【ニュース・ヘッドライン】
- アミカス、トランプ旋風に乗って新薬承認申請へ
- イーライリリーもCDK4/6阻害剤を承認申請
- ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎に適応拡大申請
- ODAC、ノバルティスのCAR-Tの承認を支持
- ODAC、マイロターグの承認を支持
- JNJの乾癬治療薬が承認
- Blincyto、Ph+にも承認
【新薬開発】
アミカス、トランプ旋風に乗って新薬承認申請へ
(2017年7月11日発表)
アミカス・セラピュティクス(Nasdaq:FOLD)はAmigal(migalastat hydrochloride)をファブリー病治療薬としてFDAに承認申請すると発表した。FDAとの一連の話し合いを経て、申請することが認められた。
ファブリー病はアルファ・ガラクトシダーゼの遺伝子変異が原因でGL-3などの糖脂質が組織に蓄積、神経症状や機能障害をもたらす。Amigalはファーマスーティカル・シャペロンと呼ばれる新しい機能を持つ薬で、アルファ・ガラクトシダーゼをライソゾームに誘導し本来の役割を果たせるようにする。ジェンザイムのFabrazyme(agalsidase beta)のような酵素補充療法とは異なり、患者の35~50%程度にしか有効ではないが、経口投与できる長所がある。
第三相試験はフェールしたが、反応者を組入れて継続投与群と偽薬スイッチ群を比較した離脱試験などでGL-3を有意に減らし、16年に欧州でGalafold名で承認された。一方、FDAはサロゲート・マーカーに基づく薬効評価を認めず、新たに胃腸症状改善作用を検討するクロスオーバー試験を行うよう求めた。
風向きが変わったのが、まず、Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)が昨年、デュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として米国で承認されたこと。適切な治療法が限られる希少疾患では、臨床的効用とリンクすることが検証されていないサロゲート・マーカーに基づいて新薬を評価することが必ずしも不適切ではないことを示した。鶴の一声を発したのは小分子薬などの審査を担当するCDER部門のヘッドで、反対した担当部署のヘッドはFDAを去った。
大きな追い風と推測されるのが、今年2月にトランプ大統領が連邦議会で行った施政方針演説だ。アミカスのCEOで映画『小さな命が呼ぶとき』のモデルとなったジョン・クラウリーとポンペ病の娘と会談したこと、難病の治療薬の開発にあたってはFDAの承認審査のスピードアップが重要であることを語った。ネットで公開された演説原稿を読んだ時、Amigalが承認されるかも、と思ったものだ。但し、申請が認められたとしても承認されるとは限らない。他社の例では、後になって、申請するのは申請者の権利であることを認めただけだったこともあった。
Amigalは日本でも今年6月に承認申請された。
リンク: アミカスのプレスリリース
【承認申請】
イーライリリーもCDK4/6阻害剤を承認申請
(2017年7月10日発表)
イーライリリーはLY2835219(abemaciclib)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査指定されたので、来年第1四半期中に結果が出ることになる。乳癌の経口剤で、適応・用法は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の転移性乳癌のうち、ホルモン療法と化学療法を既に受けた患者(モノセラピー)と、ホルモン薬による一次治療歴を持つ患者(fulvestrant併用)。一次治療アロマターゼ阻害剤併用試験も成功しているので、早晩、承認申請されるだろう。
abemaciclibは細胞周期進行に関わるCDK4/6を阻害する小分子薬。モノセラピーの第二相試験ではORR(客観的奏効率)19.7%、メジアン反応持続期間は8.6ヶ月だった。二次治療fulvestrant併用試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン16.3ヶ月とfulvestrantと偽薬を投与した群の9.3ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.55だった。
欧州でも第3四半期に承認申請する予定。日本も年内申請予定。
CDK4/6阻害剤はファイザーやノバルティスが既に発売しており、今後は差別化が課題になる。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
ゼルヤンツ、潰瘍性大腸炎に適応拡大申請
(2017年7月13日発表)
ファイザーはXeljanz(tofacitinib citrate)を潰瘍性大腸炎の治療に用いる適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。審査期限は来年3月。インターロイキン受容体の細胞内シグナル伝達に係るJanus Kinase(JAK)を阻害する経口剤で、抗リウマチ薬として日米欧などで承認されている。導入療法試験では8週間の治療後の寛解率が一本は18.5%(偽薬群は8.2%)、もう一本は16.6%(3.6%)だった。
JAK阻害剤は免疫抑制作用が強く、自己免疫性疾患に有効な一方で、感染症や癌のリスクに気を付ける必要がある。承認されるかどうか、承認後に普及するかどうかは、このリスクを受け入れざるを得ないほど深刻な病気であるかどうかに依存するだろう。
リンク: ファイザーのプレスリリース
【承認審査・委員会】
ODAC、ノバルティスのCAR-Tの承認を支持
(2017年7月13日発表)
FDAは腫瘍学薬諮問委員会(ODAC)を招集し、ノバルティスが再発性難治性B細胞性急性リンパ性白血病用薬として承認申請したCTL019(tisagenlecleucel)の主として安全性について意見を聞いたところ、諮問委員の全員が便益がリスクを上回る(承認に値する)と判定した。審査期限は10月。臨床データは問題ないようなので承認されないリスクがあるとしたら生産方法だろう(夫々の患者の免疫細胞を加工する)。承認されれば、CAR(キメラ抗原受容体)-Tと呼ばれる新しい治療法の第一号になる。
CTL019は、B細胞特異的に発現するCD19を標的とする抗体の単鎖可変領域を、TCRの共刺激伝達分子である4-1BB及びCD3ゼータとスペーサーで繋げたものを、患者から採取したT細胞にレンチウイルスを使って導入し、培養活性化したもの。患者に戻すと抗原提示なしでB細胞を攻撃する。臨床試験ではORR(完全寛解率)が82.5%だった。
CAR-Tは免疫力を強化するためサイトカイン放出症候群が発生しやすい。CTL019の場合、グレード3、4のサイトカイン放出症候群が47%の患者で発生した。
諮問委員会ではレンチウイルスが活性化するリスクや遺伝子導入が引き金で将来、癌化するリスクが討議されたが、具体的な懸念材料はなさそうだ。
リンク: ノバルティスのプレスリリース
ODAC、マイロターグの承認を支持
(2017年7月11日発表)
FDAは腫瘍学薬諮問委員会(ODAC)を招集し、ファイザーが急性骨髄性白血病用薬として承認申請したMylotarg(gemtuzumab ozogamicin、和名マイロターグ)について意見を聞いたことろ、7人の諮問委員のうち6人が支持した。審査期限は9月。2000年にサロゲート・マーカー評価に基づき加速承認、しかし市販後薬効確認試験がフェールし致死的な毒性も見られたため2010年に販売中止(日本などは除く)、と大きな波乱があったが、再登板できそうだ。
MylotargはCD33を標的とする抗体をカリケアマイシンとリンカーで繋げた抗体薬物複合体。抗体技術を持つセルテック(後にUCBが子会社化)とワイス(後にファイザーが買収)が共同開発した。今回の適応は、CD33陽性急性骨髄性白血病のうち、化学療法不適な再発患者のモノセラピーと、新患に化学療法併用。後者は上記の市販後薬効確認試験よりも用量を減らして、投与回数を増やすことにより一回の投与量を更に減らす工夫を行ったところ、忍容性が改善、併用しなかった群と比べて死亡者が増加しなかった。
リンク: ファイザーのプレスリリース
【承認】
JNJの乾癬治療薬が承認
(2017年7月13日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンは、FDAがTremfya(guselkumab)を中重度乾癬の治療薬として承認したと発表した。IL-23のp19サブユニットを標的とする抗体医薬で、同社のStelara(ustekinumab)と違うサブユニットに結合するためIL-12には影響しない。臨床試験では、奏効率がTNF阻害剤のHumira(adalimumab)を上回った。乾癬はIL-17や受容体を標的とする抗体医薬が続々と承認されており、競争は激しそうだ。
リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)
Blincyto、Ph+にも承認
(2017年7月11日発表)
アムジェンは、FDAがBlincyto(blinatumomab)の適応拡大と本承認切替を承認したと発表した。再発性前駆B急性リンパ芽球性白血病用薬として14年に米国で承認された段階ではフィラデルフィア染色体陰性(Ph-、全体の3/4を占める)に限定されていたが、今回、陽性患者に用いることも可能になった。また、Ph-に対する第三相試験で全生存期間が化学療法比で有意に長かったこともレーベル収載されることになった(メジアン7.7ヶ月対4.0ヶ月)。
リンク: アムジェンのプレスリリース
今週は以上です。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。