【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- EMA、承認審査をフライング・スタート
- その他の領域:
- パドセブがキイトルーダと併用で良績
- カンジダ治療薬を承認申請
- アッヴィ、リンヴォックをクローン病に申請
- バイオジェン、ALS用薬をサブパ-トH申請
- 米国でもエンハーツをher2低発現MBCに承認申請
- 新規アルキル化剤をHSCT前処理に再申請
- 武田、エクソン20変異標的薬のEU申請を撤回
- ObsEva、米国申請を撤回し権利をキッセイに返還へ
【COVID-19関連】
EMA、承認審査をフライング・スタート
(2022年7月27日発表)
EMA(欧州薬品庁)はETF(緊急タスクフォース)がVERU-111(sabizabulin)の承認審査を開始したと発表した。Veru(Nasdaq:VERU)が第3相重症COVID-19試験を成功させ、6月に米国でEUA(非常時使用認可)を申請したが、EUではまだ申請していない段階。EU加盟国の一つであるドイツの要請に基づきETFが審査、CHMPに報告し、CHMPが肯定的意見を纏めたら、ドイツなどの加盟国がEUの承認前に使用を開始することができるようになる。COVID-19ワクチンなどで類似前例があるが、今回は1月に成立した2022/123規制の第18条3項に基づく手続きだ。
sabizabulinは微小管阻害剤。アルファ/ベータ・サブユニットのcolchicine結合部位に結合する。POCは転移性乳癌だったが、微小管はインフルエンザ・ウイルスの細胞内移動にも関わっており、また、sabizabulinはCOVID-19の重大な合併症であるARDS(急性呼吸促迫症候群)における炎症反応を抑制する作用もあるようだ。
第3相は米州やブルガリアでARDSを合併する中等症・重症入院患者204人を9mgを一日一回、経口投与する群と偽薬群に2対1割付して死亡リスクを60日間追跡した。150人の中間解析が成功、死亡率は各群20%と45%、相対リスク削減率は55%、p=0.0029と大変良い結果になった。全てのサブグループ分析で試験薬のほうが良かった。
5ヶ国の27施設で150人を組入れたので、個々の施設の組入れは必ずしも多くなく、第三の因子が介入していても不思議はない。死亡リスクが高い患者を組入れたとはいえ死亡率45%というのは高いような気がする。また、dexamethasoneやremdesivir、tocilizumabのような標準療法の施行率に若干の群間の偏りがあるように感じられる。それでも、ここまで大きな差があると、EMAのように、真摯に受け止めない訳にはいかない。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Barnetteらの治験論文(NEJM Evidence)
【新薬開発】
パドセブがキイトルーダと併用で良績
(2022年7月26日発表)
Seagen(Nasdaq:SGEN)とアステラス製薬は、膀胱癌における抗Nectin-4抗体薬物複合体Padcev(enfortumab vedotin-ejfv)とMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)の併用効果を調べる第1b/2相EV-103/KEYNOTE-869試験のコフォートKのトップラインを公表した。切除不能局所進行性/転移性の尿路上皮腫でcisplatinレジメンに適さない未治療患者を組入れて併用とPadcev単剤のcORR(確認客観的反応率、盲検独立中央評価)を検討したところ、併用群は64.5%、反応持続期間はメジアン未達、と良好な結果になった(n=76)。但し、20年2月に公表された45例のデータ、73.3%よりは低下している。また、単剤投与群の成績は言及されていない。
Keytruda単剤のORRは30%程度だが、PD-L1発現の多寡でかなり変わる。また、米国では今回のようにcisplatinだけ不適な患者は適応にならない(全ての白金薬に不適のみ)。そもそも、免疫強化療法はORRでは真価が発揮されないので、Keytrudaのデータと比較してもあまり意味がない。比較するならPadcev単剤投与群のデータだが、割愛されているところを見ると、比較できるデータではないのか、または、あまりよくなかったのだろう。
Seagenは創業者の一人で社長兼CEO兼会長だったClay Siegallが妻に対する家庭内暴力で5月に逮捕された後、MSDが買収交渉中との観測記事が出ている。19年に第3相併用試験を共同で実施する提携を結んでいる。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認申請】
カンジダ治療薬を承認申請
(2022年7月27日発表)
Cidara Therapeutics(Nasdaq:CDTX)) は、CD101(rezafungin)を侵襲性カンジダ症やカンジダ血症の治療薬として承認申請したと発表した。18ヶ国132施設で187人を組入れた第3相試験で週一回静注の効果をcaspofungin一日一回静注と比較したところ、FDA向け主評価項目である30日全死亡率は23.7%対21.3%、EU向けの14日全般治癒率は59.1%対60.6%となり、非劣性解析が成功した。
米国の権利をMelinta Therapeutics (Nasdaq:MLNT)に供与したことも発表した。日米以外はMundipharmaにライセンスしており、残りは日本市場となった。
リンク: 同社のプレスリリース
アッヴィ、リンヴォックをクローン病に申請
(2022年7月27日発表)
アッヴィはRinvoq(upadacitinib)を成人の中重度活性期クローン病の治療に用いる適応拡大を米国とEUで申請したと発表した。バイオ薬にも不応不耐の患者を組入れた第3相試験で寛解導入(45mg一日一回)も、寛解維持(15mgまたは30mg)も、偽薬を上回った。
リンク: 同社のプレスリリース
バイオジェン、ALS用薬をサブパ-トH申請
(2022年7月26日発表)
バイオジェンはBIIB067/IONIS-SOD1Rx(tofersen)をSOD1(スーパーオキシドディスムターゼ1)変異型のALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬としてFDAに承認申請して受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は23年1月25日。第3相試験では臨床的便益を確認できなかったが、NFL(ニューロフィラメント軽鎖)の減少というサロゲート・マーカーに基づく加速承認を求めている。
SOD1は細胞内に存在する活性酸素分解酵素。ALSの2割程度は家族性で、その1割程度がSOD1変異を持つとされるので、対象患者数は世界で3000~4000人と推測される。tofersenはSOD1のmRNAに介入するアンチ・センス・オリゴヌクレオチドで、18年にIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスした。第3相VALOR試験では108人をtofersen群(100mgを髄腔内投与)と偽薬群に2:1割付して28週間治療し、ALSFRS-R総合点の変化を比較したところ、ベースライン値の36から各群8.14と6.98低下し、有意な差はなかった。
一方で、脳脊髄液におけるSOD1や血漿NFLなどのバイオマーカーは良く応答した。また、オープンレーベル延長(OLE)試験も含める12ヶ月間のデータでは、最初からtofersenを投与した患者とOLEで初めて投与した患者のALSFRS-R総合点には3.5点の差があった。
28週間の対照試験中の深刻有害事象発生率は各群18.1%と13.9%、有害事象による治験離脱率は5.6%とゼロだったが、IONISのプレスリリースによると、12ヶ月間の解析では前者が36.5%、後者は17.3%だった。なぜこんなに増えたのか、そもそも比較できるデータなのか、不明。
バイオジェンが第3相がフェールしたにもかかわらず承認申請というと、アルツハイマー病薬Aduhelm(aducanumab)を彷彿させる。背中を押したのはFDAで、おそらく、今回も、同じだろう。但し、NFLがALSにおける臨床的便益につながると合理的に予測できるようなサロゲート・マーカーであるか否かは、アルツハイマーにおけるアミロイド・ベータ以上に、議論の余地が大きいだろう。FDAは諮問委員会を招集する考えなので、最初の試金石になる。
リンク: バイオジェンのプレスリリース
リンク: IONISのプレスリリース
米国でもエンハーツをher2低発現MBCに承認申請
(2022年7月25日発表)
第一三共と開発販売パートナーのアストラゼネカは、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)をher2低発現の転移性乳癌に用いる適応拡大をFDAに承認申請し、受理された。優先審査を受け、今年第4四半期に是非が決まる見込み。転移後の二次治療薬としての承認を求めている。
エビデンスとなるのは第3相DESTINY-Breast04試験。切除不能/転移性のher2低発現乳癌で転移後の治療歴を持つ患者約550人をEnhertu群と化学療法群に2対1割付して、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を比較した。尚、被験者の9割を占めたホルモン受容体(HR)陽性患者に関しては、内分泌療法抵抗性が組入れ条件だった。
主評価項目であるHR陽性サブグループのPFSはハザードレシオ0.51、メジアン値は10.1ヶ月、化学療法群は5.4ヶ月だった。副次的評価項目のうちHR陽性サブグループの全生存ハザードレシオは0.64、メジアン値は各23.9ヶ月と17.5ヶ月だった。HR陰性も含む全ユニバースの解析結果も概ね同様だった。
Enhertuに付き物の有害事象である間質性肺疾患による死亡は3人(0.8%)、化学療法群はゼロだった。
EnhertuはHercptin(trastuzumab)の活性成分である抗her2抗体とトポイソメラーゼI阻害剤をリンカーで結合した抗体薬物複合体。her2陽性の転移性乳癌や胃癌などに承認されている。Herceptinを始め、これまでのher2標的薬はIHC法検査で3+、または、2+の場合はFISH法でも検査して陽性であった癌の治療に用いられてきたが、今回の申請は2+且つFISH陰性、または1+の癌が対象。前者に該当するのは転移性乳癌の2割であるのに対して、後者は5割と大きい。
尤も、その全てが適応になるわけではないだろう。本試験は内分泌療法が適応になる患者を組入れていない。また、被験者の多くがCKD4/6阻害剤歴も持っており、二次治療試験というよりは三次治療、四次治療試験である。致死的な副作用リスクがあるだけに、十分なエビデンス無しに広範な適応が認められるとは限らない。
リンク: 両社のプレスリリース
新規アルキル化剤をHSCT前処理に再申請
(2022年7月25日発表)
カナダのMedexus Pharmaceuticals(TSX:MDP)とドイツのmedacは、treosulfanをFDAに再承認申請したと発表した。昨年8月に審査完了通知を受領、今年4月に臨床試験の追加データを提出したが受理されず、再挑戦となる。
アルキル化剤で、他家造血幹細胞移植の前処理にfludarabineと併用する。急性骨髄性白血病と骨髄異形成症候群を組入れた臨床試験で、3年EFS率(再発やグラフト・フェールなしで生存)が60%と低集中度busulfan・fludarabine群の50%を有意に上回り、3年生存率も各67%と56%と良好な結果になった。EUでは1ヶ月児以上の血液癌と成人の重度疾患の造血幹細胞移植の前処理に用いることが19年に承認された。カナダでも21年に承認され、米加の販売権を持つMedexusが上市した。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認審査・委員会】
武田、エクソン20変異標的薬のEU申請を撤回
(2022年7月28日発表)
武田薬品は17年に54億ドルで買収したAriad Pharmaceuticalsの開発品の一つであるExkivity(mobocertinib)のEUにおける承認申請を撤回したことを四半期決算リリースの中で公表した。EGFRにエクソン20挿入変異を伴う成人の局所進行/転移非小細胞性肺癌の二次治療薬として21年9月に米国で加速承認され、今年3月には英国でも条件付き承認されたが、CHMP(医薬品評価委員会)は難色を示したのだろう。何が問題なのかは、8月にCHMP側から発表があるだろう。
40mgカプセルを4個、一日一回経口投与する。命に係わるQTc延長のリスクが枠付警告されている。米国で21年5月に同じ適応症に承認され、EUでも同年末に承認されたジョンソン・エンド・ジョンソンのEGFR・MET二重特性抗体、Rybrevant(amivantamab)にはこのような枠付警告はないので、クラス・イフェクトではないのだろう。
リンク: 同社の23年3月期第1四半期決算プレスリリース
ObsEva、米国申請を撤回し権利をキッセイに返還へ
(2022年7月27日発表)
スイスのObsEva(Nasdaq:OBSV、SIX:OBSN)はキッセイ薬品からライセンスした非ペプチド系GnRH受容体アンタゴニスト、linzagolixを子宮筋腫治療薬として承認申請し、EUでは6月に承認されたが、米国は9月13日の審査期限までに承認されない見込みになった。FDAから申請内容に欠陥がありレーベルや市販後コミットメントに関する協議に進めない旨の通知を受けたため。
米国のバイオテックは自転車操業が多く、ObsEvaは資金不足により開発を断念、ライセンスをキッセイ薬品に返還することを決めた。尚、北米やアジア以外の権利はTheramexにサブライセンスしているが、提携解消後はキッセイとの直契約に切り替わる見込み。
ObsEvaは人員削減や、スイスの裁判所に債務返済猶予を求める考え。
linzagolixの何がボトルネックなのかは明らかではないが、EUでの承認審査も、今年2月に、追加質問が来そうなので承認が遅れる可能性がある旨のプレスリリースを出している。
リンク: 同社のプレスリリース
今週は以上です。
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