【ニュース・ヘッドライン】
- イムフィンジの小細胞性肺癌試験が成功
- Conatus、P2bNASH試験が三本ともフェール
- オプジーボ、肝細胞腫一次治療試験がフェール
- サノフィ、4価髄膜炎菌性髄膜炎ワクチンを承認申請
- GSK、PARP阻害剤を適応拡大申請
- FDA、AcerのvEDS用薬を承認せず
- CHMPが合成アンジオテンシンIIの承認などを支持
- ダラザレックス、Rdレジメン併用が承認
- ソリリス、神経脊髄炎に適応拡大
- Dova社のスロンボポイエチン受容体アゴニストが適応拡大
- デュピクセント、鼻ポリープに適応拡大
【新薬開発】
イムフィンジの小細胞性肺癌試験が成功
(2019年6月27日発表)
アストラゼネカは、抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第三相CASPIAN試験の中間解析が成功したと発表した。進展型小細胞性肺癌の一次治療試験で、cisplatinまたはcarboplatinをetoposideと併用する化学療法レジメンに追加したところ、全生存期間が化学療法のみの群より統計的に且つ臨床的にも有意に伸びたとのこと。データは学会発表の予定。
この試験は、ファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体tremelimumabも追加する四剤併用レジメン群と化学療法群の全生存期間の比較も共同主評価項目となっているため、続行される。
ImfinziはPD-L1陽性尿路上皮種の二次治療や非小細胞性肺癌の一次治療後維持療法に承認されている。
リンク: アストラゼネカのプレスリリース
Conatus、P2bNASH試験が三本ともフェール
(2019年月日発表)
Conatus Pharmaceuticals(Nasdaq:CNAT)は、emricasanの後期第二相NASH治療試験、ENCORE-LFがフェールしたと発表した。非代償性肝硬変を合併する患者に5mgまたは25mgを一日二回投与してイベント・フリー・サバイバルを観察したが偽薬群と有意差がなかった。
emiricasanは不可逆的汎カスパーゼ阻害剤。Idun Pharmaceuticalsを05年に買収して入手したファイザーが、08年に慢性C型肝炎治療薬としての開発を断念。買収までIdunの経営者であったSteven Mentoが設立したConatus社が権利を取得し、肝移植やNASH領域で開発を進めた。17年にはノバルティスがオプト・イン・オプションを行使、第三相以降の開発を担う計画だった。
ここ数年、新興新薬開発会社によるNASH治療薬の開発が活発化しており、ノバルティス以外の大手もインライセンス活動を積極化していた。しかし、少なくともemricsanの場合は、肝移植も、NASH線維症も、NASH肝硬変の門脈圧亢進治療も、そして今回、疾病が進行した患者を組入れた試験も、フェールした。Conatusは従業員のリストラを発表。投資銀行に戦略的代替策の提案を求めたとのことであり、他のパイプラインが有望なら第三者が買収し、そうでなければ会社更生・清算に進むことになりそうだ。
リンク: Conatus社のプレスリリース
リンク: 同(リストラについて)
オプジーボ、肝細胞腫一次治療試験がフェール
(2019年6月24日発表)
BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)のCheckMate-459試験がフェールしたことを発表した。切除不能肝細胞腫の一次治療における延命効果をNexavar(sorafenib)と比較した第三相試験で、ハザードレシオは0.85、95%上限は1.02、p=0.0752と、あと一歩届かなかった。
Opdivoは17年にFDAが第二相試験のORR(客観的反応率)データに基づき肝細胞腫の再発治療に用いることを承認した。しかし、欧州のCHMPは、当該試験が対照試験ではなく文献データとの比較も難しいことから承認に難色を示し、申請撤回となった。
第三相のフェールは残念だが、一次治療薬として承認されている薬と比べて効果が明確に優れていなくても、二次治療の承認が取り消されるほど決定的なダメージではないだろう。他の試験のデータでリカバリーショットを打てるかどうかが鍵になりそうだ。
抗PD-1/PD-L1抗体は破竹の勢いだが、当然、取りこぼしもある。肝細胞腫では、MSDのKeytruda(pembrolizumab)も第二相試験のORRデータに基づいてNexavarの次に使う薬としてFDAに承認されたが、市販後薬効確認試験はフェールし、全生存期間もPFS(無進行生存期間)も偽薬比有意な差はなかった。
尤も、95%上限は1を下回っており、敗因は、p値の閾値が全生存は0.0174、PFSは0.002と通常より厳しかったこと、言葉を換えれば、二兎どころか三兎も四兎も追ったことと推測される。本当に効かないのかどうか、まだ結論は出せない。
抗PD-1/PD-L1は第一相や第二相の併用試験で良さそうな数値を出している。Opdivoは同じくBMS社のYervoy(ipilimumab)と、KeytrudaはMSDが共同開発販売しているエーザイのlenvatinibなどと、ロシュは同社のTecentriq(atezolizumab)をAvastin(bevacizumab)と、組み合わせてORRをモノセラピーの20%から30%超に引き上げることに成功している。20%が不十分でも30%ならハードルをクリアできる可能性があるのではないか。
リンク: BMSのプレスリリース
【承認申請】
サノフィ、4価髄膜炎菌性髄膜炎ワクチンを承認申請
(2019年6月27日発表)
サノフィは、MenQuadfiを米国で承認申請し、受理されたと発表した。審査期限は来年4月25日。A、C、Y、W群髄膜炎菌をカバーするジフテリアトキソイド結合ワクチンで、2歳以上の髄膜炎菌性髄膜炎の予防に用いる。完全液状ワクチン。
リンク: サノフィのプレスリリース
GSK、PARP阻害剤を適応拡大申請
(2019年6月24日発表)
GSKは、Zejula(niraparib)を進行卵巣癌の四次治療に用いる適応拡大をFDAに申請し、受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は10月24日。今年1月に負債承継を含めて51億ドルで買収したTesaro社がMSDからライセンスして開発したPARP1/2阻害剤で、17年に欧米で難治性白金感受性卵巣癌の維持療法として承認された。
今回の申請は第二相QUADRA試験に基づくもので、主評価項目である相同組換え不全(HRD)陽性で白金薬レジメンによる直前の治療に感受した患者47人におけるORR(担当医評価)が28%だった。治療時発現深刻有害事象は小腸閉塞(7%)、血小板減少症(7%)、嘔吐(6%)など。
GSKは、HRDまたはBRCA変異を持ち、直前の白金薬レジメンの後、6ヶ月以上、癌が進行しなかった患者に用いることを求めている。BRCA変異は卵巣癌の35%程度、BRCA野生・HRD陽性は30%程度を占めるとされるので、PARP阻害剤の中でもカバレッジが比較的広くなる。Zejula自身も含めて、PARP阻害剤は早期段階で使う場合はBRCA不問であることが多いので、将来は全面戦争になるのだろうが、序盤戦における後発の不利を補う上で重要なセールスポイントだ。
リンク: GSKのプレスリリース
【承認審査・委員会】
FDA、AcerのvEDS用薬を承認せず
(2019年6月25日発表)
Acer Therapeutics(Nasdaq:ACER)はEdsivo(celiprolol)を血管エーラス・ダンロス症候群(vEDS)の治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。よくデザインされた対照試験で臨床的な効用を明確にするよう求められた由。
celiprololは高血圧治療薬として承認されている心選択的アドレナリン受容体ベータ1アンタゴニスト。vEDSはコラーゲン線維形成機構の異常を原因とする希少疾患で、皮膚無力症、皮膚脆弱症、過剰弾力性皮膚などと呼ばれることもあるようだ。
フランスとベルギーの施設で行われた4年間の試験で動脈イベント発生率が20%と、治療しなかった対照群の50%を有意に下回った。その後、フランスでは普及率が大きく上昇した模様。尤も、この試験の組入れは53人に過ぎず、米国申請の対象であるタイプIIIコラーゲン変異型は33人と更に少ない。
希少疾患なので大目に見てもらえる可能性もあったのだろうが、承認されなくても意外感はない。
リンク: Acer社のプレスリリース(GlobeNewsWireのサイト)
CHMPが合成アンジオテンシンIIの承認などを支持
(2019年6月28日発表)
EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、6月の会合で、アンジオテンシンIIの承認などについて肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。
リンク: EMAのプレスリリース
新薬で肯定的意見を得たのはLa Jolla Pharmaceuticals(Nasdaq:LJPC)のGiapreza(angiotensin II acetate)。敗血症などによるショックで血圧が低下し、カテコラミンによる治療に十分反応しない患者に、最大で7日間、連続点滴静注する。米国では17年12月に承認。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: La Jollaのプレスリリース
適応拡大で肯定的意見を得たのは、まず、ロシュの抗PD-L1抗体、Tecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)。切除不能局所進行・転移トリプル・ネガティブ乳癌の一次治療にnab-paclitaxelと併用する。腫瘍浸透免疫細胞のPD-L1検査で陽性(1%以上)の場合に適応になる。nab-paclitaxelの投与サイクルに合わせて2週毎に投与する。
米国は今年3月に承認。抗PD-L1/PD-1抗体が遂に乳癌領域まで進出してきた。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース
次に、イーライリリーの抗VEGFR-2抗体、Cyramza(ramucirumab、和名サイラムザ)。AFP(アルファ・フェトプロテイン)が400 ng/mL以上の肝細胞腫でsorafenibによる治療歴を持つ患者が対象。臨床試験では全生存のハザードレシオが偽薬比0.71だった。米国では先月、日本では今月、承認された。
リンク: EMAのプレスリリース
そして、ジョンソン・エンド・ジョンソンがアッヴィと共同開発販売しているBtk阻害剤、Imbruvica(ibrutinib)。CLL(慢性リンパ性白血病)/SLL(小リンパ球性リンパ腫)の一次治療にobinutuzumab併用と、ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の治療にrituximab併用という用法追加が支持された。
リンク: EMAのプレスリリース
対象年齢拡大では、ノボ ノルディスクのGLP-1作用剤、Victoza(liraglutide)。10歳以上の青少年二型糖尿病患者が使えるようになる。小児二型糖尿病に承認されている血糖治療薬はインスリンとmetforminしかないため重要。米国では今月承認された。
リンク: EMAのプレスリリース
次に、ノボのFiasp(insulin aspart)。糖尿病の対象年齢を1歳以上に拡大する。
リンク: EMAのプレスリリース
最後に、リジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発販売している抗IL-4Rアルファサブユニット抗体、Dupixent(dupilumab、和名デュピクセント)。中重度アトピー性皮膚炎の対象年齢を12-17歳に拡大する。
リンク: EMAのプレスリリース
一方、否定的意見となった新薬は、UCBがアムジェンと共同開発した抗スクレロスチン抗体、Evenity(romosozumab、和名イベニティ)。日本は今年1月に、米国も4月に骨粗鬆症治療薬として承認したが、CHMPは、臨床試験で心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患が対照群より多かったことや、75歳以上で死亡者が多かったことを懸念した。後者は初耳で驚かされた。
リンク: EMAのプレスリリース
リンク: アムジェンのプレスリリース
対象拡大申請に否定的意見が出たのはPTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)のTranslarna(ataluren)。EUでデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として14年に条件付き承認されたが、対象はジストロフィン遺伝子にナンセンス変異を持つ5歳以上の歩行可能な患者に限定された。PTCは歩行できなくなった患者に適応拡大(限定解除)を図ったが、CHMPは、薬効のエビデンス不足と判定した。
CHMPによると、薬物動態試験で歩行可能な患者と同様なデータを出したが、病気が進行し歩行できなくなった患者が必要とする便益は異なる。臨床的効用を検討した試験は文献データを対照群としたが、患者登録データの選択方法などが不適切。
リンク: EMAのプレスリリース
【承認】
ダラザレックス、Rdレジメン併用が承認
(2019年6月27日発表)
ジョンソン・エンド・ジョンソンはDarzalex(daratumumab、和名ダラザレックス)の用法追加申請がFDAに承認されたと発表した。ジェンマブ社からライセンスした抗CD38抗体で、多発骨髄腫の再発治療や初度治療に日米欧で承認されているが、今回、自己幹細胞移植が不適な新患にRevlimid(lenalidomide)及びdexamethasoneを併用することが承認された。
第三相MAIA試験では、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.56、メジアンPFSはDRd群が未達、Rd群は31.9ヶ月だった。
リアル・タイム・オンコロジー・リビューの対象で、承認申請からのリードタイムは3ヶ月。もう一つの代表的な一次治療法であるVMPレジメン(bortezomib、melphalan、prednisone)との併用は米国で昨年5月に承認されている。また、自己幹細胞移植が可能な患者に、BTd(bortezomib、thalidomide、dexamethasone)と併用する用法も今年3月に米国で承認申請された。
リンク: JNJのプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース
ソリリス、神経脊髄炎に適応拡大
(2019年6月27日発表)
FDAは、アレクシオン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALXN)の抗C5抗体、Soliris(eculizumab、和名ソリリス)を抗アクアポリン4抗体陽性型NMOSD(視神経脊髄炎)に適応拡大した。日欧の承認機関も審査中。
NMOSDは歩行障害や失明、死亡のリスクを伴う疾患で、米国の推定患者数は4000-8000人。7-8割の患者で抗アクアポリン4自己抗体が見られる。Solirisの臨床試験では、再発頻度が偽薬比94%小さかった。米国でNMOSD治療薬が承認されたのは初。但し、rituximabのような抗CD20抗体などがオフレーベルで使用されているようなので、超高額薬であるSolirisの出番は難治例に限定されるのではないか。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アレクシオン社のプレスリリース
Dova社のスロンボポイエチン受容体アゴニストが適応拡大
(2019年6月27日発表)
Dova Pharmaceuticals(Nasdaq:DOVA)は、FDAがDoptelet(avatrombopag)の適応拡大を承認したと発表した。慢性免疫性血小板減少症で前治療に十分反応しなかった成人に用いる。他社のスロンボポイエチン受容体アゴニストが先に承認されているので、肩を並べただけで売上影響は限定的なのではないか。
オリジンは山之内製薬で、藤沢薬品と合併した時に山之内アメリカからスピンアウトしたAkaRXが開発を承継した。AkaRXはMGIに買収されたが、MGIを買収したエーザイがDovaのグループ会社に売却したという経緯。重度血小板減少症を合併する慢性肝疾患の患者が手術を受ける前に血小板数を増やす薬として、18年に米国で、今週、EUでも、承認された。このリードインディケーションを選んだのは先行品との競合を避ける意図と推測されるが、前後して塩野義製薬のMulpleta(lusutrombopag)も日米で同じ用途に承認されており、競合している。
リンク: Dova社のプレスリリース
リンク: 同(EU承認、6/25付)
デュピクセント、鼻ポリープに適応拡大
(2019年6月26日発表)
FDAは、リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)のDupixent(dupilumab、和名デュピクセント)の適応拡大を承認した。管理不良な重度慢性副鼻腔炎を伴う鼻ポリープの治療に用いるもの。臨床試験ではポリープの退縮や鼻詰まり症状の改善が見られた。深刻なアレルギー反応や結膜炎、角膜炎に注意する必要がある。生ワクチンの接種は避ける。
サノフィと共同開発販売している抗IL-4Rアルファサブユニット抗体で、これまでに中重度アトピー性皮膚炎や好酸球性喘息症の治療薬として承認されている。用法は同じなので、日本で承認されれば薬価ベースで年200万円程度になる。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: 両社のプレスリリース
今週は以上です。
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