2025年11月8日

第1232回

【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA、CNPV供与第2弾を発表 
  • ノボとリリーもトランプ大統領の要請に応えた 
  • He is not what he was 
  • ファセンラの好酸球増多症候群試験が成功 
  • ケレンディアは1型糖尿病のCKDにも有効 
  • ガザイバのSLE試験が成功 
  • トロデルビの転移乳癌一次治療試験がフェール 
  • アムジェン、抗FGFR2b抗体は二本目も残念な結果に 
  • 抗IGF-1R抗体を甲状腺眼症に承認申請 
  • デュピクセントを真菌性鼻副鼻腔炎に適応拡大申請 
  • Biohaven、SCA用薬が審査完了に 
  • ダラキューロがくすぶり型多発骨髄腫に適応拡大 
  • JNJ、Caplytaが鬱病の付随療法として適応拡大 
  • ホスホマイシンの静注用製剤が初承認
  • チミジン・キナーゼ2欠乏症用薬が承認 
  • PRAC、トラネキサム酸の取違えに注意喚起 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


FDA、CNPV供与第2弾を発表
(2025年11月6日発表)

FDAはCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)第2弾を発表した。国家的課題に対処しうる医薬品に関して、承認申請後1~2ヶ月で審査を完了する。既存の優先審査バウチャと同様に他の開発品の承認申請に用いることも可能。違いは、他社に売却することはできない。

対象は以下の6品目。前回同様、発表内容が漠然としていて具体的な内容が不明なものもある。

  • ベーリンガー・インゲルハイムのzongertinib(HER2肺癌):8~9月に米日でher2陽性切除不能/転移非小細胞性肺癌の再発治療薬Hernexeosとして承認されたher2チロシン・キナーゼ阻害剤。26年にBEAMION Lung-2試験の結果が判明する見込みなので、一次治療適応拡大が対象なのかもしれない。
  • ジョンソン エンド ジョンソンのbedaquiline(ヤング・チルドレンの薬物耐性肺炎):12~18年に米欧日で多剤耐性菌による肺結核の最後の治療手段、Sirturoとして承認。ヤング・チルドレンは1~4歳を指すことが多いようなので、7月に米国で承認された2~4歳向けか、そうでなければ2歳未満を申請する計画があるのかもしれない。
  • GSKのdostarlimab(直腸癌):Jemperli名で欧米で内膜腫などの治療に承認されている抗PD-1抗体。ミスマッチ修復不全/高マイクロサテライト不安定性の局所進行未治療直腸癌の第2相単群試験の結果が26年に見込まれている。23年の腫瘍学諮問委員会で第12月臨床的完全反応率に基づく加速承認を13人の委員中8人が支持している。
  • Vertex PharmaceuticalsがCRISPER Therapeuticsからライセンスして開発販売しているCasgevy(exagamglogene autotemcel):23~24年に米欧である種の鎌状赤血球病やベータ・サラセミアの治療に承認された、ex vivo遺伝子編集薬。CNPV対象疾患/年齢は不明。
  • イーライリリーのorforglipron(肥満症と関連疾患):中外製薬からライセンスした経口GLP-1作用剤。年内に肥満症/高リスク・オーバーウェイト用薬として日本も含めグローバル承認申請の予定。
  • ノボ ノルディスクのWegovy(semaglutide、肥満症と関連疾患):21~23年に米欧日で肥満症/高リスクオーバーウェイト用薬として承認されたGLP-1作用剤。米国では5月に経口剤を肥満症に承認申請し、8月には既存の皮下注用製剤がMASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)に適応拡大するなど、ライフサイクル・マネジメントが活発。その分、CNPVの対象が何なのか想像がつかないが、orfprglipronが選定されたのだからWegovyも経口剤なのではないか。

  • リンク: FDAのプレスリリース


    ノボとリリーもトランプ大統領の要請に応えた
    (2025年11月6日発表)

    ノボ ノルディスクとイーライリリーは、夫々、トランプ米国大統領の要請に応えて医薬品の米国価格の一部を引き下げたり製造施設に100億ドル超の投資を行うことなどを発表した。代わりに、大統領が打ち出した医薬品輸入に対する上乗せ関税を3年間猶予してもらうことで合意した。

    値下げ対象は、高齢者医療制度の外来薬保険プログラムであるメディケア パートDや低所得者や糖尿病患者向けのメディケイドの加入者と、民間保険に加入せず全額自腹の人。ホワイトハウスの発表によると、トランプ大統領の名を冠したウェブサイトで購入すれば1ヶ月分が1000ドルのOzenpicは350ドル、1350ドルのWegovyも350ドル、イーライリリーのZepboundとorforglipronは1086ドルではなく346ドルと、安く買える。

    ノボは26年1月に、イーライリリーは26年4月に開始する予定。ノボは、26年のグローバル売上成長に一桁台前半の悪影響を与えると推測している。

    リンク: ホワイトハウスのファクト・シート
    リンク: イーライリリーのプレスリリース
    リンク: ノボ ノルディスクのプレスリリース


    He is not what he was
    (2025年11月3日発表)

    アムステルダム大学発ベンチャーのuniQure(Nasdaq:QURE)は2026年に米国でAMT-130をハンチントン病の遺伝子療法として承認申請する考えだったが、遅れる可能性が高まった。24年12月に、FDAとの相談を踏まえて、自然歴対照試験や脳脊髄液ニューロフィラメント軽鎖(NfL)抑制作用などに基づいて加速承認を求める計画を公表したが、申請前会議でFDAが翻意し、不十分とアドバイスしたため。同社は、申請前会議の議事録を受け取り次第、加速承認申請に向けた道筋を相談する考え。

    変異ハンチントン遺伝子を沈黙させるマイクロRNAをアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして脳に導入する遺伝子療法。第1/2相試験で高用量群(12人)の3年後のcUHDRS疾病評価尺度が0.38点の低下に留まり、傾向加重自然歴(940人)の1.52点低下と比べて75%小さかった(p=0.003)。副次的評価項目のTFC(合計機能評価)なども有意な差があった。NfLはベースライン比8%低下した。

    現在のFDAは上層部が個人的な価値観に基づき積極的に現場に介入している。前政権下でも抗アミロイド・ベータ抗体やデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬などで部門長が現場や諮問委員会の評価をオーバーライドする事例が見られたが、現在はFDA長官まで介入しているらしい点が特徴的だ。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【新薬開発】


    ファセンラの好酸球増多症候群試験が成功
    (2025年11月7日発表)

    アストラゼネカはFasenra(benralizumab)が第3相NATRON試験で主目的を達成したと発表した。適応拡大申請に向かうのではないか。

    協和キリンからライセンスしたIL-5受容体アルファ鎖を標的とするポテリジェント抗体。17~18年に米欧日で重度管理不良好酸球性喘息症用薬として承認された。今回の試験は標準治療を受けている好酸球増多症候群(HES)患者133人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして24週間追加投与し、HESの悪化や増悪のリスクを比較したもの。各群42.5%と19.4%の患者で悪化/増悪し、ハザード・レシオは0.35だった。

    リンク: 同社のプレスリリース(Business Wire)


    ケレンディアは1型糖尿病のCKDにも有効
    (2025年11月6日発表)

    バイエルはKerendia(finerenone)が第3相FINE-ONE試験で主目的などを達成したと発表した。適応拡大申請に向かう予定。

    21~22年に米欧日で二型糖尿病性慢性腎疾患の腎機能悪化や心血管合併症を抑制する薬として承認された、非ステロイド系ミネラルコルチコイド受容体拮抗剤。米国では左心駆出率が軽度に低下または保持された心不全の心血管転帰を改善する適応効能も承認されている。今回の試験は一型糖尿病で慢性腎疾患を合併したリスク因子を持つ成人242人を組入れて標準治療に追加する便益を偽薬と比較した。第6月の尿アルブミン・クレアチニン比が偽薬比25%低下し、副次的評価項目の30%低下奏効率も68.1%と偽薬群の46.6%を上回った。治療時発現深刻有害事象の発生率は両群11%強で大差なかった。過去の試験と同様に高カリウム血症の発生率が偽薬群を上回った。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ガザイバのSLE試験が成功
    (2025年11月3日発表)

    ロシュは抗CD20抗体Gazyva(obinutuzumab)が第3相ALLEGORY試験で主目的等を達成したと発表した。成人の全身性エリテマトーデス患者を組入れて52週間治療したところ、SLI-4疾病評価スコアが標準療法を有意に上回った。データは今後発表する。欧米で適応拡大申請する考え。

    リンク: 同社のプレスリリース


    トロデルビの転移乳癌一次治療試験がフェール
    (2025年11月7日発表)

    ギリアド・サイエンシズはTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)が第3相Ascent-07試験で主目的を達成できなかったと発表した。

    EGP-1(別名TROP-2)を標的とする抗体医薬。20~24年に米欧日でトリプル・ネガティブ乳癌の再発治療薬として承認された。ホルモン受容体陽性、her2陰性転移性乳癌でも内分泌療法に応答せず転移後に2次以上の全身性治療を受けた患者に米国で適応拡大、日本でも申請中だが、今回の試験は数歩早い段階における便益を検討したもの。日本も含む世界の施設で、ホルモン受容体陽性、her2陰性の転移性乳癌で、転移後内分泌療法歴を持ち、化学療法が適応になる患者654人を試験薬(10mg/kgを3週サイクルで第1日と8日に投与)または化学療法群(paclitaxelなどから医師が選択)に2対1割付けして、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較した。副次的評価項目は未成熟だが上回る傾向が見られた模様。

    リンク: 同社のプレスリリース


    Sarepta社が二つの失望的発表
    (2025年11月3日発表)

    Sarepta Therapeutics(Nadaq:SRPT)は、25年第3四半期決算発表に合わせて、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)用薬3品に関する失望的な発表を行った。同社は米国で16年にエクソン51スキップに応答するDMD向けのExondys 51(eteplirsen)が、19年にエクソン53スキップに応答しうる患者向けのVyondys 53(golodirsen)が、そして21年にはエクソン45スキップに応答しうる患者向けのAmondys 45(casimersen)が加速承認され、23年には遺伝子療法のElevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)も加速承認された。

    このうち、Elevidysは市販後薬効確認試験がフェールしたが24年に米国で本承認に切替、同時に歩行不能な患者にも加速承認された。しかし、今年に入って致死的な急性肝障害が2例続き、一時期、出荷停止した。FDAと対応を協議しているが、今回、枠付き警告付与と、歩行不能患者の適応除外を検討していることが明らかにされた。同社は歩行不能患者には免疫抑制レジメンを強化する対処を検討しているが、まだFDAの同意は得られていないようだ。

    上記2例は何れも日本では適応にならない歩行不能患者。Elevidysの投与実績は900人超、うち歩行不能は140人とのことなので発生率は1%と高い。尤も、歩行可能患者にリスクがないとは考えにくく、便益が確立していないのだからリスクを許容できないという考え方だろう。従って、免疫抑制を強化することでリスクを抑制するだけでなく、改めて便益を確認することにも注力すべきだろう。

    一方、Vyondys 53とAmondys 45を一本の試験で市販後薬効確認するための、ESSENCE試験のフェールが公表された。欧米豪韓などの施設で200人超のエクソン53スキップ又はエクソン45スキップに応答しうるDMD患者をVyondys 53またはAmondys 45を投与する群と偽薬群に2対1割付けして96週の4段登段ベロシティを比較したところ、群間差は0.05歩/秒と僅少に留まり、p=0.309だった。一方で、無作為化割付け期間がCOVID-19流行期と重なる患者を除外した168人の解析では0.11歩/秒、p=0.09、低下を30%抑制と、同社によると臨床的に意味のある効果が見られた。本承認に向けFDAと相談する考え。

    Eledivysの前例があるので薬効が確認できなくても販売することは可能かもしれないが、第2次トランプ政権下のFDAでは前例が通用するとは限らないだろう。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アムジェン、抗FGFR2b抗体は二本目も残念な結果に
    (2025年11月2日発表)

    アムジェンは、25年第3四半期決算発表時のパイプライン・アップデートの中で、AMG552(bemarituzumab)の後期第1相/第3相胃・胃食道接合部癌試験を途中で打ち切ると発表した。最初の第3相試験は中間解析に基づき成功認定されたがその後の追跡解析でデータが悪化してしまい、今回の試験の成功が期待されていた。

    21年にFive Prime Therapeuticsを19億ドルで買収して入手した、ADCC増強型抗FGF受容体2b抗体。FGFR2bを過剰発現するher2陰性の胃・胃食道接合部癌の一次治療としてmFOLFOX6レジメンに追加する便益を検討した、日本も参加した第3相FORTITUDE-101の中間解析で全生存期間のハザード・レシオが0.61、p=0.005、メジアン生存期間は17.9ヶ月と偽薬追加群の12.5ヶ月を上回った。かなり良い数値だが、意外なことに、記述的フォロー・アップ解析でハザード・レシオ0.82(95%信頼区間0.62-1.08)、メジアン値は14.5ヶ月と13.2ヶ月と、統計的にも臨床的にも期待外れの水準に低下してしまった。

    今回の日本も参加したFORTITUDE-102試験は、同じ一次治療において、nivolimabと化学療法(mFOLFOX6またはCAPOX)の併用に追加する便益を検討したが、中間解析に基づき打ち切りが決まった。限界効用逓減の法則から言えばこっちのほうがハードルが高いとはいえ、残念なことだ。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認申請】


    抗IGF-1R抗体を甲状腺眼症に承認申請
    (2025年11月5日発表)

    米国マサチューセッツ州の新興医薬品開発会社、Viridian Therapeutics(Nasdaq:VRDN)は、25年第3四半期決算発表に合わせて、10月に米国でVRDN-001(veligrotug)を甲状腺眼症用薬として承認申請したことを明らかにした。IGF-1受容体に対する抗体医薬で、優先審査を求めている。26年第1四半期にEUにも承認申請する考え。日本は7月にキッセイ薬品が皮下注用も含めて権利を取得している。

    第3相は二本。THRIVE試験は発症から15ヶ月以内でCAS(臨床的活動性スコア)が3以上の患者を組入れて10mg/kgを3週毎に5回、点滴静注する便益を検討した。PRR(眼球突出が2mm以上改善し反対側の目は2mm以上突出しなかった患者の比率)が70%と偽薬群の5%を大きく上回った。THRIVE-2試験は発症から15ヶ月以上経った患者をCAS不問で組入れ、同様な群間比較を行ったところ、PPRが56%と偽薬群の8%を上回った。有害事象は聴力障害など。

    リンク: 同社のプレスリリース


    デュピクセントを真菌性鼻副鼻腔炎に適応拡大申請
    (2025年11月7日公表)

    Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)は、抗IL-4Rアルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)が第3相LIBERTY-AFRS-AIMS試験で主目的等を達成したと学会発表すると共に、既に承認申請済みであることを明らかにした。

    6歳以上のアレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎(AFRS)患者約60人を組入れて効果を偽薬と比較したもの。第52週の副鼻腔不透明度スコアが試験薬群は50%改善したのに対し偽薬群は10%に留まり、副次的評価項目の患者評価やポリープ・サイズも有意に改善した。

    AFRSはアスペルギルス菌などによる疾患で標準療法は外科手術や全身性ステロイド投与。Dupixentは鼻ポリープを伴う副鼻腔炎でも承認されていて、こちらの試験でも本試験の主評価項目と同じ副鼻腔のCT画像に基づく薬効解析が成功しているが、二つは異なった疾患と認知されているようだ。

    適応拡大申請の審査期限は26年2月28日。優先審査なので申請したは今年6月か8月と推測される。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    Biohaven、SCA用薬が審査完了に
    (2025年11月4日発表)

    Biohaven(NYSE:BHVN)はtroriluzolを脊髄小脳失調症(SCA)治療薬として欧米で承認申請していたが、3月にEUで申請撤回したのに続き、米国で審査完了通知(CRL)を受領した。

    ALS治療薬Rilutek(riluzole)の活性成分のプロドラッグ。一日2回経口投与ではなく1回で足り、食物影響が小さいようだ。グルタミン酸の再取込を増強・放出を阻害する作用を持つ。SCAでは218人の患者を200mg/日群と偽薬群に無作為化割付けして48週のf-SARA(functional Scale for the Assessment and Rating of Ataxia、改訂版)の変化を比較したところ、ベースラインの4.9から各群5.1と5.2に上昇、フェールした。同社はSCA3型サブグループのデータに注目し23年に承認申請したが受理されなかった。FDAと相談の上、自然歴データ対照試験を実施し再申請したところ、今年2月に受理され、優先審査指定を受けたが、諮問委員会上程の可能性が生じたようで審査期限が3ヶ月延長された。結局、招集されなかったが、そもそも最近は全く開催されていないので、固有の問題かFDA上層部の方針か、判然としない。

    FDAはopenFDAウェブサイトで承認通知やCRLの公開を始めた。9月22日分が公開されて以降、しばらく無かったが、途中の案件を飛ばしていきなり本件のCRLが公開された。デザイン面、実践面で多くの欠陥を指摘しており、上記の『FDAと相談の上』が『FDAの同意を得て』では無いことがはっきりした。

    リンク: 同社のプレスリリース
    リンク: openFDAサイト
    リンク: FDAのComplete Response Letter

    【承認】


    ダラキューロがくすぶり型多発骨髄腫に適応拡大
    (2025年11月6日発表)

    FDAはJanssen BiotechのDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj;和名ダラキューロ配合)を成人の高リスクくすぶり型多発骨髄腫に適応拡大した。EUでは7月に承認、日本も10月に第2部会を通過したところ。

    抗CD38抗体daratumumabを投与する前にヒアルロン酸分解酵素を投与することにより皮下注を可能にした製品。日本も参加した第3相AQUILA試験で、積極的経過観察群のメジアンPFS(無進行生存期間)が41.5ヶ月だったのに対して試験薬群はメジアン未達、ハザード・レシオは0.49だった。

    くすぶり型はM蛋白や単クローン性形質細胞の増加などの兆候が見られ、多発骨髄腫に進展するリスクがある。米国の推定新患数(24年)35000人超のうち、くすぶり型は15%を占めると推測されている。今日では定義が変わっている模様で、AQUILA試験の被験者の半分程度は今日の基準では多発骨髄腫に分類されるようだ。

    リンク: FDAのプレスリリース


    JNJ、Caplytaが鬱病の付随療法として適応拡大
    (2025年11月6日発表)

    ジョンソン エンド ジョンソンはFDAがCaplyta(lumateperone)を成人の大鬱病のアジャンクティブ用薬として承認したと発表した。抗鬱剤に十分応答しない患者などに追加投与する。

    5-HT2A受容体とドパミンD2受容体の拮抗剤。19年に米国で初承認され、これまでに統合失調症の急性期治療や双極障害I型やII型における鬱症状の治療に用いることが承認されている。統合失調症では7月に維持療法も適応拡大申請された。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ホスホマイシンの静注用製剤が初承認
    (2025年11月4日発表)

    米国シカゴのMeitheal Pharmaceuticalsは、FDAがContepo(fosfomycin)を複雑性尿路感染症(激性腎盂腎炎を含む)の点滴静注用薬として承認したと発表した。18歳以上の、本剤に感受する大腸菌や肺炎桿菌に感染した患者に用いる。第2/3相試験で6g(腎機能低下は減量)1時間点滴を8時間おきに最大14日間、反復したところ、全般的奏効率(第19日に臨床的治癒且つ微生物学的駆除)が63.5%(170人中108人)となり、piperacillin・tazobactam群の55.6%比で非劣性だった。警告注意事項は電解質異常(日本の製品と同様にナトリウムを多く含有している)、QT延長など。

    fomfomycinは経口剤が30年近い市販歴を持つが米国で静注用が承認されたのは初めて。ノバルティスのスピンアウトであるNabriva Therapeuticsが18年に承認申請し優先審査指定を受けたが、生産委託先におけるcGMP問題や、COVID-19流行時に連邦政府職員に課された渡航制限などがネックで19年と20年に審査完了通知を受領した。

    Meitheal社は中国の南京健友生化制葯の子会社。当方は見落としていたが、24年7月にNabriva社から北米の資産や権利を取得、早期の承認を期待していたようだが24年12月にまたまた審査完了通知を受領した。今年4月に申請者側が完全回答し、今回、承認に至った。

    Nabrivaは19~20年にXenleta(lefamulin)の経口剤が地域感染細菌性肺炎用薬として米欧で承認されたが、その資産権利も南京健友に売却してしまった。5年ぶりに社名をネット検索したがヒットしなかった。

    リンク: Meitheal社のプレスリリース(Business Wire)


    チミジン・キナーゼ2欠乏症用薬が承認
    (2025年11月3日発表)

    FDAはUCBのKygevvi(doxecitine、doxribtimine)をチミジン・キナーゼ2欠乏症(TK2d)用薬として承認した。12歳以前に発症した成人・小児患者が適応になる。

    TK2d欠乏症は常染色体性劣性遺伝子疾患で、ミトコンドリアのTK2d欠乏によりDNA合成が滞り、細胞がエネルギー不足に陥る。Kygevviは22年にZogenixを買収した時に入手したヌクレオチド補充療法。各種試験のプール分析で、12歳以下発症コフォートではこの2活性物質による治療を受けなかった患者は78人中28人、36%が死亡したが、受けた患者は78人中3人、4%に留まった(ハザード・レシオ0.14、95%信頼区間0.04-0.39)。歩けなかった患者が歩けるようになったり、人工呼吸器を外せた症例報告もあるようだ。治療時発現有害事象は下痢など。尚、12歳過ぎて発症したコフォートでは治療効果が見られなかったが、両群とも進行が遅かったようだ。

    リンク: FDAのプレスリリース

    【医薬品の安全性】


    PRAC、トラネキサム酸の取違えに注意喚起
    (2025年10月31日発表)

    EMA(欧州薬品庁)のPRAC(ファーマコビジランス・リスク評価委員会)は、全身性異常出血などの治療に用いられる抗プラスミン、tranexamic acidを局所麻酔薬と取り違えて髄腔内投与や硬膜外投与してしまったメディケーション・エラー事例が生じていることから、DHPC(医療従事者向け連絡)を発出する手続きを開始すると発表した。静注ではなく髄腔内投与すると激しい疼痛などの深刻な副作用が生じる。対策として、レーベルに静注のみと明記するよう製薬会社に求める考え。局所麻酔薬とは違う場所に保管することも推奨する。

    日本で70年以上前に発見された物質で、EUの中央手続きによる承認ではないため、最近の薬とは異なったプロセスを経て最終決定される。

    リンク: PRACのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



    PDUFA
    25/11推Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群)
    25/11推ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹)
    25/11推ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加)
    25/11推ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加)
    25/11推バイエルのBAY 2927088(sevabertinib、her2変異非小細胞性肺癌)
    25/11推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・胃食道接合部腫瘍における周術期療法を追加)
    25/11/18Arrowhead PharmaceuticalsのARO-APOC3(plozasiran、家族性カイロミクロン血症)
    25/11/28ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症)
    25/11/30Kura OncologyのKO-539(ziftomenib、急性骨髄性白血病)
    25/11/30Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
    25/11/30ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-bysp、濾胞性リンパ腫2次治療を追加)
    25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
    25/12推ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症)
    25/12/5BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加)
    25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
    25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
    25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
    25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
    25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
    25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
    25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
    26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
    25/12/20Rhythm Pharmaceuticalsのsetmelanotide(後天的視床下部性肥満症)
    25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
    25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
    25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
    25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
    25/12/30Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
    25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)



    今週は以上です。

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