【ニュース・ヘッドライン】
- バベンチオ、胃癌試験はフェール
- ポテリジオ、米国で承認申請
- オプジーボとヤーボイの併用療法をEUで腎細胞腫一次治療に承認申請
- 遺伝子一斉検査が承認
- 月一回皮注用ブプレノルフィンが承認
- レパーサのMACE抑制効果が承認
- トルツ、乾癬性関節炎も承認
- ゾーフィゴとザイティガの併用試験が早期中止に
- デング熱ワクチンは却って危険?
【新薬開発】
バベンチオ、胃癌試験はフェール
(2017年11月28日発表)
ドイツのメルクとファイザーは、Bavencio(avelumab、和名バベンチオ)の第三相末期胃癌三次治療試験がフェールしたことを明らかにした。paclitaxelなど医師が選んだ薬を投与した対照群と比べて全生存期間を有意に延長することができなかった。
胃癌の第三相試験は一次治療でFOLFOXを施行した後の維持療法試験も進行中。免疫力を強化するメカニズムなので化学療法で免疫力が低下する前の患者のほうが上手く行くかもしれない。
BavencioはPD-L1を標的とする抗体医薬だが、受容体であるPD-1を標的とするOpdivo(nivolumab)は日本中心に実施された試験が成功した。尤も、メジアン生存期間は偽薬群の4ヶ月が5ヶ月に伸びただけだった。海外の試験の結果が注目される。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認申請】
ポテリジオ、米国で承認申請
(2017年11月28日発表)
協和発酵キリンは、mogamulizumabを全身治療歴を有するCTCL(皮膚T細胞リンパ腫)の薬として米国で承認申請し受理された。優先審査指定され、来年6月4日までに結果が判明する予定。
日本で12年にCCR4陽性成人T細胞白血病用薬ポテリジオとして承認された抗CCR4ヒト化ポテリジェント抗体で、14年にはCCR4陽性CTCL/PTCL(末梢T細胞リンパ腫)に用いることも承認された。
米国の新薬承認申請は第三相実薬対照試験の結果に基づくものである由。日本でも同試験に基づき、CCR4陽性や投与回数の限定を解除すべく承認事項一部変更申請が行われた。
リンク: 協和発酵のプレスリリース(pdfファイル)
オプジーボとヤーボイの併用療法をEUで腎細胞腫一次治療に承認申請
(2017年11月28日発表)
BMSは、抗PD-1抗体のOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)と抗CTLA-4抗体のYervoy(ipilimumab、和名ヤーボイ)の併用を様々な癌に開発しているが、今回、腎細胞腫の一次治療レジメンとしてEUに承認申請し、受理された。中等度以上のリスクを持つ患者が対象。根拠となる214試験では、ORR(客観的反応率)と全生存期間が標準的治療薬であるファイザーのSutent(sunitinib)を有意に上回った。PFS(無進行生存期間)では有意差が出なかったが、ハザードレシオは0.82なので悪くはない。
この併用レジメンの難点は忍容性で、被験者の22%が有害事象により治験を離脱した。対照群は12%だった。
リンク: BMSのプレスリリース
【承認】
遺伝子一斉検査が承認
(2017年11月30日発表)
抗癌剤は遺伝子分析に基づくセグメンテーションが進み、同じ肺癌でもEGFR活性化変異型にはEGFR阻害剤、ALK融合蛋白陽性型ならALK阻害剤、BRAF活性化変異型にBRAF阻害剤と使い分けるようになった。ALKやROSの変異型のように該当確率が著しく低いものがあるので、コストや手間を考えれば、一度に全部検査できれば好都合だ。お誂え向きの検査がFDAに承認された。米国ケンブリッジのFoundation Medicine(Nasdaq:FMI)のFoundationOne CDx(F1CDx)だ。
NGS(次世代シーケンシング)技術に基づく体外診断で、324の遺伝子の変異を探索できる。薬物療法の選択に係るものでは、EGFR、ALK、BRAF、her2、KRAS、BRCA、マイクロサテライト不安定性など。個々の遺伝子変異の検査アッセイと評価を照らし合わせたところ、正診率が94.6%だった。
ラボで開発された検査なのでFDAの承認を取る必要はないが、今回はメーカーが自発的に承認申請した。ブレークスルー・デバイス指定を受けている。FDAとCMS(メディケア・メディケイド・センター)が並行して審査する制度が適用された結果、承認と共に保険適用が決まった。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Foundation Medicine社のプレスリリース
月一回皮注用ブプレノルフィンが承認
(2017年11月30日発表)
FDAは、Indivior(LSE:INDV)のSublocade(buprenorphine)をオピオイド使用障害の治療薬として承認した。皮注用デポ製剤で月一回投与で足りる。口腔粘膜吸収製剤による治療を受けている、用量が安定した患者がスイッチすることができる。
米国はオピオイドの消費が異常に多く、副作用による死者も多いため乱用や薬物依存が社会問題になっている。カウンセリングや心理社会的療法など総合的な治療の補助薬がブプレノルフィンで、オピオイド受容体をブロックしてオピオイドの効果を妨げる。静注は致死的であるため、枠付き警告とともに、REMS(リスク評価管理戦略)が導入された。
Indiviorは、Reckitt Benckiserから2014年にからスピンアウトされた、ブプレノルフィン関連製品の大手企業。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Indiviorのプレスリリース
レパーサのMACE抑制効果が承認
(2017年12月1日発表)
アムジェンは、FDAがRepatha(evolocumab、和名レパーサ)の効能としてMACE(主要有害心血管イベント)抑制を承認したと発表した。
Repathaは肝臓のLDL-C受容体の零落に係るサブチリシン/ケキシン9型に結合する抗体医薬で、LDL-C値を半減することができる。FOURIER心血管アウトカム試験では、主評価項目であるMACE(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)、不安定狭心症入院、または冠再建術のリスクが偽薬群比15%小さかった。副次的評価項目であるMACEだけの解析では20%小さかった。メジアン2.2年間の追跡でMACE発生率は試験薬群が5.9%、偽薬群は7.4%だったので、Number Needed to Treatは約67となる。
スタチンと比べても高価な薬であるため、アムジェンは米国の医療保険機関に返金保証を提案している。Repathaで治療中に心筋梗塞などを発症した場合は薬剤費を返金するというもので、英国の公的医療保険がしばしば要求するやり方と似ている。CAR-Tなど超高額な医療でも成果報酬方式が散見され、個人的には抜本的な解決にならないと思うが、注目すべき動きだ。
リンク: アムジェンのプレスリリース
トルツ、乾癬性関節炎も承認
(2017年12月1日発表)
イーライリリーは、Taltz(ixekizumab、和名トルツ)を活性期乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大をFDAが承認したと発表した。DMARDに追加、または単剤投与する。
16年に中重度乾癬治療薬として承認された抗IL-17Aヒト化抗体で、乾癬性関節炎の第三相試験二本では、ACR20奏効率が一本は58%(偽薬群は30%)、もう一本は53%(同20%)だった。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
【医薬品の安全性】
ゾーフィゴとザイティガの併用試験が盲検解除に
(2017年11月30日発表)
バイエルは、ERA223試験のデータ監視委員会が盲検を繰り上げ解除するよう勧告したことを明らかにした。この試験は、去勢抵抗性前立腺癌で無/軽症状、化学療法未経験の806人を組入れて、ジョンソンエンドジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)とステロイドを併用する標準的療法と、更にXofigo(radium-223 dichloride、和名ゾーフィゴ)も用いるレジメンのSSE-FS(無症候性筋骨格イベント生存期間)を比較した。
ところが、中間解析で三剤併用群の骨折や死亡が標準療法群より多いことが判明。今回の勧告に至った。
同じレジメンを採用した他の試験では同様な現象は見られなかった由。Xofigoは骨に分布してアルファ線を放出、周辺の癌細胞を攻撃する。化学療法不応不適の症候性去勢抵抗性前立腺癌の骨転移を治療する用途で承認されているが、骨に問題が生じていない患者には却って有害なのかもしれない。
リンク: バイエルのプレスリリース
デング熱ワクチンは却って危険?
(2017年11月29日発表)
サノフィは、デング熱ワクチンのDengvaxiaについて接種対象の選別を求めるレーベル変更を行う予定であることを発表した。デングウイルス感染歴を持つ人なら予防効果を享受できるが、未経験者が接種すると、いざ感染した時に重症になりやすいことが判明。接種前に感染歴を確認するよう努め、病気のリスクとワクチンのリスクを検討した上で、接種の是非を判断するよう推奨する。
デングは一回目の感染は軽く済むが二回目は重くなることがしばしばある模様だ。原因は明確ではない。一般的な株が4種類あるが、最初に感染した株と違う株だと体が過敏反応してしまうとか、一回目の感染でできた抗体が一定の力価範囲内だとリスクが高まるとか、言われている。感染経験のない人がDengvaxiaを接種すると一回目の感染と同じことになってしまう可能性があるようだ。
Dengvaxiaは15年12月のメキシコを皮切りに中南米やアジアなどで承認されたが、4種類の株のうち1種類にはあまり効かないことや、16年に未感染者に対するリスクを問題提起する論文がScience誌で刊行されたことなどが原因で、売上高が伸び悩んでいる。今回のレーベル変更で更に減少しそうだ。
原因不詳なので何とも言えないが、もし問題がワクチンではなくデング感染自体にあるとしたら、武田薬品が開発しているワクチンにも同様なリスクがないかどうか、十分に検討すべきだろう。
リンク: サノフィのプレスリリース
リンク: Fergusonらの論文(Science誌)
今週は以上です。
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