2023年12月16日

第1133回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ASH:ダラキューロのMMフロントライン試験が成功 
  • ノバルティス、B因子阻害剤はC3糸球体症の第3相も成功 
  • ASH:ブレヤンジが濾胞性リンパ腫二次治療でも良績 
  • ASH:アベクマ、早期段階試験で延命効果は確認できず 
  • LSD類薬が全般不安症の第3相へ 
  • Opdualagの大腸癌試験が無益中止に 
  • CSL、抗XIIa抗体をHAEに承認申請 
  • アムジェン、小細胞肺癌用二重特異性抗体を承認申請 
  • MDMAをPTSDに承認申請 
  • ファイザーも抗TFPI抗体を血友病に承認申請 
  • EUもCRISPR-Cas9テクノロジー薬に肯定的意見 
  • PDE4阻害剤が脂漏性皮膚炎に承認 
  • 尿路上皮腫にパドセブ・キイトルーダ併用が瞬速承認 
  • MSDのHIF-2アルファ阻害剤に新適応 
  • エフロルニチンが高リスク神経芽細胞腫用薬として復活 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


ASH:ダラキューロのMMフロントライン試験が成功
(2023年12月12日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはASH(米国血液学会)でDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)の第3相PERSEUS試験の結果を発表した。新患多発骨髄腫の標準療法の一つであるVRd(Velcade、Revlimid、dexamethasoneによるインダクション及びRevlimidによるメンテナンス)に皮下注用Darzalexによるインダクションとメンテナンスを追加する便益を検討したオープン・レーベル試験で、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.42、統計的に有意だった。メジアン値は未達、48ヶ月PFS率は84.3%対67.7%だった。G3/4有害事象は好中球減少症などの骨髄抑制と肺臓炎、下痢などが増加した。

多発骨髄腫は治療の選択肢が増加してVelcadeやRevlimidのような主力薬を一次治療で併用するような豪華なレジメンが可能になった。今回、更に豪華なレジメンを採用することでPFSをさらに改善できることが明らかになった。先に使ってしまうと再発時の治療オプションが限られてしまうが、8割以上の患者が4年以上進行しないなら、大きな問題にはならないかもしれない。

リンク: JNJのプレスリリース
リンク: Sonneveldらの治験論文抄録(New England Journal of Medicine)


ノバルティス、B因子阻害剤はC3糸球体症の第3相も成功
(2023年12月11日発表)

ノバルティスは可逆的B因子阻害剤Fabhalta(iptacopan)が発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)における初の経口剤として米国で承認されたばかりだが、第3の希少疾患試験が成功した。補体系が調停する超希少腎疾患であるC3糸球体症(C3G)を組入れて6ヶ月後の尿蛋白クレアチニン比(UPCR)の改善を偽薬と比較した、APPEAR-C3G試験で主目的を達成した。適応拡大に向けて承認審査機関と相談する考え。

Fabhaltaは10月に原発性IgA腎症のAPPLAUSE-IgAN試験が中間解析でUPCRの有意な改善を達成したことが発表された。eGFR(推算糸球体濾過量)の解析は未だ行われていないので加速承認を申請できるか不透明であり、もしかしたらC3Gのほうが先になるかもしれない。非典型溶血性尿毒症症候群でも第3相試験中。アストラゼネカのC5因子阻害剤Soliris(eculizumab)やUltomiris(ravulizumab-cwvz)とバッティングする疾患で急速に存在感を高めている。

リンク: 同社のプレスリリース


ASH:ブレヤンジが濾胞性リンパ腫二次治療でも良績
(2023年12月10日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブはCD19を標的とするキメラ抗原受容体T細胞療法、Breyanzi(lisocabtagene maraleucel)の第2相TRANSCEND FL試験における二次治療コフォートの成績をASH(米国血液学会)で発表した。23人中22人がORR(客観的反応率)を達成、その全員がCR(完全反応)だった。メジアン16ヶ月追跡で反応持続期間は未だメジアン値に達していない。CAR-Tに付き物のサイトカイン放出症候群はG3の発生率が1%、G4、G5はなかった。G3神経学的イベントの発生率も2%と低く、G4、G5はゼロ。

同社は6月に本試験の三次治療コフォートの成績も発表している。101人中ORRが97%、CRは94%、メジアン16ヶ月追跡で反応持続期間のメジアン値は未達と、似たような結果になっている。当局と適応拡大申請に向けて相談する考え。

Breyanjiは難治びまん性巨細胞型B細胞リンパ腫などの治療薬として米欧日などで承認されている。FDAはCAR-Tの二次性腫瘍リスクについて再検討を開始しており、適応拡大審査における攪乱要因になるかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース


ASH:アベクマ、早期段階試験で延命効果は確認できず
(2023年12月11日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブはASH(米国血液学会)でBCMAを標的とするCAR-T療法Abecma(idecabtagene vicleucel)のKarMM-3試験のアップデート・データも発表した。3種類の代表的な抗癌剤を既に経験し最終治療に応答しなかった難治再発多発骨髄腫の薬として米欧日で承認されているが、本試験は3代表薬を含む2~4次治療歴を持ち最終治療抵抗性の難治かつ再発多発骨髄腫における便益を標準療法群と比較した。主評価項目のPFS(無進行生存期間)は22年の中間解析で成功、ハザードレシオ0.49、13.8ヶ月対4.4ヶ月と良好な成果を上げた。しかし、今回、副次的評価項目の全生存期間がハザードレシオ1.01、41.4ヶ月対37.9ヶ月と、差が小さく有意でなかったことが明らかになった。クロスオーバー可であったため標準療法群の56%が進行後にAbecmaによる治療を受けており、その影響を除外した感受性分析ではハザードレシオが0.69と上向いたとのことだが、有意水準には達していない模様であり、そもそも先行解析がフェールしているため説得力は万全ではない。

日本ではこの試験をエビデンスに2次以上の治療歴を持つ患者に用いることが今月、承認されたが、米国ではFDAが全生存期間のデータに懸念を持ち最近になって諮問会議上程を決定、12月16日の審査期限までに承認されないことがほぼ確定した。FDAがどのデータを気にしているのかは明らかではなく、また、全生存期間が標準療法と同程度でもPFSが伸びればそれなりに意義があるようにも思われるので、今回のデータがポジティブ/ネガティブのどちらに作用するかは明確ではない。

リンク: 同社のプレスリリース


LSD類薬が全般不安症の第3相へ
(2023年12月14日発表)

Mind Medicine(Nasdaq:MNMD)はMM-120(lysergide d-tartrate)が後期第2相全般不安症試験で良好な結果を出したと発表した。FDAと相談した上で24年下期に第3相へ進める考え。後述のMDMAといい、幻覚剤の医療使用が前進してきた。

MM-120はトリプタミン系のサイケデリックでセロトニン2A受容体を部分作動する。今回の試験では重度全般不安症患者198人を組入れて25mcg、50mcg、100mcg、200mcgまたは偽薬を一回投与し、4週後に効果を評価した。主評価項目のHAM-A(ベースライン値は30点前後)が偽薬群は13.7点、100mcgは21.3点、200mcgは19.3点、夫々低下した。25mcgの効果は小さく、50mcgの数値は公表されていないがグラフを見ると100mcgほど低下していない。100mcg群は偽薬群との差のp<0.0004と高度に有意で、Cohenのイフェクト・サイズは0.88と標準療法薬の過去データの倍と大きく、他の評価項目でも他の用量を凌いだことから、至適用量と見なされた。

投与日に発生した有害事象は幻覚剤らしくイリュージョン(100mcgの発生率57%)、悪心(同40%、多汗症(同22%)、瞳孔散大(同20%)が多く、幻覚や陶酔感、不安なども発生した。尚、投与後は薬力学的症状が回復するまで最大12時間、留めて観察した。また、相互作用の懸念から本試験では心理療法などは併用されていない。

リンク: 同社のプレスリリース


Opdualagの大腸癌試験が無益中止に
(2023年12月15日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは22年に欧米で切除不能/転移黒色腫用薬として承認されたOpdivo(nivolumab)と抗LAG-3抗relatlimabの合剤、Opdualagで様々な第3相試験を実施しているが、RELATIVITY-123試験は中止すると発表した。マイクロサテライト安定性のある転移結腸直腸癌の2~4次治療薬としての便益をStivarga(regorafenib)またはLonsurf(trifluridine、tipiracil)を投与する群と比較していたが、独立データ監視委員会が中間解析結果を踏まえて続行しても目的達成の可能性は極めて低いと無益認定したため。免疫チェックポイント阻害剤の併用は当初期待されたほどの成果を挙げていない。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


CSL、抗XIIa抗体をHAEに承認申請
(2023年12月14日発表)

CSL(ASX:CSL)はCSL312(garadacimab)を欧米でHAE(遺伝性血管浮腫)の発作抑制薬として承認申請し受理されたと発表した。kallikrein-kininカスケードをトリガーする活性化XII因子をブロックする抗体医薬で、12歳以上のC1エステラーゼ・インヒビターが不足するHAE患者63人を組み入れた第3相VANGUARD試験で、月一回皮下注して6ヶ月間の発作頻度を観察したところ、月平均0.27回と偽薬群の2.01回より8割以上少なかった。

リンク: 同社のプレスリリース


アムジェン、小細胞肺癌用二重特異性抗体を承認申請
(2023年12月13日発表)

アムジェンはAMG 757(tarlatamab)を小細胞性肺癌の3次治療薬として米国で承認申請し受理された。優先審査を受け、審査期限は24年6月12日。 小細胞性肺癌の8割で発現し健常細胞にはないデルタ様リガンド3(DLL3)とT細胞のCD3を架橋する二重特異性抗体で、半減期延長装飾を行い二週毎投与を可能にした。エビデンスとなる第2相DeLLphi-301試験で220人の患者を10mg群と100mg群に割付けてORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)を調べたところ、夫々40%と32%だった。有害事象はクラス・イフェクトであるサイトカイン放出症候群が各51%と61%で発生したがG3は1%と6%だけ、G3のICANS(免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群)はなかった。

100mg群のORRが見劣りするのは忍容性の問題なのだろう。ESMO(欧州臨床腫瘍学会)やNew England Journal of Medicineで結果発表した時の会社側プレスリリースには10mgのデータしか記されていなかったので、この用量だけ申請したのではないか。

リンク: 同社のプレスリリース


MDMAをPTSDに承認申請
(2023年12月12日発表)

MAPS PBCはMDMA(midomafetamine)をPTSD(トラウマ後ストレス障害)用薬としてFDAに承認申請した。ブレークスルー・セラピー指定を受けており、会社側は優先審査を求めている。

精神療法のセッションを行う時に1.5~2時間おいて2回、経口投与する。第3相試験二本では第18週のCAPS-5(Clinician-Administered PTSD Scale for DSM-5)が偽薬比有意に改善した。二本目の試験の探索的解析では71%の患者がDSM-5における診断基準に該当しなくなった(偽薬群は47%)。深刻な有害事象は発生しなかった。但し、MDMAは心室期外収縮のリスクが指摘されている。

サイケデリック(幻覚剤)の承認申請は初めて。現在はDEA(麻薬取締局)が依存リスクが高く医療に使われない物質として最も厳しい規制が課されるスケジュールIに指定されているが、承認されたら緩和され、その後、州毎の規制も緩和が見込まれる。

同社は1986年設立の非営利研究・教育組織、Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(略称MAPS)が、サイケデリックやマリファナなどの合法的な販売を目標に、設立した。PBC(Public Benefit Corporation)は州法における法人形態の一つで、営利法人だが株主と同等またはそれ以上に公益も重視することを定款で定めている。税制上のインセンティブなどは無い模様であり、人間としての誇りの表明だ。

リンク: 同社のプレスリリース


ファイザーも抗TFPI抗体を血友病に承認申請
(2023年12月11日発表)

ファイザーは、PF-06741086(marstacimab)をインヒビターを持たないA型とB型の血友病治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年第4四半期とのこと。EUでも承認審査が始まっており、25年第1四半期にも結論が出る見込み。

TFPI(組織因子パスウェイ・インヒビター)のKunitz2ドメインに結合する抗体医薬。12歳以上の重症A型血友病と中程度重症又は重症のB型血友病患者145人を組入れた第3相BASIS試験のインヒビターを持たない116人のコフォートで、リードイン期の治療方針が出血したら治療だった患者は出血頻度が92%低下、血液凝固因子の予防的投与だった患者でも35%低下した。インヒビターを持つ患者のデータは来年遅くに判明する見込み。

類薬であるノボ ノルディスクのアレモ(concizumab)は今年、カナダと日本で承認されたが、米国は審査完了通知を受領し、EUは申請が遅かったため未だ審査中と、開発状況が地域により区々。臨床試験で非致死的な血栓性有害事象が発生し治験を一時中断したことや、TFPIは検査方法が普及しておらず薬の効き具合を確認できないことなども影響したのかもしれない。marstacimabも他山の石ではないかもしれない。

リンク: ファイザーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


EUもCRISPR-Cas9テクノロジー薬に肯定的意見
(2023年12月15日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

Vertex Pharmceuticals(Nasdaq:VRTX)がCRISPR Therapeutics(Nasdaq:CRSP)から共同開発販売権を取得して承認申請したCasgevy(exagamglogene autotemcel)はベータサラセミアや鎌状赤血球病のex vivo遺伝子療法。正常な赤血球を生成できない患者に、患者から採取した造血幹細胞を、本来は胎児期などにしか発現しない胎生ヘモグロビンを産生できるように遺伝子編集して培養し、患者に戻す。CRISPR-Cas9技術を用いた製品の第一号で米国でも今月、鎌状赤血球病に承認され、来年3月にはベータサラセミアでも承認される見込み。どちらも12歳以上で造血幹細胞移植が適応になるがHLA適合ドナーが見つからない患者が対象で、鎌状赤血球病における便益は血管閉塞性クリーゼの抑制、ベータサラセミアでは赤血球輸血の抑制。条件付き承認なので26年8月までに臨床試験の最終解析結果や長期追跡データを提出するなどして本承認を取得しなければならない。

リンク: EMAのプレスリリース

Reata Pharmaceuticals(Nasdaq:RETA)のSkyclarys(omaveloxolone)は16歳以上のフリードライヒ運動失調症に用いる。臨床試験ではmFARS症状評価スコアが偽薬比有意に改善した。この常染色体劣性遺伝性疾患では、細胞が酸化ストレスに対抗する上で必要なパスウェイを活性化するNrf2が少ないことが指摘されている。SkyclarysはNrf2のアクティベイター。米国では2月に承認されている。

ファイザーのVelsipity(etrasimod)はS1P受容体調節剤。16歳以上の中重度活性期潰瘍性大腸炎で従来療法又はバイオ薬に不十分応答/不耐な患者に用いる。米国では10月に承認。

一方、GSKの抗BCMA抗体薬物複合体、Blenrep(belantamab mafodotin)の条件付き承認を更新しないよう推奨した。多発骨髄腫のサルベージ用薬として20年8月にEUでは条件付き承認、米国では加速承認されたが、薬効確認試験に位置付けられた3次治療3剤併用試験がフェールしたため。CHMPは9月に非更新を推奨したがGSKの請求により再審査し、評価を再確認したもの。米国も承認取消の手続きが進行している。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大に関する肯定的意見を得たのは、まず、武田薬品グループのバクスアルタのHyQvia。免疫グロブリンとヒト・ヒアルロニダーゼの皮下注用配合剤で、免疫グロブリン静注による治療を受けたCIDP(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)患者の維持療法に用いる。臨床試験で神経筋障害や機能障害の再発を偽薬比7割抑制した。米国でも審査中。

ベーリンガー・インゲルハイムのMetalyse(tenecteplase)は急性虚血性脳卒中の治療に用いることが支持された。状態が良好だった時から4.5時間以内で頭蓋内出血のない成人患者が適応になる。心筋梗塞後の血栓溶解剤としてEUで承認されたのは21年前なので、そういえばこちらは脳梗塞未承認だったっけ、という印象。

医薬品の承認審査機能を持たない国は、日米欧などで承認されている薬は原則的に承認します、というスタンスを取ることが多い。EUは、一歩進んで、EU域外で治療に用いられることを前提に承認審査するEU-M4allという制度を設けている。今回、肯定的意見を得たのが住血吸虫症治療薬arpraziquantelだ。代表的な治療薬であるメルクのpraziquantelは適応が6歳以上で、剤形が大きく苦い短所がある。そこで、光学異性体を用いて、水に分散して飲め、未就学児の味覚に合い、熱帯気候にも耐えうる製剤を開発した。生後3ヶ月から6歳、且つ体重5kg以上の幼小児が適応になる。メルクが様々な製薬会社とコンソーシアムを組んで開発、臨床試験では治癒率が90%超だった。

リンク: EMAのプレスリリース

EMAからの発表ではないが、Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)は、加齢性黄斑変性による地図状萎縮の治療薬として承認申請しているSyfovre(pegcetacoplan)に関して、1月の会合でCHMPが否定的意見を出す見込みであることを公表した。12月の会合で非公式なトレンド投票を行ったところ、否定的な委員が多かったため。正式決定後に再審請求などの手続きを取る考え。

米国で21年に承認されたが市販後に網膜血管炎などが報告され視力喪失に至った患者もいたため、学会が注意を呼び掛けた。

リンク: 同社のプレスリリース(12/14付)

【承認】


PDE4阻害剤が脂漏性皮膚炎に承認
(2023年12月15日発表)

Arcutis Biotherapeutics(Nasdaq:ARQT)はFDAがZoryve(roflumilast)のフォーム製剤を9歳以上の中重度脂漏性皮膚炎の治療薬として承認したと発表した。22年に乾癬治療薬として承認されたクリーム製剤と異なり、毛髪の生えている部位にも塗布しやすい。第3相試験では第8週のIGA奏効率が80%と偽薬群の59%を有意に上回った。疼痛などの症状も緩和した。有害事象発生率は低い。中重度肝障害は禁忌。

roflumilastは経口剤がCOPD治療薬として10年以上前に欧米で承認された。同社はアストラゼネカから開発権を取得、クリーム製剤はアトピー性皮膚炎に適応拡大申請中、フォーム製剤は頭部などの乾癬治療にも承認申請する計画。

リンク: 同社のプレスリリース


尿路上皮腫にパドセブ・キイトルーダ併用が瞬速承認
(2023年12月15日発表)

FDAはアステラス製薬のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv)をMSDのKeytruda(pembrolizumab)と併用で局所進行/転移尿路上皮癌の1次治療に用いることを承認した。審査期限は来年5月9日だったので5ヶ月前倒し、申請受理から1ヶ月余の瞬速承認だ。第3相試験では白金薬とgemcitabineを併用した群と比べて全生存期間のハザードレシオが0.47、メジアン生存期間は31.5ヶ月対16.1ヶ月と良好な成績を上げた。

Padcevはネクチン-4を標的とする抗体薬物複合体。今年4月にcisplatin不適患者限定でKeytruda併用一次治療が加速承認されたばかり。Agensysが11年にSeattle Genetics(現Seagen)に共同開発・商業化権を供与した後、前者はアステラスに買収され、後者は先般、ファイザーに買収された。

リンク: FDAのプレスリリース


MSDのHIF-2アルファ阻害剤に新適応
(2023年12月14日発表)

FDAはMSDのWelireg(belzutifa)の適応追加を承認したと発表した。HIF-2アルファを阻害する経口剤で、21年にVHL病関連腎細胞腫などに用いることが承認された。新用途は、進行腎細胞腫でPD-1/L1阻害剤とVEGFRチロシン・キナーゼ阻害剤を既に使用した患者に120mgを一日一回、経口投与する。第3相でeverolimus対照群と比べてPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが0.75、片側p=0.0008だった。尚、メジアン値は両群とも5.6ヶ月だった。

MSDが19年にPeloton Therapeuticsを買収して入手したコンパウンド。

リンク: FDAのプレスリリース


エフロルニチンが高リスク神経芽細胞腫用薬として復活
(2023年12月14日発表)

US WorldMeds社はFDAがIwilfin(eflornithine)を神経芽細胞腫の維持療法薬として承認したと発表した。抗GD2免疫療法を含む多剤併用療法に部分反応以上だったが再発リスクが高いと推測される成人小児の患者に、一日二回、2年間にわたり経口投与する。第2相単群試験で4年EFS(無イベント生存期間)率が84%だった。別の臨床試験のデータをプロペンシティ・マッチングにより外挿した外部対照群では73%だった。全生存率も96%対84%で上回った。有害事象は難聴、中耳炎、発熱、肺炎、下痢など。

神経芽細胞腫の米国における年間診断数は700~800人で、その5割が高リスクと判定され5年生存率は5割程度とされる。eflornithineは米国で1990年にアフリカトリパノソーマ症(睡眠症)用薬Ornidylとして承認されたが商業上の理由で発売されなかった模様だ。クリーム製剤が脱毛用薬として承認されたが現在は販売されていない模様。全く異なる用途で復活することになるが、神経芽細胞腫で多く発現するオルニチン脱炭酸酵素を阻害する作用が寄与しているようだ。開発は順調ではなく様々な会社が関わった後、今年7月にUS WorldMedsがCancer Prevention社からライセンスした。

10月の腫瘍学薬諮問委員会では一部の委員が対照試験が実施されていないことを批判したが、FDAは、深刻な希少疾患で、自然歴が確立しており、治療効果が大きい場合は容認できると述べた。

リンク: 同社のプレスリリース(BusinessWire)

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
23/12/16BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)←AC上程で遅延へ
23/12/19IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期か
23/12/20Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)
23/12/22Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)
23/12/24アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)
23/12/27MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)
23/12/30Zealand PharmaのZegalogue(dasiglucagon、先天性高インスリン血症に適応追加)
24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)→23Q4から遅延
24/1/3Checkpoint TherapeuticsのCK-301(cosibelimab、皮膚扁平上皮癌)
24/1/5Novan(Ligand Pharmaceuticals)のberdazimer(伝染性軟属腫)
24/1/12 アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)
24/1/20 MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)
24/1/31 Vylumaのatropine点眼(小児近視)

注:ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)は審査期限が12月21日から24年3月21日に延期された

今週は以上です。

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