【ニュース・ヘッドライン】
- EMA、SNSクリエイターとGLP-1作用剤の適正使用キャンペーン
- DR4アゴニスティック抗体を軟骨肉腫に承認申請へ
- コセンティクスのPMR試験が成功
- テビペネム新規塩の第3相成績を発表
- ESMO:Exelixisが新規VEGFR阻害剤の第3相成績を発表
- ESMO:ctDNAに基づくテセントリク早期介入は有効
- ESMO:抗TROP2 ADCのTNBC試験成功(ダトロウェイの巻)
- ESMO:抗TROP2 ADCのTNBC試験成功(トロデルビの巻)
- ESMO:ノバルティス、プルヴィクトのホルモン感受性前立腺癌試験が成功
- ESMO:ロシュ、新規乳癌用薬の第3相が成功
- ESMO:エンハーツの2試験のデータ発表
- ESMO:パドセブ・キートルーダ併用でMIBCの摘出術成績が向上が
- モデルナ、mRNA型CMVワクチンの第3相がフェール
- 前頭側頭型認知症の第3相がフェール
- ESMO:パドセブをMIBCの周術期補助療法として承認申請
- サノフィがあのTzieldを適応拡大申請
- Replimune社、黒色腫のウイルス療法を再承認申請
- ESMO:MSD、キートルーダの卵巣癌試験が成功、適応拡大を申請
- 田辺三菱のパーキンソン病用薬は今回も審査完了に
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
- ブーレンレップが米国でも復活
- ガザイバがループス腎炎に承認
【今週の話題】
EMA、SNSクリエイターとGLP-1作用剤の適正使用キャンペーン
(2025年10月21日発表)
EMA(欧州薬品庁)は7ヶ国のインスタグラム・コンテント・クリエイターを通じてGLP-1作用剤の適正使用キャンペーンを開始すると発表した。SNSクリエイターやセレブの一部が適応やリスクに配慮しない情報を流布する事例があるため、1ヶ月に亘り、啓蒙を図る。
インスタグラムを選んだのはGLP-1作用剤に関するエントリーや情報が特に多いため。選ばれたクリエイターの多くは医療従事者や栄養のエキスパート。ドイツ、イタリア、スペインなどから各国1名ずつ選んだ。各人のフォロワー数は3万人から86万人とのこと。
リンク: EMAのプレスリリース
【新薬開発】
DR4アゴニスティック抗体を軟骨肉腫に承認申請へ
(2025年10月23日発表)
米国カリフォルニア州のInhibrx Biosciences(Nasdaq:INBX)は、INBRX-109(ozekibart)が軟骨肉腫試験で主目的を達成したと発表した。26年第2四半期に承認申請する考え。
アポトーシス・シグナルを受け取るDR5に結合するシングル・ドメイン抗体鎖4個とイフェクター機能除去Fc領域を結合した106kDaのアゴニスティック抗体。TRAILより一度に結合するDR5の数を増やすことで力価を増強しオフ・ターゲット毒性を緩和した。今回のChonDRAgon試験は、G2/3(高悪性度)の進行/転移性、切除不能な通常型軟骨肉腫(conventional chondrosarcoma)の患者206人を試験薬群と偽薬群に2対1割付けして3週毎投与し、PFS(無進行生存期間、中央独立放射線学的評価)を比較したところ、階層化ハザード・レシオ0.479、p<0.0001、各群のメジアン値は5.52ヶ月と2.66ヶ月となった。軟骨肉腫の無作為化割付け試験でPFS延長効果を確認したのは初めてとのこと。野生型/変異型IDHなどのサブグループ分析も一貫した結果だった。疼痛や運動機能悪化抑制などの副次的評価項目も達成した。
肝毒性により1名死亡したため重度肝障害を除外したり初期の監視強化などを導入、治療関連肝有害事象発生率を11.8%(大半はG1/2、偽薬群の発生率は4.5%)に抑制した。
詳細は11月にCTOS(結合組織腫瘍学会)で発表する考え。
同社は24年にInhibrxがサノフィに買収された時に次項の開発品以外の開発資産を持ってスピンアウトした会社。
リンク: Inhibrx Biosciencesのプレスリリース
サノフィ、AAT欠乏症性肺気腫の遺伝子組換え薬試験が成功
(2025年10月22日発表)
サノフィはSAR447537(efdoralprin alfa)が第2相試験で主目的などを達成したと発表した。ピボタルと呼ばれていた試験なので、承認申請に向かう可能性がありそうだ。
24年5月にInhibrx社を買収して入手した、ヒト・アルファ1アンチトリプシン(AAT)とIgG4の融合蛋白。AAT欠乏症では好中球エステラーゼの制御が効かず肺気腫などの疾患を合併する。血漿由来AAT製品が実用化されているが効果が長期間持続せず、週一回投与しても2~3日で減衰するとのことだ。
今回のElevAATe試験は97人の患者を3週毎投与群、4週毎投与群、そして血漿由来製品毎週投与群に2:2:1割付けして、32週のfAAT(機能性アルファ1アンチトリプシン)濃度を比較したところ、血漿由来品比で有意な差があった。数値は未公表。正常値下限を上回った日数比率などの主要副次的評価項目も達成した。有害事象は各群同程度だった。
リンク: サノフィのプレスリリース
コセンティクスのPMR試験が成功
(2025年10月22日発表)
ノバルティスは抗IL-17A抗体Cosentyx(secukinumab)のPMR(リウマチ性多発筋痛症)における便益を検討した第3相REPLENISH試験で主目的等を達成したと発表した。26年上期に適応追加申請する考え。
成人患者を偽薬、150mg、300mgの各群に無作為化割付けして、最初の24週間はステロイド漸減も進めながら、52週における持続的寛解率を比較した。主評価項目である300mg群と偽薬群の比較で統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善が見られた。年間ステロイド投与量などの解析も成功した。データは未発表。
リンク: 同社のプレスリリース
テビペネム新規塩の第3相成績を発表
(2025年10月21日発表)
Spero Therapeutics(Nasdaq:SPRO)とGSKは、5月にSPR994(tebipenem pivoxil hydrobromide)が第3相複雑性尿路感染症試験の中間解析で主目的を達成と発表したが、ID Week 2025でデータを公表した。GSKが年内に米国で承認申請する考え。
SperoがMeiji Seilaファルマからライセンスした、オラペネム(テビペネム ピボキシル)の新規塩。Speroが第3相複雑性尿路感染症実薬対照非劣性試験を実施して21年に米国で承認申請したが、審査完了通知を受領した。主評価項目で非劣性マージンをクリアしたが、支持的解析結果が思わしくなかったらしく、エビデンス不十分と見做されたようだ。同社は人員削減を断行するとともに、GSKと提携して今回の第3相を実施した。
このPIVOT-PO試験は、成人の複雑性尿路感染症(腎盂腎炎を含む)の入院患者1690人を試験薬群(600mgを6時間毎経口投与)とimipenem及びcilastatinを用いる6時間毎静注群に無作為化割付けして7~10日間投与し、開始後17日前後にimipenem感受株感染者における有効性を判定した。主評価項目の全般的応答率は試験薬群が58.5%、対照群が60.2%、調整群間差は-1.3%(95%信頼区間-7.5,4.8)となり、95%下限が非劣性閾値の-10%をクリアした。全般的応答率の構成要素である臨床的治癒率は93.5%対95.2%、細菌学的有効率は60.3%対61.3%。非劣性試験が成功する事例では点推定値が対照群を上回ることが多いが、本剤は二本とも下回っているのが印象的だ。
リンク: 両社のプレスリリース
ESMO:Exelixisが新規VEGFR阻害剤の第3相成績を発表
(2025年10月20日発表)
Exelixis(Nasdaq:EXEL)は6月にXL092(zanzalintinib)が第3相STELLAR-303試験で主目的の一つを達成したと発表したが、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)でデータを公表した。標準療法不応、抵抗、不耐の転移結腸直腸癌(マイクロサテライト高度不安定性は除外)において、100mg一日一回経口投与をロシュの抗PD-L1抗体atezolizumabと併用する群の便益を先輩VEGFR阻害剤であるバイエルのregorafenib単剤と比べたもので、メジアン生存期間は10.9ヶ月対9.4ヶ月、ハザード・レシオは0.80、p=0.0045だった。サブグループ分析も整合的とのこと。1年生存率は各群46%と38%だった。
共同主評価項目の肝転移のないサブグループの解析は未成熟だがハザード・レシオ0.79、p=0.0875と好ましい方向を向いている。G3/4治療時発現有害事象発生率は59%対37%で上回った。
atezolizumabは転移結腸直腸癌の3次治療試験、IMblaze 370で、単剤投与群のメジアン生存期間が7.1ヶ月とregorafenib群の8.51ヶ月を下回り、ハザード・レシオは1.19だった。異なった試験のデータなので比較できるとは限らないが、単剤では上回らず、二剤併用してもメジアン1ヶ月強の延命というのは残念だ。
リンク: Exelixisのプレスリリース
ESMO:ctDNAに基づくテセントリク早期介入は有効
(2025年10月20日発表)
ロシュは、ESMOで、Tecentriq(atezolizumab)が第3相IMvigor011試験で主評価項目のDFS(再発転移または死亡までの期間、治験医評価)を達成したと発表した。この日本も参加した試験は、筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の切除術を受けた高リスク患者を頻繁に血液検査してシグナルが出たら画像診断で再発と認められなくても投与を開始する便益を検討したもの。検査はNatera社のSignatera ctDNAテストを用いた。ctDNA検出可能例761人のうち、1年内に陽転したが無再発の250人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして追跡したところ、DFSのハザード・レシオが0.64、統計的に有意な差があった。メジアン値は各群21.1ヶ月と32.8ヶ月。副次的評価項目の全生存期間のハザード・レシオも0.59で有意、メジアンは4.8ヶ月と9.9ヶ月だった。
8月にNatera社が成功発表しているが、ロシュは、おそらくESMOに配慮して、プレス・リリースを出していなかった。決算発表資料によると、25年内にctDNA陽性高リスクMIBCに適応拡大申請の予定。
リンク: ロシュのプレスリリース
ESMO:抗TROP2 ADCのTNBC試験成功(ダトロウェイの巻)
(2025年10月20日発表)
第一三共はアストラゼネカと共同開発販売している抗TROP2抗体薬物複合体、Datroway(datopotamab deruxtecan)が第3相TROPION-Breast02試験で主目的を達成したとESMOで発表した。局所再発切除不能/転移性のトリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)で、このステージにおける初治療を受ける、抗PD-(L)1抗体不適又は経験済みの患者644人を組入れて効果を化学療法群と比較したところ、メジアン生存期間は23.7ヶ月対18.7ヶ月、ハザード・レシオ0.79、共同主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)は各10.8ヶ月、5.6ヶ月、0.57となり、有意な差があった。
G3以上の有害事象発現率は33%対29%で上回った。Datroway群は間質性肺疾患による死亡が1例発生し、独立評価委員会によって試験薬関連と判定された。
Datrowayは切除不能/転移ホルモン受容体陽性her2陰性乳癌で上記と同じステージにおける1次以上の化学療法歴を持つ患者などに24~25年に日米欧で承認されている。今回の成功を受けて適応追加申請に向かう考え。
リンク: 第一三共のプレスリリース
ESMO:抗TROP2 ADCのTNBC試験成功(トロデルビの巻)
(2025年10月19日発表)
ギリアド・サイエンシズは5月に抗EGP1(別名TROP2)抗体薬物複合体Trodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)が第3相Ascent-03試験で主目的を達成したと発表したが、データをESMOで明らかにした。局所進行切除不能/転移トリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)で抗PD-(L)1抗体不適な患者の転移後一次治療における便益を化学療法(gemcitabine、carboplatin、(nab)-paclitaxelの併用)と比較したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン9.7ヶ月対6.9ヶ月、ハザードレシオ0.62と、統計的に有意な差が見られた。副次的評価項目の全生存期間は未成熟。
この試験と対になるASCENT-04/KeyNote-D19試験も5月にASCO(米国臨床腫瘍学会)で成功発表されている。局所進行切除不能/転移TNBCでこちらは抗PD-(L)1抗体が適応になる(CPS≧10)一次治療患者を組入れて、Keytruda(pembrolizumab)と併用する効果をKeytruda・化学療法薬一剤併用と比較したもので、PFSのハザード・レシオは0.65、統計的に有意だった。副次的評価項目の全生存期間はハザード・レシオ0.89と案外で未だ有意差が出ていないが、進捗率26%程度、対照群の4割が進行後にクロス・オーバーしたことなどが影響したのかもしれない。
同社はこの二つの適応拡大を当局と相談する考え。
リンク: 同社のプレスリリース
ESMO:ノバルティス、プルヴィクトのホルモン感受性前立腺癌試験が成功
(2025年10月19日発表)
ノバルティスは6月にPluvicto(lutetium Lu 177 vipivotide tetraxetan)が第3相PSMAddition試験で主目的を達成したことを明らかにしたが、ESMOでデータを発表した。PSMA陽性転移ホルモン感受性前立腺癌を対象に、ARPI(enzalutamideなどのアンドロゲン受容体回路阻害剤)とADT(アンドロゲン枯渇薬)の併用に更に追加する便益を検討したところ、PFS(放射線学的評価)のハザードレシオが0.72となり、統計的に有意だった。副次的評価項目の全生存期間は同0.84、有意水準には届いていないがクロス・オーバーの影響かもしれない。G3以上の有害事象発生率は50.7%で対照群の43%を上回った。年内に適応拡大申請する考え。
PluvictoはPSMAに結合するライガンドとベータ線を放出する放射性核種Lu 177を結合した放射性医薬品。22~25年に米欧日でARPIなどの治療歴を持つ転移ホルモン抵抗前立腺癌に承認された。
リンク: 同社のプレスリリース
ESMO:ロシュ、新規乳癌用薬の第3相が成功
(2025年10月18日発表)
ロシュはRG6171(RO7197597またはGDC-9545とも、giredestrant)の第3相evERA試験の成績をESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表した。mTOR阻害剤everolimusと併用で、PFS(無進行生存期間、治験医評価)が標準療法を上回った。患者にいち早く提供するため当局にデータを提示する考え。
経口選択的エストロゲン受容体零落剤、かつエストロゲン受容体アンタゴニストで、5本の第3相試験が進行中。日本も参加した今回の試験は、術後アジュバント又は局所進行/転移後に内分泌療法及びCDK4/6阻害剤による治療を受けたことのある、エストロゲン受容体陽性、her2陰性の、局所進行/転移乳癌が対象。30mg(一日一回経口投与)とeverolimusの併用を標準療法(exemestane、fulvestrant、またはtamoxifenをeverolimusと併用)と比較した。
共同主評価項目のうち、ESR1変異型サブグループの解析はPFSハザードレシオが0.56(95%信頼区間0.44-0.71)、メジアン値は8.77ヶ月対5.49ヶ月、intent-to-treatでは各0.56(0.44-0.71)、8.77ヶ月対5.49ヶ月だった。副次的評価項目の全生存期間は未成熟だが夫々ハザード・レシオ0.62(0.38-1.02)と0.69(0.47-1.00)と、好ましい方向を向いている。
リンク: 同社のプレスリリース
ESMO:エンハーツの2試験のデータ発表
(2025年10月18日発表)
アストラゼネカは、第一三共から共同開発販売権を得ている抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)の日本も参加した第3相試験二本の成績をESMOで発表したと、プレスリリースを出した。成功したこと自体は公表済み。
DESTINY-Breast11試験は、局所進行性/炎症性でher2陽性の高リスク早期非転移乳癌の術前療法として、Enhertuを4サイクル投与してからTHPレジメン(paclitaxel、trastuzumab、pertuzumabを併用)を施行する便益をddAC-THPレジメン(高強度doxorubicinとcyclophosphamideを投与してからTHPを施行)と比較した。尚、Enhertuだけを投与する群も設定されたが、独立データ監視委員会の勧告を受けて中途で組入れ中止となった。
主評価項目はpCR(病理学的完全反応率:切除した組織とリンパ節に浸潤腫瘍がない)。67.3%対56.3%で有意に上回った。ホルモン受容体陽性にも陰性にも便益があった。副次的評価項目のEFS(無イベント生存率)は4.5%しか成熟していないが、ハザード・レシオ0.56(95%信頼区間0.26-1.17)と好ましい方向を向いている。安全性プロファイルは上回り、間質性肺疾患の発生率は特に増加はしなかった。
第一三共は10月2日に米国で適応拡大申請したことを発表している。審査期限は26年5月18日。
もう一本のDESTINY-Breast05試験は、ポスト・ネオアジュバントという聞き慣れないセッティングにおける便益を検討した。術前療法後に乳房又は腋窩リンパ節に侵襲性残存病変があり、高リスク(治験登録によると、術前治療前に切除不能と診断された、または、術後に腋窩リンパ節が病理学的陽性)のher2陽性早期乳癌を組入れて、Enhertu(5.4mg/kgを3週毎点滴静注)とロシュのKadcyla(trastuzumab emtansine、3.6mg/kg3週毎点滴静注)の二つの抗her2抗体薬物複合体の便益を比較した。試験に参加したドイツの共同治験グループのスライドによると、両群とも最大14サイクル施行した。
主評価項目であるIDFS(無浸潤疾患生存率、担当医評価)を中間解析で達成、ハザード・レシオは0.47、3年IDFS率は92.4%対83.7%、副次的評価項目の全生存期間はまだ2.9%しか成熟していないがハザード・レシオ0.61(95%信頼区間0.34-1.10)と好ましい方向を向いている。G3以上の治療時発現有害事象発生率は50.6%対51.9%で同程度。間質性肺疾患は、Enhertu群はG3が0.9%、第一三共のリリースによると致死的なものが0.2%で発生した。Kadcyla群はG3以上はゼロだった。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース(DESTINY-Breast11試験)
リンク: 同(DESTINY-Breast05試験)
リンク: 第一三共のプレスリリース(DESTINY-Breast05試験、10/20付け)
モデルナ、mRNA型CMVワクチンの第3相がフェール
(2025年10月22日発表)
モデルナはmRNA-1647の第3相試験がフェールしたと発表した。妊娠前に潜在的CMV感染を治療できれば胎児の感染を防ぐことができるが、実現しなかった。同社CEOはブログで元々チャレンジングな試験であったことを指摘している。別用途の第2相が進行中。
CMV(サイトメガロウイルス)の膜結合Bタンパクやペンタマー(5種類の蛋白からなる抗原複合体)のmRNAを活性成分とするワクチン。今回の日本も参加した第3相は、16~40歳のこれから妊娠する可能性がある女性や、5歳以上の子供に接する予定の母親など7500人を組入れて、3ヶ月間に3回筋注する効果を偽薬と比較した。主評価項目はCMV血清陰性者の抗原検査陽転リスク(接種完了後2年間追跡)。複数の薬効解析でワクチン効率(陽転予防率)は6~23%に留まった。データ安全性監視委員会は安全性に関する懸念は指摘していない。
第2相幹細胞移植関連CMV感染症試験も進行中。移植後は抗ウイルス薬の予防的投与を施行するが、ワクチンを3回接種した上で抗ウイルス薬を中止、ブースター接種も行うことで、臨床的に顕著なCMV感染症(CS-CMVi)の抑制を図るもの。
リンク: 同社のプレスリリース
リンク: 同社CEOのブログ・ポスト
前頭側頭型認知症の第3相がフェール
(2025年10月21日発表)
Alector(Nasdaq: ALEC)は、AL001(latozinemab)の第3相FTD-GRN(プログラニュリン遺伝子変異型前頭側頭型認知症)試験で臨床的主評価項目がフェールしたと発表した。開発を中止する。社員数半減とプレジデント兼研究開発ヘッドの退任も決定した。
FTD-GRNは前頭側頭型認知症の5~10%を占め、欧米で1万人程度の希少疾患。AL001はプログラニュリンの分解に関わるsortilinを標的とする抗体。GSK提携の対象品目の一つ。INFRONT-3試験に119人を組入れて60mg/kgを4週毎投与する効果を96週間観察したが、症候性103人における臨床評価(CDR+NACC FTLD-SBベース)の解析がフェールした。FDA推奨により主評価項目に追加した血漿プログラニュリン濃度の解析は成功したが、症状悪化を抑えることはできなかった。
リンク: Alectorのプレスリリース
【承認申請】
ESMO:パドセブをMIBCの周術期補助療法として承認申請
(2025年10月22日発表)
ESMO:パドセブ・キートルーダ併用でMIBCの摘出術成績が向上が
(2025年10月18日発表)
アステラス製薬とファイザーは、ESMOで抗ネクチン-4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)とMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の周術期付随療法に併用した第3相EV-303/KeyNote-905試験の成績を発表した。数日後、アステラスは米国で適応拡大申請し受理されたと発表した。審査期限は26年4月7日。MSD側も学会発表プレスリリースを出しているが申請には言及していない。
この、日本も参加した試験は、白金薬不適/拒否の筋層浸潤膀胱癌の術前術後補助療法としての便益を検討したもの。KeytrudaとPadcevを術前に3サイクル、術後に6サイクル、Keytrudaは更に8サイクル投与する群と、Keytrudaだけを上記のサイクル数投与する群、そして、摘出術だけの群が設定されているが、最初の中間解析で併用群が主目的のEFS(無イベント生存期間)を達成した。ハザード・レシオ0.40、p<0.0001、2年EFS率74.7%(手術だけの群は39.4%)と中々の数値だ。副次的評価項目の全生存期間も各0.50、p<0.0002、79.7%対63.1%と比較的大きな差がある。PD-L1発現の有無など、事前に設定されていたサブグループ分析も良好な結果だった。G3以上の有害事象発生率は71.3%対45.9%とこちらの差も大きい。
残念なことに、Keytruda単剤群の解析は未成熟で公表されていないため、本当に2剤併用が必要なのか良く分からない。第1/2相EV-103試験などの、様々な用法を探索した試験をエビデンスにできるのかもしれないが、MSDが申請に言及していないのは、おそらく、この理由なのではないだろうか。
また、術前だけ、術後だけでは足りないのかも、副作用や費用という足かせがある以上、重要な点だ(他の癌や薬と同様に、倫理面の配慮から検討されないままになってしまうかもしれないが)。
リンク: アステラスとファイザーのプレスリリース(10/18付)
リンク: MSDのプレスリリース(同)
リンク: アステラス製薬のプレスリリース(承認申請受理について、10/22付、和文)
サノフィがあのTzieldを適応拡大申請
(2025年10月20日発表)
サノフィは抗CD3エプシロン鎖抗体Tzield(teplizumab-mzwv)を8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病の進行を抑制する薬として適応拡大申請し受理されたと発表した。先日、FDAがCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)プログラムに指定したことを発表しており、本当に1~2ヶ月で承認されるのか、注目される。
一型糖尿病においてインスリン分泌細胞を攻撃してしまう免疫細胞を抑制する抗体医薬。臨床成績も開発主体も変遷したが、22年に米国で8歳以上のステージ2の一型糖尿病用薬として承認された。血糖値が高めで症状はまだ出ていないステージ2段階の患者が、口渇や排尿増、体重減、霞目、疲労を伴う症候性疾患のステージ3に進行するリスクを抑制する。今回は、症候性に進行した患者のベータ細胞機能の悪化を抑制するもの。23年にNew England Journal of Medicine誌に刊行された治験論文によると、第3相PROTECT試験で78週の負荷後Cペプチド水準が偽薬群を有意に上回った。
リンク: サノフィのプレスリリース
リンク: Ramosらの治験論文(New England Journal of Medicine)
Replimune社、黒色腫のウイルス療法を再承認申請
(2025年10月20日発表)
Replimune Group(Nasdaq:REPL)はRP1(vusolimogene oderparepvec)をFDAに再申請し受理されたと発表した。審査期限は26年4月10日。
殺腫瘍力や免疫刺激性を増強した遺伝子組換えHSV-1療法。24年に140人を組入れた第2相単群試験に基づき、成人の抗PD-1抗体歴を持つ進行黒色腫にnivolumabと併用する用途用法で加速承認を申請したが、治験の実施状況や被験者の不均質性などを理由に、審査完了通知を受領した。何れも審査中の面談では指摘されなかった由なので、もしかしたら、FDA上層部の介入があったのかもしれない。追加試験のデザインについても言及されていたようなので、再申請には時間がかかるだろうと思っていたが、今回、追加情報を提出するだけで受理されるとは、意外な展開だ。
リンク: Replimuneのプレスリリース
リンク: 同(9/18付、タイプA会議の結果について)
ESMO:MSD、キートルーダの卵巣癌試験が成功、適応拡大を申請
(2025年10月18日発表)
抗PD-(L)1抗体は卵巣癌では苦戦しているが、5月にMSDのKeytruda(pembrolizumab)が第3相KeyNote-B96/ENGOT-ov65試験の第1次中間解析で主目的を達成したことが公表され、今回、ESMOで詳細発表された。更に、米国で承認申請が受理されたことも公表された。優先審査を受け、審査期限は26年2月20日。
白金抵抗性卵巣癌を組入れてpaclitaxelに追加する便益を検討したもの。共同主評価項目のうち全被験者のPFS(独立データ監視委員会評価)はハザード・レシオ0.70、12ヶ月PFS率はKeytruda併用群が33.1%、偽薬併用群は21.3%。PD-L1陽性(CPSが1以上)のサブグループでは各0.72、35.2%、22.6%だった。被験者の3/4がbevacizumabを併用したが、その有無を問わず効果があった。副次的評価項目の全生存期間は第2次中間解析時点でPD-L1陽性サブグループがハザード・レシオ0.76、p=0.0053、12ヶ月生存率69.1%対59.3%となり達成。全被験者ベースは、先日、最終解析で達成した旨発表されたが、数値はESMOでも発表されなかった。G3-5治療関連有害事象発生率は67.5%対55.3%で上回った。
リンク: MSDのプレスリリース
【承認審査・委員会】
田辺三菱のパーキンソン病用薬は今回も審査完了に
(2025年10月23日発表)
田辺三菱製薬の子会社であるNeuroDermはND0612(levodopaとcarbidopaの24時間持続皮下注用製剤)を運動症状の日内変動を有するパーキンソン病用薬として米国で承認申請していたが、24年6月に続き、2回目の審査完了通知を受領した。プレスリリースによると、製剤の製造所と非臨床情報に関する指摘事項があった。前回より指摘事項数が減少したようだが、この二点に関しては問題解決が遅れているのかもしれない。協議を進める考え。
NeuroDermは世界で初めて、levodopaとcarbidopaの液剤化に成功、小型携帯ポンプで24時間供給するシステムを開発した。levodopaの作用時間が短くなり症状を十分抑制できなくなった患者に適している。欧州でも今年2月に承認申請された。
リンク: 同社のプレスリリース
【承認】
ブーレンレップが米国でも復活
(2025年10月23日発表)
FDAはGSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf)を成人のプロテアソム阻害剤と免疫調停薬を含む2次以上の治療歴を持つ再発・難治多発骨髄腫にbortezomibおよびdexamethasoneと併用することを承認した。5年ぶりの復活だが、先に承認されたEUや日本より適応・用法が限定された。臨床試験でG3/4眼有害事象の発生率が77%と高く、枠付き警告/REMS(リスク評価緩和戦略)の対象となった。
多発骨髄腫で高発現するBCMAを標的とする抗体薬物複合体。20年に米欧で再発・難治多発骨髄腫の5次治療に単剤投与することが加速/条件付き委承認されたが、市販後薬効確認試験がフェール、承認取消となった。ところが、前後して2次治療の3剤併用実薬対照試験二本で優越性を確認、、復活に成功した。
FDAは7月にODAC(腫瘍学薬諮問委員会)を招集し意見を求めたところ、bortezomib及びdexathoneとの併用法は賛成3人反対5人、pomalidomide及びdexathoneとの併用法は賛成1人、反対7人と、寂しい結果となった。PFSは実薬対照群を有意に上回ったが、延命効果は一部しか成熟していないことや、多くの患者で角膜上皮有害事象が発生し、片目だけだと気付くのが遅れ潰瘍などを合併するリスクも高まることなどがボトルネックとなった様子だ。当方は承認されないと予想していたが、FDAは適応や用法を絞り込んで承認した。
GSKのプレスリリースによると、26年に2次治療患者の全生存解析結果が判明するとのことなので、成功なら2次治療やpomalidomide・dexamethasone併用も承認される可能性があるのかもしれない。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: GSKのプレスリリース
ガザイバがループス腎炎に承認
(2025年10月20日発表)
ロシュはFDAがGazyva(obinutuzumab)の活性期ループス腎炎適応拡大を承認したと発表した。成人の標準治療を受けている患者に追加投与する。第3相REGENCY試験で第76週完全腎反応率が46.4%と標準療法だけの群の33.1%を有意に上回った。EUでも今月、CHMPが肯定的意見を出している。
リンク: ロシュのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限】
| PDUFA | |
|---|---|
| 25/10推 | バイエルのBAY3427080(elinzanetant、血管運動神経症状) |
| 25/10/23 | SydnexisのRyjunea(atropine sulfate点眼、進行性近視) |
| 25/10/25 | MSDのWinrevair(sotatercept-csrk、アウトカム試験データ) |
| 25/11推 | Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群) |
| 25/11推 | ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹) |
| 25/11推 | ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加) |
| 25/11推 | ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加) |
| 25/11推 | Biohaven PharmaceuticalのBHV-4157(troriluzole、脊髄小脳失調症) |
| 25/11推 | Regeneron PharmaceuticalsのLibtayo(cemiplimab、皮膚扁平上皮腫追加) |
| 25/11推 | バイエルのBAY 2927088(sevabertinib、her2変異非小細胞性肺癌) |
| 25/11推 | アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・胃食道接合部腫瘍における周術期療法を追加) |
| 25/11/18 | Arrowhead PharmaceuticalsのARO-APOC3(plozasiran、家族性カイロミクロン血症) |
| 25/11/28 | ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症) |
| 25/11/30 | Kura OncologyのKO-539(ziftomenib、急性骨髄性白血病) |
| 25/11/30 | Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症) |
| 25/11/30 | ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-bysp、濾胞性リンパ腫2次治療を追加) |
| 25/12推 | Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、鬱病アジュバントを追加) |
| 25/12推 | ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大) |
| 25/12推 | ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症) |
| 25/12/5 | BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加) |
| 25/12/7 | Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア) |
| 25/12/11 | GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病) |
| 25/12/12 | LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症) |
| 25/12/13 | Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・ |
| 25/12/14 | アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加) |
| 25/12/15 | Innovivaのzoliflodacin(淋病) |
| 25/12/16 | GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎) |
| 26/12/16 | Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ) |
| 25/12/20 | Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症) |
| 25/12/22 | ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療) |
| 25/12/26 | OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症) |
| 25/12/26 | CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症) |
| 25/12/28 | サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症) |
| 25/12/30 | Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群) |
| 25/12/30 | Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い) |
今週は以上です。
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