第1283回
【ニュース・ヘッドライン】
- ジェンマブ、新薬2剤の治験成功を発表
- NK1拮抗剤がGLP-1作用剤の嘔吐リスクを抑制
- ファイザー、エルレフィオの適応拡大試験が成功
- MSD、中華ADCのグローバル第3相が成功
- MSD、キイートルーダのdMMR内膜腫一次治療試験も成功
- BioNTech、抗her2ADCが第3相内膜腫試験で限定的な効果
- ニュベクオの前立腺癌放射線療法付随試験が成功
- アストラゼネカ、抗癌剤3剤の第3相が成功
- アムジェン、イムデトラの維持療法試験が成功
- ロシュ、第2世代KRAS-G12C阻害剤が第3相で先輩を破る
- ハイヤスタの黒色腫試験データ
- テロメラーゼ阻害剤の骨髄線維症適応拡大試験は無益中止に
- NPC1型用薬の承認申請を断行
- 神経造影剤を承認申請
- アッヴィ、多発骨髄腫用二重特異性抗体を承認申請
- PKR活性化剤の鎌状赤血球症適応拡大が遅延
- 難治呼吸器乳頭腫のプラスミド療法が承認
- イルミアが乾癬性関節炎に適応拡大
- ターゼナがHRR変異型転移前立腺癌に適応拡大
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【新薬開発】
ジェンマブ、新薬2剤の治験成功を発表
(2026年10月28日発表)
デンマークのジェンマブ(Nasdaq:GMAB)は、今週、二種類の抗体医薬の第3相試験成功を発表した。承認申請するだろう。
petosemtamabはEGFRとLGR5(leucine-rich repeat-containing G-protein-coupled receptor 5)の二重特異性抗体。EGFRに加えて癌幹細胞などで発現するLGR5もブロックし、LGR5が自然のプロセスで細胞内部に取り込まれる時にはEGFRを道連れにすることもできるようだ。25年にオランダのMerus N.V.を80億ドルで買収してMCLA-158を入手したもの。
日本も参加した第3相LiGeR-HN1試験でPD-L1陽性難治/転移SCCHN(頭頚部扁平上皮腫)の一次治療としてKeytruda(pembrolizumab)に追加する便益をオープン・レーベルで検討したところ、共同主評価項目のうち全生存期間はハザード・レシオ0.50、ORR(客観的反応率)はオッズ比3.17となり。どちらもp<0.0001だった。ヒト・パピローマ・ウイルス感染の有無と治験成績の関連性は見られなかった。
他に2次治療や結腸直腸癌の2次治療の第3相も進行中。
リンク: プレス・リリース(10/28付)
GEN1184(rinatabart sesutecan)は第3相RAINFOL-02試験で主目的を達成したがESMO(欧州臨床腫瘍学会)で発表された。
24年にProfoundBioを18億ドルで買収して入手した、抗FRアルファ抗体とトポイソメラーゼ1阻害剤のADC(抗体薬物複合体)。今回の日本も参加した試験は白金抵抗性卵巣癌で適応になる場合は抗VEGF抗体bevacizumabやPARP阻害剤、そして抗FRアルファ抗体と微小管阻害剤のADCであるアッヴィ(日本は武田薬品がライセンス)のElahere(mirvetuximab soravtansine-gynx)による治療歴も持つ患者582人を組入れて、120mg/m2を3週毎点滴静注する便益を医師が選んだ化学療法と比較した。
プレス・リリースの書き振りだと主評価項目が一つなのか二つなのかよく理解できないが、全584人のPFS(治験医評価)はハザード・レシオが0.29、主解析集団であるFRアルファ発現度が75%以上でElahere歴を持つ492人では0.33だった。副次的評価項目の全生存期間は各0.43と0.44で同程度だった。
尚、アッヴィは元社員を通じてトレード・シークレットを入手したとしてジェンマブを特許侵害で提訴中。
リンク: プレス・リリース(10/23付)
NK1拮抗剤がGLP-1作用剤の嘔吐リスクを抑制
(2026年10月27日発表)
Vanda Pharmaceuticals(Nasdaq:VNDA)はNereus(tradipitant)が第3相試験でGLP-1作用剤の副作用である嘔吐を抑制したと発表した。従来は二本実施する考えを示していたが、この試験と第2相のデータで適応拡大申請すべくFDAと相談する考え。GLP-1作用剤の用法が異なるためリスクがありそうだ。まあ、(FDAと)戦う製薬会社なのでいつものことだが。
イーライリリーから導入したNK1阻害剤。23年に胃麻痺用途でFDAに承認申請したが臨床試験で主目的がフェールしたことなどから審査完了に終わった。長期試験の必要性などを巡りFDAと対立していたが、乗り物酔い用途では25年12月に承認を獲得した。
今回の3601試験はBMIが25kg/m2以上40kg/m2未満で糖尿病などの慢性疾患や深刻な疾患を持たない成人約300人にNereusまたは偽薬を投与した上でノボ ノルディスクのsemaglutideを投与して嘔吐のリスクを比較した。試験薬は一日二回、2週間投与した。嘔吐の発生率は各群43.0%と58.5%となり、35%削減効果が見られた(施設調節後p=0.006)。
この試験の問題は、semaglutideの用量用法が承認内容と異なること。成人の肥満症を治療する場合、本来は4週毎に0.25mg、0.5mg、1.0mg、1.7mg(必要があれば更に2.4mgや7.2mgに増量可)と漸増するが、本試験ではいきなり1.0mgを投与した。このため、偽薬群の発生率はsemaglutideの米国のレーベルに記載されている治験実績の20%台よりかなり高くなっている。同社は、過去の臨床試験においてsemaglutideの血中濃度レンジに関わらず嘔吐予防効果は安定的と指摘しているが、あえて実医療と異なる試験を行ったことを正当化できるほどのデータの裏付けがあるのだろうか?
リンク: プレス・リリース
ファイザー、エルレフィオの適応拡大試験が成功
(2026年10月27日発表)
ファイザーはElrexfio(elranatamab-bcmm)が第3相MagnetisMM-32試験の中間解析で主目的を達成したと発表した。3種類の代表的な治療薬を含む4次以上(EUでは3次以上)の治療歴を持つ再発/難治多発事髄腫用薬として23年に米国で加速承認、EUで条件付き承認され、日本でも24年に承認されたが、より早い段階で使う方策が立ちつつある。
腫瘍のBCMAとT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体。今回の試験は成人の再発/難治多発骨髄腫でlenalidomideと抗CD38抗体による治療歴を持つ523人を組入れて、単剤を皮下注する便益を医師が選んだ標準的療法と比較した。後者の選択肢はELoPdレジメン(elotuzumab、pomalidomideおよびdexamethasone)、PVdレジメン(pomalidomide、bortezomib及びdexamethasone)、またはKdレジメン(carfilzomibとdexamethasone)と他の同様な試験より多い。
Elrexfio群はBICR-PFSの統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を果たした。メジアン値は未達、18ヶ月PFS率は68%とのこと。副次的評価項目の全生存期間は未成熟。感染症リスクはG3以上の発生率が27.5%対18.1%と上回ったがG5は0.8%対1.6%で大差なかった。
同社は4月にMagnetisMM-5試験の成功も発表している。lenalidomideとプロテアソム阻害剤を含む1次以上の治療歴を持つ患者を組入れた試験で、PFSがDPdレジメン(daratumumabm、pomalidomide及びdexamethasone)を上回った。多発骨髄腫は様々な併用レジメンがあるので2次治療の選択肢も多く、色々な試験が必要になる。
リンク: プレス・リリース
MSD、中華ADCのグローバル第3相が成功
(2026年10月25日発表)
MSDは抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)の特許切れ(2028年)を前にMK-2870(sacituzumab tirumotecan)の第3相試験を多数、実施しているが、まず内膜腫試験が成功したことが、ESMOやLancet誌で明らかにされた。既に米国で承認申請が受理され、優先審査指定されたとのことだが、PDUFA(処方薬ユーザー課金法)に基づく審査期限は27年6月15日となっており計算が合わない。何れにせよ、昨年12月にCNPV(FDA長官の国家的優先バウチャ)指定を受けており、おそらく今回の適応だろうから、もっと早く承認される可能性がある。
この日本も参加したTroFuse-005グローバル試験は、白金薬ベース化学療法と抗PD-(L)1抗体による治療歴を持つ進行/難治内膜腫の患者776人を組入れて、4mg/kgを2週毎に点滴静注する効果を医師が選んだ化学療法(doxorubicinまたはpaclitaxel)を施行する群とオープン・レーベルで比較した。中間解析で共同主評価項目を両方とも達成したことだけ5月に公表されている。全生存期間のハザード・レシオは0.68、メジアン値は各群19.0ヶ月と12.1ヶ月、BICR-PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)は順に0.59、7.2ヶ月、3.9ヶ月だった。G3以上の治療関連有害事象発生率は各群54.4%と41.4%、致死例は両群とも3人(0.8%)だった。
ギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)にも用いられている抗TROP2抗体と新規トポイソメラーゼ阻害剤を薬物抗体比7.4で結合した抗体薬物複合体。中国のKelun Pharmaceutical(002422.SZ)の子会社、Sichuan Kelun-Biotech Biopharmaceutical(6990.HK)から大中国以外での開発商業化権を取得したもの。中国では24年11月以降、ある種のトリプル・ネガティブ乳癌や非扁平上皮非小細胞性肺癌に承認されている。
リンク: プレス・リリース
リンク: Lorussoらの治験論文抄録(Lancet)
MSD、キイートルーダのdMMR内膜腫一次治療試験も成功
(2026年10月26日発表)
MSDはKeytrudaがKeyNote-C93試験で主目的を達成したと7月に公表したが、詳細をESMOやLancetで発表した。全身性化学療法未治療、または術後アジュバント療法完了後6ヶ月以内に再発した、dMMR(ミスマッチ修復不全)型進行/難治内膜腫の患者299人を400mgを6週毎に点滴静注する群またはcarboplatin・paclitaxel併用群に無作為化割付けしてオープン・レーベルでBICR-PFS(盲検独立中央評価)や全生存期間を比較したところ、前者が中間解析でハザード・レシオ0.57、メジアン値は38.2ヶ月対8.4ヶ月となり、有意な差が確認された。ハザード・レシオとメジアン値の比率に違和感を感じるが、最初の6ヶ月間は両群大差ないことなどが影響しているのかもしれない。
共同主評価項目の全生存期間は未成熟だがトレンドが見られる(ハザード・レシオ0.77、p=0.10、36ヶ月生存率70.7%対63.0%)。両群とも多くが進行後にクロスオーバーしたため差が稀薄化された面もあるようだ。G3以上の治療関連有害事象発生率は各群18.1%と50.7%だった。
Keytrudaは単剤でdMMRまたはMSI-H(高マイクロサテライト不安定性)の進行内膜腫の2次治療以降に、化学療法併用で原発性進行/難治内膜腫の一次治療に、米国などで承認されている。
リンク: プレス・リリース
リンク: Slomovitzらの治験論文抄録(Lancet誌)
BioNTech、抗her2ADCが第3相内膜腫試験で限定的な効果
(2026年10月26日発表)
ドイツのBioNTechはBNT323(trastuzumab pamirtecan)が第3相転移乳癌試験で統計的に有意な効果を示したことを明らかにしたが、便益は限定的としており、承認申請は見送りそうな雰囲気だ。
中国のDualityBio(映恩生物、HK:9606)から中国外の権利をライセンスした、抗her2抗体とトポイソメラーゼ阻害剤の抗体薬物複合体(ADC)。中国では26年4月にher2陽性の切除不能/転移性乳癌の2次治療における承認申請が受理された。今回の第3相DYNASTY-Breast02試験は米州欧州中国韓国などの施設でホルモン受容体陽性、her2低発現(IHCで2+、あるいはIHC1+且つISH陰性)の転移性乳癌で内分泌療法薬に難治/抵抗性を示し化学療法は未施行の532人を組入れて、8mg/kgを3週毎点滴静注する効果を医師が選んだモノセラピー(capecitabineなど)と比較した。主評価項目のBICR-PFSを達成、副次的評価項目の全生存期間は未成熟とのこと。
抗体薬物複合体は間質性肺疾患の副作用が見られるが、今回の試験は過去の試験より発生率が高く、致死例もあったようだ。この適応で既に承認されている類薬もあり、これらを総合的に勘案して承認申請の当否を判断するのではないか。
リンク: プレス・リリース
ニュベクオの前立腺癌の放射線療法付随試験が成功
(2026年10月24日発表)
バイエルはdarolutamideが第3相DASL-HiCAP試験の中間解析で主目的を達成したとESMOで発表した。米日欧でNubeqa名で去勢抵抗性やホルモン感受性の前立腺癌の一部に承認されている非ステロイド系アンドロゲン受容体アンタゴニスト。今回の試験は豪州や米英などで放射線療法(全摘併用も可)を受ける骨盤リンパ節転移のある高リスク前立腺癌1106人を組入れて、アンドロゲン枯渇療法と局所領域放射線療法に追加する便益を偽薬追加群と比較した。主評価項目である無転移生存期間のハザード・レシオは0.42、4年無転移生存率は各群95%と88%と比較的大きな差があった。
副次的評価項目の全生存期間はハザード・レシオが0.88(95%信頼区間0.49-1.59)、4年生存率は各群97%と95%で、イベント数が少ないせいか、未だはっきりした効果は見られない。G3以上の有害事象発生率は43%対36%で若干増加した。
リンク: プレス・リリース
アストラゼネカ、抗癌剤3剤の第3相が成功
(2026年10月25日発表)
アストラゼネカはESMOで新規抗癌剤2剤と抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)が夫々の第3相試験で主目的等を達成したとESMOなどで発表した。逐次承認申請に向かうのではないか。
AZD0901(sonesitatug vedoxin)は中国のKeymed Biosciences(02162 HK)とLepu Biopharma(02157.HK)の合弁会社からライセンスした抗Claudin 18.2抗体薬物複合体。日本や中国も参加したCLARITY-Gastric01試験で、治療歴のあるCLDN18.2陽性、局所進行/転移性の胃、胃食道接合部、食道腺腫594人を試験薬群と医師が選んだ薬を用いる対照群に無作為化割付けして便益を比較した。共同主評価項目のうち、全被験者におけるBICR-PFSはハザード・レシオ0.77もp=0.053とフェールしたが、3次治療以降の355人における全生存期間はハザード・レシオ0.47、p<0.001、メジアン生存期間は10.0ヶ月対5.0ヶ月と、成功した。副次的評価項目だが全被験者における全生存期間もハザード・レシオ0.58、p<0.001、メジアンは10.6ヶ月対6.4ヶ月と良好だった。G3以上の治療関連有害事象発生率は各群36.4%と44.8%だった。
標的や適応がオーバーラップするアステラス製薬の抗体医薬、Vyloy(zolbetuximab-clzb)はCLDN18.2発現率が75%以上の癌に承認されているが、本試験は25%以上を陽性としており、承認されれば対象患者数が大きく増加することになる。
リンク: プレス・リリース
Orpathys(AZD6094、savolitinib)はHutch-medのグループ会社からライセンスしたc-MET阻害剤。中国で21年以降、ある種の非小細胞性肺癌や胃/胃食道接合部腺腫に承認されている。今回のSAFFRON試験は欧州米州中国日本などの施設で同社のEGFRチロシン・キナーゼ阻害剤Tagrisso(osimertinib)で治療中に進行したMET過剰発現/増幅型かつEGFR変異型非小細胞性肺癌338人を組入れて、300mg一日二回経口投与を追加投与する群と白金ベース化学療法にスイッチする群の効果を比較した。主評価項目のBICR-PFSはハザード・レシオ0.56、メジアン値は各群7.6ヶ月と5.4ヶ月となり、過剰発現型と増幅型のサブグループ分析も良好な結果になった。副次的評価項目の全生存期間もハザード・レシオ0.68、p=0.010、メジアン値は17.8ヶ月と12.9ヶ月だった。有害事象は末梢浮腫など。G3以上の治療時発現有害事象発生率は64%対63%で大差なかった。
リンク: プレス・リリース
リンク: Luらの治験論文抄録(NEJM)
ImfinziはMIBC(筋層浸潤膀胱癌)の全摘を受ける、白金薬による化学療法が適応にならないまたは拒否する患者695人をファイザーの抗Nectin-4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)と2剤併用する群、さらに同社の抗CTLA4抗体Imujudo(tremelimumab-actl)も投与する3剤併用群、そして標準療法群に無作為化割付けしてEFS(無イベント生存期間) を比較した。2剤併用群は中間解析でEFSも副次的評価項目の全生存期間もハザード・レシオが0.5台の良好な成績を上げ、9月に米国で適応拡大申請が受理された。欧州日本でも申請中。
治験論文によると3剤併用群のEFSも達成したが、全生存期間の解析が未成熟であるせいか、まだ申請されていない様子だ。
リンク: プレス・リリース(10/24付)
リンク: Powlesらの治験論文抄録(NEJM、10/24付)
アムジェン、イムデトラの維持療法試験が成功
(2026年10月25日発表)
アムジェンはImdelltra(tarlatamab-dlle)が第3相DeLLphi-305試験の中間解析で主目的を達成したとESMOなどで発表した。進展型小細胞性肺癌の一次治療(durvalumab、白金化学療法、及びetoposide)を受けて疾病安定化した患者の維持療法としてdurvalumabに追加する便益をオープン・レーベルで比較したところ、全生存期間のハザード・レシオが0.42、メジアン生存期間は21.1ヶ月対12.7ヶ月と、有意に上回った。G3/4治療関連有害事象発現率は20.9%対10.8%で上昇した。
ImdelltraはDLL3とCD3を架橋する二重特異性抗体。24~26年に米日欧で進展型小細胞性肺癌の再発治療に承認された。
リンク: プレス・リリース
リンク: Perolらの治験論文(NEJM)
ロシュ、第2世代KRAS-G12C阻害剤が第3相で先輩を破る
(2026年10月25日発表)
ロシュはESMOとNew England Journal of Medicines誌でRG6330(divarasib)の第3相Krascendo 1試験の成功を発表した。承認申請に向かう考え。
第2世代のKRAS-G12C阻害剤で、前臨床で第1世代品より高力価、高選択性を示した。今回の日本も参加した試験は、治療歴のある進行KRAS-G12C変異型非小細胞性肺癌338人をRG6330一日一回経口投与群と第1世代品群(アムジェンのLumakras(sotorasib)が8割、BMSのKrazati(adagrasib)が2割を占めた)の便益を比較した。BICR-PFSのハザード・レシオは0.58、メジアン値は各群9.8ヶ月と5.7ヶ月だった。副次的評価項目である全生存期間も中間解析でハザード・レシオ0.56、p<0.001、メジアン値は各17.7ヶ月と12.0ヶ月と、良好だった。G3以上の治療関連有害事象発生率は24.6%対34.5%、深刻例は7.8%対15.2%、治療関連有害事象による離脱は4.8%対11.7%と、何れも下回った。2
リンク: プレス・リリース
リンク: Skoulidisらの治験論文抄録(New England Journal of Medicines)
ハイヤスタの黒色腫試験データ
(2026年10月23日発表)
中国のHUYABIO Internationalと日本などでの権利を持つMeiji Seikaファルマは、7月に、ハイヤスタ(ツシジノスタット)が第3相試験で切除不能ステージIII/IV進行黒色腫の再発治療試験で主目的を達成したと発表したが、ESMOで詳細を発表した。7月のプレス・リリースにはnivolumab併用群のメジアンBICR-PFSが11.7ヶ月と偽薬・nivolumab併用群の7.4ヶ月を上回り58%という統計的に有意な改善を果たしたと記されていたため、ハザード・レシオが0.42と誤解していたが、実際は0.73、p=0.0141であることが分かった。G3/4治療関連有害事象の発生率は54.8%対17.9%とかなり上昇したようだ。
本剤はHDAC(ヒストン脱アセチル化酵素)阻害剤。中国と日本で再発/難治末梢性T細胞リンパ腫に、日本では再発/難治T細胞白血病リンパ腫にも、承認されている。
リンク: ESMOコンファレンス・カレンダー(LBA54を検索し閲覧できる)
リンク: HUYABIO Internationalのプレス・リリース(26年7月14日付)
テロメラーゼ阻害剤の骨髄線維症適応拡大試験は無益中止に
(2026年10月28日発表)
Geron(Nasdaq:GERN)はimetelstatの骨髄線維症における便益を検討する第3相IMpactMFを中止すると発表した。独立データ監視委員会が主目的である全生存期間の延長を達成する可能性は低いと無益中止を勧告したため。
24~25年に米欧でEPOに不応不適な輸血依存骨髄異形成症候群用薬Ryteloとして承認されたオリゴヌクレオタイド系テロメラーゼ阻害剤。悪性幹細胞/前駆細胞の増殖を妨げアポトーシスを誘導する。企業純売上高は年2億ドル程度。今回の試験はJAK阻害剤で治療しても脾臓量減少などを達成できなかった再発/難治中高リスク骨髄線維症患者327人を組入れて、承認用量用法である7.5mg/kg4週毎とは異なる9.4mg/kgを3週毎に点滴静注する便益を最良既存療法(BAT、thalidomideなど、但しJAK阻害剤は除く) と比較した。
リンク: プレス・リリース
【承認申請】
NPC1型用薬の承認申請を断行
(2026年10月29日発表)
米国ニュー・ジャージー州の医薬品開発会社、Rafael Holdings(NYSE:RFL)は、Trappsol Cyclo(remibetadex/USAN)をニーマンピック病C型(NPC)用薬としてFDAに承認申請したと発表した。第3相はフェールしており、他に薬が無い訳でもないので、リスクもありそうだ。
静注用hydroxypropyl-betacyclodextrinの新製剤。第3相Transport試験で3~70歳のNPC1型患者94人を試験薬群(2000mg/kgを6時間半以上かけて点滴静注)と偽薬群に2対1割付けして2週毎に反復する便益を検討したところ、主評価項目のNPC重症度スコアの4ドメイン(歩行、微細運動、嚥下、言語)が96週間で各群0.46点と1.28点上昇(悪化)し、点推定値では進行を64%抑制したが、群間差0.81点のp値は0.19だった。尚、事前に設定された解析である既存薬(miglustatまたはleucine)を同時使用していた母集団の83%を占めるサブグループでは各0.46点、1.11点、71%、p=0.046だった。
深刻な治療時発現有害事象が各群35.9%と16.7%で発生した。聴覚関連の治療時発現有害事象は各群15.6%と13.3%で見られ、試験薬群では治療関連両側難聴が1例発生した。
同社は9月に治験成績を公表すると共に、過去の試験に参加した乳児発症型NPC患者41人の転帰をINPDR患者登録データと比較した外部対照試験の結果も発表した。全死亡のハザード・レシオが0.154、p=0.044とこちらもボーダーライン近辺だが有意な改善が見られ、今回の承認申請のエビデンスの一つとなった。
リンク: プレス・リリース
神経造影剤を承認申請
(2026年10月28日発表)
米国のAlume BiosciencesはALM-488(bevonescein)を米国で承認申請し受理されたと発表した。蛍光ペプチドと色素のコンジュゲートで、成人の頭頚部手術における神経のリアルタイム造影に用いる。3本の第3相試験で白色光のみと比べ視認性が改善した。
同社は2008年に緑色蛍光タンパク質の発見と開発によりノーベル化学賞を受賞した故Roger Tsienと外科医Quyen Nguyenのbevonesceinに関する提携に基づき設立された。
リンク: プレス・リリース(Business Wire)
アッヴィ、多発骨髄腫用二重特異性抗体を承認申請
(2026年10月27日発表)
アッヴィは米国でAbbVie-383(etentamig)を成人の難治/再発多発骨髄腫に承認申請したと発表した。BCMAとCD3を架橋する二重特異性抗体で、BCMAに対しては二種類のエピトープを持ち、CD3に関しては親和性を抑制することでサイトカイン放出症候群や感染症のリスクを抑制し、リサイクリング性を持たせて作用を長期化するなどの工夫をしている。アルゴリズムに適合する患者は投与スケジュールや漸増法を簡便化することも可能だという。日本も参加した第3相CERVINO試験で、3種類の代表的な種類の薬を既に使った患者におけるBICR-PFSを医師が選んだ標準療法と比較したところ、ハザード・レシオが0.40、統計的に有意だった。全生存期間のハザード・レシオも0.48、名目p=0.0012と良好だが成功認定の閾値は未だクリアしていないとのこと。
リンク: プレス・リリース
【承認審査・委員会】
PKR活性化剤の鎌状赤血球症適応拡大が遅延
(2026年10月30日発表)
Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)は米国でmitapivatを鎌状赤血球症に適応拡大すべく加速承認申請し、優先審査を受けているが、PDUFA(処方薬ユーザー課金法)に基づく審査期限が27年2月1日に3ヶ月延期された。REMS(重要な副作用を監視・緩和するための施策)の必要性などに関する資料を求められ提出したことが申請内容の重大な変更と見なされたようだ。ベータ・サラセミア試験で見られた肝障害リスクが鎌状赤血球症にも当てはまるかどうかが争点の模様。
mitapivatはピルビン酸キナーゼR(PKR)のアロステリック・アクティベイタ。 22年に米国と欧州でピルビン酸キナーゼ欠乏症における溶血性貧血の治療薬Pyrukyndとして承認された。5mg一日二回経口投与で開始し最大で50mg一日二回まで漸増できる。適応拡大は25年12月に米国でアルファ/ベータ・サラセミアの治療薬としても承認されたが、臨床試験で承認用量である100mgを一日二回経口投与した患者のうち5人で肝細胞障害が発生したため、枠付き警告やREMSが導入され、製品名もAqvesmeに変更された。尚、EUでは同じPyrukynd名で適応拡大が承認されたが、CHMPが肯定的意見を出したのが25年10月、欧州委員会の承認は26年5月と、なぜか通常より時間がかかった。
鎌状赤血球症における治験実績は第3相RISE UP試験で16歳以上の患者207人を100mg一日二回群と偽薬群に2対1割付けして52週間投与した。共同主評価項目のうちヘモグロビン改善奏効率は40.6%対2.9%で有意差があったが鎌状赤血球症疼痛クリーゼの年率発生率は2.62対3.05でp=0.1213に留まった。副次的評価項目である疲労の患者評価もフェールした。肝細胞障害については、10月に追加提出したオープン・レーベル延長試験を含めて、鎌状赤血球症では発生していない由。
リンク: プレス・リリース
【承認】
難治呼吸器乳頭腫のプラスミド療法が承認
(2026年10月30日発表)
FDAはInovio Pharmaceuticals(Nasdaq:INO)のVoceryq(doruxapapogene ralaplasmid and lalikinogene sifuplasmid-gxfd、開発コードINO-3107)を成人の難治呼吸器乳頭腫(RRP)用薬として加速承認した。同社のCELLECTRA 5PSP電子穿孔ディバイスを用いて、RRPの原因となるヒト・パピローマ・ウイルス6と11の抗原となるべき部位をエンコードするDNAと、免疫刺激するIL-12の一部をエンコードするDNAを結合したプラスミドを上腕三角巾などに筋注するもの。視認できる乳頭腫を切除した上で1mL(前者を6mgと後者を0.25mg含有)を3週毎に4回投与する。
第1/2相試験で過去12ヶ月間に2回以上の手術を受けた32人に施行したところ、72%でその後1年間の手術関数が半減以下になった。但し、レーベルに記載されているのは3回以上(メジアン4.5回)の手術を受けたサブグループ26人における完全反応率(爾後12ヶ月間手術なし)だけで、7人、27%だった。有害事象は注射箇所反応や頭痛、疲労、高血圧症など。
FDAは、当初、加速承認に適格であることを示す十分な証跡がないと暫定的に結論していたが、これも上層部の総入替えが関係しているのか、PDUFA期限通りに承認された。FDAは、かって加速承認の食い逃げが散見されたため、市販後薬効確認試験の組入れが相当程度進捗していることを求めることが多い。しかし、本件はこれからプロトコルを協議し27年央までに合意に達する考えのようだ。
リンク: FDAのプレス・リリース
リンク: 会社側のプレス・リリース
イルミアが乾癬性関節炎に適応拡大
(2026年10月30日発表)
インドのSun Pharmaceutical Industries(BSE:524715)は、FDAが抗IL-23p19抗体Ilumyaの適応拡大を承認したと発表した。米欧日で成人の全身性治療又は光学療法が適応になる中重度乾癬の治療薬として承認されているが、成人の活性期乾癬性関節炎が追加された。抗TNF-アルファ抗体歴を持つ患者を組入れたINSPIRE-1と、日本も参加した抗TNF-アルファ未経験者のIGNITE-2試験に基づくもの。乾癬では100mgを4週おいて2回皮下注した後に12週毎投与だが、乾癬性関節炎では最初から12週毎投与する。
リンク: プレス・リリース
ターゼナがHRR変異型転移前立腺癌に適応拡大
(2026年10月26日発表)
FDAはファイザーのPARP阻害剤Talzenna(talazoparib)の適応拡大を承認した。成人のHRR(相同組換修復)遺伝子に変異のある転移性APMN/S(アンドロゲン経路調節剤未治療または感受)前立腺癌に同社のXtandi(enzalutamide)、及び、去勢を受けていない場合はGnRHアナログと、併用する。日本も参加した第3相TALAPRO-3試験で主評価項目のPFS(治験医による放射線学的評価)のハザード・レシオが偽薬・Xtandi併用群比0.48、3年無放射線学的進行生存率は77%対56%で、BRCA変異型だけの解析も、それ以外の解析も良好だった。全生存期間は未だ有意差が出ていないがハザード・レシオ0.77と好ましい方向を向いている。欧州でも適応拡大申請中。
リンク: プレス・リリース
【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】
| PDUFA | |
|---|---|
| 26/11推 | Merck KGaAのpimicotinib(腱滑膜巨細胞腫) |
| 26/11推 | バイエルのBAY 2433334(asundexian、虚血性脳卒中再発予防) |
| 26/11推 | JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv、多発骨髄腫単剤4次治療) |
| 26/11推 | Dizal PharmaceuticalのZegfrovy(sunvozertinib、EGFR ex20ins変異のあるNSNSCLC1L) |
| 26/11推 | ロシュのGazyva(obinutuzumab、原発性膜性腎症) |
| 26/11推 | ファイザーのTalzenna(talazoparib)とアステラス/ファイザーのXtandi(enzalutamide)の併用(去勢感受前立腺癌) |
| 26/11推 | Regeneron PharmaceuticalsのALN-CC5(cemdisiran、全身性筋無力症) |
| 26/11/1 | Agios Pharmaceuticalのmitapivat(鎌状赤血球症適応拡大) |
| 26/11/14 | Summit tderapeuticsのSMT112(ivonescimab、3G EGFR阻害剤歴のあるEGFR変異陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌) |
| 26/11/14 | CytokineticsのMyqorzo(aficamten、MAPLE-HCM試験データ) |
| 26/11/17 | Mandos LLC(Beren tderapeuticsの子会社)のVTS-270(adrabetadex、ニーマン・ピック病I型) |
| 26/11/22 | SavaraのMolbreevi(molgramostim、吸入用、自己免疫性肺胞蛋白症) |
| 26/11/22 | Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD) |
| 26/11/25 | サノフィのSAR402671(venglustat、III型ゴーシェ病) |
| 26/11/27 | BridgeBio PharmaのBBP-418(ribitol、肢帯型筋ジストロフィー2I/R9型) |
| 26/11/27 | Zydus Therapeuticsのsaroglitazar(原発性胆汁性胆管炎) |
| 26/11/27 | Nuvalent(GSKグループ)のNVL-655(neladalkib、TKI歴のあるALK+NSCLC) |
| 26/11/28 | PolypidのD-PLEX100(doxycycline長期局所放出製剤、 |
| 26/11/30 | ロシュのRG6171(giredestrant、早期乳癌術後療法) |
| 26/11/30 | Vertex Pharmaceuticalsのpovetacicept(IgG腎症) |
| 26/11/30 | Cogent BioscienceのCGT9486(bezuclastinib、GIST2L) |
| 26/12推 | Sun PharmaceuticalのIlumya(tildrakizumab-asmn、乾癬性関節炎適応拡大) |
| 26/12推 | NuvalentのNVL-655(neladalkib、ALK陽性非小細胞性肺癌) |
| 26/12推 | JNJのTalvey・Darzalex Faspro併用(talquetamab-tgvsとdaratumumab, hyaluronidase-fihj、難治・再発多発骨髄腫2Lに併用・pomalidomideと3剤併用) |
| 26/12推 | アストラゼネカのUltomiris(ravulizumab-cwvz、IgA腎症) |
| 26/12推 | アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、筋層浸潤膀胱癌にenfortumab vedotinと併用) |
| 26/12推 | Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫) |
| 26/12推 | ノボ ノルディスクのCagriSema(semaglutideとcagrilintide、肥満/有病過体重) |
| 26/12推 | 田辺ファーマのMT-7117(dersimelagon、プロトポルフィリン症) |
| 26/12/12 | Vanda Pharmaceuticalsのimsidolimab(汎発性膿疱性乾癬) |
| 26/12/17 | Corcept TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群適応拡大) |
| 26/12/18 | Deciphera Pharmaceuticals(小野薬品子会社)のVelexbru(tirabrutinib、中枢神経系原発リンパ腫) |
| 26/12/18 | ロシュのRG6171(giredestrant、ESR1変異陽性転移乳癌) |
| 26/12/19 | Hansa BiopharmaのIdefirix(imlifidase、造血幹細胞移植付随脱感作療法) |
| 26/12/22 | Mineralys TherapeuticsのMLS-101(lorundrostat、管理不良/抵抗性高血圧) |
| 26/12/23 | ギリアド・サイエンシズのCART-ddBCMA(anitocabtagene autoleucel、多発骨髄腫) |
| 26/12/27 | Praxis Precision MedicinesのPRAX-562(relutrigine、発達性およびてんかん性脳症 |
| 26/12/30 | Cogent BiosciencesのCGT9486(bezuclastinib、非進行全身性肥満細胞症) |
| 26/12/30 | Saol TherapeuticsのSL1009(sodium dichloroacetat、ピルビン酸脱水素酵素複合体欠乏症) |
| 諮問委員会 | |
| 26/10/30 | DODAC:SydnexisのRyjunea(atropine、小児進行性近視) |
今週は以上です。
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