【ニュース・ヘッドライン】
- JNJも抗新生児FcR抗体を筋無力症に承認申請へ
- GM-CSFの自己免疫性肺胞蛋白症試験が成功
- アムヴトラのATTR心筋症試験が成功
- イミフィンジの第3相が一勝一敗
- ノボ、MRAの第3相を中止
- Milestone社、Ca拮抗剤をPSVTに承認申請
- レキサルティをPTSDに承認申請
- 新薬三品が製造問題で審査完了に
- CDC、RSVワクチンの推奨トーンを変更
- CHMP、画期的肺動脈高血圧症用薬などの承認を支持
- エプキンリが濾胞性リンパ腫に適応拡大
- PDE3/4阻害剤がCOPDに承認
- マル秘情報?ピアスカイが米国でも承認された
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【新薬開発】
JNJも抗新生児FcR抗体を筋無力症に承認申請へ
(2024年6月28日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、2月にJNJ-80202135(nipocalimab)が第3相全身性重症筋無力症(gMG)試験で主目的を達成したと発表したが、データをEAN(欧州神経学会)で明らかにした。年内に承認申請する考え。類薬ではアルジェニクスのVyvgart(efgartigimod alfa-fcab)が抗アセチルコリン受容体抗体を持つgMG用薬として米日欧で承認されている。
20年にMomenta Pharmaceuticalsを企業価値ベース65億ドルで買収して入手した、胎児性Fc受容体を標的とする抗体医薬。第3相では標準療法に十分応答しない患者に15mg/kg(但し初回は30mg/kg)を2週毎点滴静注する効果を偽薬と比較した。主評価項目は第22~24週におけるMG-ADLのベースライン比変化。試験薬群は4.70点低下(改善)し、偽薬群の3.25点低下と有意な差があった。副次的評価項目のMG-ADL奏効率(2点以上低下した患者の比率)の解析も成功したとのことだが、プレスリリースには数値が記されていない。
Vyvgartは第3相で主評価項目のMG-ADL奏効率が67%となり偽薬群の30%を有意に上回った。MG-ADL値の増減の解析は副次的評価項目にリストアップされていない。nipocalimabは偽薬群でも平均値が2点以上改善しているので奏効率がVyvgartの試験の偽薬群よりかなり高いだろうから、二本の試験の成績は比較可能ではないかもしれない。JNJの試験が始まった半年から1年後にVyvgartが米欧日で承認されたので、その後の組入れは症状が比較的軽い患者が中心になったかもしれない。
また、JNJの試験の解析対象にはアセチルコリン受容体だけでなくMuSKやLRP4に対する抗体を持つ患者も含まれていることが影響しているのかもしれない。
リンク: JNJのプレスリリース
GM-CSFの自己免疫性肺胞蛋白症試験が成功
(2024年6月26日発表)
米国ペンシルバニア州の新薬開発会社、Savara(Nasdaq:SVRA)は、molgramostimの第3相IMPALA-2試験で主目的を達成したと発表した。来年上期に承認申請を完了する考え。
米日韓豪欧の施設で成人の自己免疫性肺胞蛋白症(aPAP)患者に300mcgを一日一回吸入させ、第24週のヘモグロビン調整DLCO(%予測値)を比較したところ、偽薬調整後で6.00となり、統計的に有意だった。副次的評価項目である48週時点の解析(6.90)や24週のSGRQ(聖ジョージ呼吸器質問票、-6.59)も成功したが、48週トレッドミル・テストはトレンドに留まった。有害事象発現率はCOVID-19が22%対10%で高かった一方、肺胞蛋白症は5%対14%で低く、深刻有害事象は17%対24%で低かったが、治療関連有害事象は25%対19%で高かった。
自己免疫性aPAPは、GM-CSF(顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子)に対する自己抗体の過剰な産生が原因となり、肺胞において肺サーファクタントの除去を担うマクロファージが十分に機能せず、呼吸不全などを齎す難病。日本では3月にノーベルファーマのrhGM-CSF製剤、サルグマリン(サルグラモスチム吸入用)が承認されたところだ。一日二回吸入した医師主導第3相でA-aDO2(肺胞・動脈勾配)が4.5mmHg低下し、偽薬群の0.17mmHg上昇を有意に上回った。
molgramostimもrhGM-CSF。第2/3相IMPALA試験は主評価項目の第24週A-aDO2が12.1mmHg低下したが偽薬群の8.8mmHg低下と大差なくフェールした。しかし、探索的解析でDLCO %予測値が11.6と偽薬群の3.9を上回り、SGRQは12.3点改善(偽薬群は4.7点改善)、6分歩行テストは39.6メートル改善(同6メートル改善)と良さそうな数字が出ていた。
リンク: 同社のプレスリリース
アムヴトラのATTR心筋症試験が成功
(2024年6月24日発表)
Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)は、Amvuttra(vutrisiran)の第3相トランスサイレチン型家族性心アミロイドーシス(ATTR-CM)試験のポジティブなトップラインを公表した。8月30日からロンドンで開催されるESC(欧州心臓学会)で発表すると共に、7月以降に米国などで適応拡大申請する考え。米国では優先審査バウチャを使って早期承認獲得を狙う。
Amvuttraはトランスサイレチンの遺伝子発現を妨げるRNA介入薬。22年に米欧日でトランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー用薬として承認された。先に承認された同社のOnpattro(patisiran)より肝選択性が高く、3週毎点滴静注ではなく3ヶ月毎皮下注で足りる。
今回のHELIOS-B試験は遺伝性または野生ATTR型の患者を組入れて33ヶ月以上治療・追跡し、全死亡または難治心血管イベントの発生リスクを偽薬群と比較した。全654人の解析ではハザードレシオ0.718、p=0.0118、共同主評価項目であるモノセラピー・サブグループ395人でも0.672。p=0.0162と、高度ではないが統計的に有意な抑制効果があった。承認薬であるファイザーのtafamidisを服用している患者のサブグループでも整合的な結果になった模様だ。
副次的評価項目の6メートル歩行テストやKCCQ(カンザスシティ心筋症質問票)などの解析も成功。オープンレーベル期間6ヶ月も含む最大42ヶ月追跡した全死亡の解析も、全被験者のハザードレシオ0.645、p<0.025、モノセラピー・サブグループでは各0.655、p<0.05と好ましい数値が出ている由。深刻有害事象や有害事象治験離脱率は偽薬群と大差なかった。
尚、OnpattroのAPOLLO-B試験は主目的の6メートル歩行テストが偽薬群を有意に上回ったが、差がそれほど大きくなかったことや、全死亡/全入院/緊急心不全のハザードレシオが0.88に留まり、組入れが今回の試験の半分と少なかったこともありp=0.56と今一つだったせいか、FDAは承認しなかった。
リンク: 同社のプレスリリース
イミフィンジの第3相が一勝一敗
(2024年6月25日発表)
アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第3相試験二本に関するアップデートを行った。どちらも術前術後アジュバント試験で、膀胱癌試験は成功したが非小細胞性肺癌試験はなぜかフェールした。
第3相NIAGARA試験は筋層浸潤膀胱癌1063人を組入れて、全摘手術前にgemcitabineとcisplatinによるネオアジュバント療法を施行する群と、更に術前術後にImfinziも投与する群のEFS(無イベント生存期間)をオープン・レーベルで比較した。統計的に有意且つ臨床的に意味のある延長を達成した。副次的評価項目である全生存期間の延長も実現した。
治験登録には共同主評価項目としてpCR(病理学的完全反応)も上がっているが、プレスリリースには言及されていないので、プロトコル変更があったのかもしれない。
抗PD-1抗体のOpdivoやKeytrudaも、術後に投与した試験が成功し前者は既に承認されている。術前も投与することで便益がどの程度拡大するのか知りたいところだが、答えはなかなか出ないだろう。
フェールした第3相ADJUVANT BR.31試験はカナダの共同治験グループCCTGがスポンサーとなって欧米で実施した、ステージIBからIIIAの非小細胞性肺癌の完全切除後アジュバント療法試験。主評価項目であるPD-L1高発現(≧25%)サブグループにおけるDFS(無病生存期間)は偽薬比有意に伸びなかった。類似した試験である、ステージIIAからIIIBまでの切除可能非小細胞性肺癌における術前(化学療法併用)・術後(単剤)療法を検討した第3相AEGEAN試験は、共同主評価項目のpCRが17.2%と偽薬群の4.3%を有意に上回り、EFS(無イベント生存期間)はハザードレシオ0.68、p=0.004だった。
FDAは7月25日にODAC(腫瘍学薬諮問委員会)を招集し、ImfinziのAEGEAN試験と推測される試験データについて意見を求める予定。今回の件と何か関係があるのかもしれない。
リンク: 同社のプレスリリース(NIAGARA試験)
リンク: 同(BR.31試験)
ノボ、MRAの第3相を中止
(2024年6月26日発表)
ノボ ノルディスクは第3世代非ステロイド系鉱質コルチコイド受容体拮抗剤(MRA)、ocedurenoneの第3相CLARION-CKDが中間解析で無益認定されたことを明らかにした。臨床試験を中止すると共に、第2四半期決算で57億DKK(8.1億米ドル)の減損損失を計上する考え。
後期第2相のBLOCKCKD試験と同様に、2種類以上の降圧剤を服用しても管理不良な高血圧を伴う進行慢性腎疾患の患者を組入れて12週間治療し、最大血圧の変化を偽薬と比較したもの。後期第2相では0.5mg群(一日一回)が偽薬調整後で10.2mmHg低下、0.25mg群(同)は7.0mmHg低下と良好な成績を挙げていた。ノボは昨年10月にシンガポールのKBP Biosciencesから13億米ドルで資産買収したばかり。
リンク: ノボのプレスリリース
【承認申請】
Milestone社、Ca拮抗剤をPSVTに承認申請
(2024年5月29日発表)
カナダのMilestone Pharmaceuticals(Nasdaq:MIST)は米国でCardamyst(etripamil)を発作性上室性頻拍(PSVT)の洞調律薬として承認申請し受理された。審査期限は来年3月26日。
自己点鼻用の短期作用性カルシム・チャネル・ブロッカー。10分経っても十分な効果が得られない場合はもう一回点鼻する。臨床試験で30分洞調律達成率が64%と偽薬群の31%を有意に上回った。23年に承認申請したがデータ不備を指摘され再申請した。
高心室心拍数を伴う心房細動でも第3相試験を実施する考え。
リンク: 同社のプレスリリース
レキサルティをPTSDに承認申請
(2024年6月25日発表)
大塚製薬と開発販売パートナーのルンドベックは、Rexulti(brexpiprazole)をsertralineと併用で成人のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療にあてる適応拡大をFDAに申請し受理された。審査期限は来年2月8日。
第3相は二本中一本がフェールしたものの第2相と合わせて二勝一敗となった。主評価項目のCAPS-5(Clinician-Administered PTSD Scale)総スコアは併用群は三本とも16~19点低下したが、成功した二本ではsertraline・偽薬併用群が11~13点の低下に留まったのに対して、フェールした072試験は17.6点と比較的大きく改善し、有意差が出なかった。
第2相では偽薬群も設定されたが、sertraline・偽薬併用群の効果は偽薬・偽薬併用群と大差なかった。sertralineは選択的セロトニン再取込阻害剤で、25年前に米国でPTSD治療薬として承認された実薬なのだが、臨床試験で真価を発揮できるとは限らないのが精神疾患用薬である。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
新薬三品が製造問題で審査完了に
(2024年6月25~28日発表)
米国で新薬を承認申請していた3社が生産関連の理由で相次いで審査完了通知を受領した。うち2件は、FDAが両者とは別の会社の生産施設を査察した時に改善すべき点を発見したことが発端。重大な事案であった場合、FDAは、解消されるまでの間、その施設で生産される物質を用いた薬の新薬承認を見送ることができる。
まず、アッヴィは、foslevodopaとfoscarbidopaの24時間持続皮下注入用製剤を進行パーキンソン病の治療薬として開発し、22年に日本と欧州で承認を取得したが、米国は二回目の審査完了通知を受領した。昨年3月の通知ではポンプに関する追加情報を求められたが、今回は、同薬や同社の医薬品とは関わりのない件でFDAが第3者施設を査察した時の指摘事項が原因で道連れになった模様だ。
リンク: アッヴィのプレスリリース(6月25日付)
次に、第一三共はMSDと提携して開発した抗her3抗体薬物複合体、U3-1402(patritumab deruxtecan)をEGFR変異陽性局所進行/転移非小細胞性肺癌の3次治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。臨床成績に関する指摘は記載されていない模様で、アッヴィと同様に、第3者施設における生産問題が原因のようだ。
リンク: 両社のプレスリリース(6月27日付、和文、pdfファイル)
いわゆる生産問題とは関わりがなさそうだが、Rocket Pharmaceuticals(Nasdaq:RCKT)もKresladi(marnetegragene autotemcel)の審査完了通知を受領した。超希少だが深刻な遺伝子疾患である重度LAD-1(白血球接着不全症1型)のex vivo遺伝子療法で、他家造血幹細胞移植を受けない限り2歳まで生存できるのは2~4割という難病だが、この治療を受けた9人は18~42ヶ月追跡時点で全員が生存している。審査期限は3月だったがCMC(化学、製造、管理)に関わる理由で3ヶ月延期され、今回、再びCMCに関する限定的な追加情報を請求された。
FDAは生産施設の査察を担うべき人材が不足しているとも言われており、Rocket社はそのしわ寄せを受けているのかもしれない。
リンク: Rocket Pharmaceuticalsのプレスリリース(6月28日付)
CDC、RSVワクチンの推奨トーンを変更
(2024年6月26日発表)
CDC(米連邦疾病管理予防センター)は、ACIP(ワクチン接種諮問委員会)の討議を踏まえて、RSVワクチンの接種勧奨を若干変更した。昨年6月には、GSKとファイザーの製品が承認されたことを受けて、RSV感染時の重症化リスクが高い人を対象にshared decision-making(医療従事者と共に便益と危険を十分に検討した上で接種の当否を個々人が判断すること)を推奨したが、モヤモヤしたものを感じたのは私だけではなかった模様だ。
前回、ACIPやCDCが明確な接種勧奨を行わなかった一因は、ごく稀にだがギラン・バレー症候群(GBS)が発生したため。他の炎症性神経学的事象も含めて、症例数が少ないためワクチンのせいなのか、偶々なのか、判然としない。但し、GBSに罹患する人の増加よりも、RSV感染症で入院する人の減少の方がはるかに大きい。
今回、60~74歳のリスク因子を持つ人と75歳以上の全員に接種を推奨したが、便益と危険に関する認識が変わったわけではなく、shared decision-makingに対する批判や苦言が多かったことが原動力のようだ。60~74歳のリスク因子を持たない人が接種することは推奨されなくなった。
尚、GSKのワクチンは50~59歳に対象拡大が承認されたが、ACIPは、判断に必要な情報が足りないとして推奨も非推奨もしなかった(免疫原性試験に基づく承認)。また、接種の翌年も予防効果が確認されていることから、昨年接種した人は勧奨対象外とした。
リンク: CDCのプレスリリース
リンク: 最近のACIPにおける推奨(CDCD
CHMP、画期的肺動脈高血圧症用薬などの承認を支持
(2024年6月28日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
MSDのWinrevair(sotatercept-csrk)はactivinの受容体の細胞外部位とIgG1のFc領域の融合蛋白で、血管の増殖を推進/抑制するシグナルのバランスを調停する。成人の肺動脈高血圧症でWHO機能クラスがIIまたはIII(通常またはそれ以下の身体活動で呼吸困難などが発症)の患者の運動能力を改善する。米国では3月に承認。
リンク: EMAのプレスリリース
JNJグループのJanssen-Cilag InternationalのBalversa(erdafitinib)は汎FGFR阻害剤。FGFR3に同薬に感受する遺伝子変異を持つ成人の切除不能/転移尿路上皮腫で、切除不能/転移後にPD-(L1)1阻害剤を含む一次以上の治療歴を持つ患者に用いる。臨床試験で全生存期間が化学療法薬を有意に上回った。PD-(L)1阻害剤歴を持たない患者を組入れたコフォートでは全生存期間がKeytruda(pembrolizumab)群を下回った。米国では19年に加速承認、今年1月に本承認に切り替わった。
リンク: EMAのプレスリリース
米国カリフォルニア州のARS Pharmaceuticals(Nasdaq:SPRY)が申請したEURneffyはエピネフィリンの点鼻スプレー。昆虫、食物、医薬品などによるアナフィラキシーの救急治療に用いる。現在は注射薬が用いられている。米国でもneffyというブランド名で承認申請しており、審査期限は10月2日。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ARS社のプレスリリース
モデルナのmResviaはRSVのmRNAワクチン。GSKやファイザーのRSVワクチンと同様にRSVの融合前F糖蛋白を雛形にしているが、それ自体ではなくmRNAを投与してin vitroで発現させる。5月承認の米国と同様に60歳以上が対象。日本でも申請中。
リンク: EMAのプレスリリース
Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)のOrdspono(odronextamab)は抗CD20xCD3二重特異性抗体。2次以上の治療歴を持つ難治/再発性の濾胞性リンパ腫やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に単剤投与する用途用法で条件付き承認が支持された。米国でも申請中だが、市販後薬効確認試験のデザインを見直した関係で仮説検証部分の組入れが進んでいないため、審査完了通知を受領した。
リンク: EMAのプレスリリース
ロシュのPiasky(crovalimab)はグループの中外製薬が創製した抗C5リサイクリング抗体。成人と12歳以上体重40kg以上の小児の発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬。抗C5抗体による治療を初めて受ける患者や、治療により安定した状態にある患者が適応になる。
リンク: EMAのプレスリリース
イーライリリーのTauvid(flortaucipir (18F))はタウNFT(神経原繊維変化)のPET診断用放射性核種。認知機能が低下しアルツハイマー病が疑われる患者の診断に用いる。米国では20年に承認。
リンク: EMAのプレスリリース
以下の適応拡大も支持された。
- アステラス製薬のBetmiga(mirabegron)・・・過活動膀胱治療薬に3~17歳の神経因性排尿筋過活動の適応を追加。内服懸濁液用顆粒も。米国(Myrbetriq名)では21年に承認。
- アストラゼネカのBeyfortus(nirsevimab-alip)・・・重篤リスクを持つ24ヶ月未満の幼児の第2シーズンにおけるRSV感染予防を追加。米日では初承認の時点から、重篤リスク者の第1シーズンと第2シーズンに用いることが承認されていた。
- アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)とLynparza(olaparib)・・・全身性治療が候補になる原発性進行/難治内膜腫の一次治療に、dMMR(ミスマッチ修復不全)型の場合はcarboplatinとpaclitaxelによる治療にImfinziを追加し、終了後は維持療法を施行。pMMR(ミスマッチ修復能保持)型の場合は更に維持療法期にLynparzaも併用。米国はdMMR型にImfinzi追加しか承認しなかった。
- pharmaand GmbHのPegasys(peginterferon alfa-2a)・・・真正赤血球増多症と原発性血小板減少症を追加。pharmaand社は21年にロシュから日本と中国以外の事業を取得した。
- アッヴィ/ジェンマブのTepkinly(epcoritamab)・・・成人の難治/再発濾胞性リンパ腫の3次治療を追加。米では今月承認、日本でも申請中。
- ロシュのVabysmo(faricimab-svoa)・・・網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫における視力障害の治療を追加。米日でも適応拡大済。
一方、否定的意見となったのは、まず、Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)のC3補体阻害剤Syfovre(pegcetacoplan)。加齢性黄斑変性による地図状萎縮の治療薬として承認申請し、米国では21年に承認されたが、EUでは1月に続き今回も否決された。日常生活機能という臨床的な便益が見られず、他の種類の加齢性黄斑変性を発症するリスクがあるとの評価を受けた。
リンク: EMAのプレスリリース
フランスのAB Scienceのmasitinib mesilateは、今回はALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認申請されたが、臨床試験で便益が見られなかったことや治験デザイン、実施状況などに関する疑問も生じたことから、否定的意見となった。masitinibは同社が08年に犬の肥満細胞腫治療薬Masivetとして承認を取得したが、医薬品は13年に消化管間質性腫瘍用薬Masicanが、14年には切除不能進行膵癌用薬Masivieraが、17年には全身性肥満細胞腫用薬Masiproが、否定的意見を受けた。
リンク: EMAのプレスリリース
PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)のデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬Translarna(ataluren)はCHMPが1月に条件付き承認の更新を見送るべきという二回目の勧告を行ったが、別の案件に関するEU裁判所の決定の余波で、欧州委員会が評価のやり直しを要求した。しかし、結果は同じだった。
リンク: EMAのプレスリリース
今月のCHMPでは同じくしわ寄せを食ったと目されるエーザイ/バイオジェンのアルツハイマー病薬Leqembi(lecanemab-irmb)に関するプレゼンテーションもアジェンダに上がっていたが、順調に進捗しただろうか?
英国のAdvanz PharmaのOcaliva(obeticholic acid)も条件付き承認の取消しが勧告された。原発性胆汁性肝硬変治療薬として16年に承認されたが、臨床的便益が確認されなかった。尚、承認時のライセンスホルダーであったIntercept Pharmaceuticalsは昨年、イタリアのAlfasigmaに買収された。Advanz社はOcalivaの米国外の事業権を持っている。
リンク: EMAのプレスリリース
【承認】
エプキンリが濾胞性リンパ腫に適応拡大
(2024年6月27日発表)
アッヴィはジェンマブ社と共同開発販売している抗CD30xCD20二重特異性抗体、Epkinly(epcoritamab-bysp)の適応拡大がFDAに加速承認されたと発表した。23年に米欧日で難治/再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)などの3次治療薬として承認されたが、難治/再発濾胞性リンパ腫の3次治療にも使えるようになった。欧日でも一部変更申請中。
最初の適応症では当初は週次で0.16mg、0.8mg、48mgと用量漸増し、初めて48mgを投与する時は爾後に24時間入院させ安全性を確認する必要があるが、今回の適応は0.16mg、0.8mg、3mg、48mgと段階が増えたせいか、入院義務が課されていない。
リンク: 同社のプレスリリース
PDE3/4阻害剤がCOPDに承認
(2024年6月26日発表)
英国のVerona Pharma(Nasdaq:VRNA)はFDAがOhtuvayre(ensifentrine)を成人のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の維持療法薬として承認したと発表した。PDE3/4阻害剤で、ジェット式(コンプレッサー式)ネブライザを用いて一日二回、吸入する。第3相試験で、第12週の一秒量(吸入後12時間の曲線下面積ベース)が一本では48mL改善(偽薬群は46mL悪化)、もう一本では61mL改善(同26mL悪化)した。併用薬の限定は課されていないが、これらの試験の併用薬を見ると、4~5割の患者はLABA(長期作用性ベータ作用剤)またはLAMA(長期作用性ムスカリン受容体拮抗剤)だけ、吸入コルチコステロイド及びLABAの併用は1~2割となっている。COPDのステップ・セラピーにおいては、最初の治療薬に十分応答しない患者に追加投与する薬というイメージか。
リンク: 同社のプレスリリース
マル秘情報?ピアスカイが米国でも承認された
(2024年6月20日発表)
ロシュの米国子会社であるジェネンテックは、FDAがPiasky(crovalimab-akkz)を発作性夜間ヘモグロビン尿症の治療薬として承認したと発表しなかった。
ロシュ・グループの中外製薬が創製し3月に日本で世界初承認された抗C5リサイクリング抗体。成人と13歳以上且つ体重40kg以上の小児に、初回は静注、2回目以降は皮下注で投与する。維持療法期は4週に一度の投与で足りる。アストラゼネカ・グループのアレクシオン・ファーマシューティカルの抗C5抗体Soliris(eculizumab)やUltomiris(ravulizumab-cwvz)が既に普及しているが、Piaskyは未治療患者にも治療を受けている患者のスイッチにも承認された。
先行二品と同様に、髄膜炎菌性髄膜炎のリスクが枠付き警告・REMS(リスク評価緩和戦略)の対象となった。警告・注意事項では、先行二品から、または先行二品に、スイッチする場合のIII型過敏反応(薬物・標的・薬物複合体の形成による免疫複合体反応)が記載された。このリスクよりも治療を遅らせるリスクのほうが高い場合を除き、各剤の半減期の5.5倍の期間を挟んでからスイッチすることが望ましい(Piaskyの平均推定終末相半減期は53日)。
どういう訳か、ロシュやジェネンテック、中外のホームページを見てもPiasky承認に関するプレスリリースは見つからず、メディア報道も見当たらないが、ジェネンテックのウェブサイトにパッケージ・インサートが掲示されており、FDAの2024年新薬承認一覧にも収載されている。また、EUの肯定的意見に関する6月28日付プレスリリースには米日中で承認されていることが付記されている。。
リンク: 2024年の新薬承認(FDA)
リンク: パッケージ・インサート(ジェネンテックのサイト、pdfファイル)
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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24年7月推 | JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw、osimertinib歴のあるex19del/L858R NSCLCに適応追加) |
24年7月推 | ノボ ノルディスクのNN1436(insulin icodec、週一回投与用インスリン) |
24年7月 | BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、未治療食道扁平上皮腫追加) |
24/7/7/ | Arcutis BiotherapeuticsのZoryve(roflumilast、ADの適応追加) |
24/7/19 | Phathom PharmaceuticalsのVoquezna(vonoprazan、症候性非びらん性胃食道逆流症を追加) |
24年8月推 | Sun Pharmaceuticalのdeuruxolitinib(円形脱毛症) |
24年8月推 | ガルデルマのnemolizumab(結節性掻痒とアトピー性皮膚炎) |
24年8月推 | ノバルティスのKisqali(ribociclib、乳癌摘出術後アジュバント) |
24年8月推 | JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw)とlazertinib(ex19del/L858R NSCLC) |
24/8/4 | Adaptimmuneのafamitresgene autolecel(滑膜肉腫) |
24/8/10 | Humacyteの人無細胞性血管(緊急動脈再建術) |
24/8/11 | Lykos Therapeuticsのmidomafetamine(PTSD)・・・旧社名MAPS |
24/8/13 | Citius Pharmaceuticalsのdenileukin diftitox(再発皮膚T細胞リンパ腫) |
24/8/14 | CymaBay/ギリアドのseladelpar(原発性胆管炎) |
24/8/14 | アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症) |
24/8/20 | セルヴィエのvorasidenib(グリオーマ) |
24/8/22 | Regeneron PharmaceuticalsのREGN5458(linvoseltamab、多発骨髄腫) |
24/8/23 | GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、内膜腫フロントライン) |
24/8/28 | Incyteのaxatilimab(慢性GvHD3L) |
諮問委員会 | |
24/7/25 | ODAC:アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、非小細胞性肺癌術前術後補助療法の追加) |
今週は以上です。
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