【ニュース・ヘッドライン】
- ADA:トラゼンタの心血管アウトカム試験が成功
- ADA:トルリシティが心血管疾患リスクを抑制
- ロシュ、抗CD79b抗体薬物複合体が米国で加速承認
- キイトルーダ、頭頚部癌一次治療に適応拡大
【新薬開発】
ADA:トラゼンタの心血管アウトカム試験が成功
(2019年6月10日発表)
ベーリンガー・インゲルハイムとイーライリリーは、ADA(米国糖尿病学会)で、Tradjenta(linagliptin)の心血管アウトカム試験、CAROLINAの結果を発表した。他のDPP-4阻害剤と同様に、心血管リスクが高まらないことを確認できた。
この試験は、6033人の二型糖尿病で心血管疾患既往・高リスク患者を組入れて6年超、追跡したもの。発症してから数年で薬物治療を受けていない患者も組入れた点と、偽薬ではなく実薬(glimepiride)対照である点が特徴だ。
結果は、MACE(主要有害心臓イベント:心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中)の発生率が11.8%対12.0%となり、非劣性だった。不安定狭心症による入院を含む4点MACEも13.2%対13.3%で大差なかった。
過去の臨床試験では、2年間のglimepiride対照試験で心血管イベントが有意に少なかったり、9459例のメタアナリシスで4点MACEの対照群比ハザードレシオが0.78と有意ではないが良さそうな数値が出たりした。しかし、アウトカム試験では、今回だけでなく昨年開票したCARMELINA試験も3点MACEが偽薬比非劣性に留まった。やはり、データマイニングだけでは駄目で、前向き試験で確認するプロセスが不可欠なのだろう。
リンク: 両社のプレスリリース
ADA:トルリシティが心血管疾患リスクを抑制
(2019年6月9日発表)
イーライリリーは、Trulicity(dulaglutide、和名トルリシティ)の心血管アウトカム試験、REWIND試験の結果も発表した。3点MACEのハザードレシオが偽薬比0.88となり、統計学的に有意な抑制効果が確認できた。
但し、解析計画の前提(ハザードレシオ0.82)ほどではなく、また、同じGLP-1作用剤であるノボ ノルディスクのOzempic(semaglutide)がSUSTAIN-6試験で出した0.74、経口semaglutideがPIONEER 6試験で出した0.79(但し有意ではない)、グラクソ・スミスクラインのTanzeum(albiglutide)がHARMONY試験で出した0.78と比べて、見栄えしない。
ノボのVictoza(liraglutide)もLEADER試験のハザードレシオが0.87だった。。REWINDは9901人を5.4年間追跡した大規模な試験なので、フェークとは考えにくい。クラス間の格差はリアルなのか、もしフェークならどちらが真で、数値の差が出たのはなぜなのか、今後の検討が期待される
リンク: イーライリリーのプレスリリース
【承認】
ロシュ、抗CD79b抗体薬物複合体が米国で加速承認
(2019年6月11日発表)
ロシュのPolivy(polatuzumab vedotin-piiq)がFDAに加速承認された。再発難治びまん性大細胞型B細胞リンパ腫で、二種類の薬物による治療歴を持ち造血幹細胞移植不適な患者に、rituximab及びbendamustinと併用する。
B細胞非ホジキン型リンパ腫に特異的に発現するCD79bに結合する抗体と細胞毒を結合したもので、シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)とのコラボの産物。承認の根拠となった後期第一相/第二相試験では、完全反応率(独立評価委員会ベース)が40%と、rituximabとbendamustinだけのBRレジメンの18%を大きく上回った。メジアン生存期間は各12.4ヶ月と4.7ヶ月、ハザードレシオ(探索的解析)は0.42だった。
リンク: ロシュのプレスリリース
キイトルーダ、頭頚部癌一次治療に適応拡大
(2019年6月10日発表)
FDAは、MSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)を転移・切除不能難治頭頚部扁平上皮種(HNSCC)の一次治療に用いる適応拡大を承認した。白金薬及びfluorouracilと併用する。PD-L1陽性(Combined Positive Scoreが1以上)ならモノセラピーも可。
エビデンスであるKEYNOTE-048試験では、EXTREMEレジメン(carboplatinまたはcisplatinをfluorouracil及びcetuximabと併用)に対する全生存のハザードレシオが併用群は0.77、p=0.0067だった。モノセラピー群(CPS≧1サブグループだけの解析)は0.78、p=0.0171だった。
今年のASCOで発表されたデータによると、CPSが20以上の患者のサブグループ解析は、併用群がメジアン14.7ヶ月、EXTREME群は10.7ヶ月、ハザードレシオ0.60だった。一方、モノセラピー群はメジアン14.9ヶ月でハザードレシオ0.61だった。併用群とモノセラピー群の比較は検討されていないが、見た目は大差なさそうだ。CPSが20以上ならモノセラピー、未満なら併用という使い分けになるのではないか。
尚、この試験におけるPD-L1発現評価は、階層化はTumor Proportion Score(閾値50)に基づいて行われたが、上記のように、サブグループ解析はCPSを使っている。元々はKeytrudaの他の試験と同じTPSを使う計画だったのを途中でCPSに変更したようだ。キットはどちらもPD-L1 IHC 22C3 pharmDXとのこと。
TPSで区切ったらどうなるのか、興味がある。PD-L1発現状況を検査するコンパニオン診断薬は薬品毎に異なり、互換性は100%ではないようだ。評価対象も腫瘍だけ、免疫細胞だけ、両方と色々あり、同じ癌でも会社によって違っていたりする。同じ尺度で評価したら結果がどう変わるのかは、今後の適応拡大余地を想像する上で、重要な手掛かりになり得る。
リンク: FDAのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース
今週は以上です。
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