2023年11月25日

第1130回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • BET阻害剤を骨髄線維症に承認申請へ 
  • TLR9アゴニストの潰瘍性大腸炎試験がフェール 
  • バイエルのXIa阻害剤、最初の第3相が無益中止 
  • ヤンセン、二重特異性抗体の化学療法併用法を追加申請 
  • アベクマの早期使用承認が不透明に 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


BET阻害剤を骨髄線維症に承認申請へ
(2023年11月20日発表)

ドイツのMorphoSys(FSE/Nasdaq:MOR)はCPI-0610(pelabresib)の第3相骨髄線維症試験で主目的を達成したと発表した。12月のASH(米国血液学会)で結果を発表し、24年央に欧米で承認申請する考え。株価は筆頭副次的評価項目がフェールしたことを嫌気して下落した。

21年にConstellation Pharmaceuticalsを17億ドルで買収して入手したBET阻害剤。転写因子の動員に関わるbromodomain and extra-terminal domainを阻害して炎症や癌を抑制することが期待されている。今回のMANIFEST-2試験はDIPSSリスク予測スコアがintermediate-1以上でJAK阻害剤未経験の骨髄線維症430人を組入れて、JAK阻害剤ruxolitinibと併用する効果をruxolitinib・偽薬併用と比較した。主評価項目の第24週脾臓量35%削減奏効率(SVR35)は各群66%と35%となり、統計的に有意な差があった。

一方、最初の副次的評価項目として設定されたTSS(合計症状スコア)50%削減奏効率(TSS50)は52%対46%、p=0.216とフェールした。TSS自体の低下も15.99点対14.05点、差は1.94でp=0.0545だった。但し、intermediateリスク400人のサブグループ分析はどちらもp値が0.05を下回った。TSS50は全体の解析と見比べて偽薬群の数値が低くなっている。逆に言えば、高リスク・サブグループの奏効率が中リスク・グループよりかなり高かったことになり、変な感じだ。尤も、高リスク・サブグループは逸失データが多かったため解析を見送った由であり、同じ理由で全体の解析も歪められているのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース


TLR9アゴニストの潰瘍性大腸炎試験がフェール
(2023年11月21日発表)

スウェーデンのInDex Pharmaceuticalsは、IDX0150(cobitolimod)の第3相潰瘍性大腸炎試験の独立データ監視委員会(iDMC)が無益認定したため治験中止すると発表した。5月にヴィアトリス・ジャパンが日本における開発販売権を取得したばかり。

このCONCLUDE試験は伝統的治療薬に加えてバイオ薬やJAK阻害剤にも十分応答しない、中重度左側潰瘍性大腸炎における便益と危険を検討するもの。寛解導入における至適用量を決定するステージ1で、440人を偽薬、250mg、または500mgを第0週と第3週に大腸内投与する3群に無作為化割付けして、第6週における臨床的寛解率を比較した。ステージ2は至適用量による寛解導入、ステージ3は応答者に対する維持療法、を検討する予定だった。しかし、ステージ1の中間評価(n=133)で試験を続行しても目的達成の確率は低いと判定された。

cobitolimodは同社のDNA-based ImmunoModulatory Sequenceプラットフォームの成果で、TLR9に結合して炎症抑制的なサイトカインの分泌を誘導する。後期第2相のCONDUCT試験で250mg群の第6週臨床的寛解率が21%と偽薬群の7%を上回り、片側p値は0.05を下回った。しかし、31mg群が13%、125mg群は5%、隔週ではなく4週連続投与した125mgの群は10%とあまり用量反応相関は見られなかった。

リンク: 同社のプレスリリース


バイエルのXIa阻害剤、最初の第3相が無益中止
(2023年11月19日発表)

バイエルはBAY 2433334(asundexian)の第3相脳卒中予防/治療試験を2本実施しているが、独立データ監視委員会が予防試験を無益認定、勧告に従い繰上げ中止することを明らかにした。治療試験は勧告に従い続行する。予防ではもう一本、やや異なった第3相を計画しているが、デザインを見直す予定。

Xa阻害剤を販売するバイエルやBMS/JNJ陣営が新たな抗凝固剤として開発している経口XIa阻害剤の一つ。抗凝固薬は血栓塞栓リスクを抑制できるが、その裏返しで出血リスクが高まるのが難点。Xa阻害剤は例外と考えられたが、期待ほどではなかった。次の期待がXIa阻害剤で、アシュケナージ系ユダヤ人で比較的多い欠乏者は脳卒中リスクが低いだけでなく特発的出血も少ない点が注目される。

後期第2相のPACIFIC-Stroke試験では非心原性虚血性脳卒中から48時間以内の標準療法を受けている患者に追加投与して6ヶ月間追跡したが、高用量2群は脳卒中発生率が偽薬群より数値上高かった。検出力を上げるために無症候性の隠れ脳梗塞(MRIで判定)もカウントしたことが裏目に出た模様で、メジアン10ヶ月追跡時点の症候性虚血性脳卒中またはTIA(一過性脳虚血発作)発生率は、少なくとも数値上は、用量と逆相関していた。

今回のOCEANIC-AF初発予防試験は心房細動で脳梗塞のリスクが高い患者18000人を組入れて脳卒中/全身性塞栓症のリスクや大出血のリスクをBMS/ファイザーのEliquis(apixaban)と比較した非劣性検定試験。日本の施設も参加した。安全性は過去の試験と同様であった由なので、予防効果が期待以下だったのだろう。

続行するOCEANIC-STROKE再発予防試験は非心原性虚血性脳卒中または高リスクTIAを発症してから72時間以内の9300人を組入れて、虚血性脳卒中、そして大出血のリスクを偽薬と比較している。三本目のOCEANIC-AFINA試験は65歳以上の高リスク心房細動で、経口抗凝固剤が不適な患者を組入れて効果や安全性を偽薬と比較する予定。一言でいえば、実薬対照試験は打ち切りになったがunmet medical needに応えるべき偽薬対照試験は継続する。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


ヤンセン、二重特異性抗体の化学療法併用法を追加申請
(2023年11月20日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのJanssen Pharmaceuticalは米国でEGFR・MET二重特異性抗体Rybrevant(amivantamab-vmjw)をEGFRにエクソン19欠損またはL858R置換を持つ局所進行/転移非小細胞性肺癌に適応拡大申請した。Tagrisso(osimertinib)による治療歴を持つ患者にcarboplatin及びpemetrexedと併用する。第3相MARIPOSA-2試験でPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)のメジアン値が6.3ヶ月とRybrevantの代わりに偽薬を用いた群の4.2ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.48だった。全生存期間の解析は未成熟だが、ハザードレシオの点推定値は0.77だった。深刻な有害事象の発生率は32%対20%で上回った。

この試験では第3世代EGFR阻害剤JNJ-73841937(lazertinib)と4剤併用する群も設定されており、組入れは3剤併用群だけ半数に留められていたことから考えれば、本命は4剤併用だったと推測されるが、今回の申請には含まれなかったようだ。PFSのメジアン値は8.3ヶ月、2剤併用群比ハザードレシオは0.44で統計的に有意だったので数値は悪くないが、3剤併用と見比べてハザードレシオが大きくは変わらないことや、未成熟とは言え全生存のハザードレシオが0.96であること、そして、深刻有害事象発生率が52%であることなどを考慮したのかもしれない。あるいは、単に準備が整わなかっただけかもしれない。

Rybrevantは21年に欧米で承認。白金薬による治療歴を持ちEGFRにエクソン20挿入変異のある転移性非小細胞性肺癌に単剤投与する。市販後薬効確認試験のPAPILLON試験が成功、本承認切替や新患患者にcarboplatin及びpemetrexedと併用する一部変更を申請中。

リンク: JNJのプレスリリース

【承認審査・委員会】


アベクマの早期使用承認が不透明に
(2023年11月20日発表)

2seventy bio(Nasdaq:TSVT)と開発販売パートナーのブリストル マイヤーズ スクイブはAbecma(idecabtagene vicleucel)を承認用法より早い段階で用いる一変申請を行い、日本では薬食審再生医療等製品・生物由来技術部会が効能追加を了承したところだが、米国は審査期限の12月16日には間に合わないとの通知を受けた。腫瘍学諮問委員会に上程が決まったため。招集は12月下旬以降、審査結果がまとまるのはその1ヶ月以上後だろうから、2月以降に持ち越される可能性が高い。急に諮問が決まったことから想像すれば、審査の途中で何らかの懸念材料が浮上したのではないか。

AbecmaはBCMAを標的とするCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞)療法。今回の申請は3種類の作用機序の治療薬すべてを含む2~4次治療歴を持ち最終治療抵抗性の難治/再発多発骨髄腫を適応に追加するもの。エビデンスとなる第3相KarMMa-3試験では、PFS(無進行生存期間、独立委員会評価)のメジアン値が13.3ヶ月と標準治療群(5種類のレジメンから医師が選択)の4.4ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.49だった。全生存期間の解析は未成熟だが、死亡率は30%対26%で上回った。原因による内訳を見ると癌の進行や有害事象によるものは大差ないが、「死」としか報告されていないものが3.5%対0.2%となっているのが注目される。一方、致死的な有害事象の発生率は14%対6%で上回り、治療時発現有害事象によるものだけに絞っても2.7%対0.8%となっており、薬が原因とは断定できないにしても、有害事象に偏りがあることは軽視できないだろう。。

現在の適応は、米国では3クラス全てを含む4次治療歴。エビデンスとなった試験は3次以上の治療歴を持つ患者を組入れたが、欧日と異なり、FDAは被験者の88%を占めた4次治療歴を持つ患者に限定した。

リンク: BMSのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
23/11/23Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
23/11/27SpringWorksのnirogacestat(デスモイド腫瘍)
23/12/8 Vertex/CRISPR TherapeuticsのCTX-001(exagamglogene autotemcel、鎌状赤血球病)
23/12/16BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、多発骨髄腫3-5次治療に一変)←遅延へ
23/12/16Arcutis Biotherapeuticsのroflumilastクリーム(脂漏性皮膚炎)
23/12/19IdorsiaのACT-132577(aprocitentan、難治高血圧症)←3ヶ月延期される?
23/12/20bluebird bioのbb1111(lovotibeglogene autotemcel、鎌状赤血球症)
23/12/20Calliditas TherapeuticsのTarpeyo(budesonide、IgA腎症本承認切替)
23/12/21ItalfarmacoのITF2357(givinostat、DMD)
23/12/22Ionis PharmaceuticalsのIONIS-TTR-L-RX(eplontersen、遺伝性トランスサイレチン調停アミロイド多発神経症)
23/12/24アムジェンのLumakras(sotorasib、KRAS G12C変異NSCLC本承認)
23/12/27MSDのgefapixant(難治慢性咳嗽)



今週は以上です。

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