2022年7月2日

第1057回

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • ファイザー、抗ウイルス剤を正式に承認申請 
  • FDA、BA.4/5対応二価ワクチンの開発を推奨 
  • コミナティのオミクロン対応ワクチンもBA.1株に有効 
  • その他の領域: 
  • EMA、天然痘ワクチンをサル痘に適応拡大審査開始 
  • EPAのCVO試験が成功したのは偽薬に鉱油を使ったから? 
  • 抗PD-1抗体の食道扁平上皮腫一次治療試験が成功 
  • HDAC阻害剤のDMD試験成功 
  • レキサルティをアルツハイマー性アジテーションに適応拡大申請へ 
  • ジャズ、多発性硬化症の痙攣予防試験がフェール 
  • イプセン、FOP治療薬を承認申請 
  • ギリアド、カプシド阻害剤を米国で再承認申請 
  • テビペネム ピボキシル臭化水素酸塩は承認されず 
  • Vivusのダイエット補助用合剤が小児にも承認 
  • ブレヤンジがLBCLの二次治療に承認 
  • サノフィ、酵素補充療法二品がEUで承認 
  • デュベリシブは死亡リスクが抗CD20抗体を上回る 


【COVID-19関連】


ファイザー、抗ウイルス剤を正式に承認申請
(2022年6月30日発表)

ファイザーはPAXLOVID(nirmatrelvirとritonavirの同梱製品)をCOVID-19治療薬としてFDAに承認申請したと発表した。適応は昨年12月のEUAと同様のようだ(12歳40kg以上の軽中度だが重症化リスクのある患者)。

EUAの根拠となった軽中等症だが重症化リスク因子を持つ患者を組入れたEPIC-HR試験の最終解析では、入院・全死亡が偽薬比86%少なかった。28日死亡はゼロ対12人。この試験の対象外で便益が曖昧だったワクチン接種済みの重症化リスク因子を持つ患者については、EUA後にEPIC-SR試験の結果が出て、当該サブグループの28日入院・死亡リスクが偽薬比57%少なかった。程度の差はあれ、高リスク患者にはワクチン接種の有無(実務的には接種後の経過期間も)に関わらず有効ということになる。

ところで、抗ウイルス薬のご多分に漏れずPAXLOVIDもリバウンド(ウイルス検査陰転後の陽転)が1%前後の患者で発生する。最近では米国大統領の首席医療顧問であるアンソニー・ファウチ国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)所長(81歳)が6月15日に感染し服用したところ、3日連続で陰転したが、4日目に陽転し、未承認用途だが5日間、再服用したと報じられている。追加免疫を二回行っても感染し、抗ウイルス剤で治療してもどこかに隠れてしまうのは鬱陶しいが、入院・死亡という結果にはなっていないので、最低限の便益はあったことになる。

リンク: 同社のプレスリリース


FDA、BA.4/5対応二価ワクチンの開発を推奨
(2022年6月30日発表)

FDAでワクチンなどの生物学的製剤を担当するCBERのPeter Marksディレクターは、COVID-19ブースター・ワクチンにBA.4/5対応mRNA/抗原を追加するようメーカーに推奨した。二大製品であるBioNTech/ファイザーのComirnaty(tozinameran)とSpikevax(elasomeran)は、BA.1対応ワクチンの免疫原性データが公表されたばかりだが、BA.4/5対応シーケンスを追加した二価ワクチンについてもメーカー側は10~11月頃の接種開始が可能と見込んでいる模様だ。尚、初回免疫は従来製品を使用する。低年齢向けは現行ワクチンを用いた初回免疫が承認されたばかりだし、mRNAワクチンを忌避する人は抗原ワクチンによる初回免疫なら受け入れるかもしれないが、抗原ワクチンの開発・生産はmRNAワクチンほど早くないので、譲歩したのかもしれない。

米国ではBA.4とBA.5が新規感染例の過半を越えた。日本も入国制限を緩和しているので早晩、主流になるだろう。スパイク蛋白などの変異がBA.1など他の株より多く、ワクチンや抗体医薬の効果が低下するが、BA.4/5に一点張りすると他の系統から新規流行株が現れた時に大外れしかねない。私は、今秋はBA.1ベースの二価ワクチンを採用し、BA.4/5対応版は来年導入と予想していたが、現状で最善の方針を打ち出した。

6月28日に開催されたワクチン及び関連生物学的製剤諮問委員会では21人の委員のうち19人がオミクロン株対応ワクチンの採用に賛成した。長所はオミクロン株に対する免疫原性が現行のワクチンより優れること。弱点は、感染や重症化を防ぐ臨床的な便益が確立していないことや、実用化される頃にはまた新しいウイルスが流行しているかもしれないこと。また、反対した2人が指摘するように、現行のワクチンでもオミクロン株感染者の重症化予防効果は維持されている。

亜株の選択や二価ワクチンの是非は採決対象ではないが、多くの委員がBA.4/5対応の二価ワクチンを推奨したようだ。FDAはEMAなどとも協議しているので、おそらく、これが世界の潮流になるのではないか。

リンク: FDAのプレスリリース


コミナティのオミクロン対応ワクチンもBA.1株に有効
(2022年6月25日発表)

ファイザーとBioNTech(Nasdaq:BNTX)は、オミクロン株対応COVID-19ワクチンの第2/3相免疫原性試験のトップラインを公表した。56歳以上で一回ブースター接種済の1234人を組入れて、BA.1対応ワクチンと、BA.1対応と現行の抗原の二価ワクチンの夫々二用量(30mcgと60mcg)のBA.1株に対する中和抗体幾何平均価(GMT)を現行のワクチンと比較したところ、BA.1対応ワクチンはGMR(幾何平均比)が30mcgは2.23、60mcgは3.15と、どちらも95%下限が優越性判定の閾値である1.5を上回った。2価ワクチンも各1.56と1.97で数値上、上回ったが、閾値をクリアできなかった。

GMRではなくGMTはどうか?BA.1ワクチンは接種前と比べて各用量13.5倍と19.6倍に増加、二価ワクチンは9.1倍と10.9倍に増加した。

現行のワクチンの二回目ブースターはイスラエルの免疫原性試験に基づきEUA(非常時使用認可)されたものだが、接種の2週間後の野生株やデルタ株、オミクロン株に対する中和抗体力価は初回ブースターの5か月後と比べて11倍に上昇している。今回の試験ではこんなに上昇してはいないはずなので、比較できるデータではないのだろう。

今回は、米国でも主流になったBA.4やBA.5についても、接種者の血液と生ウイルス中和アッセイを用いてin vitroで検討した。結果はBA.1の3倍(の量を投与しないとウイルス量を抑制できない)という残念なものだった。

mRNAワクチンの双璧であるモデルナもオミクロン対応2価ワクチンのオミクロン株に対する現行ワクチン比GMRが1.75(97.5%下限1.49)と良好な成績を上げた。どちらもEUがローリング承認審査を開始したが対応株は未定、米国はBA.4やBA.5に対応する二価ワクチンの採用をブースターに関しては決定した。

リンク: 両社のプレスリリース

【今週の話題】


EMA、天然痘ワクチンをサル痘に適応拡大審査開始
(2022年6月28日発表)

EMAは、Bavarian Nordic(Nasdaq Copenhagen:BAVA)の天然痘ワクチンImvanexのサル痘予防効果について検討を開始した。米国で天然痘やサル痘の予防に承認されている同社のJynneosと名前が違うだけと当方は思っていたが、工場が異なり、他にも細かな違いがあるのかもしれない。零下20℃で保存できる有効期間はImvanexが2年、Jynneosは3年だが、実際はどちらも3年間有効のようだ。このような主観的な違いも整理の必要があるのだろう。

天然痘ワクチンはバイオテロなど万が一に備えた危機対応策の一つという位置付けだったため、調達量や熱意は国によって異なる。Imvanexは直ぐに供給できる量が限られている模様であり、EUは加盟国向けにJynneosを11万回分、調達契約した。

リンク: EMAのプレスリリース


EPAのCVO試験が成功したのは偽薬が有害だったから?
(2022年6月28日刊行)

EPA/DHAの心血管疾患予防試験はフェールしたものが多いが、EPAだけを比較的多く投与した試験二本は成功した。Amarin(Nasdaq:AMRN)のEPA製剤、Vascepaカプセル(icosapent ethyl)はその貴重な一本であるREDUCE-IT試験に基づき、19年に米国で、心血管疾患歴やリスク因子を持つ高トリグリセライド血症の患者の心血管疾患リスクを抑制する適応・効能で承認された。

この試験では偽薬群のLDL-Cがメジアンで10.9%上昇しており、若干低下した試験薬群と12.1%の群間差が生じた。VascepaのLDL-C抑制効果は限定的であるため、本試験が成功したのはVascepaが効いたのではなく、色などを似せる目的で偽薬カプセルに入れた鉱油が有害だったのではないか、という見方もあった。しかし、諮問委員会が16人全員一致で便益が危険を上回ると判定するなど、主流意見にはならなかった。

ところが、本試験の成功がAHA(米国心臓協会)年次総会やNew England Journal of Medicine誌で発表されてから3年半、米国承認から2年半経った今になって、偽薬群はLDL-Cだけでなく様々な炎症バイオマーカーも悪化したことが判明した。一方、Vascepa群は大きな変動はなかった。

Circulation誌論文によると、第12月における群間差は、hsCRPが38.5%、IL-1ベータは48.7%、IL-6は19.8%となっている。今回の論文の筆頭著者であるPaul Ridker氏はこれらの指標に注目してスタチンや抗IL-1ベータ抗体の心血管アウトカム試験を成功させている(後者は適応がFDAに承認されなかったが)。

この論文はREDUCE-IT論文の筆頭著者も名を連ねており、そのせいか、インプリケーションについては言及していない。しかし、メディカル・ジャーナリズムの報道によれば、Steve NissenやRobert Harrington、Harlan Krumholzといった心血管領域のオピニオン・リーダーでFDA心血管諮問委員会でも中心的な役割を果たした実績を持つ各氏が、改めて、本試験の解釈について問題提起している。

Vascepaは米国ではGE化、欧州などでは未承認なので、メーカー側が再試験を行う可能性はゼロだろうから、結局、この件は有耶無耶になるのではないか?

リンク: Ridkerらの論文(Circulatin、フリー・アクセス)

【新薬開発】


抗PD-1抗体の食道扁平上皮腫一次治療試験が成功
(2022年6月30日発表)

ノバルティスは、BeiGene(百済神州、Nasdaq:BGNE;HKEX:6160)から日米欧の権利を取得して開発している抗PD-1抗体、tislelizumabの第3相RATIONALE 306試験の結果をESMO(欧州臨床腫瘍学会)の学会で発表した。中国や欧米、日本、オーストラリア、アジアの施設で未治療の切除不能/局所進行性/難治/転移性食道扁平上皮腫患者を組入れて、化学療法に追加する効果を検討したところ、主評価項目の全生存期間ハザードレシオ0.66、メジアン値は17.2ヶ月(偽薬追加群は10.6ヶ月)だった。副次的に実施されたPD-L1高発現(≧10%)サブグループの解析ではハザードレシオ0.62、10%未満のサブグループの探索的解析では0.72だった。

米国で二次治療向けに承認申請中だが、早晩、適応拡大申請されるだろう。FDAは中国で実施される臨床試験の信頼性に懸念を表明しているが、これらの臨床試験は中国だけでなく、欧米や日本を含むアジアの施設も参加している。

リンク: 同社のプレスリリース


HDAC阻害剤のDMD試験成功
(2022年6月25日発表)

イタリアのItalfarmacoは、ITF2357(givinostat)の第3相デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)試験が成功したことをPPMD(Parent Project Muscular Dystrophy)2022年年次総会で発表した。承認申請に向けて欧米の審査機関と相談する考え。プレスリリースだけではよく分からないが、難病だけに取り敢えず朗報だ。

givinostatはヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤。産学共同研究を通じて創製した。DMDによる作用機序は、HDACの分泌過剰により神経再生が抑制されたり炎症がトリガーされたりするのを妨げる、と考えられている。

今回のEPIDYS試験は欧米の医療施設で6歳以上の歩行可能な、ステロイドによる治療を受けているDMD患者179人を組入れて2対1無作為化割付して12ヶ月実施した偽薬対照二重盲検試験。試験薬は体重に応じた量の10mg/mL経口液を空腹時に一日二回、投与した。主評価項目は階段4段昇段時間で、主解析対象はMRI造影によるVL MFF(外側広筋の筋脂肪分画)がベースライン時点で5%超、30%未満のサブグループ。

結果は、期中の悪化が偽薬比1.78秒小さかった。p=0.0345なので高度に有意ではない。ベースライン値は不明だが、この試験の組入れ条件の一つは同時間が8秒以内であること。

副次的評価項目で6分歩行テストやNorth Star Ambulatory Assessmentも検討したはずだが、結果は記載されていない。

試験薬群の3人(2.5%)が有害事象で治験を離脱した。

リンク: 同社のプレスリリース(Business Wire)


レキサルティをアルツハイマー性アジテーションに適応拡大申請へ
(2022年6月27日発表)

大塚製薬とルンドベックは、向精神薬Rexulti(brexpiprazole)をアルツハイマー病患者のアジテーション(激越)の治療に充てる適応拡大を本年後半に申請する計画を明らかにした。最初の第3相二本は一勝一敗だったが、3本目が成功したため。FDAは、アルツハイマー病に用いると死亡リスクが高まる旨のクラス・ウォーニングを向精神薬のレーベルに掲載させており、Rexultiも精査の対象になるだろう。

brexpiprazoleはAbility(aripiprazole)の類縁体で、5-HT1A部分作動性と5HT-2A阻害性を増強しD2部分作動を弱めたもの。統合失調症の治療などで日米欧で承認されている。

アルツハイマー病性激越の第3相は17年に2mg群が一生一敗となった。一本は主評価項目(CMAI総スコア)が偽薬比p<0.05と成功したが副次的評価項目のCGI-S(医師の重症度評価)はフェール、もう一本はCMAI総スコアがフェールもCGI-Sはp値が良好だった。

今回は345人を偽薬群、2mg群、そして新たに設定した3mg群に無作為化割付した。比較対象は試験薬2群合計と偽薬群のようで、主評価項目のCMAI総スコアはp=0.0026、副次的評価項目のCGI-Sはp=0.0055だった。

3mg群で1名が死亡したが、担当医は薬物関連ではないと評価した。

リンク: 両社のプレスリリース(和文)


ジャズ、多発性硬化症の痙攣予防試験がフェール
(2022年6月28日発表)

Jazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)は、JZP378(nabiximols)の最初の第3相多発性硬化症痙攣予防試験がフェールしたと発表した。欧州などで承認されている薬であり、米国でも他に二本、進行中なので、諦めるのはまだ早そうだ。

昨年子会社化したGW Pharmaceuticalsは、大麻の成分を抽出して医薬品として開発販売している。カンナビジオール(CBD)を活性成分とするEpidiolex(欧州名Epidyolex)は18年に米国で、19年にはEUでも、レノックス・ガストー症候群やドラベ症候群に伴うてんかんの治療薬として承認された。

nabiximolsはCBDだけでなく陶酔作用も持つテトラヒドロカンナビノール(THC)も含有する。2010年に英国で多発硬化症に伴う既存治療不応の中重度痙攣用薬Sativexとして承認され、現在では29ヶ国で用いられている。口腔粘膜スプレイ用製剤を一日一回で開始して最大12回まで滴定する。

今回のRELEASE MSS1試験は68人の成人患者を組入れて21日間治療し、LLMT-6(両足の膝屈筋、膝伸筋、足底屈筋の状態を修正Ashorthスケールで評価した平均値)の変化を偽薬群と比較した。データは未発表。

米国では同様なデザインだが190人を組入れたMSS5試験と、446人を組入れて第57日から84日の期間における癲癇頻度を比較するMSS3試験が進行しており、秋以降に結果が出そうだ。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認申請】


イプセン、FOP治療薬を承認申請
(2022年6月29日発表)

イプセンはpalovaroteneをFOP(進行性骨化性線維異形成症)における異所性骨化を抑制する経口剤としてFDAに再承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は12月29日。EUでも承認申請中。カナダでは今年1月に女性は8歳以上、男性は10歳以上のFOP用薬として承認された。

FOPは骨が軟部結合組織など本来とは異なった場所にできる。罹患率が100万人当たり1.36人という超希少疾患。同薬はレチノイン酸受容体ガンマ・アゴニストで、19年に買収したClementia Pharmaceuticalsが14年にロシュからライセンスしたもの。FOP試験では新規異所性骨化が成人でも小児でも自然歴より少なかった。

懸念材料は19年に14歳未満の患者の試験が部分停止となったこと。筋骨格的に未成熟な患者の27%で骨端線早期閉鎖が見られたため。カナダでは14歳未満の一部に使うことが認められたことを考えれば、それほど深刻な問題ではないのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース


ギリアド、カプシド阻害剤を米国で再承認申請
(2022年6月27日発表)

ギリアド・サイエンシズはlenacapavirをFDAに再承認申請したと発表した。昨年6月にHIV/AIDSのサルベージ治療薬として承認申請したが、バイアルのホウケイ酸塩ガラスが薬剤に反応して非可視性のガラス・パーティクルを生じる懸念が浮上したため、アルミノケイ酸塩ガラス製に切り替えた。しかし、FDAは臨床試験に用いられたバイアルとの比較可能性の立証が不十分として今年3月に審査終了を通知した。

EUでは6月にCHMPが肯定的意見をまとめており、米国でも早晩、承認されるのではないか。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


テビペネム ピボキシル臭化水素酸塩は承認されず
(2022年6月27日発表)

Spero Therapeutics(Nasdaq:SPRO)はSPR994(tebipenem pivoxil hydrobromide)を複雑尿路感染症(腎盂腎炎を含む)の治療薬としてFDAに承認申請し、優先審査を受けたが、審査完了通知を受領した。3月と5月にFDAがエビデンスに疑問を呈している旨のアップデートがあったため、サプライズではない。Speroはリストラを断行中。

Meiji Seikaファルマから欧米などの権利を取得して開発した、オラペネムの新規塩。第3相試験では複合奏効率(臨床的治癒かつ細菌学的駆除)が58.8%とertapenem群の61.6%を3.3%下回ったが、95%下限が閾値の-12.5%を上回ったため、非劣性認定された。

閾値は通常は-10%だが、COVID-19の影響で組入れが予定より減少したため、-12.5%に変更された。妥当なのか、私にはわからない。FDAはサブグループ分析などで非劣性が確立しなかったことなどを懸念しているようだ。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


Vivusのダイエット補助用合剤が小児にも承認
(2022年6月27日発表)

FDAはVivus社のQsymia(phentermine、topiramate)を12~17歳の小児肥満症に適応拡大した。年齢と性別で標準化したBMIが95パーセンタイル以上の、カロリー抑制食事療法と運動療法を受けている患者に用いる。223人を組入れて56週間投与した試験では、偽薬群のBMIが3.3%上昇したのに対して、低用量群(phentermine 7.5mgとtopiramate 46mg)は4.8%減、高用量群(各15mgと92mg)は7.1%減となった。

肥満症の短期治療薬と抗癲癇薬のコンビ薬で、前者は過剰な空腹感を抑え、後者は満腹感の欠如を補うことが期待されている。催奇性があり、また、小児における心血管安全性は確立していない。

12年7月に米国で成人肥満症に承認されたが、販売は不振。欧州は承認されなかった。Vivusは20年7月に連邦デラウェア地区破産裁判所にチャプター11の適用を申請、同年12月に債権者であったIEH Biopharmaの完全子会社となった。この会社の親会社は、コーポレート・レーダーとして株式市場を席巻したCarl Icahnが創立し取締役会長をしているIcahn Enterprisesである。

リンク: FDAのプレスリリース


ブレヤンジがLBCLの二次治療に承認
(2022年6月24日発表)

ブリストル マイヤーズ・スクイブは6月20日にEUでBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)をDLBCL(びまん性大細胞型リンパ腫)などの二次治療に適応拡大申請して受理されたと発表したが、その4日後、米国で承認された。承認通知書によると申請は昨年12月。日本は3月申請なので、結構区々だ。

初回治療に難治または12ヶ月以内に再発したHSCT(造血幹細胞移植)に適した患者を組入れてEFS(応答不十分、進行、または死亡をカウント、独立評価委員会判定)を標準療法と比較したTRANSFORM試験でハザードレシオが0.34、メジアン値は各10.1ヶ月と2.3ヶ月と、大きな差を示した。対照群は過半が治療を受けられなかった。完全反応率は各群66%と39%。

米国では、初回治療に難治/再発したHSCT不適患者に用いることも承認された。第2相PILOT試験で61人の完全反応率が54%だった。

Juno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)が開発したCD19標的CAR-T療法で、Junoを買収したセルジーンをBMSが買収した。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース


サノフィ、酵素補充療法二品がEUで承認
(2022年6月28日発表)

サノフィは、Nexviadyme(avalglucosidase alfa)とXenpozyme(olipudase alfa)がEUで承認されたと発表した。前者はポンペ病の酵素補充療法で、米国では昨年8月、日本でも9月に承認された。EUもCHMPが7月に肯定的意見をまとめたが、新規活性成分と見なされず希少疾患用薬指定も解除されたため、おそらくサノフィがへそを曲げたのだろう、着地が遅れた。遅発型と乳児発症型の両方に使うことができる。

リンク: 同社のプレスリリース

後者はA/B型またはB型のASMD(酸性スフィンゴミエリナーゼ欠乏症、別名ニーマン・ピック病)の中枢神経以外の症状を治療する酵素補充療法。年齢限定なし。臨床試験では肺拡散能や脾臓量の改善が見られた。日本で今年3月に承認、米国でも審査中。

リンク: 同社のプレスリリース

【医薬品の安全性】


デュベリシブ、死亡リスクが抗CD20抗体を上回る
(2022年6月30日発表)

FDAは、難治/再発慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫の3次治療薬として承認されているPI3Kデルタ阻害剤、Copiktra(duvelisib)について、安全性警告を発出した。承認の根拠となったDUO試験の長期フォローアップで、死亡リスクがofatumumab(ノバルティスの抗CD20抗体)群を上回る傾向があった。

Copiktraはこの試験でPFS(無進行生存期間、独立第三者評価)がメジアン13.3ヶ月とofatumumab群の9.9ヶ月を上回り、ハザードレシオが0.52となったことから、18年に米国で承認された。しかし、その時点で全生存期間の解析はフェールしていた。そのせいか、FDAは当試験の組入れ条件である一次治療歴ではなく、二次以上の治療歴を持つ患者にしか承認しなかった。

今回、5年追跡した最終解析でもハザードレシオ1.09(95%信頼区間0.79~1.51)、メジアン生存期間52.3ヶ月対63.3ヶ月と、優越性は確認されず数値上はむしろ悪かった。二次以上の治療歴を持つサブグループでも同様だった。信頼区間が1を跨いでいないので統計学を軽視する審査機関なら実薬と同程度だから問題ないと受け止めるかもしれないが、非劣性解析は優越性解析よりハードルが高く、通常は、点推定値が正しくないほうを向いていたらフェールする。

FDAによると、Copiktra群は深刻な有害事象やそれによる死亡、有害事象による用量調節が対照群より多く発生した。体の一部に過ぎない癌には有効だが、患者には抗CD20抗体のほうが良いことになる。ORRを奏効率、PFSを無増悪生存期間、と訳さないのは、一部の癌を除いて症状に基づいて判定されるわけではないので主観的な表現をすべきでないという意味もあるが、今回のようなケースのようにぬか喜びに終わることもあるからだ。患者が望むのは寿命を延ばすことであり、癌の縮小は手段に過ぎないので、ORRやPFSを必要以上に高く評価すべきではない。尤も、生存期間だって治験が成功してもメジアン値で2~3ヶ月しか延びないのが一般的なのだから、抗癌剤は裸の王様だ。

デュベリシブは日本でヤクルトが承認申請中。(後記:9月29日、ヤクルトは承認申請撤回願いを提出したと発表。)

リンク: FDAの安全性連絡





今週は以上です。

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