【ニュース・ヘッドライン】
- 中華抗PD-1抗体を再承認申請
- ロシュ、抗CD20xCD3抗体が米国でも申請受理
- 尿酸酸化酵素製剤のMTX併用が承認
- PRAC、クロルマジノンなどの髄膜腫リスク緩和策を発表
【承認申請】
中華抗PD-1抗体を再承認申請
(2022年7月6日発表)
Coherus BioSciences(Nasdaq:CHRS)は上海君実生物医薬(HKSE:1877)から抗PD-1抗体toripalimabの北米における権利を取得、昨年9月に米国で進行難治/転移性上咽頭癌の一次治療化学療法併用と単剤二次治療薬として承認申請したが、今年5月に審査完了通知を受領した。今回、再承認申請が受理され、審査期限が12月23日に設定されたことを発表した。
審査完了通知では品質問題と中国工場査察の遅れが指摘された模様。前者は対応を終えたが、後者は未だである様子だ。中国のロックダウンが緩和されたので、査察担当者の渡航もそのうち可能になるのだろう。
toripalimabは中国では上記に加えて悪性黒色腫や尿路上皮癌、食道扁平上皮腫などに承認され、欧米系の抗PD-1/PD-L1抗体の数分の1の価格で販売されている。米国でも承認されれば価格破壊型製品になるだろう。尤も、医療保険や医療機関は利ザヤの大きい高額製品を使い続けるかもしれないが。
リンク: Coherusのプレスリリース
ロシュ、抗CD20xCD3抗体が米国でも申請受理
(2022年7月6日発表)
ロシュはFDAがLunsumio(mosunetuzumab)の承認申請を受理したと発表した。優先審査を受け、審査期限は12月29日。予定適応は濾胞性リンパ腫の三次治療。EUでは6月に条件付き承認された。米国でも早晩承認と想像していたが思ったより遅かった。
B細胞のCD20と細胞傷害的T細胞のCD3に結合する二重特異性抗体で、テーラーメイドする必要のない、CAR-T療法の代替品となることが期待されている。承認申請の根拠となった臨床試験では、完全反応率60%(90人中54人)、客観的反応率80%、メジアン反応持続期間は22.8ヶ月だった。CAR-T療法はサイトカイン放出症候群など特徴的な有害事象がしばしば発生するが、mosunetuzumabはG3発生率が2.3%、G4は0.5%と、重篤重症例はあまり見られない。
リンク: ロシュのプレスリリース
【承認】
尿酸酸化酵素製剤のMTX併用が承認
(2022年7月8日発表)
Horizon Therapeutics(Nasdaq:HZNP)は、FDAが重度難治性痛風治療薬Krystexxa(pegloticase)の用法追加を承認したと発表した。2010年に承認された時はモノセラピーだけだったが、通常はMTX(methotrexate)併用、但しMTX不適の場合はモノセラピー、に変わった。
デューク大学が開発した遺伝子組換え型PEG化尿酸化酵素(ブタ)で、尿酸の腎排泄を促す。アナフィラキシー/注射箇所反応とG6PD欠乏症患者における溶血/メトヘモグロビン血症リスクが枠付警告されている。また、多くの患者で薬効や副作用に関連する抗薬物抗体が生じる。このため、オフレーベルでMTXを併用し免疫反応を抑制した症例が多くあるようだ。
今回の試験では、既存薬不応不耐患者にランイン期間中にMTX(15mg/週)を経口投与して忍容性を確認した上で、Krystexxa(8mg)を二週毎点滴静注する群と偽薬追加群に2対1割付して、奏効率(第6月に80%以上の検査時点で血清尿酸値が6mg/dL未満)を比較した。結果は、MTX併用群は71%、偽薬併用群は39%と大きな差があった。点滴反応発生率も各4%と31%で大きな差があった。Krystexxaの欠点をかなり補うことができた。
MTXの用量はリウマチ性関節炎を治療する時の標的用量と大差なく、副作用リスクを伴うと予想されるが、レーベルにはランイン期間中の有害事象が記されておらず、MTX追加の便益と危険が十分に開示されているとは言えない。尤も、難治性痛風を治療する医師はMTXの使用経験も豊富だろうから、大きな問題はないだろう。
ヤンセンが抗TNFアルファ抗体Remicade(infliximab)を初めからMTX併用で開発したことを考えれば、Krystexxa・MTX併用も12年前に承認されていても良かったはずだが、元々のライセンス・ホルダーであったSavientPharmaceuticalsには余裕がなかったのかもしれない。そのツケか、承認は取得したものの販売不振で3年後にチャプター11適用を申請。1.2億ドルで子会社化したプライベート・エクイティ系の企業を16年にHorizonが5.1億ドルで買収、販促を強化するとともに、今回の用法追加を実現した。
リンク: Horizon社のプレスリリース
【医薬品の安全性】
PRAC、クロルマジノンなどの髄膜腫リスク緩和策を発表
(2022年7月8日発表)
EMAのPRAC(ファーマコビジランス リスク評価委員会)は、生理障害やホルモン補充療法、避妊などに用いられているプロゲスチンのchlormadinoneとnomegestrolについて、用量および期間依存的な髄膜腫リスクの対応策をまとめた。CHMP(医薬品委員会)の追認を得た上でドクター・レターを発出する予定。
髄膜腫は通常は良性で腫瘍とは見なされないが、稀に脳の機能などに深刻な影響を与えることがある。両剤はフランスの疫学研究で懸念が浮上した(二箇所のサイトでフランス語を英語に翻訳してみたものの、意味がハッキリとしなかった)。
PRACの勧告は、まず、高量(chlormadinoneは5-10mg、nomegestrolは3.75–5mg)を用いる場合はできるだけ低量、短期間に留める。既往を含め髄膜腫は禁忌。治療中は髄膜腫の症状等を監視し、発症したら投与を中止する。髄膜腫の症状としては、視力の変化、難聴、耳鳴り、臭覚喪失、頭痛、記憶喪失、癲癇発作、手足の脱力が列記されている。
リンク: EMAのプレスリリース
今週は以上です。
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