2019年12月28日

2019年12月28日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • フィブロジェン、ロキサデュスタットを米国で承認申請 
  • vernakalantは承認されず 
  • 新規向精神薬が米国で承認 
  • FDA、アラガンの経口CGRP受容体拮抗剤を承認 


【承認申請】


フィブロジェン、ロキサデュスタットを米国で承認申請
(2019年12月23日発表)

サンフランシスコの新興新薬開発会社、フィブロジェン(Nasdaq:FGEN)は、FG-4592(roxadustat、和名エベレンゾ)を慢性腎疾患の貧血治療薬として米国で承認申請した。高地のような低酸素環境で活性化され赤血球の新生やエリスロポイエチン受容体の発現を誘導するHIF(低酸素誘導因子)のスクラップに係る、HIF-PH(低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素)を阻害する経口剤。

18年に中国で、19年9月には日本でも透析期患者限定で承認された。FDAが赤血球生成刺激剤の心血管疾患毒性を警戒している関係で開発が長期化したが、主要有害心血管イベントのメタアナリシスで保存期患者約4000人における偽薬比ハザードレシオが1.08(95%上限1.24)、透析期約4000人でもエポエチン比0.96(同1.13)と、概ね良好な結果になっており、FDAのハードルをクリアしたと推測される。

HIFは70以上の遺伝子の転写因子として機能する。転写因子を誘導するPPAR作動剤は糖尿病薬として発売された後に心筋梗塞や心不全、癌など様々な稀だが深刻な副作用が表面化し、水面下では多くの開発品が副作用懸念から開発中止になった。HIF-PH阻害剤はアゴニストではないとはいえ、心血管以外のリスクもプール分析で十分に検討するべきだろう。

リンク: フィブロジェンのプレスリリース


【承認審査・委員会】


vernakalantは承認されず
(2019年12月24日発表)

Correvio Pharma(Nasdaq:CORV)はFDAにvernakalantを心房細動治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。12月10日の諮問委員会で13人の委員中11人が反対したので、予想された結果だ。洞調律奏効率は高いものの、低血圧や不整脈、洞停止といった心血管有害事象が2-3%の患者で発生し、心原性ショックによる死亡も一例あった。FDAは、リスクの小さい患者層を特定して臨床試験を行い、深刻心血管有害事象の発生率が1%を大きく下回ることを確認してから再申請するよう推奨した由。

最初の承認申請から13年経ち、欧州やカナダでは承認されたが、米国では、9年前に発生した上記の致死的有害事象を機にFDAが治験停止を命じ、未だに解除されていない。普通なら、製薬会社側が薬のせいではないこと、あるいは特定の患者層に限定すればリスクを抑制できることを確認し、治験停止の解除を求めるのが最優先だ。しかし、Corrvioは欧州での市販後医薬品安全性監視データを基に、一気に承認取得を目指した。

おそらく、懐具合が厳しいのだろう。同社は、会社や開発資産の売却など代替的経営戦略の検討を行う考えだが、買い手が現れるだろうか。

リンク: Correvio社のプレスリリース(pdf)


【承認】


新規向精神薬が米国で承認
(2019年12月23日発表)

Intra-Cellular Therapies(Nasdaq:ITCI)は、Caplyta(lumateperone)が統合失調症薬としてFDAに承認されたと発表した。20年第1四半期に発売の予定。

05年にBMSから前臨床段階で世界ライセンスを取得した、5-HT2A受容体とドパミンD2受容体の拮抗薬。第三相は一勝一敗だったが、335人を組入れた第二相が成功しているため、二本の独立した仮説検証試験で偽薬比有意な差を示すという承認のハードルはクリアしている。治療効果は4週間でPANSS総合スコア(ベースライン値は86~90程度)の改善が一本では偽薬を5ポイント強上回り、もう一本では4ポイント強上回った。

有害事象は鎮静やドライマウスなど。錐体外路症状や体重、血糖値、コレステロール影響は偽薬並み。CYP3A4の強度誘導薬や中強度阻害薬の併用は禁忌。統合失調症治療薬はアルツハイマー病患者の易刺激性の治療にオフレーベル使用されているが、FDAは死亡リスクが高まることを懸念しており、Caplytaも枠付警告が付された。

承認用量は42mg。臨床試験で用いられたトシル酸塩の60mgに相当する由。

リンク: Intra-Cellular社のプレスリリース

FDA、アラガンの経口CGRP受容体拮抗剤を承認
(2019年12月23日発表)

FDAはアラガン(NYSE:AGN)のUbrelvy(ubrogepant)を急性片頭痛治療薬として承認した。前兆(片頭痛の1/3程度で発生する)の有無は問わない。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)受容体拮抗剤で、先行品と異なる点は経口剤であることと、予防の適応はまだないこと。

臨床試験では約20%の患者が2時間以内に軽快した。偽薬群は12~14%に留まった。有害事象は悪心、疲労、ドライマウスなど。CYP3A4強度阻害薬の併用は禁忌。

15年にMSDから導入したコンパウンド。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アラガンのプレスリリース





今週は以上です。

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