2023年12月30日

第1135回

【ニュース・ヘッドライン】

  • Cytokineticsも心ミオシン阻害剤のoHCM試験が成功 
  • 長期作用性GLP-2作用剤を承認申請 
  • 抗her3ADCを承認申請 
  • 先天性高インスリン血症用薬の承認はお預け 
  • ルマケラス、市販後コミットメント達成とは認められず 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


Cytokineticsも心ミオシン阻害剤のoHCM試験が成功
(2023年12月27日発表)

Cytokinetics(Nasdaq:CYTK)はCK-3773274(aficamten)の第3相SEQUOIA-HCM試験がポジティブな結果になったと発表した。成人の左心室流出閉塞を伴う症候性肥大性心筋症(HCM)患者270人を組入れて、一日一回、経口投与し、第24週にCPET(心肺運動負荷試験)を行ってpVO2(最高酸素摂取量)をベースラインと比較したところ、偽薬群を1.74mL/kg/分、上回った。事前に設定されたサブグループ分析も、副次的評価項目も、良好な結果になった。治療時発現深刻有害事象の発生率は5.6%(偽薬群は9.3%)。LVEF(左室駆出率)が50%を下回った症例は5人(3.5%)で偽薬群の1人(0.7%)を上回った。

心ミオシン阻害剤はブリストル マイヤーズ スクイブのCamzyos(mavacamten)が22~23年に米欧で承認されている。臨床試験でLVEF低下リスクが顕在化し、55%以上の患者だけに用いることや、治療中に50%を下回ったり心不全症状が出たら投与を中断するプロトコルが導入された。心不全治療薬の副作用が心不全というのでは釈然とせず、もしaficamtenのリスクが小さいなら注目できるが、今回の試験だけでは何とも言えないだろう。一次治療単剤投与metoprolol対照MAPLE-HCM試験や非閉塞性HCMを組み入れるACACIA-HCM試験のデータが25~26年にまとまれば明確になるのではないか。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


長期作用性GLP-2作用剤を承認申請
(2023年12月23日発表)

デンマークのZealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)は米国でZP 1848(glepaglutide)を承認申請した。GLP-2のアミノ酸の一部を改変し作用を長期化したもので、成人の非経口栄養サポート下の短腸症候群に用いる。武田薬品のGattex(レベスティブ、teduglutide)が米国では11年前に承認されているが、毎日皮下注ではなく週二回で足りる。第3相EASE 1試験では10mg週二回投与群の週間非経口栄養量がベースライン比5.1L減少し、偽薬群の2.8L減少を有意に上回った。週一回投与群も3.1L減少したが有意水準には届かなかった。

リンク: 同社のプレスリリース(GlobeNewswire)


抗her3ADCを承認申請
(2023年12月25日発表)

第一三共と開発販売パートナーのMSDは、米国でpatritumab deruxtecanをher2変異のある局所進行/転移非小細胞性肺癌の3次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は24年6月26日。

第一三共が08年に買収したU3 PharmaがアムジェンのXenomouse技術を用いて創製した、her3を標的とする抗体薬物複合体。9月のWCLC(世界肺癌会議)発表によると、EGFR阻害剤と白金ベース化学療法歴を持つEGFR変異陽性非小細胞性肺癌225人を組入れた第2相HERTHENA-Lung01試験で、5.6mg/kg群のORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)が29.8%、メジアン反応持続期間は6.4ヶ月だった。G3以上の治療時発現有害事象発生率は65%、間質性肺疾患の発生数はG3が3人、G5が1人だった。用量制限的毒性は血小板減少症、アミノトランスフェラーゼ上昇など。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


先天性高インスリン血症用薬の承認はお預け
(2023年12月23日発表)

デンマークのZealand Pharma(Nasdaq:ZEAL)は米国でZegalogue(dasiglucagon)を乳幼児の先天性高インスリン血症の治療薬として適応拡大申請していたが、審査完了通知を受領した。FDAが生産委託先の査察時に改善すべき点を指摘したため。効果や安全性に関する指摘はなかった由。委託先が指摘事項に対処した上で24年上期に回答する考え。

持続皮下注用グルカゴン・アナログで6歳以上の糖尿病患者の重度低血糖症治療薬として米国で21年に承認された。ペン型なので素早く使える。昨年6月に適応拡大申請され、生後7日以降の小児に最大3週間連続投与する用法用途だけ優先審査指定されたが、迅速承認とはならなかった。ウェラブル・ポンプによる3週間以上の連続投与はFDAがデータの追加分析を求めたため、24年上期に提出する考え。

リンク: 同社のプレスリリース(GlobeNewswire)


ルマケラス、市販後コミットメント達成とは認められず
(2023年12月26日発表)

アムジェンのKRAS-G12C阻害剤Lumakras(sotorasib)は21年に米国でKRAS-G12C変異を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌の二次治療薬として加速承認された。翌年、市販後コミットメントである第3相CodeBreaK 200試験が成功、アムジェンは本承認切替などを申請していたが審査完了通知を受領した。10月の諮問委員会でも12人中10人が承認に反対したので驚きではない。FDAは新たな市販後コミットメント試験を28年2月までに完了するよう求めた。

上記第3相は加速承認と同じ適応のdocetaxel対照試験。メジアンPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が5.6ヶ月と対照群の4.5ヶ月を上回りハザードレシオは0.66だった。メジアン値の差は5週程度だが、プロトコルにおける定期検査頻度は6週毎だったので、医師が前倒しで造影検査を行うかどうかで変わってしまう程度の差と言えないこともない。主観の入る余地が小さいメジアン生存期間は10.6ヶ月と11.3ヶ月で3週ほど見劣りし、ハザードレシオは1.01だった。クロスオーバーの影響や検出力の問題も影を落としている模様なので、はっきりしたことは分からない。FDAは無作為化割付の有効性やドロップアウトに関する群間の偏りなど実行面での問題点も指摘した、

もう一つの宿題であった至適用量の再検討に関しては、従来通り960mg一日一回で決着した模様だ。CodeBreak 300試験でPFS(同上)が240mg群はメジアン3.9ヶ月、960mg群は5.6ヶ月だった。Lonsurf(trifluridine、tipiracil)またはStivarga(regorafenib)を投与した標準療法群は2.2ヶ月で、ハザードレシオは各0.58と0.49だった。

リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)
24/1/5Novan(Ligand Pharmaceuticals)のberdazimer(伝染性軟属腫)
24/1/12 アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)
24/1/17 MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)
24/1/20 MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)
24/1/31 Vylumaのatropine点眼(小児近視)
24/2/13 イプセンのOnivyde(irinotecan liposome、転移膵管腺腫1L)
24/2/22 Venatorx Pharmaceuticalsのcefepime・taniborbactam併用(複雑尿路感染症)
24/2/24 Iovance Biotherapeuticsのlifileucel(悪性黒色腫)
24/2/26 Minerva NeurosciencesのMIN-101(roluperidone、統合失調症の陰性症状)


今週は以上です。

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