2025年11月15日

第1233回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA、閉経期ホルモン療法の警告を緩和へ 
  • 買収合戦はFDAに軍配 
  • ギリアド、HIV/AIDsの2剤合剤が主目的達成 
  • ノバルティス、新クラスのマラリア治療薬を承認申請へ 
  • AHA:STEMIのつなぎ治療試験が成功 
  • 新規cKIT阻害剤のGIST2次治療試験が成功 
  • ロシュ、多発硬化症用BTK阻害剤の第3相が成功 
  • AHA:アストラゼネカ、新規降圧剤の第3相が成功 
  • AHA:MSD、経口PCSK9阻害剤の第3相が成功 
  • XIa阻害剤のRecent ACS試験が無益中止に 
  • ITM、GEP-NETsの放射性医薬を承認申請 
  • TACI融合蛋白をIgA腎症に承認申請 
  • MC4Rアゴニストの適応拡大申請は審査期間延長に 
  • CHMP、遺伝性血管浮腫のアンチセンス薬などを支持 
  • Kuraのmenin阻害剤も承認 
  • エレビジスのレーベルが一部変更 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


FDA、閉経期ホルモン療法の警告を緩和へ
(2025年11月10日発表)

FDAは閉経期ホルモン療法(MHT)に関する警告を緩和すると発表した。第2次トランプ政権下の方針転換の一例だ。

ERT(エストロゲン補充療法、プロゲスチン併用法も含む)は閉経期症状の緩和や骨粗鬆症の治療などに用いられている。ワイス(現ファイザー)のPremarinなどが人気を集めたが、Women's Health Initiative Study(以下、WHI試験)で深刻な副作用が散見され、FDAは2003年にレーベル見直しを開始、最終的に心血管疾患、侵襲性乳癌、認知症(疑い例)が枠付き警告されることになった。米国は処方薬のTVコマーシャルが盛んで啓蒙に役立っているが、枠付き警告は、CMの最後に小さい字で数十行分を数秒表示するのではなく、読めるように表示しなければならない。TVCMで人気を集めた治療法が、一転して、新聞週刊誌で副作用を喧伝されるようになったため、需要が大きく落ち込んだ。一方で、治療を受けるべき患者が怖気づいて拒否する現象を行き過ぎと批判する医療従事者も多かった。

プレスリリースによると、方針転換の理由は、WHI試験論文後に刊行された文献や公衆意見など。FDAは医薬品諮問委員会をあまり招集しなくなった一方で、委員長らが以前から一家言持っている問題に関してエキスパート・ミーティングを開催することが増えた。出来レースに感じられるため当方はネグレクトしているが、今回の件は7月のエキスパート・ミーティングで見直すべきという意見が多かったようだ。

FDAは、WHI試験の被験者とMHT患者の違いを強調した。WHI試験はERTの心血管疾患予防効果を検討したもので、被験者の平均年齢は65歳と、閉経の平均年齢である51歳よりだいぶ高く、それだけ、心血管疾患や乳癌、認知症を発現するリスクも高いことになる。リスクが低ければ、そこから高まったとしても罹患するリスクはそれなりに低くなる、という考え方のようだ。

FDAは、レーベルの一部変更を容認する考え。まず、経口剤など全身性治療薬に関しては、認知症に関する文言を除去、内膜腫のリスクは枠付き警告を解除、心血管疾患と乳癌は枠付き警告から警告に格下げする。WHI試験関連では50-59歳のデータだけを収載する。また、60歳未満、閉経後10年以内の中重度VMS(血管運動性症状)に治療を開始することを考慮するよう促す。

局所性製剤のレーベルは局所性製剤に重要性を持つ情報を中心にして簡潔化する考え。具体的な内容は明らかではない。

FDA委員長らはプレス・カンファレンスでホルモン療法は心血管疾患や死亡、骨折を半減しアルツハイマーのリスクを35%抑制すると発言したようだ。どのようなエビデンスを持っているのだろうか?

リンク: FDAのプレスリリース


買収合戦はファイザーに軍配
(2025年11月7日発表)

米国ニューヨーク州の医薬品開発会社、Metsera(Nasdaq:MTSR)は、合併相手としてファイザーを選んだと発表した。ノボ ノルディスクが対抗オファーを出し注目されたが、ファイザーが当初オファーを引き上げてノボのオファーを少し上回ったことや、連邦取引委員会から電話連絡を受けたことから、取締役会の判断が二転三転し、結局、ファイザーに戻った。

MetseraはGLP-1作用剤を単剤やアミリン作用剤併用で肥満症治療薬として開発している。ファイザーは9月に一株当たりで現金47.5ドル及びCVR(後発権利証書:新薬承認などの条件が満たされた時に受け取る権利)22.5ドル相当で買収することでMetseraと合意したが、10月にノボが各56.5ドルと21.25ドルをオファーしたため、Metseraが乗り換えた。ファイザーが提訴すると共に各60ドル+10ドル(合計額は同じだが支払いを前倒し)に変更すると、ノボは62.2ドル+24ドルに引き上げたが、ファイザーは65.6ドル+20.65ドルと、総額でノボを0.05ドル上回るオファーを行い、最終合意にこぎつけた。

連邦取引委員会が事前相談がなかったことを違反と指摘する通知を発出したことが報じられているが、反トラスト法上の潜在的な危険性を伝えた電話連絡が、同じ理由なのか、もっと本質的な指摘なのかは明らかではない。

リンク: Metseraのプレスリリース

【新薬開発】


ギリアド、HIV/AIDsの2剤合剤が主目的達成
(2025年11月13日発表)

ギリアド・サイエンシズは、インテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビターbictegravirと長期作用性カプシド阻害剤lenacapavirの配合錠が第3相Artistry-1試験で主目的を達成したと発表した。複雑な治療を施行してHIVを抑え込んでいる患者を組入れて、合剤群と従来治療継続群に2対1割付けして48週間治療し、フェール率(HIV-1 RNAが50コピー/mL以上に増加してしまった患者の比率)を比較したところ、非劣性だった。もう一本、同社のBiktarvy(bictegravir, emtricitabine, tenofovir alafenamide fumarateの合剤)による治療が成功した患者がスイッチする便益を検討するArtistry-2試験の結果が年内に判明する見込みで、来年には承認申請に向かうのではないか。

ウイルス抑制に成功しているなら他の作用機序の薬は将来抵抗性が生じた時のために取って置いた方が良いような気がする。今回の試験の参加者のように、最大で11剤も服用しているなら飲むのを止めないようにスイッチする意味もあるかもしれないが、同じ配合剤であるBiktarvyを服用している患者にとっては、効果が非劣性だけでは足りないのではないか?それとも、Artistry-2試験は優越性試験なのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


ノバルティス、新クラスのマラリア治療薬を承認申請へ
(2025年11月12日発表)

ノバルティスはKLU156(ganaplacideとlumefantrineの合剤)が第3相マラリア治療試験で主目的を達成したと発表した。速やかに承認申請に向かう考え。承認なら1999年以来の革新的新薬になる。

前者の活性成分は同社が230万超の分子からスクリーニングした新クラスの抗マラリア薬。Medicines for Malaria Ventureと共同開発している。赤血球内で生存する上で重要な、寄生虫内の蛋白輸送システムを崩壊する作用を持つようだ。後者は同社のCoartem(artemether、lumefantrine)にも配合されているが、一日一回投与用に改良した。

今回の第3相試験、KALUMAは、サブサハラ・アフリカの12ヶ国で、熱帯熱マラリア原虫による急性非複雑性マラリアに罹患した成人と体重10kg以上の小児1688人を組入れて、顆粒分包を一日一回、3日間経口投与した。主目的は第29日PCR矯正治癒率(臨床的かつ寄生虫学的に治癒、但し新規感染例は矯正)。承認審査用のestimand法の解析(中止例やPCRデータ逸失例はフェールと見做す)では97.4%で、Coartem投与群の94.0%と非劣性だった。過去の抗マラリア薬の試験と同様なper protocol法に基づく解析では99.2%対96.7%だった。一部の薬物に耐性を持つ変異マラリア原虫にも有効だった。

Coartemのオリジンとなった薬が中国で承認されたのは1992年、Coartemがスイスや英国で承認されたのは99年、米国は2009年、日本は2016年で、長い間第一線で活躍してきたが、いよいよ次期主力品候補が誕生することになる。抗マラリア薬は利益貢献が小さいだけに、社会貢献の大きさを称賛したい。

リンク: 同社のプレスリリース


AHA:STEMIのつなぎ治療試験が成功
(2025年11月10日発表)

米国カリフォルニア州のCelecor Therapeuticsは、Disaggpro(zalunfiban)の第3相CeleBrate試験の成果をAHA(米国心臓協会)科学部会で発表した。欧州や米州の施設でSTEMI(ST上昇型心筋梗塞)を発症しPCI(経皮的冠介入術)が可能な医療施設に移送される前の患者2467人を偽薬、0.11mg/kg、0.13mg/kgの3群に無作為化割付けして一回皮下注する便益を比較したもの。主目的を達成したため26年初めに米国で承認申請する考え。

オートインジェクター用GPIIb/IIIa阻害剤。共同創業者であるRockefeller大学のBarry S. Coller, M.D.が創製した。投与後15分で作用がピークに達し2時間で消失する。STEMIを発症したら急いで施術可能な施設に運ぶことが必要だが、近くにない場合はつなぎの措置が必要だ。本試験は家庭や救急施設、ERで投与した上でPCI施設に向かった。主評価項目は、30日間の死亡から梗塞拡大までの6イベントの複合評価項目。修正比例オッズは0.79、p=0.028だった。共同主評価項目であるGUSTO基準での重度出血発生率は1.2%で偽薬群の0.8%をやや上回る程度だった。

評価対象イベントのうち発生率が高かったのは梗塞拡大(試験薬群85.4%、偽薬群88.5%)。心不全(6.5%対8.1%)やステント血栓(0.2%対1.1%)も比較的大きな群間の偏りが見られた。

GPIIb/IIIa阻害剤というと前世紀の新薬というイメージだが、投与後15分で効果がピークに達し2時間で消失という短めの作用時間を生かして、新しい用法で復活しようとしている。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: A.W.J. van't Hofらの治験論文抄録(NEJM Evidence)


新規cKIT阻害剤のGIST2次治療試験が成功
(2025年11月10日発表)

Cogent Biosciences(Nasdaq:COGT)はCGT9486(bezuclastinib)が第3相PEAK試験で主目的を達成したと発表した。26年上期に米国で承認申請する考え。

後に第一三共が子会社化したPlexxikonからライセンスしたc-KIT阻害剤。ライセンスしたKiq社が2020年にUnum Therapeutics(Nasdaq:UMRX)を株式交換方式で逆買収し、Cogent Biosciencesに社名変更したもの。7月に非進行性全身性肥満細胞腫の承認申請用偽薬対照試験、SUMMITが成功、症状改善作用や肥満細胞活性化のバイオマーカーである血清トリプターゼ半減作用が認められた。年内に米国で承認申請する予定。

今回の試験はimatinibに不応/不耐なGIST(消化管間質腫瘍)を組入れて、sunitinibに追加する便益を検討した。PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が16.5ヶ月とsunitinib単剤群の9.2ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.50。ORR(客観的反応率)も46%対26%でかなり上回った。治療関連投与中止発生率は7.4%対3.8%。今回も肝臓酵素上昇リスクが見られたようだ。

リンク: 同社のプレスリリース


ロシュ、多発硬化症用BTK阻害剤の第3相が成功
(2025年11月10日発表)

ロシュはRG7845(fenebrutinib)の第3相多発硬化症試験が二本成功したと発表した。データは未発表。もう一本の結果を待って、26年上期に承認申請を検討する考え。

中枢神経浸透性、高度選択的、可逆的なBTK阻害剤。BTK阻害剤は血液癌で複数が承認されているが、自己免疫疾患では薬物誘導性肝障害による開発中止・中断が相次いだ。ロシュは本剤が共有結合せず選択性が高いことに期待している。一日二回経口投与する。再発型多発硬化症における再発抑制作用をサノフィのteriflunomideと比較した第3相2本、FENhance1と同2のうち、後者が主目的を達成した。前者の結果は未だ。一次進行性多発硬化症のFENtrepidでは、疾病進行リスクが同社の既承認薬、Ocrevus(ocrelizumab)と非劣性だった。データは学会で発表する予定。肝安全性は過去の試験と同様とのこと。

リンク: 同社のプレスリリース


AHA:アストラゼネカ、新規降圧剤の第3相が成功
(2025年11月9日発表)

アストラゼネカは10月にbaxdrostatが第3相治療抵抗性高血圧試験、Bax24で主目的達成と公表したが、データをAHAで明らかにした。利尿剤を含む3種類の降圧剤を服用してもASBP(24時間血圧計に基づく収縮時血圧)が130mmHgを上回る患者218人を組入れて、2mgを一日一回、12週間経口投与したところ、ベースライン比16.6mmHg低下し、偽薬追加群の2.6mmHg低下を修正後で14.0mmHgの治療効果があった。尚、解析対象は184人で組入れ数218人より少ない。座位SBPは偽薬修正後10.3mmHg低下した。

19年にロシュのアルドステロン合成酵素阻害剤RO6836191をライセンスしたCinCor Pharmaを23年に買収して入手したもの。コルチゾールの合成に関わる11ベータ水酸化酵素に対する選択性が高い。アウトカム試験や心不全治療試験など複数の第3相が進行している。日本も参加したBaxHTNでは管理不良/治療抵抗性高血圧に追加投与したところ、1mg群と2mg群の座位SBPが偽薬比9mmHgと10mmHg低下した。今回も同程度の治療効果が示されたことになる。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


AHA:MSD、経口PCSK9阻害剤の第3相が成功
(2025年11月8日発表)

MSDはAHAでMK-0616(enlicitide decanoate)が二本の第3相試験で主目的を達成したと発表した。アムジェンの抗体医薬Repatha(evolocumab)と同様に、LDL-C受容体の零落を齎すPCSK9(プロタンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)を標的とするが、大環状ペプチドで経口投与できることが長所。複数の第3相が進行中。

CORALreef Lipids試験は、スタチンを服用してもLDL-C値が大きく低下しない、または不耐の高脂血症で、アテローム硬化性心血管疾患歴または高リスクの2912人を20mg一日一回投与群と偽薬群に2対1割付けして追加投与した。主評価項目のLDL-C値は、ベースライン値平均96mg/dLから、偽薬調整後で55.8%低下した。一部の症例でベースライン値の異常値が見られたため事後的に修正解析したところ、同59.7%となった。本剤は食物相互作用がある模様で、食後6~8時間経ってから服用し、その後30分は摂食しない用法になっているが、97%が順守できた。深刻有害事象発生率は10%で偽薬群の12%と大きな差はなかった。

CORAL reef HeFH試験ではスタチン治療を受けているヘテロ接合型家族性高血圧に同用量を投与したところ、24週LDL-C値が偽薬調整後59%低下した。有害事象治験離脱率に群間の偏りは発生しなかった。

このほかに二本の第3相試験の成功が6月に発表されている。

リンク: MSDのプレスリリース


XIa阻害剤のRecent ACS試験が無益中止に
(2025年11月14日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、Janssen Pharmaceuticalと共同開発している血液凝固第XIa因子阻害剤の第3相試験3本のうち、Librexia-ACS試験を中止すると発表した。他の二本は続行する考え。

BMS-986177/JNJ-70033093(milvexian)は、第XI因子を欠乏する人種は脳卒中も特発的出血も少ないという疫学研究を受けて複数の製薬会社が開発を進めているXIa阻害剤の一つ。今回の日本も参加している試験は、急性冠症候群(ACS)を発症して7日以内の、PCIや保存的治療を受けた、高再発リスクの患者16000人を組入れて、抗血小板治療に追加する便益を偽薬追加と比較したもの。試験薬は25mgを一日二回経口投与した。主評価項目はMACE(主要有害心血管事象)。中間解析に基づき独立データ監視委員会が試験を続行しても成功する確率は低いと判断、両社が中止を決めた。

独立データ監視委員会は他の2本は続行するよう推奨した。Librexia STROKE試験は40歳以上の急性虚血性脳卒中または脳虚血発作を発症してから48時間以内で高リスクの患者15000人を組入れて、アスピリン且つ又抗血小板薬に25mg一日二回を追加する便益を偽薬と比較している。主評価項目は虚血性脳卒中の再発リスク。一方、Librexia-AF試験は成人の抗血栓薬治療を受けている高リスク心房細動20296人を組入れて、100mg一日二回投与の便益を両社のXa阻害剤apixabanを一日二回投与する群と比較している。主評価項目は脳卒中または中枢神経以外での全身性塞栓のリスク。どちらも日本も参加。26年に結果が出る見込み。

亜急性期急性冠症候群は抗血栓薬の難関で、apixabanの第3相はフェール、バイエルのrivaroxabanは成功しEUでは適応拡大したが米国では用量反応相関が見られないことなどから承認されなかった。バイエルのXIa阻害剤asundexianは第2相で効果が見られず第3相にステージアップはしていない。milvexianは、ClinicalTrials.govで調べてもヒットしないので、ACSの第2相は割愛したのだろう。

リンク: BMSのプレスリリース

【承認申請】


ITM、GEP-NETsの放射性医薬を承認申請
(2025年11月13日発表)

ドイツのITM Isotope Technologies Munich SEは、ITM-11(n.c.a. 177Lu-edotreotide)を膵消化管神経内分泌腫(GEP-NETs)用薬として米国で承認申請し受理されたことを明らかにした。審査期限は26年8月28日。

ベータ線を放出する無担体核種とソマトスタチン受容体アゴニストの複合体。第3相COMPETE試験でグレード1/2の切除不能、進行性、そしてソマトスタチン受容体陽性のGEP-NETsの1~2次治療を受ける309人を組入れてPFS(無進行生存期間)をmTOR阻害剤everolimusと比較したところ、ハザード・レシオは0.67、p=0.022、メジアン値は各群23.9ヶ月と14.1ヶ月と、p値はそれほどではないが点推定値は大きな差が見られた。副次的評価項目の全生存期間は未だ中間解析段階で、ハザード・レシオは0.78(95%信頼区間0.5-1.1)、メジアン値は63.4ヶ月と58.7ヶ月と、点推定値は良いが信頼区間は未だ広い。

リンク: 同社のプレスリリース


TACI融合蛋白をIgA腎症に承認申請
(2025年11月7日発表)

米国カリフォルニア州の医薬品開発会社、Vera Therapeutics(Nasdaq:VERA)は、ataciceptをIgA腎症用薬として米国で承認申請したと発表した。

自己抗体の産生に関わるB細胞のBLySやAPRILの受容体であるTACI(transmembrane activator and calcium modulator cyclophilin ligand interactor)の可変領域とIgG1の固定領域の融合蛋白。2001年にセロノがZymoGeneticsからライセンスしリウマチなのの自己免疫疾患に開発したが、セロノは若き家督相続者がドイツのメルクに企業売却し巨額の利益を獲得、一方のZymoGeneticsも2010年にブリストル マイヤーズ スクイブが買収と姿を変えた。Veraは2020年にメルクからライセンスを取得した。

第3相ORIGIN 3試験で150mgを週一回自己皮下注する効果を検討したところ、26週の24時間平均UPCR(尿蛋白クレアチニン比)が46%低下し、偽薬比で42%低下した。このデータで加速承認を取得し、27年に2年eGFR(推算糸球体濾過率)解析を行って本承認切替を狙う。

リンク: Vera社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


MC4Rアゴニストの適応拡大申請は審査期間延長に
(2025年11月7日発表)

Rhythm Pharmaceuticals(Nasdaq:RYTM)はImcivree(setmelanotide)を特殊な肥満症の治療薬として開発し、20~21年に米欧でPOMC(proopiomelanocortin)、PCSK1(proprotein convertase subtilisin/kexin type 1)、またはLEPR(leptin receptor)欠乏症に伴う肥満症の体重管理薬として承認を取得した。米国で4歳以上の後天性視床下部性肥満症(空腹や体重を管理する部位に腫瘍が発生するなどが原因)に適応拡大申請しているが、第3相TRANSCEND試験の感受性分析を要求され追加提出したため、今回、審査期限が26年3月20日に3ヶ月延長された。

日本人12人の補完的コフォートも設定されており、審査期限と前後して結果が判明するのではないか。

リンク: 同社のプレスリリース


CHMP、遺伝性血管浮腫のアンチセンス薬などを支持
(2025年11月14日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

大塚製薬がIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からEUにおける権利を取得して承認申請したDawnzera(donidalorsen)はPKK(prekallikrein)の発現を抑制するアンチセンス・オリゴヌクレオチド。12歳以上の遺伝性血管浮腫の発作傾向を抑制する。4週又は8週毎に皮下注する。臨床試験では発作を8割抑制した。米国では8月に承認。

リンク: EMAのプレスリリース

Curium Romania SRLのGalenVita(germanium (68Ge) chloride/gallium (68Ga) chloride)は放射性標識。PET造影剤の標識に用いる。

リンク: EMAのプレスリリース

イーライリリーのInluriyo(imlunestrant)は経口選択的エストロゲン受容体アルファ零落剤。成人男女の、内分泌療法後に進行したホルモン受容体陽性her2陰性局所進行/転移乳癌で、ESR1変異を持つ場合に適応になる。閉経後女性以外はLHRHアナログと併用する。米国では9月に承認。ESR1変異は内分泌療法後にしばしば見られ、抵抗性の原因になる。Inluriyoは第3相試験でPFS(無進行生存期間、担当医評価)がメジアン5.5ヶ月と標準的内分泌療法群の3.8ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.62だった。

リンク: EMAのプレスリリース

サノフィのTeizeild(teplizumab)は抗CD3エプシロン鎖抗体。8歳以上のステージ2一型糖尿病に、一日一回点滴静注を14日間反復する。ステージ2は高血糖ではないが高い。ステージ3は症状が現れてインスリン治療が必要になる。臨床試験でステージ3と診断されるまでのメジアン期間が50ヶ月と偽薬群の25ヶ月を大きく上回った。Ala-Alaのニックネームで注目されたが中々第3相が成功せず、1987年と言われる創製から35年後に米国でTzield名で初承認された。サノフィは米国で最近診断されたステージ3患者に適応拡大申請した。その直前にFDA委員長の国家的優先バウチャを受領している。

リンク: EMAのプレスリリース

BioNet EuropeのVacPertagenは百日咳の遺伝子組換え、無細胞性、コンポーネント・ワクチン(吸着)。百日咳毒素と百日咳菌が産生するFHA(繊維状赤血球凝集素)を精製し抗原化したもの。12歳以上のブースター接種、または妊婦と出生後乳児に用いる。百日咳だけのワクチンの需要もあるようで、2月にタイで接種キャンペーンが決定した模様だ。

リンク: EMAのプレスリリース

イタリアのFondazione TelethonのWaskyra(etuvetidigene autotemcel)は希少遺伝子疾患であるWiskott-Aldrich症候群のex vivo遺伝子療法。自家CD34陽性幹細胞/前駆細胞にex vivoでレンチ・ウイルスをベクターとしてWASのcDNAを導入し、患者に戻す。造血幹細胞移植が望まれるが適切な近親者ドナーが見つからない、生後6ヶ月以上の患者が適応になる。臨床試験で施術前と比べて重度感染症や中重度出血が大きく減少した。米国では3月に承認申請。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大で肯定的意見を得たのは、インサイト(Nasdaq:INCY)のFc装飾抗CD19抗体、Minjuvi(tafasitamab)。成人の難治/再発濾胞性リンパ腫の2次治療としてlenalidomide及びrituximabと併用することが支持された。第3相試験でMinjuviを併用しなかった群比ハザード・レシオが0.41だった。Monjuvi名で販売されている米国では6月に適応拡大済。

新薬承認申請が撤回されたのは、Verona Pharma(Nasdaq:VRNA)のOhtuvayre(ensifentrine)。COPD維持療法としてジェット・ネブライザで吸入するPDE3/4阻害剤で米国では24年6月に承認された。同社は今年10月にMSDが100億ドルで買収しており、期待の新薬なのかと思われたが、今回の撤回は、申請者側の優先順位の問題であるようだ。

リンク: EMAのプレスリリース

悩ましい状態になったのはIntraBioのAqneursa(levacetylleucine)。24年に米国でNiemann-Pick病C型用薬として承認され、EUでもCHMPが7月に肯定的意見を纏めたが、眩暈などの治療に用いられるラセミ体、acetylleucineとの便益の違いが確立していないとして新規活性成分とは認めなかった(新薬排他権が供与されない)。会社側の請求により再審査したが、結論は変わらなかった。

一方、10月のCHMPで否定的意見となったKadmon(Nasdaq:KDMN)のRezurock(belumosudil)は再審請求に応じることが決まった。米国では21年に、Meiji Seikaファルマがライセンスした日本でも24年に、造血幹細胞移植後の慢性移植片宿主病の3次治療(日本は2次治療)に承認されたが、CHMPは、臨床試験のデザインや実施状況に難があることや、審査中に一次治療試験が無益中止と報告されたことなどから、承認を躊躇していた。

【承認】


Kuraのmenin阻害剤も承認
(2025年11月13日発表)

FDAはKura Oncology(Nasdaq:KURA)のKomzifti(ziftomenib)を成人のNPM1変異型再発/難治急性骨髄性白血病(AML)向けに承認した。AMLの3割程度はNPM1に変異があり細胞の分化抑制機能が十分に発揮されていない。様々な変異がある模様だが、A型、B型、D型など本剤に感受するサブタイプで、治療歴を持ち、他に満足できる治療オプションがない患者が適応になる。600mgを一日一回経口投与したKOMET-001試験(FDAのプレス・リリースやパッケージ・インサートではKO-MEN-001試験と記載)で21%の患者が完解または血液学的指標以外は完解を達成し、メジアン維持期間は5ヶ月だった。

本剤と同じメニン阻害剤はSyndax Pharmaceuticals(Nasdaq:SNDX)のRevuforj(revumenib)が24年11月にKMT2A転座型再発/難治急性白血病に、今年10月には今回と同じ疾患に、承認されている。こちらは1歳以上の小児も適応。完解率は大差ないように見える。重要な警告事前注意はどちらも分化症候群、QTc延長、胚胎毒性だが、Komziftiの枠付き警告は分化症候群だけ、RevuforjはQTc延長も記載されている。

Komziftiは米国では協和キリンと共同開発販売、米国外は協和キリンが担当する。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


エレビジスのレーベルが一部変更
(2025年11月14日発表)

FDAはSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のデュシェンヌ型筋ジストロフィーの遺伝子治療薬、Elevidys(delandistrogene moxeparvovec-rokl)のレーベルの一部変更を発表した。23年に米国で承認、今年5月には日本でも承認されたが、その2ヶ月前に日本では適応外になる歩行不能な16歳の患者が急性肝障害で死亡、6月には同様な15歳の患者も死亡し、同社は一時、販売を停止。米国外で販売するロシュも日本以外の市場で販売中止した。

新しいレーベルでは、歩行不能な患者は適応外、深刻な肝障害/肝不全が枠付き警告、肝臓障害やワクチン接種/感染症から4週以内の患者には投与しないことを推奨した。死亡2例は2ヶ月以内に発症したため、投与後2ヶ月間は適切な医療施設の近くに留まること、3ヶ月間は毎週肝機能検査を施行することなどを推奨した。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



PDUFA
25/11推Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群)
25/11推ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹)
25/11推ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加)
25/11推ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、二型糖尿病の末梢動脈疾患追加)
25/11推バイエルのBAY 2927088(sevabertinib、her2変異非小細胞性肺癌)
25/11推アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・胃食道接合部腫瘍における周術期療法を追加)
25/11/18Arrowhead PharmaceuticalsのARO-APOC3(plozasiran、家族性カイロミクロン血症)
25/11/28ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症)
25/11/30Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)
25/11/30ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-bysp、濾胞性リンパ腫2次治療を追加)
25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
25/12推ノバルティスのOAV101 IT(onasemnogene abeparvovec髄腔内投与、脊髄性筋萎縮症)
25/12/5BMSのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、辺縁帯リンパ腫追加)
25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
25/12/30Concert TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)




今週は以上です。

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