2023年12月2日

第1131回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • アストラゼネカ、高カリウム血症用薬のアウトカム試験を中止 
  • 中国製プラスチック・シリンジは要注意 
  • アッヴィ、c-Met ADCが第2相で良績 
  • 広カバレッジ肺炎球菌ワクチンの第3相成績 
  • Blenrep shall return 
  • BioVieのアルツハイマー試験で波乱 
  • ウィフガートの皮下注用はpITP試験がフェール 
  • ファイザーの経口GLP-1作用剤、服用中止が多く第3相入りが不透明に 
  • パドセブの4剤併用法を申請 
  • CAR-TをALLに承認申請 
  • EUでデュピクセントをCOPDに効能追加申請 
  • エプキンリをEUで適応拡大申請 
  • Aldeyraのドライアイ治療薬はやっぱり承認されず 
  • 初のデスモイド腫瘍治療薬が承認 
  • PRAC、プソイドエフェドリンやGLP-1作用剤に関してアップデート 
  • FDA、CAR-T療法後の二次性腫瘍の精査を開始 
  • FDA、一部の抗癲癇薬のDRESSリスクを警告 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


アストラゼネカ、高カリウム血症用薬のアウトカム試験を中止
(2023年12月1日発表)

アストラゼネカは18~20年に欧米日で高カリウム血症薬として承認されたLokelma(sodium zirconium cyclosilicate)の心腎アウトカム試験二本を中止すると発表した。患者組入れに時間がかかり、イベント発生率も低いことから、医療を前進させる上で意味のある時間軸内に結果を出すことが困難になったため。安全性問題が原因ではないとしている。

二本のうちSTABILIZE-CKD試験は高カリウム血又はそのリスクが高い慢性腎疾患1360人を組入れて悪化抑制作用をeGFR(推算糸球体濾過量)で評価するもの。DIALIZE-Outcomesは高カリウム血症を合併した慢性血液透析患者2800人を組入れて、突然心臓死や卒中、不整脈による入院/ER入室などのリスクを偽薬と比較していた。ClinicalTrials.govによると何れも21年に開始、当初は24~25年に主評価項目の結果が判明する見込みだったが直近では26年に変更されている。

15年にZS Pharmaを27億ドルで買収して入手した、非ポリマー系カリウム結合剤。FDAのオレンジブックには35年失効の特許も収載されているが、新薬排他権は今年、失効した。承認当時は年商10億ドル超の声もあったが、23年1-9月期売上高は3億ドルに留まっている。

リンク: 同社のプレスリリース


中国製プラスチック・シリンジは要注意
(2023年11月30日発表)

FDAは中国で製造された液体注入/吸引用プラスチック・シリンジについてデータ収集・分析を行っていることを発表した。中国製造者数社の製品の品質問題に関する情報提供があり、安定的かつ十分な品質や機能を持っていない可能性が疑われるため。
現時点ではガラス製シリンジ、プリフィルド・シリンジ、経口/局所用シリンジは対象外。

消費者や医療提供者、関連施設に対して、レーベルなどをチェックしてもし中国製であった場合はそうでない製品の使用を検討するよう推奨している。中国製しか保有していない場合は使用することができるが、液漏れや破損などのトラブルを密接に監視する。

リンク: FDAの安全性情報

【新薬開発】


アッヴィ、c-Met ADCが第2相で良績
(2023年11月29日発表)

アッヴィは抗c-Met抗体薬物複合体ABBV-399(telisotuzumab vedotin)の第2相LUMINOSITY試験のデータを公表した。昨年初にFDAのブレークスルー・セラピー指定を受けた当時のデータほどではないが良好な成績で、複数の報道によると、加速承認申請を検討しているようだ。

この試験はc-Metを発現し、EGFRは野生型の進行/転移非扁平上皮非小細胞性肺癌で白金薬による治療歴を持つ患者の単群2次/3次治療試験。c-Met高発現例ではORR(客観的反応率、独立中央評価)が35%、メジアン反応持続期間9ヶ月、メジアン生存期間は14.6ヶ月だった。中程度発現例では各23%、7.2ヶ月、14.2ヶ月だった。

c-Met陽性はEGFR野生型進行非小細胞性肺癌の25%程度を占める。同社はVENTANA MET (SP44) RxDxアッセイ(IHC検査)でスクリーニングしている。

リンク: 同社のプレスリリース


広カバレッジ肺炎球菌ワクチンの第3相成績
(2023年11月28日発表)

MSDは21価肺炎球菌ワクチンV116の第3相STRIDE-3試験の結果を公表した。配合されている株の数は既存ワクチンとそれほど変わらないが、既存ワクチンがカバーしていない、そのため感染者数の多い株をカバーしていることが長所。多くの第3相を実施中で、承認申請時期は明らかではない。

肺炎球菌は血清型が多く、同社のVaxneuvanceは15価、Pneumovax 23は23価、ファイザーのPrevnar 20は20価ワクチンとなっている。V116は21価で、直接のライバルであるPrevnar 20と大差ないが、株の種類がかなり異なっており、65歳以上の侵襲性肺炎球菌疾患の30%を占める15A、15C、16F、23A、23B、24F、31、35Bの8株をカバーしているのはV116だけ。

今回の試験は肺炎球菌ワクチン未接種の成人をV116群とPrevnar 20群に無作為化割付けして一回筋注し、30日後の免疫応答(オプソニン食作用活性試験における幾何平均抗体価で評価)を比較した。50歳以上のコフォート(2362人を1:1割付け)では共通する10株における非劣性検定が成功した。V116だけが配合する11株中10株では、優越性検定が成功し、もう一つの主評価項目である幾何平均抗体価4倍増奏効率でも優越性が確認された。

18~49歳のコフォート(301人を2:1割付)では、50~64歳における免疫応答と比較したところ、全21株について非劣性検定が成功した。なぜPrevnar 20群と比較しないのか分からないが、Prevnar 20の試験でも18~59歳に関する比較対象は対照ワクチンではなく60~64歳のデータだったので、薬効の挙証が完璧でないワクチンと比較すると推定誤差が広がってしまうことを恐れたのかもしれない。

第3相8本のうちSTRIDE-6試験(肺炎球菌ワクチン接種歴を持つ50歳以上を組入れてVaxneuvanceやPneumoxax 23と比較)も全株に関して有意に上回った旨、公表されている。

リンク: 同社のプレスリリース


Blenrep shall return
(2023年11月27日発表)

GSKはBlenrep(belantamab mafodotin-blmf)の第3相DREAMM-7試験が中間解析で主目的達成したと発表した。欧米共に既存の販売承認は返上/取消の見込みだが、別途承認/適応追加申請に向かうのではないか。

BCMAに結合する抗体薬物複合体で20年に欧米で再発/難治多発骨髄腫の5次治療薬として条件付き承認/加速承認されたが、市販後薬効確認試験であるDREAMM-3試験がフェールし3次治療においてpomalidomide及びdexamethasoneのPdレジメンに追加しても進行・死亡リスクを十分に抑制できず全生存期間は数値上悪化することが判明。米国では11月に承認返上手続きに着手、EUでは9月にCHMPが承認更新に否定的意見をまとめた。

起死回生ともいうべき今回の試験は2次治療を受ける494人を組入れて、bortezomibとdexamethasoneのVdレジメンにBlenrepを追加する群とDarzalex(daratumumab)を追加する群のPFS(独立評価委員会方式)を比較した。独立データ監視委員会の勧告に基づき盲検解除した。副次的評価項目である全生存期間は継続追跡するが、中間の名目p値は0.0005と好ましい方向を向いている由。

リンク: 同社のプレスリリース


BioVieのアルツハイマー試験で波乱
(2023年11月29日発表)

米国のBioVie(Nasdaq:BIVI)はNE3107の第3相軽中度アルツハイマー病試験が順調に進まなかったことを明らかにした。プロトコルやGCP(臨床試験基準)の違反例がひどく多く、検出力が失われた。adaptive designの試験であることを利用して、CRO(医薬品開発業務受託機関)を変更した上で追加組入れを行う考え。この用途でのPOC試験は行われていないので、成否の予想は困難だ。

NE3107はERK阻害剤。FDAの研究者が抗炎症作用やインスリン感受性改善作用を確認したが糖尿病薬としての開発は上手く行かなかった様子で、開発権が様々な会社に変遷。BioVieはアルツハイマー病患者の多くでインスリン抵抗性が見られることなどに着目、21年にNeurMedixから資産を買収した。アップフロントは300万ドルと株式、目標達成金は730万ドルと株式、という倹しいディールだ。

第3相は米国の39施設で439人を組入れて、偽薬群と20mg群(一日二回経口投与、用量は漸増)の第30週におけるADAS-Cog 12とCDR-SB(後者はFDAの推奨に基づき試験中に変更)を比較した。開始当時のプレスリリースによると、プロトコル開発で協力したCROはWorldwide Clinical Trials、実施を担ったCROはCognitive Research Corporation。

データ収集・解析を始めたところ、同一施設の複数の症例のMRI画像が酷似していたり、偽薬群の患者の数値が過去の試験では見られなかったほど改善していたり、異常なデータが散見された。精査した結果、15の施設でプロトコルからの顕著な逸脱やGCP違反が判明した。このような場合は当該施設のデータを全て除去して解析することになるが、残った症例は81人のみ、治験を完了し血液検査で服用が確認されたper protocol解析対象は57例しかなかった。

この一握りの症例に関しては、最近のアルツハイマー病薬と同様なささやかな治療効果が見られたが、全く有意ではなかった。

リンク: 同社のプレスリリース


ウィフガートの皮下注用はpITP試験がフェール
(2023年11月28日発表)

アルジェニクス(Euronext/Nasdaq:ARGX)はVyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa、hyaluronidase-qvfc)の第3相原発性免疫性血小板減少症(pITP)試験、ADVANCE-SC試験がフェールしたと発表した。昨年、点滴静注用薬を用いたADVANCE試験が成功し、持続的血小板回復奏効率が21.8%と偽薬群の5%を上回ったが、今回は13.7%対16.2%で数値上、偽薬以下だった。IWG基準に基づく反応率も点滴静注試験は51%対20%で成功したが、皮下注試験は有意差がなかった。敗因は明らかではない。

抗AchR抗体陽性全身性重症筋無力症に承認されている点滴静注用薬Vyvgartの皮下注用新製剤で、米国で6月に承認、日欧でも承認申請中。

同社はADVANCE試験に基づき世界に先駆けて6月に日本で一部変更申請した。24年第1四半期に審査結果が出る見込み。

リンク: 同社のプレスリリース


ファイザーの経口GLP-1作用剤、服用中止が多く第3相入りが不透明に
(2023年12月1日発表)

ファイザーは二種類の経口GLP-1作用剤を並行して開発し、第2相の成績を踏まえて片方は第3相ステージアップを断念したが、もう片方も忍容性問題が浮上し不透明になってきた。

そーせい社の創薬プラットフォームを利用して創製したPF-07081532(lotiglipron)は今年6月、薬物相互作用や肝臓酵素上昇リスクから開発中止した。マッチ・レース状態だったPF-06882961(danuglipron)は二型糖尿病の用量変動試験でA1cが最大1.16%、体重が4.1kg減少し、経口剤であるため期待が高まった。今回開票した肥満症の後期第2相試験でも第32週に体重が6~11%減少し、偽薬群(1%増加)より優れた成績を上げた。

しかし、GLP-1作用剤に付き物の胃腸系副作用の発生率が嘔吐は最大47%、下痢も同25%と高く、各用量とも離脱率が50%を超えた。偽薬群も40%なので、注射用薬よりハードルが低い分、副作用忍容力が低い被験者が集まった可能性もあるかもしれない。

それでも、ファイザーは、現行の一日二回服用薬の開発を断念し、24年上期に一日一回型製剤の薬物動態試験の結果が出てから今後の方針を決定する予定。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


パドセブの4剤併用法を申請
(2023年11月30日発表)

Seagen(Nasdaq:SGEN)とアステラス製薬は、抗ネクチン-4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)をMSDのKeytruda(pembrolizumab)、gemcitabine、及び白金薬と併用で局所進行/転移尿路上皮癌の一次治療に用いる適応拡大をFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は24年5月9日。

EV-302/KeyNote-A39試験に基づくもので、gemcitabineと白金薬だけの群と比べて全生存期間のハザードレシオが0.47、メジアン生存期間は31.5ヶ月対16.1ヶ月だった。共同主評価項目のPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)も有意に上回った。

Padcev・Keytruda併用は米国でcisplatinベースの化学療法に不適な局所進行/転移尿路上皮癌の一次治療に加速承認されている。上記試験は市販後コミットメントも兼ねているため、本承認切替えも認められるだろう。

リンク: 両社のプレスリリース


CAR-TをALLに承認申請
(2023年11月27日発表)

英国のAutolus Therapeutics(Nasdaq:AUTL)は米国でobecabtagene autoleucelを成人の難治/再発B細胞急性リンパ芽球性白血病に承認申請した。EUでも来年上期に申請する予定。CD19を標的とするCAR-T(キメラ抗体受容体-T細胞)療法で、結合後の遊離を早める装飾を行って、過剰刺激に伴う副作用の抑制を図った。エビデンスは第2相FLEX試験で、6月のASCO(米国臨床腫瘍学会)における発表によれば、94人におけるORR(客観的反応率、独立評価)は76%(完解率54%、血球数以外完解21%)だった。メジアン9.5ヶ月追跡時点で61%が寛解を維持していた。G3以上のサイトカイン放出症候群発生率は3%、同ICANは7%だった。

リンク: 同社のプレスリリース


EUでデュピクセントをCOPDに効能追加申請
(2023年11月27日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)とサノフィは、Dupixent(dupilumab)の二本目のCOPD試験が中間解析で目的達成したと発表した。米国で24年上期に適応拡大申請する考え。EUでは一本目のデータに基づき適応拡大申請中であることも明らかにされた。

二本とも、二型炎症性(血中好酸球数が300セル/mcL以上)の中重度COPDで三剤併用しても増悪を十分に管理できない患者を組入れて、52週間の中重度急性増悪の頻度を偽薬と比較したところ、一本目のBOREAS試験では30%抑制、二本目のNOTUS試験では中間解析で34%抑制した(p=0.0002)。副次的評価項目のFEV1の改善も前者では160ml対77mL、後者でも139mL対57mLと、どちらも有意に上回った。尚、今回の試験では有害事象による死亡の発生率が2.6%対1.5%だったが、一本目は1.5%対1.7%で大差なかった。

Dupixentは抗IL-4受容体アルファ抗体。アトピー性皮膚炎や好酸球性喘息症など二型炎症反応が関わる疾患に承認されている。

リンク: 両社のプレスリリース


エプキンリをEUで適応拡大申請
(2023年11月27日発表)

アッヴィは、ジェンマブから共同開発販売権を取得した抗CD20/CD3二重特異性抗体、Tepkinly(欧州名、米国ではEpkinly、一般名epcoritamab)の適応拡大をEUで申請し受理されたと発表した。第1/2相のEPCORE NHL-1試験の濾胞性リンパ腫コフォートのデータに基づくもので、成人の難治/再発患者におけるORR(客観的反応率、独立評価委員会方式)が82%(n=128)だった。反応持続期間はメジアン未達。G3のサイトカイン放出症候群が1.6%で発生した。

Tepkinlyは23年に米欧日で難治/再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫用薬として承認された(米国は加速承認、EUは条件付き承認)。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


Aldeyraのドライアイ治療薬はやっぱり承認されず
(2023年11月27日発表)

Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)は米国でADX 102(reproxalap)をドライアイ治療薬として承認申請していたが、審査完了通知を受領した。事前に開示されていたとおり、FDAは薬効の挙証が不十分と見なし、追加試験を求めた。

FDAが2020年にパブコメを求めたドライアイ治療薬に関する開発ガイダンス草案は立証すべき便益として選択肢を三つ挙げている。同社が採用した、兆候と症状の改善効果に関しては夫々について一本を超える臨床試験で実証することを求めている(兆候と症状の両方を評価した試験二本でもよい)。ところが、同社は兆候に関してはシルマー試験と充血度を検討する偽薬対照試験を二本実施したものの、症状はドライアイ・チャンバー・クロスオーバー試験を一本実施してその副次的評価項目として検討しただけだった。承認されなくても無理はない申請内容だったことになる。

同社はもう一本ドライアイ・チャンバー・クロスオーバー試験を行ってデータを24年上期にも追加提出する計画。一本目と同様に、目に強風を当てて症状を偽薬群と比較するもので、申請後に不適切と言われないように事前にSPA(特別プロトコル評価)を求める考えだ。

ADX 102はRASP(反応性アルデヒド種)調節剤。免疫原となる有機アルデヒド遊離体に結合し炎症推進作用を妨げる。アレルギー性結膜炎でもチャンバー試験が二本、成功しているが、市場性の大きいドライアイ用途を優先している。11月にアッヴィが開発生産販売オプションを取得したところ。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: FDAのドライアイ治療薬開発ガイダンス(草案、2020年12月、pdfファイル)

【承認】


初のデスモイド腫瘍治療薬が承認
(2023年7月27日発表)

FDAはSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)のOgsiveo(nirogacestat)を成人の全身性治療が必要な進行性デスモイド腫瘍の治療薬として承認した。150mgを一日二回、経口投与する。

デスモイド腫瘍は軟組織における稀な腫瘍。致死的なことは稀だが、手術で摘出してもしばしば再発し、周辺組織に浸透することもある。症状は部位や大きさにより区々。新患は年数千人。Ogsiveoはガンマ・セクレターゼ阻害剤。デスモイド腫瘍の成長を活性化するシグナルを阻害する。第3相試験ではPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のハザードレシオが偽薬比0.29、確認ORR(客観的反応率)も41%対8%で上回り、疼痛や身体機能、全般的QoLも有意に改善した。治療時発現有害事象による離脱が20%で発生した(偽薬群は1%)。再生産年齢の女性の75%で無月経症などの卵巣機能障害が見られた。

同社は2017年にファイザーから当剤を含む難病薬の開発権を継承して設立された。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 同社のプレスリリース

【医薬品の安全性】


PRAC、プソイドエフェドリンやGLP-1作用剤に関してアップデート
(2023年12月1日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品安全性監視・リスク評価委員会、PRACは、pseudoephedrineを配合した医薬品やGLP-1作用剤の安全性に関してアップデートした。

前者は鼻詰まり用薬として市販薬なども含めて広く普及しているが、PRES(可逆性後頭葉白質脳症)やPCVS(可逆性脳血管攣縮症候群)の副作用例が報告されていることから、疑われる症状が現れたら即座に服用を止めて受診するよう処方時に指示しなければならない。また、重度または管理不良の高血圧症や急性/慢性の腎臓疾患/腎不全の患者に投与すべきでない。EMAは製薬会社に添付文書を改訂して警告を追加するよう求めた。また、CHMP(医薬品科学的評価委員会)の追認を経て、DHPC(直接的医療従事者向け通知)を発出する考えだ。

GLP-1作用剤は様々な副作用懸念が残存しているが、今回は、自殺思慮や自傷思慮に関する症例が臨床試験、市販後薬物監視、刊行物などで報告されているため、製薬会社に追加的な質問を行うことを決めた。来年4月のPRACで改めて検討する予定。現時点では因果関係の結論は出ていないが、クリアすべき事項が残っている由だ。

リンク: EMAのプレスリリース


FDA、CAR-T療法後の二次性腫瘍の精査を開始
(2023年11月28日発表)

FDAはCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法後の二次性腫瘍のリスクを評価すると発表した。レンチウイルスやレトロウイルスをベクターとする遺伝子療法のレーベルでは既に警告済みだが、FAERS(FDAの有害事象報告システム)などの症例報告が20件程度蓄積されたため、リスクを精査しFDAによる対応が必要かどうか、検討する。便益が危険を上回るという評価には変わりはない、とのこと。

対照はBCMAまたはCD19を標的とする以下の6製品。

  • 2seventy bio/BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、和名アベクマ)
  • セルジーンのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel、和名ブレヤンジ)
  • Legend Biotech/JanssenのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、和名カービクティ)
  • ノバルティスのKymriah(tisagenlecleucel、和名キムリア)
  • ギリアド・サイエンシズのTecartus(brexucabtagene autoleucel)
  • 同、Yescarta(axicabtagene ciloleucel、和名イエスカルタ)

  • 証券会社の調査データを見ると施行実績が多い製品ほど有害事象報告が多いが、当然といえば当然で、FDAはクラス・イフェクトと考えているようだ。CAR-T細胞陽性の腫瘍も見られた由。

    メーカー側は因果関係について概して懐疑的である様子。血液癌患者に別の血液癌が併発したり、化学療法後に別の血液癌が生じたりすることは珍しくなく、CAR-Tは複数の抗癌剤を経験した患者に用いられることが多いため前治療が原因かもしれない。勿論、理論的な懸念材料なのでCAR-Tが犯人かもしれない。もしそうだとしても、幸いなことに報告件数で見ると頻度は1000人に一人程度とそれほどでもなく、実際は10倍としても100人に一人程度だ。

    ASH(米国血液学会)が始まるので色々、議論されるだろう。先週号で書いたように、Abecmaの適応拡大申請に関する諮問委員会が招集される模様なので、議題に上がるかもしれない。

    リンク: FDAの安全性情報


    FDA、一部の抗癲癇薬のDRESSリスクを警告
    (2023年11月28日発表)

    FDAはUCBのKeppra(levetiracetam、和名イーケプラ)とルンドベックのOnfi/Frisium(clobazam)の警告事項にDRESS(薬剤性過敏症症候群)を追加するようメーカー側に要請した。前者は米国で24年前に承認、後者も12年前と市販歴が長く今更だが、この、速やかに診断し治療しなければ命に係わる過敏反応の有害事象が稀に報告されている由。大半は米国外で発生した様子だ。

    患者に対しては医師に相談する前に服用を止めないよう注意した。ラッシュやリンパ節/顔の腫脹など、異常な症状や反応が現れたら即座に救急医療を求める。ラッシュを伴わないこともあるので診断は簡単ではない。

    Onfiは米国では11年にレノックス・ガストー症候群の治療薬として承認されたが、活性成分は欧州などでもっと前から抗不安症薬として用いられており、日本でも住友製薬の癲癇治療薬マイスタンとして2000年に承認された。米国では13年にFDAがスティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)と中毒性表皮壊死融解症(TEN)が稀に発生している旨の安全性情報を発出したことがある。

    リンク: FDAの安全性情報

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



    PDUFA
    23/12/8 Vertex/CRISPR TherapeuticsのCTX-001(exagamglogene autotemcel、鎌状赤血球病)
    23/12/16BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)←AC上程で遅延へ
    23/12/16Arcutis Biotherapeuticsのroflumilastクリーム(脂漏性皮膚炎)
    23/12/19IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期か
    23/12/20bluebird bioのbb1111(lovotibeglogene autotemcel、鎌状赤血球症)
    23/12/20Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)
    23/12/22Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)
    23/12/24アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)
    23/12/27MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)
    23/12/30Zealand PharmaのZegalogue(dasiglucagon、先天性高インスリン血症に適応追加)
    24年1QイーライリリーのLY3002813(donanemab、MCI/軽度アルツハイマー病)→23Q4から遅延
    24/1/3 Checkpoint TherapeuticsのCK-301(cosibelimab、皮膚扁平上皮癌)
    24/1/5 Novan(Ligand Pharmaceuticals)のberdazimer(伝染性軟属腫)
    24/1/12 アステラス製薬のIMAB362(zolbetuximab、Claudin 18.2中強度発現胃腺癌/食道胃接合部腺癌)
    24/1/17 MSDのWelireg(belzutifan、腎細胞腫3Lに一変)
    24/1/20 MSDのKeytruda(pembrolizumab、新患高リスク子宮頸癌化学放射線療法併用)
    24/1/31 Vylumaのatropine点眼(小児近視)

    注:ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)は審査期限が12月21日から24年3月21日に延期


    今週は以上です。

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