2019年6月23日

2019年6月23日号

【ニュース・ヘッドライン】

  • アレクシオン社、ユルトミリスをaHUSに適応拡大申請 
  • Melinta社、delafloxacinを適応拡大申請 
  • 第一三共のヴァンフリタ、FDAは承認せず 
  • FDAが第二の女性性欲低下障害治療薬を承認 
  • キイトルーダ、小細胞性肺癌三次治療に承認 
  • ファイザー、PARP阻害剤が欧州でも承認 
  • リムパーザ、欧州でも卵巣癌一次治療後維持療法に適応拡大 


【承認申請】


アレクシオン社、ユルトミリスをaHUSに適応拡大申請
(2019年6月20日発表)

アレクシオン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、Ultomiris(ravulizumab-cwvz、和名ユルトミリス)を非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)患者の補体調停的血栓性微小血管症(TMA)を阻害する用途でFDAに適応拡大申請し、受理された。優先審査で審査期限は10月19日。

UltomirisはSoliris(eculizumab)と同様なC5補体に対する抗体医薬で作用が長期持続するため、維持期の投与間隔が8週とSolirisの2週より長い。米国で昨年12月に、日本でも今年6月に、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)治療薬として承認されたが、aHUSはSolirisの主用途なので重要な適応だ。

Soliris未経験のaHUS患者を組入れた臨床試験では、26週時点のTMA反応率が53.6%だった。血小板数やLDH値を正常化するとともに、血清クレアチニン改善作用も見られた。深刻な有害事象は肺炎と高血圧症。56人中4人が死亡したが薬物との関連性は見られなかった由。

リンク: アレクシオンのプレスリリース

Melinta社、delafloxacinを適応拡大申請
(2019年6月19日発表)

Melinta Therapeutics(Nasdaq:MLNT)はBaxdela(delafloxacin)を地域感染細菌性肺炎(CABP)の治療に用いる適応拡大をFDAに申請し受理された。優先審査で、審査期限は10月24日。

涌永製薬から世界開発販売権を取得したフルオロキノロンで、類薬と比べてスペクトラムが広く、耐性菌や肺炎球菌にも活性を持つ。17年に米国で急性細菌性皮膚・皮膚構造感染症に承認された。

CABP試験では、FDAの承認基準である早期臨床反応率(初回投与の3-5日後における各種症状改善奏効率)が88.9%と対照薬のmoxifloxacinの89.0%と比べて非劣性だった(非劣性マージン12.5%)。二次的評価項目のTOC奏効率(投与完了の5-10日後に評価)も90.5%対89.7%で非劣性。有害事象の発生率は両群同程度だった。

リンク: Melintaのプレスリリース


【承認審査・委員会】


第一三共のヴァンフリタ、FDAは承認せず
(2019年6月21日発表)

第一三共は昨年、FLT3チロシンキナーゼ阻害剤quizartinibをFLT3-ITD変異を持つ再発難治性AML(急性骨髄性白血病)の治療薬として日米欧で承認申請した。日本では、先日、世界に先駆けて承認された(ブランド名はヴァンフリタ)が、FDAは承認を見送り審査完了通知を出した。5月の諮問委員会で第三相試験のデータの質や頑強性に疑問が指摘されていたのでサプライズではないが、同社が承認申請中あるいは予定中の他の抗癌剤の臨床試験はキチンと行われたのか、一抹の不安が残る。

諮問委員会は承認賛成が3人、反対は8人と、慎重な意見が大勢を占めた。第三相試験でメジアン生存期間が6.2ヶ月と化学療法群(低量cytarabineなど)の4.7ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.76で統計的に有意な差があったものの、中央値の差は1.5ヶ月程度なので、重大な副作用であるQT延長のリスクを十分に正当化できるほどではない。エビデンスの質の面では、割り付けられたが一度も投与されず、治験離脱後の追跡調査も行われなかった症例が対照群に偏っていたことが減点材料になる。頑強性の面では、二次的評価項目がフェールしたことが減点材料。

これらの点をPMDAはどう評価したのか、審査報告書の公表が待望される。いつものように、一度は疑問を呈するが回答を受領するとそれで了承したのだろうか?

quizartinibは09年にアステラス製薬が米国のAmbit Biosciences(Nasdaq:AMBI)から共同開発販売権を取得したが13年に解約、14年に第一三共がAmbitを目標達成報奨金を含めて4.1億ドルで買収して入手したという経緯。

リンク: 第一三共の米国子会社のプレスリリース


【承認】


FDAが第二の女性性欲低下障害治療薬を承認
(2019年6月21日発表)

FDAは、AMAG Pharmaceuticals(Nasdaq:AMAG)のVyleesi(bremelanotide)を閉経前女性の後天的で全般性な性欲低下障害(HSDD)の治療薬として承認した。米国でHSDD治療薬が承認されたのは4年ぶり

Palatin Technologiies(AMEX:PTN)からライセンスしたメラノコルチン4型受容体アゴニストで、45分以上前にオートインジェクターで皮注する。臨床試験では性欲スコア(1.2から6.0まで、数値が大きいほど強い)が1.2ポイント以上改善した患者の比率が25%と偽薬群の17%を上回った。典型的な副作用は悪心で40%の被験者で発生、薬物治療例だけでも13%と多かった。血圧上昇が一因でFDAが治験許可を停止したことも過去にはあった。一時的な上昇に留まるようだが、管理不良高血圧や心血管疾患は禁忌、心血管疾患高リスク患者に用いることは推奨されない。

米国の潜在患者数は600万人と推定されているが、治療法があることを知らない人が多い由。15年にValeant(NYSE:VRX)が5-HT1A作動/5-HT2A拮抗剤のAddyi(flibanserin)の承認を取得したが、売れていない。Vyleesiも上記のデータを見る限りでは、ヒットしそうにない。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: AMG社のプレスリリース

キイトルーダ、小細胞性肺癌三次治療に承認
(2019年6月17日発表)

FDAは、MSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を転移性小細胞性肺癌に適応拡大した。白金薬などによる治療歴を持つ患者の三次治療に用いる。
二本の臨床初期試験の合計でORR(客観的反応率、独立委員会が盲検で評価)が19%(完全反応2%を含む)、反応の6ヶ月持続率は94%、18ヶ月は56%だった。深刻有害事象発生率は31%、有害事象による治験離脱率は9%だった。

Keytrudaと同様な抗PD-1抗体であるBMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)も昨年8月に同じ用途に適応拡大している。臨床成績はORR12%(完全反応1%)、メジアン反応持続期間17.9ヶ月、深刻有害事象発生率45%、有害事象治験離脱率10%となっており、大きな差はなさそうだ。

どちらもORRという代理マーカーに基づく加速承認なので、承認後に延命効果またはそれに準じるものを確認する必要がある。ORRは決して高くないが、1.5年経っても被験者の10%程度が反応という持続性の高さを考えると、期待できそうだ。

尚、ロシュの抗PD-L1抗体、Tecentriq(atezolizumab)は、今年3月に、進展型小細胞性肺癌の一次治療に化学療法と併用することが米国で承認されている。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース

ファイザー、PARP阻害剤が欧州でも承認
(2009年6月21日発表)

ファイザーのTalzenna(talazoparib)が、EUで、生殖細胞系BRCA1/2変異を持ちher2陰性の進行転移乳癌に承認された。不適である場合を除いて、アンスラサイクリン、タクサン、そして内分泌療法薬による治療歴を持つ患者が適応になる。米国では昨年10月に承認された。

16年に140億ドルで買収したメディベーション社が前年にバイオマリンから資産ごと買収したPARP阻害剤。第三相試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が8.6ヶ月と実薬対照群(capecitabineやeribulinなどから医師が選択)の5.6ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.54で統計的に有意に上回った。

リンク: ファイザーのプレスリリース

リムパーザ、欧州でも卵巣癌一次治療後維持療法に適応拡大
(2019年6月18日発表)

アストラゼネカとMSDは、BRCA遺伝子変異陽性卵巣癌の初回化学療法後にLynparza(olaparib)で維持療法を行う適応拡大がEUで承認されたと発表した。翌日、日本でも承認。米国は昨年12月に承認されている。

白金薬レジメンによる一次治療に部分反応以上だった患者391例を組入れた第三相SOLO-1試験では、300mg錠を一日二回経口投与した群の36ヶ月メジアンPFS(無進行生存率)が60.4%と偽薬群の26.9%を大きく上回り、ハザードレシオは0.30だった。二年経過時点で完全反応だった患者は投薬を中止したが再発しなかった。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース



今週は以上です。

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