【ニュース・ヘッドライン】
- 遺伝子療法の需要が期待外れ
- Leber先天性黒内障4型の遺伝子療法を英国で承認申請へ
- トレムフィア皮下注は潰瘍性大腸炎の導入療法にも有効
- ギリアド、レナカパビルをHIV予防に承認申請
- デュピクセントを水疱性類天疱瘡に適応拡大申請
- 小型抗PCSK9薬を承認申請
- ケノデオキシコール酸が脳腱黄色腫症に承認
- GSK、5価髄膜炎菌ワクチンが承認
- コスタイベがEUでも承認
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
遺伝子療法の需要が期待外れ
(2025年2月21日発表)
近年、多くの遺伝子療法が承認されたが、需要が伸び悩んでいる製品も少なくない。3剤をロンチしたbluebird bio(Nasdaq:BLUE)は幸せは株式市場にはないと諦観したのか、バイオ・ベンチャー・キャピタルに身売りを決めた。ファイザーはなけなしの遺伝子療法薬の販売中止を決めたようだ。
bluebird bioは21~22年に米国などで脳副腎白質ジストロフィー用薬Skysona(elivaldogene autotemcel)、ベータ・サラセミア用薬Zynteglo (betibeglogene autotemcel)、鎌状赤血球症用薬Lyfgenia(lovotibeglogene autotemcel)が承認され、売却した腫瘍学事業からもCAR-T療法Abecma(idecabtagene vicleucel)が多発骨髄腫用薬として承認されるなど、大きな成果を上げた。しかし、上記3剤の米国での価格が何れも300万ドル前後と高価であるせいか、承認後の治療開始実績は合計で50例余に留まっているようだ。
bluebirdの一株当たり株価は18年に2781ドルに達したが、今回、Carlyle(Nasdaq:CG)とSK Capital Partnersが、3ドル及びCVR(売上目標達成時に支払われる後発債権)6.84ドルと99.6%低い価格で事業買収に合意した。CEOも交代する予定。
リンク: bluebird社のプレスリリース
一方、ファイザーはSpark Therapeutics(現在はロシュ傘下)のB型血友病遺伝子療法をライセンスし24年に4月に米国でBeqvez(fidanacogene elaparvovec-dzkt)名で、7月には欧州でもDurveqtix名で承認取得したが、日本では部会上程の直前に申請撤回した。ミクスオンラインはグローバル本社が全世界で今後の開発・商業化を中止することを決めたことが理由と報じたが、海外でも複数のメディアが販売中止する考えと報道した。承認後の施行実績はゼロのようだ。
ファイザーはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子療法PF-06939926(fordadistrogene movaparvovec)も24年に第3相がフェールし開発を中止しており、このモダリティでは苦戦している。
リンク: MedPage Todayの報道(2/21付)
【新薬開発】
Leber先天性黒内障4型の遺伝子療法を英国で承認申請へ
(2025年2月21日発表)
米国ニューヨーク州の遺伝子療法開発会社、MeiraGTx(Nasdaq:MGTX)は、rAAV8.hRKp.AIPL1をLeber先天性黒内障(LCA)の治療に用いた臨床研究論文がLancet誌に掲載されたと発表した。英国の承認審査組織との相談で感触が良かった模様で、例外的環境条項に基づく承認を申請する予定。FDAとも相談する考え。
LCAは33000人に一人の遺伝子疾患で、原因遺伝子は様々。本薬はAIPL1の変異が関連するLCA4型を対象としており、ヒトAIPL1をコードする配列とヒトrhodopsin kinaseプロモータ領域を組み込んだアデノ随伴ウイルス8型を中央網膜の桿体・錐体光受容細胞に導入すべく、網膜下注射する。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで開発された技術のようだ。Lancet論文は英国の両アレル変異があり出生時法定盲目の4人の片目に施術したもの。その後、更に7人に両目施術し、どちらも意味のある改善が見られたようだ。
リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Michaelidesらの治験論文(Lancet)
トレムフィア皮下注は潰瘍性大腸炎の導入療法にも有効
(2025年2月21日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗IL-23p19サブユニット抗体Tremfya(guselkumab)を24年に米欧日で既存治療不十分応答な中重度活性期潰瘍性大腸炎に適応拡大申請し、米国では9月に承認されたがどういう訳か導入期は静注用製剤、維持期は皮下注用製剤と使い分けることになっていた。乾癬など他の適応症は最初から皮下注なので奇異に感じていた。しかし、11月に導入期も皮下注する新用法が米国で承認申請されたのに続き、今回、エビデンスとなるASTRO試験の結果が公表された。静注用は200mgを4週毎3回投与するが、皮下注は400mgを同じスケジュールで投与する。12週臨床的完解率は27.6%と、偽薬群の6.5%を上回った。バイオ薬やJAK阻害剤による治療歴の有無を問わず有意差があった。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認申請】
ギリアド、レナカパビルをHIV予防に承認申請
(2025年2月18日発表)
ギリアド・サイエンシズは米国でlenacapavirをHIVの曝露前予防(PrEP)に承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は25年6月19日。欧州でも先日、承認申請したとのこと。
HIV/AIDS治療薬Sunlencaとして22~23年に欧米日で承認されたカプシド阻害剤。6ヶ月毎皮下注と作用が長期間持続する点で予防用途に適している。シスジェンダー女性やトランスジェンダー女性のパートナーのシスジェンダー男性、ノンバイナリーなど様々な男女を組入れた第3相試験二本で、HIV/AIDS発症を90%以上抑制した。この用途で10年以上前に承認された同社の2剤合剤、Truvada(tenofovir DF、emtricitabine)と比べても有意に抑制したようだ。
プレスリリースではnew drug applicationと書かれており、Sunlencaの適応追加ではなく別ブランドとしてロンチする考えなのかもしれない。
リンク: 同社のプレスリリース
デュピクセントを水疱性類天疱瘡に適応拡大申請
(2025年2月18日発表)
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:RGEN)は米国で抗IL-4受容体アルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)を成人の水疱性類天疱瘡(BP)に適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限は25年6月20日。中重度患者106人を組入れた第3相ADEPT試験で持続的疾病完解率(コルチコステロイド治療を16週までに終了した上で臨床的完解を達成)が20%と偽薬群の4%を有意に上回った。症状緩和作用も見られた。
Dupixentは二型炎症が関わる様々な疾患に有効で、米国ではアトピー性皮膚炎、好中球性またはステロイド依存喘息症、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、好中球性食道炎、結節性痒疹、好中球性慢性閉塞性肺疾患用薬として、年齢・既存治療応答性に関わる限定付きで承認されている。
リンク: 同社のプレスリリース
小型抗PCSK9薬を承認申請
(2025年2月10日発表)
米国オハイオ州の未上場企業、LIB Therapeuticsは、LIB003(lerodalcibep)をFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査祈願は25年12月12日。FDAは今のところ諮問委員会を招集する考えはないとのこと。LDL受容体に結合し零落させるPCSK9を標的とする薬で、15~16年に欧米日で承認されたアムジェン(日本ではアステラス製薬)のRepatha(evolocumab)が抗体医薬であるのに対して、分子量が10分の一の、ヒト・フィブロネクチン由来のPCSK9結合性アドネクチンに、ヒト血清アルブミンを結合して半減期を延長したもの。4週毎皮下注する場合、Repathaは420mg/3.5mLを5分かけて投与するが、LIB003は300mg/1.2mLを数秒で足りる。
適応症は原発性高脂血症の治療とアテローム硬化性心血管疾患の治療と予防。
リンク: 同社のプレスリリース(Businesswire)
【承認】
ケノデオキシコール酸が脳腱黄色腫症に承認
(2025年2月21日発表)
FDAは、Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)のCtexli(chenodiol)を成人の脳腱黄色腫症(CTX)治療薬として承認したと発表した。CTXは7万人に一人の進行性常染色体性劣性遺伝疾患で、CYP27A1欠損によりコレステロールの代謝プロセスで必要なCDCA(ケノデオキシコール酸)が欠乏、有害な中間代謝物が蓄積し様々な疾患を合併する。CtexliはCDCA補充療法で250mgを一日3回経口投与する。臨床試験で血漿コレスタノールなどが顕著に減少した。肝毒性が見られるため治療開始前と年一回、肝機能検査を行う。
活性成分は胆石溶解剤として1983年に米国で承認されたがその後、販売中止された。その後、需給がタイトな薬の製造販売権を取得して思いっきり値上げしてぼろ儲けするビジネス・モデルで一世を風靡したMartin Shkreliが設立したRetrophinがGE薬の権利を取得したが、氏の逮捕・辞任後にTravere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)に社名変更、胆汁酸関連製品事業をMirumに譲渡した経緯がある。胆石溶解用途も250mg一日3回なので、製品名だけ異なるのか、他にも何か違うのか、良く分からない。この種の温故知新型新薬は古くからある製品と価格で競争できず売上が伸び悩むことがあるが、Shkreliの全盛期なら、胆石溶解剤の販売を中止して新薬の高値を押し通すだろう。
尚、ケノデオキシコール酸は日本でもコレステロール系胆石溶解剤として承認されている。
リンク: FDAのプレスリリース
GSK、5価髄膜炎菌ワクチンが承認
(2025年2月15日発表)
GSKはFDAがPenmenvyを侵襲性髄膜炎菌性髄膜炎の予防用ワクチンとして承認したと発表した。10~25歳に6ヶ月おいて2回接種する。23年に米国で承認されたファイザーのPenbrayaと同様な、A、B、C、W-135、Y群をカバーする5価ワクチン。GSKのA/C/W-135/Y対応Menveoと、B群対応Bexseroの抗原を合わせたもので、MenveoはA群対応凍結乾燥製剤をC/W-135/Y群対応液で混合するが、PenmenvyはA/C/W-135/Y対応凍結乾燥粉末をBの懸濁液プリフィルド・シリンジに入れて混合する。血清殺菌アッセイでB群に関してはBexseroと、他の4群はMenveoと、非劣性だった。
Menveoの24年売上高は5億ドル弱で、その8割が米国。Bexseroは13億ドル弱でその半分が欧州、1/3が米国となっている。
リンク: GSKのプレスリリース
コスタイベがEUでも承認
(2025年2月14日発表)
Arcturus Therapeutics(Nasdaq:ARCT)とCSLは、Kostaive(zapomeran)がEUで成人向けCOVID-19ワクチンとして承認されたと発表した。ウイルスのスパイク蛋白のmRNAにRNAレプリカ―ゼのmRNAを結合したナノ・パーティクル封入ワクチンで、体内でmRNAが増幅されるため比較的少量の接種で足りる。23年に日本で初承認されて以来、2番目の承認となった。
リンク: Arcturus社のプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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25年3月推 | アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌) |
25/3/18 | Neurotech PharmaceuticalsのNT-501(revakinagene taroretcel、黄斑部毛細血管拡張症2型) |
25/3/20 | Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用) |
25/3/23 | Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加) |
25/3/26 | GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症) |
25/3/27 | Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍) |
25/3/27 | Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群) |
25/4推 | JNJのnipocalimab(全身性筋無力症) |
25/4推 | ノバルティスのatrasentan(IgA腎症) |
25Q2 | アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌) |
25/4/2 | Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ) |
25/4/3 | ExelixisのCabometyx(cabozantinib、神経分泌細胞腫追加) |
25/4/18 | RegeneronのDupixent(dupilumab、特発性慢性蕁麻疹追加) |
25/4/21 | BMSのOpdivoとYervoy(nivolumabとipilimumab、肝細胞腫一次治療追加) |
25/4/26 | TelixのPixclara(18F-floretyrosine、神経膠腫PET造影剤) |
25/4/29 | Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症) |
25/4/29 | Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群) |
今週は以上です。
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