2025年3月28日

第1200回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • エクソン53スキップ薬を26年に承認申請へ 
  • ライブリバント・ラズクルーズ併用レジメンはOSでもタグリッソを上回る 
  • Axsome、過度眠気治療薬は過活動・注意欠如にも有効 
  • VEGF-C/D結合剤の黄斑変性試験がフェール 
  • サノフィ、BTK阻害剤を多発性硬化症に承認申請 
  • MSD、キイトルーダ皮下注を承認申請したらしい 
  • カボメティクスが膵/膵外NETに適応拡大 
  • プラダー・ウィリ症候群の過食治療薬が承認 
  • ほぼ30年ぶりの単純尿路感染症治療薬が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


エクソン53スキップ薬を26年に承認申請へ
(2025年3月26日発表)

米国マサチューセッツ州ケンブリッジのWave Life Sciences(Nasdaq:WVE)は、WVE-N531の第2相DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)エクソン53スキップ試験の成績を公表した。ジストロフィン量の増加や一部の機能評価面で自然歴を上回る成果を上げた。月一回投与試験などを行って26年に米国で加速承認を申請する考え。承認ならSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のVyondys 53(golodirsen)や日本新薬のViltepso(viltolarsen)とバッティングすることになる。

このFORWARD-53試験はエクソン53スキップ薬が適応になる5~11歳のDMD患者11人に10mg/kgを2週毎投与した。加速承認のベンチマークであるジストロフィン発現量(ウエスタン・ブロット法、muscle content調整値、n=8)は、24週中間時点では正常値の9.0%だったが、48週最終解析では6.4%となった。低下したことになるが、アッセイの誤差範囲が30~35%と大きいため差があるとは言えず、他の試験方法では同程度と見なし得る結果になったようだ。8人中7人は両時点とも5%を超えた。

筋細胞壊死炎症スコアやMCP-1やIL-6のようなサロゲート・マーカーで炎症抑制作用が見られた。歩行可能な10人においてTime-to-Rise(ベースライン値6.2秒)の悪化が2秒強と、自然歴より3.8秒小さかった。

同社は東京理科大学の和田猛教授とその論文に注目したハーバード大学のグレゴリー・バーダインが共同で2008年に設立したキラルジェンが前身。

リンク: 同社のプレスリリース


ライブリバント・ラズクルーズ併用レジメンはOSでもタグリッソを上回る
(2025年3月26日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、第3相MARIPOSA試験の副次的評価項目である全生存期間を第二次中間で達成したと発表した。抗EGFRxMET二重特異性抗体Rybrevant(amivantamab-vmjw)と第3世代EGFR阻害剤Lazcluze(lazertinib)をEGFRにex19欠損またはL858置換のある局所進行/転移非小細胞性肺癌の一次治療に併用する便益を検討したもので、主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)は既に成功し、メジアン23.7ヶ月とアストラゼネカのTagrisso(osimertinib)だけを投与した群の16.6ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.70だった。このデータに基づき米欧で適応拡大が認められている。全生存期間は第一次中間でもハザードレシオ0.80と好ましい方向を向いていたが、第2次では0.75(95%信頼区間0.61-0.92)と更に差が開いた。メジアン値は未達(Tagrisso群は36.7ヶ月)、3年生存率は60%(同51%)。有害事象は爪周囲炎やラッシュ、静脈血栓塞栓、注射箇所反応(Rybrevantは点滴静注用)がTagrisso群より多かった。

アストラゼネカも第3相FLAURA2試験で同様な患者層におけるTagrisso・化学療法併用の便益をTagrisso単剤と比較し、PFS(同上)がメジアン29.4ヶ月(Tagrisso群は19.9ヶ月)、ハザードレシオ0.62と、良好な成績を上げた。全生存の解析は第2次中間でハザードレシオ0.75(95%信頼区間0.57-0.97)と良さそうな数値が出たが、成功認定の閾値をクリアしていない。この併用法も米欧で承認された。

リンク: JNJのプレスリリース


Axsome、過度眠気治療薬は過活動・注意欠如にも有効
(2025年3月25日発表)

米国ニューヨーク州のAxsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、solriamfetolの第3相成人ADHD試験で主目的を達成したと発表した。p値はそれほど低くないので適応拡大申請は難しいのではないかと思われるが、前オーナーであるJazz Pharmaceuticalsばりに、承認しなかったら提訴する覚悟で申請に向かうのだろうか?

solriamfetolはJazzがAerial BioPharmaを通じて韓国のSK Biopharmaceuticalsから日韓中などの地域以外における開発生産販売権を取得し、19~20年に米欧でナルコレプシーや閉塞性睡眠障害による過度の眠気の治療薬Sunosiとして承認取得した。ドパミン・ノルエピネフィリン再取込阻害などの作用を持つ。売上高は期待外れで21年に5800万ドルに留まったが、Axsomeは適応拡大を視野に22年に資産を取得した。

今回のFOCUS試験は516人を偽薬、150mg(承認用量と同じ)、300mg群に無作為化割付けして一日一回、経口投与し、6週後のAISRS(ADHD Investigator Symptom Rating Scale)総スコアをベースライン値(38~39点)と比較した。300mg群はトレンドに留まったが、150mg群は17.7点低下と偽薬群の14.3点低下を上回った(p=0.039)。150mg群は副次的評価項目の30%削減奏効率(p=0.024)やCGI-S(p=0.017)でも有意差があった。忍容性データは下記プレスリリースには記されていない。

リンク: Axsomeのプレスリリース


VEGF-C/D結合剤の黄斑変性試験がフェール
(2025年3月24日発表)

オーストラリアのOpthea(ASX/Nasdaq:OPT)は、OPT-302(sozinibercept)の第3相滲出型加齢黄斑変性試験がフェールしたと発表した。債権者に返済を求められる可能性があり、継続事業の前提に関する注意を促した。最近は株式売買出来高が少なく、売買停止になりそうなので、今更だろう。

この疾患ではリジェネロン/バイエルの抗VEGF-A/B抗体Eylea(aflibercept)などが普及したが、融合蛋白のOPT-302はVEGF-Cと-Dに結合するので、既存の抗体医薬が作用しないVEGFR-3の活性化も抑制することができる。後期第2相でジェネンテック/ノバルティスのLucentis(ranibizumab)より高い視力改善作用を示し、注目された。第3相COAST試験では抗VEGF抗体に十分応答しない患者約1000人を組入れて、afliberceptと併用で2mgを8週毎または4週毎に硝子体注射する便益を検討したが、52週間でBCVA(最良矯正視力)が各群12.8文字と13.5文字しか改善せず、afliberceptだけの群の13.7文字改善と大差なかった。副次的評価項目も数値が同程度だった。

同社は、開発費提供者たちに対して、開発中止など所定条件が発生した場合は開発を終了して提供額の最大4倍を返済する責務を負っている。契約改定を交渉中とのことだが、どうなることか。

リンク: 同社のプレスリリース


Equillium社、抗CD6抗体のaGvHD試験がフェール
(2025年3月29日発表)

米国カリフォルニア州の新薬開発会社、Equillium(Nasdaq:EQ)は、itolizumabの第3相急性GvHD(移植片対宿主病)試験がフェールしたことを明らかにした。一部の指標では効果の片鱗が窺えたため承認申請に向けてFDAと相談する考えだが、最後の足掻きという印象だ。

活性成分は、Biocon社が2013年にインドでプラク乾癬の治療薬として発売した抗CD6抗体。今回のEQUATOR試験はグレードIII/IVまたは胃腸症状を伴うグレードIIの未治療患者を組入れて、高量ステロイドに追加する便益を偽薬追加と比較した。必要な資金を調達するため小野薬品とライセンス・オプション契約を締結したが、行使されず、200人の組入れ目標を達成しないまま新規組入れを中止していた。

主評価項目の29日完全反応率(n=158)は43.0%で偽薬群の48.1%を上回らなかった。副次的評価項目のORR(客観的反応率)は62.0%対54.4%で上回ったが有意水準には達しなかった。一方、試験薬の投与を受けなかった3人を除外したmodified intent-to-treatベースでは、99日完全反応率が44.9%対28.6%でp=0.035、メジアン完全反応持続期間は336日対72日でp=0.017、カプラン・マイヤー推定による1年生存率は66.7%対49.6%と、ポスト・ホック解析なので有意性はないが、望ましい方向を指している。

本来ならもう一本実施してから申請となるところだが、米国のバイオ企業は手元流動性が低く、同社は第3四半期までの資金しか保有していない。株価は1ドル未満なので公募増資も難しいだろう。可能性が極小であっても、やるだけのことをやってから最期を迎える考えなのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


サノフィ、BTK阻害剤を多発性硬化症に承認申請
(2025年3月25日発表)

サノフィは米国でSAR442168(tolebrutinib)を多発硬化症用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は25年9月28日。適応症は、成人の非再発性二次進行性多発性硬化症(nrSPMS)の治療と、再発とは無関係に蓄積する障害の遅延。後者は良く分からないが、第3相成績を反映した苦心の作なのかもしれない。欧州でも承認申請中。

20年にPrincipia Biopharmaを買収して入手したBTK阻害剤。第3相はnrSPMSを組入れたHERCULES試験が成功、EDSS(Expanded Disability Status Scale)が一定以上悪化するハザードレシオが偽薬比0.69、6ヶ月内悪化率は26.9%と偽薬群の37.2%を下回った。一方、再発性多発性硬化症を組入れたGEMINI試験二本は、何れも再発抑制効果が同社のAubagio(teriflunomide)を有意に上回らなかった。近年の承認新薬はAubagioを有意に上回るものばかりなので残念な結果だが、二本のプール分析で、EDSS悪化が一定以上悪化するハザードレシオが良い数値だった。結局、二番目の目標適応症は、再発型多発性硬化症の治療に使うと再発がAubagio以外の承認薬ほど大きくは減らないが進行を抑制することはできる、という意味なのだろう。

22年に薬物誘導性肝障害の懸念からFDAだけ治験部分停止命令を発したことがあるが、上記試験は組入れが完了していたため、影響を受けなかった。HERCULES試験ではHayの法則該当例があり、うち1名は肝移植後に死亡した。

リンク: サノフィのプレスリリース


MSD、キイトルーダ皮下注を承認申請したらしい

一部報道によると、MSDは抗PD-1抗体Keytrudaの皮下注用新製剤(pembrolizumab、berahyaluronidase alfa)をFDAに承認申請して受理された。審査期限は25年9月23日。既存の点滴静注用は投与に30分程度かかるが、皮下注は2~3分で終了する。非小細胞性肺癌の薬物動態試験試験で第1サイクルにおけるAUC(曲線下面積)や第3サイクルにおけるCtrough(トラフ濃度)が静注用と非劣性だった。

後者の活性成分は韓国のAlteogen(KOSDAQ:196170)からライセンスしたヒアルロン酸分解酵素で、類薬のライセンス契約を多くの企業と締結しているHalozyme(Nasdaq:HALO)が特許侵害で提訴している。


【承認】


カボメティクスが膵/膵外NETに適応拡大
(2025年3月26日発表)

FDAは、Exelixis(Nasdaq:EXEL)のVEGFR拮抗剤Cabometyx(cabozantinib)を12歳以上の治療歴のある切除不能、局所進行、または転移性の分化膵神経分泌細胞腫(pNET)と、12歳以上の分化膵外神経分泌細胞腫(epNET)に適応拡大した。NCI(米国立衛生研究所)が支援した第3相CABINET試験で前者はPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が13.8ヶ月と偽薬群の3.3ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.22、後者は各8.5ヶ月、4.2ヶ月、0.40だった。

偽薬群の各52%と37%がcabozantinibにクロスオーバーしたことや、死亡者数が所定に達しておらず未成熟であることも影響したか、副次的評価項目である全生存期間の中間解析はハザードレシオが1.0を若干上回っている。PFSを主目的とする偽薬対照試験は、医師が数ヶ月治療しても効果も副作用も出ない患者に不安を感じて前倒しで検査し、進行認定して次の治療に向かうような主観バイアスが発生しないとは言えない。それだけに、急いで投与しても数ヶ月待ってから投与しても余命は同じという結果になったのは残念だ。

米日以外の権利を持つイプセンも欧州で承認申請中。同薬は日本では武田薬品が販売している。

リンク: FDAのプレスリリース


プラダー・ウィリ症候群の過食治療薬が承認
(2025年3月26日発表)

米国カリフォルニア州のSoleno Therapeutics(Nasdaq:SLNO)は、FDAがVykat XR(diazoxide choline徐放錠)を4歳以上のプラダー・ウィリ症候群(PWS)患者における過食傾向の治療薬として承認したと発表した。この適応効能を持つ薬が承認されたのは初めて。

PWSは第15染色体における父性発現遺伝子(父由来のものしか発現しないタイプの遺伝子)の消失が原因で起こる神経発達障害。新生児15000人に一人の希少疾患だ。症状は多様だが、3~4歳のころから過食と関連症状が、成長につれ知的発達障害や成長障害が、表れやすい。胃破裂による死亡リスクもあるようだ。diazoxideは高インスリン血症の治療などに用いられており、インスリンやコルチゾールの分泌を抑制、血糖値や尿酸値、レニン、免疫グロブリンGの増加をもたらす。4歳以上のPWS患者127人を組入れた第3相偽薬対照治療試験はフェールしたが、この試験などの試験薬群の患者を組入れて実施した離脱試験で、継続投与群のHQ-CT(Hyperphagia Questionnaire for Clinical Trials)スコアが16週間で2.6点の悪化に留まり、偽薬にスイッチした群の7.6点悪化を有意に下回った。

体重に応じて最初は25~150mgを一日一回、経口投与し、目標用量の100~525mg一日一回に漸増する。

一部報道によると価格は年46万ドル超とのこと。VykatはComposite特許が補填込みで2034年まで有効の見込みだが、diazoxide自体はGE化しており、服用頻度が一日2~3回で正式には適応外とは言え、巨大な価格差が正当化されるほどのものだろうか。温故知新型超高額新薬が空振りに終わった前例もある。

リンク: 同社のプレスリリース


ほぼ30年ぶりの単純尿路感染症治療薬が承認
(2025年3月25日発表)

GSKはFDAがBlujepa(gepotidacin)を非複雑性尿路感染症の治療薬として承認したと発表した。12歳以上、体重40kg以上の女性における、大腸菌、肺炎桿菌、Staphylococcus saprophyticusなどの感受株によるものが適応になる。1500mgを一日二回、5日間経口投与する。この疾患の治療薬が承認されたのはほぼ30年ぶり。

細菌のDNA複製に関わる二種類の二型トポイソメラーゼを阻害する新規作用機序。第二次トランプ政権前の古き良き時代に政府の補助金を得て開発した。第3相のEAGLE試験二本で臨床的・細菌学的複合奏効率をnitrofurantoinと比較したところ、一本では50.6%対47.0%、もう一本は58.5%対43.6%となり、いずれも非劣性解析が成功、後者は優越性解析も成功した。

リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
25/4推JNJのnipocalimab(全身性筋無力症)
25/4推ノバルティスのatrasentan(IgA腎症)
25Q2アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌)
25/4/2Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/4/18RegeneronのDupixent(dupilumab、特発性慢性蕁麻疹追加)
25/4/21BMSのOpdivoとYervoy(nivolumabとipilimumab、肝細胞腫一次治療追加)
25/4/26TelixのPixclara(18F-floretyrosine、神経膠腫PET造影剤)
25/4/29Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
25/4/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)



今週は以上です。

2025年3月22日

第1199回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 米国連邦政府、経口COVID-19ワクチンの開発支援を打ち切り 
  • ゾルゲンスマは2-17歳のSMAにも有効 
  • UCB、チミジン・キナーゼ2欠乏症治療試験の成績を学会発表 
  • 経口化膿性汗腺炎用薬を承認申請へ 
  • 副甲状腺機能低下症の第3相が成功 
  • GvHDリスクの小さい他家造血幹細胞の第3相が成功 
  • 抗体核酸結合体のDMD試験が成功 
  • 免疫グロブリンがポリオ後症候群の歩行能力を改善 
  • ロイバント、筋無力症の第3相成功も申請しない 
  • バイエル、ケレンディアを心不全に申請 
  • ハンター症候群用薬を米国で承認申請 
  • ハンルイ、抗PD-1抗体がFDAに承認されず 
  • アムヴトラがATTR心筋症に適応拡大 
  • トレムフィアがクローン病に適応拡大 
  • ファビハルタがC3腎症に適応拡大 
  • キイトルーダがPD-L1陽性her2陽性胃癌の一次治療に本承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


米国連邦政府、経口COVID-19ワクチンの開発支援を打ち切り
(2025年3月20日発表)

米国カリフォルニア州のVaxart(Nasdaq:VXRT)は米国連邦政府の補助金などを得て昨年9月に経口COVID-19ワクチンの後期第2相試験を開始したが、2月21日に事業中止命令(Stop work order)を受領した。24年12月期決算発表に合わせて公表したもの。トランプ政権発足後、政府がモデルナのインフルエンザ・COVID-19二種混合ワクチンの開発支援を中止する懸念が報じられていたが、事業削減やワクチン批判の犠牲者が出始めた。

同社はNIH(米国立衛生研究所)などが推進するProject NextGenの対象に選定され、後期第2相試験の費用として6570万ドル、順調に進めば最大で4億5600万ドルの補助金を得る予定だった。後期第2相は成人における追加免疫の安全性や便益をmRNAワクチンと12ヶ月間比較する計画で、第1部に当たるセンチネル・コフォート(安全性を確認するために徐々に組入れる)は昨年12月に400人の組入れを完了した。

しかし、プロジェクト・マネージャーのAdvanced Technology Internationalから事業中止命令を受けた。撤回/変更されない限り、90日以内に中止することになる。センチネル・コフォートの追跡は容認されているようだが、症例数が十分ではないことや、第2部に予定していたKP.2対応ワクチンではなくXBB対応ワクチンを用いたことなどから、承認申請には使えないのではないかと思われる。

金利上昇などを受けてバイオ・ベンチャーの資金調達環境が悪化しており、人員削減に踏み切る企業が増加しているなか、補助金打切りは大きな痛手になりそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース

【新薬開発】


ゾルゲンスマは2-17歳のSMAにも有効
(2025年3月19日発表)

ノバルティスは、Muscular Dystrophy Association Clinical and Scientific Conferenceで学会発表される、OAV101 IT(onasemnogene abeparvovec、髄腔内投与)の第3相STEER試験の結果概要を公表した。この脊髄性筋萎縮症(SMA)の遺伝子療法は点滴静注用製剤が2歳未満の1型(乳児期発症)患者向けに米日欧で承認されているが、2歳以上18歳未満の2型(遅発性)患者にも有効であることが示された。年内に米欧日で承認申請する考え。

本試験は初めて治療を受ける、座ることはできるが補助なしでは歩けない患者126人を組入れて、一回投与する効果や安全性を検討した。主評価項目のHFMSE(Hammersmith機能的運動尺度拡大版)総スコアが52週後に2.39点改善し、シャム群(投与の振りだけ)の0.51点改善を有意に上回った。

尤も、2~5歳だけを組入れた第1/2相STRONG試験ではHFMSEが9.3ヶ月後に5.9点改善しており、期待を下回った。

有害事象の発現率は両群同程度だった。点滴静注用は深刻な急性肝障害のリスクが枠付き警告されているが、本試験の75人ではHyの法則(肝毒性のベンチマーク)該当例は無かった。

リンク: 同社のプレスリリース


UCB、チミジン・キナーゼ2欠乏症治療試験の成績を学会発表
(2025年3月19日発表)

UCBは、昨年12月に欧米でチミジン・キナーゼ2欠乏症用薬として承認申請したdoxecitineとdoxribtimineの併用療法のデータをMDA(筋ジストロフィー協会)臨床科学学会で発表した。この酵素はミトコンドリアのピリミジン・サルベージ経路で重要な役割を果たしており欠乏すると筋力が低下、歩行や摂食、呼吸能力に障害が出る。罹患率は100万人に1.64人の超希少疾患。12歳以下で発症するタイプと12歳以上のタイプに分かれるようだ。

両剤はピリミジン・ヌクレオシド/ヌクレオチドで、筋骨格ミトコンドリアDNAに組入れられ遺伝子複製数や筋骨格機能を改善すると考えられている。2022年に買収したゾジェニックス社の開発品。

薬効のエビデンスは各種文献や早期アクセス・プログラムにおける投与例などの治療成績を、治療を受けなかった患者のデータと比較したもの。12歳以下で発症した患者群では全生存のハザードレシオが0.06~0.08と極めて大きな違いがあった。運動能力の改善や、人工呼吸器を装着していた患者の一部は外すことができた。治療時発現有害事象は下痢など。

学会抄録によると12歳以上で発症した患者群でも好ましいトレンドが見られたようだ。

リンク: UCBのプレスリリース
リンク: MDA 2025抄録P257(Hiranoら、12歳未満コフォートの生存分析)
リンク: 同、P255(Garoneら、12歳未満コフォートの機能評価)
リンク; 同、P256(Scagliaら、12歳以上コフォートの生存・機能評価)




経口化膿性汗腺炎用薬を承認申請へ
(2025年3月17日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)はINCB-54707(povorcitinib)の第3相化膿性汗腺炎(HS)試験が二本とも成功したと発表した。承認申請する考え。

経口JAK1阻害剤。第3相は日本を含むグローバルの施設で既存薬に応答不十分、不耐、適応外の成人中重度HS患者を二本合計で約1200人組入れて偽薬、45mg、75mg一日一回投与群に無作為化割付けし、HiSCR奏効率を比較した。STOP-HS1試験では各群29.7%、40.2%、40.6%、同2試験では28.6%、42.3%、42.3%となり、両試験、両用量とも偽薬比有意に増加した。バイオ薬歴を持つサブグループでは群間差が更に広がった。

尚、奏効の定義は、ANカウント(膿瘍と炎症性結節の合計数)が半減以上し、かつ、膿瘍数及び排膿性瘻孔数が増加しないこと。

治療時発現有害事象はざ瘡などが増加したものの、G3以上のものの発生率は各群大差なかった。

HSはUCBのBimzelx(bimekizumab-bkzx)やノバルティスのCosentyx(secukinumab)のような抗IL-17抗体が承認されている。povorcitinibの治療効果はバイオ薬より小さく見えるが、直接比較試験ではないので、確かな違いは、経口投与できることだけだ。

リンク: 同社のプレスリリース


副甲状腺機能低下症の第3相が成功
(2025年3月17日発表)

アストラゼネカは、AZP-3601(eneboparatide)の第3相副甲状腺機能低下症試験で主目的を達成したと発表した。承認申請に向かうのではないか。

昨年、フランスのAmolyt Pharmaを8億ドル及び達成報奨金2.5億ドルで買収して入手した副甲状腺ホルモン受容体1選択的アゴニスト。今回のCaALYPSO試験は標準治療を受けている慢性副甲状腺機能低下症の成人202人を試験薬を一日一回皮下注する群と偽薬群に無作為化割付けして、24週奏効率を比較した。アセンディス・ファーマのYorvipath(palopegteriparatide)の第3相と同様に、カルシウムや活性化ビタミンDを服用せずにアルブミン調整血清カルシウム水準が正常化した患者を奏功とした。結果の数値は未公表。

Yorvipathのほかに武田薬品のNatpara(全長副甲状腺ホルモン)も欧米で承認されているが、24年一杯で製造中止となった。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


GvHDリスクの小さい他家造血幹細胞の第3相が成功
(2025年3月17日発表)

米国カリフォルニア州の未上場バイオ企業、Orca Bioは、他家HST(造血幹細胞移植)用薬Orca-Tが第3相試験で主目的を達成したと発表した。承認申請に向けて当局と相談する考え。

HLA適合ドナー由来のT細胞・造血幹細胞製品。採取から患者に投与するまで72時間というスピードと、他家HSCT移植に伴うcGvHD(慢性移植片宿主病)のリスクが小さいことが特徴。

このPrecision-T試験は急性白血病などの187人を組入れて、骨髄破壊的前処理後に試験薬とmTOR阻害剤tacrolimusを併用する群と、標準的他家HSCTとtacrolimus及びmethotrexateを併用する群のcGvHDなき生存を比較した。結果は、ハザードレシオが0.26でp<0.00001、1年無cGvHD生存率が78%対38%と良好。副次的評価項目のうち全生存中間解析はハザードレシオが0.49、p=0.118と好ましいトレンドがあり、1年生存率は各群94%対83%だった。中重度cGvHD発生率が13%対44%、病気が再発していないのに死亡した患者の比率が3%対13%となっており、cGvHD抑制作用が延命効果を押し上げているように見える。

リンク: 同社のプレスリリース


抗体核酸結合体のDMD試験が成功
(2025年3月17日発表)

米国カリフォルニア州のAvidity Biosciences(Nasdaq:RNA)はAOC 1044(delpacibart zotadirsen、通称del-zota)の第3相筋ジストロフィー試験で主要バイオマーカーの改善に成功したと発表した。年内に加速承認を申請する考え。

del-zotaは、エクソン44をスキップさせるPMO(ホスホロジアミデートモルフォリノオリゴ核酸)に抗TfR1(トランスフェリン受容体1)ヒト化抗体を結合して、細胞内取込みを向上したもの。エクソン44スキップで治療可能なデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に用いる。鶏と卵をごちゃ混ぜにした親子丼のような適応名だが、既存類薬と同様に、遺伝子検査で欠失パターンを調べて治療の当否を決める。

第1/2相EXPLORE44試験に26人の患者を組入れて5mg/kgを6週毎または10mg/kgを8週毎に3回静注し、完了の28日後に筋骨格細胞における薬剤濃度やジストロフィン量などを評価したところ、偽薬群を有意に上回った。5mg/kg群はジストロフィン量が正常水準の58%まで改善し、クレアチニン・キナーゼが80%低下した。10mg/kg群の数値は明らかにされていないが5mg/kgと大差なかったようだ。

この試験は5mg/kg群の患者のうち2人がアナフィラキシーや注射箇所反応で治験からドロップアウトしたことが昨年8月に公表され、安全性が懸念されたが、その後は発生していない模様。

リンク: 同社のプレスリリース


免疫グロブリンがポリオ後症候群の歩行能力を改善
(2025年3月13日発表)

スペインの血液製剤会社、Grifols(MCE:GRF)は、Flebogamma 5% DIFがポリオ後症候群(PPS)の第2/3相試験で主目的を達成したと発表した。適応追加申請するかどうかは言及されていない。

PPSはポリオ感染から10年以上経って発症する疾患。Flebogammaは原発性免疫不全症候群の治療薬として承認されているヒト免疫グロブリン。当試験では191人の患者を組入れて1g/kgを月一回静注する効果を偽薬と比較した。主目的である52週時点の修正2分歩行距離はベースライン比12.75m改善し、偽薬群の6.07m改善を有意に上回った。

世界で1200-2000万人がポリオ感染歴を持ち、うち25-40%は将来PPSを発症する可能性があるとのこと。

リンク: 同社のプレスリリース


ロイバント、筋無力症の第3相成功も申請しない
(2025年3月19日発表)

Roivant(Nasdaq:ROIV)は、プロジェクト子会社であるImmunovant(Nasdaq:IMVT)が実施したIMVT-1401(batoclimab)の第3相中重度筋無力症試験で主目的を達成したと発表した。承認申請はせず、フォロー・オンのIMVT-1402を臨床入りさせる考え。

主評価項目はアセチルコリン受容体陽性サブグループにおける12週MG-ADL。偽薬群はベースライン比で+3.6、340mg週一回投与群は+4.7、680mg週一回群は+5.6だった。試験薬群は免疫グロブリン量も各群64%と74%低下した。

開発断念の理由は記されていないが、甲状腺眼症の後期第2相でLDL-C値が用量依存的に40~65%増加しており、今回も再現されたのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


バイエル、ケレンディアを心不全に申請
(2025年3月17日発表)

バイエルは米国でKerendia(finerenone)を心不全に適応拡大申請し受理されたと発表した。LVEF(左心駆出率)が40%以上の駆出率保持・軽度低下患者に用いることを想定している。優先審査指定され、第3四半期に結果を見込んでいる。日欧などでも申請済み。

日本も参加した第3相FINEARTS-HF試験で心血管死/心不全入院・緊急受診のリスクを偽薬と比較したところ、率比0.84、p=0.007だった。有害事象は高カリウム血症の増加。複合腎評価項目の解析はハザードレシオ1.33(95%信頼区間0.94-1.89)でフェールした。

リンク: 同社のプレスリリース


ハンター症候群用薬を米国で承認申請
(2025年3月13日発表)

米国メリーランド州のRegenxbio(Nasdaq:RGNX)は、24年決算発表と合わせて、RGX-121(clemidsogene lanparvovec)をハンター症候群(MPS II型)の治療薬としてFDAに加速承認申請したと発表した。

ハンター症候群はX染色体劣性遺伝性の超希少疾患。ライソソームのiduronate-2-sulfataseの遺伝子が欠乏、ヘパラン硫酸が分解されず蓄積する。酵素補充療法である武田薬品のElaprase(idursulfase)や、日本ではJCRファーマの中枢神経浸透性製品、イズカーゴ(パビナフスプアルファ(遺伝子組換え))も承認されている。

RGX-121はアデノ随伴ウイルス9型をベクターとしてiduronate-2-sulfataseの遺伝子を脳室内に投与する。CAMPSIITE試験で5歳以下の神経障害性患者10人に投与したところ、疾病活動性のバイオマーカーである脳脊髄液におけるへバラン硫酸D2S6コンポ―ネントが第16週に86%低下し、8人では正常水準に達した。試験薬関連が疑われる深刻有害事象は肝機能検査値異常が1例発生したがステロイド投与で解消した。

同社は日本新薬とRGX-121やRGX-111(MPS I型用薬として開発中)の米亜における商業化で提携している。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


ハンルイ、抗PD-1抗体がFDAに承認されず
(2025年3月21日発表)

Jiangsu Hengrui Pharmaceuticals(江蘇恒瑞医薬、上海:600276)は23年に抗PD-1抗体camrelizumabをFDAに肝細胞腫用薬として承認申請していたが、24年5月に続き、2回目の審査完了通知を受領した。製造に関する指摘事項やCOVID-19に関わる連邦職員の渡航制限は解消したが、新たな製造問題を指摘された模様だ。

同社は米中欧亜露などの施設で第3相試験を実施、切除不能肝細胞腫の一次治療にVEGFR-2阻害剤rivoceranib(中国名apatinib)と併用する便益をsorafenibと比較検討したところ、全生存期間のハザードレシオ0.62、メジアン生存期間22.1ヶ月対15.2ヶ月という良好な成果を取得し、中国では23年2月に承認取得したが、米国は難航している。rivoceranibの中国外の権利を持つElevar Therapeuticsやその親会社のHLB(028300:KS)は現時点ではプレスリリースを出していない様子だが、併用法しか申請されていないので、おそらく、道連れになっただろう。

リンク: 江蘇恒瑞医薬のプレスリリース(中国語、上海証券取引所のサイトより)

【承認】


アムヴトラがATTR心筋症に適応拡大
(2025年3月20日発表)

Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)は、Amvuttra(vutrisiran)をATTR-CM(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)に用いる適応拡大をFDAが承認したと発表した。遺伝子変異の有無を問わない。第3相HELIOS-B試験で死亡または心血管有害事象の発生を偽薬比28%抑制し、6分間歩行テストでも有意な差があった。同社のOnpattro(patisiran)はFDAが適応拡大を承認しなかったが、より大規模な試験を行ない臨床的に重要な便益を確立したことが奏功した格好。日欧でも申請中。

Amvuttraは二重連鎖RNA介入薬。トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチーの治療薬として米欧日で承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


トレムフィアがクローン病に適応拡大
(2025年3月20日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、抗IL-23p19サブユニット抗体Tremfya(guselkumab)を中重度活性期クローン病に用いる適応拡大をFDAが承認したと発表した。バイオ薬を含む既存治療に応答不十分または不耐の患者を組入れた第3相試験3本で、インダクション期でもメンテナンス期でも、臨床的寛解率や内視鏡的反応率が偽薬を有意に上回った。内視鏡的反応率は同社の抗IL-12/23p40サブユニット抗体Stelara(ustekinumab)を投与した群と比べても有意な差があった。

インダクションは200mg静注点滴と、200mg皮下注を2回繰り返す方法がある。メンテは200mg皮下注を4週毎、または100mg皮下注を8週毎の二用法がある。

日本でも適応拡大申請中。

リンク: 同社のプレスリリース


ファビハルタがC3腎症に適応拡大
(2025年3月20日発表)

ノバルティスは、可逆的B因子阻害剤Fabhalta(iptacopan)を成人のC3腎症の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。第3相APPEAR-C3G試験で200mgを一日二回、経口投与したところ、24時間UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が偽薬比35%低下した。副次的評価項目のeGFR(推定糸球体濾過率)も偽薬比2.2mL/分/1.73m2改善したが有意水準には達しなかった。

C3腎症は100万人に2~3人の超希少疾患で、補体系が糸球体を攻撃、血尿などを引き起こすほか、腎不全のリスクを高める。EUでは2月にCHMPが肯定的意見をまとめた。日本でも適応拡大申請中。

Fabhaltaは補体代替経路を阻害して血漿C3水準を改善する作用を持ち、23年に米国で発作性夜間ヘモグロビン尿症治療薬として承認された。莢膜細菌感染症のリスクが枠付き警告されている。

リンク: ノバルティスのプレスリリース


キイトルーダがPD-L1陽性her2陽性胃癌の一次治療に本承認
(2025年3月19日発表)

FDAはMSDのKeytruda(pembrolizumab)をPD-L1陽性(CPS≧1)でher2も陽性の胃・胃食道接合部腺腫の一次治療薬として承認した。抗her2抗体trastuzumab、fluoropyrimidine、及び白金薬と併用する。

21年に加速承認された適応が本承認に切替えられたもの。加速承認時のエビデンスはKEYNOTE-811試験におけるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)とメジアン反応持続期間だったが、今回は同試験のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と全生存期間。後者はメジアン20.1ヶ月と上記3剤と偽薬を併用した群の15.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.79だった。

尚、当初の加速承認はPD-L1不問だったが、PFS解析でCPS≧1サブグループにしか効果が見られなかったため、23年に適応限定された。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



PDUFA
25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
25/3/26GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症)
25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
25/3/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
25/4推JNJのnipocalimab(全身性筋無力症)
25/4推ノバルティスのatrasentan(IgA腎症)
25Q2アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌)
25/4/2Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/4/3ExelixisのCabometyx(cabozantinib、神経分泌細胞腫追加)
25/4/18RegeneronのDupixent(dupilumab、特発性慢性蕁麻疹追加)
25/4/21BMSのOpdivoとYervoy(nivolumabとipilimumab、肝細胞腫一次治療追加)
25/4/26TelixのPixclara(18F-floretyrosine、神経膠腫PET造影剤)
25/4/29Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
25/4/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)



今週は以上です。

2025年3月15日

第1198回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • 逆転写酵素トランスロケーション阻害剤の低量第3相試験が成功 
  • プロテオライシス誘導SERDの第3相は月並みな結果に 
  • アルドステロン合成酵素阻害剤の難治高血圧試験が成功 
  • ノボのCagriSemaの体重減量効果はそれほどでもなさそう 
  • ruxolitinibクリームの結節性痒疹試験は一勝一敗 
  • 抗OX40ポテリジェント抗体の第3相が再び成功 
  • 経口IL-23受容体拮抗剤が第3相プラク乾癬試験で経口TYK2阻害剤に勝つ 
  • ソーティクツ側は乾癬性関節炎のデータを発表 
  • Wiskott-Aldrich症候群用薬を米国でも承認申請 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


逆転写酵素トランスロケーション阻害剤の低量第3相試験が成功
(2025年3月12日発表)

MSDは昨年12月にMK-8591A(doravirine、islatravir)の第3相HIV/AIDS治療試験二本で主目的達成と発表したが、詳細をCROI(レトロウイルス日和見感染症学会)で公表した。どちらも実薬対照試験で、優越性は確認できなかったが非劣性解析が成功した。年央から承認申請を開始する予定。

同社のPifeltroの活性成分である非ヌクレオシド逆転写阻害剤を100mg、新開発のヌクレオシド逆転写酵素トランスロケーション阻害剤islatravirを0.25mg、それぞれ配合した固定用量合剤で、典型的なアグレッシブ抗レトロウイルス治療が3種類の異なった作用機序を持つ薬剤を併用するのに対して、2剤併用で足りる見込み。21年に第3相が二本成功したが、他の非ヌクレオシド逆転写阻害剤と併用でislatrevir 20mgを週一回投与した第2相で総リンパ球数とCD4陽性T細胞数が減少する有害事象が見られたため、今回は一日一回投与量を1/3に減らして再び第3相を実施した経緯がある。

今回成功したのは、既存薬を服用してウイルスを抑制できている患者を組入れたスイッチ試験。051試験は様々な治療レジメンを用いている患者を対象とするオープン・レーベル試験。フェール率(48週のウイルスRNA量が50コピー/mL以上)が1.4%、従来レジメンを継続した対照群は4.9%で非劣性解析が成功した。群間差の95%上限は0を下回ったが、優越性解析はフェールした。副次的評価項目である抑制成功率(同、50コピー/mL未満)は95.6%対91.9%で同程度だった。尚、足しても100%にならないのは副作用などによりドロップアウトする患者がいるからだ。

052試験はギリアド・サイエンシズのBiktarvy(bictegravir/emtricitabine/tenofovir alafenamide)服用患者の二重盲検試験だ。フェール率は1.5%、継続投与対照群は0.6%、差は0.9%で非劣性確認、優越性解析はフェールした。抑制成功率は91.5%対94.2%で大差なし。

islatravir 0.75mgを用いた前回の第3相と似たような成績であり、0.25mgで足りることが明らかになった。懸案の免疫抑制は、総リンパ球数もCD4カウントも両群同程度だった。

第3相はもう一本、初めて抗レトロウイルス治療を受ける患者の第3相も進行中。前回はCD4カウントや全リンパ球数の低下による治験離脱率が5.4%とBiktarvy群の2%を上回ったが、どの程度改善するか注目される。

リンク: 同社のプレスリリース


プロテオライシス誘導SERDの第3相は月並みな結果に
(2025年3月11日発表)

米国コネチカット州のArvinas(Nasdaq:ARVN)と共同開発販売パートナーのファイザーは、ARV-471/PF-07850327(vepdegestrant)のエストロゲン受容体陽性her2陰性進行/転移乳癌(ER+her2-a/mBC)の第3相二次治療試験で共同主評価項目のうちESR1変異サブグループのPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を達成したと発表した。全被験者の解析はフェールし、既存の選択的エストロゲン受容体零落剤(SERD)とは一味違うのではという期待を裏切る格好になったため、Arvinasの株価が急落した。

vepdegestrantは標的蛋白のプロテアソームにおけるスクラップを誘導するPROTAC(PROteolysis TArgeting Chimera)技術を応用した選択的エストロゲン受容体零落剤(SERD)。第2相でER+her2-a/mBCにおける疾病安定化作用を示し、特に、エストロゲン受容体アルファの遺伝子であるESR1に変異を持つ癌において、用量依存的な効果を示した。今回の第3相VERITAC-2試験は、日本を含む世界の施設で、ER+her2-BCで進行/転移後に一種類のCDK4/6阻害剤歴と一次以上の内分泌療法歴を持つ患者を組入れて、一日一回経口投与する効果をfulvestrant筋注とオープンレーベルで比較した。ESR1変異サブグループではハザードレシオが目標の0.6を下回る成果を上げたが、intent-to-treatベースの解析は有意水準に届かなかった。副次的評価項目の全生存期間はデータが未成熟。

既存薬ではメナリニの非ステロイド系SERD、Orserdu(elacestrant)も類似した第3相でESR1変異サブグループにしか意味のある効果が見られず、欧米でこのタイプ限定で承認された。進行/転移後二次治療を受ける患者の4割程度に該当するようだが、服用期間が短くなることを含めて、市場性はそれほど大きくない。それだけに、他のタイプにおける有効性が示されなかったのは残念だ。

リンク: 両社のプレスリリース


アルドステロン合成酵素阻害剤の難治高血圧試験が成功
(2025年3月10日発表)

米国フィラデルフィア州の新興医薬品会社、Mineralys Therapeutics(Nasdaq:MLYS)は、MLS-101(lorundrostat)の第3相難治高血症圧試験で主目的を達成したと発表した。類似した患者を組入れた第2相も成功しており成績を3月29日にACC(米国心臓学会)科学部会で詳細発表する予定。承認申請の予定には言及していない。

アルドステロン合成に関わるCYP11B2経路の選択的阻害剤。田辺三菱製薬のMT-4129をライセンスした。第3相Launch-HTN試験は、2剤服用しても血圧管理不良な、または、3-5剤服用する抵抗の、高血圧患者1083人を組入れて、50mgを追加投与する便益を偽薬追加と比較した。主目的である第6週における収縮時血圧(オフィス自動血圧計で測定)がベースライン比16.9mmHg低下し、偽薬調整後で9.1mmHg低下、統計的に有意だった。2剤併用サブグループでも、3-5剤併用サブグループでも、有効性が見られた。第12週では各19.0mmHgと11.7mmHg低下した。尚、この試験は第6週に100mgに増量する群も設定されたが、割愛する。

第2相Advance-HTN試験では類似した患者を組入れて2~3剤による至適バックグラウンド治療に追加する効果を検討した。50mg群は第12週収縮時血圧(24時間血圧計で評価)が偽薬調整後で7.9mmHg低下した。

アルドステロン阻害剤は高カリウム血症のリスクを持つ。lorandrostatは第3相における50mg群の発生率が1.1%と第2相の5.3%より低下した。理由は明らかではない。

リンク: 同社のプレスリリース


ノボのCagriSemaの体重減量効果はそれほどでもなさそう
(2025年3月10日発表)

ノボ ノルディスクはCagriSema(semaglutide、cagrilintide)の第3相REDEFINE 2試験の結果を発表した。68週における体重減がベースライン比13.7%(偽薬群は3.4%)と、一本目の20.4%(同3.0%)より小さかった。GLP-1作用剤Wegovy/Ozempicの活性成分と新開発のアミリン類縁体cagrilintideの合剤だが、上乗せ効果がどれほどのものか、今後の試験で明確になっていくだろう。

今回の第3相は肥満またはリスク因子を持つオーバーウェイトの二型糖尿病患者を日本も含む世界の施設で組入れ、週一回投与する効果を偽薬と比較した。用量調整が認められており、68週時点の最大用量投与率は61.9%だった。上記の体重減は、米国のレーベルに記載されるであろうtreatment policy estimandベースで、投与を止めた患者の数値も反映している。per-protocolでは15.7%(同3.1%)だった。ベースライン時点の平均体重は102kg。

一本目のREDEFINE 1は二型糖尿病を併発していない患者を組入れて合剤、偽薬、cagrilintideだけ、semaglutideだけの4群に無作為化割付けし68週間投与した。treatment policy estimandベースで体重(ベースライン値106.9kg)が各群20.4%、3.0%、11.5%、14.9%低下した。

リンク: 同社のプレスリリース


ruxolitinibクリームの結節性痒疹試験は一勝一敗
(2025年3月8日発表)

インサイト(Nasdaq:INCY)はOpzelura(ruxolitinib phosphate)の第3相結節性痒疹試験、TReE-PN1試験で主評価項目と主要副次的評価項目を達成したと発表した。1.5%クリーム製剤を一日二回、投与したところ、WI-NRS4(Worst-Itch Numeric Rating Scaleが4点以上改善)達成率が44.6%と偽薬群の20.6%を有意に上回った。尚、もう一本の第3相であるTReE-PN2試験はどちらもトレンドに留まったとのこと。前者はAAD(米国皮膚学会)のレイト・ブレイカーとして口頭発表された。

Opzeluraは12歳以上の管理不良軽中度アトピー性皮膚炎用薬として21年に米国で、23年にはEUでも、承認された。米国では非分節型白斑でも承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


抗OX40ポテリジェント抗体の第3相が再び成功
(2025年3月8日発表)

協和キリンとライセンシーのアムジェンは、KHK4083/AMG 451(rocatinlimab)がアトピー性皮膚炎における第3相ROCKET-Ignite試験とROCKET-Shuttle試験で主目的を達成したと発表した。既にROCKET-Horizon試験が成功しており、承認申請に向かうのではないか。

Ignite試験は日本も含むグローバル施設で中重度アトピー性皮膚炎の患者769人を組入れて二種類の用量を単剤投与する効果を偽薬と比較した。偽薬群の数値は公表されていないが、2用量とも共同主評価項目における偽薬修正後治療効果が有意水準に達した。尚、IGA(医師の全般的評価)はEUなどが重視するvalidated IGA-ADと、FDAが重視する修正IGA(こちらのほうがハードルが高い)に基づく評価が採用された。

Shuttle試験は局所性ステロイドや局所性カルシニューリン阻害剤を用いている管理不良患者に追加投与した試験で、こちらも2用量とも偽薬を有意に上回った。

治療時発現有害事象は発熱、悪寒、頭痛など。治療を受けている患者における破傷風・髄膜炎菌ワクチン接種応答性を検討したVoyager試験も良好な結果になったようだ。

図表:rocatinlimabの第3相ROCKETプログラム成績

EASI-75rIGA-AD 0/1vIGA-AD 0/1
Horizon試験:
 偽薬13.7%4.9%6.6%
 試験薬32.8%16.4%19.3%
Ignite試験:
 偽薬nanana
 低量36.3%(23.4%)16.3%(8.0%)19.1%(10.3%)
 高量42.3%(29.5%)22.7%(14.4%)23.6%(14.9%)
Shuttle試験:
 偽薬nanana
 低量54.1%(30.4%)22.7%(10.9%)25.8%(13.5%)
 高量52.3%(28.7%)23.3%(11.5%)26.1%(13.8%)
注:Horizon試験の用量は他二本の高量と同じ。カッコ内の数値は偽薬調整値。

リンク: 両社のプレスリリース


経口IL-23受容体拮抗剤が第3相プラク乾癬試験で経口TYK2阻害剤に勝つ
(2025年3月8日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、JNJ-77242113(icotrokinra)の第3相中重度プラク乾癬試験二本で、偽薬対照の主評価項目だけでなく、ブリストル マイヤーズ スクイブのTYK2阻害剤Sotyktu(deucravacitinib)と盲検下で比較した副次的評価項目も達成したと発表した。データは未発表。日本の施設も参加した。12歳以上の小児も組み入れた第3相二本は既に成功しており、承認申請が近いのではないか。

既存薬に十分応答しない中重度プラク乾癬の治療はIL-23を標的とする抗体医薬が高い効果を持つ。icotrokinraはIL-23の受容体を阻害するペプチド薬で一日一回、経口投与する。Sotyktuも経口剤なので比較対照に選ばれたものと推測される。

米国カリフォルニア州のProtagonist Therapeutics(Nasdaq:PTGX)からライセンスしたもの。バイオアベイラビリティは低く、胃腸で99%が分解される由。

リンク: 同社のプレスリリース


ソーティクツは乾癬性関節炎のデータを発表
(2025年3月8日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは昨年12月にSotyktu(deucravacitinib)の第3相活性期乾癬性関節炎適応拡大試験が二本とも成功したと発表したが、バイオ薬歴のない患者やTNF阻害剤歴のある患者を組入れたPOETYK PsA-2試験の成績がAAD(米国皮膚科学会)で発表された。第16週のACR20が54.2%と偽薬群の39.4%を有意に上回った。この試験はアムジェンのPDE4阻害剤Otezla(apremilast)を投与する群も設定されたが薬効比較は行われなかった。上記icotrokinraの試験と異なり、apremilastの偽薬は用いられておらず二重盲検になっていない。

深刻有害事象の発生率は偽薬群1.0%、Sotyktu群1.9%、apremilast群3.8%、有害事象による治験離脱率は各群1.3%、2.2%、10.5%だった。

本試験は日本の施設も参加した。

リンク: BMSのプレスリリース

【承認申請】


Wiskott-Aldrich症候群用薬を米国でも承認申請
(2025年3月11日発表)

医薬品の製造や供給を手掛けるイタリアの非営利法人、Fondazione Telethonは、米国でTelethon 003(etuvetidigene autotemcel)をWiskott-Aldrich症候群用薬として承認申請したと発表した。EUでも2月に申請済み。

この疾患は男児新生児25万人に一人の希少遺伝子疾患で、血球が欠乏し感染症や出血を被り易く、自己免疫疾患やリンパ腫のリスクもある。HLA適合ドナーがいれば治癒的造血幹細胞移植が可能だが、適応にならない症例には対症療法しかない。Telethon 003は、欠乏しているヒトWAS遺伝子のcDNAをレンチ・ウイルス・ベクターを用いて自家CD34陽性幹細胞/前駆細胞に導入した上で投与するもの。23年にイタリアで、30人程度の投与実績に基づき、6ヶ月児以上のHLA適合近親ドナーがいない重症Wiskott-Aldrich症候群に用いることが認可された(拡大アクセス・プログラムに基づくもので正式承認ではない)。

リンク: 同法人のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



PDUFA
25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
25/3/20Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用)
25/3/23Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加)
25/3/26GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症)
25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
25/3/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
25/4推JNJのnipocalimab(全身性筋無力症)
25/4推ノバルティスのatrasentan(IgA腎症)
25Q2アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌)
25/4/2Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/4/3ExelixisのCabometyx(cabozantinib、神経分泌細胞腫追加)
25/4/18RegeneronのDupixent(dupilumab、特発性慢性蕁麻疹追加)
25/4/21BMSのOpdivoとYervoy(nivolumabとipilimumab、肝細胞腫一次治療追加)
25/4/26TelixのPixclara(18F-floretyrosine、神経膠腫PET造影剤)
25/4/29Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
25/4/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)


今週は以上です。

2025年3月8日

第1197回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • イミフィンジの胃・GEJ術前術後療法試験が成功 
  • MOP・NOPアゴニストの二本目の第3相が成功 
  • エンハーツの胃癌二次治療試験試験が成功 
  • ゾレアが食物アレルギー試験で経口減感作療法に勝つ 
  • 抗TSLP抗体の第3相CRSwNP試験が成功 
  • ヘプシジン類縁体の第3相瀉血依存真性多血症試験が成功 
  • JNJ、カッパ・オピオイド受容体アンタゴニストの鬱病プログラムを中止 
  • ガザイバをループス腎炎に適応拡大申請 
  • GSK、抗IL-5抗体を米国でも承認申請 
  • MacTelの他家細胞療法が承認 
  • 中国発の抗PD-1抗体が食道扁平上皮腫に適応拡大 
  • ジェネンテック、皮下注用tPAが脳梗塞に承認 
  • EUでオプジーボ・ヤーボイ併用が肝癌一次治療に承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


イミフィンジの胃・GEJ術前術後療法試験が成功
(2025年3月7日発表)

アストラゼネカは抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第3相MATTERHORN試験で主目的を達成したと発表した。適応追加申請するのではないか。

この試験はステージIIからIVAの早期/局所進行性胃・GEJ(胃食道接合部)癌を対象に、FLOTレジメン(fluorouracil、leucovorin、oxaliplatin、docetaxel)による術前術後各2サイクルの化学療法にImfinziを追加し、その後もImfinziを10回投与する便益を偽薬追加と比較したもの。23年に副次的評価項目である術前投与によるpCR(病理学的完全寛解)率が19%と偽薬追加群の7%を有意に上回ったことが報告されたが、今回、EFS(無イベント生存期間、盲検独立中央評価)に統計的に有意且つ臨床的に意味のある差が確認された。データは公表されていない。副次的評価項目の全生存期間は未だ中間解析段階だが強い傾向が見られたとのこと。

リンク: 同社のプレスリリース


MOP・NOPアゴニストの二本目の第3相が成功
(2025年3月6日発表)

米国ニュージャージー州の未上場医薬品開発会社、Tris Pharmaは、TRN-228(cebranopadol)の二本目の第3相急性疼痛試験が成功したと発表した。米国で承認申請する考え。

ドイツのGrünenthalが創製したMOP(ミュー・オピオイド・ペプチド)とNOP(nociceptin/orphanin FQペプチド)の受容体の刺激剤。両方を作動することで鎮痛作用を増強し、オピオイドが生む幻覚や薬物依存などの副作用を緩和するアイディアだ。第3相は米国の施設で、ALLEVIATE1は腹部形成術後の中重度急性疼痛、2はバニオン(腱膜瘤)切除術後急性疼痛を対象に、前者は400mcgまたは200mcgを2日間、後者は400mcgを4日間、投与した。主評価項目はNRS(数値評価尺度)の4~48時曲線下面積。前者の試験では400mcg群の最小二乗平均値が偽薬を59.2下回り、後者では56.1下回った。後者はoxycodone(即時放出製剤)を一日4回投与する群も設定され、偽薬を有意に上回ったが、試験薬の数値が223.4であったのに対して250.4と数値上上回り、ポスト・ホック解析で最小二乗平均差27.0(95%信頼区間-54.3、0.4)、p=0.054と、あと一歩で有意差が出るところだった。

依存性試験もカプセル剤、新開発の点鼻用、ともに問題ない結果になった。慢性疼痛用途は、同社が入手する前に実施された第3相癌性疼痛試験、CORALが中止になったが、morphine延長放出錠と比べた非劣性解析は成功したようであり、同社は改めて第3相を開始する考え。

リンク: Tris社のプレスリリース


エンハーツの胃癌二次治療試験試験が成功
(2025年3月4日発表)

第一三共は、アストラゼネカと共同開発販売している抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)の第3相DESTINY Gastric04試験が主目的を達成したと発表した。欧米日亜などの施設でher2陽性、治癒切除不能な進行/再発胃・胃食道接合部腺癌でtrastuzumab歴を持つ二次治療患者494人を組入れて、全生存期間をpaclitaxel・ Cyramza(ramucirumab)併用群と比較したところ、中間解析で統計的に有意かつ臨床的に意味のある差を付けた。

Enhertuは日韓で実施された3次治療試験に基づき、欧米でもher2陽性進行/再発胃癌に適応拡大が既に承認されており、3次治療に限定されなかったので、今回の対象患者はオン・レーベルだ。それでも、2次治療において単剤ではなく2剤併用群を上回るエビデンスができたのはポジティブだ。尤も、長い目で見れば、一次治療試験で抗her2抗体ベースのレジメンに勝つことがEnhertuの目標だろう。

リンク: 第一三共のプレスリリース(和文)


ゾレアが食物アレルギー試験で経口減感作療法に勝つ
(2025年3月2日発表)

ロシュは、抗IgE抗体Xolair(omalizumab)が第3相食物アレルギー治療試験で薬効も忍容性も経口減感作療法(OIT:アレルゲンを少しずつ増量しながら与えて慣れさせる)を上回ったと発表した。24年に米国で1歳以上の食物アレルギーの治療薬として承認されるエビデンスとなった、第3相研究者主導試験OUtMATCH試験の第2ステージに当たる試験で、OIT群は有害事象による治験離脱が多かったことが影響したようだ。デザインが複雑なので、直接比較試験と呼べるかどうかは議論があるだろう。

第1ステージでは、ピーナツを含む3種類の食品アレルギーを持つ1~17歳の患者を組入れてXolairを2週毎または4週毎に16週間、投与し、アレルゲン・チャレンジ(アレルゲン摂取量を徐々に増やしていき耐容限界量を測定する)成績を偽薬群と比較した。結果は、ピーナツ蛋白の場合、68%の患者が600mgを摂取しても中等度以上のアレルギー反応を起こさなかった(偽薬群は6%)。カシューナッツは42%、牛乳は67%、卵は67%だった。この薬自体がアナフィラキシー・リスクを持つことを割り引かなければならないが、なかなかの効果だ。

第2ステージは全員にXolairを8週間投与した後に、継続投与する群とOITを施行してXolairは8週後に偽薬にスイッチする群に無作為化割付けして、52週後のアレルゲン・チャレンジ成績を比較した。継続投与群の36%がピーナツ蛋白2000mgなどのアレルゲンにアレルギー反応を起こさなかったが、OITスイッチ群は19%に留まり、オッズ比2.6、p=0.031だった。深刻有害事象発現率は各0%と30.5%、有害事象による治験離脱率は0%と22%だった。Xolairに不耐だった患者は無作為化割付け前にドロップしただろうから、有害事象データの差は過大表示されている可能性があり、そうなると、効果の差も過大があるかもしれないことが留意点だ。

更に、第3ステージで、Xolairを中止した後にアレルゲン・チャレンジを行ったところ、様々な食品について300mg以上を耐容できた患者の比率が38~70%と、良さそうに思える結果が出たが、摂取回避を再開した患者も多いと注記されているので、持続性が今一つだったのかもしれない。

米国で承認されている効能は、アクシデントで服用してしまった時のリスクを緩和するというもので、引き続き摂取しないよう努めなければならない。第3ステージが持続的な免疫寛容効果を支持するようなら朗報だが、そこまでではなさそうな印象だ。

リンク: 同社のプレスリリース


抗TSLP抗体の第3相CRSwNP試験が成功
(2025年3月1日発表)

アストラゼネカとアムジェンは、共同開発販売しているTezspire(tezepelumab-ekko)が第3相CRSwNP(鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎)試験で主目的を達成したと発表した。AAAAI(米国アレルギー・喘息・免疫学会)やNew England Journal of Medicineで結果を発表した。

抗TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)抗体で、米欧日で重度喘息症などの症状管理薬として承認されている。適応拡大申請に向かうのではないか。

この試験は成人の重度CRSwNPで点鼻ステロイドで治療しても症状を管理できず、鼻ポリープの摘出術が適応になり、過去1年間に全身性ステロイド歴や手術歴がない患者を組入れて、210mgを4週毎皮下注する効果を偽薬と比較した。共同主評価項目のうち総鼻ポリープスコアは52週後に偽薬調整後で2.07点低下、平均鼻詰まりスコアは同1.03点低下した。高好酸球数の患者のほうが便益が大きかったが、低値サブグループでも便益があった。

AAAAIではGSKの抗IL-5抗体depemokimabのCRSwNP試験成績も発表された(後述)。

リンク: 両社のプレスリリース
リンク: Lipworthらの治験論文抄録(New England Journal of Medecine)


ヘプシジン類縁体の第3相瀉血依存真性多血症試験が成功
(2025年3月3日発表)

米国カリフォルニア州のProtagonist Therapeutics(Nasdaq:PTGX)と開発販売パートナーの武田薬品は、PTG-300(rusfertide)の第3相VERIFY試験で主目的などを達成したと発表した。瀉血依存真性多血症患者250人を組入れて標準的治療に加えて週一回、皮下注する効果を検討したところ、第20-32週にヘマトクリット値が回復し瀉血が適応でなくなった患者の比率が77%と偽薬追加群の33%を有意に上回った。副次的評価項目、かつEU向け主評価項目である32週間の平均瀉血回数も0.5回対18回で有意差を付けた。有害事象は注射箇所反応など。薬物関連深刻有害事象は発生しなかった。動物試験で良性悪性皮下腫瘍が発生し21年に短期的にFDAが治験停止を命じたことがあったが、今回の試験でも癌のリスクが高まるエビデンスはなかった。

鉄が細胞外に排出されるのを抑制する肝臓ホルモン、ヘプシジンのミメティック。米国は二社で共同商業化、海外は武田が開発販売する。

リンク: 両社のプレスリリース


JNJ、カッパ・オピオイド受容体アンタゴニストの鬱病プログラムを中止
(2025年3月6日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、JNJ-67953964(aticaprant)の第3相鬱病アジャンクト試験、VENTURAプログラムを中止すると発表した。安全性などは問題なかったが薬効が不十分だったため。ClinicalTrials.govを見ると、昨秋、VENTURA-1試験が完了しており、この成績が今一つだったのだろう。他の用途の探索は続ける考え。

イーライ・リリーがLY2456302として開発していたカッパ・オピオイド受容体アンタゴニストで、JNJは17年にCerecor(21年にAvalo Therapeuticsに社名変更)から一時金2500万ドル、承認時目標達成報奨金2000万ドルで完全取得した。Cerecorはニコチンなどの薬物依存を伴う鬱病を狙っていたようなので、JNJも視野に入れているかもしれない。

類薬ではNeumora Therapeutics(Nasdaq:NMRA)のNMRA-140(navacaprant)も一本目の第3相鬱病アジャンクト試験がフェールした。他の二本の参加施設や被験者を厳選するデザイン変更を行い、26年の開票を待つ。

リンク: JNJの声明(プレスリリースではない)

【承認申請】


ガザイバをループス腎炎に適応拡大申請
(2025年3月5日発表)

ロシュは欧米でGazyva(obinutuzumab)を活性期ループス腎炎に適応拡大申請したと発表した。米国では受理され、今年10月に審査結果が判明する見込み。第3相REGENCY試験で標準療法に追加する便益を検討したところ、第76週腎完全反応率が46.4%と偽薬追加群の33.1%を有意に上回り、第2相に続き二本目のエビデンスとなった。

Gazyvaは抗CD20抗体。米欧日で慢性リンパ性白血病などに承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


GSK、抗IL-5抗体を米国でも承認申請
(2025年月日発表)

GSKは、米国でGSK3511294(depemokimab)を好酸球性喘息症と鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎(CRSwNP)の治療薬として承認申請し受理されたと発表した。審査期限は25年12月16日。日欧でも申請受理されている。

同社は抗IL-5抗体Nucala(mepolizumab)を好酸球性喘息症などの治療薬として販売しているが、depemokimabはフラグメント結晶化可能領域を改変して半減期を延長、皮下注頻度を毎月から半年毎に減らすことに成功した。好酸球性喘息症では中高量吸入コルチコステロイドを含む複数の薬を服用しても増悪を十分に抑制できない12歳以上の患者に、CRSwNPでは管理不十分な成人患者に、用いることを想定している。前者は成人患者を組入れた第3相で増悪の偽薬比率比が一本は0.42、もう一本は0.52だった。後者はAAAAIやLancet誌で52週全般的内視鏡的鼻ポリープスコアと49~52週鼻閉塞スコアが二本とも有意に改善したことが発表されたところ。

リンク: GSKのプレスリリース
リンク: 同、学会論文発表について(3/1付)
リンク: Gevaertらの治験論文(Lancet)

【承認】


MacTelの他家細胞療法が承認
(2025年3月6日発表)

米国ロード・アイランド州の未上場企業、Neurotech Pharmaceuticalsは、FDAがEncelto(revakinagene taroretcel-lwey)を特発性黄斑部毛細血管拡張症2型(MacTel)用薬として承認したと発表した。この中心視力が進行性に悪化する神経変性疾患の治療薬が承認されたのは米国初。6月に入手可能になる見込み。

黄斑部光受容体の生存・維持を促進するヒトCNTF(毛様体神経栄養因子)を放出するよう遺伝子操作された他家網膜色素上皮細胞を中空糸膜カプセルに封入したインプラント。第3相試験二本で、24ヶ月間のエリプソイド・ゾーン喪失が偽薬比有意に小さかった。一本ではベースライン値(メジアンで0.35mm2)が0.075mm2増加、偽薬群は0.166mm2増加し、群間差は-0.091mm2だった。もう一本は、各、0.48mm2、0.111mm2、0.160mm2、-0.049mm2だった。

有害事象は結膜下出血、暗順応遅延など、警告・事前注意事項は重度視力低下(ETDRSチャートで15字以上)や感染症、網膜裂孔・剥離など。

リンク: 同社のプレスリリース


中国発の抗PD-1抗体が食道扁平上皮腫に適応拡大
(2025年3月4日発表)

BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE;HKEX:6160)はFDAがTevimbra(tislelizumab-jsgr)の適応拡大を承認したと発表した。成人のPD-L1陽性(≧1%)切除不能/転移ESCC(食道扁平上皮腫)の一次治療に化学療法と併用する。中米欧日などの施設でPD-L1不問で組入れた第3相RATIONAL 306試験でメジアン生存期間が17.2ヶ月と偽薬・化学療法併用群の10.6ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.66と良好な成績を上げた、探索的解析で便益があるのは専らPD-L1≧1%の患者だけであることが判明し、他の抗PD-(L)1抗体と同様に、限定的な承認となった。

23年に適応拡大申請されたが連邦政府職員の渡航制限などの影響で治験実施施設の査察が遅れ、更に、この適応における抗PD-(L)1抗体全体の諮問委員会を経たため時間がかかり、後から申請された胃癌などにおける一次治療のほうが先に承認された。

BeiGeneは英語社名をBeOne Medicinesに変更する予定。

リンク: 同社のプレスリリース


ジェネンテック、皮下注用tPAが脳梗塞に承認
(2025年3月3日発表)

ロシュの米国子会社であるジェネンテックは、TNKase(tenecteplase)が成人の急性虚血性卒中(AIS)に適応拡大したと発表した。欧州では昨年1月に承認済み。25年前に成人の急性ST上昇心筋梗塞(STEMI)治療薬として承認されたtPA製剤で、同社のActivase(alteplase)がボラス静注後1時間以上の点滴が必要なのに対して、5秒間のボラス皮下注で済むのが長所。用量はSTEMIの半分なので、低容量版を発売する予定。米国では従来もAISにオフレーベル使用されていただろうから今更感もある。

欧州では24年1月に適応拡大済。tPAは頭蓋内出血リスクを伴うので発症後早期の、便益が期待できる時間内に投与する必要があるが、米国のレーベルはSTEMIに関してはできるだけ早く、AISは3時間以内としているのに対して、EUでは各6時間と4.5時間としており、若干の違いがあり、tPAの評価が一筋縄ではいかないことを示している。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース


EUでオプジーボ・ヤーボイ併用が肝癌一次治療に承認
(2025年3月7日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、Opdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を成人の切除不能/進行肝細胞腫の一次治療に併用することがEUで承認されたと発表した。米国でも承認申請中で審査期限は4月21日。

第3相CheckMate-9DW試験でメジアン生存期間が23.7ヶ月と医師が選んだ薬(被験者の85%がエーザイのlenvatinibを使用)の20.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.79、p=0.018だった。G3/4治療関連有害事象発現率は各群41%と42%で大差なかった。

リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
25/3/20Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用)
25/3/23Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加)
25/3/26GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症)
25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
25/3/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
25/4推JNJのnipocalimab(全身性筋無力症)
25/4推ノバルティスのatrasentan(IgA腎症)
25Q2アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌)
25/4/2Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/4/3ExelixisのCabometyx(cabozantinib、神経分泌細胞腫追加)
25/4/18RegeneronのDupixent(dupilumab、特発性慢性蕁麻疹追加)
25/4/21BMSのOpdivoとYervoy(nivolumabとipilimumab、肝細胞腫一次治療追加)
25/4/26TelixのPixclara(18F-floretyrosine、神経膠腫PET造影剤)
25/4/29Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
25/4/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)



今週は以上です。

2025年3月1日

第1196回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • FDAとCDCの諮問委員会がストップ? 
  • 次世代SERDの早期スイッチ試験が成功 
  • トゥレット症候群の第3相が成功 
  • 無益認定された抗癲癇薬の第3相を続行 
  • ガンマ・インターフェロン阻害薬を二次性HLHに適応拡大申請 
  • リジェネロン、抗CD20xCD3抗体を米国で再申請 
  • オプジーボ・ヤーボイ併用を米国でもMSI-H/dMMR転移大腸癌一次治療に承認申請 
  • 田辺三菱、欧州でパーキンソン病の持続皮下注用薬を承認申請 
  • 2月のCHMP 
  • FDA、テストステロン製品の心血管リスクを否定、高血圧リスクを肯定 
  • CDC、チクングニア・ワクチンの接種後入院症例を検討 
  • クロザビンの処方・調剤規制を緩和 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


FDAとCDCの諮問委員会がストップ?
(2025年2月27日発表)

25-26年接種用インフルエンザ・ワクチンの配合株を検討するはずだったFDA諮問委員会がキャンセルされた。Medpage Todayなど複数が報道している。トランプ大統領の就任以来、連邦政府の様々な活動にブレーキがかかっているが、FDAの諮問委員会は予定されていた全てがキャンセル又は先送りになっている。予防接種に懐疑的とされるRobert F. Kennedy Jr.がHHS(米国連邦保健福祉省)の長官に就任後、5価髄膜炎菌ワクチンやチクングニア・ワクチンを検討するACIP(米国連邦疾病予防管理センターのワクチン諮問委員会)もキャンセルされた。更に、HHSが、モデルナに対するトリ・インフルエンザ・ワクチンの開発補助金(最大5.9億ドル)を再考していると報道されている。

第2次トランプ政権発足後1ヶ月経っても混乱は収まらない。

リンク: Medpage Todayの報道

【新薬開発】


次世代SERDの早期スイッチ試験が成功
(2025年2月26日発表)

アストラゼネカは、次世代経口SERD(選択的エストロゲン受容体零落剤)AZD9833(camizestrant)が転移性乳癌の第3相SERENA-6試験で主目的を達成したと発表した。定期ctDNA検査(腫瘍関連DNAの血液検査)でESR1変異が検出されたらcamizestrantにスイッチする手法の有効性が示された。承認申請に向かうのではないか。前立腺癌の治療における、PSA値が大きく増加したら薬をスイッチするのと同じようなプロトコルがホルモン受容体陽性乳癌でも普及するかもしれない。

この試験は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の転移乳癌の一次治療としてアロマターゼ阻害剤とCKD4/6阻害剤による治療を受けていて、進行はしていないがESR1変異が生じた患者315人を組入れて、アロマターゼ阻害剤の代わりにcamizestrantを一日一回、経口投与する群と従来のレジメンを継続する群のPFS(無進行生存期間、治験医評価)を比較した。中間解析で統計的に有意、かつ臨床的に意味のある差があった。データは未公表。副次的評価項目の全生存期間は未成熟。

ESR1変異は内分泌療法抵抗性変異とされ、一次治療後に3割程度の患者で発生するとのこと。

camizestrantはエストロゲン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌の一次治療におけるPFS延長効果をanastrozoleと比較する、palbociclib併用第3相試験、SERENA-4も進行中。

リンク: 同社のプレスリリース


トゥレット症候群の第3相が成功
(2025年2月25日発表)

米国イリノイ州シカゴの医薬品開発会社、Emalex Biosciencesは、EBS-101(ecopipam)の第3相トゥレット症候群試験で主目的などを達成したと発表した。承認申請に向けてFDAなどと協議する考え。

トゥレット症候群は運動チックや音声チックが1年以上持続する。ドパミン受容体の過活動が関連している模様。ecopipamはシェリング・プラウ(現MSD)が創製したドパミンD1ファミリー受容体に高度選択的なアンタゴニスト。後期第2相試験でYGTSS-TTS(Yale Global Tic Severity Score-Total Tic Score)やCGI-TS-S(Clinical Global Impression of Tourette Syndrome Severity )が偽薬比有意に改善した。安全性面では不安症や鬱病が偽薬群より若干多く見られた。

第3相は欧州北米の施設で小児患者167人と成人患者49人を組入れ、全員に12週投与し応答した患者を継続投与群と偽薬スイッチ群に無作為化割付けし、再発までの期間を比較した。主評価項目である小児サブグループにおけるハザードレシオは0.5、p=0.0084、継続投与群は12週の期間中に41.9%が再発したが、偽薬スイッチ群は68.1%と上回った。副次的評価項目の成人も含めたハザードレシオは0.5、p=0.0050、再発率は41.2%対67.9%と、類似した結果になった。有害事象は傾眠、不安、疲労、頭痛など。

同社はParagon Biosciencesが設立したポートフォリオ・カンパニーの一つ。

リンク: 同社のプレスリリース


無益認定された抗癲癇薬の第3相を続行
(2025年2月28日発表)

米国の中枢神経系薬開発会社、Praxis Precision Medicines(Nasdaq:PRAX)は、T型カルシウム・チャネル拮抗剤PRAX-944(ulixacaltamide)の第3相本態性振戦試験、Essential 3の独立データ監視委員会がスタディ1の中間解析で無益認定したと発表した。解析モデルの前提が適切でなかった可能性があるのか、他の解析方法の探索も勧めたようだ。同社は、組入れが相当進捗しているため、スタディ1とスタディ2を継続する考え。25年第3四半期に結果が判明する見込みだ。結果が良ければ承認申請する考え。

同薬は第2相試験がフェールしたが第3相に進んだ。一本は偽薬または60mg(一日一回経口、用量は漸増)に無作為化割付けして12週間投与し、mADL11(Activities of Daily Livingの11項目を加重合計、数値が大きいほど重症)の変化を比較した。もう一本は試験薬を8週間投与した後に偽薬スイッチ群と継続群に無作為化割付けして4週間投与し、mADL11の数値を維持できた患者の比率を比較した。記述の順番から考えれば前者がスタディ1と推測されるが、企業プレゼン資料等を見ても確認できなかった。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


ガンマ・インターフェロン阻害薬を二次性HLHに適応拡大申請
(2025年2月27日発表)

Swedish Orphan Biovitrum(STO:Sobi)は、Gamifant(emapalumab-lzsg)の適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。インターフェロン・ガンマを標的とする抗体で、18年に欧米で承認申請され、同年、米国で、再発、難治、進行性、または既存治療不耐の原発性HLH(血球貪食リンパ組織球症)の治療薬として承認された。今回はスチル病(全身性若年性特発性関節炎や成人発症スチル病)患者が合併したHLH/MAS(マクロファージ活性化症候群)で、グルココルチコイドに応答不十分または再発、ないしは再発するMASの適応を求めている。二本の単群試験のプール分析(n=39)で第8週完全反応率が53.8%となり、72%がステロイドを1mg/kg/日以下に抑制することに成功した。

リンク: 同社のプレスリリース


リジェネロン、抗CD20xCD3抗体を米国で再申請
(2025年2月26日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、REGN1979(odronextamab)を米国で再承認申請し受理されたと発表した。審査期限は25年7月30日。

CD20とCD3に結合する二重特異性抗体で、23年に欧米で第2相試験の成績に基づき難治/再発性の濾胞性リンパ腫とびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に承認申請され、EUでは24年8月に二次以上の治療歴を持つ患者向けに条件付き承認されたが、米国では、加速承認の要件である、市販後薬効確認試験の組入れが進んでいることを満たしていないとして、審査完了通知を受領した。用量決定フェーズの組入れは開始されたが検証的フェーズの組入れが始まっていなかったことがネックになった。今回、第3相濾胞性リンパ腫一次治療試験、OLYMPIA-1の組入れが要件を満たしたため、再申請に至った。びまん性リンパ腫の第3相OLYMPIA-3も進行中だが、要件未充足なのか、今回は再申請されなかったようだ。

リンク: 同社のプレスリリース


オプジーボ・ヤーボイ併用を米国でもMSI-H/dMMR転移大腸癌一次治療に承認申請
(2025年2月24日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab)を併用で12歳以上のMSI-H/dMMR(高マイクロサテライト不安定性またはミスマッチ修復不全)のある切除不能/転移結腸直腸癌に用いる適応拡大申請を米国で行い受理されたと発表した。審査期限は25年6月23日。米国では18年に三次治療が承認されているが、今回、承認されれば一次治療から使えるようになる。

エビデンスとなるCheckMate-8HW試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を医師が選んだ化学療法(mFOLFOX-6またはFOLFIRIベース)と比較したところ、ハザードレシオが0.21と大差になった。メジアン値は未達(95%下限38.4ヶ月)、化学療法群は5.9ヶ月(95%信頼区間4.4-7.8ヶ月)だった。G3/4治療関連有害事象の発現率は23%対48%で下回った。

本試験は2次治療以降の患者も組み入れており、共同主評価項目である全被験者における併用群とOpdivo単剤群の比較もハザードレシオ0.62、統計的に有意だった。G3/4治療関連有害事象発生率は22%対14%で上回った。

尚、EUでは昨年12月に上記の適応で承認済み。

リンク: 同社のプレスリリース


田辺三菱、欧州でパーキンソン病の持続皮下注用薬を承認申請
(2025年2月21日発表)

田辺三菱製薬はND0612(levodopa、carbidopa)をEUに承認申請し受理されたと発表した。小型携帯ポンプで24時間持続皮下投与する新製剤で、17年にイスラエルのNeuroDermを11億ドルで買収して入手したもの。運動症状の日内変動を経験しているパーキンソン病患者を組入れた第3相試験で、良好時間(good ON time)が経口剤投与群を1.72時間/日上回った。有害事象による離脱率は5.5%(経口剤群は3.1%)で、内容は注射箇所反応など。

米国では23年に承認申請したが、24年6月に審査完了通知を受領した。carbidopaの安全性に関わる追加情報などの不足を指摘され、今年年央に再申請する考え。

24時間持続皮下注入する似たような薬では、プロドラッグを用いたアッヴィのVyalev(日本ではヴィアレブ配合持続皮下注、欧州名はProduodopa、foslevodopaとfoscarbidopa)が22年に日本とEU(非中央手続き)で承認された。こちらも米国ではポンプに関する追加情報を求められたことなどにより申請から承認まで2年5か月かかった。

リンク: 田辺三菱のプレスリリース(和文)

【承認審査・委員会】


2月のCHMP
(2025年2月28日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

武田薬品のDeqsigaは人免疫グロブリン製剤。0歳以上の免疫不全や、原発性免疫性血栓性血小板減少症やギラン・バレー症候群、川崎病などの自己免疫疾患の治療に用いる。同社のKiovig(米名Gammagard)よりIgA含有量が少ないため、高量IgA含有製品に過敏反応のおそれのあるIgA欠乏症にも適する。

リンク: EMAのプレスリリース

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)のLynozyfic(linvoseltamab)はBCMAとCD3の二重特異性抗体。プロテアーゼ阻害剤、免疫調停薬、抗CD38抗体を含む3次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の、成人の難治/再発多発骨髄腫に単剤投与する。米国は2月に承認申請が受理されたところで、審査期限は7月10日。

リンク: EMAのプレスリリース

米国のKrystal Biotech(Nasdaq:KRYS)が申請したVyjuvek(beremagene geperpavec)はCOL7A1変異型DEB(栄養障害型表皮水疱症)の遺伝子療法。表皮細胞親和性を持つHSV-1をベクターとして7型コラーゲンの遺伝子、COL7A1を導入する。創傷箇所に皮内投与する。米国では23年5月に6歳以上のCOL7A1変異型DEBに承認されたが、CHMPは年齢限定していない。同社は日本でも開発している。

リンク: EMAのプレスリリース

以下の適応拡大も支持された。

  • ファイザーのAbrysvo:60歳以上と妊婦向けのRSVワクチンだが、対象年齢を18-59歳に拡大する。米国では昨年10月にリスク因子を持つ18-59歳に拡大した。
  • アストラゼネカのCalquence(acalabrutinib):成人のBTK阻害剤歴のない難治/再発マントル細胞腫に単剤投与。
  • ロシュのColumvi(glofitamab);成人の自家幹細胞移植不適な難治再発びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(他の小分類に当てはまらないもの)にgemcitabineとoxaliplatinと併用。米国の審査期限は7月20日。
  • Janssen-Cilagの皮下注用Darzalex(daratumumab):未治療多発骨髄腫にVelcade、Revlimid、dexamethazoneと併用する時の自家幹細胞移植適合患者限定を解除。EUでは製品名も一般名の表記も静注用と同じなので混同しやすいが、静注用の適応は従来通り。
  • 第一三共のEnhertu(trastuzumab deruxtecan):転移後に一次以上の内分泌療法歴を持ち新たな内分泌療法が適さないホルモン受容体陽性、her2極低発現乳癌を追加。米国では1月にやや異なった文言で承認。
  • ノバルティスのFabhalta(iptacopan):成人のC3腎症を追加(RAS阻害剤と併用、但し不耐不適の場合は単剤可)。米国でも審査中。
  • アストラゼネカのImfinzi(durvalumab):成人の切除可能だが高再発リスクのEGFR変異/ALS再編成がない非小細胞性肺癌。摘出術前に白金薬ベースの化学療法と併用、術後に単剤投与。
  • イーライリリーのJaypirca(pirtobrutinib):成人のBTK阻害剤歴のある難治/再発慢性リンパ性白血病。実薬対照試験でPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)のハザードレシオが0.54だったがクロスオーバーの影響で全生存期間は1.09だった。
  • Vertex Pharmaceuticals(Nasdaq:VRTX)の欧Kaftrio(elexacaftor、tezacaftor 、ivacaftor)とKalydeco(ivacaftor):2歳以上の嚢胞性線維症のうち、従来はF508欠損型だけだったが、クラス1以外のすべての変異に変更。欧州における患者のカバレッジが15~17%上昇し95~97%に。午前はKaftrio、午後はKalydecoを服用する。病気の原因であるCFTR変異に働きかける薬だが、クラス1はCFTRの生産に異常があるためか適応外。
  • Janssen-CilagのTremfya(guselkumab):成人の在来薬/バイオ薬不応不耐な中重度活性期潰瘍性大腸炎。米国でも申請中。
  • アッヴィのRinvoq(upadacitinib):成人の巨細胞動脈炎。日米でも適応拡大申請中。

  • 過去の案件の再審査結果は、まず、MSDのKeytruda(pembrolizumab)は切除不能非上皮性悪性胸膜中皮腫に関する昨年11月の肯定的意見が維持された。メーカー側が再審請求した模様だが、理由は明らかではない。

    エーザイ/バイオジェンのLeqembi(lecanemab)は昨年11月の肯定的意見が維持された。最終結論を出すべき欧州委員会が、その後に明らかになったデータに基づき再審請求したもの。アポリポプロテインEのエプシロン変異を二揃い持たない患者限定で早期アルツハイマー病に用いる。

    ファイザーの禁煙補助薬Champix(varenicline tartrate)の製造プロセス変更も支持された。nitrosamine不純物を許容水準以下に抑制するための変更。

    申請撤回となったのは二件。Regeneron PharmaceuticalsはDupixent(dupilumab)を12歳以上の慢性特発性蕁麻疹に適応拡大申請していたが撤回した。米国でも審査完了通知を受領したが第3相試験のスタディCのデータに基づき追加申請しており、ストレートに承認されたのは日本だけだ。

    HIPRA HUMAN HEALTHは23年にEUでアルファ/ベータ系統COVID-19ワクチンBimervax(selvacovatein)が承認された。XBB.1.16系統のスパイク蛋白を含有するdamlecovateinをJN.1系統対応ワクチンとして申請していたが、今回、撤回した。オリジナルのワクチンにはなかった不純物が検出されたためCHMPが承認に後ろ向きな姿勢を示していた。開発社は24/25年シーズンに間に合わないので他のワクチンに切り替える考え。

    【医薬品の安全性】


    FDA、テストステロン製品の心血管リスクを否定、高血圧リスクを肯定
    (2025年2月28日発表)

    FDAは男性の二次性テストステロン欠乏/低下症の治療薬として承認されているテストステロン製品について、レーベル変更を求めたと発表した。心血管疾患リスクが懸念されたが、アッヴィなどがスポンサーとなって行われたTRAVERSE試験で非劣性解析が成功したことを受けて、当試験のデータを記載すると共に、心血管リスクに関する枠付き警告を削除する。一方、血圧上昇リスクに関しては、各社のABPM(携帯24時間血圧検査器)試験で確認されたため、クラス・ウォーニングとして全製品に警告と各製品のデータを記載する。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: LincoffらのTRAVERSE試験論文(New England Journal of Medicine)


    CDC、チクングニア・ワクチンの接種後入院症例を検討
    (2025年2月25日発表)

    CDC(米国疾病予防管理センター)は、フランスのValneva(Euronext Paris:VLA)の弱毒化生チクングニア・ワクチン、Ixchiqを接種した人の入院症例を検討していることを明らかにした。65歳以上の5人が心臓/神経学的事象により入院したもの。ACIP(ワクチン接種諮問委員会)で検討する予定。現時点ではこれ以上の情報はないが、タイミングが微妙なだけに科学的議論が徹底されるか、危惧される。

    リンク: CDCのチクングニア・ワクチンに関する情報頁


    クロザビンの処方・調剤規制を緩和
    (2025年2月24日発表)

    FDAは向精神薬clozapineのREMS(リスク評価緩和戦略:副作用リスクを抑制するための各種規制)を撤廃すると発表した。難治統合失調症の切り札として位置付けられている薬だが、規制が厳しすぎて治療の妨げになりかねないことが長年の懸念だった。副作用や対応策の周知徹底が進展したことを受け、規制緩和に踏み切った。

    clozapineは1970年代にサンド(チバガイギーと合併しノバルティスを設立する前の会社、今のGE薬会社サンドではない)がスイスなどで発売した選択的5HT2a受容体拮抗剤。命に係わる無顆粒球症リスクが顕在化、自主回収・開発販売中止を経て、米国では1989年に、2009年には日本でも、承認された。FDAは、REMSが立法化されたのを機に処方・調剤規制を導入、ANC(好中球絶対数)検査を開始後半年間は週次に行うこと、薬剤師は調剤前にANC値を確認することなどを求めた。直近では、35000人以上の処方者、27000件以上の薬局、14.9万人以上の患者が登録する巨大システムとなっていた。

    FDAは当初から規制順守を徹底させてはいなかったが、リスクや検査の啓蒙・普及が進んだことから、昨年11月に精神薬理学諮問委員会と薬品安全性リスク管理諮問委員会の共同会議を招集し意見を求めたところ、15人の委員中14人が、医療従事者に対する研修義務や処方・調剤時のANC値連絡義務の廃止を支持、今回のREMS撤廃に至った。

    但し、ANC検査は従来通り推奨している。深刻好中球減少症の枠付き警告も継続される。手間暇がかかるREMSの対象でなくなるだけである。

    リンク: FDAのclozapine関連情報頁

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
    25/3/18Neurotech PharmaceuticalsのNT-501(revakinagene taroretcel、黄斑部毛細血管拡張症2型)
    25/3/20Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用)
    25/3/23Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加)
    25/3/26GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症)
    25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
    25/3/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
    25/4推JNJのnipocalimab(全身性筋無力症)
    25/4推ノバルティスのatrasentan(IgA腎症)
    25Q2アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌)
    25/4/2Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    25/4/3ExelixisのCabometyx(cabozantinib、神経分泌細胞腫追加)
    25/4/18RegeneronのDupixent(dupilumab、特発性慢性蕁麻疹追加)
    25/4/21BMSのOpdivoとYervoy(nivolumabとipilimumab、肝細胞腫一次治療追加)
    25/4/26TelixのPixclara(18F-floretyrosine、神経膠腫PET造影剤)
    25/4/29Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
    25/4/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)



    今週は以上です。

    2025年2月22日

    第1195回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • 遺伝子療法の需要が期待外れ 
    • Leber先天性黒内障4型の遺伝子療法を英国で承認申請へ 
    • トレムフィア皮下注は潰瘍性大腸炎の導入療法にも有効 
    • ギリアド、レナカパビルをHIV予防に承認申請 
    • デュピクセントを水疱性類天疱瘡に適応拡大申請 
    • 小型抗PCSK9薬を承認申請 
    • ケノデオキシコール酸が脳腱黄色腫症に承認 
    • GSK、5価髄膜炎菌ワクチンが承認 
    • コスタイベがEUでも承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【今週の話題】


    遺伝子療法の需要が期待外れ
    (2025年2月21日発表)

    近年、多くの遺伝子療法が承認されたが、需要が伸び悩んでいる製品も少なくない。3剤をロンチしたbluebird bio(Nasdaq:BLUE)は幸せは株式市場にはないと諦観したのか、バイオ・ベンチャー・キャピタルに身売りを決めた。ファイザーはなけなしの遺伝子療法薬の販売中止を決めたようだ。

    bluebird bioは21~22年に米国などで脳副腎白質ジストロフィー用薬Skysona(elivaldogene autotemcel)、ベータ・サラセミア用薬Zynteglo (betibeglogene autotemcel)、鎌状赤血球症用薬Lyfgenia(lovotibeglogene autotemcel)が承認され、売却した腫瘍学事業からもCAR-T療法Abecma(idecabtagene vicleucel)が多発骨髄腫用薬として承認されるなど、大きな成果を上げた。しかし、上記3剤の米国での価格が何れも300万ドル前後と高価であるせいか、承認後の治療開始実績は合計で50例余に留まっているようだ。

    bluebirdの一株当たり株価は18年に2781ドルに達したが、今回、Carlyle(Nasdaq:CG)とSK Capital Partnersが、3ドル及びCVR(売上目標達成時に支払われる後発債権)6.84ドルと99.6%低い価格で事業買収に合意した。CEOも交代する予定。

    リンク: bluebird社のプレスリリース

    一方、ファイザーはSpark Therapeutics(現在はロシュ傘下)のB型血友病遺伝子療法をライセンスし24年に4月に米国でBeqvez(fidanacogene elaparvovec-dzkt)名で、7月には欧州でもDurveqtix名で承認取得したが、日本では部会上程の直前に申請撤回した。ミクスオンラインはグローバル本社が全世界で今後の開発・商業化を中止することを決めたことが理由と報じたが、海外でも複数のメディアが販売中止する考えと報道した。承認後の施行実績はゼロのようだ。

    ファイザーはデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子療法PF-06939926(fordadistrogene movaparvovec)も24年に第3相がフェールし開発を中止しており、このモダリティでは苦戦している。

    リンク: MedPage Todayの報道(2/21付)

    【新薬開発】


    Leber先天性黒内障4型の遺伝子療法を英国で承認申請へ
    (2025年2月21日発表)

    米国ニューヨーク州の遺伝子療法開発会社、MeiraGTx(Nasdaq:MGTX)は、rAAV8.hRKp.AIPL1をLeber先天性黒内障(LCA)の治療に用いた臨床研究論文がLancet誌に掲載されたと発表した。英国の承認審査組織との相談で感触が良かった模様で、例外的環境条項に基づく承認を申請する予定。FDAとも相談する考え。

    LCAは33000人に一人の遺伝子疾患で、原因遺伝子は様々。本薬はAIPL1の変異が関連するLCA4型を対象としており、ヒトAIPL1をコードする配列とヒトrhodopsin kinaseプロモータ領域を組み込んだアデノ随伴ウイルス8型を中央網膜の桿体・錐体光受容細胞に導入すべく、網膜下注射する。ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで開発された技術のようだ。Lancet論文は英国の両アレル変異があり出生時法定盲目の4人の片目に施術したもの。その後、更に7人に両目施術し、どちらも意味のある改善が見られたようだ。

    リンク: 同社のプレスリリース
    リンク: Michaelidesらの治験論文(Lancet)


    トレムフィア皮下注は潰瘍性大腸炎の導入療法にも有効
    (2025年2月21日発表)

    ジョンソン・エンド・ジョンソンは抗IL-23p19サブユニット抗体Tremfya(guselkumab)を24年に米欧日で既存治療不十分応答な中重度活性期潰瘍性大腸炎に適応拡大申請し、米国では9月に承認されたがどういう訳か導入期は静注用製剤、維持期は皮下注用製剤と使い分けることになっていた。乾癬など他の適応症は最初から皮下注なので奇異に感じていた。しかし、11月に導入期も皮下注する新用法が米国で承認申請されたのに続き、今回、エビデンスとなるASTRO試験の結果が公表された。静注用は200mgを4週毎3回投与するが、皮下注は400mgを同じスケジュールで投与する。12週臨床的完解率は27.6%と、偽薬群の6.5%を上回った。バイオ薬やJAK阻害剤による治療歴の有無を問わず有意差があった。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認申請】


    ギリアド、レナカパビルをHIV予防に承認申請
    (2025年2月18日発表)

    ギリアド・サイエンシズは米国でlenacapavirをHIVの曝露前予防(PrEP)に承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は25年6月19日。欧州でも先日、承認申請したとのこと。

    HIV/AIDS治療薬Sunlencaとして22~23年に欧米日で承認されたカプシド阻害剤。6ヶ月毎皮下注と作用が長期間持続する点で予防用途に適している。シスジェンダー女性やトランスジェンダー女性のパートナーのシスジェンダー男性、ノンバイナリーなど様々な男女を組入れた第3相試験二本で、HIV/AIDS発症を90%以上抑制した。この用途で10年以上前に承認された同社の2剤合剤、Truvada(tenofovir DF、emtricitabine)と比べても有意に抑制したようだ。

    プレスリリースではnew drug applicationと書かれており、Sunlencaの適応追加ではなく別ブランドとしてロンチする考えなのかもしれない。

    リンク: 同社のプレスリリース


    デュピクセントを水疱性類天疱瘡に適応拡大申請
    (2025年2月18日発表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:RGEN)は米国で抗IL-4受容体アルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)を成人の水疱性類天疱瘡(BP)に適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限は25年6月20日。中重度患者106人を組入れた第3相ADEPT試験で持続的疾病完解率(コルチコステロイド治療を16週までに終了した上で臨床的完解を達成)が20%と偽薬群の4%を有意に上回った。症状緩和作用も見られた。

    Dupixentは二型炎症が関わる様々な疾患に有効で、米国ではアトピー性皮膚炎、好中球性またはステロイド依存喘息症、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎、好中球性食道炎、結節性痒疹、好中球性慢性閉塞性肺疾患用薬として、年齢・既存治療応答性に関わる限定付きで承認されている。

    リンク: 同社のプレスリリース


    小型抗PCSK9薬を承認申請
    (2025年2月10日発表)

    米国オハイオ州の未上場企業、LIB Therapeuticsは、LIB003(lerodalcibep)をFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査祈願は25年12月12日。FDAは今のところ諮問委員会を招集する考えはないとのこと。LDL受容体に結合し零落させるPCSK9を標的とする薬で、15~16年に欧米日で承認されたアムジェン(日本ではアステラス製薬)のRepatha(evolocumab)が抗体医薬であるのに対して、分子量が10分の一の、ヒト・フィブロネクチン由来のPCSK9結合性アドネクチンに、ヒト血清アルブミンを結合して半減期を延長したもの。4週毎皮下注する場合、Repathaは420mg/3.5mLを5分かけて投与するが、LIB003は300mg/1.2mLを数秒で足りる。

    適応症は原発性高脂血症の治療とアテローム硬化性心血管疾患の治療と予防。

    リンク: 同社のプレスリリース(Businesswire)

    【承認】


    ケノデオキシコール酸が脳腱黄色腫症に承認
    (2025年2月21日発表)

    FDAは、Mirum Pharmaceuticals(Nasdaq:MIRM)のCtexli(chenodiol)を成人の脳腱黄色腫症(CTX)治療薬として承認したと発表した。CTXは7万人に一人の進行性常染色体性劣性遺伝疾患で、CYP27A1欠損によりコレステロールの代謝プロセスで必要なCDCA(ケノデオキシコール酸)が欠乏、有害な中間代謝物が蓄積し様々な疾患を合併する。CtexliはCDCA補充療法で250mgを一日3回経口投与する。臨床試験で血漿コレスタノールなどが顕著に減少した。肝毒性が見られるため治療開始前と年一回、肝機能検査を行う。

    活性成分は胆石溶解剤として1983年に米国で承認されたがその後、販売中止された。その後、需給がタイトな薬の製造販売権を取得して思いっきり値上げしてぼろ儲けするビジネス・モデルで一世を風靡したMartin Shkreliが設立したRetrophinがGE薬の権利を取得したが、氏の逮捕・辞任後にTravere Therapeutics(Nasdaq:TVTX)に社名変更、胆汁酸関連製品事業をMirumに譲渡した経緯がある。胆石溶解用途も250mg一日3回なので、製品名だけ異なるのか、他にも何か違うのか、良く分からない。この種の温故知新型新薬は古くからある製品と価格で競争できず売上が伸び悩むことがあるが、Shkreliの全盛期なら、胆石溶解剤の販売を中止して新薬の高値を押し通すだろう。

    尚、ケノデオキシコール酸は日本でもコレステロール系胆石溶解剤として承認されている。

    リンク: FDAのプレスリリース


    GSK、5価髄膜炎菌ワクチンが承認
    (2025年2月15日発表)

    GSKはFDAがPenmenvyを侵襲性髄膜炎菌性髄膜炎の予防用ワクチンとして承認したと発表した。10~25歳に6ヶ月おいて2回接種する。23年に米国で承認されたファイザーのPenbrayaと同様な、A、B、C、W-135、Y群をカバーする5価ワクチン。GSKのA/C/W-135/Y対応Menveoと、B群対応Bexseroの抗原を合わせたもので、MenveoはA群対応凍結乾燥製剤をC/W-135/Y群対応液で混合するが、PenmenvyはA/C/W-135/Y対応凍結乾燥粉末をBの懸濁液プリフィルド・シリンジに入れて混合する。血清殺菌アッセイでB群に関してはBexseroと、他の4群はMenveoと、非劣性だった。

    Menveoの24年売上高は5億ドル弱で、その8割が米国。Bexseroは13億ドル弱でその半分が欧州、1/3が米国となっている。

    リンク: GSKのプレスリリース


    コスタイベがEUでも承認
    (2025年2月14日発表)

    Arcturus Therapeutics(Nasdaq:ARCT)とCSLは、Kostaive(zapomeran)がEUで成人向けCOVID-19ワクチンとして承認されたと発表した。ウイルスのスパイク蛋白のmRNAにRNAレプリカ―ゼのmRNAを結合したナノ・パーティクル封入ワクチンで、体内でmRNAが増幅されるため比較的少量の接種で足りる。23年に日本で初承認されて以来、2番目の承認となった。

    リンク: Arcturus社のプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
    25/3/18Neurotech PharmaceuticalsのNT-501(revakinagene taroretcel、黄斑部毛細血管拡張症2型)
    25/3/20Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用)
    25/3/23Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加)
    25/3/26GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症)
    25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
    25/3/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
    25/4推JNJのnipocalimab(全身性筋無力症)
    25/4推ノバルティスのatrasentan(IgA腎症)
    25Q2アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌)
    25/4/2Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    25/4/3ExelixisのCabometyx(cabozantinib、神経分泌細胞腫追加)
    25/4/18RegeneronのDupixent(dupilumab、特発性慢性蕁麻疹追加)
    25/4/21BMSのOpdivoとYervoy(nivolumabとipilimumab、肝細胞腫一次治療追加)
    25/4/26TelixのPixclara(18F-floretyrosine、神経膠腫PET造影剤)
    25/4/29Abeona TherapeuticsのEB-101(prademagene zamikeracel、劣性栄養障害型表皮水疱症)
    25/4/29Stealth BioTherapeuticsのelamipretide(バース症候群)



    今週は以上です。

    2025年2月15日

    第1194回

     

    【ニュース・ヘッドライン】

    • ブレヤンジの辺縁帯リンパ腫試験が好結果に 
    • ベーリンガー・インゲルハイム、進行性肺線維症用薬を承認申請へ 
    • 黒色腫全摘後はオプジーボに抗LAG-3抗体を追加しなくてもよい 
    • 大腸菌ワクチンの第3相が無益中止に 
    • Regeneron、抗BCMAxCD3抗体を再申請 
    • Biohaven、脊髄小脳失調症用薬を承認申請 
    • チクングニア熱ワクチンが承認 
    • 小野薬子会社の腱滑膜巨細胞腫用薬が承認 
    • アステラス、地図状萎縮治療薬の投与期間制限が解除 
    • アドセトリスがB細胞リンパ腫に適応拡大 
    • エブリスディの錠剤が承認 
    • 第2の神経線維腫症1型治療薬が承認 
    • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


    【新薬開発】


    ブレヤンジの辺縁帯リンパ腫試験が好結果に
    (2025年2月10日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブは、CD19標的CAR-T療法Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)の難治再発辺縁帯リンパ腫(MZL)試験がポジティブな結果になったと発表した。データは学会で発表する考え。

    Breyanziは第2相TRANSCEND FL試験で成人の様々なタイプの難治再発リンパ腫における効果がテストされ、24年に米日で難治再発濾胞性リンパ腫の3次治療などに適応拡大が認められた。今回、この単群試験のMZLコフォートで、ORR(客観的反応率)が統計的に有意且つ臨床的に意味のある成績を上げた。主要副次的評価項目の完解率も達成した。安全性に関する新しい発見はなかった。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ベーリンガー・インゲルハイム、進行性肺線維症用薬を承認申請へ
    (2025年2月10日発表)

    ベーリンガー・インゲルハイムは、選択的PDE4B阻害剤BI 1015550(nerandomilast)の第3相FIBRONEER-ILD試験で主目的などを達成したと発表した。データは25年第2四半期に公表する考え。米国などで進行性肺線維症(PPF)用薬として承認申請する考え。

    この試験はPPF患者1178人を偽薬、9mg、18mgの3群に無作為化割付けして一日2回、52週間経口投与して、FVC(努力肺活量)のベースライン比増減を比較した。安全性は特発性肺線維症(IPF)の第2相と同様だった。治験登録によると副次的評価項目として疾病の増悪や入院を抑制する効果も検討しているが、今回のプレスリリースは成否に言及していない。

    PPFはIPF以外の様々なタイプの間質性肺疾患の総称で、過去3年間に日米欧の学会が提唱し始めた比較的新しい概念。呼吸機能や造影画像などに基づき診断するようだ。

    nerandomilastはIPFの第2相試験で18mg一日2回投与群のFVCが12週後に5.7mL改善、偽薬群の81.7mL低下より良好な成績を挙げた。昨年9月には、第3相FIBRONEER-IPF試験で主目的を達成したことも発表されている。当然、両方の適応で承認申請するものと思っていたが、プレスリリースではPPFにしか言及していない。何故だろうか?

    IPFは同社のチロシン・キナーゼ阻害剤Ofev(nintedanib)やロシュ/塩野義製薬のEsbriet(pirfenidone)が既に承認されている。前者の第3相試験3本では52週間のFVC治療効果(偽薬調整後)が94~131mL、後者は157~193mLだった。両剤とも、nerandomilastの第2相と同じ12週時点の効果は、グラフから推測すると、nerandomilastと大差ないように見える。Ofevは臨床的転帰に関わる複合評価項目でもハザードレシオ0.16~0.20と好成績を挙げているので、nerandomilastを発売するまでもないということなのだろうか?

    Ofevは「進行性線維化を伴う間質性肺疾患」でも20年に米日欧で承認された。第3相におけるFVC治療効果は107mLだった。この適応はPPFとかなりオーバーラップするのではないかと思われるが、原因疾患は様々なので、どの程度バッティングするのか、公表情報や筆者の知識では明らかではない。

    リンク: 同社のプレスリリース


    黒色腫全摘後はオプジーボに抗LAG-3抗体を追加しなくてもよい
    (2025年2月13日発表)

    ブリストル マイヤーズ スクイブはOpdualag(抗LAG-3抗体relatlimab-rmbwと抗PD-1抗体nivolumabの合剤)の第3相RELATIVITY-098試験で主目的を達成できなかったことを明らかにした。ステージIII-IVの黒色腫を全摘した後にOpdivo(nivolumab)で再発を予防する標準療法に抗LAG-3抗体を追加する便益を検討したが、主評価項目であるRFS(無再発生存期間)を有意に伸ばすことはできなかった。

    LAG-3はPD-1と同様にT細胞の受容体で、抗原提示細胞などの免疫抑制的刺激を受領する。Opdualagは切除不能/転移黒色腫を組入れた試験でOpdivo単剤を上回るPFS延長効果を示し22年に米欧で承認された。プレスリリースによると、今回の試験は腫瘍摘出後であるため、最大の効果を発揮できるほど抗腫瘍T細胞が残存していなかった可能性があるようだ。

    リンク: 同社のプレスリリース


    大腸菌ワクチンの第3相が無益中止に
    (2025年2月13日発表)

    サノフィは、ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen Pharmaceuticalsから共同開発商業化権を取得した9価侵襲性腸管外病原性大腸菌感染症ワクチン、ExPEC9Vの第3相試験で独立データ監視委員会が無益を認定し、中止する予定と発表した。この試験は、60歳以上で過去2年間に尿路感染症歴のある18000人超を米欧中日アジアの施設で組入れて一回筋注し、発症リスクを偽薬と比較した。尿路感染症の7割以上は大腸菌が原因であり、60歳以上が腸管外感染するとしばしば重病化するため、奏功しなかったのは残念だ。

    リンク: サノフィのプレスリリース

    【承認申請】


    Regeneron、抗BCMAxCD3抗体を再申請
    (2025年2月11日発表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はREGN5458(linvoseltamab)の再承認申請がFDAに受理されたと発表した。審査期限は25年7月10日。

    BCMAとCD3に結合する二重特異性抗体で、予定適応症は成人の治療歴4次以上または3次治療に抵抗性の難治/再発多発骨髄腫。第1/2相LINKER-MM1試験でORR(客観的反応率、独立評価)が117人中71%、完全反応率は46%だった。G3以上の有害事象発生率は85%、致死的治療時発現有害事象は14人で、うち11人は感染症関連だった。

    23年末に承認申請され、優先審査を受けたが、フィル・フィニッシュ委託先が他社開発品に関わるFDA査察で不備を指摘・是正要求されたしわ寄せを食って、昨年8月に審査完了通知を受領した。無事解消したのだろう、再申請に至った。

    リンク: 同社のプレスリリース


    Biohaven、脊髄小脳失調症用薬を承認申請
    (2025年2月11日発表)

    Biohaven Pharmaceutical(NYSE:BHVN)はBHV-4157(troriluzole)を成人の脊髄小脳失調症(SCA)治療薬としてFDAに承認申請され受理されたと発表した。優先審査を受け、会社側は第3四半期の承認を期待している。

    SCAは運動失調などを発現する優性遺伝性疾患。troriluzoleは筋萎縮性側索硬化症治療薬として承認されているriluzoleのプロドラッグで、血液中のアミノペプチターゼによりriluzoleに変換される。riluzoleは一日2回服用だがこちらは1回。SCAやアルツハイマー病、全般不安症で第3相試験が行われ何れもフェールした。SCAの第3相では偽薬群の成績が想定外に良かったため、同社は米国や欧州の自然歴データと傾向スコア・マッチングによる比較を行った。以下はグラフ読み取りだが、米国のClinical Research Consortium for SCAのデータでは機能評価(functional Scale for the Assessment and Rating of Ataxiaに基づく)の3年間の悪化が約1.6点、troriluzole群は約0.8点に留まった。欧州のEUROSCAデータとの比較では約2.4点と約0.6点だった。

    長期試験のネックは評価対象症例数が漸減すること。米国自然歴対照では試験薬群がベースライン時点の101人から3年後には61人に減少、対照群は202人から43人と激減。欧州自然歴対照でも各群85人→54人と170人→112人となっている。一般的に、介入試験では非応答者が抜けていくため最後のほうは良好応答者ばかりになりがちだ。FDAは、このような問題点と、unmet medical needであることを天秤にかけて最終判断するのだろう。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認】


    チクングニア熱ワクチンが承認
    (2025年2月14日発表)

    デンマークのBavarian Nordic(OMX:BAVA)は、FDAがVimkunyaを12歳以上向けのチクングニア熱ワクチンとして承認したと発表した。流行地域は中央・南アフリカや南アジアなので、渡航者などが接種することになるのではないか。NIAID(米国立アレルギー・感染症研究所)からライセンスした、水酸化アルミニウム吸着ウイルス様粒子ワクチン。12~64歳に一回筋注した第3相試験で中和抗体陽転率が98%と、事前に承認審査機関と合意した閾値を上回った。偽薬群は1%だった。承認と共に、熱帯病優先審査バウチャを取得、換金する考え。

    23年にEmergent BioSolutions(NYSE:EBS)から買収したワクチン・ポートフォリオの一つ。

    リンク: 同社のプレスリリース


    小野薬子会社の腱滑膜巨細胞腫用薬が承認
    (2025年2月14日発表)

    FDAは、小野薬品が昨年6月に企業価値ベース24億ドルで買収したDeciphera PharmaceuticalsのRomvimza(vimseltinib)を腱滑膜巨細胞腫(TGCT)用薬として承認したと発表した。TGCTは良性腫瘍で多くは局所性、切除可能だが、運動能力に障害が出るなどで切除不適な場合に用いる。第3相MOTION試験で123人(うち3/4は摘出術歴あり)に偽薬または30mgを週2回、経口投与したところ、ORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)が各群0%と40%だった。反応持続期間は未だメジアン値に達していないが、85%が6ヶ月以上持続していた。主な有害事象は肝機能検査値異常や、眼窩周囲や末梢、顔面などの浮腫など。

    TGCTはCSF1(コロニー刺激因子1)が遺伝転座により過剰発現し、受容体のある細胞に集積することが関与している。RomvimzaはCSF1受容体阻害剤。第一三共の類薬、Turalio(pexidartinib)が19年に米国で承認されたが、200mgを一日二回経口投与する必要がある。死に至る可能性のある肝障害リスクがあるためEUでは承認されず米国でも枠付き警告されている。Romvimzaは枠付き警告なし。

    リンク: FDAのプレスリリース


    アステラス、地図状萎縮治療薬の投与期間制限が解除
    (2025年2月13日発表)

    アステラス製薬は、加齢性黄斑変性の合併症である地図状萎縮の治療薬、Izervay(avacincaptad pegol)の投与期間制限を解除するレーベル変更がFDAに承認されたと発表した。23年8月の初承認時点では、安全性評価の対象となる長期試験が18ヶ月のOPH2003試験のみだったためか、最長12ヶ月に限定されていたが、第3相GATHER2(ISEE2008)試験の2年追跡データで効果や安全性が確認された。脈絡膜新生血管発生率は11.6%で偽処置群の9%より高かった。

    23年4月に約59億ドルで買収したIveric Bioの製品。日本でも先日、承認申請された。EUではCHMPが臨床的に意味のある視力の改善に繋がらないと後ろ向きだったため申請撤回に至り、今のところ、承認されているのは米豪だけ。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アドセトリスがB細胞リンパ腫に適応拡大
    (2025年2月12日発表)

    FDAは、ファイザーの子会社であるSeagenのAdcetris(brentuximab vedotin)を難治/再発大細胞型B細胞リンパ腫に用いる適応拡大を承認した。成人の、2次以上の治療歴を持ち自家造血幹細胞移植やCAR-Tに不適の患者に、lenalidomide及びrituximab製品の一つと併用する。第3相ECHELON-3試験でメジアン生存期間が13.8ヶ月と、偽薬をlenalidomide及びrituximabと併用した群の8.5ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.63だった、PFS(無進行生存期間)のメジアン値は4.2ヶ月対2.6ヶ月と1ヶ月強上回り、ハザードレシオは0.53だった。Adcetris群の6%が末梢神経痛によりAdcetrisの用量を減量、4.5%が投与中止した。

    リンク: FDAのプレスリリース


    エブリスディの錠剤が承認
    (2025年2月12日発表)

    ロシュは、脊髄性筋萎縮症用薬Evrysdi(risdiplam)の5mg錠がFDAに承認されたと発表した。従来の経口液用粉末と比較した生物学的同等性試験に基づくもの。従来製剤は、例えば年齢2歳以上、体重20kg以上の場合は5mgを一日一回服用するが、一本60mg入りなので、溶解後は残りを冷蔵保存しちびちび使うことになる。5mg錠は常温保存可能なので取り扱いが多少楽になる。溶かして飲む場合は塩素の入っていない水を使う必要があることに注意。

    2歳未満または20kg未満は従来の製剤を用いる。

    リンク: 同社のプレスリリース


    第2の神経線維腫症1型治療薬が承認
    (2025年2月11日発表)

    FDAはSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)のGomekli(mirdametinib)を神経線維腫症1型(NF1)治療薬として承認した。全摘不能な症候性叢状神経線維腫(PN)を伴う2歳以上の小児と成人に用いる。後期第2相ReNeu試験で小児における確認客観的反応率が52%、成人では41%だった。応答者の9割は12ヶ月以上持続した。有害事象はラッシュや下痢、クレアチニン・フォスフォキナーゼ上昇など。警告・注意事項は左心室機能不全、目や皮膚における毒性、胚胎毒性。欧州でも承認申請中。

    NF1はMAPK経路におけるサプレッサーであるニューロフィブロミンの遺伝子変異による常染色体性優性遺伝性疾患で、米国の推定患者数は10万人、うち30~50%がPNを合併し、うち最大で85%は全摘不能とされる。Gomekliは20~22年に米欧日で承認されたアストラゼネカのKoselugo(selumetinib)と同様にMEK1/2を阻害する経口剤。Koselugoの適応は今のところ2歳以上の小児だけだが、成人患者を組入れた第3相KOMET試験が成功、日欧で適応拡大申請中。

    SpringWorksはファイザーのスピンアウトで、Gomekliのファイザー時代の開発コードはPD-325901。23年にガンマ・セクレターゼ阻害剤PF-3084014がOgsiveo(nirogacestat)名で進行性デスモイド腫瘍治療薬としてFDAに承認された。

    尚、ドイツのメルクKGaAはSpringWorks Therapeuticsと企業買収について検討していることを明らかにした。但し、拘束力のある合意にはまだ達していないとのこと。

    リンク: FDAのプレスリリース
    リンク: メルクのプレスリリース(2/10付)

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】




    PDUFA
    25/2/14GSKの髄膜炎菌A/B/C/W-135/Yワクチン
    25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
    25/3/18Neurotech PharmaceuticalsのNT-501(revakinagene taroretcel、黄斑部毛細血管拡張症2型)
    25/3/20Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用)
    25/3/23Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加)
    25/3/26GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症)
    25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
    25/3/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
    25/3/28Mirum PharmaceuticalsのChenodal(chenodiol、脳腱黄色腫症)
    注:大塚製薬のRexulti(brexpiprazole)のPTSD追加は、諮問委員会招集する見込みになり、2月8日の審査期限を超過した。


    今週は以上です。