【ニュース・ヘッドライン】
- COVID-19関連:
- ロナプリーブが暴露後予防にEUA
- コミナティの効果のオンセットとディケイ
- MMWR:ワクチン接種してもデルタ株には要警戒
- その他の領域:
- デュピクセントの第3相蕁麻疹試験が成功
- ロシュ、二重特異性抗体を網膜疾患に承認申請
- NHE3阻害剤は承認されず
- インサイトの抗PD-1抗体は承認されず
- sulopenemは承認されず
- BMS、オプジーボ単剤の肝細胞腫適応を返上
- ヌーカラが鼻ポリープに適応拡大
- ウプトラビの静注用製剤が承認
- キイトルーダ、TNBC切除術付随療法が今度は承認
- 2月に加速承認されたメルファラン系新薬に死亡リスク浮上
【COVID-19関連】
ロナプリーブが暴露後予防にEUA
(2021年7月30日発表)
FDAは、リジェネロン・ファーマシューティカルズのREGEN-COV(casirivimabとimdevimab、和名ロナプリーブ)をCOVID-19感染者の濃厚接触者や同施設入居者の暴露後予防に用いることをEUA(非常時使用認可)した。前者は1.8メートル以内に24時間累積で15分以上いた人、後者は高齢者施設や刑務所入所者などを指す。年齢12歳以上かつ体重40kg以上で、ワクチン接種を完了していない、あるいは免疫抑制剤使用などにより免疫が低下している人が適応。点滴または皮注、一回投与だが、継続的暴露が予想される人は4週毎投与も可。
この抗SARS-CoV-2カクテルは重症化リスクを持つ軽中度COVID-19感染症患者に発症後10日以内に点滴・皮注することがEUAされているが、少なくとも現時点では、入院・酸素投与が必要な患者に対する便益は示されていないと注記されている。また、投与方法は点滴が強力推奨で、皮注はやむを得ない場合に限定されているが、今回はなぜか限定されていない。
今回のほうが使いやすく、需要拡大に資するだろう。ワクチン接種未完了者などに限定されたのは意外だが、中和抗体補充療法は感染またはワクチン接種により自力で抗体を作れた人にはあまり効かなそうなので、止むを得ない。
臨床試験では、ベースライン時点でRT-PCRまたは血清陰性だった人では症候性感染症の発症を81%抑制、全被験者でも62%抑制した。
リンク: FDAのプレスリリース
コミナティの効果のオンセットとディケイ
(2021年月日発表)
インフルエンザ・ワクチンは効果が数ヶ月と短いが冬の病気なので年一回の接種で足りる。一方、COVID-19は通年流行するで、できれば1年、可能なら2年以上、効果が続いてほしい。残念なことに、COVID-19ワクチンの薬効確認試験の追跡期間は二回目接種の数週間後から2~3ヶ月間と、非現実的に短かったため、どの程度もつのか良く分からない。
BNT162b2(tozinameran、和名コミナティ)の継続追跡試験の論文草稿が査読前草稿レジストリーであるmedRxivで公表された。7月28日登録の草稿によると、16歳以上の44,165人と12~15歳の2,264人を最大6ヶ月間追跡したところ、ワクチン効率(COVID-19感染予防効果)は91%(95%信頼区間89.0-93.2)だった。二回目接種の7日後から2ヶ月後の前日までの期間は96.2%(同93.3-98.1)だったが、2ヶ月後から4ヶ月後の前日までの期間は90.1%(同86.6-92.9)、4ヶ月後以降は83.7%(74.7-89.9)と、漸減している。
このワクチンを早期大量導入したイスラエルの疫学研究でも6ヶ月過ぎた後の効果低減が指摘されているが、原因はワクチンなのか、感染力が強かったり抗体抵抗性変異を持っていたりする変異株の影響なのか、良く分からない。試みに今回のデータを使って、偽薬群の一万人当たり一日当りの感染者数を計算すると、二回目接種の7日後から2ヶ月後の前日までの期間は3人弱だが、2ヶ月後から4ヶ月後の前日までの期間は4.7人、4ヶ月後以降は3.9人と変動しており、もしかしたら、感染力の強いウイルスの出現が偽薬群以上にワクチン群の感染者数に影響したのかもしれない。従来の株ならウイルス量を検出限界未満に抑制できるが、増殖力が強い株はそこまで下がらないので、ウイルス量が偽薬群より少なくても陽性判定されてしまうようなことが起きても不思議はない。
勿論、観察値が真実の値と同じとは限らず、誤差は乗除計算で大きく拡大する。Number at riskを見ると4ヶ月以上追跡できた症例数はほぼ半減しており、追跡できなかった人たちの感染状況次第では結論が大きく変わってしまうかもしれないので注意が必要だ。Modernaなどのワクチンのデータも見てみたいものだ。
COVID-19の承認申請用試験は主目的を達成した後も一定期間、感染状況を追跡するが、承認され接種が始まった後も盲検を続けるのは偽薬群の被験者に不当な損失を与えかねないため、長くても半年で盲検解除することが認められた。4ヶ月以上追跡例が少ないのは、偽薬群の半分近くがワクチンを接種しドロップアウトしたことが原因かもしれない。増殖・感染力の強いデルタ株(B.1.617.2、インドで発見)の流行は上記の継続追跡データには反映されていないだろうし、今後の追跡データは質が落ちるだろうから、結局、疫学研究に頼らざるを得ない(次項参照)。
さて、BNT162b2の治験論文草稿からも明白なのは、一回目接種後10日程度経つまでは効果が弱いということだ。ワクチン効率は18%、しかし第11日以降は90%台に乗せる。一回接種しても油断せず、10日程度は自粛生活を続けたほうが良さそうだ。
BNT162b2 | 偽薬 | VE(95%CI) | |
---|---|---|---|
n | 23,040 | 23,037 | |
一回目接種後: | |||
第1~10日 | 41 | 50 | 18.2(-26.1、47.3) |
第11日~二回目接種前 | 5 | 60 | 91.7(79.6,97.4) |
二回目接種後: | |||
第1~8日 | 3 | 35 | 91.5(72.9,98.3) |
第8日~2ヶ月後の前 | 12 | 312 | 96.2(93.3、98.1) |
2ヶ月後~4ヶ月後の前 | 46 | 449 | 90.1(86.6、92.9) |
4ヶ月後以降 | 24 | 128 | 83.7(74.7、89.9) |
感染者数 | No. at risk | 観察期間(人年) | 一万人当たり 一日当り感染数 | |
---|---|---|---|---|
一回目接種後: | ||||
第1~10日 | 50 | 22,434 | 675 | 2.03 |
第11日~二回目接種前 | 60 | 22,369 | 656 | 2.51 |
二回目接種後: | ||||
第1~8日 | 35 | 22,001 | 422 | 2.27 |
第8日~2ヶ月後 | 312 | 22,001 | 2,884 | 2.96 |
2ヶ月後~4ヶ月後の前 | 449 | 20,344 | 2,593 | 4.74 |
4ヶ月後以降 | 128 | 11,802 | 895 | 3.92 |
リンク: C4591001 Clinical Trial Groupの論文草稿抄録(medRxiv)
MMWR:ワクチン接種してもデルタ株には要警戒
(2021年月日発表)
CDC(米国疾病予防管理センター)は7月27日にこれまでの勧奨を見直し、流行地域では室内の公衆エリアでマスクを着けるよう勧奨した。根拠となったのがマサチューセッツ州(ワクチン接種率が69%と高い)と共同で実施した疫学研究だ。MMWR(疫学週報)に掲載されるレポートが前倒し公開されたので概要を紹介する。
7月にBarnstable郡で開催されたの複数の大規模イベントに行った同州の患者469人をトレースしたところ、74%はワクチン接種完了者だった。入院患者で見ても、5人中4人は接種完了者だった(4人の年齢は20~70歳と区々、基礎疾患ありは二人)。感染者のうち死亡者はゼロ。
133人の検体のうち90%はデルタ株だった。RT-PCR Ct値は接種完了者(メジアン22.77、n=127)もそれ以外(21.54、n=84)も大差なかった(ウイルス量がそれほど変わらないことを意味し、ワクチンがウイルス抑制にそれほど寄与していない可能性や、感染時にほかの人に移す可能性が疑われる)。
ブレークスルー感染者の特徴は、まず、接種したワクチンの構成比は、BioNTech・ファイザーが46%、Modernaが38%、ヤンセンが16%となっている。因みに、マサチューセッツ州全体では各56%、38%、7%。接種完了の14日後から発症までのメジアン期間は86日(6-178日)。79%は兆候症状があり、多いのは咳、頭痛、のどの痛み、筋痛、発熱。
尚、男性の比率が高いが、当該イベントの参加者自体が多かったので、重視しなくてよいだろう。
リンク: CDCのプレスリリース
【新薬開発】
デュピクセントの第3相蕁麻疹試験が成功
(2021年7月29日発表)
リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とサノフィは、抗IL-4Rアルファ・サブユニット抗体のDupixent(dupilumab、和名デュピクセント)をアトピー性皮膚炎や喘息症などの治療薬として販売しているが、今度は中重度慢性特発性蕁麻疹の第3相試験成功を発表した。6歳以上で抗ヒスタミンによる治療に十分応答せず、バイオ薬(ノバルティスのXolair)未経験の138人に偽薬またはDupixentを24週間追加投与した試験で、FDAが望む主評価項目であるISS7(かゆみの尺度)は各群6.01pts(35%)と10.24pts(63%)低下、p<0.001だった。EMAが望む主評価項目のUAAS7(蕁麻疹活動性の尺度)も各群12.0pts(37%)と20.53pts(65%)低下、p<0.001。
治療時発現有害事象は各群59%と50%の被験者で発生、多いのは注射箇所反応で各群13%と11%だった(どちらも偽薬群より少ない)。
もう一本、Xolairに十分応答しないまたは不耐の患者を組入れた第3相が進行中で、来年上期に結果が出た後で適応拡大申請に向かうのではないか。
リンク: 両社のプレスリリース
【承認申請】
ロシュ、二重特異性抗体を網膜疾患に承認申請
(2021年7月29日発表)
ロシュはRG7716(faricimab)をnAMD(中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性)やDME(糖尿病黄斑浮腫)の治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。糖尿病性網膜症にも承認申請したが、標準審査のようだ。
血管新生に係るアンジオポイエチン-2とVEGFの両方を阻害する抗体で、日本やEUでも最初の二つの適応で承認審査中。VEGFあるいはVEGF受容体だけを阻害する抗体と比べて効果が高いわけではないが、硝子体注射の頻度が低く、臨床試験では1年経った段階で過半の患者で16週おきに減らすことができた。
現実の医療ではルーチンではなく検査して悪化の兆候が見られたら投与、というパターンも多いようだが、4か月までなら間が開いても大丈夫というある程度のエビデンスがあれば安心だろう。
リンク: ロシュのプレスリリース
【承認審査・委員会】
NHE3阻害剤は承認されず
(2021年7月29日発表)
Ardelyx(Nasdaq:ARDX)はNHE3(ナトリウム水素交換輸送体3)阻害剤tenapanorを先ず便秘型過敏性腸症候群の治療薬として開発、19年に米国で承認を取得した。次に透析期慢性腎疾患の高リン血症治療の第3相試験を二本成功させ、適応拡大申請したが、審査期間延長を経て、審査完了通知を受領した。FDAは治療効果が小さく臨床的便益が明確ではないことを指摘、追加試験の実施をアドバイスした。
enapanorは協和キリンが日本でこの用途の第3相試験を実施中。
今回は承認されなかった話が多い。
リンク: 同社のプレスリリース
インサイトの抗PD-1抗体は承認されず
(2021年7月23日発表)
インサイト(Nasdaq:INCY)は抗PD-1抗体のretifanlimabを白金レジメン歴を持つまたは不耐の局所進行性/転移性肛門管扁平上皮腫に米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。6月の腫瘍学薬諮問委員会で承認に賛成した委員が17人中4人のみだったので意外感はない。
抗PD-1/PD-L1抗体は先に承認された製品が多いので出遅れた会社はニッチを狙うことになる。上記適応ではKeytruda(pembrolizumab)が広く用いられているようだが、承認されている薬はない。だが、第2相試験のcORR(確認客観的反応率、独立中央評価)は14%とそれほど高くなく、この癌のリスクが比較的高いHIV患者に対する投与実績もそれほど多くなかった。一方、G3以上の治療関連有害事象発生率は11.7%だった。
ORRは特定の箇所の腫瘍のサイズが一定以上縮小するか否かを評価するが、これ位の事で奏効と呼ぶのは誇張である。患者にとって重要なのは、副作用による苦痛をできるだけ抑えながら延命することだ。副作用で死ぬ人もいるのだから、ネットで全生存期間がどれくらい延びるのかを明らかにしなければ患者のニーズに応えたことにはならない。幾つかの癌ではORRと延命またはそれに準じる効果の相関性が明らかだが、患者数の少ない癌では、10%でよいのか、30%以上必要なのか、確立していない。
また、Keytrudaの文献データはもう少し良い。比較できるかどうかは明らかではないが。
これらのことから、FDAは便益の挙証が不十分で加速承認に値しないと判断した。
retifanlimabは17年にMacroGenics(Nasdaq:MGNX)から世界開発販売権を取得した。
リンク: インサイトのプレスリリース
sulopenemは承認されず
(2021年7月26日発表)
Iterum Therapeutics(Nasdaq:ITRM)はsulopenem etzadroxilを成人女性の複雑尿路感染症治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。期中の経緯には違和感があり、FDAは諮問委員会を予定していたが延期。審査期限を前に、内容に欠陥があるため最終段階であるレーベルや市販後コミットメントの相談に進むことができない旨、通知した。審査の過程で何らかの問題点に気付いたものと推測される。
sulopenemはthiopenem系抗生剤。ファイザーがPF-3709270として開発、日本で点滴用製剤を1000人以上に投与した実績を持つ。15年にIterumがライセンス、複雑腹腔内感染症と複雑尿路感染症の第3相はフェールしたが、経口剤をprobenecidと併用した複雑尿路感染症試験の、キノロン非感受286人のサブグループ分析で奏効率が62.6%とciprofloxacin群の36.0%を有意に上回った。キノロン感受785人では66.8%対78.6%で非劣性解析がフェールしたが、同社によると、FDAは、事前相談で、結果を見てどちらかだけに申請することを認めた由である。
しかし、FDAは今回、対照薬を変えるなどしてもう一本実施することを推奨した。キノロン系に感受しない、またはそう疑われる患者に用いる予定だが、感受しそうな患者を組入れた試験ではciprofloxacinに対する非劣性解析がフェールしたことがボトルネックになっているのかもしれない。また、作用時間を伸ばすために痛風治療薬probenecidを併用するが、血中濃度が抗菌に最低限必要な水準を上回る時間は2.8時間から3.6時間に増加するだけ、AUCも28%増加するだけなので、危険に見合う便益があるかどうかを問題にしているのかもしれない(この薬は一日二回服用)。
リンク: 同社のプレスリリース
BMS、オプジーボ単剤の肝細胞腫適応を返上
(2021年7月23日発表)
ブリストル マイヤーズ スクイブは、Opdivo(nivolumab)をsorafenibによる治療歴を持つ肝細胞腫に用いる米国での適応を自主的に返上する決断をしたと発表した。第2相の反応率データに基づき17年に加速承認されたが、市販後薬効確認試験がフェールした。
尚、OpdivoはYervoy(ipilimumab)併用でsorafenibによる治療歴を持つ患者に使うことが20年に加速承認されている。反応率は33%と、Opdivo単剤投与試験の14%よりだいぶ高い。こちらの加速承認の市販後コミットメントは標準療法対照試験の結果を提出すること。期限は24年7月なのでOpdivo単剤より時間的に余裕がある。
切除不能肝細胞腫は未治療の患者にロシュのTecentriq(atezolizumab)とAvastin(bevacizumab)を併用することが日米欧で承認されている。MSDのKeytrudaはsorafenib歴を持つ患者に加速承認されており、市販後コミットメント試験はフェールしたが、p値自体は悪くなかった。アジアで実施された試験の結果がもうそろそろ判明するはずだ。
リンク: BMSのプレスリリース
【承認】
ウプトラビの静注用製剤が承認
(2021年7月30日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセンは、肺動脈工血症治療薬Uptravi(selexipag)の静注用製剤がFDAに承認されたと発表した。錠剤服用者が何らかの理由で服用できなくなった時に代用する。臨床試験では、初日は経口剤を一日二回、第2日は静注を一日二回、第3日は朝は静注、夕方は錠剤、第4~9日は錠剤を一日二回投与した。
リンク: ヤンセンのプレスリリース
ヌーカラが鼻ポリープに適応拡大
(2021年7月29日発表)
グラクソ・スミスクラインは、Nucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)を鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。18歳以上の点鼻コルチコステロイドに十分応答しない患者に追加投与する。第3相SYNAPSE試験で手術歴を持ち再手術の候補になっている患者に100mgを4週毎に52週間、皮注したところ、ポリープのサイズや鼻詰まりが偽薬比有意に改善した。再手術のリスクも抑制された(ハザードレシオ0.43)。
Nucalaは抗IL-5抗体で、好酸球性喘息症や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、好酸球増多症候群に承認されている。
リンク: 同社のプレスリリース
キイトルーダ、TNBC切除術付随療法が今度は承認
(2021年7月27日発表)
FDAはKeytruda(pembrolizumab)をトリプル・ネガティブ乳癌(TNBC)の切除術付随療法に用いる適応拡大を承認した。ステージII/IIIの早期乳癌だが高リスク因子を持つ患者の術前に化学療法と併用し、術後にも単剤投与する。KeyNote-522試験でEFS(手術、局所/遠隔転移、二次性原発癌、全死亡の複合評価項目)のハザードレシオが偽薬比0.63、p=0.00031だった。
MSDは術前補助療法によるpCR(病理学的完全反応)データに基づき前倒しでFDAに承認申請したが、アップデートされた群間差が中間解析段階より縮小したことや、延命効果が未検討であったため、3月に審査完了通知を受領していた。ダメモトで申請しても無駄のように感じたが、FDAによると今回は審査期限より約5ヶ月早く承認したとのことなので、ダメモトではなくツバ付け申請しておいたことが奏効したと言えるだろう。
尚、全生存期間はまだイベント数未達で有意差は出ていないが、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)での発表によると、ハザードレシオ0.72、95%信頼区間0.51-1.02と正しい方向を向いている。
KeytrudaはTNBCでは昨年11月にKeyNote-355試験の成績に基づきPD-L1陽性(CPS≧10)の切除不能/転移癌に化学療法二剤と併用することが加速承認され、今回、522試験の成功により本承認に切り替わった。尚、355試験はCPS≧10サブグループの全生存解析も成功したことが今回、発表された。
Keytruda群 | 偽薬群 | |
---|---|---|
n | 784 | 390 |
pCR達成率 | 63.0 | 55.6 |
EFS非達成率 | 16% | 24% |
ハザード比 | 0.63 | |
p値 | 0.00031 | |
アルファ | 0.0052 |
リンク: FDAのリリース
リンク: MSDのプレスリリース(TNBC承認)
リンク: 同(355試験)
【医薬品の安全性】
2月に加速承認されたメルファラン系新薬に死亡リスク浮上
(2021年7月28日発表)
FDAはOncopeptides(Nasdaq Stockholm:ONCO)のPepaxto(melphalan flufenamide)の市販後コミットメントであるOCEAN試験で、死亡リスクが対照群(BMS/セルジーンのPomalyst(pomalidomide)を使用)より高かったと発表した。会社側発表と概ね同じ内容。2月に加速承認された適応と一部重なっているので、早急に分析を終え対応を決めることが望まれる。
Pepaxtoはアルキル化剤のmelphalanにペプチドを結合して親油性を向上したもの。多発骨髄腫用薬で、4次治療歴を持ち3種類の代表的な多発骨髄用薬に抵抗性を示した患者に、dexamethasoneと併用する。加速承認の根拠となった試験ではORR(客観的反応率)が23.7%、メジアン反応持続期間は4.2ヶ月、G3/4有害事象は骨髄抑制、肺炎(発生率11%)、疲労、気道感染症、骨/四肢痛など。
第3相試験は2~4次治療歴を持つ患者をPepaxto群とPomalyst群に無作為化割付して両群ともdexamethasoneと併用投与し、PFS(無進行生存期間、独立評価)を比較した。同社の5月の発表によると、ハザードレシオは0.817で、同社によると、非劣性だった。
事態が急転したのは7月。一部のデータが変更されたため再び独立評価委員会が検討したところ、PFSのハザードレシオは0.792(95%信頼区間0.64-0.98)、p=0.0311と数値が改善した一方で、副次的評価項目である全生存期間のハザードレシオは1.104(同0.846-1.441)と死亡リスクが1.4倍である可能性が否定されず、今回のFDA発表によると、メジアン生存期間は19.7ヶ月対25.0ヶ月と5ヶ月も短かった。カプラン・マイヤー・カーブを見ると、15ヶ月経った辺りから差が広がっている。
FDAは同社に臨床試験の部分停止(新規組入れ中止)と、投与を続ける被験者からは新たなリスクを伝えて同意書を取り直すよう求めた。
意外なことに、この解析のカットオフは2月3日であることも今回、判明した。同社が成功発表した5月時点では死亡リスクが高まる懸念が判明していたのではないか、という疑いを禁じ得ない。
リンク: FDAの安全性情報
リンク: データ概要とカプラン・マイヤー・カーブ(pdfファイル)
今週は以上です。
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