【ニュース・ヘッドライン】
- アストラゼネカ、MEDI-548の二本目のSLE試験は成功
- MDCO、PCSK9のsiRNAを承認申請へ
- トルツがaxSpAに適応拡大
- 協和キリン、ノウリアストが米国でも承認
- BMS、欧州でエムプリシティの用法追加
- FDA、一部の抗HCV薬の肝障害副作用症例を通知
【新薬開発】
アストラゼネカ、MEDI-548の二本目のSLE試験は成功
(2019年8月29日発表)
アストラゼネカは、MEDI-546(anifrolumab)の第三相SLE(全身性エリテマトーデス)試験が成功したと発表した。MEDI-546はタイプ1インターフェロン・サブユニット1を標的とする完全ヒト化抗体。標準療法を受けている中重度患者に300mgを4週毎点滴静注したところ、疾病活動評価スコア(BICLA)が偽薬群より統計学的に有意な、そして臨床的にも意味のある、改善を示した。
昨年開票した一本目の試験は150mgと300mgをテストしたが、主評価項目であるSRI4(SLEレスポンダー・インデックス4)がフェールした。事前に設定されたBICLAに基づく解析は良好であった模様で、今回の二本目の試験の主評価項目はBICLAに変更された。一本目で浮上した仮説を二本目が検証成功したことになる。
SLEの第三相はなかなか成功せず、適切な主評価項目を模索するのは珍しいことではない。BICLAの妥当性に問題がなければ、二本目の試験を薬効のエビデンスとして、一本目は支持的データとして、承認申請することが認められるのではないか。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
MDCO、PCSK9のsiRNAを承認申請へ
(2019年8月26日発表)
メディスンズ・カンパニー(Nasdaq:MDCO)は、inclisiranの第三相LDL-Cコレステロール治療試験が成功したと発表した。データは9月2日にESC(欧州心臓学会)で発表される予定。今年第4四半期に米国で、来年第1四半期には欧州でも、承認申請する予定。
アルナイラム・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALNY)からライセンスしたPCSK9のmRNAを切断するsiRNA薬で、LDL-C引き下げ効果は抗PCSK9抗体のRepatha(evolocumab、和名レパーサ)やPraluent(alirocumab、和名プラルエント)と同程度と推測される。
同じGalNAc結合技術を用いたALN-AS1(givosiran)は急性肝性ポルフィリン症の治療薬として欧米で承認審査中だが、第三相試験で肝機能検査値の3倍増が14%の患者で発生した。Hyの法則該当例はなかったとのことだが、症例数が少なく表面化していないだけかもしれない。inclisiranはマスマーケットを狙う薬なので臨床試験の規模も大きく、リスクがあるなら表面化するだろう。学会発表が注目される。
リンク: MDCOのプレスリリース
【承認】
トルツがaxSpAに適応拡大
(2019年8月26日発表)
イーライリリーは、FDAがTaltz(ixekizumab、和名トルツ)をr-axSpA(X線陽性体軸性脊椎関節炎)の治療に用いることを承認したと発表した。単剤、または既存薬に追加投与する。
Taltzは抗IL-17A抗体。乾癬や乾癬性関節炎の治療に承認されている。臨床試験ではX線陰性の体軸性脊椎関節炎にも効果があったはずだが、少なくとも今回の承認はX線所見のあるタイプに限定された。
リンク: イーライリリーのプレスリリース
協和キリン、ノウリアストが米国でも承認
(2019年8月27日発表)
FDAは、協和キリンのNourianz(istradefylline、和名ノウリアスト)をパーキンソン病治療薬として承認した。レボドパ/カルビドパの効果が持続しなくなり症状が悪化する、オフ・エピソードの治療に用いる。FDAのプレスリリースによると、4本の試験全てでオフタイムが偽薬比有意に減少した。有害事象はジスキネジア(レボドパが効きすぎると発生する運動障害)、めまい、便秘、悪心、幻覚、不眠など。
アデノシンA2A受容体拮抗剤で、ドパミン感受性を改善する。日本では13年に承認。米国は07年に承認申請されたが、有効性やラット試験における用量依存的な鉱質沈着の検討が不十分として、承認されなかった。有効性に関しては第三相試験三本のうち一本しか主評価項目で有意差が出なかったことがネックになったと推測される。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 協和キリンのプレスリリース(和文、pdfファイル)
BMS、欧州でエムプリシティの用法追加
(2019年8月27日発表)
BMSは、抗SLAMF7抗体Empliciti(elotuzumab、和名エムプリシティ)の用法追加がEUに承認されたと発表した。多発骨髄腫でlenalidomideとプロテアソーム阻害剤による治療歴を持ち最終治療抵抗性の患者の三次治療として、pomalidomide及び低量dexamethasoneを併用するもので、米国は昨年11月に承認、日本でも用量用法追加申請中。
第二相試験は、PFS(無進行生存期間、担当医評価)がメジアン10.25ヶ月とpomalidomideと低量dexamethasoneだけを用いた対照群の4.67ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.54、p=0.0078だった。
lenalidomideとpomalidomideは多発骨髄腫用薬の大手であるセルジーンの製品。BMSはセルジーンを買収する予定なので、販売シナジーが生まれる。
リンク: BMSのプレスリリース
【医薬品の安全性】
FDA、一部の抗HCV薬の肝障害副作用症例を通知
(2019年8月28日発表)
FDAは、慢性C型肝炎治療薬として承認されている三薬について、中重度肝障害または高リスクの患者に投与して肝機能悪化・肝不全を来した症例が報告されていることに注意を促した。
この三剤は、アッヴィのMavyret(glecaprevirとpibrentasvirの合剤、和名マヴィレット)、MSDのZepatier(elbasvir、和名エレルサ、とgrazoprevir、和名グラジナ、の合剤)、ギリアドのVosevi(sofosbuvir、velpatasvir、voxilaprevirの合剤、voxilaprevirは本邦未承認)。何れも適応が肝硬変を合併していない、または軽度肝障害の患者に限定されているか、中重度肝障害が禁忌となっている。
肝機能悪化・肝不全に至った症例は、19年1月までに63例報告された(各剤46例、14例、3例)。2018年に米国で調剤を受けた患者数は72000人(各剤の構成比は89%、6%、5%)とのことなので発生率は決して高くない。
FDAは、肝細胞腫やアルコール飲酒過多などリスク因子を持つ患者についても治療前、治療中のチェックを強化するよう促した。
リンク: FDAのプレスリリース
今週は以上です。
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