2024年6月22日

第1060回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • シュンレンカの感染予防試験が成功 
  • 向精神薬の鬱病試験が二本目も成功 
  • カルケンス、MCLのPFSを1年以上延長 
  • ロシュ、抗CD20xCD3二重特異性抗体のDLBCL2次治療試験が成功 
  • アストラゼネカ、AKT阻害剤の第3相がフェール 
  • 武田、CH24H阻害剤の第3相二本のトップラインを発表 
  • Marinus社、第3相難治癲癇重積症試験のアップデート 
  • SGLT阻害剤を一型糖尿病に再申請 
  • JNJ、EGFR・MET二重特異性抗体の皮下注用製剤を承認申請 
  • KRAS G12C阻害剤が一部の大腸癌に適応拡大 
  • 皮下注用エフガルチギモド アルファがCIDPに適応拡大 
  • DMD遺伝子療法の適応範囲が拡大 
  • ソフピロニウムが米国でも承認 
  • スキリージが潰瘍性大腸炎に適応拡大 
  • キイトルーダとイミフィンジが同日に内膜腫一次治療に承認 
  • MSDの成人用21価肺炎球菌ワクチンが承認 
  • ビーリンサイトの地固め療法が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


シュンレンカの感染予防試験が成功
(2024年6月20日発表)

ギリアド・サイエンシズはSunlenca(lenacapavir)のHIV/AIDS曝露前予防(PrEP)試験が中間解析で主目的を達成したと発表した。独立データ監視委員会が盲検解除を勧告した。もう一本が来年初めまでに開票するのを待って適応拡大申請する考え。尚、Descovy(emtricitabine、tenofovir alafenamide fumarate)群は有意差が見られなかった。

Sunlencaは6ヶ月毎皮下注用の長期作用性カプシド阻害剤で、22~23年に欧米日で多剤抵抗性HIV/AIDS用薬として承認された。今回のPURPOSE 1試験は南アとウガンダの施設で16~25歳のシスジェンダー(出生時の診断と当人の自覚が一致)女性5300人超を組入れて、Sunlenca群とDescovy群のHIV/AIDS感染リスクをTruvada(emtricitabine、tenofovir disoproxil fumarate)群やバックグラウンドHIV感染データ(bHIV)と比較した。Sunlenca群2134人のうち感染者はゼロで、bHIV群の100人年当り2.41、Truvada群の1.69を有意に下回った。Descovy群2136人は2.02で、bHIV群やTruvada群と有意な差はなかった。

Truvadaは米国の場合で12年にPrEPに適応拡大した。Descovyは臨床試験で予防効果がTruvada比非劣性であることが示され、19年に承認されたが、子宮組織浸透性の理由から、適応にならない人もいる。この二剤は毎日服用する必要があり、今回、効果が見劣りしたのは、アドヒアランスの差が一因かもしれない。

もう一本のPURPOSE 2試験は、米州や南ア、タイの施設で男とセックスするシスジェンダー男性や、出生診断時男性をパートナーとするトランスジェンダーの男女、そしてノンバイナリー(男とも女とも自覚する)における予防効果を検討している。

長期作用性PrEP治療薬では、ヴィーヴヘルスケアのインテグラーゼ阻害剤Apretude(cabotegravi)が21~23年に米欧で承認されている。最初の二回は毎月、その後は2ヶ月に一回、筋注する。

リンク: ギリアドのプレスリリース


向精神薬の鬱病試験が二本目も成功
(2024年6月18日発表)

Intra-Cellular Therapies(Nasdaq:ITCI)は、Caplyta(lumateperone)の二本目の第3相鬱病アジャンクト試験も主目的を達成したと発表した。今年下期に適応拡大申請する考え。

SSRI/SNRIによるモノセラピーに十分応答しない患者を組入れて追加投与した。501試験では42mgを一日一回、6週間投与したところ、MADRS(Montgomery-Åsberg Depression Rating Scale)総スコアがベースライン値の30点から14.7点低下、偽薬群の9.8点低下、最小二乗差は-4.9、p<0.0001、コーエンのイフェクト・サイズ(ES)は0.61だった。今回の502試験でもベースライン値の31から14.7点低下、偽薬群は10.2点低下、最小二乗差-4.5、p<0.0001、ESは0.56と、よく似た結果になった

5-HT2A受容体とドパミンD2受容体のアンタゴニスト。05年にブリストル マイヤーズ スクイブからライセンス、統合失調症の第3相が二勝一敗となり19年に米国で承認された。双極障害I型、II型の鬱症状を治療した第3相も二勝一敗となり21年に適応拡大が認められた。鬱病の第3相はフェールが多く、二勝一敗でも申請できるよう三本実施するのがよくあるパターンだが、別の意味で三度目の正直ということか。

リンク: 同社のプレスリリース


カルケンス、MCLのPFSを1年以上延長
(2024年6月16日発表)

アストラゼネカは5月にBTK阻害剤Calquence(acalabrutinib)の第3相ECHO試験の主目的達成を明らかにしたが、データをEHA(欧州血液学会)で発表した。65歳以上の未治療MCL(マントル細胞腫)におけるbendamustineとrituximabの併用レジメンに追加する便益を検討したところ、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.73、p=0.016、メジアン値は66.4ヶ月と偽薬追加群の49.6ヶ月を大きく上回った。副次的評価項目である全生存期間は未成熟だが、ハザードレシオ0.86、p=0.27と、正しい方向を向いている。

COVID-19関連死亡例を除外した解析では更に良好な数値が出ているようだ。裏返せばCOVID関連死が多かったのではないかと推測されるが、実際、G3以上の感染症有害事象が偽薬追加群より多く、致死的COVID-19発生率も9.4%対6.7%で高かった。

リンク: 同社のプレスリリース


ロシュ、抗CD20xCD3二重特異性抗体のDLBCL2次治療試験が成功
(2024年6月15日発表)

ロシュは4月にColumvi(glofitamab-gxbm)の第3相STARGLO試験の主目的達成を明らかにしたが、データをEHA(欧州血液学会)でに発表した。

年齢が70歳以上などの理由で自家造血幹細胞移植に適さない、1次以上の治療歴のある難治/再発DLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)を組入れて、サイトカイン放出症候群(CRS)抑制のため抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab)でプリトリートした上で、gemcitabine及びoxaliplatinと併用で3週毎(但しColumviの第1サイクルは週次漸増)に8サイクル投与し、Columviは更に4サイクル投与するレジメンの便益を、gemcitabine、oxaliplatin、及び抗CD20抗体rituximabを8サイクル投与するレジメンと比較したもの。

主評価項目である全生存期間のハザードレシオは0.59、p=0.011、メジアン生存期間は、各群、未達と9ヶ月だった。更に11ヶ月追跡した24年2月時点の解析ではハザードレシオ0.62、メジアン生存期間は25.5ヶ月と12.9ヶ月だった。地域による偏りが見られ、組入れが少なかった欧州ではハザードレシオ1.09 (95%信頼区間0.54-2.18)、北米でもは2.62(同0.56-12.38)と今一つ。それ以外の地域の0.41(同0.27-0.64)が牽引した。

深刻有害事象の発生率は各群54.4%と17.0%、有害事象による死亡は8.3%と4.5%だった。重度CRSはG3が2.3%の患者で発生しただけだった。

ColumviはCD20とCD3に結合する二重特異性抗体。23年に米欧で難治/再発DLBCLの3次治療に単剤投与することが加速/条件付き承認されている。ロシュは適応拡大申請すると共に、3次治療の本承認切替えを図る。

リンク: ロシュのプレスリリース
リンク: AbramsonらのEHA抄録(LB3438)


アストラゼネカ、AKT阻害剤の第3相がフェール
(2024年6月18日発表)

アストラゼネカはTruqap(capivasertib)の第3相CAPItello-290試験についてアップデートし、共同主評価項目の何れも達成できなかったことを明らかにした。局所進行/転移トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療として、paclitaxelに追加投与する便益を検討したが、PIK3CA、AKT1、PTENの何れかに変異を持つサブグループでも、全体でも、paclitaxelを有意に上回る延命効果は見られなかった。データは後日発表予定。

経口汎ATK阻害剤で23~24年に米日欧で内分泌療法歴がありPIK3CA、ATK1、またはPTENに変異を持つホルモン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌に承認された。類似用途の内分泌療法薬併用や一部の前立腺癌でも第3相試験が進行中。

リンク: 同社のプレスリリース


武田、CH24H阻害剤の第3相二本のトップラインを発表
(2024年6月17日発表)

武田薬品はTAK-935(soticlestat)の二本の第3相試験のトップラインデータを発表した。どちらも主目的を達成しなかった。データは未発表。副次的評価項目やサブグループ分析に着目して、承認審査機関と今後の方針を相談する考え。

Ovid Therapeutics(Nasdaq:OVID)からライセンスした経口コレステロール24ヒドロキシラーゼ(CH24H)阻害剤。脳内でコレステロールが24-ヒドロキシコレステロールに転換されるのを妨げることにより、グルタミン酸作動性シグナル伝達経路の過度な活性化を抑制する、斬新な作用機序を持つ。

一本では難治性ドラベ症候群に追加投与して痙攣発作頻度の抑制を図ったが、偽薬追加群比でp=0.06だった。幾つかの副次的評価項目では臨床的に意味のある群間差が見られた模様。

もう一本はレノックス・ガストー症候群に追加投与したがフェールした。共同主評価項目は、全期間と、滴定終了後の維持療法期における、MMD(major motor drop)という斬新な評価尺度。レノックス・ガストー症候群の試験では転倒発作を主評価項目とすることが多いが、判断の難しいケースもあるため、転倒または転倒に至りそうな運動発作のうち、頭、顔、腕だけにおけるものを除外した。

リンク: 武田のプレスリリース(国内向けプレスリリースには含まれていないが日本語)
リンク: Dlugosらの2021年AES(米国癲癇学会)抄録・・・major motor dropに関する説明あり


Marinus社、第3相難治癲癇重積症試験のアップデート
(2024年6月17日発表)

Marinus Pharmaceuticals(Nasdaq:MRNS)は4月に静注用ganaxoloneの第3相RAISE試験の中間解析で目的達成できなかったことを明らかにしたが、ヘッドラインを公表した。開発資金面の制約もあり、少なくとも単独での開発は中止されるのではないか。

ganaxoloneは中枢神経選択的GABA Aポジティブアロステリックモジュレーター。22~23年に経口液がZtalmy名でCDKL5(cyclin-dependent kinase-like 5)欠乏症用薬として米欧で承認された。今回は難治癲癇重積症の患者を組入れて48時間治療する便益を検討したところ、中間解析で30分寛解達成率が80%と偽薬群の13%を大きく上回ったが、共同主評価項目である36時間点滴鎮静剤不使用率は63%対51%でフェールした。

本試験は当初は168人を組入れる計画だったが100人で繰上げ完了する考え。今夏に解析結果が判明する見込みで、その後に今後の方針を決定する考え。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


SGLT阻害剤を一型糖尿病に再申請
(2024年6月21日発表)

米国テキサス州の新興製薬会社Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)は、sotagliflozinを慢性腎疾患を合併したインスリン治療を受けている一型糖尿病患者に追加投与する承認申請を行った。18年に当時のライセンシーだったサノフィが一型糖尿病の血糖治療薬として承認申請したが、糖尿病性ケトアシドーシスのリスクが高まることなどから審査完了通知を受領、Lexiconは権利再取得後に不服申立てなどを行い、5年を経て、慢性腎疾患併発に限定して再申請したもの。

同薬はSGLT1/2阻害剤。腎臓近位尿細管でグルコースが再吸収されるのを妨げ尿排出を促すSGLT2阻害剤は、既に様々な製品が承認されているせいか、同社は一型糖尿病をリード・インディケーションとしたが、最初のチャレンジは果たせず、23年に慢性腎疾患を合併する二型糖尿病で心不全または心血管リスク因子を持つ患者の心血管アウトカム改善薬Inpefaとして米国で承認された。欧州では19年に一型糖尿病用薬として承認されたが22年に承認保有者が返上した。

リンク: 同社のプレスリリース


JNJ、皮下注用トレムフィアをクローン病に承認申請
(2024年6月20日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、抗IL-23p19サブユニット抗体Tremfya(guselkumab)を米国でも成人の中重度活性期クローン病に適応拡大申請したと発表した。新開発の皮下注用製剤の寛解導入試験で奏効率が偽薬群を上回り、維持療法試験では偽薬群だけでなく同社の抗IL-12/23p40抗体Stelara(ustekinumab)群も上回った。

Tremfyaは中重度活性期潰瘍性大腸炎にも開発されており、3~4月に米日で適応拡大申請された。5月にはEUでもこの二疾患に適応拡大申請された。

リンク: 同社のプレスリリース


JNJ、EGFR・MET二重特異性抗体の皮下注用製剤を承認申請
(2024年6月17日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、EGFRとMETに結合する二重特異性抗体Rybrevant(amivantamab-vmjw)の皮下注用固定用量合剤を米国で承認申請し受理されたと発表した。欧州でも5月に申請済み。遺伝子組換え型ヒト・ヒアルロニダーゼを用いて皮下組織における吸収を向上する、最近よく見かける技術を用いた製品だ。

Rybrevantは投与関連反応を抑制するため治療開始時には4~8時間の点滴静注を2日連続する必要があり、その後も1~3週毎に数時間かかる。皮下注用なら5分間で足りる。EGFRにエクソン19欠損またはL858R置換を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌にEGFR阻害剤lazertinibと併用した試験でORR(客観的反応率)や薬物動態がRybrevantと非劣性だった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


KRAS G12C阻害剤が一部の大腸癌に適応拡大
(2024年6月21日発表)

FDAは、ブリストル マイヤーズ スクイブの子会社であるMirati Therapeuticsの経口KRAS G12C阻害剤、Krazati(adagrasib)の適応拡大を承認した。成人のKRAS G12C変異型局所進行/転移結腸直腸癌でfluoropyrimidine、oxaliplatin、及びirinotecanベースの化学療法歴を持つ患者に600mgを一日二回、経口投与する。抗EGFR抗体cetuximabと併用する。

臨床試験でORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が34%(全て部分反応)だった。メジアン反応持続期間は5.8ヶ月。KRAS G12C変異は結腸直腸癌の3~4%で観察される。

Krazatiは22年に米国で、今年1月にはEUでも、全身性治療歴のある成人のKRAS G12C変異型局所進行/転移非小細胞性肺癌に加速承認/条件付き承認された。

リンク: FDAのプレスリリース


皮下注用エフガルチギモド アルファがCIDPに適応拡大
(2024年6月21日発表)

アルジェニクスはFDAがVyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa and hyaluronidase-qvfc)をCIDP(慢性炎症性脱髄性多発神経障害)用薬として承認したと発表した。臨床試験では全員に投与したリード・イン期に69%の患者が応答し、その後の偽薬対照離脱試験で症状悪化のハザードレシオは0.39、第12週までに増悪した患者の比率は26%と偽薬にスイッチした群の54%を大きく下回った。

CIDPは疲労や手足の脱力・無感覚などを伴う希少疾患で、免疫グロブリンに対する自己抗体の関与が疑われる。米国では24000人がステロイドや武田薬品のHyQviaのような免疫グロブリン製剤などによる治療を受けている。Vyvgartは胎児性Fc受容体に結合する抗体フラグメントで、一時間かけて点滴静注するオリジナルの製剤が21~22年に米日欧で抗アセチルコリン受容体抗体を持つ全身性重症筋無力症(gMG)の治療薬として承認された。23年に米欧日で承認された皮下注用製剤、Vyvgart Hytruloは30~90秒の点滴で足りる。用量用法は両適応とも同じだが、gMGでは週一回、4週間投与して、その後は様子を見て必要に応じて反復するが、CIDPでは最大12週間投与して奏功なら反復投与するので、患者一人当たり使用量が大きくなる。

尚、静注用製剤はCIDPには承認されていない。

リンク: 同社のプレスリリース


DMD遺伝子療法の適応範囲が拡大
(2024年6月20日発表)

FDAはサレプタ・セラピューティックスのElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)の承認内容を一部変更した。23年6月にデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の遺伝子変異が確認された4~5歳の歩行可能なDMD患者用薬として加速承認したが、今回、6歳以上も含めて本承認に切替えると共に、歩行不能患者に用いることも加速承認した。初承認の時と同様に、承認審査担当チームやOCE(臨床評価局)のヘッドは審査完了通知の発出を推奨したがCBER(生物学製品評価研究センター)のヘッドが覆した。

加速承認後薬効確認試験である第3相EMBARK試験で4~7歳の歩行可能なDMD患者125人を組入れて52週NSAA(North Star Ambulatory Assessment)総合スコアの改善を偽薬と比較したところ、ベースライン値の約23点から試験薬群は2.57点、偽薬群は1.92点と、大差なかった。一方、副次的評価項目の仰臥位起立時間はベースライン値の3.5秒から各群0.37秒と-0.27秒改善し、4-5歳のサブグループにも6-7歳にも便益が見られた。10メートル歩行走行テストもベースライン値の4.8秒から0.08秒と-0.34秒改善した。4段昇段テストでも有意差が見られた。

歩行不能患者の加速承認はジストロフィン発現量の増加というサロゲート・マーカーに基づくもので、7歳以上の歩行可能患者と合わせて、第3相ENVISION試験で便益を確認中。

尚、今回、ジストロフィン遺伝子のエクソン8や9に変異を持つ患者は禁忌となった。T細胞免疫を惹起する可能性があり、重度免疫調停性筋炎のリスクが高まるため。

Nationwide Children's Hospitalが創製した遺伝子療法薬で、DMD患者の殆どで欠損/機能低下しているジストロフィンの遺伝子の代わりに、分子量が1/3のマイクロジストロフィン遺伝子を導入するもの。米国外の権利はロシュが持っているが、今のところ承認されたのはUAE、カタール、クウェート、バーレーン、オマーンのみで私が出張したことがないのはオマーンだけだ。

今回の本承認切替で良く分からないのは、臨床的便益に基づき本承認されている薬がある以上、全く同じ適応症で別の薬の加速承認を取ることはできないのではないか?臨床的便益を検討する上で、偽薬対照とするのは倫理に反する可能性が高いのでElevidys対照試験を行うことになるだろうが、NSAAを主評価項目とすると優越性検定が必要でハードルが高くなるため、仰臥位起立時間などから一つ選んで非劣性検定を行うことになるだろう。この場合、選んだものがフェールし副次的評価項目に設定した、例えば10メートル歩行走行テストのp値が0.001だった時、承認するのか、しないのか?もしCBERのディレクターが交代していたら、どうなるのだろうか?。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: FDAの承認審査報告資料リンクページ
リンク: サレプタのプレスリリース


ソフピロニウムが米国でも承認
(2024年6月20日発表)

オーストラリアのBotanix Pharmaceuticals(ASX:BOT)は、FDAがSofdra(sofpironium bromide)局所性ジェル12.45%を9歳以上の原発性腋窩多汗症用薬として承認したと発表した。

活性成分はBodor Laboratoriesが創製、12年にBrickell Biotechがライセンスし15年には科研製薬にアジア主要国の権利をライセンスしたが、22年にBotanix社が事業を取得、22年9月に米国で承認申請した。日本では一足早く20年9月にエクロックゲル5%として承認されている。

リンク: Botanixのプレスリリース


スキリージが潰瘍性大腸炎に適応拡大
(2024年6月18日発表)

アッヴィは抗IL-23p19抗体Skyrizi(risankizumab-rzaa)を中重度活性期潰瘍性大腸炎の治療に充てる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。寛解導入期は1200mgを4週毎に3回投与、寛解維持期は180mgまたは360mgを4週毎に投与する。後者は患者がハンドフリー5分注射器を使うこともできる。欧日でも5月に委員会が支持/報告を受けており、近く承認が見込まれる。

リンク: 同社のプレスリリース


キイトルーダとイミフィンジが同日に内膜腫一次治療に承認
(2024年6月17日発表)

MSDのKeytruda(pembrolizumab)とアストラゼネカのImfinzi(durvalumab)が進行/難治際内膜腫の一次治療に適応拡大した。但し、Imfinziの適応は2割程度を占めるdMMR(ミスマッチ修復不全)型のみで、注目されたPARP阻害剤Lynparza(olaparib)併用は少なくとも今回は認められていない。

どちらも進行/難治内膜腫の一次治療としてcarboplatin及びpaclitaxelのレジメンに追加し、その後は単剤で維持療法に充てるもの。KeytrudaはNRG-GY018/Keynote-868試験で、主評価項目のPFS(無進行生存期間)がdMMRサブグループではハザードレシオ0.30、メジアン値は未達、偽薬追加群は6.5ヶ月、pMMR(ミスマッチ修復機能保持)では同じく0.60、11.1ヶ月、8.5ヶ月だった。全生存の解析は未成熟。深刻有害事象の発生率は35%(偽薬群は19%)、G5有害事象の発現率は1.6%だった。

ImfinziはDUO-E試験に基づくもの。主評価項目のPFSはdMMRサブグループではハザードレシオ0.42、メジアン値は未達、偽薬追加群は7.0ヶ月だった。全生存期間の解析は未成熟。同社の過去の発表によるとpMMRサブグループにおけるハザードレシオは0.77と悪くはなかったので、適応外になったのは不思議。全生存期間の解析でデータが未成熟とは言えハザードレシオの点推定値がそれほど低くなかったことが影響したのかもしれない。

DUO-E試験はcarboplatin、paclitaxel、Imfinziの投与が完了した患者の維持療法としてImfinziだけでなくLynparzaも投与する群も設定された。dMMRサブグループではcarboplatin、paclitaxel併用群と比べてPFSハザードレシオが0.41と、Imfinziだけ追加した群の0.42と大差なかったが、pMMRサブグループでは0.55、メジアン15.1ヶ月と良い数値が出ており、Imfinziだけ追加した群との比較でも0.76(95%信頼区間0.59-0.99)と探索的解析なのだろうが好ましい数値が出ている。全生存期間の未成熟解析でも似たような結果になっていたため、dMMRにはImfinziだけを、pMMRには二剤を追加するのがベストのように感じていた。

但し、二剤追加群は肺臓炎やG3以上の貧血症がImfiniだけ追加と比べても増加し、減量・投与中断中止も増加した。全生存期間のデータが成熟して良好な結果が出たら、ImfinziのpMMR適応やImfinzi・Lynparza併用法も承認されるかもしれない。

リンク: MSDのプレスリリース
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
リンク: WestinらのDUO-E試験論文(Journal of Clinical Oncology、オープンアクセス)


MSDの成人用21価肺炎球菌ワクチンが承認
(2024年6月17日発表)

MSDはFDAがCapvaxive(通称V116)を成人の肺炎球菌性感染症ワクチンとして加速承認したと発表した。50歳以上の侵襲性肺炎球菌性疾患の84%を占める21株をカバーしており、27%を占める8株は既存のワクチンがカバーしていない。一方、既存のワクチンと異なり小児適応は想定していない模様だ。

実薬対照OPA(オプソニン化貪食活性)試験で免疫原性がこのワクチンしかカバーしていない株の殆どに関して優越性、共通株については非劣性だった。感染予防効果は未だ確立していない。

成人における競合品は同社の23価莢膜ポリサッカライド肺炎球菌ワクチンPneumovax、同じく15価肺炎球菌結合型ワクチンVaxneuvance、そしてファイザーの20価肺炎球菌結合型ワクチンPrevnar 20。

リンク: MSDのプレスリリース


ビーリンサイトの地固め療法が承認
(2024年6月14日発表)

アムジェンは、FDAがBlincyto(blinatumomab)を1ヶ月児以上の小児と成人のCD19陽性、フィラデルフィア染色体陰性のB-ALL(B細胞性急性リンパ性白血病)の地固め療法に化学療法と併用する適応拡大を承認したと発表した。医師共同治験グループのECOG-ACRINがNCI(米国連邦癌研究所)の支援を受けてスポンサーとなり実施した成人患者対象の医師主導試験、E1910で化学療法だけの群に対する全生存期間のハザードレシオが0.42、メジアン生存期間は未達対71.4ヶ月、3年生存率は84.8%対69%だった。

この試験は、まず化学療法による寛解導入療法を施行して完全寛解を達成した患者をスクリーニングし、更に強化療法を施行した上で、地固め療法として化学療法・Blincyto併用する群と化学療法だけ群に無作為化割付けした。治療完了後にさらに化学療法だけによる維持療法を2.5年間実施した。試験中に微小残存病変陽性(MRD)陽性の患者に用いることが承認されたため、プロトコルを変更し、寛解導入・強化療法後にMRD陽性だった患者は全員、Blincyto併用群に割付け、解析対象は陰性(MRD<0.01%)の患者だけとした。

BlincyteはCD3とCD19の二重特異性抗体。14~18年に米欧日で難治/再発B-ALLに単剤投与することが承認された。

リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24/6/26Verona PharmaのRPL554(ensifentrine、COPD維持療法)
24/6/26第一三共のpatritumab deruxtecan(EGFR変異非小細胞性肺癌3次治療)
24/6/28ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-byspm濾胞性リンパ腫3次治療を追加)
24/6/30Rocket PharmaceuticalsのRP-L201(marnetegragene autotemcel、重度白血球接着不全症1型)
24年7月推JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw、osimertinib歴のあるex19del/L858R NSCLCに適応追加)
24年7月推ノボ ノルディスクのNN1436(insulin icodec、週一回投与用インスリン)
24年7月BeiGeneのTevimbra(tislelizumab、未治療食道扁平上皮腫追加)
24/7/7/Arcutis BiotherapeuticsのZoryve(roflumilast、ADの適応追加)
24/7/19Phathom PharmaceuticalsのVoquezna(vonoprazan、症候性非びらん性胃食道逆流症を追加)
24年8月推Sun Pharmaceuticalのdeuruxolitinib(円形脱毛症)
24年8月推ガルデルマのnemolizumab(結節性掻痒とアトピー性皮膚炎)
24年8月推ノバルティスのKisqali(ribociclib、乳癌摘出術後アジュバント)
24年8月推JNJのRybrevant(amivantamab-vmjw)とlazertinib(ex19del/L858R NSCLC)
24/8/4Adaptimmuneのafamitresgene autolecel(滑膜肉腫)
24/8/10Humacyteの人無細胞性血管(緊急動脈再建術)
24/8/11Lykos Therapeuticsのmidomafetamine(PTSD)・・・旧社名MAPS
24/8/13Citius Pharmaceuticalsのdenileukin diftitox(再発皮膚T細胞リンパ腫)
24/8/14CymaBay/ギリアドのseladelpar(原発性胆管炎)
24/8/14アセンディス・ファーマのTransCon PTH(palopegteriparatide、副甲状腺ホルモン低下症)
24/8/20セルヴィエのvorasidenib(グリオーマ)
24/8/22Regeneron PharmaceuticalsのREGN5458(linvoseltamab、多発骨髄腫)
24/8/23GSKのJemperli(dostarlimab-gxly、内膜腫フロントライン)
24/8/28Incyteのaxatilimab(慢性GvHD3L)
諮問委員会
24/7/25ODAC:アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、非小細胞性肺癌術前術後補助療法の追加)


今週は以上です。

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