【ニュース・ヘッドライン】
- HPVワクチンは一回接種で足りる
- FDA、重金属含有アーユルヴェーダ製品に警告
- 発達性癲癇性脳症の承認申請用試験が成功
- アンドロゲン受容体拮抗剤のAGA試験が成功
- 経口ブラジキニン受容体拮抗剤の第3相HAE治療試験が成功
- Capricor、deramiocelの第3相が成功
- スタルガルト病薬の第3相が成功
- アストラゼネカ、難治高血圧症用薬を承認申請
- ブレヤンジがMZLに適応拡大
- ジャイパーカが米国でもCLL/SLLに承認
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
HPVワクチンは一回接種で足りる
(2025年12月3日論文刊行)
NIH(米国国立衛生研究所)などが実施したヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)ワクチンの第3相試験論文がNew England Journal of Medicine誌で刊行された。16型と18型のウイルスの持続感染を予防する効果は1回接種でも2回接種でも同じであることが確認された。
このESCUDDO試験はコスタリカで12~16歳の女性約2万人を2価HPVワクチン(GSKのCervarix)1回接種群、同2回接種群、9価HPVワクチン(MSDのGardasil 9/和名シルガード9)1回接種群、同2回接種群の4群に無作為化割付けしてHPV16またはHPV18の持続的感染リスクを5年間追跡したもの。結果は、Cervarixは1回接種群と2回接種群の100人当り感染率群間差が-0.13(95%信頼区間-0.45, 0.15)で非劣性p<0.001、Gardasil 9は0.21(同-0.09, 0.51)でp<0.001と、両製品とも非劣性仮説が支持された。
CervarixはEUでは9-14歳は2回接種、15歳以上は3回接種、日米は年齢不問で3回接種とされ、Gardasilは日米欧ともに9~14歳は2回又は3回、15~45歳は3回となっているが、少なくとも12~16歳の女性は、一回接種で済ませて接種を受ける手間やおそらくは接種費用も軽減できることになる。
リンク: Kreimerらの治験論文抄録(NEJM)
FDA、重金属含有アーユルヴェーダ製品に警告
(2025年12月2日発表)
FDAは、アーユルヴェーダ製品の一つから高水準の重金属が検出されたことを公表した。高血圧、腎臓障害、胃腸症状、神経症状が現れるリスクがある。
アーユルヴェーダはインド発祥の代替療法。米国では病気の予防、治療、診断、治癒用に販売することは違法である。消費者の有害事象報告に基づきFDAがNavaFresh.comで購入したRheumacare Ayurvedic Proprietary Medicineを検査したところ、重金属中毒を起こしかねないほど高水準の鉛や水銀、ストリキニーネ、ヒ素などが検出された。
このような場合、FDAは消費者保護のためメーカーにリコールを推奨するとともに、製造業者に警告状を送付し輸入アラートの対象とすることで米国市場に持ち込まれないようにするのだという。有害なら販売を禁止できないのだろうか?
リンク: FDAのプレスリリース
【新薬開発】
発達性癲癇性脳症の承認申請用試験が成功
(2025年12月4日発表)
米国ボストンのPraxis Precision Medicines(Nasdaq:PRAX)は、PRAX-562(relutrigine、経口液)がEMBOLD試験の中間解析でポジティブな成果を上げたと発表した。FDAと相談した上で承認申請の時期を決定する考え。
この試験は、2歳以上のSCN2AまたはSCN8A変異を持つ発達性及び癲癇性脳症(DEE)の小児における安全性や癲癇発作抑制作用を検討している。承認申請用コフォートでは70人を偽薬群または試験薬群(1mg/kg/日)に無作為化割付けして28日間経口/経胃瘻投与して、癲癇発作のリスクを比較した。中間解析の薬効データに基づきデータ監視委員会が中止を勧告した。
同社は特殊な癲癇の治療薬を開発している。電位依存性Naチャネルの遺伝子であるSCNに2A変異または8A変異を持つDEE患者数は米国で5000人程度と推定されている。別途、遺伝子型不問でDEE患者も組入れたEMERALD試験も進行中。更に、核酸薬なども開発中。
リンク: 同社のプレスリリース
アンドロゲン受容体拮抗剤のAGA試験が成功
(2025年12月3日発表)
ダブリン籍スイス上場の製薬会社、Cosmo Pharmaceuticals N.V.(SIX: COPN)は、clascoterone 5%局所用溶液が第3相AGA(アンドロゲン性脱毛症)試験二本で主評価項目を達成したと発表した。1年安全性試験を完了して26年に欧米で承認申請する考え。
活性成分は局所性アンドロゲン受容体阻害剤で、同社からスピンアウトしたCassiopeaが1%局所用クリーム製剤を尋常性挫創用薬として開発、20年に米国でWinlevi名で承認取得している。今回のScalp 1と2試験は、二本合計で1465人を組入れて1日二回、6ヶ月塗布し、TAHC(標的エリア毛髪数)の変化を偽薬と比較した。一本は偽薬比539%、もう一本は168%増加した。共同主評価項目の患者評価も2本合計で有意に上回った。有害事象は偽薬並みだった。
既存のAGA薬と薬効評価方法が異なるが、比較可能なデータはあるのだろうか?
リンク: 同社のプレスリリース
経口ブラジキニン受容体拮抗剤の第3相HAE治療試験が成功
(2025年12月3日発表)
スイスのPharvaris(Nasdaq:PHVS)は、PHA-022121(deucrictibant)が第3相HAE(遺伝性血管浮腫)発作治療試験で主目的を達成したと発表した。26年上期に承認申請する考え。
bradykinin B2受容体の拮抗剤。即放性経口カプセルを発作治療に、持効性経口錠を発作予防に、第3相試験中。今回の日本も参加したRAPIDe-3試験は12歳以上のHAE患者134人を偽薬群と20mg群に無作為化割付けして、発作時に服用する便益を検討した。被験者の23%はHAE発作予防薬である武田薬品の抗カリクレイン抗体Takhzyro(lanadelumab-flyo)などを同時使用していた。主評価項目のTOSR(投与から症状緩和までの時間)は試験薬群がメジアン1.28時間、偽薬群は12時間追跡期間中にはメジアン未達だった。試験薬関連治療時発現有害事象は偽薬群の1%、試験薬群は5%で、報告された。
作用機序は武田/シャイアのFirazyr(icatibant)と同じだが、他の条件が同じなら皮下注用ではなく経口投与できることが長所になる。
リンク: 同社のプレスリリース
Capricor、deramiocelの第3相が成功
(2025年12月3日発表)
Capricor Therapeutics(Nasdaq:CAPR)は CAP-1002(deramiocel)が第3相HOPE-3試験で主目的を達成したと発表した。デュシェンヌ型筋ジストロフィーによる上腕機能の低下を抑制し、左心機能の悪化も大きく抑制した。第2相試験に基づく承認申請はFDAから審査完了通知を受領したが、完全回答する考え。
他家心細胞塊由来の細胞療法。体内でエクソソームを分泌し、酸化ストレスや炎症、線維化を抑制、筋細胞の生成を刺激することで運動機能や新機能を改善するとされる。日本と欧州市場は日本新薬がライセンスしている。
第3相は米国で106人を組入れて、1.5億セルを3ヶ月毎に4回投与する効果を偽薬と比較した。主評価項目はPUL(Performance of the Upper Limb ver. 2.0)総スコア。進行が偽薬比54%小さかった。p値は0.029であまり低くない。副次的評価項目のLVEF(左室駆出率)の低下も91%小さかった。p=0.041とこれも十分に低くはない。
第2相試験でも薬効主評価項目である12ヶ月間のPULの悪化が偽薬より有意に小さく、LVEFの悪化も抑制したが、FDAはフェールと判定した。同社は非パラメトリック検定では有意と反論しているが、検定方法次第とは当方には初耳だった。今回の結果もp値があまり低くないので非パラメトリック検定なのだろうか?
リンク: 同社のプレスリリース
スタルガルト病薬の第3相が成功
(2025年12月1日発表)
米国の医薬品開発企業Belite Bio(Nasdaq:BLTE)は、LBS-008(tinlarebant)の第3相スタルガルト病試験で主目的を達成したと発表した。来年上期に米国で承認申請する考え。既に中国や英国では中間解析に基づく承認申請に同意を得ている。
スタルガルト病の患者の多くはABCA4遺伝子の変異を持ち、ビタミンAの代謝物が網膜に蓄積することにより萎縮性病変が発生、中心視力等が低下する。tinlarebantはビタミンAの輸送に関わるRBP4(レチノール結合蛋白4)のアンタゴニスト。今回のDRAGON試験は、12~20歳の、STGD1(スタルガルト病1型)で、ABCA4遺伝子に一つ以上の変異を持ち、萎縮性病変が認められ、法的失明には至っていない患者104人を、5mg錠を一日一回経口投与する群と偽薬群に2対1割付けして2年間投与した。試験薬群は主評価項目である萎縮病変の拡大が偽薬群を35.7%下回った。プレスリリースに添付されたグラフを見ると、各群0.6mm2と1mm2程度の増加になっている。
本試験は視力の変化も観察したが、事前の予想通り、両群ともそれほど悪化しなかったとのこと。承認されている薬がない難病であることが追い風になる一方で、臨床的便益は未確認ということにならないか危惧される。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
アストラゼネカ、難治高血圧症用薬を承認申請
(2025年12月2日発表)
アストラゼネカはbaxdrostatを成人の管理不良/治療抵抗性高血圧症の治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査バウチャを用いたため、26年第2四半期に審査結果が判明する見込み。
19年にロシュからライセンスしたCinCor Pharmaを23年に買収して入手した、経口アルドステロン合成酵素阻害剤。日本も参加した第3相BaxHTN試験で成人の管理不良(2種類の降圧剤を併用しても血圧管理目標未達)または治療抵抗性(3種類以上併用でも未達)の高血圧症患者796人を組入れて追加投与したところ、1mg1日1回投与群は座位収縮期血圧が偽薬比8.7mmHg低下、2mg1日1回投与群も同9.8mmHg低下した。有害事象はカリウム値上昇やナトリウム値低下など。
2mgだけをテストした第3相Bax24試験も成功したが、下記プレスリリースは言及していない。BaxHTN試験では1mgも2mgも効果は大差ないように見えるので1mgだけ承認申請したのかもしれない。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
ブレヤンジがMZLに適応拡大
(2025年12月4日発表)
FDAはブリストル マイヤーズ スクイブの子会社であるJuno TherapeuticsのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)を辺縁帯リンパ腫(MZL)に適応拡大することを承認した。成人の再発/難治MZLで2次以上の全身性治療歴を持つ患者が適応になる。エビデンスとなるTRANSCEND FL試験のMZLコフォートで、intent-to-treatベース(アフェレーシスが施行された全77人)におけるORR(客観的反応率)が84.4%だった。Breyanziを投与できた66人におけるORRは95.5%、反応持続期間はメジアン値未達、95%下限は25ヶ月。。
リンク: FDAのプレスリリース
ジャイパーカが米国でもCLL/SLLに承認
(2025年12月3日発表)
FDAはイーライリリーのJaypirca(pirtobrutinib)を共有結合性BTK阻害剤歴を持つ成人の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)に適応拡大した。第3相BRUIN CLL-321試験でPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)がメジアン11.2ヶ月と、idelalisibまたはbendamustineをrituximabと併用した対照群の8.7ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.58、p=0.01だった。全生存期間はハザード・レシオ1.09(95%信頼区間0.68-1.75)と冴えないが、対照群の4割強が進行後に試験薬にスイッチしたので、効果が希薄化されたのかもしれない。
Jaypircaは米国で23~24年に難治/再発マントル細胞腫の3次治療薬として加速承認、23年にはCLL/SLLの3次治療でも加速承認されたが、今回の適応はEUが今年3月、日本も9月なので、後れを取った。
リンク: FDAのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
| PDUFA | |
|---|---|
| 25/12推 | ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大) |
| 25/12/7 | Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア) |
| 25/12/11 | GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病) |
| 25/12/12 | LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症) |
| 25/12/13 | Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・ |
| 25/12/14 | アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加) |
| 25/12/15 | Innovivaのzoliflodacin(淋病) |
| 25/12/16 | GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎) |
| 26/12/16 | Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ) |
| 25/12/22 | ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療) |
| 25/12/26 | OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症) |
| 25/12/26 | CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症) |
| 25/12/28 | サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症) |
| 25/12/30 | Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群) |
| 25/12/30 | Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い) |
| 25/12/31 | Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性) |
| 26/1/5 | Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群) |
| 26/1/10 | Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患) |
| 26/1/13 | Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加) |
| 26/1/17 | JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌) |
| 26/1/23 | 第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、her2乳癌一次治療を追加) |
| 26/1/28 | Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視) |
| 26/1/31 | Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等) |
| 26/1/31 | Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大) |
今週は以上です。
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