2019年6月2日

2019年6月1日号

【ニュース・ヘッドライン】

  • ASCO:非小細胞性肺癌一次治療の5年生存率23%! 
  • ASCO:Keytrudaの胃癌試験は失望的な結果に 
  • ASCO:ノバルティス、Kisqaliの延命効果を確認 
  • ASCO:JNJ、アーリーダのmHSPCデータを発表 
  • バーテックス、嚢胞性線維症のトリプルコンビ薬を承認申請へ 
  • バイオマリン、A型血友病遺伝子治療試験の途中経過を公表 
  • Epizyme、類上皮肉腫用薬を承認申請 
  • アマリン、EPA製剤の心血管疾患予防効果を一変申請 
  • Santhera、イデベノンを再びDMD治療薬として承認申請 
  • CHMPがウィルソン病治療薬などに肯定的意見 
  • アラガンのVraylarが適応拡大 
  • 濾胞性リンパ腫の無化学療法レジメンが承認 


【新薬開発】


ASCO:非小細胞性肺癌一次治療の5年生存率23%!
(2019年6月1日発表)

今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)もMSDのKeytruda(pembrolizumab)が話題を集めそうだ。後期第一相試験で非小細胞性肺癌にモノセラピーを施行した患者の5年生存率データが発表された。一次治療101例では23.2%、再発治療(449例)では15.5%だった。PD-L1発現と関連性がありそうで、高発現(TPS≧50%)症例では一次治療27例中29.6%、再発治療138例中25.0%、TPSが1%-49%では各52例中15.7%と90例中12.6%に低下、1%未満(再発治療90例のみ)では3.5%となっている。

競合薬のOpdivo(nivolumab)の試験がフェールしたた、め非小細胞性肺癌の一次治療は、EGFR活性化変異など分子標的薬に適したタイプなどを除いて、PD-L1高発現にはKeytrudaのモノセラピー、中低度発現には化学療法併用を施行するのが主流のようだ。早期乳癌と異なり肺癌の5年生存率には馴染みがないので一次治療のメジアン生存期間を見ると、22ヶ月と過去の抗癌剤の試験で見慣れた数値を9ヶ月前後上回っている。高発現は35%だ。勿論、満足できる水準ではなく、たった一歩前進しただけだが、更なる飛躍を期待させる大きな一歩だ。

リンク: MSDのプレスリリース

ASCO:Keytrudaの胃癌試験は失望的な結果に
(2019年6月1日発表)

KeytrudaはKEYNOTE-062試験の結果も記者向け説明会で公表された。学会発表は6月2日(現地時間)。進行胃・胃食道接合部腺腫でPD-L1陽性(CPS≧1)、her2陰性の患者763人を組入れて、モノセラピー群や化学療法併用群の全生存期間を化学療法群と比較した第三相試験だ。

モノセラピー群のメジアン生存期間は10.6ヶ月、対照群は11.1ヶ月で、2年生存率は各27%と19%だった。ハザードレシオは0.91、99.2%上限は1.18で閾値の1.2を下回ったため、非劣性解析が成功した。

事前に特定されたCPS≧10のサブグループの解析では、ハザードレシオ0.69、95%上限0.97と良さそうな数値が出たが、解析計画上、正式な解析とは見なされない由。主評価項目が大変多いので、この解析は上位解析が成功した時だけ有効になるシーケンシャル評価項目なのかもしれない。

併用群のメジアン生存期間は12.5ヶ月で対照群の11.1ヶ月と大差なく、ハザードレシオは0.85、95%上限は1.03、p=0.046となり、優越性解析がフェールした。CPS≧10のサブグループ解析も、もう一つの主評価項目であるPFS解析も、有意水準に達しなかった。

結果論で言えば、主評価項目を絞り込んでアルファを十分に留保していれば、統計的に有意という結論が出たかもしれないし、少なくとも全く効かないという感じはしない。しかし、必要最低限のハードルを越えたかと聞かれれば首を傾げざるを得ない。残念な結果だ。

Keytrudaは胃癌の第三相試験のフェールが続いた。Opdivoは日韓台の施設で標準療法不応不耐を組入れた第三相が成功したが、日韓と欧米の胃癌は生存期間などが異なるので、単純比較できない。現実に、EUのCHMPもこの試験に基づく承認に難色を示し、BMSは申請撤回した。PD-1/PD-L1阻害剤は胃癌に効くのか、効かないのか、エビデンスがまだ足りない。

リンク: MSDのプレスリリース

ASCO:ノバルティス、Kisqaliの延命効果を確認
(2019年6月1日発表)

ノバルティスは、ASCOとNew England Journal of Medicine誌で、Kisqali(ribociclib)のMONALEESA-7の全生存解析結果を発表した。中間解析でハザードレシオ0.712、p=0.00973と好成績を上げ成功認定された。CDK4/6阻害剤の第三相試験で延命効果が確認されたのは初めて。販促に追い風だ。

この第三相試験は、ホルモン受容体陽性、her2陰性の進行/転移乳癌で初めて治療を受ける閉経前・周閉経期女性を組入れて、goserelinとアロマターゼ阻害剤またはtamoxifenの併用レジメンにKisqaliを追加する効果を偽薬追加と比較したもの。既にPFS解析が成功し欧米で適応拡大が承認済み。

Kisqaliは細胞周期進行に係るCDK4/6を阻害する経口剤で、選択性が高い。CDK4の結晶構造を解明したAstex Pharmaceuticals(現在は大塚製薬傘下)と05年に開始したセルサイクル・コントロールに関する共同研究の成果だ。

欧米で17年に初承認されたが、報道によると日本は開発を断念したという。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ASCO:JNJ、アーリーダのmHSPCデータを発表 
(2019年5月31日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、Erleada(apalutamide、和名アーリーダ)の第三相TITAN試験の結果をASCOとNew England Journal誌で発表した。先行類薬であるアステラス製薬/ファイザーのXtandi(enzalutamide)の同様な試験と似たような結果になり、アンドロゲン伝達阻害剤クラスの有用性を改めて示した。

ErleadaはXtandiのポテンシャルを発見した研究者が第二世代品として開発したもので、JNJは13年に資産全体を買収した。18~19年に日米欧で非転移性CRPC(去勢抵抗性前立腺癌)用薬として承認されている。TITAN試験はmHSPC(転移性ホルモン療法感受性前立腺癌)の適応拡大試験で、中間解析で成功認定となったことが今年1月に発表されたが、データは未公表だった。

主評価項目はrPFS(放射線学的無進行生存期間)と全生存期間の二つ。前者はアンドロゲン枯渇療法とErleadaを併用した群の24ヶ月rPFS率が68.2%と偽薬を併用した群の47.5%を上回り、ハザードレシオは0.48、p<0.0001だった。後者は各82.4%、73.5%、0.67、p=0.0053となった。

Xtandiは同様な試験であるARCHES試験でrPFSハザードレシオが0.39、p<0.0001だった。まだイベント数が少ないため延命効果は不明。偽薬併用群のメジアンrPFSが19.4ヶ月とErleadaの試験より短く、患者背景がやや異なる可能性があるものの、両剤の効果に大きな差があると考える材料はなさそうだ。

JNJは4月に適応拡大申請、FDAはRTOR(リアル・タイム・オンコロジー・リビュー)プログラムを適用したので半年も経たないうちに承認される可能性がある。JNJのもう一つの前立腺癌用薬、Zytiga(abiraterone acetat、和名ザイティガ)が米国でGE化したところなので、重要なイベントだ。尤も、Xtandiのデータより良いわけではないので、後行の不利を覆すには力不足だろう。

リンク: JNJのプレスリリース
リンク: TITAN試験論文抄録(NEJM)

バーテックス、嚢胞性線維症のトリプルコンビ薬を承認申請へ
(2019年5月30日発表)

バーテックス・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:VRTX)は、嚢胞性線維症治療薬として承認申請するトリプルコンビ薬の第三の活性成分を決定した。二種類の第二世代CFTRコレクターを並行開発してきたが、第三相試験のデータを踏まえて、VX-659ではなくVX-445(elexacaftor)を選択した。薬効は大差ないように見えるが、安全性や忍容性、薬物相互作用、ホルモン系避妊薬を同時服用できること、光感受性が低いことなどが決め手になったようだ。

同社は1998年来、嚢胞性線維症の財団と共同研究を進め、多くの患者で機能喪失・低下遺伝子変異が見られるCFTR蛋白の開口時間を長期化するCFTRポテンシエイター、Kalydeco(ivacaftor)を2012年に欧米で発売した。この時点ではG551D置換を持つ患者だけが対象だったが、その後も臨床試験を進め、R117Hなど38種類の変異型が応答することを確認した。

嚢胞性線維症の罹患者数は世界で7万人と推定されているが、米国の場合はその半分近くがF508欠損ホモ接合型。Kalydecoの効果は限定的で、その意味では一部の患者にしか使えなかったが、バーテックスはCFTR蛋白が細胞表面にちゃんと移行するのを助けるCFTRコレクター(矯正剤)、VX-809(lumacaftor)の開発を進め、2015年に両薬の合剤であるOrkambiをF508欠損ホモ接合型の治療薬として発売。

更に、2018年には、新たなCFTRコレクターであるtezacaftorとivacaftorのコンビ薬、SymdekoをF508欠損のホモ接合型またはヘテロ接合でもう片方がSymdekoに応答する27種類の変異の一つである患者の治療薬として発売した。

今回のトリプルコンビ薬は、Symdekoの二剤にelexacaftorを追加する。適応はほとんど同じだが、呼吸機能改善作用が高そうなので、普及率が上昇しよう。

患者が少なくても治療効果が大きければ価格を高く設定して開発投資資金を回収しても良い・・・そんな時代になり、希少難病治療薬の開発に取り組む会社が増えてきた。NTRK再編成型とか、マイクロサテライト不安定性とか、特定のタイプだけを標的とする薬の開発も活発だ。それでも、積み残した荷物を忘れずに何度でも戻ってきた事例は珍しい。

バーテックスのトリプルコンビ薬が上市されれば、嚢胞性線維症の9割がカバーできる由。共同研究を開始してから21年、ごく一部の患者だけの治療薬を発売してから7年。とうとうここまでたどり着けそうだ。

リンク: バーテックスのプレスリリース

バイオマリン、A型血友病遺伝子治療試験の途中経過を公表
(2019年5月28日発表)

バイオマリン・ファーマシューティカル(Nasdaq:BMRN)は、BMN 270(valoctocogene roxaparvovec)の第三相重度A型血友病試験の途中経過と第1/2相試験の長期追跡結果についてアップデートした。

BMN 270はA型血友病の患者で欠如している血液凝固第8因子の遺伝子をアデノ随伴ウイルス5型をベクターとして導入するもの。第三相は130人を組入れる予定だが、今回は16人の単群解析。7人がFDAやEUの基準である『第23-26週の第8因子水準が40 IU/dL以上』を達成、データカットオフ後に更に一人が到達した。26週間の出血率(年率)はメジアンでゼロ、平均値は1.5で第8因子ルーチン補充療法を受けていたベースライン値と比べて85%減少した。第8因子の使用も9割減少した。

安全性解析(22人)は深刻有害事象が3人で発生、うち2人は点滴反応、もう一人は胃腸炎で治療とは関連無しと評価された。インヒビターは見られず。治験離脱はゼロ。有害事象は肝機能検査値異常、悪心、頭痛、疲労、関節炎など。

遺伝子療法は既存の薬と異なり反復投与しないが、薬効がどの程度持続するのか、減衰した時に再治療できるかが長期的な探索課題だ。BMN 270は2年目に第8因子活性水準が低下したが、3年目の低下は穏やかだった。具体的には、発色合成基質法アッセイによる8人の平均値が1年経過時点の64.3 IU/dLから2年経過時点は36.4 IU/dLに低下したが、3年経過時点では32.7 IU/dLを維持した。3年目の出血率(年率)はメジアンがゼロ、平均は0.7でベースライン比96%減少。

会社側は、モデルに基づき治療効果が8年以上持続と推定している。4年目以降も減衰するが最低限必要な水準は上回るとの評価だ。ルーチン補充療法を開始した被験者もいるようなので、特効薬という感じはしない。それでも、ルーチン補充療法でも出血を十分に管理できない難治性患者、あるいは代替的な選択肢として位置付けることはできそうだ。

バイオマリンは承認審査機関との相談を経て19年7-9月期に承認申請時期を決定する考えだ。

リンク: バイオマリンのプレスリリース(フェーズIII中間解析について)
リンク: 同(フェーズI/IIの長期追跡データについて)


【承認申請】


Epizyme、類上皮肉腫用薬を承認申請
(2019年5月30日発表)

Epizyme(Nasdaq:EPZM)は、EPZ-6438(tazemetostat)をFDAに類上皮肉腫用薬として承認申請したと発表した。根治手術の対象にならない転移性・局所進行性で、類上皮肉腫の9割で見られるINI1(integrase interactor 1)喪失癌が適応になる。

Epizymeは遺伝子の発現制御に係るエピジェネティクスに基づく新薬開発を行っている。EPZ-6438はINI1に代わってEZH2(enhancer of zeste homolog 2)というヒストン・メチルトランスフェラーゼを抑制する。

承認申請の根拠となった第二相試験では、62人の患者に800mgを一日二回投与したところ、ORR(客観的反応率、数ヶ月後に持続が確認された数値ではなさそう)が13%(全て部分反応)、うち初治療例では21%だった。メジアン反応持続期間は48週間以上、PFSは16週間(初治療例では25週間)、メジアン生存期間は82週間(初治療例では未達、再発治療例では47週間)。

第二相試験に基づき加速承認を得るためには、延命効果またはそれに準ずるものを確認する第三相試験を開始して承認までに患者組入れをかなり進めなければならない。EpizymeはデザインをFDAと相談して、合意に至りFDAが承認申請を受理した段階で治験内容を公表する考え。

EPZ-6438は日本ではエーザイがE7438として開発している。

リンク: Epizymeのプレスリリース

アマリン、EPA製剤の心血管疾患予防効果を一変申請
(2019年5月29日発表)

アマリン(Nasdaq:AMRN)は、Vascepa(icosapent)の心血管疾患予防効能・効果をレーベルに追加する適応拡大申請が受理され、優先審査指定されたことを発表した。審査期限は9月28日。

Vascepaは欧米では珍しいEPAだけを配合した医薬品で、米国で2012年に重度高トリグリセリド血症(TG≧500 mg/dL)の治療薬として承認された。アマリンはその後、混合異脂血症でTG値が200-500 mg/dLの患者に適応拡大申請したが、諮問委員会の反対を経てFDAが意見を変え、心血管アウトカム試験が成功するまでお預けとなっていた。

アマリンは2011年にREDUCE-IT試験を開始。スタチンによる治療によりLDL-Cが低下(ベースライン値はメジアンで75mg/dL)したが中度TG血症(150-499 mg/dL、ベースラインはメジアン216 mg/dL)の患者約8200人をVascepa群(4mg/日と日本のEPAのアウトカム試験であるJELISよりかなり多い)と偽薬群に無作為化割付し、MACE(主要有害心血管イベント:心血管疾患死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、冠再開通術、または不安定狭心症による入院)を比較したところ、Vascepa群は25%少なかった。医師の主観の入る余地が小さい3点MACE(心血管疾患死・非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)は26%少なく、心血管疾患死は20%少ない。数値上は文句のつけようのない結果だ。

但し、心房細動による入院や重度出血事故は増加した。また、偽薬群は鉱油が含まれていたせいかLDL-Cが増加しており、上記は過大評価である可能性も考えられる。

FDAは心血管アウトカム試験の評価経験が豊富なので、問題があれば発見するだろう。審査結果が注目される。

リンク: アマリンのプレスリリース

Santhera、イデベノンを再びDMD治療薬として承認申請
(2019年5月27日発表)

スイスのSanthera Pharmaceuticals(SIX:SANN)は、Puldysa(idebenone)をデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の呼吸機能改善薬としてEUで承認申請した。16年に申請した時はCHMPが否定的意見を出した。今回は長期追跡データも追加提出した模様だが、CHMPが意見を覆すほどのものではないだろう。米国で承認申請するために実施しているSIDEROS試験は患者組入れが遅れている。DMDは画期的新薬が承認・開発されており、被験者がそちらの臨床試験に流れているのかもしれない。

idebenoneは武田薬品が創製した合成コエンザイムQ10で、1986年に日本で脳卒中後遺症治療薬アバンとして承認されたが、薬効再確認試験がフェールし98年に販売中止となった。欧州の一部の国では販売されていたが、Santheraが権利を取得して様々な希少疾患用途を探索、欧州で承認申請し、ついに2015年に例外的環境条項に基づきLHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)治療薬Raxoneとして承認された。

DMD用途はステロイドを用いていない患者に高用量を投与したDELOS試験が成功、52週間後の呼吸機能が偽薬群ほど悪化しなかった。尤も、ピークフロー(%予測値)の群間差は5.96%と小さく、p値は0.044とあまり良いものではなかった。CHMPが否定的意見を出したのは治験実施方法や解析方法に疑問があり、また、筋力やQOLが改善しなかったため。今回も同じ評価になることが危惧される。

リンク: Santheraのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMPがウィルソン病治療薬などに肯定的意見
(2019年5月29日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、5月の会合で、ウィルソン病治療薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

今月は肯定的意見も否定的意見も申請撤回も、新薬という感じがしない。肯定的意見を得た新薬では、まず、Univar BVのCufence(trientine dihydrochloride)。ウィルソン病という常染色体劣性遺伝による先天性銅過剰症の治療に用いる。EUの推定患者数は23000人。このうち、D-ペニシラミンを耐容しない5歳以上の患者に用いる。経口剤で、米国では既にGE化している。

リンク: EMAのプレスリリース

次に、ノバルティスの子会社のAdvanced Accelerator Applicationsが承認申請したLysaKare。L-アルギニン塩酸塩とL-リジン塩酸塩の点滴用薬で、同社の放射線核種薬、Lutathera(Lu 177 dotatate)を用いて胃腸膵神経内分泌腫瘍の治療を行う時に、薬剤が腎臓で再吸収され滞留するのを妨げ放射線暴露を減らすために使う。主な有害事象は悪心嘔吐。

リンク: EMAのプレスリリース

一方、否定的意見だったのがEmmaus Life Sciences社のXyndari。2年前に米国で鎌状赤血球症治療薬Endariとして承認されたグルタミン酸だが、CHMPは、48週間の第三相試験のドロップアウト率が36%と偽薬群の24%より高く、効果が判定できない症例が多いためエビデンスが不十分と判定した。尚、米国の諮問委員会は10人対3人で支持が反対を上回った。Emmaus社は異議を申し立てる考え。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Emmausのプレスリリース

田辺三菱製薬のラジカット(エダラボン)は日本で脳梗塞治療薬として承認され海外でも華々しい成功が期待されたが、海外試験がフェールしたのか、この用途ではガラパゴス薬になってしまった。しかし、新用途であるALS(筋委縮性側索硬化症)では日本の臨床試験に基づき米国で承認。今度こそ日本が生んだオンリーワン薬になるかと思われたが、EUは承認申請撤回となってしまった。

EMAはALS用薬開発ガイドラインの中で、1年以上の臨床試験で死亡や永久的呼吸補助/気管切開のリスクを削減する効果を確認するよう求めている。日本の試験は半年間と短く、延命効果や呼吸能力あるいは筋力の改善効果が確認されていないため、CHMPはエビデンス不足と判断した。更に、ベースライン時点で試験薬群のほうが重症度が低い患者が多かったことや、偽薬群から試験薬にスイッチした患者では機能評価スケールの改善が見られなかったことにも疑問を持っているようだ。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: 田辺三菱製薬の申請撤回通知(pdf)
リンク: 田辺三菱製薬のプレスリリース(和文)


【承認】


アラガンのVraylarが適応拡大、
(2019年5月28日発表)

アラガン(NYSE:AGN)とハンガリーのゲデオン・リヒターは、Vraylar(cariprazine)を双極障害I型の鬱症状の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。

ドパミンD3、D2、セロトニン-HT1A受容体の部分作動剤で、15年に米国で統合失調症の急性期治療(一日1.5-6mgを服用)や双極障害I型の躁症状や混合症状の治療(同3-6mg)に承認された。今回、鬱症状の治療(一日1mgまたは3mg)が承認されたことで、混合症状なのか単独なのか見極めに時間を掛けずに治療を開始することができるようになった。用量域が異なるが、どのみち、患者毎に至適用量を探索することになるので、妨げにはならないだろう。

リンク: アラガンのプレスリリース

濾胞性リンパ腫の無化学療法レジメンが承認
(2019年5月28日発表)

FDAは、セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide、和名レブラミド)をrituximabと併用で治療歴を持つ濾胞性リンパ腫や辺縁帯リンパ腫に用いる適応拡大を承認した。この用途で化学療法を使わないレジメンは初めて。AUGMENT試験では、PFS(無進行生存期間、独立評価委員会査読)がメジアン39.4ヶ月と偽薬・rituximab併用群の14.1ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.46だった。

米国の成人性非ホジキン型リンパ腫のうち、濾胞性リンパ腫は22%、辺縁帯リンパ腫は7%を占めるとのこと。

Revlimidはサリドマイドの改良品で、2005年に骨髄異形成症候群や多発骨髄腫に用いることが承認された。本当に、今週は古い薬の話題が多い。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: セルジーンのプレスリリース



今週は以上です。

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