2022年7月24日

第1060回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • EU、ベクルリーを正式承認へ 
  • CHMP、スパイクバックスを12-17歳の追加免疫に肯定的意見 
  • その他の領域: 
  • オプジーボ・カボメティクス併用の延命効果が当初データより低下 
  • 武田、CIPD維持療法試験が成功 
  • テセントリクの腎細胞腫術後補助療法試験がフェール 
  • キイトルーダの頭頚部癌CRT併用試験がフェール 
  • リムパーザの大腸癌試験がフェール 
  • VBLの遺伝子療法、卵巣癌試験もフェール 
  • Rett症候群用薬を承認申請 
  • C3阻害剤を地図状萎縮に承認申請 
  • 不快な味のない尿素サイクル異常症用薬を再承認申請 
  • エンハーツ対抗品を欧州でも承認申請 
  • CHMPがsiRNAなどに肯定的意見 
  • ルキソリチニブ・クリームが白斑に適応拡大 
  • 欧州でAADC欠損症用薬が承認 
  • ザーコリが希少疾患に適応拡大 


【COVID-19関連】


EU、ベクルリーを正式承認へ
(2022年7月22日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、Veklury(remdesivir)の条件付き販売承認を終了し通常の承認とすることに肯定的意見を纏めた。20年5月から6月にかけて米、日、欧でCOVID-19用薬として特例的に承認されたが、米国は既にEUA(非常時使用認可)から通常の承認に切り替えており、三極のうち二極が特例的承認という不確かな位置付けを速やかに終了することになる。

リンク: ギリアド・サイエンシズのプレスリリース


CHMP、スパイクバックスを12-17歳の追加免疫に肯定的意見
(2022年7月22日発表)

CHMPは、モデルナのCOVID-19ワクチン、Spikevax(elasomeran)を12~17歳の追加免疫に用いることを支持した。用量は初回免疫の半分の50mcg。接種時期が初回免疫から3ヶ月以上後と、意外に早いことが印象的。初回免疫の効果が3ヶ月程度で減弱するというエビデンスがあるのかもしれない。

リンク: モデルナのプレスリリース

【今週の話題】


オプジーボ・カボメティクス併用の延命効果が当初データより低下
(2022年7月14日発表)

FDAは、ブリストル マイヤーズ・スクイブのOpdivo(nivolumab)とExelixis(Nasdaq:EXEL)のCabometyx(cabozantinib)の処方情報を改訂し、CHECKMATE-9ER試験の全生存期間のアップデート値を追加記載することを承認した。進行腎細胞腫の一次治療として両剤を併用する効果をファイザーのSutent(sunitinib)と比較した試験で、このデータに基づき21年に日米欧で適応拡大が承認された。

主評価項目のPFS(無進行生存期間)はハザードレシオが0.51(95%信頼区間0.41-0.64)、メジアン値は16.6ヶ月と8.3ヶ月で8か月もの差があった。一方、副次的評価項目である全生存期間は、166イベント時のハザードレシオは0.60(98.89%信頼区間0.40-0.89)、メジアン値は両群未達だったが、271イベント到達時の最終解析ではハザードレシオ0.70(95%信頼区間0.55-0.90)、メジアン値は37.3ヶ月と34.3ヶ月でたった3ヶ月しか違わなかった。

IMDCリスク分類に基づくサブグループ分析では、favorableではハザードレシオ1.03(95%信頼区間0.55-1.92)、intermediateは0.74(0.54-1.01)、intermediate/poorでは0.65(0.50-0.85)、poor riskでは0.49(0.31-0.79)だった。

一次治療薬の全生存期間は二次治療などの内容にも左右されるが、副作用が原因で二次治療の選択肢が狭まるようなことも起こり得るので、解釈が難しい。処方情報には上記以上の解説がなく、両社が学会などで釈明することが望まれる。

リンク: Opdivoの処方情報(FDA、pdfファイル)
リンク: Cabometyxの処方情報(FDA、pdfファイル)

【新薬開発】


武田、CIPD維持療法試験が成功
(2022年7月22日発表)

武田薬品は、HyQvia(rHuPH20含有皮注用ヒト免疫グロブリン)の第3相CIPD(慢性炎症性脱髄性多発根神経炎)維持療法試験が成功したと発表した。23年3月期末までに欧米で承認申請する予定。

CIPDは四肢の筋力低下と感覚機能障害を伴う進行性の自己免疫疾患。HyQviaはHalozyme Therapeutics(Nasdaq:HALO)の遺伝子組換え型ヒト・ヒアルロン酸分解酵素を用いて、静注用薬である免疫グロブリンを皮注する時の生物学的利用率を改善したもので、13~14年に欧米で原発性免疫不全症などの治療薬として承認された。医師が認めれば自己注射可能。武田が19年に買収したシャイアがその3年前に合併した、Baxter社の製品だ。

今回の試験は、静注用免疫グロブリンによる治療を受けている患者を偽薬群とHyQvia群に無作為化割付して、神経筋障害・機能障害の再発予防効果を、調製INCAT(Inflammatory Neuropathy Cause and Treatment)障害スコアを用いて検討した。偽薬スイッチ群は31.4%がベースライン比悪化したが、皮注用製剤で治療を継続した群は9.7%に留まり、有意な差があった。

継続投与が有効なら実薬対照試験にすべきではないかとも感じられるが、偽薬でも倫理的な問題がないのだとしたら、静注用免疫グロブリンによる再発予防療法を患者がよほど嫌っていて、止めてしまう人が多いのか、INCATが1ポイント低下する程度なら大騒ぎするほどではないのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)


テセントリクの腎細胞腫術後補助療法試験がフェール
(2022年7月21日発表)

ロシュは、2022年上期決算発表会で、Tecentriq(atezolizumab)の第3相IMmotion010試験がフェールしたことを明らかにした。腎細胞腫で腎切除術を受けたが転移リスクが高い患者778人をTecentriqを3週毎に1年間投与する群と偽薬群に無作為化割付してDFS(無再発生存期間、担当医評価)を比較したもの。データは未公表。

MSDのKeytruda(pembrolizumab)はKeyNote-564試験が成功し21~22年に欧米で承認されたので、ロシュが再挑戦する場合は対照薬をKeytrudaに変える必要があるだろうから、この適応は諦めるのではないか。

腎細胞腫では一次治療bevacizumab併用試験も成功したはずだが適応拡大申請に至ってはおらず、上手くいっていない。

リンク: ロシュの2022年上期決算プレゼン資料(92頁に記載)
リンク: IMmotion010試験の治験登録(ClinicalTrials.gov)


キイトルーダの頭頚部癌CRT併用試験がフェール
(2022年7月20日発表)

MSDはKeytruda(pembrolizumab)の第3相頭頚部扁平上皮腫(HNSCC)一次治療化学放射線療法併用試験がフェールしたと発表した。局所進行性患者を組入れてcisplatinと放射線療法にKeytruda(200mgを3週毎点滴静注、プライム投与と1年間のメンテナンス投与も)を追加することによりEFS(無イベント生存期間)延長を図ったが、偽薬追加群比トレンドに留まった。数値は未公表。

Keytrudaは転移性又は切除不能難治性HNSCCの一次治療として、プラチナ薬及びフルオロウラシルと併用することが承認されている。PD-L1高発現(CPS≧20)の場合はモノセラピーで足りる。また、再発治療に単剤投与することも認められている。

今回の被験者は放射線療法が適応になる、一歩前の段階であることが違いを生んだのかもしれないが、何れにせよ、委細は学会発表待ちだ。

リンク: MSDのプレスリリース


リムパーザの大腸癌試験がフェール
(2022年7月18日発表)

MSDは、Lynparza (olaparib)の第3相LYNK-003試験で独立データ監視委員会が無益認定したことを明らかにした。中止する予定。切除不能/転移結腸直腸癌の一次治療で進行が止まった患者の維持療法に、単剤、またはbevacizumabと併用投与する効果をbevacizumab単剤と比較した試験で、主評価項目はPFS。

LynparzaはアストラゼネカのPARP阻害剤。MSDは共同開発販売権を持っており、今回の試験を主導した。

ある種の卵巣癌や乳癌、前立腺癌に承認されているが、最近はネガティブなニュースも散見され、3月にはKEYLINK-010試験(転移性去勢抵抗性前立腺癌の二次治療実薬対照試験)が無益認定された。

リンク: MSDのプレスリリース


VBLの遺伝子療法、卵巣癌試験もフェール
(2022年7月19日発表)

イスラエルのVBL Therpeutics(Nasdaq:VBLT)は、VB-111(ofranergene obadenovec)の第3相OVAL試験がフェールしたと発表した。白金抵抗性卵巣癌を組入れてpaclitaxelと併用する効果を検討したが、PFS(無進行生存期間)も全生存期間の中間解析も、paclitaxel・偽薬併用群と大差なかった。PFSはハザードレシオ1.03、メジアン値はどちらも5.3ヶ月前後、全生存期間はハザードレシオ0.97、メジアン値は試験薬群は13.37ヶ月、偽薬群は13.14ヶ月だった。

VB-111は複製能を除去した5型アデノウイルスをベクターとして、血管内皮細胞指向性を持つプロモーターとデス・レセプターを導入する点滴用薬。新生血管の血流を阻害し、免疫を刺激し、腫瘍微小環境で高発現するTNFアルファが新生血管をアポトーシスさせることが期待されている。日本はナノキャリア(TSE:4571)が開発販売権を持っている。

これまでの成果は案外で、18年には第3相神経膠腫bevacizumab併用試験がフェール。他の癌は第2相段階だ。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


Rett症候群用薬を承認申請
(2022年7月18日発表)

Acadia Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)はtrofinetideを2歳以上のRett症候群用薬としてFDAに承認申請した。Rett症候群は神経系の発達不全を伴う希少疾患で、米国の罹患数は6000~9000人。trofinetideはニューロンやグリア細胞で産生されるIGF-1のアミノ端末トリペプチドの類縁体で、神経炎症を抑制しシナプス機能を支えることが期待されている。

5-20歳の女性患者187人を組入れて一日二回、12週間に亘り経口又は経胃瘻投与した第3相試験で、共同主評価項目のRett Syndrome Behaviour QuestionnaireとClinical Global Impression–Improvementが偽薬比有意に改善した。前者は45項目について介護者が0/1/2の何れかに評価するもの。ベースライン比5.1低下し、偽薬群の1.7を上回った。修正イフェクト・サイズは0.37。後者は医師が全般症状の変化を1~7で評価するもので、大きいほど悪い。各群3.5と3.8となり、イフェクト・サイズは0.47だった。

治療時発現有害事象の発現率は17%と2%でだいぶ差があるが、深刻有害事象は両群とも3.2%だった。

trofinetideは18年にオーストラリアのNeuren Pharmaceuticals(ASX:NEU)から北米の開発商業化権を取得したもの。

リンク: 同社のプレスリリース


C3阻害剤を地図状萎縮に承認申請
(2022年7月19日発表)

Apellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)は、pegcetacoplanの硝子体注射用新製剤を加齢性黄斑変性の二次的地図状萎縮治療薬としてFDAに承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は11月26日。現時点で諮問委員会招集は予定されていない。同社はEUでも年内に承認申請する計画。

地図状萎縮は加齢性黄斑変性の合併症で、失明の原因として最も多いとのこと。米国の推定患者数は100万人。補体系C3の関与が指摘されている。pegcetacoplanはC3阻害剤で、皮注用製剤が21年に欧米で夜間ヘモグロビン尿症用薬として承認されている。

今回のエビデンスとなるのは第3相試験二本と第2相試験。毎月または2ヶ月毎に12ヶ月間投与して病変の拡大を観察したところ、OAKS試験では治療効果(偽薬比)が各22%と16%となり、有意な拡大抑制効果が見られた。一方、DERBY試験は各12%と11%に留まり、フェールした。第2相のFILLY試験では各29%と20%と最も良い数値が出たが、2ヶ月毎投与群のp値は0.067だった。

第3相は18年10月に投与が一時中断された。特定ロットを投与した患者8人すべてで非感染性炎症が発言したため。第3相でも6331回投与して13件の眼内炎症が発現したが、転帰はそれほど悪くない模様だ。

リンク: 同社のプレスリリース


不快な味のない尿素サイクル異常症用薬を再承認申請
(2022年7月18日発表)

Acer Therapeutics(Nasdaq:ACER)はACER-001(sodium phenylbutyrate)を再承認申請したと発表した。活性成分のフェニル酪酸ナトリウムは尿素サイクル異常症の治療薬として用いられているが、味が不快で価格も高いことが難点。ACER-001は無味の粉末製剤で、21年8月に505(b)(1)申請したが、包装工程委託先の査察ができなかったため、6月に審査完了通知を受領した。委託先の査察受け入れ準備が整った模様だ。

Relief Therapeutics(SIX:RLF)と開発発販売提携を結んでいる。

リンク: 同社のプレスリリース


エンハーツ対抗品を欧州でも承認申請
(2022年7月18日発表)

オランダのByondis B.V.は、SYD985(vic-trastuzumab duocarmazine)をEUで承認申請し受理されたと発表した。承認後はドイツのmedac GmbHが販売する予定。米国でも先ごろ、承認申請が受理され、審査期限は23年5月12日。

抗her2抗体trastuzumabとアルキル化剤duocarmazineを結合した抗体薬物複合体。乳癌の一部で過剰発現するher2に結合して細胞内部に取り込まれると、リンカーが外れて薬剤が活性化する。エビデンスとなる第3相TULIP試験では、類薬であるロシュのKadcyla(ado-trastuzumab emtansine)または二種類以上のher2標的薬による治療歴を持つher2陽性切除不能局所進行性/転移性乳癌436人を試験薬群と医師が選んだ治療法群に2対1割付してPFS(無進行生存期間、独立評価)を比較したところ、ハザードレシオ0.64、メジアン値は各7ヶ月と4.9ヶ月となり、副次的評価項目である全生存期間も予備的解析で好ましいトレンドが見られた。

競合品では第一三共/アストラゼネカのEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)がほぼ同様な適応範囲で承認されているが、対照試験の裏付けは未だないのでデータを見比べることはできない。EnhertuはKadcyla対照試験が成功し承認されたので、今後は、3番目ではなく2番目に使うher2標的薬として普及していくだろう。となると、SYD985はKadcylaではなくEnhertu歴を持つ患者にも有効なのかが問われることになる。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPがsiRNAなどに肯定的意見
(2022年7月22日発表)

CHMPは以下の新薬と適応拡大に肯定的意見を纏めた。順調なら2ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

アルナイラム・ファーマシューティカルズのAmvuttra(vutrisiran)は二重連鎖短鎖介入性RNA薬。hATTR(遺伝性トランスサイレチン調停)アミロイドーシスの成人のステージ1/2ポリニューロパチーを治療する。類薬である同社のOnpattro(patisiran、和名オンパットロ)が3ヶ月に一回点滴静注するのに対して、皮注で済むことが特徴。臨床試験で複数の症状評価スコアがOnpattroの第3相の偽薬群と比べて有意に改善した。有害事象は四肢痛や関節痛。米国では6月に承認。

リンク: EMAのプレスリリース

大塚製薬のLupkynis(voclosporin)はカルシニューリン阻害剤。成人の活性期クラスIII/IV/Vルーパス腎炎の治療に別の免疫抑制剤、mycophenolate mofetilと併用する。Aurinia Pharmaceuticals(TSX:AUP)から日欧市場で導入したもの。ロシュがカナダのIsotechnikaからライセンスして腎移植後免疫抑制剤として開発したことがあるが08年に権利を返還。Isotechnikaは単独開発を試みたが、13年にAurinia社と合併した。

リンク: EMAのプレスリリース

イーライリリーのMounjaro(tirzepatide)はGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)とGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の受容体のデュアル・アゴニスト。成人の二型糖尿病の治療に週一回、皮注する。米国では5月に承認、日本でも申請済み。GLP-1アゴニストと同様に肥満症にも開発されている。

リンク: EMAのプレスリリース

Comharsa Life SciencesのNulibry(fosdenopterin)は超希少な常染色体劣性遺伝性疾患であるモリブデン補因子欠乏症(MoCD)A型の基質補充療法。モリブデン補因子合成1遺伝子の変異によるモリブデン欠乏が原因でモリブデン依存性酵素が活性化されず、亜硫酸などが臓器に蓄積するのを防ぐために、体内でモリブデン補因子に転換されるcPMP(環状ピラノプテリン一リン酸)を補充する。

BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)がアレクシオン・ファーマシューティカルズから合成cPMP関連資産を取得、Origin Biosciencesを設立して開発し、米国で21年2月に承認を取得した。今年3月にインドのGE薬大手であるZydus Lifesciencesの子会社、Sentynl Therapeuticsが世界開発商業化権と米国外の生産権を取得した。Comharsaは医薬品開発受託会社のようなので、おそらく、EUはSentynlではなく提携先が販売することになるのではないか。

リンク: EMAのプレスリリース

BMSのOpdualag(relatlimabとnivolumab)はイフェクターT細胞や制御的T細胞が発現する免疫チェックポイント受容体であるLAG-3に結合するIgG4型モノクローナル抗体と、抗PD-1抗体Opdivoの活性成分の抱き合わせ製品。12歳以上でPD-L1発現が1%未満の切除不能/転移黒色腫の一次治療に用いる。米国では3月に承認されたが、PD-L1に基づく限定はない。臨床試験ではPD-L1発現が1%以上だったサブグループは主評価項目のPFSがOpdivo単剤と大差なかったが、死亡は16%少なかった。欧米の判断が分かれたのは、エビデンスが明確でないからだろう。

リンク: EMAのプレスリリース

JNJグループのJanssen-CilagのTecvayli(teclistamab)は、多発骨髄腫が発現するBCMAとT細胞のCD3に結合する二重特性抗体。GenmabのDUOBODY技術で創製した。三種類の代表的な多発骨髄腫用薬を含む3次以上の治療歴を持ち最終治療抵抗性の患者に週一回皮注する。第1/2相試験のORR(反応率)に基づく条件付き承認が支持された。有害事象は低ガンマグロブリン血症やサイトカイン放出症候群、好中球減少症など。米国は昨年12月に承認申請された。

リンク: EMAのプレスリリース

アストラゼネカのTezspire(tezepelumab)はアムジェンからライセンスした抗TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)抗体。成人・青少年の管理不良重度喘息症に4週毎皮注する。米国では昨年12月に承認。日本も申請中。

リンク: EMAのプレスリリース

ロシュのVabysmo(faricimab)はアンジオポイエチン2とVEGF-Aに結合する二重特異性抗体。成人の新生血管を伴う加齢性黄斑変性や、糖尿病性黄斑浮腫による視力障害の治療に硝子体内注射する。今年1月に米国で、3月には日本でも、承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

デンマークの承認申請支援企業、Billev PharmaのIlluzyce(lutetium (177lu) chloride)は、放射性同位元素。177luで標識して用いることが承認されている医薬品に用いる。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大は、まず、Bavarian Nordic(Nasdaq Copenhagen:BAVA)のImvanex (弱毒化、生ワクシニアウイルスAnkaraワクチン)。13年に天然痘ワクチンとして例外的環境条項に基づき承認されたが、新たにサル痘やワクシニアウイルスによる病気の予防に用いることが支持された。米国では19年に天然痘とサル痘のワクチン、Jynneosとして承認されている。EUはサルの臨床試験を禁じているはずだが、Imvanexのエビデンスは非ヒト霊長類の試験。国会議事堂近くでなければ原発も可、というのと似ている。

リンク: EMAのプレスリリース

Rhythm Pharmaceuticals(Nasdaq:RYTM)のImcivree(setmelanotide)は三種類の遺伝性肥満症に承認されているが、新たに6歳以上のバルデー・ビードル症候群による肥満症と飢餓感の治療に用いることが支持された。一方、アルストレム症候群による肥満症の治療は、投与実績が6例と少ないことがネックとなり、申請撤回となった。6月に米国でも前者にだけ承認された。

イーライリリーのRetsevmo(selpercatinib、米名Retevmo、和名レットヴィモ)はRET融合且つ又RET転移のある非小細胞性肺癌や甲状腺髄様腫に承認されているが、進行RET変異甲状腺髄様腫における、cabozantinib且つ又vandetanib歴という限定を解除することが支持された。

ギリアド・サイエンシズ・グループのKite Pharma(Nasdaq:KITE)のCAR-TであるTecartus(brexucabtagene autoleucel)を26歳以上の再発難治前駆B細胞急性リンパ芽急性白血病に用いることも支持された。米国では21年10月に適応拡大が承認されたが、対象年齢は単に『成人』となっている。

アストラゼネカが買収したアレクシオン・ファーマシューティカルズのUltomiris(ravulizumab)を抗AChR抗体陽性の全身性筋無力症に用いることも支持された。米国は4月に承認、日本でも申請中。

一方、インサイトのINCB050465(parsaclisib)は、1月の米国に続いてEUでも承認申請撤回となった。PI3K阻害剤は当初考えられていたほど有効ではない可能性が浮上し、FDAはPI3K阻害剤を血液癌に承認申請する場合はORR(客観的反応率)という不確かな指標ではなく無作為化割付試験で延命効果を立証すべき、と方針を変更した。EUも、成人の辺縁帯リンパ腫の二次治療薬として承認申請されたparsaclisibに関して、対照試験のエビデンスがないことや、条件付き承認の要件である既存治療に対する優越性が示されていないことから、否定的に考えていた。

リンク: EMAのプレスリリース

【承認】


ルキソリチニブ・クリームが白斑に適応拡大
(2022年7月18日発表)

Incyte(Nasdaq:INCY)はOpzelura(ruxolitinib)を12歳以上の非分節型白斑の治療に用いることがFDAに承認されたと発表した。白斑治療薬は初めて。一日二回、病変部位に塗布する。体表面積の10%を越えて塗布してはいけない。満足のいく成果が出るまで24週間以上、治療を続ける。

第3相試験二本ではF-VASI75(顔面白斑重症度指標が75%以上改善)達成率が30%と、偽薬群の8%と13%を有意に上回った。

JAK阻害剤Jakafi(和名ジャカビ)のクリーム製剤で21年に米国で局所性製剤不応不適の軽中度アトピー性皮膚炎に用いることが承認された。JAK阻害剤のクラス警告である深刻な感染症、死亡、腫瘍、主要有害心血管事故、血栓症のリスクが枠付警告されている。

リンク: 同社のプレスリリース


欧州でAADC欠損症用薬が承認
(2022年7月20日発表)

PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)はUpstaza(eladocagene exuparvovec)がEUでAADC(芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素)欠損症薬として承認されたと発表した。生後18か月以上の重症型患者が適応になる。エビデンスは台湾で実施された臨床試験で、例外的環境条項に則り承認された。米国では承認申請していない模様。

AADC欠損症はドパミンやセロトニンの合成に必要な酵素、DDCに変異を持つ常染色体性劣性遺伝性疾患。乳児期から発達遅延や眼球運動異常、四肢ジストニアなどが見られる。Upstazaは遺伝子組換え型アデノ随伴ウイルス2型をベクターとして、DDC遺伝子を定位脳手術で導入する。運動機能の改善が見られるようだ。有害事象は不眠、易刺激性、ジスキネジアなど。

EUにおける承認はプレスリリースを出さない企業も多く、また、承認に先行するCHMPのプレスリリースでかなりカバーできるため、本稿では割愛することが多いが、世界初承認であることや希少疾患用薬であることから例外的に取り上げた。

リンク: 同社のプレスリリース


ザーコリが希少疾患に適応拡大
(2022年7月14日発表)

FDAはファイザーのXalkori(crizotinib)を1歳以上のALK陽性切除不能/再発/難治炎症性筋線維芽細胞腫瘍に用いることを承認した。小児試験ではORR(客観的反応率、第三者評価)が86%(14人中12人、うち5人は完全反応)、成人試験ではORR(担当医評価)が71%(7人中5人、うち1名は完全反応)だった。反応者のうち、12ヶ月以上持続したのは小児試験では58%、成人試験では40%だった。

XalkoriはALS/ROS1阻害剤。米国ではALK/ROS1陽性非小細胞性肺癌やALK陽性再発/難治全身性未分化大細胞リンパ腫に承認されている。

FDAもファイザーも本件に関するプレスリリースは出していないようだ。

リンク: 米国の処方情報(Drug@FDA、pdfファイル)






今週は以上です。

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