【ニュース・ヘッドライン】
- 光速審査バウチャを光速供与
- 武田薬品、TYK阻害剤の乾癬試験が成功
- 経口GLP-1作用剤の維持療法試験が成功
- MIBCではパドセブ・キートルーダ併用が白金CTを上回る
- ピーナツ・アレルギーの減感作療法試験が成功
- Immunomeもガンマ・セクレターゼ阻害剤のデスモイド腫瘍試験が成功
- CAR-Tのスティッフパーソン症候群試験が成功
- ヒフデュラは甲状腺眼症には効かない
- ノボ、GLP-1・アミリン合剤を承認申請
- メンケス病用薬を再申請
- Aldeyra社、承認がまたまた遅延
- サノフィの多発性硬化症用btk阻害剤、FDAの審査が遅延
- ライブリバントの皮下注版が米国でも承認
- GSKの長期作用性抗IL-5抗体、喘息だけ承認
- rucaparibがある種の前立腺癌に本承認
- 小型PCSK9阻害薬が承認
- エンハーツがher2+MBCの一次治療に承認
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
光速審査バウチャを光速供与
(2025年12月15日発表)
FDAは、承認申請者ではなくFDAが主導して、ジョンソン エンド ジョンソンにCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)を供与したと発表した。CNPVは売却できないので承認審査のスピードアップ(1~2ヶ月で完了)だけが取り柄である。承認審査期間の延長や超過が散見される中、CNPV案件だけが看板通りにスピードアップするものかどうか、注目される。
この、累計16番目の案件は、抗BCMA・CD3二重特異性抗体Tecvayli(teclistamab-cqyv)と抗CD38抗体Darzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)を1~3治療歴のある再発/難治多発骨髄腫に用いるもの。12月のASH(米国血液学会)での発表によると、第3相MajesTEC-3試験で、pomalidomideまたはbortezomibをdexamethasone及びDarzalex Fasproと併用した群と比べて、PFSのハザードレシオが0.17、全生存期間も中間解析で0.46と、大変良い成果を上げた。JNJは適応拡大申請済み。
CNPV供与の経緯は、FDAの『リーダー』が11月にASH抄録を読み組織内で検討の上、翌日にJNJに連絡してCNPVについて協議したとのこと。FDAのプレスリリースによると、"When a treatment demonstrates outstanding trial results, we have a duty to patients to move swiftly.”とのこと。分かっているなら、本件だけでなく数多くの重要案件について、審査期限をきちんと守ってほしいものだ。、
リンク: FDAのプレスリリース
【新薬開発】
武田薬品、TYK阻害剤の乾癬試験が成功
(2025年12月18日発表)
武田薬品はTAK-279(zasocitinib)が第3相中重度尋常性乾癬試験二本で主目的などを達成したと発表した。データは未公表。26年度から承認申請を開始する考え。
22~23年に米日欧で尋常性感染用薬として承認されたブリストル マイヤーズ スクイブのSotyktu(deucravacitinib)と同様に、IL-23やIL-12、タイプIインターフェロンによる細胞内シグナル伝達を調停する酵素、TYK2(tyrosine kinase 2)をアロステリックに阻害する。今回の日本も参加した3001試験と3002試験は、共同主評価項目のsPGA(医師の静的評価)とPASI75(乾癬範囲と重症度を評価)を偽薬群やアムジェンのPDE-4阻害剤Otezla(apremilast)と比較した。
Sotyktuと直接比較する3004試験も進行中で発売前に結果が判明する可能性がありそうだ。
リンク: 同社のプレスリリース(和文)
経口GLP-1作用剤の維持療法試験が成功
(2025年12月18日発表)
GLP-1作用剤は大人気で配合剤や経口剤の開発も活発だ。イーライリリーは、中外製薬からライセンスした経口GLP-1受容体作動剤、LY3502970(orforglipron)の第3相維持療法試験、ATTAIN-MAINTAIN試験(以下、メンテ試験)のヘッドラインを公表した。良く分からないところもあるが、注射用GLP-1作用剤からスイッチしても体重が急速にリバウンドする可能性は低そうだ。
この試験は、肥満症または有リスク・オーバーウェイトで二型糖尿病ではない患者における同社のGIP/GIP受容体作動剤Zepbound(tirzepatide)の体重管理作用をノボ ノルディスクのGLP-1受容体作動剤Wegovy(semaglutide)と比較したSURMOUNT-5(以下、S-5試験)試験に参加した患者を組入れて、偽薬またはorforglipronで52週間治療し、体重維持効果を比較したもの。
S-5試験でWegovy群に割付けられていた患者の平均体重は、同試験開始時には平均113.5kgだったが、メンテ試験の開始時の95.0kgが52週後には95.9kgとなり、大きなリバウンドは見られなかった。Zepbound群だった患者はS-5試験開始時は115.8kg、メンテ試験開始時は90.9kg、52週後は95.9kgだった。表面上の数値は、GLP-1受容体しか作動しないWegovyからスイッチする方が有益に見えるが、結論を出すのは早いだろう。
上記は投与を止めたり他剤を追加/スイッチしたら追跡を止めるEfficacy estimand法によるもの。止めたらリバウンドするだろうがデータには反映されない。効果も忍容性も良好に推移している期間/患者のデータなので、現実の医療で得られる成果とは必ずしも整合しないので、Wegovy患者はスイッチしたほうが良い、Zepbound患者はスイッチしなくてもよい、と考える前にもっと多くのデータを確認する必要がある。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
MIBCではパドセブ・キートルーダ併用が白金CTを上回る
(2025年12月17日発表)
アステラス製薬、ファイザー、そしてMSDは、夫々、第3相EV-304/KeyNote-B15試験で主目的を達成したと発表した。筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の術前術後療法として、前2社が共同開発販売している抗ネクチン-4抗体薬物複合体のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv)とMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を併用する便益をcisplatin及びgemcitabineの併用術前療法と比較したところ、主評価項目のEFS(無イベント生存期間)や副次的評価項目の全生存期間とpCR(病理学的完全反応率)が統計的に有意かつ臨床的に意味のある改善を見た。データは今後、発表する予定。この併用法は、白金薬治療が不適または拒否の患者を組入れたEV-303/KeyNote-905試験が既に成功、11月に米国で適応拡大が承認されている。
ところで、『僕は常々思うのですが』、治験が成功したことだけ公表することにどんな意味があるのでしょうか?新興企業の主力薬なら株価が大きく動くこともあるので証券取引法上の開示義務が発生するかもしれないけど、この3社のような大企業にとってはこの程度の発表で顕著な影響は期待し難い。データが分からないので医師も患者も今すぐ使うことはできないでしょう。学会/論文発表する時にデータ未公表のほうが大きく扱ってもらえるくらいのメリットしかないんじゃないだろうか?来年以降は、今回のような発表は原則として取り上げないことにします。
リンク: MSDのプレスリリース
リンク: アステラス製薬のプレスリリース(和文、12/18付)
ピーナツ・アレルギーの減感作療法試験が成功
(2025年12月16日発表)
フランスのDBV Technologies(Euronext:DBV)はViaskin Peanutの第3相ピーナツ・アレルギー治療試験で主目的を達成したと発表した。26年上期に米国で承認申請する考え。
ピーナツ蛋白を経皮投与する減感作療法。2018年に米国で承認申請したが、申請撤回、再申請を経て20年に審査完了通知を受領。その後EUでも申請したが22年に撤回と不調に終わった。CMC(化学、製造、管理)に関わる不足や薬効に関する疑問、そして減感作療法に付き物のアナフィラキシー・リスクがボトルネックになったようだ。
22年に1~3歳の患者362人を組入れた第3相EPITOPE試験が成功、ピーナツ蛋白投与量を段階的に増やしてアレルギーを発症する誘導用量(ED)が所定の水準を超えた患者の比率を調べたところ、67%と偽薬群を33.5%を有意に上回った(群間差の95%下限は22.4%、成功認定の閾値は15%)。今回の第3相VITESSE試験も、同様に、46.6%と偽薬群の14.8%を上回った(95%下限24.5%、閾値15%)。治療時発現有害事象による治験離脱は3.2%の患者で発生、偽薬群は0.5%だった。2人(0.5%)が治療関連アナフィラキシーを発現した。
リンク: 同社のプレスリリース
Immunomeもガンマ・セクレターゼ阻害剤のデスモイド腫瘍試験が成功
(2025年12月15日発表)
米国ワシントン州の医薬品開発会社、Immunome(Nasdaq:IMNM)は、AL102(varegacestat)が第3相RINGSIDE試験で主目的を達成したと発表した。26年第2四半期に承認申請する考え。
24年にAyala Pharmaceuticalsから取得したガンマ・セクレターゼ阻害剤。再発・難治性進行性のデスモイド腫瘍患者156人を組入れて1.2mgを一日一回経口投与したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)の偽薬比ハザード・レシオが0.16(95%信頼区間0.017-0.375)だった。有害事象は下痢、疲労、ラッシュ、悪心などで、多くはG1、G2だった。
類薬はSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)のOgsiveo(nirogacestat)が23年に米国で、25年にはEUでも、成人の全身性治療が必要な進行性デスモイド腫瘍に承認されている。この希少軟組織腫瘍はガンマ・セクレターゼがクリバレッジするノッチにより成長が活性化されるようだ。
リンク: Immunomeのプレスリリース
CAR-Tのスティッフパーソン症候群試験が成功
(2025年12月15日発表)
米国カリフォルニア州のKyverna Therapeutics(Nasdaq:KYTX)はKYV-101(mivocabtagene autoleucel)が承認申請用第2相試験、KYSA-8で主評価項目とすべての副次的評価項目を達成したと発表した。26年上期に承認申請する考え。
対象疾患であるスティッフ・パーソン症候群は体幹や四肢で進行性の筋硬直や有痛性筋攣縮を引き起こす、米国の推定患者数6000人の希少疾患。脊髄運動ニューロンの調整に必要なGABAの合成を妨げる、抗GAD65(抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ65)に対する抗体を持つことが多い。薬物療法は筋弛緩剤やbenzodiazepine、rituximabなどがオフレーベルで用いられている。KYV-101はCD19を標的としCD28を共刺激する自家CAR-T療法。リンパ枯渇後に1x10^8 CAR-Tセルを一回投与する。
KYSA-8試験は免疫調停薬に十分応答しない患者26人に施行した。被験者のメジアン年齢は56歳、88%がGAD65陽性。主評価項目は16週の25フィート歩行時間。ベースライン時点のメジアン11.2秒から46%改善した。健常者の水準とされる4~5秒に近づいたと推測される。mRSなどの副次的評価尺度も有意に改善した。補助歩行具装着の12人中67%は不要になった。サイトカイン放出症候群や免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群が見られたが、G3以上は発生しなかった。G3/4好中球減少症が62%で発生した。
リンク: 同社のプレスリリース
ヒフデュラは甲状腺眼症には効かない
(2025年12月15日発表)
オランダのargenx SE (Euronext/Nasdaq:ARGX)はVyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa and hyaluronidase-qvfc)の第3相甲状腺眼症試験、UplifTEDを中止すると発表した。中間解析で独立データ監視委員会が無益認定した。Vyvgartは胎児性Fc受容体に対する抗体で静注用製剤も含めて筋無力症など様々な免疫関連疾患に承認されている。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
ノボ、GLP-1・アミリン合剤を承認申請
(2025年12月18日発表)
ノボ ノルディスクはCagriSema(semaglutide、cagrilintide)を肥満症やリスク因子を持つオーバーウェイトの体重管理薬として米国で承認申請したと発表した。Wegovyの活性成分であるGLP-1作用剤とアミリン類縁体を2.4mgずつ配合した合剤で、週一回皮下注する。二型糖尿病を併発していない患者を組入れたREDEFINE 1試験と併発患者のREDEFINE 2試験で体重が各20.4%と13.7%低下し、偽薬群の3.0%と3.1%低下を有意に上回った。イーライリリーのZepbount(tirzepatide)と直接比較する試験も進行中。
リンク: 同社のプレスリリース
メンケス病用薬を再申請
(2025年12月15日発表)
Zydus Lifesciencesの子会社であるSentynl Therapeuticsは、CUTX-101(copper histidinate)を米国で再申請したと発表した。審査期限は来年1月14日。
対象疾患であるメンケス病はATP7Aの遺伝子異常によるX染色体劣性遺伝性疾患で、腸管での輸送障害により銅が欠乏、重度中枢神経障害などが表れる。CUTX-101は今年1月に承認申請が受理されたが、製造施設におけるcGMP欠陥を指摘され9月に審査完了通知を受領していた。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
Aldeyra社、承認がまたまた遅延
(2025年12月15日発表)
Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)はRASP(反応性アルデヒド種)調節剤ADX 102(reproxalap)をドライアイの点眼薬として開発、22年に米国で承認申請したが、FDAがガイダンス草稿で提唱した兆候改善試験(目の赤さなどを評価)と症状改善試験(目の不快感を評価)を二本ずつ実施という要件を満たしていなかったことなどから、審査完了通知を受領した。症状改善試験を実施して再申請したがベースライン値に群間の偏りがあることなど方法論的な指摘を受け、審査完了した。追加試験を実施して再申請したが、今回、審査期限が今月16日から26年3月16日に延期されたと公表した。
仮説検証試験は成功してもフェールしても承認申請資料に含めるのが通常だ。最後の追加試験のうち、チャンバー試験は成功したが、フィールド試験はトレンドに留まった。同社は後者を支持的証跡として提出する考えを示していたが、FDA会議で提出しないことで同意を得たため、通常の治験報告以外、提出しなかったようだ。審査期間中に要求され、提出したため、審査期間延長となった。
経緯は複雑で、事前会議はFDAの眼科部門と実施したが、提出要求したのはその上部組織である専門薬オフィスだという。第2次トランプ政権ではFDA委員長を筆頭に上役の積極的介入が散見されるが、本件も同じ現象なのかもしれない。
リンク: 同社のプレスリリース
サノフィの多発性硬化症用btk阻害剤、FDAの審査が遅延
(2025年月日発表)
サノフィは多発性硬化症などの自己免疫疾患向けに開発しているブルトン型チロシン・キナーゼ阻害剤、SAR442168(tolebrutinib)について、二本のプレスリリースを発出した。一本にまとめなかったのは片方の事象が遅れて発生したからなのか、それとも、関連があると思われたくなかったのか、現時点では明らかではない。
同剤は再発寛解を繰り返さずに進行するようになった無再発二次性多発性硬化症(nrSPMS)の第3相HERCULES試験が成功、病状進行(EDSSで評価)リスクを31%抑制し、米国で承認申請された。優先審査指定されたが追加データ提出に伴い審査期限が今月28日に延期され、今回、更に遅れる旨の連絡を受けた。26年3月末までにFDAから今後の見通しに関するガイダンスを期待しているとのことだ。何がボトルネックなのか、プレスリリースには記されていない。
もう一本は第3相PERSEUS試験がフェールしたことを明らかした。日本を含む施設で一次進行性多発性硬化症の患者を組入れ疾病進行リスクを評価したもの。主評価項目は複合評価項目で、EDSS、25フィート歩行時間テスト、9ホールペグテストの何れかが6ヶ月間に一定以上悪化するまでの期間を偽薬と比較した。初めて見る評価項目であり、適切なものなのか、分からない。
tolebrutinibは再発型多発性硬化症の第3相試験二本はフェールしており、ベータ・インターフェロンや抗CD20抗体とは異なった特徴を示している。しかし、PERSEUS試験のフェールが試験ではなく試験薬のフェールだった場合、進行抑制作用もどうなのか、疑問の声が上がっても不思議はない。薬物誘導性肝障害の懸念が見られ、Hercules試験ではHayの法則該当症例の一人が肝移植の合併症で死亡した。リスクもある薬なので便益を明確にすることが重要だ。
リンク: 同社のプレスリリース(審査長期化)
リンク: 同(PERSEUS試験)
【承認】
ライブリバントの皮下注版が米国でも承認
(2025年12月17日発表)
ジョンソン エンド ジョンソンはFDAがRybrevant Faspro(amivantamab and hyaluronidase-lpuj)を承認したと発表した。点滴静注用抗EGFR・MET二重特異性抗体Rybrevantを皮下注できるように改良した製品で、注射時間が5分と点滴静注の数時間より短く済む。適応は静注用と同じ。EGFR阻害剤Lazcluze(lazertinib)と併用時のORR(客観的反応率)や薬物動態を静注用製剤と比較した試験で閾値をクリアした。JNJのリリースによると全生存期間はハザード・レシオ0.62、名目p=0.02と、何故か良かったが、FDAのリリースでは悪化を疑わせるエビデンスはなかったとだけ記されている。注射箇所反応の発生率は静注用の5分の1だった。
EUでは4月に承認されたが米国は承認前製造施設検査で所見事項があり、昨年12月に審査完了通知を受領したため遅れた。日本では8月に第2部会を通過したが別の理由で承認遅延している。
リンク: FDAのリリース
リンク: JNJのプレスリリース
GSKの長期作用性抗IL-5抗体、喘息だけ承認
(2025年12月16日発表)
GSKはFDAがExdensur(depemokimab-ulaa)を12歳以上の好酸球性重度喘息症の維持療法として承認したと発表した、報道によると、CRSwNP(鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎)の適応は審査完了通知を受領したようだ。同日、英国で両適応症に承認されたことも発表された。日欧でも両適応症で第2部会/CHMPを通過しており、FDAだけ異なった判断をしている。
同社のNucala(mepolizumab)やアストラゼネカのFasenra(dupilumab)と同じ抗IL-5抗体だが作用が長く半年に一回の皮下注で足りる。中高量吸入コルチコステロイドを含む複数の喘息症管理薬で治療しても増悪を十分に抑制できない、好酸球増加型の喘息症を組入れた試験で、Exdensurを追加投与した群は臨床的に重要な増悪が偽薬追加群比で半減した。
リンク: GSKのプレスリリース(米国承認)
リンク: 同(英国承認)
rucaparibがある種の前立腺癌に本承認
(2025年12月17日発表)
FDAはPharmaand GmbHのRubraca(rucaparib)のBRCA変異型転移去勢抵抗性前立腺癌における加速承認を本承認に切替えた。従来の出番はアンドロゲン受容体標的薬とタクサン系化学療法の後だったが、アンドロゲン受容体標的薬の後に変更された。
化学療法未施行の患者を組入れた第3相TRITON3試験でPFS(無進行生存期間、放射線学的独立評価)がメジアン11.2ヶ月と、対照群(docetaxelなどを投与)の6.4ヶ月を上回り、ハザード・レシオ0.50だった。全生存期間のハザード・レシオは0.91、有意ではない。
Rubracaはファイザーが創製したPARP阻害剤。Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)がライセンスし承認取得まで達したが、経営破綻し事業売却した。
リンク: Pharmaand GmbHのプレスリリース
小型PCSK9阻害薬が承認
(2025年12月15日発表)
米国オハイオ州の新興医薬品会社、LIB Therapeuticsは、FDAがLerochol(lerodalcibep-liga)を高脂血症患者のLDL-C治療薬として承認したと発表した。運動療法や食事療法と共に、月一回、自己注する。適応はヘテロ接合型家族性高脂血症も含む、と記されているが、第3相LIBERATE-HoFH試験でアムジェンの抗PCSK9抗体Repatha(evolocumab)と同程度のLDL-C低下作用を示したホモ接合型家族性高脂血症には言及されていない。レーベルに治験実績として掲載されているのも心血管疾患リスクが高い患者を組入れたLIBERATE-HR試験とLIBERATE-CVD試験、そしてヘテロ接合型家族性高脂血症のLIBERATE-HeFH試験だけだ。LDL-C値はホモ接合型家族性高脂血症が一番高く、本剤のニーズが最も高いように思われるが、どうしたのだろうか?
Lerocholは、同社のフィブロネクチン系ペプチド技術を用いて創製した、PCSK9に結合するアドネクチン(11kDa)をアルブミンと結合して半減期を2週間超に伸ばし安定性を向上した融合蛋白。分子量は77kDaなのでRepatha(144kDa)の約半分。効果はRepathaと大差無さそうだが、室温で3ヶ月保存可能など取扱いで上回る。
同社はブリストル マイヤーズ スクイブから取得した資産を元に2015年に設立された。BMSは07年にアドネクチン技術を持つAdnecus Therapeuticsを買収しているので、この会社の流れを汲んでいるのかもしれない。
リンク: 同社のプレスリリース
エンハーツがher2+MBCの一次治療に承認
(2025年12月15日発表)
FDAは第一三共がアストラゼネカと共同開発販売している抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を成人のher2陽性(IHC法で3+またはISH法で陽性)の切除不能/転移性乳癌の一次治療に承認した。ロシュの抗2C4抗体Perjeta(pertuzumab)と併用する。今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)での発表によると、第3相DESTINY-Breast09試験でこの二剤を併用した群は標準療法群(pertuzumabをtaxane系抗癌剤及び抗her2抗体trastuzumabと併用)よりPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が長く(メジアン40.7ヶ月対26.9ヶ月)、ハザード・レシオは0.56だった。全生存期間は未成熟だがハザード・レシオは0.84(95%信頼区間0.59-1.19)と望ましい方向を向いている。ボトルネックである間質性肺疾患/肺臓炎はG3/4はなかったがG5が0.5%で発生した(標準療法群はゼロ)。
尚、本試験はEnhertuと偽薬を投与する単剤投与群も設定されているが、未だ結果が出ていない模様で、レーベル上はinvestigational therapy群と記されている。
リンク: FDAのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
| PDUFA | |
|---|---|
| 25/12推 | ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大) |
| 25/12/22 | ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療) |
| 25/12/26 | OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症) |
| 25/12/26 | CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症) |
| 25/12/30 | Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群) |
| 25/12/30 | Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い) |
| 25/12/31 | Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性) |
| 26/1推 | Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件) |
| 26/1/5 | Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群) |
| 26/1/10 | Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患) |
| 26/1/13 | Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加) |
| 26/1/14 | Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病) |
| 26/1/17 | JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌) |
| 26/1/28 | Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視) |
| 26/1/31 | Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等) |
| 26/1/31 | Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大) |
| 26/2推 | サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件) |
| 26/2推 | JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件) |
| 26/2/8 | RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型) |
| 26/2/20 | MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌) |
| 26/2/21 | Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型) |
| 26/2/25 | 大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療) |
| 26/2/28 | Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎) |
| 25/2/28 | Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症) |
今週は以上です。
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