2025年2月1日

第1192回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 政権交代の波紋が広がる 
  • MSD、WinrevairのPAH試験を玉突き繰上げ完了 
  • 新規放射性薬のGEP-NETs試験が成功 
  • Akero社、後期第2相MASH肝硬変試験で96週の治療により線維症が改善 
  • サレプタ社、Elevidysのクロスオーバー・フェーズの成績を発表 
  • アスピリンのPI3K変異大腸癌術後治療試験が成功 
  • ある種の大腸癌にはオプジーボだけよりヤーボイ併用のほうが良い 
  • 抗マイオスタチン抗体をSMA治療薬として承認申請 
  • ジクロロ酢酸塩をビルビン酸脱水素酵素複合体欠乏症に承認申請 
  • MSD、HIF-2アルファ阻害剤を褐色細胞腫・傍神経節腫に適応追加申請 
  • CHMP、21価肺炎球菌ワクチンなどの承認を支持 
  • 片頭痛用合剤が承認 
  • 新規作用機序の鎮痛剤が承認 
  • オゼンピックが糖尿病性腎症に適応拡大 
  • エンハーツがher2低発現乳癌に適応拡大  
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


政権交代の波紋が広がる
(2025年1月20日発表)

報道によるとトランプ大統領は1月21日から2月1日までの期間、連邦政府の各種発表・方針表明をストップしているとのことだが、影響が報道以外にも広がり始めた。まず、行政において多様性を確保するためのDEI(diversity、equity、inclusion)プログラムを取りやめた。担当職員は自宅待機を命じられ、FDAのサイトから関連ページが削除された。CDC(疾病管理予防センター)のサイトではLGBTQや環境保護、エムポックス・ワクチン、HIVに関するページが消えた。

様々な多様性のうち、人種の多様性はICH(医薬品規制調和国際会議)ガイドラインでも基準を設けており、中国のInnovent Biologics(HKEX:01801)が抗PD-1抗体sintilimabを米国で進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療向けに承認申請した時の諮問委員会でも、臨床試験実施地域の偏りや、対照薬が米国における標準療法であるKeytruda併用レジメンではなかったことなどから、承認されなかった。他の中国系製薬会社の承認申請でも、中国の施設しか参加しなかったことなどが理由で承認されないものが陸続した。今回の方針転換で、中国や日本だけのエビデンスで承認を取り易くなるかどうかはまた別の問題ではあるが、チャンスにはなりうるだろう。

トランプ大統領はWHO脱退を打ち出しているが、CDCなどがWHOと連携して行っていた活動もストップしたようだ。WHOを訪問することも認められない。

また、2月24日に予定されていたノバルティスのFabhaltaのC3腎症適応拡大を検討する諮問委員会が中止になった。大統領令の影響なのか、審査担当者などFDA内部の判断なのかは明らかではなく、規制のせいかFDAの諮問委員会情報ページを見ても変更とは記されていないが、ノバルティスが24年決算発表に際して明らかにした。

リンク: ホワイトハウスのDEIプログラム終了のプレスリリース

【新薬開発】


MSD、WinrevairのPAH試験を玉突き繰上げ完了
(2025年1月30日発表)

MSDはPAH(肺動脈高血圧症)治療薬Winrevair(sotatercept-csrk)の第3相HYPERION試験を繰上げ完了すると発表した。もっと進行した患者を組入れた第3相試験が中間解析で主目的を達成し繰上げ完了したことや、過去の試験の総合的評価を踏まえたもので、FDAにも相談したとのこと。効能に関するエビデンスを積み上げる上では残念だが、偽薬群の患者に対する配慮なのだろう。

activin receptor type IIaとIgG1の融合蛋白で、24年に米欧で成人のPAH治療薬として承認された。日本でも申請中。エビデンスとなった第3相STELLAR試験はWHO機能分類でIIとIIIの標準治療を受けている患者324人が対象で、多くの被験者が2剤以上を併用していた。主目的の6分歩行距離に加えて、他の治療薬の増量、PAH増悪/入院、死亡などの複合評価項目の解析なども成功した。米国では限定されていないが、EUでは治験と同じ機能分類IIとIIIに限定された。

24年11月、第3相ZENITH試験が中間解析で成功認定されたと発表された。機能分類がIIIまたはIVで死亡リスクが高いと診断された、標準治療を受けている患者172人を組入れて、全死亡、肺移植、増悪による24時間以上の入院の複合評価項目を偽薬群と比較したもの。IIIの患者のメジアン生存期間は2.5年、IVは6ヶ月と推定されており、治療ニーズが特に高そうな患者層だ。そして、今回の第3相HYPERION試験は過去12ヶ月間にPAHと診断された機能分類IIまたはIIIで中高度進行リスクを持つ患者が対象で、転帰を偽薬と比較するもの。両試験は、高リスク患者に絞り込むことで、STELLAR試験でも観察された死亡リスク抑制作用の再現性を確かめる意図なのかもしれない。米国では適応になるがEUではIVは適応外なので、対象患者拡大も企図したのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース


新規放射性薬のGEP-NETs試験が成功
(2025年1月28日発表)

ドイツの未上場放射性薬品会社、ITM Isotope Technologiesは、ITM-11の第3相GEP-NETs(膵消化管神経内分泌腫瘍)試験で主目的を達成したと発表した。承認申請に向けてFDAと相談する考え。成績は学会で発表する予定。

ベータ線を局所的に放出する無担体lutetium 177と、放射性核種キレート剤DOTAとoctreotide派生のソマトスタチン受容体2/5ライガンドであるedotreotideのコンジュゲート。7.5GBqを神経保護作用を持つアミノ酸溶液とともに3ヶ月毎に最大4サイクル投与する。第3相COMPLETE試験でグレード1/2の切除不能進行性ソマトスタチン受容体陽性GEP-NETs309人をeverolimus群と2対1割付けし、非盲検下でPFS(無進行生存期間)を比較した。

17~21年に欧米日でソマトスタチン受容体陽性GEP-NETs用薬として承認されたノバルティスのLutathera(lutetium Lu 177 dotatate)と似ているが、適応が異なるのだろうか?同じならeverolimus対照で良いのだろうか?Lutatheraの試験は長期作用性octreotideとPFSを比較していた。

リンク: ITM社のプレスリリース


Akero社、後期第2相MASH肝硬変試験で96週の治療により線維症が改善
(2025年1月27日発表)

米国カリフォルニア州のAkero Therapeutics(Nasdaq:AKRO)は、AKR-001(efruxifermin)の後期第2相試験でMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎;旧称非アルコール性脂肪性肝炎)による代償性肝硬変(F4)患者における肝線維症が96週の高用量投与により改善したと発表した。現在、F4や肝硬変合併前のF2-3段階の患者を組入れた第3相が3本進行中。

今回のSYMMETRY試験は182人の患者を偽薬、28mg、または50mgを週一回皮下注する3群に無作為化割付けして、肝線維症が1段階以上改善し、且つ、MASHが悪化しなかった患者の比率(以下、奏効率)を偽薬と比較した。第24週の解析は各群14%、22%、24%となり、有意差が見られなかったため株価が急落したが、第96週の解析は15%、29%、39%となり、50mg群は偽薬比p=0.009となったため、株価が倍増した。尚、この数値は第96週に生検を受けた134人(うち50mg群は46人)のデータで、intent-to-treat(母数に生検不実施例も含む、3群合計181人、50mg群は63人)ベースだと12%、21%、29%、50mg群のp=0.031と低下する。1年超追跡する試験のサガだが、50mg群は2割以上がドロップまたはフェールしたことになる。

AKR-001は長期作用性FGF21(線維芽細胞増殖因子21)類縁体。F2/3段階のMASHを組入れた後期第2相も50mg群の96週奏効率が偽薬群を有意に上回り、MASHが解消し線維症が悪化しなかった患者の比率は25mg群も有意に上回った。

リンク: 同社のプレスリリース


サレプタ社、Elevidysのクロスオーバー・フェーズの成績を発表
(2025年1月27日発表)

Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)は23年に米国で承認され欧日でも申請中のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の遺伝子療法薬、Elevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)の第3相EMBARK試験における、第2部の解析が成功したと発表した。

この試験は、歩行可能な4~7歳の患者125人を組入れて52週後のNSAA歩行能力評価尺度や立ち上がるまでの時間(以下、TFR)などを偽薬群と比較したもので、前者はフェールしたが、後者はベースラインの4.8秒が0.3秒改善し偽薬群の0.1秒悪化比有意な差があった。4段昇段テストも有意差があった。承認審査では担当部署の評価は厳しかったものの、生物学的医薬品部門トップの鶴の一声で承認された。

今回の第2部では52週の追跡を終えた偽薬群の患者59人に盲検を維持したままElevidysによる治療を施行し、更に52週間追跡したもの。対照群は偽薬群ではなく、事前に特定された、傾向加重外部対照群(以下、EC群、n=276)が用いられた。tadalafilの第3相DMD試験の偽薬群のデータなどを元に、患者背景が比較可能な症例群を作成したもの。結果は、EC群をNSAAは2.3点、TFRは2.7秒、10メートル歩行テストは1.07秒、上回り、いずれも統計的に有意だった。

第1部でElevidys群に割付けられた63人は偽薬を点滴静注された。52週後にEC群(n=143)比でNSAAが2.8点、TFRは2.1秒、10m歩行テストは1.4秒、有意に上回った。一回投与するだけの遺伝子療法なのでやがてマイクロジストロフィンが発現しなくなり効果がなくなるのではないか、という見方も日本では聞かれたが、第64週に行われた生検でも発現が確認されたとのことであり、今回のデータは、2年目には更に機能が改善する可能性を示唆している。

第1部はフェールしたのに第2部が成功したのは、端的に言えば、第1部における偽薬群の成績があまり悪くなかったからだ。第2部の成績の評価をするためには、外部対照群のデータの信憑性を確認する必要があるだろう。

リンク: 同社のプレスリリース


アスピリンのPI3K変異大腸癌術後治療試験が成功
(2025年1月25日発表)

ASCO GI(米国臨床腫瘍学会胃腸腫瘍シンポジウム)でPI3K経路に変異を持つ早期結腸直腸癌の摘出後にアスピリンで再発を予防した臨床試験の結果が発表された。偽薬比半減と大きな効果があった。

このALASCCA試験は、スウェーデンなど北欧4ヶ国で、PIK3CA遺伝子のエクソン9または20、あるいは、PTENまたはPIK3R1に変異を持つステージI~III直腸癌とステージII~III結腸癌を組入れて、アスピリン(160mg)を一日一回、3年間、経口投与する便益を偽薬と比較した。3508人を検査し、2980人で判定を取得、PIK3CA変異は515人で、PTEN/PIK3R1変異は588で確認され、うち、各314人と312人を2群に無作為化割付けした。

PIK3CA変異コフォートの3年再発率は偽薬群が14.1%、アスピリン群は7.7%、ハザードレシオ0.49、p=0.044だった。PIK3CA変異コフォートは各16.8%、7.7%、0.42、0.013となった。結腸癌にも直腸癌にも、他の付随療法を施行してもしなくても、年齢や進行段階も、問わずに効果が見られた。3年無病生存率はPIK3CA変異コフォートが変異群が81.4%と88.5%でハザードレシオ0.61、但しp=0.091だった。PTEN/PIK3R1変異は78%と89%でハザードレシオ0.51、p=0.017。

深刻有害事象は偽薬群では38人、試験薬群では57人で発生した。出血事故は各群ゼロと4人だった。

リンク: ASCO GI(右欄にAnna Martlingらの抄録LBA125のリンクあり)


ある種の大腸癌にはオプジーボだけよりヤーボイ併用のほうが良い
(2025年1月25日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、MSI-H/dMMR(高マイクロサテライト不安定性/ミスマッチ修復欠損)を示す転移結腸直腸癌におけるOpdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)の併用法の便益を検討した第3相CheckMate-8HW試験でもう一つの主評価項目を達成したと、ASCO GIとLancet誌で発表された。

共同主評価項目のうち、一次治療を受ける患者における併用群と医師が選んだ化学療法を施行する群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)の比較は23年に中間解析で達成、ハザードレシオは0.21だった。今回の解析は、二次以降の患者も含む全被験者の併用群とOpdivo単剤群のPFS。ハザードレシオ0.62、3年PFS率は各群68%と51%、G3/4治療関連有害事象の発生率は22%と14%だった。副次的評価項目の全生存期間は継続追跡中。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Andreらの治験論文抄録(Lancet)

【承認申請】


抗マイオスタチン抗体をSMA治療薬として承認申請
(2025年1月29日発表)

Scholar Rock(Nasdaq:SRRK)はSRK-015(apitegromab)を脊髄筋萎縮症(SMA)用薬として承認申請したと発表した。SMA標的薬による治療を受けている患者に追加投与する。第3相SAPPHIRE試験でnusinersenまたはrisdiplamによる治療を受けている歩行不能な2型/3型SMA患者を偽薬、10mg/kg、20mg/kgの何れかの群に無作為化割付けして4週毎点滴静注し、第52週の運動機能を評価したところ、主薬効解析対象である2~12歳のサブグループ156人のHFMSE(ベースライン値は26)が2用量群のプール分析で偽薬比1.8点改善した(p=0.0192)。シーケンシャルな主評価項目である20mg/kg群53人では同1.4点(p=0.11)、10mg/kg群53人では同2.2点(p=0.0121)となり、低用量群のp値はHochberg多重性補正に基づく閾値をクリアした。13~21歳の22人に関する探索的解析でも好ましいトレンドが見られた。忍容性に関する新しい所見はなく、用量による大きな違いも発生しなかった。

apitegromabは、筋力などを抑制するマイオスタチンの前駆体や不活性体に結合するIgG4ラムダ抗体。歩行可能段階の患者や3型SMAにも第2相TOPAZ試験である程度の効果が示唆された。第3相で用量反応が見られなかったが、抗体医薬にはしばしばあることだ。

リンク: 同社のプレスリリース


ジクロロ酢酸塩をビルビン酸脱水素酵素複合体欠乏症に承認申請
(2025年1月28日発表)

本拠をダブリンとバミューダに二股欠けているSaol Therapeutics社は、SL-1009(sodium dichloroacetat、略称DCA)をピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏症(PDCD)用薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は5月27日。

PDCDは炭水化物の酸化障害。新生児から命に係わる先天性乳酸アシドーシスのリスクがあり、神経系や筋骨格系にも影響が出る。米国で300~500人が治療を受けている、希少小児疾患。DCAはピルビン酸脱水素酵素を阻害し、残存ピルビン酸脱水素酵素複合体活性を刺激、ミトコンドリアにおけるATP生成を増強するとのこと。エビデンスは米国の施設で生後6ヶ月から17歳の患者を組入れたクロスオーバー試験で、GSTZ1遺伝子ハプロタイプ検査の結果に応じた用量の経口液を12時間毎に投与して第9月の観察者評価指標を偽薬と比較した。ホームページを調べたが、成績発表された気配はない。

リンク: 同社のプレスリリース


MSD、HIF-2アルファ阻害剤を褐色細胞腫・傍神経節腫に適応追加申請
(2025年1月27日発表)

MSDは米国でWelireg(belzutifan)をPPGL(褐色細胞腫・傍神経節腫)に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は25年5月26日。

HIF-2(hypoxia-inducible factor 2)を阻害する経口薬で、21年に米国でフォン・ヒッペル・リンドウ病の成人における即時手術不要な腎細胞腫、中枢神経系系血管芽細胞腫、または膵神経内分泌腫瘍に用いることが承認され、23年には進行腎細胞腫に適応拡大した。欧日でも承認申請中。

PPGLは希少副腎疾患で、米国の新患は年2000人、世界では5万人以上とのことだ。申請内容は12歳以上の進行、切除不能、又は転移性のPPGLに120mgを一日一回経口投与する。エビデンスは第2相試験のORR(客観的反応率、RECIST 1.1に基づく盲検独立中央評価)とのこと。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、21価肺炎球菌ワクチンなどの承認を支持
(2025年1月31日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

MSDのCapvaxiveは21価肺炎球菌結合型ワクチン。成人の肺炎球菌による侵襲性疾患や肺炎を予防する。肺炎球菌株のカバレッジがファイザーの20価ワクチンPrevnar 20より広く、米国における株別の感染者数で加重平均した数値はかなり上回る。主な有害事象は接種箇所反応、疲労、頭痛、筋痛など。米国では昨年6月に加速承認、日本でも承認申請中。

リンク: EMAのプレスリリース

第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan)は抗TROP2抗体薬物複合体。切除不能/転移ホルモン受容体陽性her2陰性乳癌で、内分泌療法歴と進行後に一次以上の化学療法歴を持つ成人に、単剤投与する。日本では昨年12月に承認、米国でも今月承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

Datrowayは欧米では局所進行/転移非扁平上皮性非小細胞性肺癌の2次3次治療にも承認申請されていたが、EUでも申請撤回となった。CHMPは、非小細胞性肺癌全体における効果は小さく、試験中にプロトコル変更があったためサブグループ分析の解釈に不活実性があり、深刻な肺の炎症リスクが見られるため、承認は難しいと暫定的に評価していた。非扁平上皮サブグループのデータは主評価項目のPFS(無進行生存期間)に関しては良さそうに見えたが、全生存期間のハザードレシオは0.84とそれほど低くなく、95%上限は1を超えていたので承認が危ぶまれたが、見えないところにもボトルネックがあったわけだ。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーのTivdak(tisotumab vedotin)は抗TF抗体薬物複合体。全身性治療中またはその後に進行した成人の難治/転移子宮癌に用いる。ファイザーが子会社化したSeagenがGenmabと共同開発し、米国では21年に加速承認、24年に今回と同じ適応で本承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

デンマークのBavarian Nordic(Nasdaq Copenhagen:BAVA)のVimkunyaはチクングニア疾患の予防用ワクチンで12歳以上が適応になる。中和抗体陽転率に基づく評価で、承認後に予防効果を確認するよう求める。Bavarianは23年にEmergent BioSolutions(NYSE:EBS)からこのワクチンなどの生産販売事業を買収した。米国でも承認申請中。

リンク: EMAのプレスリリース

Laboratorios Liconsa社のIvermectin/Albendazole固定用量合剤は、『顧みられない熱帯病』であるリンパ系フィラリア症の治療薬。鉤虫などによる土壌感染蠕虫(ぜんちゅう)感染症とWuchereria bancroftiによるミクロフィラリア血症の治療に、一日一錠、一回又は3日反復投与する。EU-Medicines for allというプログラムに基づく承認審査で、EU域外での使用を前提に、WHOや流行国の承認審査を支援する意図。流行地域では各配合成分の併用が既に用いられており、WHOはある種の寄生虫が流行する地域で全員に年一回投与することも推奨している。

リンク: EMAのプレスリリース

以下の適応拡大も肯定的意見を得た。

  • ブリストル マイヤーズ スクイブのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel):成人の難治/再発濾胞性リンパ腫の3次治療

  • 同、Opdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab):成人の切除不能/進行肝細胞腫の一次治療に併用

  • アストラゼネカのImfinzi(durvalumab):成人の限局型小細胞性肺癌(化学放射線療法後の維持療法)

  • 一方、英国のADVANZ PHARMAは中枢神経浸透性アルドース還元酵素阻害剤Nugalviq(govorestat)を2歳以上の古典的ガラクトース血症用薬として承認申請していたが、12月に撤回したことが明らかにされた。CHMPは薬品の品質や用量、臨床試験のデザインや実施状況、データの収集・処理、PK/PDや癌原性に関する情報の不足などから、承認はできないと暫定的に判断していた。

    導入元であるApplied Therapeutics(Nasdaq:APLT)も米国で承認申請していたが昨年11月に審査完了通知と治験実施施設の査察で判明した事項に関する警告状を受領した。

    リンク: EMAのプレスリリース

    また、エーザイのLeqembi(lecanemab)は再審査を経て昨年11月に、ApoEエプシロン4ホモ接合型以外の早期アルツハイマー病に肯定的意見を得たが、その後に新たな安全性情報があった模様で、欧州委員会の要請に基づき意見や注意事項などの変更が必要かどうか、2月以降の会議で検討する旨、発表された。米日では23年に、24年には中国や韓国、英国でも、承認されている。

    ネガティブな情報でも適時開示することで傷口を小さく抑えられる。エーザイとバイオジェンは、フジテレビの事案を他人事と思わないほうが良い。

    リンク: EMAのプレスリリース

    【承認】


    片頭痛用合剤が承認
    (2025年1月30日発表)

    米国ニューヨーク州のAxsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、FDAがSymbravo(開発コードAXS-07:meloxicam、rizatriptan)を片頭痛治療薬として承認したと発表した。NSAIDsの急速吸収性新製剤とMSDのMaxaltの主活性成分である5-HT1B/1D受容体作動剤のコンビ薬で、疼痛発作時に一回、経口投与する。中重度疼痛の治療に用いた第3相試験では、2時間後に20%の患者で痛みが解消した。rizatriptan群は17%、meloxicam群は12%、偽薬群は7%だった。軽度疼痛の第3相では2時間後に33%の患者が解消、偽薬群は16%だった。NSAIDsのクラス枠付き警告(心血管塞栓性や胃腸における深刻有害事象のリスクが上昇)が導入されている。

    21年に承認申請したが、製造問題などにより審査完了通知を受領、承認が2年以上遅延した。

    リンク: 同社のプレスリリース


    新規作用機序の鎮痛剤が承認
    (2025年1月30日発表)

    FDAは、Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)のJournavx(suzetrigine)を成人の中重度急性疼痛の治療薬として承認した。初回は50mg錠を2錠、その後は1錠を12時間おきに経口投与する。第3相の腹壁形成術後疼痛治療試験とバニオン切除術後疼痛治療試験で48時間の疼痛強度が偽薬群を有意に下回った。但し、hydrocodone bitartrateとacetaminophenの併用群(各5mgと325mgを6時間毎投与)比では有意差がなく、後者の試験ではやや見劣りした。有害事象はかゆみや痙攣、血漿クレアチン・ホスホキナーゼ上昇、ラッシュなど。CYP3A相互作用があり、強阻害剤の同時使用は禁忌、中程度阻害剤は減量が必要、誘導剤も減量などが必要。CYP3Aを阻害するのでグレープフルーツの摂取は避ける。中重度肝障害は減量する。WAC(問屋取得価格)は一錠15.5ドル。

    JournavxはNaV1.8チャネルで、末梢神経における疼痛シグナルを阻害し脳に伝わらないようにする。米国はオピオイドの乱用誤用が社会問題になっているため、非オピオイド系鎮痛剤のニーズは高い。そのせいか、様々な急性疼痛を組入れた第3相単群試験や進行中の第3相糖尿病性神経症試験も含めて、米国の施設しか参加していない。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: Vertexのプレスリリース


    オゼンピックが糖尿病性腎症に適応拡大
    (2025年1月29日発表)

    ノボ ノルディスクは、FDAがOzempic(semaglutide)の効能追加を承認したと発表した。慢性腎疾患を合併する二型糖尿病の成人に1mgを週一回、皮下注して、腎疾患の悪化やESRD進行、あるいは心血管死のリスクを抑制する。後期第3相のFLOW試験で、腎症の進行や心血管疾患死のリスクを24%抑制した。100人に3年間投与すると5件抑制できる勘定になり、高価な薬だが便益も中々なものだ。欧州でも5月に適応拡大申請された。

    リンク: 同社のプレスリリース


    エンハーツがher2低発現乳癌に適応拡大
    (2025年1月27日発表)

    アストラゼネカと第一三共は、FDAが抗her2抗体薬物複合体Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を成人のホルモン受容体陽性、切除不能/転移性のher2低/超低発現乳癌に用いる適応拡大を承認したと発表した。転移後にホルモン療法歴を持ち、化学療法未施行の患者が適応になる。欧日でも申請中。

    her2標的薬はIHC検査(免疫組織化学染色法)でサンプルを調べて3+なら適応、2+の場合はISH検査(in situ ハイブリダイゼーション法)も行って陽性なら適応、陰性やIHC1+以下は適応外とするのが一般的だが、Enhertuは常識を破り、低発現(IHC2+且つISH-、またはIHC1+)または超低発現(IHC法で0と評価されるが膜染色が認められるもの)にも便益が認められた。前者は一次治療に用いることが可能になり、後者は今回初めて適応が認められた。

    従来から線引きの難しさが指摘されていたが、両社の下記プレスリリースによると、医療施設などのIHC法検査で0と評価された腫瘍の過半はセントラルラボでher2低または超低と判定される。セントラルラボの出番が増えることになる。

    コンパイオン診断薬としてロシュのPATHWAY抗HER2/neu (4B5)ウサギ・モノクローナル・プライマリー抗体の適応が、超低にも拡大した。

    リンク: アストラゼネカと第一製薬のプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    25/2/8大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、PTSD追加)
    25/2/14GSKの髄膜炎菌A/B/C/W-135/Yワクチン
    25/2/14Bavarian NordicのCHIKV VLP(チクングニア熱ワクチン)
    25/2/17小野薬品のvimseltinib(腱滑膜巨細胞腫)
    25/2/28SpringWorks Therapeuticsのmirdametinib(神経線維腫症1型)
    25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
    25/3/18Neurotech PharmaceuticalsのNT-501(revakinagene taroretcel、黄斑部毛細血管拡張症2型)
    25/3/20Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用)
    25/3/23Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加)
    25/3/26GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症)
    25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
    25/3/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
    25/3/28Mirum PharmaceuticalsのChenodal(chenodiol、脳腱黄色腫症)


    今週は以上です。

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