不耐/不適な患者。この適応の臨床試験は始まったばかりのように思われるが、どのようなエビデンスなのだろうか?
一方、否定的意見となったのは、まず、ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)のIGF-1類縁体、Daybu(trofinetide)。2歳以上のRett症候群用薬として開発され、米国では23年にDaybue名で承認されたが、CHMPは、治療効果が小さく、エビデンスとなるべき臨床試験に参加した患者の類型が網羅的でないことを指摘した。
リンク: EMAプレス・リリース
Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq: VNDA)のIloperidone Vanda Pharmaceuticalsは、9年前と同じような評価を受けた。統合失調症と双極障害I型における躁症状/混合症状の急性期治療薬として米国では17年前に承認されたが、CHMPは、QT延長リスクを許容できるほど効果が高いわけではないこと、効果のない少量から漸増していくため急性期治療には適さないこと、双極障害の対照試験が4週間しか実施されていないことなどを難点とした。
リンク: EMAプレス・リリース
申請撤回となったのは、ファイザーの抗PD-1抗体、Zumrad(sasanlimab)。成人のBCG未施行の高リスク筋層非浸潤膀胱癌にBCGと併用で承認申請されたが、CHMPは治験中に統計解析方法が変更されたことや、盲検試験ではないのに治験医が薬効を評価していること、便益の大きさ、全生存期間など副次的評価項目の結果が整合的でないことなどを指摘している。欧米中日などで実施された第3相CREST試験に基づく申請と推測されるが、25年のAUA(米国泌尿器学会)でEFS(無イベント生存期間)がBCGだけの群より有意に伸びた(ハザード・レシオ0.68、両側p=0.019)と発表されており、意外な展開になった。
リンク: EMAプレス・リリース
【承認】
週一回皮下注用軟骨無形成症用薬が承認
(2026年2月27日発表)
アセンディス・ファーマはYuviwel(navepegritide、旧称TransCon CNP)がFDAに加速承認されたと発表した。2歳以上の骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症の小児に週一回、皮下注する。ApproaCH試験で成長ベロシティ年率が5.89cm/年と偽薬群の4.41cm/年を有意に上回った。低血圧は見られなかった由だがレーベルでは警告注意事項に上がっている。4月頃に発売の予定。希少小児疾患優先審査バウチャを取得した。
C型ナトリウム利尿ペプチドのプロドラッグ。20kDaのmethoxy polyethylene glycolを結合し半減期を延長、バイオマリンのVoxzogo(vosoritide)の一日一回皮下注より少ない投与頻度を実現した。但し、Voxzogoは適応年齢に下限がなく、レーベルには体重3kgの場合の用量も記載されている。
リンク: プレス・リリース
ソグルーヤが3希少疾患に適応拡大
(2026年2月27日発表)
ノボ ノルディスクは、週一回皮下注用遺伝子組換え型成長ホルモン製剤、Sogroya(somapacitan)の適応拡大がFDAに承認された。ISS(特発性低身長症)、2歳までにキャッチアップしなかったSGA(低出生体重児)、またはヌーナン症候群に伴う成長不全の、2.5歳以上の小児に用いる。一日一回皮下注用製剤と比較した臨床試験で成長ベロシティが非劣性だった。日本でもSGAとヌーナン症候群に適応拡大申請中。
第3相REAL8バスケット試験に基づくもの。ターナー症候群のコフォートも成功した模様で、承認申請中とのこと。
リンク: プレス・リリース
ヘルネクシオスが一次治療でも承認
(2026年2月26日発表)
FDAはベーリンガーインゲルハイムのHernexeos(zongertinib)の適応拡大を加速承認した。初承認は25年8月、11月にCNPV(FDA委員長の国家的優先バウチャ)を取得、今年1月13日に適応拡大申請が完了、44日後に承認と、1年足らずで大きく進捗した。
her2チロシン・キナーゼ阻害剤だが、her2陽性の乳癌や胃癌ではなく、her2チロシン・キナーゼ・ドメインに活性化変異のある切除不能/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌に用いる。初承認も加速承認で、エビデンスは後期第1相Beamion LUNG-1試験の化学療法歴コフォート。ORR(客観的反応率)は71人中75%、その58%が6ヶ月以上持続した。今回のエビデンスは同試験の一次治療コフォート。ORRは72人中76%、その64%が6ヶ月以上持続した。
市販後薬効確認試験は一次治療が対象の第3相BEAMION LUNG-2試験。ClinicalTrials.govによると今年11月にも結果判明の見込み。
競合薬はバイエルの類薬、Hyrnuo(sevabertinib)。米国で昨年11月に同じ適応症で加速承認され、一次治療の市販後薬効確認試験が進行中。初承認は3ヶ月遅れただけだったが一次治療で差が広がった。
CNPV案件のうち、新薬に関わる承認は初めて。報道によるとローリング承認申請だったので、臨床成績以外の情報を2ヶ月以上前に提出という、審査期間大幅短縮の前提条件を満たしていたのだろう(ベーリンガーがCNPVをこの承認申請に用いたとは限らないが・・・何か確認する方法はあるのだろうか?それとも、徹頭徹尾、藪の中なのだろうか?)。
リンク: 承認に関するFDAプレス・リリース
リンク: CNPV案件承認に関するFDAプレス・リリース
デュピクセントが真菌性副鼻腔炎に適応拡大
(2026年2月24日発表)
FDAはRegeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)のDupixent(dupilumab)を6歳以上の小児成人におけるAFRS(アレルギー性真菌性副鼻腔炎)に適応拡大することを承認した。手術歴を持つ、あるいは手術不適な患者が適応になる。第3相LIBERTY-AFRS-AIMS試験で体重に応じて200mgまたは300mgを2週毎または4週毎に52週間投与したところ、CTスキャンによる副鼻腔透明度評価(Lund-Mackayスコア)が50%改善し、偽薬群の10%改善を有意に上回った。患者評価やポリープ・サイズも改善した。
IL-4Rアルファ・サブユニットに結合する抗体医薬。アトピー性皮膚炎など多くの免疫性疾患に承認されている。
リンク: プレス・リリース
ビラフトビが本承認
(2026年2月24日発表)
FDAはファイザーのBRAF阻害剤Braftovi(encorafenib)のBRAF-V600E変異型転移性結腸直腸癌における加速承認を本承認に切替えた。一次治療を受ける患者にmFOLFOX6レジメン及びcetuximabと併用する便益を検討したBREAKWATER試験のORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)と反応持続期間に基づき24年に加速承認したが、同試験のその後の解析でPFSや全生存期間も改善したため、切り替えた。
同時に、FOLFIRIレジメン及びcetuximabと併用した同試験のコフォート3におけるORRと反応持続期間もレーベル収載された。このデータは1月のASCO GI学会で発表されたばかり。Braftovi追加群はORRが64%と追加しなかった群の39%を大きく上回った。尚、ファイザーは2月にPFSも統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を果たしたと発表しているが、今回のレーベルには記されていない。
リンク: プレス・リリース
アルギナーゼ1欠乏症の酵素補充療法が米国でも承認
(2026年2月23日発表)
スウェーデンのImmedica Pharma ABは、FDAがLoargys(pegzilarginase-nbln)を2歳以上のアルギナーゼ1欠乏症における高アルギニン血症の治療薬として承認したと発表した。蛋白抑制食と併用する。
この疾患は米国の推定患者数が250人という超希少な常染色体劣性遺伝性疾患疾患。L-アルギニンを分解する、尿素サイクルの最終段階の酵素が欠乏し、アンモニアの分解・排出が進まない。治療はフェニル酪酸ナトリウムが利用されているようだが正式に承認された薬は初めて。臨床試験で被験者の9割で血漿アルギニン量が正常化した(偽薬群はゼロ)。
22年にAeglea BioTherapeuticsが米国で、ImmedicaがEUで承認申請し、23年12月にEUで条件付き承認されたが、米国は申請が受理されなかった。上記試験で運動機能などの副次的評価項目の有意な改善が見られなかったため。その後の経緯は見落としていたが、Immedicaが23年に欧州中東以外の権利も取得し米国で24年に再申請し、25年8月に審査完了通知を受領していた。その翌月、同社は修正申請し今回の承認に繋がった。OpenFDAサイトで審査完了通知を読んでみたところ、FDAは市販後に臨床的便益を確認することを前提に加速承認を申請する選択肢を提示しており、これが今回の承認に繋がったものと推測される。会社側プレスリリースには記されていないが、加速承認で、35年までに市販後薬効確認試験の結果をFDAに報告する必要がある。同社は希少小児疾患優先審査バウチャを取得した。
リンク: プレス・リリース
リンク: OpenFDAサイト
リンク: FDA承認通知
【当面の主なFDA審査期限】
| PDUFA | |
|---|---|
| 26/2推 | サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件) |
| 26/2推 | JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件) |
| 26/2/25 | 大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療) |
| 26/3推 | Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患) |
| 26/3推 | Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌) |
| 26/3推 | ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病) |
| 26/3推 | ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件) |
| 26/3/6 | BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大) |
| 26/3/16 | Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ) |
| 26/3/20 | Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症) |
| 26/3/24 | GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎) |
| 26/3/28 | Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型) |
| 26/3/29 | LantheusのLNTH-2501 (Ga-68 edotreotide Injection、神経内分泌腫瘍のPET造影剤) |
| 26/4推 | アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症) |
| 26/4/3 | バイオジェンのSpinraza(nusinersen、高用量追加) |
| 26/4/5 | Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群) |
| 26/4/6 | Orca BioのOrca-T(血液癌の制御性T細胞・幹細胞移植) |
| 26/4/8 | BMSのOpdivo(nivolumab、未治療の進行性古典的ホジキンリンパ腫) |
| 26/4/10 | ReplimuneのRP1(vusolimogene oderparepvec、進行黒色腫) |
| 26/4/13 | Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加) |
| 26/4/23 | サノフィのSarclisa(isatuximab-irfc、多発骨髄腫用薬の皮下注用新製剤) |
| 26/4/23 | Grace TherapeuticsのGTx-104(点滴静注用nimodipine、脳動脈瘤によるくも膜下出血) |
| 26/4/28 | MSDのMK-8591A(doravirineとislatravir、HIV-1感染症) |
| 26/4/29 | サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、1-7歳のステージ2一型糖尿病) |
| 26/4/30 | Axsome TherapeuticsのAuvelity(dextromethorphan Hbrとbupropion HCI、アルツハイマー性激昂) |
今週は以上です。
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