2026年1月10日

第1241回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • インクレチン系薬は乾癬性関節炎にも有効 
  • HBVアンチセンス薬で持続的陰性化を達成 
  • Ziiheraが先輩抗her2抗体に勝つ 
  • 次世代TYK2阻害剤の第3相乾癬試験が成功 
  • インサイト、ミンジュビの一次治療試験が成功 
  • CD19系二重特異性抗体の第3相IgG4関連疾患試験が成功したが... 
  • 真性多血症治療薬を承認申請 
  • モデルナ、インフルエンザのmRNAワクチンを承認申請 
  • アラアラを7歳以下にも承認申請 
  • Vanda、メラトニン作用剤を時差ボケに適応拡大できず 
  • 当面の主なFDA審査期限 


【新薬開発】


インクレチン系薬は乾癬性関節炎にも有効
(2026年1月8日発表)

イーライリリーはGIP/GLP-1作用剤Zepbound(tirzepatide)が後期第3相TOGETHER-PsA試験でポジティブな成績を上げたと発表した。肥満またはリスク因子を持つオーバーウェイト(mow)を併発する乾癬性関節炎(関節症性乾癬)の患者を組入れて、同社の抗IL-17A抗体Taltz(ixekizumab)と併用する便益をTaltz単剤群と36週間比較したところ、主評価項目であるACR50と体重の複合評価項目だけでなく、ACR50奏効率だけの副次的評価項目も33.5%対20.4%、p<0.05と、高度に有意ではないものの、好ましい点推定値が出た。Taltzの承認申請用試験では24週ACR50が抗TNFアルファ抗体歴のある患者で35%、ない患者で40%ともっと高かったので、今回の試験のほうが治療抵抗性の高い患者を組入れたことになる。

肥満やmowは多くの疾病と関連性が見られ、米国は有病率が高いこともあり乾癬性関節炎の65%が該当するとされる。肥満/mowならどっちにせよZepboundが適応になるが、他の持病にも有益であることを明確にしたのは価値がありそうだ。体重管理薬の保険適応は以前より進捗しているように感じられるが、便益が拡大すれば費用対効果も改善するので、追い風になりうる。

肥満/mowを伴う尋常性乾癬を組入れたTOGETHER-PsO試験も進行中で今上期中に成否判明する見込み。

同社は中重度閉塞性睡眠時無呼吸を併発する肥満症を組入れたSURMOUNT-OSA試験でAHI(無呼吸低呼吸指数)改善作用を確認、米国で適応拡大・効能追加に成功した。EUは既存の承認の範囲内として適応追加を認めなかったものの、治験成績のレーベル収載は認めた。

リンク: プレス・リリース


HBVアンチセンス薬で持続的陰性化を達成
(2026年1月7日発表)

GSKはGSK3228836(bepirovirsen)が日本も参加した第3相慢性B型肝炎試験2本で主目的を達成したと発表した。既存のB型肝炎薬は投与を止めるとやがて再燃するが、本試験では止めてから24週経ってもウイルスのDNAや表面抗原が検出されない、「ファンクショナル・キュア」達成率がが偽薬群を有意に上回った。尤も、本試験の対象はウイルス量が諸低水準より少ない患者だけで、後期第2相試験では第3相のデザインに対応するサブグループにおける奏効率は1~2割だったので、慢性C型肝炎の治療レジメンほどの成果は上がらなそうだ。データ発表を注目したい。

Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスした第2世代アンチセンス薬で、B型肝炎ウイルスの表面抗原などのmRNAに結合、発現を阻害する。第3相のB-Well 1試験と同2試験は、ヌクレオチド/ヌクレオシド(NA)薬による慢性B型肝炎の治療を受けている、スクリーニング段階でHBsAg量が3000IU/mL以下の患者を夫々900人程度組入れて、24週間の偽薬対照試験を行った後、試験薬群はNAだけを24週間投与、その後NAも中止して、更に24週経ってもHBsAgとHBV DNAが陰性の患者をファンクショナル・キュアと判定した。試験薬は300mg(負荷用量あり)を週一回皮下注した。

後期第2相のB-Clear試験では全被験者の奏効率(ファンクショナル・キュアと定義は同じと推測)がNA併用患者では9%、非併用者では10%だった。このうち、ベースライン時点のHBsAg量が3000IU/mL以下のサブグループではNA併用43人中5人、非併用24人中6人と若干上向いていた。

リンク: プレス・リリース
リンク: P2b治験論文(Yuenら、NEJM)


Ziiheraが先輩抗her2抗体に勝つ
(2026年1月6日発表)

Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)は抗her2二重特異性抗体Ziihera(zanidatamab-hrii)が第3相HERIZON-GEA-01試験でtrastuzumabを上回るPFS(無進行生存期間)を達成したと発表した。適応拡大申請に向かう考え。

抗her2抗体はロシュのHerceptin(trastuzumab)やPerjeta(pertuzumab)が代表的だが、ZiiheraはHerceptinが結合するエピトープとPerjetaが結合するエピトープの両方に結合・ブロックする。同社はZymeworks(NYSE:ZYME)から米欧日などの独占開発商業化権を取得しビーワン・メディシンズと共同開発、24~25年に米中欧でher2陽性の切除不能/転移胆道癌の二次治療薬として承認を取得した。

今回の日本も参加した試験は、her2陽性の切除不能局所進行/難治/転移性GEA(胃食道腺腫)の一次治療を受ける患者914人を組入れて、CAPOXレジメンあるいは5-FUとcisplatinの併用に、trastuzumab、Ziihera、またはZiiheraとビーワンの抗PD-1抗体Tevimbra(tislelizumab-jsgr)の二剤を追加する便益を検討した。共同主評価項目のうちメジアンPFSは各群8.1ヶ月、12.4ヶ月(trastuzumab群比ハザード・レシオ0.65)、12.4ヶ月(同0.63)となり、二試験薬群ともに標準療法を有意に上回った。

メジアン生存期間の中間解析は各群19.2ヶ月、24.4ヶ月(同0.80、但しp=0.0564)、26.4ヶ月(同0.72、p=0.0043)となった。

PFS面ではTevimbraを追加する必要はないように感じられ、メジアン生存期間の差も2ヶ月程度とすごく大きいわけではないので、26年央に予定される次の全生存期間中間解析が注目される。

G3以上の治療関連有害事象発生率は各群59.6%、59.0%、71.8%だった。

リンク: プレス・リリース


次世代TYK2阻害剤の第3相乾癬試験が成功
(2026年1月6日発表)

米国カリフォルニア州のAlumis(Nasdaq:ALMS)は高度選択的次世代TYK2アロステリック阻害剤とされるESK-001が第3相中重度尋常性乾癬試験二本で主目的を達成したと発表した。26年下期に承認申請する考え。

このONWARDS1とONWARDS2の両試験は約800人の患者を40mg一日二回経口投与群、偽薬群、apremilast(アムジェンのPDE-4阻害剤Otezla)一日二回経口投与群に2対1対1割付けして16週間投与し、試験薬群と偽薬群のPASI75とsPGAを比較した。結果発表は断片的で、二本の試験合計で試験薬群のPASI75達成率は74%、sPGA 0/1達成率は59%だったことだけ公表された。夫々の偽薬修正値は二本の試験で整合的だった由。副次的評価項目も達成した由なので、第24週におけるapremilast群との比較も達成したのだろう。

この試験は日本も参加した。昨年3月に科研製薬が日本で皮膚科領域に開発製造商業化する権利を取得している。

リンク: プレス・リリース


インサイト、ミンジュビの一次治療試験が成功
(2026年1月5日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)はMonjuvi(tafasitamab-cxix)が第3相frontMIND試験で主目的を達成したと発表した。今上期中に適応拡大申請する考え。

Fc装飾によりADCC(抗体依存的細胞毒性)を増強した抗CD19抗体。20~25年に米欧日で再発/難治DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)や難治再発濾胞性リンパ腫などに承認された。今回の試験はDLBCLの新患でリスク評価が高中間または高である患者を組入れて、R-CHOP(rituximab、cyclophosphamide、doxorubicin、vincristine、prednisoneの併用レジメン)にMonjuviとlenalidomide(BMSのRevlimid)の二剤を追加する便益を検討した。PFS(無進行生存期間、治験医がLugano 2014基準に基づき評価)のハザード・レシオが0.75、p=0.019と有意に上回った。

リンク: プレス・リリース


CD19系二重特異性抗体の第3相IgG4関連疾患試験が成功したが...
(2026年1月5日発表)

Zenas BioPharma(Nasdaq:ZBIO)はZB012(obexelimab)が第3相IgG4関連疾患試験で主目的を達成したと発表した。数値がアムジェンの抗CD19抗体Uplizna(inebilizumab-cdon)と見比べて低いため株価が半減した。

CD19とFcガンマRIIbに結合するバイファンクショナル・モノクローナル抗体。ブリストル マイヤーズ スクイブが日本周辺や豪州における自己免疫疾患領域での権利を保有している。

今回のINDIGO試験はグローバル試験には珍しく、被験者194人のうち日本が54人と、欧州地域や米国地域を上回る患者を組入れている。試験薬は250mgを週一回皮下注。52週間追跡し、IgG4関連疾患のフレアが発生するリスクを比較したところ、発生率は26.8%と偽薬群の54.6%を大きく下回り、time to event解析のハザード・レシオは0.44、p=0.0005となった。深刻有害事象の発生率は、治療効果を反映したのか、偽薬群より少なかった。

IgG4関連疾患の適応を持つUpliznaはMITIGATE試験で52週間のフレア発生率が10.3%と偽薬群の59.7%を下回り、ハザード・レシオは0.13だった。この二つの試験は主評価イベントの定義や被験者の患者背景などが異なっているかもしれないので比較できるとは限らない。例えば、MITOGATE試験は被験者153人のうち日本人が27人と、日本で特定された疾患だけに比較的多いがINDIGO試験ほどではない。また、Upliznaは点滴静注用だがZB012は自己皮下注が想定されているので利便性は軍配が上がる。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


真性多血症治療薬を承認申請
(2026年1月5日発表)

武田薬品とProtagonist Therapeutics(Nasdaq:PTGX)は、TAK-121/PTG-300(rusfertide)を真性多血症用薬として米国で承認申請したと発表した。hepcidin類縁体で、鉄が細胞外にエキスポートされるのを妨げ、真性多血症に伴う赤血球の過剰生成を抑制する。伝統的な治療法である瀉血に依存している患者250人を組入れた試験で、rusfertideを週一回皮下注したところ、第20-32週に瀉血が適応にならなかった患者の比率が77%と偽薬群の33%を有意に上回った。EMA向け主評価項目である第0-32週の平均瀉血回数も0.5回対18回と大きく抑制された。

トランスジェニック・マウスの試験で良性/悪性の皮下腫瘍が見られFDAが臨床試験の完全停止を命じたことがあり、上記試験でも腫瘍の発現率が4.8%と偽薬群の0.7%を上回ったが、下記プレスリリースによるとリスクを示すエビデンスはなかった。

Protagonistは24年に武田薬品に共同開発商業化権を供与したが、オプト・アウト・オプションを持っており、承認申請の4~7ヶ月後の期間に、当初金最大4億ドルとマイルストーン金、そして14~29%の売上ロイヤルティの支払いと引き換えで提携を解消することができる。一部報道によると行使を考えているようだ。

リンク: プレス・リリース


モデルナ、インフルエンザのmRNAワクチンを承認申請
(2026年1月5日発表)

モデルナは50歳以上用の季節性インフルエンザ・ワクチン、mRNA-1010を欧米加豪で承認申請したと発表した。欧米韓台で実施した第3相実薬対照試験で相対的ワクチン効率(rVE)が26.6%(95%信頼区間16.7-35.4%)と既存のワクチンを凌ぐ感染予防効果を示した。A/H1N1型、A/H3N2型、B/Victoria型、65歳以上の各サブグループでも20~30%と上回った。

ヘマグルチニンをエンコードするmRNAワクチン。50mcgを一回、筋注する。季節性インフルエンザワクチンの既存製品の一部は、免疫力が低下している65歳以上に適した高量版も用意されているが、上記試験は標準用量版と比較しているため、高齢者にとってどちらが最適なのかは分からない。

リンク: プレス・リリース


アラアラを7歳以下にも承認申請
(2026年1月5日発表)

サノフィは米国でTzield(teplizumab-mzwv)を1~7歳のステージ2一型糖尿病薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は4月29日。

CD3エプシロン鎖に結合する抗体医薬で、開発段階ではAla-Alaの愛称で呼ばれた。Provention Bioが開発し、22年に米国で8歳以上のステージ2一型糖尿病薬として承認を取得、その翌年にサノフィに買収された。一型糖尿病のステージ2は血糖値が閾値に達しておらず目立った症状もないが、症候性のステージ3に進行するリスクがある。Tzieldはステージ3までの期間を延長する。昨年10月に、8歳以上の最近診断されたステージ3一型糖尿病にも適応拡大申請しており、FDAから委員長国家的優先バウチャ(CNPV)を獲得した。

リンク: プレス・リリース

【承認審査・委員会】


Vanda、メラトニン作用剤を時差ボケに適応拡大できず
(2026年1月8日発表)

Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq: VNDA)は2018年にHetlioz(tasimelteon)をジェット・ラグ障害(時差ぼけ)の治療薬として米国で適応拡大申請したが、中々承認されない。23年にはVandaの請求を受けた連邦コロンビア特別区地方裁判所がFDAに承認しない理由をもっと説明するよう求め、昨年10月にFDAが再々審査を開始したが、今回も承認されなかった。

HetliozはメラトニンのMT1/2受容体の作動剤。14~15年に米欧で非24時間障害(光を感受しない全盲者の睡眠障害)治療薬として承認された。20年に米国でスミス・マギニス症候群(17p11.2における遺伝子欠失に伴い睡眠障害を発現)に適応拡大したが、EUはCHMPが薬効確認試験の内容に疑問を呈し、否定的意見を出した。

ジェット・ラグ障害は普段より5時間早く寝るフェーズ・アドバンス・モデルによる第3相試験で睡眠潜時が偽薬比20分程度改善。7時間早く寝る同様な試験でも総睡眠時間が偽薬比60分程度増加、睡眠潜時が同15分減少、WASO(就寝後に覚醒していた時間)が70分程度減少した。

しかし、FDAは、飛行機で旅行する時の気圧の変化や身体的制約、騒音、明るさの変化など、ジェット・ラグ障害に関わる他の因子を考慮していないと評価。詳細は不明だが、19年の審査完了通知における指摘事項とそれほど変わっていないのではないかと感じられる。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限】


PDUFA
26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
26/1/14Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病)
26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
26/3推Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(リンパ増殖性疾患)
26/3推Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、白金抵抗卵巣癌)
26/3推ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec、二型糖尿病)
26/3推ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide 最大用量7.2mg、CNPV案件)
26/3推アストラゼネカのbaxdrostat(難治高血圧症)
26/3/6BMSのSotyktu(deucravacitinib、乾癬性関節炎適応拡大)
26/3/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
26/3/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
26/3/24GSKのGSK2330672(linerixibat、原発性胆汁性胆管炎)
26/3/28Rocket PharmaceuticalsのKresladi(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)




今週は以上です。

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