【ニュース・ヘッドライン】
- 米国、10月から輸入医薬品に100%関税
- FDAがアセトアミノフェンのレーベル変更へ
- 高リスク腎移植の減感作薬を米国でも承認申請へ
- ハンチントン病の遺伝子療法試験が成功
- BMS、新規抗癌剤が第3相でMRD陰性率を達成
- アレキサンダー病のピボタル試験が成功
- ロシュ、新規SERDの第3相が成功
- seltorexantの第3相は一勝二敗に
- Acadia社、プラダー・ウィリ症候群試験がフェール
- カンナビジオールの脆弱X症候群試験がフェール
- アッヴィ、新規パーキンソン病薬を承認申請
- エンハーツを乳癌一次治療に適応拡大
- スピンラザの高用量は承認されず
- Scholar Rockの脊髄筋萎縮症用薬は審査完了に
- レキサルティのPTSD適応は審査完了に
- 先端巨大の経口薬が承認
- リリーのエストロゲン受容体ブロッカーが承認
- カプレルサのREMSが終了
- 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会
【今週の話題】
米国、10月から輸入医薬品に100%関税
(2025年月日発表)
米国連邦政府のトランプ大統領は、Truth Socialで、10月1日以降、ブランド薬あるいは特許性薬の輸入に100%の関税を課す発表した。但し、米国内で薬品製造工場を建設している企業は対象外。既に10社以上が建設計画を発表しているが、更に増えそうだ。"IS BUILDING"と記しているので、既に工場を稼働しているだけでは対象外にはならないのだろう。
日本や欧州は、貿易交渉を通じて先発薬の関税を15%とすることで合意している。このような国で製造された薬品も対象外になると思われるが、どうだろうか。
Truth Socialはトランプ大統領が2021年にTwitterやFacebookから出禁にされた時に立ち上げたSNSサイト。不振だったのか、今日では別組織が所有しているようだ。
リンク: トランプ大統領のTruth Socialにおける書き込み
FDAがアセトアミノフェンのレーベル変更へ
(2025年9月22日発表)
ホーダイは日常生活に定着し、筆者も気が付けば音楽や雑誌などをサブスクしている。米国でも流行しているようだが、第2次トランプ政権はやりたいホーダイだ。
FDAはacetaminophenのレーベルを変更し、妊婦の服用と生まれる子供の自閉症やADHDのリスクの関連について記載するプロセスを開始した。全米の医師に注意を促す通知を発出した。また、FDAの独自分析によりleucovorinをCFD(脳葉酸欠乏症)に適応拡大したことも明らかにした。26年前まで販売していたGSKに適応拡大申請と確認的試験の実施を要請する。
FDAのプレスリリースによると、Nurses' Health Study IIやBoston Birth Cohortなどの複数の大規模コフォート・スタデイで関連性が見られた。但し、因果関係は確立しておらず、関連が見られなかった研究もある。また、acetaminophenは妊娠中の発熱に用いることのできる唯一のOTC薬であり、アスピリンやイブプロフェンは胎児に悪影響を及ぼすことにも言及している。
どっちなんだい、と突っ込みたくなる歯切れの悪いリリースだが、ある意味では、お天気傘をさすべきか否か、というような命題と同じで人によって答えが違っても良いのではないだろうか---と私は思うが、米国では学会を含め異論が噴出している。
波紋は大西洋を渡り、EMA(欧州薬品庁)はEUのレーベルを変える必要はないとプレスリリースを発出した。2019年に体内で曝露した小児の神経発達に関わる各種研究を検討したことがあるが、つながりは確立していないと結論した。プレスリリースにはAhlqvistらがスウェーデンで実施した240万人規模の疫学研究が引用されている。自閉症やADHDなどのリスクは曝露していない小児の1.1倍前後だったが、兄弟の間の比較では1.0程度であり、第3の因子の影響と結論したものだ。
CFDは多くの患者でFOLR1遺伝子変異が見られ、葉酸の吸収不全が関連すると考えられている。葉酸の類縁体であるleucovorinを投与した40人超の症例のシステマティック・レビューで効果が見られたとのことだ。GSKは1983年にWellcovorin名で承認を取得したが、GE化したため1999年に販売中止を決め、FDAが承認を取消した。FDAは2017年に安全性や薬効を理由とする販売中止ではないとの評価を決定、今日でも多くのGE品が販売されている。各種報道によるとFDAは適応拡大申請する考えのようであり、手続きが終われば医療従事者はGE品をCFDに処方できるようになる。
各種報道によると、FDAは、自閉症スペクトラム障害に適応拡大することも考えている模様だ。
承認と申請が手順前後だが、そんなことを気にする政権ではないのだろう。40人程度の症例報告位のエビデンスで適応拡大ができるとは素晴らしい。超希少疾患用薬を開発している企業のCEOは、資金集めに苦労するくらいだったら、FDA長官になって自ら承認したら良い。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Makary委員長の医師向け通知
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Ahlqvistらの疫学論文(JAMA 2024年)
リンク: 自閉症適応拡大に関する連邦政府公告
【新薬開発】
高リスク腎移植の減感作薬を米国でも承認申請へ
(2025年9月24日発表)
スウェーデンのHansaBiopharma(OMX:HNSA)はIdefirix(imlifidase)が米国第3相試験の中間解析でeGFR(推算糸球体濾過量)を達成したと発表した。25年末までにFDAに加速承認申請する考え。
化膿連鎖球菌の免疫グロブリンG零落酵素を雛形とする開裂酵素。多くのドナーのリンパ球に対する抗体を持つ患者は移植に適したドナーを見つけるのが困難だが、IgGを抑制することで克服できる可能性がある。20年にEUで、高度感作またはクロスマッチ陽性の死体腎を移植する以外に手段のない腎不全患者の脱感作療法として、条件付き承認された。英国やスイス、オーストラリアでも承認された。
今回のConfIdeS試験は米国の施設で高度感作(cPRA≧99.9%、つまり、殆どの検査用リンパ球に対する抗体を保有)かつクロスマッチ陽性(移植腎のリンパ球に対する抗体を保有)の成人64人を試験薬群と対照群(待機、オフレーベル脱感作薬使用、あるいはもし適合臓器移植が見つかったら移植)に無作為化割付けしてオープン・レーベルで予後を比較した。中間解析の主評価項目である12月eGFRは51.5mL/分/1.73m2と対照群の19.3mL/分/1.73m2を有意に上回った。
リンク: 同社のプレスリリース
ハンチントン病の遺伝子療法試験が成功
(2025年9月24日発表)
オランダのuniQure biopharma B.V.(Nasdaq:QURE)は、AMT-130の早期ハンチントン病試験の3年追跡結果を明らかにするとともに、26年第1四半期に承認申請する計画を発表した。
遺伝子組換えアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして変異ハンチントン遺伝子を沈黙させるマイクロRNAをin vivoで導入するもの。血液脳関門を回避するためにMRIモニタリング下の定位脳手術で線条体に持続陽圧投与する。
今回の解析は、米国の施設で16人を高用量群(6x10^13vg)、低用量群(6x10^13vg)、または偽手術群に割付けた第1/2相盲検試験と、英国とポーランドの施設で13人を高用量群または低用量群に組付けた後期第1/2相オープン・レーベル試験の統合分析。3年追跡データのある症例(高用量群は17人中12人、低量群は12人全員)におけるcUHDRS(composite Unified Huntington's Disease Rating Scale)のベースライン比変化を傾向加重外部対照群(高用量群は940人分の、低用量群は626人分の、自然歴データ)と比較した。
高用量群は平均で-0.38、対照群は-1.52となり、試験薬が悪化を75%遅らせた(p=0.003)。副次的評価項目のTFC(総合機能評価)や運動尺度、認知機能尺度なども有意、または好ましい傾向が見られた。脊髄液中NfL(ニューロフィラメント軽鎖)はベースライン比8%低下した。
昨年7月発表された探索的2年追跡結果と比べて群間差が若干低下しているものの、概ね似たような結果だ(解析対象が一致していないので比較できるかどうかは不確かだが)。
この試験は施術の前後に免疫抑制剤を投与するコフォートも進行中。どのような狙いなのか当方は知らないい。過去には高用量群の投与にブレーキがかかったこともあるが、今回のリリースを読む限りでは拒絶反応を抑制しなければならないほどリスクが高いようには感じられないが...
同社はアムステルダム大学アカデミック・メディカル・センターに拠点を持つ新興企業。
リンク: 同社のプレスリリース
BMS、新規抗癌剤が第3相でMRD陰性率を達成
(2025年9月23日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブはiberdomideの第3相EXCALIBER-RRMMで共同主評価項目の一つを中間解析で達成したと発表した。当局と協議する考え。加速承認申請が認められる可能性があるのではないか。
経口CELMoD(cereblon E3 ligase modulator)。同社がセルジーンを買収して入手したthalidomideなどと同様に、細胞内タンパク質の選択的分解を担うE3ユビキチンリガーゼを構成する蛋白の一つであるセレブロンに結合し、免疫を調停する。日本も参加した今回の試験は、1~2次治療歴を持ち最終治療抵抗性の難治/再発多発骨髄腫患者をIberDdレジメン(iberdomide、daratumumab、dexamethasoneを併用)とDVdレジメン(daratumumab、bortezomib、dexamethasoneを併用)に無作為化割付けして、MRD(微小残存病変)陰性率やPFS(無進行生存期間)を比較したもの。前者を達成し、PFSと副次的評価項目の全生存期間は継続追跡する。
多発骨髄腫はthalidomide以降、新薬が続々開発され、今日では4剤併用も可能になり、ORR(客観的反応率)などの指標が向上した。患者にとっては喜ばしいことだが、ORRが100%に近づくにつれて、それを凌駕する新レジメンを開発するのが見かけ上、困難になる。PFSは向上できるはずだが、追跡に時間がかかる。そこで、新たなサロゲート・マーカーとして注目されているのがMRDだ。次世代シーケンサーや次世代フロー・サイトメトリーを用いて10万個に1個の感度で癌細胞を検出するもので、PFSと相関する可能性がある。B細胞急性リンパ性白血病ではアムジェンのBlincyto(blinatumomab)が18年にMRDデータなどに基づき適応拡大している。24年4月のFDA腫瘍学諮問委員会では、投票権を持つ委員全員が多発骨髄腫の加速承認のエビデンスにすることに賛成した。
リンク: BMSのプレスリリース
アレキサンダー病のピボタル試験が成功
(2025年9月22日発表)
Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は、ION373(zilganersen)の第1-3相アレキサンダー病試験で主目的を達成したと発表した。26年第1四半期に承認申請すると共に、拡大アクセスプログラム(EAP)を検討する考え。
アレキサンダー病は100万~300万人に一人の超希少疾患。9割の患者で脳のアストロサイトを支えるGFAP(グリア線維性酸性蛋白質)の遺伝子に変異があり、痙攣や精神運動発達遅延などを示す。承認されている薬はない。ION373はGFAPの発現を抑制するアンチセンス薬。今回の試験では、日本を含む8ヶ国の13施設で1歳半から53歳の患者54人を試験薬群または対照群に2:1割付けして60週間治療したところ、試験薬群の第61週10メートル歩行テスト成績が対照群を33%上回った。但し、p=0.0412なのでそれほど高度な有意差ではない。
副次的評価項目の進行遅延作用なども好ましい傾向が見られた模様。忍容性も良好とのこと。
リンク: 同社のプレスリリース
ロシュ、新規SERDの第3相が成功
(2025年9月22日発表)
ロシュは経口SERD(選択的エストロゲン受容体零落剤)のRG6171/GDC-9545(giredestrant)が第3相evERA試験で主目的を達成したと発表した。新薬承認申請する考え。
日本も含むグローバルな施設で内分泌療法及びCDK阻害剤歴を持つエストロゲン受容体陽性、her2陰性の局所進行/転移乳癌患者をgiredestrant 30mgとeverolimus(mTOR阻害剤)の併用群と標準療法(tamoxifenなど)とeverolimusの併用群に無作為化割付けしてPFS(無進行生存期間、治験医評価)を比較した。共同主評価項目であるintent-to-treatベースの解析と、ESR1変異型だけの解析の両方が成功した。全生存期間は未成熟だが好ましい傾向が見られる由。
giredestrantは一次治療や術後アジュバントなどでも第3相試験中。
リンク: 同社のプレスリリース
seltorexantの第3相は一勝二敗に
(2025年9月22日発表)
ジョンソン エンド ジョンソンはJNJ-7922(seltorexant)が第3相鬱病実薬対照試験で主目的を達成しなかったと発表した。数値上上回ったので悪くはないと受け止めるべきなのか、良く分からないが、これで鬱病における第3相試験成績は一勝二敗となってしまった。抗鬱剤は2勝1敗なら承認される可能性が十分あるので、次の注目は、26年末開票見込みのもう一本の成否だろう。
選択的オレキシン2受容体アンタゴニストで、不眠症を伴う、抗鬱剤で治療しても中重度症状の鬱病に追加投与する用途用法で第3相入りした。24年にMDD3001試験が成功、43日MADRS総スコアが偽薬比-2.6、p=0.007だった。一方、MDD3002試験は独立データ監視委員会が中間解析で中止を勧告した。同スコアが偽薬比-0.9に留まった模様だ。
今回のMDD3005試験の主評価項目は奏効率(26週MADRS総スコアが半減以上)で、試験薬群は57.4%とquetiapine XR群の53.4%を上回ったが有意ではなかった。MADRS総スコアは各群-23.0と-22.7だった。忍容性面では傾眠の発生率が6%対24%、体重増加が0.5kg対2.1kgと、小さかった。
オレキシン受容体アンタゴニストは不眠症治療薬として複数が承認されている。seltorexantが不眠を伴う鬱病に試験されているのも睡眠促進という付加価値に期待しているのではないかと思われ、実際、副次的評価項目として睡眠尺度も採用されているようだが、不眠症薬の評価尺度と異なるので、どの程度の意味があるのかわからない。
リンク: 同社のプレスリリース
Acadia社、プラダー・ウィリ症候群試験がフェール
(2025年9月24日発表)
Acadia Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)はACP-101(carbetocin、点鼻スプレー)の第3相COMPASS PWS試験がフェールしたと発表した。開発中止する考え。
プラダー・ウィリ症候群(PWS)は16000出生に一人の希少神経発達障害。父由来のものしか発現しない遺伝子が機能せず、食欲を抑制できずに肥満になったり、軽中度の発達障害を発現したりする。
carbetocinは帝王切開時の出血予防などに用いられているオキシトシン類縁体。PWS(プラダー・ウィリ症候群)向けに開発販売する権利をFerring PharmaceuticalsからライセンスしたLevo Therapeuticsが第3相試験で第8週HQCT(臨床試験用過食質問票)を偽薬と比較したところ、9.6mg群はフェールしたが、副次的評価項目に設定された3.2mg群はp=0.016と有意差が見られた。承認申請を断行したが、一本の試験で承認できるほど便益が著しく大きくはないことなどから、諮問委員会では13人中12人が反対し、22年1月に審査完了通知を受領した。
AcadiaはLevo社を22年に買収し今回の試験を実施したが、実らなかった。
リンク: Acdia社のプレスリリース
カンナビジオールの脆弱X症候群試験がフェール
(2025年9月24日発表)
Harmony Biosciences(Nasdaq:HRMY)はZYN002(cannabidiol)の第3相脆弱X症候群試験がフェールしたと発表した。偽薬群の応答率が想定以上に高かった。詳細な検討を行う考え。
脆弱X症候群はシナプスの発達などに関わる蛋白のFMR1遺伝子にCGGリピート増幅変異があり、発達遅延や知的障害などの神経症状が現れる。7割程度の患者ではFMR1遺伝子が完全にメチル化されFMRPが生成されずエンドカンナビノイド系が制御できなくなるため重症化しやすい。推定有病率は男性は4000~7000人に一人、女性は8000~10000人に一人。
ZYN002はカンナビノイドの麻薬的成分であるTHCを含まない合成カンナビジオールの経皮投与用ジェル製剤。第3相RECONNECT試験で3~29歳の患者215人を組入れて18週間投与し、主評価項目としてFMR1遺伝子完全メチル化サブグループにおける社交回避尺度を偽薬と比較した。
Zynerba Pharmaceuticalsが実施した第2相はフェール、Harmonyが買収して第3相を断行したが、実らなかった。
リンク: Harmony社のプレスリリース
【承認申請】
アッヴィ、新規パーキンソン病薬を承認申請
(2025年9月26日発表)
アッヴィは選択的ドーパミンD1/D5部分作動剤tavapadonをパーキンソン病薬としてFDAに承認申請した。早期患者を組入れた第3相試験二本で運動症状(MDS-UPDRSパートIIとパートIII)が偽薬比有意に改善した。レボドーパだけでは十分管理できない患者を組入れて追加投与した試験では、ジスキネジアを伴わない管理良好時間(オンタイム)が偽薬追加群より1時間長かった。
他のドパミン・アゴニストと比べて鎮静や衝動制御障害が起きにくいとされる。幻覚リスクが見られ、早期患者試験のうち5mg群と15mg群が設定された試験では後者の6%で、5~15mgで滴定するフレックス・ドーズ試験では4%で、報告された。
ファイザーが第2相で開発中止したPF-06649751をライセンスしたCerevel Therapeuticsを、24年に企業価値87億ドルで買収して入手したもの。
リンク: アッヴィのプレスリリース
エンハーツを乳癌一次治療に適応拡大
(2025年9月24日発表)
第一三共は、抗her2抗体薬物複合体Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を米国で成人のher2陽性(IHC3+またはISH+)切除不能/転移乳癌の一次治療に適応拡大申請し、受理されたと発表した。審査期限は、開発販売パートナーであるアストラゼネカのサイトに掲載されている両社の英文プレスリリースによると26年第1四半期、第一三共の日本語単独プレスリリースによると26年1月23日。
今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)発表によると、第3相DESTINY-Breast09試験の中間解析で、ロシュの抗2C4抗体pertuzumabと併用した群のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)がメジアン40.7ヶ月と標準療法群(taxane系抗癌剤、trastuzumab、及びpertuzumabを併用)の26.9ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.56、統計的に有意だった。全生存期間は未成熟で有意水準には達していないがハザード・レシオ0.84と悪い方向には向いていない。間質性肺疾患/肺臓炎はG3/4はゼロだったがG5が0.5%で発生した(対照群は0%)。
この試験はEnhertuと偽薬を投じる群も設定されているが、まだデータが熟していない模様だ。
リンク: 第一三共のプレスリリース(和文)
【承認審査・委員会】
スピンラザの高用量は承認されず
(2025年9月23日発表)
バイオジェンはIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスして開発販売している脊髄性筋萎縮症用薬Spinraza(nusinersen)の高用量を承認申請し、日本では今月、承認されたところだが、米国は審査完了通知を受領した。CMC(化学、製造、管理)に関する技術情報のアップデートを求められたとのこと。対処方法の選択肢も提示されているとのことなので、それほど大きな問題ではないのかもしれない。
Spinrazaの初承認時の用量と投与頻度は、12mgをインダクション期は第0日、14日、28日、58日に、維持期は4週毎に、髄腔内投与する。高用量はインダクションとして50mgを2週おいて2回、維持期は28mgを4週毎というもの。第2/3相EVOTE試験のパートBで未治療、症候性の乳児発生型患者75人を組入れて第6月のCHOP-INTEND(Children's Hospital of Philadelphia Infant Test of Neuromuscular Disorders)を評価したところ、承認用量の第3相試験の偽薬群の適合症例群を有意に上回った。承認用量を投与した群と比べても上回る傾向が見られた。
リンク: バイオジェンのプレスリリース
Scholar Rockの脊髄筋萎縮症用薬は審査完了に
(2025年9月23日発表)
Scholar Rock(Nasdaq:SRRK)はSRK-015(apitegromab)を脊髄筋萎縮症(SMA)用薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。フィル・フィニッシュ委託先であるCatalent IndianaをFDAが査察した時に観察事項があったこと以外は言及されていない由。Catalent Indianaは8月にFDAに回答しており、同社は、問題解消後に修正申請する考え。
マイオスタチンの前駆体・不活性体を阻害する点滴静注用薬。第3相SAPPHIRE試験で既承認薬による治療を受けている歩行不能な2/3型SMAに追加投与する便益を検討したところ、52週HFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)が偽薬比有意に改善した。上記の問題は8月の中間決算発表電話会議で言及された由だが、プレスリリースには記載されておらず、製造問題だけでなく公正開示問題も発生しているのではないかと思料される。
ノボ ノルディスクがCalatentの買収を発表した時は業界に戦慄が走ったのではないかと想像される。今回の問題は買収前からの不備と推測されるが、Scholar Rockは上記製造施設は現在はCatalentではなくノボ ノルディスクが所有運営していることを付記している。
リンク: 同社のプレスリリース
レキサルティのPTSD適応は審査完了に
(2025年9月20日発表)
大塚製薬と開発販売パートナーのルンドベックは、非定型的向精神薬Rexulti(brexpiprazole)の適応拡大申請に関してFDAから審査完了通知を受領したと発表した。PTSD(トラウマ後ストレス障害)にsertralineと併用する第2相と二本の第3相を実施したが、明らかに成功したと言えるのは第3相一本だけであり、その試験でも臨床的に意味のある効果は見られなかったため、7月に開催された諮問委員会でも11人中10人が承認を支持しなかった。
リンク: 両社のプレスリリース(大塚の和文リリースより少し詳しい)
【承認】
先端巨大の経口薬が承認
(2025年9月25日発表)
Crinetics PharmaceuticalsはFDAがPalsonify(paltusotine)を成人の切除に十分応答しない、または切除不適の先端巨大用薬として承認したと発表した。40mg一日一回経口投与で開始し、忍容性やIGF-1水準に応じて20~60mgの範囲で滴定する。EUでも承認申請中。日本は22年に三和化学がライセンスした。
ソマトスタチン受容体2型アゴニスト。承認されているソマトスタチン類縁体と異なり、経口投与できることが特徴。初めて治療を受ける患者や承認薬からスイッチする患者を組入れた試験で、奏効率(IGF-1水準が正常範囲で推移)が偽薬群を大きく上回った。
リンク: 同社のプレスリリース
リリーのエストロゲン受容体ブロッカーが承認
(2025年9月25日発表)
FDAはイーライリリーの選択的エストロゲン受容体零落剤Inluriyo(imlunestrant)を成人の一次以上の内分泌療法歴のあるエストロゲン受容体陽性、her2陰性、ESR1変異陽性の進行/転移性乳癌用薬として承認した。400mgを一日一回、空腹時に服用する。ESR1のライガンド結合部位における変異を調べるctDNAコンパニオン診断薬としてGuardant360 CDxも承認した。
第3相EMBER-3試験で日本を含む世界の施設で874人を組入れてPFS(無進行生存期間、治験医評価)を標準的内分泌療法群(fulvestrantまたはexemestane)と比較したところ、ESR1変異サブグループ(256人)ではハザードレシオ0.62、メジアン値は5.5ヶ月対3.8ヶ月だった。共同主評価項目の一つである全被験者の解析はハザードレシオ0.87、5.6ヶ月対5.5ヶ月となりフェールした。全生存期間の解析は未成熟。
尚、この試験はimlunestrantと同社のCDK4/6阻害剤Verzenio(abemaciclib)を併用する群も設定され、第3の主評価項目である全被験者におけるPFSはハザードレシオ0.57、9.4ヶ月対5.5ヶ月、p<0.001と良好だったが、データが十分に熟していない模様であり、未だ承認されていない。この群はG3以上の有害事象発生率が48%と単剤群の17%、標準療法群の20.7%より高かった点も気になるところだ。
リンク: FDAのプレスリリース
【医薬品の安全性】
カプレルサのREMSが終了
(2025年9月25日発表)
FDAはサノフィの甲状腺髄様腫用薬Caprelsa(vandetanib)に関するREMS(リスク評価管理戦略)を撤廃した。市販後の14年間にTdP(トルサード・ド・ポアンツ)などの突然死が報告されていないことや、心拍モニタリングが励行されていることなどを踏まえて、医師の研修や認定、特別なモニタリングなどを強制する必要はないと判定した。心拍モニタリング不要と判定されたわけではない。
向精神薬clozapineも今年2月にREMSが解除された。何れも、深刻な副作用を早期発見するための検査が軽んじられないように導入されたものだが、導入から10年以上経ち、当初の目的は達成されたと判断した。医師のルーチンに組み込まれた後は、様々な記録や手続きの煩わしさだけが残ることになるからだ。
リンク: FDAのプレスリリース
【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】
PDUFA | |
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25/9/22 | ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療) |
25/9/28 | サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症) |
25Q4 | ベーリンガー・インゲルハイムのBI 1015550(nerandomilast、特発性肺線維症) |
25/10 | ロシュのGazyva(obinutuzumab、ループス腎炎) |
25/10 | Regeneron PharmaceuticalsのLibtayo(cemiplimab-rwlc、皮膚扁平腫瘍術後療法)) |
25/10推 | バイエルのBAY3427080(elinzanetant、血管運動神経症状) |
25/10/7 | Jazz PharmaceuticalsのZepzelca(lurbinectedin、進展期小細胞性肺癌にTecentriq併用) |
25/10/13 | Arcutis BiotherapeuticsのZoryveクリーム(アトピー性皮膚炎の適応を2-5歳に拡大) |
25/10/19 | アストラゼネカ/アムジェンのTezspire(tezepelumab-ekko、鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎を追加) |
25/10/20 | GlaukosのEpioxa(円錐角膜のUV治療補助薬) |
25/10/23 | SydnexisのRyjunea(atropine sulfate 0.1mg/mL) |
25/10/23 | GSKのBlenrep(belantamab mafodotin-blmf、多発骨髄腫) |
25/10/25 | MSDのWinrevair(sotatercept-csrk、アウトカム試験データ) |
25/11推 | JNJのTremfya(guselkumab皮下注、潰瘍性大腸炎) |
25/11推 | Fondazione TelethonのTelethon 003(etuvetidigene autotemcel、Wiskott-Aldrich症候群) |
25/11推 | ノバルティスのLOU-064(remibrutinib、慢性特発性蕁麻疹) |
25/11推 | ノボ ノルディスクの経口semaglutide(肥満症、25mg追加) |
25/11推 | ノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide、T2DのPAD治療) |
25/11推 | Biohaven PharmaceuticalのBHV-4157(troriluzole、脊髄小脳失調症) |
25/11推 | 田辺三菱製薬のND0612(levodopa、carbidopa、パーキンソン病) |
25/11推 | Regeneron PharmaceuticalsのLibtayo(cemiplimab、皮膚扁平上皮腫追加) |
25/11推 | バイエルのBAY 2927088(sevabertinib、her2変異非小細胞性肺癌) |
25/11推 | アストラゼネカのImfinzi(durvalumab、胃・胃食道接合部腫瘍における周術期療法) |
25/11/18 | Arrowhead PharmaceuticalsのARO-APOC3(plozasiran、家族性カイロミクロン血症) |
25/11/28 | ビステラ(大塚製薬子会社)のsibeprenlimab(IgA腎症) |
25/11/30 | Kura OncologyのKO-539(ziftomenib、急性骨髄性白血病) |
25/11/30 | Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症) |
25/11/30 | ジェンマブ/アッヴィのEpkinly(epcoritamab-bysp、濾胞性リンパ腫2次治療を追加) |
今週は以上です。
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