2022年8月7日

第1062回

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • COVID-19用薬の売上推移 
  • その他の領域: 
  • オンパットロのATTR-CM試験が成功 
  • ジャカビ類似薬の円形脱毛症試験も成功 
  • ファイザー、拡張型心筋症の第3相が無益中止に 
  • キイトルーダ、第3相が連敗 
  • オプジーボとヤーボイの併用は腎癌を摘出した患者には無効 
  • 抗NKG2A受容体抗体の最初の第3相はフェール 
  • オニバイドの小細胞性肺癌試験がフェール 
  • 新規葉酸系抗癌剤の第3相がフェール 
  • サレプタ、DMDの遺伝子療法を加速承認申請へ 
  • イーライリリー、アルツハイマーとMCLの新薬を承認申請 
  • mIDH1阻害剤を既に申請し受理されていた 
  • 臍帯血由来の造血幹細胞の承認申請が受理 
  • 強化IL-15の承認申請が受理 
  • Nuplazid、アルツハイマー性精神症に承認されず 
  • エンハーツがher2低発現乳癌に承認 
  • レルゴリクスが米国で内膜症に適応拡大 
  • カルケエンス、制酸剤と同時使用できる錠剤が承認 
  • 局所性PDE4阻害剤が乾癬に承認 


    【COVID-19関連】


    COVID-19用薬の売上推移

    COVID-19用ワクチンと治療薬の22年第2四半期の売上高をまとめた。ワクチンはオミクロン株対応版が秋に実用化されるまで政府が調達を抑えていること、治療薬は、欧米の場合、新規感染者数がBA.1株流行の3月頃にピークアウトしてBA.5の波は小さな山に留まっているため、売上高が第1四半期比減少した製品が多い。抗SARS-CoV-2抗体は流行株の変遷により効果を失うものが続出、売上減少傾向にある。

    唯一、第2四半期も売上高が伸びたのがファイザーのPAXLOVID(nirmatrelvir、ritonavir)だ。作るのに何ヶ月もかかるらしく、昨年12月にEUA(非常時使用認可)された当初の売上高は効果が見劣りするMSDのLagevrio(molnupiravir)を下回ったが、供給が追いついてきたのだろう。

    バイデン大統領がPAXLOVIDを服用してウイルス検査が陰転したが、数日後に再び陽転したと報じられている。SARS-CoV-2の変異は見られなかった模様なので、検査が偽陰性だったのか、あるいは、ウイルスがどこかに隠れてしまったのかもしれない。困った現象だが、抗ウイルス薬の「あるある」なので、リアル・ワールドの発生率が臨床試験のデータ同様1%程度であるならば、大騒ぎするほどではないのかもしれない。

    COVID-19関連売上高(百万ドル)
    製品名メーカー2021年22Q122Q2
    ワクチン:
    Comirnatyファイザー36,78113,2278,848
    Spikevaxモデルナ17,6755,9254,531
    Vaxzevriaアストラゼネカ3,9811,089451
    Ad26.COV2.SJNJ2,385457544
    Nuvaxovidノババックス-58655
    抗SARS-CoV2抗体:
    Ronapreveリジェネロン5,828--
    ロシュ1,78463623
    三剤合計イーライリリー2,2391,470129
    XevudyGSK1,3221,751587
    Evusheldアストラゼネカ-469445
    治療薬:
    Vekluryギリアド5,5651,525445
    Actemraロシュ3,898858687
    Olumientイーライリリー1,115256186
    Paxlovidファイザー761,4708,115
    LagevrioMSD9523,2471,177
    注:OlumientとActemraは他の疾患向けの売上高が中心。ComirnatyやRonapreveの売上高は夫々の会社が計上したもので提携収入なども含む。

    【新薬開発】


    オンパットロのATTR-CM試験が成功
    (2022年8月3日発表)

    Alnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)は、Onpattro(patisiran)の第3相APOLLO-B試験が成功したと発表した。年内に適応拡大申請する考え。

    TTR遺伝子のmRNAの非翻訳領域を標的とするRNA干渉薬。18~19年に米欧日で遺伝性トランスサイレチン型アミロイド・ポリニューロパチー用薬として承認された。今回の試験は心不全を合併するATTR-CM(トランスサイレチン型心アミロイドーシス)の患者360人をTTR遺伝子変異の有無を問わず組入れて、承認されているのと同じ用量を3週毎に12ヶ月に亘り静注点滴した。主評価項目の6分歩行テストは偽薬比有意な(p=0.0162)差があった。最初の副次的評価項目であるKCCQ(QOL指標)もp=0.0397だった。シーケンシャルに行われた複合評価項目(全死亡、心血管イベント、または6分歩行テスト悪化)はp=0.0574となり、その後の検定は見送られた。

    心不全/死亡リスク抑制効果が見られなかったのは残念だが、BridgeBio Pharma(Nasdaq:BBIO)がacoramidisをテストした類似したデザインの試験がフェールした後なので、承認に必要なハードルをクリアできたのは一安心。同社は3ヶ月毎皮注の類薬、Amvuttra(vutrisiran)でもATTR-CMの心血管アウトカム試験試験を実施しており、組入れがAPOLLO-Bの2倍、想定追跡期間が3倍と大きいため結果が出るのは24年の見込みだが、OnpattroよりAmvuttraに勝負をかけていることが窺われる。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ジャカビ類似薬の円形脱毛症試験も成功
    (2022年8月1日発表)

    Concert Pharmaceuticals(Nasdaq:CNCE)は、CTP-543(deuterated ruxolitinib)の二本目の第3相円形脱毛症試験も成功したと発表した。来年上期に承認申請する計画。6月に米国で適応拡大が承認されたイーライリリーのOlumiant(baricitinib)のデータと見比べて良さそうに見えるが、忍容性に関する情報が現時点では限られている。

    CTP-543は、Olumiantの導入元であるインサイト(Nasdaq:INCY)が開発しノバルティスに導出したJakafi(ruxolitinib)の活性成分の水素を重水素に置換したもの。円形脱毛症をリード・インディケーションとしている。第3相のTHRIVE-AA1とAA2は18~65歳で頭皮の50%以上が脱毛した(SALTスコアが50以上)中重度円形脱毛症の成人を組入れて、8mgまたは12mgを一日二回経口投与し、24週時点の奏効率(SALTスコアが20以下に低下した患者の比率)を偽薬群と比較した。

    二本ともベースラインのSALTスコアは平均88と、頭皮面積の12%しか髪に覆われていなかったが、24週後にAA1試験(706人)では8mg群の30%、12mg群の42%が80%以上、覆われていた(偽薬群は1%)。今回のAA2試験(517人)でも8mg群は33%、12mg群は38%だった(偽薬群は1%)。

    Olumiantの第3相では36週奏効率が一本は2mg一日一回が22%、4mg一日一回が35%(偽薬群は5%)、もう一本は各11%、28%、1%だった。CTP-543と同じ24週時点のデータを見ると、2mgはどちらも11%、4mgは27~28%、偽薬は1~5%となっている。

    直接比較試験ではないが、ベースライン時点のSALTは大差なく、目安にはなりそうだ。

    JAK阻害剤は感染症や癌、血栓塞栓性疾患など、深刻な副作用リスクを持っている。CTP-543の試験では帯状疱疹が1%未満の患者で見られた程度のようだが、深刻な治療時発現有害事象も8mg群で一名ずつ発症している。延長試験の安全性データ等が注目される。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ファイザー、拡張型心筋症の第3相が無益中止に
    (2022年8月3日発表)

    ファイザーはPF-07265803(emprumapimod)の第3相LMNA関連症候性拡張型心筋症試験が無益判定されたと発表した。24週間治療後の6分歩行テスト成績を偽薬群と比較する計画だったが、中間解析で成功の可能性が極めて低いと判明、開発プログラム全体の中止を決めた。

    LMNAはラミンA/C蛋白の遺伝子で、拡張型心筋症の患者の一部で変異が見られる。emprumapimodは19年にArray BioPharmaを買収した時に入手したp38アルファMAPキナーゼ阻害剤で、当時はARRY-797あるいはARRY-371797と呼ばれていた。第2相では6分歩行テストの改善が見られた模様。

    リンク: 同社のプレスリリース


    キイトルーダ、第3相が連敗
    (2022年8月3日発表)

    MSDはKeytruda(pembrolizumab)の二種類の第3相試験がフェールしたことを明らかにした。

    一本はキモナイーブmCRPC(転移性去勢抵抗性前立腺癌)1030人を組入れてdocetaxel及びprednisoneのレジメンに追加する効果を検討したKEYNOTE-921試験。共同主評価項目の全生存期間とPFS(無進行生存期間)のどちらも数値上上回っただけだった。

    mCRPCではabiraterone・predonisoneまたはenzalutamideの何れかと化学療法歴を持つ患者にLynparzaと併用したKEYLINK-010試験も全生存期間やPFSがenzalutamideまたはabiraterone・predonisoneを投与した群と大差なく、無益中止が決まったことが3月に公表された。

    もう一本は、切除不能肝細胞腫の一次治療を受ける患者794人を組入れて、エーザイから共同開発販売権を取得しているVEGFR阻害剤、Lenvima(lenvatinib)にKeytrudaを追加する効果を検討したLEAP-002試験。こちらも共同主評価項目の全生存期間とPFSの改善がトレンドに留まった。

    両社は後期第1相試験に基づき米国で切除不能肝細胞腫における併用を加速承認するよう申請したが、ロシュのTecentriq(atezolizumab)とAvastin(bevacizumab)の併用が先に本承認されたため、加速承認の条件が満たされず、審査完了通知を受領した。TecentriqとAvastinの併用sorafenib対照試験では同0.58だった。一方、Lenvimaの第3相sorafenib対照試験では全生存期間のハザードレシオが0.92だった。今回の試験で0.7とか0.6とかが出ればキャッチアップできたかもしれないが、実現しなかった。

    リンク: MSDのプレスリリース(CRPC試験について)
    リンク: MSDとエーザイのプレスリリース(肝細胞腫試験について)


    オプジーボとヤーボイの併用は腎癌摘出後の患者には無効
    (2022年7月29日発表)

    ブリストル マイヤーズ・スクイブは、Opdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)の腎細胞腫術後アジュバント試験、CheckMate-914のパートAがフェールしたと発表した。完全/部分切除したが中程度以上の再発リスクを持つ患者を組入れて、DFS(無病生存期間、盲検独立中央評価)を偽薬と比較したが、両剤併用しても偽薬を有意に上回ることができなかった。データは未発表。パートBでOpdivo単剤もテストしているが、フェール又は中止になるのではないか。

    同様な試験はロシュのTecentriq(atezolizumab)も第3相IMmotion010試験で主評価項目のDFS(同、担当医評価)がフェールしたことが先日、明らかになった。一方、MSDのKeytruda(pembrolizumab)はKeyNote-564試験が中間で成功、DFSの偽薬比ハザードレシオが0.68、全生存期間も有意認定はされていないが0.54(95%信頼区間0.30-0.96)と良好な成績を挙げ、欧米で適応拡大と、明暗が分かれている。

    抗PD-1/PD-L1抗体の試験結果が区々になったことは以前にもあるが、改めて、臨床試験のデザインや実行の重要性を思い知らされる。

    リンク: BMSのプレスリリース


    抗NKG2A受容体抗体の最初の第3相はフェール
    (2022年8月1日発表)

    Innate Pharma SA(Euronext Paris:IPH)は、アストラゼネカが主導したIPH 2201(monalizumab)の最初の第3相試験が無益認定されたことを明らかにした。中止される見込み。白金薬と抗PD-1/PD-L1抗体による治療歴を持つ難治/転移頭頚部扁平上皮種(SCCHM)患者を組み入れて、cetuximabに追加する効果を偽薬追加と比較したが、パピローマウイルス関連ではないサブグループにおける全生存期間を伸ばせなかった。

    IPH 2201は、腫瘍浸潤CD8陽性T細胞やNK細胞が発現するNKG2A受容体を標的とする抗体医薬。腫瘍が発現するHLA-4から免疫抑制シグナルを受け取らないようブロックする。15年にアストラゼネカに共同開発販売権を供与した。cetuximabはブリストル マイヤーズ・スクイブの抗EGFR抗体で、アストラゼネカの狙いは、同社の抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)とのデュアル・チェックポイント・インヒビションと推測される。

    その意味で真贋が問われるのは4月に開始されたもう一つの第3相、PACIFIC-9試験だろう。ステージ3の切除不能非小細胞性肺癌で化学放射線並行施行療法に反応した患者の維持療法として、ImfinziにIPH 2201または抗CD73抗体MEDI9447(oleclumab)を追加して、PFS(無病生存期間)を偽薬追加と比較する。比較的進行リスクが小さいグループであるため、結果が出るのは26年とだいぶ後になる見込み。

    リンク: Innate社のプレスリリース


    オニバイドの小細胞性肺癌試験がフェール
    (2022年8月3日発表)

    イプセン(Euronext:IPN)はOnivyde(irinotecan liposome)の第3相RESILIENT試験がフェールしたことを明らかにした。イリノテカンのリポソーム製剤で、米欧日で転移性膵腺腫の二次治療薬として5-FU/LVと併用することが承認されている。今回は白金薬による一次治療中またはその後に進行した患者約450人を組入れて全生存期間をtopotecanと比較したが、大差なかった。副次的評価項目のORR(客観的反応率)は倍増したとのことなので、忍容性に難があったのかもしれない。

    リンク: 同社のプレスリリース(pdfファイル)


    新規葉酸系抗癌剤の第3相がフェール
    (2022年8月3日発表)

    スエーデンのIsofol Medical AB(Nasdaq Stockholm:ISOFOL)は、arfolitixorinの第3相切除不能転移結腸直腸癌一次治療試験がフェールしたと発表した。欧米豪日の施設で440人を組入れて、標準療法である5-FU/LV、oxaliplatin、bevacizumabの4剤併用レジメンと、leucovorinの代わりにarfolitixorinを使うレジメンを比較したが、主評価項目であるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)も主要副次的評価項目であるPFS(無進行生存期間)も、成功判定基準に達しなかった。同社は追加分析を行った上で来年上期に承認審査機関と今後を相談する考え。

    leucovorinなどの葉酸製剤の活性代謝物であるMTHFを製剤化したもの。日本はソレイジアが開発販売権を持っている。

    リンク: Isofolのプレスリリース


    サレプタ、DMDの遺伝子療法を加速承認申請へ
    (2022年7月29日発表)

    サレプタ・セラピューティックス(Nasdaq:SRPT)は、SRP-9001(delandistrogene moxeparvovec)を歩行可能なデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬として加速承認を申請する考えを明らかにした。アデノ随伴ウイルス(AAVrh74)をベクターとして通常より短いがある程度機能するDMD遺伝子を導入する遺伝子療法で、承認申請の時期はこれまでも紆余曲折したが、市販後薬効確認試験に位置付けることが可能な第3相が既に開始され、23年末にも成否が判明する見込みなので、今度は信憑性がありそうだ。

    サレプタは16年にエクソン・スキップ薬Exondys 51(eteplirsen)が臨床的効能ではなくジストロフィン量の増加というサロゲート・マーカーに基づき加速承認された。審査担当部署は否定的だったが、上役の鶴の一声が現在と同様にFDA長官であったRobert Cliff医学博士に支持され、逆転した。その後も類薬が続々加速承認されているので、SRP-9001が対象になっても不思議はない。但し、他社の遺伝子療法も含めて散見される横紋筋融解症のリスクは十分に検討する必要がありそうだ。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認申請】


    イーライリリー、アルツハイマーとMCLの新薬を承認申請
    (2022年8月4日発表)

    イーライリリーは、2022年第2四半期決算発表とあわせて、新薬二品を米国で承認申請し受理されたと発表した。どちらも優先審査指定された。PDUFAデートは非公表。

    一つは抗アミロイド・ベータ(p3-42)抗体、LY3002813(donanemab)。バイオジェンのAduhelm(aducanumab)と同様に、アミロイド・ベータ量の減少というサロゲート・マーカーに基づく加速承認を求めたが、違いは、順調なら来年上期にも臨床的効用を検討する第3相、TRILBLAZER-ALZ2試験の結果が出る見込みであること。アミロイド・ベータ蓄積が見られる早期症候性アルツハイマー病の1300人を組入れて76週間治療し、iADRSを偽薬と比較する。

    iADRSは比較的新しい評価尺度で、過去の臨床試験のデータを元に、治療効果感受性を高めたもの。例えて言うならば、声が小さい人にもっとハッキリしゃべれと言うのはハラスメントと呼ばれかねないので、代わりに補聴器を着けるようなものだ。認知機能を評価するADAS-Cog14と手段的生活機能を評価するADCS-iADLを合算したもので、前者は0~90まで、後者は0~56までのレンジで評価する。前者は大きいほど悪く後者は逆なので、90 - ADAS-cog14 + ADCS-iADLで算出する。バイオジェンなども採用しているので近年の流行であるが、統計的に有意な差が出たとしても、臨床的にどの程度の差があれば満足できるのかは、議論の必要がありそうだ。

    もう一つは19年にLoxo Oncologyを買収した時に入手したBTK阻害剤、pirtobrutinib。既存のBTK阻害剤による治療を受けている患者で発生することのある抵抗性変異にも活性を保持しており、BTK阻害剤治療歴を持つマントル細胞リンパ腫(MCL)の100人におけるORR(客観的反応率)は51%、その半分は完全反応だった。BTK阻害剤は命に係わる有害事象が改めて注目されているが、同薬は薬物関連有害事象による永続的治験離脱が618人中6人と、忍容性が比較的良さそうなことが注目される。

    リンク: 同社のプレスリリース


    mIDH1阻害剤を既に申請し受理されていた
    (2022年8月2日発表)

    米国マサチューセッツ州のForma Thaerapeutics(Nasdaq:FMTX)は、カリフォルニア州のRigel Pharmaceuticals(Nasdaq:RIGL)とのライセンス契約の発表に合わせて、対象となるmIDH1阻害剤FT-2102(olutasidenib)を米国で承認申請し受理されていることを公表した。審査期限は来年2月15日とのことなので、受理されたのは4月か2月と推測される。2月以降のプレスリリースや四半期報告書をチェックしたが言及されてはいないので、今回が初公表の模様だ。コア・プログラムではないことは以前から明言していたが、上場新興企業が承認申請をこんなに長い間公表しないのは異例だ。

    第2相難治/再発IDH1変異型急性骨髄性白血病試験の中間解析で、主評価項目の完全反応率(血液学的回復が完全ではないCRh症例も含む)が123人中33%だった。完全反応者の18ヶ月生存率は87%。G3/4の治療時発現有害事象は熱性好中球減少症(20%)、好中球減少症(13%)、貧血(19%)、血小板減少症(16%)など。

    Rigel社は世界開発製造商業化権を取得した。

    リンク: 両社のプレスリリース


    臍帯血由来の造血幹細胞の承認申請が受理
    (2022年8月1日発表)

    イスラエル本拠のGamida Cell(Nasdaq:GMDA)は、omidubicelの承認申請がFDAに受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年1月30日。

    臍帯血は採取量が少ないため細胞数が少なく、移植後の好中球数回復が遅くなりがち。omidubicelはニコチンアミド法を用いて培養することでCD34陽性造血幹細胞を重点的に増やしたもの。骨髄移植を受ける高リスク血液癌の患者125人を欧米アジアの施設で組入れた第3相試験では、好中球生着までの期間がメジアン12日と、標準的な臍帯血を移植した対照群の22日より有意に短かった。生着成功率も上回り、感染症発生率や入院日数は下回った。

    リンク: 同社のプレスリリース


    強化IL-15の承認申請が受理
    (2022年7月28日発表)

    米国カリフォルニア州のImmunityBio(Nasdaq:IBRX)は、N-803の承認申請がFDAに受理されたと発表した。審査期限は23年5月23日。

    IL-15のN72D変異型と、IL-15受容体アルファ・IgG1型Fc融合蛋白を結合したもので、天然のIL-15より力価や半減期が勝る。BCGがT細胞やNK細胞による免疫をプライムし、N-803がブーストすることが期待されている。第2/3相QUILY-3032試験でBCG不応ハイグレードNMIBC(筋層非浸潤性膀胱癌)に400mcgをBCGと混ぜて週一回、6週連続で膀胱内経カテーテル投与した試験で、上皮癌コフォート82人中58人、71%が完全反応し、メジアン反応持続期間は26ヶ月だった。Keytruda(pembrolizumab)などの文献データより良い。

    リンク: 同社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    Nuplazid、アルツハイマー性精神症に承認されず
    (2022年8月4日発表)

    ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)は米国でNuplazid(pimavanserin)をアルツハイマー病関連精神症の幻覚妄想症状の治療に適応拡大申請していたが、審査完了通知を受領した。薬効の立証が不十分として追加試験の実施を推奨された。

    Nuplazidは5-HT2Aインバース・アゴニスト。16年にパーキンソン病関連精神症の幻覚妄想症状の治療薬として米国で承認された。高齢者の認知症性精神症状の治療に用いると死亡リスクが高まることが枠付警告されている。この種の薬のクラス・ウォーニングだが、あまり遵守されておらず、潜在的な(顕在的な?)ニーズの強さを示している。

    ACADIAは認知症関連精神症に伴う幻覚妄想の治療薬として20年に承認申請したが審査完了通知を受領した。今回はサブグループ分析を行いアルツハイマー病患者だけに申請したが、結果は同じだった。エビデンスのうち、アルツハイマー性患者だけを組入れた第2相は単一施設試験であること、第3相試験で明確な治療効果が見られたのは既に承認されているパーキンソン性サブグループだけであったことなどがネックとなった。

    リンク: 同社のプレスリリース


    【承認】


    エンハーツがher2低発現乳癌に承認
    (2022年8月5日発表)

    FDAは、第一三共がアストラゼネカと共同開発販売している抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)の適応拡大を承認した。her2陽性度が高い乳癌だけでなく、低いが陰性ではない患者にも使えるようになり、対象患者数が約3倍に膨らんだ。

    her2標的薬を使う場合は、事前に乳癌細胞の成長因子受容体、her2の発現状況を検査して過剰発現していることを確認する。98年に米国で抗her2抗体の第一号であるHerceptin(trastuzumab)が承認された当初は、IHC(免疫組織化学)法で2+または3+であれば適応とされたが、2+における反応率は3+ほど高くないのが難点だった。その後、ISH(in situ hybridization)法という遺伝子検査が代替的な選択肢として登場、IHC法で2+だった場合はISH法でも検査して陽性なら適応とするプロトコルが標準となった。これに伴い、抗her2抗体が適応となる乳癌患者の比率は20%程度から15%程度に低下した。

    今回のher2低発現癌は、IHC法で2+且つISH法で陰性、そして、IHC法で1+の癌を指す。乳癌の新患の5割程度を占めると推定されている。Enhertuが適応になるのは、転移後に化学療法を受けた、または、術後アジュバント療法中または完了後6ヶ月以内に再発した場合。

    エビデンスとなるDESTINY-Brease04試験では、メジアン生存期間が23.4ヶ月と化学療法群の16.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.64だった。この試験はホルモン受容体陽性(乳癌の8割を占める)の場合は内分泌療法抵抗性であることも組入れ条件としていたため、9割の患者が二次治療歴を持っていた。

    リンク: FDAのプレスリリース


    レルゴリクスが米国で内膜症に適応拡大
    (2022年8月5日発表)

    住友ファーマの上場子会社であるMyovant Sciences(NYSE:MYOV)と開発販売パートナーのファイザーは、Myfembree(relugolix、estradiol、norethindrone)を閉経前女性の子宮内膜症に伴う中重度疼痛の治療に用いることがFDAに承認されたと発表した。武田薬品からライセンスしたゴナドトロピン放出ホルモン受容体拮抗剤にエストロゲンとプロゲスチンを配合したアドバック療法用薬で、特徴は、骨密度低下の副作用が小さく1年間服用しても平均1%未満に留まることと、類薬と異なり最長24ヶ月連続服用できること。

    relugolixは子宮筋腫による過剰月経治療薬として20年に米国で初承認された。日本では19年に子宮筋腫による諸症状の治療薬レルミナとして承認、内膜症は21年に承認された。

    リンク: 両社のプレスリリース


    カルケエンス、制酸剤と同時使用できる錠剤が承認
    (2022年8月5日発表)

    アストラゼネカはCalquence(acalabrutinib)の錠剤がFDAに承認されたと発表した。適応は従来同様、小細胞リンパ腫とマントル細胞腫。17年に米国で承認されたBTK阻害剤で、オリジナルのカプセル製剤はプロトン・ポンプ阻害剤は併用禁忌、H2ブロッカーなどは2時間以上離して服用する必要があったが、錠剤は同時使用できる。プロトン・ポンプ阻害剤は使いすぎと警告する研究者もいるほど広く用いられているので、大きな違いだ。

    リンク: 同社のプレスリリース


    局所性PDE4阻害剤が乾癬に承認
    (2022年7月29日発表)

    Arcutis Biotherapeutics(Naasdaq:ARQT)はZoryve(roflumilast)が12歳以上のプラク乾癬治療薬としてFDAに承認されたと発表した。COPD治療薬として承認されているPDE4阻害剤の活性成分をクリームに製剤したもので、一日一回、患部に塗布する。臨床試験では奏効率(IGAベース)が一本は42%(偽薬群は6%)、もう一本は38%(同7%)だった。中重度肝障害は禁忌。

    局所性乾癬治療薬ではDermavantのアリル炭化水素受容体モジュレータ、Vtama(tapinarof)が5月に米国で承認されている。経口roflumilastはGE化しているためZoryveは少なくとも価格面で優訴求力を高める余地があるのではないか。

    リンク: 同社のプレスリリース





    今週は以上です。

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