2020年8月29日

第961回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19:ベクルリーのEUA適応範囲が拡大 
  • COVID-19:FDAが回復期血漿をEUA 
  • COVID-19:RNAワクチンはクリニックで長く保管できない 
  • COVID-19:アボットが抗原検査を5ドルで販売 
  • アリル炭化水素受容体モジュレータの第三相乾癬試験が成功 
  • ノバルティス、難治慢性骨髄性白血病薬の第三相が成功 
  • 第一三共から導入した新規タキサンの第三相が成功 
  • 3年前に承認されたIDH2阻害剤の第三相がフェール 
  • メルク、テプミトコを米国でも承認申請 
  • アッヴィ、リンヴォックを強直性脊椎炎に適応拡大申請 
  • カボメティクスとオプジーボの併用を腎細胞腫に承認申請 
  • CDK4/6阻害剤を白金薬誘発性骨髄抑制の予防薬として承認申請 
  • 代謝性アシドーシス治療薬の承認申請は審査完了に 
  • アンドロゲン受容体阻害剤がニキビ治療薬として承認 
  • FDA、カナグルの下肢切断警告を緩和 


【今週の話題】


COVID-19:ベクルリーのEUA適応範囲が拡大
(2020年8月28日発表)

FDAは、ギリアド・サイエンシズのVeklury(remdesivir、和名ベクルリー)の非常時使用を認可しているが、適応範囲をCOVID-19入院患者全般に広げた。これまでは低酸素飽和度かつまた酸素投与・呼吸補助が必要な重症患者に限定していた。

当初EUAの根拠となったACTT-1試験では軽中等症の患者でも第15日回復率が改善するトレンドが見られたが、サンプル数が少ないこともあって、有意差が見られなかった。その後、ギリアドが主導した中等症患者試験(GS-US-540-5774)の結果が判明。5日間投与した群の第11日症状改善オッズ比がSOC(標準療法)と比べて1.65、p=0.017となった。この二本が限定解除の根拠である。

奇妙なことに、この試験は10日コース群では有意差が出なかった。10日コースと言っても多くは完了前に退院したため実際は6日程度しか投与しなかった。5日投与が有効で6日投与は無効というのは釈然としない。

退院がこんなに早いならインフルエンザ治療薬と同様に罹患期間を比較すべきなのではないかと思うが、罹患期間の解析は5日コースも10日コースもSOCと大差なかった。この点もキツネに摘まれたような気分だ。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: ギリアドのプレスリリース
リンク: Spinnerらの5774試験論文(JAMA)

COVID-19:FDAが回復期血漿をEUA
(2020年8月23日発表)

FDAはCOVID-19回復期血漿(CCP)をCOVID-19入院患者の治療に用いることをEUA(非常時使用認可)した。つい先日、FDA高官がストップをかけたと観測報道があったが、結局、国民医療より大統領選のほうが重要と判断したのだろう。下記のプレスリリースにも大統領の名前が記されている。尚、承認申請者はHHS(保健福祉省)の次官補である。

ウイルス感染から回復しつつある患者の血漿は、当該ウイルスを制することのできる抗体が含まれているはずなので、別の患者の治療に有効である可能性がある。これまでに、SARSやMERS、エボラウイルス感染症など深刻な難病の治療に用いられたことがある。SARS-CoV-2についてもFDAのExpanded Access Program(EAP)を通じて7万例以上の投与実績があるようだ。

COVID-19治療薬としてEUAを受けているのはギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のVeklury(remdesivir)に次ぎ2品目だが、Vekluryが無作為化割付偽薬対照二重盲検試験のエビデンスを持っているのに対して、CCPのエビデンスはよくデザイン/実行されたとは言いがたい小規模な臨床試験と、無作為化割付対照試験ではないEAPのデータだけである。EUAは正式な承認ではないのでエビデンスが万全である必要はないのだが、潜在的に多くの国民が感染する可能性があるので、万が一、効果がなく副作用だけをもたらす治療を認めてしまった場合、大きな被害を与えかねない。

回復期血漿の主な有害事象はアレルギー反応や、輸血関連の循環過負荷、肺障害、感染症など。心機能低下や心不全のある患者は輸血量を減らしたり緩徐化する必要がある。

用量は初回は200mLの投与を検討すべきとしているが、推奨しているわけではなく、その後の投与は医師が患者の反応を見ながら決定する・・・丸投げである。

回復期血漿の問題点は、抗体価の個人差が大きく、同じ人でも経時的に低下するので、ユニットごとのムラが大きい可能性があることだ。EAPデータの分析でも高抗体価CCPを投与したサブグループと低抗体価CCPサブグループでは死亡率に有意な差があった。もし低抗体価CCPが偽薬並みの効果しかなかったとしても、偽薬より良い可能性が示唆されたことになる。

しかし、FDAは抗体価による足切りを見送った。Ortho VITROS SARS-CoV-2 IgGテストで閾値を下回った場合、レーベルに低力価と明記する必要があるが、EUAの対象であることに変わりはなく、使うかどうかは医師に委ねられる。高力価ユニットが入手できない事態を想定したのかもしれないが、上記分析では低抗体価ユニットの有効性は確認されていないのだから、言っていることがちぐはぐだ。

COVID-19のような未知の脅威に正しい対応を続けることは極めて困難だ。政治家や学者の意見も人により異なっても不思議はない。だが、今回残念なのは、様々な国で政治家のメディカル・リテラシーの低さが目立つことだ。日本でもポビドン・ヨードの発表はSTAP細胞を思い出した。

米国の場合、幸いなのは、第一に、トランプ大統領のサイエンティフィック・リテラシーの低さは就任前から周知であり、強力な支持者以外は信用していないこと。第二に、官公庁長官のような要職を追われるリスクを覚悟して公然と異議を唱える、骨のある科学者系高官が複数いることだ。

COVID-19治療薬として最初にEUAを受けたのはchloroquine/hydroxychloroquineだ。トランプ大統領が後押ししていたにも拘わらず抵抗した当時のBARDA(生物医学先端研究開発局)長官は別の組織に配転になった。最近では、大統領選前のワクチン実用化に慎重なワクチン開発のヘッドが更迭されるのではないかとの憶測報道も出ている。今回も、FDA長官がCCPを絶賛するのに反対した広報担当者と、データを言い間違えたことを謝罪すべきと進言した広報コンサルタントが、理由は不明だが、解職・契約打ち切りにあった。残念なことだが、国民にとっては、Raise the Flag、私たちの本当の援軍は誰なのか、旗幟が明らかになるメリットもある。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Clinical Memorandum(作成者・宛先は黒塗り)
リンク: 医療従事者向けファクト・シート
リンク: EUA申請書類

COVID-19:RNAワクチンはクリニックで長く保管できない
(2020年8月26日発表)

米国のACIP(予防接種実施諮問委員会)は8月26日の会合でCOVID-19ワクチンの開発状況や接種優先順位などについて討議した。Moderna(Nasdaq:MRNA)とファイザーも夫々のRNAワクチンについてプレゼンを行った。ACIPのウェブサイトにはプレゼン資料がまだアップされていないので確認できないが、極低温で保管する必要があるようだ。

Endpoints Newsによると、ModernaのmRNA-1273(スパイク蛋白の融合前構造を発現するRNAのリピッド・ナノパーティクル製剤)は、備蓄や輸送時には零下20℃、医療施設では通常の冷蔵庫で1週間保管できる。ファイザーがBioNTechからライセンスしたBNT162(スパイク蛋白を発現するヌクレオシド修飾RNAのリピッド・ナノパーティクル製剤)は、長期保管は零下70℃、クリニックの典型的な冷蔵庫では1~2日内に使う必要があるようだ。

なぜ違うのか、分からないが、BNT162は小規模なクリニックや米国でよく見られる薬局で接種するのは難しそうだ。mRNA-1273も設備の有無や接種患者数などによっては対応できないのではないか。インフルエンザワクチンの効果は数ヶ月しか持たないが大流行は冬だけなので年一回、接種すればよい。もしCOVID-19ワクチンも半年未満しか持たなかったら、年二回、大病院なり公共施設で集団接種を行わざるを得なくなるかもしれない。

次回のACIPは10月22日に開催予定とのこと。ファイザーは第三相試験の結果が良好なら10月にもFDAに承認申請する予定なので、もしかしたら、ACIPでデータが公表されるかもしれない。FDAは抗体価のようなサロゲートマーカーに基づく承認には否定的だが、統計的に有意で臨床的に意味があるワクチン効率(感染者数の減少)が確立すれば、承認審査が完了しなくても予備的分析に基づいてEUA(非常時使用認可)を出す可能性がある。大統領選に間に合うかどうかは不明だが、年内の可能性はありそうだ。

実用化が近づくにつれて今回のような実務面の課題が表面化していきそうだ。

リンク: Endpoints Newsの報道

COVID-19:アボットが抗原検査を5ドルで販売
(2020年8月26日発表)

アボットは、 BinaxNOW COVID-19 Ag CardがFDAのEUA(非常時使用認可)を取得したと発表した。クレジットカード型の抗体検査で、鼻咽頭ぬぐい液を注入して15分後にピンク/バイオレットの判定線の有無をチェックする。クリニックでの迅速検査に適している。無償のスマホ用アプリがあり、検査結果はアプリにもメールされる。陰性の場合、一定期間、アプリを陰性証明に使うことができる。

スピードは珍しくないが、驚くべきは価格だ。カードは5ドル、他の検査機器や試薬は不要なので検査料金総額はPCR検査の数百ドルよりかなり安価になるのではないか。日本でもデンカ/大塚製薬がクイックナビ-COVID19 Agを販売しているが、希望価格は10回分が6万円となっている。

精度はどうか?検査は発症後7日以内に行う。RT-PCRで陽性判定の35例については感度97.1%(95%下限85.1%)、陰性判定67例では特異度98.5%(95%下限92.0%)だった。

アボットは10月以降、月5000万テストを出荷する計画。早速、米HHS(保険福祉省)とDOD(国防省)が1億5000万テストを7.6億ドルで発注した(大口割引はないのだろう)。学校などでの利用を想定しているようだ。

リンク: アボットのプレスリリース
リンク: BinaxNOW COVID-19 Ag CardのIFU(FDAのEUA情報サイト)
リンク: HHSのプレスリリース(8/27付)


【新薬開発】


アリル炭化水素受容体モジュレータの第三相乾癬試験が成功
(2020年8月26日発表)

Dermavant SciencesはDMVT-505(tapinarof)の第三相尋常性乾癬試験が二本とも成功したと発表した。21年に承認申請に向かう予定。同社はRoivant Sciencesのグループ会社で大日本住友製薬が株式取得オプションを保有している。また、tapinarofは日本ではJT・鳥居薬品が開発商業化権を持っている。

中国のWelichem Biotechが創製したアリル炭化水素受容体(AhR)モジュレータで、在来療法であるコールタールによる治療にヒントを得たもの。表皮細胞の分化を促進し、皮膚バリアに係る遺伝子の発現も増加する。09年にグラクソ・スミスクラインの子会社となったStiefelが12年に中国周辺以外の地域での開発商業化権を取得、18年にGSKがRoivantに権利譲渡した。

第三相試験では1%局所クリーム製剤を一日一回塗布して12週間の効果や安全性を偽薬クリームと比較した。主評価項目のPSG反応率(PSGスコアが0または1に改善し、且つベースライン比2段階以上改善)が一本では35.4%(偽薬群は6.0%)、もう一本は40.2%(同6.3%)となった。副次的評価項目のPASI75達成率も各36.1%(同10.2%)と47.6%(同6.9%)。何れもp値は0.0001を下回った。

主な有害事象は毛包炎、上咽頭炎、接触性皮膚炎など。

リンク: 同社のプレスリリース

ノバルティス、難治慢性骨髄性白血病薬の第三相が成功
(2020年8月26日発表)

ノバルティスは、ABL001(asciminib)の第三相フィラデルフィア染色体陽性難治慢性骨髄性白血病試験が成功したと発表した。2種類以上のチロシン・キナーゼ阻害剤による治療歴を持ち最終治療に不応不耐の慢性期患者を組入れて、24週MMR(分子遺伝学的大奏効率)を検討したところ、対照実薬のbosutinibを有意に上回った。データは学会発表予定。承認申請に向けて当局と相談する考え。

ABL001は同社が先鞭をつけたBCR-ABL阻害剤の一種だが、ATPポケットではなくABLミリストイル・ポケットに結合するアロステリック阻害剤。既存のチロシン・キナーゼ阻害剤に耐性変異を持つ腫瘍にも効果が期待されている。

リンク: 同社のプレスリリース

第一三共から導入した新規タキサンの第三相が成功
(2020年8月24日発表)

米国カリフォルニア州のOdonate Therapeutics(Nasdaq:ODT)は、tesetaxelの第三相転移乳癌試験が成功したと発表した。21年央に米国で承認申請する考え。

第一製薬由来のタキサン誘導体で、経口投与可能、半減期が180~200時間と著しく長く、P糖タンパクによる細胞外排出を受けにくいという特徴を持つ。好中球減少症によりクリニカル・ホールドとなり、08年にGenta社に導出したが数ヶ月で解除、改めて13年にOdonateに導出した。

今回の第三相は、her2陰性、ホルモン受容体陽性の転移乳癌で、タキサン(ネオアジュバントを含む)、そして、適応なら、内分泌療法薬とCDK4/6阻害剤による治療歴を持つ患者685人をcapecitabine単剤群とtesetaxel併用群に無作為化割付したオープンレーベル試験。併用群はcapecitabineの一日用量を2500mg/m2ではなく1650mg/m2に軽減した。

主評価項目のPFS(無進行生存期間、独立放射線学的評価委員会が判定)のメジアン値は各群6.9ヶ月と9.8ヶ月、ハザードレシオは0.716、p=0.003だった。全生存期間の解析は未成熟で、22年に判明する見込み。

G3以上の治療時発現有害事象は熱性好中球減少症などの骨髄抑制・その合併症、下痢、低カリウム血症、疲労、神経症などが増加。有害事象による治験離脱は各群12%と23%だった。

リンク: Odonateのプレスリリース

3年前に承認されたIDH2阻害剤の第三相がフェール
(2020年8月25日発表)

BMSは、Idhifa(enasidenib)の第三相IDH2変異陽性難治再発AML(急性骨髄性白血病)試験がフェールしたと発表した。承認されている用途とオーバーラップしているが、加速承認ではないので、FDAが自主返上を要請するかどうか、不透明だ。

Idhifaは19年に買収したセルジーンがAgios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)からライセンスしたIDH2(イソクエン酸脱水素酵素2)阻害剤。第二相試験の完全寛解率に基づき17年にIDH2変異陽性難治再発AMLに本承認された。欧州でも承認申請されたが、対照試験の裏付けがないことがネックとなり、19年12月に申請撤回となった。

今回のIDHENTIFY試験は60歳以上で2~3治療歴または難治の患者を組入れて全生存期間を従来療法(最良支持療法のみ、azacitidine、低量cytarabine、中量cytarabineの中から医師が選択)と比較した。データは未発表。

高齢AML試験の対照群は個々の患者の忍容性などを踏まえて医師が薬を選択できるようになっていることが多いが、対照薬ごとのサブグループ分析が区々な結果になることが珍しくない。症例数が小さかったり患者背景に偏りがあったりするので明確な結論は出せないが、釈然としないものが残りがちだ。一方、IDHENTIFYの組入れは300人規模なので、サブグループ分析の説得力もある程度はあるだろう。もし最良支持療法のみの症例と比べても全生存期間が同程度であった場合、効果に疑念が生じる。詳細発表を待ちたい。

リンク: BMSのプレスリリース


【承認申請】


メルク、テプミトコを米国でも承認申請
(2020年8月25日発表)

ドイツのメルクは、Tepmetko(tepotinib、和名テプミトコ)を米国で承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受ける。審査期限は不明だが、Real-Time Oncology Reviewの対象なので、年内の承認もあり得るだろう。

c-MET阻害剤で、MET遺伝子にエクソン14がスキップされるような改変のある転移性非小細胞性肺癌に用いる。第二相試験ではORR(客観的反応率、独立評価委員会判定)が46%、メジアン反応持続期間は11.1ヶ月だった。変異はリキッドバイオプシー且つ又組織バイオプシーで判定したが、ORRは前者は48%、後者は50%と大差なかった。G3以上の治療関連有害事象の発現率は28%(うち末梢浮腫7%)、有害事象による永続的離脱は11%だった。

METエクソン14スキッピングは非小細胞性肺癌の3-5%で見られる模様。日本では今年3月に承認されている。類薬ではノバルティスのTabrecta(capmatinib、和名タブレクタ)が米国では今年5月、日本では8月に承認されている。

リンク: メルクのプレスリリース

アッヴィ、リンヴォックを強直性脊椎炎に適応拡大申請
(2020年8月25日発表)

アッヴィは、Rinvoq(upadacitinib、リンヴォック)を既存療法に十分反応しない活性期強直性脊椎炎の治療に用いる適応拡大をFDAに申請した。EUでも審査中とのこと。第2/3相試験で第14週のASAS(Assessment of SpondyloArthritis International Society)40達成率が52%となり、偽薬群の26%を有意に上回った(p<0.001)。

RinvoqはJAK1阻害剤。類薬と比べて副作用リスクが若干小さい。

リンク: アッヴィのプレスリリース

カボメティクスとオプジーボの併用を腎細胞腫に承認申請
(2020年8月24日発表)

Exelixis(Nasdaq: EXEL)は、VEGFR阻害剤Cabometyx(cabozantinib、和名カボメティクス)を抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と併用で腎細胞腫の治療に充てる用法追加申請をFDAに行った。CheckMate-9ER試験に基づくもので、高リスク進行/転移腎細胞腫の一次治療としての効果をSutent(sunitinib)と比較したところ、主評価項目のPFS(無進行生存期間)も、副次的評価項目である全生存期間の中間解析も、有意に上回った。データは9月19~21日に開催されるESMO(欧州臨床腫瘍学会)のバーチャル・ミーティングで発表される予定。

CabometyxはVEGF受容体阻害剤。腎細胞腫の二次治療などで承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース

CDK4/6阻害剤を白金薬誘発性骨髄抑制の予防薬として承認申請
(2020年8月17日発表)

G1 Therapeutics(Nasdaq:GTHX)は、G1T28(trilaciclib)を米国で承認申請し、受理された。優先審査を受け、審査期限は21年2月15日。現時点では諮問委員会を招集する予定はないようだ。

G1T28は細胞周期進行に係るサイクリン依存性キナーゼ(CDK)4/6の阻害薬。類薬はホルモン陽性乳癌の内分泌療法のブースターとして承認されているが、白金薬の副作用リスクを緩和する薬として開発されている点が独自。今回の申請は、小細胞性肺癌で白金薬による治療を受ける患者の好中球減少症リスクを削減する適応・効能を求めるもの。第二相試験でG4好中球減少症が有意に減少した。ブレークスルー・セラピー指定されている。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認審査・委員会】


代謝性アシドーシス治療薬の承認申請は審査完了に
(2020年8月24日発表)

サン・フランシスコの新興医薬品開発会社、Tricida(Nasdaq:TCDA)はTRC101(veverimer)を代謝性アシドーシスの治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。血清重炭酸という代理マーカーを主評価項目とする第三相試験に基づいて加速承認を求めたが、効果の多寡と持続性、データの米国患者への適応可能性、そして、代理マーカーに基づいて臨床的便益を十分に予測することができるかが論点となった模様。追加臨床試験は必ずしも必然ではない模様。同社はFDAと会合を持って今後の方針を決定する考え。

TRC101は非吸収性経口ポリマー。消化管の塩酸に結合して糞便と共に排出される。7月に、承認申請に欠陥があるためレーベルや市販後要求の検討に進めない旨の通知を受けたと発表済みなので、承認されなくてもサプライズではない。

リンク: 同社のプレスリリース


【承認】


アンドロゲン受容体阻害剤がニキビ治療薬として承認
(2020年8月27日発表)

イタリアの新興皮膚病薬開発会社、Cassiopea(SIX:SKIN)は、Winlevi(clascoterone)クリームが12歳以上の尋常性ざ瘡治療薬としてFDAに承認されたと発表した。皮脂腺や毛包のアンドロゲン受容体をジヒドロテストステロンと競合的に結合・阻害する。新規作用機序の尋常性ざ瘡治療薬が承認されたのはほぼ40年ぶりとのこと。

リンク: 同社のプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、カナグルの下肢切断警告を緩和
(2020年8月26日発表)

FDAはInvokana(canagliflozin)及びcanagliflozin配合剤の下肢切断リスクに関する警告を枠付警告から通常の警告・事前注意に緩和した。心血管アウトカム試験のCANVAS試験でリスクが倍増したため17年にFDAが枠付警告、EUもリスクを通達したが、他のアウトカム試験ではそこまで増えず、兆候に注意し早期発見・対処すればリスクを抑制できる可能性も示唆された。また、これらのアウトカム試験を通じて二型糖尿病患者の心筋梗塞や心不全や糖尿病性腎症のリスクを抑制できることが明らかになった。危険と便益を見直した結果、警告緩和に踏み切った。

Invokanaは田辺製薬が創製、欧米などでの権利をジョンソン・エンド・ジョンソンなどに導出した二型糖尿病薬。尿に移行したグルコースを血液に移送するSGLT2を阻害する。性器感染症リスクなどが懸念され発売後の普及はスローだったが、心不全や腎症のアウトカム試験が成功、評価を高めた。しかし、Invokanaは、下肢切断リスクが高まる懸念から売上が伸び悩んでいた。

心血管アウトカム試験は費用や年数がかかるため、検出力不足によるフェールを回避するため、治療効果が前提より多少小さくても有意差が出るよう、オーバーパワーにすることが多い。必然的に、副作用面でノイズを検出してしまうリスクも高まる。勿論、ノイズではないかもしれないので、糖尿病薬のように数千万人、数億人が服用する薬は、感度が高すぎるくらいの試験のほうが望ましい。

リンク: FDAの安全性通知






今週は以上です。

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